説明

ポリマーコーティングされた磁気ナノ粒子を含む硬化性インク

【課題】ポリマーコーティングされた磁気金属ナノ粒子を含む新規な硬化性インク組成物を提供する。
【解決手段】特に、少なくともコーティングされた磁気金属ナノ粒子、1つの硬化性モノマー、インクの硬化性構成成分の重合を開始する放射線活性化開始剤、ゲル化剤を含む紫外線(UV)硬化性ゲルインクを提供する。インクはまた、任意の着色剤および1つ以上の任意の添加剤を含んでいてもよい。
【効果】これらの硬化性ゲルUVインク組成物は、種々の用途においてインクジェット印刷に使用できる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
磁気インク文字認識(MICR)印刷に好適な非デジタルインクおよび印刷素子が一般に知られている。最も一般的に知られている2つの技術が、リボン系熱印刷システムおよびオフセット技術である。例えば、米国特許第4,463,034号明細書には、耐熱性ファンデーションおよび熱感受性画像形成層を含む、MICR印刷のための熱感受性磁気転写素子が開示されている。画像形成層は、ワックスに分散された強磁性基材で構成され、リボンを使用する熱印刷機によって磁気画像の形態で受容紙に移される。ナンバリングボックスを用いたオフセット印刷に好適なMICRインクは、通常濃厚で、高度に濃縮されたペーストであり、例えば大豆系ワニスを含有するベース中に分散した約60%を超える磁気金属酸化物で構成される。こうしたインクは、例えばHeath Custom Press(Auburn,WA)にて市販されている。
【0002】
本実施形態は、ポリマーコーティングされた金属ナノ粒子を含むUV硬化性磁気インクに関する。これらの磁気インクは、自動化チェック処理のための磁気インク文字認識(MICR)および文書認証のためのセキュリティ印刷のような特定用途に必要とされる。商業的インクの製作での使用を不可能にするコーティングされていない磁気金属ナノ粒子の固有の特性の1つは、それらの自然発火性の性質である;通常約数十ナノメートル以下の特定サイズを有するコーティングされていない(裸の)磁気ナノ粒子は、周囲環境中の酸素に曝された場合に自然発火する。そういうものとして、コーティングされていない磁気金属ナノ粒子は深刻な火災の危険性がある。そういうものとして、こうした粒子を含むUV硬化性インクの大規模製造は、粒子を取り扱う場合に空気および水を完全に除去する必要があるので、困難である。加えて、インク調製プロセスは、無機磁気粒子が有機ベース構成成分と不相溶性であるため、磁気顔料を用いるのが特に難しい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
故に、開示された硬化性インク配合物が、先行する配合物よりも優るいくつかの利点を与える一方で、依然として、硬化性インクおよび特に硬化性液体またはゲルUVインクの所望の特性を与えるだけでなく、磁気性でもある配合物を得ることが必要とされている。さらに、特別な取り扱い条件を必要としない構成成分から容易に製造され、および誘導される磁気硬化性インク配合物を得ることが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書に例示される実施形態によれば、ポリマーコーティングされた磁気金属ナノ粒子を含む新規な硬化性インク組成物が提供される。特定実施形態が、ゲルUV硬化性インク組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】本実施形態に従うコーティングされた磁気ナノ粒子の断面図を例示する。
【図2】図1の代替実施形態に従うコーティングされた磁気ナノ粒子の断面図を例示する。
【図3】図1または図2の代替実施形態に従うコーティングされた磁気ナノ粒子の断面図を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
硬化性インク技術は、多くの市場に対して印刷能および顧客基盤を拡大し、印刷用途の多様性は、プリントヘッド技術、プリントプロセスおよびインク材料の有効な集積によって促進される。上記で議論されたように、現在のインク選択肢は、種々の基材に対する印刷について成功しているが、ナノ粒子に関連する安全性の危険を低減する磁気金属ナノ粒子を含む磁気硬化性インクを製造する方法が必要とされている。
【0007】
本実施形態は、一般に紫外線(UV)硬化性磁気インクに関し、好ましい実施形態においては、UV硬化性磁気インクに関する。特に、本実施形態は、UV硬化性インクベースに分散されたポリマーコーティングされた磁気金属ナノ粒子を用いて製造される硬化性インクを提供する。商業的インクの製作での使用を不可能にするコーティングされていない磁気金属ナノ粒子の固有の特性の1つは、それらの自然発火性の性質である;コーティングされていない(裸の)磁気ナノ粒子は、周囲環境中の酸素に曝される場合に自然発火する。例えば、裸の鉄、コバルトおよび合金ナノ粒子は、深刻な火災の危険性がある。故に、本実施形態は、磁気インクの使用を必要とする用途に好適である安定な磁気UV硬化性インクの安全な調製方法を提供する。本実施形態は、水および空気に曝されないように保護されたポリマーコーティングされた磁気金属ナノ粒子を提供する。これらのナノ粒子は、ポリマー剤、例えばポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリスチレン、ポリエステルなどのコーティングを有し、これが水または空気に対するバリアとして作用する。
【0008】
本実施形態は、いくつかの利点を与える。例えば、コーティングされた粒子は、裸の磁気金属ナノ粒子と比較した場合にインクベース中に分散し易く、故に安定な分散液を与える。本実施形態のインクはまた、酸化プロセスを排除し、結果としてコーティングされた磁気金属ナノ粒子と関連する火災の危険性を排除するので、規模を拡大し易い。こうして、本実施形態のポリマーコーティングされた磁気ナノ粒子は、分散剤のような任意の添加剤と共にUV硬化性インクベース中に分散させた場合、異なる用途に有用な安定なUV硬化性インクを与える。
【0009】
磁気インクは、2つの主要用途:(1)自動化チェック処理のための磁気インク文字認識(MICR)および(2)文書認証のためのセキュリティ印刷に必要とされる。得られた硬化性インクは、これらの用途に使用できる。
【0010】
得られた硬化性インクはまた、低温操作および高温操作の両方に好適な圧電タイプのインクジェット・プリント・ヘッドを用いて適用できる。現在のところ、水系MICRインクジェットインクだけが市販されている。水系インクは、噴出を無効にするインクの蒸発またはチャンネル内の塩の堆積を防止するためにプリントヘッドに特別な注意を必要とする。さらに、水性インクを用いた高品質印刷は、一般に特別に処理された画像基材を必要とする。加えて、UV硬化性インクおよび水系インクの両方を同じ印刷機内で操作する場合に、一般には不相溶性が生じる可能性があることについて懸念がある。有機硬化性の加熱されたインク槽に近接することによる水の蒸発、錆、UVインクの高い湿度感受性のような問題は、水系MICR溶液の実施を阻止し得る重要な問題である。故に、本実施形態はさらに、これらの問題を回避する。
【0011】
本実施形態は、UV硬化性インクベースに分散されたコーティングされた金属磁気ナノ粒子から製造されるUV硬化性インクを提供する。インクベースは、1つ以上の樹脂、1つ以上の着色剤、および/または1つ以上の添加剤、例えばゲル化剤、分散剤および/または分散剤/共力剤の組み合わせを含んでいてもよい。実施形態において、分散剤および/または共力剤は、ポリマーコーティング材料がインクベース中のナノ粒子の十分な分散性および安定性を与える場合には必要ではない場合がある。故に、分散剤および/または共力剤の選択は、保護コーティングのタイプに依存する。
【0012】
このインクは、MICR用途を含む種々の用途に使用するのに好適である。加えて、印刷されたインクは、たとえ得られたインクがMICR用途の使用に好適な十分な保磁力および残留力を示さない場合であっても、装飾目的のためには使用できる。それらはまた、セキュリティ印刷用途に使用できる。コーティングされた磁気ナノ粒子5は、図1から図3に示されるように、コーティング材料10を用いて表面上にコーティングされたコア磁気ナノ粒子15で構成される。コーティングされた磁気ナノ粒子は、楕円(図1)、キューブ状(図2)、および球体(図3)のような異なる形状を有するように製造できる。形状は、図に示されるものに限定されない。好適なポリマーコーティング材料は、例えば非晶質、結晶性、低分子量(例えば約500ダルトン(Da)〜約5000DaのMおよび約100Da〜5000DaのM)を有するポリマーおよびオリゴマー、高分子量(例えば約5000Da〜約1,000,000DaのMおよび約1000Da〜約1,000,000DaのM)を有するポリマー、1つ以上のタイプのモノマーで構成されたホモポリマー、コポリマーなど、およびこれらの混合物を含む種々の材料を含んでいてもよい。
【0013】
磁気インクは、UV硬化性インクベース中にポリマーコーティングされたナノ粒子を分散させることによって製造される。ナノ粒子の表面上に存在するコーティングは、ナノ粒子が取り扱いに安全であるように空気および湿分安定性を与える。
【0014】
種々のポリマー材料は、ナノ粒子コーティング材料のために使用でき、ナノ粒子中の磁気金属コアのための保護コーティング層を製造するのに好適である。好適な例としては、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリスチレン、ポリエステルなどが挙げられる。他の好適なポリマー材料としては、これらに限定されないが、熱可塑性樹脂、スチレンまたは置換されたスチレンのホモポリマー、例えばポリスチレン、ポリクロロエチレン、およびポリビニルトルエン;スチレンコポリマー、例えばスチレン−p−クロロスチレンコポリマー、スチレン−プロピレンコポリマー、スチレン−ビニルトルエンコポリマー、スチレン−ビニルナフタレンコポリマー、スチレン−メタクリレートコポリマー、スチレン−エチルアクリレートコポリマー、スチレン−ブチルアクリレートコポリマー、スチレン−オクチルアクリレートコポリマー、スチレン−メチルメタクリレートコポリマー、スチレン−エチルメタクリレートコポリマー、スチレン−ブチルメタクリレートコポリマー、スチレン−メチル−α−クロロメタクリレートコポリマー、スチレン−アクリロニトリルコポリマー、スチレン−ビニルメチルエーテルコポリマー、スチレン−ビニルエチルエーテルコポリマー、スチレン−ビニルメチルケトンコポリマー、スチレン−ブタジエンコポリマー、スチレン−イソプレンコポリマー、スチレン−アクリロニトリル−インデンコポリマー、スチレン−マレイン酸コポリマー、およびスチレン−マレイン酸エステルコポリマー;ポリメチルメタクリレート;ポリブチルメタクリレート;ポリビニルクロリド;ポリビニルアセテート;ポリエチレン;ポリプロピレン;ポリエステル;ポリビニルブチラール;ポリアクリル酸樹脂;ロジン;変性ロジン;テルペン樹脂;フェノール性樹脂;脂肪族または脂肪族炭化水素樹脂;芳香族石油樹脂;塩素化パラフィン;パラフィンワックスなどが挙げられる。ポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマー、線状または分岐状、ランダムおよびブロックコポリマーであることができる。
【0015】
さらなる実施形態において、酸素バリアポリマー材料は、ナノ粒子が酸素に曝されるのを有効にブロックするので、特に好適なコーティング材料である。酸素バリアポリマー材料の例としては、塩化ポリビニリデン(PVDC)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、高密度ポリエチレン(HDPE)、NYLON6などが挙げられる。好適な酸素バリア材料はまた、Dow Chemicals(SARANシリーズ樹脂(例えば、SARAN168およびSARAN519))から入手可能である。
【0016】
コポリマーはまた、好適なポリマーコーティング材料である。例えば、PVDCおよびメチルアクリレートモノマーで製造されたコポリマーは、コーティングのために使用されてもよい。このコポリマーはまた、Dow Chemicals(例えばSARAN XU32019)から入手可能である。他の例としては、10L Blend、SARAN XU 32019.39BlendおよびSARAN XU 32019 40Blendが挙げられる。加えて、酸素バリアポリマー、特に他のコモノマーとのPVDCのコポリマーの一部は、表1に示されるような種々の温度にて種々の溶媒中に可溶性である。
【表1】

【0017】
磁気ナノ粒子上のポリマーコーティングは、空気および湿分に対して安定性を与えるだけでなく、ポリマーコーティングおよびインクベースの両方が有機材料であるという事実のために、インクベースと磁気粒子との相溶性を増大させる。故に、この相溶性は、裸の磁気金属ナノ粒子に比べて磁気ナノ粒子の良好な分散性をもたらす。結果として、実際のインクベース構成成分およびポリマーのタイプに依存して、共力剤または分散剤が全く必要とされない状況または必要とされる量が顕著に少ない状況が存在する場合があり、この場合に過剰な構成成分およびコストが節約される。
【0018】
ポリマーコーティングされたナノ粒子は、合成経路および非合成経路を介して得ることができる:粒子表面の重合;粒子上の吸着;重合プロセスを介する表面改質;自己組織化ポリマー層;沈殿および表面反応を含む無機および複合コーティングおよび予め形成された無機コロイドの制御された堆積;特定用途におけるバイオマクロ分子の使用。
【0019】
ポリスチレンコーティングされたコバルトナノ粒子は、参考として本明細書に組み込まれるBradshawに対する米国公開番号2010/0015472に記載される。開示されたプロセスは、アルゴン下、160℃にて、ホスフィンオキシド基で末端処理されたポリスチレンポリマーおよびアミン末端処理されたポリスチレンの存在下、溶媒としてジクロロベンゼン中のジコバルトオクタカルボニルの熱分解からなる。プロセスは、ポリスチレンシェルを含むポリマーコーティングを有する磁気コバルトナノ粒子を提供した。加えて、他のポリマーシェルは、元々のポリスチレンシェルを他のポリマーで交換することによってコーティングされたコバルトナノ粒子の表面上に配置できる。参照文献にはさらに、コーティングされたナノ粒子上にポリスチレンシェルを、トルエン中のポリメチルメタクリレート(PMMA)との交換反応を通して、ポリメチルメタクリレートシェルによって交換することが記載されている。これらのポリマーコーティングされた磁気ナノ粒子材料はまた、磁気インクの製作に好適である。
【0020】
磁気ナノ粒子の表面は、グラフト化;原子移動ラジカル重合(ATRP)および可逆性付加−フラグメント化連鎖移動(RAFT)重合技術(後者は、連鎖移動剤を用いるが、金属触媒は用いない);溶媒蒸発方法;積層プロセス;相分離方法;ゾル−ゲル転移;沈殿技術;磁気粒子の存在下での不均質重合;懸濁/乳化重合;マイクロ乳化重合;および分散重合によって改質できる。
【0021】
上記の既知の方法に加えて、多数の特定技術、例えばTiO粒子表面上への直接の追加疎水性ポリマーコーティングによる酸化防止剤分子の化学グラフト化のための音響化学の使用;パルス−プラズマ技術の使用;ポリマーによるミクロ粒子のコーティング/封入のための超臨界流体および非溶媒プロセスの使用;狭い粒径分布ポリマー顔料ナノ粒子複合体の製造のための電気流体力学原子化の使用が興味深い。
【0022】
ナノ粒子、特に磁気ナノ粒子のポリマーによる封入/コーティングおよび表面改質はまた、本実施形態のインクを製作するために使用できる有用な方法を与える。例えば、ポリマーコーティングされた鉄ナノ粒子は、末端アンカー基であるテトラエチレンペンタアミン(TEPA)で改質されたポリマー構造の存在下、溶媒中の鉄ペンタカルボニルの熱分解によって形成されてもよい。ろ過および溶媒除去の後、コア−シェル鉄ナノ粒子は、ポリマー材料、例えばポリイソブチレン(PIB)、ポリスチレン(PS)およびポリエチレン(PE)から製造されるシェルを含有する。ポリスチレンコーティングされたナノ粒子は、プラズマ重合技術を用いることによってスチレンモノマーの存在下で鉄カルボニルガスの熱分解によって得られてもよい。プラズマ発生した熱は鉄カルボニルの迅速な分解を開始すると同時に、スチレンが分解して、生じた鉄ナノ粒子の表面での重合プロセスを開始するフリーラジカルを形成する。
【0023】
コーティングは、磁気金属ナノ粒子の表面に配置され、約0.2nm〜約100nm、または約0.5nm〜約50nm、または約1nm〜約20nmの層厚さを有していてもよい。
【0024】
上記方法に限定されないが、上記方法のすべては、本実施形態に従って磁気UV硬化性インクの製作のために必要とされる好適なポリマーコーティングされた磁気ナノ粒子を提供するために使用されてもよい。
【0025】
実施形態において、粒径および形状に依存して本明細書のプロセスによって、2つのタイプの磁気金属系インク:強磁性インクおよび超常磁性インクを得ることができる。
【0026】
実施形態において、本明細書の金属ナノ粒子は、強磁性であることができる。強磁性インクは、磁石によって磁化されることができ、磁石が除去されたら飽和磁化の一部のフラクションを維持する。このインクの主要な用途は、チェック処理のために使用される磁気インク文字認識(MICR)である。
【0027】
実施形態において、本明細書の金属ナノ粒子は、超常磁性インクであることができる。超常磁性インクも、磁場の存在下で磁化されるが、それらは磁場の不存在下でそれらの磁化を失う。超常磁性インクの主要用途は、セキュリティ印刷用であるがこれに限定されない。この場合、例えば、本明細書に記載される磁気粒子およびカーボンブラックを含有するインクは、通常の黒色インクとして現れるが、磁気特性は、磁気センサまたは磁気画像形成デバイスを用いることによって検出できる。あるいは、金属検出デバイスが、このインクを用いて調製された機密プリントの磁気金属特性を認証するために使用されてもよい。
【0028】
上記のように、本明細書の金属ナノ粒子は、強磁性または超常磁性であることができる。超常磁性ナノ粒子は、磁石によって磁化された後に0の残留磁化を有する。強磁性ナノ粒子は、磁石によって磁化された後に0より大きい残留磁化を有する、すなわち強磁性ナノ粒子が磁石によって誘導された磁化のフラクションを維持する。ナノ粒子の超常磁性または強磁性特性は、一般にサイズ、形状、材料選択および温度を含むいくつかの因子の関数である。所与の材料に関して、所与の温度では、保磁力(すなわち強磁性挙動)は、マルチドメインからシングルドメイン構造の転移に対応する臨界粒径にて最大化される。この臨界サイズは、臨界磁気ドメインサイズ(Dc,球体)と称される。シングルドメインの範囲において、熱緩和により粒径が低下する場合に保磁力および残留磁化が著しく低下する。さらに、粒径の低下は、熱作用が支配的となり、予め磁気的に飽和されたナノ粒子を脱磁化するのに十分強いので、誘導された磁化の完全な喪失をもたらす。超常磁性ナノ粒子はまた、0残留力および保磁力を有する。Dc付近およびDcを超えるサイズの粒子は強磁性である。例えば、室温において、鉄のDcは約15ナノメートルであり、fccコバルトについては約7ナノメートルであり、ニッケルについてその値は約55nmである。さらに、3、8、および13ナノメートルの粒径を有する鉄ナノ粒子は超常磁性である一方で、18〜40ナノメートルの粒径を有する鉄ナノ粒子は強磁性である。合金について、Dc値は、材料に依存して変化し得る。
【0029】
実施形態において、ナノ粒子は、例えば特にCoおよびFe(立方体)を含む磁気金属性ナノ粒子であってもよい。他のものとしては、Mn、Niおよび/または前述のすべてのもので構成される合金が挙げられる。加えて、磁気ナノ粒子は、二金属または三金属、またはこれらの混合物であってもよい。好適な二金属磁気ナノ粒子の例としては、これらに限定されないが、CoPt、fcc相FePt、fct相FePt、FeCo、MnAl、MnBi、これらの混合物などが挙げられる。三金属ナノ粒子の例としては、これらに限定されないが、上記磁気ナノ粒子の三混合物、または三金属ナノ粒子を形成するコア/シェル構造、例えばco被覆されたfct相FePtを挙げることができる。
【0030】
磁気ナノ粒子は、当該技術分野において既知のいずれかの方法(より大きい粒子のボールミル加工摩耗(ナノサイズ化された顔料製造に使用される一般的方法)、続くアニーリングを含む)によって調製されてもよい。ボールミル加工は、必要とする単結晶形態に後で結晶化される必要がある非晶質ナノ粒子を生じるので、アニーリングが一般に必要である。ナノ粒子はまた、RFプラズマによって直接製造できる。
【0031】
磁気ナノ粒子の平均粒径は、すべての次元において、例えば約3nm〜約300nmのサイズであってもよい。それらは、球体、立方体および六角形を含むいずれかの形状を有することができる。1つの実施形態において、ナノ粒子は、サイズが約5nm〜約500nm、例えば約10nm〜約300nm、または20nm〜約250nmであるが、この量はこれらの範囲外であることができる。本明細書において、「平均」粒径は、通常、d50として表され、または粒径分布の中央値において中間粒径値として規定され、分布中の粒子の50%がd50粒径値より大きく、分布中の粒子の残りの50%がd50値未満である。平均粒径は、動的光散乱のような粒径を推論する光散乱技術を使用する方法によって測定できる。粒子直径は、透過型電子顕微鏡(TEM)または動的光散乱測定によって得られる粒子の画像から誘導されるような顔料粒子の長さを指す。
【0032】
磁気ナノ粒子はいずれかの形状であってもよい。磁気ナノ粒子の例示的な形状としては、これらに限定されないが、例えばニードル形状、顆粒状、小球体、小板形状、針状、円柱状、八面体、十二面体、管状、立方体、六角形、楕円、球体、樹枝状(densdritic)、角柱状、非晶質形状などを挙げることができる。非晶質形状は、認識可能な形状を有する不明瞭な形状として本実施形態の内容で規定される。例えば非晶質形状は、明らかな縁部または角度を有さない。ナノ単結晶のサイズの主軸と短軸との比(Dmajor/Dminor)は、約10:1未満、例えば約3:2未満、または約2:1未満であることができる。特定実施形態において、磁気金属コアは、約3:2〜約10:1のアスペクト比を有するニードル様形状を有する。
【0033】
インク中の磁気ナノ粒子の充填要件は約0.5重量%〜約30重量%、例えば約5重量%〜約10重量%、または約6重量%〜約8重量%であってもよいが、この量はこれらの範囲外であることができる。
【0034】
磁気ナノ粒子は、約20emu/g〜約100emu/g、例えば約30emu/g〜約80emu/g、または約50emu/g〜約70emu/gの残留力を有することができるが、この量はこれらの範囲外であることができる。
【0035】
磁気ナノ粒子の保磁力は、例えば、約200エルステッド〜約50,000エルステッド、例えば約1,000エルステッド〜約40,000エルステッド、または約10,000エルステッド〜約20,000エルステッドであることができるが、この量はこれらの範囲外であることができる。
【0036】
磁気飽和モーメントは、例えば、約20emu/g〜約150emu/g、例えば約30emu/g〜約120emu/g、または約40emu/g〜約80emu/gであってもよいが、この量はこれらの範囲外であることができる。
【0037】
インク組成物はまた、キャリア材料または2つ以上のキャリア材料の混合物を含む。
【0038】
放射線(例えば紫外光)硬化性インク組成物の場合、インク組成物は、硬化性キャリア材料、光開始剤、任意の着色剤、および追加の添加剤を含む。硬化性キャリア材料は、通常、硬化性モノマー、硬化性オリゴマーなどである。硬化性キャリアは、実施形態において、1つ以上のこれらの材料(これらの混合物を含む)を含んでいてもよい。硬化性材料は、通常、25℃で液体である。硬化性インク組成物はさらに、上記の着色剤および他の添加剤に加えて他の硬化性材料、例えば硬化性ワックスなどを含むことができる。「硬化性」という用語は、例えば、重合性である構成成分または組み合わせ、すなわち重合(例えばフリーラジカル経路を含む、および/または重合が放射線感受性光開始剤の使用により光開始される)を介して硬化され得る材料を指す。故に、例えば「放射線硬化性」という用語が言及するものは、放射線源(光および熱源を含み、開始剤の存在下または不存在下を含む)に曝される際に硬化するすべての形態をカバーすることが意図される。放射線硬化経路の例としては、例えば200〜400nm以上のほとんど見えない光の波長を有する紫外(UV)光を用いる、例えば光開始剤および/または増感剤の存在下での硬化、例えば光開始剤の不存在下でのeビーム放射線を用いる硬化、高温熱開始剤(一般に噴出温度にて主として不活性である)の存在または不存在下での熱硬化を用いる硬化、およびこれらの適切な組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
好適な放射線−(例えばUV−)硬化性モノマーおよびオリゴマーとしては、アクリル化エステル、アクリル化ポリエステル、アクリル化エーテル、アクリル化ポリエーテル、アクリル化エポキシ、ウレタンアクリレート、およびペンタエリスリトールテトラアクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。好適なアクリル化オリゴマーの具体的な例としては、アクリル化ポリエステルオリゴマー、例えばCN2262(Sartomer Co.)、EB812(Cytec Surface Specialties)、EB810(Cytec Surface Specialties)、CN2200(Sartomer Co.)、CN2300(Sartomer Co.)など、アクリル化ウレタンオリゴマー、例えばEB270(Cytec Surface Specialties)、EB5129(Cytec Surface Specialties)、CN2920(Sartomer Co.)、CN3211(Sartomer Co.)など、およびアクリル化エポキシオリゴマー、例えばEB600(Cytec Surface Specialties)、EB3411(Cytec Surface Specialties)、CN2204(Sartomer Co.)、CN110(Sartomer Co.)など;およびペンタエリスリトールテトラアクリレートオリゴマー、例えばSR399LV(Sartomer Co.)などが挙げられるが、これらに限定されない。好適なアクリル化モノマーの具体的な例としては、ポリアクリレート、例えばトリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、グリセロールプロポキシトリアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ペンタアクリレートエステルなど、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、アミンアクリレート、アクリル酸アクリレートなどが挙げられるが、これらに限定されない。2つ以上の材料の混合物はまた、反応性モノマーとして使用できる。好適な反応性モノマーは、例えば、Sartomer Co.,Inc.、BASF Corporation、Rahn AGなどから市販されている。実施形態において、少なくとも1つの放射線硬化性オリゴマーおよび/またはモノマーは、カチオン硬化性、ラジカル硬化性などであることができる。
【0040】
硬化性モノマーまたはオリゴマーは、実施形態において、インク中に、例えばインクの約20〜約90重量%、例えば約30〜約85重量%、または約40〜約80重量%の量で含まれるが、この量はこれらの範囲外であることができる。実施形態において、場合によりオリゴマーと硬化性モノマーとの混合物は、25℃の粘度が約1〜約50cP、例えば約1〜約40cPまたは約10〜約30cPを有するように選択されるが、この量はこれらの範囲外であることができる。1つの実施形態において、硬化性モノマーおよびオリゴマーの混合物は、25℃の粘度が約20cPである。また、一部の実施形態において、硬化性モノマーまたはオリゴマーが皮膚刺激性でなく、結果として未硬化インク組成物はユーザーにとって刺激性ではないことが望ましい。
【0041】
インク組成物はさらに開始剤を含む。フリーラジカル開始剤の例としては、ベンジルケトン、モノマー性ヒドロキシルケトン、ポリマー性ヒドロキシルケトン、α−アミノケトン、アシルホスフィンオキシド、メタロセン、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体などが挙げられる。具体的な例としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾフェノン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−(4−(4−モルホリニル)フェニル)−1−ブタノン、2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン、ジフェニル−(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ベンジル−ジメチルケタール、イソプロピルチオキサントン(DAROCUR ITX、BASFBASFから入手可能)、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド(BASF LUCIRIN TPOとして入手可能)、2,4,6−トリメチルベンゾイルエトキシフェニルホスフィンオキシド(BASF LUCIRIN TPO−Lとして入手可能)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニル−ホスフィンオキシド(BASF IRGACURE 819として入手可能)および他のアシルホスフィン、2−メチル−1−(4−メチルチオ)フェニル−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン(BASF IRGACURE 907として入手可能)および1−(4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン(BASF IRGACURE2959として入手可能)、2−ベンジル2−ジメチルアミノ1−(4−モルホリノフェニル)ブタノン−1(BASFBASF IRGACURE 369として入手可能)、2−ヒドロキシ−1−(4−(4−(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオニル)−ベンジル)−フェニル)−2−メチルプロパン−1−オン(BASF IRGACURE127として入手可能)、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルホリン−4−イルフェニル)−ブタノン(BASF IRGACURE379として入手可能)、チタノセン、イソプロピルチオキサントン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルホスフィン酸エチルエステル、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、ベンジル−ジメチルケタール、イソプロピル−9H−チオキサンテン−9−オン、αアミノケトン(IRGACURE379)など、ならびにこれらの混合物が挙げられる。
【0042】
任意に、硬化性インクはまた、アミン共力剤を含有でき、それは水素原子を光開始剤に供与でき、それによって重合を開始するラジカル種を形成し、またフリーラジカル重合を阻害する溶解酸素を消費でき、それによって重合速度を増加させる共開始剤である。好適なアミン共力剤の例としては、エチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−エチルヘキシル−4−ジメチルアミノベンゾエートなど、ならびにこれらの混合物が挙げられる(が、これらに限定されない)。
【0043】
本明細書に開示されたインク用の開始剤は、いずれかの所望のまたは有効な波長において放射線を吸収でき、1つの実施形態では少なくとも約200ナノメートル、1つの実施形態では約560ナノメートル以下、別の実施形態では約420ナノメートル以下の放射線を吸収できるが、波長はこれらの範囲外であることができる。
【0044】
開始剤は、インク中に、いずれかの所望のまたは有効な量にて、1つの実施形態では少なくともキャリアの約0.5重量%、別の実施形態では少なくともキャリアの約1重量%、1つの実施形態ではキャリアの約15重量%以下、別の実施形態ではキャリアの約10重量%以下で存在し得るが、この量はこれらの範囲外であることができる。
【0045】
調製されるようなMICRインクは、黒色または暗褐色のいずれかである。さらなる実施形態において、本開示に従うMICRインクは、さらにインク製造中に着色剤を添加することによって着色されたインクとして製造されてもよい。あるいは、着色剤を欠いたMICRインクは、第1のパス中に基材に印刷され、MICR粒子を欠いた着色されたインクが、その着色インクにわたって直接印刷され、着色されたインクをMICR−解読可能にする第2のパスが続いてもよい。これは、当該技術分野において既知のいずれかの手段を通して達成されることができる。例えば、各インクは別々の貯蔵器に貯蔵できる。印刷システムは、基材に別個に各インクを送達し、2つのインクが相互作用する。インクは、基材に同時または連続的に送達されてもよい。いずれかの所望のまたは有効な着色剤は、インク組成物に使用されることができ、顔料、染料、顔料および染料混合物、顔料混合物、染料混合物などが挙げられる。コーティングされた磁気ナノ粒子はまた、実施形態において、着色剤特性の一部またはすべてをインク組成物に付与し得る。
【0046】
着色剤の量は、広い範囲、例えば約0.1〜約50重量%、または約3〜約20重量%で変更でき、着色剤の組み合わせが使用されてもよい。
【0047】
本実施形態のインクはさらに、それらの既知の目的のために1つ以上の添加剤を含有してもよい。例えば、好適な添加剤としては、ワックス、分散剤、架橋剤、安定剤、粘度調整剤、酸化防止剤、およびゲル化剤が挙げられる。
【0048】
硬化した画像は、非常に堅牢性であり、1つ以上のワックスがMICRインクジェットインクに添加されてもよい。ワックスは、例えば、インク組成物の総重量に基づいて約0.1〜約10重量%、または約1〜約6重量%の量で存在でき、この量はこれらの範囲外であることができる。好適なワックスの例としては、ポリオレフィンワックス、例えば低分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、これらのコポリマーおよびこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。他の例としては、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、フルオロカーボン系ワックス(Teflon)またはフィッシャートロプシュワックスを挙げることができるが、他のワックスも使用できる。
【0049】
1つの特定実施形態において、ワックスは硬化性ワックスであることができる。これらのワックスは、硬化性または重合性基を含有する試薬を用いて、変形可能な官能基、例えばカルボン酸またはヒドロキルを含有するワックスの反応によって合成できる。ヒドロキシル基を含有する好適なワックスの例としては、ヒドロキシル−末端処理されたポリエチレンワックスおよび2,2−ジアルキル−1エタノールとして特徴付けられるゲルベアルコールが挙げられる。カルボン酸変形可能な基を含有する好適なワックスとしては、カルボン酸末端処理されたポリエチレンおよび2,2−ジアルキルエタノール酸として特徴付けられるゲルベ酸が挙げられる。存在する硬化性基としては、アクリレート、メタクリレート、アルケン、アルキン、ビニルおよびアリルエーテルを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0050】
ワックスは、いずれかの所望のまたは有効な量でインク中に存在することができ、1つの実施形態において、インクキャリアの少なくとも約1重量%、別の実施形態において少なくとも約2重量%、およびさらに別の実施形態では少なくとも約3重量%、1つの実施形態において、約40重量%以下、別の実施形態において約30重量%以下、さらに別の実施形態において約20重量%以下で存在できるが、この量はこれらの範囲外であることができる。
【0051】
インク組成物はまた、任意に、ゲル化剤を含有できる。ゲル化剤は、所望の温度範囲内で放射線硬化性の相変化インクの粘度を顕著に増大させるように機能し得る。特に、ゲル化剤は、インクが噴出する特定温度未満の温度にてインクキャリア中で半固体ゲルを形成できる。特定実施形態において半固体ゲル相は、1つ以上の固体ゲル化剤分子および液体溶媒を含む動的平衡として存在する物理ゲルである。半固体ゲル相は、非共有結合相互作用、例えば水素結合、ファンデルワールス相互作用、芳香族非結合相互作用、イオン性または配位結合、ロンドン分散力などによって共に保持される分子構成成分の動的なネットワークアセンブリであると考えられ、これは、温度または機械的撹拌のような物理力またはpHもしくはイオン強度のような化学力によって刺激される際に、巨視的なレベルで液体から半固体状態に可逆性転移を行うことができる。インクは、温度がインクのゲル相転移を超えてまたはそれ未満に変動した場合に半固体ゲル状態と液体状態との間の熱可逆性転移を示す。この半固体ゲル相と液体相との間の転移の可逆性サイクルは、インク配合物にて多数回繰り返され得る。1つ以上のゲル化剤の混合物は、相変化転移を有効にするために使用できる。
【0052】
ゲル化剤の具体的な例としては、米国特許第7,714,040号明細書に開示されるような硬化性アミドゲル化剤、例えば米国特許第7,153,349号明細書に開示されるようなトランス−1,2−シクロヘキサンビス(尿素−ウレタン)化合物、例えば米国特許第7,563,489号明細書に開示されるような硬化性エポキシポリアミドが挙げられ、これらのすべての開示が、参考として本明細書に完全に組み込まれる。
【0053】
インク組成物はまた、酸化防止剤を任意に含有することができる。インク組成物の任意の酸化防止剤は、酸化から画像を保護するとともに、インク調製プロセスの加熱部分の間に、酸化からインク構成成分を保護する。好適な酸化防止剤の具体的な例としては、酸化防止剤のNAUGUARD(登録商標)シリーズ、例えばNAUGUARD(登録商標)445、NAUGUARD(登録商標)524、NAUGUARD(登録商標)76、およびNAUGUARD(登録商標)5112(Chemtura Corporation(Philadelphia,PA)から市販されている)、酸化防止剤のIRGANOX(登録商標)シリーズ、例えばIRGANOX(登録商標)10310(BASFから市販されている)などが挙げられる。存在する場合、任意の酸化防止剤は、インク中、いずれかの所望のまたは有効な量、例えばインクの少なくとも約0.01〜約20重量%、例えばインクの約0.1〜約5重量%、またはインクの約1〜約3重量%の量で存在できるが、この量はこれらの範囲外であることができる。
【0054】
インク組成物はまた、任意に粘度調整剤を含有できる。特定実施形態において、粘度制御剤は、脂肪族ケトン、例えばステアロンなど、ポリマー、例えばポリスチレン、ポリメチルメタクリレートなど、増粘化剤、例えばBYK Chemieから入手可能なものからなる群から選択されてもよい。存在する場合、任意の粘度調整剤は、インク中、いずれかの所望の量または有効な量、例えばインクの約0.1〜約99重量%、例えばインクの約1〜約30重量%、またはインクの約10〜約15重量%で存在できるが、この量はこれらの範囲外であることができる。
【0055】
分散剤はこの後、場合により、インク配合物に存在してもよい。分散剤の役割は、コーティング材料との相互作用を安定化することによってコーティングされた磁気ナノ粒子の改善された分散安定性をさらに確実にする。好適な量の分散剤は、例えばインク重量の約0.1〜約10重量%の量、例えば約0.2〜約5重量%の量で選択できるが、この量はこれらの範囲外であることができる。特定分散剤またはこれらの組み合わせの選択、ならびに使用されるべきそれぞれの量は、当業者の範囲内である。
【0056】
本開示のインク組成物は、いずれかの所望のまたは好適な方法によって調製できる。例えば、硬化性ゲルUVインクの場合、インク成分は、共に混合され、続いて通常、約50℃〜約100℃の温度に加熱されるが、この温度はこの範囲外であることができ、さらに均質インク組成物が得られるまで撹拌し、続いて周囲温度(通常約20℃〜約25℃)にインクを冷却できる。液体インク組成物の場合、インク成分は、簡単に、均質組成物を提供するために撹拌しながら共に混合できるが、加熱は組成物を形成するのを助けることが所望または必要であれば使用できる。インク組成物を製造する他の方法は当該技術分野において既知であり、本開示に基づいて明らかである。
【0057】
磁気金属粒子インクは、一般に、これらに限定されないが、紙、ガラスアート紙、ボンド紙、板紙、クラフト紙、ボール紙、半合成紙またはプラスチックシート、例えばポリエステルまたはポリエチレンシートなどの好適な基材に印刷されてもよい。これらの種々の基材は、それらの自然状態、例えばコーティングされていない紙で提供されることができ、またはそれらは改質された形態、例えばコーティングされたまたは処理された紙または板紙、印刷された紙または板紙などで提供されることができる。
【0058】
本開示のインクは、MICRおよび非MICR用途の両方に使用できる。
【実施例1】
【0059】
ポリマーコーティングされた磁気ナノ粒子を用いた磁気インク濃縮物の製作
1.a.ポリマーコーティングされたナノ粒子:ポリスチレンコーティングされたコバルトナノ粒子は、アルゴン下、160℃にて、4:1(w/w)の比でのホスフィンオキシド基で末端処理されたポリスチレンポリマーおよびアミン末端処理されたポリスチレンの存在下、溶媒としてのジクロロベンゼン中のジコバルトオクタカルボニルの30分間の熱分解によって得られる。反応混合物をヘキサン中に沈殿させ、さらに洗浄して、ポリスチレンコーティングされたコバルトナノ粒子を提供する。製作プロセスは、US2010/0015472A1(Bradshaw)に記載される。
【0060】
1.b.磁気インク濃縮物:ジルコニアショット(1,800g)を充填した磨砕機に、プロポキシル化ネオペンチルジアクリレート硬化性モノマー(SR9003、57.6g、Sartomer Co.Inc.,Exeter,PAから得られた)および27.4gのEFKA4340(現在はBASFから入手可能なメトキシプロパノール中のアクリルブロックコポリマーからなる分散剤;メトキシプロパノールは使用前に蒸留によって除去された)を添加する。混合物を200r.p.m.にて撹拌し、次いでこれに、15gのポリマーコーティングされた磁気ナノ粒子(US2010/0015472(Bradshaw))を1分間かけて添加する。次いでこの混合物を、20時間撹拌し、次いでジルコニアショットを除去するためにふるいにかけ、ポリマーコーティングされた磁気ナノ粒子の15%分散液を得る。
【0061】
1.c.硬化性ゲルUV磁気インクの製作のための一般的手順
ポリマーコーティングされた磁気粒子を含有するUV硬化性相変化インクを次のように調製する。磁気撹拌棒を備え、ジャケット付加熱マントルに封入された600mLビーカーに、モノマーおよび光開始剤を添加する。混合物を箔で覆い、90℃まで加熱しながら撹拌する。次いで、アミドゲル化剤およびワックスを添加し、混合物が均質になるまで撹拌を継続する。この透明インクベースを圧力下、加熱された1μmフィルターを通してろ過する。ろ過されたインクベースを、90℃に加熱されたジャケット付加熱マントル内に封入された別の600mLビーカーに移し、ホモジナイザーを含浸させる。ポリマーコーティングされた磁気ナノ粒子分散液濃縮物の15%分散液を、均質化中にインクベースに添加し、この混合物を40分間ブレンドする。次いでインクは、加熱された1μmのフィルターを圧力下で通して再びろ過し、最終インクを得る。
【0062】
インクベース組成物は、ゲルインク(予測実施例2)およびゲル化剤を有さないインク(予測実施例3)について以下に記載される。
【実施例2】
【0063】
ゲル化剤およびワックスを含有する磁気UVインク
米国特許第7,714,040号明細書(その開示が参考として本明細書に完全に組み込まれる)のインク実施例Aに開示されるものと同じゲル化剤および本実施形態に従うワックスを含有するインク組成物を表2に記載する。
【表2】

【実施例3】
【0064】
ゲル化剤およびワックスを有していない磁気UVインク
本実施形態に従うゲル化剤およびワックスを含まないインク組成物を表3に記載する。
【表3】

【0065】
磁気インク硬化
予測実施例または2からのインクの液滴をピペットを用いて紙の上に堆積させる。インクコーティングされた紙を、水銀D−バルブを備えた600W Fusion UV Systems,IncのLighthammerランプ下に32フィート/分のベルト速度にて通すことによって液滴を硬化させた。薄いスキン層が、液滴表面に視覚可能であり、硬化が行われたことを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマー、
光開始剤、
任意の硬化性オリゴマー、および
1つ以上の任意の添加剤
を含む硬化性インクキャリア;
磁気金属コアおよびこの磁気金属コアに配置された保護コーティングを含むコーティングされた磁気ナノ粒子であって、この保護コーティングがポリマー材料を含むナノ粒子;および
任意の着色剤
を含むインク。
【請求項2】
前記磁気金属コアが、Fe、Mn、Co、Ni、FePt、CoPt、MnAl、MnBiおよびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のインク。
【請求項3】
前記ポリマー材料が、非晶質ホモポリマーおよびコポリマー、結晶性ホモポリマーおよびコポリマー、約500ダルトン〜約5000ダルトンのMおよび約100〜5000のMを有するポリマーおよびオリゴマー、約5000Da〜約1,000,000ダルトンのMおよび約1000〜約1,000,000のMを有するポリマーおよびオリゴマー、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載のインク。
【請求項4】
前記保護コーティングが、アミド、アミン、カルボン酸、ホスフィンオキシド、カルボン酸エステル、アルコール、チオールおよびこれらの混合物からなる群から選択される官能基で末端処理されたポリマーを含む、請求項1に記載のインク。
【請求項5】
前記保護コーティングが約0.2nm〜約100nmの厚さを有する、請求項1に記載のインク。
【請求項6】
前記磁気ナノ粒子が、約20emu/グラム〜約100emu/グラムの残留力を有する、請求項1に記載のインク。
【請求項7】
前記磁気ナノ粒子が、約200エルステッド〜約50,000エルステッドの保磁力を有する、請求項1に記載のインク。
【請求項8】
前記磁気ナノ粒子が、約20emu/グラム〜約150emu/グラムの磁気飽和モーメントを有する、請求項1に記載のインク。
【請求項9】
前記磁気金属コアが、約3:2〜約10:1のアスペクト比を有するニードル様形状を有する、請求項1に記載のインク。
【請求項10】
モノマー、
光開始剤、
任意の硬化性オリゴマー、および
1つ以上の任意の添加剤
を含む硬化性インクキャリア;
磁気金属コアおよびこの磁気金属コアに配置された保護コーティングを含むコーティングされた磁気ナノ粒子であって、この保護コーティングがポリマー材料を含む粒子;
ゲル化剤;および
任意の着色剤
を含むインクであって、このゲル化剤が、(a)次の一般構造を有するポリアミド:
【化1】

式中、nは1から5の整数であり;Rは、(i)アルキレン基、(ii)アリーレン基、(iii)アリールアルキレン基、(iv)アルキルアリーレン基であり;RおよびR’はそれぞれ互いに独立に、(i)アルキレン基、(ii)アリーレン基、(iii)アリールアルキレン基、(iv)アルキルアリーレン基であり;RおよびR’は、それぞれ互いに独立に、(A)光開始剤基、または(B)(i)アルキル基、(ii)アリール基、(iii)アリールアルキル基、(iv)アルキルアリール基である基であり;XおよびX’は、それぞれ互いに独立に、酸素原子または式NR4の基であり、式中Rは、(i)水素原子、(ii)アルキル基、(iii)アリール基、(iv)アリールアルキル基、または(v)アルキルアリール基である;
(b)硬化性アミドゲル化剤;
(c)エステル末端処理されたジアミド化合物;および
(d)トランス−1,2−シクロヘキサン−ビス(尿素−ウレタン)化合物
からなる群から選択されるインク。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−193361(P2012−193361A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−45222(P2012−45222)
【出願日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】