説明

ポリプロピレン樹脂組成物及び成形体

【課題】剛性及び耐熱性が良好なポリプロピレン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】脂肪族ポリエステル(A)と、下記一般式(1)で表される尿素化合物(B)と、ポリプロピレン樹脂(C)と、を含有する。
X−NHCONH−R−R・・・・(1)
[式中、Xは水素原子、アリール基、アラルキル基、及びアセチル基からなる群から選ばれるいずれか1種の基であり、Rは炭素原子数1〜25のアルキレン基、炭素原子数1〜25のアルケニレン基、炭素原子数5〜25のシクロアルキレン基、炭素原子数5〜25のシクロアルケニレン基、炭素原子数5〜25のアリーレン基、及び単結合、からなる群から選択されるいずれか1種を示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリプロピレン樹脂組成物及びその成形体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリ乳酸や、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリブチレンサクシネート等の植物由来の原料から製造されるポリエステル樹脂と、ポリプロピレン樹脂のようなポリオレフィン樹脂とを含有する樹脂組成物が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリ乳酸、ポリオレフィン樹脂、所定の相容化剤を含む樹脂組成物が開示されている。
また、平均粒度が5μm以下のタルク及び/又は平均粒度が30μm以下の窒化ホウ素からなる無機粒子を0.5質量%〜5質量%含有するポリ乳酸樹脂組成物が検討されている(特許文献1参照)。また、ポリ乳酸樹脂100質量部に対し、トリメシン酸トリス(t−ブチルアミド)のようなアミド系化合物を0.01質量部〜5質量部配合することも検討されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−38142号明細書
【特許文献2】特開平8―003432号公報
【特許文献3】特開平10−87975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの特許文献に記載の樹脂組成物は、剛性及び耐熱性が十分でなく、成形体を製造した場合に得られた成形体の機械的物性が所望の水準に満たない場合がある。また、ポリ乳酸のような生分解性樹脂は、耐久性が求められる成形体の材料として使用することが困難である。
以上の課題に鑑み、本発明は、剛性及び耐熱性が良好なポリプロピレン樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、脂肪族ポリエステル(A)と、下記一般式(1)で表される尿素化合物(B)と、ポリプロピレン樹脂(C)と、を含有するポリプロピレン樹脂組成物及びこの樹脂組成物からなる成形体を提供する。
X−NHCONH−R−R・・・・(1)
[式中、Xは水素原子、アリール基、アラルキル基、及びアセチル基からなる群から選ばれるいずれか1種の基であり、
は炭素原子数1〜25のアルキレン基、炭素原子数1〜25のアルケニレン基、炭素原子数3〜25のシクロアルキレン基、炭素原子数3〜25のシクロアルケニレン基、炭素原子数5〜25のアリーレン基、及び単結合、からなる群から選択されるいずれか1種を示す。
また、Xが水素原子の場合、Rは、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、オキサゾリン基及びイミド基からなる群から選ばれる少なくともいずれか1種の基を示し、
Xがアリール基、アラルキル基又は、アセチル基の場合、Rは、水素原子、炭素原子数1〜25のアルキル基、炭素原子数1〜25のアルケニル基、炭素原子数3〜25のシクロアルキル基、及び炭素原子数3〜25のシクロアルケニル基からなる群から選択される少なくとも1種の基を示す。]
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、剛性及び耐熱性が良好なポリプロピレン樹脂組成物を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に係る脂肪族ポリエステル樹脂組成物(以下、単に樹脂組成物とする)は、脂肪族ポリエステル(A)と、尿素化合物(B)と、ポリプロピレン樹脂(C)と、を含有する。以下詳細に説明する。
<脂肪族ポリエステル(A)>
本発明で用いられる脂肪族ポリエステル(A)は、ヒドロキシカルボン酸からなるポリエステルや、ジオールとジカルボン酸からなるポリエステルが挙げられる。これらは単独又は2種以上併用して用いてもよい。
ヒドロキシカルボン酸からなるポリエステルとしては、下記一般式(3)で示される3−ヒドロキシアルカノエートに由来する繰り返し単位を有する重合体が挙げられる。
【0009】
【化1】

〔式中、Rは水素原子又は炭素原子数1〜15のアルキル基であり、Rは単結合、又は炭素数1〜4のアルキレン基である〕
【0010】
上記式(1)で示される繰り返し単位を有する重合体は、単独重合体のほか、当該繰り返し単位を二種以上含有する多元共重合体であってもよい。多元共重合体は、ランダム共重合体、交替共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のいずれであってもよい。
上記単独重合体としてはポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(4−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシプロピオネート)等が挙げられる。多元共重合体としては、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシプロピオネート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−4−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシバリレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシオクタノエート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシバリレート−co−3−ヒドロキシヘキサノエート−co−4−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−乳酸)等が挙げられる。
【0011】
このうち、ポリ乳酸、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシバリレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−3−ヒドロキシヘキサノエート)を用いることが好ましい。
【0012】
ジオールとジカルボン酸からなる脂肪族ポリエステルとしてはポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリ(ブチレンサクシネート−co−ブチレンアジペート)、ポリ(ブチレンサクシネート−co−ブチレンテレフタレート)、ポリ(ブチレンアジペート−co−ブチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンサクシネート−co−エチレンテレフタレート)等が挙げられる。
【0013】
靭性及び引っ張り伸びに優れる成形体を得るためには、脂肪族ポリエステル(A)の重量平均分子量は、1万以上であることが好ましい。また、溶融時に樹脂組成物に適度な流動性が生まれ、射出成形時に外観が優れた成形体を得るためには、脂肪族ポリエステル(A)の重量平均分子量は、50万以下であることが好ましい。より好ましい脂肪族ポリエステル(A)の重量平均分子量は、5万〜45万であり、更に好ましくは7万〜40万である。
【0014】
本発明において脂肪族ポリエステル(A)として、ポリ乳酸を用いることが好ましい。ここで、本発明におけるポリ乳酸とは、L−乳酸及び/又はD−乳酸に由来する繰り返し単位のみからなる重合体、L−乳酸及び/又はD−乳酸に由来する繰り返し単位と、L−乳酸及びD−乳酸以外のモノマーに由来する繰り返し単位と、からなる共重合体、及び、前記重合体と前記共重合体の混合物、をいう。
ここで、上記L−乳酸及びD−乳酸以外のモノマーとしては、グリコール酸等のヒドロキシカルボン酸、ブタンジオール等の脂肪族多価アルコール及びコハク酸等の脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。
ここで、上記L−乳酸及びD−乳酸以外のモノマーとしては、グリコール酸等のヒドロキシカルボン酸、ブタンジオール等の脂肪族多価アルコール及びコハク酸等の脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。
【0015】
脂肪族ポリエステル(A)の製造方法は、公知の方法により製造することが可能である。例えば、ポリ乳酸の製造方法は、
・乳酸(L−乳酸、D−乳酸、又はL−乳酸とD−乳酸との混合物)、及び必要に応じて更に他のモノマーを脱水重縮合する方法、
・乳酸の環状二量体(すなわちラクチド)を開環重合させる方法、
・ラクチド及び乳酸と乳酸以外のヒドロキシカルボン酸との環状2分子縮合体を開環重合させる方法、
・ラクチド及び/又は乳酸と乳酸以外のヒドロキシカルボン酸との環状2分子縮合体、及び必要に応じて更に乳酸以外のヒドロキシカルボン酸の環状二量体(例えば、グリコリド)やヒドロキシカルボン酸由来の環状エステル(例えば、ε−カプロラクトン)を開環重合させる方法、
等が挙げられる。
【0016】
また、ポリカプロラクトンは、ε−カプロラクトンとエチレングリコール、ジエチレングリコール等のジオールとを触媒の存在下で反応させて得られる。この反応において用いられる触媒としては、有機スズ化合物、有機チタン化合物、有機ハロゲン化スズ化合物等が挙げられる。これらの触媒を0.1ppm〜5000ppm添加し、100℃〜230℃好ましくは不活性気体中で単量体を重合させることによってポリカプロラクトンが得られる。
また、特開平5−93049に記載されているように、ポリβ−ヒドロキシブチレートやポリβ−ヒドロキシブチレート・β−ヒドロキシヘキサノエートを製造するには、炭素源以外の栄養源の制限下で、アエロモナス属の微生物を、炭素数6以上の偶数個の脂肪酸若しくはその低級アルコールエステル又は天然油脂と、炭素数5以上の奇数個の脂肪酸又は4−ヒドロキシ酪酸若しくはγ−ブチロラクトンを炭素源として培養する方法が挙げられる。
【0017】
また、ポリエチレンサクシネート及びポリブチレンサクシネートの製造方法は、例えば特開平6−271656号公報に記載の方法により製造することができる。この方法では、(無水)コハク酸とエチレングリコール(又は1,4−ブタンジオール)とをエステル交換してオリゴマーを得、次いで得られたオリゴマーを重縮合する。また、特開平4−189822号公報や特開平5−287068号公報に記載されているように、ポリエチレンサクシネート及びポリブチレンサクシネートを製造する際にジイソシアナート又はテトラカルボン酸二無水物を架橋剤として用いてもよい。
【0018】
<尿素化合物(B)>
本発明で用いられる尿素化合物(B)は、下記一般式(1)で表される構造を有する。
X−NHCONH−R−R・・・・(1)
[式中、Xは水素原子、アリール基、アラルキル基、及びアセチル基からなる群から選ばれるいずれか1種の基であり、
は炭素原子数1〜25のアルキレン基、炭素原子数1〜25のアルケニレン基、炭素原子数3〜25のシクロアルキレン基、炭素原子数3〜25のシクロアルケニレン基、炭素原子数5〜25のアリーレン基、及び単結合、からなる群から選択されるいずれか1種を示す。
また、Xが水素原子の場合、Rは、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、オキサゾリン基及びイミド基からなる群から選ばれる少なくともいずれか1種の基を示し、
Xがアリール基、アラルキル基又は、アセチル基の場合、Rは、水素原子、炭素原子数1〜25のアルキル基、炭素原子数1〜25のアルケニル基、炭素原子数3〜25のシクロアルキル基、及び炭素原子数3〜25のシクロアルケニル基からなる群から選択される少なくとも1種の基を示す。]
【0019】
ここで、上記Xにおいて、アリール基は置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば炭素原子数1〜5のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、及び、水酸基等が挙げられる。置換基を有していてもよいアリール基としては、具体的には、フェニル基、トリル基、エチルフェニル基、ジメチルフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基、メチルメトキシフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基等が挙げられる。
また、アラルキル基も同様に置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば炭素原子数1〜5のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、及び、水酸基等が挙げられる。置換基を有していてもよいアラルキル基としては、具体的にはベンジル基、フェネチル基、メトキシベンジル基、メチルメトキシベンジル基等が挙げられる。
またアセチル基も同様に置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば炭素原子数1〜5のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基等が挙げられる。このうちフェニル基で置換されているフェニルアセチル基であることが好ましい。
【0020】
また、上記Rにおいて炭素原子数1〜25のアルキレン基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。具体的には、メチレン基、1,1−エチレン基、1,2−エチレン基、1,2−プロピレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1,5−ペンチレン基、1,6−ヘキシレン基、1,12−ドデシレン基、1,18−オクタデシレン基等が挙げられる。炭素原子数1〜25のアルケニレン基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。具体的には、ブテニレン基、メチルブテニレン基、ペンテニレン基等が挙げられる。
炭素原子数3〜25のシクロアルキレン基としては、シクロペンテン基、シクロヘキセン基等が挙げられる。炭素原子数3〜25のシクロアルケニレン基としては、シクロペンチン基、シクロヘキシン基等が挙げられる。炭素原子数5〜25のアリーレン基としては、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
【0021】
また、上記Rにおいて、炭素原子数1〜25のアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。具体的には、メチル基,エチル基,n−プロピル基,i−プロピル基,n−ブチル基,i−ブチル基,sec−ブチル基,tert−ブチル基,イソペンチル基,t−ペンチル基,ネオペンチル基,イソヘキシル基等が挙げられる。
炭素原子数1〜25のアルケニル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよい。具体的には、アリル基,ビニル基,クロチル基,シンナミル基,1−ペンテン−1−イル基,2−ペンテン−1−イル基,3−ペンテン−1−イル基,1−ヘキセン−1−イル基,2−ヘキセン−1−イル基,3−ヘキセン−1−イル基,8−ヘプタデセン−1−イル基等が挙げられる。炭素原子数3〜25のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。炭素原子数3〜25のシクロアルケニル基としては、2−シクロヘキセニル基,2−シクロペンテニル基等が挙げられる。
【0022】
上記尿素化合物(B)として、具体的には、フェニル尿素、ベンゾイル尿素、ベンジル尿素、フェニルアセチル尿素、2−ヒドロキシフェニル尿素、3−ヒドロキシフェニル尿素、4−ヒドロキシフェニル尿素、4−フェニルセミカルバジド、o−トリル尿素、m−トリル尿素、p−トリル尿素等が挙げられる。これらは単独又は2種以上組み合わせて用いることが可能である。
このうちフェニル尿素、ベンジル尿素、フェニルアセチル尿素、3−ヒドロキシフェニル尿素を用いることが好ましい。
【0023】
尿素化合物(B)の含有量は、前記脂肪族ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、0.01質量部〜5質量部である。このような範囲とすることにより、脂肪族ポリエステルの結晶化を促進することができる。尿素化合物の含有量は、0.1質量部〜2質量部であることが好ましく、0.3質量部〜1質量部であることがより好ましい。
【0024】
尿素化合物(B)の製造方法としては、イソシアナート化合物とアミン化合物とを反応させる方法や、ルテニウム錯体触媒下で、ニトロヘンセンと一酸化炭素とを、水素の存在下で反応させて、N、N’−ジフェニル尿素とアニリンを生成する方法、アミンと一酸化炭素とをコバルトカルボニル、酢酸銀、イオウ、セレン、白金族金属等の触媒を用いて反応させる方法、白金族金属を含む化合物を主体とする触媒の存在下で、二種類の芳香族アミン化合物を反応させる方法、等が挙げられる。
【0025】
<ポリプロピレン樹脂(C)>
本発明に用いられるポリプロピレン樹脂(C)(以下、成分(C)ともいう)は、プロピレン単独重合体、又はプロピレン単位含有量が50質量%以上である共重合体であり、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体、「プロピレン単独重合体成分(以下、重合体成分(I)ともいう)」と、「プロピレンとエチレン及び/又は炭素数4以上のα−オレフィンからなる群から選択される1種以上のコモノマーとの共重合体成分(以下、共重合体成分(II)ともいう)」からなる共重合体等が挙げられる。
【0026】
ポリプロピレン樹脂を構成するα−オレフィンの具体例としては、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−デセンが挙げられる。ポリプロピレン樹脂を構成するα−オレフィンの炭素数は、好ましくは4個〜20個であり、より好ましくは4個〜12個である。
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体としては、例えば、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、及びプロピレン−1−ヘキセンランダム共重合体が挙げられる。また、プロピレン−エチレン−α−オレフィン共重合体としては、例えば、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、及びプロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体が挙げられる。
【0027】
上記重合体成分(I)と、上記共重合体成分(II)とからなる共重合体において、重合体成分(I)としての「主にプロピレンからなる共重合体成分」としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、及びプロピレン−1−ヘキセン共重合体成分が挙げられる。また、前記共重合体成分(II)としては、例えば、プロピレン−エチレン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体成分、プロピレン−エチレン−1−ヘキセン共重合体成分、プロピレン−1−ブテン共重合体成分、及びプロピレン−1−ヘキセン共重合体成分が挙げられる。なお、上記共重合体成分(II)におけるコポリマー(すなわち、プロピレン以外のモノマー)の含有量は、10質量%〜70質量%である。
【0028】
そして、前記重合体成分(I)と前記共重合体成分(II)からなる共重合体としては、例えば、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−エチレン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ブテン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−エチレン−1−ヘキセン)共重合体、(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ブテン)共重合体、及び(プロピレン−1−ブテン)−(プロピレン−1−ヘキセン)共重合体が挙げられる。
【0029】
ポリプロピレン樹脂(C)は、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−1−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−1−ブテン共重合体、又は(プロピレン)−(プロピレン−エチレン)共重合体であることが好ましい。
【0030】
ポリプロピレン樹脂(C)の13C−NMRによって測定されるアイソタクチック・ペンタッド分率は0.95以上が好ましく、さらに好ましくは0.98以上である。
【0031】
ここで、アイソタクチック・ペンタッド分率とは、A.ZambelliらによってMacromolecules,6,925(1973)に記載されている方法、すなわち13C−NMRによって測定されるプロピレン系重合体分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖、換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である。具体的には、13C−NMRスペクトルによって測定されるメチル炭素領域の吸収ピークの面積に対する、mmmmピークの面積の割合が、アイソタクチック・ペンタッド分率である。
【0032】
ポリプロピレン樹脂(C)を製造する方法としては、チーグラー・ナッタ型触媒又はメタロセン触媒を用いて、単独重合する方法、又はプロピレン以外のオレフィンから選ばれる1種以上のオレフィンとプロピレンとを共重合する方法等が挙げられる。チーグラー・ナッタ型触媒としては、チタン含有固体状遷移金属成分と有機金属成分を組み合わせて用いる触媒系が挙げられる。メタロセン触媒としては、シクロペンタジエニル骨格を少なくとも1個有する周期表第4族〜第6族の遷移金属化合物及び助触媒成分を組み合わせて用いる触媒系が挙げられる。
また、重合方法としては、例えば、不活性炭化水素溶媒中で行われるスラリー重合法や溶液重合法、溶媒の不存在下に行われる液相重合法や気相重合法、及びそれらを連続的に行う気相−気相重合法や液相−気相重合法が挙げられ、これらの重合方法は、回分式であってもよく、連続式であってもよい。また、ポリプロピレン樹脂(C)を一段階で製造する方法であってもよく、二段階以上の多段階で製造する方法であってもよい。
特に、上記重合体成分(I)と上記共重合体成分(II)からなる共重合体の製造方法として、好ましくは、前記重合体成分(I)を製造する段階と、前記共重合体成分(II)を製造する段階との少なくとも二段階の工程を有する多段階の製造方法が挙げられる。
【0033】
ポリプロピレン樹脂(C)のメルトフローレートは、1g/10分〜100g/10分であることが好ましく、10g/10分〜80g/10分であることがより好ましく、30g/10分〜60g/10分であることが更に好ましい。なお、ポリプロピレン樹脂(C)のメルトフローレートは、JIS K 7210に従って、230℃、21.2N荷重で測定した値である。
【0034】
ポリプロピレン樹脂(C)の含有量は、前記脂肪族ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、100質量部〜1000質量部である。このような範囲とすることにより、ポリプロピレン樹脂をマトリックス、ポリ乳酸をドメインとして相容化できる。ポリプロピレン樹脂の含有量は、200質量部〜900質量部であることが好ましく、300質量部〜500質量部であることがより好ましい。
【0035】
<有機造核剤(D)>
本発明は、有機造核剤(D)を含有していてもよい。この有機造核剤を含有することにより、脂肪族ポリエステル(A)の結晶化度をより高くすることができるため、本発明に係る樹脂組成物の剛性と耐熱性をさらに向上させることができる。有機造核剤(D)は、下記一般式(2)で示される構造を有する化合物、フタロシアニン化合物及びアミノ化合物からなる群から選ばれる少なくともいずれか1種の化合物である。
【0036】
【化2】

[式中、R,R及びRはそれぞれ独立して、炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよいシクロヘキシル基を表す。]
【0037】
上記炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有していてもよいシクロヘキシル基としては、シクロヘキシル基、2−メチルシクロヘキシル基、3−メチルシクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基、2−エチルシクロヘキシル基、3−エチルシクロヘキシル基、4−エチルシクロヘキシル基、2−n−プロピルシクロヘキシル基、3−n−プロピルシクロヘキシル、4−n−プロピルシクロヘキシル基、2−iso−プロピルシクロヘキシル基、3−iso−プロピルシクロヘキシル基、4−iso−プロピルシクロヘキシル基、2−n−ブチルシクロヘキシル基、3−n−ブチルシクロヘキシル基、4−n−ブチルシクロヘキシル基、2−iso−ブチルシクロヘキシル基、3−iso−ブチルシクロヘキシル基、4−iso−ブチルシクロヘキシル基、2−sec−ブチルシクロヘキシル基、3−sec−ブチルシクロヘキシル基、4−sec−ブチルシクロヘキシル基、2−tert−ブチルシクロヘキシル基、3−tert−ブチルシクロヘキシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基、2,3−ジメチルシクロヘキシル基、2,4−ジメチルシクロヘキシル基、2,5−ジメチルシクロヘキシル基、2,6−ジメチルシクロヘキシル基、2,3,4−トリメチルシクロヘキシル基、2,3,5−トリメチルシクロヘキシル基、2,3,6−トリメチルシクロヘキシル基、2,4,6−トリメチルシクロヘキシル基、3,4,5−トリメチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0038】
上記一般式(2)で示される構造を有する化合物として、具体的にはトリメシン酸トリシクロヘキシルアミド、トリメシン酸トリ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、トリメシン酸トリ(3−メチルシクロヘキシルアミド)、トリメシン酸トリ(4−メチルシクロヘキシルアミド)、トリメシン酸トリ(2,3−ジメチルシクロヘキシルアミド)等が挙げられる。このうち、トリメシン酸トリシクロヘキシルアミド、トリメシン酸トリ(2−メチルシクロヘキシルアミド)を用いることが好ましい。
【0039】
上記一般式(2)で示される構造を有する化合物は、例えばトリメシン酸又はトリメシン酸クロライドと、炭素数1〜4の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基を有していてもよいシクロヘキシルアミンを、アミド化反応させることにより得ることができる。
上記炭素数1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有していてもよいシクロヘキシルアミンとしては、シクロヘキシルアミン、2−メチルシクロヘキシルアミン、3−メチルシクロヘキシルアミン、4−メチルシクロヘキシルアミン、2−エチルシクロヘキシルアミン、3−エチルシクロヘキシルアミン、4−エチルシクロヘキシルアミン、2−n−プロピルシクロヘキシルアミン、3−n−プロピルシクロヘキシルv、4−n−プロピルシクロヘキシルアミン、2−iso−プロピルシクロヘキシルアミン、3−iso−プロピルシクロヘキシルアミン、4−iso−プロピルシクロヘキシルアミン、2−n−ブチルシクロヘキシルアミン、3−n−ブチルシクロヘキシルアミン、4−n−ブチルシクロヘキシルアミン、2−iso−ブチルシクロヘキシルアミン、3−iso−ブチルシクロヘキシルアミン、4−iso−ブチルシクロヘキシルアミン、2−sec−ブチルシクロヘキシルアミン、3−sec−ブチルシクロヘキシルアミン、4−sec−ブチルシクロヘキシルアミン、2−tert−ブチルシクロヘキシルアミン、3−tert−ブチルシクロヘキシルアミン、4−tert−ブチルシクロヘキシルアミン、2,3−ジメチルシクロヘキシルアミン、2,4−ジメチルシクロヘキシルアミン、2,5−ジメチルシクロヘキシルアミン、2,6−ジメチルシクロヘキシルアミン、2,3,4−トリメチルシクロヘキシルアミン、2,3,5−トリメチルシクロヘキシルアミン、2,3,6−トリメチルシクロヘキシルアミン、2,4,6−トリメチルシクロヘキシルアミン、3,4,5−トリメチルシクロヘキシルアミン、等が挙げられる。
【0040】
フタロシアニン化合物としては、フタロシアニンブルーやフタロシアニングリーン、フタロシアニンレッド等が挙げられる。
アミノ化合物としては、トリプトファン、フェニルアラニン、p−クロロ−フェニルアラニン、m−チロシン、フェニルグリシン、p−ヒドロキシフェニルグリシン、メチオニン、o−チロシン及びバリン等が挙げられる。
【0041】
上記一般式(2)で示される構造を有する化合物、フタロシアニン化合物及びアミノ化合物のうち、トリメシン酸トリシクロヘキシルアミド、トリメシン酸トリ(2−メチルシクロヘキシルアミド)、フタロシアニンブルー、m−チロシンを用いることがより好ましい。
【0042】
有機造核剤(D)は粒状であり、その中心粒径は10μm以下が好ましく、5μm以下が好ましい。最大粒径は30μm以下が好ましく、20μm以下が特に好ましい。
中心粒径を10μmより小さく又は最大粒径を30μmより小さくすることにより、有機造核剤(D)を脂肪族ポリエステル樹脂(A)及びポリプロピレン樹脂(C)中に十分に溶解させることが可能となり、造核作用を向上させることが可能となる。その結果、樹脂組成物の結晶化速度をよりいっそう向上させることが可能となる。
ここで、「中心粒径」とは、レーザー回折光散乱法(体積基準)により測定した粒度分布において、出現頻度が50%となるときの粒子径をいう。また「最大粒径」とは、当該粒径より小さい粒子量の、全粒子量に対する百分率が99質量%である粒径をいう。
【0043】
有機造核剤(D)の含有量は、前記脂肪族ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、0.01質量部〜5質量部であることが好ましく、0.05質量部〜2質量部であることが好ましく、0.1質量部〜1質量部であることがより好ましい。
【0044】
<その他>
本発明では上記の成分のほかに、必要に応じて他の付加的成分を添加してもよい。例えば、酸化防止剤、耐候性改良剤、無機造核剤、相容化剤、難燃剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、各種着色剤、有機充填剤、無機充填剤、末端封止剤、エラストマー及びその他の樹脂が挙げられる。
【0045】
無機充填剤としては、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、ガラスビーズ、マイカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸カリウムウィスカー、タルク、カオリナイト、ベントナイト、スメクタイト、セピオライト、ワラストナイト、モンモリロナイト、クレー、アロフェン、イモゴライト、繊維状マグネシウムオキシサルフェート硫酸バリウム、ガラスフレーク、カーボンブラック等が挙げられる。
無機造核剤としては、窒化ホウ素等が挙げられる。
【0046】
相容化剤としては、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、無水カルボキシル基、オキサゾリン基及びイミド基からなる群から選ばれる少なくともいずれか1種の基を有する化合物をポリオレフィン系樹脂にグラフトさせたグラフト重合体等が挙げられる。無水カルボキシル基を含有する化合物をグラフトさせたポリオレフィン系樹脂としては、エチレン−α,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル−無水マレイン酸三元共重合体(住友化学株式会社製 商標名ボンダイン)等が挙げられる。
エポキシ基を含有する化合物をグラフトさせたポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合体、水添又は非水添のスチレン−共役ジエン系等に、エポキシ基を有する単量体を、溶液若しくは溶融混練でグラフト重合させて得られたグラフト重合体や、グリシジルメタアクリレート−スチレン共重合体、グリシジルメタアクリレート−エチレン共重合体(住友化学株式会社製 商標名ボンドファースト)、グリシジルメタアクリレート−アクリロニトリル−スチレン共重合体、グリシジルメタアクリルレート−プロピレン共重合体等が挙げられる。
【0047】
エラストマーとしては、ポリオレフィンエラストマー、スチレンエラストマーポリエステルエラストマー、アクリルエラストマー、コアシェルエラストマー等が挙げられる。ポリオレフィンエラストマーとしては天然ゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、非晶性又は低結晶性のエチレン系エラストマー等が挙げられる。
上記エチレン系エラストマーは、エチレンに由来する単量体単位を主成分として含有するエラストマーであり、例えば、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−エチレン系不飽和エステル共重合体が挙げられる。
スチレンエラストマーとしては、ポリ(スチレン−b−エチレン−co−ブタジエン−b−スチレンエラストマー)、ポリ(スチレン−b−ブタジエン−b−スチレンエラストマー)が挙げられる。
【0048】
アクリルエラストマーはアクリル酸アルキルエステル単量体、芳香族ビニル単量体、並びにアクリル酸アルキルエステル単量体と芳香族ビニル単量体と共重合可能なビニル単量体を、例えば乳化重合することで得られるエラストマーである。
アクリル酸アルキルエステル単量体としてはメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどアルキル基を有するアクリル酸誘導体が挙げられる。
芳香族ビニル単量体の具体例としてはスチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン等が挙げられる。
アクリル酸アルキルエステル単量体と芳香族ビニル単量体と共重合可能なビニル単量体の具体例としてはアクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル単量体等が挙げられる。
【0049】
コアシェルエラストマーは上記アクリルエラストマーをコア層として、シアン化ビニル系単量体、芳香族ビニル系単量体、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルからなる群より選択される少なくとも一種のビニル系単量体をシェル層として共重合したエラストマーである。
その他のエラストマーとしては、フッ素ゴム、エピクロロヒドリンゴム、シリコンゴム、ウレタンゴムなどが挙げられる。
【0050】
本発明の樹脂組成物の製造方法としては、特に制限されるものではなく、従来の樹脂組成物の製造において用いられている方法、例えば、混練機や押出機等を用いて溶融混練して製造する方法が挙げられる。混練機としては、例えば、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール等が挙げられ、押出機としては、例えば、一軸押出機や二軸押出機が挙げられる。
各成分の混練の順番は特に限定されていないが、始めに(A)成分と(B)成分、必要に応じて(D)成分とを混練し、次いで残りの成分を混練することが好ましい。
本発明の樹脂組成物を用いて得られる成形体の製造方法としては、例えば、射出成形法、押出成形法、回転成形法、真空成形法、発泡成形法、ブロー成形法等の成形法が挙げられる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例に基づき詳細に説明する。なお、物性の評価は、以下の方法により行った。
(1)曲げ弾性率(単位:MPa)及び曲げ強度(単位:MPa)
曲げ試験機(株式会社オリエンテック製 RTC−1310A)を使用して、JIS K7171(1994)に従い、速度2mm/minで測定した。なお試験片は125mm×12mm、厚さ6mmである。
【0052】
(2)熱変形温度(単位:℃)
ASTM D648に規定された方法に従って成形体の熱変形温度を測定した。射出成形によって成形された厚さ6.4mmの試験片を用いた。試験荷重は、0.45MPaの荷重下で測定した。
【0053】
実施例に使用した材料は、以下の通りである。
(A)脂肪族ポリエステル((A)成分)
ユニチカ社製「テラマック(登録商標)TE−2000C」
(ポリ乳酸樹脂、MFR(230℃、21N)=41g/10分)
(B)尿素化合物((B)成分)
(B1)東京化成工業社製「ベンジル尿素」
(B2)東京化成工業社製「フェニル尿素」
(C)ポリプロピレン系重合体
住友化学株式会社製ポリプロピレンブロック共重合体、MFR(230℃、21N)=50g/10分)
(D)有機系造核剤((D)成分)
新日本理化社製「エヌジェスター TF−1」
(トリメシン酸トリシクロヘキシルアミド)
(E)相容化剤((E)成分)
住友化学株式会社製「ボンドファースト E」(エチレン−グリシジルメタアクレート共重合体、MFR(190℃、21N)=3g/10分、グリシジルメタアクリレートに由来する単量体単位含有量=12質量%)
【0054】
[参考例1]
脂肪族ポリエステル(A)100質量部と、尿素化合物(B1)1質量部と、をシリンダ内径50mmの二軸混練押出機(東芝機械社製TEM50A)を用い、シリンダ温度は190℃に設定し、押出量50kg/hr、スクリュ回転数200rpmの条件で、ペレットを製造した(表1参照)。
【0055】
[実施例1]
シリンダ内径50mmでフィード部を2箇所有する二軸混練押出機(東芝機械社製TEM50A)を用いた。1stフィード部に、参考例1で製造したペレット101質量部、相容化剤(E)20.2質量部を、2ndフィード部に、ポリプロピレン系重合体(C)70質量部を投入し、溶融混練を行い、樹脂組成物を得た。このときのシリンダ温度は190℃、押出量50kg/hr、スクリュ回転数200rpmであった。
なお本実施例において、各成分の含有量は、脂肪族ポリエステル(A)の含有量を100質量部とした含有量である。
【0056】
[参考例2]
脂肪族ポリエステル(A)100質量部と、尿素化合物(B2)1質量部と、をシリンダ内径50mmの二軸混練押出機(東芝機械社製TEM50A)を用い、シリンダ温度は190℃に設定し、押出量50kg/hr、スクリュ回転数200rpmの条件で、ペレットを製造した(表1参照)。
【0057】
[実施例2]
参考例1のペレットの代わりに、参考例2のペレット101質量部を用いた以外は、実施例1と同様の方法で樹脂組成物を得た。
【0058】
[参考例3]
脂肪族ポリエステル(A)100質量部と、尿素化合物(B2)1質量部と、有機造核剤(D)1質量部と、をシリンダ内径50mmの二軸混練押出機(東芝機械社製TEM50A)を用い、シリンダ温度は190℃に設定し、押出量50kg/hr、スクリュ回転数200rpmの条件で、ペレットを得た(表1参照)。
【0059】
[実施例3]
実施例1の二軸混練押出機の1stフィード部に、参考例3のペレット102質量部と、相容化剤(E)20.4質量部を、2ndフィード部に、ポリプロピレン樹脂(C)285.6質量部を投入し、溶融混練を行い、樹脂組成物を得た。このときのシリンダ温度は190℃、押出量50kg/hr、スクリュ回転数200rpmであった。
【0060】
[実施例4]
実施例1の二軸混練押出機の1stフィード部に、参考例3のペレット51質量部と、脂肪族ポリエステル(A)51質量部(表中「追加の(A)成分」と記載)と、相容化剤(E)20.4質量部を、2ndフィード部に、ポリプロピレン樹脂(C)285.6質量部を投入し、溶融混練を行い、樹脂組成物を得た。このときのシリンダ温度は190℃、押出量50kg/hr、スクリュ回転数200rpmであった。
【0061】
[実施例5]
実施例1の二軸混練押出機の1stフィード部に、参考例3のペレット39.2質量部と、脂肪族ポリエステル(A)62.8質量部(表中「追加の(A)成分」と記載)と、相容化剤(E)20.4質量部を、2ndフィード部に、ポリプロピレン樹脂(C)285.6質量部を投入し、溶融混練を行い、樹脂組成物を得た。このときのシリンダ温度は190℃、押出量50kg/hr、スクリュ回転数200rpmであった。
【0062】
[実施例6]
実施例1の二軸混練押出機の1stフィード部に、参考例3のペレット26.1質量部と、脂肪族ポリエステル(A)75.9質量部(表中「追加の(A)成分」と記載)と、相容化剤(E)20.4質量部を、2ndフィード部に、ポリプロピレン樹脂(C)285.6質量部を投入し、溶融混練を行い、樹脂組成物を得た。このときのシリンダ温度は190℃、押出量50kg/hr、スクリュ回転数200rpmであった。
【0063】
[実施例7]
実施例1の二軸混練押出機の1stフィード部から参考例3のペレット13.1質量部に対し、脂肪族ポリエステル(A)88.9質量部(表中「追加の(A)成分」と記載)と、相容化剤(E)20.4質量部を、2ndフィード部からポリプロピレン樹脂(C)285.6質量部を投入し、溶融混練を行い、樹脂組成物を得た。このときのシリンダ温度は190℃、押出量50kg/hr、スクリュ回転数200rpmであった。
【0064】
[比較例1]
実施例1の二軸混練押出機の1stフィード部に、脂肪族ポリエステル(A)100質量部と、相容化剤(E)20質量部を、2ndフィード部に、ポリプロピレン樹脂(C)280質量部を投入し、溶融混練を行い、樹脂組成物を得た。このときのシリンダ温度は190℃、押出量50kg/hr、スクリュ回転数200rpmであった。
【0065】
[参考例4]
脂肪族ポリエステル(A)100質量部と、有機造核剤(D)1質量部と、をシリンダ内径50mmの二軸混練押出機(東芝機械社製TEM50A)を用い、シリンダ温度は190℃に設定し、押出量50kg/hr、スクリュ回転数200rpmの条件で、ペレットを得た(表1参照)。
【0066】
[比較例2]
実施例1の二軸混練押出機の1stフィード部に、参考例4のペレット101質量部と、相容化剤(E)20.2質量部を、2ndフィード部に、ポリプロピレン系重合体(C)282.8質量部を投入し、溶融混練を行い、樹脂組成物を得た。このときのシリンダ温度は190℃、押出量50kg/hr、スクリュ回転数200rpmであった。
【0067】
物性評価用試験片は、次の射出成形条件下で作製した。上記で得られた樹脂組成物を住友重機械社製サイキャップ110/50型射出成形機を用いて、成形温度200℃、金型冷却温度35℃、射出時間25秒、冷却時間28秒で射出成形を行った。得られた射出成形体の曲げ弾性率、曲げ強度、熱変形温度を測定した。その結果を表2及び表3に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリエステル(A)と、下記一般式(1)で表される尿素化合物(B)と、ポリプロピレン樹脂(C)と、を含有するポリプロピレン樹脂組成物。
X−NHCONH−R−R・・・・(1)
[式中、Xは水素原子、アリール基、アラルキル基、及びアセチル基からなる群から選ばれるいずれか1種の基であり、
は炭素原子数1〜25のアルキレン基、炭素原子数1〜25のアルケニレン基、炭素原子数3〜25のシクロアルキレン基、炭素原子数3〜25のシクロアルケニレン基、炭素原子数5〜25のアリーレン基、及び単結合、からなる群から選択されるいずれか1種を示す。
また、Xが水素原子の場合、Rは、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、オキサゾリン基及びイミド基からなる群から選ばれる少なくともいずれか1種の基を示し、
Xがアリール基、アラルキル基又は、アセチル基の場合、Rは、水素原子、炭素原子数1〜25のアルキル基、炭素原子数1〜25のアルケニル基、炭素原子数3〜25のシクロアルキル基、及び炭素原子数3〜25のシクロアルケニル基からなる群から選択される少なくとも1種の基を示す。]
【請求項2】
前記尿素化合物(B)の含有量は、前記脂肪族ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、0.01質量部〜5質量部である請求項1に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項3】
前記脂肪族ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、有機造核剤(D)を0.01質量部〜5質量部を更に含有する請求項1又は2に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項4】
前記有機造核剤(D)が、下記一般式(2)で表されるアミド化合物、フタロシアニン化合物及びアミノ化合物からなる群から選ばれる少なくともいずれか1種の化合物である請求項3に記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【化1】

[式中、R,R4及びR5はそれぞれ、炭素数1〜4のアルキル基を1〜3個有していてもよいシクロヘキシル基を表す。]
【請求項5】
前記脂肪族ポリエステル(A)が、ポリ乳酸である請求項1から4のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載のポリプロピレン樹脂組成物からなる成形体。

【公開番号】特開2011−132513(P2011−132513A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−263267(P2010−263267)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】