説明

ポリスチレン系樹脂粒子、予備発泡粒子、及び、ビーズ発泡成形品

【課題】ビーズ発泡成形に用いられるのに適したポリスチレン系樹脂粒子を提供するとともに付着性の低い予備発泡粒子、並びに、製造容易なビーズ発泡成形品を提供すること。
【解決手段】 ビーズ発泡成形に用いられるポリスチレン系樹脂粒子であって、高分子型帯電防止剤、及びポリスチレン系樹脂以外の樹脂を実質上含有しておらず、前記高分子型帯電防止剤が分子内にポリエーテルブロックとポリオレフィンブロックとを有するブロック共重合体であることを特徴とするポリスチレン系樹脂粒子などを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスチレン系樹脂粒子、ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させた予備発泡粒子、及び、該予備発泡粒子を型内発泡成形させたビーズ発泡成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリスチレン系樹脂組成物からなる発泡性のポリスチレン系樹脂粒子をビーズ発泡成形したビーズ発泡成形品は、“発泡スチロール”などと呼ばれて断熱材や緩衝材として広く利用されている。
例えば、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を一旦発泡させて予備発泡粒子を作製し、この予備発泡粒子を金型内で加熱してさらに発泡させ断熱性容器などのビーズ発泡成形品を作製することが従来行われている。
この種の用途に利用される発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、例えば、下記特許文献1に示されているように、発泡剤を含有していないポリスチレン系樹脂粒子を予め作製した後に発泡剤を含浸させる方法や、押出機で発泡剤を含有するポリスチレン系樹脂組成物を溶融混練して、得られた溶融混練物を水中に押出しつつペレット状に切断する方法などによって作製されている。
【0003】
前記発泡剤としては、従来、炭化水素が用いられることが多く、例えば、発泡性のポリスチレン系樹脂粒子を保管する容器内やポリスチレン系樹脂粒子を搬送する搬送経路において静電気などによる火花が発生するとポリスチレン系樹脂粒子から放出された炭化水素ガスに引火するおそれを有することから、従来、界面活性剤などの帯電防止剤をポリスチレン系樹脂粒子の原材料に配合したり、ポリスチレン系樹脂粒子の表面に塗布したりすることが行われている。
【0004】
また、炭化水素以外の発泡剤を用いる場合でも、ポリスチレン系樹脂粒子や予備発泡粒子が静電気を帯びると意図せぬ箇所に付着してトラブルの原因ともなることからビーズ発泡成形に用いられるポリスチレン系樹脂粒子には帯電防止性を付与することが求められている。
【0005】
しかし、界面活性剤を表面塗布した場合、ポリスチレン系樹脂粒子を収容する容器や、ポリスチレン系樹脂粒子を利用する装置にこの界面活性剤が付着するという問題を発生させるおそれを有する。
また、ビーズ発泡成形において用いられる予備発泡粒子は、密度が低いために表面に極僅かなタック性が生じただけで接触した相手に付着してしまい易く、静電気の発生を防止できたとしても表面の界面活性剤によってむしろ付着させ易くしてしまうおそれを有する。
このような付着しやすい予備発泡粒子を用いると、頻繁に掃除を行うなどしなければならず、ビーズ発泡成形品を製造する手間を煩雑にさせるおそれを有する。
さらには、界面活性剤を過度に表面に付着させるとビーズ発泡成形における予備発泡粒子どうしの接着を、この界面活性剤が阻害してしまうおそれも有する。
なお、表面に塗布するのではなく界面活性剤を練り込んだ場合でも、界面活性剤はポリマー中における拡散速度が大きいために時間の経過とともにポリスチレン系樹脂粒子表面に滲出し、所謂“ブリードアウト”という現象を引き起こし、表面塗布した場合と同じ結果になるおそれを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−206753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、界面活性剤などのような低分子型の帯電防止剤に代えて分子量が1000を超え、数万に及ぶような高分子量の物質を主成分とする、所謂“高分子型帯電防止剤”の利用が検討されている。
この高分子型帯電防止剤は、界面活性剤などの低分子量のものと違ってポリマー中における移行性が低いことから、帯電防止剤として高分子型帯電防止剤を採用することで付着物を生じるおそれを抑制させうる。
【0008】
しかし、高分子型帯電防止剤の利用については十分な検討がなされておらず、ビーズ発泡成形用途において適したものが見出されてはいない状態である。
従って、本発明は、用いる高分子型帯電防止剤を選択することによってビーズ発泡成形に用いられるのに適したポリスチレン系樹脂粒子を提供し、ひいては、付着性の低い予備発泡粒子を提供して、製造時において掃除等に多大な手間を要しない製造容易なビーズ発泡成形品を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、一般的に高分子型帯電防止剤はポリスチレン系樹脂との間に良好な相溶性を有していないことから、ビーズ発泡成形においてポリスチレン系樹脂粒子どうしの接着性をある程度低下させる傾向にあるものの高分子型帯電防止剤以外に別の樹脂を実質上含有させないようにすることで必要な帯電防止性能を得る上で接着性の低下を実質上問題のないレベルにまで抑制できることを見出した。
また、本発明者は、いくつかの高分子型帯電防止剤においては、ポリスチレン系樹脂粒子や予備発泡粒子を金属製の部材に付着しやすくさせる作用を有するものの分子内にポリエーテルブロックとポリオレフィンブロックとを有するブロック共重合体をポリスチレン系樹脂粒子に含有させる高分子型帯電防止剤として採用した場合には、金属製部材への付着が生じ難いことを見出して本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、上記課題を解決するためのポリスチレン系樹脂粒子に係る本発明は、ビーズ発泡成形に用いられるポリスチレン系樹脂粒子であって、高分子型帯電防止剤、及びポリスチレン系樹脂以外の樹脂を実質上含有しておらず、前記高分子型帯電防止剤が分子内にポリエーテルブロックとポリオレフィンブロックとを有するブロック共重合体であることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、分子内にポリエーテルブロックとポリオレフィンブロックとを有するブロック共重合体がポリスチレン系樹脂粒子に含有させる高分子型帯電防止剤として採用されている。
従って、本発明によればビーズ発泡成形に用いられるのに適したポリスチレン系樹脂粒子が提供されるとともに付着性の低い予備発泡粒子、並びに、製造容易なビーズ発泡成形品が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させた際の予備発泡機内の様子を示す図(写真)。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のポリスチレン系樹脂粒子について、ビーズ発泡成形に利用すべく発泡剤を含有させた発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を例示しつつ以下に説明する。
まず、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を形成するポリスチレン系樹脂組成物について説明する。
【0014】
本実施形態における前記ポリスチレン系樹脂組成物は、その主成分となるポリスチレン系樹脂(A)と、高分子型帯電防止剤(B)とを含有しており、これら以外には樹脂成分を実質的に含んでいない。
さらに、本実施形態の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を構成するポリスチレン系樹脂組成物には、該発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を加熱発泡させるための発泡剤としてブタンやペンタンなどの炭化水素がさらに含有されている。
【0015】
(A)ポリスチレン系樹脂
本実施形態に係る発泡性ポリスチレン系樹脂粒子のベース樹脂となる前記ポリスチレン系樹脂としては、特に限定されるものではなく、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、i−プロピルスチレン、t−ブチルスチレン、ジメチルスチレン、ブロモスチレン、クロロスチレン等のスチレン系単量体の単独重合体又はこれらの共重合体等が挙げられる。
【0016】
また、ポリスチレン系樹脂としては、上記スチレン系単量体に対して共重合可能なビニル単量体と上記スチレン系単量体との共重合体であってもよく、このようなビニル単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、エチルフマレートの他、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレートなどの二官能性単量体などが挙げられる。
【0017】
なお、前記ポリスチレン系樹脂は、上記に例示の各種の単量体成分の内のいずれかのみから構成されるホモポリマーであっても、上記に例示する各種単量体成分を複数組み合わせてなるコポリマー(共重合体)であってもよい。
また、本実施形態のポリスチレン系樹脂としては、上記のようなホモポリマーやコポリマーを一種単独でのみ用いる必要はなく複数種類のものを混合して用いることができる。
【0018】
本発明で用いられるポリスチレン系樹脂としては、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(以下「HIPS」ともいう)か、又は、汎用ポリスチレン樹脂(以下、「GPPS」ともいう)のいずれかが好適である。
なお、耐衝撃性ポリスチレン樹脂(HIPS)とは、前記スチレン系単量体など以外にブタジエンなどのゴム成分を含有するものであり、例えば、該ゴム成分がスチレン系単量体と共重合しているコポリマーや、該コポリマーと他のホモポリマーあるいはコポリマーとのブレンド樹脂などが挙げられる。
また、汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)とは、添加剤等を除いた殆どの成分が実質上スチレンモノマーのみで構成されたものである。
これらのポリスチレン系樹脂は、いずれも、多くの種類が市販されており、求める特性のものが入手容易であるばかりでなく比較的安価である点においても好適である。
【0019】
なお、前記ポリスチレン系樹脂は、通常、JIS K 7210(条件H:試験温度200℃、公称荷重5.00kg)によるメルトフローレート(MFR)が、20g/10min以下のものを採用することができ、高分子型帯電防止剤等を良好に分散させる上において15g/10min以下であることが好ましく、メルトフローレートが1g/10min〜3g/10minであることが特に好ましい。
なお、メルトフローレートが、20g/10minを超えるようなポリスチレン系樹脂は一般的に溶融張力が低く、発泡させるには不適なものとなることがある点においても、前記ポリスチレン系樹脂は、メルトフローレートが20g/10min以下であることが好ましい。
【0020】
(B)高分子型帯電防止剤
本実施形態に係る発泡性ポリスチレン系樹脂粒子には、前記高分子型帯電防止剤としてポリエーテル系ブロックとポリオレフィン系ブロックとを有するブロック共重合体を用いることが重要である。
一般に高分子型帯電防止剤としては、アイオノマー樹脂などが知られているがアイオノマー樹脂は、金属との親和性が高いために、例えば、高分子型帯電防止剤としてアイオノマー樹脂を採用すると、ポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させた予備発泡粒子を型内成形させるのに際して金型周囲の金属製部材類に付着しやすくなってトラブルの原因となるおそれを有する。
一方で、ポリエーテル系ブロックとポリオレフィン系ブロックとを有するブロック共重合体においては、アイオノマー樹脂を用いた場合に比べて付着性を大きく低下させることができ、ビーズ発泡成形品を製造する際に予備発泡粒子を作製するための機器や搬送経路を掃除する等の手間を簡略化させることができる。
【0021】
なお、高分子型帯電防止剤(B)は、通常、前記ポリスチレン系樹脂(A)との合計に占める割合((B)/{(A)+(B)}×100質量%)が、3〜20質量%の範囲内となるようにすることができ、4〜15質量%の内のいずれかとなるように含有されることが好ましい。
【0022】
前記ポリスチレン系樹脂組成物におけるポリスチレン系樹脂(A)、及び、高分子型帯電防止剤(B)の割合を上記のように調節することにより、本実施形態のポリスチレン系樹脂粒子は、該ポリスチレン系樹脂粒子を0.1g/cm3程度の見掛け密度となるように型内発泡させて得られるビーズ発泡成形品の表面抵抗率を、通常、1×108Ω/□〜1×1013Ω/□のいずれかとさせ得る。
なお、ポリスチレン系樹脂粒子は、前記見掛け密度において表面抵抗率が1×109Ω/□〜1×1012Ω/□のいずれかとなるビーズ発泡成形品を得られるように高分子型帯電防止剤の割合を調整することが好ましく、1×109Ω/□〜1×1011Ω/□のいずれかとなるビーズ発泡成形品を得られるように調整することが特に好ましい。
【0023】
本実施形態においては、ブタンやペンタンなどといったビーズ発泡成形法において用いられている発泡剤を適宜含有させてポリスチレン系樹脂粒子に発泡性を付与させることができ、ポリスチレン系樹脂粒子を加熱することによって発泡可能な発泡性ポリスチレン系樹脂粒子とすることができる。
【0024】
また、本実施形態の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子には、さらに、気泡調整剤を含有させることができ、例えば、タルク、マイカ、シリカ、珪藻土、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸バリウム、ガラスビーズなどの無機化合物からなる微粒子を前記気泡調整剤として含有させ得る。
【0025】
なお、本実施形態の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子には、ポリスチレン系樹脂と高分子型帯電防止剤以外の樹脂を実質的に含有させないものではあるが、要すれば、ポリテトラフルオロエチレン樹脂微粒子を、通常、前記気泡調整剤として使用される程度に含有させても良い。
また、この気泡調整剤とは別の添加剤として、極微量であればポリスチレン系樹脂と高分子型帯電防止剤以外の樹脂を含有させても良い。
これらポリスチレン系樹脂と高分子型帯電防止剤以外の樹脂は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子に含まれる全ての樹脂に占める割合が合計で1質量%以下であれば、通常、その影響を無視できるレベルとなり、実質的に含有されていない範囲としてみなすことができる。
ただし、その他の樹脂を含有させるとビーズ発泡成形品を作製する際に予備発泡粒子どうしの接着性を低下させるおそれを有することからその他の樹脂はできるだけ含有させないようにすることが好ましい。
特に、ポリエチレン樹脂などのポリスチレン系樹脂に対して非相溶性を示す樹脂を含有させると、得られるビーズ発泡成形品が発泡樹脂粒子どうしの接着力の低いものとなるおそれを有することからポリスチレン系樹脂に対して非相溶性を示す樹脂は、無視できるレベルにおいて含有させる場合でも合計0.5質量以下とすることが好ましい。
【0026】
また、ここでは詳述しないが、本実施形態の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の形成に用いられるポリスチレン系樹脂組成物には、一般的なビーズ発泡成形用の樹脂粒子の形成に用いられる配合剤を含有させることができ、例えば、耐候剤や老化防止剤といった各種安定剤、滑剤などの加工助剤、スリップ剤、防曇剤、顔料、充填剤などを添加剤として適宜含有させることができる。
【0027】
次いで、このようなポリスチレン系樹脂組成物からなる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を製造する製造方法について説明する。
本実施形態の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の製造方法としては、従来、ビーズ発泡成形用の樹脂粒子を作製するのに用いられている方法を採用することができ、一旦発泡剤以外の材料を溶融混練して該溶融混練物を造粒し発泡剤を含有していないポリスチレン系樹脂粒子を作製した後に該ポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させる含浸法や、発泡剤を含んだポリスチレン系樹脂組成物を溶融混練して該溶融混練物を冷却水中に押し出して造粒する押出法を採用することができる。
この押出法においては、一旦、ストランド(紐)状に押し出した後にペレタイズする方法、水中でホットカットして造粒する所謂水中ホットカット法のいずれをも採用可能である。
【0028】
例えば、前記含浸法においては、撹拌装置を備えたオートクレーブ内に水系分散剤を入れ、その中に発泡剤を含有していないポリスチレン系樹脂粒子を投入し、さらにペンタン等の発泡剤を導入し、加温加圧下で撹拌し、前記ポリスチレン系樹脂粒子に発泡剤を含浸させた後、冷却し、脱水、乾燥させる方法を採用することができる。
【0029】
前記押出法においては、例えば、先端に多数の小孔を有するダイが装着された押出機に、ポリスチレン系樹脂、高分子型帯電防止剤、及び、気泡調整剤などの配合剤を投入し、これらを前記押出機内で加熱溶融させた後で前記発泡剤を添加してさらに溶融混練し、溶融混練物を前記ダイからストランド状に押し出し、これを直ちに冷却水槽の冷却水中に導入して硬化させ、該硬化されたストランドをペレタイザーに送って所定長さのペレット状に切断する方法を採用することができる。
【0030】
また、前記押出法においては、例えば、前記ダイの前方に高速回転刃を設けるとともにこれらを冷却水が循環供給されるカッティング室に配置して、溶融混練物をダイから冷却水中に押し出して硬化させつつ、この硬化物を前記高速回転刃でカットする水中ホットカット法を採用することもできる。
【0031】
なお、作製する発泡性ポリスチレン系樹脂粒子の形状や大きさは、特に限定されるものではないが、形状としては一般的には球状か円柱状とされる。
通常、球状の場合の粒径は、通常、直径0.3〜2.0mm程度であり、円柱状の場合は、直径0.5〜1.5mm、長さ2.0〜8.0mm程度の大きさとされる。
【0032】
このようにして得られる発泡性ポリスチレン系樹脂粒子は、一般的なビーズ発泡成形法における予備発泡工程によって予備発泡粒子とすることができ、引き続き行われる成形型内での二次発泡工程によってビーズ発泡成形品とすることができる。
例えば、前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を常圧下、100℃程度の水蒸気にて加熱する方法を採用して予備発泡粒子を作製することができる(予備発泡工程)。
また、例えば、この予備発泡粒子を成形型に充填し、該成形型内で加熱膨張させて発泡粒子どうしを融着させる型内発泡成形を実施することによりビーズ発泡成形品を得ることができる(二次発泡工程)。
【0033】
このようにして得られる、予備発泡粒子やビーズ発泡成形品においても優れた帯電防止効果が発揮されることになる。
しかも、先に述べたように所定の高分子型帯電防止剤が用いられ、該高分子型帯電防止剤とポリスチレン系樹脂以外の樹脂を実質的に含有していないことから予備発泡工程を行うための装置内において予備発泡粒子が付着してしまったりすることを防止できるとともに型内発泡成形に際して予備発泡粒子どうしが良好に接着して発泡粒子の脱落等を生じ難いビーズ発泡成形品を得ることができる。
【0034】
なお、本発明は、上記例示に限定されるものではなく、ビーズ発泡成形などにおいて公知の技術事項を上記例示の事項に付加したり、ビーズ発泡成形などにおいて公知の技術事項に基づいて上記例示の一部を変更したりすることが可能であることは、説明するまでもなく当然の事柄である。
【実施例】
【0035】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
(使用材料)
評価用のポリスチレン系樹脂粒子の作製にあたっては、以下の材料を用いた。
(A)ポリスチレン系樹脂
A1:東洋スチレン社製、汎用ポリスチレン樹脂(GPPS)、商品名「トーヨースチロールHRM26」、MFR1.4g/10min(JIS K 7210の条件H)
(B)高分子型帯電防止剤
B1:三洋化成工業社製、商品名「ペレスタット300」(ポリエーテル系ブロックとポリオレフィン系ブロックとを有するブロック共重合体)
B2:三井・ディポンポリケミカル社製、商品名「エンティラMK400」(アイオノマー樹脂)
【0037】
(発泡性ポリスチレン系樹脂粒子1の作製)
GPPS(A1:東洋スチレン社製「トーヨースチロールHRM26」)を88質量%、高分子型帯電防止剤(B1:三洋化成工業社製「ペレスタット300」)を12質量%の割合で含む混合樹脂に対して該混合樹脂100質量部に対する割合が0.3質量部となるように微粉末タルクを加え、これを予めタンブラーミキサーにて均一に混合した上で毎時150kgの割合で口径90mm(L/D=35)の単軸押出機へ供給し、該単軸押出機で溶融混練を行った。
この溶融混練に際しては押出機内の最高温度を220℃に設定して前記混合樹脂を溶融させた後、該混合樹脂100質量部に対する割合が6質量部となるように発泡剤(イソペンタン)を押出機の途中より圧入した。
そして、押出機先端部での樹脂温度が180℃となるように冷却しながら溶融樹脂をこの発泡剤圧入箇所よりも押出機の先端側に移動させ、該移動中に溶融樹脂と発泡剤とをさらに混練させた。
次いで、前記押出機の先端に設けられたダイバーター(押出機とダイスの連結部:温度185℃に保持)を通じて発泡剤を含有させた溶融樹脂を造粒用ダイスに搬送し、該造粒用ダイスに円周状に配置した8個の目皿(直径0.6mm、ランド長さ3.0mmのノズルが25個設けられている目皿)を通じて40℃の冷却水が循環するチャンバー内に溶融樹脂を押出させた。
そして、前記目皿の設置箇所に沿って回転する10枚の回転刃を有する高速回転カッターを前記チャンバー側に配置し、前記ノズルから押出され前記冷却水で冷却された溶融樹脂を毎分3000回の回転数で回転させた前記回転刃によって切断し、脱水乾燥して略球形状の発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を作製した。
【0038】
(発泡性ポリスチレン系樹脂粒子2の作製)
高分子型帯電防止剤を三洋化成工業社製「ペレスタット300」(B1)に代えて三井・ディポンポリケミカル社製のアイオノマー樹脂である商品名「エンティラMK400」(B2)としたこと以外は「発泡性ポリスチレン系樹脂粒子1」と同様にして発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を作製した。
【0039】
(発泡性ポリスチレン系樹脂粒子3の作製)
高分子型帯電防止剤(商品名「エンティラMK400」(B2))を12質量%から7質量%に減量したとしたこと以外は「発泡性ポリスチレン系樹脂粒子2」と同様にして発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を作製した。
【0040】
(予備発泡粒子の作製)
前記発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を20℃で1日放置した後、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子100質量部に対して、12−ヒドロキシステアリン酸トリグリセライド0.1質量部を添加、混合して樹脂粒子表面に被覆した後、小型バッチ式予備発泡機(内容積40L)に投入して、撹拌しながら、吹込み圧0.05MPa(ゲージ圧)の水蒸気により加熱して、嵩発泡倍数10倍(嵩密度0.1g/cm3)の予備発泡粒子を作製した。
【0041】
(ビーズ発泡成形品の作製)
前記予備発泡粒子を23℃で1日熟成させた後、400×300×30mmの内部寸法を有する金型を取り付けた自動成形機(積水工機製作所製、ACE−3SP2型)を用いて、下記成形条件で型内成形して発泡倍数10倍(密度0.1g/cm3)のビーズ発泡成形品を作製した。
成形条件(ACE3−SP2)
成形蒸気圧:0.08MPa(ゲージ圧)
金型加熱 :5秒
一方加熱 :15秒
逆一方加熱:5秒
両面加熱 :20秒
水冷 :300秒
設定取出し面圧:0.02MPa
【0042】
(評価方法)
(表面抵抗率)
得られたビーズ発泡成形品に対して、
JIS K 6911:1995「熱硬化性プラスチックー般試験方法」記載の方法により表面抵抗率の値を測定した。
具体的には、一辺が10cm、厚みが5mmとなる平面正方形状の試験片を温度22℃、湿度60%の雰囲気下に24時間放置した後、温度22℃、湿度60%の環境下、試験装置(アドバンテスト社製、デジタル超高抵抗/微少電流計R8340及びレジスティビティ・チェンバR12702A)を使用し、試験片に、約30Nの荷重にて電極を圧着させ500Vの電圧を印加して1分経過後の抵抗値を測定し、次式により算出した。
ρs=π(D+d)/(D−d)×Rs
ただし、
ρs:表面抵抗率(Ω/□)
D:表面の環状電極の内径(cm)(レジスティビティ・チェンバR12702Aでは、7cm)
d:表面電極の内円の外径(cm)(レジスティビティ・チェンバR12702Aでは、5cm)
Rs:表面抵抗(Ω)
また、測定は3回実施し、それぞれの算術平均値を求めた。
【0043】
(融着率)
長さ400mm、幅300mm、厚み30mmの扁平直方体形状の試験体(ビーズ発泡成形品)を作製し、該試験体の表面(400mm×300mmの面)に長辺の中心どうしを結ぶ直線に沿ってカッターナイフで深さ約3mmの切り込み線を入れ、この切り込み線に沿って試験体を手で2分割し、この切り込みを入れた部分以外の破断面において、発泡粒子自体が破断している数(a)と隣接する粒子との界面で破断している粒子の数(b)とを数え、下記式(1)を計算して得られた値を融着率(%)とした。

〔(a)/((a)+(b))〕×100 ・・・式(1)
【0044】
(予備発泡機内の付着性)
予備発泡粒子を作製した後の予備発泡機内での粒子付着状況を目視により観察し、下記基準により評価した。

付着がほとんどない:判定「○」
付着が多く、除去が困難:判定「×」
【0045】
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子1〜3についての以上のような評価結果を、下記表1に示す。
【表1】

【0046】
また、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子1及び発泡性ポリスチレン系樹脂粒子2を予備発泡させた際の予備発泡機内の様子を撮影した写真を図1に示す。
なお図1(a)は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子1を予備発泡させた際の予備発泡機内の様子を撮影したもので、図1(b)は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子2を予備発泡させた際の予備発泡機内の様子を撮影したものである。
この図1(a)に示されているように含有させる高分子型帯電防止剤として分子内にポリエーテルブロックとポリオレフィンブロックとを有するブロック共重合体を採用している発泡性ポリスチレン系樹脂粒子1ではパドル翼の羽根板と内壁面とのごく一部に予備発泡粒子の付着が認められるのみであるが、高分子型帯電防止剤としてアイオノマー樹脂を採用した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子2では、図1(b)に示すように全面的に予備発泡粒子が付着する結果となった。
【0047】
なお、エアを吹き付けて壁面等からの予備発泡粒子の除去を試みたところ、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子1(図1(a))の方では付着している予備発泡粒子の殆どがエアによって吹き飛ばされる結果となったが、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子2(図1(b))の方では同程度のエアの吹き付けでは付着している予備発泡粒子の多くが壁面等に付着した状態のままとなった。
また、アイオノマー樹脂を減量した発泡性ポリスチレン系樹脂粒子3でも、基本的に発泡性ポリスチレン系樹脂粒子2と同じ結果となった。
【0048】
先の表1においては、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子1を用いたビーズ発泡成形品と発泡性ポリスチレン系樹脂粒子2を用いたビーズ発泡成形品との間で表面抵抗率の値に大きな差はなく、むしろ発泡性ポリスチレン系樹脂粒子2を用いたビーズ発泡成形品の方が低い表面抵抗率を示した。
即ち、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子2を用いた予備発泡粒子は、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子1を用いた予備発泡粒子に比べて同程度以上の帯電防止性能を有しているものと認められることから、図に示された現象は、静電気的な作用の違いによるものではないと認められる。
【0049】
以上のようなことからも本発明によればビーズ発泡成形に用いられるのに適したポリスチレン系樹脂粒子が提供されるとともに付着性の低い予備発泡粒子、並びに、製造容易なビーズ発泡成形品が提供され得ることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビーズ発泡成形に用いられるポリスチレン系樹脂粒子であって、
高分子型帯電防止剤、及びポリスチレン系樹脂以外の樹脂を実質上含有しておらず、前記高分子型帯電防止剤が分子内にポリエーテルブロックとポリオレフィンブロックとを有するブロック共重合体であることを特徴とするポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項2】
加熱発泡させ得るように発泡剤が含有されている発泡性ポリスチレン系樹脂粒子である請求項1記載のポリスチレン系樹脂粒子。
【請求項3】
発泡剤を含有するポリスチレン系樹脂粒子が予備発泡されてなり、ビーズ発泡成形に用いられる予備発泡粒子であって、
請求項2記載のポリスチレン系樹脂粒子が予備発泡されてなることを特徴とする予備発泡粒子。
【請求項4】
発泡剤を含有するポリスチレン系樹脂粒子を予備発泡させた予備発泡粒子が型内発泡成形されてなるビーズ発泡成形品であって、
請求項3記載の予備発泡粒子が型内発泡成形されてなることを特徴とするビーズ発泡成形品。

【図1】
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【公開番号】特開2013−60527(P2013−60527A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199766(P2011−199766)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】