説明

ポリスルホン成形体の処理方法および成形体

【課題】ポリスルホン成形体の黄色味を低減し、透明性(透過率)を向上させることができるポリスルホン成形体の処理方法、および該ポリスルホン成形体の処理方法により得られる成形体の提供。
【解決手段】ポリスルホン成形体の処理方法は、ポリスルホン成形体に可視光を照射強度50W/m以上で照射することを特徴とする。本発明のポリスルホン成形体の処理方法において、ポリスルホン成形体に、波長360nm未満の紫外光を照射せずに、可視光を前記照射強度で照射することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリスルホン成形体の処理方法および成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリスルホンは、高いガラス転移温度(Tg)を示すことから高い耐熱性を示すと共に、低温から高温までの幅広い温度領域において、寸法安定性および機械強度に優れた材料である。また、耐薬品性、難燃性も優れることからリレー部品、コイルボビン、スイッチ、IC(Integrated Circuit)ソケット、コネクター、ヒューズケース等の電気・電子部品、各種OA(Office Automation)機器部品、各種自動車部品から、耐熱水性利用分野、医療分野、耐熱塗料、機能性分離膜、航空機用途まで幅広く使用されている。
【0003】
ポリスルホンが多様の用途に使用される理由としては、上記特徴に加えて、結晶性材料とは異なり、透明性を示すことが挙げられる。
しかし、ポリスルホンは透明でありながら、琥珀色を帯びている。そこで、ポリスルホン成形体の透明性(透過率)を向上させるために、フィルム化(薄膜化)を行ったり(特許文献1参照)、ポリスルホンに有機リン含有化合物と、着色剤または蛍光増白剤を添加すること(特許文献2参照)が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−324747号公報
【特許文献2】特表2005−525575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のようにポリスルホンををフィルム化して厚みを薄くすると、外観および透明性の問題は解決できるが、機械強度が低下してしまう。成形体の厚みを厚くすると黄色味が増加するため、適用できる用途が制限されてしまうことが問題となっていた。また、特許文献2に記載の技術で得られる成形体の透過率は充分ではなく、さらなる透過率(透明性)の向上が求められている。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ポリスルホン成形体の黄色味を低減し、透明性(透過率)を向上させることができるポリスルホン成形体の処理方法、および該ポリスルホン成形体の処理方法により得られる成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明のポリスルホン成形体の処理方法は、ポリスルホン成形体に可視光を照射強度50W/m以上で照射することを特徴とする。
本発明のポリスルホン成形体の処理方法において、ポリスルホン成形体に、波長360nm未満の紫外光を照射せずに、可視光を前記照射強度で照射することが好ましい。
また、本発明の成形体は、上記いずれかの本発明のポリスルホン成形体の処理方法により得られることを特徴とする。
なお、本発明において、可視光とはJIS Z 8120に規定された可視光であり、波長360nm以上830nm以下の光(電磁波)を意味する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ポリスルホン成形体の黄色味を低減し、透明性(透過率)を向上させることができるポリスルホン成形体の処理方法、および該ポリスルホン成形体の処理方法により得られる成形体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施例1〜3および比較例1の透過率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリスルホン成形体の処理方法は、ポリスルホン成形体に可視光を照射強度50W/m以上で照射することを特徴とする。
本発明の処理方法により処理されるポリスルホン成形体は、ポリスルホンを含有してなるポリスルホン組成物を成形することにより得られる。
【0011】
(ポリスルホン成形体)
本発明の処理方法に適用されるポリスルホン成形体を構成するポリスルホンは、典型的には、2価の芳香族基(芳香族化合物から、その芳香環に結合した水素原子を2個除いてなる残基)とスルホニル基(−SO−)と酸素原子とを含む繰返し単位を有する樹脂である。ポリスルホンは、耐熱性や耐薬品性の点から、下記一般式(1)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(1)」ということがある。)を有することが好ましく、さらに、下記一般式(2)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(2)」ということがある。)や、下記一般式(3)で表される繰返し単位(以下、「繰返し単位(3)」ということがある。)等の他の繰返し単位を1種以上有していてもよい。
【0012】
(1)−Ph−SO−Ph−O−
(式中、Ph及びPhは、それぞれ独立に、フェニレン基を表し;前記フェニレン基中の水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。)
【0013】
(2)−Ph−R−Ph−O−
(式中、Ph及びPhは、それぞれ独立に、フェニレン基を表し;Rは、アルキリデン基、酸素原子又は硫黄原子を表し;前記フェニレン基中の水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよい。)
【0014】
(3)−(Ph)−O−
(式中、Phは、フェニレン基を表し;nは、1〜3の整数を表し;前記フェニレン基にある水素原子は、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていてもよく;nが2以上である場合、複数存在するPhは、互いに同一であっても異なっていてもよい。)
【0015】
Ph〜Phのいずれかで表されるフェニレン基は、p−フェニレン基、m−フェニレン基、o−フェニレン基のいずれであってもよいが、p−フェニレン基であることが好ましい。
前記フェニレン基中の水素原子を置換していてもよいアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−ノニル基及びn−デシル基が挙げられ、その炭素数は、1〜10であることが好ましい。
前記フェニレン基中の水素原子を置換していてもよいアリール基の例としては、フェニル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、1−ナフチル基及び2−ナフチル基が挙げられ、その炭素数は、6〜20であることが好ましい。
前記フェニレン基中の水素原子がこれらの基で置換されている場合、その数は、前記フェニレン基毎に、それぞれ独立に、2個以下であることが好ましく、1個であることがより好ましい。
【0016】
Rであるアルキリデン基の例としては、メチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基及び1−ブチリデン基が挙げられ、その炭素数は、1〜5であることが好ましい。
【0017】
ポリスルホンは、これを構成する全繰返し単位の合計量に対して、繰返し単位(1)を50モル%以上有することが好ましく、80モル%以上有することがより好ましく、繰返し単位として実質的に繰返し単位(1)のみを有することがさらに好ましい。なお、ポリスルホンは、繰返し単位(1)〜(3)を、それぞれ独立に、2種以上有してもよい。
【0018】
ポリスルホンは、これを構成する繰返し単位に対応するジハロゲノスルホン化合物とジヒドロキシ化合物とを重縮合させることにより、製造することができる。
例えば、繰返し単位(1)を有するポリスルホンは、ジハロゲノスルホン化合物として下記一般式(4)で表される化合物(以下、「化合物(4)」ということがある。)を用い、ジヒドロキシ化合物として下記一般式(5)で表される化合物(以下、「化合物(5)」ということがある。)を用いることにより、製造することができる。
また、繰返し単位(1)と繰返し単位(2)とを有するポリスルホンは、ジハロゲノスルホン化合物として化合物(4)を用い、ジヒドロキシ化合物として下記一般式(6)で表される化合物(以下、「化合物(6)」ということがある。)を用いることにより、製造することができる。
また、繰返し単位(1)と繰返し単位(3)とを有するポリスルホンは、ジハロゲノスルホン化合物として化合物(4)を用い、ジヒドロキシ化合物として下記一般式(7)で表される化合物(以下、「化合物(7)」ということがある。)を用いることにより、製造することができる。
【0019】
(4)X−Ph−SO−Ph−X
(式中、Xは及びXは、それぞれ独立に、ハロゲン原子を表し;Ph及びPhは、前記と同義である。)
【0020】
(5)HO−Ph−SO−Ph−OH
(式中、Ph及びPhは、前記と同義である。)
【0021】
(6)HO−Ph−R−Ph−OH
(式中、Ph、Ph及びRは、前記と同義である。)
【0022】
(7)HO−(Ph)−OH
(式中、Ph及びnは、前記と同義である。)
【0023】
ポリスルホンを製造する重縮合は、炭酸のアルカリ金属塩を用いて、溶媒中で行うことが好ましい。炭酸のアルカリ金属塩は、正塩である炭酸アルカリであってもよいし、酸性塩である重炭酸アルカリ(炭酸水素アルカリ)であってもよいし、両者の混合物であってもよい。炭酸アルカリとしては、炭酸ナトリウムや炭酸カリウムが好ましく用いられ、重炭酸アルカリとしては、重炭酸ナトリウムや重炭酸カリウムが好ましく用いられる。
ポリスルホンを製造する重縮合の溶媒としては、ジメチルスルホキシド、1−メチル−2−ピロリドン、スルホラン(1,1−ジオキソチラン)、1,3-ジメチル−2−イミダゾリジノン、1,3−ジエチル−2−イミダゾリジノン、ジメチルスルホン、ジエチルスルホン、ジイソプロピルスルホン、ジフェニルスルホン等の有機極性溶媒が好ましく用いられる。
【0024】
ポリスルホンは、その還元粘度が、好ましくは0.3dL/g以上、より好ましくは0.4dL/g以上0.6dL/g以下、さらに好ましくは0.45dL/g以上0.55dL/g以下である。ポリスルホンの還元粘度が高いほど、耐熱性や強度・剛性が向上し易いが、あまり高いと、溶融温度や溶融粘度が高くなり易く、その成形に必要な温度が高くなり易い。
【0025】
ポリスルホンを製造する重縮合において、仮に副反応が生じなければ、(1)ジハロゲノスルホン化合物とジヒドロキシ化合物とのモル比が1:1に近い、(2)炭酸のアルカリ金属塩の使用量が多い、(3)重縮合温度が高い、(4)重縮合時間が長い、という反応条件であるほど、得られるポリスルホンの重合度が高くなり易く、還元粘度が高くなり易い。しかし、実際は、副生する水酸化アルカリ(アルカリ金属の水酸化物)等により、ハロゲノ基のヒドロキシル基への置換反応や解重合等の副反応が生じ、この副反応により、得られるポリスルホンの重合度が低下し易く、還元粘度が低下し易い。そのため、ポリスルホンを製造する重縮合においては、この副反応の度合いも考慮して、所望の還元粘度を有するポリスルホンが得られるように、ジハロゲノスルホン化合物とジヒドロキシ化合物とのモル比、炭酸のアルカリ金属塩の使用量、重縮合温度及び重縮合時間を調整することが好ましい。
【0026】
本発明の処理方法により処理されるポリスルホン成形体において、その成形に用いられるポリスルホン組成物は、上記のようなポリスルホンのみを含有していてもよく、透明性を損なわない範囲で、上記のポリスルホンに加えて、添加剤、ポリスルホン以外の樹脂等の他の成分を1種以上含有していてもよい。
【0027】
ポリスルホン組成物が含有していてもよい添加剤の例としては、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、界面活性剤、難燃剤及び着色剤が挙げられる。
添加剤の配合量は、ポリスルホン100質量部に対して、好ましくは0質量部以上5質量部以下である。
【0028】
ポリスルホン組成物が含有していてもよいポリスルホン以外の樹脂の例としては、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド等のポリスルホン以外の熱可塑性樹脂;及びフェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
ポリスルホン以外の樹脂の配合量は、ポリスルホン100質量部に対して、好ましくは0質量部以上20質量部以下である。
【0029】
ポリスルホン組成物は、ポリスルホン及び必要に応じて用いられる他の成分を、押出機を用いて溶融混練し、ペレット状に押し出すことにより調製することが好ましい。押出機としては、シリンダーと、シリンダー内に配置された1本以上のスクリュウと、シリンダーに設けられた1箇所以上の供給口とを有するものが、好ましく用いられ、さらにシリンダーに1箇所以上のベント部が設けられたものが、より好ましく用いられる。
【0030】
こうして得られるポリスルホン組成物を成形することにより、本発明の処理方法により処理されるポリスルホン成形体を得ることができる。
ポリスルホン組成物を成形してポリスルホン成形体とする成形法としては、溶融成形法が好ましく、その例としては、射出成形法、Tダイ法やインフレーション法等の押出成形法、圧縮成形法、ブロー成形法、真空成形法及びプレス成形が挙げられる。中でも射出成形法が好ましい。
【0031】
(ポリスルホン成形体の処理方法)
次に、本発明のポリスルホン成形体の処理方法について説明する。
まず、上述したポリスルホン成形体を準備し、光源との間に、一定の距離を設けたところに該ポリスルホン成形体を設置する。次に、前記光源から、ポリスルホン成形体に向けて可視光を照射する。これにより、ポリスルホン成形体のうち可視光が照射された部位の黄色味を低減して、成形体の透明性(透過率)を向上させることができる。
【0032】
本発明の処理方法において照射する可視光は、波長360以上830nm以下の光(電磁波)である。本発明の処理方法において、ポリスルホン成形体に照射する光は、可視光領域以外の波長領域の光(電磁波)を含んでいてもよいが、波長360nm未満の紫外光を照射せずに、波長360nm以上830nm以下の可視光のみをポリスルホン成形体に照射することが好ましい。波長280nm以上360nm未満の紫外光を照射すると、ポリスルホン成形体の琥珀色が増長されるため、波長360nm以上830nm以下の可視光のみをポリスルホン成形体に照射することが好ましい。このように可視光のみを照射することにより、ポリスルホン成形体の黄色味をより効果的に低減して、透明性をさらに向上させることができる。
【0033】
ポリスルホン成形体の処理方法に使用される光源としては、可視光を放射可能なものであれば従来公知の光源を使用でき、例えばキセノンランプ、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、蛍光灯、メタルハライドランプなどを使用することができる。
波長360nm未満の紫外光を照射せずに、波長360nm以上830nm以下の可視光のみをポリスルホン成形体に照射する場合は、これらの光源に紫外線カット材を組み合わせて照射することが好ましい。紫外線カット材としては、波長360nm未満の光をカットする紫外線カットガラス又は紫外光カットフィルターが使用される。紫外線カット材はポリスルホン成形体と光源との間に設けても良いし、ポリスルホン成形体に直接重ねてもよい。
【0034】
ポリスルホン成形体に照射する可視光の照射強度は、50W/m以上であり、150W/m以上であることがより好ましい。このような照射強度で光照射することにより、ポリスルホン成形体内部にまで光を浸透させることができる。照射強度が50W/m未満では照射強度が弱く、ポリスルホン成形体内部に光が浸透しないため、透過率(透明性)を上げる効果が得られない。照射強度の上限は特に限定されないが、10kW/m以上だと照射強度が強すぎるために、ポリスルホン成形体表面を劣化させる恐れがあり、好ましくない。
なお、透過率についてはJIS K 7105の全光線透過率測定法に準拠し、可視光の照射強度はスペクトロメーターを使用して測定できる。
【0035】
ポリスルホン成形体への可視光の照射エネルギーは20MJ/m以上が好ましい。照射エネルギーを20MJ/m以上とすることで、透過率をより向上させることができる。そして、照射エネルギーを50MJ/m以上にすることにより、透過率がより上昇し、さらに好ましい。照射エネルギーが200MJ/m以上になると透過率の上昇効果は少なくなる。
【0036】
ポリスルホン成形体と光源との距離は、使用する光源の種類により、適宜調整すればよい。また、ポリスルホン成形体への可視光照射時の温度は特に限定されず、例えば、0〜 100℃の温度範囲で行うことができる。
【0037】
本発明のポリスルホン成形体の処理方法は、ポリスルホン成形体に可視光を照射強度50W/m以上で照射することにより、該ポリスルホン成形体の黄色味を低減させて、透明性(透過率)の高い成形体とすることができる。
【0038】
(成形体)
本発明の成形体は、上述した本発明のポリスルホン成形体の処理方法により得られる。そのため、優れた透明性(透過率)を有する。
本発明の成形体は、JIS Z 8722に準拠して測定した厚さ3mmにおける黄色度(YI)が20以下であることが好ましい。本発明の成形体は、黄色味が抑えられているため、高い透明性を保ちつつ厚型化できるため、幅広い用途の成形体として適用できる。
【0039】
本発明の成形体は、例えば、コネクター、ソケット、リレー部品、コイルボビン、光ピックアップ、発振子、プリント配線板、コンピュータ関連部品等の電気・電子部品;ICトレー、ウエハーキャリヤー等の半導体製造プロセス関連部品;VTR、テレビ、アイロン、エアコン、ステレオ、掃除機、冷蔵庫、炊飯器、照明器具等の家庭電気製品部品;ランプリフレクター、ランプホルダー等の照明器具部品;コンパクトディスク、レーザーディスク(登録商標)、スピーカー等の音響製品部品;光ケーブル用フェルール、電話機部品、ファクシミリ部品、モデム等の通信機器部品;分離爪、ヒータホルダー等の複写機関連部品;インペラー、ファン、歯車、ギヤ、軸受け、モーター部品及びケース等の機械部品;自動車用機構部品;エンジン部品、エンジンルーム内部品、電装部品、内装部品等の自動車部品;マイクロ波調理用鍋、耐熱食器等の調理用器具;床材、壁材などの断熱、防音用材料、梁、柱などの支持材料、屋根材等の建築資材または土木建築用材料;航空機部品、宇宙機部品、原子炉などの放射線施設部材、海洋施設部材、洗浄用治具、光学機器部品、バルブ類、パイプ類、ノズル類、フィルター類、膜、医療用機器部品及び医療用材料、センサー類部品、サニタリー備品、スポーツ用品、レジャー用品などに適用可能である。
【実施例】
【0040】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
ポリスルホン(住友化学株式会社製、スミカエクセル4100G、還元粘度0.48dL/g)を、射出成形機(日精樹脂工業株式会社製、PS40E5ASE型)を用いて、シリンダー温度340℃で、鏡面加工した金型内に射出し、64mm×64mm×3mmの反射板の試験片に成形した。
なお、ポリスルホンの還元粘度は次の方法により測定した。
【0042】
〔ポリスルホンの還元粘度の測定〕
ポリスルホン約1gをN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させて、その容量を1dLとし、この溶液の粘度(η)を、オストワルド型粘度管を用いて、25℃で測定した。また、溶媒であるN,N−ジメチルホルムアミドの粘度(η0)を、オストワルド型粘度管を用いて、25℃で測定した。
溶液の粘度(η)と前記溶媒の粘度(η0)から、比粘性率((η−η0)/η0)を求め、この比粘性率を、前記溶液の濃度(約1g/dL)で割ることにより、ポリスルホンの還元粘度(dL/g)を求めた。
【0043】
次に、作製した試験片に対し、キセノンウェザーメーター(スガ試験機株式会社製、SC−700WN、光源:キセノンランプ7kW、インナーフィルター:石英、アウターフィルター:#275)を用いて、光源から200mm離した位置に試験片をセットし、UVカットガラス(ショット社製、厚さ3mm)を介して、照射強度160W/m、温度65℃及び相対湿度50%の条件で、波長380nm〜800nmの光を50時間照射した。照射エネルギーの総計は28.8MJ/mであった。
【0044】
(実施例2)
照射時間を100時間に変更した以外は、実施例1と同様にして試験片の作製および試験片への光照射を行った。照射エネルギーの総計は57.6MJ/mであった。
(実施例3)
照射時間を200時間に変更した以外は、実施例1と同様にして試験片の作製および試験片への光照射を行った。照射エネルギーの総計は115.2MJ/mであった。
(比較例1)
実施例1と同様にして試験片の作製を行い、光照射は行わなかった。
【0045】
実施例1〜3および比較例1の各試験片について、JIS K 7105の全光線透過率測定法に準拠し、コニカミノルタ製のSPECTROPHOTOMETER CM−3600dを用いて、波長360〜740nmの光に対する透過率の測定を行った。結果を表1および図1に示す。
【0046】
【表1】

【0047】
表1および図1の結果より、可視光を照射強度50W/m以上で照射する処理を行った実施例1〜3の試験片では、光照射処理を行わなかった比較例1の試験片と比較して360nm〜740nmの全波長領域において透過率が向上しており、透明性が高くなっていた。
【0048】
また、光照射前の試験片について、側色色差計(日本電色工業株式会社製、ZE−2000)を用いて、透過光の黄色度(YI)を測定したところ、YI=22であった。
実施例1〜3の試験片は、可視光を照射強度50W/m以上で照射する処理を行うことにより、黄色味が低減していたことを目視で確認した。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、電気・電子部品、光学部品、半導体製造プロセス関連部品、家庭電気製品部品、照明器具部品、音響製品部品、通信機器部品、印刷機関連部品、自動車部品、調理用器具、土木建築用材料、宇宙航空機器用部品、医療用機器部品、スポーツ用品、レジャー用品などの各種成形体に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスルホン成形体に可視光を照射強度50W/m以上で照射することを特徴とするポリスルホン成形体の処理方法。
【請求項2】
ポリスルホン成形体に、波長360nm未満の紫外光を照射せずに、可視光を前記照射強度で照射することを特徴とする請求項1に記載のポリスルホン成形体の処理方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載のポリスルホン成形体の処理方法により得られることを特徴とする成形体。

【図1】
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