説明

ポリプロピレンフィルム

【課題】透明性、滑り性と低温での耐衝撃性とのバランスに優れたポリプロピレンフィルムを提供すること。
【解決手段】プロピレンに由来する構造単位が主成分である重合体成分(成分A)50〜95重量%と、プロピレンとエチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの重合体成分(成分B)5〜50重量%とを含むポリプロピレン系共重合体からなるフィルムであって、前記フィルムを透過型電子顕微鏡で観察したモルフォロジーにおいて、プロピレンとエチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの重合体成分(成分B)の分散粒子の体積平均円相当粒子径が1.5μm以下であることを特徴とする、前記フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレンフィルムに関するものである。さらに詳しくは、透明性、滑り性と低温衝撃性とのバランスに優れたレトルト食品包装用フィルムの材料として好適なポリプロピレンフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレンは、剛性、耐熱性、包装適性に優れるため、食品包装、繊維包装などの包装材料の分野で幅広く用いられている。包装材料の特性としては、剛性、耐熱性、低温での耐衝撃性、ヒートシール性や耐ブロッキング性などが求められ、さらに、フィッシュアイが少なく外観に優れることが求められる。また、レトルト食品包装などでは大型包装袋が普及し始めており、低温での使用に対応できるよう優れた耐衝撃性が求められる。この場合、大量のエラストマー成分を含有させることが従来技術として知られている。しかしながらその場合、耐衝撃性と滑り性との両立が困難となる。
【0003】
特開平11−10698号公報には、結晶性ポリプロピレンを押出成形して得られるフィルムが、特定のモルフォロジーを有し、低温での耐衝撃性に優れることが記載されている。
【0004】
特開2003−55479号公報には、特定の性状を有するプロピレン−α−オレフィンブロック共重合体を成形して得られ、エラストマーブロックが特定の分散状態を有するポリプロピレンフィルムが、包装材料のヒートシール層として用いた時、レトルト殺菌処理などによる加熱殺菌によるヒートシール強度の低下が小さく、低温衝撃強度に優れ、かつユズ肌の発生がないことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−10698号公報
【0006】
【特許文献2】特開2003−55479号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記の組成物は、特に、低温での耐衝撃性において不十分な場合があり、透明性、滑り性および低温での耐衝撃性とのバランスにおいて、満足できるものではなかった。
本発明の目的は、透明性、滑り性と低温での耐衝撃性とのバランスに優れたポリプロピレンフィルムを提供することにある。
【0008】
本発明者らは、鋭意検討の結果、本発明が、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、プロピレンに由来する構造単位が主成分である重合体成分(成分A)50〜95重量%と、プロピレンとエチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの重合体成分(成分B)5〜50重量%とを含むポリプロピレン系共重合体からなるフィルムであって、前記フィルムを透過型電子顕微鏡で観察したモルフォロジーにおいて、プロピレンとエチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの重合体成分(成分B)の分散粒子の体積平均円相当粒子径が1.5μm以下であることを特徴とする、前記フィルムに関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明のフィルムは、透明性、滑り性と低温での衝撃性とのバランスに優れている。そして、本発明のフィルムはレトルト食品包装用フィルムの材料として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のフィルムは、プロピレンに由来する構造単位が主成分である重合体成分(成分A)と、プロピレンとエチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの重合体成分(成分B)とを含むポリプロピレン系共重合体からなる。
【0012】
ここで、ポリプロピレン系共重合体に占める成分Aおよび成分Bの割合は、成分Aが50〜95重量%、成分Bが5〜50重量%の範囲であり、好ましくは成分Aが60〜95重量%、成分Bが5〜40重量%、より好ましくは成分Aが60〜90重量%であり、成分Bが10〜40重量%である。成分Bが5重量%未満では、低温での耐衝撃性が劣り、成分Bが50重量%を超えると、滑り性が悪化することがある。
【0013】
成分Aは、プロピレンに由来する構造単位が主成分である重合体である。剛性の観点から、その融点は、155℃を超えることが好ましく、160℃以上がより好ましい。また、成分Aは、融点が155℃以下とならない範囲で、エチレンや1−ブテン等のα−オレフィンを共重合させてもよいが、好ましくは、プロピレン単独重合体である。エチレンや1−ブテン等のα−オレフィンを共重合させる場合には、プロピレンに由来する構造単位を主成分とする重合体成分(成分A)中のα−オレフィンに由来する構造単位の含有量が5重量%以下、好ましくは3重量%以下(プロピレンを主成分とする重合体成分を100重量%とする)である。成分Aの極限粘度については特に制限はないが、1.5〜3.0dL/gの範囲が好ましく、1.5〜2.5dL/gの範囲がさらに好ましい。
【0014】
成分Bに含まれるエチレンに由来する構造単位の含有量(Y)は、特に制限は無いが、50<Y≦70重量%が好ましく、より好ましくは52≦Y≦70重量%(但し、成分Bに含有されるプロピレンに由来する構造単位の含有量(X)、エチレンに由来する構造単位の含有量(Y)、および炭素数4以上のα−オレフィンに由来する構造単位の含有量(Z)の合計を100重量%とする)である。エチレンに由来する構造単位の含有量が50重量%以下、あるいは70重量を超える場合、低温での耐衝撃性が低下することがある。
【0015】
成分Bに含まれるα−オレフィンに由来する構造単位の含有量(Z)は、特に制限は無いが、0<Z≦20重量%が好ましく、より好ましくは1≦Z≦16重量%(但し、成分Bに含有されるプロピレンに由来する構造単位の含有量(X)、エチレンに由来する構造単位の含有量(Y)、および炭素数4以上のα−オレフィンに由来する構造単位の含有量(Z)の合計を100重量%とする)である。α−オレフィンに由来する構造単位の含有量が0重量%、あるいは20重量%を超える場合、低温での耐衝撃性が低下することがある。
【0016】
成分Bに含まれる炭素数4以上のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−へプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナン等が挙げられ、好ましくは、1−ブテンである。成分Bの極限粘度については特に制限はないが、フィッシュアイ発生の観点から2.0〜5.0dL/gの範囲が好ましく、2.5〜4.5dL/gの範囲がさらに好ましい。
【0017】
ポリプロピレン系共重合体の製造方法としては、プロピレンに由来する構造単位が主成分である重合体成分(成分A)を重合した後、連続してプロピレンとエチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの重合体成分(成分B)を重合して製造する方法が挙げられ、通常の立体規則性触媒を用いて、種々の重合方法によって製造することができる。
【0018】
立体規則性触媒としては、例えば、固体状チタン触媒成分と有機金属化合物触媒成分とさらに必要に応じて用いられる電子供与体とからなる触媒、シクロペンタジエニル環を有する周期表第IVB族の遷移金属化合物とアルキルアルミノキサンからなる触媒系、またはシクロペンタジエニル環を有する周期表第IVB族の遷移金属化合物とそれと反応してイオン性の錯体を形成する化合物および有機アルミニウム化合物からなる触媒が挙げられる。
【0019】
ポリプロピレン系共重合体は、以下の工程により製造する方法が挙げられる。
重合工程1:プロピレンを単独重合させてポリプロピレン単独重合体成分(成分A)を生成させる工程、または、プロピレンと、エチレンおよび炭素原子数4〜10のα−オレフィンからなる群から選ばれるオレフィンとを共重合させてプロピレンに由来する構造単位が主成分である重合体成分(成分A)を生成させる工程
重合工程2:上記工程1で得られるポリプロピレン単独重合体成分またはプロピレンに由来する構造単位を主成分とする共重合体成分の存在下に、プロピレンとエチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとを共重合させて、プロピレンとエチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの重合体成分(成分B)を生成させる工程
【0020】
プロピレンに由来する構造単位が主成分である重合体成分(成分A)を重合する時間と、プロピレンとエチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの重合体成分(成分B)を重合する時間と、を変更することにより、成分Aと成分Bの割合を変更させることができる。
また、プロピレンとエチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの重合体成分(成分B)を重合させるときの、プロピレン、エチレン、α−オレフィンの混合ガス中のガス組成を変化させることにより、成分Bの組成を変化させることができる。
【0021】
ポリプロピレン系共重合体を押出成形して得られるフィルムを透過型電子顕微鏡で観察したモルフォロジーは、プロピレンに由来する構造単位が主成分である重合体成分(成分A)が連続相となり、プロピレンとエチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの重合体成分(成分B)の分散相が連続相中に分散している。
本発明のフィルムを透過型電子顕微鏡で観察したモルフォロジーにおいて、プロピレンとエチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの重合体成分(成分B)の分散粒子の体積平均円相当粒子径(Dv)は1.5μm以下であり、好ましくは1.4μm以下である。Dvが1.5μmを超えると、低温での耐衝撃性に劣ることがある。
【0022】
プロピレンとエチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの重合体成分(成分B)の体積平均円相当粒子径(Dv)は、押出成形したフィルムより試験片を作成し、その切片を、例えばルテニウム酸で染色後、透過型電子顕微鏡で写真に取り、その写真を画像解析処理することにより求める。
【0023】
画像解析処理では、透過型電子顕微鏡から得られた写真をコンピュータに取り込み、高精度画像解析ソフト等で2値化し、解析面積を求める。次に、プロピレンとエチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの重合体成分(成分B)に相当する分散粒子の形状は不定形であるので、プロピレンとエチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの重合体成分と同じ面積となる円の直径(円相当粒子径:Di、単位:μm)を求め、下記式から体積平均円相当粒子径(Dv)を求めることができる。


(上記式中、iは1〜nの整数であり、Diは各粒子の円相当粒子径である。)
【0024】
本発明のフィルムは、ポリプロピレン系共重合体を、溶融混練工程および押出工程を通常の方法で経ることにより製膜される。
溶融混練工程としては、ポリプロピレン系共重合体を、単軸または二軸以上の多軸押出機、バンバリーミキサー、ロール式混練機等を用いて加熱溶融混練する方法が挙げられる。溶融混練温度として好ましくは180℃〜350℃である。押出工程としては、溶融したポリプロピレン系共重合体をTダイ成形法、チューブラー成形法などの押出成形法によりフィルム製膜する方法が挙げられる。
【0025】
本発明のフィルムの厚みは、好ましくは10〜500μmであり、より好ましくは10〜100μmである。フィルムには、通常工業的に採用されている方法によって、コロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、オゾン処理等の表面処理を施しても良い。
【0026】
本発明のフィルムを製造する場合、加工性を改良し、フィッシュアイを削減するという観点から、押出機先端に、ろ過精度10〜150μmである焼結繊維で構成されたフィルターを1枚から複数枚まで重ねても良い。
【0027】
本発明のフィルムには、必要に応じて、添加剤やその他の樹脂を添加しても良い。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤、粘着剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、有機過酸化物等が挙げられる。その他の樹脂としては、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、エチレンとα−オレフィンの共重合体であるエラストマー等が挙げられ、これらは不均一系触媒で製造されたものであっても、均一系触媒(例えば、メタロセン触媒等)で製造されたものであっても良い。また、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体やスチレン−イソプレン−スチレン共重合体を水添したスチレン系共重合体ゴム等のエラストマーを添加することもできる。
【0028】
本発明のフィルムの用途として、好ましくは、高温での加熱処理が施されるレトルト食品包装用途のフィルムである。また、該フィルムは、複合フィルムの一層としても好適に使用される。複合フィルムは、本発明のフィルムとその他のフィルムからなるフィルムであって、その他のフィルムとしては、例えば、ポリプロピレン二軸延伸フィルム、未延伸ナイロンフィルム、延伸ポリテレフタル酸エチルフィルムやアルミニウム箔等が挙げられ、複合フィルムの製造方法としては、ドライラミネート法や押出ラミネート法が挙げられる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明について実施例および比較例を用いて説明するが、本発明の範囲は実施例のみに限定されるものではない。なお、発明の詳細な説明および実施例および比較例における各項目の測定値は、下記の方法で測定した。
【0030】
(1)融点(単位:℃)
示差走査熱量測定装置(TAインスツルメンツ社製 DSC Q100)を使用し、試片約10mgを窒素雰囲気下で200℃で溶融させた後、200℃で5分間保持した後、10℃/分の降温速度で−90℃まで降温した後、10℃/分で昇温させて、得られた融解吸熱カーブの最大ピークの温度を融点(Tm)とした。
【0031】
(2)MFR(単位:g/10分)
JIS K7210に準拠し、温度230℃、荷重2.16kgfで測定した。
【0032】
(3)極限粘度([η]、単位:dL/g)
ウベローデ型粘度計を用いて135℃テトラリン中で測定を行った。
【0033】
(4)成分Aの極限粘度 [η]A([η]、単位:dL/g)
プロピレンが主成分である単量体の重合体成分(成分A)の極限粘度:[η]Aは、成分Aの重合後に重合槽から重合体パウダーを抜き出し、上記(3)の方法で測定して求めた。
【0034】
(5)成分Bの極限粘度 [η]B([η]、単位:dL/g)
プロピレンとエチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの重合体成分(成分B)の極限粘度:[η]Bは、プロピレンが主成分である単量体の重合体成分(成分A)の極限粘度:[η]Aと成分Aと成分Bを含有するポリプロピレン系共重合体全体の極限粘度:[η]Tをそれぞれ上記(3)の方法で測定し、成分Bのポリプロピレン系共重合体全体に対する重合比率:χを用いて、次式から計算によって求めた(成分Bのポリプロピレン系共重合体全体に対する重合比率:χは、下記(6)に記載の方法によって求めた)。
[η]B=[η]T/χ−(1/χ−1)[η]A
[η]A:プロピレンが主成分である単量体の重合体部分の極限粘度(dL/g)
[η]T:成分Aと成分Bを含有するポリプロピレン系共重合体全体の極限粘度(dL/g)
χ:成分Bのポリプロピレン系共重合体全体に対する重合比率
【0035】
(6)成分Bのポリプロピレン系共重合体全体に対する重合比率:χ(単位:重量%)
実施例1〜3について、プロピレンとエチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの重合体成分(成分B)の、成分Aと成分Bを含有するポリプロピレン系共重合体全体に対する重合比率:χは、以下の方法で算出した。
χ=1−Mg(T)/Mg(P)
Mg(P):プロピレンが主成分である単量体の重合体成分(成分A)の重合後に重合槽から取り出した重合体のマグネシウム含量
Mg(T):成分Aと成分Bを含有するポリプロピレン系共重合体全体のマグネシウム含量
重合体のマグネシウム含量は、試料を硫酸水溶液(1mol/リットル)に投じたのち超音波をあてて金属成分を抽出した後、得られた液体部分についてICP発光分析法により定量した。
比較例1〜2おいては、以下の方法で算出した。
χ=1−ΔH/ΔH
ΔH:プロピレンに由来する構造単位が主成分である重合体成分(成分A)重合後の重合体の融解熱量(J/g)
ΔH:プロピレンとエチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの重合体成分(成分B)重合後の重合体の融解熱量(J/g)
【0036】
(7)成分Bのエチレンに由来する構造単位の含有量(Y)と1−ブテンに由来する構造単位の含有量(Z)(単位:重量%)
実施例1〜3について、成分Aと成分Bを含有するポリプロピレン系共重合体中のエチレンに由来する構造単位の含有量(C2’(T))と、1−ブテンに由来する構造単位の含有量(C4’(T))を、J of Polymer Science; Part A; Polymer Chemistry, 28, 1237−1254, 1990の記載に基づいて求めた。比較例1〜2おいては、成分Aと成分Bを含有するポリプロピレン系共重合体中のエチレンに由来する構造単位の含有量(C2’(T))と、1−ブテンに由来する構造単位の含有量(C4’(T))を、高分子ハンドブック(1995年、紀伊国屋書店発行)の第616〜619頁に記載されている方法によって求めた。
次に、C2’(T)、C4’(T)と上記(6)記載のχから以下の方法で、成分Bのエチレンに由来する構造単位の含有量(Y)と1−ブテンに由来する構造単位の含有量(Z)を算出した。
Y=C2’(T)/χ×100
Z=C4’(T)/χ×100
【0037】
(8)透明性(ヘイズ、単位:%)
JIS K7105に従い測定した。
【0038】
(9)静止摩擦係数(単位:μs)および動摩擦係数(単位:μk)
室温23℃、湿度50%の下、MD100mm×50mmのフィルムサンプル2枚の測定面同士を重ね合わせて、設置面積40mm×40mmで重量79.4gの重りを用いて東洋精機製摩擦測定機(TR−2型)で移動速度15cm/分で測定した。
【0039】
(10)耐衝撃性(単位:kJ/m)
所定の温度(−15℃)に設定した恒温槽中にフィルムをおいて、東洋精機製フィルムインパクトテスターを使用して、直径15mmの半球状衝撃頭を用いて、フィルムの衝撃強度を測定した。
【0040】
(11)プロピレンとエチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの重合体成分(成分B)の分散粒子の体積平均円相当粒子径(Dv)(単位:μm)
実施例1〜3および比較例1〜2で製造されたフィルムより試験片を切り出し(2mm×10mmの短冊形)、これをエポキシ樹脂にて包埋固定を実施(60℃、24時間)した。次に、ルテニウム酸の蒸気で染色(60℃、3時間)後、クライオウルトラミクロトーム(切削温度−70℃)を用いて厚さ1000Å程度の超薄切片を作成した。この超薄切片を透過型電子顕微鏡(日立製作所H−7650型)を用いて、5000倍の観察倍率で観察した。ここで、黒く染色された部分が、プロピレンとエチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの重合体成分(成分B)に相当する。透過型電子顕微鏡を用いて撮影された写真から、旭エンジニアリング社製高精度画像解析ソフト「IP−1000」を用いて、以下に示した画像解析処理を行い、プロピレンとエチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの重合体成分(成分B)の分散粒子の体積平均円相当粒子径(Dv)を求めた。
(画像解析処理)EPSON社製スキャナーGT−X970で透過型電子顕微鏡から得られた写真をコンピュータに取り込み(96dpi、24bit),旭エンジニアリング社製高精度画像解析ソフト「IP−1000」で2値化した。解析面積は309μmであった。プロピレンとエチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの重合体成分(成分B)に相当する分散粒子の形状は不定形であるので、プロピレンとエチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの重合体成分(成分B)と同じ面積となる円の直径(円相当粒子径:Di、単位:μm)を求め、下記式から体積平均円相当粒子径(Dv)を求めた。



(上記式中、iは1〜nの整数であり、Diは各粒子の円相当粒子径である。)
【0041】
実施例1
(1)ポリプロピレン系共重合体(BCPP1)の製造
チーグラー・ナッタ型触媒を用いて第一工程で極限粘度が1.84dL/gのプロピレン単独重合体成分(成分A)を製造し、次いで第二工程で極限粘度が3.96dL/g、エチレン含有量(Y)が56重量%、プロピレン含有量(X)が40重量%、1−ブテン含有量(Z)が4重量%のエチレン・プロピレン・1−ブテンの重合体成分(成分B)を製造し、ポリプロピレン系共重合体(BCPP1)を得た。エチレン・プロピレン・1−ブテンの重合体成分(成分B)の重合比率は36重量%であった。
【0042】
(2)フィルム製造とその物性
ポリプロピレン系共重合体(BCPP1)199.8gと、[η]=1.57、Tm=162.1℃のプロピレン単独重合体250.2gに対して、安定剤としてステアリン酸カルシウム0.225g、イルガノックス1010(チバ・スペシャリティ−ケミカルズ社製)0.9g、イルガフォス168(チバ・スペシャリティ−ケミカルズ社製)0.225gを添加し、20mm単軸押出機(VS20−14型、田辺プラスチックス機械株式会社製、L/D=12.6フルフライト型スクリュー付き)を用いて250℃で溶融混練し、MFR=3.8(g/10分)のポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
得られたポリプロピレン系樹脂組成物を、20mmTダイ製膜装置(VS20−14型、田辺プラスチックス機械株式会社製、100mm幅Tダイ付き)を用いて、樹脂温度280℃で溶融押出を行った。溶融押出されたものを30℃の冷却水を通水した冷却ロールで冷却して、厚さ30μmのフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示した。
【0043】
実施例2
(1)ポリプロピレン系共重合体(BCPP2)の製造
チーグラー・ナッタ型触媒を用いて第一工程で極限粘度が1.78dL/gのプロピレン単独重合体成分(成分A)を製造し、次いで第二工程で極限粘度が4.29dL/g、エチレン含有量(Y)が65重量%、プロピレン含有量(X)が19重量%、1−ブテン含有量(Z)が16重量%のエチレン・プロピレン・1−ブテンの重合体成分(成分B)を製造し、ポリプロピレン系共重合体(BCPP2)を得た。エチレン・プロピレン・1−ブテンの重合体成分(成分B)の重合比率は28重量%であった。
【0044】
(2)フィルム製造とその物性
ポリプロピレン系共重合体(BCPP2)171.3gと、[η]=1.57、Tm=162.1℃のプロピレン単独重合体128.7gに対して、安定剤としてステアリン酸カルシウム0.15g、イルガノックス1010(チバ・スペシャリティ−ケミカルズ社製)0.6g、イルガフォス168(チバ・スペシャリティ−ケミカルズ社製)0.15gを添加し、20mm単軸押出機(VS20−14型、田辺プラスチックス機械株式会社製、L/D=12.6フルフライト型スクリュー付き)を用いて250℃で溶融混練し、MFR=3.8(g/10分)のポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
得られたポリプロピレン系樹脂組成物を、実施例1と同様に押出加工を行いフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示した。
【0045】
実施例3
(1)ポリプロピレン系共重合体(BCPP3)の製造
チーグラー・ナッタ型触媒を用いて第一工程で極限粘度が1.65dL/gのプロピレン単独重合体成分(成分A)を製造し、次いで第二工程で極限粘度が3.59dL/g、エチレン含有量(Y)が54重量%、プロピレン含有量(X)が45重量%、1−ブテン含有量(Z)が1重量%のエチレン・プロピレン・1−ブテンの重合体成分(成分B)を製造し、ポリプロピレン系共重合体(BCPP3)を得た。エチレン・プロピレン・1−ブテンの重合体成分(成分B)の重合比率は38重量%であった。
【0046】
(2)フィルム製造とその物性
ポリプロピレン系共重合体(BCPP3)168.4gと、[η]=1.57、Tm=162.1℃のプロピレン単独重合体231.6gに対して、安定剤としてステアリン酸カルシウム0.2g、イルガノックス1010(チバ・スペシャリティ−ケミカルズ社製)0.8g、イルガフォス168(チバ・スペシャリティ−ケミカルズ社製)0.2gを添加し、20mm単軸押出機(VS20−14型、田辺プラスチックス機械株式会社製、L/D=12.6フルフライト型スクリュー付き)を用いて250℃で溶融混練し、MFR=4.6(g/10分)のポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
得られたポリプロピレン系樹脂組成物を、実施例1と同様に押出加工を行いフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示した。
【0047】
比較例1
(1)ポリプロピレン系共重合体(BCPP4)の製造
チーグラー・ナッタ型触媒を用いて第一工程で極限粘度が1.80dL/gのプロピレン単独重合体成分(成分A)を製造し、次いで第二工程で極限粘度が3.01dL/g、エチレン含有量(Y)が65重量%、プロピレン含有量(X)が35重量%のエチレン・プロピレンの重合体成分(成分B)を製造し、ポリプロピレン系共重合体(BCPP4)を得た。エチレン・プロピレンの重合体成分(成分B)の重合比率は24重量%であった。
【0048】
(2)フィルム製造とその物性
ポリプロピレン系共重合体(BCPP4)335gと、[η]=1.84、Tm=161.9℃のプロピレン単独重合体165gに対して、安定剤としてステアリン酸カルシウム0.25g、イルガノックス1010(チバ・スペシャリティ−ケミカルズ社製)1g、イルガフォス168(チバ・スペシャリティ−ケミカルズ社製)0.25gを添加し、20mm単軸押出機(VS20−14型、田辺プラスチックス機械株式会社製、L/D=12.6フルフライト型スクリュー付き)を用いて250℃で溶融混練し、MFR=2.9(g/10分)のポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
得られたポリプロピレン系樹脂組成物を、実施例1と同様に押出加工を行いフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示した。
【0049】
比較例2
(1)ポリプロピレン系共重合体(BCPP5)の製造
チーグラー・ナッタ型触媒を用いて第一工程で極限粘度が1.80dL/gのプロピレン単独重合体成分(成分A)を製造し、次いで第二工程で極限粘度が3.01dL/g、エチレン含有量(Y)が55重量%、プロピレン含有量(X)が45重量%のエチレン・プロピレンの重合体成分(成分B)を製造し、ポリプロピレン系共重合体(BCPP5)を得た。エチレン・プロピレンの重合体成分(成分B)の重合比率は20重量%であった。
【0050】
(2)フィルム製造とその物性
ポリプロピレン系共重合体(BCPP5)400gと、[η]=1.84、Tm=161.9℃のプロピレン単独重合体100gに対して、安定剤としてステアリン酸カルシウム0.25g、イルガノックス1010(チバ・スペシャリティ−ケミカルズ社製)1g、イルガフォス168(チバ・スペシャリティ−ケミカルズ社製)0.25gを添加し、20mm単軸押出機(VS20−14型、田辺プラスチックス機械株式会社製、L/D=12.6フルフライト型スクリュー付き)を用いて250℃で溶融混練し、MFR=2.5(g/10分)のポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
得られたポリプロピレン系樹脂組成物を、実施例1と同様に押出加工を行いフィルムを得た。得られたフィルムの特性を表2に示した。
【0051】
表1

【0052】
表2


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレンに由来する構造単位が主成分である重合体成分(成分A)50〜95重量%と、プロピレンとエチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの重合体成分(成分B)5〜50重量%とを含むポリプロピレン系共重合体からなるフィルムであって、前記フィルムを透過型電子顕微鏡で観察したモルフォロジーにおいて、プロピレンとエチレンと炭素数4以上のα−オレフィンとの重合体成分(成分B)の分散粒子の体積平均円相当粒子径が1.5μm以下であることを特徴とする、前記フィルム。
【請求項2】
炭素数4以上のα−オレフィンが1−ブテンである、請求項1記載のフィルム。

【公開番号】特開2010−275443(P2010−275443A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130149(P2009−130149)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】