説明

ポリマーによる膜の電子線誘起修飾

本発明は、ポリマーが電子線により架橋され、表面上に固定される微細孔膜の製造方法であって、初期の微細孔膜を提供すること、溶媒およびこれに溶解または分散したポリマーを含む含浸溶液に含浸し、含浸膜を提供すること、および含浸膜に電子線照射を照射し、その表面に電子線により架橋されたポリマーを有する含浸膜を提供することを含む、前記方法、および該方法により製造された微細孔膜、ならびにかかる膜の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に電子線照射架橋ポリマーが固定された微細孔膜の製造方法であって、微細孔膜出発膜を提供すること、前記膜を溶媒およびまたそれに溶解または分散したポリマーを含む含浸溶液で含浸し、含浸膜を提供すること、および前記含浸膜に電子線照射を照射し、表面に前記電子線照射架橋ポリマーが固定された微細孔膜を提供すること、のステップを含む前記方法、ならびに本方法により製造された微細孔膜、およびかかる膜の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
膜フィルターの実際の適用に関し、フィルター材料が機械的、熱的および化学的に安定であり、および一般的な(有機)溶媒に不溶性であることが、通常好ましい。このため、表面特性、例えば水との浸潤性または(例えばタンパク質の)非特異性結合などが後の使用における要求と一致しないにもかかわらず、ポリマーが頻繁にフィルター膜として用いられる。これらのポリマーを用いて製造された膜フィルターの表面特性を改善するために、恒久的に膜表面を修飾する異なる方法がここ数十年にわたって開発されてきた。修飾を恒久的にするという必要性のため、溶液、例えば、親水性ポリマーの溶液に膜を単純に含浸すること(疎水性ポリマー膜を親水性化すること)は、問題外であり、なぜならこの親水性ポリマーが容易に膜から洗い流されるためである。
【0003】
米国特許第4,698,388号明細書は、2種のビニルモノマーであって、かかる2種のビニルモノマーの1つのポリマーはポリマー材料中に均質に分散可能であり、他の種は親水性ホモポリマーを形成する前記2種のビニルポリマーからの重合体過酸化物の存在下で合成可能なブロックコポリマーで被覆可能なポリマー材料を開示する。例えば、帯電防止特性または電気表面抵抗率(electrical surface resistivity)により特徴付けられる、親水性修飾の耐久性は、穏和な条件下、つまり室温において水道水で2時間洗い流すことにより試験されるのみであり、ポリマー材料上の親水性修飾の恒久性に関し他には何も述べられていない。米国特許出願公開第2003/148017号明細書は、疎水性ポリプロピレンオキシド(PPO)セグメントを有し、かつ親水性ポリエチレンオキシド(PEO)セグメントを有するコポリマーの吸着によるポリ(エーテル)スルホンに基づく疎水性透析膜であって、膜から透析物溶液への洗い流しが血液透析においては影響しないが、ろ過滅菌において望ましくない、かかる疎水性透析膜の修飾を開示している。
【0004】
あるろ過法に先験的に(a priori)適合しない疎水性表面を有するポリマーでできている膜フィルターを恒久的に修飾するために、米国特許4,618,533号明細書は、ポリ(エーテル)スルホンまたはポリフッ化ビニリデンに基づく孔質な疎水性な粗膜をモノマー(ヒドロキシアルキルまたはアミノアルキルアクリレート)および開始剤の溶液で含浸させ、次いで例えば加熱(熱開始)またはUV照射(光開始剤を用いる)によるエネルギーの供給により、モノマーの重合化を開始することを提案する。重合により、膜から洗い落とし可能でなく、また部分的に膜にグラフトした、孔質マトリックスの内部においてポリマーの長鎖架橋鎖を生じさせ、恒久的修飾をもたらす。
【0005】
しかしながら、用いられるモノマー(アクリレート、メタクリレートおよび他のビニルモノマー)の毒性および発がん作用のため、かかるプロセスでの問題は、修飾後に膜内に残存する変換されていないモノマーが、後の使用において、例えばろ液へと放出されないことを確実にすることである。抽出可能な物の水準を許容されるものへと低減させるには、高度で、費用および時間集約的な、修飾後の洗浄労力を要する。さらに、修飾プロセスは、製造プロセスの過程で扱われる毒性および発がん性化合物、ならびに、その過程において生じた汚染および残存材料の廃棄を要する。それゆえ、これらの化合物を用いることは、費用、環境および健康の観点からだけでなく、より具体的には、より厳格な環境規制("Reach")の背景に対して、疑問視されるよう思われる。
【0006】
上述の頻繁に毒性的に懸念されるモノマーの使用の1つの代替は、いわゆるプレポリマー、つまり反応性官能基を含むポリマー、を使用することである。米国特許第5,629,084号明細書は、二フッ化ポリビニリデン、ポリテトラフルオロエタン、ポリエテンおよびポリプロピレンの基膜を、フリーラジカル開始剤を用いたプレポリマーの溶液に含浸させ、重合を開始することを開示する。架橋剤は用いられず、ポリビニルアルコール、ポリビニルアミン、ポリアクリル酸およびポリビニルピロリドンに基づくプレポリマーの架橋、ならびにそれらの膜表面へのグラフトは、エネルギー供給、具体的には熱開始剤の場合には熱供給または光開始剤の場合にはUV照射、を通じて誘起される。かかるプロセスは、過酸化物および過硫酸塩に基づく開始剤を10〜30重量%でのかなりの割合で製造中に用いる点で不利である。なぜなら、これらまたはこれらの変性産生物(アルカリ金属硫酸塩、アルカリ金属リン酸塩および安息香酸誘導体)は、修飾膜材料から、廃棄物として、修飾プロセス後に抽出により除去されなければならないからである。
【0007】
さらに、電子照射はベース膜材料を破壊し、それゆえいかなる修飾をももたらし損ねるため、製造プロセスは、熱エネルギーおよび照射方式としてのUV照射に限定される(米国特許第5,629,084号明細書の3欄53〜56行を参照)。先行技術からのこの研究結果は、すべての例示的な態様において、プレポリマーの架橋による出発膜の修飾は、熱により、またはUV照射により実行されるのみであり、それぞれ、フリーラジカル開始剤または光開始剤の使用を必要とする事実により支持される(米国特許第5,629,084号明細書の実施例1〜11を参照)。
【0008】
開始剤を用いることの1つの代替は、電子線照射を用いて重合を開始することである。このため、修飾されるべき膜は、反応性有機分子、例えばアクリル酸誘導体に由来するモノマー、を含有する溶液に含浸され、そしてモノマーの反応を開始する電子線照射にさらされる。膜を修飾することに関し、このプロセスは、米国特許第4,944,879号明細書、欧州特許第13900087号、欧州特許第1381447号および米国特許第7067058号明細書に記載される。記載される含浸溶液は、頻繁に、架橋剤、つまり二重に、または一般的には多重に官能性なモノマー(米国特許第4,944,879号明細書、欧州特許第1390087号、欧州特許第1381447号、国際公開第2005/077500号を参照)、あるいは2または3以上のモノマーおよび架橋剤の混合物(欧州特許第1390087号、欧州特許第1381447号および米国特許第7,067,058号明細書)をさらに含有する。しかし、これらの方法は、毒性モノマー、例えばアクリル酸塩、アクリルアミドおよび他のビニルモノマーなどを同様に使用する。
【0009】
さらに、架橋剤は同様に、毒性および/または苛性化合物である。膜製造後の、費用を要し、不便な洗浄ステップにおいて除去されなければならない、修飾膜の抽出可能な毒性成分の問題は、この方法では解決されない。同様に、ホモポリマーおよび架橋剤との(国際公開第2005/077500号)またはオリゴマーとの、モノマーとのおよび随意に架橋剤との熱誘起修飾の変化形は、関連する低分子量の有機化合物を用いる一方、米国特許第6,039,872号明細書は、疎水性ポリ(エーテル)スルホン膜および架橋可能なポリアルキレングリコールジアクリレートおよび、さらに親水性モノアクリレートから得られる親水性の膜を開示する。さらに、記載されるプロセスは、多数の異なる出発材料のため、複雑および費用集約的である。
【0010】
電子線誘起性重合化のこの修飾方法のさらなる変化形は、膜表面へとグラフトされるポリマー中間層を記載し、かかるポリマー中間層は次いで、親水性特性を最終膜に付与する、さらなる修飾層でグラフトされる。米国特許第6,509,098号明細書および米国特許第6,616,982号明細書は、疎水性基膜の修飾が、電子線照射により(メト)アクリル酸モノマーから作られることができる中間ポリマー膜を用いて達成される、膜およびその製造方法を開示する。この中間ポリマー層は、次いで、ポリエチレンオキシド、親水性の第2ポリマー層の電子線誘起グラフトにより、そこに適用される。中間ポリマー層は、毒物学的に関連するモノマーのアクリル酸誘導体から得られ、この2段階プロセスは同様に比較的高価であり、および不便である。
【発明の概要】
【0011】
本発明により取り組まれる問題は、それゆえ、その表面に耐久性のある修飾を有し、いかなる抽出可能な毒性化合物も含まない微細孔膜を提供することであり、およびさらには毒物学的に関連する出発材料および毒性なプロセス出発物質を用いない、その環境に適合した製造方法を提供することである。
これらの問題は、特許請求の範囲において特徴付けられる本願発明の態様により解決される。
【0012】
より具体的には、表面に電子線照射架橋ポリマーが固定された微細孔膜を製造方法が提供され、該方法は以下のステップ:
a) 微細孔出発膜を提供すること、
b) 溶媒およびまたそれに溶解または分散したポリマーを含む含浸溶液に膜を含浸させ、含浸膜を提供すること、および
c) 含浸膜に電子線照射を照射し、表面に電子線照射架橋ポリマーが固定された微細孔膜を提供すること
を含む。
【0013】
本発明の文脈において、微細孔膜はマイクロメートル範囲の孔を有する膜である。好ましくは、微細孔出発膜は0.001〜10μmの範囲の平均孔径を有する。
【0014】
微細孔出発膜は、任意の適切な材料からなることができる。適切な微細孔膜は、先行技術において知られている。好ましくは、微細孔出発膜は、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロペン、ポリエテン、ポリテトラフルオロエテン、ポリアミド、これらのコポリマーおよびこれらの混合物からなる群から選択された材料からなる。
【0015】
本発明の方法の好ましい態様において、出発膜の厚さは5〜500μmの範囲であり、より好ましくは50〜300μmの範囲であり、および最も好ましくは80〜200μmの範囲である。
【0016】
上記の微細孔出発膜を提供する本発明の方法の(ステップa)の後、本発明の方法のステップb)は、溶媒およびまたそれに溶解または分散したポリマーも含む含浸溶液に膜を含浸させ、含浸膜を提供することである。
【0017】
本発明の文脈において、含浸とは、出発膜の本質的に全ての表面をポリマーに接触させる任意の可能な形態を意味するものと解される。好ましくは、含浸は、任意に過剰の含浸溶液を膜の外部表面から除去するステップが続く、出発膜の含浸溶液中への浸漬により、または出発膜への含浸溶液の噴霧により達成される。含浸プロセスのために有利であるならば、乾燥した出発膜をまず適切な湿潤液で湿らせることができ、第2のステップにおいて含浸溶液へと交換される。出発膜の表面により、内部表面すなわち孔の内部壁面だけでなく外部表面すなわち膜の外部面もまた意味される。
【0018】
含浸溶液の溶媒は、任意の適切な溶媒であることができる。しかし、ポリマーが溶解可能または分散可能であるが、出発膜を攻撃/溶解しない溶媒を選択することが好ましい。さらに、溶媒は、好ましくは、架橋反応を妨害しないように選択される。溶媒中における出発膜の膨潤性は、溶媒を選択する際には、考慮に入れるべきである。本発明の好ましい態様は、水、アルコール類、ケトン類、ヒドロフルオロエーテル類およびこれらの混合物からなる群から選択される溶媒を利用する。適切なアルコール類は、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールおよびブタノールである。アセトンは、適切なケトンの例である。特に好ましくは、水または水およびブタノールの混合物を、溶媒として用いる。特に、水を溶媒として用いることにより、本発明の方法の経済性、およびその環境融和性(environmental friendliness)を高めることができる。
【0019】
適切な量のポリマーが、溶媒中に溶解したまたは分散した状態で存在する。修飾ポリマーの濃度および引き続く電子線照射のパラメーターの適切な調節が、調節可能に変化した浸透性を有する膜を製造するために、本発明の方法において用いられることができる。処理が浸透性を90%以下、より好ましくは50%以下、および最も好ましくは10%以下に低減させることが、特に好ましい。本発明の文脈において、浸透性は標準差圧(standardized differential pressure)下において単位膜面積あたりの20℃での膜を通じて流れる水の体積であり、リットル/(時間・平方メートル・バール)で報告される。
【0020】
それゆえ、含浸溶液が0.01〜20重量%のポリマーを含有することが好ましい。含浸溶液が0.2〜5重量%のポリマーを含有することが特に好ましい。
【0021】
含浸は、典型的には、出発膜の本質的に完全に表面を被覆するのに十分な時間で行われる。含浸は、好ましくは0.05〜10分の範囲の時間、およびより好ましくは0.1〜1分の範囲の時間で行われる。含浸時間は好ましくは、対流含浸の場合は1分以内であり、拡散含浸の場合は2〜10分の範囲である。
【0022】
対流含浸は、本明細書中において、出発膜を通じた含浸溶液の任意の流れが強制的(forced)であり、出発膜の孔へのポリマーの対流輸送を達成する含浸を意味するものと解される。そして、律速段階は、実質的には、含浸溶液における出発膜およびポリマーの間の結合定数により決定されるのみである。拡散含浸は、本明細書中において、含浸溶液中のポリマーの出発膜の孔への物質移動が拡散限界を受ける含浸を意味するものと解される。拡散限界は、ポリマーの孔への拡散速度により決定される吸着プロセスの速度である。拡散速度は、つまり、ポリマーの拡散係数により決定され、ポリマーのサイズ/分子量に非常に大きく依存する。
【0023】
含浸のために用いられるポリマーは、得られるべき微細孔膜に所望される個々の表面特性にしたがって選択されることができる。親水性化膜表面が所望される場合、親水性ポリマーが修飾のために用いられるべきである。一方、疎水性化膜表面が所望される場合、疎水性ポリマーが修飾のために用いられるべきである。ポリマーの親水性および疎水性は、溶媒の選択に影響する。アニオン性にまたはカチオン性に荷電した膜を製造するために、用いられる修飾ポリマーは、すでに電荷を有している、またはカチオン性またはアニオン性基へと化学的にまたは物理的に変換可能な基を示すことができる。本発明の特に好ましい態様において、これらのポリマーは例えば置換度の異なるアミン官能基、カルボキシル酸基もしくはスルホン酸基、またはエステルもしくはアミド官能基を含有する。
【0024】
本発明の文脈において、ポリマーは、少なくとも500g/molの平均分子量を有し、少なくとも1種の有機出発モノマーから得られる有機物質である。本発明の好ましい態様は、コポリマー、ホモポリマーおよびこれらの混合物からなる群から選択された含浸ポリマーを利用する。特に好ましくは、ポリ(2−エチルオキサゾリン)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ヒドロキシエチルセルロース、デキストラン、ヒドロキシメチルセルロース、PEO−PPO−PEOトリブロックコポリマー類およびこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーを用いる。PEO−PPO−PEOトリブロックコポリマー類のなかでも、BASF AGからの、一般組成(PEO)−(PPO)−(PEO)を有し、式中添え字aおよびbは3〜80の範囲であるPluronics(登録商標)、CAS No.9330−11−6、が好ましい。別の好ましい態様は、ポリマーを用いて、パーフッ素化炭化水素類、荷電ポリマー類またはキレートポリマー類の群から選択される出発膜を修飾することである。
【0025】
本発明の方法において、含浸膜を電子線照射で照射するステップc)がこれに続き、表面に電子線照射架橋ポリマーが固定された微細孔膜を提供する。本発明の方法による照射により、出発膜およびポリマーから形成された三次元ネットワークを構成し、得られる膜の本質的に全ての内部および外部表面上に生成する架橋反応生成物を生成させる。この反応生成物は本発明の方法により得られることができる膜上に耐久的に固定される。本発明の文脈において、固定とは、架橋ポリマーの全体の膜表面への任意の共有または非共有結合、例えばグラフト、あるいは膜表面へとグラフトされることを必要とするポリマー層を有さず、密着したネットワークとして全ての膜表面を覆うポリマー層を意味するものと解される。
【0026】
照射は、典型的には、ポリマーを膜の表面へと固定させるのに十分なエネルギー線量を用いて達成される。修飾のために用いられる電子の運動エネルギーは、照射のエネルギー線量が透過した膜にわたって均質な分布を形成するように、または膜の断面にわたって勾配が作られるように、電子源の加速電圧を介して調節されることができる。プロセスの他のパラメーターに関わりなく、個々の態様に対して調節することができる、さらにより複雑な深部線量プロファイルを膜中に作るために、両側からの同時のまたは順次的な照射が用いられることができる。本発明の好ましい態様において、電子線照射は1〜300kGyの範囲の線量において、およびより好ましくは5〜200kGyの範囲のエネルギー線量において、達成される。電子線照射を25〜150kGyの範囲の線量において達成することが最も好ましい。
【0027】
出発膜の個々の材料特性に対して電子線照射のパラメーターを適合させることにより、出発膜のいかなる従来の分解を起こさせることなく、恒久的な修飾を達成することが可能であることが見出された。したがって、驚くべきことに、さらに米国特許第5,629,084号明細書の研究結果に反して、電子線照射による出発膜のいかなる事前の分解もない、ポリマーの反応生成物を生成可能な電子線照射を介して、微細孔出発膜の耐久性のある修飾を達成できる。
【0028】
電子線照射の侵入深さに影響を及ぼす加速電圧に加え、照射ステップにおける周囲の雰囲気を変えることができる。照射の間の反応シークエンスは、反応性物質、例えば酸素などの存在により影響されうる。窒素または希ガス、ならびに反応性ガス、例えば酸素などを用いたガス処理が、照射ステップの間の周囲の雰囲気の組成を調節するために用いられることができる。照射ステップの雰囲気条件を調節するさらなる方法は、プロセスゾーン内のガスの含浸膜への拡散を実質的に制限する適切なホイル(foil)で膜を覆うことである。
【0029】
照射は、単層の膜を用いて、または多層の膜の集まりを用いて達成されることができ、その場合、電子の侵入深さを、用いる加速電圧を介して調節することができる。
【0030】
任意に、本発明の方法は、前記ステップb)の含浸の前に、ステップd)微細孔出発膜を前浸潤媒体で前処理することをさらに含む。この前浸潤は、用いられる出発膜に応じて、引き続く含浸ステップを容易にすることができる。好ましくは、前浸潤剤は、アルコール類、ケトン類、ヒドロフルオロエーテル類、炭化水素類およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。適切なアルコール類は、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールおよびブタノールである。アセトンは、適切なケトン類の例である。
【0031】
本発明のさらに好ましい態様において、ステップc)の照射後に、本方法は、ステップe)電子線照射架橋ポリマーが表面に固定された微細孔膜を抽出剤で抽出し、抽出された膜を提供すること、およびf)抽出された膜を乾燥することをさらに含む。ステップe)において、抽出剤は最終膜の材料を溶解せず、一方、変換されていないポリマー、膜に固定されていない架橋ポリマーおよびステップb)からの溶媒残存物は、抽出剤により溶解される。ステップc)後に存在する膜の抽出剤における膨潤性は、抽出剤を選択する際に考慮に入れられるべきである。好ましくは、抽出剤は、水、酸性水溶液類、アルカリ性水溶液類、アルコール類、ケトン類およびこれらの組み合わせから選択される。適切なアルコールは、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールおよびブタノールである。アセトンは適切なケトンの例である。好ましくは、抽出された膜を、60〜190℃の範囲の温度で、6秒〜120分の範囲の期間にわたって乾燥する。これにより、比較的短時間で溶媒を膜から除去し、すぐに用いることができる修飾膜を得ることが可能である。
【0032】
本発明の方法は、実質的に孔質な出発膜の実質的に全ての表面(つまり、壁面内部の孔を含む)を、修飾ポリマーで被覆する。好ましくは、膜の内部および外部表面は、プロセスにおいて、浸透性が90%以下に低減するように、好ましくは50%以下に低減するように、および最も好ましくは10%以下に低減するように、修飾される。
【0033】
修飾ポリマーは、in situで形成されず、つまり、出発膜表面上にモノマー単位の形態で適用されず、電子線照射により重合しない。むしろ、ポリマーが溶液中の出発膜と接触し、そして電子線照射に曝露される。ポリマーはそれゆえ、電子線照射により出発膜上に固定および架橋され、単独でまたは出発膜とともに相乗的に、本発明の方法により製造される膜の親水/疎水特性を決定する反応生成物に対する出発材料である。
【0034】
本発明の発明は、修飾膜を得るために、含浸および単一段階の照射のみを必要とするという有利な点を、さらに有する。
【0035】
本発明は、本発明の上述の方法により製造された、表面に電子線照射架橋ポリマーが固定された微細孔膜を、さらに提供する。
【0036】
本発明は、この微細孔膜の、血液透析、ウイルスろ過における、および/またはガスおよび液体の除菌における膜フィルターとしての使用を、さらに提供する。
本発明は、以下の非限定的な例により、さらに説明される。
【0037】

キャラクタリゼーション方法
水滴吸収時間:
10μlの1滴の水を、乾燥した、修飾膜上に配置し、液滴が膜に完全に吸収されるのに要する時間を測定した。
ソックスレー抽出:
修飾膜を、エタノールを抽出剤として用いて、1atmの圧力および72℃の温度で72h抽出した。
浸透性
膜の浸透性は、標準差圧下で、単位面積あたりの膜を通って流れた体積である。報告されるのは、リットル/(時間・平方メートル・バール)での、膜を通した20℃における水の浸透性である。
【0038】
タンパク質の結合:
10mmの小球状に打ち抜きした、乾燥し、修飾膜を、それぞれ200μlのγ−グロブリン溶液(Sigma-Aldrich、0.05M KPIバッファー(逆浸透水中の0.05Mリン酸カルシウム)中の濃度3mg/ml、pH7)中で1hインキュベートした。次いで溶液を吸引除去し、小球を1mlのバッファーで10分間、3回、それぞれ抽出した。そして、小球をBCA試薬A(逆浸透水中の、0.886重量%の2,2’−ビキノリン−4,4’−ジカルボン酸(ビシンコニン酸)、0.16重量%の酒石酸二ナトリウム、2重量%の炭酸ナトリウム[無水物]、0.95重量%の重炭酸ナトリウム)およびBCA試薬B(逆浸透水中の4重量%のCuSO溶液)を、使用直前に50:1の比率で混合したものからの、300μlのBCA試薬使用液で処理した。小球の上の溶液の変色の強度を、光度計で、595nmでの吸光度として評価した。膜に結合したγ−グロブリンの濃度は、D. Burns, A. Zydney, "Effect of Solution pH on Protein Transport through UF Membranes", Biotechnology and Bioengineering, Vol. 64, No. 1, 1999, pp. 27-37のとおりに、標準の系列の内挿として決定した。
【0039】
表面張力:
10μlの水滴の塩化ナトリウムまたは塩化カルシウム水溶液、またはいくつかの他の適切な、既知の表面張力を有する(非)水性液体を、乾燥した修飾膜上に配置し、透明性についての明確な向上により特徴づけられる、液滴が厚さ全てについて膜を湿潤させる時間を測った。液滴による浸潤に1秒未満を要する場合、浸潤を自発的と区分した。塩化ナトリウムまたは塩化カルシウム溶液または(非)水性液体の表面張力は、いずれが用いられても、1mM/mのステップで増加し、液滴の適用実験を、浸潤が自発的でなくなるまで、繰り返した。膜の表面張力は、依然自発的な浸潤を丁度もたらす、用いた溶液の最も高い表面張力と等しい。
【0040】
手順の一般的な説明:
5〜500μmの範囲の厚さを有する出発膜を修飾ポリマーの溶液で0.05〜10分の含浸により湿潤させたところ、溶液中のポリマーの濃度は0.01〜20重量%の範囲であった。膜材料がこの含浸溶液により自発的に湿潤しない場合、任意に、出発膜材料を自発的に湿潤させる適切な溶液での前浸潤を実行した。次いで、この前浸潤媒体を含浸溶液へと交換した。膜を含浸溶液で接触させた後、膜を2枚のポリエテン(PE)ホイルの間に配置し、過剰の含浸溶液を膜から、ローラーを用いてまたは2本のゴム引きロールの間で絞り出して、取り除いた。次いで、含浸膜を、150〜240kVの間の加速電圧および1〜300kGyの範囲の線量を用いた電子線照射(ESI Electrocurtain)へ曝露した。照射されるべき材料を照射区間を通過して搬送させる速度は、1〜100m/minの範囲であった。照射区間を窒素で不活性化した。照射後、膜を適切な溶媒で抽出し、修飾ポリマーの変換されていない分子を溶解させた。次いで、修飾膜を乾燥棚中において乾燥させ、その特性に関して調査した。
【0041】
本発明の製造方法は、ポリエーテルスルホン(Sartorius Stedim Biotech GmbH、15407型、平均孔径0.2μm、15428型、孔径0.02μm、15404型、孔径0.8μm)またはポリスルホン(Sartorius Stedim Biotech GmbH、14907型、孔径0.2μm)から構成される膜を、電子線照射によりポリマーから得られることのできる異なる反応生成物を用いて親水性化するために用いられる。
【0042】
修飾膜の特性を、異なる含浸(「含浸(Impraegn.)」)後、および異なる照射線量(kGyでの線量)への暴露後に、調査した。膜の特性を、液滴吸収時間(s単位でのTASZ)、ソックスレー抽出後の液滴吸収時間(s単位でのTASZsox)、20℃での水の浸透圧(1バールの差圧における、膜面積mあたり、時間(h)あたりのl(リットル)単位での流量)を通じて、およびγグロブリンの非特異的なタンパク質の結合をもまた通じて(膜面積cmあたりのタンパク質μg単位での「タンパク質の結合」)、定量化した。非特異的なタンパク質の結合および表面張力を、"Methods of characterization"において記載されるように測定した。
【0043】
本発明の方法を通じて得られる膜の場合における耐久性のある固定は、ソックスレー抽出により証明される。本発明の方法を通じて得られる膜のジクロロメタン処理により、微細孔膜上に固定された反応生成物が、架橋された状態にあることもまた、示される。ゲル相として得られる不溶残渣の場合、NMRおよびIR分光法が、修飾ポリマーの官能ユニットを証明するために用いられる。これに反して、出発膜はジクロロメタン中に完全に溶解可能であった。
【0044】
1)ポリ(2−エチルオキサゾリン)
用いた最初のポリマーは、ポリ(2−エチルオキサゾリン)(Aquazol(登録商標)5)であり、これは、5000g/molのモル質量および3〜4の範囲の多分散性を有するPolymer Chemistry Innovationsからの親水性ホモポリマーである。含浸を、0.5重量%のホモポリマーを含有する逆浸透(RO)水中のAquazol(登録商標)5の溶液を用いて達成した。15407型の膜を、上述の「手順の一般的な説明」(線量75kGy(75kJ/kgに対応する)に規定されるように修飾し、イソプロパノール(IPA)および水での抽出後、表1に挙げられる特性を有した。対照の膜を、前もって含浸溶液および/または電子線照射では処理することなく、IPAおよび水で単に抽出した;さらなる対照の膜を、含浸の後に水とともに照射し、次いでIPAおよび水で抽出した。
【0045】
【表1】

表面張力は、
*CaCl水溶液(12.3重量%のCaCl)または
**水
を用いて測定した。
【0046】
修飾膜が、対照の膜と比較して際立って低減したTASZを、特にエタノールでの72時間のソックスレー抽出後に、有することが明らかとなった。それゆえ、出発膜は、ポリ(2−エチルオキサゾリン)水溶液での含浸後の電子線誘起修飾により恒久的に親水性化し、従来の出発膜の分解は生じない。さらに、膜の非特異的なタンパク質の結合は、修飾により劇的に低減した。流量は、修飾により最小限に変化するのみである。
【0047】
2)ポリエチレングリコール4000
15407型の出発膜を、1.0重量%のホモポリマーを含有する逆浸透(RO)水中の、BASFから得られるPluriol(登録商標)4000(4000/モルの平均モル質量を有するポリエチレングリコール)の溶液に含浸させた。膜を、上述の「手順の一般的な説明」に規定されるように修飾し(線量75kGy(75kJ/kgに対応する))、イソプロパノール(IPA)および水での抽出後、表2に挙げられる特性を有した。対照の膜を、前もって含浸溶液および/または電子線照射では処理することなく、IPAおよび水で単に抽出した;さらなる対照の膜を、含浸後に水とともに照射し、次いでIPAおよび水で抽出した。
【0048】
【表2】

表面張力は、
**CaCl水溶液(42.7重量%のCaCl)または
*水
を用いて測定した。
【0049】
修飾膜が、対照の膜と比較して際立って増加した表面張力を、特にエタノールでの72時間のソックスレー抽出後に、有するということが明らかになった。それゆえ、出発膜は、Pluriol(登録商標)4000の水溶液での含浸後の電子線誘起修飾により恒久的に親水性化し、従来の出発膜の分解は生じない。さらに、膜の非特異的なタンパク質の結合は、この修飾の結果、劇的に低減しれ、表面張力は同時に、劇的に増加する。流量は、修飾により、出発膜および対照の膜に対して35%および39%、それぞれ低減する。
【0050】
3)ヒドロキシエチルセルロース4000
15407型の出発膜を、0.5重量%のホモポリマーを含有する逆浸透(RO)水中の20℃の水中の、ヒドロキシエチルセルロースの、粘度4000μPa*sの1重量%溶液としての溶液で含浸した。膜を、上述の「手順の一般的な説明」(75kGy(75kJ/kgに対応する))に規定されるように修飾し、イソプロパノール(IPA)および水での抽出後、表3で挙げられる特性を有した。対照の膜を、前もって含浸溶液および/または電子線照射では処理することなく、IPAおよび水で単に抽出した;さらなる対照の膜を、含浸の後に水とともに照射し、次いでIPAおよび水で抽出した。
【0051】
【表3】

表面張力は、
**CaCl水溶液(12.3重量%のCaCl)または
*水
を用いて測定した。
【0052】
修飾膜は、特にエタノールでの72時間のソックスレー抽出後に、対照の膜と比較して際立って低減したTASZを有することが明らかとなった。それゆえ出発膜は、ヒドロキシエチルセルロース4000の水溶液での含浸後の電子線誘起修飾により恒久的に親水性化し、従来の出発膜の分解は生じない。さらに、膜の表面張力は、わずかに増加する。流量は、修飾により最小限に変化するのみである。本発明の膜のタンパク質の結合は、対照の膜のタンパク質の結合と同程度である。
【0053】
4)デキストラン4MW 4000〜6000g/mol
15407型の出発膜を、2.0重量%のホモポリマーを含有する逆浸透(RO)水中の、Serva Feinbiochemika GmbH & Co.からのデキストラン4、分子量4000〜6000g/mol、の溶液で含浸した。膜を、上述の「手順の一般的な説明」に規定されるように修飾し(線量340kGy(340kJ/kgに対応する))、イソプロパノール(IPA)および水での抽出後、表4に挙げられる特性を有した。対照の膜を、前もって含浸溶液および/または電子線照射では処理することなく、IPAおよび水で単に抽出した;さらなる対照の膜を、含浸後に水とともに照射し、次いでIPAおよび水で抽出した。
【0054】
【表4】

表面張力は、
**CaCl水溶液(16.3重量%のCaCl)または
*水
を用いて測定した。
【0055】
修飾膜は、含浸していない対照の膜と比較して、特にエタノールでの72時間のソックスレー抽出後に、低減したTASZを有することが明らかとなった。それゆえ、出発膜はデキストラン水溶液での含浸後の電子線誘起修飾により恒久的に親水性化し、従来の出発膜の分解は生じない。さらに、膜の表面張力はわずかに増加する。流量は、修飾により、それぞれ28%および33%低減する。
【0056】
5)Pluronics(登録商標)PE3500
15407型の出発膜を、0.5重量%のコポリマーを含有する逆浸透(RO)水中の、BASF AGからのPluronics(登録商標)−PE3500の溶液で含浸した。膜を、上述の「手順の一般的な説明」に従って修飾し(線量75kGy(75kJ/kgに対応する))、イソプロパノール(IPA)および水での抽出後に表5で挙げられる特性を有した。対照の膜を、前もって含浸溶液および/または電子線照射では処理することなく、IPAおよび水で単に抽出した;さらなる対照の膜を、含浸後に水とともに照射し、次いでIPAおよび水で抽出した。
【0057】
【表5】

表面張力は、
**CaCl水溶液(7.5重量%のCaCl)または
*水
を用いて測定した。
【0058】
修飾膜は対照の膜と比較して、特にエタノールでの72時間のソックスレー抽出後に、際立って低減したTASZを有することが明らかとなった。それゆえ、出発膜は、Pluronics(登録商標)PE3500の水溶液での含浸後の電子線誘起修飾により恒久的に親水性化し、従来の出発膜の分解は生じなかった。さらに、膜の非特異的なタンパク質の結合は、この修飾により際立って低減した。流量は修飾により最小限に変化するのみである。
【0059】
6)Novec(登録商標)
15407型のポリエーテルスルホン出発膜を、3M AGによりNovec(登録商標)EGC-1700 "electronic fluid"として販売される製剤、2%の固形含量を有する、メチルノナフルオロ(イソ)ブチルエーテル中のパーフッ素化脂肪族ポリマーの溶液に含浸させた。膜をNovec(登録商標)EGC-1700 "electronic fluid"で含浸させ、150kGyの放射線量で修飾し、IPAおよび水での抽出後に、表6で挙げられる特性を有した。
対照の膜を、Novec(登録商標)EGC-1700 "electronic fluid"で含浸させたが、照射せず、修飾膜と同様に抽出した。
【0060】
【表6】

表面張力は
**イソプロパノール、または
*水
を用いて測定した。
【0061】
15407型の親水性出発膜は、照射およびNovec(登録商標)EGC-1700での含浸の組み合わせの結果として疎水性となり、明らかに低減した21mN/mの表面張力を有し、照射なしのNovec(登録商標)EGC-1700での含浸、ならびに水での含浸および引き続く照射のいずれによっても、達成されない。それゆえ、出発膜はNovec(登録商標)EGC-1700での含浸後の電子線誘起修飾により恒久的に疎水性化し、出発膜の従来のいかなる分解も生じない。
【0062】
7)ポリスルホン上のヒドロキシエチルセルロース
14907型の疎水性出発膜を、1.0重量%のホモポリマーを含有した逆浸透(RO)水中のヒドロキシエチルセルロース、粘度4000μPa・sの溶液で含浸させた。膜を、上述の「手順の一般的な説明」で規定されるように修飾し(100kGyの線量(100kJ/kgに対応する))、イソプロパノール(IPA)および水での抽出後、表7に挙げられる特性を有した。対照の膜を、前もって含浸溶液および/または電子線照射では処理することなく、IPAおよび水で単に抽出した;さらなる対照の膜を、含浸後に水とともに照射し、次いでIPAおよび水で抽出した。
【0063】
【表7】

表面張力は、
*重量比6:94のエチレングリコール−水混合物を用いて、または
**CaCl水溶液(23.3重量%のCaCl)を用いて
測定した。
【0064】
修飾後、14907型の疎水性出発膜は親水特性を有し、表面張力は82mN/mで際立って増加し、膜は水と自発的に浸潤する。膜は恒久的に親水性化し、照射による膜分解は生じなかった。
【0065】
8)ポリスルホン上のPVP−VA
14907型の疎水性出発膜を、2.0重量%のコポリマーを含有する逆浸透(RO)水中の、BASF SEよりLuviskol(登録商標)VA 37 Eの商品名で入手可能なポリビニルピロリドン−酢酸ビニル(PVP−VA)の溶液で含浸した。膜を、上述の「手順の一般的な説明」で規定されるように修飾し(線量50kGy(50kJ/kgに対応する))、イソプロパノール(IPA)および水での抽出後、表8に挙げられる特性を有した。対照の膜を、前もって含浸溶液および/または電子線照射では処理することなく、IPAおよび水で単に抽出した;さらなる対照の膜を、含浸後に水とともに照射し、次いでIPAおよび水で抽出された。
【0066】
【表8】

表面張力は、
*6:94の重量比でのエチレングリコール/水混合物を用いて、または
**CaCl水溶液(20.0重量%のCaCl)を用いて
測定した。
【0067】
疎水性出発膜は、含浸および照射後に、水に自発的に浸潤し、表面張力は80mN/mで際立って増加し、従来の膜のいかなる分解も生じない。
【0068】
9)15428型のポリエーテルスルホン膜上のポリエチルオキサゾリン
15428型の出発膜を、5重量%のホモポリマーを含油する逆浸透水中のポリオキサゾリン溶液に含浸させた。膜を、上述の「手順の一般的な説明」に規定されるように修飾し(100kGyの線量(100kJ/kgに対応する))、イソプロパノール(IPA)および水での抽出後に、表9に挙げられる特性を有した。対照の膜を、前もって含浸溶液および/または電子線照射では処理することなく、IPAおよび水で単に抽出した;さらなる対照の膜を、含浸後に水とともに照射し、次いでIPAおよび水で抽出した。
【0069】
【表9】

表面張力は、
**CaCl水溶液(16.3重量%)を用いて、または
*水を用いて
測定した。
【0070】
修飾膜は、対照の膜と比較して増加した表面張力を有する。それゆえ、出発膜はポリエチルオキサゾリンの水溶液での含浸後の電子線誘起修飾により恒久的に親水性化し、出発膜の従来のいかなる分解も生じない。さらに、膜の非特異的なタンパク質の結合は、この修飾により際立って低減する。
【0071】
10)154040型の膜上のポリエチレングリコール4000
15404型の出発膜を、1.0重量%のホモポリマーを含有する逆浸透(RO)水中の、BASFから入手可能なPluriol(登録商標)4000(4000g/molの平均モル質量を有するポリエチレングリコール)の溶液に含浸させた。膜を、上述の「手順の一般的な説明」で規定されるように修飾し(75kGyの線量(75kJ/kgに対応する))、イソプロパノール(IPA)および水での抽出後に、表10に挙げられる特性を有した。対照の膜を、前もって含浸溶液および/または電子線照射では処理することなく、単にIPAおよび水で抽出した;さらなる対照の膜を、含浸後に水とともに照射し、次いでIPAおよび水で抽出した。
【0072】
【表10】

表面張力は、
**CaCl水溶液(42.7重量%)を用いてまたは
*水を用いて
測定した。
【0073】
本発明により修飾膜は、特にエタノールでの72時間のソックスレー抽出後に、対照の膜と比較して際立って増加した表面張力を有する。それゆえ、出発膜は、Pluriol(登録商標)4000の水溶液での含浸後の電子線誘起修飾により恒久的に親水性化し、出発膜の従来のいかなる分解も生じない。さらに、同時に、表面張力が、劇的に増加する。流量は、出発膜または対照の膜と比較して、修飾により顕著には低減しない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に電子線照射架橋ポリマーが固定された微細孔膜の製造方法であって、以下のステップ:
a) 微細孔出発膜を提供すること、
b) 溶媒およびまたそれに溶解または分散したポリマーを含む含浸溶液に膜を含浸させ、含浸膜を提供すること、および
c) 含浸膜に電子線照射を照射し、表面に電子線照射架橋ポリマーが固定された微細孔膜を提供すること
を含む、前記方法。
【請求項2】
ステップb)の含浸の前に、さらに以下のステップ:
d) 微細孔出発膜を前浸潤媒体で前処理すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前浸潤剤が、アルコール類、ケトン類およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップc)の照射の後に、さらに以下のステップ:
e) 表面に電子線照射架橋ポリマーが固定された微細孔膜を抽出剤で抽出し、抽出された膜を提供すること、および
f) 抽出された膜を乾燥すること
を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
抽出剤が、水、アルコール類、ケトン類およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
抽出された膜を、60〜190℃の範囲の温度で、6秒〜120分の範囲の期間にわたって乾燥する、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
微細孔出発膜が、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロペン、ポリエテン、ポリテトラフルオロエテン、ポリアミド、これらのコポリマーおよびこれらの混合物からなる群から選択される材料からなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
ステップb)が、水、アルコール類、ケトン類、ヒドロフルオロエーテル類およびこれらの混合物からなる群から選択される溶媒を用いる、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ステップb)が、水または水およびブタノールの混合物を、溶媒として用いる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
含浸溶液が0.01重量%〜20重量%のポリマーを含有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップb)で用いられるポリマーが、コポリマー、ホモポリマーおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ステップb)が、ポリ(2−エチルオキサゾリン)、ポリエチレングリコール、パーフッ素化炭化水素類、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレンオキシド(PPO)、ヒドロキシエチルセルロース、デキストラン、ヒドロキシメチルセルロース、PEO−PPO−PEOトリブロックコポリマー類、ポリビニルピロリドン−酢酸ビニルコポリマー類およびこれらの混合物からなる群から選択されるポリマーを用いる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
電子線照射が、1〜300kGyの範囲の線量を用いて達成される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法により製造される、表面に電子線照射架橋ポリマーが固定された微細孔膜。
【請求項15】
血液透析、ウイルスろ過および/または除菌における膜フィルターとしての、請求項14に記載の微細孔膜の使用。

【公表番号】特表2012−515075(P2012−515075A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545634(P2011−545634)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【国際出願番号】PCT/EP2009/008866
【国際公開番号】WO2010/081511
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(507266912)ザトーリウス ステディム ビオテーク ゲーエムベーハー (10)
【Fターム(参考)】