ポリペプチド精製
本発明は、イオン交換クロマトグラフィーを使用する、複数の異なるγカルボキシル化形態のポリペプチドの精製に関する。特に、本発明は、異なる含有量のγ−カルボキシグルタミン酸を有する複数の種のポリペプチドの混合物を含むサンプルから、所望の含有量のγ−カルボキシグルタミン酸を有するポリペプチドを精製するための方法であって、(a)陰イオン交換クロマトグラフィー材料に前記サンプルをロードする工程、(b)酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、及び酢酸ナトリウムから選択される少なくとも1つの塩を含むpH9.0未満のpHの溶液を使用して前記ポリペプチドを溶出する工程、及び(c)前記溶出により得られた画分を選択する工程であって、前記画分のポリペプチドが所望の含有量のγ−カルボキシグルタミン酸を有する、工程を含む、方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリペプチドの精製に関する。特に、本発明は、イオン交換クロマトグラフィーを使用することによって、複数の異なるγカルボキシル化形態のポリペプチドを精製することができる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
γ−カルボキシグルタミン酸(Gla)は、カルシウムに結合するユニークなアミノ酸である。それは、修飾された形態のグルタミン酸(Glu)であり、グルタミン酸残基の翻訳後修飾によってインビボで生成され得る。この態様におけるグルタミン酸のカルボキシル化によって、カルシウム結合が可能になり、凝血因子及び抗凝血因子などのタンパク質のリン脂質への結合を可能にする。γ−カルボキシル化(ガンマカルボキシル化)として知られる、酵素が媒介する反応は、補因子としてビタミンKを必要とする。
【0003】
いくつかの成熟タンパク質は、この態様でγ−カルボキシグルタミン酸に変換しているアミノ酸を豊富に含むドメインを含む。これはGLAドメインとして知られている。このGLAドメインは、タンパク質によるカルシウムイオンの高親和性の結合に関与する場合が多い。そのようなGLAドメインは、各種の異なるタンパク質で認められ得る。例えば、血液凝固因子VII、IX、及びX、並びにプロトロンビンは全て、多数のGlaアミノ酸残基を含むGLAドメインを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、γカルボキシル化の量又は含まれるγカルボキシグルタミン酸残基の数において異なる、異なる複数の種のポリペプチドを分離又は精製することができることを見出した。本発明は、特に、異なる含有量のγ−カルボキシグルタミン酸を有する複数の種のポリペプチドのクロマトグラフィーによる分離に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かくして、本発明は、異なる含有量のγカルボキシグルタミン酸を有する複数の種のポリペプチドの混合物を含むサンプルから、所望の含有量のγ−カルボキシグルタミン酸を有するポリペプチドを精製するための方法であって、
(a)陰イオン交換クロマトグラフィー材料に前記サンプルをロードする工程;
(b)酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、及び酢酸ナトリウムから選択される少なくとも1つの塩を含むpH9.0未満のpHの溶液を使用して前記ポリペプチドを溶出する工程;
(c)前記溶出によって得られた画分を選択する工程であって、前記画分のポリペプチドが所望の含有量のγ−カルボキシグルタミン酸を有する、工程
を含む、方法を提供する。
【0006】
好ましい方法は、以下の工程:
(a)9.0未満のpHのバッファーで陰イオン交換材料を平衡化する工程;
(b)陰イオン交換材料に前記サンプルをロードする工程;
(c)場合によって、9.0未満のpHのバッファーで陰イオン交換材料を洗浄する工程;
(d)酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、及び酢酸ナトリウムから選択される少なくとも1つの塩を含む9.0未満のpHの溶液を使用して、陰イオン交換材料から前記ポリペプチドを溶出する工程;及び
(e)前記溶出によって得られた画分を選択する工程であって、前記画分のポリペプチドが所望の含有量のγ−カルボキシグルタミン酸を有する、工程
を含む。
【0007】
当該態様における精製に適切なポリペプチドは、第IX因子、第VII因子、第VIIa因子、第X因子、プロトロンビン、タンパク質S、タンパク質C、タンパク質Z、オステオカルシン、マトリックス−gla−タンパク質、増殖停止特異的6、プロリンリッチGla1、プロリンリッチGla2、プロリンリッチGla3、及びプロリンリッチGla4を含む。好ましい方法では、前記ポリペプチドは、第IX因子、第X因子、第VII因子、又は第VIIa因子である。
【0008】
前記ポリペプチドが第IX因子である場合は、前記方法は、精製するサンプル中の#1−11−Gla及び/又は#1−12−Glaの形態の第IX因子の割合と比較して、#1−11−Gla及び/又は#1−12−Glaの形態の第IX因子の割合が増大している、前記溶出によって得られた画分を選択する工程を含んでよい。
【0009】
前記ポリペプチドが第X因子又は第VII因子である場合は、前記方法は、精製するサンプル中の#1−10−Gla及び/又は#1−11−Glaの形態の第X因子又は第VII因子の割合と比較して、#1−10−Gla及び/又は#1−11−Glaの形態の第X因子又は第VII因子の割合が増大している、前記溶出によって得られた画分を選択する工程を含んでよい。
【0010】
前記ポリペプチドが第IX因子である場合は、前記方法は、精製するサンプル中の#1−10−Glaの形態の第IX因子の割合と比較して、#1−10−Glaの形態の第IX因子の割合が減少している、前記溶出によって得られた画分を選択する工程を含んでよい。
【0011】
前記ポリペプチドが第X因子又は第VII因子である場合は、前記方法は、精製するサンプル中の#1−9−Glaの形態の第X因子又は第VII因子の割合と比較して、#1−9−Glaの形態の第X因子又は第VII因子の割合が減少している、前記溶出によって得られた画分を選択する工程を含んでよい。
【0012】
本発明の方法では、以下のいずれか1つ又は複数が適用されてよい:
− 溶出バッファーが5.0から8.5の間のpHを有してよい。
− 酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、又は酢酸ナトリウムが、0.1Mから2.0Mの間、好ましくは約0.6Mで溶出バッファー中に存在してよい。
− イオン交換クロマトグラフィーが、5.0から8.5の間のpHの平衡化バッファーを使用してよい。
【0013】
本発明は、本明細書に開示する方法によって得られるポリペプチド製剤、すなわち、γカルボキシル化の程度又は含まれるγカルボキシグルタミン酸残基の数が異なる、1又は複数の種のポリペプチドの量が変化している製剤にも拡張される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1Aは、同定されたサブドメインとともにヒト第IX因子の一次構造を示す。GLAドメインはアミノ酸1−46で認められ、EGF1ドメインはアミノ酸47−83で認められ、EGF2ドメインはアミノ酸84から124で認められ、活性化ペプチドはアミノ酸146から180で認められ、プロテアーゼドメインはアミノ酸181から415で認められる。γ−カルボキシル化に潜在的に供されるGlaドメインの12アミノ酸は、「γ」と標識しており、アミノ酸7、8、15、17、20、21、26、27、30、33、36、及び40に位置する。図1Bは、ヒト第VII因子、第IX因子、及び第X因子ポリペプチドのアミノ酸配列の一部のアラインメントを示す。これらのアラインメントは、これらのポリペプチドの各々のGLAドメインに由来し、*としてGla残基の位置を示す。
【図2】図2は、実施例2に記載のとおり、rhFIXのサンプルの陰イオン交換クロマトグラフィーから得られたクロマトグラムを示す。
【図3】図3は、図2の拡大した小区分を示す。
【図4】図4は、実施例2の陰イオン交換クロマトグラフィーによる分離の前及び後のGla種の分布の分析を示す。前=実施例2の「適用」として使用したrhFIXのサンプル中のGla種の分布。このサンプルは、免疫親和性捕捉によって精製して、rhFIXの95%超の純度のサンプルを産生した。後=実施例2で得られたCD12−D3の画分のプール中のGla種の分布。
【図5】図5は、実施例3に記載のとおりにrhFIXのサンプルの陰イオン交換クロマトグラフィーから得られたクロマトグラムを示す。
【図6】図6は、図5の拡大した小区分を示す。
【図7】図7は、実施例4に記載のとおりにFVIIのサンプルの陰イオン交換クロマトグラフィーから得られたクロマトグラムを示す。
【図8】図8は、図7の拡大した小区分を示す。
【図9】図9は、実施例5に記載のとおりにrhFIXのサンプルの陰イオン交換クロマトグラフィーから得られたクロマトグラムを示す。
【図10】図10は、図9の拡大した小区分を示す。
【図11】図11は、実施例6に記載のとおりにrhFIXのサンプルの陰イオン交換クロマトグラフィーから得られたクロマトグラムを示す。
【図12】図12は、図11の拡大した小区分を示す。
【図13】図13は、実施例7に記載のとおりにFXのサンプルの陰イオン交換クロマトグラフィーから得られたクロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、異なるレベルのγカルボキシル化を有するポリペプチド種が異なるレベルの活性を有し得ること、及びその様な異なる種がイオン交換クロマトグラフィーを使用して精製又は分離することができることを発見したことに由来する。より活性の高いポリペプチド種の割合を増大することによって、及び/又はサンプル中のより活性の低いポリペプチド種の割合を低減することによって、比活性が増大した精製製剤の製造をもたらすことができる。
【0016】
「ポリペプチド」は、2又はそれ以上のサブユニットアミノ酸、アミノ酸アナログ、又は他のペプチド摸倣薬の化合物をであるという最も広い意味で本明細書で使用する。かくして、用語「ポリペプチド」は、短いペプチド配列並びにより長いポリペプチド及びタンパク質を含む。本明細書で使用する用語「アミノ酸」は、天然及び/又は非天然若しくは合成アミノ酸であり、グリシン及びD又はL光学異性体の双方、並びにアミノ酸アナログ及びペプチド摸倣薬を含む。「成熟」タンパク質は、翻訳後プロセシング、例えば、カルボキシル化、糖鎖付加、又はターゲティング配列などのプロペプチド領域の切断を受けたポリペプチドである。成熟タンパク質の形態にある本発明のポリペプチドは、かくして、γカルボキシル化を受けて、1又は複数のGlu残基が翻訳後の配列においてGlaに変換されていてよい。
【0017】
本明細書に記載の方法は、γカルボキシル化されているか又はされ得る任意のポリペプチドの精製に使用してよい。
【0018】
本発明の方法に使用するポリペプチドは、1又は複数のγカルボキシグルタミン酸残基を含むポリペプチドであってよい。そのようなポリペプチドは、ポリペプチドのアミノ酸配列を調べて、Glaが存在するか測定することによって同定されてよい。
【0019】
γ−カルボキシグルタミン酸を含む多数のポリペプチドが知られている。プロトロンビン、第VII因子(第VIIa因子を含む)、第IX因子、第X因子、タンパク質C、及びタンパク質Sを含む、多数の血液凝固及び調節タンパク質がGla残基を含む。これらのタンパク質は、成熟タンパク質のN末端の最初の40残基内に位置するGLAドメインに10から12のγカルボキシグルタミン酸残基を含み得る。骨タンパク質、例えば、オステオカルシン及びマトリックスGlaタンパク質、並びに他の哺乳動物ビタミンK依存性タンパク質、例えば、増殖停止特異的6(Gas6)、タンパク質Z、プロリンリッチGla1(PRGP1)、プロリンリッチGla2(PRGP2)、プロリンリッチGla3(PRGP3)、及びプロリンリッチGla4(PRGP4)も多数のGla残基を含む。γカルボキシグルタミン酸残基は非哺乳動物タンパク質、例えば、コノペプチドであるコナントキンG及びコナントキンTにおいても認められている。これらのペプチドのいずれかが本発明にしたがって精製されてよい。
【0020】
本発明の方法に使用するポリペプチドは、翻訳後修飾されて、1又は複数のγカルボキシグルタミン酸残基を含み得るポリペプチドを含んでよい。例えば、そのような残基は、ポリペプチドのグルタミン酸残基のγカルボキシル化によって生成されてよい。したがって、ポリペプチドのアミノ酸配列は、1又は複数のグルタミン酸(Glu)残基を含んでよい。この態様で翻訳後修飾され得るポリペプチドは、天然のポリペプチドであってよい。そのようなポリペプチドは、任意の適切な生物に由来してよい。例えば、前記ポリペプチドは、天然の哺乳動物ポリペプチド、例えば、げっ歯類、霊長類、ネコ、イヌ、ヒツジ、ウシ、ブタ、又は他の哺乳動物のポリペプチドであってよい。好ましくは、前記ポリペプチドは、マウス、ラット、又はヒトのポリペプチドである。最も好ましくは、前記ポリペプチドはヒトのポリペプチドである。前記ポリペプチドは非哺乳動物の種に由来してよい。例えば、幾つかのコノトキシンはγカルボキシグルタミン酸を含み得る。前記ポリペプチドは、かくして、軟体動物、例えば、腹足類に由来する天然のポリペプチドであってよい。腹足類は、巻貝、例えば、イモガイであってよい。この態様で翻訳後修飾され得るポリペプチドは、天然のポリペプチドのバリアント、例えば、上述の既知のγカルボキシル化タンパク質の1つのバリアント、人工ポリペプチド、例えば、合成ポリペプチド、又は組換え技術によって生産された変異体又はバリアントタンパク質であってよい。
【0021】
前記ポリペプチドは、GLAドメインを有するポリペプチドであってよい。GLAドメインは、γカルボキシグルタミン酸(Gla)を形成する多数のグルタミン酸(Glu)残基の翻訳後修飾を含むタンパク質ドメインである。これらのGla残基は、一般的には、ポリペプチドの1つの領域又はドメインに位置する。これは、成熟タンパク質のポリペプチドのN末端に位置する場合が多い。
【0022】
例えば、図1Aは、ヒト第IX因子タンパク質の一次構造を示す。このタンパク質は、アミノ酸1から46にGLAドメインを含む。このドメインは、グルタミン酸からGlaに修飾され得る12アミノ酸残基を含む。これらは、7、8、15、17、20、21、26、27、30、33、36、及び40位に位置する。したがって、12までのGla残基を含むことが可能である。したがって、本発明にしたがって精製されるポリペプチドは、第IX因子であってよい。図1Bは、ヒト第VII因子、第IX因子、第X因子タンパク質のGlaドメインに基づくアラインメントを示す。各配列においてグルタミン酸からGlaに修飾され得るアミノ酸残基の位置は、*として示す。したがって、本発明にしたがって精製されるポリペプチドは、第VII因子又は第X因子であってよい。
【0023】
本発明に使用するためのポリペプチドは、既知のγカルボキシル化タンパク質由来のGLAドメイン、例えば、第IX因子、第VI因子、若しくは第X因子、又は上述の他の既知のγカルボキシル化タンパク質のいずれか、例えば、他の血液凝固因子由来のGLAドメインを含んでよい。
【0024】
本発明の方法で使用するためのポリペプチドは、1又は複数のγカルボキシグルタミン酸残基を含むか又は含むことができるポリペプチドであってよい。例えば、前記ポリペプチドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、又はそれ以上のGla残基を含むか又は含むことができる可能性がある。好ましくは、前記ポリペプチドは、1を超えるGla残基、例えば、1を超える、2を超える、5を超える、又は9を超えるGla残基を含むか又は含むことができる。前記ポリペプチドは、10まで、12まで、15まで、又は20までのGla残基を含むか又は含むことができる可能性がある。以下にさらに記載するとおり、本発明の方法によって、異なるレベルのγカルボキシル化が生じている異なる複数の分子種のポリペプチドの精製ができる。本明細書で言及する数は、ポリペプチドに存在し得るGla残基の総数である。すなわち、前記ポリペプチドが完全にγカルボキシル化される場合は、これらの数は存在するGla残基の数を示す。例えば、γカルボキシル化がGLAドメインで生じる場合は、これらの数は、前記GLAドメインにおけるγカルボキシル化の可能な部位の総数、例えば、翻訳されたポリペプチドのGlu残基の総数又はγ−グルタミルカルボキシラーゼなどの酵素の作用によって生成され得るGla残基の最大数である。同じポリペプチドのさらなる種も存在して、最大よりも少ないγカルボキシグルタミン酸残基が存在する可能性がある。
【0025】
したがって、前記ポリペプチドは、翻訳されたアミノ酸配列のN末端40残基に多数のGlu残基を含んでよい。例えば、発現したポリペプチドのアミノ酸配列は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、又はそれ以上のGlu残基をポリペプチドのN末端に最も近い40アミノ酸又は成熟タンパク質のN末端に基も近い40アミノ酸に含んでよい。
【0026】
γカルボキシル化は酵素を使用して達成されてよい。そのようなγグルタミルカルボキシラーゼ酵素は、インビボの多数のポリペプチドのγカルボキシル化に関与していることが知られている。γ−グルタミルカルボキシラーゼは、多数のビタミンK依存性凝固因子のGLAドメインにおけるGluからGlaへの翻訳後修飾を触媒する小胞体酵素である。かくして、本発明に使用するためのポリペプチドは、γ−グルタミルカルボキシラーゼによってγカルボキシル化されるか否か測定することによって同定されてよい。
【0027】
γ−グルタミルカルボキシラーゼ酵素は、カルボキシル化されるグルタミン酸残基のアミノ末端側の配列モチーフを介して、その基質タンパク質に結合すると解されている。前記酵素は、次いで、その領域の多数のグルタミン酸残基、例えば、GLAドメインの全てのグルタミン酸残基を、基質を解放する前に、カルボキシル化し得る。したがって、本発明に使用するためのポリペプチドは、γ−グルタミルカルボキシラーゼ又はγカルボキシル化をすることができる他の酵素によって認識されるモチーフ又は部位を含んでよい。この認識部位は、前記ポリペプチドのN末端領域、例えば、翻訳されたポリペプチドのN末端又は成熟タンパク質のN末端に最も近い18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、又は40アミノ酸内に位置してよい。前記認識部位は、カルボキシル化されるグルタミン酸残基のアミノ末端側に位置してよい。例えば、多数の天然γカルボキシル化タンパク質において、γ−グルタミルカルボキシラーゼ酵素が、プロペプチド領域の部位を認識及び結合する。その領域は、その後にポリペプチドの残部から翻訳後プロセシングの間に切断される。したがって、γカルボキシラーゼ認識部位は、成熟タンパク質には存在しない可能性がある。
【0028】
プロトロンビン及び第IX因子では、γ−グルタミルカルボキシラーゼ酵素の認識に関与する部位が、残基−18、−17、−15、−15、及び−10によって規定される。類似の認識部位が、他のγカルボキシル化タンパク質に認められる。−16位のフェニルアラニン及び−10位のアラニンは、カルボキシラーゼ基質のプロペプチド内によく保存されており、−17及び−15位のイソロイシン、ロイシン、及びバリンなどの脂肪族残基も同様である。−16位のロイシン、バリン、又はリジンもカルボキシル化を支え得る。本発明に使用するためのポリペプチドは、既知のカルボキシル化タンパク質に由来するγカルボキシル化認識部位、例えば、第IX因子、第X因子、第VII因子、又は上述の任意の他の既知のγカルボキシル化タンパク質由来のγカルボキシル化認識部位を含んでよい。例えば、γカルボキシル化認識部位を含む、任意のそのようなタンパク質由来のプロペプチド領域は、翻訳後のポリペプチドのN末端に存在して、γ−グルタミルカルボキシラーゼによるポリペプチドの適切な翻訳後プロセシングを可能にする可能性がある。
【0029】
γカルボキシル化されることが可能なポリペプチドは、好ましくは、以下の基準の一方又は双方を満たす:
(1)ポリペプチドがγカルボキシル化認識部位を含む、及び
(2)γカルボキシル化認識部位の40残基内にグルタミン酸残基が存在する。
【0030】
γ−グルタミルカルボキシラーゼ酵素は、粗面小胞体において活性を有すると解されている。この酵素によってγカルボキシル化されるポリペプチドについては、前記ポリペプチドが、γ−グルタミルカルボキシラーゼ酵素を発現する細胞の粗面小胞体を通過することが好ましい。かくして、前記ポリペプチドは、粗面小胞体を通過する新規に合成されたポリペプチドの輸送を可能にする配列を含んでよい。粗面小胞体へのポリペプチドの標的化を可能にするシグナル配列がよく知られている。そのようなシグナル配列は、ポリペプチドのアミノ末端で認められる場合が多く、16から30アミノ酸長であるか又は4から12疎水性残基を含んでよい。そのようなシグナルペプチドは、一般的には、シグナルペプチダーゼによってポリペプチド分子から切断され、成熟タンパク質には存在しない。
【0031】
ポリペプチドのγカルボキシル化を生じさせるために、好ましくは、前記ポリペプチドは細胞内で発現する。本発明で使用するポリペプチドは、そのような細胞内における発現によって合成されてよい。好ましくは、ポリペプチドを発現させる細胞は、必要な細胞機構を含み、ポリペプチドのγカルボキシル化を可能にする。例えば、前記細胞は、γ−グルタミルカルボキシラーゼを発現してよい。好ましくは、タンパク質を合成する細胞は、粗面小胞体に結合したγカルボキシラーゼを有する。前記細胞は、酵素補因子、例えば、ビタミンKの存在下で培養してよい。好ましくは、タンパク質を合成する細胞は、細胞内ビタミンKを含む。
【0032】
γカルボキシル化され得るポリペプチドは、そのような細胞でポリペプチドを発現させて、γカルボキシル化が生じるか否か測定することによって同定されてよい。例えば、ポリペプチドは、本明細書に記載の細胞で発現させてよく、例えば上述のシグナルペプチドを使用することによって、そのような細胞の粗面小胞体に標的化されてよい。そのような細胞でペプチドを発現させて、発現して翻訳後プロセッシングを受けたポリペプチドがGla残基を含むか否か測定することによって、γカルボキシル化され得るポリペプチドを同定してよい。
【0033】
本発明の方法は、異なる程度のγカルボキシル化を有する他の種のポリペプチドから、1又は複数の種のポリペプチドを精製することを伴う。ポリペプチドが2以上の部位でγカルボキシル化され得る場合に、異なる数のγカルボキシグルタミン酸アミノ酸残基が存在するか又はγカルボキシグルタミン酸残基がポリペプチド分子内の異なる可能な位置に存在する、異なる種のポリペプチドが存在してよい。
【0034】
例えば、幾つかの種のポリペプチドは、完全にγカルボキシル化されていてよい。すなわち、γカルボキシル化によって、γカルボキシル化が可能なポリペプチド内の全ての残基において、例えば、GLAドメインの全てのGlu残基において、グルタミン酸がγカルボキシグルタミン酸に変換されてよい。他の種のポリペプチドは部分的にγカルボキシル化されてよい。すなわち、γカルボキシル化が可能なポリペプチド内の全てではなく幾つかの残基において、例えば、GLAドメインの全てではなく幾つかのGlu残基において、γカルボキシル化によってグルタミン酸がγカルボキシグルタミン酸に変換されてよい。
【0035】
各種の異なる部分的にγ脱カルボキシル化された種が同定されてよい。これらは、各種の方法で分類してよい。例えば、γ脱カルボキシル化の程度は、ポリペプチド内のどの残基がγ脱カルボキシル化されているかによって定義されてよく、又はポリペプチド内に存在するγカルボキシグルタミン酸アミノ酸残基の総数によって定義されてよい。後者の分類は、多数の構造的に異なる分子種のポリペプチドが、それらが含むγカルボキシグルタミン酸残基の総数に基づいて、まとめて扱われることを意味してよい。例えば、1つ以外の全ての可能なγカルボキシグルタミン酸残基が存在するポリペプチドの多数の種が、γカルボキシル化されている可能性がある異なる位置にグルタミン酸が維持されている多数の異なる亜種のポリペプチドを含んでよい。
【0036】
γ−グルタミルカルボキシラーゼの作用のメカニズムのため、γカルボキシル化は、一般的に、γカルボキシル化認識部位に最も近いGlu残基で開始し、ポリペプチドのN末端から進行する。ポリペプチドが完全にはγカルボキシル化されていない場合は、一般的には、さらなるGlu残基が変換される前に、γカルボキシル化が停止されているか又は酵素がポリペプチドから解放されていることに原因がある。γカルボキシル化結合部位から最も遠い又はタンパク質のN末端から最も遠いGlu残基が、部分的にγカルボキシル化されたポリペプチドにおいてγカルボキシル化されていないことが一般的である。
【0037】
例えば、図1に示すとおり、ヒト第IX因子は、12までのγカルボキシグルタミン酸残基を含む。存在するGla残基の実際の数は、分子が受けたγカルボキシル化による翻訳後修飾の程度に依存して、異なるポリペプチド分子において変化するであろう。これは、ヒト第IX因子のサンプルが、完全にγ脱カルボキシル化されている、すなわち、12の全ての可能なγカルボキシグルタミン酸残基(#1−12Gla)を有する、複数の種の第IX因子を含む可能性があることを意味する。
【0038】
前記サンプルは、可能な12のγカルボキシグルタミン酸残基のうちの11を有する第IX因子の1又は複数の種も含む可能性がある。これらのうち、最も可能性があるのが、ポリペプチドのN末端に最も近い11のGlu残基がGlaに変換されているが、図1に示す40位の12番目のGlu残基がGluのままである場合である。かくして、この場合には、1から11のGlu残基のみがGlaに変換されている(#1−11Gla)。
【0039】
前記サンプルは、可能な12のγカルボキシグルタミン酸残基のうちの10を有する第IX因子の1又は複数の種も含む可能性がある。これらのうち、最も可能性があるのが、ポリペプチドのN末端に最も近い10のGlu残基がGlaに変換されているが、図1に示す36及び40位の11及び12番目のGlu残基がGluのままである場合である。かくして、この場合には、1から10のGlu残基のみがGlaに変換されている(#1−10Gla)。
【0040】
前記サンプルは、#1−9Glaなどの可能な12のγカルボキシグルタミン酸残基のうちの9を有する第IX因子の1又は複数の種も含む可能性がある。前記サンプルは、可能な12のγカルボキシグルタミン酸残基の9未満、例えば、8、7、6、5、4、3、2、1、又は0を有する第IX因子の1又は複数の種を含んでもよい。
【0041】
本発明は、そのような多数の種のポリペプチドの精製のための方法を提供する。特に、多数の種のポリペプチドは、サンプル中のポリペプチドの他の種に対して精製されてよい。かくして、本発明の方法は、ポリペプチドのサンプル中の興味がある種の相対的な割合の増加をもたらし得る。これは、1又は複数の異なる種のポリペプチドをサンプルから除去し、かくして、興味のある種から形成される全体としてのペプチドの割合を増やすことによって達成されてよい。これは、サンプルからの1又は複数の特定の種の特異的な除去、サンプルからの興味ある種ではない1又は複数の種の除去、又は興味のある種の割合が本来のサンプルよりも低いサンプルの画分の除去によって達成されてよい。これらの手法のいずれかによって、興味ある種の割合の全体としての増加をもたらし得る。かくして、本発明の方法は、異なる種のポリペプチドの混合物を含むサンプル中のポリペプチドの特定の種の割合の増加又は減少をもたらし得る。
【0042】
ポリペプチドの種の割合の増加は、全体としてのポリペプチドのサンプル中の当該種の割合における5%、10%、20%、30%、又はそれ以上までの増加であってよい。ポリペプチドの種の割合の減少は、全体としてのポリペプチドのサンプル中の当該種の割合における5%、10%、20%、30%、50%、70%、90%、又はそれ以上までの減少であってよい。ポリペプチドの種の割合の減少は、本来のサンプルに存在する量と比較して、存在する種の量における5%、10%、20%、30%、50%、70%、90%、又はそれ以上までの減少であってよい。ポリペプチドの種の割合における減少は、サンプルから当該種を完全又は実質的に除去することであってよい。例えば、本発明の方法は、サンプルからの特定の種の検出可能なポリペプチドの全て又は実質的に全てを除去することによって、ポリペプチドのサンプルを精製してよい。そのようなサンプル中に残存する種の量は、本来のサンプルに存在する量の10%、5%、2%、又は1%未満であってよい。
【0043】
かくして、本発明の方法の目的は、ポリペプチドのサンプル中の異なる種の相対的な割合を変化させることである。異なる種は、異なる性質又は異なる活性を有してよい。ポリペプチドのサンプル中のその様な種の量又は割合を変化させることによって、全体としてのサンプルの性質又は活性を変化させてよい。例えば、異なる種のポリペプチドは異なる程度の活性を有する場合には、より高いレベルの活性を有する種の割合を増加させ、及び/又はより低い活性を有するか若しくは活性を有しない種の割合を減少させることによって、サンプルの比活性、例えば、ポリペプチドの1分子あたりの平均活性又は所定量のポリペプチドの可能な最大活性の割合を増加してよい。
【0044】
例えば、組換え技術によって生成したヒト第IX因子(rhFIX)が約50%の比活性を示すことが認められている。そのようなサンプルの分画によって、#1−8−、#1−9−、#1−10−、#1−11−、及び#1−12−Glaを主に含む、複数の個別のrhFIX種を含むことが示された。#1−11−及び#1−12−Glaは、凝固アッセイ及び2段階活性アッセイにおいて完全に活性を有することが認められた。#1−8−、#1−9−、及び#1−10−Glaの種は、使用したアッセイに依存して、約2−5%、14−22%、及び27−36%まで低減した活性を示した。
【0045】
したがって、γカルボキシル化の程度のみが変化しているrhFIXの異なる種が、異なるレベルの活性を示すことが認められ得る。より高い割合の#1−11−及び/又は#1−12−Glaを有するサンプルは、それらの種の割合がより低いサンプルよりも高い比活性を示すことが予測されるであろう。#1−8−及び/又は#1−9−及び/又は#1−10−Glaの割合がより高いサンプルは、それらの種の割合がより低いサンプルよりも低い比活性を示すことが予測されるであろう。
【0046】
かくして、第IX因子のサンプルの全体的な比活性を、サンプル内のその様な種の割合を変化させることによって変化させてよい。この場合には、第IX因子のサンプルの全体的な比活性は、以下:
- サンプル中の#1−12−Glaの割合の増加;
- サンプル中の#1−11−Glaの割合の増加;
- サンプル中の#1−10−Glaの割合の減少;
- サンプル中の#1−9−Glaの割合の減少;
- サンプル中の#1−8−Glaの割合の減少;
- サンプル中の#1−7−Glaの割合の減少;
- サンプル中の#1−6−Glaの割合の減少;
- サンプル中の#1−5−Glaの割合の減少;
- サンプル中の#1−4−Glaの割合の減少;
- サンプル中の#1−3−Glaの割合の減少;
- サンプル中の#1−2−Glaの割合の減少;及び
- サンプル中の#1−1−Glaの割合の減少
のいずれか1つ又は複数によって増加し得ることが予測できる。
【0047】
これらの変化のいずれか1つ又は複数が、本発明にしたがって、第IX因子のサンプルの精製時に選択されてよい。
【0048】
第IX因子の好ましいサンプルは、#1−11−Glaおよび#1−12−Glaのみを含み、これよりも低い程度のγカルボキシル化を有する種、例えば、#1−10−、#1−9−、及び#1−8−Gla種を欠いているか又は実質的に欠いている。
【0049】
この方法は、hFIXの現存する組成物に適用されてよい。例えば、本明細書に説明しているとおり、実施例2で使用したhFIXは、45.6%の#1−12−Gla、36.0%の#1−11−Gla、13.6%の#1−10−Gla、3.3%の#1−9−Gla、及び1.6%の#1−8−Glaを有することが認められた。rhFIXは、Benefix(登録商標)の商品名でWyeth社によって市販されている。Benefix(登録商標)は、約8−10%、25−31%、及び60−67%の各々の#1−10−、#1−11−、及び#1−12−Glaの含有量を有する。本明細書に記載の方法を使用して、そのような組成物の#1−11−Gla及び/又は#1−12−Glaの割合を増加してよいと解することができる。本明細書に記載の方法を使用して、その様な製剤において、より少なくγカルボキシル化された種、例えば、#1−10−Gla、#1−9−Gla、及び#1−8−Glaの割合を減少させてよい。これによって、そのような製剤のhFIXの比活性が改善されると予測される。
【0050】
他のGla含有ポリペプチドに対して、類似の方法を使用してよい。例えば、第VII因子及び第X因子は、11までのGla残基を含む可能性がある。実施例4に示すとおり、本発明の方法を使用して、例えば、#1−9−、#1−10−、又は#1−11−第VII因子の割合を変化させてよい。本明細書に記載の方法を使用して、それらのGla含有量に依存して、異なる種の第VII因子の割合を変化させてよい。例えば、本明細書に記載の方法を使用して、そのような組成物において、#1−10−Gla及び/又は#1−11−Glaの割合を増加させてよい。本明細書に記載の方法を使用して、そのような組成物において、より少なくγカルボキシル化された種、例えば、#1−9−Gla又はそれ以下の種の割合を減少させてよい。
【0051】
同様に、実施例7は、多数の種の第X因子を含む製剤を、第X因子の異なるGla含有種の割合を変化させるために、本発明の方法にしたがって処理してよいことを示す。陰イオン交換クロマトグラフィーの間に適切な画分を選択することによって、異なる割合の異なるGla種を含むサンプルが選択されてよい。例えば、本明細書に記載の方法を使用して、そのような組成物において、#1−10−Gla及び/又は#1−11−Glaの割合を増加させてよいことが実施例7から認められる。本明細書に記載の方法を使用して、より少なくγカルボキシル化された種、例えば、#1−9−Gla及びそれ以下の種の割合を減少させてよい。
【0052】
かくして、本発明の方法は、あるポリペプチドの種を同一のポリペプチドの他の種から精製することを可能にする方法であって、前記種がγカルボキシル化されている程度において異なるか又はそれらのアミノ酸配列のGla残基の数において異なる、方法を提供する。
【0053】
本発明の方法は、陰イオン交換クロマトグラフィーを使用する。本発明は、特に、興味あるポリペプチドを陰イオン交換材料に結合させ、陰イオン交換材料からの前記ポリペプチドの溶出を、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、又は酢酸ナトリウムを含むバッファーを使用して実施する方法に関する。
【0054】
陰イオン交換材料は、正に荷電したイオン交換材料である。したがって、陰イオン交換材料を横切るか又は通過する水溶液中の陰イオンと交換され得る遊離の陰イオンを有する。電荷は、1又は複数の荷電したリガンドを固相に結合させることによって提供されるか、又は固相の固有の性質であってよい。前記固相は、例えば、精製カラム、粒子若しくはビーズ、膜、又はフィルターであってよい。一般的には、陰イオン交換樹脂は、約7未満のpIを有するポリペプチドの精製のために使用してよい。本明細書に記載のとおりに使用してよい市販の陰イオン交換材料は、例えば、QセファロースFast Flow、Macroprep 25Q、Poros HQ50、Source 30Q、Source 15Q、Mini Q、Mono Q、好ましくはMini Q、Mono Q、Capto Q、QセファロースHP、Toyopearl QAE 550C、Unosphere Q、DEAEセファロースFF、Fratoprep DEAE、及びQ HyperD 20を含む。
【0055】
陰イオン交換材料は、強い陰イオン交換基、例えば、第四級アミンを利用してよい。陰イオン交換材料は、弱い陰イオン交換基、例えば、ジエチルアミノエチル(DEAE)を利用してよい。適切な陰イオン交換材料は、例えば、精製する特定のポリペプチドに依存して、当業者に選択されてよい。
【0056】
前記陰イオン交換材料は、精製する特定のポリペプチド及び使用する条件、例えば、pH、バッファー、イオン強度などに依存して選択してよい。
【0057】
従来の陰イオン交換クロマトグラフィー精製プロセスは、通常、陰イオン交換材料の平衡化、サンプルの適用又はロード、1又は複数の洗浄工程、溶出、及び陰イオン交換材料の再生から選択される1又は複数の工程からなる。陰イオン交換クロマトグラフィーの標準的な方法は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciencesで認められてよい。陰イオン交換樹脂は、好ましくは、興味のあるポリペプチドをロードする前に平衡化する。この平衡化工程の目的は、前記方法の後の工程で使用するものとよりよく似たものに陰イオン交換材料の条件を調整することである。クロマトグラフィーの間の移動相の組成の変化を避けるために、アニオン交換材料は、開始バッファーのpH及びイオン組成(例えば、伝導率、バッファー組成)に平衡化させるべきである。例えば、平衡化バッファーのイオン強度(例えば、導電率、pH)は、前記方法の後の工程において使用するバッファー、例えば、ポリペプチドのロードに使用するバッファー及び/又は洗浄バッファーのイオン強度に可能な限り似せるように選択されてよい。
【0058】
したがって、前記アニオン交換材料は、後の工程で使用するバッファー又は製剤に密接に基づいたバッファーを使用して平衡化されてよい。例えば、同一のバッファーが、陰イオン交換材料の平衡化及びサンプルのロードに使用されてよい。同一のバッファーが、陰イオン交換材料の平衡化及びサンプルをロードした後の陰イオン交換材料の洗浄に使用されてよい。平衡化バッファーは、ローディングバッファー及び/又は洗浄バッファーと同じpHを有してよい。平衡化バッファーは、ローディングバッファー及び/又は洗浄バッファーと同じ伝導率を有してよい。平衡化バッファーは、ロードする製剤及び/又は洗浄バッファーと同じ緩衝化物質を使用してよい。平衡化バッファーは、ロードする製剤及び/又は洗浄バッファーと同じ緩衝化物質濃度を有してよい。平衡化バッファーは、ロードする製剤及び/又は洗浄バッファーにも存在する追加の成分、例えば、界面活性剤を含んでよい。
【0059】
平衡化バッファーのpHは、精製する特定のポリペプチドに依存して決定されてよい。例えば、多数のポリペプチド、例えば、第IX因子については、9以上のpHは最適ではない。これらのpH値において、ポリペプチドの自己賦活及び/又は分解が認められる可能性があるからである。
【0060】
本発明で使用するための平衡化バッファーは、例えば、約5.0から約8.5、例えば、pH5.0からpH8.5のpHで形成されてよい。平衡化バッファーのpHは、約5.0超、約5.5超、約6.0超、約6.5超、約7.0超、約7.5超、又は約8.0超であってよい。平衡化バッファーのpHは、約8.5未満、約8.0未満、約7.5未満、約7.0未満、約6.5未満、約6.0未満、又は約5.5未満であってよい。そのような端点の任意の組み合わせが組み合わされてよい。例えば、平衡化バッファーのpHは、約7.0超であり、かつ、約8.5未満であってよい。前記pHは、例えば、約pH7.0、7.5、8.0、又は8.5であってよい。
【0061】
pH値は、本明細書に記載のポリペプチド、例えば、第IX因子、第VII因子、又は第X因子の精製のための陰イオン交換材料の平衡化に適切なものであってよい。
【0062】
平衡化バッファーの適切な成分は、緩衝化物質、例えば、Tris、ホスフェート、MES、Hepes、又はカーボネートを含んでよい。陰イオン交換クロマトグラフィー法に関しては、緩衝化陽イオン、例えば、Trisが好ましい。そのような緩衝化物質は、上述のpHに平衡化バッファーを維持するために使用されてよい。1つの実施態様では、同じ緩衝化物質及び緩衝化物質濃度が、陰イオン交換クロマトグラフィー法全体を通じて使用される。例えば、平衡化バッファー、洗浄バッファー、及び溶出バッファーの全てが、同じ緩衝化物質濃度で同じ緩衝化物質を含んでよい。緩衝化物質濃度は、陰イオン交換法の間に緩衝化能及び一定のpHを維持するのに十分であるべきである。例えば、緩衝化物質及び緩衝化物質濃度は、サンプルの適用の間及び溶出の間の安定なpH及び緩衝化能を維持するように選択されてよい。適切な緩衝化物質濃度は、例えば、5mMから50mMの間、例えば、10mMから40mMの間であってよい。適切な緩衝化物質濃度は、例えば、5mM、10mM、15mM、20mM、又は25mMであってよい。
【0063】
平衡化バッファーは、1又は複数の追加の成分を含んでよい。平衡化バッファーは、添加剤、例えば、エチレングリコール、エタノール、尿素、又はタンパク質の可溶性を増加させるために使用する界面活性剤を含んでよい。陰イオン交換クロマトグラフィーに使用する界面活性剤は、陰イオン交換材料と同じ電荷又は中性であるべきである。非イオン性界面活性剤、例えば、Tween 80、Tween 20、又はTriton X100が、例えば、1%未満、0.5%未満、0.1%未満、又は0.01%未満の濃度で使用されてよい。非緩衝化塩、例えば、NaClを使用して、バッファーのイオン強度を調整してよい。
【0064】
興味あるポリペプチドを含むサンプルを陰イオン交換材料にロードする。これは、ポリペプチドが陰イオン交換材料中又は上に固定化されるように、適当な条件下(例えば、導電率及び/又はpH)において陰イオン交換材料にサンプルを曝露することによって達成される。固定化又は結合は、ポリペプチドと陰イオン交換材料の荷電した基との間のイオン性相互作用によって達成される。その様な結合は、一般的には、陰イオン交換材料と接触する移動相のイオン強度が、興味あるポリペプチドのイオン性の基が陰イオン交換材料上の電荷を有する基のカウンターイオンとして働き始めるほどまで減少する際に生じる。
【0065】
本発明の方法で精製するサンプルは、上述のポリペプチドを含む任意のサンプルであってよい。好ましくは、前記サンプルは、同じポリペプチドの2以上の異なる種を含み、前記種は、γカルボキシル化の程度及び/又は位置で異なる。
【0066】
上述のとおり、興味あるポリペプチドは、任意のルーチンな手法を使用して得られてよい。例えば、前記ポリペプチドは、インビボの起源、例えば、動物から得られてよく、又はインビトロ、例えば、組織又は細胞で生成されてよい。興味あるポリペプチドは、例えば、細胞中のポリペプチドの発現を誘導することによって、組換え技術によって生成されてよい。例えば、興味あるポリペプチドは、前記ポリペプチドをコードして発現することができるポリヌクレオチドを用いて形質転換又はトランスフェクトした宿主細胞で生成されてよい。そのような宿主細胞は、ポリペプチドの発現が可能である条件下において培養されてよい。次いで、前記ポリペプチドは、培養培地又は宿主細胞自体から回収されてよい。
【0067】
好ましくは、前記ポリペプチドは、陰イオン交換樹脂に適用する前に精製される。例えば、前記ポリペプチドは、1又は複数の精製工程、例えば、沈殿、免疫沈降、等電点電気泳動、濾過、遠心分離、又はクロマトグラフィー、例えば、他の陰イオン交換クロマトグラフィーに供してよい。
【0068】
そのような精製を使用して、1又は複数の混入物質の一部又は全部をサンプルから除去することによって、興味あるポリペプチドの純度の程度を増加してよい。混入物質は、興味あるポリペプチドではない任意の分子であってよい。例えば、前記混入物質は、異なるポリペプチド、核酸、又は内毒素であってよい。前記混入物質は、興味あるポリペプチドのバリアント、例えば、切断又は伸長ポリペプチド、脱アミド化型のポリペプチド、正しくフォールディングされなかったポリペプチド、又は望ましくない糖鎖が付加したポリペプチドの形態であってよい。前記混入物質は、イオン交換クロマトグラフィーを妨げる可能性がある分子であってよい。
【0069】
好ましくは、興味あるポリペプチドは、少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、少なくとも90%又はそれ以上の純度である。最も好ましくは、前記ポリペプチドは、少なくとも90%の純度、例えば、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%の純度である。純度は、興味あるポリペプチドが占める全乾燥重量の割合であることを意図する。前記サンプルは、25重量%未満の上述の混入物質を含み、例えば、25%未満の興味あるポリペプチド以外のタンパク質を含み、より好ましくは、20%未満、10%未満、5%未満、3%未満、又は1%未満で含んでよい。前記サンプルは興味あるポリペプチドの純粋又は実質的に純粋なサンプルであってよい。前記サンプルは、興味あるポリペプチドの単離又は実質的に単離されたサンプルであってよい。
【0070】
そのようなペプチドのサンプルは、ポリペプチド合成から直接得られた形態、例えば、組換え技術によってポリペプチドを生産する細胞の培養培地由来のサンプル又はポリペプチドを発現した細胞を溶解したもののサンプルの形態で陰イオン交換材料に適用されてよい。ポリペプチドのサンプルは、本明細書に記載のとおり精製又は部分的に精製した形態で陰イオン交換材料に適用されてよい。本明細書に記載のサンプルは、陰イオン交換材料に適用する前にさらに調合されてよい。例えば、ポリペプチド(又は精製ポリペプチド)が固体形態で提供される場合には、陰イオン交換材料に適用するための液体組成物に調合されてよい。例えば、水、バッファー、又は他の溶媒に調合されてよい。好ましくは、前記液体組成物は水性である。前記ポリペプチド又は精製ポリペプチドが液体又は水性の形態で提供される場合、又は固体ポリペプチドサンプルが上述のとおり液体形態に調合されている場合には、陰イオン交換材料に適用する前に前記サンプルの製剤を調整する。
【0071】
例えば、サンプル又は調合されたサンプルの伝導度及び/又はpHが、ルーチンな方法を使用して調整されてよい。サンプルのpHは、陰イオン交換材料の平衡化及び/又は陰イオン交換材料の洗浄に使用するバッファーと同じ又は実質的に同じになるように調整されてよい。サンプルの伝導度は、陰イオン交換材料の平衡化及び/又は陰イオン交換材料の洗浄に使用するバッファーと同じ又は実質的に同じになるように調整されてよい。前記サンプルは、緩衝化物質、例えば、平衡化バッファーの組成に関連して上述した緩衝化物質のいずれかを用いて調合されてよい。前記サンプルは、陰イオン交換材料の平衡化及び/又は陰イオン交換材料の洗浄に使用するものと同じバッファーで調合されてよい。前記サンプルは、陰イオン交換材料の平衡化及び/又は陰イオン交換材料の洗浄に使用するバッファーと同じ緩衝化物質及び/又は同じ緩衝化物質濃度及び/又は同じpH及び/又は同じ伝導度で調合されてよい。1つの実施態様では、興味あるポリペプチドは、使用する平衡化バッファーと同一のバッファーに添加することによって、陰イオン交換材料に適用するために調合される。
【0072】
ついで、前記ポリペプチドは、陰イオン交換材料にポリペプチドを結合させる条件下で陰イオン交換材料に前記ポリペプチドの関連する調合物を横切らせるか又は通過させることによって、イオン交換材料にロードする。そのような方法は当該技術分野においてルーチンである。
【0073】
興味あるポリペプチドを陰イオン交換カラムにロードしたら、カラムを1又は複数回の洗浄に供してよい。洗浄は、適当や溶液を陰イオン交換材料に通過されるか又は横切らせることによって達成される。そのような洗浄の目的は、陰イオン交換材料に結合しない任意のポリペプチド又は他の成分を除去すること;陰イオン交換材料に弱く結合するのみである任意のポリペプチド又は他の成分を除去すること;興味あるポリペプチドよりも低い親和性で陰イオン交換材料に結合する不純物を除去することを含んでよい。
【0074】
1つの実施態様では、陰イオン交換材料にポリペプチドをロードした後に、陰イオン交換材料をバッファーで洗浄して、任意の非結合ポリペプチド、混入物質、又は不純物を除去する。例えば、前記洗浄バッファーは、その中でポリペプチドを陰イオン交換材料にロードするために調合したバッファーと同一又は実質的に同一であってよい。洗浄バッファーは、平衡化バッファーと同一又は実質的に同一であってよい。例えば、洗浄は、平衡化バッファーと同じバッファー又はポリペプチドを調合するために使用するものと同じバッファーを使用して実施してよい。洗浄は、平衡化バッファー又はポリペプチドの調合に使用するバッファーと同じpH若しくは実質的に同じpH及び/又は同じ若しくは実質的に同じ伝導度を有するバッファーを使用して実施してよい。洗浄は、平衡化バッファー又はペプチドの調合に使用するバッファーと同じ又は実質的に同じ濃度で同じ緩衝化物質を含むバッファーを使用して実施してよい。
【0075】
他の洗浄は、平衡化バッファーと異なるバッファーを使用して代替的又は追加で実施してよい。例えば、興味あるポリペプチドよりも弱い強度で陰イオン交換材料に結合する混入物質を陰イオン交換材料から除去することが可能であってよい。そのような混入物質は、興味あるポリペプチドよりも容易に陰イオン交換材料から放出されるであろう。例えば、陰イオン交換材料は、平衡化バッファー及び/又はポリペプチドをロードするための調合物よりも大きい伝導度又はイオン強度を有するバッファーで洗浄してよい。バッファーのイオン強度を増加させることによって、陰イオン交換材料からの成分の溶出を達成してよい。好ましくは、興味あるポリペプチドが陰イオン交換材料から実質的に全く溶出されないように、洗浄バッファーが選択されるか又は十分に小さい容量で使用される。
【0076】
洗浄用バッファーは、特定のサンプル及び興味あるポリペプチドの性質に依存して当業者によって選択されてよい。例えば、興味あるポリペプチドよりも弱い強度で樹脂に結合する特定のポリペプチド又は不純物の除去を可能にする、特定のpH又は伝導度を有するバッファーが選択されてよい。そのようなバッファーは、例えば、カラムから除去される溶液の組成を観察することによる、単純なルーチンの実験によって選択され、かつ、その使用が最適化されてよい。
【0077】
洗浄バッファーのpHは、精製する特定のポリペプチドに依存して決定されてよい。例えば、多数のペプチド、例えば、第IX因子に関しては、ポリペプチドの自己賦活及び/又は分解が9.0以上のpHにおいて認められ得るため、9.0又はそれ以上のpHは最適ではない。
【0078】
本発明における使用に適切な洗浄バッファーは、例えば、約5.0から約8.5、例えば、5.0から8.5のpHで調合されてよい。洗浄バッファーのpHは、約5.0超、約5.5超、約6.0超、約6.5超、約7.0超、約7.5超、又は約8.0超であってよい。洗浄バッファーのpHは、約8.5未満、約8.0未満、約7.5未満、約7.0未満、約6.5未満、約6.0未満、又は約5.5未満であってよい。そのような端点の任意の組み合わせに組み合わせてよい。例えば、洗浄バッファーのpHは、約7.0超、かつ、約8.5未満であってよい。pHは、例えば、約pH7.0、7.5、8.0、又は8.5であってよい。
【0079】
これらのpHの値は、本明細書に記載のポリペプチド、例えば、第IX因子、第VII因子、又は第X因子の精製のためのイオン交換材料の洗浄に適切であってよい。
【0080】
洗浄バッファーのための適切な成分は、緩衝化物質、例えば、Tris、ホスフェート、MES、Hepes、又はカーボネートを含んでよい。陰イオン交換クロマトグラフィー法には、緩衝化陽イオン、例えば、Trisが好ましい。そのような緩衝化物質を使用して、上述のpHに洗浄バッファーを維持してよい。適切な緩衝化物質濃度は、例えば、5mMから50mMの間、例えば、10mMから40mMの間であってよい。適切な緩衝化物質濃度は、例えば、5mM、10mM、15mM、20mM、又は25mMであってよい。
【0081】
洗浄バッファーは、1又は複数の追加の成分を含んでよい。洗浄バッファーは、添加物、例えば、エチレングリコール、エタノール、尿素、又はタンパク質の可溶性を増加させるために使用される界面活性剤を含んでよい。陰イオン交換クロマトグラフィーで使用される界面活性剤は、中性又は陰イオン交換材料と同じ電荷を有するものであるべきである。非イオン性界面活性剤、例えば、Tween 80、Tween 20、又はTriton X100が、例えば、1%未満、0.5%未満、0.1%未満、又は0.01%未満の濃度で使用されてよい。非緩衝化塩、例えば、NaClを使用してバッファーのイオン強度を調整してよい。
【0082】
陰イオン交換材料から分子を溶出させることは、陰イオン交換材料から分子を除去することを意味する。これは、一般的には、陰イオン交換材料の電荷を有する基に対してバッファーが分子と競合するように、陰イオン交換材料の周囲のバッファーのイオン強度を変化させることによって達成される。その結果、陰イオン交換材料に対する分子の結合強度が低下し、分離する。ある態様では、陰イオン交換材料からの溶出は、興味あるポリペプチドの立体構造を変化させる分子を使用して、結合強度を低下させ、陰イオン交換材料からポリペプチドを放出させることによって達成されてもよい。
【0083】
溶出バッファーのpHは、精製する特定のポリペプチドに依存して決定されてよい。例えば、多数のポリペプチド、例えば、第IX因子には、ポリペプチドの自己賦活又は分解がpH9.0以上のpHで認められるため、pH9.0以上のpHは最適ではない。
【0084】
本発明の使用に適切な溶出バッファーは、例えば、約5.0から約8.5、例えば、5.0から8.5のpHで調合されてよい。溶出バッファーのpHは、約5.0超、約5.5超、約6.0超、約6.5超、約7.0超、約7.5超、又は約8.0超であってよい。溶出バッファーのpHは、約8.5未満、約8.0未満、約7.5未満、約7.0未満、約6.5未満、約6.0未満、又は約5.5未満であってよい。そのような端点の任意の組み合わせに組み合わせてよい。例えば、溶出バッファーのpHは、約7.0超、かつ、約8.5未満であってよい。pHは、例えば、約pH7.0、7.5、8.0、又は8.5であってよい。
【0085】
これらのpHの値は、本明細書に記載のポリペプチド、例えば、第IX因子、第VII因子、又は第X因子の精製のための陰イオン交換材料の溶出に適切なものであってよい。
【0086】
溶出バッファーのための適切な成分は、緩衝化物質、例えば、Tris、ホスフェート、MES、Hepes、又はカーボネートを含んでよい。陰イオン交換クロマトグラフィー法には、緩衝化陽イオン、例えば、Trisが好ましい。そのような緩衝化物質を使用して、上述のpHに溶出バッファーを維持してよい。適切な緩衝化物質濃度は、例えば、5mMから50mMの間、例えば、10mMから40mMの間であってよい。適切な緩衝化物質濃度は、例えば、5mM、10mM、15mM、20mM、又は25mMであってよい。
【0087】
溶出バッファーは、1又は複数の追加の成分を含んでよい。溶出バッファーは、添加物、例えば、エチレングリコール、エタノール、尿素、又はタンパク質の可溶性を増加するために使用される界面活性剤を含んでよい。陰イオン交換クロマトグラフィーで使用する界面活性剤は、中性又は陰イオン交換クロマトグラフィーと同じ電荷であるべきである。非イオン性界面活性剤、例えば、Tween 80、Tween 20、又はTriton X100が、例えば、1%未満、0.5%未満、0.1%未満、又は0.01%未満の濃度で使用されてよい。非緩衝化塩、例えば、NaClを使用してバッファーのイオン強度を調整してよい。
【0088】
本発明に従う使用には、溶出バッファーは、好ましくは、1又は複数のカオトロピック塩、例えば、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、及び酢酸ナトリウムから選択される1又は複数の塩を含んでよい。カオトロピック塩、例えば、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、及び/又は酢酸ナトリウムが、少なくとも0.1M、少なくとも0.2M、少なくとも0.5M、少なくとも1.0M、又は少なくとも1.5Mの濃度で溶出バッファー中に存在してよい。カオトロピック塩、例えば、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、及び/又は酢酸ナトリウムは、2.0Mまで、1.9Mまで、1.5Mまで、又は1.0Mまでの濃度で存在してよい。これらの低い端点のいずれか1つをこれらの高い端点のいずれか1つと組み合わせて、適切な濃度範囲を形成してよい。カオトロピック塩、例えば、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、及び/又は酢酸ナトリウムは、約2.0Mまでの任意の濃度で存在してよい。例えば、カオトロピック塩、例えば、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、及び/又は酢酸ナトリウムが、約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、又は約2.0までの濃度で存在してよく、最も好ましくは、約0.6Mの濃度で存在してよい。
【0089】
1つの実施態様では、溶出バッファーは、カオトロピック塩を追加で含むことを除き、洗浄バッファー及び/又は平衡化バッファーと同じ組成を有する。好ましいカオトロピック塩は、上述の酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、及び/又は酢酸ナトリウムの1又は複数である。かくして、溶出バッファーは、洗浄バッファー又は緩衝化バッファーについて本明細書に記載する任意の組成を有してよいが、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、及び/又は酢酸ナトリウムを追加で含んでよい。
【0090】
1つの実施態様では、平衡化バッファー及び洗浄バッファーは同一であり、溶出バッファーは、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、又は酢酸ナトリウムも含む点でのみ、それらと異なる。
【0091】
溶出は、カオトロピック塩のアイソクラティックグラジエント又はリニアグラジエント、例えば、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、又は酢酸ナトリウムのアイソクラティックグラジエント又はリニアグラジエントを使用して実施してよい。溶出は、バッファー中のカオトロピック塩の濃度における段階的な変化を使用して実施してよい。溶出は、これらの溶出法の任意の組み合わせによって達成してよい。例えば、所定の濃度のカオトロピック塩におけるアイソクラティック溶出の後に、グラジエント又は1若しくは複数の段階のいずれかの形態で塩濃度を増加させてよい。
【0092】
任意のそのような溶出方法では、異なる成分が、それらの結合の強度に依存して、異なる回数で陰イオン交換材料から放出されるであろう。弱い強度で結合する成分は、早期又は比較的低いバッファーの伝導度、例えば、低い塩濃度で放出される傾向があろう。より強力に結合する成分は、長期間又は比較的高い塩濃度で陰イオン交換材料に保持される傾向があろう。陰イオン交換材料を横切る又は通過する溶出液を観察して、特性の成分が溶出される時間を同定する。溶出液は、異なる時点でプールして、どのプールにどの成分が存在するか決定するために各プールを分析する。次いで、所望の組成を有する、例えば、特定のポリペプチド種の濃度が増加しているか又は他のポリペプチド種の濃度が減少している特定のプールを選択してよい。
【0093】
本明細書に記載のアイソクラティック溶出は、一定又は不変の濃度の塩を使用する。塩の該濃度、例えば、上述の濃度のいずれかを含む溶出バッファーを使用する。溶出バッファーが陰イオン交換材料を横切るか又は通過し、溶出液を観察して、溶出が起こっている時間を同定する。アイソクラティック溶出を使用すると、陰イオン交換材料に対して比較的弱い結合親和性を有する成分は、陰イオン交換材料を横切るか又は通過する溶出バッファーの比較的大きな容量を必要としてよい、より強い結合親和性を有する成分よりも、比較的小さな容量の溶出バッファーを使用し得る、比較的早期に放出されるであろう。異なる時間間隔で得られる溶出液の特定のプール又はバッチを選択することによって、異なる組成のポリペプチド種を有するサンプルが得られてよい。
【0094】
グラジエント溶出が、最終的な最大濃度、例えば、上述の濃度までバッファー中の塩濃度を増加させることによって達成されてよい。例えば、リニアグラジエントは、0%から100%の最終濃度のカオトロピック塩を使用してよい。当該グラジエントを陰イオン交換材料に経時的に、例えば、10、20、30、40、50、70、100、150、又はそれ以上のカラム容量で適用してよい。そのようなグラジエント溶出を使用すると、陰イオン交換材料に対して比較的弱い結合親和性を有する成分は、溶出を生じさせるために比較的高濃度の塩を必要とし得る、比較的強い結合親和性を有する成分よりも、比較的低い濃度の塩で比較的早期に放出されるであろう。異なる時間間隔で得られる溶出液の特定のプール又はバッチを選択することによって、異なる組成のポリペプチド種を有するサンプルが得られてよい。
【0095】
漸進的なグラジエントを使用してカオトロピック塩の濃度を増加させるよりも、段階的な増加が使用されてよい。すなわち、塩濃度は、1又は複数の別々の段階で最終的な最大濃度まで増加させてよい。これを使用して、グラジエント溶出の効果を摸倣してよく、ことなる濃度及びかくして異なる段階で異なる成分が放出される。段階的な溶出は、代替的には、アイソクラティック溶出と組み合わせてよい。例えば、使用するバッファー容量を増加させながら異なる成分を溶出させる、その濃度におけるアイソクラティック溶出を生じさせるように、段階的な塩濃度の増加が、溶出バッファーの複数のカラム容量の間に維持されてよい。その後の塩濃度の追加的な段階も使用してよい。
【0096】
溶出バッファー中の塩、例えば、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、又は酢酸ナトリウムの存在においてのみ溶出バッファーが洗浄バッファーと異なる実施態様では、アイソクラティック溶出のための溶出バッファーは、所定量の塩を洗浄バッファーに添加することによって得られてよく、グラジエント溶出は、洗浄バッファー溶液に塩を徐々に添加することによって達成されてよく、かつ、段階的溶出は、別々の段階のバッファー中の塩濃度を増加させるために洗浄バッファーに所定量の塩を添加することによって達成されてよい。
【実施例】
【0097】
実施例1:異なるγ−カルボキシル化された種のFIXの活性の分析
組換えヒト第IX因子(FIX)は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞で生成した。FIXの非活性は、約50%であると測定された。
【0098】
#1−8−、#1−9−、#1−10−、#1−11−、及び#1−12−Glaを主に含む個々のFIX種を分画した。
【0099】
凝固アッセイを使用して、フィブリン凝固形成までのFIX活性依存的な時間を測定した。コンタクトアクチベーター(Contact Activator)(ATCC試薬のエラグ酸)を使用して、FXIIaの生成を刺激し、カルシウム再沈着及びリン脂質の添加によってさらに誘発させた。BeneFIX、及びWHOヒトFIX基準に対して調整したプールした正常なヒト血清に対する活性を測定した。
【0100】
「Hyphen Biomed Chromogenic Factor IX kit」(Aniara)として知られる市販のアッセイキットを使用して、rhFIXの活性レベルを評価した。このアッセイでは、第XIa因子が第IX因子を第IXa因子に活性化し、これが、第VIII因子:C、リン脂質、及びCa2+とともに第X因子を第Xa因子に活性化する。生成された第Xa因子の量は、第Xa因子特異的発色基質であるSXa−11から放出されるpNAの量によって405nmで測定した。
【0101】
#1−11−及び#1−12−Gla種は、凝血塊及び2段階活性アッセイにおいて完全に活性を有していることが認められた。#1−8−、#1−9−、及び#1−10−Gla種は、使用したアッセイに依存して、各々、約2から5%、14から22%、及び27から36%まで活性が低下した。
【0102】
実施例2:異なるγ−カルボキシル化された種のFIXの精製及び分析
組換えヒト第IX因子(rhFIX)について、異なるγカルボキシル化された形態の分離に、陰イオン交換クロマトグラフィーを使用した。前記方法では、6mlのベッドボリューム、3ml/分の流速、及び4℃の温度でSOURCE 15Qカラム(GE Healthcare)を使用した。
【0103】
前記カラムにロードしたサンプル(「ローディングサンプル」)はrhFIXであった。全部で約13mgをロードした。ローディングサンプルは、0.1 M NaOHを使用して、pH8.0に調整した。
【0104】
使用したバッファーは、以下のとおりであった:
平衡化バッファー:20mM Tris/NaOH,pH 8.0,0.01% Tween80;
溶出バッファー:20mM Tris/HCl,1.5M酢酸アンモニウム,pH 8.0,0.01% Tween80;
CIP:1M NaOH。
【0105】
陰イオン交換クロマトグラフィー法は、以下のとおりであった。
【0106】
【表1】
【0107】
この陰イオン交換クロマトグラフィーの結果は図2及び3に示す。
【0108】
9.6mg/74%が得られたC12−D3画分のプールを選択した。このプールのGla含量を、上記ローディングサンプルに使用した本来のサンプルのものと比較した。
【0109】
個々の画分のGla含量の分析は、Agilent HPLCシステムを使用して実施した。HPLC法に基づくGla含量の分析は、N末端配列決定及びアミノ酸塩基性加水分解分析を使用して得られたGla含量分析と相互関係を示した。HPLCは、0.18ml/分の流速でMini Q CP3.2/3カラム(GE Healthcare cat. no 17−0686−01)を使用した。このシステムで使用したバッファーは以下のとおりであった:
A−バッファー:20mM Tris/NaOH,pH 9.0;
B−バッファー:20mM Tris/HCl,pH9.0,1.5M酢酸アンモニウム。
【0110】
このシステムで測定したシグナルは、UV280及び蛍光シグナル(ex:280nm/em:340nm)であった。
【0111】
HPLCの手順は以下のとおりであった:
0 - 5 分 0 - 30 % B
5 - 55 分 30 - 55 % B
55 - 65 分 55 - 100 % B。
【0112】
上述のとおり陰イオン交換クロマトグラフィーを使用して分離する前及び分離した後のGlaの分布の比較を図4に示す。この結果は以下にも示す。
【0113】
【表2】
【0114】
かくして、上述の陰イオン交換クロマトグラフィーを使用する精製によって、全ての検出可能な#1−8−及び#1−9−Glaの本来のFIXサンプルからの除去がもたらされた。#1−10−Glaの存在の減少もあり、結果として#1−11−及び#1−12−Glaの割合の増大も存在した。
【0115】
最終的に精製したプールでは、Benefixと比較して、非活性も約110%まで増加していた(二段階活性アッセイ、データの計算は示さず)。
【0116】
実施例3:異なるγ−カルボキシル化された種のFIXの精製及び分析
組換えヒトFIXの異なるγカルボキシル化された形態の分離に、陰イオン交換クロマトグラフィーを使用した。前記方法では、6mlのベッドボリューム、2ml/分の流速、及び4℃の温度でSOURCE 30Qカラム(GE Healthcare)を使用した。
【0117】
カラムにロードしたサンプル(「ローディングサンプル」)はFIXのサンプルであった。全部で約2.5mgをロードした。ローディングサンプルは0.1M NaOHを使用したpH 8.0に調整した。
【0118】
使用したバッファーは以下のとおりであった:
平衡化バッファー:20mM Tris/NaOH,pH 8.0,0.01% Tween80;
溶出バッファー:20mM Tris/HCl,1.5M酢酸アンモニウム,pH 8.0,0.01% Tween80;
CIP:1M NaOH。
【0119】
陰イオン交換クロマトグラフィー法は、以下のとおりであった。
【0120】
【表3】
【0121】
この陰イオン交換クロマトグラフィーの結果は図5及び6に示す。
【0122】
約1.75mg/70%が得られたC12−D3画分のプールを選択した。このプールのGla含量を、上記ローディングサンプルに使用した本来のサンプルのものと比較した。個々の画分のGla含量分析は、実施例2に記載のとおり、Agilent HPLCシステムを使用して実施した。
【0123】
上述の陰イオン交換クロマトグラフィーを使用して分離する前及び分離した後のGlaの分布の比較を下表に示す。
【0124】
【表4】
【0125】
かくして、上述の陰イオン交換クロマトグラフィーを使用する精製によって、全ての検出可能な#1−8−及び#1−9−Glaの本来のFIXサンプルからの除去がもたらされた。#1−10−Glaの存在の減少もあり、結果として#1−11−及び#1−12−Glaの割合の増大も存在した。
【0126】
実施例4:異なるγ−カルボキシル化された種のFVIIの精製及び分析
組換えヒト第VIIa因子(FVII)の異なるγカルボキシル化された形態の分離に、陰イオン交換クロマトグラフィーを使用した。前記方法では、1.7mlのベッドボリューム、0.75ml/分の流速、及び4℃の温度でSOURCE 15Qカラム(GE Healthcare)を使用した。
【0127】
カラムにロードしたサンプル(「ローディングサンプル」)はCHO細胞から生成したFVIIのサンプルであった。全部で約1.8mgをロードした。ローディングサンプルは1Mストック溶液から50mM EDTAを添加して、0.1M NaOHを使用してpH 8.0に調整した。
【0128】
使用したバッファーは以下のとおりであった:
平衡化バッファー:20mM Tris/NaOH,pH 8.0;
溶出バッファー:20mM Tris/HCl,1.5M酢酸アンモニウム,pH 8.0;
CIP:1M NaOH。
【0129】
陰イオン交換クロマトグラフィー法は、以下のとおりであった。
【0130】
【表5】
【0131】
この陰イオン交換クロマトグラフィーの結果は図7及び8に示す。
【0132】
個々の画分(22から27)のGla含量分析は、実施例2に記載のとおり、Agilent HPLCシステムを使用して実施した。
【0133】
上述の陰イオン交換クロマトグラフィーを使用して分離したFVII Gla種の分布の比較を下表に示す。
【0134】
【表6】
【0135】
上述の陰イオン交換クロマトグラフィーを使用する精製によって、FVIIa Gla種の明確な分離がもたらされた。かくして、FVII Gla種の組成物は、実験者の好ましい態様で調製することができる。
【0136】
実施例5:異なるγ−カルボキシル化された種のFIXの精製及び分析
組換えヒトFIXの異なるγカルボキシル化された形態の分離に、陰イオン交換クロマトグラフィーを使用した。前記方法では、1.7mlのベッドボリューム、0.75ml/分の流速、及び4℃の温度でSOURCE 15Qカラム(GE Healthcare)を使用した。
【0137】
カラムにロードしたサンプル(「ローディングサンプル」)はFIXのサンプルであった。全部で約2mgをロードした。ローディングサンプルは0.1M NaOHを使用してpH 8.5に調整した。
【0138】
使用したバッファーは以下のとおりであった:
平衡化バッファー:20mM Tris/NaOH,pH 8.5;
溶出バッファー:20mM Tris/NaOH,1.0M塩化アンモニウム,pH 8.5;
CIP:1M NaOH。
【0139】
陰イオン交換クロマトグラフィー法は、以下のとおりであった。
【0140】
【表7】
【0141】
この陰イオン交換クロマトグラフィーの結果は図9及び10に示す。
【0142】
個々の画分(E7からF12)のGla含量分析は、実施例2に記載のとおり、Agilent HPLCシステムを使用して実施した。
【0143】
上述の陰イオン交換クロマトグラフィーを使用して分離したFIX Gla種の分布の比較を下表に示す。
【0144】
【表8】
【0145】
上述の陰イオン交換クロマトグラフィーを使用する精製によって、FIX Gla種の明確な分離がもたらされた。かくして、FIX Gla種の組成物は、実験者の好ましい態様で調製することができる。
【0146】
実施例6:異なるγ−カルボキシル化された種のFIXの精製及び分析
組換えヒトFIXの異なるγカルボキシル化された形態の分離に、陰イオン交換クロマトグラフィーを使用した。前記方法では、1.7mlのベッドボリューム、0.75ml/分の流速、及び4℃の温度でSOURCE 15Qカラム(GE Healthcare)を使用した。
【0147】
カラムにロードしたサンプル(「ローディングサンプル」)はFIXのサンプルであった。全部で約2mgをロードした。ローディングサンプルは0.1M NaOHを使用してpH 8.0に調整した。
【0148】
使用したバッファーは以下のとおりであった:
平衡化バッファー:20mM Tris/NaOH,pH 8.0;
溶出バッファー:20mM Tris/HCl,1.0M酢酸ナトリウム,pH 8.0;
CIP:1M NaOH。
【0149】
陰イオン交換クロマトグラフィー法は、以下のとおりであった。
【0150】
【表9】
【0151】
この陰イオン交換クロマトグラフィーの結果は図11及び12に示す。
【0152】
個々の画分(E5からE1)のGla含量分析は、実施例2に記載のとおり、Agilent HPLCシステムを使用して実施した。
【0153】
上述の陰イオン交換クロマトグラフィーを使用して分離したFIX Gla種の分布の比較を下表に示す。
【0154】
【表10】
【0155】
上述の陰イオン交換クロマトグラフィーを使用する精製によって、FIX Gla種のある程度の分離がもたらされた。かくして、FIX Gla種の組成物は、実験者の好ましい態様で調製することができる。
【0156】
実施例7:異なるγ−カルボキシル化された種のFXの精製及び分析
FX活性化ペプチドをフィブリノペプチドA活性化ペプチド(DFLAEGGGVR)に交換し、かつ、HPC4タグをC末端に付加した(DQVDPRLIDGK)、組換えヒトFX構築物の異なるγカルボキシル化された形態の分離に、陰イオン交換クロマトグラフィーを使用した。前記方法では、1.7mlのベッドボリューム、0.75ml/分の流速、及び4℃の温度でSOURCE 15Qカラム(GE Healthcare)を使用した。
【0157】
カラムにロードしたサンプル(「ローディングサンプル」)はFX構築物のサンプルであった。全部で約2.5mgをロードした。ローディングサンプルは0.1M NaOHを使用してpH 8.0に調整した。
【0158】
使用したバッファーは以下のとおりであった:
平衡化バッファー:20mM Tris,pH 8.0;
溶出バッファー:20mM Tris/HCl,1.5M酢酸アンモニウム,pH 8.0;
CIP:1M NaOH。
【0159】
陰イオン交換クロマトグラフィー法は、以下のとおりであった。
【0160】
【表11】
【0161】
この陰イオン交換クロマトグラフィーの結果は図13に示す。
【0162】
個々の画分のGla含量分析は、実施例2に記載のとおり、Agilent HPLCシステムを使用して実施した。
【0163】
前記画分の分析に基づいて、上述の陰イオン交換クロマトグラフィーを使用して分離すする前及び分離した後の分離されたFX Gla種の分布の比較を下表に示す。
【0164】
【表12】
【0165】
かくして、Gla#10及びGla#11の量が増加したFX構築物の組成物が調製された。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリペプチドの精製に関する。特に、本発明は、イオン交換クロマトグラフィーを使用することによって、複数の異なるγカルボキシル化形態のポリペプチドを精製することができる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
γ−カルボキシグルタミン酸(Gla)は、カルシウムに結合するユニークなアミノ酸である。それは、修飾された形態のグルタミン酸(Glu)であり、グルタミン酸残基の翻訳後修飾によってインビボで生成され得る。この態様におけるグルタミン酸のカルボキシル化によって、カルシウム結合が可能になり、凝血因子及び抗凝血因子などのタンパク質のリン脂質への結合を可能にする。γ−カルボキシル化(ガンマカルボキシル化)として知られる、酵素が媒介する反応は、補因子としてビタミンKを必要とする。
【0003】
いくつかの成熟タンパク質は、この態様でγ−カルボキシグルタミン酸に変換しているアミノ酸を豊富に含むドメインを含む。これはGLAドメインとして知られている。このGLAドメインは、タンパク質によるカルシウムイオンの高親和性の結合に関与する場合が多い。そのようなGLAドメインは、各種の異なるタンパク質で認められ得る。例えば、血液凝固因子VII、IX、及びX、並びにプロトロンビンは全て、多数のGlaアミノ酸残基を含むGLAドメインを含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、γカルボキシル化の量又は含まれるγカルボキシグルタミン酸残基の数において異なる、異なる複数の種のポリペプチドを分離又は精製することができることを見出した。本発明は、特に、異なる含有量のγ−カルボキシグルタミン酸を有する複数の種のポリペプチドのクロマトグラフィーによる分離に関する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かくして、本発明は、異なる含有量のγカルボキシグルタミン酸を有する複数の種のポリペプチドの混合物を含むサンプルから、所望の含有量のγ−カルボキシグルタミン酸を有するポリペプチドを精製するための方法であって、
(a)陰イオン交換クロマトグラフィー材料に前記サンプルをロードする工程;
(b)酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、及び酢酸ナトリウムから選択される少なくとも1つの塩を含むpH9.0未満のpHの溶液を使用して前記ポリペプチドを溶出する工程;
(c)前記溶出によって得られた画分を選択する工程であって、前記画分のポリペプチドが所望の含有量のγ−カルボキシグルタミン酸を有する、工程
を含む、方法を提供する。
【0006】
好ましい方法は、以下の工程:
(a)9.0未満のpHのバッファーで陰イオン交換材料を平衡化する工程;
(b)陰イオン交換材料に前記サンプルをロードする工程;
(c)場合によって、9.0未満のpHのバッファーで陰イオン交換材料を洗浄する工程;
(d)酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、及び酢酸ナトリウムから選択される少なくとも1つの塩を含む9.0未満のpHの溶液を使用して、陰イオン交換材料から前記ポリペプチドを溶出する工程;及び
(e)前記溶出によって得られた画分を選択する工程であって、前記画分のポリペプチドが所望の含有量のγ−カルボキシグルタミン酸を有する、工程
を含む。
【0007】
当該態様における精製に適切なポリペプチドは、第IX因子、第VII因子、第VIIa因子、第X因子、プロトロンビン、タンパク質S、タンパク質C、タンパク質Z、オステオカルシン、マトリックス−gla−タンパク質、増殖停止特異的6、プロリンリッチGla1、プロリンリッチGla2、プロリンリッチGla3、及びプロリンリッチGla4を含む。好ましい方法では、前記ポリペプチドは、第IX因子、第X因子、第VII因子、又は第VIIa因子である。
【0008】
前記ポリペプチドが第IX因子である場合は、前記方法は、精製するサンプル中の#1−11−Gla及び/又は#1−12−Glaの形態の第IX因子の割合と比較して、#1−11−Gla及び/又は#1−12−Glaの形態の第IX因子の割合が増大している、前記溶出によって得られた画分を選択する工程を含んでよい。
【0009】
前記ポリペプチドが第X因子又は第VII因子である場合は、前記方法は、精製するサンプル中の#1−10−Gla及び/又は#1−11−Glaの形態の第X因子又は第VII因子の割合と比較して、#1−10−Gla及び/又は#1−11−Glaの形態の第X因子又は第VII因子の割合が増大している、前記溶出によって得られた画分を選択する工程を含んでよい。
【0010】
前記ポリペプチドが第IX因子である場合は、前記方法は、精製するサンプル中の#1−10−Glaの形態の第IX因子の割合と比較して、#1−10−Glaの形態の第IX因子の割合が減少している、前記溶出によって得られた画分を選択する工程を含んでよい。
【0011】
前記ポリペプチドが第X因子又は第VII因子である場合は、前記方法は、精製するサンプル中の#1−9−Glaの形態の第X因子又は第VII因子の割合と比較して、#1−9−Glaの形態の第X因子又は第VII因子の割合が減少している、前記溶出によって得られた画分を選択する工程を含んでよい。
【0012】
本発明の方法では、以下のいずれか1つ又は複数が適用されてよい:
− 溶出バッファーが5.0から8.5の間のpHを有してよい。
− 酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、又は酢酸ナトリウムが、0.1Mから2.0Mの間、好ましくは約0.6Mで溶出バッファー中に存在してよい。
− イオン交換クロマトグラフィーが、5.0から8.5の間のpHの平衡化バッファーを使用してよい。
【0013】
本発明は、本明細書に開示する方法によって得られるポリペプチド製剤、すなわち、γカルボキシル化の程度又は含まれるγカルボキシグルタミン酸残基の数が異なる、1又は複数の種のポリペプチドの量が変化している製剤にも拡張される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1Aは、同定されたサブドメインとともにヒト第IX因子の一次構造を示す。GLAドメインはアミノ酸1−46で認められ、EGF1ドメインはアミノ酸47−83で認められ、EGF2ドメインはアミノ酸84から124で認められ、活性化ペプチドはアミノ酸146から180で認められ、プロテアーゼドメインはアミノ酸181から415で認められる。γ−カルボキシル化に潜在的に供されるGlaドメインの12アミノ酸は、「γ」と標識しており、アミノ酸7、8、15、17、20、21、26、27、30、33、36、及び40に位置する。図1Bは、ヒト第VII因子、第IX因子、及び第X因子ポリペプチドのアミノ酸配列の一部のアラインメントを示す。これらのアラインメントは、これらのポリペプチドの各々のGLAドメインに由来し、*としてGla残基の位置を示す。
【図2】図2は、実施例2に記載のとおり、rhFIXのサンプルの陰イオン交換クロマトグラフィーから得られたクロマトグラムを示す。
【図3】図3は、図2の拡大した小区分を示す。
【図4】図4は、実施例2の陰イオン交換クロマトグラフィーによる分離の前及び後のGla種の分布の分析を示す。前=実施例2の「適用」として使用したrhFIXのサンプル中のGla種の分布。このサンプルは、免疫親和性捕捉によって精製して、rhFIXの95%超の純度のサンプルを産生した。後=実施例2で得られたCD12−D3の画分のプール中のGla種の分布。
【図5】図5は、実施例3に記載のとおりにrhFIXのサンプルの陰イオン交換クロマトグラフィーから得られたクロマトグラムを示す。
【図6】図6は、図5の拡大した小区分を示す。
【図7】図7は、実施例4に記載のとおりにFVIIのサンプルの陰イオン交換クロマトグラフィーから得られたクロマトグラムを示す。
【図8】図8は、図7の拡大した小区分を示す。
【図9】図9は、実施例5に記載のとおりにrhFIXのサンプルの陰イオン交換クロマトグラフィーから得られたクロマトグラムを示す。
【図10】図10は、図9の拡大した小区分を示す。
【図11】図11は、実施例6に記載のとおりにrhFIXのサンプルの陰イオン交換クロマトグラフィーから得られたクロマトグラムを示す。
【図12】図12は、図11の拡大した小区分を示す。
【図13】図13は、実施例7に記載のとおりにFXのサンプルの陰イオン交換クロマトグラフィーから得られたクロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、異なるレベルのγカルボキシル化を有するポリペプチド種が異なるレベルの活性を有し得ること、及びその様な異なる種がイオン交換クロマトグラフィーを使用して精製又は分離することができることを発見したことに由来する。より活性の高いポリペプチド種の割合を増大することによって、及び/又はサンプル中のより活性の低いポリペプチド種の割合を低減することによって、比活性が増大した精製製剤の製造をもたらすことができる。
【0016】
「ポリペプチド」は、2又はそれ以上のサブユニットアミノ酸、アミノ酸アナログ、又は他のペプチド摸倣薬の化合物をであるという最も広い意味で本明細書で使用する。かくして、用語「ポリペプチド」は、短いペプチド配列並びにより長いポリペプチド及びタンパク質を含む。本明細書で使用する用語「アミノ酸」は、天然及び/又は非天然若しくは合成アミノ酸であり、グリシン及びD又はL光学異性体の双方、並びにアミノ酸アナログ及びペプチド摸倣薬を含む。「成熟」タンパク質は、翻訳後プロセシング、例えば、カルボキシル化、糖鎖付加、又はターゲティング配列などのプロペプチド領域の切断を受けたポリペプチドである。成熟タンパク質の形態にある本発明のポリペプチドは、かくして、γカルボキシル化を受けて、1又は複数のGlu残基が翻訳後の配列においてGlaに変換されていてよい。
【0017】
本明細書に記載の方法は、γカルボキシル化されているか又はされ得る任意のポリペプチドの精製に使用してよい。
【0018】
本発明の方法に使用するポリペプチドは、1又は複数のγカルボキシグルタミン酸残基を含むポリペプチドであってよい。そのようなポリペプチドは、ポリペプチドのアミノ酸配列を調べて、Glaが存在するか測定することによって同定されてよい。
【0019】
γ−カルボキシグルタミン酸を含む多数のポリペプチドが知られている。プロトロンビン、第VII因子(第VIIa因子を含む)、第IX因子、第X因子、タンパク質C、及びタンパク質Sを含む、多数の血液凝固及び調節タンパク質がGla残基を含む。これらのタンパク質は、成熟タンパク質のN末端の最初の40残基内に位置するGLAドメインに10から12のγカルボキシグルタミン酸残基を含み得る。骨タンパク質、例えば、オステオカルシン及びマトリックスGlaタンパク質、並びに他の哺乳動物ビタミンK依存性タンパク質、例えば、増殖停止特異的6(Gas6)、タンパク質Z、プロリンリッチGla1(PRGP1)、プロリンリッチGla2(PRGP2)、プロリンリッチGla3(PRGP3)、及びプロリンリッチGla4(PRGP4)も多数のGla残基を含む。γカルボキシグルタミン酸残基は非哺乳動物タンパク質、例えば、コノペプチドであるコナントキンG及びコナントキンTにおいても認められている。これらのペプチドのいずれかが本発明にしたがって精製されてよい。
【0020】
本発明の方法に使用するポリペプチドは、翻訳後修飾されて、1又は複数のγカルボキシグルタミン酸残基を含み得るポリペプチドを含んでよい。例えば、そのような残基は、ポリペプチドのグルタミン酸残基のγカルボキシル化によって生成されてよい。したがって、ポリペプチドのアミノ酸配列は、1又は複数のグルタミン酸(Glu)残基を含んでよい。この態様で翻訳後修飾され得るポリペプチドは、天然のポリペプチドであってよい。そのようなポリペプチドは、任意の適切な生物に由来してよい。例えば、前記ポリペプチドは、天然の哺乳動物ポリペプチド、例えば、げっ歯類、霊長類、ネコ、イヌ、ヒツジ、ウシ、ブタ、又は他の哺乳動物のポリペプチドであってよい。好ましくは、前記ポリペプチドは、マウス、ラット、又はヒトのポリペプチドである。最も好ましくは、前記ポリペプチドはヒトのポリペプチドである。前記ポリペプチドは非哺乳動物の種に由来してよい。例えば、幾つかのコノトキシンはγカルボキシグルタミン酸を含み得る。前記ポリペプチドは、かくして、軟体動物、例えば、腹足類に由来する天然のポリペプチドであってよい。腹足類は、巻貝、例えば、イモガイであってよい。この態様で翻訳後修飾され得るポリペプチドは、天然のポリペプチドのバリアント、例えば、上述の既知のγカルボキシル化タンパク質の1つのバリアント、人工ポリペプチド、例えば、合成ポリペプチド、又は組換え技術によって生産された変異体又はバリアントタンパク質であってよい。
【0021】
前記ポリペプチドは、GLAドメインを有するポリペプチドであってよい。GLAドメインは、γカルボキシグルタミン酸(Gla)を形成する多数のグルタミン酸(Glu)残基の翻訳後修飾を含むタンパク質ドメインである。これらのGla残基は、一般的には、ポリペプチドの1つの領域又はドメインに位置する。これは、成熟タンパク質のポリペプチドのN末端に位置する場合が多い。
【0022】
例えば、図1Aは、ヒト第IX因子タンパク質の一次構造を示す。このタンパク質は、アミノ酸1から46にGLAドメインを含む。このドメインは、グルタミン酸からGlaに修飾され得る12アミノ酸残基を含む。これらは、7、8、15、17、20、21、26、27、30、33、36、及び40位に位置する。したがって、12までのGla残基を含むことが可能である。したがって、本発明にしたがって精製されるポリペプチドは、第IX因子であってよい。図1Bは、ヒト第VII因子、第IX因子、第X因子タンパク質のGlaドメインに基づくアラインメントを示す。各配列においてグルタミン酸からGlaに修飾され得るアミノ酸残基の位置は、*として示す。したがって、本発明にしたがって精製されるポリペプチドは、第VII因子又は第X因子であってよい。
【0023】
本発明に使用するためのポリペプチドは、既知のγカルボキシル化タンパク質由来のGLAドメイン、例えば、第IX因子、第VI因子、若しくは第X因子、又は上述の他の既知のγカルボキシル化タンパク質のいずれか、例えば、他の血液凝固因子由来のGLAドメインを含んでよい。
【0024】
本発明の方法で使用するためのポリペプチドは、1又は複数のγカルボキシグルタミン酸残基を含むか又は含むことができるポリペプチドであってよい。例えば、前記ポリペプチドは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、又はそれ以上のGla残基を含むか又は含むことができる可能性がある。好ましくは、前記ポリペプチドは、1を超えるGla残基、例えば、1を超える、2を超える、5を超える、又は9を超えるGla残基を含むか又は含むことができる。前記ポリペプチドは、10まで、12まで、15まで、又は20までのGla残基を含むか又は含むことができる可能性がある。以下にさらに記載するとおり、本発明の方法によって、異なるレベルのγカルボキシル化が生じている異なる複数の分子種のポリペプチドの精製ができる。本明細書で言及する数は、ポリペプチドに存在し得るGla残基の総数である。すなわち、前記ポリペプチドが完全にγカルボキシル化される場合は、これらの数は存在するGla残基の数を示す。例えば、γカルボキシル化がGLAドメインで生じる場合は、これらの数は、前記GLAドメインにおけるγカルボキシル化の可能な部位の総数、例えば、翻訳されたポリペプチドのGlu残基の総数又はγ−グルタミルカルボキシラーゼなどの酵素の作用によって生成され得るGla残基の最大数である。同じポリペプチドのさらなる種も存在して、最大よりも少ないγカルボキシグルタミン酸残基が存在する可能性がある。
【0025】
したがって、前記ポリペプチドは、翻訳されたアミノ酸配列のN末端40残基に多数のGlu残基を含んでよい。例えば、発現したポリペプチドのアミノ酸配列は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、又はそれ以上のGlu残基をポリペプチドのN末端に最も近い40アミノ酸又は成熟タンパク質のN末端に基も近い40アミノ酸に含んでよい。
【0026】
γカルボキシル化は酵素を使用して達成されてよい。そのようなγグルタミルカルボキシラーゼ酵素は、インビボの多数のポリペプチドのγカルボキシル化に関与していることが知られている。γ−グルタミルカルボキシラーゼは、多数のビタミンK依存性凝固因子のGLAドメインにおけるGluからGlaへの翻訳後修飾を触媒する小胞体酵素である。かくして、本発明に使用するためのポリペプチドは、γ−グルタミルカルボキシラーゼによってγカルボキシル化されるか否か測定することによって同定されてよい。
【0027】
γ−グルタミルカルボキシラーゼ酵素は、カルボキシル化されるグルタミン酸残基のアミノ末端側の配列モチーフを介して、その基質タンパク質に結合すると解されている。前記酵素は、次いで、その領域の多数のグルタミン酸残基、例えば、GLAドメインの全てのグルタミン酸残基を、基質を解放する前に、カルボキシル化し得る。したがって、本発明に使用するためのポリペプチドは、γ−グルタミルカルボキシラーゼ又はγカルボキシル化をすることができる他の酵素によって認識されるモチーフ又は部位を含んでよい。この認識部位は、前記ポリペプチドのN末端領域、例えば、翻訳されたポリペプチドのN末端又は成熟タンパク質のN末端に最も近い18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、又は40アミノ酸内に位置してよい。前記認識部位は、カルボキシル化されるグルタミン酸残基のアミノ末端側に位置してよい。例えば、多数の天然γカルボキシル化タンパク質において、γ−グルタミルカルボキシラーゼ酵素が、プロペプチド領域の部位を認識及び結合する。その領域は、その後にポリペプチドの残部から翻訳後プロセシングの間に切断される。したがって、γカルボキシラーゼ認識部位は、成熟タンパク質には存在しない可能性がある。
【0028】
プロトロンビン及び第IX因子では、γ−グルタミルカルボキシラーゼ酵素の認識に関与する部位が、残基−18、−17、−15、−15、及び−10によって規定される。類似の認識部位が、他のγカルボキシル化タンパク質に認められる。−16位のフェニルアラニン及び−10位のアラニンは、カルボキシラーゼ基質のプロペプチド内によく保存されており、−17及び−15位のイソロイシン、ロイシン、及びバリンなどの脂肪族残基も同様である。−16位のロイシン、バリン、又はリジンもカルボキシル化を支え得る。本発明に使用するためのポリペプチドは、既知のカルボキシル化タンパク質に由来するγカルボキシル化認識部位、例えば、第IX因子、第X因子、第VII因子、又は上述の任意の他の既知のγカルボキシル化タンパク質由来のγカルボキシル化認識部位を含んでよい。例えば、γカルボキシル化認識部位を含む、任意のそのようなタンパク質由来のプロペプチド領域は、翻訳後のポリペプチドのN末端に存在して、γ−グルタミルカルボキシラーゼによるポリペプチドの適切な翻訳後プロセシングを可能にする可能性がある。
【0029】
γカルボキシル化されることが可能なポリペプチドは、好ましくは、以下の基準の一方又は双方を満たす:
(1)ポリペプチドがγカルボキシル化認識部位を含む、及び
(2)γカルボキシル化認識部位の40残基内にグルタミン酸残基が存在する。
【0030】
γ−グルタミルカルボキシラーゼ酵素は、粗面小胞体において活性を有すると解されている。この酵素によってγカルボキシル化されるポリペプチドについては、前記ポリペプチドが、γ−グルタミルカルボキシラーゼ酵素を発現する細胞の粗面小胞体を通過することが好ましい。かくして、前記ポリペプチドは、粗面小胞体を通過する新規に合成されたポリペプチドの輸送を可能にする配列を含んでよい。粗面小胞体へのポリペプチドの標的化を可能にするシグナル配列がよく知られている。そのようなシグナル配列は、ポリペプチドのアミノ末端で認められる場合が多く、16から30アミノ酸長であるか又は4から12疎水性残基を含んでよい。そのようなシグナルペプチドは、一般的には、シグナルペプチダーゼによってポリペプチド分子から切断され、成熟タンパク質には存在しない。
【0031】
ポリペプチドのγカルボキシル化を生じさせるために、好ましくは、前記ポリペプチドは細胞内で発現する。本発明で使用するポリペプチドは、そのような細胞内における発現によって合成されてよい。好ましくは、ポリペプチドを発現させる細胞は、必要な細胞機構を含み、ポリペプチドのγカルボキシル化を可能にする。例えば、前記細胞は、γ−グルタミルカルボキシラーゼを発現してよい。好ましくは、タンパク質を合成する細胞は、粗面小胞体に結合したγカルボキシラーゼを有する。前記細胞は、酵素補因子、例えば、ビタミンKの存在下で培養してよい。好ましくは、タンパク質を合成する細胞は、細胞内ビタミンKを含む。
【0032】
γカルボキシル化され得るポリペプチドは、そのような細胞でポリペプチドを発現させて、γカルボキシル化が生じるか否か測定することによって同定されてよい。例えば、ポリペプチドは、本明細書に記載の細胞で発現させてよく、例えば上述のシグナルペプチドを使用することによって、そのような細胞の粗面小胞体に標的化されてよい。そのような細胞でペプチドを発現させて、発現して翻訳後プロセッシングを受けたポリペプチドがGla残基を含むか否か測定することによって、γカルボキシル化され得るポリペプチドを同定してよい。
【0033】
本発明の方法は、異なる程度のγカルボキシル化を有する他の種のポリペプチドから、1又は複数の種のポリペプチドを精製することを伴う。ポリペプチドが2以上の部位でγカルボキシル化され得る場合に、異なる数のγカルボキシグルタミン酸アミノ酸残基が存在するか又はγカルボキシグルタミン酸残基がポリペプチド分子内の異なる可能な位置に存在する、異なる種のポリペプチドが存在してよい。
【0034】
例えば、幾つかの種のポリペプチドは、完全にγカルボキシル化されていてよい。すなわち、γカルボキシル化によって、γカルボキシル化が可能なポリペプチド内の全ての残基において、例えば、GLAドメインの全てのGlu残基において、グルタミン酸がγカルボキシグルタミン酸に変換されてよい。他の種のポリペプチドは部分的にγカルボキシル化されてよい。すなわち、γカルボキシル化が可能なポリペプチド内の全てではなく幾つかの残基において、例えば、GLAドメインの全てではなく幾つかのGlu残基において、γカルボキシル化によってグルタミン酸がγカルボキシグルタミン酸に変換されてよい。
【0035】
各種の異なる部分的にγ脱カルボキシル化された種が同定されてよい。これらは、各種の方法で分類してよい。例えば、γ脱カルボキシル化の程度は、ポリペプチド内のどの残基がγ脱カルボキシル化されているかによって定義されてよく、又はポリペプチド内に存在するγカルボキシグルタミン酸アミノ酸残基の総数によって定義されてよい。後者の分類は、多数の構造的に異なる分子種のポリペプチドが、それらが含むγカルボキシグルタミン酸残基の総数に基づいて、まとめて扱われることを意味してよい。例えば、1つ以外の全ての可能なγカルボキシグルタミン酸残基が存在するポリペプチドの多数の種が、γカルボキシル化されている可能性がある異なる位置にグルタミン酸が維持されている多数の異なる亜種のポリペプチドを含んでよい。
【0036】
γ−グルタミルカルボキシラーゼの作用のメカニズムのため、γカルボキシル化は、一般的に、γカルボキシル化認識部位に最も近いGlu残基で開始し、ポリペプチドのN末端から進行する。ポリペプチドが完全にはγカルボキシル化されていない場合は、一般的には、さらなるGlu残基が変換される前に、γカルボキシル化が停止されているか又は酵素がポリペプチドから解放されていることに原因がある。γカルボキシル化結合部位から最も遠い又はタンパク質のN末端から最も遠いGlu残基が、部分的にγカルボキシル化されたポリペプチドにおいてγカルボキシル化されていないことが一般的である。
【0037】
例えば、図1に示すとおり、ヒト第IX因子は、12までのγカルボキシグルタミン酸残基を含む。存在するGla残基の実際の数は、分子が受けたγカルボキシル化による翻訳後修飾の程度に依存して、異なるポリペプチド分子において変化するであろう。これは、ヒト第IX因子のサンプルが、完全にγ脱カルボキシル化されている、すなわち、12の全ての可能なγカルボキシグルタミン酸残基(#1−12Gla)を有する、複数の種の第IX因子を含む可能性があることを意味する。
【0038】
前記サンプルは、可能な12のγカルボキシグルタミン酸残基のうちの11を有する第IX因子の1又は複数の種も含む可能性がある。これらのうち、最も可能性があるのが、ポリペプチドのN末端に最も近い11のGlu残基がGlaに変換されているが、図1に示す40位の12番目のGlu残基がGluのままである場合である。かくして、この場合には、1から11のGlu残基のみがGlaに変換されている(#1−11Gla)。
【0039】
前記サンプルは、可能な12のγカルボキシグルタミン酸残基のうちの10を有する第IX因子の1又は複数の種も含む可能性がある。これらのうち、最も可能性があるのが、ポリペプチドのN末端に最も近い10のGlu残基がGlaに変換されているが、図1に示す36及び40位の11及び12番目のGlu残基がGluのままである場合である。かくして、この場合には、1から10のGlu残基のみがGlaに変換されている(#1−10Gla)。
【0040】
前記サンプルは、#1−9Glaなどの可能な12のγカルボキシグルタミン酸残基のうちの9を有する第IX因子の1又は複数の種も含む可能性がある。前記サンプルは、可能な12のγカルボキシグルタミン酸残基の9未満、例えば、8、7、6、5、4、3、2、1、又は0を有する第IX因子の1又は複数の種を含んでもよい。
【0041】
本発明は、そのような多数の種のポリペプチドの精製のための方法を提供する。特に、多数の種のポリペプチドは、サンプル中のポリペプチドの他の種に対して精製されてよい。かくして、本発明の方法は、ポリペプチドのサンプル中の興味がある種の相対的な割合の増加をもたらし得る。これは、1又は複数の異なる種のポリペプチドをサンプルから除去し、かくして、興味のある種から形成される全体としてのペプチドの割合を増やすことによって達成されてよい。これは、サンプルからの1又は複数の特定の種の特異的な除去、サンプルからの興味ある種ではない1又は複数の種の除去、又は興味のある種の割合が本来のサンプルよりも低いサンプルの画分の除去によって達成されてよい。これらの手法のいずれかによって、興味ある種の割合の全体としての増加をもたらし得る。かくして、本発明の方法は、異なる種のポリペプチドの混合物を含むサンプル中のポリペプチドの特定の種の割合の増加又は減少をもたらし得る。
【0042】
ポリペプチドの種の割合の増加は、全体としてのポリペプチドのサンプル中の当該種の割合における5%、10%、20%、30%、又はそれ以上までの増加であってよい。ポリペプチドの種の割合の減少は、全体としてのポリペプチドのサンプル中の当該種の割合における5%、10%、20%、30%、50%、70%、90%、又はそれ以上までの減少であってよい。ポリペプチドの種の割合の減少は、本来のサンプルに存在する量と比較して、存在する種の量における5%、10%、20%、30%、50%、70%、90%、又はそれ以上までの減少であってよい。ポリペプチドの種の割合における減少は、サンプルから当該種を完全又は実質的に除去することであってよい。例えば、本発明の方法は、サンプルからの特定の種の検出可能なポリペプチドの全て又は実質的に全てを除去することによって、ポリペプチドのサンプルを精製してよい。そのようなサンプル中に残存する種の量は、本来のサンプルに存在する量の10%、5%、2%、又は1%未満であってよい。
【0043】
かくして、本発明の方法の目的は、ポリペプチドのサンプル中の異なる種の相対的な割合を変化させることである。異なる種は、異なる性質又は異なる活性を有してよい。ポリペプチドのサンプル中のその様な種の量又は割合を変化させることによって、全体としてのサンプルの性質又は活性を変化させてよい。例えば、異なる種のポリペプチドは異なる程度の活性を有する場合には、より高いレベルの活性を有する種の割合を増加させ、及び/又はより低い活性を有するか若しくは活性を有しない種の割合を減少させることによって、サンプルの比活性、例えば、ポリペプチドの1分子あたりの平均活性又は所定量のポリペプチドの可能な最大活性の割合を増加してよい。
【0044】
例えば、組換え技術によって生成したヒト第IX因子(rhFIX)が約50%の比活性を示すことが認められている。そのようなサンプルの分画によって、#1−8−、#1−9−、#1−10−、#1−11−、及び#1−12−Glaを主に含む、複数の個別のrhFIX種を含むことが示された。#1−11−及び#1−12−Glaは、凝固アッセイ及び2段階活性アッセイにおいて完全に活性を有することが認められた。#1−8−、#1−9−、及び#1−10−Glaの種は、使用したアッセイに依存して、約2−5%、14−22%、及び27−36%まで低減した活性を示した。
【0045】
したがって、γカルボキシル化の程度のみが変化しているrhFIXの異なる種が、異なるレベルの活性を示すことが認められ得る。より高い割合の#1−11−及び/又は#1−12−Glaを有するサンプルは、それらの種の割合がより低いサンプルよりも高い比活性を示すことが予測されるであろう。#1−8−及び/又は#1−9−及び/又は#1−10−Glaの割合がより高いサンプルは、それらの種の割合がより低いサンプルよりも低い比活性を示すことが予測されるであろう。
【0046】
かくして、第IX因子のサンプルの全体的な比活性を、サンプル内のその様な種の割合を変化させることによって変化させてよい。この場合には、第IX因子のサンプルの全体的な比活性は、以下:
- サンプル中の#1−12−Glaの割合の増加;
- サンプル中の#1−11−Glaの割合の増加;
- サンプル中の#1−10−Glaの割合の減少;
- サンプル中の#1−9−Glaの割合の減少;
- サンプル中の#1−8−Glaの割合の減少;
- サンプル中の#1−7−Glaの割合の減少;
- サンプル中の#1−6−Glaの割合の減少;
- サンプル中の#1−5−Glaの割合の減少;
- サンプル中の#1−4−Glaの割合の減少;
- サンプル中の#1−3−Glaの割合の減少;
- サンプル中の#1−2−Glaの割合の減少;及び
- サンプル中の#1−1−Glaの割合の減少
のいずれか1つ又は複数によって増加し得ることが予測できる。
【0047】
これらの変化のいずれか1つ又は複数が、本発明にしたがって、第IX因子のサンプルの精製時に選択されてよい。
【0048】
第IX因子の好ましいサンプルは、#1−11−Glaおよび#1−12−Glaのみを含み、これよりも低い程度のγカルボキシル化を有する種、例えば、#1−10−、#1−9−、及び#1−8−Gla種を欠いているか又は実質的に欠いている。
【0049】
この方法は、hFIXの現存する組成物に適用されてよい。例えば、本明細書に説明しているとおり、実施例2で使用したhFIXは、45.6%の#1−12−Gla、36.0%の#1−11−Gla、13.6%の#1−10−Gla、3.3%の#1−9−Gla、及び1.6%の#1−8−Glaを有することが認められた。rhFIXは、Benefix(登録商標)の商品名でWyeth社によって市販されている。Benefix(登録商標)は、約8−10%、25−31%、及び60−67%の各々の#1−10−、#1−11−、及び#1−12−Glaの含有量を有する。本明細書に記載の方法を使用して、そのような組成物の#1−11−Gla及び/又は#1−12−Glaの割合を増加してよいと解することができる。本明細書に記載の方法を使用して、その様な製剤において、より少なくγカルボキシル化された種、例えば、#1−10−Gla、#1−9−Gla、及び#1−8−Glaの割合を減少させてよい。これによって、そのような製剤のhFIXの比活性が改善されると予測される。
【0050】
他のGla含有ポリペプチドに対して、類似の方法を使用してよい。例えば、第VII因子及び第X因子は、11までのGla残基を含む可能性がある。実施例4に示すとおり、本発明の方法を使用して、例えば、#1−9−、#1−10−、又は#1−11−第VII因子の割合を変化させてよい。本明細書に記載の方法を使用して、それらのGla含有量に依存して、異なる種の第VII因子の割合を変化させてよい。例えば、本明細書に記載の方法を使用して、そのような組成物において、#1−10−Gla及び/又は#1−11−Glaの割合を増加させてよい。本明細書に記載の方法を使用して、そのような組成物において、より少なくγカルボキシル化された種、例えば、#1−9−Gla又はそれ以下の種の割合を減少させてよい。
【0051】
同様に、実施例7は、多数の種の第X因子を含む製剤を、第X因子の異なるGla含有種の割合を変化させるために、本発明の方法にしたがって処理してよいことを示す。陰イオン交換クロマトグラフィーの間に適切な画分を選択することによって、異なる割合の異なるGla種を含むサンプルが選択されてよい。例えば、本明細書に記載の方法を使用して、そのような組成物において、#1−10−Gla及び/又は#1−11−Glaの割合を増加させてよいことが実施例7から認められる。本明細書に記載の方法を使用して、より少なくγカルボキシル化された種、例えば、#1−9−Gla及びそれ以下の種の割合を減少させてよい。
【0052】
かくして、本発明の方法は、あるポリペプチドの種を同一のポリペプチドの他の種から精製することを可能にする方法であって、前記種がγカルボキシル化されている程度において異なるか又はそれらのアミノ酸配列のGla残基の数において異なる、方法を提供する。
【0053】
本発明の方法は、陰イオン交換クロマトグラフィーを使用する。本発明は、特に、興味あるポリペプチドを陰イオン交換材料に結合させ、陰イオン交換材料からの前記ポリペプチドの溶出を、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、又は酢酸ナトリウムを含むバッファーを使用して実施する方法に関する。
【0054】
陰イオン交換材料は、正に荷電したイオン交換材料である。したがって、陰イオン交換材料を横切るか又は通過する水溶液中の陰イオンと交換され得る遊離の陰イオンを有する。電荷は、1又は複数の荷電したリガンドを固相に結合させることによって提供されるか、又は固相の固有の性質であってよい。前記固相は、例えば、精製カラム、粒子若しくはビーズ、膜、又はフィルターであってよい。一般的には、陰イオン交換樹脂は、約7未満のpIを有するポリペプチドの精製のために使用してよい。本明細書に記載のとおりに使用してよい市販の陰イオン交換材料は、例えば、QセファロースFast Flow、Macroprep 25Q、Poros HQ50、Source 30Q、Source 15Q、Mini Q、Mono Q、好ましくはMini Q、Mono Q、Capto Q、QセファロースHP、Toyopearl QAE 550C、Unosphere Q、DEAEセファロースFF、Fratoprep DEAE、及びQ HyperD 20を含む。
【0055】
陰イオン交換材料は、強い陰イオン交換基、例えば、第四級アミンを利用してよい。陰イオン交換材料は、弱い陰イオン交換基、例えば、ジエチルアミノエチル(DEAE)を利用してよい。適切な陰イオン交換材料は、例えば、精製する特定のポリペプチドに依存して、当業者に選択されてよい。
【0056】
前記陰イオン交換材料は、精製する特定のポリペプチド及び使用する条件、例えば、pH、バッファー、イオン強度などに依存して選択してよい。
【0057】
従来の陰イオン交換クロマトグラフィー精製プロセスは、通常、陰イオン交換材料の平衡化、サンプルの適用又はロード、1又は複数の洗浄工程、溶出、及び陰イオン交換材料の再生から選択される1又は複数の工程からなる。陰イオン交換クロマトグラフィーの標準的な方法は、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciencesで認められてよい。陰イオン交換樹脂は、好ましくは、興味のあるポリペプチドをロードする前に平衡化する。この平衡化工程の目的は、前記方法の後の工程で使用するものとよりよく似たものに陰イオン交換材料の条件を調整することである。クロマトグラフィーの間の移動相の組成の変化を避けるために、アニオン交換材料は、開始バッファーのpH及びイオン組成(例えば、伝導率、バッファー組成)に平衡化させるべきである。例えば、平衡化バッファーのイオン強度(例えば、導電率、pH)は、前記方法の後の工程において使用するバッファー、例えば、ポリペプチドのロードに使用するバッファー及び/又は洗浄バッファーのイオン強度に可能な限り似せるように選択されてよい。
【0058】
したがって、前記アニオン交換材料は、後の工程で使用するバッファー又は製剤に密接に基づいたバッファーを使用して平衡化されてよい。例えば、同一のバッファーが、陰イオン交換材料の平衡化及びサンプルのロードに使用されてよい。同一のバッファーが、陰イオン交換材料の平衡化及びサンプルをロードした後の陰イオン交換材料の洗浄に使用されてよい。平衡化バッファーは、ローディングバッファー及び/又は洗浄バッファーと同じpHを有してよい。平衡化バッファーは、ローディングバッファー及び/又は洗浄バッファーと同じ伝導率を有してよい。平衡化バッファーは、ロードする製剤及び/又は洗浄バッファーと同じ緩衝化物質を使用してよい。平衡化バッファーは、ロードする製剤及び/又は洗浄バッファーと同じ緩衝化物質濃度を有してよい。平衡化バッファーは、ロードする製剤及び/又は洗浄バッファーにも存在する追加の成分、例えば、界面活性剤を含んでよい。
【0059】
平衡化バッファーのpHは、精製する特定のポリペプチドに依存して決定されてよい。例えば、多数のポリペプチド、例えば、第IX因子については、9以上のpHは最適ではない。これらのpH値において、ポリペプチドの自己賦活及び/又は分解が認められる可能性があるからである。
【0060】
本発明で使用するための平衡化バッファーは、例えば、約5.0から約8.5、例えば、pH5.0からpH8.5のpHで形成されてよい。平衡化バッファーのpHは、約5.0超、約5.5超、約6.0超、約6.5超、約7.0超、約7.5超、又は約8.0超であってよい。平衡化バッファーのpHは、約8.5未満、約8.0未満、約7.5未満、約7.0未満、約6.5未満、約6.0未満、又は約5.5未満であってよい。そのような端点の任意の組み合わせが組み合わされてよい。例えば、平衡化バッファーのpHは、約7.0超であり、かつ、約8.5未満であってよい。前記pHは、例えば、約pH7.0、7.5、8.0、又は8.5であってよい。
【0061】
pH値は、本明細書に記載のポリペプチド、例えば、第IX因子、第VII因子、又は第X因子の精製のための陰イオン交換材料の平衡化に適切なものであってよい。
【0062】
平衡化バッファーの適切な成分は、緩衝化物質、例えば、Tris、ホスフェート、MES、Hepes、又はカーボネートを含んでよい。陰イオン交換クロマトグラフィー法に関しては、緩衝化陽イオン、例えば、Trisが好ましい。そのような緩衝化物質は、上述のpHに平衡化バッファーを維持するために使用されてよい。1つの実施態様では、同じ緩衝化物質及び緩衝化物質濃度が、陰イオン交換クロマトグラフィー法全体を通じて使用される。例えば、平衡化バッファー、洗浄バッファー、及び溶出バッファーの全てが、同じ緩衝化物質濃度で同じ緩衝化物質を含んでよい。緩衝化物質濃度は、陰イオン交換法の間に緩衝化能及び一定のpHを維持するのに十分であるべきである。例えば、緩衝化物質及び緩衝化物質濃度は、サンプルの適用の間及び溶出の間の安定なpH及び緩衝化能を維持するように選択されてよい。適切な緩衝化物質濃度は、例えば、5mMから50mMの間、例えば、10mMから40mMの間であってよい。適切な緩衝化物質濃度は、例えば、5mM、10mM、15mM、20mM、又は25mMであってよい。
【0063】
平衡化バッファーは、1又は複数の追加の成分を含んでよい。平衡化バッファーは、添加剤、例えば、エチレングリコール、エタノール、尿素、又はタンパク質の可溶性を増加させるために使用する界面活性剤を含んでよい。陰イオン交換クロマトグラフィーに使用する界面活性剤は、陰イオン交換材料と同じ電荷又は中性であるべきである。非イオン性界面活性剤、例えば、Tween 80、Tween 20、又はTriton X100が、例えば、1%未満、0.5%未満、0.1%未満、又は0.01%未満の濃度で使用されてよい。非緩衝化塩、例えば、NaClを使用して、バッファーのイオン強度を調整してよい。
【0064】
興味あるポリペプチドを含むサンプルを陰イオン交換材料にロードする。これは、ポリペプチドが陰イオン交換材料中又は上に固定化されるように、適当な条件下(例えば、導電率及び/又はpH)において陰イオン交換材料にサンプルを曝露することによって達成される。固定化又は結合は、ポリペプチドと陰イオン交換材料の荷電した基との間のイオン性相互作用によって達成される。その様な結合は、一般的には、陰イオン交換材料と接触する移動相のイオン強度が、興味あるポリペプチドのイオン性の基が陰イオン交換材料上の電荷を有する基のカウンターイオンとして働き始めるほどまで減少する際に生じる。
【0065】
本発明の方法で精製するサンプルは、上述のポリペプチドを含む任意のサンプルであってよい。好ましくは、前記サンプルは、同じポリペプチドの2以上の異なる種を含み、前記種は、γカルボキシル化の程度及び/又は位置で異なる。
【0066】
上述のとおり、興味あるポリペプチドは、任意のルーチンな手法を使用して得られてよい。例えば、前記ポリペプチドは、インビボの起源、例えば、動物から得られてよく、又はインビトロ、例えば、組織又は細胞で生成されてよい。興味あるポリペプチドは、例えば、細胞中のポリペプチドの発現を誘導することによって、組換え技術によって生成されてよい。例えば、興味あるポリペプチドは、前記ポリペプチドをコードして発現することができるポリヌクレオチドを用いて形質転換又はトランスフェクトした宿主細胞で生成されてよい。そのような宿主細胞は、ポリペプチドの発現が可能である条件下において培養されてよい。次いで、前記ポリペプチドは、培養培地又は宿主細胞自体から回収されてよい。
【0067】
好ましくは、前記ポリペプチドは、陰イオン交換樹脂に適用する前に精製される。例えば、前記ポリペプチドは、1又は複数の精製工程、例えば、沈殿、免疫沈降、等電点電気泳動、濾過、遠心分離、又はクロマトグラフィー、例えば、他の陰イオン交換クロマトグラフィーに供してよい。
【0068】
そのような精製を使用して、1又は複数の混入物質の一部又は全部をサンプルから除去することによって、興味あるポリペプチドの純度の程度を増加してよい。混入物質は、興味あるポリペプチドではない任意の分子であってよい。例えば、前記混入物質は、異なるポリペプチド、核酸、又は内毒素であってよい。前記混入物質は、興味あるポリペプチドのバリアント、例えば、切断又は伸長ポリペプチド、脱アミド化型のポリペプチド、正しくフォールディングされなかったポリペプチド、又は望ましくない糖鎖が付加したポリペプチドの形態であってよい。前記混入物質は、イオン交換クロマトグラフィーを妨げる可能性がある分子であってよい。
【0069】
好ましくは、興味あるポリペプチドは、少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、少なくとも90%又はそれ以上の純度である。最も好ましくは、前記ポリペプチドは、少なくとも90%の純度、例えば、少なくとも95%、少なくとも97%、又は少なくとも99%の純度である。純度は、興味あるポリペプチドが占める全乾燥重量の割合であることを意図する。前記サンプルは、25重量%未満の上述の混入物質を含み、例えば、25%未満の興味あるポリペプチド以外のタンパク質を含み、より好ましくは、20%未満、10%未満、5%未満、3%未満、又は1%未満で含んでよい。前記サンプルは興味あるポリペプチドの純粋又は実質的に純粋なサンプルであってよい。前記サンプルは、興味あるポリペプチドの単離又は実質的に単離されたサンプルであってよい。
【0070】
そのようなペプチドのサンプルは、ポリペプチド合成から直接得られた形態、例えば、組換え技術によってポリペプチドを生産する細胞の培養培地由来のサンプル又はポリペプチドを発現した細胞を溶解したもののサンプルの形態で陰イオン交換材料に適用されてよい。ポリペプチドのサンプルは、本明細書に記載のとおり精製又は部分的に精製した形態で陰イオン交換材料に適用されてよい。本明細書に記載のサンプルは、陰イオン交換材料に適用する前にさらに調合されてよい。例えば、ポリペプチド(又は精製ポリペプチド)が固体形態で提供される場合には、陰イオン交換材料に適用するための液体組成物に調合されてよい。例えば、水、バッファー、又は他の溶媒に調合されてよい。好ましくは、前記液体組成物は水性である。前記ポリペプチド又は精製ポリペプチドが液体又は水性の形態で提供される場合、又は固体ポリペプチドサンプルが上述のとおり液体形態に調合されている場合には、陰イオン交換材料に適用する前に前記サンプルの製剤を調整する。
【0071】
例えば、サンプル又は調合されたサンプルの伝導度及び/又はpHが、ルーチンな方法を使用して調整されてよい。サンプルのpHは、陰イオン交換材料の平衡化及び/又は陰イオン交換材料の洗浄に使用するバッファーと同じ又は実質的に同じになるように調整されてよい。サンプルの伝導度は、陰イオン交換材料の平衡化及び/又は陰イオン交換材料の洗浄に使用するバッファーと同じ又は実質的に同じになるように調整されてよい。前記サンプルは、緩衝化物質、例えば、平衡化バッファーの組成に関連して上述した緩衝化物質のいずれかを用いて調合されてよい。前記サンプルは、陰イオン交換材料の平衡化及び/又は陰イオン交換材料の洗浄に使用するものと同じバッファーで調合されてよい。前記サンプルは、陰イオン交換材料の平衡化及び/又は陰イオン交換材料の洗浄に使用するバッファーと同じ緩衝化物質及び/又は同じ緩衝化物質濃度及び/又は同じpH及び/又は同じ伝導度で調合されてよい。1つの実施態様では、興味あるポリペプチドは、使用する平衡化バッファーと同一のバッファーに添加することによって、陰イオン交換材料に適用するために調合される。
【0072】
ついで、前記ポリペプチドは、陰イオン交換材料にポリペプチドを結合させる条件下で陰イオン交換材料に前記ポリペプチドの関連する調合物を横切らせるか又は通過させることによって、イオン交換材料にロードする。そのような方法は当該技術分野においてルーチンである。
【0073】
興味あるポリペプチドを陰イオン交換カラムにロードしたら、カラムを1又は複数回の洗浄に供してよい。洗浄は、適当や溶液を陰イオン交換材料に通過されるか又は横切らせることによって達成される。そのような洗浄の目的は、陰イオン交換材料に結合しない任意のポリペプチド又は他の成分を除去すること;陰イオン交換材料に弱く結合するのみである任意のポリペプチド又は他の成分を除去すること;興味あるポリペプチドよりも低い親和性で陰イオン交換材料に結合する不純物を除去することを含んでよい。
【0074】
1つの実施態様では、陰イオン交換材料にポリペプチドをロードした後に、陰イオン交換材料をバッファーで洗浄して、任意の非結合ポリペプチド、混入物質、又は不純物を除去する。例えば、前記洗浄バッファーは、その中でポリペプチドを陰イオン交換材料にロードするために調合したバッファーと同一又は実質的に同一であってよい。洗浄バッファーは、平衡化バッファーと同一又は実質的に同一であってよい。例えば、洗浄は、平衡化バッファーと同じバッファー又はポリペプチドを調合するために使用するものと同じバッファーを使用して実施してよい。洗浄は、平衡化バッファー又はポリペプチドの調合に使用するバッファーと同じpH若しくは実質的に同じpH及び/又は同じ若しくは実質的に同じ伝導度を有するバッファーを使用して実施してよい。洗浄は、平衡化バッファー又はペプチドの調合に使用するバッファーと同じ又は実質的に同じ濃度で同じ緩衝化物質を含むバッファーを使用して実施してよい。
【0075】
他の洗浄は、平衡化バッファーと異なるバッファーを使用して代替的又は追加で実施してよい。例えば、興味あるポリペプチドよりも弱い強度で陰イオン交換材料に結合する混入物質を陰イオン交換材料から除去することが可能であってよい。そのような混入物質は、興味あるポリペプチドよりも容易に陰イオン交換材料から放出されるであろう。例えば、陰イオン交換材料は、平衡化バッファー及び/又はポリペプチドをロードするための調合物よりも大きい伝導度又はイオン強度を有するバッファーで洗浄してよい。バッファーのイオン強度を増加させることによって、陰イオン交換材料からの成分の溶出を達成してよい。好ましくは、興味あるポリペプチドが陰イオン交換材料から実質的に全く溶出されないように、洗浄バッファーが選択されるか又は十分に小さい容量で使用される。
【0076】
洗浄用バッファーは、特定のサンプル及び興味あるポリペプチドの性質に依存して当業者によって選択されてよい。例えば、興味あるポリペプチドよりも弱い強度で樹脂に結合する特定のポリペプチド又は不純物の除去を可能にする、特定のpH又は伝導度を有するバッファーが選択されてよい。そのようなバッファーは、例えば、カラムから除去される溶液の組成を観察することによる、単純なルーチンの実験によって選択され、かつ、その使用が最適化されてよい。
【0077】
洗浄バッファーのpHは、精製する特定のポリペプチドに依存して決定されてよい。例えば、多数のペプチド、例えば、第IX因子に関しては、ポリペプチドの自己賦活及び/又は分解が9.0以上のpHにおいて認められ得るため、9.0又はそれ以上のpHは最適ではない。
【0078】
本発明における使用に適切な洗浄バッファーは、例えば、約5.0から約8.5、例えば、5.0から8.5のpHで調合されてよい。洗浄バッファーのpHは、約5.0超、約5.5超、約6.0超、約6.5超、約7.0超、約7.5超、又は約8.0超であってよい。洗浄バッファーのpHは、約8.5未満、約8.0未満、約7.5未満、約7.0未満、約6.5未満、約6.0未満、又は約5.5未満であってよい。そのような端点の任意の組み合わせに組み合わせてよい。例えば、洗浄バッファーのpHは、約7.0超、かつ、約8.5未満であってよい。pHは、例えば、約pH7.0、7.5、8.0、又は8.5であってよい。
【0079】
これらのpHの値は、本明細書に記載のポリペプチド、例えば、第IX因子、第VII因子、又は第X因子の精製のためのイオン交換材料の洗浄に適切であってよい。
【0080】
洗浄バッファーのための適切な成分は、緩衝化物質、例えば、Tris、ホスフェート、MES、Hepes、又はカーボネートを含んでよい。陰イオン交換クロマトグラフィー法には、緩衝化陽イオン、例えば、Trisが好ましい。そのような緩衝化物質を使用して、上述のpHに洗浄バッファーを維持してよい。適切な緩衝化物質濃度は、例えば、5mMから50mMの間、例えば、10mMから40mMの間であってよい。適切な緩衝化物質濃度は、例えば、5mM、10mM、15mM、20mM、又は25mMであってよい。
【0081】
洗浄バッファーは、1又は複数の追加の成分を含んでよい。洗浄バッファーは、添加物、例えば、エチレングリコール、エタノール、尿素、又はタンパク質の可溶性を増加させるために使用される界面活性剤を含んでよい。陰イオン交換クロマトグラフィーで使用される界面活性剤は、中性又は陰イオン交換材料と同じ電荷を有するものであるべきである。非イオン性界面活性剤、例えば、Tween 80、Tween 20、又はTriton X100が、例えば、1%未満、0.5%未満、0.1%未満、又は0.01%未満の濃度で使用されてよい。非緩衝化塩、例えば、NaClを使用してバッファーのイオン強度を調整してよい。
【0082】
陰イオン交換材料から分子を溶出させることは、陰イオン交換材料から分子を除去することを意味する。これは、一般的には、陰イオン交換材料の電荷を有する基に対してバッファーが分子と競合するように、陰イオン交換材料の周囲のバッファーのイオン強度を変化させることによって達成される。その結果、陰イオン交換材料に対する分子の結合強度が低下し、分離する。ある態様では、陰イオン交換材料からの溶出は、興味あるポリペプチドの立体構造を変化させる分子を使用して、結合強度を低下させ、陰イオン交換材料からポリペプチドを放出させることによって達成されてもよい。
【0083】
溶出バッファーのpHは、精製する特定のポリペプチドに依存して決定されてよい。例えば、多数のポリペプチド、例えば、第IX因子には、ポリペプチドの自己賦活又は分解がpH9.0以上のpHで認められるため、pH9.0以上のpHは最適ではない。
【0084】
本発明の使用に適切な溶出バッファーは、例えば、約5.0から約8.5、例えば、5.0から8.5のpHで調合されてよい。溶出バッファーのpHは、約5.0超、約5.5超、約6.0超、約6.5超、約7.0超、約7.5超、又は約8.0超であってよい。溶出バッファーのpHは、約8.5未満、約8.0未満、約7.5未満、約7.0未満、約6.5未満、約6.0未満、又は約5.5未満であってよい。そのような端点の任意の組み合わせに組み合わせてよい。例えば、溶出バッファーのpHは、約7.0超、かつ、約8.5未満であってよい。pHは、例えば、約pH7.0、7.5、8.0、又は8.5であってよい。
【0085】
これらのpHの値は、本明細書に記載のポリペプチド、例えば、第IX因子、第VII因子、又は第X因子の精製のための陰イオン交換材料の溶出に適切なものであってよい。
【0086】
溶出バッファーのための適切な成分は、緩衝化物質、例えば、Tris、ホスフェート、MES、Hepes、又はカーボネートを含んでよい。陰イオン交換クロマトグラフィー法には、緩衝化陽イオン、例えば、Trisが好ましい。そのような緩衝化物質を使用して、上述のpHに溶出バッファーを維持してよい。適切な緩衝化物質濃度は、例えば、5mMから50mMの間、例えば、10mMから40mMの間であってよい。適切な緩衝化物質濃度は、例えば、5mM、10mM、15mM、20mM、又は25mMであってよい。
【0087】
溶出バッファーは、1又は複数の追加の成分を含んでよい。溶出バッファーは、添加物、例えば、エチレングリコール、エタノール、尿素、又はタンパク質の可溶性を増加するために使用される界面活性剤を含んでよい。陰イオン交換クロマトグラフィーで使用する界面活性剤は、中性又は陰イオン交換クロマトグラフィーと同じ電荷であるべきである。非イオン性界面活性剤、例えば、Tween 80、Tween 20、又はTriton X100が、例えば、1%未満、0.5%未満、0.1%未満、又は0.01%未満の濃度で使用されてよい。非緩衝化塩、例えば、NaClを使用してバッファーのイオン強度を調整してよい。
【0088】
本発明に従う使用には、溶出バッファーは、好ましくは、1又は複数のカオトロピック塩、例えば、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、及び酢酸ナトリウムから選択される1又は複数の塩を含んでよい。カオトロピック塩、例えば、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、及び/又は酢酸ナトリウムが、少なくとも0.1M、少なくとも0.2M、少なくとも0.5M、少なくとも1.0M、又は少なくとも1.5Mの濃度で溶出バッファー中に存在してよい。カオトロピック塩、例えば、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、及び/又は酢酸ナトリウムは、2.0Mまで、1.9Mまで、1.5Mまで、又は1.0Mまでの濃度で存在してよい。これらの低い端点のいずれか1つをこれらの高い端点のいずれか1つと組み合わせて、適切な濃度範囲を形成してよい。カオトロピック塩、例えば、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、及び/又は酢酸ナトリウムは、約2.0Mまでの任意の濃度で存在してよい。例えば、カオトロピック塩、例えば、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、及び/又は酢酸ナトリウムが、約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、約1.1、約1.2、約1.3、約1.4、約1.5、約1.6、約1.7、約1.8、約1.9、又は約2.0までの濃度で存在してよく、最も好ましくは、約0.6Mの濃度で存在してよい。
【0089】
1つの実施態様では、溶出バッファーは、カオトロピック塩を追加で含むことを除き、洗浄バッファー及び/又は平衡化バッファーと同じ組成を有する。好ましいカオトロピック塩は、上述の酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、及び/又は酢酸ナトリウムの1又は複数である。かくして、溶出バッファーは、洗浄バッファー又は緩衝化バッファーについて本明細書に記載する任意の組成を有してよいが、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、及び/又は酢酸ナトリウムを追加で含んでよい。
【0090】
1つの実施態様では、平衡化バッファー及び洗浄バッファーは同一であり、溶出バッファーは、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、又は酢酸ナトリウムも含む点でのみ、それらと異なる。
【0091】
溶出は、カオトロピック塩のアイソクラティックグラジエント又はリニアグラジエント、例えば、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、又は酢酸ナトリウムのアイソクラティックグラジエント又はリニアグラジエントを使用して実施してよい。溶出は、バッファー中のカオトロピック塩の濃度における段階的な変化を使用して実施してよい。溶出は、これらの溶出法の任意の組み合わせによって達成してよい。例えば、所定の濃度のカオトロピック塩におけるアイソクラティック溶出の後に、グラジエント又は1若しくは複数の段階のいずれかの形態で塩濃度を増加させてよい。
【0092】
任意のそのような溶出方法では、異なる成分が、それらの結合の強度に依存して、異なる回数で陰イオン交換材料から放出されるであろう。弱い強度で結合する成分は、早期又は比較的低いバッファーの伝導度、例えば、低い塩濃度で放出される傾向があろう。より強力に結合する成分は、長期間又は比較的高い塩濃度で陰イオン交換材料に保持される傾向があろう。陰イオン交換材料を横切る又は通過する溶出液を観察して、特性の成分が溶出される時間を同定する。溶出液は、異なる時点でプールして、どのプールにどの成分が存在するか決定するために各プールを分析する。次いで、所望の組成を有する、例えば、特定のポリペプチド種の濃度が増加しているか又は他のポリペプチド種の濃度が減少している特定のプールを選択してよい。
【0093】
本明細書に記載のアイソクラティック溶出は、一定又は不変の濃度の塩を使用する。塩の該濃度、例えば、上述の濃度のいずれかを含む溶出バッファーを使用する。溶出バッファーが陰イオン交換材料を横切るか又は通過し、溶出液を観察して、溶出が起こっている時間を同定する。アイソクラティック溶出を使用すると、陰イオン交換材料に対して比較的弱い結合親和性を有する成分は、陰イオン交換材料を横切るか又は通過する溶出バッファーの比較的大きな容量を必要としてよい、より強い結合親和性を有する成分よりも、比較的小さな容量の溶出バッファーを使用し得る、比較的早期に放出されるであろう。異なる時間間隔で得られる溶出液の特定のプール又はバッチを選択することによって、異なる組成のポリペプチド種を有するサンプルが得られてよい。
【0094】
グラジエント溶出が、最終的な最大濃度、例えば、上述の濃度までバッファー中の塩濃度を増加させることによって達成されてよい。例えば、リニアグラジエントは、0%から100%の最終濃度のカオトロピック塩を使用してよい。当該グラジエントを陰イオン交換材料に経時的に、例えば、10、20、30、40、50、70、100、150、又はそれ以上のカラム容量で適用してよい。そのようなグラジエント溶出を使用すると、陰イオン交換材料に対して比較的弱い結合親和性を有する成分は、溶出を生じさせるために比較的高濃度の塩を必要とし得る、比較的強い結合親和性を有する成分よりも、比較的低い濃度の塩で比較的早期に放出されるであろう。異なる時間間隔で得られる溶出液の特定のプール又はバッチを選択することによって、異なる組成のポリペプチド種を有するサンプルが得られてよい。
【0095】
漸進的なグラジエントを使用してカオトロピック塩の濃度を増加させるよりも、段階的な増加が使用されてよい。すなわち、塩濃度は、1又は複数の別々の段階で最終的な最大濃度まで増加させてよい。これを使用して、グラジエント溶出の効果を摸倣してよく、ことなる濃度及びかくして異なる段階で異なる成分が放出される。段階的な溶出は、代替的には、アイソクラティック溶出と組み合わせてよい。例えば、使用するバッファー容量を増加させながら異なる成分を溶出させる、その濃度におけるアイソクラティック溶出を生じさせるように、段階的な塩濃度の増加が、溶出バッファーの複数のカラム容量の間に維持されてよい。その後の塩濃度の追加的な段階も使用してよい。
【0096】
溶出バッファー中の塩、例えば、酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、又は酢酸ナトリウムの存在においてのみ溶出バッファーが洗浄バッファーと異なる実施態様では、アイソクラティック溶出のための溶出バッファーは、所定量の塩を洗浄バッファーに添加することによって得られてよく、グラジエント溶出は、洗浄バッファー溶液に塩を徐々に添加することによって達成されてよく、かつ、段階的溶出は、別々の段階のバッファー中の塩濃度を増加させるために洗浄バッファーに所定量の塩を添加することによって達成されてよい。
【実施例】
【0097】
実施例1:異なるγ−カルボキシル化された種のFIXの活性の分析
組換えヒト第IX因子(FIX)は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞で生成した。FIXの非活性は、約50%であると測定された。
【0098】
#1−8−、#1−9−、#1−10−、#1−11−、及び#1−12−Glaを主に含む個々のFIX種を分画した。
【0099】
凝固アッセイを使用して、フィブリン凝固形成までのFIX活性依存的な時間を測定した。コンタクトアクチベーター(Contact Activator)(ATCC試薬のエラグ酸)を使用して、FXIIaの生成を刺激し、カルシウム再沈着及びリン脂質の添加によってさらに誘発させた。BeneFIX、及びWHOヒトFIX基準に対して調整したプールした正常なヒト血清に対する活性を測定した。
【0100】
「Hyphen Biomed Chromogenic Factor IX kit」(Aniara)として知られる市販のアッセイキットを使用して、rhFIXの活性レベルを評価した。このアッセイでは、第XIa因子が第IX因子を第IXa因子に活性化し、これが、第VIII因子:C、リン脂質、及びCa2+とともに第X因子を第Xa因子に活性化する。生成された第Xa因子の量は、第Xa因子特異的発色基質であるSXa−11から放出されるpNAの量によって405nmで測定した。
【0101】
#1−11−及び#1−12−Gla種は、凝血塊及び2段階活性アッセイにおいて完全に活性を有していることが認められた。#1−8−、#1−9−、及び#1−10−Gla種は、使用したアッセイに依存して、各々、約2から5%、14から22%、及び27から36%まで活性が低下した。
【0102】
実施例2:異なるγ−カルボキシル化された種のFIXの精製及び分析
組換えヒト第IX因子(rhFIX)について、異なるγカルボキシル化された形態の分離に、陰イオン交換クロマトグラフィーを使用した。前記方法では、6mlのベッドボリューム、3ml/分の流速、及び4℃の温度でSOURCE 15Qカラム(GE Healthcare)を使用した。
【0103】
前記カラムにロードしたサンプル(「ローディングサンプル」)はrhFIXであった。全部で約13mgをロードした。ローディングサンプルは、0.1 M NaOHを使用して、pH8.0に調整した。
【0104】
使用したバッファーは、以下のとおりであった:
平衡化バッファー:20mM Tris/NaOH,pH 8.0,0.01% Tween80;
溶出バッファー:20mM Tris/HCl,1.5M酢酸アンモニウム,pH 8.0,0.01% Tween80;
CIP:1M NaOH。
【0105】
陰イオン交換クロマトグラフィー法は、以下のとおりであった。
【0106】
【表1】
【0107】
この陰イオン交換クロマトグラフィーの結果は図2及び3に示す。
【0108】
9.6mg/74%が得られたC12−D3画分のプールを選択した。このプールのGla含量を、上記ローディングサンプルに使用した本来のサンプルのものと比較した。
【0109】
個々の画分のGla含量の分析は、Agilent HPLCシステムを使用して実施した。HPLC法に基づくGla含量の分析は、N末端配列決定及びアミノ酸塩基性加水分解分析を使用して得られたGla含量分析と相互関係を示した。HPLCは、0.18ml/分の流速でMini Q CP3.2/3カラム(GE Healthcare cat. no 17−0686−01)を使用した。このシステムで使用したバッファーは以下のとおりであった:
A−バッファー:20mM Tris/NaOH,pH 9.0;
B−バッファー:20mM Tris/HCl,pH9.0,1.5M酢酸アンモニウム。
【0110】
このシステムで測定したシグナルは、UV280及び蛍光シグナル(ex:280nm/em:340nm)であった。
【0111】
HPLCの手順は以下のとおりであった:
0 - 5 分 0 - 30 % B
5 - 55 分 30 - 55 % B
55 - 65 分 55 - 100 % B。
【0112】
上述のとおり陰イオン交換クロマトグラフィーを使用して分離する前及び分離した後のGlaの分布の比較を図4に示す。この結果は以下にも示す。
【0113】
【表2】
【0114】
かくして、上述の陰イオン交換クロマトグラフィーを使用する精製によって、全ての検出可能な#1−8−及び#1−9−Glaの本来のFIXサンプルからの除去がもたらされた。#1−10−Glaの存在の減少もあり、結果として#1−11−及び#1−12−Glaの割合の増大も存在した。
【0115】
最終的に精製したプールでは、Benefixと比較して、非活性も約110%まで増加していた(二段階活性アッセイ、データの計算は示さず)。
【0116】
実施例3:異なるγ−カルボキシル化された種のFIXの精製及び分析
組換えヒトFIXの異なるγカルボキシル化された形態の分離に、陰イオン交換クロマトグラフィーを使用した。前記方法では、6mlのベッドボリューム、2ml/分の流速、及び4℃の温度でSOURCE 30Qカラム(GE Healthcare)を使用した。
【0117】
カラムにロードしたサンプル(「ローディングサンプル」)はFIXのサンプルであった。全部で約2.5mgをロードした。ローディングサンプルは0.1M NaOHを使用したpH 8.0に調整した。
【0118】
使用したバッファーは以下のとおりであった:
平衡化バッファー:20mM Tris/NaOH,pH 8.0,0.01% Tween80;
溶出バッファー:20mM Tris/HCl,1.5M酢酸アンモニウム,pH 8.0,0.01% Tween80;
CIP:1M NaOH。
【0119】
陰イオン交換クロマトグラフィー法は、以下のとおりであった。
【0120】
【表3】
【0121】
この陰イオン交換クロマトグラフィーの結果は図5及び6に示す。
【0122】
約1.75mg/70%が得られたC12−D3画分のプールを選択した。このプールのGla含量を、上記ローディングサンプルに使用した本来のサンプルのものと比較した。個々の画分のGla含量分析は、実施例2に記載のとおり、Agilent HPLCシステムを使用して実施した。
【0123】
上述の陰イオン交換クロマトグラフィーを使用して分離する前及び分離した後のGlaの分布の比較を下表に示す。
【0124】
【表4】
【0125】
かくして、上述の陰イオン交換クロマトグラフィーを使用する精製によって、全ての検出可能な#1−8−及び#1−9−Glaの本来のFIXサンプルからの除去がもたらされた。#1−10−Glaの存在の減少もあり、結果として#1−11−及び#1−12−Glaの割合の増大も存在した。
【0126】
実施例4:異なるγ−カルボキシル化された種のFVIIの精製及び分析
組換えヒト第VIIa因子(FVII)の異なるγカルボキシル化された形態の分離に、陰イオン交換クロマトグラフィーを使用した。前記方法では、1.7mlのベッドボリューム、0.75ml/分の流速、及び4℃の温度でSOURCE 15Qカラム(GE Healthcare)を使用した。
【0127】
カラムにロードしたサンプル(「ローディングサンプル」)はCHO細胞から生成したFVIIのサンプルであった。全部で約1.8mgをロードした。ローディングサンプルは1Mストック溶液から50mM EDTAを添加して、0.1M NaOHを使用してpH 8.0に調整した。
【0128】
使用したバッファーは以下のとおりであった:
平衡化バッファー:20mM Tris/NaOH,pH 8.0;
溶出バッファー:20mM Tris/HCl,1.5M酢酸アンモニウム,pH 8.0;
CIP:1M NaOH。
【0129】
陰イオン交換クロマトグラフィー法は、以下のとおりであった。
【0130】
【表5】
【0131】
この陰イオン交換クロマトグラフィーの結果は図7及び8に示す。
【0132】
個々の画分(22から27)のGla含量分析は、実施例2に記載のとおり、Agilent HPLCシステムを使用して実施した。
【0133】
上述の陰イオン交換クロマトグラフィーを使用して分離したFVII Gla種の分布の比較を下表に示す。
【0134】
【表6】
【0135】
上述の陰イオン交換クロマトグラフィーを使用する精製によって、FVIIa Gla種の明確な分離がもたらされた。かくして、FVII Gla種の組成物は、実験者の好ましい態様で調製することができる。
【0136】
実施例5:異なるγ−カルボキシル化された種のFIXの精製及び分析
組換えヒトFIXの異なるγカルボキシル化された形態の分離に、陰イオン交換クロマトグラフィーを使用した。前記方法では、1.7mlのベッドボリューム、0.75ml/分の流速、及び4℃の温度でSOURCE 15Qカラム(GE Healthcare)を使用した。
【0137】
カラムにロードしたサンプル(「ローディングサンプル」)はFIXのサンプルであった。全部で約2mgをロードした。ローディングサンプルは0.1M NaOHを使用してpH 8.5に調整した。
【0138】
使用したバッファーは以下のとおりであった:
平衡化バッファー:20mM Tris/NaOH,pH 8.5;
溶出バッファー:20mM Tris/NaOH,1.0M塩化アンモニウム,pH 8.5;
CIP:1M NaOH。
【0139】
陰イオン交換クロマトグラフィー法は、以下のとおりであった。
【0140】
【表7】
【0141】
この陰イオン交換クロマトグラフィーの結果は図9及び10に示す。
【0142】
個々の画分(E7からF12)のGla含量分析は、実施例2に記載のとおり、Agilent HPLCシステムを使用して実施した。
【0143】
上述の陰イオン交換クロマトグラフィーを使用して分離したFIX Gla種の分布の比較を下表に示す。
【0144】
【表8】
【0145】
上述の陰イオン交換クロマトグラフィーを使用する精製によって、FIX Gla種の明確な分離がもたらされた。かくして、FIX Gla種の組成物は、実験者の好ましい態様で調製することができる。
【0146】
実施例6:異なるγ−カルボキシル化された種のFIXの精製及び分析
組換えヒトFIXの異なるγカルボキシル化された形態の分離に、陰イオン交換クロマトグラフィーを使用した。前記方法では、1.7mlのベッドボリューム、0.75ml/分の流速、及び4℃の温度でSOURCE 15Qカラム(GE Healthcare)を使用した。
【0147】
カラムにロードしたサンプル(「ローディングサンプル」)はFIXのサンプルであった。全部で約2mgをロードした。ローディングサンプルは0.1M NaOHを使用してpH 8.0に調整した。
【0148】
使用したバッファーは以下のとおりであった:
平衡化バッファー:20mM Tris/NaOH,pH 8.0;
溶出バッファー:20mM Tris/HCl,1.0M酢酸ナトリウム,pH 8.0;
CIP:1M NaOH。
【0149】
陰イオン交換クロマトグラフィー法は、以下のとおりであった。
【0150】
【表9】
【0151】
この陰イオン交換クロマトグラフィーの結果は図11及び12に示す。
【0152】
個々の画分(E5からE1)のGla含量分析は、実施例2に記載のとおり、Agilent HPLCシステムを使用して実施した。
【0153】
上述の陰イオン交換クロマトグラフィーを使用して分離したFIX Gla種の分布の比較を下表に示す。
【0154】
【表10】
【0155】
上述の陰イオン交換クロマトグラフィーを使用する精製によって、FIX Gla種のある程度の分離がもたらされた。かくして、FIX Gla種の組成物は、実験者の好ましい態様で調製することができる。
【0156】
実施例7:異なるγ−カルボキシル化された種のFXの精製及び分析
FX活性化ペプチドをフィブリノペプチドA活性化ペプチド(DFLAEGGGVR)に交換し、かつ、HPC4タグをC末端に付加した(DQVDPRLIDGK)、組換えヒトFX構築物の異なるγカルボキシル化された形態の分離に、陰イオン交換クロマトグラフィーを使用した。前記方法では、1.7mlのベッドボリューム、0.75ml/分の流速、及び4℃の温度でSOURCE 15Qカラム(GE Healthcare)を使用した。
【0157】
カラムにロードしたサンプル(「ローディングサンプル」)はFX構築物のサンプルであった。全部で約2.5mgをロードした。ローディングサンプルは0.1M NaOHを使用してpH 8.0に調整した。
【0158】
使用したバッファーは以下のとおりであった:
平衡化バッファー:20mM Tris,pH 8.0;
溶出バッファー:20mM Tris/HCl,1.5M酢酸アンモニウム,pH 8.0;
CIP:1M NaOH。
【0159】
陰イオン交換クロマトグラフィー法は、以下のとおりであった。
【0160】
【表11】
【0161】
この陰イオン交換クロマトグラフィーの結果は図13に示す。
【0162】
個々の画分のGla含量分析は、実施例2に記載のとおり、Agilent HPLCシステムを使用して実施した。
【0163】
前記画分の分析に基づいて、上述の陰イオン交換クロマトグラフィーを使用して分離すする前及び分離した後の分離されたFX Gla種の分布の比較を下表に示す。
【0164】
【表12】
【0165】
かくして、Gla#10及びGla#11の量が増加したFX構築物の組成物が調製された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる含有量のγ−カルボキシグルタミン酸を有する複数の種のポリペプチドの混合物を含むサンプルから、所望の含有量のγ−カルボキシグルタミン酸を有するポリペプチドを精製するための方法であって、
(a)陰イオン交換クロマトグラフィー材料に前記サンプルをロードする工程;
(b)酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、及び酢酸ナトリウムから選択される少なくとも1つの塩を含むpH9.0未満のpHの溶液を使用して前記ポリペプチドを溶出する工程;
(c)前記溶出によって得られた画分を選択する工程であって、前記画分のポリペプチドが所望の含有量のγ−カルボキシグルタミン酸を有する、工程
を含む、方法。
【請求項2】
以下の工程:
(a)9.0未満のpHのバッファーで陰イオン交換材料を平衡化する工程;
(b)陰イオン交換材料に前記サンプルをロードする工程;
(c)場合によって、9.0未満のpHのバッファーで陰イオン交換材料を洗浄する工程;
(d)酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、及び酢酸ナトリウムから選択される少なくとも1つの塩を含む9.0未満のpHの溶液を使用して、陰イオン交換材料から前記ポリペプチドを溶出する工程;及び
(e)前記溶出によって得られた画分を選択する工程であって、前記画分のポリペプチドが所望の含有量のγ−カルボキシグルタミン酸を有する、工程
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
精製するポリペプチドが、第IX因子、第VII因子、第VIIa因子、第X因子、プロトロンビン、タンパク質S、タンパク質C、タンパク質Z、オステオカルシン、マトリックス−gla−タンパク質、増殖停止特異的6、プロリンリッチGla1、プロリンリッチGla2、プロリンリッチGla3、及びプロリンリッチGla4から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリペプチドが第IX因子である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
精製するサンプル中の#1−11−Gla及び/又は#1−12−Glaの形態の第IX因子の割合と比較して、#1−11−Gla及び/又は#1−12−Glaの形態の第IX因子の割合が増大している、前記溶出によって得られる画分を選択する工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
精製するサンプル中の#1−10−Glaの形態の第IX因子の割合と比較して、#1−10−Glaの形態の第IX因子の割合が減少している、前記溶出によって得られる画分を選択する工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリペプチドが第VII因子又は第VIIa因子である、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
精製するサンプル中の#1−10−Gla及び/又は#1−11−Glaの形態の第VII因子又は第VIIa因子の割合と比較して、#1−10−Gla及び/又は#1−11−Glaの形態の第VII因子又は第VIIa因子の割合が増大している、前記溶出によって得られる画分を選択する工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
精製するサンプル中の#1−9−Glaの形態の第VII因子又は第VIIa因子の割合と比較して、#1−9−Glaの形態の第VII因子又は第VIIa因子の割合が減少している、前記溶出によって得られる画分を選択する工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記溶出バッファーが5.0から8.5の間のpHを有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、又は酢酸ナトリウムが、0.1Mから2.0Mの間で溶出バッファー中に存在する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、又は酢酸ナトリウムが、約0.6Mで溶出バッファー中に存在する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記イオン交換クロマトグラフィーが5.0から8.5の間のpHの平衡化バッファーを利用する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の方法によって得られるポリペプチド製剤。
【請求項1】
異なる含有量のγ−カルボキシグルタミン酸を有する複数の種のポリペプチドの混合物を含むサンプルから、所望の含有量のγ−カルボキシグルタミン酸を有するポリペプチドを精製するための方法であって、
(a)陰イオン交換クロマトグラフィー材料に前記サンプルをロードする工程;
(b)酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、及び酢酸ナトリウムから選択される少なくとも1つの塩を含むpH9.0未満のpHの溶液を使用して前記ポリペプチドを溶出する工程;
(c)前記溶出によって得られた画分を選択する工程であって、前記画分のポリペプチドが所望の含有量のγ−カルボキシグルタミン酸を有する、工程
を含む、方法。
【請求項2】
以下の工程:
(a)9.0未満のpHのバッファーで陰イオン交換材料を平衡化する工程;
(b)陰イオン交換材料に前記サンプルをロードする工程;
(c)場合によって、9.0未満のpHのバッファーで陰イオン交換材料を洗浄する工程;
(d)酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、及び酢酸ナトリウムから選択される少なくとも1つの塩を含む9.0未満のpHの溶液を使用して、陰イオン交換材料から前記ポリペプチドを溶出する工程;及び
(e)前記溶出によって得られた画分を選択する工程であって、前記画分のポリペプチドが所望の含有量のγ−カルボキシグルタミン酸を有する、工程
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
精製するポリペプチドが、第IX因子、第VII因子、第VIIa因子、第X因子、プロトロンビン、タンパク質S、タンパク質C、タンパク質Z、オステオカルシン、マトリックス−gla−タンパク質、増殖停止特異的6、プロリンリッチGla1、プロリンリッチGla2、プロリンリッチGla3、及びプロリンリッチGla4から選択される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ポリペプチドが第IX因子である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
精製するサンプル中の#1−11−Gla及び/又は#1−12−Glaの形態の第IX因子の割合と比較して、#1−11−Gla及び/又は#1−12−Glaの形態の第IX因子の割合が増大している、前記溶出によって得られる画分を選択する工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
精製するサンプル中の#1−10−Glaの形態の第IX因子の割合と比較して、#1−10−Glaの形態の第IX因子の割合が減少している、前記溶出によって得られる画分を選択する工程を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリペプチドが第VII因子又は第VIIa因子である、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
精製するサンプル中の#1−10−Gla及び/又は#1−11−Glaの形態の第VII因子又は第VIIa因子の割合と比較して、#1−10−Gla及び/又は#1−11−Glaの形態の第VII因子又は第VIIa因子の割合が増大している、前記溶出によって得られる画分を選択する工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
精製するサンプル中の#1−9−Glaの形態の第VII因子又は第VIIa因子の割合と比較して、#1−9−Glaの形態の第VII因子又は第VIIa因子の割合が減少している、前記溶出によって得られる画分を選択する工程を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記溶出バッファーが5.0から8.5の間のpHを有する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、又は酢酸ナトリウムが、0.1Mから2.0Mの間で溶出バッファー中に存在する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
酢酸アンモニウム、塩化アンモニウム、又は酢酸ナトリウムが、約0.6Mで溶出バッファー中に存在する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記イオン交換クロマトグラフィーが5.0から8.5の間のpHの平衡化バッファーを利用する、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の方法によって得られるポリペプチド製剤。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図1】
【公表番号】特表2012−510500(P2012−510500A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538995(P2011−538995)
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066149
【国際公開番号】WO2010/063717
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(511031755)ノヴォ・ノルディスク・ヘルス・ケア・アーゲー (11)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月1日(2009.12.1)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066149
【国際公開番号】WO2010/063717
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(511031755)ノヴォ・ノルディスク・ヘルス・ケア・アーゲー (11)
【Fターム(参考)】
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