説明

ポリビニルアセタール樹脂多孔質体の製造方法

【課題】ホルムアルデヒド等のアルデヒド類の残留分が極めて少なく、優れた耐水性、耐溶剤性、強靭性を有するポリビニルアセタール樹脂多孔質体が得られるポリビニルアセタール樹脂多孔質体の製造方法を提供する。
【解決手段】特定の構造単位を有するポリビニルアセタール樹脂及び水溶性化合物を混合し、ポリビニルアセタール樹脂混合物を調製する工程、前記ポリビニルアセタール樹脂混合物を用いて成形体を作製する工程、前記ポリビニルアセタール樹脂を架橋させる工程、及び、前記成形体を水洗する工程を有するポリビニルアセタール樹脂多孔質体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホルムアルデヒドを使用することなく、優れた耐水性、耐溶剤性、強靭性を有するポリビニルアセタール樹脂多孔質体が得られるポリビニルアセタール樹脂多孔質体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリビニルアセタール樹脂は、強靭性、造膜性、顔料等の無機、有機粉体等の分散性、塗布面への接着性等に優れていることから、種々の用途に利用されている。
【0003】
例えば、ポリビニルアセタール樹脂を用いたポリビニルアセタール樹脂多孔質体は、優れた強靭性、耐水性、反発弾性を有する多孔質体として知られており、各方面で一般民生用、工業用として汎く応用されている。具体的には例えば、化粧用の水性パフ、吸水用等のローラー、水拭き用の拭浄布等に用いられている。
【0004】
このようなポリビニルアセタール樹脂多孔質体を製造する方法としては、例えば、特許文献1等に記載されているように、ポリビニルアルコールに、ホルムアルデヒド、気孔形成剤及び触媒等を添加し、アセタール化することにより、ポリビニルアセタール樹脂とし、その後気孔形成剤を洗浄、分解等して抽出する方法(気孔剤抽出法)が広く用いられている。また、特許文献2には、発泡装置等による気泡の吹き込みや、発泡剤を混合することにより、発泡させた状態でアセタール化を行い発泡成形体を作製する方法(発泡法)等が記載されている。
【0005】
しかしながら、これらの方法では、得られるポリビニルアセタール樹脂多孔質体中に微量のホルムアルデヒドが残留し、その結果、多孔質体を用いた製品の使用中に有害物質であるホルムアルデヒドが発生してしまうという問題があった。
また、これらの方法では、ポリビニルアセタール樹脂多孔質体を製造する工程において、多量のホルムアルデヒドを使用しなければならないが、特定化学物質障害予防規則等の一部を改定する省令が平成19年12月に公布、公示されたことで、従来以上に作業環境に注意や配慮をする必要があり、ホルムアルデヒドを使用せずに耐水性、耐溶剤、強靭性に優れたポリビニルアセタール樹脂多孔質体を得る方法が求められていた。
更に、アセタール化反応が極めてゆっくりと進行するため、長時間の反応を行わなければならず、多孔質体の製造に長時間を要することから、連続的にポリビニルアルコール樹脂多孔質体を製造することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−12763号公報
【特許文献2】特許第3806857号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記現状に鑑み、ホルムアルデヒドを使用することなく、優れた耐水性、耐溶剤性、強靭性を有するポリビニルアセタール樹脂多孔質体が得られるポリビニルアセタール樹脂多孔質体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のポリビニルアセタール樹脂多孔質体の製造方法は、少なくとも下記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される構造単位を有するポリビニルアセタール樹脂及び水溶性化合物を混合し、ポリビニルアセタール樹脂混合物を調製する工程、前記ポリビニルアセタール樹脂混合物を用いて成形体を作製する工程、前記ポリビニルアセタール樹脂を架橋させる工程、及び、前記成形体を水洗する工程を有するポリビニルアセタール樹脂多孔質体の製造方法。
【0009】
【化1】

式中、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、Rは下記一般式(5)及び/又は(6)で表される官能基を表す。
【0010】
【化2】

式中、R及びRは炭素数1〜10のアルキル基を表す。
以下、本発明につき詳細に説明する。
【0011】
本発明のポリビニルアセタール樹脂多孔質体の製造方法では、少なくとも上記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される構造単位を有するポリビニルアセタール樹脂及び水溶性化合物を混合し、ポリビニルアセタール樹脂混合物を調製する工程を行う。
【0012】
上記工程では、少なくとも下記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される構造単位を有するポリビニルアセタール樹脂を用いる。
【0013】
【化3】

式中、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、Rは下記一般式(5)及び/又は(6)で表される官能基を表す。
【0014】
【化4】

式中、R及びRは炭素数1〜10のアルキル基を表す。
【0015】
上記ポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(1)で表されるビニルアルコール単位の含有量の好ましい下限は17モル%、好ましい上限は40モル%である。17モル%未満であると、溶解時に使用する有機溶剤に対する溶解性が低下することがある。40モル%を超えると、吸湿しやすくなるため、保存安定性が悪くなることがある。
【0016】
上記ポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(2)で表されるアセタール単位の含有量の好ましい下限は35モル%、好ましい上限は80モル%である。35モル%未満であると、溶解時に使用する有機溶剤に不溶となることがある。80モル%を超えると、残存水酸基量が少なくなって得られる架橋ポリビニルアセタール樹脂の強度が低下することがある。
なお、本明細書において、アセタール化度の計算方法としては、ポリビニルアセタール樹脂のアセタール基が2個の水酸基をアセタール化して得られたものであることから、アセタール化された2個の水酸基を数える方法を採用してアセタール化度のモル%を計算する。
【0017】
上記一般式(2)で表されるアセタール単位において、Rは、メチル基及び/又はブチル基からなることが好ましい。このようなポリビニルアセタール樹脂を用いることによって、ビニルアルコール単位の分子内水素結合力と、アセタール単位の立体障害とのバランスに優れるものとなるため、少ないエネルギーでの架橋反応が可能となり、機械的強度、耐溶剤性、柔軟性等の諸特性に優れた架橋ポリビニルアセタール樹脂を得ることができる。
【0018】
上記ポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(3)で表されるアセチル単位の含有量の下限は0.1モル%、上限は25モル%である。上記範囲を超えると、原料のポリビニルアルコールの溶解性が低下し、アセタール化反応が困難となる。好ましい上限は15モル%である。
【0019】
上記ポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(4)で表される構造単位は、架橋性を有しており、後に架橋工程を行うことによって、他の分子中の官能基と架橋構造を形成する。このため、硬化後の架橋ポリビニルアセタール樹脂は、高い機械的強度を有しつつ、適度な弾性を有するものとなる。
【0020】
上記一般式(4)で表される構造単位において、上記Rとしては、下記一般式(5)で表される基、下記一般式(6)で表される基が用いられる。
【0021】
【化5】

式中、R及びRは炭素数1〜10のアルキル基を表す。
【0022】
上記ポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(4)で表される構造単位の含有量の好ましい下限は0.01モル%、好ましい上限は50モル%である。0.01モル%未満であると、架橋構造が形成されることによる効果が充分に得られず、機械的強度の低下を招くことがある。50モル%を越えると、得られる架橋体の架橋度が高くなりすぎ、可とう性が低下することがある。
【0023】
上記ポリビニルアセタール樹脂の重合度の好ましい下限は200、好ましい上限は4000である。重合度を上記範囲内とすることにより、得られる架橋体が機械的強度等に優れるものとなる。
【0024】
上記ポリビニルアセタール樹脂を製造する方法としては、例えば、上記Rが上記一般式(5)で表される基であるポリビニルアセタール樹脂を製造する場合、上記一般式(5)で表される基を有する変性ポリビニルアルコールをアセタール化する方法、未変性のポリビニルアルコールをアセタール化した後、変性する方法等が挙げられる。
【0025】
上記アセタール化の方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、酸触媒の存在下で変性ポリビニルアルコールの水溶液、アルコール溶液、水/アルコール混合溶液、ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液中に各種アルデヒドを添加する方法等が挙げられる。
【0026】
上記アセタール化に用いるアルデヒドとしては特に限定されず、例えば、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、2官能アルデヒド、3官能アルデヒドなどの多官能アルデヒドや、芳香族アルデヒド等が挙げられる。なかでも、アセトアルデヒドとブチルアルデヒドとをそれぞれ単独で用いるか、又は、アセトアルデヒドとブチルアルデヒドとを併用することが好ましい。
【0027】
上記一般式(5)で表される基を有する変性ポリビニルアルコールをアセタール化する方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液中にジケテン等を添加する方法等が挙げられる。
【0028】
上記酸触媒としては特に限定されず、有機酸、無機酸のどちらでも使用可能であり、例えば、酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸、塩酸等が挙げられる。なかでも、非ハロゲン性の酸触媒が好適である。
【0029】
上記アセタール化の反応を停止するために、アルカリによる中和を行うことが好ましい。上記アルカリとしては特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。
また、上記中和工程の前後に、水等を用いて得られた変性ポリビニルアセタール樹脂を洗浄することが好ましい。なお、洗浄水中に含まれる不純物の混入を防ぐため、洗浄は純水で行うことがより好ましい。
【0030】
上記水溶性化合物としては、後の水洗工程で溶解可能な樹脂であれば特に限定されないが、例えば、澱粉、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、ポリビニルアルコール、スチレン−無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、エチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩等が挙げられる。
【0031】
本発明では、次いで、上記ポリビニルアセタール樹脂混合物を用いて成形体を作製する工程を行う。上記成形体の作製方法としては、通常の成形方法を用いることができ、具体的には例えば、押出機にて溶融混練した後、押出し、Tダイやサーキュラーダイ等を用いてシート状に成形する方法(押出成形法)、有機溶剤等の溶媒に溶解又は分散させた後、キャスティングしてシート状に成形する方法(キャスティング成形法)、有機溶剤等の溶媒に溶解又は分散して得たワニス中に、ガラス等の無機材料や有機ポリマーからなるクロス状、不織布状の基材をディッピングしてフィルム状に成形する方法(ディッピング成形法)等が挙げられる
【0032】
本発明では、次いで、上記ポリビニルアセタール樹脂を架橋させる工程を行う。
このような工程を行うことで、上記ポリビニルアセタール樹脂が三次元網目構造となり、充分な機械的強度を有し、かつ、耐溶剤性にも優れる架橋ポリビニルアセタール樹脂が得られる。なお、上記ポリビニルアセタール樹脂を架橋させる工程は、上記成形体を水洗する工程の前に行ってもよく、上記成形体を水洗する工程の後に行ってもよい。
【0033】
上記架橋させる方法としては、加熱による方法、光照射による方法等が挙げられる。
加熱によって架橋させる場合、加熱温度は40〜150℃であることが好ましい。
なお、上記ポリビニルアセタール樹脂混合物に架橋剤を添加する場合は、上記ポリビニルアセタール樹脂混合物を用いて成形体を作製する工程の前に加熱を行うことによって架橋させることもできる。
【0034】
上記光照射による方法を用いる場合は、波長が200〜365nmの光を照射する工程を行うことにより、上記ポリビニルアセタール樹脂を架橋させることが好ましい。
これにより、電子線やX線を用いることなく、架橋度の高い架橋ポリビニルアセタール樹脂を得ることができる。また、電子線やX線を照射した場合に起こるポリビニルアセタール樹脂の分解を防止できるとともに、簡易な装置でポリビニルアセタール樹脂の架橋、硬化を行うことができる。
【0035】
上記波長が200nm未満の光を照射した場合は、樹脂の分解が起こり、365nmを超える光を照射した場合は、架橋が不充分となる。また、上記波長が200〜365nmの光は、連続スペクトル光であってもよく、線スペクトル光であってもよい。
【0036】
上記波長が200〜365nmの光を照射する場合の光源としては、上記波長の光を発光であれば特に限定されず、例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、メタルハライドランプ、エキシマーランプ、冷陰極管、UV−LEDランプ、ハロゲンランプ、高周波誘導型UVランプ等を用いることができる。
【0037】
本発明では、次いで、上記成形体を水洗する工程を行う。
上記水洗工程を行うことで、上記成形体中の水溶性化合物を抽出することができ、ポリビニルアセタール樹脂多孔質体を得ることができる。
上記水洗工程としては、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。また、上記水洗工程の後に乾燥工程を行ってよい。
【0038】
本発明のポリビニルアセタール樹脂多孔質体の製造方法によって製造されるポリビニルアセタール樹脂多孔質体は、ホルムアルデヒドを含有せず、優れた耐水性、耐溶剤性、強靭性を有することから、化粧用パフ、吸水マット、浴用スポンジ、食器洗い等に利用することができる。また、菌類、微生物、動植物細胞の培養担体としても使用することができる。
【発明の効果】
【0039】
本発明により、ホルムアルデヒドを使用することなく、優れた耐水性、耐溶剤性、強靭性を有するポリビニルアセタール樹脂多孔質体が得られるポリビニルアセタール樹脂多孔質体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
(変性ポリビニルアセタール樹脂の作製)
重合度1700、ケン化度98.8%、上記一般式(5)で表されるRを有する構造単位(RはCH)の含有量が2モル%の変性ポリビニルアルコール100gを700gの蒸留水に加温溶解した後、20℃に保ち、これに70%硝酸26gを加え、更にブチルアルデヒド16gを添加した。次に、10℃まで冷却し、ブチルアルデヒド65gを加えた。樹脂が析出した後、30分間保持し、その後、硝酸93gを加え35℃に昇温して3時間保った。反応終了後、蒸留水にて10時間流水洗浄し、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを8に調整した。溶液を50℃で6時間保持した後、冷却した。
【0042】
次に、蒸留水により溶液を2時間流水洗浄した後、脱水、乾燥して上記一般式(5)で表されるRを有する構造単位を有する変性ポリビニルアセタール樹脂を得た。得られた変性ポリビニルアセタール樹脂のアセチル単位含有量は1モル%、残存水酸基量は30モル%、アセタール(ブチラール)単位含有量は67モル%、上記一般式(5)で表されるRを有する構造単位の含有量は2モル%であった。
【0043】
(ポリビニルアセタール樹脂混合物多孔質体の作製)
得られた変性ポリビニルアセタール樹脂100g、澱粉40g、トリエチレングリコールモノブチレート20gを混練機中で100℃の温度で混練し、押出成形を行うことにより、厚さ1mmのシート状成形体を作製した。次いで、メタルハライドランプ(セン特殊光源株式会社製)を用いて波長200〜365nmの紫外線を3000mJ/cm(照射時間30秒)照射した。
【0044】
得られた成形体を水洗して成形体に含まれる澱粉及びトリエチレングリコールモノブチレートを除去し、連続気孔構造のポリビニルアセタール樹脂多孔質体を得た。
【0045】
(実施例2)
(変性ポリビニルアセタール樹脂の作製)
重合度1100、ケン化度99.2%、上記一般式(5)で表されるRを有する構造単位(RはCH)の含有量が4モル%の変性ポリビニルアルコール100gを700gの蒸留水に加温溶解した後、20℃に保ち、これに70%硝酸26gを加え、更にアセトアルデヒド20gを添加した。次に、10℃まで冷却し、ブチルアルデヒド65gを加えた。樹脂が析出した後、30分間保持し、その後、硝酸93gを加え35℃に昇温して3時間保った。反応終了後、蒸留水にて10時間流水洗浄し、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを8に調整した。溶液を50℃で6時間保持した後、冷却した。
【0046】
次に、蒸留水により溶液を2時間流水洗浄した後、脱水、乾燥して上記一般式(5)で表されるRを有する構造単位を有する変性ポリビニルアセタール樹脂を得た。得られた変性ポリビニルアセタール樹脂のアセチル単位含有量は1モル%、残存水酸基量は30モル%、アセタール単位含有量は67モル%(アセトアセタール単位含有量16モル%、ブチラール単位含有量51モル%)、上記一般式(5)で表されるRを有する構造単位の含有量は4モル%であった。
【0047】
(ポリビニルアセタール樹脂混合物多孔質体の作製)
得られた変性ポリビニルアセタール樹脂100g、澱粉40g、トリエチレングリコールモノブチレート20gを混練機中で100℃の温度で混練し、押出成形を行うことにより、厚さ1mmのシート状成形体を作製した。次いで、メタルハライドランプ(セン特殊光源株式会社製)を用いて波長200〜365nmの紫外線を3000mJ/cm(照射時間30秒)照射した。
【0048】
得られた成形体を水洗して成形体に含まれる澱粉、トリエチレングリコールモノブチレートを除去し、連続気孔構造のポリビニルアセタール樹脂多孔質体を得た。
【0049】
(実施例3)
(変性ポリビニルアセタール樹脂の作製)
重合度1700、ケン化度99%、上記一般式(6)で表されるRを有する構造単位 (RはCH)の含有量が4モル%の変性ポリビニルアルコール100gを700gの蒸留水に加温溶解した後、20℃に保ち、これに70%硝酸26gを加え、更にブチルアルデヒド16gを添加した。次に、10℃まで冷却し、ブチルアルデヒド65gを加えた。樹脂が析出した後、30分間保持し、その後、硝酸93gを加え35℃に昇温して3時間保った。反応終了後、蒸留水にて10時間流水洗浄し、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを8に調整した。溶液を50℃で6時間保持した後、冷却した。
【0050】
次に、蒸留水により溶液を2時間流水洗浄した後、脱水、乾燥して変性ポリビニルアセタール樹脂を得た。得られた変性ポリビニルアセタール樹脂のアセチル単位含有量は1モル%、残存水酸基量は28モル%、ブチラール単位含有量は67モル%、上記一般式(6)で表されるRを有する構造単位含有量は4モル%であった。
【0051】
得られた変性ポリビニルアセタール樹脂を用いた以外は実施例1と同様にしてポリビニルアセタール樹脂多孔質体を作製した。
【0052】
(実施例4)
(変性ポリビニルアセタール樹脂の作製)
重合度1700、ケン化度98.8%、上記一般式(5)で表されるRを有する構造単位(RはCH)の含有量が2モル%の変性ポリビニルアルコール100gを700gの蒸留水に加温溶解した後、20℃に保ち、これに70%硝酸26gを加え、更にブチルアルデヒド16gを添加した。次に、10℃まで冷却し、ブチルアルデヒド65gを加えた。樹脂が析出した後、30分間保持し、その後、硝酸93gを加え35℃に昇温して3時間保った。反応終了後、蒸留水にて10時間流水洗浄し、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを8に調整した。溶液を50℃で6時間保持した後、冷却した。
【0053】
次に、蒸留水により溶液を2時間流水洗浄した後、脱水、乾燥して上記一般式(5)で表されるRを有する構造単位を有する変性ポリビニルアセタール樹脂を得た。得られた変性ポリビニルアセタール樹脂のアセチル単位含有量は1モル%、残存水酸基量は30モル%、アセタール(ブチラール)単位含有量は67モル%、上記一般式(5)で表されるRを有する構造単位の含有量は2モル%であった。
【0054】
(ポリビニルアセタール樹脂混合物多孔質体の作製)
得られた変性ポリビニルアセタール樹脂100g、澱粉40g、トリエチレングリコールモノブチレート20g、メタキシレンジアミン1gを混練機中で100℃の温度で混練し、押出成形を行うことにより、厚さ1mmのシート状成形体を作製した。
得られた成形体を水洗して成形体に含まれる澱粉、トリエチレングリコールモノブチレート、メタキシレンジアミンを除去し、連続気孔構造のポリビニルアセタール樹脂多孔質体を得た。
【0055】
(実施例5)
実施例3の(ポリビニルアセタール樹脂混合物多孔質体の作製)において、得られた変性ポリビニルアセタール樹脂100g、澱粉40g、トリエチレングリコールモノブチレート20g、メタキシレンジアミン1gを混練機中で100℃の温度で混練し、押出成形を行うことにより、厚さ1mmのシート状成形体を作製し、メタルハライドランプ(セン特殊光源株式会社製)を用いて波長200〜365nmの紫外線を3000mJ/cm(照射時間30秒)照射しなかったこと以外は実施例3と同様にしてポリビニルアセタール樹脂多孔質体を作製した。
【0056】
(実施例6)
実施例1(ポリビニルアセタール樹脂混合物多孔質体の作製)において、成形体を水洗して成形体に含まれる澱粉を除去した後に、波長200〜365nmの紫外線を3000mJ/cm(照射時間30秒)照射したこと以外は実施例1と同様にしてポリビニルアセタール樹脂多孔質体を作製した。
【0057】
(実施例7)
実施例3(ポリビニルアセタール樹脂混合物多孔質体の作製)において、成形体を水洗して成形体に含まれる澱粉を除去した後に、波長200〜365nmの紫外線を3000mJ/cm(照射時間30秒)照射したこと以外は実施例3と同様にしてポリビニルアセタール樹脂多孔質体を作製した。
【0058】
(比較例1)
PVAを水中に分散し、加熱溶解してPVA水溶液を調製し、20〜30℃まで冷却した。この液を発泡機(TW−70型)中に導入して、必要量のホルムアルデヒドと界面活性剤とを添加し、圧縮ポンプにより微細気泡を送り込んでから、補助ポンプを用いて触媒である硫酸水溶液の所定量を注入し、充分に撹拌した。
この液を所定の型枠に注型した後、その型枠を約60℃の反応温度に維持した水槽中に1 0〜20時間程度静置し反応を完結した。反応が完結した後、生成物を型枠より取り出し、水洗等の手段により触媒としての硫酸や未反応のホルムアルデヒド、界面活性剤等を除去することにより、ポリビニルアセタール樹脂多孔質体を得た。
【0059】
(比較例2)
PVAを水中に分散し、加熱溶解してPVA水溶液を調製し、20〜30℃まで冷却した。この液を発泡機(TW−70型)中に導入して、必要量のブチルアルデヒドと界面活性剤とを添加し、圧縮ポンプにより微細気泡を送り込んでから、補助ポンプを用いて触媒である硫酸水溶液の所定量を注入し、充分に撹拌した。
この液を所定の型枠に注型した後、その型枠を約60℃の反応温度に維持した水槽中に1 0〜20時間程度静置し反応を完結した。反応が完結した後、生成物を型枠より取り出し、水洗等の手段により触媒としての硫酸や未反応のブチルアルデヒド、界面活性剤等を除去することにより、ポリビニルアセタール樹脂多孔質体を得た。
【0060】
(比較例3)
(ポリビニルアセタール樹脂の作製)
重合度1700、ケン化度98%のポリビニルアルコール100gを700gの蒸留水に加温溶解した後、20℃に保ち、これに70%硝酸26gを加え、更にブチルアルデヒド16gを添加した。次に、10℃まで冷却し、ブチルアルデヒド65gを加えた。樹脂が析出した後、30分間保持し、その後、硝酸93gを加え35℃に昇温して3時間保った。反応終了後、蒸留水にて10時間流水洗浄し、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを8に調整した。溶液を50℃で6時間保持した後、冷却した。
【0061】
次に、蒸留水により溶液を2時間流水洗浄した後、脱水、乾燥してポリビニルアセタール樹脂を得た。得られた変性ポリビニルアセタール樹脂のアセチル単位含有量は1モル%、残存水酸基量は30モル%、アセタール(ブチラール)単位含有量は69モル%であった。
【0062】
(ポリビニルアセタール樹脂混合物多孔質体の作製)
得られたポリビニルアセタール樹脂100g、澱粉40g、トリエチレングリコールモノブチレート20gを混練機中で100℃の温度で混練し、押出成形を行うことにより、厚さ1mmのシート状成形体を作製した。
【0063】
得られた成形体を水洗して成形体に含まれる澱粉、トリエチレングリコールモノブチレートを除去し、連続気孔構造のポリビニルアセタール樹脂多孔質体を得た。
【0064】
(評価)
(1)耐薬品性
乾燥状態のポリビニルアセタール樹脂多孔質体を各溶剤(エタノール、アセトン、ミネラルスピリット)に1時間浸漬させた後、シート形状の確認を行った。
不溶(シート形状あり)である場合を○、部分的に溶解している場合を△、全体的に溶解している場合を×とした。
【0065】
(2)気孔径の測定
得られたポリビニルアセタール樹脂多孔質体の断面を走査型電子顕微鏡を使用して撮影し、10枚の写真から無作為抽出した200個の気孔径を測定した。
【0066】
(3)ホルムアルデヒド残留量の測定(ホルムアルデヒドの使用有無の確認)
得られたポリビニルアセタール樹脂多孔質体から試料を採取し、JIS L 1041に準拠した方法でホルムアルデヒド残留量を測定した。
【0067】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明によれば、ホルムアルデヒドを使用することなく、優れた耐水性、耐溶剤性、強靭性を有するポリビニルアセタール樹脂多孔質体が得られるポリビニルアセタール樹脂多孔質体の製造方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される構造単位を有するポリビニルアセタール樹脂及び水溶性化合物を混合し、ポリビニルアセタール樹脂混合物を調製する工程、
前記ポリビニルアセタール樹脂混合物を用いて成形体を作製する工程、
前記ポリビニルアセタール樹脂を架橋させる工程、及び、
前記成形体を水洗する工程を有する
ことを特徴とするポリビニルアセタール樹脂多孔質体の製造方法。
【化1】

式中、Rは水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、Rは下記一般式(5)及び/又は(6)で表される官能基を表す。
【化2】

式中、R及びRは炭素数1〜10のアルキル基を表す。


【公開番号】特開2010−168444(P2010−168444A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−11160(P2009−11160)
【出願日】平成21年1月21日(2009.1.21)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】