説明

ポリビニルアルコール系ゲル成型物およびその製造方法

【課題】 微生物の棲息性が良く、化学架橋による体積収縮が少なく、かつPVAの溶出量が少なく、高い強度を有する、排水処理用担体としての実用性が高いゲル成型物。
【解決手段】 ポリビニルアルコールおよびジアルデヒド含有液を成形後、pH3以下の酸と接触させることにより得られる、粒径1〜20mm、アセタール化度1〜20モル%のポリビニルアルコール系ゲル成型物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水処理やバイオリアクターとして用いられる、ポリビニルアルコール(以下、PVAと略記することがある)系ゲル成型物およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高分子素材からなるゲル成型物は、生体触媒の担体、保水剤、保冷剤、眼・皮膚・関節などの生体ゲルの代替、薬物の徐放材、アクチュエーターの基材として、その研究が盛んである。これらのゲル成型物の原料となる高分子素材としては、寒天、アルギン酸塩、カラギーナン、ポリアクリルアミド、PVA、光硬化性樹脂などがある。排水処理などに用いる担体としては、含水率が高いこと、酸素や基質の透過性に優れていること、生体との親和性が高いことなどが要求され、特に、PVAはこれらの条件を満たす材料として優れている。従来、排水処理用担体、バイオリアクター用担体としてゲル成型物を製造する方法としては、PVAとアルギン酸ナトリウムの混合水溶液を塩化カルシウム水溶液に接触させて球状化してPVA成型物を得た後、凍結解凍を行なう方法(特許文献1)、PVA水溶液を鋳型に注入後、凍結部分脱水を行なう方法(特許文献2)、PVA含有溶液からPVA成型物を製造後、ホルムアルデヒドを含む水溶液と接触させて架橋してゲル成型物を製造する方法(特許文献3)、PVAとアルギン酸ナトリウムおよびアルデヒド基含有化合物の混合水溶液を酸水溶液に滴下して球状のゲル成型物を製造する方法(特許文献4)、などが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開昭64−43188号公報
【特許文献2】特開昭58−36630号公報
【特許文献3】特開平7−41516号公報
【特許文献4】特開平9−157433号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2は、凍結・解凍によってPVAの微結晶を作ることでPVAを不溶化する方法であるが、このような物理化学的架橋は非常に弱く、シュードモナス(pseudomonas)属などのPVA分解菌によって崩壊するという問題がある。
特許文献3は、PVA成型物を、ホルムアルデヒドなどを含む水溶液に浸漬させる方法であるが、反応浴にアルデヒド化合物を添加する必要があるため、大量のアルデヒド化合物が必要であり、またPVA成型物から溶出したPVAが反応浴中で析出し、製造工程の容器や配管・ポンプ類を閉塞するという問題がある。
特許文献4はアルデヒド化合物をPVA水溶液側に添加しているが、pH3〜5では、PVAとアルデヒドの反応に長い時間を要するため、PVAおよびアルデヒド化合物が反応浴側に溶出してしまうという問題がある。また、これらの特許文献の実施例に示されているいずれの方法でもPVAに対して多量のアルデヒド化合物が添加されているので、非常に脆い成型物となり、また、ゲル成型物が製造過程で収縮して含水率が低下するため、排水処理やバイオリアクター用担体としては、微生物の生息領域が少なくなり好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討の結果、PVA、少なくとも1種のカチオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性多糖類およびジアルデヒドを含む液滴を、カチオン含有水溶液中に滴下して球状に成形してPVA成型物を得た後、pH3以下の酸と接触させ、PVAを架橋により不溶化させてゲル成型物を製造することにより、本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0006】
本発明のゲル成型物は、微生物の棲息性が良く、化学架橋による体積収縮が少なく、かつゲル成型物からのPVAの溶出が激減し、強度も向上することから、排水処理用担体としての実用性が著しく高い。また、反応液の異物発生量が少ないことから、製造プロセスにおいての工程トラブルが少なく、安定した連続生産が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について具体的に説明する。本発明に使用するPVAの平均重合度は1000以上が好ましく、特に1500以上が好ましい。PVAのケン化度は、95モル%以上が好ましく、特に98モル%以上が好ましい。また、本発明に用いるPVAとしては、本発明の効果を阻害しない範囲において、公知の種々の変性PVAを用いることができる。例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有単量体又はその塩、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ソ−ダ、アリルスルホン酸ソ−ダ、ビニルスルホン酸ソ−ダ等のビニルスルホン酸基含有単量体、(メタ)アクリルアミド−プロピル−トリメチルアンモニウムクロリド等の4級アンモニウム塩含有単量体等のカオチン性単量体、エチレン、プロピレン等のα−オレフィン類、(メタ)アクリル酸エステル類、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、N−メチロ−ルアクリルアミド、N−ビニル−2−ピロリドン等のアミド基含有単量体、アルキルビニルエ−テル類、トリメトキシルビニルシラン等のシリル基含有単量体、アリルアルコ−ル、ジメチルアリルアルコ−ル、イソプロペニルアルコ−ル等の水酸基含有単量体、アリルアセテ−トジメチルアリルアセテ−ト、イソプロペニルアリルアセテ−ト等のアセチル基含有単量体、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン含有単量体、スチレン等の芳香族系単量体との共重合体があげられる。
【0008】
水溶性多糖類の例としては、アルギン酸のアルカリ金属塩、カラギーナン、マンナン、キトサンなどが挙げられる。なかでもアルギン酸ナトリウムが好ましい。
【0009】
ジアルデヒドの例としては、グリオキサール、マロンアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、アジプアルデヒド、マレアルデヒド、タルタルアルデヒド、シトルアルデヒド、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒドなどが挙げられる。なかでもグルタルアルデヒドが好ましい。
【0010】
カチオンの例としては、カルシウムイオン、マグネシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオンなどのアルカリ土類金属イオン、アルミニウムイオン、ニツケルイオン、セリウムイオンなどの多価金属イオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンなどが挙げられる。
【0011】
酸としては、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸、酢酸、シュウ酸などの酸や、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素アンモニウムなどの酸性塩が挙げられる。酸濃度が低いと反応時間がかかるため、PVAやジアルデヒドが溶出することからpH3以下が好ましい。
【0012】
以上説明した原材料を用いて、まず、PVAと水溶性多糖類とジアルデヒドの混合水溶液を調整するが、この混合水溶液中におけるPVAの濃度は、2〜10重量%が好ましい。PVAの濃度が高いほど、より強固なゲルを形成するが、必要なゲル強度が得られれば、PVAの濃度が低い方が原料コスト面から有利である。
【0013】
水溶性多糖類の水溶液の濃度は、成型性の問題から水溶液全体に対して0.2〜4重量%が好ましく、0.5〜2重量%がさらに好ましい。
【0014】
ジアルデヒドの濃度としては、水溶液中のPVAに対して1〜20モル%が好ましく、さらに5〜10モル%がさらに好ましい。添加量が少なすぎると架橋不足によりPVAの溶出が多くなり、添加量が多すぎると非常に脆く、製造過程で収縮が大きく、含水率の小さい成型物となる。また、添加量が多すぎると、成型物の収縮により、菌の棲息性が低下し排水処理能力が低下する。ジアルデヒドの濃度を制限することにより、菌の棲息性が良い成型物となる。
【0015】
前記のPVAと水溶性多糖類とジアルデヒドの混合水溶液には、PVAのゲル化を阻害しない範囲で、微生物、酵素、微生物の培地、補強材、比重を調整する充填材等を加えても良い。
【0016】
以上のようにして得られたPVA混合水溶液を、カチオン含有化合物を含む水溶液に接触させる。カチオン含有化合物の濃度は、0.05〜0.5モル/リットルが好ましい。PVA混合水溶液とカチオン含有化合物を含む水溶液の接触の方法によりPVA成型物はさまざまな形状をとることができる。PVA成型物の形状としては、球状、繊維状、棒状、角形状、楕円状、円筒状、円柱状等のあらゆる形状が可能であるが、排水処理・バイオリアクターで使用する場合は球状が好ましい。
【0017】
得られたPVA成型物をpH3以下の酸水溶液に接触させてPVAとジアルデヒドを架橋させてゲル成型物を製造する。
【0018】
このようにして得られたゲル成型物は、弾力があり、PVA溶出も非常に少ない。製造過程での収縮もほとんどなく、高含水率である。また、長期間にわたって変形、損壊しない強度を有し、水や各種薬液に対しても侵されることなく、連続使用が可能となり、菌の棲息性が良いことから、排水処理・バイオリアクター用担体としての実用性が高い。製造プロセスにおいては、反応浴中へのPVAや架橋剤の溶出が非常に少なく、反応浴中での析出もないため、安定した連続生産が可能である。
【0019】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0020】
株式会社クラレ製のPVA(平均重合度1700、ケン化度99.8モル%)をPVA濃度が6.0%となるように、PVAに水を加え、オートクレーブで121℃、30分間処理しPVAを溶解した。このPVA水溶液に1.0%となるようにアルギン酸ナトリウムを加え、30分間撹拌溶解を行なった。25%グルタルアルデヒド水溶液を5.0モル%対PVAとなるように添加した後、十分に混合した。この混合水溶液100gを先端に内径2mmのノズルをとりつけた内径3.2mmのシリコンチューブを装着したローラーポンプにより5ミリリットル/分の速度で送液し、スターラーで撹拌した濃度0.1モル/リットルの塩化カルシウム水溶液1リットルに滴下した。滴下した液滴は塩化カルシウム水溶液中で球状化して沈降した。この球状成型物(A)を塩化カルシウム水溶液と分離し、架橋反応浴(40℃、50g/リットルの硫酸水溶液)1リットルに60分間浸漬した。その後、成型物を架橋反応浴(B)と分離し水洗した。その結果、直径約5mmの柔軟性に富んだ球状のゲル成型物(C)が得られた。このゲル成型物の製品物性および反応液の発生異物量を確認するため、下記に示す方法により、溶出試験、強度試験、体積保持率、TOC除去速度、および反応液の発生異物量測定を実施した。その結果を表1に示す。
【0021】
体積保持率:
上記球状成型物(A)100個の体積をa立方センチメートルとし、最終的に製造したゲル成型物(C)100個の体積をc立方センチメートルとすると、
体積保持率(%)= c÷a×100
と定義する。
【0022】
溶出試験(g−PVA/kg−ゲル):
最終的な成型物(C)約2gに対して、9倍の重量の水を加えたものをホモジナイザーにて粉砕した後、121℃で15分オートクレーブ処理した。この上清を採取しPVA濃度を測定し、PVA溶出量はゲル成型物(C)1kgあたりの量として表現した。
【0023】
反応液異物発生量(g−SS/kg−PVA):
ここで述べる反応液異物発生量とは、PVAを化学架橋させるための反応液で発生した異物の量である。異物の量は、反応後の架橋反応液(B)を1ミクロンのフィルターでろ過を行ない、105℃、1時間乾燥させた後の固形分(SS)重量を測定することにより評価する。反応液異物発生量は使用したPVA重量1kgあたりに発生した異物の量として表現した。
【0024】
TOC除去速度(mg−TOC/(L−ゲル・h)):
微生物棲息性に優れているゲルほどTOC除去速度がはやいことから、微生物棲息性の指標としてTOC除去速度を測定した。具体的には、最終的な成型物(C)500gを株式会社クラレ西条事業所の排水処理槽に1カ月間浸漬後、100gを取り出し、TOC500mg/リットルに調整した排水1リットル中に入れて曝気し、ゲル重量当たりのTOC除去速度を求めた。
【0025】
強度試験:
最終的なゲル成型物(C)を平面状に静置し、上部から1kgの荷重を30秒かけた後の形状の変化を観察した。
評価基準
○ : 球状を保つ。
△ : 平面状になるが回復する。
× : つぶれる。
【実施例2】
【0026】
株式会社クラレ製のPVA(平均重合度1700、ケン化度99.8モル%)をPVA濃度が8.0%となるように、PVAに水を加え、オートクレーブで121℃、30分間処理しPVAを溶解した。このPVA水溶液に1.0%となるようにアルギン酸ナトリウムを加え、30分間撹拌溶解を行なった。25%グルタルアルデヒド水溶液を3.5モル%対PVAとなるように添加した後、十分に混合した。この混合水溶液100gを先端に内径2mmのノズルをとりつけた内径3.2mmのシリコンチューブを装着したローラーポンプにより5ミリリットル/分の速度で送液し、スターラーで撹拌した濃度0.05モル/リットルの塩化カルシウム水溶液1リットルに滴下した。滴下した液滴は塩化カルシウム水溶液中で球状化して沈降した。この球状成型物(A)を塩化カルシウム水溶液と分離し、架橋反応浴(45℃、10g/リットルの硫酸水溶液)1リットルに60分間浸漬した。その後、成型物を架橋反応浴(B)と分離し水洗した。その結果、直径約5mmの柔軟性に富んだ球状のゲル成型物が得られた(C)。溶出試験、強度試験、体積保持率、TOC除去速度、および反応液の発生異物量測定を実施例1と同様の方法で実施した。その結果を表1に示す。
【実施例3】
【0027】
株式会社クラレ製のPVA(平均重合度1700、ケン化度98.5モル%)をPVA濃度が5.0%となるように、PVAに水を加え、オートクレーブで121℃、30分間処理しPVAを溶解した。このPVA水溶液に1.0%となるようにアルギン酸ナトリウムを加え、30分間撹拌溶解を行なった。25%グルタルアルデヒド水溶液を6.5モル%対PVAとなるように添加した後、十分に混合した。この混合水溶液100gを先端に内径2mmのノズルをとりつけた内径3.2mmのシリコンチューブを装着したローラーポンプにより5ミリリットル/分の速度で送液し、スターラーで撹拌した濃度0.15モル/リットルの塩化カルシウム水溶液1リットルに滴下した。滴下した液滴は塩化カルシウム水溶液中で球状化して沈降した。この球状成型物(A)を塩化カルシウム水溶液と分離し、架橋反応浴(35℃、100g/リットルの硫酸水溶液)1リットルに60分間浸漬した。その後、成型物を架橋反応浴(B)と分離し水洗した。その結果、直径約5mmの柔軟性に富んだ球状のゲル成型物が得られた(C)。溶出試験、強度試験、体積保持率、TOC除去速度、および反応液の発生異物量測定を実施例1と同様の方法で実施した。その結果を表1に示す。
【実施例4】
【0028】
株式会社クラレ製のPVA(平均重合度2400、ケン化度99.0モル%)をPVA濃度が6.0%となるように、PVAに水を加え、オートクレーブで121℃、30分間処理しPVAを溶解した。このPVA水溶液に1.0%となるようにアルギン酸ナトリウムを加え、30分間撹拌溶解を行なった。25%グルタルアルデヒド水溶液を4.0モル%対PVAとなるように添加した後、十分に混合した。この混合水溶液100gを先端に内径2mmのノズルをとりつけた内径3.2mmのシリコンチューブを装着したローラーポンプにより5ミリリットル/分の速度で送液し、スターラーで撹拌した濃度0.2モル/リットルの塩化カルシウム水溶液1リットルに滴下した。滴下した液滴は塩化カルシウム水溶液中で球状化して沈降した。この球状成型物(A)を塩化カルシウム水溶液と分離し、架橋反応浴(40℃、40g/リットルの塩酸水溶液)1リットルに60分間浸漬した。その後、成型物を架橋反応浴(B)と分離し水洗した。その結果、直径約5mmの柔軟性に富んだ球状のゲル成型物が得られた(C)。溶出試験、強度試験、体積保持率、TOC除去速度、および反応液の発生異物量測定を実施例1と同様の方法で実施した。その結果を表1に示す。
【実施例5】
【0029】
株式会社クラレ製のPVA(平均重合度2400、ケン化度99.0モル%)をPVA濃度が6.0%となるように、PVAに水を加え、オートクレーブで121℃、30分間処理しPVAを溶解した。このPVA水溶液に1.0%となるようにアルギン酸ナトリウムを加え、30分間撹拌溶解を行なった。25%アジプアルデヒド水溶液を4.0モル%対PVAとなるように添加した後、十分に混合した。この混合水溶液100gを先端に内径2mmのノズルをとりつけた内径3.2mmのシリコンチューブを装着したローラーポンプにより5ミリリットル/分の速度で送液し、スターラーで撹拌した濃度0.2モル/リットルの塩化カルシウム水溶液1リットルに滴下した。滴下した液滴は塩化カルシウム水溶液中で球状化して沈降した。この球状成型物(A)を塩化カルシウム水溶液と分離し、架橋反応浴(35℃、45g/リットルの塩酸)1リットルに60分間浸漬した。その後、成型物を架橋反応浴(B)と分離し水洗した。その結果、直径約5mmの柔軟性に富んだ球状のゲル成型物が得られた(C)。溶出試験、強度試験、体積保持率、TOC除去速度、および反応液の発生異物量測定を実施例1と同様の方法で実施した。その結果を表1に示す。
【0030】
比較例1
株式会社クラレ製のPVA(平均重合度1700、ケン化度99.8モル%)をPVA濃度が6.0%となるように、PVAに水を加え、オートクレーブで121℃、30分間処理しPVAを溶解した。このPVA水溶液に1.0%となるようにアルギン酸ナトリウムを加え、30分間撹拌溶解を行なった。25%グルタルアルデヒド水溶液を27.5モル%対PVAとなるように添加した後、十分に混合した。この混合水溶液100gを先端に内径2mmのノズルをとりつけた内径3.2mmのシリコンチューブを装着したローラーポンプにより5ミリリットル/分の速度で送液し、スターラーで撹拌した、硫酸にてpH3.5に調整した濃度0.1モル/リットルの塩化カルシウム水溶液1リットルに滴下し、180分間浸漬した。滴下直後の球状成型物を(A)とする。滴下した液滴はpH3.5の塩化カルシウム水溶液中で球状化して沈降した。この球状成形物をpH3.5の塩化カルシウム水溶液(B)と分離して水洗した。その結果、直径約5mmのゲル成型物が得られたが(C)、半透明であり荷重をかけるとつぶれる柔らかいものとなった。溶出試験、強度試験、体積保持率、TOC除去速度、および反応液の発生異物量測定を実施例1と同様の方法で実施した。その結果を表1に示す。
【0031】
比較例2
株式会社クラレ製のPVA(平均重合度1700、ケン化度99.8モル%)をPVA濃度が6.0%となるように、PVAに水を加え、オートクレーブで121℃、30分間処理しPVAを溶解した。このPVA水溶液に1.0%となるようにアルギン酸ナトリウムを加え、30分間撹拌溶解を行なった。この混合水溶液100gを先端に内径2mmのノズルをとりつけた内径3.2mmのシリコンチューブを装着したローラーポンプにより5ミリリットル/分の速度で送液し、スターラーで撹拌した濃度0.1モル/リットルの塩化カルシウム水溶液1リットルに滴下した。滴下した液滴は塩化カルシウム水溶液中で球状化して沈降した。この球状成型物(A)を塩化カルシウム水溶液と分離し、架橋反応浴(ホルムアルデヒド30g/リットル、硫酸200g/リットル、硫酸ナトリウム80g/リットルの45℃の混合水溶液)1リットルに60分間浸潰した。その後、成型物を架橋反応浴(B)と分離し水洗した。その結果、直径約4mmの柔軟性に富んだ球状のゲル成型物が得られた(C)。溶出試験、強度試験、体積保持率、TOC除去速度、および反応液の発生異物量測定を実施例1と同様の方法で実施した。その結果を表1に示す。
【0032】
比較例3
株式会社クラレ製のPVA(平均重合度1700、ケン化度99.8モル%)をPVA濃度が6.0%となるように、PVAに水を加え、オートクレーブで121℃、30分間処理しPVAを溶解した。このPVA水溶液に1.0%となるようにアルギン酸ナトリウムを加え、30分間撹拌溶解を行なった。この混合水溶液100gを先端に内径2mmのノズルをとりつけた内径3.2mmのシリコンチューブを装着したローラーポンプにより5ミリリットル/分の速度で送液し、スターラーで撹拌した濃度0.1モル/リットルの塩化カルシウム水溶液1リットルに滴下した。滴下した液滴は塩化カルシウム水溶液中で球状化して沈降した。この球状成型物(A)を塩化カルシウム水溶液と分離し、これを架橋反応浴(グルタルアルデヒド5g/リットル、硫酸50g/リットル、45℃の混合水溶液)1リットルに60分間浸潰した。その後、成型物を架橋反応浴(B)と分離し水洗した。その結果、直径約2mmの球状のゲル成型物が得られたが、脆いものとなった(C)。溶出試験、強度試験、体積保持率、TOC除去速度、および反応液の発生異物量測定を実施例1と同様の方法で実施した。その結果を表1に示す。
【0033】
比較例4
株式会社クラレ製のPVA(平均重合度1700、ケン化度99.8モル%)をPVA濃度が6.0%となるように、PVAに水を加え、オートクレーブで121℃、30分間処理しPVAを溶解した。このPVA水溶液に1.0%となるようにアルギン酸ナトリウムを加え、30分間撹拌溶解を行なった。37%ホルムアルデヒド水溶液を50.0モル%対PVAとなるように添加した後、十分に混合した。この混合水溶液100gを先端に内径2mmのノズルをとりつけた内径3.2mmのシリコンチューブを装着したローラーポンプにより5ミリリットル/分の速度で送液し、スターラーで撹拌した濃度0.1モル/リットルの塩化カルシウム水溶液1リットルに滴下した。この球状成型物(A)を塩化カルシウム水溶液と分離し、架橋反応浴(45℃、200g/リットルの硫酸水溶液)1リットルに60分間浸潰した。その後、成型物を架橋反応浴(B)と分離し水洗した。その結果、直径約5mmのゲル成型物が得られたが、半透明であり荷重をかけるとつぶれる柔らかいものとなった(C)。溶出試験、強度試験、体積保持率、TOC除去速度、および反応液の発生異物量測定を実施例1と同様の方法で実施した。その結果を表1に示す。
【0034】
比較例5
株式会社クラレ製のPVA(平均重合度1700、ケン化度99.8モル%)をPVA濃度が6.0%となるように、PVAに水を加え、オートクレーブで121℃、30分間処理しPVAを溶解した。このPVA水溶液に1.0%となるようにアルギン酸ナトリウムを加え、30分間撹拌溶解を行なった。25%グルタルアルデヒド水溶液を27.5モル%対PVAとなるように添加した後、十分に混合した。この混合水溶液100gを先端に内径2mmのノズルをとりつけた内径3.2mmのシリコンチューブを装着したローラーポンプにより5ミリリットル/分の速度で送液し、スターラーで撹拌した濃度0.1モル/リットルの塩化カルシウム水溶液1リットルに滴下した。滴下した液滴は塩化カルシウム水溶液中で球状化して沈降した。この球状成型物(A)を塩化カルシウム水溶液と分離し、架橋反応浴(40℃、50g/リットルの硫酸水溶液)1リットルに60分間浸漬した。その後、成型物を架橋反応浴(B)と分離し水洗した。その結果、直径約2mmの球状のゲル成型物が得られたが、脆いものとなった(C)。溶出試験、強度試験、体積保持率、TOC除去速度、および反応液の発生異物量測定を実施例1と同様の方法で実施した。その結果を表1に示す。
【0035】
比較例6
株式会社クラレ製のPVA(平均重合度1700、ケン化度99.8モル%)をPVA濃度が6.0%となるように、PVAに水を加え、オートクレーブで121℃、30分間処理しPVAを溶解した。このPVA水溶液に1.0%となるようにアルギン酸ナトリウムを加え、30分間撹拌溶解を行なった。25%グルタルアルデヒド水溶液を1.8モル%対PVAとなるように添加した後、十分に混合した。この混合水溶液100gを先端に内径2mmのノズルをとりつけた内径3.2mmのシリコンチューブを装着したローラーポンプにより5ミリリットル/分の速度で送液し、スターラーで撹拌した濃度0.1モル/リットルの塩化カルシウム水溶液1リットルに滴下した。滴下した液滴は塩化カルシウム水溶液中で球状化して沈降した。この球状成型物(A)を塩化カルシウム水溶液と分離し、架橋反応浴(45℃、50g/リットルの硫酸水溶液)1リットルに60分間浸漬したその後、成型物を架橋反応浴(B)と分離し水洗した。その結果、直径約5mmのゲル成型物が得られたが、半透明であり荷重をかけるとつぶれる柔らかいものとなった(C)。溶出試験、強度試験、体積保持率、TOC除去速度、および反応液の発生異物量測定を実施例1と同様の方法で実施した。その結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明のゲル成型物は、排水処理用担体又は生体触媒の担体として好適に利用できる。また、保水剤、保冷剤、眼・皮膚・関節などの生体ゲルの代替、薬物の徐放材、アクチュエーターの基材として利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコールおよびジアルデヒド含有液を成形後、pH3以下の酸と接触させることにより得られる、粒径1〜20mm、アセタール化度1〜20モル%のポリビニルアルコール系ゲル成型物。
【請求項2】
ポリビニルアルコール、少なくとも1種のカチオンとの接触によりゲル化する能力のある水溶性多糖類およびジアルデヒドを含む液滴を、カチオン含有水溶液中に滴下して球状に成型した後、pH3以下の酸と接触させ、ポリビニルアルコールを不溶化させることを特徴とする、ポリビニルアルコール系ゲル成型物の製造方法。

【公開番号】特開2010−116439(P2010−116439A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288749(P2008−288749)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】