説明

ポリプロピレンのβ核形成を初期化するための酸修飾天然無機充填剤

本発明は、(a)IUPAC第2族金属の化合物を含む微粒子無機固体支持体、ならびに(b)微粒子固体支持体の表面に(b1)ジカルボン酸が7個から10個の炭素原子を有する、ジカルボン酸の塩、および(b2)分散剤および/または粉砕剤を含む、ポリプロピレンのβ核形成用組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレンのβ核形成用組成物および該組成物の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、ポリプロピレン溶融物を冷却すると、単斜晶系のα修飾において結晶化する。しかしこのα修飾に加えて、ポリプロピレンは、六方晶系のβ修飾および斜方晶系のγ修飾においても結晶化し得る。β修飾は、力学的特性の改善、特に衝撃強度の改善および応力亀裂に対する耐性の改善によって特徴付けられる。
【0003】
β修飾における結晶化は、EP0177961A2に開示される、キナクリドン顔料などの特異的β核形成剤を加えることによって達成される。さらに周知のクラスのβ核形成剤は、二塩基性有機酸のIUPAC第2族の塩である。
【0004】
US−A−5,231,126は、アイソタクチックポリプロピレンを、二塩基酸と、IUPAC第2族金属の酸化物、水酸化物または酸性塩との混合物からなる二成分β核形成剤と混合することによって、β核形成が達成され得ることを開示している。二塩基酸の適切な例は、ピメリン酸、アゼライン酸、o−フタル酸、テレフタル酸およびイソフタル酸などである。適切なIUPAC第2族金属の酸化物、水酸化物または酸性塩は、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムまたはバリウムを含む化合物、特に炭酸カルシウムまたは他の炭酸塩である。
【0005】
しかし、この先行技術に開示される二成分β核形成剤の欠点は、溶融温度、せん断条件、化合時間などのパラメーターの影響により、二成分β核形成剤とポリプロピレンとの溶融混合が、さまざまな結果をもたらし得るために、達成される効果の再現性が不十分なことである。
【0006】
従って、二塩基性有機酸とIUPAC第2族金属の化合物に基づく、β核形成を達成するためのより信頼性のある系を調製する取り組みがなされている。
【0007】
EP0682066A1は、より信頼性のある修飾を達成するためのかかる試みを開示している。この文献は、60から80℃においてエタノール含有水溶液中で1モルのジカルボン酸と1モルの炭酸カルシウムを反応させることによって生成される、一成分β核形成剤を用いることによって、改善が達成できることを記載している。この反応により、ろ過により単離できる微細沈殿物の形態で得られるジカルボン酸のカルシウム塩が生じる。その後、該生成物を乾燥させ、β核形成剤として使用できる。
【0008】
一方で、この一成分β核形成剤、即ち該ジカルボン酸のカルシウム塩の欠点は、得られた沈殿中に、β核形成の効果を低下させる1モルの結晶水が存在することである。しかし、この結晶水の除去は、追加の加熱ステップを必要とするために、添加剤のコストを増加させる厳しい条件下でのみ達成可能である。さらなる欠点は、該一成分β核形成剤が、ろ過の間に問題を生じさせる微細沈殿物の形態で得られるという事実である。特に、微細沈殿物はろ過効率の大幅な減少をもたらすので、合成の規模の拡大を考慮した場合、微細沈殿物は主要な欠点となる。
【0009】
W.L.Cheung et al.,Journal of Vinyl & Additive Technology,June 1997,Vol.3,pp.151−156は、ポリプロピレン用β核形成剤として、ピメリン酸ナトリウムおよびピメリン酸カルシウムの使用を開示している。
【0010】
J.Varga et al,Journal of Applied Polymer Science,Vol.74,1999,pp.2357−2368は、ポリプロピレン用β核形成剤として、スベリン酸およびピメリン酸のカルシウム塩の使用を開示している。
【0011】
X.Li et al,Journal of Applied Polymer Science,Vol.86,2002,pp.633−638は、ポリプロピレン用β核形成剤として、多数のさまざまなジカルボン酸カルシウムの使用を開示している。
【0012】
さらに、二塩基性有機酸はかなり高価な原材料であるので、核形成に必要とされる二塩基性有機酸の量を減少させることが有利であろうことを考慮に入れなければならない。
【0013】
固体支持体上にジカルボン酸の塩を提供することもまた公知である。
【0014】
EP1939167A1は、ピメリン酸カルシウムなどのジカルボン酸塩の表面層を、炭酸カルシウムなどのIUPAC第2族金属の化合物支持体の表面に備えた、ポリプロピレン用β核形成剤を開示している。該β核形成剤は、溶媒または他の液体反応媒体の不在下の、熱処理ならびに微粒子固体支持体およびジカルボン酸の間の固体状態の反応によって得られる。固体状態の反応後、該β核形成剤を、製粉処理などのさらなる後処理に供することができる。
【0015】
EP1746128A1は、無機充填剤およびβ核形成剤を含む異相ポリプロピレンを開示している。無機充填剤を、β核形成剤を用いてコーティングすることができる。
【0016】
β核形成ポリプロピレンは、高い衝撃強度および靱性を保有するが、降伏応力および剛性は、非核形成ポリプロピレンまたはα核形成ポリプロピレンの降伏応力および剛性より低い。β核形成ポリプロピレンの剛性を改善するために、特定のナノサイズの無機充填剤(「ナノ充填剤」)の添加が公知である。
【0017】
K.Mai et al,European Polymer Journal,44(2008),pp.1955−1961は、ピメリン酸と、40および60nmの間の粒径を有するナノサイズの炭酸カルシウムとの反応によって調製される、β核形成剤を開示している。非常に類似した方法が、K.Mai et al.によってPolymer,49(2008),pp.5137−5145に開示されている。
【0018】
しかし、ナノサイズのβ核形成剤の調製は、追加の粉砕ステップを必要とすることがあり、この結果、調製方法のエネルギー効率を損なう。さらに、沈殿方法によって調製する場合、全ての方法パラメーターを、低ナノメーター範囲の平均粒子サイズを得るように微調整することが困難である場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0177961号明細書
【特許文献2】米国特許第5,231,126号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0682066号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第1939167号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第1746128号明細書
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】W.L.Cheung et al.,Journal of Vinyl & Additive Technology,June 1997,Vol.3,pp.151−156
【非特許文献2】J.Varga et al,Journal of Applied Polymer Science,Vol.74,1999,pp.2357−2368
【非特許文献3】X.Li et al,Journal of Applied Polymer Science,Vol.86,2002,pp.633−638
【非特許文献4】K.Mai et al,European Polymer Journal,44(2008),pp.1955−1961
【非特許文献5】K.Mai et al.Polymer,49(2008),pp.5137−5145
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上記の論述を考慮し、単純でエネルギー効率の良い方法によって得ることが可能であるが、さらにβ核形成ポリプロピレンの剛性を高レベルに維持する、少量でも有効なβ核形成剤である組成物を提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の第1の態様に従って、本目的は、
(a)IUPAC第2族金属の化合物を含む微粒子無機固体支持体、ならびに
(b)微粒子無機固体支持体の表面に、
(b1)ジカルボン酸が7個から10個の炭素原子を有する、ジカルボン酸の塩、および
(b2)分散剤および/または粉砕剤
を含む、ポリプロピレンのβ核形成用組成物を提供することによって、解決される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下にさらに詳細に記載されるように、分散剤および/または粉砕剤は、粉砕ステップおよび/または分散ステップの間に微粒子固体支持体の表面に吸着され得る。固体支持体の表面の一部は分散剤および/または粉砕剤によってすでにブロックされている、または占有されているが、表面の残りの部分はジカルボン酸の塩に依然として接近可能であり、固体支持体の表面に共に提供された両方の成分は少量でも有効なβ核形成剤をもたらし、さらにβ核形成ポリプロピレンの剛性を高レベルに維持することが、本発明において認められている。
【0024】
「無機」という用語は、任意の天然に生じる固体に関する。
【0025】
好ましくは、微粒子固体支持体のIUPAC第2族金属は、Mg、Ca、Srまたはこれらの混合物から選択される。
【0026】
以下にさらに詳細に記載されるように、本発明のポリプロピレンのβ核形成用組成物は、微粒子無機固体支持体とジカルボン酸とを、対応するジカルボン酸の塩を固体支持体の表面に提供するように反応させることによって調製されることが好ましい。従って、微粒子固体支持体中に存在するIUPAC第2族金属の化合物は、その表面にジカルボン酸塩を提供するように、粉砕剤および/または分散剤の存在下でもジカルボン酸に対する少なくともいくらかの反応性を有することが好ましく、該粉砕剤および/または分散剤は好ましくは水溶性である。好ましくは、本粉砕剤および/または分散剤は、支持体表面の拡散および濡れの改善によって、ジカルボン酸およびIUPAC第2族金属の化合物の間の反応性をさらに改善する。
【0027】
好ましくは、IUPAC第2族金属の化合物は、炭酸塩、水酸化物、酸化物、オキシ水酸化物またはこれらの任意の混合物から選択される。
【0028】
好ましくは、IUPAC第2族金属の化合物は、炭酸カルシウム、カルシウム−マグネシウム炭酸塩,および/または炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウムまたはこれらの任意の混合物から選択される。
【0029】
好ましい実施形態において、炭酸カルシウムは天然の重質炭酸カルシウム(GCC)である。GCC(CAS 1317−65−3)を使用する場合、生成物のカーボンフットプリントが改善され得る。
【0030】
好ましくは、天然の重質炭酸カルシウムGCCは、大理石、石灰石、チョークまたはこれらの混合物から選択され、好ましくは少なくとも95wt%、より好ましくは98wt%を超える炭酸カルシウムを含有する。GCCは当業者には周知であり、例えばOmyaから市販されている。
【0031】
天然のカルシウム−マグネシウム炭酸塩鉱物は、例えばドロマイトであってよい。
【0032】
好ましい水酸化マグネシウム鉱物は、例えば水滑石である。
【0033】
好ましい炭酸マグネシウム鉱物は、例えば、菱苦土石、バーリントン石、ネスケホン石、ランスフォルダイトまたはこれらの任意の組み合わせから選択される。アルチニ石、水苦土石、ダイピング石またはこれらの組み合わせなどの、炭酸マグネシウムの塩基性形態もまた使用可能である。
【0034】
微粒子無機固体支持体は、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、カルシウム−マグネシウム炭酸塩および/または炭酸マグネシウムなどのIUPAC第2族金属の化合物を、少なくとも50wt%、より好ましくは少なくとも70wt%、さらにより好ましくは少なくとも90wt%の量で含むことが好ましい。微粒子無機固体支持体がIUPAC第2族金属の化合物で構成されていてもよい。
【0035】
好ましくは、微粒子固体支持体は、0.5μmから7μm、より好ましくは0.7μmから5μm、さらにより好ましくは0.8μmから2μm、例えば1.5μmの中間粒子サイズd50を有する。さらに好ましくは、d98として表されるトップカット(top cut)は<10μm、より好ましくは<7μmであり、および/または比表面積(BET)が、1および5m/gの間、より好ましくは2.0から4.5m/gである。特に好ましくは、トップカット(d98)は<7μm、中間粒子サイズd50が1から2μmであり、比表面積が2.5から4.0m/gである。
【0036】
特に、中間粒子サイズが、5μm以下またはさらに2μm以下など小さい場合、粒子サイズが小さいことにより光散乱効果が大きく抑制されるので、本発明のβ核形成組成物を加えたポリプロピレン材料の光透過性は改善され得る。
【0037】
好ましくは、該微粒子無機固体支持体は、ISO9277に従って窒素およびBET法を使用して測定して1m/gから5m/g、より好ましくは2.0m/gから4.5m/gの比表面積を有する。
【0038】
上記のように、本発明の組成物は、微粒子固体支持体の表面上にジカルボン酸の塩を含み、該ジカルボン酸は7個から10個の炭素原子を有する。
【0039】
好ましくは、ジカルボン酸の塩はIUPAC第2族金属の塩であり、より好ましくはカルシウム塩、マグネシウム塩、ストロンチウム塩またはこれらの混合物から選択される塩である。
【0040】
好ましい実施形態において、ジカルボン酸の塩のIUPAC第2族金属は、微粒子固体支持体のIUPAC第2族金属に対応する。例としては、微粒子無機固体支持体が炭酸カルシウムを含む場合、ジカルボン酸のカルシウム塩、例えばピメリン酸カルシウムが固体支持体の表面に提供されることが好ましいが、さまざまな微粒子固体支持体のブレンドまたはドロマイトを使用する場合、異なっていてもよい。
【0041】
好ましくは、ジカルボン酸は、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸またはこれらの任意の混合物から選択される。
【0042】
好ましくは、ジカルボン酸の塩は、微粒子固体支持体の重量に基づき、0.05wt%から10wt%、より好ましくは0.1から5wt%、さらにより好ましくは0.25から2wt%の量で存在する。好ましくは、ジカルボン酸の塩は、固体支持体の0.15mg/mから固体支持体の30mg/m、より好ましくは固体支持体の0.75mg/mから6mg/m、例えば固体支持体の2から4mg/mの量で存在する。
【0043】
本発明において、無機固体支持体の表面に接触される全てのジカルボン酸分子が対応する塩と化学反応する必要はない。従って、微粒子無機固体支持体は、その表面上に遊離のジカルボン酸分子をさらに含んでいてもよい。ジカルボン酸の塩と対応する遊離ジカルボン酸のモル比は、少なくとも1:2、より好ましくは少なくとも1:1、さらにより好ましくは少なくとも4:1、さらにその上好ましくは少なくとも9:1であり得る。
【0044】
「遊離ジカルボン酸」という用語は、未だプロトン化されている、即ち塩を形成していないジカルボン酸を指す。従って、ジカルボン酸の塩と、対応する遊離ジカルボン酸とのモル比は、ジカルボン酸が固体支持体のIUPAC第2族金属の化合物と反応した程度を示す。
【0045】
上記のように、本発明の組成物は、微粒子無機固体支持体の表面に分散剤および/または粉砕剤を含む。
【0046】
一般に、無機充填剤などの無機材料の粉砕方法に使用できる分散剤および/または粉砕剤は当業者に公知である。このような分散剤および/または粉砕剤は、スラリーの粘度を減少させ、この結果、粉砕される粒子および粉砕ビーズの流動性および自由行程長を増加させることによって、無機粒子の粉砕を支援する。これらの分散剤および/または粉砕剤は、新たに粉砕された粒子の表面に吸着されるので、これらの分散剤および/または粉砕剤は再凝集も防ぐ、または少なくとも有意に減少させる。
【0047】
好ましくは、該分散剤および/または粉砕剤は水溶性である。
【0048】
本発明に関して、粉砕剤および/または分散剤は、湿式粉砕のための薬剤、乾式粉砕のための薬剤、またはこれらの混合物から選択され得る。
【0049】
無機充填剤などの無機粒子の粉砕方法には2種の一般型、即ち、湿式粉砕方法(即ち、粉砕を液体の粉砕媒体中で実施する。)および乾式粉砕方法があることは、当業者には一般に公知である。さらに、当業者はこれらの粉砕法それぞれに好ましい分散剤および/または粉砕剤があることを知っている。
【0050】
本発明の好ましい実施形態において、微粒子固体支持体の表面に存在する分散剤および/または粉砕剤は、カルボン酸またはカルボン酸塩のホモポリマーまたはコポリマー(即ち、カルボン酸またはこれらの塩に由来するモノマー単位を有するホモポリマーまたはコポリマー)、例えば、ホモポリアクリラートおよびコポリアクリラート;グリコール;ポリグリコール;ポリアルキレングリコール;スクロースおよび/またはソルビトールなどの糖;アルカノールアミン;またはこれらの混合物のホモポリマーおよびコポリマーなどから選択される。
【0051】
カルボン酸またはカルボン酸塩のホモポリマーまたはコポリマーは、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸もしくはイタコン酸、アクリルアミドまたはこれらの混合物に由来するモノマー単位に基づく。BASF社、ルードヴィヒスハーフェン、Allied Colloids社、英国またはCOATEX社、フランス国から入手可能なアクリル酸などのアクリル酸のホモポリマーまたはコポリマーが特に好ましい。このような生成物の重量平均分子量Mwは、200から15000の範囲であることが好ましく、3000から7000のMwが特に好ましい。多分散性は、1.2および5の間が好ましく、2.0および3.5の間がより好ましい。該ポリマーおよび/またはコポリマーは、一価および/または多価の陽イオンにより中和でき、またはこれらは遊離の酸性基を有し得る。適切な一価陽イオンは、例えば、ナトリウム、リチウム、カリウムおよび/またはアンモニウムを含む。好ましい多価陽イオンは、例えば、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウムなどの二価陽イオンまたはアルミニウムなどの三価陽イオンを含む。ポリリン酸ナトリウムまたはクエン酸ナトリウムなどの分散剤および/または粉砕剤もまた、単独または他との組み合わせのどちらでも使用できる。
【0052】
特に乾式粉砕において、分散剤および/または粉砕剤は、グリコール、ポリグリコール、ポリアルキレングリコール、スクロースおよび/またはソルビトールなどの糖またはアルカノールアミン、例えば、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)またはこれらの任意の混合物を含む群から選択され得る。
【0053】
好ましくは、分散剤および/または粉砕剤は、微粒子固体支持体の重量に基づき、0.01wt%から2wt%、より好ましくは0.05から1.0wt%の量で存在する。乾式粉砕のために好ましい量は、微粒子固体支持体の重量に基づき0.05wt%から0.5wt%の量であり得る。湿式粉砕のための好ましい量は、微粒子固体支持体の重量に基づき0.1wt%から1.0wt%の量であり得る。
【0054】
以下にさらに詳細に説明に記載されるように、本発明の方法を論じる場合、微粒子無機固体支持体と反応するジカルボン酸は、最終粉砕の間に加えることが好ましい。
【0055】
好ましくは、本発明の組成物は、0.5μmから7μm、より好ましくは0.7μmから5μm、さらにより好ましくは0.8μmから2μm、例えば1.5μmの中間粒子サイズd50を有する。さらに好ましくは、d98として表されるトップカットは<10μm、より好ましくは<7μmであり、および/または比表面積(BET)が、1および5m/gの間、より好ましくは2.0から4.5m/gである。特に好ましくは、トップカット(d98)は<7μm、中間粒子サイズd50が1から2μmであり、比表面積が2.5から4.0m/gである。
【0056】
特に、組成物の中間粒子サイズが、5μm以下またはさらに2μm以下など小さい場合、粒子サイズが小さいことにより光散乱効果が大きく抑制されるので、本発明の組成物を加えたポリプロピレン材料の光透過性は改善され得る。
【0057】
好ましくは、本発明の組成物は、ISO9277に従って窒素およびBET法を使用して測定して1m/gから5m/g、より好ましくは2.0m/gから4.5m/gの比表面積を有する。
【0058】
さらなる態様に従って、本発明は、以下のステップ:
(i)IUPAC第2族金属の化合物を含む微粒子無機固体支持体を提供するステップ、
(ii)分散剤および/または粉砕剤の存在下で微粒子無機固体支持体を粉砕するステップ、ならびに
(iii)微粒子無機固体支持体を、7個から10個の炭素原子を有するジカルボン酸と接触させるステップ
を含み、ステップ(iii)をステップ(ii)の間または後に実施する、
上記のポリプロピレンのβ核形成用組成物の調製方法を提供する。
【0059】
ステップ(i)において提供される微粒子固体支持体は、その後、粉砕ステップ(ii)において所望のより微細な中間粒子サイズに粉砕されるので、非常に粗い粒子を含んでよい。例として、ステップ(i)において提供される微粒子固体支持体は、直径30mm以下または5mm以下のd95を有していてよい。ステップ(i)において提供される微粒子固体支持体は、0.2mmから0.7mmの中間粒子サイズd50を有していてよい。しかし、これらは単なる例示的範囲である。ステップ(i)において提供される無機固体支持体の粒子サイズは粉砕ステップ(ii)に不利な影響を与えない限り重要でない。
【0060】
微粒子無機固体支持体の他の特性に関して、上に提供された開示を参照されたい。
【0061】
さらに、本発明の組成物を論じる場合、IUPAC第2族金属の化合物に関して、上に提供された開示を参照されたい。
【0062】
上記のように、本発明の方法は、微粒子無機固体支持体が、分散剤および/または粉砕剤の存在下で粉砕される、粉砕ステップ(ii)を含む。
【0063】
好ましい実施形態において、微粒子無機固体支持体は、0.5μmから7μm、より好ましくは0.7μmから5μm、さらにより好ましくは0.8μmから2μm、例えば1.5μmの中間粒子サイズd50に粉砕される。さらに好ましくは、d98として表されるトップカットは<10μm、より好ましくは<7μmであり、および/または比表面積(BET)が、1および5m/gの間、より好ましくは2.0から4.5m/gである。特に好ましくは、トップカット(d98)は<7μm、中間粒子サイズd50が1から2μmであり、比表面積が2.5から4.0m/gである。
【0064】
無機充填剤などの無機粒子の粉砕方法には2種の一般型、即ち、湿式粉砕方法および乾式粉砕方法があることは、当業者には一般に公知である。さらに、当業者はこれらの粉砕法それぞれに好ましい分散剤および/または粉砕剤があることを知っている。
【0065】
好ましくは、ステップ(ii)に使用する分散剤および/または粉砕剤の量は、微粒子固体支持体の重量に基づき、0.01wt%から2wt%、より好ましくは0.05から1.0wt%の量である。さらにより好ましくは、この量は、微粒子固体支持体の重量に基づき、乾式粉砕のためには、0.05wt%から0.5wt%、および/または湿式粉砕のためには、0.1wt%から1.0wt%である。
【0066】
ステップ(ii)は、少なくとも1回の湿式粉砕ステップおよび/または少なくとも1回の乾式粉砕ステップを含み得る。
【0067】
乾式粉砕ステップおよび湿式粉砕ステップの両方は、順次実施できる。ステップ(ii)が少なくとも1回の湿式粉砕ステップおよび少なくとも1回の乾式粉砕ステップを含む場合、最後の1回は湿式粉砕ステップであることが好ましい。
【0068】
好ましくは、湿式粉砕ステップの分散剤および/または粉砕剤は、カルボン酸またはカルボン酸塩のホモポリマーまたはコポリマー(即ち、カルボン酸またはカルボン酸塩に由来するモノマー単位を有するホモポリマーまたはコポリマー)である。例として、ポリアクリラート(追加のモノマーを含有するホモポリマーまたはコポリマーのいずれか)を挙げることができる。
【0069】
カルボン酸またはカルボン酸塩のホモポリマーまたはコポリマーは、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸もしくはイタコン酸、アクリルアミドまたはこれらの混合物に由来するモノマー単位に基づく。
BASF社、ルードヴィヒスハーフェン、Allied Colloids社、英国またはCOATEX社、フランス国から入手可能なアクリル酸などの、アクリル酸のホモポリマーまたはコポリマーが特に好ましい。このような生成物の重量平均分子量Mwは、200から15000の範囲であることが好ましく、3000から7000のMwが特に好ましい。多分散性は、1.2および5の間が好ましく、2.0および3.5の間がより好ましい。該ポリマーおよび/またはコポリマーは、一価および/または多価の陽イオンにより中和でき、またはこれらは遊離の酸性基を有し得る。適切な一価陽イオンは、例えば、ナトリウム、リチウム、カリウムおよび/またはアンモニウムを含む。好ましい多価陽イオンは、例えば、カルシウム、マグネシウム、ストロンチウムなどの二価陽イオンまたはアルミニウムなどの三価陽イオンを含む。ポリリン酸ナトリウムまたはクエン酸ナトリウムなどの分散剤および/または粉砕剤もまた、単独または他との組み合わせのどちらでも使用できる。
【0070】
好ましくは、湿式粉砕ステップは水性媒体中で実施される。好ましい実施形態において、湿式粉砕ステップにおける水性媒体の固体含有量は、10wt%から85wt%、より好ましくは60wt%から82wt%、さらにより好ましくは65wt%から78wt%である。
【0071】
湿式粉砕ステップを使用する場合、該方法は、液体、好ましくは水性粉砕媒体の除去のためのステップをさらに含む。このことは、加熱ステップ、スプレードライステップまたはこれらの組み合わせなどの既存の方法によって達成され得る。
【0072】
ステップ(ii)が乾式粉砕ステップを含む場合、前記乾式粉砕ステップの分散剤および/または粉砕剤は、好ましくは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、モノプロピレングリコール、ポリグリコール、ポリアルキレングリコールなどのグリコール、スクロースおよび/またはソルビトールなどの糖またはアルカノールアミン、例えば、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)またはこれらの混合物から選択される。
【0073】
乾式粉砕ステップのための好ましい分散剤および/または粉砕剤は、例えばポリアルキレングリコールであり、好ましくは全モノマー単位の少なくとも90mol%、より好ましくは少なくとも95mol%がエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドに由来する。重量平均分子量Mwは、好ましくは400から9500g/モル、より好ましくは600から3000g/モルの範囲である。
【0074】
ステップ(ii)が乾式粉砕ステップである場合、微粒子無機固体支持体ならびに分散剤および/または粉砕剤ならびに、すでにステップ(ii)の間に存在するならばジカルボン酸を組み合わせた重量に基づいて、水の10wt%未満、より好ましくは2wt%未満、さらにより好ましくは0.5wt%未満が、前記乾式粉砕ステップの間に存在することが好ましい。
【0075】
乾式粉砕ステップに関する適切な条件に関して、特に、ポリアルキレングリコールを分散剤および/または粉砕剤として使用する場合、WO2007/138410A1を参照できる。
【0076】
本発明の方法の粉砕ステップ(ii)に関して、当業者に公知である既存の粉砕装置を使用できる。好ましくは、粉砕ステップ(ii)は、ボールミル、ジェットプレートミル、ロールミル、磨砕ミルまたはこれらの組み合わせから選択される、1つまたは複数の粉砕装置において実施される。
【0077】
乾式粉砕の場合、好ましくは直径0.5から10cmの鉄および/または磁器のビーズが粉砕媒体として使用され、特に好ましくは直径2.5cmの鉄−シルペブスが使用される。
【0078】
湿式粉砕には、例えば、直径0.5から2mmを有するケイ酸ジルコニウム製および/またはバデレアイト製の粉砕ボールが好ましい。0.1から2mmと同等の球径を有するケイ砂もまた使用できる。
【0079】
上に定義したように、本発明の方法は、微粒子無機固体支持体を、7個から10個の炭素原子を有するジカルボン酸と接触させるステップ(iii)を含み、ステップ(iii)をステップ(ii)の間または後に実施する。
【0080】
好ましくは、「接触させる」は、微粒子無機固体支持体をジカルボン酸と反応させることを意味する。微粒子無機固体支持体は、好ましくは固体支持体の表面およびジカルボン酸の間に化学反応をもたらすような条件下で、ジカルボン酸と接触させる。
【0081】
ステップ(iii)が粉砕ステップ(ii)の間に実施される場合、このことは、好ましくは、微粒子固体支持体ならびに分散剤および/または粉砕剤ならびにジカルボン酸を混合し、その後、混合物を粉砕ステップ(ii)に供することによって達成することができる。
【0082】
好ましい実施形態において、ステップ(ii)は、粉砕ステップの前に分散剤および/または粉砕剤およびジカルボン酸を水性媒体に加え、その後、微粒子固体を上記のような中間粒子サイズに粉砕する、水性媒体中の湿式粉砕ステップを含む。
【0083】
ステップ(iii)が粉砕ステップ(ii)の後に実施される場合、このことは、好ましくは、微粒子固体支持体ならびに分散剤および/または粉砕剤を混合し、次いで、混合物を粉砕ステップ(ii)に供し、その後、粉砕された微粒子固体支持体とジカルボン酸とを反応させることによって達成することができる。
【0084】
微粒子無機固体支持体を、ステップ(iii)においてジカルボン酸と接触させた場合、このことは、液体、好ましくは水性反応媒体中、または液体反応媒体の不在下で達成することができる。
【0085】
ステップ(iii)において、液体反応媒体中、より好ましくは水性反応媒体中で微粒子無機固体支持体ジカルボン酸と接触させた場合、前記液体反応媒体の除去は、公知の標準的方法によって達成することができる。好ましい実施形態において、液体反応媒体は、スプレードライによって、より好ましくは、IUPAC第2族金属の化合物とジカルボン酸との間に化学反応をもたらす温度におけるスプレードライによって除去される。
【0086】
湿式粉砕ステップであっても乾式粉砕ステップであっても、ステップ(iii)の前に粉砕ステップ(ii)を実施し、粉砕された固体支持体を粉末形態で提供し、その後ジカルボン酸と混合し、混合物を、IUPAC第2族金属の化合物とジカルボン酸との間に化学反応が開始されるために十分に高い温度に加熱することが、本発明において好ましくあり得る。この取り組みにおいて、液体反応媒体は必要ではない。
【0087】
または、ステップ(ii)において得られた粉砕された固体支持体を、粉末または液体懸濁液、好ましくは水性懸濁液のいずれの形態であっても、液体中、好ましくは水性反応媒体中でジカルボン酸と接触させ、液体反応媒体を、IUPAC第2族金属の化合物とジカルボン酸との間に化学反応が開始されるために十分に高い温度にする。ステップ(ii)による粉砕された固体支持体が、液体懸濁液の形態で提供される場合、前記液体懸濁液は液体反応媒体として使用することができる。液体反応媒体の除去は、公知の標準的な方法によって達成することができる。液体反応媒体の適切な反応温度への加熱および前記液体反応媒体の除去は、順次または同時に行うことができる。好ましい実施形態において、液体反応媒体は、IUPAC第2族金属の化合物とジカルボン酸との間に化学反応をもたらす温度におけるスプレードライによって除去される。
【0088】
好ましくは、粉砕された微粒子固体支持体は、ジカルボン酸の溶融温度を上回る温度において、より好ましくは20℃から250℃、さらにより好ましくは80℃から200℃、さらにその上好ましくは90℃から180℃の温度においてジカルボン酸と反応させる。反応は、粉砕された微粒子固体支持体とジカルボン酸を混合し、その後、ブレンドを所望の反応温度に加熱することによって達成することができる。
【0089】
好ましくは、本発明の方法において、ジカルボン酸と、固体支持体のIUPAC第2族金属の化合物との間の反応の程度は、対応するジカルボン酸塩に転換されるステップ(iii)のジカルボン酸のモル%として定義して、少なくとも30%、より好ましくは少なくとも50%、さらにより好ましくは少なくとも80%、さらにその上好ましくは少なくとも85%である。
【0090】
さらなる態様に従って、本発明は、ポリプロピレン用β核形成剤として上に定義した組成物の使用を提供する。
【0091】
以下に提供する実施例によって、本発明をさらに詳細に記載する。
【実施例】
【0092】
I.測定方法
1.中間粒子サイズd50、d95の粒子サイズおよびd98の粒子サイズ
粒子サイズは沈降法に従って測定した。沈降法は、重量測定場における沈降挙動の分析である。測定は、Micromeritics Instrument CorporationのSedigraph(商標)5100を用いて実施した。該方法および器具は当業者には公知であり、充填剤および色素の粒度の決定に一般的に使用されている。測定は、0.1wt%のNa水溶液中で実施する。試料は、高速攪拌機および超音波を使用して分散させた。
【0093】
2.比表面積
比表面積は、ISO9277に従って、窒素およびBET法を使用して測定した。
【0094】
3.固体支持体上のジカルボン酸塩の量
ジカルボン酸の量は、TGAにおける105℃から400℃の間の質量損失によって決定した。粉砕剤からブラインド値を引く。
【0095】
4.固体支持体上の分散剤および/または粉砕剤の量
この量は乾式粉砕剤に関してはエタノール、および湿式粉砕剤に関してはPETによる抽出後のGC/MSによって決定した。
【0096】
PETは高分子電解質の滴定、即ち、当量点への、陽イオン性ポリマーによる陰イオン性分散剤の滴定を意味する。
【0097】
PETについてのさらなる詳細を以下に提供する。
【0098】
高分子電解質の滴定 PET
使用器具
Memotitrator Mettler DL 55、Mettler、スイス国
Phototrode DP 660、Mettler、スイス国
0.2μmの混合エステルメンブレンフィルター(例えばMillipore)を用いたメンブレンフィルター
はかり(0.1mg)
【0099】
化学薬品
ポリビニル硫酸カリウム(WAKO)(SERVA Feinbiochemica Heidelberg)
ポリ(N,N−ジメチル−3,5−ジメチレン−塩化ピペリジニウム)PDDPC(ACROS−Chemie Art.17840−5000)
リン酸バッファー pH7.00(Riedel−de Haen)
【0100】
手順
原理
溶解した陽イオン性ポリマーおよび陰イオン性ポリマー(即ち、KPVSおよびPDDPC)は、「二重変換」の原理に倣って反応するものである。理想的条件下で、陽イオン性分子および陰イオン性分子の等価電荷中和による反応が起こる。
【0101】
色素表面の負荷とも反応するこれらのポリマーの特徴は、(色素の比表面積に依存する)色素の電荷の決定にも使用できる。
【0102】
測定
再現可能な結果のために、逆滴定におけるKPVSの消費が、1.5および7mlの間であることが必要である。さもなければ、滴定は適合した試料の重量を用いて反復されなければならない。スラリー試料(例えば、CaCOのスラリー)を滴定容器に計量し、脱塩水を用いておよそ40mlの体積まで希釈する。陽イオン性PDDPCの0.01M試薬の10.00mlを、5分かけてゆっくりと加え、さらに20分間撹拌する。
【0103】
その後、スラリーを、0.2μmのメンブレンフィルター(直径47mm)を介してろ過し、5mlの脱塩水で洗浄する。ろ液はさらに使用する。5mlのリン酸バッファーpH7を、ろ液に加える。
【0104】
0.01MのKPVS溶液をゆっくりとろ液に加える。滴定の終点を、脱塩水中で事前に1200−1400mVに調節したPhototrode DP660によって検出し、過剰な陽イオン性試薬を滴定する。
【0105】
評価
電荷計算
【0106】
【数1】

【0107】
【数2】

【0108】
【数3】

【0109】
【数4】

【0110】
略称
=試料重量[g]
DM=分散剤含有量[%]
DM=分散剤定数[μVal/分散剤0.1mg]
Fk=固形分[%]
PDDPC=PDDPCの体積[ml]
KPVS=KPVSの体積[ml]
PDDPC=PDDPCの滴定量
DM=分散剤の重量[mg]
Q=電荷[μVal/g]
atro=atroの分散剤含有量[%]
=最適な実験の試料重量[g]
KPVS,1=最適な実験のKPVSの実験的消費量[ml]
【0111】
較正
試薬の調製
0.01M KPVS:1.622gのKPVSを正確に計量する。
【0112】
1000mlの容量フラスコにおよそ200mlの脱塩水を入れる。
定量的KPVSを、容量フラスコに洗い流す。溶解し、20℃において1000mlの体積とする。
【0113】
0.01M PDDPC:20%のポリマー溶液として、1000mlの容量フラスコにおよそ1.6gの100%PDDPCを脱塩水で洗い流し、体積1000mlとなるように満たす。
【0114】
PDDPCの0.01M溶液の滴定量決定
KPVSまたはPDDPC試薬の新しいバッチを調製した場合、PDDPC試薬の滴定量を、以下の手順に従って測定しなければならない。:Memotitrator容器に、4.00mlのPDDPC試薬をピストンビュレットを用いて正確に入れる。脱塩水を用いておよそ70mlに希釈し、5mlのpH7のバッファーを加える。
【0115】
滴定プログラムを開始する:KPVS試薬およびセンサーとしてPhototrode DP660を用いて逆滴定する。KPVS消費量が>4.3mlの場合、PDDPC試薬を希釈しなければならず、滴定量の決定を繰り返すものである。
【0116】
滴定量は、3回の評価から計算する。
【0117】
【数5】

【0118】
5.曲げ弾性率
ポリプロピレンの曲げ弾性率を、80*10×4mmのEN ISO1873−2に従って作製された射出成形試験片を使用することによって、ISO178に従って測定した。曲げ弾性率を、2mm/分のクロスヘッド速度において決定した。
【0119】
6.ノッチ付き衝撃強度
ポリプロピレンのノッチ付き衝撃強度を、80*10×4mmのEN ISO1873−2に従って作製された射出成形試験片を使用することによって、23℃および−20℃において、ISO179/leAに従って測定した。
【0120】
7.β結晶分画の含有量
2種の測定方法を使用してβ結晶相の量を決定した:
a)示差走査熱量測定法 DSC
β相の含有量を、β相の溶融ピークに関する融解熱および全体の融解熱の間の比率として計算した。
【0121】
DSCの測定のために、約10mgのディスク試験片をアルミニウム鍋に配置し、窒素雰囲気下でDSC装置で試験した。試料を、10K/分の速度で−15℃から220℃に加熱し、同じ速度で再度−15℃に冷却し、同じ速度で220℃まで加熱した。融解熱は、最終の実施で試験した。
【0122】
b)Turner−Jones方程式に従ったk値
β相含有量のさらなる計算を、A.Turner−Jones et al,Makromol.Chem.,75(1964),134.により記載されたTurner−Jones方程式により実施した。
【0123】
8.対応する塩に対するジカルボン酸の反応度
反応の程度(または変換の程度)を滴定によって確立した。
【0124】
II.用意した試料
実施例において、中間粒子サイズd50が異なる炭酸カルシウム試料を使用した。実施例では、天然の炭酸カルシウム鉱物の型を使用した:
実施例16から19において、チョーク、例えばシャンパーニュ地方(オメ(Omey))
他の全ての実施例において、大理石、例えばイタリア国、トスカーナ地方カッラーラ。
【0125】
中間粒子サイズに加えて、炭酸カルシウム表面上のジカルボン酸塩の量も同様に変えた、即ち、0.1wt%、1wt%および10wt%。炭酸カルシウム試料と反応するジカルボン酸として、ピメリン酸を使用した。従って、炭酸カルシウム粒子の表面にピメリン酸カルシウムが形成された。
【0126】
実施例1から15および20から25において、炭酸カルシウムを乾式粉砕方法に供した。分散剤および/または粉砕剤の型および量についてのさらなる詳細は、表1aおよび1cに示す。
【0127】
実施例16から19において、炭酸カルシウムを湿式粉砕法に供した。分散剤および/または粉砕剤の型および量についてのさらなる詳細は、表1cに示す。
【0128】
その表面に吸着された分散剤および/または粉砕剤を含む重質炭酸カルシウムを、その後、ピメリン酸と接触させ、反応させた。2種の異なる反応方法、乾式混合法(実施例1から8および11から25)および湿式法(実施例9および10)を使用した。
【0129】
これらの反応方法についてのさらなる詳細を、以下に示す。
【0130】
乾式混合法
1600gの重質炭酸カルシウム(分散剤および/または粉砕剤の型:表1aおよび1cを参照されたい。)を、MTI Mischtechnik International GmbHによるラボミキサーM3/1.5に加え、1500rpmにおいて混合を起動させた。その後、ピメリン酸を室温において加え、ミキサーを130℃に加熱した。ミキサーの内容物を、190℃において、撹拌速度1500rpmで10分間混合した。
【0131】
対照として、CaCO添加剤を含まないポリプロピレン試料(対照1)およびコーティングしていない(即ち、表面にβ核形成剤を含まない)CaCO添加剤を含むポリプロピレン試料(対照2)を同様に調製した。
【0132】
得られた生成物を評価し、結果を以下の表に示す。
【0133】
「湿式」法
水+ピメリン酸中25wt%の重質炭酸カルシウムの懸濁液(分散剤および/または粉砕剤の型:表1aおよび1cを参照されたい。)を、注入口温度200℃および排気口温度100℃で、MSD100ドライヤーにおいてスプレードライした。
【0134】
上記のように調製された各試料を、プロピレンホモポリマー粉末(MFR2:0.3g/10分;密度:905kg/m)と混合し、溶融温度230℃において押し出した。
【0135】
対照として、CaCO添加剤を含まないポリプロピレン試料(対照1)およびコーティングしていない(即ち、表面にピメリン酸カルシウムを含まない)CaCO添加剤を含むポリプロピレン試料(対照2)を同様に調製した。
【0136】
得られた生成物を評価し、結果を以下の表1a、1bおよび1cに示す。
【0137】
【表1】

【0138】
【表2】

【0139】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレンのβ核形成用組成物であって、
(a)IUPAC第2族金属の化合物を含む微粒子天然無機固体支持体、ならびに
(b)微粒子無機固体支持体の表面に、
(b1)ジカルボン酸が7個から10個の炭素原子を有する、ジカルボン酸の塩、および
(b2)分散剤および/または粉砕剤
を含む、前記ポリプロピレンのβ核形成用組成物。
【請求項2】
微粒子固体支持体のIUPAC第2族金属が、Mg、Ca、Srまたはこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
IUPAC第2族金属の化合物が、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カルシウム−マグネシウム炭酸塩、水酸化マグネシウムまたはこれらの任意の混合物から選択される、請求項1から2の一項に記載の組成物。
【請求項4】
炭酸カルシウムが天然の重質炭酸カルシウムであり、好ましくは大理石、石灰石、チョークまたはこれらの混合物から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
微粒子無機固体支持体が、IUPAC第2族金属の化合物を、少なくとも50wt%、より好ましくは少なくとも70wt%、さらにより好ましくは少なくとも90wt%の量で含む、請求項1から4の一項に記載の組成物。
【請求項6】
微粒子無機固体支持体および/または組成物が、0.5μmから7μmの中間粒子サイズd50を有する、請求項1から5の一項に記載の組成物。
【請求項7】
微粒子無機固体支持体および/または組成物が、ISO9277に従い窒素およびBET法を使用して測定して0.5m/gから15m/gの比表面積を有する、請求項1から6の一項に記載の組成物。
【請求項8】
ジカルボン酸の塩がIUPAC第2族金属の塩であり、好ましくはカルシウム塩、マグネシウム塩、ストロンチウム塩またはこれらの混合物から選択される塩である、請求項1から7の一項に記載の組成物。
【請求項9】
ジカルボン酸が、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸またはこれらの任意の混合物から選択される、請求項1から8の一項に記載の組成物。
【請求項10】
ジカルボン酸の塩が、微粒子固体支持体の重量に基づき、0.05wt%から10wt%の量で存在する、請求項1から9の一項に記載の組成物。
【請求項11】
分散剤および/または粉砕剤が、カルボン酸塩、グリコール、ポリグリコール;ポリアルキレングリコール、糖、アルカノールアミンまたはこれらの混合物のホモポリマーまたはコポリマーから選択される、請求項1から10の一項に記載の組成物。
【請求項12】
分散剤および/または粉砕剤が、微粒子無機固体支持体の重量に基づき、0.01wt%から2wt%の量で存在する、請求項1から11の一項に記載の組成物。
【請求項13】
微粒子無機固体支持体の表面mにおけるジカルボン酸の塩の量mgが、0.15mg/mから30mg/mである、請求項1から12の一項に記載の組成物。
【請求項14】
以下のステップ:
(i)IUPAC第2族金属の化合物を含む微粒子無機固体支持体を提供するステップ、
(ii)分散剤および/または粉砕剤の存在下で微粒子無機固体支持体を粉砕するステップ、ならびに
(iii)微粒子無機固体支持体を、7個から10個の炭素原子を有するジカルボン酸と接触させるステップ
を含み、ステップ(iii)をステップ(ii)の間または後に実施する、請求項1から13の一項に記載の組成物の調製方法。
【請求項15】
ステップ(ii)が、少なくとも1回の湿式粉砕ステップおよび/または少なくとも1回の乾式粉砕ステップを含み、湿式粉砕ステップの分散剤および/もしくは粉砕剤が、好ましくはカルボン酸塩のホモポリマーまたはコポリマーであり、ならびに/または乾式粉砕ステップの分散剤および/または粉砕剤が、好ましくは、グリコール、ポリグリコール、ポリアルキレングリコール、糖、アルカノールアミンまたはこれらの混合物から選択される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
微粒子無機固体支持体を分散剤および/または粉砕剤ならびにジカルボン酸と混合し、その後、混合物を粉砕ステップ(ii)に供することによって、ステップ(iii)が粉砕ステップ(ii)の間に実施される、または微粒子無機固体支持体を分散剤および/または粉砕剤と混合し、次いで、混合物を粉砕ステップ(ii)に供し、その後、粉砕された微粒子無機固体支持体とジカルボン酸とを反応させることによってステップ(iii)が粉砕ステップ(ii)の後に実施される、請求項14から15の一項に記載の方法。
【請求項17】
ポリプロピレン用β核形成剤としての、請求項1から13の一項に記載の組成物の使用。

【公表番号】特表2013−511581(P2013−511581A)
【公表日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−539269(P2012−539269)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/067097
【国際公開番号】WO2011/061094
【国際公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(505018120)オムヤ・デイベロツプメント・アー・ゲー (31)
【Fターム(参考)】