説明

ポリプロピレン系予備発泡粒子を用いた型内発泡成形体の製造方法

【課題】 異なる特性のポリプロピレン系予備発泡粒子であっても、ほぼ同等の加熱圧力とすることで、低い成形加熱条件での型内発泡成形が可能となる、製造方法ならびに型内発泡成形体を提供すること。
【解決手段】 特性の異なる2以上のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が略区画状に存在してなる型内発泡成形体の製造方法において、少なくとも一区画を構成するポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して脂肪族系石油樹脂および/または脂環族系石油樹脂を1重量部以上8重量部以下含んでなるポリプロピレン系樹脂組成物を基材樹脂としてなることを特徴とする型内発泡成形体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特性の異なる2以上のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子からなる型内発泡成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
異なる発泡倍率の熱可塑性合成樹脂からなる原料ビーズを用いて成形体を製造する型内発泡成形方法として、従来より、種々の方法が知られているが、例えば特許文献1には、一方の金型にエアシリンダー等のアクチュエータを介して成形空間内に出没自在な仕切部材を設け、この仕切部材により成形空間内を複数の区画成形空間に区画する型内発泡成形装置によって成形される方法が知られている。
【0003】
また、特許文献2には、熱可塑性合成樹脂からなる原料ビーズを用いて成形体を成形する型内発泡成形方法として、少なくとも一方の金型に、隣接する区画成形空間に充填する原料ビーズの少なくとも一方が通り抜け不能な間隔をあけて型開閉方向に片持ち状に延びる複数の櫛歯を固定的に設け、この仕切部材により成形空間内を複数の区画成形空間に区画するとともに、各区画成形空間に対して原料ビーズを供給する充填器を個別に接続し仕切部材により成形空間内を区画した状態で、隣接する区画成形空間内に例えば発泡倍率の異なる原料ビーズを充填した後、成形空間内に蒸気を供給することで、隣接する原料ビーズを櫛歯を介して加熱融着させて成形体を得るように構成した型内発泡成形装置や成形方法が開示されている。
【0004】
しかしながら、例えば、異なる発泡倍率である予備発泡粒子は、成形のために必要とされる加熱圧力が異なるため、特許文献1、2に開示されているような2つ以上の発泡倍率の異なるポリプロピレン系予備発泡粒子を1つの型内発泡成形装置において一体的に発泡成形を行う場合、予備発泡粒子同士を融着させるためには、区画した成形空間毎に必要とする成形加熱圧力を変更するか、あるいは最も高い成形加熱圧力を必要とするポリプロピレン系予備発泡粒子の成形加熱圧力にて型内発泡成形を行わざるを得ず、高い成形加熱圧で成形を行った場合、冷却時間についても最も長い冷却時間を必要とした。
【0005】
また特許文献2のように、成形空間の仕切部材が固定式である場合、低い成形加熱圧力で成形可能なポリプロピレン系予備発泡粒子については、過剰な加熱や冷却を行うこととなり、結果として成形体のヒケの発生や寸法収縮率が変わると言う問題を抱えていた。また、同じ成形加熱圧で加熱すると各々のポリプロピレン系予備発泡粒子の型内での発泡圧力の差が生じるため、これによって、仕切部材、特に櫛歯状の仕切部材に曲がりや変形を生じ易いという問題を抱えていた。
【0006】
即ち、実際に少なくとも2つ以上の特性の異なるポリプロピレン系予備発泡粒子を用いて実際の生産を行った場合、充填圧力や型内での発泡圧力の差によって固定仕切板や固定櫛歯に作用する力が長期間に渡って繰り返される事となり、金属材料においても劣化によって、初期の弾性限度内では元の形状に復帰出来ない状態に陥る傾向にあった。
【0007】
また、発泡倍率の異なるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を使用している為に、どうしても異なる発泡粒子から構成される区画間の接合部分の融着状態が悪くなり、型内発泡成形における離型時や成形体の輸送時に接合面が破断し易いと言う問題があった。
【特許文献1】米国特許5164257号公報
【特許文献2】特開2001−150471公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上のような状況に鑑み、本発明は、特性の異なるポリプロピレン系予備発泡粒子であっても、ほぼ同等の加熱圧力とすることで、低い成形加熱圧力での型内発泡成形が可能となる、製造方法ならびに型内発泡成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、特性の異なる2以上のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が略区画状に存在してなる型内発泡成形体の製造方法において、少なくとも一区画を構成するポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して脂肪族系石油樹脂および/または脂環族系石油樹脂1重量部以上8重量部以下を含んでなるポリプロピレン系樹脂組成物を基材樹脂として構成することによって本発明を実現するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、特性の異なる2以上のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が略区画状に存在してなる型内発泡成形体の製造方法において、少なくとも一区画を構成するポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して脂肪族系石油樹脂および/または脂環族系石油樹脂を1重量部以上8重量部以下含んでなるポリプロピレン系樹脂組成物を基材樹脂としてなることを特徴とする型内発泡成形体の製造方法に関する。
【0011】
好ましい態様としては、
(1)前記ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して脂肪族系石油樹脂および/または脂環族系石油樹脂1重量部以上8重量部以下を添加するポリプロピレン系樹脂組成物が、特性の異なる2以上のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子のうち、適正成形加熱圧力が最も高いポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の基材樹脂であること、
(2)前記特性の異なる2以上のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を型内で加熱した後の型内発泡圧力の差が0.15MPa以内であること、
(3)特性の異なる2以上のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が略区画状に存在してなる型内発泡成形体の製造方法において、特性の異なる2以上の予備発泡粒子を略区画状にするために型内発泡成形金型内の成形空間が仕切部材によって区画されており、該仕切部材が固定櫛歯であること、
(4)前記特性が、予備発泡粒子の発泡倍率、プロピレン系樹脂融点、プロピレン系樹脂のMFR、プロピレン系樹脂の曲げ弾性率からなる群から選ばれるいずれかひとつ以上であること、
を特徴とする前記記載の型内発泡成形体の製造方法に関する。
【0012】
本発明の第2は、前記記載の製造方法によって製造された型内発泡成形体に関し、好ましい態様としては、特性の異なる2以上の予備発泡粒子が略区画状に存在している境界面に溝および/または有底孔が形成されていることを特徴とする前記記載の型内発泡成形体に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の型内発泡成形体は、特性の異なる2以上のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が略区画状に存在してなる型内発泡成形体において、少なくとも一区画を構成するポリプロピレン系予備発泡粒子が、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して脂肪族系石油樹脂および/または脂環族系石油樹脂1重量部以上8重量部以下を含んでなるポリプロピレン系樹脂組成物を基材樹脂としてなるポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子とすることによって、成形加熱圧力の差を低減することが可能となり、低い成形加熱圧で成形体の内部融着及び成形体表面の融着性を向上させる事が出来る。
【0014】
特性の異なる2以上のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子のうち、適正成形加熱圧力が最も高いポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の基材樹脂を、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して脂肪族系石油樹脂および/または脂環族系石油樹脂1重量部以上8重量部以下を含んでなるポリプロピレン系樹脂で構成することにより、成形加熱圧力を低下させ、他のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子との成形圧力差を小さくすることが可能となる。したがって、特性の異なる2以上のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が略区画状に存在してなる型内発泡成形体においても、低い成形加熱圧力での型内発泡成形が可能となり、過剰な加熱や冷却を行う必要が無くなるので、成形体のヒケの発生や寸法収縮率が変わると言う問題を解消出来ると共に、使用する蒸気量の削減や水冷時間の短縮による成形サイクル時間の短縮が実現出来でき、より広い成形加熱条件幅による型内発泡成形が実現出来る。
【0015】
また、型内発泡成形時に特性の異なる2つ以上のポリプロピレン系予備発泡粒子を使用しても、過剰な加熱や冷却を行う必要がないため、仕切部材が固定式である場合、特に固定式櫛歯である場合に、各々のポリプロピレン系予備発泡粒子の発泡力差による仕切部材の曲がりや変形を生じるが生じにくくなる。
【0016】
また、特性の異なる2つ以上のポリプロピレン系予備発泡粒子を使用した場合において、区画間の接合部分の融着状態を向上する事が可能となるので、型内発泡成形における離型時の接合部分の破断や、成形体の輸送時に接合面が破断すると言う問題の解消にも効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の型内発泡成形体の製造方法は、特性の異なる2以上のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が略区画状に存在してなる型内発泡成形体の製造方法において、少なくとも一区画を構成するポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して脂肪族系石油樹脂および/または脂環族系石油樹脂を1重量部以上8重量部以下含んでなるポリプロピレン系樹脂組成物を基材樹脂としてなることを特徴とする。
【0018】
本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂としては、たとえばプロピレンホモポリマー、エチレン−プロピレンランダムコポリマー、エチレン−プロピレンブロックコポリマー、エチレン−プロピレン−1−ブテンランダムターポリマーなどがあげられ、これらは単独で用いても良く、2種以上を混合使用してもよい。これらのポリプロピレン系樹脂の中では型内発泡成形する際のエネルギーコストや成形性の点からエチレン−プロピレンランダムコポリマーが好ましい。
【0019】
本発明においては、異なる特性の2以上のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を用いて成形体となすが、前記異なる特性としては、基材樹脂の特性でも、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の特性のいずれでもよい。例えば、基材樹脂の特性としては、樹脂組成、ポリプロピレン系樹脂融点、ポリプロピレン系樹脂のMFR、ポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率、等が挙げられ、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の特性としては、発泡倍率、結晶化構造、粒子サイズ、粒子形状、粒子重量、予備発泡粒子の粒子内セル径、予備発泡粒子の色等が挙げられる。これらの特性の中でも、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の発泡倍率、プロピレン系樹脂融点、ポリプロピレン系樹脂のMFR、プロピレン系樹脂の曲げ弾性率からなる群から選ばれるいずれかひとつ以上の特性が異なっていることが好ましい。なお、これらの特性が「異なる」とは、それぞれの特性について同一条件で比較した場合に異なる値を示すことをいい、これらの特性は公知の方法で測定することができる。
【0020】
ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の発泡倍率は、3〜90倍が好ましく、更に好ましくは3〜60倍である。また、粒径は1〜10mmが好ましく、更に好ましくは2.0〜8.0mmである。ここで、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の発泡倍率は、エタノール浸水体積(ml)を重量(g)で割ったものに、ポリプロピレン系樹脂密度(g/ml)を掛けて測定する。
【0021】
本発明に用いられる脂肪族系石油樹脂および/または脂環族系石油樹脂は、石油、ナフサなどをクラッキングしたときに生じるC4〜C9の留分を重合することにより製造される。
【0022】
前記脂肪族系石油樹脂とは、C4〜C9の留分のなかでもC4またはC5留分のオレフィン、ジオレフィン、例えば主要分としてイソブチレン、ブタジエン、イソブレン、ピペリンなどを原料とし、フリーデリクラフツ触媒により重合して得られるものをいい、平均分子量が300〜10000のものである。かかる具体例としては、例えばハイレッツ(三井石油化学工業(株)製、商品名)、エスコレッツ(東燃石油化学工業(株)製、商品名)、クイントン(日本ゼネオン(株)製、商品名)、タッキロール(住友化学工業(株)製、商品名)などが挙げられる。
【0023】
また、前記脂環族系石油樹脂とは、脂環族留分、たとえばシクロペンタジエンシクロタジエンなどを重合するか、または芳香族石油樹脂を水素化して得られるものをいい、かかる具体例として、たとえばアルコン(荒川化学工業(株)製、商品名)、クイントン1500、クイントン1700(日本ゼオン(株)製、商品名)などが挙げられる。
【0024】
前記芳香族系石油樹脂とは、C9またはC10留分、たとえば主成分としてビニルトルエン、インデン、メチルインデンなどを重合原料とする樹脂であり、かかる具体例としては、たとえばペトロジン(プライムポリマー(株)製、商品名)、ネオポリマー(日本石油化学工業(株)製、商品名)などが挙げられる。脂肪族系石油系樹脂および脂環族系石油樹脂がポリオレフィンとの相溶性がよいので好適に用いられる。
【0025】
また、これらの脂肪族系石油樹脂および/または脂環族系石油樹脂の中では、環球法により測定した軟化点がポリプロピレン系樹脂の融点よりも10〜50℃低いものが好ましい。
【0026】
本発明においては、脂肪族系石油樹脂および/または脂環族系石油樹脂の添加量は、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して1重量部以上8重量部以下であり、好ましくは1.5重量部以上5重量部以下である。前記脂肪族系石油樹脂および/または脂環族系石油樹脂の添加量は1重量部未満では型内発泡成形時に成形加熱圧力を低下させる効果が小さくなり、また、8重量部を超えると成形体の圧縮強度、耐熱性および対薬品性が低下するようになると共に、それ以上の成形加熱圧力の低下効果は期待できない。
【0027】
ポリプロピレン系樹脂への脂肪族系石油樹脂および/または脂環族系石油樹脂の添加は、特性の異なる2以上のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子のそれぞれに添加してもよく、好ましくは、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して脂肪族系石油樹脂および/または脂環族系石油樹脂1重量部以上8重量部以下を添加するポリプロピレン系樹脂組成物が、特性の異なる2以上のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子のうち、適正成形加熱圧力が最も高いポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の基材樹脂であることが、型内発泡成形体全体として、少量の脂肪族系石油樹脂および/または脂環族系石油樹脂の使用で成形加熱圧力の低下が期待できるため好ましい。
【0028】
本発明において、適正成形加熱圧力とは、少なくとも成形体内部の融着率を60%以上とし、成形体の形状を保持しうるために要される成形加熱圧力のことである。ここで言う成形体内部の融着率とは、成形体を破断した破断面において、型内成形によって熱溶融着したポリプロピレン系予備発泡粒子が接合界面で割れている部分を未融着部分とし、ポリプロピレン系予備発泡粒子自体が破断している部分を融着している部分として、融着部分の比率をパーセンテージで表したものである。
【0029】
本発明の特性の異なる2以上のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が略区画状に存在してなる型内発泡成形体の製造方法としては、例えば、成形空間内を略区画状にするために型内発泡成形金型内の成形空間が仕切部材によって区画されている型内発泡成形装置に、異なる特性の2以上のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子をそれぞれの成形空間に充填、加熱成形することで得られる。このような製造方法としては、公知の方法を利用することが出来、仕切部材も固定式の板状部材、櫛歯や可動式のシャッター方式、櫛歯等が挙げられるが、中でも前記仕切部材が、固定式であることが好ましく、更に好ましくは、固定櫛歯で構成されている場合においてよりその効果を発揮することが出来る。
【0030】
固定式の仕切部材を用いると得られる型内発泡成形体は、各成形部分の境界面において溝および/または有底孔が形成される傾向にある。
【0031】
仕切部材に用いられる素材としては、隣接する区画成形空間に充填される原料ビーズの発泡力による圧力差による変形を抑えることのできる素材であれば良く、例えば、弾性変形可能な金属材料が挙げられる。 また、仕切部材は、連続あるいは非連続に構成されてもよく、例えば正面視略コの字状の境界面においては、固定仕切板を各辺に対応させて複数に分割して固定することも可能である。
【0032】
固定櫛歯を使用する場合、櫛歯の間隔は、それぞれの区画された成形空間の少なくとも一方に充填する予備発泡粒子が通り抜けできない間隔にそれぞれ設定することが好ましい。固定櫛歯の間隔は、狭すぎると、隣接する区画された成形空間内に充填される予備発泡粒子同士の密着性を十分に確保することが困難となる場合があるので、通り抜けできない予備発泡粒子の直径の30〜90%とすることが好ましく、より好ましくは50〜80%である。
【0033】
一般に、型内成形時のポリプロピレン系予備発泡粒子の発泡圧力は成形加熱圧力が高くなるのに比例して高くなるが、本発明のように少なくとも一区画を構成するポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が脂肪族系石油樹脂および/または脂環族系石油樹脂を含んでなるポリプロピレン樹脂を基材樹脂とする予備発泡粒子に用いる場合に、型内での発泡圧力の差を低減、好ましくはまったく無い状態にする事が可能となる。ここで言う型内発泡圧力とは、型内発泡成形における加熱工程で適正な加熱圧力到達した後に、大気圧力まで除圧を行なう事で、ポリプロピレン系予備発泡粒子が型内で発泡する時の圧力の事であり、金型内に樹脂面圧計を取り付ける事によって測定することができる。同一成形加熱圧力で前記2以上の異なる特性のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を加熱成形した際の前記ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の型内での発泡圧力の差が、好ましくは0.15MPa以内となる。このことにより、固定仕切板や固定櫛歯のような固定式の仕切部材を用いた場合の破損または塑性変形、特に固定櫛歯の破損または塑性変形を防止できる
【実施例】
【0034】
次に本発明を実施例及び比較例に基づき説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
<予備発泡粒子の製造>
(製造例1)予備発泡粒子Aの製造
プライムポリマー製ポリプロピレン、樹脂融点148℃、MFR9.0g/10min、曲げ弾性率1350MPaを100重量部に対して荒川化学製アルコンP−140を5重量部添加したものを押し出し機によって混合、ペレット化したものを密閉容器内で揮発性発泡剤及び水などの分散媒に分散させ、前記ペレットが軟化する温度以上に加熱して発泡剤を含有させたのち、密閉容器の一端を開放する事によって、容器内の内圧よりも低圧の雰囲気中に放出させる事によって5倍に予備発泡させた。予備発泡粒子Aの適正加熱圧力は0.30MPaであり、適正加熱時間は35秒で発泡圧は0.30MPaであり、適正水冷時間は160秒である。
【0036】
(製造例2)予備発泡粒子Bの製造
プライムポリマー製ポリプロピレン、樹脂融点145℃、MFR7.0g/10min、曲げ弾性率700MPaを100重量部に対して荒川化学製アルコンP−140を5重量部添加したものを押し出し機によって混合、ペレット化したものを密閉容器内で揮発性発泡剤及び水などの分散媒に分散させ、前記ペレットが軟化する温度以上に加熱して発泡剤を含有させたのち、密閉容器の一端を開放する事によって、容器内の内圧よりも低圧の雰囲気中に放出させる事によって30倍に予備発泡させた。予備発泡粒子Bの適正加熱圧力は0.26MPaであり、適正加熱時間は25秒で発泡圧は0.26MPaであり、適正水冷時間は80秒である。
【0037】
(製造例3)予備発泡粒子Cの製造
プライムポリマー製ポリプロピレン、樹脂融点145℃、MFR7.0g/10min、曲げ弾性率700MPaを押し出し機によって混合、ペレット化したものを、密閉容器内で揮発性発泡剤及び水などの分散媒に分散させ、前記ペレットが軟化する温度以上に加熱して発泡剤を含有させたのち、密閉容器の一端を開放する事によって、容器内の内圧よりも低圧の雰囲気中に放出させる事によって20倍に予備発泡させた。予備発泡粒子Cの適正加熱圧力は0.30MPaであり、適正加熱時間は25秒で発泡圧は0.30MPaであり、適正水冷時間は120秒である。
【0038】
(製造例4)予備発泡粒子Dの製造
プライムポリマー製ポリプロピレン、樹脂融点140℃、MFR7.0g/10min、曲げ弾性率900MPaを押し出し機によって混合、ペレット化したものを、密閉容器内で揮発性発泡剤及び水などの分散媒に分散させ、前記ペレットが軟化する温度以上に加熱して発泡剤を含有させたのち、密閉容器の一端を開放する事によって、容器内の内圧よりも低圧の雰囲気中に放出させる事によって45倍に予備発泡させた。予備発泡粒子Dの適正加熱圧力は0.24MPaであり、適正加熱時間は25秒で発泡圧は0.24MPaであり、適正水冷時間は80秒である。
【0039】
(製造例5)予備発泡粒子Eの製造
プライムポリマー製ポリプロピレン、樹脂融点148℃、MFR9.0g/10min、曲げ弾性率1350MPaを押し出し機によって混合、ペレット化したものを密閉容器内で揮発性発泡剤及び水などの分散媒に分散させ、前記ペレットが軟化する温度以上に加熱して発泡剤を含有させたのち、密閉容器の一端を開放する事によって、容器内の内圧よりも低圧の雰囲気中に放出させる事によって5倍に予備発泡させた。予備発泡粒子Eの適正加熱圧力は0.34MPaであり、この場合の適正加熱時間は45秒で発泡圧は0.40MPaであり、適正水冷時間は200秒である。
【0040】
(製造例6)予備発泡粒子Fの製造
プライムポリマー製ポリプロピレン、樹脂融点145℃、MFR7.0g/10min、曲げ弾性率700MPaを押し出し機によって混合、ペレット化したものを密閉容器内で揮発性発泡剤及び水などの分散媒に分散させ、前記ペレットが軟化する温度以上に加熱して発泡剤を含有させたのち、密閉容器の一端を開放する事によって、容器内の内圧よりも低圧の雰囲気中に放出させる事によって30倍に予備発泡させた。予備発泡粒子Fの適正加熱圧力は0.30MPaであり、この場合の適正加熱時間は30秒で発泡圧は0.30MPaであり、適正水冷時間は120秒である。
【0041】
以上の製造例にて得られた予備発泡粒子を用いて、成形実験を行った。成形は、平均厚み100mmの金型を、高さ50mmの固定仕切部材の先端に、直径1.5mmかつ長さ50mmのばね用炭素鋼を各々が2.5mmの間隔となるように櫛歯状に配設した仕切部材によって、2つの成形空間に区画された金型を用いて、隣接する各区画成形空間に、発泡倍率が異なる原料ビーズを充填する充填工程、加熱水蒸気を金型内に導入する加熱工程、冷却工程を経て型内発泡成形体を得た。
【0042】
【表1】

(実施例1)
予備発泡粒子Aと予備発泡粒子Cを用いて成形を行った。ここで適用した成形条件としては、予備発泡粒子Aの良好な成形体の内部融着を得る必要がある事と、予備発泡粒子Aと予備発泡粒子Cの接合面の良好な融着状態を確保するために、予備発泡粒子Aの成形条件を設定する事となり、成形サイクル時間としては215秒となる。この時の、1ショット当たりの蒸気使用量は18kgであり、予備発泡粒子Aと予備発泡粒子Cにおける発泡圧差は0となる。
【0043】
ここで得られた成形体の寸法については、成形100ショットの確認では全て規格内品が得られた。また、接合面の融着状態についても、接合面の破断したものは0個であり、成形体の不良率は0%となる。
【0044】
(実施例2)
予備発泡粒子Bと予備発泡粒子Dを用いて成形を行った。ここで適用される成形条件としては、予備発泡粒子Bの良好な成形体の内部融着を得る必要がある事と、予備発泡粒子Bと予備発泡粒子Dの接合面の良好な融着状態を確保するために、予備発泡粒子Bの成形条件を設定する事となり、成形サイクル時間としては145秒となる。この時の、1ショット当たりの蒸気使用量は15kgであり、第1原料と2原料における発泡圧差は0.02MPaとなる。
【0045】
ここで得られた成形体の寸法については、成形100ショットの確認では全て規格内品が得られた。また、接合面の融着状態についても、接合面の破断したものは0個であり、成形体の不良率は0%となる。
【0046】
(比較例1)
予備発泡粒子Cと予備発泡粒子Eを用いて成形を行った。ここで適用される成形条件としては、予備発泡粒子Eの良好な成形体の内部融着を得る必要がある事と、予備発泡粒子Cと予備発泡粒子Eの接合面の良好な融着状態を確保するために、予備発泡粒子Eの成形条件を設定する事となり、トータル成形時間としては265秒となる。
【0047】
実施例1との比較では第1原料としてプライムポリマー製ポリプロピレン、樹脂融点145℃、MFR7.0g/10min、曲げ弾性率700MPaを100重量部に対して荒川化学製アルコンP−140を5重量部添加させた5倍ビーズを用いる事で、19%の成形サイクル時間の短縮効果が得られる結果となった。
【0048】
この時の、1ショット当たりの蒸気使用量は23kgであり、実施例との比較では22%の蒸気使用量の削減となった。
【0049】
また、予備発泡粒子Cにおける発泡圧は0.20MPaであり、予備発泡粒子Eの発泡圧0.40MPaと0.20MPaの圧力差を生じる事となるので、固定櫛歯の破損または塑性変形といった不具合が発生し易い状況にある。
【0050】
ここで得られた成形体の寸法性については、成形100ショットでの確認では47個で成形体のヒケや寸法規格外品が発生しており、接合面の破断としては10個の不良が発生した。成形体の不良率としては、47%となる。
【0051】
(比較例2)
予備発泡粒子Dと予備発泡粒子Fを用いて成形を行った。ここで適用される成形条件としては、予備発泡粒子Fの良好な成形体の内部融着を得る必要がある事と、予備発泡粒子Dと予備発泡粒子Fの接合面の良好な融着状態を確保するために、予備発泡粒子Fの成形条件を設定する事となり、トータル成形時間としては170秒となる。
【0052】
実施例2との比較では第1原料としてプライムポリマー製ポリプロピレン、樹脂融点145℃、MFR7.0g/10min、曲げ弾性率700MPaを100重量部に対して荒川化学製アルコンP−140を5重量部添加させた5倍ビーズを用いる事で、15%の成形サイクル時間の短縮効果が得られる結果となった。
【0053】
この時の、1ショット当たりの蒸気使用量は17kgであり、実施例との比較では11%の蒸気使用量の削減となった。
【0054】
また、予備発泡粒子Dにおける発泡圧は0.24MPaであり、予備発泡粒子Fの発泡圧0.30MPaと0.60MPaの圧力差を生じる事となるので、固定櫛歯の破損または塑性変形といった不具合が発生し易い状況にある。
【0055】
ここで得られた成形体の寸法性については、成形100ショットでの確認では11個で成形体のヒケや寸法規格外品が発生しており、接合面の破断としては3個の不良が発生した。成形体の不良率としては、11%となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特性の異なる2以上のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が略区画状に存在してなる型内発泡成形体の製造方法において、少なくとも一区画を構成するポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が、ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して脂肪族系石油樹脂および/または脂環族系石油樹脂を1重量部以上8重量部以下含んでなるポリプロピレン系樹脂組成物を基材樹脂としてなることを特徴とする型内発泡成形体の製造方法。
【請求項2】
前記ポリプロピレン系樹脂100重量部に対して脂肪族系石油樹脂および/または脂環族系石油樹脂1重量部以上8重量部以下を添加するポリプロピレン系樹脂組成物が、特性の異なる2以上のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子のうち、適正成形加熱圧力が最も高いポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の基材樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の型内発泡成形体の製造方法。
【請求項3】
前記特性の異なる2以上のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子を型内で加熱した後の型内発泡圧力の差が0.15MPa以内であることを特徴とする請求項1または2に一項記載の型内発泡成形体の製造方法。
【請求項4】
特性の異なる2以上のポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子が略区画状に存在してなる型内発泡成形体の製造方法において、特性の異なる2以上の予備発泡粒子を略区画状にするために型内発泡成形金型内の成形空間が仕切部材によって区画されており、該仕切部材が固定櫛歯であることを特徴とする請求項1〜3何れか一項に記載の型内発泡成形体の製造方法。
【請求項5】
前記特性が、ポリプロピレン系樹脂予備発泡粒子の発泡倍率、プロピレン系樹脂融点、プロピレン系樹脂のMFR、プロピレン系樹脂の曲げ弾性率からなる群から選ばれるいずれかひとつ以上である事を特徴とする請求項1〜4何れか一項に記載の型内発泡成形体の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5何れか一項に記載の製造方法によって製造された型内発泡成形体。
【請求項7】
特性の異なる2以上の予備発泡粒子が略区画状に存在している境界面に溝および/または有底孔が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の型内発泡成形体。

【公開番号】特開2007−320275(P2007−320275A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−155656(P2006−155656)
【出願日】平成18年6月5日(2006.6.5)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】