ポリマの相構造解析方法
【課題】表面形状と位相遅れの相関を利用したデータ補正により、解析精度を高めたポリマの相構造解析方法を提供する。
【解決手段】走査型プローブ顕微鏡観察でポリマ材料の表面をスキャンして同時計測された表面形状像と位相像とを用い、位相像から各測定点における位相遅れ値を求め、表面形状像から各測定点における傾斜値を求めると共に傾斜値に比例する補正値を求め、位相遅れ値に補正値を加減算して分布像を生成し、分布像を用いてポリマの相構造を解析する方法である。
【解決手段】走査型プローブ顕微鏡観察でポリマ材料の表面をスキャンして同時計測された表面形状像と位相像とを用い、位相像から各測定点における位相遅れ値を求め、表面形状像から各測定点における傾斜値を求めると共に傾斜値に比例する補正値を求め、位相遅れ値に補正値を加減算して分布像を生成し、分布像を用いてポリマの相構造を解析する方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマの相構造解析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の要求特性を同時に満足するポリマ材料を開発するために、2種類以上の高分子材料をブレンドする場合がある。このとき、ブレンドした高分子材料の相分散構造が材料特性に影響を与えることから、相分離構造を制御し、それを評価・解析することが材料・プロセスの最適化や品質管理の上で必要である。
【0003】
ポリマ材料の微細構造を解析する手法の一つとして走査型プローブ顕微鏡を用いる方法がある。これは、先端に微小な突起(探針)を有するカンチレバーを共振振動数で振動させながらポリマ材料の表面を平面方向にスキャン(走査)し、常時カンチレバー先端位置を検知して、その位置や振幅幅が所定の大きさになる様に垂直方向に試料を上下させ、そのフィードバック信号からポリマ材料の表面形状像を得ると共に、加振素子の入力信号とカンチレバー先端の検出信号の間の位相遅れの分布を記録する位相像を同時計測する方法である。
【0004】
ポリマ材料中に軟らかい部分と硬い部分が分離している場合、硬い部分では位相遅れは小さく、軟らかい部分では位相遅れが大きくなる。こうした方法でポリマの相分離構造を観察した例として、非特許文献1,2などがある。
【0005】
試料表面の凹凸が小さい場合は位相遅れにより硬い部分と軟らかい部分を精度よく識別可能であるが、試料表面の凹凸が大きくなると、凹凸が振動を不安定にし、また試料を上下するフィードバックが追いつかなくなり、硬い部分と軟らかい部分の識別の精度が低下する。その様な場合、走査速度を小さくしたり、少しでも平坦な部位を探索して測定する必要があった。
【0006】
一方、最近では試料凹凸の悪影響が軽減可能なSIS(Sampling Intelligent Scan)モードが開発されており、非特許文献3に紹介されている。SISモードでは、データ取得時のみ探針と試料を接触させ、データ取得時以外は探針を上方に退避させているので、試料表面に凹凸があっても、その影響を受けにくい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】大久保信明、山岡武博、「走査型プローブ顕微鏡と動的粘弾性測定によるポリプロピレンブロックコポリマーのキャラクタリゼーション」熱測定、Vol.28、2001年、p.38−39
【非特許文献2】走査型プローブ顕微鏡ギャラリー「ポリプロピレンブロックコポリマーの位相測定」、[online]、[平成23年6月15日検索]、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社、インターネット〈URL:http://www.siint.com/products/spm/tec_gallery/data18.html〉
【非特許文献3】日本接着学会誌、2008年、Vol.44、p.169−173
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
必ずしも平坦でないポリマ材料表面の相構造を解析する場合は前記のSISモードを用いて測定することが有効であるが、SISモードの開発・導入以前に計測した試料などで、すでに処分してしまったものについては、測定をし直すことができない。また、SISモードを導入していない装置でポリマ材料表面の相構造を解析する必要に迫られた場合、スキャン速度を小さくするなど、測定条件を工夫することになるが、測定が非常に長時間化する可能性があり、スキャン速度を小さくするにも現実的には限度がある。
【0009】
表面形状と位相遅れ分布に何らかの相関を明らかにできれば、形状による影響を補正して、解析精度を高められる可能性がある。また、測定後、試料をすでに処分してしまっていて再測定できなくても、表面形状像と位相像のデータが残っていれば、形状による悪影響を補正してデータを有効活用できる。
【0010】
そこで、本発明の目的は、表面形状と位相遅れの相関を利用したデータ補正により、解析精度を高めたポリマの相構造解析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決すべく創案された本発明は、走査型プローブ顕微鏡観察でポリマ材料の表面をスキャンして同時計測された表面形状像と位相像とを用い、前記位相像から各測定点における位相遅れ値を求め、前記表面形状像から各測定点における傾斜値を求めると共に前記傾斜値に比例する補正値を求め、前記位相遅れ値に前記補正値を加減算して分布像を生成し、前記分布像を用いてポリマの相構造を解析するポリマの相構造解析方法である。
【0012】
前記傾斜値として、スキャン方向に対する傾斜値を用いるとよい。
【0013】
前記補正値は、前記表面形状像と前記位相像の一部の測定点における傾斜値と位相遅れ値の相関から比例係数を求めて算出するとよい。
【0014】
前記補正値として、スキャン方向に対する傾斜値に比例する第1の補正値と、スキャン方向に平行な方向も垂直な方向も含めた傾斜の絶対値に比例する第2の補正値とを用い、前記位相遅れ値に前記第1の補正値と前記第2の補正値のそれぞれを加減算して前記分布像を生成するとよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、表面形状と位相遅れの相関を利用したデータ補正により、解析精度を高めたポリマの相構造解析方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ポリマ材料を走査型プローブ顕微鏡で計測した表面形状像である。
【図2】ポリマ材料を走査型プローブ顕微鏡で計測した位相像である。
【図3】走査型プローブ顕微鏡の概略図である。
【図4】図1から求めた各測定点でのスキャン方向に対する傾斜の分布図である。
【図5】図1から求めた各測定点でのスキャン方向に平行な方向と垂直な方向を含む傾斜の絶対値の分布を示した像である。
【図6】図2の4の領域の測定点におけるスキャン方向に対する傾斜と位相遅れの相関のプロットである。
【図7】図2の4の領域の測定点における傾斜の絶対値と位相遅れの相関のプロットである。
【図8】図7において各測定点におけるスキャン方向に対する傾斜が正のもの(白)と負のもの(黒)を区別してプロットしたものである。
【図9】図6の各点においてスキャン方向に対する傾斜に比例する補正値を加減算した後の相関をプロットしたものである。
【図10】図9の各測定点の横軸を各測定点における傾斜の絶対値に焼き直してプロットしたものである。
【図11】図10の各点において各点での傾斜の絶対値に比例する補正値を加減算した後の相関をプロットしたものである。
【図12】図2の位相像のデータを各測定点毎にスキャン方向に対する傾斜に比例する補正値を加減算した後の位相像(分布像)である。
【図13】図2と図12の位相差のヒストグラムである。
【図14】図2を二値化した像である。
【図15】図12を二値化した像である。
【図16】図2の位相像を等高線表示した像である。
【図17】図12の分布像を等高線表示した像である。
【図18】図12の分布像を更に各測定点での傾斜の絶対値に比例する補正値を加減算した後の位相像(分布像)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者らは、走査型プローブ顕微鏡観察で計測した表面形状像と位相像を詳細に比較検討し、各測定点における傾斜と位相遅れの間に次の相関があることを見出した。
【0018】
すなわち、スキャン方向に対して凸になっている測定点では位相遅れが小さくなり、逆に凹になっている測定点では位相遅れが大きくなる傾向が見出され、スキャン方向に対する傾斜と位相遅れの間に概ね比例関係が見出された。
【0019】
更に、スキャン方向に垂直な方向(ライン送り方向)も含めた測定点での傾斜の絶対値が大きい測定点では位相遅れが大きくなる傾向が見出された。ただし、位相遅れに与える影響としては前者のスキャン方向に対する傾斜の方が、後者のスキャン方向に垂直な方向も含めた測定点での傾斜の絶対値に対して大きいことがわかった。
【0020】
以下、本発明者らが検討した内容を、具体的なデータを用いて説明する。
【0021】
ポリオレフィン系の結晶性樹脂とポリオレフィン系のエラストマを二軸押出機により混練し、押出されたひも状の試料を切断し、表面をミクロトーム切削し、平滑な観察面を得た。これを走査型プローブ顕微鏡(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製SPA−300HV)でカンチレバーを共振振動数で振動させながら試料表面をスキャンするDFM(Dynamic Force Mode)により観察した。このとき測定した表面形状像を図1に示した。測定の開始点は図の左下の点であり、スキャン方向1にスキャンされる。左上の点まで到達した後は下に戻して2のスキャン方向に垂直な方向(右)に1画素分ずらして、またスキャン方向1にスキャンされる。本測定データでは10μm角の領域を512×512点でサンプリングしている。上下のスキャンの周波数は0.5Hzで、測定時間は約17分である。図で明るい部分は凸で、暗い部分は凹である。例えば明るい3の領域は飛び出ている部分で、その中で4の部分は少し凹んでいるようである。
【0022】
図1の表面形状像と同時に計測された位相像を図2に示す。位相像は、位相遅れの分布を示しており、明るい部分は位相遅れが大きい、すなわち軟らかい部分、暗い部分は位相遅れが小さい、すなわち硬い部分である。この試料の場合、軟らかい部分はエラストマ、硬い部分は結晶性樹脂と識別される。ここで先ほどの3の領域は硬い結晶性樹脂と考えられ、この試料ではエラストマが連続相になっており、結晶性樹脂が分散相になっていると考えられる。
【0023】
4の部分には右下がりの斜め方向に明るい筋が入っているが、図2の広い範囲に同様の筋が見られる。4の領域は分布形態から全て結晶性樹脂と考えられ、この明るい部分にエラストマが存在すると考えることは不自然であり、これは試料の凹凸が位相遅れに影響している可能性がある。
【0024】
ここで、図3に走査型プローブ顕微鏡の概略図を示し、測定の原理を簡単に説明する。カンチレバー5の先端には微小な探針6がついており、カンチレバー5の根本近くの振動子(加振素子)7により先端の探針6は共振振動数で振動している。また、カンチレバー先端近くにレーザー光8を入射、反射させ、反射光の位置を位置敏感検出器9で検知することにより光てこの原理でカンチレバー先端位置と振幅をモニタしている。ここに試料ステージ10に載せられた試料11を近づけていくと、試料11とカンチレバー5が相互作用し、振幅が減衰する。振幅の減衰率が一定の値になるように試料ステージ10を垂直方向に移動させる。
【0025】
図1は試料ステージ10を水平方向に2次元的に走査し、振幅減衰率が一定になるように制御したときの試料ステージ10の垂直方向のフィードバック値を各測定点でプロットしたものである。図2は各測定点における振動子7への入力信号の波形と位置敏感検出器9の出力信号の波形の位相遅れをプロットしている。
【0026】
試料凹凸に対応して試料ステージ10が垂直方向に移動して振幅減衰率を一定にするようフィードバックされるが、試料凹凸が大きいと追従しきれず、一時的に振幅減衰率が変動することが考えられる。振幅減衰率は任意に設定できるが、たくさん減衰させると位相遅れは小さくなる傾向がある。
【0027】
ここで図4は図1の表面形状像のデータからスキャン方向1に対する傾斜の分布を求めた結果である。明るい部分は凸、すなわちカンチレバー5が押し付けられる方向、暗い部分は凹、すなわちカンチレバー5が離れる方向である。振幅減衰率の観点からすると暗い部分ではカンチレバー5が離れることにより、振幅の減衰が少なくなり、位相遅れが大きくなると予測される。図4の4の領域には図2と同様、右下がりの筋模様が観察されているが、その筋は暗く、一方、図2の4の領域の筋が明るいことは、試料11の凸凹と位相遅れに関係性があるのではないかという、前記の予測と傾向が合致している。
【0028】
また、傾斜が大きい面では、カンチレバー5の探針6の先端のみではなく、傾斜に沿い探針自体(面)があたるため、探針6と試料11の相互作用する面積が大きくなり、位相遅れが大きくなることが予想される。
【0029】
図5は図1の表面形状像のデータから各測定点でスキャン方向に平行な方向も垂直な方向も含めた傾斜の絶対値の分布を示した像である。明るい(白い)部分は傾斜が大きく、暗い部分は傾斜が小さい部分である。図5の4の領域には傾斜が大きい右下がりの筋模様が見えており、図2の4の領域の位相遅れが大きい右下がりの筋模様と対応していることから、傾斜が大きい面においても位相遅れが大きくなるのではないかという、前記の予測と傾向が合致している。
【0030】
以上のスキャン方向の傾斜による振幅減衰率の変動の効果と、傾斜の絶対値による探針6の接触面積の効果を切り分けるために4の領域における傾斜と位相遅れの相関を検討した。
【0031】
図6は4の領域に含まれる4672個の測定点についてスキャン方向に対する傾斜と位相遅れの相関をプロットした図である。明確に右下がりの傾向が見て取れる。すなわち傾斜が正に大きい(スキャン方向に凸)と位相遅れは小さく、傾斜が負に大きい(スキャン方向に凹)と位相遅れが大きく、試料11の凸凹と位相遅れの関係性予想と合致した。
【0032】
図7は4の領域に含まれる4672個の測定点についてスキャン方向に平行な方向も垂直な方向も含めた傾斜の絶対値と位相遅れの相関をプロットした図である。図6に較べてプロットが散乱しており、単一の相関が見え難い。
【0033】
そこで、図7の測定点の内、スキャン方向に対する傾斜が正(スキャン方向に凸)のものを黒、スキャン方向に対する傾斜が負(スキャン方向に凹)のものを白で区別してプロットしたものを図8に示した。ここで白プロットには右上がりの傾向が見られ、黒プロットは傾斜の絶対値と顕著な相関が見られない。
【0034】
以上から相関としては図6のスキャン方向の傾斜がより明確であった。
【0035】
ここで、図6のプロットから最小二乗法で求めた相関直線の傾き10.839を比例係数として各測定点のスキャン方向の傾斜に乗じ、これを補正値として各測定点の位相遅れに加算した結果を図9に示す。図6に対して、位相遅れの値のバラツキは縮小した。
【0036】
更に図9の横軸を各測定点でのスキャン方向に平行な方向も垂直な方向も含めた傾斜の絶対値に焼き直したプロットを図10に示す。若干、右上がりの傾斜が得られており、傾斜が大きいと位相遅れが大きくなる傾向が見られ、傾斜による探針との接触面積増加の効果も重畳している可能性がある。これに図10から求められた相関直線の傾き−0.9719を比例係数として、傾斜の絶対値に乗じ、これを補正値として、更に位相遅れに反映させたものを図11に示す。
【0037】
4672個の測定点の標準偏差は図6で2.44、スキャン方向での傾斜補正後の図9で1.21、更に傾斜の絶対値で補正後の図11で1.20であり、スキャン方向での傾斜による補正の効果が顕著で、更に傾斜の絶対値による補正で若干改善されることがわかる。
【0038】
スキャン方向での傾斜の補正を全測定点(512×512=262,144点)に適用した結果を図12に示す。4の領域を含め、図2で暗い結晶性樹脂の分散相に見られた筋模様はほとんど除かれた。また、全測定点の位相差のヒストグラムを図13に示す。破線のヒストグラムは補正前の図2、実線のヒストグラムは本発明による補正後の図12のものである。左側のピーク成分は結晶性樹脂、右側のピーク成分はエラストマのものである。補正後は分布がよりシャープになり、相識別の精度が向上していると考えられる。
【0039】
次に画像解析で用いられる二値化処理の結果を比較する。図14は補正前、図15は補正後のものである。補正後は4の領域が改善されている。
【0040】
微細部のバラツキを比較するために等高線表示した結果を次に示す。図16が補正前、図17が補正後である。補正により微細部のバラツキも低減されている。
【0041】
最後に、スキャン方向での傾斜補正後に更にスキャン方向に平行な方向も垂直な方向も含めた傾斜の絶対値で補正した結果を図18に示す。図12に比較して、連続相のエラストマ部分の模様、すなわちバラツキが若干低減しており、改善効果が見られる。
【0042】
本発明者らは、以上の知見から、走査型プローブ顕微鏡観察でポリマ材料の表面をスキャンして同時計測された表面形状像と位相像とを用い、位相像から各測定点における位相遅れ値を求め、表面形状像から各測定点における傾斜値を求めると共に傾斜値に比例する補正値を求め、位相遅れ値に補正値を加減算して分布像を生成し、その分布像を用いてポリマの相構造を解析するポリマの相構造解析方法を発明するに至った。
【0043】
本方法においては、傾斜値として、各測定点におけるスキャン方向に対する傾斜値を用いることができる。また、補正値は、表面形状像と位相像の一部の測定点における傾斜値と位相遅れ値の相関から比例係数を求めて算出することができる。このように、補正値を計算するのに必要な比例係数については測定データの一部のデータ点について傾斜値と位相遅れ値の相関から求めると効率的である。
【0044】
更に、補正値として、スキャン方向に対する傾斜値に比例する補正値を第1の補正値、全体的な傾斜の絶対値に比例する補正値を第2の補正値としたとき、位相遅れ値に第1の補正値と第2の補正値のそれぞれを加減算して分布像を生成することもできる。
【0045】
つまり、スキャン方向に対する傾斜による補正値に加え、スキャン方向に垂直な方向も含めた測定点での傾斜の絶対値に比例する補正値を別途加えて加減算して得られる分布像を用いることで、更に試料の表面凹凸の影響を補正可能である。
【0046】
このようにして得られた分布像を用いることにより、試料凹凸の影響が小さくなり、ポリマ材料の相構造の解析が容易になる。
【0047】
以上記載したように、本発明を用いることにより、走査型プローブ顕微鏡により測定した表面形状像から抽出した傾斜の分布から、試料凹凸で影響を受けた位相遅れの変動を補正することが可能になり、ポリマ材料の相識別の精度が改善でき、二値化も容易になり、ポリマ材料の相構造解析に有効である。
【0048】
このように、本発明によれば、表面形状と位相遅れの相関を利用したデータ補正により、ポリマの相構造を解析することができる。これにより、SISモードの開発・導入以前に計測した試料などで、すでに処分してしまったものや、SISモードを導入していない装置であっても、表面形状像と位相像のデータから、形状による悪影響を補正して解析精度を高めることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 スキャン方向
2 スキャン方向に垂直な方向
3 結晶性樹脂の領域
4 結晶性樹脂の領域の一部で凹凸が大きい部位
5 カンチレバー
6 探針
7 振動子
8 レーザー光
9 位地敏感検出器
10 試料ステージ
11 試料
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマの相構造解析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の要求特性を同時に満足するポリマ材料を開発するために、2種類以上の高分子材料をブレンドする場合がある。このとき、ブレンドした高分子材料の相分散構造が材料特性に影響を与えることから、相分離構造を制御し、それを評価・解析することが材料・プロセスの最適化や品質管理の上で必要である。
【0003】
ポリマ材料の微細構造を解析する手法の一つとして走査型プローブ顕微鏡を用いる方法がある。これは、先端に微小な突起(探針)を有するカンチレバーを共振振動数で振動させながらポリマ材料の表面を平面方向にスキャン(走査)し、常時カンチレバー先端位置を検知して、その位置や振幅幅が所定の大きさになる様に垂直方向に試料を上下させ、そのフィードバック信号からポリマ材料の表面形状像を得ると共に、加振素子の入力信号とカンチレバー先端の検出信号の間の位相遅れの分布を記録する位相像を同時計測する方法である。
【0004】
ポリマ材料中に軟らかい部分と硬い部分が分離している場合、硬い部分では位相遅れは小さく、軟らかい部分では位相遅れが大きくなる。こうした方法でポリマの相分離構造を観察した例として、非特許文献1,2などがある。
【0005】
試料表面の凹凸が小さい場合は位相遅れにより硬い部分と軟らかい部分を精度よく識別可能であるが、試料表面の凹凸が大きくなると、凹凸が振動を不安定にし、また試料を上下するフィードバックが追いつかなくなり、硬い部分と軟らかい部分の識別の精度が低下する。その様な場合、走査速度を小さくしたり、少しでも平坦な部位を探索して測定する必要があった。
【0006】
一方、最近では試料凹凸の悪影響が軽減可能なSIS(Sampling Intelligent Scan)モードが開発されており、非特許文献3に紹介されている。SISモードでは、データ取得時のみ探針と試料を接触させ、データ取得時以外は探針を上方に退避させているので、試料表面に凹凸があっても、その影響を受けにくい。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】大久保信明、山岡武博、「走査型プローブ顕微鏡と動的粘弾性測定によるポリプロピレンブロックコポリマーのキャラクタリゼーション」熱測定、Vol.28、2001年、p.38−39
【非特許文献2】走査型プローブ顕微鏡ギャラリー「ポリプロピレンブロックコポリマーの位相測定」、[online]、[平成23年6月15日検索]、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社、インターネット〈URL:http://www.siint.com/products/spm/tec_gallery/data18.html〉
【非特許文献3】日本接着学会誌、2008年、Vol.44、p.169−173
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
必ずしも平坦でないポリマ材料表面の相構造を解析する場合は前記のSISモードを用いて測定することが有効であるが、SISモードの開発・導入以前に計測した試料などで、すでに処分してしまったものについては、測定をし直すことができない。また、SISモードを導入していない装置でポリマ材料表面の相構造を解析する必要に迫られた場合、スキャン速度を小さくするなど、測定条件を工夫することになるが、測定が非常に長時間化する可能性があり、スキャン速度を小さくするにも現実的には限度がある。
【0009】
表面形状と位相遅れ分布に何らかの相関を明らかにできれば、形状による影響を補正して、解析精度を高められる可能性がある。また、測定後、試料をすでに処分してしまっていて再測定できなくても、表面形状像と位相像のデータが残っていれば、形状による悪影響を補正してデータを有効活用できる。
【0010】
そこで、本発明の目的は、表面形状と位相遅れの相関を利用したデータ補正により、解析精度を高めたポリマの相構造解析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決すべく創案された本発明は、走査型プローブ顕微鏡観察でポリマ材料の表面をスキャンして同時計測された表面形状像と位相像とを用い、前記位相像から各測定点における位相遅れ値を求め、前記表面形状像から各測定点における傾斜値を求めると共に前記傾斜値に比例する補正値を求め、前記位相遅れ値に前記補正値を加減算して分布像を生成し、前記分布像を用いてポリマの相構造を解析するポリマの相構造解析方法である。
【0012】
前記傾斜値として、スキャン方向に対する傾斜値を用いるとよい。
【0013】
前記補正値は、前記表面形状像と前記位相像の一部の測定点における傾斜値と位相遅れ値の相関から比例係数を求めて算出するとよい。
【0014】
前記補正値として、スキャン方向に対する傾斜値に比例する第1の補正値と、スキャン方向に平行な方向も垂直な方向も含めた傾斜の絶対値に比例する第2の補正値とを用い、前記位相遅れ値に前記第1の補正値と前記第2の補正値のそれぞれを加減算して前記分布像を生成するとよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、表面形状と位相遅れの相関を利用したデータ補正により、解析精度を高めたポリマの相構造解析方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】ポリマ材料を走査型プローブ顕微鏡で計測した表面形状像である。
【図2】ポリマ材料を走査型プローブ顕微鏡で計測した位相像である。
【図3】走査型プローブ顕微鏡の概略図である。
【図4】図1から求めた各測定点でのスキャン方向に対する傾斜の分布図である。
【図5】図1から求めた各測定点でのスキャン方向に平行な方向と垂直な方向を含む傾斜の絶対値の分布を示した像である。
【図6】図2の4の領域の測定点におけるスキャン方向に対する傾斜と位相遅れの相関のプロットである。
【図7】図2の4の領域の測定点における傾斜の絶対値と位相遅れの相関のプロットである。
【図8】図7において各測定点におけるスキャン方向に対する傾斜が正のもの(白)と負のもの(黒)を区別してプロットしたものである。
【図9】図6の各点においてスキャン方向に対する傾斜に比例する補正値を加減算した後の相関をプロットしたものである。
【図10】図9の各測定点の横軸を各測定点における傾斜の絶対値に焼き直してプロットしたものである。
【図11】図10の各点において各点での傾斜の絶対値に比例する補正値を加減算した後の相関をプロットしたものである。
【図12】図2の位相像のデータを各測定点毎にスキャン方向に対する傾斜に比例する補正値を加減算した後の位相像(分布像)である。
【図13】図2と図12の位相差のヒストグラムである。
【図14】図2を二値化した像である。
【図15】図12を二値化した像である。
【図16】図2の位相像を等高線表示した像である。
【図17】図12の分布像を等高線表示した像である。
【図18】図12の分布像を更に各測定点での傾斜の絶対値に比例する補正値を加減算した後の位相像(分布像)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者らは、走査型プローブ顕微鏡観察で計測した表面形状像と位相像を詳細に比較検討し、各測定点における傾斜と位相遅れの間に次の相関があることを見出した。
【0018】
すなわち、スキャン方向に対して凸になっている測定点では位相遅れが小さくなり、逆に凹になっている測定点では位相遅れが大きくなる傾向が見出され、スキャン方向に対する傾斜と位相遅れの間に概ね比例関係が見出された。
【0019】
更に、スキャン方向に垂直な方向(ライン送り方向)も含めた測定点での傾斜の絶対値が大きい測定点では位相遅れが大きくなる傾向が見出された。ただし、位相遅れに与える影響としては前者のスキャン方向に対する傾斜の方が、後者のスキャン方向に垂直な方向も含めた測定点での傾斜の絶対値に対して大きいことがわかった。
【0020】
以下、本発明者らが検討した内容を、具体的なデータを用いて説明する。
【0021】
ポリオレフィン系の結晶性樹脂とポリオレフィン系のエラストマを二軸押出機により混練し、押出されたひも状の試料を切断し、表面をミクロトーム切削し、平滑な観察面を得た。これを走査型プローブ顕微鏡(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製SPA−300HV)でカンチレバーを共振振動数で振動させながら試料表面をスキャンするDFM(Dynamic Force Mode)により観察した。このとき測定した表面形状像を図1に示した。測定の開始点は図の左下の点であり、スキャン方向1にスキャンされる。左上の点まで到達した後は下に戻して2のスキャン方向に垂直な方向(右)に1画素分ずらして、またスキャン方向1にスキャンされる。本測定データでは10μm角の領域を512×512点でサンプリングしている。上下のスキャンの周波数は0.5Hzで、測定時間は約17分である。図で明るい部分は凸で、暗い部分は凹である。例えば明るい3の領域は飛び出ている部分で、その中で4の部分は少し凹んでいるようである。
【0022】
図1の表面形状像と同時に計測された位相像を図2に示す。位相像は、位相遅れの分布を示しており、明るい部分は位相遅れが大きい、すなわち軟らかい部分、暗い部分は位相遅れが小さい、すなわち硬い部分である。この試料の場合、軟らかい部分はエラストマ、硬い部分は結晶性樹脂と識別される。ここで先ほどの3の領域は硬い結晶性樹脂と考えられ、この試料ではエラストマが連続相になっており、結晶性樹脂が分散相になっていると考えられる。
【0023】
4の部分には右下がりの斜め方向に明るい筋が入っているが、図2の広い範囲に同様の筋が見られる。4の領域は分布形態から全て結晶性樹脂と考えられ、この明るい部分にエラストマが存在すると考えることは不自然であり、これは試料の凹凸が位相遅れに影響している可能性がある。
【0024】
ここで、図3に走査型プローブ顕微鏡の概略図を示し、測定の原理を簡単に説明する。カンチレバー5の先端には微小な探針6がついており、カンチレバー5の根本近くの振動子(加振素子)7により先端の探針6は共振振動数で振動している。また、カンチレバー先端近くにレーザー光8を入射、反射させ、反射光の位置を位置敏感検出器9で検知することにより光てこの原理でカンチレバー先端位置と振幅をモニタしている。ここに試料ステージ10に載せられた試料11を近づけていくと、試料11とカンチレバー5が相互作用し、振幅が減衰する。振幅の減衰率が一定の値になるように試料ステージ10を垂直方向に移動させる。
【0025】
図1は試料ステージ10を水平方向に2次元的に走査し、振幅減衰率が一定になるように制御したときの試料ステージ10の垂直方向のフィードバック値を各測定点でプロットしたものである。図2は各測定点における振動子7への入力信号の波形と位置敏感検出器9の出力信号の波形の位相遅れをプロットしている。
【0026】
試料凹凸に対応して試料ステージ10が垂直方向に移動して振幅減衰率を一定にするようフィードバックされるが、試料凹凸が大きいと追従しきれず、一時的に振幅減衰率が変動することが考えられる。振幅減衰率は任意に設定できるが、たくさん減衰させると位相遅れは小さくなる傾向がある。
【0027】
ここで図4は図1の表面形状像のデータからスキャン方向1に対する傾斜の分布を求めた結果である。明るい部分は凸、すなわちカンチレバー5が押し付けられる方向、暗い部分は凹、すなわちカンチレバー5が離れる方向である。振幅減衰率の観点からすると暗い部分ではカンチレバー5が離れることにより、振幅の減衰が少なくなり、位相遅れが大きくなると予測される。図4の4の領域には図2と同様、右下がりの筋模様が観察されているが、その筋は暗く、一方、図2の4の領域の筋が明るいことは、試料11の凸凹と位相遅れに関係性があるのではないかという、前記の予測と傾向が合致している。
【0028】
また、傾斜が大きい面では、カンチレバー5の探針6の先端のみではなく、傾斜に沿い探針自体(面)があたるため、探針6と試料11の相互作用する面積が大きくなり、位相遅れが大きくなることが予想される。
【0029】
図5は図1の表面形状像のデータから各測定点でスキャン方向に平行な方向も垂直な方向も含めた傾斜の絶対値の分布を示した像である。明るい(白い)部分は傾斜が大きく、暗い部分は傾斜が小さい部分である。図5の4の領域には傾斜が大きい右下がりの筋模様が見えており、図2の4の領域の位相遅れが大きい右下がりの筋模様と対応していることから、傾斜が大きい面においても位相遅れが大きくなるのではないかという、前記の予測と傾向が合致している。
【0030】
以上のスキャン方向の傾斜による振幅減衰率の変動の効果と、傾斜の絶対値による探針6の接触面積の効果を切り分けるために4の領域における傾斜と位相遅れの相関を検討した。
【0031】
図6は4の領域に含まれる4672個の測定点についてスキャン方向に対する傾斜と位相遅れの相関をプロットした図である。明確に右下がりの傾向が見て取れる。すなわち傾斜が正に大きい(スキャン方向に凸)と位相遅れは小さく、傾斜が負に大きい(スキャン方向に凹)と位相遅れが大きく、試料11の凸凹と位相遅れの関係性予想と合致した。
【0032】
図7は4の領域に含まれる4672個の測定点についてスキャン方向に平行な方向も垂直な方向も含めた傾斜の絶対値と位相遅れの相関をプロットした図である。図6に較べてプロットが散乱しており、単一の相関が見え難い。
【0033】
そこで、図7の測定点の内、スキャン方向に対する傾斜が正(スキャン方向に凸)のものを黒、スキャン方向に対する傾斜が負(スキャン方向に凹)のものを白で区別してプロットしたものを図8に示した。ここで白プロットには右上がりの傾向が見られ、黒プロットは傾斜の絶対値と顕著な相関が見られない。
【0034】
以上から相関としては図6のスキャン方向の傾斜がより明確であった。
【0035】
ここで、図6のプロットから最小二乗法で求めた相関直線の傾き10.839を比例係数として各測定点のスキャン方向の傾斜に乗じ、これを補正値として各測定点の位相遅れに加算した結果を図9に示す。図6に対して、位相遅れの値のバラツキは縮小した。
【0036】
更に図9の横軸を各測定点でのスキャン方向に平行な方向も垂直な方向も含めた傾斜の絶対値に焼き直したプロットを図10に示す。若干、右上がりの傾斜が得られており、傾斜が大きいと位相遅れが大きくなる傾向が見られ、傾斜による探針との接触面積増加の効果も重畳している可能性がある。これに図10から求められた相関直線の傾き−0.9719を比例係数として、傾斜の絶対値に乗じ、これを補正値として、更に位相遅れに反映させたものを図11に示す。
【0037】
4672個の測定点の標準偏差は図6で2.44、スキャン方向での傾斜補正後の図9で1.21、更に傾斜の絶対値で補正後の図11で1.20であり、スキャン方向での傾斜による補正の効果が顕著で、更に傾斜の絶対値による補正で若干改善されることがわかる。
【0038】
スキャン方向での傾斜の補正を全測定点(512×512=262,144点)に適用した結果を図12に示す。4の領域を含め、図2で暗い結晶性樹脂の分散相に見られた筋模様はほとんど除かれた。また、全測定点の位相差のヒストグラムを図13に示す。破線のヒストグラムは補正前の図2、実線のヒストグラムは本発明による補正後の図12のものである。左側のピーク成分は結晶性樹脂、右側のピーク成分はエラストマのものである。補正後は分布がよりシャープになり、相識別の精度が向上していると考えられる。
【0039】
次に画像解析で用いられる二値化処理の結果を比較する。図14は補正前、図15は補正後のものである。補正後は4の領域が改善されている。
【0040】
微細部のバラツキを比較するために等高線表示した結果を次に示す。図16が補正前、図17が補正後である。補正により微細部のバラツキも低減されている。
【0041】
最後に、スキャン方向での傾斜補正後に更にスキャン方向に平行な方向も垂直な方向も含めた傾斜の絶対値で補正した結果を図18に示す。図12に比較して、連続相のエラストマ部分の模様、すなわちバラツキが若干低減しており、改善効果が見られる。
【0042】
本発明者らは、以上の知見から、走査型プローブ顕微鏡観察でポリマ材料の表面をスキャンして同時計測された表面形状像と位相像とを用い、位相像から各測定点における位相遅れ値を求め、表面形状像から各測定点における傾斜値を求めると共に傾斜値に比例する補正値を求め、位相遅れ値に補正値を加減算して分布像を生成し、その分布像を用いてポリマの相構造を解析するポリマの相構造解析方法を発明するに至った。
【0043】
本方法においては、傾斜値として、各測定点におけるスキャン方向に対する傾斜値を用いることができる。また、補正値は、表面形状像と位相像の一部の測定点における傾斜値と位相遅れ値の相関から比例係数を求めて算出することができる。このように、補正値を計算するのに必要な比例係数については測定データの一部のデータ点について傾斜値と位相遅れ値の相関から求めると効率的である。
【0044】
更に、補正値として、スキャン方向に対する傾斜値に比例する補正値を第1の補正値、全体的な傾斜の絶対値に比例する補正値を第2の補正値としたとき、位相遅れ値に第1の補正値と第2の補正値のそれぞれを加減算して分布像を生成することもできる。
【0045】
つまり、スキャン方向に対する傾斜による補正値に加え、スキャン方向に垂直な方向も含めた測定点での傾斜の絶対値に比例する補正値を別途加えて加減算して得られる分布像を用いることで、更に試料の表面凹凸の影響を補正可能である。
【0046】
このようにして得られた分布像を用いることにより、試料凹凸の影響が小さくなり、ポリマ材料の相構造の解析が容易になる。
【0047】
以上記載したように、本発明を用いることにより、走査型プローブ顕微鏡により測定した表面形状像から抽出した傾斜の分布から、試料凹凸で影響を受けた位相遅れの変動を補正することが可能になり、ポリマ材料の相識別の精度が改善でき、二値化も容易になり、ポリマ材料の相構造解析に有効である。
【0048】
このように、本発明によれば、表面形状と位相遅れの相関を利用したデータ補正により、ポリマの相構造を解析することができる。これにより、SISモードの開発・導入以前に計測した試料などで、すでに処分してしまったものや、SISモードを導入していない装置であっても、表面形状像と位相像のデータから、形状による悪影響を補正して解析精度を高めることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 スキャン方向
2 スキャン方向に垂直な方向
3 結晶性樹脂の領域
4 結晶性樹脂の領域の一部で凹凸が大きい部位
5 カンチレバー
6 探針
7 振動子
8 レーザー光
9 位地敏感検出器
10 試料ステージ
11 試料
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査型プローブ顕微鏡観察でポリマ材料の表面をスキャンして同時計測された表面形状像と位相像とを用い、前記位相像から各測定点における位相遅れ値を求め、前記表面形状像から各測定点における傾斜値を求めると共に前記傾斜値に比例する補正値を求め、前記位相遅れ値に前記補正値を加減算して分布像を生成し、前記分布像を用いてポリマの相構造を解析することを特徴とするポリマの相構造解析方法。
【請求項2】
前記傾斜値として、スキャン方向に対する傾斜値を用いる請求項1記載のポリマの相構造解析方法。
【請求項3】
前記補正値は、前記表面形状像と前記位相像の一部の測定点における傾斜値と位相遅れ値の相関から比例係数を求めて算出する請求項1又は2記載のポリマの相構造解析方法。
【請求項4】
前記補正値として、スキャン方向に対する傾斜値に比例する第1の補正値と、スキャン方向に平行な方向も垂直な方向も含めた傾斜の絶対値に比例する第2の補正値とを用い、前記位相遅れ値に前記第1の補正値と前記第2の補正値のそれぞれを加減算して前記分布像を生成する請求項1記載のポリマの相構造解析方法。
【請求項1】
走査型プローブ顕微鏡観察でポリマ材料の表面をスキャンして同時計測された表面形状像と位相像とを用い、前記位相像から各測定点における位相遅れ値を求め、前記表面形状像から各測定点における傾斜値を求めると共に前記傾斜値に比例する補正値を求め、前記位相遅れ値に前記補正値を加減算して分布像を生成し、前記分布像を用いてポリマの相構造を解析することを特徴とするポリマの相構造解析方法。
【請求項2】
前記傾斜値として、スキャン方向に対する傾斜値を用いる請求項1記載のポリマの相構造解析方法。
【請求項3】
前記補正値は、前記表面形状像と前記位相像の一部の測定点における傾斜値と位相遅れ値の相関から比例係数を求めて算出する請求項1又は2記載のポリマの相構造解析方法。
【請求項4】
前記補正値として、スキャン方向に対する傾斜値に比例する第1の補正値と、スキャン方向に平行な方向も垂直な方向も含めた傾斜の絶対値に比例する第2の補正値とを用い、前記位相遅れ値に前記第1の補正値と前記第2の補正値のそれぞれを加減算して前記分布像を生成する請求項1記載のポリマの相構造解析方法。
【図3】
【図13】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図13】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−19697(P2013−19697A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151115(P2011−151115)
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
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