説明

ポリフェニレンエーテル

【課題】本発明は、加熱加工時の色調変化が少なく、純度の高いポリフェニレンエーテルを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のポリフェニレンエーテルは、下記式より求めたΔC.I.が0以上7以下である;ΔC.I.=(C.I.heat ― C.I.ppe)/C.I.ppe、 C.I.ppe:下記加熱前のポリフェニレンエーテルのカラーインデックス値、C.I.heat:下記加熱後のポリフェニレンエーテルのカラーインデックス値、 (ポリフェニレンエーテルの加熱条件);加熱温度:310℃、加熱時間:20分、加熱圧力:10MPa。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリフェニレンエーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフェニレンエーテルは、加工性及び生産性に優れ、溶融射出成型や溶融押出成型等の成型方法により所望の形状の製品や部品を効率良く生産できるという利点を有している。ポリフェニレンエーテルは、このような利点を生かし、電気・電子材料分野及び自動車分野における部品用材料、並びにその他各種工業材料分野及び食品の包装分野における部品用材料として幅広く用いられている。
【0003】
近年、ポリフェニレンエーテルの新たな工業用途として、他樹脂と組み合わせて優れた特性を得るための複合材料としての用途や、電子材料としての用途等が検討されている。これらの用途に対しては、従来公知のポリフェニレンエーテルに加え、低分子量のポリフェニレンエーテルが有効であると考えられている。また、加熱前後の色調の変化量の少ないポリフェニレンエーテルの要求が高い。しかしながら、ポリフェニレンエーテルは加熱することにより、褐色に着色し、当該着色は低分子になるほど顕著になることが知られている。このようなポリフェニレンエーテルの加熱前後の色調の変化、例えば、溶融加工時のポリフェニレンエーテルの着色性については充分な改良がされていないのが現状である。また加熱前後の色調変化が大きいということは、種々の加工条件、加工温度に左右される度合が高くなることを意味する。ポリフェニレンエーテルの使用用途の多様化した今日においては、とりわけ加熱前後の色調変化が少ないポリフェニレンエーテルが渇望されている。
【0004】
加熱前後の色調変化が少ないポリフェニレンエーテルを得る方法として、例えば、ポリフェニレンエーテル系重合体自身の分子構造を不活性化する方法が提案されている。具体例として、特許文献1には、末端アシル化による方法、特許文献2には末端アミド化による方法、特許文献3には末端スチレン化による方法、特許文献4には低分子量スチレン系重合体を結合する方法が開示されている。さらに、ポリフェニレンエーテルにアミン類を添加する技術も複数提案されている。例えば、特許文献5、特許文献6及び特許文献7には、ポリフェニレンエーテルに芳香族アミン類を添加する方法が開示されている。これらの方法によれば、ポリフェニレンエーテル系重合体のガラス転移点温度以下すなわち、150℃程度以下の熱履歴による着色性の改良には効果がある。
【0005】
特許文献8には、光安定性を改良することを目的として、ポリフェニレンエーテル粉体にモノアミンを含有させて250℃でプレス成型したPPE組成物が開示されている。また、特許文献9には、ベンジルアミンで変性されたポリフェニレンエーテルを、ベンジルアミン存在下、280℃でプレス成型したポリフェニレンエーテル組成物が開示されており、加熱時の着色が抑制されたPPE組成物が得られている。
【0006】
また、特許文献10には、酸性度(Pka)が8以上で、沸点が80℃以上の2級又は3級脂肪族モノアミンを、ポリフェニレンエーテル100重量部に対し5重量部混合し、加熱時の色調悪化を抑制したポリフェニレンエーテル組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許3375228号公報
【特許文献2】特公昭46−2837号公報
【特許文献3】特公昭46−32427号公報
【特許文献4】特開平1−172451号公報
【特許文献5】特開昭52−84247号公報
【特許文献6】特開昭58−176243号公報
【特許文献7】特開昭58−176245号公報
【特許文献8】特開平6−145497号公報
【特許文献9】特開平7−278292号公報
【特許文献10】特開平6−157893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1〜4の方法では、加熱時の着色性改良の効果が充分ではなく、また特許文献5〜8、10において開示されている方法によって得られるポリフェニレンエーテルは、加工時に添加するアミンが残存するため、ポリフェニレンエーテルの純度を低下させている。また、実施例に挙げられるアミンの一部は危険物に該当し、用いるアミンの引火点、さらには用いるアミンの発火点以上の温度で加工されており、安全に工業的に生産をするための設備が必要である。また、アミンは独特の臭気により、作業環境の悪化が懸念されることから、特許文献5〜8、10に開示の方法は、純度高いポリフェニレンエーテルを得るには望ましくない方法である。さらに特許文献9において開示されている方法では、250℃のような低温下での着色性についてのみ検討されており、一般的なポリフェニレンエーテルエーテルの加工温度(300℃)のような高温下での着色性については検討されていない。
【0009】
そこで、上述した従来技術の問題点に鑑み、本発明においては、高温で加熱した時の色調変化を抑制し、調色性に優れ、さらに純度の高いポリフェニレンエーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記従来技術の課題に対して鋭意研究を行った結果、ポリフェニレンエーテルの製造において、特定のモノアミンを重合開始後に添加することで、純度が高く、且つ加熱前後の色調変化の少ないポリフェニレンエーテルが得られることを突止め、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の通りである。
【0012】
[1]
下記式より求めたΔC.I.が0以上7以下である、ポリフェニレンエーテル;
ΔC.I.=(C.I.heat ― C.I.ppe)/C.I.ppe
C.I.ppe:下記加熱前のポリフェニレンエーテルのカラーインデックス値
C.I.heat:下記加熱後のポリフェニレンエーテルのカラーインデックス値
(ポリフェニレンエーテルの加熱条件)
加熱温度:310℃、加熱時間:20分、加熱圧力:10MPa。
【0013】
[2]
フェノール性水酸基が、ポリフェニレンエーテルの単位構造100ユニット当り0.6個以上である、[1]に記載のポリフェニレンエーテル。
【0014】
[3]
C.I.ppeが0.8以下である、[1]又は[2]に記載のポリフェニレンエーテル。
【0015】
[4]
C.I.heatが4.0以下である、[1]〜[3]いずれかに記載のポリフェニレンエーテル。
【0016】
[5]
分子量50,000以上の成分を5〜20質量%の量で含み、かつ、分子量8,000以下の成分を12〜30質量%の量で含む、[1]〜[4]いずれかに記載のポリフェニレンエーテル。
【0017】
[6]
残存窒素量が2000ppm以下である、[1]〜[5]いずれかに記載のポリフェニレンエーテル。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、加熱加工時の色調変化が少ないポリフェニレンエーテルを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という。)について詳細に説明する。以下の本実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこの本実施の形態にのみ限定する趣旨ではない。そして、本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
【0020】
本実施の形態に係るポリフェニレンエーテル(以下、単に「PPE」という場合がある。)は、下記式(1)で表される繰返し単位構造からなるホモ重合体及び/又は共重合体である。
【0021】
【化1】

式(1)中、R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜7のアルキル基、フェニル基、ハロアルキル基、アミノアルキル基、炭化水素オキシ基又は少なくとも2個の炭素原子がハロゲン原子と酸素原子とを隔てているハロ炭化水素オキシ基からなる群から選択される。
【0022】
前記式(1)中、R1、R2、R3、及びR4で示されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、塩素原子、臭素原子が好ましい。
【0023】
前記式(1)中、R1、R2、R3、及びR4で示される「アルキル基」は、炭素数が好ましくは1〜6、より好ましくは1〜3の、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を示すものとし、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル等が挙げられる。メチル、エチルが好ましく、メチルがより好ましい。
【0024】
前記式(1)中、R1、R2、R3、及びR4で示されるアルキル基は、置換可能な位置に、1又は2以上の置換基で置換されていてもよい。
【0025】
このような置換基としては、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、炭素数1〜6のアルキル基(例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル)、アリール基(例えば、フェニル、ナフチル)、アルケニル基(例えば、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル)、アルキニル基(例えば、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル)、アラルキル基(例えば、ベンジル、フェネチル)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ)等が挙げられる。
【0026】
ポリフェニレンエーテルの着色性の指標としては、カラーインデックス(C.I.)が利用できる。
【0027】
ポリフェニレンエーテルは他の樹脂と溶融混練して使用されることが多く、加熱することで着色することが知られている。そのため、加熱前のポリフェニレンエーテルのカラーインデックス値及び、加熱後のポリフェニレンエーテルのカラーインデックス値が小さいほど、さらには加熱前後でのカラーインデックス値の変化率が小さいほど、色調に優れるポリフェニレンエーテルとなる。なお、「加熱後のポリフェニレンエーテル」とは、溶融混練後のポリフェニレンエーテル、成形加工後のポリフェニレンエーテル、コンプレッション後のポリフェニレンエーテル等が挙げられる。加熱後のポリフェニレンエーテルのカラーインデックス値を測定する、代表的な方法の一例としては、ポリフェニレンエーテルを、310℃で20分、10MPaの圧力でコンプレッションしたポリフェニレンエーテルのカラーインデックス値(C.I.heat)を測定する方法が簡便である。
【0028】
本実施の形態のポリフェニレンエーテルは、下記式より求めたΔC.I.が0以上7以下である。
【0029】
ΔC.I.=(C.I.heat ― C.I.ppe)/C.I.ppe
C.I.ppe:下記加熱前のポリフェニレンエーテルのカラーインデックス値
C.I.heat:下記加熱後のポリフェニレンエーテルのカラーインデックス値
(ポリフェニレンエーテルの加熱条件)
加熱温度:310℃、加熱時間:20分、加熱圧力:10MPa。
【0030】
ΔC.I.の値は、小さいほど変化率が少ないことをあらわし、ポリフェニレンエーテルの色調が優れることを示す。当該ΔC.I.は、好ましくは0以上6.0以下であり、さらに好ましくは0以上5.0以下である。
【0031】
ΔC.I.の値が前記範囲内のポリフェニレンエーテルは、例えば、後述するモノアミンを重合開始後に添加することにより得ることができる。
【0032】
なお、本実施の形態において、ポリフェニレンエーテルのカラーインデックス(C.I.)は、下記のようにして求められる。
【0033】
ポリフェニレンエーテルをクロロホルムに溶かし、ポリフェニレンエーテル濃度0.05g/mLのクロロホルム溶液とする。
【0034】
セル長1cmの石英セルに、ポリフェニレンエーテルの溶解に用いたものと同一のクロロホルムを入れ、紫外線(波長480nm)により純クロロホルムの吸光度を測定し、吸光度0とする。
【0035】
同様のセルに上記調製したポリフェニレンエーテルのクロロホルム溶液を入れ、480nmでの吸光度を測定する。
【0036】
ポリフェニレンエーテルのクロロホルム溶液の吸光度から純クロロホルムの吸光度を減じ、ポリフェニレンエーテルのクロロホルム溶液中のポリフェニレンエーテル濃度で除した値をポリフェニレンエーテルのカラーインデックス(C.I)とする。
【0037】
カラーインデックス値は、大きいほど着色していることを示している。
【0038】
上記加熱前のポリフェニレンエーテルのカラーインデックス値(C.I.ppe)は、調色性の観点から小さいほど好ましく、具体的には0.8以下であることが好ましく、より好ましくは0.6以下であり、さらに好ましくは0.5以下である。
【0039】
上記加熱後のカラーインデックス値(C.I.heat)は、調色性の観点から小さいほど好ましく、具体的には4.0以下であることが好ましく、より好ましくは3.5以下、さらに好ましくは3.0、最も好ましくは2.5以下である。
【0040】
本実施の形態のポリフェニレンエーテルは、低分子量であり、かつ、オリゴマー成分が少ないポリフェニレンエーテルであることが好ましい。また、本実施の形態に係るポリフェニレンエーテルは、分子量50,000以上の成分を5〜20質量%の量で含み、かつ、分子量8,000以下の成分を12〜30質量%の量で含むことが好ましい。分子量8,000以下の成分量、50,000以上の成分量を特定の範囲にすることで、加熱加工時の目やに・ゲルの発生抑制が良好となり、得られるポリフェニレンエーテルは、高い機械的強度を有する傾向にある。すなわち、目やに・ゲルの発生抑制の観点から、ポリフェニレンエーテル全体に対して、分子量50,000以上の成分を5〜20質量%の量で含むことが好ましく、5〜18質量%の量で含むことがより好ましい。機械的特性の観点からは、ポリフェニレンエーテル全体に対して、分子量8,000以下の成分を12〜30質量%の量で含むことが好ましく、15〜30質量%の量で含むことがより好ましい。
【0041】
本実施の形態のポリフェニレンエーテルの製造方法において、例えば、重合時間や用いる触媒量・モノマー量・溶剤組成等を制御することにより、分子量50,000以上の成分を上述の特定量に制御し、かつ、分子量8,000以下の成分を上述の特定量に制御することができる。
【0042】
ポリフェニレンエーテルを製造した後、例えば、分子量8,000以下のポリフェニレンエーテルが30質量%を超えるか、若しくは12質量%に満たない場合、又は分子量50,000以上のポリフェニレンエーテルが20質量%を超えるか、若しくは5質量%未満の場合には、下記の方法により分子量を調整できる。
【0043】
例えば、ポリフェニレンエーテルを良溶媒に溶解し貧溶媒で再沈させ単離する、良溶媒と貧溶媒の混合溶媒で洗浄する等の方法が適用できる。
【0044】
これらの方法は、処理温度により分子量を調整可能なため、ポリフェニレンエーテルの分子量調整方法として使用できるが、低減された不要な成分がポリマー損失となり収率が低下する可能性が高い。そのため、分子量調整方法を使用せず、本実施の形態のポリフェニレンエーテルを重合段階で製造する方法が、効率的にポリフェニレンエーテルを製造するという観点から好ましい。
【0045】
従来、一般的に使用されているポリフェニレンエーテルは、分子量50,000以上の成分量が通常分子量タイプのもので40質量%前後であり、低分子量タイプと呼ばれるものでも25質量%前後である。一方、分子量8,000以下の成分量が通常分子量タイプ、低分子量タイプで3〜10質量%前後である。本実施の形態のポリフェニレンエーテルは、これらのポリフェニレンエーテルとは異なる低分子量タイプのポリフェニレンエーテルであることが好ましい。
【0046】
特に、所定の分子量以上の成分をもったポリフェニレンエーテルと、所定の分子量以下の成分をもったポリフェニレンエーテルが共存し、かつ、分子量分布が狭いポリフェニレンエーテルを製造する場合において、重合開始後にモノアミンを添加し、さらに当該モノアミン濃度を制御することで、極めて良好な色調を示すポリフェニレンエーテルを製造することができ、特に加熱前後での色調変化が極めて低く、調色性に優れるポリフェニレンエーテルを製造することができる。
【0047】
なお、本実施の形態のポリフェニレンエーテルの分子量に関わる情報は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー測定装置を用いた測定により得られる。具体的なゲルパーミエーションクロマトグラフィーの測定条件としては、昭和電工(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィーSystem21(カラム:昭和電工(株)製K−805Lを2本直列、カラム温度:40℃、溶媒:クロロホルム、溶媒流量:1.0ml/min、サンプル濃度:ポリフェニレンエーテルの1g/Lクロロホルム溶液)を用いて、標準ポリスチレン(標準ポリスチレンの分子量は、3,650,000、2,170,000、1,090,000、681,000、204,000、52,000、30,200、13,800、3,360、1,300、550)の検量線を作成するという、測定条件とする。
【0048】
検出部のUVの波長は、標準ポリスチレンの場合は254nm、ポリフェニレンエーテルの場合は283nmを、それぞれ選択できる。
【0049】
本実施の形態のポリフェニレンエーテルの数平均分子量(Mn)は、加熱加工時の目やにやゲルの発生抑制、及び、高い機械的強度の観点から7,000以上15,000以下であることが好ましい。より好ましい下限は8,000以上であり、さらに好ましい下限は9,000以上である。また、より好ましい上限は14,000以下であり、さらに好ましい上限は13,000以下である。機械的特性を発揮する観点から、数平均分子量の下限は7,000以上であることが好ましく、加熱加工時の目やにやゲルの発生抑制する観点から、数平均分子量の上限は15,000以下であることが好ましい。
【0050】
また、分子量分布を示す指標として、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)であらわされる分散度を使用する。この分散度は、値が小さいほど分子量分布が狭いことを示し、1が最小値である。
【0051】
本実施の形態のポリフェニレンエーテルの分散度は、3.0以下であることが好ましい。当該分散度がこの範囲であることで、溶剤への溶解性に優れたポリフェニレンエーテルとなる傾向にある。前記分散度は、より好ましくは2.8以下であり、さらに好ましくは2.6以下であり、最も好ましくは2.5以下である。
【0052】
また、前記分散度は1.6以上であることが好ましい。この範囲未満であると、分子量8,000以下の成分量、50,000以上の成分量が特定の範囲にすることが困難となる可能性が高く、効率よく好適なポリフェニレンエーテルを製造することが困難となる。前記分散度は、より好ましくは1.8以上、さらに好ましくは1.9以上、最も好ましくは2.0以上である。
【0053】
ポリフェニレンエーテルの純度の指標としては残存窒素量が利用できる。ポリフェニレンエーテル中の残存窒素量を確認することで、ポリフェニレンエーテル中のアミン成分などの加熱加工時の臭気の原因となる不純物を確認することができる。残存窒素量は、窒素測定装置により定量することができ、具体的には後述する実施例に記載の方法で求めることができる。
【0054】
残存窒素量は、加熱加工時の臭気の原因となることから、ポリフェニレンエーテル中に2000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは1500ppm以下であり、さらに好ましくは1000ppm以下であり、よりさらに好ましくは800ppm以下であり、最も好ましくは700ppm以下である。
【0055】
ポリフェニレンエーテルの分子鎖末端フェノール性水酸基数は、NMRによって算出され、ポリフェニレンエーテルの単位構造100ユニットあたりのフェノール水酸基数として算出できる。その一例として、ポリフェニレンエーテルを重クロロホルムに溶解し、テトラメチルシランを内部標準として用い、H−NMR(JEOL製500MHz)測定を行い、ポリフェニレンエーテル末端芳香環3、5位に起因するピーク(6.36ppm付近)、ポリフェニレンエーテル主鎖芳香環3、5位に起因するピーク(6.3〜6.7ppm)、それぞれのピークの面積比から算出することができる。
【0056】
フェノール性水酸基は、他の樹脂との反応活性点となり得るため、ポリフェニレンエーテルの単位構造100ユニット当り0.6個以上であることが好ましく、より好ましくは0.7個以上、さらに好ましくは0.8個以上であり、最も好ましくは0.9個以上である。
【0057】
一般的に、分子鎖末端フェノール性水酸基の数が多いと、加熱前後のカラーインデックス値(C.I.heat)が高くなり、色調が悪化する傾向にあり、反応活性点を多くしつつ色調を維持することが困難である。しかし、驚くべきことに本実施の形態に係るポリフェニレンエーテルは、上述したとおり重合開始後にモノアミンを添加して得られることから、フェノール性水酸基の数が上記範囲であっても、加熱後にも極めて良好な色調を示し、残存するアミン成分や触媒成分が少ない純度の高いポリフェニレンエーテルである。
【0058】
上記式(1)により表されるポリフェニレンエーテルは、以下のフェノール化合物を重合することにより製造できる。
【0059】
フェノール化合物として、例えば、o−クレゾール、2,6−ジメチルフェノール、2−エチルフェノール、2−メチル−6−エチルフェノール、2,6−ジエチルフェノール、2−n−プロピルフェノール、2−エチル−6−n−プロピルフェノール、2−メチル−6−クロルフェノール、2−メチル−6−ブロモフェノール、2−メチル−6−イソプロピルフェノール、2−メチル−6−n−プロピルフェノール、2−エチル−6−ブロモフェノール、2−メチル−6−n−ブチルフェノール、2,6−ジ−n−プロピルフェノール、2−エチル−6−クロルフェノール、2−メチル−6−フェニルフェノール、2−フェニルフェノール、2,6−ジフェニルフェノール、2,6−ビス−(4−フルオロフェニル)フェノール、2−メチル−6−トリルフェノール、2,6−ジトリルフェノール、2、5−ジメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,5−ジエチルフェノール、2−メチル−5−エチルフェノール、2−エチル−5−メチルフェノール、2−アリル−5−メチルフェノール、2、5−ジアリルフェノール、2,3−ジエチル−6−n―プロピルフェノール、2−メチル−5−クロルフェノール、2−メチル−5−ブロモフェノール、2−メチル−5−イソプロピルフェノール、2−メチル−5−n−プロピルフェノール、2−エチル−5−ブロモフェノール、2−メチル−5−n−ブチルフェノール、2,5−ジ−n−プロピルフェノール、2−エチル−5−クロルフェノール、2−メチル−5−フェニルフェノール、2,5−ジフェニルフェノール、2,5−ビス−(4−フルオロフェニル)フェノール、2−メチル−5−トリルフェノール、2,5−ジトリルフェノール、2,6−ジメチル−3−アリルフェノール、2,3,6−トリアリルフェノール、2,3,6−トリブチルフェノール、2,6−ジーn−ブチル−3−メチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−3−メチルフェノール、2,6−ジメチル−3−n−ブチルフェノール、2,6−ジメチル−3−t−ブチルフェノール等が挙げられる。
【0060】
特に、安価であり入手が容易であるため、2,6−ジメチルフェノール、2,6−ジエチルフェノール、2,6−ジフェニルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノールが好ましく、2,6−ジメチルフェノール、2,3,6−トリメチルフェノールがより好ましい。
【0061】
上記フェノール化合物は、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
例えば、2,6−ジメチルフェノールと2,6−ジエチルフェノールとを組み合わせて使用する方法、2,6−ジメチルフェノールと2,6−ジフェニルフェノールを組み合わせて用いる方法、2,3,6−トリメチルフェノールと2,5−ジメチルフェノールを組み合わせて使用する方法、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールを組み合わせて用いる方法等が挙げられる。混合比は任意に選択できる。また使用するフェノール化合物の中には、製造の際の副産物として含まれている少量のm−クレゾール、p−クレゾール、2,4−ジメチルフェノール、2,4,6−トリメチルフェノール等が含まれていてもよい。
【0063】
上記フェノール化合物の他に、使用する化合物の中に下記式(2)で表される二価のフェノール化合物が含まれていてもよい。下記式(2)で表されるような二価のフェノール化合物は、対応する一価のフェノール化合物と、ケトン類、又はジハロゲン化脂肪族炭化水素との反応や、対応する一価のフェノール化合物同士の反応等により工業的に有利に製造できる。例えばホルムアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、シクロヘキサン等の汎用ケトン化合物と一価のフェノール化合物との反応により得られる化合物群や、一価のフェノール化合物同士の反応により得られる化合群がある。このような化合物として、例えば下記一般式(2−a)、(2−b)、(2−c)で表される化合物が挙げられる。
【0064】
【化2】

【0065】
【化2−a】

【0066】
【化2−b】

【0067】
【化2−c】

上記式で表される代表的な化合物が、R5及びR6がメチル基、R7及びR8が水素でXが両方のアリール基を直結している化合物、R5及びR6がメチル基、R7及びR8が水素でXがメチレンである化合物、R5及びR6がメチル基、R7及びR8が水素でXがチオである化合物、R5、R6及びR7がメチル基、R8が水素でXがエチレンである化合物、R5及びR6がメチル基、R7及びR8が水素でXがイソプロピリデンである化合物、R5及びR6がメチル基、R7及びR8が水素でXがシクロヘキシリデンである化合物、R5、R6及びR7がメチル基、R8が水素でXが両方のアリール基を直結している化合物、R5、R6及びR7がメチル基、R8が水素でXがメチレンである化合物、R5、R6及びR7がメチル基、R8が水素でXがエチレンである化合物、R5、R6及びR7がメチル基、R8が水素でXがチオである化合物、R5、R6及びR7がメチル基、R8が水素でXがイソプロピリデンである化合物、R5、R6、R7及びR8がメチル基でXがメチレンである化合物、R5、R6、R7及びR8がメチル基でXがエチレンである化合物、R5、R6、R7及びR8がメチル基でXがイソプロピリデンである化合物等であるが、これらの例に限定されない。
【0068】
さらに上記フェノール化合物の他に、多価フェノール化合物を共存させることが可能である。多価フェノール化合物として、例えば、分子内に3個以上9個未満のフェノール性水酸基を有し、その内の少なくとも1個のフェノール性水酸基の2,6位にアルキル基又はアルキレン基を有する化合物が挙げられる。多価フェノール化合物の例として、以下に列挙する。4,4’-[(3-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[(3-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、4,4’-[(4-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[(4-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、4,4’-[(2-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル)メチレン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[(4-ヒドロキシ-3-エトキシフェニル)メチレン]ビス(2,3,6-トリメチルエチルフェノール)、4,4’-[(3,4-ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[(3,4-ジヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、2,2’-[(4-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(3,5,6-トリメチルフェノール)、4,4’-[4-(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシリデン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[(2-ヒドロキシフェニル)メチレン]-ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、4,4’-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[1-[4-[1-(4-ヒドロキシ-3-フルオロフェニル)-1-メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、2,6-ビス[(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)エチル]-4-メチルフェノール、2,6-ビス[(4-ヒドロキシ-2,3,6-トリメチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール、2,6-ビス[(4-ヒドロキシ-3,5,6-トリメチルフェニル)メチル]-4-エチルフェノール、2,4-ビス[(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メチル]-6-メチルフェノール、2,6-ビス[(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール、2,4-ビス[(4-ヒドロキシ-3-シクロヘキシルフェニル)メチル]-6-メチルフェノール、2,4-ビス[(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)メチル]-6-シクロヘキシルフェノール、2,4-ビス[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]-6-シクロヘキシルフェノール、2,4-ビス[(4-ヒドロキシ-2,3,6-トリメチルフェニル)メチル]-6-シクロヘキシルフェノール、3,6-ビス[(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メチル]-1,2-ベンゼンジオール、4,6-ビス[(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メチル]-1,3-ベンゼンジオール、2,4,6-トリス[(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メチル]-1,3-ベンゼンジオール、2,4,6-トリス[(2-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メチル]-1,3-ベンゼンジオール、2,2’-メチレンビス[6-[(4/2-ヒドロキシ-2,5/3,6-ジメチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール]、2,2’-メチレンビス[6-[(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール]、2,2’-メチレンビス[6-[(4/2-ヒドロキシ-2,3,5/3,4,6-トリメチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール]、2,2’-メチレンビス[6-[(4-ヒドロキシ-2,3,5-トリメチルフェニル)メチル]-4-メチルフェノール]、4,4’-メチレンビス[2-[(2,4-ジヒドロキシフェニル)メチル]-6-メチルフェノール]、4,4’-メチレンビス[2-[(2,4-ジヒドロキシフェニル)メチル]-3,6-ジメチルフェノール]、4,4’-メチレンビス[2-[(2,4-ジヒドロキシ-3-メチルフェニル)メチル]-3,6-ジメチルフェノール]、4,4’-メチレンビス[2-[(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メチル]-3,6-ジメチルフェノール]、6,6’-メチレンビス[4-[(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メチル]-1,2,3-ベンゼントリオール]、4,4’-シクロヘキシリデンビス[2-シクロヘキシル-6-[(2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)メチル]フェノール]、4,4’-シクロヘキシリデンビス[2-シクロヘキシル-6-[(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)メチル]フェノール]、4,4’-シクロヘキシリデンビス[2-シクロヘキシル-6-[(4-ヒドロキシ-2-メチル-5-シクロヘキシルフェニル)メチル]フェノール]、4,4’-シクロヘキシリデンビス[2-シクロヘキシル-6-[(2,3,4-トリヒドロキシフェニル)メチル]フェノール]、4,4’,4”,4”’-(1,2-エタンジイリデン)テトラキス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’,4”,4”’-(1,4-フェニレンジメチリデン)テトラキス(2,6-ジメチルフェノール)、などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。フェノール性水酸基の数は3個以上であれば特に制限はないが、数が多くなると加熱前のポリフェニレンエーテルのカラーインデックス値及び、加熱後のポリフェニレンエーテルのカラーインデックス値、さらには加熱前後でのカラーインデックス値の変化率が大きくことがあるため、好ましくは3〜6個、さらに好ましくは3〜4個であり、また、2,6位のアルキル基又はアルキレン基としてはメチル基が好ましい。最も好ましい多価フェノール化合物は、4,4’-[(4-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[(3-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,6-ジメチルフェノール)、4,4’-[(4-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、4,4’-[(3-ヒドロキシフェニル)メチレン]ビス(2,3,6-トリメチルフェノール)、4,4’,4”,4”’-(1,4-フェニレンジメチリデン)テトラキス(2,6-ジメチルフェノール)である。
【0069】
ポリフェニレンエーテルは、沈殿析出重合法又は溶液重合法の2種類の製造方法により製造でき、製造のし易さ、分子量の調整の容易さの観点では沈殿析出重合が好ましく、より色調の優れたものを得る場合は溶液重合法が好ましい。
【0070】
沈殿析出重合法とは、所定の分子量となったポリフェニレンエーテルが沈殿析出する重合形態である。沈殿析出重合法においては、ポリフェニレンエーテルの重合が進行するにつれて、溶媒組成などに応じて決まる分子量に達したものが析出し、それ以下の分子量のものは溶解した状態となる。溶媒としては、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等のポリフェニレンエーテルの良溶媒と、メタノール、ブタノール等の貧溶媒との混合溶媒が用いられる。析出したポリフェニレンエーテルは重合反応速度が遅くなるので、理論上、得られるポリフェニレンエーテルの分子量分布が狭くなっていく。さらに、重合途中でポリフェニレンエーテルが析出するため、系内の粘度は徐々に低下していくことから重合時のモノマー濃度(フェノール化合物濃度)を高くすることができる。また、析出したポリフェニレンエーテルをろ過することで容易に取り出すことができるので、極めて簡易な工程によりポリフェニレンエーテルを得ることができる。
【0071】
一方、溶液重合法とは、ポリフェニレンエーテルの良溶媒中で重合が行われ、重合中に沈殿が析出しない重合方法である。全ポリフェニレンエーテル分子が溶解した状態にあり、分子量分布は広くなる傾向にある。溶液重合法においては、ポリフェニレンエーテルが溶解した重合液を、メタノール等のポリフェニレンエーテルの貧溶媒中に展開することによって粉体状のポリフェニレンエーテルが得られる。
【0072】
効率良くポリフェニレンエーテルを製造する観点及び特定の分子量分布をもつポリフェニレンエーテルを製造する観点から、モノマー濃度は、重合液の全量を基準として、10〜28質量%が好ましく、15〜25質量%がより好ましい。前記濃度が10質量%以上であると、ポリフェニレンエーテルの製造効率が高くなる。
【0073】
一方、前記濃度が30質量%以上であると、特定の分子量に調整できなくなる傾向にある。この原因について本発明者らは以下のように推定している。前記濃度が30質量%以上と高くなると、重合終結時の液粘度が高くなり、均一な撹拌が困難となってくる。そのため、不均一な反応が起こり、予想外の分子量のポリフェニレンエーテルが得られる場合がある。そのため、本実施の形態の好適な、特定の分子量をもつポリフェニレンエーテルを効率よく製造することが困難になるおそれがある。
【0074】
本実施の形態のポリフェニレンエーテルの重合工程においては、沈殿析出重合、溶液重合のいずれにおいても、用いるフェノール化合物を重合開始後に添加することで、より効率的にポリフェニレンエーテルを得ることができる。
【0075】
特に分子量分布の狭いポリフェニレンエーテルを得るには、重合時に用いる全フェノール化合物の内、1〜100質量%を重合開始後に添加することが好ましい。より好ましくは、20〜100質量%、さらに好ましくは40〜100質量%、最も好ましくは50〜100質量%である。
【0076】
本実施の形態のポリフェニレンエーテルの重合工程においては、沈殿析出重合、溶液重合のいずれにおいても、酸素含有ガスを供給しながら行う。
【0077】
酸素含有ガスとしては、純酸素の他、酸素と窒素等の不活性ガスとを任意の割合で混合したもの、空気、更には空気と窒素、希ガス等の不活性ガスとを任意の割合で混合したもの等が使用できる。
【0078】
重合反応中の系内圧力は、常圧でよいが、必要に応じて減圧でも加圧でも使用できる。
【0079】
酸素含有ガスの供給速度は、除熱や重合速度等を考慮して任意に選択できるが、重合に用いるフェノール化合物1モル当たりの純酸素として5NmL/分以上が好ましく、10NmL/分以上がさらに好ましい。
【0080】
ポリフェニレンエーテルの重合反応系には、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコキサイド、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム等の中性塩、ゼオライト等を添加してもよい。
【0081】
また、従来から重合活性に向上効果を有することが知られている界面活性剤を重合溶媒中に添加してもよい。このような界面活性剤としては、例えば、Aliquat336やCapRiquat(株式会社 同仁化学研究所製 商品名)で知られるトリオクチルメチルアンモニウムクロライドが挙げられる。使用量は重合反応原料の全量に対して0.1質量%を超えない範囲が好ましい。
【0082】
本実施の形態のポリフェニレンエーテルの製造に用いる触媒としては、一般的にポリフェニレンエーテルの製造に用いられる公知の触媒系が使用できる。
【0083】
例えば、酸化還元能を有する遷移金属イオンと、この金属イオンと錯形成可能なアミン化合物からなるものがあり、具体的には、銅化合物とアミンとからなる触媒系、マンガン化合物とアミンとからなる触媒系、コバルト化合物とアミンとからなる触媒系等が挙げられる。
【0084】
重合反応は若干のアルカリ性条件下で効率良く進行するため、ここに若干のアルカリ若しくは更なるアミンを加えてもよい。
【0085】
本実施の形態のポリフェニレンエーテルの製造工程において好適な触媒としては、構成成分として、銅化合物、ハロゲン化合物及び下記式(3)で表されるジアミン化合物を含む触媒が挙げられる。
【0086】
【化3】

上記式(3)中、R9、R10、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基からなる群から選ばれるいずれかを示す。なお全てが同時に水素ではないものとする。R13は炭素数2〜5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基を示す。
【0087】
触媒成分を構成する銅化合物としては、第一銅化合物、第二銅化合物又はこれらの混合物を使用できる。第一銅化合物としては、例えば塩化第一銅、臭化第一銅、硫酸第一銅、硝酸第一銅等が挙げられる。第二銅化合物としては、例えば、塩化第二銅、臭化第二銅、硫酸第二銅、硝酸第二銅等が挙げられる。これらの中で特に好ましい銅化合物は、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅である。
【0088】
また、これらの銅化合物は、酸化物(例えば酸化第一銅)、炭酸塩、水酸化物等と対応するハロゲン又は酸から合成してもよい。
【0089】
例えば、酸化第一銅とハロゲン化合物(例えばハロゲン化水素の溶液)とを混合することにより合成できる。これらの銅化合物は、単独でも用いられるし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0090】
触媒成分を構成するハロゲン化合物としては、例えば、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、塩化カリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、塩化テトラメチルアンモニウム、臭化テトラメチルアンモニウム、ヨウ化テトラメチルアンモニウム、塩化テトラエチルアンモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ヨウ化テトラエチルアンモニウム等である。またこれらは水溶液や適当な溶媒を用いた溶液として使用できる。
【0091】
これらのハロゲン化合物は、単独でも用いられるし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0092】
好ましいハロゲン化合物は、塩化水素の水溶液、臭化水素の水溶液である。
【0093】
これらの化合物の使用量は特に限定されないが、銅原子のモル量に対してハロゲン原子として2倍以上20倍以下が好ましく、使用されるフェノール化合物の100モルに対して好ましい銅原子の使用量としては0.02モルから0.6モルの範囲である。
【0094】
上記式(3)により示されるジアミン化合物としては、例えば、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’−トリメチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N−メチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラエチルエチレンジアミン、N,N,N’−トリエチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、N,N−ジメチル−N’−エチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチル−N−エチルエチレンジアミン、N−n−プロピルエチレンジアミン、N,N’−ジーn−プロピルエチレンジアミン、N−i−プロピルエチレンジアミン、N,N’−ジーi−プロピルエチレンジアミン、N−n−ブチルエチレンジアミン、N,N’−ジーn−ブチルエチレンジアミン、N−i−ブチルエチレンジアミン、N,N’−ジーi−ブチルエチレンジアミン、N−t−ブチルエチレンジアミン、N,N’−ジーt−ブチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’−トリメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N’−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N−メチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノ−1−メチルプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,3−ジアミノ−2−メチルプロパン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,4−ジアミノブタン、N,N,N’,N’−テトラメチル−1,5−ジアミノペンタン等が挙げられる。
【0095】
好ましいジアミン化合物は、2つの窒素原子をつなぐアルキレン基(R13)の炭素数が2又は3のものである。
【0096】
これらのジアミン化合物の使用量は特に限定されないが、通常使用されるフェノール化合物100モルに対して0.01モル〜10モルの範囲で用いられる。
【0097】
重合触媒を構成するその他の成分について説明する。
【0098】
重合工程で用いる重合触媒には、上述した触媒成分の他、さらに、例えば3級モノアミン化合物又は2級モノアミン化合物を、それぞれ単独で又は組み合わせて含有させてもよい。
【0099】
3級モノアミン化合物とは、脂環式3級アミンを含む脂肪族3級アミンである。
【0100】
例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、アリルジエチルアミン、ジメチル−n−ブチルアミン、ジエチルイソプロピルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン等が挙げられる。
【0101】
これらの第3級モノアミンは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。使用量は特に限定されないが、重合するフェノール化合物100モルに対して15モル以下が好ましい。
【0102】
本実施の形態のポリフェニレンエーテルの製造において、3級モノアミン化合物は、通常使用される全量を全て反応系内に初期から加える必要はない。即ち、その内の一部を途中で加えてもよいし、その一部を重合開始から逐次加えてもよい。また、重合の開始と同時にフェノール化合物又はフェノール化合物の溶液に加え、これと共に加えてもよい。
【0103】
2級モノアミン化合物としては、第2級脂肪族アミンが挙げられる。
【0104】
第2級脂肪族アミンとして、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジ−i−プロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジ−i−ブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、ジペンチルアミン類、ジヘキシルアミン類、ジオクチルアミン類、ジデシルアミン類、ジベンジルアミン類、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルブチルアミン、シクロヘキシルアミンが挙げられる。
【0105】
また、2級モノアミン化合物としては、芳香族を含む2級モノアミン化合物も適用できる。例えば、N−フェニルメタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N−フェニルプロパノールアミン、N−(m−メチルフェニル)エタノールアミン、N−(p−メチルフェニル)エタノールアミン、N−(2’,6’−ジメチルフェニル)エタノールアミン、N−(p−クロロフェニル)エタノールアミン、N−エチルアニリン、N−ブチルアニリン、N−メチル−2−メチルアニリン、N−メチル−2,6−ジメチルアニリン、ジフェニルアミン等が挙げられる。上述した2級モノアミン化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。2級モノアミン化合物の使用量は、特に限定されないが、重合するフェノール化合物100モルに対して15モル以下が好適である。
【0106】
特に、本実施の形態のポリフェニレンエーテルを得るには、少なくとも1種以上の3級モノアミンを、重合開始後に添加することで、より効率的に得ることができる。さらに好ましい方法としては、少なくとも1種以上の2級モノアミンと少なくとも1種以上の3級モノアミンとを、重合開始後に添加していく方法である。特に優れた色調を有するポリフェニレンエーテルを得るには、重合時に用いる全モノアミン量の内、1〜99質量%を重合開始後に添加していくことが好ましい。より好ましくは1〜50質量%、さらに好ましくは1〜25質量%であり、さらにより好ましくは1〜20質量%であり、最も好ましくは1〜15質量%である。上記、重合開始後に添加するモノアミンは、重合途中に全量を添加してもよいし、逐次添加しても好ましい。特に、重合の進行につれて上記モノアミン量を徐々に添加し、重合反応に関与するアミン濃度を徐々に上昇させていくことで、優れた色調及び加熱前後の色調性を抑制したポリフェニレンエーテルを効率的に得ることができる。モノアミンを重合開始後、逐次添加する場合、逐次添加開始後から終了までに要する時間は特に限られないが、効率的にポリフェニレンエーテルを得る観点から、60分以内であることが好ましく、より好ましくは50分以内、さらに好ましくは45分以内、最も好ましくは40分以内である。また、モノアミンの添加開始時間は、重合開始時間より20分以内であることが好ましく、より好ましくは重合開始と同時に行うことが好ましい。またこれらのモノアミンは、重合に用いるその他成分と混合し、重合時に逐次添加してもかまわないが、分子量分布を狭くするためには、重合時に逐次添加する方が好ましい。
【0107】
重合反応の終了後の後処理方法については、特に限定されるものではないが、通常、塩酸や酢酸等の酸、エチレンジアミン4酢酸(EDTA)及びその塩、ニトリロトリ酢酸及びその塩等を反応液に加えて触媒を失活させる方法が挙げられる。
【0108】
その後、重合終結時の重合溶液は、ポリフェニレンエーテルが沈殿析出した状態であるため、触媒の洗浄除去を目的として、ポリフェニレンエーテルの溶解能が低い溶媒を主成分とする溶液を用いて繰り返し洗浄処理を行うことが好ましい。
【0109】
その後、各種乾燥機を用いて乾燥処理を施すことにより、ポリフェニレンエーテルを粉体として回収できる。
【0110】
乾燥処理は、少なくとも60℃以上の温度により行うものとし、80℃以上が好ましく、120℃以上がより好ましく、140℃以上がさらに好ましく、150℃以上がさらにより好ましい。
【0111】
ポリフェニレンエーテルの乾燥を60℃未満の温度で行うと、ポリフェニレンエーテル中の芳香族炭化水素の含有量が効率よく1.5質量%未満に抑制できないおそれがある。
【0112】
ポリフェニレンエーテルを高効率で得るためには、乾燥温度を上昇させる方法、乾燥雰囲気中の真空度を上昇させる方法、乾燥中に撹拌を行う方法等が有効であるが、特に、乾燥温度を上昇させる方法が製造効率の観点から好ましい。
【0113】
乾燥工程は混合機を併用することが好ましい。混合機としては、撹拌式、転動式の乾燥機が挙げられる。これにより処理量を多くでき、生産性を高く維持できる。
【0114】
本実施の形態に係るポリフェニレンエーテルの還元粘度(0.5dl/g クロロホルム溶液、30℃測定)は、優れた溶解性、優れた被覆性・機械的特性の観点から0.20〜0.43dl/gの範囲が好ましく、0.23dl/g〜0.40dl/gの範囲がより好ましく、0.25〜0.38dl/gの範囲がさらに好ましい。
【0115】
ポリフェニレンエーテルとしては、2種以上の還元粘度の異なるポリフェニレンエーテルをブレンドしたものであってもよい。例えば、還元粘度0.40dl/g以下のポリフェニレンエーテルと還元粘度0.45dl/g以上のポリフェニレンエーテルとの混合物であってもよいが、それらの混合物の還元粘度は、0.20〜0.43dl/gの範囲であることが好ましい。
【0116】
本実施の形態のポリフェニレンエーテルは、従来既知の熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂と溶融混練することができる。
【0117】
熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、熱可塑性エラストマー、ポリスチレン、アクリロニトリル/スチレン樹脂、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン樹脂、メタクリル樹脂、塩化ビニル、ポリアミド、ポリアセタール、超高分子量ポリエチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリメチルペンテン、ポリカーボネート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルケトン、液晶ポリマー、ポリテトラフロロエチレン、ポリエーテルイミド、ポリアリレート、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリアミドイミド、フェノール、尿素、メラミン、不飽和ポリエステル、アルキッド、エポキシ、ジアリルフタレート、ビスマレイミド等の樹脂が挙げられる。
【0118】
溶融混練時に、導電性、難燃性、耐衝撃性等の効果を付与する目的で従来既知の添加剤や熱可塑性エラストマーを加えることがより好ましい。
【0119】
また、本実施の形態のポリフェニレンエーテルを用いて樹脂組成物を製造する際には、その他の添加剤、例えば可塑剤、安定剤、変性剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤、離型剤及びガラス繊維、炭素繊維等の繊維状補強剤、更にはガラスビーズ、炭酸カルシウム、タルク、クレイ等の充填剤を添加してもよい。
【0120】
安定剤や変性剤としては、亜リン酸エステル類、ヒンダードフェノール類、含イオウ酸化防止剤、アルカノールアミン類、酸アミド類、ジチオカルバミン酸金属塩類、無機硫化物、金属酸化物類、無水カルボン酸類、スチレンやステアリルアクリレート等のジエノフィル化合物類、エポキシ基含有化合物等が挙げられる。これらの添加剤は単独で使用してもよく、2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0121】
樹脂組成物を構成する成分を混合する方法としては、例えば、溶液ブレンドと脱気方法、押出機、加熱ロール、バンバリーミキサー、ニーダー、ヘンシェルミキサー等が使用できる。
【実施例】
【0122】
以下、本実施の形態について、実施例及び比較例を挙げて具体的に説明するが、本実施の形態の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0123】
先ず、実施例及び比較例に適用した、物性及び特性等の測定方法を下記に示す。
【0124】
(1)ポリフェニレンエーテルのカラーインデックス及びその加熱前後の変化量
実施例及び比較例で得られたポリフェニレンエーテルをクロロホルムに溶解して、ポリフェニレンエーテル濃度0.05g/mLのクロロホルム溶液を調製した。
【0125】
セル長1cmの石英セルに、ポリフェニレンエーテルの溶解に用いたものと同一のクロロホルムをいれ、紫外線(波長480nm)により純クロロホルムの吸光度を測定し、吸光度0とした。
【0126】
同様のセルに上記調製したポリフェニレンエーテルのクロロホルム溶液を入れ、480nmでの吸光度を測定した。
【0127】
ポリフェニレンエーテルのクロロホルム溶液の吸光度から純クロロホルムの吸光度を減じ、ポリフェニレンエーテルのクロロホルム溶液中のポリフェニレンエーテル濃度で除した値をポリフェニレンエーテルのカラーインデックス値とした。
【0128】
以下の条件で加熱した後のポリフェニレンエーテルについても、上記と同様にしてカラーインデックス値を求めた。
【0129】
(加熱条件)
加熱温度:310℃、加熱時間:20分、加熱圧力:10MPa。
【0130】
上記で得られた加熱前のポリフェニレンエーテルのカラーインデックス値をC.I.ppeとし、加熱後のポリフェニレンエーテルのカラーインデックス値をC.I.heatとし、加熱前後のカラーインデックスの変化量(ΔC.I.)を次式から求めた。
【0131】
ΔC.I.=(C.I.heat ― C.I.ppe)/C.I.ppe
(2)フェノール性水酸基の定量
実施例及び比較例で得られたポリフェニレンエーテルを重クロロホルムに溶解し、テトラメチルシランを内部標準として用い、H−NMR(JEOL製500MHz)測定を行った。ポリフェニレンエーテルの単位構造100ユニットあたりのフェノール性水酸基数の決定はポリフェニレンエーテル末端芳香環3、5位に起因するピーク(6.36ppm付近)、ポリフェニレンエーテル主鎖芳香環3、5位に起因するピーク(6.3〜6.7ppm)、それぞれのピークの面積比から算出した。
【0132】
(3)分子量8000以下の成分、及び分子量50000以上の成分の定量、並びに重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)の測定
測定装置として、昭和電工(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィーSystem21を用い、標準ポリスチレンにより検量線を作成し、この検量線を利用して測定を行った。
【0133】
標準ポリスチレンの分子量は、3650000、2170000、1090000、681000、204000、52000、30200、13800、3360、1300、550のものを用いた。
【0134】
カラムは、昭和電工(株)製K−805Lを2本直列につないだものを使用した。
【0135】
溶媒は、クロロホルムを使用し、溶媒の流量は1.0mL/min、カラムの温度は40℃として測定した。
【0136】
測定用試料としては、ポリフェニレンエーテルの1g/Lクロロホルム溶液を作製して用いた。
【0137】
検出部のUVの波長は、標準ポリスチレンの場合は254nm、ポリフェニレンエーテルの場合は283nmとした。
【0138】
(4)残存窒素の定量
窒素測定装置(三菱アナリテック製TN−110)を用い、実施例及び比較例で得られたポリフェニレンエーテル中の残存窒素量を測定した。
【0139】
<実施例1>
重合槽底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフルを備え、重合槽上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた40リットルのジャケット付き重合槽に、0.5L/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、4.02gの酸化第二銅、29.876gの47質量%臭化水素水溶液、9.684gのジ−t−ブチルエチレンジアミン、44.88gのジ−n−ブチルアミン、130.24gのブチルジメチルアミン、19.65kgのトルエン及び2.12kgの2,6−ジメチルフェノールを入れ、均一溶液となり、かつ重合槽の内温が25℃になるまで撹拌した。
【0140】
次に、重合槽へ32.8NL/分の速度で乾燥空気をスパージャーより導入を始め重合を開始した。当該重合開始と同時にブチルジメチルアミン14.04g、ジブチルアミン2.03g、トルエン1.0kg及び2,6−ジメチルフェノール1.0kgからなる混合液を30分かけて添加した。乾燥空気を86分間通気し、重合混合物を得た。なお、重合終結時の内温が40℃になるようコントロールした。重合終結時の重合液は溶液状態であった。
【0141】
乾燥空気の通気を停止し、重合混合物にエチレンジアミン四酢酸3カリウム塩(同仁化学研究所製試薬)の2.5%水溶液を10kg添加した。70℃で120分間、前記重合混合物を撹拌し、室温に戻しメタノールを過剰に加えてポリフェニレンエーテルが析出したスラリーを作成した。その後、前記スラリーを、バスケットセントル(タナベウィルテック製O−15型)を用い濾過した。濾過後、過剰のメタノールをバスケットセントル内に加え、再度濾過し、湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。
【0142】
次いで、湿潤ポリフェニレンエーテルを、10mmの丸穴メッシュをセットしたフェザミル(ホソカワミクロン社製FM−1S)に投入し粉砕後、150℃、1mmHgで1.5時間保持し、乾燥状態のポリフェニレンエーテル粉体を得た。得られたポリフェニレンエーテル粉体について上述した方法により各測定を行った。結果を表1に示す。
【0143】
<実施例2>
40リットルのジャケット付き重合槽に、4.02gの酸化第二銅、29.876gの47%臭化水素水溶液、9.684gのジ−t−ブチルエチレンジアミン、42.97gのジ−n−ブチルアミン、113.82gのブチルジメチルアミン及び17.53kgのトルエンを入れ、重合を開始したと同時に、ブチルジメチルアミン28.86g、ジブチルアミン3.90g、トルエン3.12kg及び2,6−ジメチルフェノール3.12kgからなる混合液を30分かけて添加した以外は実施例1と同様にポリフェニレンエーテル粉体を得た。得られたポリフェニレンエーテル粉体について上述した方法により各測定を行った。結果を表1に示す。
【0144】
<実施例3>
40リットルのジャケット付き重合槽に、4.07gの酸化第二銅、30.63gの47%臭化水素水溶液、9.81gのジ−t−ブチルエチレンジアミン、44.31gのジ−n−ブチルアミン、90.90gのブチルジメチルアミン、13.64kgのトルエンを入れ、重合を開始したと同時に、ブチルジメチルアミン22.92g、ジブチルアミン3.2g、トルエン3.12kg、2,6−ジメチルフェノール3.12kgからなる混合液を40分かけて添加した以外は実施例1と同様にポリフェニレンエーテル粉体を得た。得られたポリフェニレンエーテル粉体について上述した方法により各測定を行った。結果を表1に示す。
【0145】
<実施例4>
乾燥空気をスパージャーより導入した時間を129分とした以外は、実施例1と同様に実施し、ポリフェニレンエーテル粉体を得た。得られたポリフェニレンエーテル粉体について上述した方法により各測定を行った。結果を表1に示す。
【0146】
<実施例5>
乾燥空気をスパージャーより導入した時間を127分とした以外は、実施例3と同様に実施し、ポリフェニレンエーテル粉体を得た。得られたポリフェニレンエーテル粉体について上述した方法により各測定を行った。結果を表1に示す。
【0147】
<実施例6>
乾燥空気をスパージャーより導入した時間を150分とした以外は、実施例2と同様に実施し、ポリフェニレンエーテル粉体を得た。得られたポリフェニレンエーテル粉体について上述した方法により各測定を行った。結果を表1に示す。
【0148】
<実施例7>
重合槽底部に酸素含有ガス導入の為のスパージャー、撹拌タービン翼及びバッフルを備え、重合槽上部のベントガスラインに還流冷却器を備えた40リットルのジャケット付き重合槽に、0.5L/分の流量で窒素ガスを吹き込みながら、2.543gの塩化第二銅2水和物、9.856gの35質量%塩酸、86.342gのN,N,N’,N’−テトラメチルプロパンジアミン、ブチルジメチルアミン5.04g、27.95gのジ−n−ブチルアミン、5.07kgのキシレン、5.07kgのn−ブタノール、1.53kgのメタノール、及び2.2kgの2,6−ジメチルフェノールを入れ、均一溶液となり、かつ重合槽の内温が25℃になるまで撹拌した。
【0149】
次いで、激しく撹拌した重合槽へ2.5Nl/分の速度で酸素含有ガスをスパージャーより導入を始め、重合を開始した。当該重合開始と同時にブチルジメチルアミン0.84g、ジブチルアミン2.03g、メタノール1.0kg及び2,6−ジメチルフェノール1.0kgからなる混合液を30分かけて添加した。酸素含有ガスを300分通気し、重合混合物を得た。なお、反応器の内温が40℃になるようコントロールした。また、酸素含有ガスを供給開始105分後、ポリフェニレンエーテルが析出しスラリー状の形態を示した。重合終結時の重合液は沈殿が析出した重合液の状態であった。
【0150】
酸素含有ガスの通気をやめ、重合混合物にエチレンジアミン四酢酸3カリウム塩(同仁化学研究所製試薬)の2.5質量%水溶液を10kg添加した。その後、120分間、前記重合混合物を撹拌し、次いでハイドロキノン(和光純薬社製試薬)を少量ずつ添加し、スラリー状のポリフェニレンエーテルが白色となるまで撹拌を続けた。反応器の内温は50℃になるようコントロールした。白色となったスラリーを、バスケットセントル(タナベウィルテック製O−15型)を用い濾過した。濾過後、過剰のメタノールをバスケットセントル内に加え、再度濾過し、湿潤ポリフェニレンエーテルを得た。得られた湿潤ポリフェニレンエーテルを、150℃、1mmHgで1.5時間乾燥し、乾燥状態のポリフェニレンエーテル粉体を得た。得られたポリフェニレンエーテル粉体について上述した方法により各測定を行った。結果を表1に示す。
【0151】
<比較例1>
ブチルジメチルアミン、ジブチルアミン及びトルエンを、重合開始と同時ではなく、重合開始前に重合槽に仕込んだ以外は実施例1と同様にポリフェニレンエーテル粉体を得た。得られたポリフェニレンエーテル粉体について上述した方法により各測定を行った。結果を表2に示す。
【0152】
<比較例2>
ブチルジメチルアミン、ジブチルアミン及びトルエンを、重合開始と同時ではなく、重合開始前に重合槽に仕込んだ以外は実施例4と同様にポリフェニレンエーテル粉体を得た。得られたポリフェニレンエーテル粉体について上述した方法により各測定を行った。結果を表2に示す。
【0153】
<比較例3>
ブチルジメチルアミン、ジブチルアミン及びトルエンを、重合開始と同時ではなく、重合開始前に重合槽に仕込んだ以外は実施例5と同様にポリフェニレンエーテル粉体を得た。得られたポリフェニレンエーテル粉体について上述した方法により各測定を行った。結果を表2に示す。
【0154】
<比較例4>
ブチルジメチルアミン、ジブチルアミン及びトルエンを、重合開始と同時ではなく、重合開始前に重合槽に仕込んだ以外は実施例6と同様にポリフェニレンエーテル粉体を得た。得られたポリフェニレンエーテル粉体について上述した方法により各測定を行った。結果を表2に示す。
【0155】
<比較例5>
重合時間を65分とした以外は、実施例1と同様にポリフェニレンエーテル粉体を得た。得られたポリフェニレンエーテル粉体について上述した方法により各測定を行った。結果を表2に示す。
【0156】
【表1】

【0157】
【表2】

実施例1〜7において、加熱前後での色調変化を効率的に抑制しながら、純度の高いポリフェニレンエーテルを得ることができた。特に実施例1〜3においては、フェノール性水酸基も充分に多く、さらに分子量50,000以上の成分が5〜20質量%の範囲であり、分子量8,000以下の成分が12〜30質量%の範囲である低分子量を有するポリフェニレンエーテルでありながらも、加熱前後の色調変化を抑制することができた。
【0158】
比較例1〜4においては、3級モノアミンと2級モノアミンとを重合中に添加しなかったため、加熱前後の色調を効率的に抑制することができなかったと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0159】
本発明のポリフェニレンエーテルは、色調変化が少なく、純度も高いため、機械部品、自動車部品、電気電子部品、特にプリント基板、絶縁封止剤等の電気電子部品、フィルム、シート、射出成型体、ブロー成型体、ICトレー、医療機器、芸術品等として産業上の利用可能性がある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式より求めたΔC.I.が0以上7以下である、ポリフェニレンエーテル;
ΔC.I.=(C.I.heat ― C.I.ppe)/C.I.ppe
C.I.ppe:下記加熱前のポリフェニレンエーテルのカラーインデックス値
C.I.heat:下記加熱後のポリフェニレンエーテルのカラーインデックス値
(ポリフェニレンエーテルの加熱条件)
加熱温度:310℃、加熱時間:20分、加熱圧力:10MPa。
【請求項2】
フェノール性水酸基が、ポリフェニレンエーテルの単位構造100ユニット当り0.6個以上である、請求項1に記載のポリフェニレンエーテル。
【請求項3】
C.I.ppeが0.8以下である、請求項1又は2に記載のポリフェニレンエーテル。
【請求項4】
C.I.heatが4.0以下である、請求項1〜3いずれか一項に記載のポリフェニレンエーテル。
【請求項5】
分子量50,000以上の成分を5〜20質量%の量で含み、かつ、分子量8,000以下の成分を12〜30質量%の量で含む、請求項1〜4いずれか一項に記載のポリフェニレンエーテル。
【請求項6】
残存窒素量が2000ppm以下である、請求項1〜5いずれか一項に記載のポリフェニレンエーテル。