説明

ポリマー及びそれから形成される繊維

式Ib、式Ic、式Idまたは式Ia:
【化1】


から選択される基を含むスルホン化ポリオキサジアゾールポリマー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホン化ポリオキサジザゾールポリマーの調製および結果として得られる繊維形態のような物品に関する。
【背景技術】
【0002】
Imai,Journal of Applied Polymer Science,Vol.14,pp225−239(1970)は、発煙硫酸、テレフタル酸、イソフタル酸、および硫酸ヒドラジンの使用によるランダムコポリオキサジアゾールの調製について開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
染色性ポリオキサジアゾールコポリマーを調製する代替方法およびそれから得られる物品が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、式Ia、式Ib、式Ic、又は式Id:
【化1】

(式中、Mは一価カチオンである)
のコポリマーを含むスルホン化ポリオキサジアゾールポリマー、それから形成される繊維を含む物品に関する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明の概要において前述したように、本発明には、式Ia、式Ib、式Ic、および式Idのスルホン化ポリオキサジアゾールポリマーが含まれる。
【0006】
一価カチオンであるMの例には、Li、Na、KおよびNH4が含まれる。
【0007】
製造物品として存在するポリマーは、好ましくは繊維として存在する。本明細書における目的のために、用語「繊維」は本明細書において「フィラメント」と同義的に用いられ、長さ対その長さに直角な断面積の直径での長さ比が高い、比較的柔軟で、肉眼的に一様な物体を意味する。その繊維断面は任意の形状でありうるが、しばしばいくらか円形である。パッケージでのボビン上に紡糸された繊維は、連続繊維と呼ばれる。繊維はステープルファイバーと呼ばれる短い長さに切断されうる。繊維は、フロックと呼ばれるさらに短い長さに切断されうる。マルチフィラメント糸は、コード(cords)を形成するために合わせられうる。糸は交絡されうる、および/または撚られうる。
【0008】
コポリマーは本発明の範囲内にあるので、他の構成単位もポリマー鎖に含まれうる。代表的な例には、
【化2】

が含まれる。
【0009】
本発明の好ましいコポリマーは、
【化3】

(式中、0.5<p<40、5<m<95、5<n<80であり、p、m、およびnは整数である)
である。
【0010】
ポリオキサジアゾールポリマーの製造方法は、当該技術分野でよく知られている。ポリオキサジアゾール(POD)ポリマーの製造方法の例は、Journal of Polymer Science:PartA,3,45−54(1965)、Journal of Polymer Science:PartA−1,6,3357−3370,(1968)、Advanced Materials,9(8),601−613,(1997)、および米国特許出願第11/415026号明細書に見ることができる。米国特許出願第11/415026号明細書に開示された方法によって製造されるもののような高い固有粘度のポリオキサジアゾールポリマーを有することが好ましい。米国特許出願第11/415026号明細書の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0011】
したがって、以下の説明はこの出願から示される。
【0012】
初期の第1の段階において、ポリオキサジアゾールコポリマーの形成における残りの成分の硫酸ヒドラジン、テレフタル酸、およびイソフタル酸を基準として計算して、不十分な量の発煙硫酸、すなわち、三酸化硫黄(SO3)が反応混合物中に存在する。発煙硫酸由来の三酸化硫黄(SO3)の量は、ヒドラジンのモル数を基準として3モル当量以下の量で第1の反応段階に存在する。一般に、三酸化硫黄(SO3)の量は、ヒドラジンのモル数を基準として2モル当量から3モル当量の範囲で存在する。比較において、反応を完了するための三酸化硫黄の量は一般に、ヒドラジンのモルを基準として三酸化硫黄(SO3)5〜6モル当量の範囲にある。
【0013】
残りの成分の硫酸ヒドラジン、テレフタル酸、およびイソフタル酸が、反応溶液を形成するために混合される温度は、変化させることができ、それはさらに、最終コポリマーのランダム度を決定する。
【0014】
通常、ヒドラジンとして表される硫酸ヒドラジンは、テレフタル酸およびイソフタル酸のモルの総数に比べて95〜100モルパーセントの量で存在する。環境的理由のために、過剰のヒドラジンは望ましくなく、それはヒドラジンの反応性および環境毒性のためである。他の研究者らは、過剰のヒドラジンを用いて、高い固有粘度を達成しており、例として、Acta Polymer,43,343−347(1992)図1がある。
【0015】
通常、テレフタル酸およびイソフタル酸の量は、この2つの酸のモルの総数を基準として、それぞれ、65〜90モルパーセントおよび35〜10モルパーセントの量で存在する。
【0016】
硫酸ヒドラジン、テレフタル酸、およびイソフタル酸の3成分は通常、固体形態で合わされ、完全に混合されて、その後ヒドラジンのモルを基準として三酸化硫黄(SO3)の3モル当量以下の量で第1回の発煙硫酸の添加がなされる。
【0017】
全ての反応剤が溶解するまで発煙硫酸の温度を制御することが好ましい。温度は、好ましくは、50℃以下、より好ましくは35℃以下に維持されるべきである。添加および溶解の一例は、約10〜20分の経過にわたって約25℃である。この温度を維持することによって、改善された特性をもたらす最終ポリマー鎖において繰返し単位のよりランダムな分布が達成されると考えられる。高温で反応剤を添加することに比較して、分布はよりランダムである。テレフタル酸とイソフタル酸との溶解の相対速度が相違することにより、イソフタル酸が迅速に溶解して、ジアミンと反応し、その後テレフタル酸が溶解して、かなりの量で反応を行うのに利用可能にする。この高温添加の結果は、ランダムコポリマーよりむしろブロックコポリマーの形成である。
【0018】
4成分に関する溶解に続けて、溶液は通常、100〜150℃の範囲で加熱される。好ましくは、溶液は、110〜130℃の範囲で加熱される。溶液粘度が横ばいになるまで溶液は都合よく攪拌される。通常、粘度の最大は、加熱の約30〜75分後に生じる。この溶液に、ヒドラジンのモル数を基準として約2当量のSO3を含むさらなる発煙硫酸を添加する。この反応を完了させるために3当量のSO3が反応することが必要である。通常、反応にわたって、SO3の気相平衡のために約5当量が用いられる。通常、溶液は、第2の粘度横ばい域に到達するまで100〜150℃の範囲、好ましくは110〜140℃の範囲で攪拌および加熱される。通常、第2の粘度の最大は、加熱の80〜150分後に生じる。次いで、溶液を室温に冷却し、ポリマーを、過剰の水の添加などによって沈殿させる。このコポリマーを収集し、乾燥する。
【0019】
上記方法は、2つの段階で説明したが、1つまたは複数のさらなる段階を用いることは本発明の範囲内であることが理解される。具体的には、第2の段階においてコポリマー形成を完了させるための発煙硫酸の単回の添加ではなく、コポリマー形成を完了させるために数回の発煙硫酸添加を用いてもよい。
【0020】
本発明の繊維は、ポリオキサジアゾールのポリマー溶液を少なくとも1つの静的ミキサーに通して紡糸ドープを形成する段階;および紡糸ドープを紡糸口金を通して押出して繊維を形成させる段階の方法によって紡糸されうる。さらに、この方法には、繊維をエアギャップに通す段階;ドープ繊維をクエンチ溶液と接触させて凝固繊維を形成させる段階;凝固繊維を洗浄溶液と接触させる段階;洗浄繊維を中和溶液と接触させて中和洗浄繊維を形成させる段階;中和洗浄繊維を乾燥させる段階;および乾燥繊維を巻き上げる段階がさらに含まれうる。乾燥繊維は、巻き上げ装置上のボビンに巻くことができる。本発明の範囲内の繊維を製造するのに使用するために好適な押出方法は、米国特許第4,340,559号明細書、同第4,298,565号明細書および同第4,965,033号明細書に開示されている。
【0021】
スルホン化ポリオキサジアゾール繊維は、非スルホン化ポリオキサジアゾールポリマーの繊維に対して改善された染色性を示す。この繊維は、塩基性または酸性染料の両方を用いて溶液染色することができる。塩基性染料(またはカチオン染料)は、繊維の染色性を検査するために使用される。Basacryl Red GL(Basic Red 29 by Color Index)などのカチオン染料は、生成する色の深みのために、この目的にしばしば使用される。染料は通常、ほとんどの有機溶媒および水性媒体に可溶性であるが、染色性は水性媒体で試験した。塩基性染料で均染染色を得るには、わずかに酸性(pH4〜6)が必要である。染色性の程度は、サンプルの反射率を測定するために比色計を用いて測定することができる。染色性の測定は、Kubelka−Munk式:
K/S=(1−R)2/2R
から得られるK/S値である。本明細書において用いられるように、Kは吸収を意味し、Sは散乱を意味し、Rは反射率を意味する。K/S値が大きいほど、色吸収(すなわち、染色の深み)は大きくなる。少なくとも6、より好ましくは少なくとも10、最も好ましくは少なくとも12のK/S値を得ることが望ましい。本発明の目的のために、染色性繊維は、少なくとも6のK/S値を有する繊維である。
【0022】
試験方法
染色性の程度:
染色試料を白色紙の上に置き、染色試料がMacbeth Color−Eye Model M−2020PL(商標)などの比色計を用いて光の最小吸収を示した波長で、染色試料の光反射率Rを測定する。
【0023】
染色試料のK/S値は、Kubelka−Munk式:
K/S=(1−R)2/2R
に従って反射率Rから計算する。
【0024】
K/Sの値が大きいほど、染色試料の色の深み(色の暗さ)は高くなる。
【実施例】
【0025】
実施例1
30%(w/w)発煙硫酸442部、硫酸ヒドラジン45.861部、テレフタル酸46.585部、イソフタル酸8.734部、および5−スルホイソフタル酸モノリチウム塩4.909部を反応釜中に入れた。固体反応剤が完全に溶解するまで、反応釜をシリコン油浴中に置き、室温で攪拌した。
【0026】
反応混合物を120℃までゆっくりと加熱し、この温度で2時間保持し、分子量を増加させた。反応混合物を50℃に冷却して、過剰の三酸化硫黄が全て硫酸に変換されるまで濃硫酸(93〜97%)を加えた。
【0027】
得られた溶液の一部を氷水中で沈殿させ、固体粒子として単離し、真空オーブン中、120℃で一晩乾燥させた。このポリマー試料を染色性のためにpH4〜5で、Basacryl Red GLの沸騰水溶液に加えた。ポリマー粒子は、12を超えるK/S値の染色暗赤色であった。
【0028】
比較例
5−スルホイソフタル酸モノリチウム塩4.909部を加えないが、イソフタル酸2.911部に置き換えたことを除いて実施例1におけるようにポリオキサジアゾールポリマーを調製した。得られたポリマーは、同じ染色手順を用いて全く染色されなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】

(式中、Mは一価カチオンである)
を含む式の繰り返し単位を含むスルホン化ポリオキサジアゾールポリマー。
【請求項2】
【化2】

の繰り返し単位をさらに含む、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
【化3】

の少なくとも2つの繰り返し単位を含む、請求項2に記載のポリマー。
【請求項4】
【化4】

を含む、請求項3に記載のポリマー。
【請求項5】
0.5<p<40、5<m<95、5<n<80である、請求項4に記載のポリマー。
【請求項6】
前記カチオンが、リチウム、ナトリウム、アンモニウム、またはカリウムから選択される、請求項1に記載のポリマー。
【請求項7】
前記カチオンがリチウムまたはナトリウムである、請求項6に記載のポリマー。
【請求項8】
前記カチオンがリチウムである、請求項7に記載のポリマー。
【請求項9】
前記スルホン化ポリオキサジアゾールポリマーがコポリマーである、請求項1に記載のポリマー。
【請求項10】
前記ポリオキサジアゾールコポリマーが、
【化5】

から選択される少なくとも2つの芳香族環系を含む、請求項9に記載のポリマー。
【請求項11】
繊維として存在する、請求項1に記載のポリマー。
【請求項12】
前記繊維が染色性である、請求項11に記載の繊維。
【請求項13】
K/S値が少なくとも約6である、請求項12に記載の繊維。
【請求項14】
K/S値が少なくとも約10である、請求項12に記載の繊維。
【請求項15】
K/S値が少なくとも約12である、請求項13に記載の繊維。
【請求項16】
前記繊維が染色される、請求項11に記載の繊維。

【公表番号】特表2010−505997(P2010−505997A)
【公表日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−531386(P2009−531386)
【出願日】平成19年9月19日(2007.9.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/020335
【国際公開番号】WO2008/042115
【国際公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】