説明

ポリチオフェンとエーテル含有ポリマーとを含む分散液から形成された導電性膜

【課題】水分散液、水分散液の製造法および水分散液から形成された層を用いたデバイスを提供する。
【解決手段】ポリチエノチオフェンなどの少なくとも1つの導電性ポリマー、少なくとも1つのエーテル含有ポリマーおよび任意に、少なくとも1つのコロイド形成性ポリマー酸および非フッ素化ポリマー酸を含む水分散液、また該分散液から形成された層を用いてたデバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2008年9月29出願の仮出願第61/100979号の利益を主張する。前記出願の開示は参照により本明細書に組み込まれる。
本発明は、導電性ポリマーを含む水分散液からキャストした導電性膜の製造に関する。
特に、本発明は、少なくとも1つのエーテル含有ポリマーと任意に少なくとも1つのフッ素化、コロイド形成性ポリマー酸および少なくとも1つの非フッ素化ポリマー酸の存在下に合成した導電性ポリマー分散液を対象とする。
【背景技術】
【0002】
導電性ポリマーは、発光ディスプレーで用いるエレクトロルミネセント(EL)素子の開発を含めて様々な有機電子デバイスに用いられてきた。導電性ポリマーを含んでいる有機発光ダイオード(OLED)などのELデバイスに関して、このようなデバイスは一般に次の構成を有している。
アノード/正孔注入層/EL層/カソード
【0003】
アノードは、EL層に用いられる例えばインジウム/酸化スズ(ITO)などの他の充填されたπバンドの半導体物質に正孔を注入する能力を有する任意の材料である。アノードは、任意にガラス又はプラスチックの基材上に支持されている。EL層は、典型的には共役半導体ポリマー、例えばポリ(パラフェニレンビニレン)、ポリフルオレン、スピロポリフルオレン又は他のELポリマー物質、小分子蛍光染料、例えば8-ヒドロシキノリンアルミニウム(Aq3)、小分子りん光染料、例えばfacトリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)(ホストマトリックスにドープ)、デンドリマー、りん光染料でグラフト化した共役ポリマー、上記材料を含むブレンド、及び組み合わせを含む半導体の共役有機材料である。また、EL層は、無機量子ドット又は半導体有機物質と無機量子ドットとのブレンであり得る。カソードは、典型的にはEL層の半導体有機物質の他の空のπバンドに電子を注入する能力がある任意の物質(例えば、Ca又はBa)である。
【0004】
正孔注入層(HIL)は、典型的には導電性ポリマーであり且つアノードからのEL層内の半導体有機物質中への正孔の注入を促進する。また、正孔注入層は、正孔輸送層、正孔注入/輸送層、又はアノード緩衝層と言われ得て、若しくは二重層アノードの一部と見なされ得る。正孔注入層として用いられる典型的な導電性ポリマーとしては、ポリアニリンおよびポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)などのポリジオキシチオフェンが挙げられる。これらの物質は、参照によって全体として本明細書に組み込まれる例えば「ポリチオフェン分散液、その製造およびその使用」という名称の米国特許第5300575号明細書に記載のポリ(スチレンスルホン酸)(PSSA)などの水溶性ポリマー酸の存在下に水溶液中でアニリン又はジオキシチオフェンを重合することによって調製し得る。周知のPEDOT/PSSA物質は、H.C.Starck社(独、Leverkusen)から市販されているBaytron(登録商標)-Pである。
【0005】
また、導電性ポリマーは、放射エネルギーを電気エネルギーに変換する光起電装置に用いられてきた。このような装置は一般に次の構成を有している。
正極/正孔抜き取り層/集光層/負極
【0006】
正極と負極は上記のELデバイスのアノードおよびカソードに用いられる物質から選択され得る。正孔抜き取り層は、典型的には正極での回収のために集光層から正孔の抜き取りを促進する導電性ポリマーである。集光層は、典型的には界面で光放射を吸収しそして分離した電荷を発生させ得る有機又は無機の半導体からなる。
【0007】
水溶性高分子スルホン酸を用いて合成された水性導電性ポリマーは望ましくない低pH水準を有している。低pH水準は、そのような正孔注入層を含有するELデバイスの応力寿命の低下の一因となり得て、そしてデバイス内の腐食の一因となり得る。それ故、この技術分野では改良された特性を有するものから調製される組成物および正孔注入層が必要である。
【0008】
また、導電性ポリマーは、薄膜電界効果トランジスタなどの電子デバイス用の電極としての実用性を有している。このようなトランジスタにおいては、ソース電極とドレイン電極との間に有機半導体膜が存在する。電極用途に有用であるためには、導電性ポリマーおよび導電性ポリマーを分散又は溶解するための液体は、導電性ポリマーあるいは半導電性ポリマーのいずれかの再溶解を避けるために半導電性ポリマーおよび半導電性ポリマー用の溶媒と混合可能である必要がある。導電性ポリマーから作られた電極の導電性は10S/cm(Sはオームの逆数である。)より大でなければならない。しかしながら、ポリマー酸を用いて作られた導電性ポリチオフェンは、典型的には約10−3S/cm以下の範囲の導電性を与える。導電性を高めるためには、ポリマーに導電性添加剤が添加され得る。しかしながら、そのような添加剤の存在は導電性ポリチオフェンの加工性に悪影響を及ぼし得る。従って、この技術分野では良好な加工性と導電性が向上した改良された導電性ポリマーが必要である。
【0009】
ダブルデバイス又は二層デバイスの限られた寿命に起因して、デバイスの性能、特に寿命を向上させるために複雑なデバイス構造が導入されてきた。例えば、「中間層」として知られる正孔輸送および電子ブロッキング物質の薄層がデバイスの性能および寿命の向上に有効であることが示されてきた。ケンブリッジ ディスプレー テクノロジーは、参照によって全体として本明細書に組み込まれるOLED 2004年会議の[David Fyfe,「Advances in P−OLED Technology-Overcoming the Hurdles Fast」](カリフォルニア州、サンジェゴ、2004年11月15〜17日)で中間層を用いると寿命が向上することを報告した。ソーらは、PEDOT:PSSA正孔注入層と緑色ポリフルオレン発光層との間に架橋性正孔輸送層(XL-HTL)を挿入することにより効率が2倍そして寿命が7倍向上することを報告した(参照によって全体として本明細書に組み込まれるWencheng Su,Dmitry Poplavsky,Franky So,Howard Clearfield,Dean Welsh,及びWeishi Wu,「Trilayer Polymer OLED Devices for Passive Matrix Applications」、SID 05ダイジェスト、1871−1873頁)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
それ故、必要なものは、向上した分散性を有する導電性ポリマーの製造法および製造された導電性ポリマーである。
本発明の目的の1つは、従来の分散液に関連した問題を解決することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ポリアニリン、ポリピロール又はポリチオフェン[例えば、特にポリ(チエノ[3,4-b]チオフェン)(PTT)、PEDOTやそれらの混合物]およびそれらの誘導体あるいはそれらの組み合わせなどの少なくとも1つの導電性ポリマー、少なくとも1つのエーテル含有ポリマーおよび任意に少なくとも1つのコロイド形成性フッ素化ポリマー酸を含む水分散液を提供するものである。
【0012】
どのような理論又は説明に縛られることは望まないが、エーテル含有ポリマーは分散剤として機能し得ると考えられる。分散液への少なくとも1つのエーテル含有ポリマーを比較的少量添加することが、その結果得られる少なくとも1つの導電性ポリマーを含有する分散液からキャストされた膜の特性を有意に向上させ得ることは驚くべき発見であった。
本発明の組成物は、特に他の応用の中で、例えば有機発光ダイオード(OLED)などの種々の有機電子デバイスにおける正孔注入層として、例えば有機光起電装置(OPVD)などの種々の有機光電子デバイスにおける正孔抜き取り層として、そしてソース電極/ドレイン電極と半導体チャネル材料との間の電荷注入層として、有用である。
【0013】
1つの態様によれば、本発明は、本発明の組成物の正孔注入層を含んでいるエレクトロルミネセント素子を含む有機電子デバイスに関する。本発明の態様による導電性ポリマー(例えば、ポリチエノチオフェン)分散液で形成される層はアニーリング処理の間の抵抗安定性を含む。加えて、本発明は、容認可能な寿命性能を有する二層デバイスの製造を可能とする。「寿命」とは、連続的に操作されるデバイス(例えば、PLED)の初期輝度が対象とする適用に対して容認可能な初期輝度のある割合(例えば、初期輝度の50%)に低減するのに要した時間の長さを意味する。
【0014】
他の態様によれば、本発明は、例えばポリチエノチオフェンと少なくとも1つのエーテル含有ポリマーと任意に少なくとも1つのフッ素化コロイド形成性ポリマー酸とを含む水分散液の製造法に関する。少なくとも1つの導電性ポリマーおよび少なくとも1つのエーテル含有ポリマーを含む水分散液の製造法は以下の:
(a) 少なくとも1つの酸化剤および/又は少なくとも1つの触媒を含む水溶液を提供すること、
(b) 適した量のエーテル含有ポリマーを含む水分散液を提供すること、
(c) 酸化剤および/又は触媒の水溶液とエーテル含有ポリマーの水分散液とを混ぜ合わせること、
(d) 導電性ポリマーのモノマー又は前駆体を(c)工程の混ぜ合わせた水分散液に加えること、
(e) 分散液を含むモノマー又は前駆体を重合させてポリマー分散液を形成すること、
(f) ポリマー分散液をイオン交換樹脂と接触させて不純物を除くこと、そして
(g) 必要に応じて、より安定な抵抗率を得るために十分高いpHまでポリマー分散液のpHを調整すること
を含む。
【0015】
あるいは、少なくとも1つの導電性ポリマーおよび少なくとも1つのエーテル含有ポリマーを含む水分散液の製造法は、以下の:
(a) 少なくとも1つの酸化剤および/又は少なくとも1つの触媒を含む水溶液を提供すること、
(b) 適量のエーテル含有ポリマーを含む水分散液を提供すること、
(c) 工程(b)のエーテル含有ポリマーの水分散液を導電性ポリマーのモノマー又は前駆体に加えること、
(d) (a)工程の酸化剤および/又は触媒の溶液を(c)工程の混ぜ合わせた混合物に加えること、
(e) 分散液を含むモノマー又は前駆体を重合させてポリマー分散液を形成すること、
(f) ポリマー分散液をイオン交換樹脂と接触させて不純物を除くこと、そして
(g) 必要に応じて、より望ましい特性を与えるためにポリマー分散液のpHを十分高くまで調整すること
を含む。
【0016】
さらなる態様において、特に有機溶媒、界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1つなどの膜形成添加剤が、導電性ポリマー分散液の塗布又は印刷特性を向上させるために分散液に添加され得る。任意の適した膜形成添加剤が用いられ得るが、そのような添加剤の例は、有機溶媒、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールプロピルエーテル、メチルエチルケトンなどの有機溶媒からなる群から選択される少なくとも1つを含む。膜形成添加剤の量は分散液の約5〜約70wt%を含み得る。
【0017】
さらに、他の態様において、対イオン、例えば、Na、K、NH、Cs、Mg2+、Li、Ca2+が、例えば、分散液および膜の特性、特に、例えばpH水準、イオン含量、ドーピングレベル、仕事関数などを改善するために分散液に添加され得る。対イオンの任意の適した供給源が用いられ得るが、適した供給源の例はNaおよびNHからなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。対イオン供給源の量は分散液の約0.05〜約5wt%を含み得る。
【0018】
他の態様において、イオン化合物等の添加剤が、例えば、分散液および膜の特性、特に他の利益の中で、例えばpH水準、イオン含量、ドーピングレベル、仕事関数などを改善するために分散液に添加され得る。適した供給源は硫酸グアニジン、硫酸アンモニウム、および硫酸ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。
【0019】
本発明の分散液は適した任意の基材上に塗布され、そして乾燥され得る。必要であれば、塗布された基材は、望ましい導電性、デバイス性能および寿命性能を与えるために十分な条件で加熱され得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の1つの態様による正孔注入層を含む電子デバイスの立断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、水分散液、その分散液の製造方法および適用方法、及びその分散液から得られた膜を含むデバイスに関する。本発明の分散液は、ポリアニリン、ポリピロール又はポリチオフェンなどの少なくとも1つの導電性ポリマーとそれらの誘導体あるいはその組み合わせ、少なくとも1つのエーテル含有ポリマーおよび任意に少なくとも1つのコロイド形成性ポリマー酸(例えば、少なくとも部分的にフッ素化されたイオン交換樹脂)を含み得る。本明細書で用いられる場合、「分散液」という用語は微小なコロイド粒子の懸濁液を含む液体媒体を示す。本発明に基づいて、「液体媒体」は典型的には水性液体、例えば脱イオン水である。本明細書で用いられる場合、「水性」という用語は有意な割合の水を有する液体を示しそして1つの態様においてそれは少なくとも約40質量%の水である。本明細書で用いられる場合、「エーテル含有ポリマー」とは一般式(1)
−Q−R−
(式中、Qは酸素原子又は硫黄原子であり、そしてRは酸性型又は中性型の芳香族あるいは複素環式芳香族又は脂肪族化合物の2価の基であり、そしてRは酸性型又は中性型の少なくとも1つのスルホン酸、ホスホン酸、ボロン酸、又はカルボン酸を含む。)
の繰り返し単位を含むポリマーを意味する。本明細書で用いられる場合、「コロイド」という用語は液体媒体中に懸濁した約1μm以下(例えば、約20nm〜約800nmそして通常は約30nm〜約500nm)の粒径を有する微小粒子を示す。本明細書で用いられる場合、「コロイド形成性」という用語は水溶液に分散された場合には微小粒子を形成する物質を意味し、すなわち「コロイド形成性」ポリマー酸は水可溶性ではない。本明細書で用いられる場合、「含む」、「含有する」、「有する」、「有している」およびそれらの任意の他の変形は非排除の含有を示す。例えば、複数の要素の一覧を含むプロセス、方法、製品又は装置は、それらの要素に必ずしも限定されず、明示的に記入されていない又はそのようなプロセス、方法、製品又は装置に本来備わっている他の要素を含み得る。さらに、反対に、明示的に記述されていなければ、”又は”は、含むあるいは排除ではないことを示す。例えば、条件A又はBは、以下の任意の1つによって満足される:Aは正しい(又は存在する)そしてBは誤りである(存在しない)、Aは誤りである(存在しない)そしてBは正しい(存在する)。
【0022】
同様に、”1つ”の使用は本発明の複数の要素および複数の成分を記載するために用いられる。これは単に便利さのためそして本発明について一般的な意味を与えるためになされる。この記載は1つ又は少なくとも1つを含んで解釈されるべきでありそして同様に単数形は別なふうに意味されているということが明らかでなければ複数形を含んでいる。
【0023】
本発明で用いられ得る導電性ポリマーは、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリチエノチオフェン/ポリスチレンスルホン酸、ポリジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸、ポリアニリン-ポリマー酸-コロイド、PEDOT、PEDOT-ポリマー酸-コロイドおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。同様に、導電性ポリマーは、セレン含有ポリマー、例えば参照することにより本明細書に組み込まれる米国特許出願第2009−0014693号および同第2009−0018348号に開示されるものを含み得る。
【0024】
導電性ポリマーは、複素環式縮合還モノマー単位の重合単位を含み得る。導電性ポリマーは、ポリアニリン、ポリピロール又はポリチオフェン又はそれらの誘導体あるいはそれらの組み合わせであり得る。
【0025】
本発明の分散液に含有されるポリピロールは、式I
【0026】
【化1】

【0027】
(式中、nは少なくとも約4で、Rは各々が独立に同一又は異なっていてそして水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキルチオ、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルフォニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルフォニル、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、アミドスルホン酸塩、ベンジル、カルボン酸塩、エーテル、エーテルカルボン酸塩、エーテルスルホン酸塩およびウレタンから選ばれるか、又は両R基が互いに、任意に2価の窒素、硫黄あるいは酸素原子を1つ以上含み得る3、4、5、6又は7員の芳香若しくは脂環を完成するアルキレン又はアルケニレンを形成し得て、Rは各々が独立に同一又は異なっていてそして水素、アルキル、アルケニル、アリール、アルカノイル、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、アミドスルホン酸塩、ベンジル、カルボン酸塩、エーテル、エーテルカルボン酸塩、エーテルスルホン酸塩、スルホン酸塩およびウレタンから選ばれる。)を含み得る。
【0028】
1つの態様において、Rは各々が独立に同一又は異なっていてそして水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルキニル、アルコール、アミドスルホン酸塩、ベンジルカルボン酸塩、エーテル、エーテルカルボン酸塩、エーテルスルホン酸塩、ウレタン、エポキシ、シラン、シロキサン、およびスルホン酸、カルボン酸、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン又はシロキサン部分の1つ以上で置換されたアルキルから選択される。
【0029】
1つの態様において、Rは水素、アルキル、およびスルホン酸、カルボン酸、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン又はシロキサン部分の1つ以上で置換されたアルキルから選択される。
【0030】
1つの態様において、ポリピロールは非置換でそしてRおよびRのいずれもが水素である。
【0031】
1つの態様において、両方のRともアルキル、ヘテロアルキル、アルコール、アミドスルホン酸塩、ベンジル、カルボン酸塩、エーテル、エーテルカルボン酸塩、エーテルスルホン酸塩、スルホン酸塩およびウレタンから選ばれる基でさらに置換された6又は7員の脂環式環を形成する。これらの基は、モノマーのそしてそれから得られるポリマーの溶解性を改良し得る。1つの態様において、両方のRともアルキル基でさらに置換された6又は7員の脂環式環を形成する。1つの態様において、両方のRとも少なくとも1つの炭素原子を有するアルキル基でさらに置換された6又は7員の脂環式環を形成する。
【0032】
1つの態様において、両方のRとも−O−(CHY)−O−(式中、mは2又は3で、そしてYは各々が独立に同一又は異なっていてそして水素、アルキル、アルコール、アミドスルホン酸塩、ベンジル、カルボン酸塩、エーテル、エーテルカルボン酸塩、エーテルスルホン酸塩、スルホン酸塩およびウレタンから選ばれる。)を形成する。1つの態様において、少なくとも1つのY基は水素ではない。1つの態様において、少なくとも1つのY基は少なくとも1つの水素を置換したFを有する置換基である。1つの態様において、少なくとも1つのY基はペルフルオロ化されている。
【0033】
1つの態様において、新規な組成物で用いられるポリピロールは、正電荷がコロイド状ポリマー酸アニオンと釣り合っている正電荷導電性ポリマーを含む。
【0034】
本発明の分散液に含有されるポリチオフェンは以下の式II
【0035】
【化2】

【0036】
(式中、Rは各々が独立に同一又は異なっていてそして水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノイル、アルキルチオ、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルフォニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルフォニル、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシル、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、アミドスルホン酸塩、ベンジル、カルボン酸塩、エーテル、エーテルカルボン酸塩、エーテルスルホン酸塩およびウレタンから選ばれるか、又は両Rが互いに任意に2価の窒素、硫黄あるいは酸素原子を1つ以上含み得る3、4、5、6又は7員の芳香若しくは脂環を完成するアルケン又はアルケニレンを形成し得て、nは少なくとも約4である。)を含み得る。
【0037】
1つの態様において、両方のRとも−O−(CHY)−O−(式中、mは2又は3で、そしてYは各々が独立に同一又は異なっていてそして水素、アルキル、アルコール、アミドスルホン酸塩、ベンジル、カルボン酸塩、エーテル、エーテルカルボン酸塩、エーテルスルホン酸塩およびウレタンから選ばれる。)を形成する。1つの態様において、すべてのY基は水素である。1つの態様において、ポリチオフェンはポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)である。1つの態様において、少なくとも1つのY基は水素ではない。1つの態様において、少なくとも1つのY基は少なくとも1つの水素を置換したFを有する置換基である。1つの態様において、少なくとも1つのY基はペルフルオロ化されている。
【0038】
1つの態様において、ポリチオフェンは、ポリ[(スルホン酸-プロピレン-エーテル-メチレン-3,4-ジオキシエチレン)チオフェン]を含む。1つの態様において、ポリチオフェンは、ポリ[(プロピル-エーテル-エチレン-3,4-ジオキシエチレン)チオフェン]を含む。
【0039】
本発明の1つの態様において、本発明は、次の式P1
【0040】
【化3】

【0041】
(式中、XはS又はSeで、YはS又はSeで、Rは置換基で、nは約2より大きく且つ20未満で通常は約4〜約16である。)を有する繰り返し単位を含むモノマー、オリゴマーおよびポリマー組成物を用いる。RはP1の環構造と結合し得る任意の置換基であり得る。Rは、水素又はその同位元素、ヒドロキシル、C〜C20の一級、二級又は三級のアルキル基を含むアルキル、アリールアルキル、アルケニル、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアリール、アリール、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルカノイル、アルキルチオ、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキニル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミド、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルフォニル、アリール、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアミノ、アリールチオ、ヘテロアリール、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルフォニル、カルボキシル、ハロ、ニトロ、シアノ、スルホン酸、又は1つ以上のスルホン酸(又はその誘導体)、リン酸(又はその誘導体)、カルボン酸(又はその誘導体)、ハロゲン、アミノ、ニトロ、ヒドロキシル、シアノ又はエポキシ部分で置換したアルキル若しくはフェニルを含み得る。特定の態様において、Rは、セリウム含有の環構造である分岐したオリゴマー、ポリマー又はコポリマー構造が形成され得るアルファ反応性部位を含み得る。特定の態様においては、Rは、F、Cl、Br又はCNでモノ−又は多置換され得て、そして隣接していない1つ以上のCH基が独立に、-O-、-S-、-NH-、-NR'-、-SiR'R''-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCO-O-、-S-CO-、-CO-S-、-CH=CH-又は-C三C-で、Oおよび/又はS原子が互いにフェニルおよび置換フェニル基、シクロヘキシル、ナフタレン、ヒドロキシル、アルキルエーテル、ペルフルオロアルキル、ペルフルオロアリール、カルボン酸、エステルおよびスルホン酸の基、ペルフルオロ、SF又はFに結び付かないように、水素、アルキルアリール、アリールアルキル、アリール、ヘテロアリール、C〜C12の一級、二級あるいは三級のアルキル基(式中、R'、R''は、互いに独立にH、アリール又は1〜12のC原子を有するアルキル基である。)を含み得る。ポリマーは独立に官能性末端基又は非官能性末端基から選ばれる末端基を含み得る。本発明による繰り返し構造は、ホモポリマーを形成して実質的に同質であり得るし、又は共重合に適した複数種のモノマーを選択することによる共重合の特質であり得る。繰り返し単位は当技術分野で公知の任意の適した方法で終端され得てそして官能性末端基又は非官能性末端基を含み得る。加えて、分散液又は溶液はP1およびポリマー酸をドープしたp1の組成物を含む。1つの態様において、組成物は、ポリマー酸をドープしたP1によるポリマーの水分散液を含む。
【0042】
本発明の1つの特徴において、ポリ(チエノ[3,4-b]チオフェン)などの導電性ポリチエノチオフェンを含む水分散液は、チエノ[3,4-b]チオフェンモノマーを含むチエノチオフェンモノマーが部分的にフッ素化されたポリマー酸の少なくとも1つの存在下に化学的に重合されると、製造され得る。
【0043】
本発明の1つの態様による組成物は、ポリ(チエノ[3,4-b]チオフェン)および分散液を形成する部分的にフッ素化されたポリマー酸が分散されている連続水性相を含み得る。本発明の1つの態様において用いられ得るポリ(チエノ[3,4-b]チオフェン)は、化学構造(1)および(2):
【0044】
【化4】

【0045】
(式中、Rは水素、1〜8の炭素原子を有するアルキル、フェニル、置換フェニル、C2m+1、F、ClおよびSFから選ばれ、そしてnは約2より大で約20未満で通常は約4〜約16である。)を含み得る。
【0046】
また、本発明の組成物で用いられ得るチエノチオフェンは、上記の化学構造(2)(式中、RおよびRは独立して上記から選ばれ得る)を有し得る。1つの特定の態様において、ポリチエノチオフェンはポリ(チエノ[3,4-b]チオフェン)(式中、Rは水素を含む)を含む。
【0047】
本発明の他の特徴は、導電性ポリマーのポリ(セレノ[2,3-c]チオフェン)を含む。この開示で使用するためのポリマーは、電気活性モノマーの重合単位をさらに含有するコポリマーを含み得る。電気活性モノマーは、チオフェン、チエノ[3,4-b]チオフェン、置換チエノ[3,2-b]チオフェン、置換チオフェン、置換チエノ[3,4-b]チオフェン、チエノ[3,2-b]チオフェン、ジチエノ[3,4-b:3',4'-d]チオフェン、セレノフェン、置換セレノフェン、ピロール、ビチオフェン、置換ピロール、フェニレン、置換フェニレン、ナフタレン、置換ナフタレン、ビフェニルおよびテルフェニル、置換テルフェニル、フェニレンビニレン、置換フェニレンビニレン、フルオレン、置換フルオレンから選ばれる少なくとも1つを含み得る。適したモノマーおよびポリマーが、引用によりその全てが本開示に組み込まれる2009年1月14日に出願の米国特願第12/353609号明細書および同じく2009年1月14日に出願の米国特願第12/353461号明細書に記載されている。電気活性モノマーに加えて、本発明によるコポリマーは非電気活性モノマーの重合単位を含み得る。
【0048】
本発明で用いられ得るポリアニリンは、以下の式III:
【0049】
【化5】

【0050】
(式中、nは0〜4の整数で、mは1〜5の整数で、但しn+m=5であり、そしてRは各々が独立に同一又は異なっていてそしてアルキル、アルケニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルカノイル、アルキルチオ、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルフォニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルフォニル、カルボン酸、ハロゲン、シアノ、又は1つ以上をスルホン酸、カルボン酸、ハロ、ニトロ、シアノ又はエポキシ部分で置換したアルキルから選ばれ、又は任意の2つのR基は1つ以上の窒素、硫黄あるいは酸素原子を任意に含み得る3、4、5、6若しくは7員の芳香又は脂環を完成するアルキレン又はアルケニレンを互いに形成し得る。)を含むアニリンモノマーから得られ得る。
【0051】
重合した物質はアニリンモノマー単位を含み、各アニリンモノマー単位は下記の化学式IV:
【0052】
【化6】

【0053】
又は下記の化学式V:
【0054】
【化7】

【0055】
(式中、n、mおよびRは上に定義した通りである。)から選ばれる化学式を含み得る。加えて、ポリアニリンはホモポリマー又は2つ以上のアニリンモノマー単位のコポリマーを含み得る。
【0056】
本発明の組成物は、上記ホモポリマー構造に限定されずそしてヘテロポリマー構造又はコポリマー構造を含み得る。コポリマー構造は交互コポリマー(例えば、AおよびB単位の交互)、周期コポリマー(例えば、(A-B-A-B-B-A-A-A-A-B-B-B))、ランダムコポリマー(例えば、モノマーAおよびBのランダム配列)、統計的コポリマー(例えば、統計的法則に従うポリマー配列)および/又はブロックコポリマー(例えば、共有結合で結び付いた2つ以上のホモポリマーサブユニット)の任意の組み合わせであり得る。コポリマーは、得られるコポリマーが導電性の性質を保持するのであれば分岐又は連鎖であり得る。
【0057】
本発明のエーテル含有ポリマーは、一般式(1)
−Q−R− (1)
(式中、Qは酸素原子又は硫黄原子で、そしてRは芳香族又は複素環式芳香族若しくは脂肪族化合物の2価の基であり、そしてRは酸性型又は中和型のいずれかであってスルホン酸、ホスホン酸、ボロン酸又はカルボン酸の少なくとも1つを含む。)の繰り返し単位を含む。
【0058】
本発明のエーテル含有ポリマーは多くの利点を示す。これら利点として、熱的安定性の改良、高いガラス転移温度、優れた膜形成特性、水揚げの低減、ほとんどの技術的適用に定義済みの官能基の調整可能なことが挙げられる。
【0059】
本発明のエーテル含有ポリマーは、前記一般式(1)
[式中、Rは、芳香族又は複素環式芳香族若しくは脂肪族化合物の2価の基であり、そしてC、H、O、N、S、N、B、P、Si又はハロゲン原子を含み得て、そして少なくとも部分的に一般式(2A)、(2B)、(2C)、および/又は(2D)
【0060】
【化8】

【0061】
の置換基(式中、基Rは、互いに独立に直接結合であるか、又は1〜60の炭素原子を有する基、例えば分岐あるいは非分岐のアルキル又はシクロアルキル基あるいは置換又は非置換のアリール基若しくはヘテロアリール基から選ばれる。)を有する。]の繰り返し単位を含む。Rは、シリコン原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、シアノ基で任意に置換され得る。例えば、Rは、ハロゲン原子、例えばフッ素原子で置換され得る。Xは、互いに独立で、水素、1又は多価のカチオン、例えばLi、Na、K、Rb、Cs、TiO2+、ZrO2+、Ti4+、Zr4+、Ca2+、Mg2+又はアンモニウムイオンの群からの少なくとも1つである。
【0062】
本発明のエーテル含有ポリマーは前記一般式(1)の繰り返し単位、特に一般式(3A)、(3B)、(3C)、(3D)、(3E)、(3F)、(3G)、(3H)、(3I)、(3J):
【0063】
−Y−R− (3A)
【0064】
(式中、Yは酸素又は硫黄で、そしてRは、6〜40の炭素原子の芳香族、4〜40の炭素原子のヘテロ芳香族又は1〜40の炭素原子のアルキルあるいはシクロアルキルの2価の基で、且つRは少なくとも部分的に前記一般式(2A)、(2B)、(2C)および/又は(2D)の置換基を有する。)
【0065】
−Y−R-Q−R
【0066】
(式中、Qは−S-、-S(O)-、-S(O)-、-C(O)-、-P(O)(C)-又はそれらの組み合わせから選ばれる。)
【0067】
−Y−R-Q−R-Y−R− (3B)
−Y−R-Y−R-Q−R− (3C)
−Y−R-Q−R-Y−R-T−R− (3D)
【0068】
(式中、Tは−P(C)-、-CH-、-C(CH)(C)-、-C(CH-、-C(CF-、-Si(CH-、-Si(C-、-Si(tBu)-、-C(O)-、-C(CF)(C)-、-C(CH)(CF)-、-S(O)-およびそれらの組み合わせから選ばれる。)
【0069】
−Y−R-Q−R-Q−R− (3E)
−Y−R-Y−R-Y−R-Q−R− (3F)
−Y−R-Y−R-Q−R-Q−R− (3G)
−Y−R-Q−R-Y−R-Q−R-Q−R− (3H)
−Y−R-Q−R-Q−R-Y−R-Q−R− (3I)
【0070】
【化9】

【0071】
(式中、全繰り返し単位の数に基づいて0<x≦100%、0≦y<100%、且つx+y=100%である。]又はそれらの組み合わせに相当する繰り返し単位を有する。)
【0072】
本発明との関連において、ポリマーの高分子鎖の一般式(1)の繰り返し単位の数は10以上の整数、特に25以上であり得る。ポリマーの高分子鎖の一般式(3A)、(3B)、(3C)、(3D)、(3E)、(3F)、(3G)、(3H)、(3I)および(3J)の繰り返し単位の数は10以上の整数、特に25以上であり得る。典型的には、本発明のエーテル含有ポリマーは5000〜1000000g/molの範囲、例えば10000〜500000g/molの範囲の質量平均分子量を有する。
【0073】
さらに具体的には、本発明のエーテル含有ポリマーは一般式(4A)、(4B)、(4C)、(4D)、(4E)、(4F)、(4G)、(4H)、(4I)、(4J)、(4K)、(4L)、(4M)、(4N)、(4O)、(4P)、(4Q)、(4R)、(4S)、(4T)、(4U)およびそれらの組み合わせに相当する繰り返し単位を有する:
−Y−R− (4A)
【0074】
(式中、Yは酸素又は硫黄で、Rは、6〜40の炭素原子の芳香族、4〜40の炭素原子のヘテロ芳香族又は1〜40の炭素原子のアルキルあるいはシクロアルキルの2価の基で、且つRは少なくとも部分的に前記一般式(2A)、(2B)、(2C)および/又は(2D)の置換基を有する。)
【0075】
【化10】

【0076】
【化11】

【0077】
【化12】

【0078】
【化13】

【0079】
【化14】

【0080】
【化15】

【0081】
(式中、全繰り返し単位の数に基づいて0<x≦100%、0≦y<100%、且つx+y=100%である。)
【0082】
【化16】

【0083】
【化17】

【0084】
【化18】

【0085】
【化19】

【0086】
【化20】

【0087】
【化21】

【0088】
【化22】

【0089】
【化23】

【0090】
【化24】

【0091】
【化25】

【0092】
【化26】

【0093】
【化27】

【0094】
【化28】

【0095】
【化29】

【0096】
本発明の一般式(1)の繰り返し単位を有するエーテル含有ポリマーは、上記の一般式(4A)〜(4U)
[式中、Rは互いに独立していて、同一か又は異なっていて、6〜40の炭素原子の芳香族、4〜40の炭素原子のヘテロ芳香族又は1〜40の炭素原子のアルキルあるいはシクロアルキルの2価の基で、且つRは少なくとも部分的に前記一般式(2A)、(2B)、(2C)および/又は(2D)の置換基を有する。]の1つ又は組み合わせを含み得る。例えば、Rは、フェニレン、フェニレン、フェニレン、4,4’−ビフェニル、ナフタレン、フェナントレン、ピリジン、チオフェン、ピロール、4,4’−ビピリジン又は2,2’-ビピリジンであり得る。芳香族および/又はヘテロ芳香族の置換のパターンは任意であり、例えば、フェニレンの場合、Rはオルソ-、メタ-およびパラ-フェニレンであり得る。
【0097】
本発明の一般式(1)の繰り返し単位を有するエーテル含有ポリマーは、芳香族ポリエーテル、例えばポリフェニレンオキサイド、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィドのような芳香族チオエーテル、脂肪族ポリエーテル、例えばポリ(エチレンオキサイド)、ポリ(プロピレンオキサイド)およびポリ(エピクロロヒドリン)を含む。
【0098】
本発明との関連で有用である一般式(1)の繰り返し単位を有するエーテル含有ポリマーとしては、ホモポリマーおよびコポリマーが挙げられ、そしてコポリマーはランダム又はブロックあるいはグラフトコポリマーであり得る。有用なポリマーの例はポリアリールエーテル、ポリアリールチオエーテル、ポリスルホンおよびポリエーテルケトンである。
【0099】
以下のポリマー構造は、本発明の要件を満足するポリマー骨格の有用な繰り返し単位の特定の例に相当し、そしてこれらのポリマーは少なくとも一つの一般式(2A)、(2B)、(2C)および/又は(2D)の置換基を側鎖として有している。
【0100】
【化30】

【0101】
【化31】

【0102】
【化32】

【0103】
(式中、全繰り返し単位の数に基づいて0<≦100%、0≦y<100%、且つx+y=100%)
【0104】
【化33】

【0105】
【化34】

【0106】
【化35】

【0107】
【化36】

【0108】
【化37】

【0109】
【化38】

【0110】
【化39】

【0111】
本発明に従って用いられ得るポリマーの例は、以下の構造の繰り返し単位を有するポリマーである。(以下の化学式では、ポリマーをPolymerと標記する。)
【0112】
【化40】

【0113】
(式中、Xは、互いに独立して、そして水素、1又は多価のカチオン、例えばLi、Na、K、Rb、Cs、TiO2+、Ti4+、Zr4+、Ca2+、Mg2+又はアンモニウムイオンである。全繰り返し単位の数に基づいて0<≦100%、0≦y<100%、且つx+y=100%、nは1〜4の整数である。)
【0114】
【化41】

【0115】
【化42】

【0116】
【化43】

【0117】
【化44】

【0118】
【化45】

【0119】
【化46】

【0120】
【化47】

【0121】
【化48】

【0122】
【化49】

【0123】
【化50】

【0124】
【化51】

【0125】
【化52】

【0126】
【化53】

【0127】
【化54】

【0128】
【化55】

【0129】
【化56】

【0130】
【化57】

【0131】
【化58】

【0132】
【化59】

【0133】
【化60】

【0134】
【化61】

【0135】
【化62】

【0136】
【化63】

【0137】
【化64】

【0138】
【化65】

【0139】
【化66】

【0140】
【化67】

【0141】
【化68】

【0142】
【化69】

【0143】
【化70】

【0144】
【化71】

【0145】
【化72】

【0146】
【化73】

【0147】
【化74】

【0148】
【化75】

【0149】
【化76】

【0150】
【化77】

【0151】
【化78】

【0152】
本発明の実施において使用する任意のコロイド形成性ポリマー酸は、水に不溶性で且つ適した水性媒体に分散されるとコロイドを形成する。ポリマー酸は、典型的には約10000〜約4000000の範囲の分子量を有する。1つの態様において、ポリマー酸は約50000〜約2000000の分子量を有する。水に分散されるとコロイド形成性である任意のポリマー酸は本発明の実施での使用に適している。1つの態様において、コロイド形成性ポリマー酸はポリマースルホン酸を含む。他の許容し得るポリマー酸は、ポリマーリン酸、ポリマーカルボン酸、ポリマーアクリル酸およびポリマースルホン酸を有する混合物の少なくとも1つを含む。他の態様において、ポリマースルホン酸はフッ素化酸を含む。さらに他の態様において、コロイド形成性ポリマースルホン酸はペルフルオロ化合物を含む。さらに他の態様において、コロイド形成性ポリマースルホン酸はペルフルオロアルキレンスルホン酸を含む。
【0153】
さらに他の態様において、任意のコロイド形成性ポリマー酸は高フッ素化スルホン酸ポリマー、(”FSAポリマー”)を含む。” 高フッ素化”とは、ポリマー中のハロゲンと水素原子との全数の少なくとも約50%が、そして1つの態様において少なくとも約75%、そして他の態様において少なくとも約90%がフッ素原子であることを意味する。1つの態様において、ポリマーは少なくとも1つのペルフルオロ化合物を含む。
【0154】
任意のポリマー酸は、スルホン酸塩官能基を含み得る。用語の"スルホン酸塩官能基"とは、スルホン酸基又はスルホン酸の塩のいずれかを示し、そして1つの態様において、アルカリ金属塩又はアンモニウム塩の少なくとも1つを含む。官能基は式−SOX(式中、Xは"対イオン"として知られるカチオンを含む。)で示される。Xは、H、Li、Na、K、N(R”)(R”)(R)(R)からなる群から選ばれる少なくとも1つを含み得て、そしてR”、R”、RおよびRは、同一かあるいは異なり、そして1つの態様においてH、CH又はCである。他の態様において、XはHを含み、この場合ポリマー酸は”酸型”にあると言われている。また、Xは、Ca2+、Al3+、Fe2+およびFe3+などのイオンで示されるように多価であり得る。一般的にMn+として示される多価の対イオンの場合には、対イオン当たりのスルホン酸塩官能基の数は価数"n"と等しい。
【0155】
1つの態様において、任意のFSAポリマーは、骨格に結合してカチオン交換基を持つ繰り返し側鎖を有するポリマー骨格を含んでいる。ポリマーは、ホモポリマー又は2つ以上のモノマーのコポリマーを含む。コポリマーは、典型的には、非官能性モノマーとカチオン交換基又はその誘導体、例えばその後にスルホン酸塩官能基に加水分解され得るフッ化スルホニル基(−SOF)を持つ第2のモノマーとから形成される。例えば、第1のフッ素化ビニルモノマーとフッ化スルホニル基(−SOF)を有する第2のフッ素化ビニルモノマーとを共に含むコポリマーが用いられ得る。適した第1のモノマーの例は、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)およびそれらの組み合わせの群からの少なくとも1つを含む。TFEは好ましい第1のモノマーである。
【0156】
他の態様において、任意の第2のモノマーの例は、ポリマーに望ましい側鎖を与え得るスルホン酸塩官能基又は前駆体基を有する少なくとも1つのフッ素化ビニルエーテルを含む。追加のモノマーはエチレンを含む。1つの態様において、本発明での使用のためのFSAポリマーは、少なくとも1つの高フッ素化FSAを、そして1つの態様においてペルフッ素化炭素骨格と式:
−(O−CFCFR−CFCFRSO
(式中、RおよびRは独立にF、Cl又は1〜10の炭素原子を有するペルフルオロ化アルキル基から選ばれ、a=0、1又は2、そしてXはH、Li、Na、K、又はN(R')(R')(R)(R)の少なくとも1つを含み、そしてR'、R'、RおよびRは、同一かあるいは異なり、そして1つの態様においてH、CH又はCである。)で示される側鎖を含む。他の態様において、XはHを含む。上記のようにXは多価であり得る。
【0157】
他の態様において、任意のFSAポリマーは、例えば米国特許第3282875号、同第4358545号および同第4940525号明細書(参照によりその全部が本明細書に組み込まれる。)に開示されたポリマーを含む。有用なFSAポリマーの一例は、ペルフルオロ炭素骨格と式:
−O−CFCF(CF)−O−CFCFSOX’
(式中、X’は上記の通りである。)で示される側鎖を含む。この型のFSAポリマーは、米国特許第3282875号明細書に開示されていて、そしてテトラフルオロエチレン(TFE)とペルフッ素化ビニルエーテルCF=CF−O−CFCF(CF)−O−CFCFSOF、ペルフルオロ(3,6-ジオキサ-4-メチル-7-オクテンスルホニルフルオリド)(PDMOF)の共重合、続くフッ化スルホニルフルオリド基の加水分解によるスルホン酸塩基への転化および必要に応じて望ましいイオン型へ変化させるためのイオン交換により生成され得る。米国特許第4358545号および同第4940525号明細書に開示されている型のポリマーの一例は、側鎖−O−CFCFSOX’(式中、X’は上記の通りである。)を有する。このポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)およびペルフッ素化ビニルエーテルCF=CF−O−CFCFSOF、ペルフルオロ(3-オキサ-4-ペンテンスルホニルフルオリド)(POPF)の共重合、続く加水分解および必要に応じてさらにイオン交換により生成され得る。
【0158】
他の態様において、任意のFSAポリマーは、例えば参照によりその全部が本明細書に組み込まれる米国特許公開第2004/0121210号明細書に開示されているポリマーを含む。有用なFSAポリマーの例は、テトラフルオロエチレン(TFE)とペルフッ素化ビニルエーテルCF=CF-O-CFCFCFCFSOFとの共重合、続くフッ化スルホニル基の加水分解によるスルホン酸塩基への転化およびフッ化基の望ましいイオン型への転化のために要望通りにイオン交換により生成され得る。他の態様において、FSAポリマーは、例えば参照によりその全部が本明細書に組み込まれる米国特許公開第2005/0037265号明細書に開示されているポリマーを含む。有用なFSAポリマーの例は、ペルフッ素化ビニルエーテルCF=CFCFOCFCFSOFとテトラフルオロエチレン(TFE)との共重合、続くフッ化スルホニル基のKOH加水分解によるスルホン酸塩基への転化およびカリウムイオン塩を酸性型へ変化させるための酸によるイオン交換により生成され得る。
【0159】
他の態様において、本発明で用いる任意のFSAポリマーは、典型的には約33未満のイオン交換比を有する。"イオン交換比"又は"IXR"はカチオン交換基との関連でポリマー骨格での炭素原子の数とする。約33未満の範囲内で、IXRは特定の適用に対して必要であれば変えられ得る。1つの態様において、IXRは約3〜約33、そして他の態様において約8〜約23である。
【0160】
ポリマーのカチオン交換能力はよく当量(EW)の用語で示される。本適用の目的に対しては、当量(EW)は1当量の水酸化ナトリウムを中和するのに十分な酸の型でのポリマーの質量であると定義される。ポリマーがペルフルオロカーボン骨格を有しそして側鎖が−O−CF−CF(CF)−O−CF−CF−SOH(又はその塩)を含むスルホン酸塩ポリマーの場合、約8〜約23のIXRに相当する当量の範囲は約750EW〜約1500EWである。このポリマーに対するIXRは式:50IXR+344=EWを用いて当量と関係付けられ得る。同じIXR範囲が、米国特許第4358545号および同第4940525号明細書(参照によりその全てが本明細書命に組み入れられる)に開示されているスルホン酸塩ポリマー、例えば側鎖−O−CFCFSOH(又はその塩)を有するポリマーに対して用いられる一方で、カチオン交換基を含有するモノマー単位の低い分子量のため当量はいくらか低い。約8〜約23のIXR範囲に対して、相当する当量範囲は約575EW〜約1325EWである。このポリマーに対するIXRは式:50IXR+178=EWを用いて当量と関係付けられ得る。
【0161】
任意のFSAポリマーは水性コロイド分散液として製造され得る。また、それらは他の媒体、例としては、限定されないがアルコール、水可溶性エーテル、例えばテトラヒドロフラン、複数の水可溶性エーテルの混合物、およびそれらの組み合わせの分散液であり得る。分散液の製造では、ポリマーは酸の型で用いられ得る。米国特許第4433082号、同第6150426号明細書および国際公開第03/006537号公報(引用によりその全てが本明細書に組み込まれる。)は水性アルコール分散液の製造法を開示している。分散液が製造された後、FSA濃度および分散液組成が当業界で知られた方法で調整され得る。
【0162】
FSAポリマーを含有するコロイド形成性ポリマー酸を含む水分散液は、典型的には安定なコロイドが形成される限り可能な限りの小粒径を有する。FSAポリマーの水分散液は、デュポン社(デラウエア州、ウィルミントン)から登録商標ナフィオン分散液として市販されている。適したFSAポリマーの例は、化学構造:
【0163】
【化79】

【0164】
を有するコポリマーを含む。コポリマーはテトラフルオロエチレンとペルフルオロ(4-メチル-3,6-ジオキサ-7-オクテン-1-スルホン酸)(式中、m=1)を含む。
【0165】
米国特許公開第2004/0121210号又は同第2005/0037265号明細書からのFSAポリマーの水分散液は、米国特許第6150426号明細書に開示されている方法を用いて製造され得て、すでに特定される米国特許および特許出願公開の開示は引用によりその全てが本明細書に組み込まれる。
【0166】
他の適したFSAポリマーは、引用によりその全てが本明細書に組み込まれる米国特許第5422411号明細書に開示されている。ポリチオフェンに対する対イオン/分散液として用いられ得る1つの適したポリマー酸は、次の化学構造:
【0167】
【化80】

【0168】
[式中、m、n、pおよびqの少なくとも2つは0より大きい整数であり、A、AおよびAはアルキル、ハロゲン、CyF2y+1(式中、yは0より大きい整数である。)、O-R"(式中、R"はアルキル、ペルフルオロアルキルおよびアリール部分からなる群から選択される。)、CF=CF、CN、NOおよびOHからなる群から選択され、そしてX"はSOH、PO、PO、CHPO、COOH、OPO、OSOH、OArSOH(式中、Arは芳香族部分である。)、NR"(式中、R"はアルキル、ペルフルオロアルキルおよびアリール部分からなる群から選択される。)]を有し得る。A、A、AおよびX"置換基はオリト、メタおよび/又はパラ位に位置され得る。また、コポリマーは二元、三元又は四元であり得る。
【0169】
任意の適した非フッ素化ポリマー酸が用いられ得るが、そのような酸の例はポリ(スチレンスルホン酸)およびポリ(2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸)からなる群から選択される少なくとも1つを含む。非フッ素化ポリマー酸の量は、典型的には分散液の約0.05wt%〜約1.5wt%の範囲である。
【0170】
1つの態様において、チエノチオフェン又はチエノ[3,4-b]チオフェンモノマーは少なくとも1つのエーテル含有ポリマーとポリマー酸コロイドとを含む水媒体中で酸化的に重合される。典型的には、チエノチオフェン又はチエノ[3,4-b]チオフェンモノマーは、少なくとも1つの重合触媒を含有する水分散液、少なくとも1つの酸化剤、およびコロイド性のポリマー酸粒子に混ぜ合わされるかあるいは加えられる。この態様において、典型的には重合反応が進む準備が整うまで酸化剤および触媒がモノマーと混ぜ合わされないのであれば、結合又は添加の順序は変化し得る。重合触媒としては、限定されないが、組み合わせを含めて硫酸第二鉄、塩化第二鉄、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどからなる群から選択される少なくとも1つが挙げられる。いくつかの態様において、酸化剤および触媒は同じ化合物を含み得る。酸化重合は、コロイド内に含まれるポリマー酸のマイナスに帯電した側鎖(例えば、スルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、アセチレートアニオン、ホスホン酸アニオン、組み合わせ等)で荷電平衡されているプラスに帯電した導電性チエノチオフェンポリマーおよび/又はチエノ[3,4-b]チオフェンポリマーを含む安定な水分散液をもたらす。チエノチオフェンの重合には任意の適したプロセス条件が用いられ得るが、約8〜約95℃の範囲の温度や分散液を得て、混合しそして維持するために十分な条件および設備が有用である。
【0171】
本発明の1つの態様において、ポリ(チエノ[3,4-b]チオフェン)、少なくとも1つのエーテル含有ポリマーおよび少なくとも1つのコロイド形成性ポリマー酸を含む水分散液の製造法は、(a)少なくとも1つのエーテル含有ポリマー、少なくとも1つのフッ素化ポリマー酸および少なくとも1つの非フッ素化ポリマー酸を含む水分散液を提供する工程、(b)工程(a)の分散液に少なくとも1つの酸化剤を提供する工程、(c)工程(b)の分散液に少なくとも1つの触媒又は酸化剤を提供する工程、(d)工程(c)の分散液にチエノ[3,4-b]チオフェンモノマーを添加する工程、(e)モノマー分散液の重合を可能にする工程、そして(f)分散液のpHを調節して物質を安定にするのに十分高い値にする工程、を含む。方法はpHを3より大きい値に調節することを含む。他の態様において、pH値は6より大又は8より大に調節され得る。この製造法の別の態様は、酸化剤の添加の前に、少なくとも1つのエーテル含有ポリマーおよび少なくとも1つのポリマー酸の水分散液にチエノ[3,4-b]チオフェンモノマーを添加することを含む。他の態様は、水とチエノ[3,4-b]チオフェンモノマーとを含む水分散液(例えば、典型的にはチエノ[3,4-b]チオフェンが約0.05質量%〜約50質量%の範囲である水中のチエノ[3,4-b]チオフェンの任意の濃度数の)を形成すること、そして酸化剤および触媒の添加の前又は後に、ポリマー酸の水分散液にこのチエノ[3,4-b]チオフェン混合物を加えることを含む。さらに他の態様において、水と相溶性である有機溶媒にチエノチオフェンが溶解され、そして酸化剤および/又は触媒の添加の前又は後に、ポリマー酸の水分散液に溶解されたモノマー溶液が加えられる。
【0172】
本発明の組成物は上記のホモポリマー構造に限定されずそしてヘテロポリマー又はコポリマー構造を含み得る。コポリマー構造は、交互コポリマー(例えば、AおよびB単位の交互)、周期コポリマー(例えば、(A-B-A-B-B-A-A-A-A-B-B-B))、ランダムコポリマー(例えば、モノマーAおよびBのランダム配列)、統計的コポリマー(例えば、統計的法則に従うポリマー配列)および/又はブロックコポリマー(例えば、共有結合で結び付いた2つ以上のホモポリマーサブユニット)の任意の組み合わせであり得る。コポリマーは、得られるコポリマーが導電性の性質を保持するのであれば分岐又は連鎖であり得る。コポリマー構造は、モノマー、オリゴマー又はポリマー化合物から形成され得る。例えば、前記コポリマー類で用いるために適したモノマーは、チオフェン、置換チオフェン、置換チエノ[3,4-b]チオフェン、ジチエノ[3,4-b:3',4'-d]チオフェン、ピロール、ビチオフェン、置換ピロール、フェニレン、置換フェニレン、ナフタレン、置換ナフタレン、ビフェニルおよびテルフェニル、置換テルフェニル、フェニレンビニレンおよび置換フェニレンビニレンなどのモノマーを含み得る。
【0173】
得られるポリマーが導電性であり且つフッ素化ポリマー酸と非フッ素化ポリマー酸とを含む限り、チエノチオフェン又はチエノ[3,4-b]チオフェンモノマーに加えて他のチオフェンモノマー化合物が本発明で用いられ得る。
【0174】
いくつかの場合には、分散液は少なくとも1つの金属(例えば、少なくとも1つのイオン)を含み得る。分散液に加えられ得る又は存在し得る金属の例は、特に、Fe2+、Fe3+、K、およびNa、それらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む。酸化剤:モノマーのモル比は、通常約0.05〜約10で、一般には約0.5〜約5の範囲である(例えば、本発明の重合工程の間)。必要なら、カチオンおよびアニオン交換樹脂に分散液を暴露することによって金属の量を低減するか除去され得る。
【0175】
チオフェンモノマーの重合は、普通は水と混ざる共分散性のキャリア又は液体の存在下に実施され得る。適した共分散性の液体の例は、エーテル、アルコール、エステル、環状エーテル、ケトン、ニトリル、スルホキシド、アミド、アセトアミドおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含む。1つの態様において、共分散性の液体の量は約30容量%未満である。1つの態様において、共分散性の液体の量は約60容量%未満である。1つの態様において、共分散性の液体の量は約5容量%〜約50容量%である。1つの態様において、共分散性の液体は少なくとも1つのアルコールを含む。1つの態様において、共分散性のキャリア又は液体は、n-プロパノール、イソプロパノール、t-ブタノール、メタノール、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン、およびプロピレングリコールn-プロピルエーテルからなる群から選択される少なくとも1つを含む。共分散性の液体は、有機酸、例えばp-トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、カンファースルホン酸、酢酸、それらの混合物等からなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。あるいは、前記酸は、水可溶性ポリマー酸、例えばポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸)等、又は上記の第2のコロイド形成性酸を含み得る。また、複数の酸の組み合わせが用いられ得る。
【0176】
有機酸は、酸化剤又はチエノチオフェンモノマーのどちらが最後に加えられるとしても、いずれかを添加する前の工程の任意の時点で、がポリマー混合物に加えられ得る。1つの態様において、有機酸は、チオフェンモノマー、少なくとも1つのエーテル含有ポリマーおよび任意のコロイド形成性ポリマー酸の前に加えられ、そして酸化剤が最後に加えられる。1つの態様において、有機酸はチオフェンモノマーの添加の前に加えられ、続いてコロイド形成性ポリマー酸が添加され、そして酸化剤が最後に加えられる。他の態様において、合成したままの水分散液がイオン交換樹脂で処理された後に、ポリマー共酸が水分散液に加えられ得る。共分散性液体は、いずれが最後に加えられるとしても、酸化剤、触媒、又はモノマーを添加する前の任意の時点で、ポリマー混合物に加えられ得る。
【0177】
本発明の他の態様において、上記の任意の方法を完了後そしては重合の完了後、合成したままの水分散液は、安定な水分散液を調製するために適した条件下で少なくとも1つのイオン交換樹脂と接触させる。1つの態様において、合成したままの水分散液は第1のイオン交換樹脂そして第2のイオン交換樹脂と接触させる。他の態様において、第1のイオン交換樹脂は、酸性、カチオン交換樹脂、例えば上記のスルホン酸カチオン交換樹脂を含み、第2のイオン交換樹脂は、塩基性、アニオン交換樹脂、例えば第3級アミン又は第4級アミン交換樹脂を含む。
【0178】
イオン交換は、液体媒体(例えば、水分散液)中のイオンが液体媒体中で不溶性である不動性の固体粒子に付着し同様に帯電したイオンと交換される可逆の化学反応を含む。用語の"イオン交換樹脂"は、すべてのそのような物質を示すために本明細書では用いられる。樹脂はイオン交換基が付着したポリマー支持部の架橋した性質に起因して不溶性の状態にされている。イオン交換樹脂は、交換に利用できる正に荷電した可動イオンを有する酸性のカチオン交換体および交換可能なイオンが負に帯電した塩基性のアニオン交換体に分類される。
【0179】
酸性のカチオン交換樹脂および塩基性のアニオン交換樹脂はいずれも本発明で用いられ得る。1つの態様において、酸性のカチオン交換樹脂は有機酸のカチオン交換樹脂、例えばスルホン酸カチオン交換樹脂を含む。本発明の実施において使用することを意図したスルホン酸カチオン交換樹脂は、スルホン酸塩化スチレン-ジビニルベンゼンコポリマー、スルホン酸塩化架橋スチレンポリマー、フェノール-ホルムアルデヒド-スルホン酸樹脂、ベンゼン-ホルム-アルデヒド-スルホン酸樹脂、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。他の態様において、酸性のカチオン交換樹脂は、少なくとも1つの有機酸のカチオン交換樹脂、例えばカルボン酸、アクリル酸又はリン酸カチオン交換樹脂およびそれらの混合物を含む。加えて、異なるカチオン交換樹脂の混合物が用いられ得る。多くの場合、塩基性のイオン交換樹脂はpHを望ましい水準に調整するために用いられ得る。いくつかの場合において、pHは塩基性の水性溶液、例えば特に水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化セシウムおよびそれらの混合物の溶液でさらに調整され得る。
【0180】
他の態様において、塩基性のアニオン交換樹脂は少なくとも1つの第3級アミンアニオン交換樹脂を含む。本発明の実施で使用することを意図した第3級アミンアニオン交換樹脂は、第3級アミン化スチレン-ジビニルベンゼンコポリマー、第3級アミン化架橋スチレンポリマー、第3級アミン化フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、第3級アミン化ベンゼン-ホルムアルデヒド樹脂、およびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。さらなる態様において、塩基性のアニオン交換樹脂は、少なくとも1つの第4級アミンアニオン交換樹脂、又はこれと他の交換樹脂との混合物を含む。
【0181】
第1および第2のイオン交換樹脂は、合成したままの水分散液と同時に又は逐次的に接触し得る。例えば、1つの態様において、両樹脂が導電性ポリマーを含む合成したままの水分散液に同時に加えられ、そして少なくとも約1時間、例えば約2時間〜約20時間、分散液と接したままで保たれるようにされる。次いで、イオン交換樹脂はろ過による分散液から除去され得る。この操作が所定のイオン濃度を得るために要望により繰り返され得る。フィルターのサイズは、小さい分散粒子が通過する一方で相対的に大きいイオン交換樹脂粒子が除かれるように選択される。理論や説明に拘束されることは望まないが、イオン交換樹脂は重合を抑制しそして合成したままの水分散液からイオン性および非イオン性の不純物とほとんどの未反応モノマーを効果的に除くと考えられる。さらに、塩基性のアニオン交換および/又は酸性のカチオン交換樹脂は分散液のpHを増加させる。通常、酸化剤1ミリ当量当たり約1〜2gのイオン交換樹脂が酸化剤を除去するために用いられる。1つの態様において、1gのFe(SO・*HO当たり5−10gのイオン交換樹脂が用いられる。一般に、コロイド形成性ポリマー酸約1g当たり少なくとも1gのイオン交換樹脂が用いられる。1つの態様において、ポリ(チエノ[3,4-b]チオフェン)と少なくとも1つのコロイド形成性ポリマー酸の組成物1g当たり約1gのバイエル社の弱塩基性アニオン交換樹脂:登録商標Lewatit MP62WS、および約1gの強酸性のカチオン交換樹脂:登録商標Lewatit MonoPlus S100が用いられる。
【0182】
本発明の1つの態様において、要望により、パーコレーション限界に達するために相対的に低質量%の高導電性添加物をさらに含む分散液が用いられ得る。適した導電性添加物の例は、金属粒子およびナノ粒子、ナノワイヤ、カーボンナノチューブ、グラファイト繊維および粒子、カーボン粒子およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。
【0183】
本発明の1つの態様において、正孔注入層のキャスト薄膜又は層は典型的には高温(例えば、約250℃以下)でアニーリングされる。"アニーリング"により、膜が対象とする適用に望ましい特性、例えば残留溶媒又は水分の除去を与えるために必要な条件下に処理されることを意味する。
【0184】
本発明のさらなる態様において、追加の物質が加えられ得る。加えられ得る追加の水可溶性又は分散性の物質の例として、限定されないが、ポリマー、染料、コーティング助剤、カーボンナノチューブ、ナノワイヤ、界面活性剤[例えば、登録商標Zonyl FSOシリーズの非イオン性のフルオロ界面活性剤のようなフルオロ界面活性剤(例えば、化学構造:RCHCHO(CHCHO)H(式中、R=F(CFCF)y、x=0〜約15且つy=1〜約7)を有し、デラウエア州、ウイルミントンのデュポンから市販されている]、商品名Dynolおよび登録商標Surfynolシリーズ(例えば、ペンシルベニア州、アレンタウンのエアープロダクツ アンド ケミカルズ社から市販されている)のようなアセチレンジオールベースの界面活性剤、有機および無機導電性インクおよび導体ペースト、電荷輸送物質、架橋剤およびそれらの混合物が挙げられる。物質は単純な物質又はポリマーであり得る。適した他の水可溶性又は分散性ポリマーの例は少なくとも1つの導電性ポリマー、例えばポリアニリン、ポリアミン、ポリピロール、ポリアセチレンおよびそれらの組み合わせを含む。
【0185】
他の態様において、本発明は、2つの電気接触層の間に位置する少なくとも1つの電気活性層(通常は半導体接合した小分子又はポリマー)を含み、デバイスの少なくとも1つの層が本発明の正孔注入層を含む電子デバイスに関する。本発明の1つの態様は、図1に示すOLEDデバイスにより説明する。図1を参照すると、図1は、アノード層110、正孔注入層(HIL)120、エレクトロルミネセント層(EL又はEML)130、およびカソード層150を含んでいるデバイスを説明する。
カソード層150に隣接して、任意の電子注入/輸送層140がある。正孔注入層120とカソード層150(又は任意の電子注入/輸送層140)との間にエレクトロルミネセンス層130がある。あるいは、一般には中間層と呼ばれる正孔輸送層および/又は電子ブロッキング層が、正孔注入層120とエレクトロルミネセンス層130との間に挿入され得る。HILとEMLとの間にポリマー中間層を用いる利益の一例は、デバイスの寿命およびデバイスの効率を向上させることであった。どのような理論および説明に縛られることは望まないが、ポリマー中間層が効率的励起子のブロッキング層として作用することによりHIL接触面での励起子のクエンチングを防止しそして再結合ゾーンが中間層/放出層接触面の近傍に限定されると考えられる。いくつかの場合に、ポリマー中間層はEMLの溶媒により溶解され得る(例えば、中間層のEMLとの混合が起り得るように)のでガラス転移温度(Tg)より上の温度で層を熱的アニーリングにより硬化/架橋することが望ましくあり得る。
【0186】
本発明の他の態様において、分散液は、通常は溶媒/保湿剤と見なされる有機液体を含み得る添加物をさらに含む。任意の適した添加物が用いられ得るが、適した添加剤の例は
(1)アルコール、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、sec-ブチルアルコール、t-ブチルアルコール、イソ-ブチルアルコール、フルフリルアルコール、およびテトラヒドロフルフリルアルコール、
(2)多価アルコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-2-ヒドロキシメチル-1,3−プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオールおよびチオグリコール、
(3)多価アルコールから導かれるモノ又はジアルキル低級エーテル、
(4)2-ピロリドン、N-メチル-2-ピリリドン、および1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンのような窒素含有化合物、
(5)22'-チオジエタノール、ジメチルスルホキシドおよびテトラメチレンスルホンのような硫黄含有化合物、および
(6)ケトン、エーテルおよびエステル
からなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0187】
多価アルコールの例(例えば、膜形成性添加物としての使用に適している)は、エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-エチル-2-ヒドロキシメチル-1,3−プロパンジオール(EHMP)、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2,6-ヘキサントリオールおよびチオグリコールからなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。多価アルコールから得られるモノ-又はジ-低級アルキルエーテルの例は、エチレングリコールモノ-メチル又はモノ-エチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-メチル又はモノ-エチルエーテル、プロピレングリコールモノ-メチル、モノ-エチルおよびプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノ-メチル、モノ-エチル又はモノ-ブチルエーテル(TEGMBE)、ジエチレングリコールジ-メチル又はジ-エチルエーテル、ポリ(エチレングリコール)モノブチルエーテル(PEGMBE)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGMBE)およびプロピレングリコールメチルエーテルアセテートからなる群から選択される少なくとも1つを含み得る。そのような化合物の市販の例としてはミシガン州、ミッドランドのダウケミカル社から入手可能な商品名Carbitolおよび登録商標Dowanolの製品群のDow PシリーズおよびE-シリーズのグリコールエーテルが挙げられる。
【0188】
添加物(例えば、膜形成性添加物)としての使用に適したケトン又はケトアルコールの例は、メチルエチルケトンおよびジアセトンアルコールからなる群から選択される少なくとも1つを含む。エーテルの例はテトラヒドロフランおよびジオキサンの少なくとも1つを含み、そしてエステルの例は乳酸エチルエステル、炭酸エチルエステルおよびプロピレンカーボネートの少なくとも1つを含む。
【0189】
また、本発明に有用な膜形成性添加物は少なくとも1つの界面活性剤を含み得る。界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、両性又は非イオン性であり得てそして本発明の分散液(例えば、インク組成物)の約0.005〜約2%の水準で用いられる。有用な界面活性剤の例は、参照によりその全てが本明細書に組み込まれる米国特許第5324349号、同第4156616号および同第5279654号明細書に開示されるそれらや多くの他の界面活性剤を含み得る。市販の界面活性剤としては、ペンシルバニア州、アレンタウンのエア プロダクツ アンド ケミカルズ社からの商標Surfynols、商標Dynol、デュポンからの商標Zonyls界面活性剤および3M(スリーエム)からの商標Fluorads界面活性剤(現在、商標Novec)が挙げられる。シリコン界面活性剤の例がBYK−ChemieからBYK界面活性剤として、そしてクロンプトン社から商標Silwet界面活性剤として入手可能である。市場で入手可能なフッ素化した界面活性剤が、デュポンからの商標Zonyls界面活性剤および3Mからの商標Fluorads界面活性剤(現在、商標Novec)を含まれて、これらは単独で又は他の界面活性剤と組み合わせて用いられる。
【0190】
また、膜形成性添加物の組み合わせが用いられ得る。膜形成性添加物は望ましい膜形成性特性を提供するために(例えば、特に、粘度調整剤、表面張力調整剤)選択され得る。これが、本発明の分散液を発光ディスプレー、固体照明、太陽電池および薄膜トランジスタを含めて幅広い範囲に適用して電子デバイス製造業者により使用されることを可能とし得る。
【0191】
デバイスは、アノード層110又はカソード層150に隣接し得る支持部又は基材(図示せず)を含み得る。最も多くは、支持部がアノード層110に隣接している。支持部は柔軟又は剛性であり得て、有機又は無機であり得る。一般的には、ガラス又は柔軟な有機膜が支持部[例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレン2.6-ジカルボキシレート)およびポリスルホンを含む柔軟な有機膜]として用いられ得る。アノード層110は、カソード層150と比べて正孔注入にとって有効である電極を含む。アノードは、金属、混合金属、アロイ、金属酸化物又は混合酸化物を含有する物質を含み得る。適した物質は、グループ2の元素(例えば、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)、グループ11の元素、グループ4、5および6の元素、およびグループ8〜10の遷移元素(全てIUPACのナンバーシステムが用いられていて、周期律表からグループは左から右に1-18と番号付けされている[化学および物理のCRCハンドブック、第81版、2000年])の混合酸化物からなる群から選択される少なくとも1つを含む。もしアノード層110が光伝達性であれば、グループ12、13および14の元素の混合酸化物、例えばインジウム-スズ-酸化物が用いられ得る。本明細書で用いられる表現"混合酸化物"とは、グループ2の元素又はグループ12、13又は14の元素から選択される2つ以上の異なるカチオンを有する酸化物を示す。アノード層110のための物質のいくつかの制限されない、特定の例として、インジウム-スズ-酸化物("ITO")、アルミニウム-スズ-酸化物、ドープした亜鉛酸化物、金、銀、銅およびニッケルからなる群から選択される少なくとも1つが挙げられる。また、アノードは、ポリアニリン、ポリチオフェン又はポリピロールのような導電性有機物質を含み得る。
【0192】
アノード層110は、化学的又は物理的蒸着製法あるいはスピンキャスト製法によって形成され得る。化学的蒸着製法は、プラズマ化学気相成長法("PECVD")又は有機金属気相成長法("MOCVD")として実施され得る。物理的蒸着製法は、イオンビームスパッタリングおよび電子ビーム蒸着および蒸発抵抗を含めてスパッタリングの全ての型を含み得る。物理的蒸着製法の特定の型としては、RFマグネトロンスパッタリングおよび誘導結合プラズマ物理蒸着("IMP-PVD")が挙げられる。これらの蒸着技術は半導体製造技術では周知である。
【0193】
アノード層110は、リソグラフィー操作の間にパターン形成され得る。パターンは要望で変わり得る。複数の層は、例えば第1の電気的接触層物質を適用する前に第1の柔軟性複合バリヤ構造上にパターン化したマスク又はレジストを位置付けて、パターンに形成され得る。あるいは、複数の層は、全面層(また、全面的堆積とも呼ばれる)として適用されそしてその後に、例えばパターン形成レジスト層および湿式化学あるいは乾式エッチィング技術を用いてパターン形成され得る。また、当技術で周知であるパターン形成のための他の製法が用いられ得る。電子デバイスがアレイ内に位置されると、典型的にはアノード層110は実質的に同じ方向に延びる長さを有する実質的に平行なストリップに成形される。
【0194】
正孔注入層120は、本発明の分散液を用いて形成された膜を含んでいる。通常、正孔注入層120は当技術の当業者に周知の様々な技術を用いて基材上にキャストされる。典型的なキャスト技術としては、例えば、特に溶液流延法、滴下流延法、カーテンキャスティング、スピンコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、吹き付け塗装が挙げられる。正孔注入層がスピンコーティングにより適用されると、分散液の粘度および固形分含量、およびスピン速度は、得られる膜の厚みを調整するために用いられ得る。スピンコーティングにより適用される膜は通常、連続していてパターンを有しない。あるいは、正孔注入層はいくつもの堆積製法、例えば参照によりその全てが本明細書に組み入れられる米国特許第6087196号明細書に記載されているようなインクジェット印刷法を用いてパターン形成され得る。
【0195】
エレクトリルミネセント(EL)層130は、典型的には接合したポリマー、例えばポリ(パラフェニレンビニレン)(PPVと略される)、ポリフルオレン、スピロポリフルオレン又は他のELポリマー物質であり得る。また、EL層は相対的に小分子の蛍光又はリン光性染料、例えば8-ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq)およびトリス(2-(4-トリル)フェニルピリジン)イリジウム(III)、デンドリマー、上記物質を含有する混合物、および組み合わせを含み得る。また、EL層は無機量子ドット又は半導体の有機物質と無機量子ドットとの混合物を含み得る。選択される特定の物質は、特定の適用、操作の間に用いられる電位、又は他の要因に依存し得る。エレクトロルミネセント有機物質を含有しているEL層130は、スピンコーティング、キャステリィング、および印刷法を含めて任意の従来の技術により溶液から適用され得る。EL有機物質は物質の特質に依存して、蒸着処理により直接的に適用され得る。他の態様において、ELポリマー前駆体が適用され次いで、典型的には熱又は他の外部エネルギー源(例えば、可視光又は紫外線)によりポリマーに転化され得る。
【0196】
任意の層140は、電子の注入/輸送の両方を促進するために機能し得て、また層界面でのクエンチング反応を防止するため閉じ込め層として役立ち得る。すなわち、層140は、電子の移動性を促進し且つ層130と150とが直接接している場合に起り得るクエンチング反応の可能性を低減し得る。任意の層140の材料の例は、金属キレートオキシノイド化合物(例えば、Alqなど)、フェナントロリンベースの化合物[例えば、2,9-メチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(”DDPA”)、4,7-ジフェニル−1,10-フェナントロリン(”DPA”など)]、アゾール化合物[例えば、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(”PBD”)など]、3-(4−ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-t-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(”TAZ”など)、他の同様な化合物、又はそれらの組み合わせの任意の1つ以上からなる群から選択される少なくとも1つを含む。あるいは、任意の層140は、無機であり得て、そして、BaO、CaO、LiF、CsF、NaCl、LiO、それらの混合物を含み得る。
【0197】
カソード層150は、電子又は負電荷キャリアを注入するために特に効果的である電極を含む。カソード層150は、第1の電気接触層(この場合、アノード層110)よりも低い仕事関数を有する任意の適した金属又は非金属を含み得る。本明細書では、"低い仕事関数"の用語は、4.4eV以下のアルカリ金属以下の仕事関数を有する材料を意味すると意図される。本明細書では、"高い仕事関数"は少なくとも4.4eVの仕事関数を有する材料を意味すると意図される。
【0198】
カソード層の材料は、グループ1のアルカリ金属(例えば、Li、Na、K、Rb、Cs)、グループ2の金属(例えば、Mg、Ca、Baなど)、グループ12の金属、ランタニド類(例えば、、Ce、Sm、Euなど)およびアクチニド類(例えば、Th、Uなど)から選択され得る。また、アルミニウム、インジウム、イットリウムおよびそれらの組み合わせなどの材料も用いられ得る。カソード層150の材料の特定の限定されない例は、カルシウム、バリウム、リチウム、セリウム、セシウム、ユーロピウム、ルビジウム、イットリウム、マグネシウム、サマリウム、および合金およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含む。Ca、Ba又はLiなどの反応性の低仕事関数の金属が用いられると、銀又はアルミニウムのような不活性な金属の保護膜が、反応性金属を保護し且つカソード抵抗を下げるために用いられ得る。
【0199】
カソード層150は、通常、化学的又は物理的蒸着処理によって形成され得る。一般に、カソード層は、アノード層110に関連しての上述のようにパターン化される。デバイスが配列内に位置していれば、カソード層150は、カソード層ストリップ長がアノード層ストリップ長と実質的に同じ方向で且つ実質的に垂直である実質的に平行なストリップにパターンかされる。画素と呼ばれる電子的要素は交差点(そこで、配列を平面図又は上面図から見るとアノード層ストリップがカソード層ストリップと交差している。)で形成される。トップエミッティングデバイスでは、ITOのような薄層透明導電体と結合されたCaおよびBaのような低仕事関数の金属の極薄層が透明カソードとして用いられ得る。トップエミッティングデバイスは、大口径比が実現され得るのでアクテリィブ・マトリクス駆動のディスプレーで有益である。そのようなデバイスの例が参照によりその全てが本明細書に組み入れられるC.C.ウー(Wu)らによる「Integration of Organic LED’s and Amorphous Si TFT’s onto Flexible and Lightweight Metal Foil Substrates」、IEEE Electron Device Letters、Vol.18、No.12、1997年12月に記載されている。
【0200】
他の態様において、追加の層が有機電子デバイス内に存在し得る。例えば、正孔注入層120とEL層130との間の1つの層(図示せず)は、他の機能の中でも正電荷輸送、複数の層のエネルギーレベルの整合、保護層としての機能を促進し得る。同様に、EL層130とカソード層150との間の追加の複数の層(図示せず)は、他の機能の中でも負電荷輸送、複数の層の間のエネルギーレベルの整合、保護層としての機能を促進し得る。また、当業界で公知である複数の層が含まれ得る。さらに、上記の層のいずれも2つ以上の層から作成され得る。あるいは、無機アノード層110、正孔注入層120、EL層130およびカソード層150のいくつか又は全部が電荷キャリアの輸送効率を増大させるために表面処理され得る。各構成層の材料の選択は、高いデバイス効率と長いデバイス寿命とを有するデバイスを提供する目標と製造コスト、製造の複雑さ又は他の潜在的な要因とのバランスを取ることによって決定され得る。
【0201】
異なる複数の層は、任意の適した厚さを有し得る。無機アノード層110は、通常約500nm以下、例えば約10〜200nmであり、正孔注入層120は、通常約300nm以下、例えば約30〜200nmであり、EL層130は、通常約1000nm以下、例えば30〜500nmであり、任意層140は、通常100nm以下、例えば約20〜80mであり、そしてカソード層150は通常300nm以下、例えば約1〜150nmである。アノード層110又はカソード層150が少なくともいくらかの光を伝達する必要がある場合、その層の厚さは約150nm以下である。
【0202】
電子デバイスの適用により、EL層130は、信号により活性化(例えば、発光ダイオード内で)される発光層又は放射エネルギーに応答しそして加電圧(例えば、検出器又は光電池)と共に又はなしで信号を発生させる材料の層であり得る。発光材料は、添加物と共に又はなしで他の母材中に分散され、そして単独で1つの層を形成し得る。EL層130は、一般的に約30〜500nmの範囲内の厚さを有する。
【0203】
本発明の水分散液を含む1つ以上の層を有することから利益を得る他の有機電子デバイスの例は、(1)電気エネルギーを放射線に変換するデバイス(例えば、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレー又はダイオードレーザー)、(2)電子プロセスにより信号を検出するデバイス(例えば、光検出器(例えば、光伝導セル、光レジスタ、光スイッチ、フォトレジスタ、光学管)、IR検出器)、(3)放射線を電気エネルギーに変換するデバイス(例えば、光起電装置、太陽電池)、および(4)1つ以上の有機半導体層(例えば、トランジスタ又はダイオード)を含む1つ以上の電子部品を有するデバイスを含む。
【0204】
有機発光ダイオード(OLED)は、電子又は正孔をそれぞれカソード150およびアノード110の層からEL層130中に注入し、そしてポリマーに負荷電および正荷電ポーラロンを形成する。これらのポーラロンは印加電界の影響を受けて移動し、反対に荷電したポーラロンを有する励起子を形成しそしてその後放射再結合を受ける。アノードとカソードとの間の十分な電位差(通常は約12ボルト未満、そして多くの場合は約5ボルト以下)がデバイスに適用され得る。実際の電位差は大きい電子部品でのデバイスの使途に依存している。多くの態様において、電子デバイスの操作の間、アノード層110は正電位にバイアスをかけられそしてカソード層150は実質的に接地電位か又は0ボルトである。電池又は他の電源(図示せず)は回路の一部として電子デバイスに電気的に接続され得る。
【0205】
2つ以上の異なる発光材料を用いるフルカラー又は部分カラーディスプレーの製造は、各発光材料がその性能を最適化するために異なるカソードを用いると複雑になる。表示装置は、典型的には光を放つ非常に多数の画素を含んでいる。多色デバイスにおいては、少なくとも2つの異なる型のピクセル(サブピクセルと呼ばれる場合もある。)が異なる色の光を発している。サブピクセルは異なる発光材料で構成される。すべての発光体を有する良好なデバイス性能を与える単一のカソード材料を有することが望ましい。このことはデバイス製造の複雑さを最小化する。正孔注入層が本発明の水分散液で作成される場合には、一般的なカソードが多色デバイスで用いられ得ることが分かった。カソードは、前述の任意の材料で作成され得て、そして不活性金属、例えば銀又はアルミニウムで上塗りされたバリウムであり得る。
【0206】
ポリ(チエノ[3,4-b]チオフェン)および少なくとも1つのコロイド形成性ポリマー酸および少なくとも1つの非フッ素化ポリマー酸を含む導電性ポリマーの水分散液を含有する1つ以上の層を有することから利益を得る他の有機電子デバイスとしては、(1)電気エネルギーを放射線に変換するデバイス(例えば、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレー又はダイオードレーザー)、(2)電子プロセスにより信号を検出するデバイス(例えば、光検出器(例えば、光伝導セル、光レジスタ、光スイッチ、フォトレジスタ、光学管)、IR検出器、(3)放射線を電気エネルギーに変換するデバイス(例えば、光起電装置、太陽電池)、および(4)1つ以上の有機半導体層を含む1つ以上の電子部品を有するデバイス(例えば、トランジスタ又はダイオード)を含む。
【0207】
必要であれば、正孔注入層は、水溶液又は溶媒から適用された導電性ポリマーの層で上塗りされ得る。導電性ポリマーは電荷移動を促進し得てまた被覆性を改良し得る。適した導電性ポリマーの例は、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリチエノチオフェン/ポリスチレンスルホン酸、ポリジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸、ポリアニリン-ポリマー酸-コロイド、PEDOT−ポリマー酸-コロイドおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つを含む。
【0208】
さらに他の態様において、本発明は、本発明の分散液から得られる電極を含む薄膜電界効果利用トランジスタに関する。薄膜電界効果利用トランジスタにおける電極として用いるために、導電性ポリマーおよび導電性ポリマーを分散又は溶解するための液体は半導体ポリマーおよび溶媒と混合可能である(例えば、ポリマー又は半導体ポリマーの再溶解を防止するため)。導電性ポリマーから製造された薄膜電界効果利用トランジスタの電極は約10S/cmより大きい伝導度を有するべきである。しかしながら、水可溶性ポリマー酸で作成された導電性ポリマーは、通常約10−3S/cm以下の範囲の伝導度を提供する。それ故、本発明の1つの態様において、電極は、少なくとも1つのポリチオフェン、少なくとも1つのエーテル含有ポリマーおよび任意にフッ素化コロイド形成性ポリマー酸を導電性促進剤、例えば、特に、ナノワイヤー、カーボンナノチューブと組み合わせて含む。本発明のさらに他の態様において、電極は、ポリ(チエノ[3,4-b]チオフェン)、少なくとも1つのエーテル含有ポリマーおよびコロイド形成性ペルフルオロエチレンスルホン酸を導電性促進剤、例えば、特に、ナノワイヤー、カーボンナノチューブと組み合わせて含む。本発明の組成物は、ゲート電極、ドレイン電極又は光源電極として薄膜電界効果利用トランジスタに用いられ得る。
【0209】
有機薄膜トランジスタ(OTFT)デバイスにおいて、電極の仕事関数とチャネル材料のエネルギーレベルとの不一致に起因して、源電極からチャネル材料への電荷注入は制限され得て、電極およびチャネル材料の接点での大幅な電圧降下をもたらす。その結果、見掛け上の電荷移動度は低くなり、そしてOTFTデバイスは弱電流しか流し得ない。OLEDにおける正孔注入層としての適用と同様に、本発明の導電性ポリマー膜の薄膜が、エネルギーレベルの適合を改良し、接触電圧降下を低減しそして電荷注入を改善するためにOTFTデバイスの源電極又はドレイン電極との間に適用され得る。その結果として、大電流と高電荷移動度がOTFTデバイスにおいて達成され得る。
【0210】
本発明は、以下の限定的でない実施例を参照してさらに詳細に説明される。以下の実施例は、本発明の特定の態様を説明しそして本明細書の特許請求の範囲の請求項に記載の発明の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0211】
本発明およびその利点は以下の特定の実施例によってさらに説明される。
【0212】
実施例A
ポリマーの合成
ポリマー12(スルホン化PEEK:s-PEEK)
【0213】
ポリマーPEEK(VitrexPEEK 150XF)を300mLの濃硫酸に50℃で溶解した。反応液を窒素下、室温で10日間混合した。ポリマーを冷氷水中に沈殿させた。ポリマーをろ過により集め、水で十分に洗浄した。次いで、ポリマーをメタノールに溶解し、そして等容積の水を加えた。メタノールを減圧下に除去した。透明な水溶液を得るためにイオン交換樹脂IR−120とMP−62とでイオン不純物を除いた。
【0214】
スルホン化度をHおよび13Cで測定すると、88%であった。溶液の残存金属イオンを誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)により分析し、次のイオンが検出された:Al(<1ppm)、Ba(<1ppm)、Ca(23ppm)、Cr(<1ppm)、Fe(<8ppm)、Mg(<1ppm)、Mn(<1ppm)、Ni(<1ppm)、Zn(<1ppm)、Na(≦6ppm)、K(<1ppm)。残部のアニオンをイオンクロマトグラフィー(IC)で分析し、検出されたアニオンのクロリド、硫酸塩、硝酸塩、フルオリドは1未満であった。
【0215】
ポリマー6(スルホン化ポリ(ヒドロキシフェニルフタラジノンエーテルケトン):s−PPPEK)
ジメチルアセトアミド中、塩基の存在下に高温で、4,4’-ジフルオロベンゾフェノンと1-ヒドロキシ-4-ヒドロキシフェニルフタラジンとの反応(Hay,A.S.米国特許第5237062号明細書;引用により本明細書に組み入れられる。)によって、ポリ(ヒドロキシフェニルフタラジノンエーテルケトン)(PPPEK)を合成した。ポリマー6をポリマー12と同様の手順で合成した。沈殿後、ポリマーを温水で十分に洗浄した。次いで、ポリマーを温水で約8%固形分に溶解しそしてイオン交換樹脂IR−120とMP−62とで精製した。溶液の残存金属イオンを誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)により分析し、次のイオンが検出された:Al(<2ppm)、Ba(<9ppm)、Ca(3ppm)、Cr(<0.3ppm)、Fe(<1ppm)、Mg(2ppm)、Mn(<0.3ppm)、Ni(<0.2ppm)、Zn(<2ppm)、Na(32ppm)、K(7ppm)。残部のアニオンをイオンクロマトグラフィー(IC)で分析し、検出されたアニオンのクロリド(1.7ppm)、硫酸塩(3.2ppm)であった。
【0216】
ポリマー26(スルホン化ポリ(フェニレンオキシド):s−PPO)
三口丸底フラスコに窒素導入口、機械攪拌機および圧力均一化した添加ロートを設置した。フラスコにポリ(フェニレンオキシド)(アルドリッチから購入、Mw244000、Mn32000)(36g、0.3molの繰り返し単位)および360mLの無水1,2-ジクロロエタンを加えた。添加ロートに230mLのジクロロエタン中のクロロスルホン酸(38.4g、0.33mol)を加えた。ポリマーがフラスコ内のジクロロエタンに溶解した後、激しく攪拌しながらクロロスルホン酸溶液を滴下方式で加えた。淡褐色の沈殿物が形成した。クロロスルホン酸の添加後、反応液をさらに4時間室温で攪拌した。沈殿したポリマーをろ過し、ジクロロエタンで十分洗浄し空気乾燥した。次いで、ポリマーをメタノールに溶解しそして等量の水を加えた。メタノールを減圧下に除去した。得られた透明な水溶液のイオン性不純物を除くためにイオン交換樹脂IR−120とMP−62とで精製し、5.3%固形分の溶液を得た。
【0217】
スルホン化度をHおよび13Cで測定すると、88%であった。溶液の残存金属イオンを誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)により分析し、次のイオンが検出された:Al(<1ppm)、Ba(<1ppm)、Ca(15ppm)、Cr(<1ppm)、Fe(<3ppm)、Mg(8ppm)、Mn(<1ppm)、Ni(<1ppm)、Zn(<2ppm)、Na(26ppm)、K(3ppm)。残部のアニオンをイオンクロマトグラフィー(IC)で分析し、検出されたアニオンのクロリド(2.1ppm)、硫酸塩(6.8ppm)であった。
【0218】
ポリマー30(スルホン化ポリスルホン:s-PSU)
ポリマー30をポリマー26と同様の手順で合成した。
200mLの無水1,2-ジクロロエタン中のポリスルホン(アルドリッチから購入、Mw35000、Mn16000)(20g、0.045molの繰り返し単位)を65mLのジクロロエタン中のクロロスルホン酸(5.8g、0.05mol)と反応させた。イオン交換樹脂IR−120とMP−62とで精製後、ポリマーを透明な水溶液として得た。
【0219】
スルホン化度をHおよび13Cで測定すると、90%であった。溶液の残存金属イオンを誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)により分析し、次のイオンが検出された:Al(<3ppm)、Ba(<3ppm)、Ca(≦6ppm)、Cr(<3ppm)、Fe(<2ppm)、Mg(<2ppm)、Mn(<4ppm)、Ni(<2ppm)、Zn(<2ppm)、Na(≦4ppm)、K(2ppm)。残部のアニオンをイオンクロマトグラフィー(IC)で分析し、検出されたアニオンのクロリド(1.2ppm)、硫酸塩(1.9ppm)であった。
【0220】
ポリマー32a(x=1、y=0)(スルホン化されたフッ素化ポリスルホン:s-F-PSU)
丸底フラスコにディーン-スタークトラップおよび磁気攪拌機を設置した。フラスコに4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール(アルドリッチから購入)(14.67g、0.044mol)、3,3’-ジスルホン化-4,4’-ジフルオロフェニルスルホンジナトリム塩(プライムオーガニクス社から購入)(20.0g、0.044mol)、炭酸カリウム(15.07g、0.11mol)、80mLトルエンおよび80mLのジメチルアセトアミドを加えた。水を除くために反応液を140℃に4時間加熱した。温度を170℃に上昇させ、そして反応液を終夜加熱した。全反応時間は18時間であった。反応液を室温まで冷却しそしてポリマーをアセントン中で沈殿させた。ポリマーをろ集し、そしてアセトンで洗浄し空気乾燥した。明るいベージュ色のポリマーを水に溶解しイオン交換樹脂IR−120とMP−62とで精製し、透明なポリマー水溶液を得た。
【0221】
溶液の残存金属イオンを誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)により分析し、次のイオンが検出された:Al(<2ppm)、Ba(<3ppm)、Ca(<3ppm)、Cr(<0.3ppm)、Fe(<1ppm)、Mg(0.8ppm)、Mn(<0.3ppm)、Ni(<0.6ppm)、Zn(<2ppm)、Na(70ppm)、K(4ppm)。残部のアニオンをイオンクロマトグラフィー(IC)で分析し、検出されたアニオンのクロリド(0.68ppm)、硫酸塩(0.43ppm)であった。
【0222】
ポリマー32b(x=y=0.5)(s-50F-PSU)
ポリマー32bをポリマー32aと同様の手順で合成した。
炭酸カリウム(24.66g、0.18mol)、120mLトルエンおよび120mLのジメチルアセトアミドの存在下、ビス(4-フルオロフェニル)スルホン(アルドリッチから購入)(11.34g、0.045mol)および3,3’-ジスルホン化-4,4’-ジフルオロフェニルスルホンジナトリム塩(プライムオーガニクス社から購入)(20.45g、0.045mol)を4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール(アルドリッチから購入)(30.0g、0.0894mol)と反応させた。ポリマーをアセントン中で沈殿させそしてろ過した。真空で乾燥後、ポリマーを水に懸濁させそしてろ過した。次いで、ポリマーを1/1のメタノール/水に溶解し、そしてメタノールを減圧下に除いた。ポリマーをイオン交換樹脂IR−120とMP−62とで精製し、透明なポリマー水溶液を得た。
【0223】
溶液の残存金属イオンを誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)により分析し、次のイオンが検出された:Al(<2ppm)、Ba(<4ppm)、Ca(<3ppm)、Cr(<0.3ppm)、Fe(<1ppm)、Mg(0.9ppm)、Mn(<0.3ppm)、Ni(<0.6ppm)、Zn(<2ppm)、Na(22ppm)、K(31ppm)。残部のアニオンをイオンクロマトグラフィー(IC)で分析し、検出されたアニオンのクロリド(0.1ppm)、硫酸塩(0.45ppm)であった。
【0224】
実施例B
導電性ポリマー分散液の合成
導電性ポリマー分散液を合成するための一般的な手順を用いた。
すべての実施例において、導電性ポリマー分散液のモノマーとして3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)又はチエノ[3,4-b]チオフェン(TT)を用いた。丸底フラスコに所望量のEDOT、水およびポリマー溶液を加えた。混合物を5分間攪拌した。別の容器に硫酸第二鉄および水を加えた。重合中に過硫酸ナトリウムが存在する場合は、他の別の容器に過硫酸ナトリウムと水とを加えた。次いで、硫酸第二鉄水溶液を激しく攪拌しながらEDOT/ポリマーの混合物に加え、該当する場合は続けて過硫酸塩溶液の添加を行った。重合を所定時間室温で行いそしてイオン交換樹脂(IEX)を加えて停止させた。樹脂をろ過して除いた後、必要であれば濃い分散液を超音波で分解し次いで0.45μmのPVDFフィルターでろ過した。重合結果を表1〜3にまとめた。
【0225】
抵抗率試験
分散液をキャストした導電性ポリマー膜の抵抗率をガラス基板上のITO交互嵌合電極を用いて測定した。有効電極長さは15cmでフィンガー間のギャップは20μmであった。分散液を0.45μmの親水性PVDFフィルターでろ過し、抵抗率測定のためITO交互嵌合基板上に1分間で1000rpmのスピン速度でスピンコートした。スピンコートの前に、ITO基板をUVOCZ設備でUV-オゾン処理で清浄化した。次いで、スピンコートした膜を窒素充填したグローブボックスに移し、そしてKeithley2400ソースメータおよび自社開発したLabVIEWプログラムを用いるコンピューターと連動した自動スイッチを用いて抵抗率を測定した。次いで、膜を窒素充填したグローブボックス内にて180℃で15分間アニーリングし、そして抵抗率を再び測定した。
【0226】
デバイス試験
PLEDデバイスを作るために、表面抵抗10〜15Ω/口のパターン化したITO基板(コロラドコンセプトコーティングLLCから)を用いた。ITO基板を脱イオン水、洗剤、メタノールおよびアセトンの組み合わせによって清浄化した。次いで、ITO基板は、SPI PrepIIプラズマエッチャー内でOプラズマで10分間清浄化していつでも導電性ポリマー分散液でコーティングする状態になっていた。すべての導電性ポリマー分散液は、スピンコーティングの前に0.45μmの親水性PVDFフィルターでろ過した。約50〜100nmの膜厚を得るために、ろ過した導電性分散液を用いて清浄化したITO基板をスピンコートした。スピンの長さは、LaurellモデルWS-400-N6PPスピナー上に1〜3分間であるようにプログラミングした。均一な膜が得られた。次いで、コートしたITO基板を窒素充填したグローブボックス内にて180℃で15分間アニーリングした。アニーリング後、10〜20nm厚みの中間層の架橋性ポリフルオレン(住友化学社から供給)を含む層をトルエン又はキシレン溶液からスピンコートした。次いで、試料を窒素保護下にホットプレート上で180〜200℃で30〜60分間乾燥させた。その後で、約50〜90nm厚みの青色発光ポリマー(住友化学社から供給)のポリフルオレンを含む層をトルエン又はキシレン溶液からスピンコートした。次いで、試料を窒素保護下にホットプレート上で130℃、10分間乾燥させた。あるいは、緑色のPLEDデバイスを作製した。導電性ポリマーをアニーリングした後、約80nm厚みの登録商標LUMATION緑色1304ポリフルオレンLEP発光ポリマー(住友化学社から供給)を含む層をトルエン又はキシレン溶液からスピンコートした。次いで、試料を窒素保護下にホットプレート上で130℃、20分間乾燥させた。次いで、試料を窒素雰囲気のグローブボックス内に置かれた真空蒸発装置のチャンバー中に移した。5nm厚みのBaの層をマスクから約1.5Å/Sの堆積速度で1〜2x10−6mBar未満で真空蒸着し、そしてBa層の表面に約3.0〜4.0Å/Sの速度で120nmの厚みのAgの他層を真空蒸着し、LEDデバイスを形成した。次いで、デバイスを窒素グローブボックス内でガラス製カバーフタおよび紫外線硬化性エポキシで封入した。デバイスの活性域は約6.2mmであった。次いで、LEDデバイスをグローブボックスから室温の空気中に移し出した。厚さをKLA Tencor P-15プロファイラー上で測定した。電流-電圧特性をKeithley 2400Sourceメーター上で測定した。デバイスのエレクトロルミネセンス(EL)スペクトルをOriel InstaSpec IV CCDカメラを用いて測定しそして参照によりその全てが本明細書に組み込まれる入れられる米国特許公開第20060076557号明細書の図3に示されている。EL発光の出力は、Newport2835-C多機能光学的計測器を目盛り付のSiフォトダイオードとともに用いて測定した。輝度は、デバイスのEL前方向出力とELスペクトルとを用いて、EL発光のランバート分散を仮定して計算し、そしてPhoto Reseach PR650比色計で検証した。PLEDデバイスの寿命は、室温で定電流運転条件下にエリプスの商品名PLED寿命テスター(ケンブリッジ ディスプレー テクノロジーから)で測定した。駆動電流は、Si光ダイオードを用いて測定した初期輝度を達成するために必要な電流密度により設定した。この実施例における実験に対して、青色PLEDデバイスの初期デバイス輝度として3000ニット(nit)がそして緑色PLEDデバイスに5000nitが用いられ、そしてデバイスの寿命を輝度が初期値の50%に達するために要する時間と定義した。同じインク組成を用いた多くのデバイスを作製したので、デバイスの性能データを表5に示すように1つの範囲として報告した。これらのデータは、誘導電圧(ボルト)および3000ニット輝度での電流効率(Cd/A)、および寿命測定の間の誘導電圧増加を初期からT50までの電圧変化を%で測定した寿命T50(時間)を含む。加えて、特定の導電性ポリマーインクから導入されたデバイスの性能の整合性を評価するために、デバイス収率の評価基準を策定した。デバイス収率は、実験内で重複する全デバイスの数のうちで正当なデバイス性能を示したデバイス数の%である。この点で、”正当なデバイス機能”の用語は以下のように規定される:電流効率が3Cd/Aより大で、寿命が10時間より大でそして駆動電圧が10ボルト未満であること。
【0227】
【表1】

【0228】
【表2】

【0229】
【表3】

【0230】
実施例C
導電性ポリマーD1(ポリ(チエノ[3,4-b]チオフェン(PTT)/登録商標NAFION−18:1))
3Lの二重反応器に、1700gの脱イオン水を加えた。反応容器に12%の登録商標NAFION(EW1100、デラウェア州、ウィルミントン、デュポン社から供給)水分散液を600g加え、そしてオーバーヘッド攪拌機で5分間混合した。二重フラスコを22℃の反応温度を維持するために調整した。反応容器中に、チエノ[3,4-b]チオフェン(TT)4g(28.6mmol)を350gの脱イオン水に溶解したFe(SOOの17.7g(34.2mmol)とともに別々に加えた。装填時の登録商標NAFION:TT=18:1であった。反応液は、20分間内で明るい緑色からエメラルドグリーン、そして暗青色に変色した。重合は、モノマーおよび酸化剤の導入後4時間継続するようにした。次いで、94.0gの登録商標Amberlite IR-120カチオン交換樹脂(シグマ-アルドリッチケミカル社)および94.0gの登録商標Lewatit MP-62アニオン交換樹脂(フルカ、シグマアルドリッチケミカル社)を含む4Lの登録商標Nalgene瓶に反応容器の内容物を加えることによって得られた分散液を清浄化し、不透明な暗青色のポリ(チエノ[3,4-b]チオフェン(PTT)/登録商標NAFION)水分散液を得た。分散液を10、5、0.65および0.45μm孔径のフィルターを通してろ過した。分散液の残存金属イオンを誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)により分析し、次のイオンが検出された:Al(<1ppm)、Ba(<1ppm)、Ca(<20ppm)、Cr(<1ppm)、Fe(37ppm)、Mg(<1ppm)、Mn(<1ppm)、Ni(<1ppm)、Zn(<1ppm)、Na(≦6ppm)、K(<1ppm)。最終の分散液は固形分含量が2.86%で、粘度が2.1mPaそしてpH2.4であった。
【0231】
導電性ポリマー分散液D2(PEDOT/Nafion 18:1)
チエノ[3,4-b]チオフェン(TT)の代わりに3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)を用いた他は導電性ポリマーD1と同様にして、導電性ポリマー分散液D2を合成した。最終の分散液は固形分含量が約3質量%で、NafionとPEDOTとの供給時の質量比は18:1であった。
【0232】
導電性ポリマー分散液D3(PEDOT/s-PSU)
s-PSUとPEDOTとの反応容器に供給する比率が12:1の代わりに10:1である他は実施例Bにおける分散液Fと同様にして、導電性ポリマー分散液D3を合成した。
【0233】
導電性ポリマー分散液D4(PEDOT/s-PPEEK)
表2に示すように、実施例Bにおける分散液Gと同様にして、導電性ポリマー分散液D4を合成した。
【0234】
清浄化した登録商標Amberlite IR120-Na 交換樹脂の調製
500mLのポリボトルに、202gのイオン交換樹脂であるNa形の登録商標Amberlite IR120(登録商標Amberliteはペンシブベニア州、フィラデルフィアのローム&ハース社のイオン交換樹脂の登録商標である。)および300mLの電子グレードの水を供給した。装填物質を20〜24℃、1〜4時間攪拌することなく浸し、その後60メッシュのステンレス製ふるい上に集めた。この洗浄工程を室温で全部で5回繰り返し、続いて混合物を70℃で2時間加熱した他は同量の水を用いて3回のさらなる洗浄を続けた。最終的に樹脂を60メッシュのふるい上に集めて、清浄化したIR120-Naを55.2%固形分を得た。
【0235】
導電性ポリマーインクI−C1(本発明)
導電性ポリマーインクI−C1を調製するために、最終のインクが2.55質量%の固形分を含有するように、導電性ポリマー分散液D3を蒸留水と混合した。インクは、1.5mPaの粘度、1.8のpHそして登録商標Nafionポリマーを参照として用いるケルビンプローブによる仕事関数が4.92eVであった。
【0236】
導電性ポリマーインクI−C2(本発明)
導電性ポリマーインクI−C2を調製するために、120gの導電性ポリマーインクI−C1を12gの清浄化した登録商標Amberlite IR120-Naイオン交換樹脂とポリボトル内で混合した。ボトルを終夜ローラー上に約16〜17時間置いて、その後イオン交換樹脂を窒素圧下、0.45μmの薄膜フィルターを通すろ過により除いた。インクは、1.6mPaの粘度、2.8質量%の固形分、2.6のpHそして登録商標Nafionポリマーを参照として用いるケルビンプローブによる仕事関数が4.77eVであった。
【0237】
導電性ポリマーインクI−C3(本発明)
導電性ポリマーインクI−C3を調製するために、120gの導電性ポリマーインクI−C1を12gの清浄化した登録商標IR120-NHイオン交換樹脂とポリボトル内で混合した。ボトルを終夜ローラー上に約16〜17時間置いて、その後イオン交換樹脂を窒素圧下、0.45μmの薄膜フィルターを通すろ過により除いた。インクは、1.6mPaの粘度、2.85質量%の固形分、2.8のpHそして登録商標Nafionポリマーを参照として用いるケルビンプローブによる仕事関数が4.90eVであった。
【0238】
導電性ポリマーインクI−C4(本発明)
導電性ポリマーインクI−C3を調製するために、最終のインクが1.87質量%の固形分を含有するように、導電性ポリマー分散液D4を蒸留水と混合した。インクは、2.7mPaの粘度、1.6のpHそして登録商標Nafionを参照として用いるケルビンプローブによる仕事関数が5.15eVであった。
【0239】
導電性ポリマーインクI−C5(本発明)
導電性ポリマーインクI−C5を調製するために、120gの導電性ポリマーインクI−C4を12gの清浄化した登録商標IR120-Naイオン交換樹脂とポリボトル内で混合した。ボトルを終夜ローラー上に約16〜17時間置いて、その後イオン交換樹脂を窒素圧下、0.45μmの薄膜フィルターを通すろ過により除いた。インクは、3.0mPaの粘度、2.02質量%の固形分、2.5のpHそして登録商標Nafionポリマーを参照として用いるケルビンプローブによる仕事関数が5.02eVであった。
【0240】
導電性ポリマーインクI−C6(本発明)
導電性ポリマーインクI−C6を調製するために、120gの導電性ポリマーインクI−C4を12gの清浄化した登録商標IR120-NHイオン交換樹脂とポリボトル内で混合した。ボトルを終夜ローラー上に約16〜17時間置いて、その後イオン交換樹脂を窒素圧下、0.45μmの薄膜フィルターを通すろ過により除いた。インクは、2.9mPaの粘度、2.03質量%の固形分、2.6のpHそして登録商標Nafionポリマーを参照として用いるケルビンプローブによる仕事関数が5.17eVであった。
【0241】
導電性ポリマーインクC−C1(比較例)
導電性ポリマーインクC−C1は導電性ポリマー分散液D2と同じであった。
【0242】
導電性ポリマーインクC−C2(比較例)
導電性ポリマーインクC−C2は導電性ポリマー分散液D1と同じであった。
【0243】
インクの粘度を商標ARES歪み制御レオメーター(デラウエア州、ニューカッスル、TAインスツルメント、旧レオメトリック サイアンティフィック)を用いて測定した。温度は循環水槽を用いて25℃に調整した。雰囲気は試験の間は水の蒸発を最小限に抑えるために水蒸気で飽和させた。クエット形状を用いて、ボブとコップはチタニウムで作製した。ボブは直径が32mmそして長さが33.3mmで、コップの直径は34mmであった。試験ごとに約10mLの試料を用いた。試料を積んだ後、試料は荷重履歴の影響を除去するために100s−1で5分のプレせん断に供した。15分遅延で、粘度を1〜200s−1の範囲のせん断速度で測定した。
【0244】
膜抵抗率を実施例Bに記載したように、ガラス基板上のITO交互嵌合電極を用いて測定した。すべての膜はITOガラス基板上にスピンコート法を用いてキャストした。窒素グローブボックス内にて180℃で15分間アニーリングする前と後の膜の膜抵抗率の両方を求めた。アニーリングの前と後との抵抗率の比を膜抵抗率安定性を評価するための方法として用いる。比が30未満であるときは、"良好"として示される。比が30より大であるときは、"悪い"として示される。
【0245】
膜濡れ特性を明らかにするために、スピンコーティング法を用いてインクを基板(例えば、1"x1"ITO/ガラス、コロラド コンセプト コーティング社から供給)上に堆積させた。膜厚み50〜100nmを達成するために特定のスピン速度を選択した。試験中の膜上への液(例えば、水又は有機溶媒)滴の接触角を得るためにクリュス滴形状分析システムモデルDSA100を用いた。装置は特定の期間(60秒間)広がる滴を記録する。滴形状分析ソフトウェアは円適合法を用いて接触角をこの60秒周期で計算する。膜表面エネルギーを二成分フロークス理論モデルを用いて決定した。フロークスの理論は、固体と液体との間の接着エネルギーは2つの相の分散成分間の相互作用と2つの相の非分散(極性)成分間の相互作用とに分離され得るということを仮定している。表面エネルギーの分散成分σは、ただ1つの分散成分ジヨードメタン(σ=50.8mN/m)を有する液体を用いた膜接触角を測定することにより決定した。その後、1つの分散成分と1つの非分散(極性)成分、例えば水(σ=46.4mN/m、σ=26.4mN/m)の両方を有する第2の液体を用いた膜接触角を試験した。次の式:
(σ1/2(σ1/2+(σ1/2(σP1/2=σ(cosθ+1)/2
により計算し得る。
【0246】
図1に描かれたOLEDデバイス構造では、エレクトロルミネセント(EL)層は、溶液法によって正孔注入層(HIL)の表面に堆積され得る。デバイス性能と膜形成性を向上させるためには、HIL膜基材上のEL材料が濡れ性を有することが望ましい。濡れ性は液体と表面との間の密着性として規定される。液体が高い表面張力(強い凝集力)を有するときは、表面上に小滴を形成する傾向がある。一方、低い表面張力を有する液体は大きな面積に広がる傾向がある(表面への結合)。他方、固体表面が高い表面エネルギー(又は表面張力)を有する場合、滴は広がるか、又は表面を濡らす。固体表面が低い表面エネルギーを有する場合、小滴が生じる。この現象は典型的には界面エネルギーの最小化の結果である。湿潤性を決定するための第1の測定は接触角測定である。これは、固体表面上の液体小滴の複数の表面間の角度を測定する。濡れが起るためには、堆積する液体の表面張力は接触している表面のそれよりも低くなければならない。それ故に、HIL膜の固体表面エネルギーを測定することは有用である。OLEDデバイスで用いられるほとんどのEL材料は18〜30mN/mの範囲の液体表面張力を有するキシレン又はトルエンなどの有機溶媒を用いるので、HIL膜固体表面は良好な濡れ性を得るために30mN/mより大きい表面エネルギーを有することが望ましい。それ故、膜が30mN/mより大きい固体表面エネルギーを有するときには、"易湿潤性膜"とみなされる。同様に、膜が30mN/mより低い固体表面エネルギーを有するときには、"難湿潤性膜"とみなされる。この基準を表4で用いた。
【0247】
【表4】

【0248】
【表5】

【0249】
【表6】

【0250】
表4におけるデータは、本発明におけるエーテル含有ポリマーを含む導電性ポリマーインクが、エーテル含有ポリマー酸を含まない導電性ポリマー分散液インク(C-C1およびC-2)と比較して、幅広い範囲のアニーリング温度で有意に改良された抵抗率安定性を示した。加えて、表4におけるデータは、本発明におけるエーテル含有ポリマーを含む導電性ポリマーインクが、対照インク(C-C1)と比較して、高い表面エネルギーを有する固体膜を形成したことを示した。この優れた特性が、ELデバイス製造の部品として本発明の膜に堆積されるときにEL溶液の濡れ性の増加を可能とする。さらに、表6のデータは、本発明におけるエーテル含有ポリマーを含む導電性ポリマーインクが、対照インク(C-C1)と比較して、全デバイスでの良好な性能整合性を有する機能デバイスを作製するために用いられ得ることを示した。
【0251】
実施例D:導電性ポリマーインク
導電性ポリマー分散液D5(PEDOT/s-PPEEK)
導電性ポリマー分散液5を、供給に際してのPEDOTとPPEEKとの質量比が12:1に代えて10:1である他は実施例Cの分散液D4と同様に調製した。
【0252】
導電性ポリマーインクI-D1(本発明)
導電性ポリマーインクI-D1は導電性ポリマー分散液D5と同じである。インクの残存金属イオンをICP−MSにより分析し、次のイオンが検出された:Al(<1ppm)、Ba(<1ppm)、Ca(<2ppm)、Cr(<0.1ppm)、Fe(9ppm)、Mg(<0.1ppm)、Mn(<0.1ppm)、Ni(<0.1ppm)、Zn(<0.6ppm)、Na(3ppm)、K(8ppm)。インクのpHを測定したら1.5で、そしてナフィオンの仕事関数6.10eVを用いたケルビンプローブにより5.20eVの仕事関数であった。
【0253】
導電性ポリマーインクI-D2(本発明)
導電性ポリマーインクI-D2を調製するために、15gの導電性ポリマー分散液D5をポリボトルに入れそして攪拌下に1NのNaOHを滴下式に加えた。全量0.67gの1NのNaOHを加えて塩基が分散液の質量の約4.47wt%になった。最終のインクは、2.66のpHおよびナフィオンの仕事関数6.10eVを用いたケルビンプローブにより4.92eVの仕事関数であった。インクの残存金属イオンをICP−MSにより分析し、次のイオンが検出された:Al(<1ppm)、Ba(<1ppm)、Ca(<2ppm)、Cr(<0.1ppm)、Fe(7ppm)、Mg(<0.5ppm)、Mn(<0.1ppm)、Ni(<0.1ppm)、Zn(<0.6ppm)、Na(963ppm)、K(14ppm)。
【0254】
導電性ポリマーインクI-D3(本発明)
導電性ポリマーインクI-D3を調製するために、15.7gの導電性ポリマー分散液D5をポリボトルに入れそして攪拌下に1NのNaOHを滴下式に加えた。全量0.82gの1NのNaOHを加えて塩基が分散液の質量の約5.22wt%になった。最終のインクは、4.88のpHおよびナフィオンの仕事関数6.10eVを用いたケルビンプローブにより4.72eVの仕事関数であった。インクの残存金属イオンをICP−MSにより分析し、次のイオンが検出された:Al(<1ppm)、Ba(<1ppm)、Ca(<2ppm)、Cr(<0.1ppm)、Fe(7ppm)、Mg(<0.5ppm)、Mn(<0.1ppm)、Ni(<0.1ppm)、Zn(<0.6ppm)、Na(1183ppm)、K(19ppm)。
【0255】
導電性ポリマーインクI-D4(本発明)
導電性ポリマーインクI-D4を調製するために、17.1gの導電性ポリマー分散液D5をポリボトルに入れそして攪拌下に1NのNaOHを滴下式に加えた。全量0.90gの1NのNaOHを加えて塩基が分散液の質量の約5.26wt%になった。最終のインクは、6.25のpHおよびナフィオンの仕事関数6.10eVを用いたケルビンプローブにより4.69eVの仕事関数であった。インクの残存金属イオンをICP−MSにより分析し、次のイオンが検出された:Al(<1ppm)、Ba(<1ppm)、Ca(<2ppm)、Cr(<0.1ppm)、Fe(7ppm)、Mg(<0.5ppm)、Mn(<0.1ppm)、Ni(<0.1ppm)、Zn(<0.6ppm)、Na(1258ppm)、K(24ppm)。
【0256】
膜抵抗率を、実施例BおよびCに記載したようにガラス基板上のITO交互嵌合電極を用いて測定した。すべての膜はITOガラス基板上にスピンコート法を用いてキャストした。実施例Bに記載されているように、アニーリングする前に、交互嵌合電極一式を用いて膜抵抗率を測定した。次いで、膜を窒素グローブボックス内にて130℃で15分間アニーリングしそして抵抗率データを求めるために室温まで冷却した。次いで、同じ基板を窒素グローブボックス内にて180℃で15分間で2回目のアニーリングするためにホットプレート上に置いた。次いで、膜抵抗率データを集めた。アニーリングの前と後との抵抗率の比を膜抵抗率安定性を評価するための方法として用いる。比が30未満であるときは、"良好"として示される。比が30より大であるときは、"悪い"として示される。
【0257】
【表7】

【0258】
表7におけるデータは、本発明におけるエーテル含有ポリマーを含む導電性ポリマーインクが、エーテル含有ポリマー酸を含まない導電性ポリマー分散液インク(C-C1およびC-2)と比較して、幅広い範囲のアニーリング温度で有意に改良された抵抗率安定性を示した。また、本発明のエーテル含有分散液の材料特性の更なる改良が、表7の実施例Dに示すように、重合後の処理、例えば対イオン型およびpHレベルの調整により可能であることを示した。
【0259】
本発明は特定のは態様を参照して説明したが、当業者は、本発明の範囲を離れることなく発明の要件に対して種々の変形および均等物の置き換えがなされ得ることを理解するであろう。加えて、本発明の教示に対して特定の状況又は材料を適用させるために本発明の範囲を離れることなく多くの修正がなされ得る。それ故、本発明は本明細書に開示された特定の態様に限定されないこと、しかし、本発明は特許請求の範囲の請求項の発明の範囲に入るすべての態様を含むことを意図している。
【符号の説明】
【0260】
110 アノード層
120 正孔注入層
130 EL層
140 任意層
150 カソード層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの導電性ポリマー、少なくとも1つのエーテル含有ポリマーを含む水分散液。
【請求項2】
前記導電性ポリマーが、ポリ(チエノ[3,4-b]チオフェン)を含む請求項1に記載の分散液。
【請求項3】
分散液が少なくとも1つのフッ素化されたスルホン酸ポリマーを含むコロイド形成性ポリマー酸を含む請求項1に記載の分散液。
【請求項4】
分散液が塩基性イオン交換樹脂で処理されている請求項1に記載の分散液。
【請求項5】
分散液が少なくとも1つの塩基性化合物で処理されている請求項1に記載の分散液。
【請求項6】
前記塩基性化合物が、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化カルシウム、水酸化セシウムおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つである請求項5に記載の分散液。
【請求項7】
前記導電性ポリマーが、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリチエノチオフェン/ポリスチレンスルホン酸、ポリジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸、ポリアニリン-ポリマー酸コロイド、PEDOT、PEDOT-ポリマー酸-コロイド、セレン含有ポリマーおよびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む請求項1に記載の分散液。
【請求項8】
前記エーテル含有ポリマーが、スルホン化したポリ(エーテルケトン)、スルホン化したポリ(アリレンオキシド)、スルホン化したポリスルホンおよびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む請求項1に記載の分散液。
【請求項9】
前記エーテル含有ポリマーが、スルホン化したPEEK、スルホン化したポリ(ヒドロキシフェニルフタラジノンエーテルケトン)、スルホン化したポリ(フェニレンオキシド)、スルホン化したポリスルホン、スルホン化したフッ素化ポリスルホンおよびそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つを含む請求項1に記載の分散液。
【請求項10】
少なくとも1つの硫酸塩をさらに含む請求項1に記載の分散液。
【請求項11】
請求項1の水分散液から形成されてなる導電性膜。
【請求項12】
請求項1の組成物を含む導電性の膜又は層を含む電子デバイス。
【請求項13】
少なくとも1つのポリチオフェンおよびポリチオフェン層と接している少なくとも1つの導電性電極をさらに含む請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記デバイスが、有機電子デバイスを含む請求項12に記載のデバイス。
【請求項15】
前記デバイスが、有機発光ダイオード、有機光電子デバイス、有機光起電の装置、ダイオードおよびトランジスタからなる群から選択される少なくとも1つである請求項15に記載のデバイス。
【請求項16】
少なくとも1つのコロイド形成性ポリマー酸および少なくとも1つの非フッ素化ポリマー酸をさらに含む請求項1に記載の分散液。

【図1】
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【公開番号】特開2010−84146(P2010−84146A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−223302(P2009−223302)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】7201 Hamilton Boulevard, Allentown, Pennsylvania 18195−1501, USA
【Fターム(参考)】