説明

ポリプロピレン系樹脂組成物

本発明は、射出成形に好適で、機械的特性に優れ、フローマークやウェルドマークを生じにくく、しかも、低光沢性や耐傷つき性に優れた成形品を製造しうるポリプロピレン系樹脂組成物を提供することを課題とする。 本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、(A)ポリプロピレン、(B−1)MFRが0.4g/10分未満である、エチレン・α−オレフィン共重合体またはエチレン・α−オレフィン・ジエン共重合体、(B−2)MFRが0.5g/10分以上、20g/10分未満であるエチレン・α−オレフィン共重合体、および、(C)無機充填剤からなる(F)樹脂組成物に対して、特定量の(D)変性ポリプロピレンおよび(E)表面改質剤を配合してなることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械的特性に優れ、フローマークやウェルドマークが目立ちにくく、低光沢性や耐傷つき性にも優れた成形品を製造しうるポリプロピレン系樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン樹脂組成物を射出成形することにより得られる成形体は、その優れた機械物性、成形性、経済性により、自動車部品や家電部品など種々の分野で利用されている。
【0003】
自動車部品分野では、ポリプロピレンを単体で用いるほか、ポリプロピレンにエチレン-プロピレン共重合体(EPR)、エチレン-ブテン共重合体(EBR)、エチレン-オクテン共
重合体(EOR)、スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)、ポリスチレン-エチレン/ブテン-ポリスチレントリブロック共重合体(SEBS)等のゴム成分を添加して衝撃性を改善した材料(特許文献1,2参照)、タルク、マイカ、ガラス繊維等の無機充填剤を添加し剛性を改善した材料、またゴム成分、無機充填剤を共に添加し優れた機械物性を付与したブレンドポリマーが使用されている。また近年、フローマーク(トラシマ)、ウェルドマーク等の外観改善のための研究が進み、自動車部品におけるポリプロピレンの使用割合を伸ばしてきた。
【0004】
一方、ポリプロピレン成形品は、一般に耐傷付性が低く、光沢外観を有することから、意匠性改善のために塗装、表皮貼合といった後工程を施して用いられることが多く、その優れた経済性効果が充分に享受されていないという問題があった。そして、トラシマ、ウェルド等の外観を改善する近年の技術向上により、自動車内装部品での後工程削減が進んではいるが、耐傷付性が低く、光沢が高いことから、インパネ、コンソールボックス等の意匠性が特に要求される部品においては後工程の削減には至っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−307015号公報
【特許文献2】特開2006−316103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、射出成形に好適で、機械的特性に優れ、フローマークやウェルドマークを生じにくく、しかも、低光沢性や耐傷つき性に優れた成形品を製造しうるポリプロピレン系樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、
(A)メルトフローレート(ASTM D1238、230℃、2.16kg荷重下)が20〜300g/10分であるポリプロピレン:50〜75重量%、
(B−1)メルトフローレート(ASTM D1238、230℃、2.16kg荷重下)が0.4g/10分未満である、エチレン・α−オレフィン共重合体またはエチレン・α-オレフィン・ジエン共重合体:5〜15重量%、
(B−2)メルトフローレート(ASTM D1238、230℃、2.16kg荷重下)が0.5g/10分以上、20g/10分未満であるエチレン・α−オレフィン共重合体:5〜15重量%、および、
(C)無機充填剤:15〜30重量%(ただし、成分(A)、(B−1)、(B−2)および(C)の合計量は100重量%)からなる(F)樹脂組成物100重量部に対して、
(D)変性ポリプロピレン0.1〜5.0重量部、および(E)表面改質剤0.1〜1.0重量部を配合してなることを特徴としている。
【0008】
このような本発明のポリプロピレン系樹脂組成物では、(A)ポリプロピレンが、プロピレン・エチレンブロック共重合体であることが好ましく、なかでも、23℃におけるn−デカン可溶分量が5〜15重量%であるプロピレン・エチレンブロック共重合体が好ましい。
【0009】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物では、(B−1)成分の23℃におけるn−デカン可溶分の極限粘度[η]が2.0〜2.4dl/gであり、(B−2)成分の23℃におけるn−デカン可溶分の極限粘度[η]が1.0〜2.0dl/gであることが好ましく、(B−1)成分と(B−2)成分の合計量が樹脂組成物(F)の19〜25重量%であることが好ましく、また(B−1)成分と(B−2)成分の合計量に対する(B−1)成分の割合が、40〜60重量%であることが好ましい。
【0010】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物では、(C)無機充填剤が、平均粒径が1〜15μmのタルクであることが好ましい。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物では、(D)変性ポリプロピレンが、無水脂肪酸変性ポリプロピレンであることが好ましい。
【0011】
また本発明のポリプロピレン系樹脂組成物では、(E)表面改質剤が、脂肪酸アミドであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、射出成形に好適で、機械的特性に優れ、フローマークやウェルドマークを生じにくく、しかも、低光沢性や耐傷つき性に優れた成形品を製造でき、高い意匠性の要求される自動車内装部品などの用途にも好適に用いられるポリプロピレン系樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について具体的に説明する。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、下記成分(A)、(B−1)、(B−2)および(C)からなる(F)樹脂組成物に、(D)変性ポリプロピレンおよび(E)表面改質剤を配合してなる。
【0014】
(A)ポリプロピレン
本発明に係る(A)ポリプロピレンは、メルトフローレートが20〜300g/10分、好ましくは50〜250g/10分である。
【0015】
なお本発明において、メルトフローレート(MFR)は、ASTM D1238に準拠
し、2.16kg荷重下、230℃で測定した値である。
本発明において、(A)ポリプロピレンは、プロピレンの単独重合体であってもよく、プロピレンと他の共重合性単量体との共重合体であってもよいが、プロピレン・エチレンブロック共重合体であることが好ましく、その際の23℃n-デカン可溶分量は好ましくは5〜15重量%、より好ましくは7〜13重量%であることが望ましい。
【0016】
(B−1)エチレン・α−オレフィン共重合体またはエチレン・α−オレフィン・ジエン共重合体
本発明に係る(B−1)成分である、エチレン・α−オレフィン共重合体またはエチレン・α−オレフィン・ジエン共重合体は、メルトフローレートが0.4g/10分未満、好ましくは0.05〜0.35g/10分である。また、(B−1)成分のGPCにより測定した重量平均分子量(Mw)は、好ましくは2.0×105〜5.0×105、より好ましくは2.3×105〜3.0×105である。(B−1)成分の重量平均分子量が2.0×105よりも低いと、得られる成形体の表面光沢が高くなる場合があり、また、重量平均分子量が5.0×105を超えると、成形体の耐衝撃性が低下する場合がある。
【0017】
(B−1)成分として用いられる、エチレン・α−オレフィン共重合体またはエチレン・α−オレフィン・ジエン共重合体を構成するα−オレフィンとしては、炭素数3〜10のα−オレフィンが挙げられ、具体的には、たとえば、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが好ましい態様として挙げられる。また、(B−1)成分として用いられるエチレン・α−オレフィン・ジエン共重合体を構成するジエンとしては、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−プロピリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン、5−メチレン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、ノルボルナジエンなどの環状非共役ジエン;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4ヘキサジエン、5−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,5−ヘプタジエン、6−メチル−1,7−オクタジエン、7−メチル−1,6オクタジエンなどの鎖状の共役ジエンなどが挙げられる。これらの中では、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネンが好ましく用いられる。
【0018】
また、(B−1)成分の23℃におけるn−デカン可溶分の極限粘度〔η〕は、2.0〜2.4dl/gであることが好ましい。
(B−2)エチレン・α−オレフィン共重合体
本発明に係る(B−2)成分である、エチレン・α−オレフィン共重合体は、メルトフローレートが0.5g/10分以上、20g/10分未満、好ましくは1.5〜10g/10分である。
【0019】
(B−2)成分として用いられるエチレン・α−オレフィン共重合体としては、エチレンと、炭素数3〜10のα−オレフィンとの共重合体が挙げられ、α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンなどが好ましい。
【0020】
また、(B−2)成分のGPCにより測定した重量平均分子量(Mw)は、0.5×105〜2.0×105、好ましくは1.0〜1.8×105である。重量平均分子量がこの範囲であると、得られる組成物の機械物性バランスがよいため好ましい。
【0021】
さらに、(B−2)成分の23℃におけるn−デカン可溶分の極限粘度〔η〕は、1.0〜2.0dl/gであることが好ましい。
(C)無機充填剤
本発明に係る(C)無機充填剤としては、特に限定されることなく公知の無機充填剤を用いることができるが、たとえば、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ガラス繊維、石膏、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化鉄、さらには亜鉛、銅、鉄、アルミニウム等の金属粉末、あるいは金属繊維等が挙げられ、これらは単独でまたは混合して用いることができる。中でもタルク、マイカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維等が好ましく、特にタルクが好ましい。タルクとしては、平均粒径が1〜15μm、好ましくは1〜6μmのものが好適に使用できる。
【0022】
(F)樹脂組成物
本発明で用いる(F)樹脂組成物は、上記(A)成分、(B−1)成分、(B−2)成分および(C)成分からなる。各成分の配合割合は、成分(A)、(B−1)、(B−2)および(C)の合計量を100重量%とした場合に、(A):50〜75重量%、(B−1):5〜15重量%、(B−2):5〜15重量%、(C):15〜30重量%である。(F)樹脂組成物中における(A)成分は、好ましくは50〜69重量%である。
【0023】
ここで、(B−1)成分と(B−2)成分との合計である(B)成分は、(F)樹脂組成物100重量%中において、10〜30重量%、好ましくは16〜30重量%、より好ましくは19〜25重量%の割合で含まれる。
【0024】
また、(F)樹脂組成物中における、(B−1)成分と(B−2)成分の合計量(100重量%)に対する(B−1)成分の割合が、通常25〜75重量%、好ましくは40〜60重量%、より好ましくは40〜55重量%の範囲であるのが望ましい。
【0025】
(D)変性ポリプロピレン
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、上述の(F)樹脂組成物100重量部に対して、(D)変性ポリプロピレンを0.1〜5.0重量部、好ましくは0.1〜2.0重量部、さらに好ましくは0.1〜1.5重量部配合することが望ましい。本発明のポリプロピレン系樹脂組成物中において、(D)変性ポリプロピレンは、耐傷付性改良剤として作用する。
【0026】
(D)変性ポリプロピレンとしては、無水脂肪酸変性ポリプロピレンが好ましく、特に無水マレイン酸変性ポリプロピレンが好ましい。(D)変性ポリプロピレンとして無水マレイン酸変性ポリプロピレンを使用する場合、ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部に対してマレイン酸変性基含有量(M値)が、0.5〜5.0、さらには0.8〜2.5であることが好ましい。この範囲より低い場合は耐傷付性改良効果が認められず、高くなると機械物性における衝撃強度が低下する場合がある。
【0027】
上記無水マレイン酸変性ポリプロピレンとしては、具体的に、三井化学アドマー、三洋化成ユーメックス、デュポン社製MZシリーズ、Exxon社製Exxelor等の市販品を使用することができる。
【0028】
(E)表面改質剤
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、上述の(F)樹脂組成物100重量部に対して、(E)表面改質剤を0.1〜1.5重量部、好ましくは0.2〜1.3重量部、さらに好ましくは0.3〜1.0重量部配合することが好ましい。
【0029】
(E)表面改質剤としては、帯電防止剤として知られているものが好適に用いられ、その代表的なものとしては、脂肪酸アミド、モノグリセリド等が挙げられる。該脂肪酸アミドとしては、具体的に、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、パルミチン酸アミド、ミリスチン酸アミド、ラウリン酸アミド、カプリル酸アミド、カプロン酸アミド、n−オレイルパルミトアミド、n−オレイルエルカアミド、およびそれらの2量体などが挙げられ、中でも、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、エルカ酸アミドおよびエルカ酸アミドの2量体が好ましい。これらは単独もしくは混合して使用することができる。
【0030】
その他の添加剤
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物には、必要に応じて、耐熱安定剤、帯電防止剤、耐候安定剤、耐光安定剤、老化防止剤、酸化防止剤、脂肪酸金属塩、軟化剤、分散剤、充填剤、着色剤、滑剤、顔料などの他の添加剤を、本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。配合する添加剤などの混合順序は任意であり、同時に混合してもよいし、一部成分を混合した後に他の成分を混合するというような多段階の混合方法を採用することもできる。
【0031】
ポリプロピレン系樹脂組成物
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、上述した成分(A)、(B−1)、(B−2)および(C)からなる樹脂組成物(F)と、成分(D)および(E)と、必要に応じてその他の添加剤とを配合することにより製造することができる。これらの各成分は、任意の順序で配合することができる。
【0032】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、前記成分(A)、(B−1)、(B−2)、(C)、(D)および(E)の各成分と、必要に応じて配合するその他の添加剤とを、バンバリーミキサー、単軸押出機、2軸押出機、高速2軸押出機などの混合装置により混合または溶融混練することにより得ることができる。
【0033】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、特に射出成形に好適に用いられる。本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を射出成形して得られる成形品は、優れた機械物性を有するとともに、フローマークやウェルドマークが目立ち難い等の優れた外観を有し、更には低光沢性、耐傷付性にも優れている。
【0034】
このような本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、自動車内外装部品、家電部品などの種々の分野に好適に用いることができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
本発明において、各物性の測定および評価は、以下の方法により行った。
【0036】
〔メルトフローレート(g/10分)〕
ASTM D1238に準拠し、試験荷重2.16kg、試験温度230℃の条件で測定した。以下、単に「MFR」ともいう。
【0037】
〔n-デカン可溶分〕
5g程度のポリマー試料(このときの正確な重量をaとする)を、n-デカン200mlと、試料量に対し約1%のBHT(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン)とともに、三角フラスコに入れる。145℃に加熱し、1時間撹拌溶解する。試料が完全に溶解したことを確認し、1時間放冷する。その後、マグネチックスターラーで1時間撹拌しながらポリマーを析出させる。吸引瓶とロート(325メッシュスクリーン)にて、析出したポリマーを吸引ろ過する。分離したろ液にアセトンを加え約1リットルとし、1時間撹拌してn-デカン可溶分を析出させる。もしも内容液が透明にならない場合は更にアセトンを加え撹拌を続ける。吸引瓶とロート(325メッシュスクリーン)にて、析出物をろ過する。回収した析出物を105℃、20mmHg以下にて1時間減圧乾燥する。乾燥終了後のn-デカン可溶分の回収量をbとする。n-デカン可溶分は次式によって算出する。
【0038】
n-デカン可溶分(%)=(b/a)×100
a:ポリマー試料の重量(g)、b:n-デカン可溶分の回収量(g)
〔極限粘度[η]〕
サンプル約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度として求めた。
【0039】
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
〔曲げ弾性率(MPa)〕
ASTM D790に準拠し、スパン間100mm、曲げ速度2mm/minの条件で測定した。
【0040】
〔常温Izod衝撃強度(J/m)〕
ASTM D256に準拠し、ノッチ付、ハンマー容量40kg・cmの条件で測定した。
【0041】
〔鏡面グロス〕
成形温度210℃、金型温度40℃で成形した長さ130mm、幅120mm、厚み2mmtで、成形品表面が鏡面仕上げした成形角板を用い、グロスメーター(日本電色工業(株)製NDH−300)により光源照射角度60°で鏡面グロスを測定した。
【0042】
〔耐傷付性1〕
成形温度210℃、金型温度40℃で成形した長さ130mm、幅120mm、厚み2mmtで角板の表面をGrainCのシボ加工した成形品を用いてFord 5−Finger Test(単位:N)試験実施後、目視にて白化が認められない最大荷重(N)を評価した。
【0043】
〔耐傷付性2〕
成形温度210℃、金型温度40℃で成形した長さ130mm、幅120mm、厚み2mmtで角板の表面をGrainCのシボ加工した成形品を用いてその成形品表面をタングステン針/35g荷重により引掻き、傷部と傷なし部の色差(△E)を測定した。
【0044】
以下の実施例および比較例において、使用した各成分は、次の通りである。
(A)ポリプロピレン
(BPP−1)プロピレンブロック共重合体
MFR=53g/10分
23℃ n−デカン可溶分重量=12重量%
23℃ n−デカン可溶分エチレン量=37mol%
23℃ n−デカン可溶分[η]=7dl/g
(BPP−2)プロピレンブロック共重合体
MFR=100g/10分
23℃ n−デカン可溶分重量=7重量%
23℃ n−デカン可溶分エチレン量=37mol%
23℃ n−デカン可溶分[η]=7dl/g
(BPP−3)プロピレンブロック共重合体
MFR=35g/10分
23℃ n−デカン可溶分重量=7重量%
23℃ n−デカン可溶分エチレン量=37mol%
23℃ n−デカン可溶分[η]=7dl/g
(BPP−4)プロピレンブロック共重合体
MFR=15g/10分
23℃ n−デカン可溶分重量=7重量%
23℃ n−デカン可溶分エチレン量=37mol%
23℃ n−デカン可溶分[η]=7dl/g
(BPP−5)プロピレンブロック共重合体
MFR=30g/10分
23℃ n−デカン可溶分重量=24重量%
23℃ n−デカン可溶分エチレン量=40mol%
23℃ n−デカン可溶分[η]=2.5dl/g
(HPP−1)プロピレン単独重合体
MFR=3g/10分
(HPP−2)プロピレン単独重合体
MFR=100g/10分
(B)エチレン−α−オレフィン共重合体
<B−1>
(R−1)エチレン−プロピレン−ジエンランダム共重合体(JSR社製、製品名EP57P)
MFR=0.2g/10分
[η]=2.4dl/g
(R−7)エチレン−プロピレン−ジエンランダム共重合体(KUMHO社製、製品名KEP570)
MFR=0.2g/10分
[η]=2.4dl/g
(R−8)エチレン−プロピレン−ジエンランダム共重合体(Dow Chemical社製、製品名IP4760P)
MFR=0.2g/10分
[η]=2.4dl/g
<B−2>
(R−2)エチレン−ブテンランダム共重合体(三井化学社製、製品名A4050)
MFR=7g/10分
[η]=1.4dl/g
(R−3)エチレン−オクテンランダム共重合体(デュポンダウエラストマー社製、製品名EG8100)
MFR=2g/10分
[η]=1.8dl/g
(R−4)エチレン−オクテンランダム共重合体(デュポンダウエラストマー社製、製品名EG8150)
MFR=1g/10分
[η]=2.0dl/g
(R−5)エチレン−ブテンランダム共重合体(三井化学社製、製品名A0550)
MFR=0.9g/10分
[η]=2.2dl/g
(R−6)エチレン−オクテンランダム共重合体(デュポンダウエラストマー社製、製品名EG8200)
MFR=10.6g/10分
[η]=1.3dl/g
(C)無機充填剤
タルク(松村産業社製、製品名5000PJ)
平均粒径4μm
(D)変性ポリプロピレン
(MPP−1)無水マレイン酸変性ポリプロピレン(三洋化成社製、製品名ユーメックス1010):M値=4.5
(MPP−2)無水マレイン酸変性ポリプロピレン(Dupont Canada社製、製品名MZ203D):M値=1.6
(MPP−3)無水マレイン酸変性ポリプロピレン(Exxon社製、製品名Exxelor1020):M値=3
(E)表面改質剤
エルカ酸アミド(日本精化社製、製品名ニュートロンS)
その他添加剤
石油樹脂+EVA混合物(STRUTOL社製、製品名TR060)
[実施例1〜9および比較例1〜9]
ポリプロピレン系樹脂組成物の組成として、表1〜4に配合割合(重量部)を示す各成分と、さらに
酸化防止剤としてIRGANOX1010((株)チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製):0.1重量部、
同じく酸化防止剤としてIRGAFOS168((株)チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製):0.1重量部、
耐光安定剤としてLA−52((株)ADEKA製):0.2重量部、
滑剤としてステアリン酸カルシウム((株)日本油脂製):0.1重量部、および
顔料としてMB PPCM 802Y−307((株)東京インキ製):3重量部
とを配合して、ヘンシェルミキサーでドライブレンドし、二軸押出機((株)日本製鋼所製 TEX30α)により、バレル温度200℃、スクリュー回転600rpm、押出し量50kg/hの条件で押出し、樹脂組成物を得た。次いで、射出成形機にて成形温度210℃、金型温度40℃にて曲げ弾性率・IZOD衝撃強度測定用テストピースを成形し、また、成形温度220℃、金型温度40℃にて角板を成形した。得られたテストピースを用いて樹脂物性を、角板を用いて成形体の外観特性を評価した。その結果を表1〜3に示す。なお、表中における耐傷付性総合評価は、耐傷付性1と耐傷付性2との結果を勘案した評価である。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
実施例1および2と比較例1〜3との対比(表1参照)により、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物から得られた成形体では、(D)変性ポリプロピレンと、(E)表面改質剤としての脂肪酸アミドとを適切な量で併用することによって成形体の耐傷付性が向上していることがわかった。(B−1)成分を適正量配合しないと鏡面グロス値が低く保持できなかった。
【0049】
また、実施例1および3〜7と比較例4〜6との対比(表2参照)により、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物から得られた成形体では、(B−1)成分と(B−2)成分とを適切な量・比率で配合することによって成形体の常温Izod衝撃強度および鏡面グロスが最適化していることがわかった。
【0050】
さらに、実施例1、8および9と比較例7〜9との対比(表3参照)により、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物から得られた成形体では、(D)変性ポリプロピレンと(E)表面改質剤としての脂肪酸アミドとを適切な量で併用することによって成形体の耐傷付性が向上していることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、インパネ、コンソールボックスなどの自動車内外装部品、家電部品等、種々の分野の成形品材料として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)メルトフローレート(ASTM D1238、230℃、2.16kg荷重下)が20〜300g/10分であるポリプロピレン:50〜75重量%、
(B−1)メルトフローレート(ASTM D1238、230℃、2.16kg荷重下)が0.4g/10分未満である、エチレン・α−オレフィン共重合体またはエチレン・α-オレフィン・ジエン共重合体:5〜15重量%、
(B−2)メルトフローレート(ASTM D1238、230℃、2.16kg荷重下)が0.5g/10分以上、20g/10分未満であるエチレン・α−オレフィン共重合体:5〜15重量%、および、
(C)無機充填剤:15〜30重量%(ただし、成分(A)、(B−1)、(B−2)および(C)の合計量は100重量%)からなる(F)樹脂組成物100重量部に対して、(D)変性ポリプロピレン0.1〜5.0重量部、および(E)表面改質剤0.1〜1.0重量部を配合してなることを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項2】
(A)ポリプロピレンが、プロピレン・エチレンブロック共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項3】
プロピレン・エチレンブロック共重合体の23℃におけるn−デカン可溶分量が5〜15重量%であることを特徴とする請求項2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項4】
(B−1)成分の23℃におけるn−デカン可溶分の極限粘度[η]が2.0〜2.4dl/gであり、(B−2)成分の23℃におけるn−デカン可溶分の極限粘度[η]が1.0〜2.0dl/gであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項5】
(B−1)成分と(B−2)成分の合計量が樹脂組成物(F)の19〜25重量%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項6】
(B−1)成分と(B−2)成分の合計量に対する(B−1)成分の割合が、40〜60重量%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項7】
(C)無機充填剤が、平均粒径が1〜15μmのタルクであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項8】
(D)変性ポリプロピレンが、無水脂肪酸変性ポリプロピレンであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
【請求項9】
(E)表面改質剤が、脂肪酸アミドであることを特徴とする請求項1〜8のいずれかにに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。

【公表番号】特表2010−537039(P2010−537039A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−523205(P2010−523205)
【出願日】平成20年9月24日(2008.9.24)
【国際出願番号】PCT/US2008/077453
【国際公開番号】WO2009/042643
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(505130112)株式会社プライムポリマー (180)
【Fターム(参考)】