説明

ポリテトラヒドロフランのモノエステル及び/又はジエステルを含有する混合物の解重合のための方法

本発明の対象は、ポリテトラヒドロフランのモノエステル及び/又はジエステルを含有する混合物を、酸性触媒及びC1〜C3−アルコールの存在下で80〜200℃の温度で、かつ0.05〜0.5MPaの圧力で解重合させるための方法において、前記C1〜C3−アルコールと、前記混合物中に含まれるカルボキシ基とのモル比が、1より大きい方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリテトラヒドロフランのモノエステル及び/又はジエステルを含有する混合物を、酸性触媒及びC1〜C3−アルコールの存在下で80〜200℃の温度で、かつ0.05〜0.5MPaの圧力で解重合させるための方法において、前記C1〜C3−アルコールと、前記混合物中に含まれるカルボキシ基とのモル比が、1より大きい方法に関する。
【0002】
ポリテトラヒドロフラン(以下、PTHFと呼ぶ)は、ポリオキシブチレングリコールとも呼ばれるが、それは、プラスチック工業及び合成繊維工業において、多方面にわたる中間生成物として使用され、かつとりわけポリウレタン−、ポリエステル−及びポリアミド−エラストマーの製造のために用いられる。その他に、ポリテトラヒドロフランは、その幾つかの誘導体も同様に、多くの使用分野において、例えば分散剤として又は古紙の脱色(脱インキ)に際して有益な助剤である。
【0003】
PTHFは、工業的には通常は、テトラヒドロフラン(以下、略してTHFと呼ぶ)を好適な触媒上で重合させることによって製造される。好適な試薬の添加によって、ポリマー鎖の鎖長を制御することができるので、平均分子量は所望の値に調整することができる。その制御は、その際に、テロゲンの種類と量によって行われる。係る試薬は、連鎖中断試薬又は"テロゲン"と呼ばれる。好適なテロゲンの選択によって、付加的に、ポリマー鎖の一方の端部に又は両端部に官能基を導入することができる。
【0004】
大工業的には、大抵は、テトラヒドロフランを、例えばフルオロスルホン酸の存在下で重合させてポリテトラヒドロフラン−エステルとし、引き続きそれを加水分解してポリテトラヒドロフランを得る二段階法が実施される。
【0005】
特に、THF−重合もしくはTHF−共重合をC2〜C12−カルボン酸無水物の存在下で又は該無水物とC2〜C12−カルボン酸との混合物の存在下で、例えば無水酢酸又は無水酢酸−酢酸混合物の存在下で酸性触媒の存在下で行ってPTHFのモノエステル及び/又はジエステルを得て、引き続き前記PTHF−エステル又はTHF−コポリマーのエステルとメタノールとの塩基性触媒による反応を行ってPTHF又はTHF−コポリマー(末端ヒドロキシ基を有する)を得ることが好ましい。
【0006】
PTHF−エステルについてのエステル交換法は、例えばEP−A38009号及びDE−A2801578号に記載されている。
【0007】
PTHF−エステルであって、所望の目的分子量を有さず又は他の理由から、例えば高粘度、広い分子量分布、高い色数もしくは不純物に基づいてPTHFへの更なる処理のための要求を満たさないものは、それが解重合によってTHFへと遡って変換され、精製され、そして出発物質として再びプロセスへと返送されうるという点では使用することができる。例えば、JP−A−11−269262号から公知の方法によれば、低いモル質量を有するPTHF−エステルを、まず所望の分子量のPTHF−エステルから蒸留により分離し、引き続き加水分解し、解重合する一方で、所望の分子量のPTHF−エステルのエステル交換をすることで、最終生成物PTHFが得られる。しかしながら、前記の解重合の条件下で、解重合されたエステルから遊離される酸は、腐食作用を有するか又は触媒を失活させうる。
【0008】
本発明の課題は、ポリテトラヒドロフランのモノエステル及び/又はジエステルからなる混合物であって、場合によりポリテトラヒドロフランの低分子の直鎖状もしくは環状のオリゴマーを含有する混合物の解重合にあたり、良好な寿命及び収率を有する触媒が使用され、かつ良好に分離可能であり、腐蝕性でなく、かつ触媒失活作用を有さない副生成物が形成される経済的に実施されるべき方法を開発することであった。
【0009】
ここで驚くべきことに、前記課題は、ポリテトラヒドロフランのモノエステル及び/又はジエステルを含有する混合物を、酸性触媒及びC1〜C3−アルコールの存在下で80〜200℃の温度で、かつ0.05〜0.5MPaの圧力で解重合させるための方法において、前記C1〜C3−アルコールと、前記混合物中に含まれるカルボキシ基とのモル比が、1より大きい方法によって解決されることが判明した。
【0010】
本発明による方法によって、先行技術の方法で生ずるような酢酸の遊離が回避される。その代わりに、容易に分離可能な酢酸エステル、好ましくは酢酸メチルが形成される。酢酸メチルは、カルボニル化によって直接的にかつ経済的に再び無水酢酸に変換でき、それは再びPTHFの製造方法に導入することができる。
【0011】
触媒としては、特に該重合を触媒することもできる酸性触媒が該当する。
【0012】
それには、例えば酸性粘土もしくは漂白用粘土を基礎とする触媒が挙げられ、例えば該触媒は、DE−A1226560号に記載されている。漂白用粘土、特にまた活性化されたモンモリロナイトは、固定床中で成形体として又は懸濁液中で使用することができる。
【0013】
本発明により同様に使用できるヘテロポリ酸は、イソポリ酸に対して少なくとも2つの異なる中心原子を有する無機ポリ酸である。ヘテロポリ酸は、金属、例えばクロム、モリブデン、バナジウム及びタングステン並びに非金属、例えばヒ素、ヨウ素、リン、セレン、ケイ素、ホウ素及びテルルの部分的な混合無水物としてのそれぞれの弱い多塩基性の酸素酸からなる。例として、ドデカタングストリン酸H3(PW1240)又はドデカモリブドリン酸H3(PMo1240)が挙げられる。ヘテロポリ酸は、第二の中心原子として、アクチノイドもしくはランタノイドを含有してよい(Z.Chemie 17(1977)、第353〜357頁もしくは19(1979)、第308頁)。このヘテロポリ酸は、一般に式H8-n(Yn1940)により記載することができ、その際、n=元素Y(例えばホウ素、ケイ素、亜鉛)の原子価である(Heteropoly− und Isopoly−oxomtalates,Berlin;Springer 1983参照)。本発明による方法のためには、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、ケイ素モリブデン酸及びケイ素タングステン酸が特に適性がよい。
【0014】
触媒として使用されるヘテロポリ酸は、乾燥されて(1〜10モルの水/1モルのヘテロポリ酸)又は乾燥せずに(10〜40モルの水/1モルのヘテロポリ酸)解重合において使用することができる。
【0015】
更に、混合型の金属酸化物を基礎とする触媒は、THFへの解重合のために適している。ここで、JP−A04−306228号は、式Mxy[整数値のx及びyは、1〜3の範囲である]の金属酸化物からなる混合型の金属酸化物を記載している。例として、Al23−SiO2、SiO2−TiO2、SiO2−ZrO2及びTiO2−ZrO2が挙げられる。
【0016】
US5,208,385号は、非晶質のケイ素/アルミニウム−混合酸化物を基礎とする触媒を開示している。また、SnO2/SiO2、Ga23/SiO2、Fe23/SiO2、In23/SiO2、Ta25/SiO2及びHfO2/SiO2を基礎とする混合酸化物は公知である。上述の触媒は、有利には共沈/ゾル・ゲル法によって製造される。担体触媒は、DE−A4433606号に開示されており、その際、酸化タングステンもしくは酸化モリブデンが、例えばZrO2、TiO2、HfO2、Y23、Fe23、Al23、SnO2、SiO2もしくはZnO上に施与される。更に、ZrO2/SiO2触媒であって担体がアルカリ金属濃度<5000ppmを有するものが推奨される。
【0017】
引用された全ての固体触媒は、原則的にストランド形でも、懸濁液でも使用することができる。ヘテロポリ酸は、液体形で使用することができる。
【0018】
酸性イオン交換体を基礎とする触媒は、US4,120,903号に記載されており、例えばα−フルオロスルホン酸を含有するポリマー(例えばNafion(登録商標))である。更に、金属及びペルフルオロアルキルスルホン酸−アニオンを含む触媒が適している。
【0019】
その他に、解重合触媒としては、なおも更なる場合により活性化された粘土鉱物が知られており、それは、例えばWO94/05719号、WO96/23833号、WO98/51729号、WO99/12992号及びDE−A19513493号に開示されている。また、ゼオライトは触媒として適しており、かつ例えばDE−A4316138号に記載され、同様に酸性ケイ酸塩、例えばUS6207793号に開示されるようなハロイサイトを基礎とするものを使用することができる。最後に、硫酸化された酸化ジルコニウム、硫酸化された酸化アルミニウム、担持されたヘテロポリ酸及び担持された重弗化アンモニウム(NH4F*HF又は五フッ化アンチモン)がなおも好適な解重合触媒として知られている。
【0020】
好ましくは、本発明による方法は、活性化された漂白用粘土を用いて実施される。
【0021】
触媒の前処理としては、例えば80〜200℃、有利には100〜180℃にまで加熱されたガス、例えば空気又は窒素を用いての乾燥が該当する。
【0022】
本発明による解重合は、酸性触媒の存在下で、80〜200℃、有利には90〜180℃、特に有利には100〜160℃の温度で、かつ0.05〜1.0MPa、有利には0.075〜0.5MPa、特に有利には0.09〜0.25MPaの圧力で、混合物中に含まれるカルボキシ基に対して、少なくともモル過剰のC1〜C3−アルコールを用いて実施される。
【0023】
出発混合物中に含まれるカルボキシ基、すなわちエステル及びカルボン酸基の濃度の測定は、湿式化学的に酸価もしくはエステル価の測定によって行われる。
【0024】
有利には、C1〜C3−アルコールとしてメタノールが使用される。それというのも、それから形成される酢酸メチルは、解重合混合物から容易に分離できるだけでなく、同様に形成されるTHFからも分離でき、腐蝕性でなく、経済的に、重合に必要な無水酢酸へと遡って変換できるからである。
【0025】
1〜C3−アルコール、特にメタノールは、ポリテトラヒドロフランのモノエステル及び/又はジエステルの混合物中に含まれるカルボキシ基に対して、有利には1.5:1〜20:1のモル比で、特に有利には3:1〜12:1のモル過剰で使用される。
【0026】
出発生成物は、ポリテトラヒドロフランのモノエステル及び/又はジエステルの混合物であって、前記の理由からPTHFの更なる加工のために適しておらず、かつ本発明により添加されるべきC1〜C3−アルコールを考慮せずに、0.1〜100質量%のポリテトラヒドロフランのモノエステル及び/又はジエステルを有するものである。該出発生成物は、自体公知の方法に従って、例えばDE−A2801578号に記載される方法に従って、THF重合もしくはTHF共重合によって、C2〜C12−カルボン酸無水物又は該無水物とC2〜C12−カルボン酸との混合物の存在下で製造することができる。低分子のオリゴマーの分離は、例えばJP11−269262号に記載されるような真空中での蒸発によって行うことができる。本発明による方法のためには、しかしながら、低分子のオリゴマーは、例えばDE−A2801578号による重合の生成物流からのPTHF−ジエステルも使用することができる。該生成物流からのPTHF−ジエステルの解重合は、該エステルが生成物仕様を満たさない場合には、必要である。仕様に適合していない前記生成物は、例えば生産プラントのモル質量の調節の間に、汚染によって、又は作動障害によって形成されうる。同様に、本発明による方法では、PTHFのエステルであって、PTHFのエステル化によって一般に公知の手法に従って、例えばOrganikum,Johann Ambrosius Barth出版、ハイデルベルク、第20版、1996年、第444頁に従って製造されたものを使用できる。
【0027】
2〜C12−カルボン酸無水物又は該無水物とC2〜C12−カルボン酸との混合物の存在下でのTHF重合もしくはTHF共重合による製造方法の場合に、第一段階で、PTHFもしくはTHFコポリマーのモノエステル及び/又はジエステルを、テロゲンと、場合によりコモノマーとの存在下での、酸性の、有利には不均一系の触媒、例えば解重合に関して上述した触媒上でのTHFの重合によって製造される。有利には、漂白用粘土が使用される。
【0028】
重合は、一般に0〜80℃の温度で、有利には10℃からTHFの沸点温度までの温度で実施される。使用される圧力は、一般に、重合の成果には決定的ではないので、一般に、大気圧で、又は重合系の自圧下で作業される。
【0029】
エーテルペルオキシドの形成を回避するために、有利には不活性ガス雰囲気下での重合が行われる。不活性ガスとしては、例えば窒素、二酸化炭素又は希ガスを用いることができ、有利には窒素が使用される。該方法は、断続的にもしくは連続的に実施できるが、経済的な理由から有利には連続的に実施される。
【0030】
テロゲンは連鎖中断をもたらすので、使用されるテロゲン量によって、製造されるポリマーの平均分子量を制御できる。テロゲンとしては、PTHFのモノエステル及び/又はジエステルの製造においては、無水カルボン酸及び/又はカルボン酸が適している。有利には、有機のカルボン酸もしくはその無水物が使用される。前記のものには、2〜12個の炭素原子、有利には2〜8個の炭素原子を有する、脂肪族の及び芳香族のポリカルボン酸及び/又はモノカルボン酸が含まれている。脂肪族のカルボン酸のために好ましい例は、酢酸、アクリル酸、乳酸、プロピオン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸及びペラルゴン酸であり、そのうち酢酸が好ましい。芳香族カルボン酸のための例は、フタル酸及びナフタリンカルボン酸である。脂肪族のポリカルボン酸の無水物のための例は、アクリル酸無水物、コハク酸無水物及びマレイン酸無水物である。無水酢酸が特に好ましい。
【0031】
テロゲンとして使用されるカルボン酸無水物の重合反応器に供給される出発材料混合物(フィード)中での濃度は、使用されるTHFに対して、0.03〜30モル%、有利には0.05〜20モル%、特に有利には0.1〜10モル%である。付加的にカルボン酸が使用される場合に、フィード中のモル比は、通常は、使用されるカルボン酸無水物に対して、1:20〜1:20000である。
【0032】
THF−コポリマーのモノエステル及びジエステルは、開環重合が可能なコモノマーとしての環状エーテル、有利には3員環、4員環及び5員環、例えば1,2−アルキレンオキシド、例えばエチレンオキシドもしくはプロピレンオキシド、オキセタン、置換オキセタン、例えば3,3−ジメチルオキセタン、THF誘導体の2−メチルテトラヒドロフランもしくは3−メチルテトラヒドロフランを付加的に使用することによって製造することができ、その際、2−メチルテトラヒドロフラン又は3−メチルテトラヒドロフランが特に好ましい。
【0033】
同様に、C2〜C12−ジオールをコモノマーとして使用することができる。これらは、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,3−プロパンジオール、2−ブチン−1,4−ジオール、1,6−ヘキサンジオール又は低分子のPTHFであってよい。更に、コモノマーとしては、環状エーテル、例えば1,2−アルキレンオキシド、例えばエチレンオキシドもしくはプロピレンオキシド、2−メチルテトラヒドロフラン又は3−メチルテトラヒドロフランが適している。
【0034】
重合混合物のテロゲン含有率に応じて、該方法を用いて、平均分子量250〜1000ダルトンを有するPTHFもしくはTHFコポリマーのモノエステル及び/又はジエステルを狙い通りに製造することができる。有利には、本発明による方法によって、平均分子量500〜5000ダルトン、特に有利には650〜4000ダルトンを有する当該PTHF−エステルを製造することができる。呼称"平均分子量"もしくは"平均モル質量"とは、本願では、そのポリマーの分子量の数平均Mnを表す。その測定は、湿式化学的なOH価測定によって行われる。
【0035】
重合後に、目標分子量を有するポリテトラヒドロフランのエステルと、所望の分子量を有さないポリテトラヒドロフランのモノエステル及び/又はジエステルは、自体公知の分離方法で分離される。
【0036】
特に、本発明による方法において、PTHF−製造法で生じうる他の成分の存在は許容されることが好ましい。PTHF−ジエステルの他に、本発明により使用可能なPTHF(ポリテトラヒドロフラン、ジオール形)のモノエステル及び/又はジエステルの混合物は、環状THF−オリゴマー、1,4−ブタンジオール、1,4−ブタンジオールのモノエステル/ジエステル、THF、カルボン酸(例えば酢酸)、カルボン酸無水物(例えば無水酢酸)及び水を有してよい。
【0037】
重合の目標分子量に相当しない分子量を有するポリテトラヒドロフランのモノエステル及び/又はジエステルの混合物を有する出発生成物は、更に、ポリテトラヒドロフランの直鎖状もしくは環状のオリゴマーを含有してよい。
【0038】
環状オリゴマーは、例えば以下の式:
【化1】

[mは、1、2、3、4、5、6、7である]の化合物であってよい。
【0039】
前記オリゴマーは、一般に、ポリテトラヒドロフランエステルのPTHFへのエステル交換の後に、特定の工程で分離して、THFへと解重合される。PTHFの製造のための方法全体の経済性を得るために、こうして得られたTHFを改めて重合に供給することができる。これらは、重合の目標分子量に相当しない分子量を有するポリテトラヒドロフランのモノエステル及び/又はジエステルの混合物の一部として解重合することができる。本発明を更に実施例をもとに詳細に説明する。
【0040】
実施例
エステル価及び酸価の測定
出発材料のエステル含量及びカルボン酸含量(混合物中に含まれるカルボキシ基)の測定は、当業者に公知の方法に従う"エステル価"及び"酸価"の測定によって行った。酸価の測定のためには、全ての含まれるカルボン酸を過剰の水酸化カリウムで中和し、残っている水酸化カリウムの物質量を、塩酸による容量滴定によって測定した。鹸化価の測定のためには、全ての存在しているエステルを過剰のエタノール性水酸化カリウムで鹸化した。残っている水酸化カリウムの物質量を、塩酸による容量滴定によって測定した。エステル価は、こうして測定された鹸化価と、前記の酸価との差から得られる。エステル価とは、1gの物質のアセチル化で結合される酢酸量に等しい量の水酸化カリウム(mg)を表す。
【0041】
OH価の測定
ヒドロキシ基の含量の測定は、当業者に公知の方法に従う"OH価"の測定として実施した。このためには、全てのOH基を、過剰のアセチル化試薬(無水酢酸)と反応させ、そして過剰の酸当量を水酸化カリウム溶液による容量滴定によって測定した。OH価とは、1gの物質のアセチル化で結合される酢酸量に等しい量の水酸化カリウム(mg)を表す。
【0042】
PTHF−ジオール及びPTHF−ジエステルの平均モル質量は、以下の式に従ってOH価もしくはエステル価から測定することができる:
モル質量(ジオール)=2000×56.11/OH価
モル質量(ジエステル)=2000×56.11/エステル価
カール・フィッシャーによる含水量測定
含水量の測定は、カール・フィッシャー滴定によって実施した。そのために、1〜3mLのサンプル溶液を、カール・フィッシャー法による含水量の測定のための自動装置(Metrohm Karl Fischer Coulometer KF756)に噴射した。測定は、電量滴定の様式で実施し、それはカール・フィッシャー反応、つまりヨウ素と二酸化硫黄との水を媒介する反応を基礎としている。
【0043】
分析
揮発性の反応排出物(留出物)であるTHF、酢酸メチル、メタノール及び酢酸を、ガスクロマトグラフィーによって分析した。該混合物を、そのために規定量の内部標準(ジエチレングリコールジメチルエーテル)と混合し、そして希釈せずにGCクロマトグラフ(HP社、キャリヤーガス:水素)において30mのDB1カラム(J+W社)へと射出し、そして60〜300℃のオーブン温度で(1分間あたりに8ケルビンの昇温速度で220℃まで、次いで1分間あたりに20ケルビンの昇温速度で300℃まで)水素炎イオン化検出器(温度:290℃)を用いて分析した。組成は、クロマトグラムのシグナルの積分によって測定した。シグナル強度の質量割合への換算は、事前に実施した内部標準(ジエチレングリコールジメチルエーテル)による較正をもとに実施した。
【0044】
実施例1
撹拌機、接続された供給導管及び蒸留カラム(30cm、6×6mmの金網リングで充填)を有する1Lの多口フラスコ中に35gの漂白用粘土(Sued−Chemie社のK10粉末)を装入した。引き続き、該フラスコを、以下の組成:
21質量%のPTHF−オリゴマー(平均モル質量Mn=250)
21質量%のPTHF−酢酸エステル(平均モル質量Mn=355)
2.6質量%の酢酸
30質量%のTHF
24質量%のメタノール
1.2質量%の水
を有する供給溶液700mLで充填した。
【0045】
前記の方法に相応して、含まれるカルボキシ官能(エステル、酸)の割合は、1.6・10-3モル/gで測定された。それは、添加されたメタノールに関して、混合物中に含まれるカルボキシ基に対して、4.7:1のモル過剰に相当した。
【0046】
それを、沸騰するまで加熱した。蒸留が始まると同時に、供給ポンプを用いて、30g/hの上記の供給混合物を装置中に供給した。加熱によって、フラスコ中で一定の液体レベルに調整した。移行する留出物を、ガスクロマトグラフィーによって分析した。100時間の作業時間後に、以下の一定の作業パラメータ及び排出物組成が見出された:
油浴温度:136℃
底部温度:135℃
蒸留カラムの頂部温度:61℃
1時間あたりの留出物量:30g
留出物の組成は、ガスクロマトグラフィーと滴定(含水量測定)によって、9.9質量%のメタノール、11.5質量%の酢酸メチル、62.8質量%のTHF、4.8質量%の水、0.1質量%未満の酢酸、11.9質量%の未同定の成分と測定された。
【0047】
実施例2
撹拌機、接続された供給導管及び蒸留カラム(30cm、6×6mmの金網リングで充填)を有する2Lの多口フラスコ中に5gのヘテロポリ酸(タングストリン酸水和物、CAS番号12501−23−4、Sigma−Aldrich社の市販品)を装入し、そして真空中で150℃で12時間乾燥させた。引き続き、該フラスコを、以下の組成:
25質量%のPTHF−オリゴマー(平均モル質量Mn=1000)
27質量%のPTHF−酢酸エステル(平均モル質量Mn=1100)
27質量%のTHF
20質量%のメタノール
1質量%の水
を有する供給溶液1020gで充填した。
【0048】
前記の方法に相応して、含まれるカルボキシ基(エステル)の割合は、5・10-4モル/gで測定された。それは、添加されたメタノールに関して、混合物中に含まれるカルボキシ基に対して、12:1のモル過剰に相当した。
【0049】
それを、沸騰するまで加熱した。蒸留が始まると同時に、供給ポンプを用いて、20g/hの上記の供給混合物を装置中に供給した。加熱によって、フラスコ中で一定の液体レベルに調整した。移行する留分を、ガスクロマトグラフィーによって分析した。5時間の作業時間後に、以下の作業パラメータ及び排出物組成が見出された:
蒸留カラムの頂部温度:63℃
1時間あたりの留出物量:20g
留出物の組成は、ガスクロマトグラフィーと滴定(含水量測定)によって、16質量%のメタノール、3質量%の酢酸メチル、71質量%のTHF、4質量%の水、0.1質量%未満の酢酸、6質量%の未同定の成分と測定された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリテトラヒドロフランのモノエステル及び/又はジエステルを含有する混合物を、酸性触媒及びC1〜C3−アルコールの存在下で80〜200℃の温度で、かつ0.05〜0.5MPaの圧力で解重合させるための方法において、前記C1〜C3−アルコールと、前記混合物中に含まれるカルボキシ基とのモル比が、1より大きい方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、メタノールを使用することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の方法において、メタノールを、混合物中に含まれるカルボキシ基に対して、1.5:1〜20:1のモル量で使用することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法において、酸性ケイ酸塩、酸性粘土、漂白用粘土、硫酸化された酸化亜鉛、硫酸化された二酸化ジルコニウム、硫酸化された酸化アルミニウム、硫酸化されたタングステン−ジルコニウム二酸化物、ヘテロポリ酸、ゼオライト及び酸性イオン交換体から選択される固体の酸性触媒を使用することを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法において、漂白用粘土を触媒として使用することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法において、100〜160℃の温度で、かつ0.075〜0.5MPaの圧力で解重合させ、そしてエステル交換させることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれ1項に記載の方法において、前記混合物が、ポリテトラヒドロフランの低分子の直鎖状及び/又は環状のオリゴマーを含有することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法において、前記混合物がTHFを含有することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法において、前記混合物が水を含有することを特徴とする方法。

【公表番号】特表2010−538136(P2010−538136A)
【公表日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523479(P2010−523479)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【国際出願番号】PCT/EP2008/061237
【国際公開番号】WO2009/030619
【国際公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】