説明

ポリヒドロキシウレタンの製造方法及びポリヒドロキシウレタン水分散体

【課題】耐水性が良く、任意の水酸基価を選択できるポリヒドロキシウレタンを製造する方法を提供する。
【解決手段】ポリヒドロキシウレタンを製造するにあたり、下記一般式(1)で示されるアミドジアミンモノマー(ただし、nは1以上の整数である)と、1分子中に少なくとも2個の5員環環状カーボネート基を有するカーボネートモノマーとの混合物を反応させ高分子量化する。


(式中、Rは炭素数2〜12のアルキレン、シクロアルキレン、またはフェニレンを表し、Rは炭素数2〜10のアルキレン、シクロアルキレン、またはフェニレンを表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリヒドロキシウレタンの製造方法に関し、詳しくは、低温かつ短時間に、着色などの欠点がなく、効率よく、耐水性が良い高分子量のポリヒドロキシウレタンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリヒドロキシウレタンの製造方法として、例えば、特開昭62−285910号公報には、ビスフェノールA−ジグリシジルビスカーボネートなどのカーボネートモノマーとヘキサメチレンジアミンなどのアミンモノマーとを高分子量化反応させてウレタン基含有重合体を製造する方法が開示されている(特許文献1)。
【0003】
特許文献1には、カーボネートモノマーとカルボキシル基を反応させる時に触媒を使用することについて記載されているが、上記高分子量化反応にアミドジアミンモノマーを使用すること、また触媒を使用することについては記載されていない。
【0004】
特開昭63−166854号公報には、ビス−シクロカーボネートとポリアミンとを有機溶剤中で反応させてアミノウレタンを製造する方法が開示されている(特許文献2)。
【0005】
特許文献2には、ビス−シクロカーボネートとポリアミンとの反応を触媒の存在下に行うことについては記載されていない。またポリアミンをアミドジアミンに限定していない。
【0006】
特開2000−319504号公報には、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル−ビスカーボネート体と4,9−ジオキサドデカン−1,12−ジアミンとを有機溶剤中で反応させて高分子量のポリヒドロキシウレタンを製造する方法が開示されている(特許文献3)。
【0007】
特許文献3には、上記高分子量化反応を触媒の存在下に行うことについては記載されておらず、ジアミンもアミドジアミンに限定したものではない。
【0008】
特開2006−9001号公報には、1分子中に少なくとも2個の5員環環状カーボナート基を有するカーボナートモノマーと1分子中に1級アミノ基および2級アミノ基より選ばれる少くとも2個のアミノ基を有するアミンモノマーとの混合物をルイス酸触媒の存在下に高分子量化反応させてポリヒドロキシウレタン樹脂を製造する方法が開示されている(特許文献4)。
【0009】
特許文献4には、アミンモノマーとして、アミドジアミンモノマーを使用することについては記載されていない。
【特許文献1】特開昭62−285910号公報
【特許文献2】特開昭63−166854号公報
【特許文献3】特開2000−319504号公報
【特許文献4】特開2006−9001号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記各文献に記載のジカーボネートモノマーとジアミンモノマーとからポリヒドロキシウレタンを製造する方法では、得られたポリヒドロキシウレタンの耐水性が悪く、水酸基価が限られるという課題があり、その解決が望まれていた。
【0011】
本発明の目的は、耐水性が良く、任意の水酸基価を選択できるポリヒドロキシウレタンを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、ポリヒドロキシウレタンを製造するにあたり、下記一般式(1)で示されるアミドジアミンモノマー(ただし、nは1以上の整数である)と、1分子中に少なくとも2個の5員環環状カーボネート基を有するカーボネートモノマーとの混合物を反応させ高分子量化することを特徴とするポリヒドロキシウレタンの製造方法である。
【化1】

【0013】
(式中、Rは炭素数2〜12のアルキレン、シクロアルキレン、またはフェニレンを表し、Rは炭素数2〜10のアルキレン、シクロアルキレン、またはフェニレンを表す。)
【0014】
本発明のポリヒドロキシウレタンの製造方法においては、触媒の存在下に行われることが好ましく、塩基性触媒および/またはルイス酸触媒を用いることができる。
【0015】
また、該高分子量化反応が、50〜150℃の温度および3〜12時間の反応時間の条件下に行われることが好ましい。
【0016】
また、本発明は、上記のポリヒドロキシウレタンの製造方法で得られたポリヒドロキシウレタンを、水中に分散してなるポリヒドロキシウレタン水分散体に関する。
【発明の効果】
【0017】
従来の製造方法で得られるポリヒドロキシウレタンは、水酸基価が170〜180mgKOH/gに制限されていたが、本発明の製造方法によれば、60〜120mgKOH/gの範囲で水酸基価を設計することができ、かつ耐水性の良い高分子量のポリヒドロキシウレタンが得られる。
【0018】
さらに、本発明によれば、さらに、短時間でポリヒドロキシウレタンが合成できることから、ポリヒドロキシウレタンの生産工程が1/2から1/3に短縮することが期待でき、工業的な観点から製造経費が削減できる効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に使用されるアミドジアミンモノマーは、下記一般式(1)で示される(ただし、nは1以上の整数である)。
【0020】
【化2】

【0021】
式中、Rは炭素数2〜12のアルキレン、シクロアルキレン、またはフェニレンを表し、Rは炭素数2〜10のアルキレン、シクロアルキレン、またはフェニレンを表す。
【0022】
一般式(1)で示されるアミドジアミンモノマーとしては、例えば、ジアミンと2塩基酸とを不活性溶媒の存在下または不存在下、140〜170℃の温度で、反応させることによって得られる。
【0023】
本発明で使用されるジアミンとしては、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミンおよび芳香族ジアミンから選ばれる少なくとも1種のジアミンであり、具体的には、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタン、2,2’,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、ネオペンタンジアミン、4,9−ジオキサドデカン−1,12−ジアミンなどの脂肪族ジアミン;1,4−シクロヘキサンジアミン、1,4−ジアミノメチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン、4,4’−ジアミノシクロヘキシルメタンなどの脂環式ジアミン;メタキシリレンジアミン、オルトキシリレンジアミン、パラキシリレンジアミンなどの芳香族ジアミンなどが挙げられる。
【0024】
本発明で使用される2塩基酸としては、脂肪族2塩基酸、脂環式2塩基酸および芳香族2塩基酸から選ばれる少なくとも1種の2塩基酸であり、具体的には、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族2塩基酸;テレフタル酸などの芳香族2塩基酸;ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式2塩基酸などの2塩基酸が挙げられる。
【0025】
アミドジアミンモノマーは、これらジアミンと2塩基酸の混合比2:1〜4:3(モル比)の混合物を反応させることで得られる。分子量は500〜1000が好ましい。
【0026】
本発明における5員環環状カーボネート基としては、エポキシ基含有化合物と二酸化炭素とを反応させて得られる5員環環状カーボネート基が好ましい。
【0027】
5員環環状カーボネート基を有するカーボネートモノマーは、例えば、エポキシ基含有化合物を不活性溶媒の存在下または不存在下および触媒の存在下、40℃〜150℃の温度で常圧または僅かに高められた圧力下、二酸化炭素と反応させることで得られる。
【0028】
本発明におけるカーボネートモノマーとしては、芳香族ジエポキシ化合物と二酸化炭素とを反応させて得られる2個の5員環環状カーボネート基を有する芳香族ジカーボネート、脂肪族ジエポキシ化合物と二酸化炭素とを反応させて得られる2個の5員環環状カーボネート基を有する脂肪族ジカーボネート、脂環式ジエポキシ化合物と二酸化炭素とを反応させて得られる2個の5員環環状カーボネート基を有する脂環式ジカーボネートおよびポリエポキシ化合物と二酸化炭素とを反応させて得られる3個以上の5員環環状カーボネート基を有するポリカーボネートが挙げられる。
【0029】
上記芳香族ジエポキシ化合物としては、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0030】
上記脂肪族ジエポキシ化合物としては、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−へキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0031】
上記脂環式ジエポキシ化合物としては、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0032】
上記ポリエポキシ化合物としては、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0033】
本発明で使用されるカーボネートモノマーの具体例として、下記式(2)で表わされるビスフェノールAジグリシジルエーテル−ビスカーボネート、下記式(3)で表される1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル−ビスカーボネートが挙げられる。
【0034】
【化3】

【0035】
【化4】

【0036】
また、その他のカーボネートモノマーとしては、レゾルシノールジグリシジルエーテル−ビスカーボネート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル−ビスカーボネート、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル−ビスカーボネート、ポリプロピレングリシジルエーテル−ビスカーボネート、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル−ビスカーボネート、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル−トリカーボネート、グリセロールポリグリシジルエーテル−ポリカーボネート、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル−ポリカーボネートなどが挙げられる。
【0037】
本発明において、カーボネートモノマーとアミドジアミンモノマーとの混合割合は、5員環環状カーボネート基/アミノ基=0.5〜1.0/1.0〜0.5(モル比)、好ましくは0.8〜1.0/1.0〜0.8(モル比)の範囲にある。
【0038】
本発明で使用される触媒としては、塩基触媒およびルイス酸触媒が挙げられる。
【0039】
上記塩基触媒としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、DBU(ジアザビシクロウンデセン)、DABCO(ジアザビシクロオクタン)、ピリジンなどの3級アミン類;リチウムクロライド、リチウムブロマイド、フッ化リチウム、塩化ナトリウムなどのアルカリ金属塩類;塩化カルシウムなどのアルカリ土類金属塩類;テトラブチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムアイオダイド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウム塩類;炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどの炭酸塩類;酢酸亜鉛、酢酸鉛、酢酸銅、酢酸鉄などの金属酢酸塩類;水素化カルシウムなどの金属水素化物;酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛などの金属酸化物;テトラブチルホスホニウムクロリドなどのホスホニウム塩類、ベンジルテトラヒドロチオフェニウムクロリドなどのスルホニウム塩類が挙げられる。
【0040】
また、上記ルイス酸触媒として、テトラブチル錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫オキシドなどの錫化合物類が挙げられる。
【0041】
上記触媒の使用量は、カーボネートモノマーとアミドジアミンモノマーとの混合物100重量部当り0.1〜20重量部、好ましくは、0.3〜10.0重量部の範囲にある。
【0042】
上記触媒の使用量が0.1重量部未満では、触媒として反応促進効果が小さく好ましくなく、20重量部を超えると、塗膜にしたときに耐水性、耐候性などの諸性能に影響をおよぼし好ましくない。
【0043】
本発明方法における高分子量化反応は、通常上記触媒の存在下、例えば有機溶媒中、50〜150℃の温度および3〜12時間の反応時間で、好ましくは、60〜130℃および5〜10時間の条件下に行うことができる。
【0044】
上記高分子量化反応に使用できる有機溶剤として、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどが挙げられる。
【0045】
上記高分子化量反応によって得られるポリヒドロキシウレタンの重量平均分子量は2,000〜100,000、好ましくは20,000〜80,000の範囲にある。
【0046】
また、上記ポリヒドロキシウレタンは、水酸基価を60〜120mgKOH/gの範囲で任意に設計することができる。水酸基価が60mgKOH/g未満では架橋反応性が乏しく塗膜物性が不十分となり、120mgKOH/gを超えると耐水性の低下があり好ましくない。
【0047】
本発明において、上記ポリヒドロキシウレタンを水中に分散してなるポリヒドロキシウレタン水分散体を得る方法としては、例えば、重量平均分子量で、好ましくは、5,000〜50,000のポリヒドロキシウレタンを得る際、必要な親水性官能基を導入したり、また、高分子量化した後に、親水性官能基を導入することが可能である。その後、水に溶解、分散することにより水性ポリヒドロキシウレタンを得ることができる。親水性基は、アニオン型、カチオン型、ノニオン型いずれも可能である。
【0048】
例えば、アニオン型の親水基を導入する場合には、ポリマー中のOH基、NH残基と、酸無水物をハーフエステル化することによって、カルボン酸を導入し、その後、カルボン酸をアンモニア、有機アミン、無機塩基等で中和しカルボン酸塩を形成する。
【0049】
上記酸無水物の例として、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸などが挙げられる。
【0050】
上記有機アミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、アミノエチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、ジイソプロピルエタノールアミンなどが挙げられる。
【0051】
カチオン型の親水基を導入する場合には、例えば、シクロカーボネートに対する一級アミノ基と二級アミノ基の反応性の違いを利用し、比較的マイルドな反応条件下で反応させることにより一級アミノ基を反応させ二級アミノ基を残すことによって合成される。同様に、一級アミノ基と三級アミノ基をもつ化合物とシクロカーボネートを反応させれば、三級アミノ基を導入できる。その後、有機酸、無機酸で中和し、更に、水に溶解、分散させることで、カチオン型の水性ポリヒドロキシウレタンを合成することができる。
【0052】
ノニオン型の親水基を導入する場合には、例えば、ポリオキシエチレン鎖をポリヒドロキシウレタンの主鎖、あるいは側鎖に導入する。例えば、一分子中に少なくとも2個以上のアミノ基とポリオキシエチレン鎖をもつ化合物をアミンモノマーの一部に使用することで、ポリマー骨格中にポリオキシエチレン鎖を導入することができる。例えば、ジアミノポリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0053】
上記ポリヒドロキシウレタン水分散体は、従来のポリウレタン水分散体に比べて、主鎖中に水酸基を含むため硬化剤と架橋反応をさせることが可能である。また、本方法で得られた水分散体は着色が少ないため、下塗り塗料だけでなく特に上塗り塗料に有用である。
【実施例】
【0054】
以下実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。尚「部」および「%」は「重量部」および「重量%」を示す。
【0055】
[製造例1]
〈ビスフェノールAジグリシジルエーテル−ビスカーボネート体(式(2))の製造〉
ビスフェノールAジグリシジルエーテル2500g、テトラブチルアンモニウムブロミド60g、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)600gを混合し溶解させた後、炭酸ガスにて3気圧下、120℃で4時間加熱攪拌することによりビスフェノールAジグリシジルエーテル−ビスカーボネートを得た。オキシラン酸素(%)で反応収率を測定した結果、反応率は99.6%であった。
【0056】
[実施例1]
製造例1で得たビスフェノールAジグリシジルエーテル−ビスカーボネート体(式(2))200mモル、セバシン酸1モルとトリメチルヘキサンジアミン2モルから成るアミドジアミン180mモル、テトラブチルアンモニウムブロマイド6mモル、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)50gを加えて室温で均一に溶解させた。これらを130℃、10時間加熱攪拌しポリヒドロキシウレタンを合成した。
【0057】
得られた反応混合物をアミン価で解析した結果、ポリヒドロキシウレタンの収率は94%であった。また重量平均分子量は37,000であった。分子量分布はDMF(塩化リチウムを含む)を溶媒とするGPCで測定し、絶対分子量にて算出した。
【0058】
[実施例2]
アミンをセバシン酸2モルとトリメチルヘキサンジアミン3モルから成るアミドジアミンに代え、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)70gに代えた以外は実施例1と同様の条件でポリヒドロキシウレタンを合成した。
【0059】
得られたポリヒドロキシウレタンの収率は95%で、重量平均分子量は29,000であった。
【0060】
[実施例3]
アミンをセバシン酸3モルとトリメチルヘキサンジアミン4モルから成るアミドジアミンに代え、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)100gに代えた以外は実施例1と同様の条件でポリヒドロキシウレタンを合成した。
【0061】
得られたポリヒドロキシウレタンの収率は93%で、重量平均分子量は45,000であった。
【0062】
[実施例4]
温度計、攪拌機、還流冷却器等を備えた反応装置に製造例1の方法で得られたビスフェノールAジグリシジルエーテル−ビスカーボネート体(式(2))200重量部とN−メチルピロリドン100重量部、テトラブチルアンモニウムブロマイド5重量部を加え、加熱攪拌して130℃に昇温しながら溶解する。溶解したら、温度を130℃に保ちながら、セバシン酸1モルとトリメチルヘキサンジアミン2モルから成るアミドジアミン240重量部(有効成分200重量部)を投入する。130℃、10時間反応させ、ポリヒドロキシウレタン溶液を得た。得られたポリヒドロキシウレタンの収率は95%、重量平均分子量は24,000であった。
【0063】
このポリヒドロキシウレタン溶液を同様の反応装置に500重量部と無水トリメリット酸12重量部、N−メチルピロリドン20重量部を仕込み、加熱攪拌して100℃に昇温し溶解する。更に、100℃、6時間反応させた。メチルエチルケトン50重量部、イソプロピルアルコール50重量部を加え、減粘し、トリエチルアミンを15重量部を加え、10分間攪拌後、600重量部の蒸留水で、このポリヒドロキシウレタンを水に分散させ、脱溶剤を行い、固形分35%、樹脂酸価7.5(mg−KOH/g)、粒子径90nmのポリヒドロキシウレタンディスパージョンを得た。
【0064】
[実施例5]
温度計、攪拌機、還流冷却器等を備えた反応装置に製造例1の方法で得られたビスフェノールAジグリシジルエーテル−ビスカーボネート体(式(2))150重量部とN−メチルピロリドン100重量部、テトラブチルアンモニウムブロマイド3重量部を加え、加熱攪拌して130℃に昇温しながら溶解する。溶解したら、温度を130℃に保ちながら、セバシン酸3モルとトリメチルヘキサンジアミン4モルから成るアミドジアミン500重量部(有効成分350重量部)を投入する。130℃、10時間反応させ、ポリヒドロキシウレタン溶液を得た。得られたポリヒドロキシウレタンの収率は90%、重量平均分子量は23,000であった。
【0065】
このポリヒドロキシウレタン溶液を同様の反応装置に500重量部と無水トリメリット酸10重量部、N−メチルピロリドン5重量部を仕込み、加熱攪拌して100℃に昇温し溶解する。更に、100℃、6時間反応させた。イソプロピルアルコール100重量部を加え、減粘し、トリエチルアミンを10重量部を加え、10分間攪拌後、600重量部の蒸留水で、このポリヒドロキシウレタンを水に分散させ、脱溶剤を行い、固形分30%、樹脂酸価6.5(mg−KOH/g)、粒子径90nmのポリヒドロキシウレタンディスパージョンを得た。
【0066】
[比較例]
温度計、攪拌機、還流冷却器等を備えた反応装置に製造例1の方法で得られたビスフェノールAジグリシジルエーテル−ビスカーボネート体(式(2))220重量部とN−メチルピロリドン90重量部、テトラブチルアンモニウムブロマイド5重量部を加え、加熱攪拌して130℃に昇温しながら溶解する。溶解したら、温度を130℃に保ちながら、トリメチルヘキサンジアミン70重量部を投入する。130℃、10時間反応させ、ポリヒドロキシウレタン溶液を得た。得られたポリヒドロキシウレタンの収率は94%、重量平均分子量は43,000であった。
【0067】
このポリヒドロキシウレタン溶液を同様の反応装置に500重量部と無水トリメリット酸15重量部、N−メチルピロリドン40重量部を仕込み、加熱攪拌して100℃に昇温し溶解する。更に、100℃、6時間反応させた。メチルエチルケトン125重量部を加え、減粘し、トリエチルアミンを15重量部を加え、10分間攪拌後、600重量部の蒸留水で、このポリヒドロキシウレタンを水に分散させ、脱溶剤を行い、固形分35%、樹脂酸価8.5(mg−KOH/g)、粒子径180nmのポリヒドロキシウレタンディスパージョンを得た。
【0068】
[応用例]
実施例4、5及び比較例で得たポリヒドロキシウレタンディスパージョンをメラミン(サイメル325)系架橋剤、イソシアネート(バイヒジュール3100)系架橋剤を用いて硬化させた。硬化皮膜の耐水性については下記に示す表1のような結果となった。
【0069】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のポリヒドロキシウレタンおよびその水分散体は、塗料に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリヒドロキシウレタンを製造するにあたり、下記一般式(1)で示されるアミドジアミンモノマー(ただし、nは1以上の整数である)と、1分子中に少なくとも2個の5員環環状カーボネート基を有するカーボネートモノマーとの混合物を反応させ高分子量化することを特徴とするポリヒドロキシウレタンの製造方法。
【化1】

(式中、Rは炭素数2〜12のアルキレン、シクロアルキレン、またはフェニレンを表し、Rは炭素数2〜10のアルキレン、シクロアルキレン、またはフェニレンを表す。)
【請求項2】
触媒の存在下に行われることを特徴とする請求項1に記載のポリヒドロキシウレタンの製造方法。
【請求項3】
該高分子量化反応が、50〜150℃の温度および3〜12時間の反応時間の条件下に行われることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリヒドロキシウレタンの製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリヒドロキシウレタンの製造方法で得られたポリヒドロキシウレタンを、水中に分散してなるポリヒドロキシウレタン水分散体。

【公開番号】特開2007−297544(P2007−297544A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−128003(P2006−128003)
【出願日】平成18年5月1日(2006.5.1)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【出願人】(397031337)社団法人日本塗料工業会 (2)
【Fターム(参考)】