説明

ポリプロピレンをベースとし、改善された特性を有するモノフィラメント

本発明は、ポリプロピレンをベースとし、改善された特性、特に改善された耐摩耗性を有するモノフィラメント、これらのモノフィラメントの製造方法及びそれらの使用に関する。より特定的には、本発明は、230℃/2.16kgにおいて1.9g/10分又はそれ未満のメルトフローインデックス(MFI)を有するポリプロピレンから得られた、ポリプロピレンをベースとするモノフィラメントに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレンをベースとし、改善された特性、特に改善された耐摩耗性を有するモノフィラメント、これらのモノフィラメントの製造方法及びそれらの使用に関する。本発明は、より特定的には、230℃/2.16kgにおいて1.9g/10分又はそれ未満のメルトフローインデックス(MFI)を有するポリプロピレンから得られた、ポリプロピレンをベースとするモノフィラメント(ポリプロピレンモノフィラメント)に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンから作られた二次元テキスタイル物品は、化学、製薬及び食品産業における濾過のための化学的及び機械的に耐性がある濾過手段として大いに関心を集めている。
【0003】
純粋なポリプロピレンから作られたモノフィラメントは、製織工程の際の摩耗に対するこの物質の耐性が低いことの結果として、多量の塵芥を形成するという欠点を有する。摩耗の問題はまた、その他の熱可塑性樹脂の場合にも知られている。かくして、ヨーロッパ特許公開第0784107A2号公報には、溶融紡糸されたポリアミド、ポリエステル又はポリプロピレンモノフィラメントが、抄紙機の布用及び草刈り機のワイヤ用に意図されるものとして挙げられている。上記特許公報に従えば、70〜99重量%のファイバー形成用ポリマー並びに1〜30重量%の無水マレイン酸変性ポリエチレン/ポリプロピレンゴム及びその他の添加剤を用いて、耐摩耗性モノフィラメントが得られる。しかしながら、実施例はファイバー形成用ポリマーに関してはポリアミドナイロン6、ポリエチレンテレフタレート、及びPA−6,6/PA−6コポリアミドに限られている。紡糸速度は言及されていない。
【0004】
また、ヨーロッパ特許公開第1059370A号公報から、テキスタイル用途用のポリプロピレンマルチフィラメントの製造方法も知られている。出発原料として、メタロセンを触媒として用いた19g/10分より大きいメルトフローインデックスを有するアイソタクチックポリプロピレンが用いられる。10dpf(デニール/フィラメント)のFOY(完全延伸ヤーン)マルチフィラメント(直径0.03953mm)及び2dpf(デニール/ファイバー)のPOY(部分延伸ヤーン)マルチフィラメント(直径0.01768mm)が記載されている。しかし、製造されるヤーンに関しては、一般的な指標が与えられているだけであり、そしてモノフィラメントは記載されていない。
【0005】
国際公開WO02/086207号及び同WO03/048434号パンフレットには、ポリプロピレンが添加剤を含むポリプロピレンモノフィラメントが記載されている。このモノフィラメントを製造するために用いられるポリプロピレンは、6g/10分又はそれより大きいメルトフローインデックスを有する。これらのモノフィラメントは、ほどほどの耐摩耗性を有する。
【特許文献1】ヨーロッパ特許公開第0784107A2号公報
【特許文献2】ヨーロッパ特許公開第1059370A号公報
【特許文献3】国際公開WO02/086207号パンフレット
【特許文献4】国際公開WO03/048434号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の1つの課題は、当技術分野において周知のモノフィラメントより高い耐摩耗性を有する、ポリプロピレンをベースとするモノフィラメントを提供することから成る。本発明の別の課題は、製織の際により良好な耐摩耗性を示す、ポリプロピレンをベースとするモノフィラメントを提供することから成る。
【0007】
さらに別の課題は、二次元高性能物品(特に濾過のためのもの)を製造するための良好な耐摩耗性を有するモノフィラメントの使用を提供することから成る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これらの課題は本発明に従って、特に230℃/2.16kgにおいて1.9g/10分又はそれ未満のメルトフローインデックス(MFI)を有するポリプロピレンをモノフィラメントの製造に用いることによって解消される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
モノフィラメントの製造に通常用いられるポリプロピレンは、アイソタクチックポリプロピレンである。
【0010】
本発明のモノフィラメントは、有利には、0.014%又はそれ未満の摩耗性(摩耗率)を有する。
【0011】
前記モノフィラメントの摩耗性は、実験の部に記載する方法を用い、長さ300mの織布の製造の際にできる毛羽(糸くず)(duvet)の量を重量測定することによって決定される。摩耗性値は、実験の部に記載する式の結果に相当し、300mの長さの織布について計算される。
【0012】
前記モノフィラメントは、0.014%未満の摩耗性を有するのが特に有利である。と言うのも、摩耗性が0.014%より大きい場合には、筬(おさ)の汚染が速過ぎるせいで、製織の際に不規則性ができることがあるからである。これは掃除しなければいけなくなる時間間隔を短くすることがあり、それによって織機(ルーム(loom))の生産性を低下させる。
【0013】
本発明のモノフィラメントは、0.01%又はそれ未満の摩耗性を有するのが好ましい。
【0014】
前記モノフィラメントは、少なくとも20%の最大引張応力に相当する伸び(破断点伸び)について、少なくとも50cN/texの強度を有するのが好適である。と言うのも、50cN/tex未満の強度だと、製織プロセスの際に破損するヤーンの数が増えるという欠点があるからである。
【0015】
本発明のモノフィラメントは、285cN/tex又はそれより大きい機械定数を有するのが有利である。
【0016】
本発明の1つの特定的な具体例に従えば、前記モノフィラメントは添加剤を含む。有利には、前記モノフィラメントは、ポリプロピレンの重量に対して0.01〜20重量%の添加剤を含む。
【0017】
有利には、140℃以上の融点を有するポリプロピレン/ポリエチレンコポリマーを添加剤として用いるのが好適である。この添加剤は、ポリプロピレンの重量に対して1〜20重量%の割合で存在させるのが有利である。
【0018】
本発明はまた、本発明のモノフィラメントの製造方法にも関し、この方法は、ポリプロピレンの押出/溶融紡糸工程、延伸工程及び巻取り工程を含む。
【0019】
本発明のポリプロピレンをベースとするモノフィラメントは、慣用の紡糸方法を用いて得ることができる。これらは一般的に、押出/溶融紡糸、水浴中での冷却{モノフィラメントの力価(titre)が0.05mm又はそれより大きい場合}、延伸及び巻取りによって得られる。本発明のモノフィラメントが添加剤を含む場合、この添加剤は、紡糸の前に押出機の上流においてポリプロピレンに添加するのが一般的である。
【0020】
本発明に従うモノフィラメントは、二次元高性能物品の製造、特に濾過の分野におけるかかる物品の製造に、特に好適である。これらの物品は、濾過(特に化学、製薬及び食品産業の分野における濾過)用に予定される場合には、織布であるのが好ましい。
【実施例】
【0021】
以下、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。
【0022】
ポリマー
【0023】
ポリマーとしては、230℃/2.16kgにおいて1.7g/10分のメルトフローインデックス(MFI)を有するポリプロピレンを試験の際に用いた。
【0024】
25kgのドラムを用い、毎回300kgのポリプロピレン粒体を用いた。
【0025】
ポリプロピレン粒体及び随意としての添加剤粒体を押出機に直接供給して、溶融させた。
【0026】
紡糸条件
【表1】

【0027】
延伸工程及び加熱チャネル
延伸工程1:7本ロール;ロール直径:230mm;1つの加熱チャネル
延伸工程2:7本ロール;ロール直径:230mm;1つの加熱チャネル
延伸工程3:7本ロール;ロール直径:230mm;2つの加熱チャネル
延伸工程4:4本ロール;ロール直径:230mm。
【0028】
測定方法
・メルトフローインデックス:ASTM D1238に従う。
・力価測定:SN 197 012及びSN 197 015に従い、DIN 53830/で補う。
・機械定数MCは、次式を用いて計算する。
【数1】

{ここで、Dは伸び率(%)を表わし、
Fは強さ(cN/tex)を表わす。}
・熱収縮の測定は、BISFA(標準プロトコルのChapter 11:「熱風中での熱収縮の測定」)に従い、次の条件下で実施した。
・・張力:0.02cN/dtex
・・温度:120℃
・・時間:10分。
【0029】
摩耗試験の説明
【0030】
セクショナルビームの製造
様々なバージョンの60個のボビンから、モノフィラメントを用いて、それぞれ1000mのセクショナルビームを製造した。
【0031】
製織試験
【0032】
製織試験は、リボン織機を用いて実施した。
・可能な最大生産:4000回転/分。
・偏心機構により杼口を形成させた。
・作業モード:緯糸の再エントリーなし
・経糸密度:22.80ヤーン/cm
・筬:開口:0.175mm
歯厚さ:0.264mm
歯幅:7.0mm
・織機の回転速度:1000回転/分。
・製織速度:10m/時間
・織り方:L1/1シーツ布。
【0033】
摩耗挙動の評価
・筬の目視評価
・できる毛羽の量の重量測定。
【0034】
目視測定においては、300mの布帛長さに相当する作業時間の後に筬の写真を撮り、それらに評点を与える。
【0035】
図1A、1B及び1Cは、上記の方法に従う製織試験の後の筬の写真を示す。図1Aは例1に相当し、図1Bは例2に相当し、図1Cは比較例に相当する。図1A及び1Bの筬はほとんど毛羽を示していないのに対して、図1Cの筬はかなりの量の毛羽を示している。
【0036】
重量法による摩耗挙動の評価を以下に説明する。これを行うためには、300mの布帛長さに相当する作業時間の後にできたすべての毛羽を集め、計量し、次式を用いて経糸に対して表わす。
【数2】

【0037】
摩耗挙動はまた、上記と同じ重量法を用い、しかし1000mの布帛長さで評価することもできる。図2に、例1及び2並びに比較例の摩耗挙動に関する結果を示す。
【0038】
例1
【0039】
230℃/2.16kgにおいて1.7g/10分のメルトフローインデックス(MFI)を有するポリプロピレンの粒体から、上記の方法を用い且つ上記の条件下で、モノフィラメントを得た。
【0040】
例2
【0041】
ポリプロピレンの粒体並びにポリプロピレン及びPP/PE変性ポリオレフィンから成る粒体(融点>140℃のもの)から、モノフィラメントを得た。
【0042】
これらの例を、第1表にまとめる。
【表2】

【0043】
比較例
【0044】
国際公開WO03/048434号パンフレットの例2に従ってモノフィラメントを得た。これらの摩耗性は0.0156%だった。
【0045】
本発明に従うモノフィラメントは、摩耗することなく濾布(濾過用布帛)の製造に好適である。
【0046】
本発明に従うモノフィラメントにより、ほとんど摩耗することなくポリプロピレンモノフィラメントを製織することが可能になり、そして織機の作業時間をかなり延ばすことが可能になる。このモノフィラメントは、化学、製薬及び食品産業における濾過用に用いられる布帛の製造に特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】製織試験の後の筬の写真である。
【図2】例1及び2並びに比較例の摩耗挙動に関する結果を示すグラフである。
【図1A】

【図1B】

【図1C】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
230℃/2.16kgにおいて1.9g/10分又はそれ未満のメルトフローインデックス(MFI)を有するポリプロピレンから得られたことを特徴とする、ポリプロピレンモノフィラメント。
【請求項2】
0.014%又はそれ未満の摩耗性を有することを特徴とする、請求項1に記載のモノフィラメント。
【請求項3】
摩耗性値が0.01%又はそれ未満であることを特徴とする、請求項2に記載のモノフィラメント。
【請求項4】
少なくとも20%の最大引張応力に相当する伸び(破断点伸び)について、少なくとも50cN/texの強度を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のモノフィラメント。
【請求項5】
ポリプロピレンの重量に対して0.01〜20重量%の添加剤を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のモノフィラメント。
【請求項6】
前記添加剤が140℃以上の融点を有するポリプロピレン/ポリエチレンコポリマーであることを特徴とする、請求項5に記載のモノフィラメント。
【請求項7】
前記コポリマーをポリプロピレンの重量に対して1〜20重量%含むことを特徴とする、請求項6に記載のモノフィラメント。
【請求項8】
ポリプロピレンの押出/溶融紡糸工程、延伸工程及び巻取り工程を含む、請求項1〜7のいずれかに記載のモノフィラメントの製造方法。
【請求項9】
二次元高性能物品の製造のための、請求項1〜7のいずれかに記載のモノフィラメントの使用。
【請求項10】
濾過の分野における、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
前記物品が濾布であることを特徴とする、請求項9又は10に記載の使用。

【図2】
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【公表番号】特表2007−530813(P2007−530813A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−505575(P2007−505575)
【出願日】平成17年3月22日(2005.3.22)
【国際出願番号】PCT/FR2005/000688
【国際公開番号】WO2005/100649
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(390023135)ロディア・シミ (146)
【Fターム(参考)】