説明

ポリマー材料の製造方法

ポリ(アリーレンエーテル)及び/又はポリ(アルケニル芳香族)の溶液を1個以上の濾過システムにて濾過して、粒状不純物のレベルを低下した材料を得ることによりポリマー材料を製造する方法が提供される。製造したポリマー材料はデータ記憶媒体用途に用いるのに適当である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ポリ(アリーレンエーテル)及び/又はポリ(アルケニル芳香族)樹脂を含有する溶液を濾過することにより、ポリ(アリーレンエーテル)及びポリ(アルケニル芳香族)を含有するポリマー材料を製造する方法に関する。本発明は特に、前記溶液を濾過して粒状不純物を除去して、粒状物の量を減らしたポリ(アリーレンエーテル)/ポリ(アルケニル芳香族)ポリマー材料を生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光、磁気及び光磁気媒体は、記憶メガバイト当たりの妥当な価格で大きな記憶容量を実現する高性能記憶技術の主要な母体である。面積密度(通常ディスク表面積平方インチ当たりの10億ビット、即ちギガビット/平方インチ(Gbit/in)で表される)は、線密度(トラック1インチ当たりの情報ビット数)と1インチ当たりのトラックのトラック密度との積に等しい。面積密度の向上は、メガバイト当たりの価格を下げる主要因子の一つであり、面積密度をさらに上げることが当業界で終始求められている。
【0003】
光記憶の分野では、開発はアクセス時間、システムボリューム、コスト競争に焦点を当ててなされている。面積密度の増加には、光学系(近接場光学系を用いる)の回折限界に焦点を当て、三次元記憶を研究し、また可能性のあるホログラフィ記録法その他の技術を研究することにより対処しようとしている。
【0004】
ポリマーデータ記憶媒体は、コンパクトディスク(CD)及び記録可能な、即ち書き換え可能なコンパクトディスク(例えばCD−RW)及び同様の比較的低い面積密度のデバイス、例えば約1Gbit/in未満の装置などの分野に使用されてきた。これらは、代表的には複屈折が低い光学的品質の良好な基板の使用を必要とする読出デバイスである。
【0005】
CDと違って、高い面積密度、代表的には約5Gbit/in前後の面積密度を持ちうる記憶媒体は、面積密度を増加するために第一面もしくは近接場読取・書込技術を使用する。このような記憶媒体にとって、基板の光学的品質は問題ではないが、基板の物理的及び機械的特性が益々重要になっている。第一面用途を含めて高面積密度用途にあっては、記憶媒体の表面品質は読取装置の正確さ、データを記憶する能力及び基板の複製品質に影響する可能性がある。
【特許文献1】米国特許第3306874号明細書
【特許文献2】米国特許第3306875号明細書
【特許文献3】米国特許第3365422号明細書
【特許文献4】米国特許第3383435号明細書
【特許文献5】米国特許第3451462号明細書
【特許文献6】米国特許第3639656号明細書
【特許文献7】米国特許第3642699号明細書
【特許文献8】米国特許第3661848号明細書
【特許文献9】米国特許第3733299号明細書
【特許文献10】米国特許第3838102号明細書
【特許文献11】米国特許第第3962181号明細書
【特許文献12】米国特許第3973890号明細書
【特許文献13】米国特許第4054553号明細書
【特許文献14】米国特許第4083828号明細書
【特許文献15】米国特許第4092294号明細書
【特許文献16】米国特許第4373065号明細書
【特許文献17】米国特許第4421470号明細書
【特許文献18】米国特許第4760118号明細書
【特許文献19】米国特許第4808262号明細書
【特許文献20】米国特許第4845142号明細書
【特許文献21】米国特許第4987194号明細書
【特許文献22】米国特許第4992222号明細書
【特許文献23】米国特許第4994217号明細書
【特許文献24】米国特許第5017655号明細書
【特許文献25】米国特許第5053288号明細書
【特許文献26】米国特許第5102591号明細書
【特許文献27】米国特許第5204410号明細書
【特許文献28】米国特許第5250486号明細書
【特許文献29】米国特許第5586110号明細書
【特許文献30】米国特許第5607700号明細書
【特許文献31】米国特許第5833848号明細書
【特許文献32】米国特許第6306978号明細書
【特許文献33】米国特許第6365710号明細書
【特許文献34】米国特許第6372175号明細書
【特許文献35】米国特許第6407200号明細書
【特許文献36】米国特許第6437084号明細書
【特許文献37】米国特許第6444779号明細書
【特許文献38】米国特許第6469128号明細書
【特許文献39】米国特許出願公開第2002/0062054号明細書
【特許文献40】米国特許出願公開第2002/0094455号明細書
【特許文献41】米国特許出願公開第2002/0197438号明細書
【特許文献42】米国特許出願公開第2002/0197441号明細書
【特許文献43】米国特許出願公開第2003/0044564号明細書
【特許文献44】米国特許出願公開第2003/0067089号明細書
【特許文献45】カナダ国特許第1063761号明細書
【特許文献46】欧州特許出願公開第0102122号明細書
【特許文献47】欧州特許出願公開第0225801号明細書
【特許文献48】欧州特許出願公開第0271000号明細書
【特許文献49】欧州特許出願公開第0295891号明細書
【特許文献50】欧州特許出願公開第0303209号明細書
【特許文献51】欧州特許出願公開第0642124号明細書
【特許文献52】欧州特許出願公開第0724259号明細書
【特許文献53】欧州特許出願公開第0770637号明細書
【特許文献54】欧州特許出願公開第1031972号明細書
【特許文献55】欧州特許出願公開第1047055号明細書
【特許文献56】欧州特許出願公開第1130587号明細書
【特許文献57】欧州特許出願公開第1167419号明細書
【特許文献58】欧州特許出願公開第1167420号明細書
【特許文献59】欧州特許出願公開第1167421号明細書
【特許文献60】特開平2−107651号公報
【特許文献61】特開平9−237437号公報
【特許文献62】特開平1−92209号公報
【特許文献63】特開平2−208342号公報
【特許文献64】特開昭63−13722号公報
【特許文献65】特開昭63−256427号公報
【特許文献66】特開昭63−301247号公報
【特許文献67】特開昭63−309547号公報
【特許文献68】特開昭63−86738号公報
【特許文献69】特開昭63−91231号公報
【特許文献70】特開昭63−91232号公報
【特許文献71】特開昭64−42601号公報
【特許文献72】国際公開第01/11618号パンフレット
【特許文献73】国際公開第02/43943パンフレット
【特許文献74】特開平11−268098号公報
【特許文献75】特開昭58−147332号公報
【特許文献76】特開平6−093014号公報
【非特許文献1】Paul F. Ranken ”Flame Retardants”, Plastics Additives Handbook, 5th Edition, Hanser Publishers, Munich, 2001, pp. 681−696
【非特許文献2】R. Scherrer, ”Colorants”, Plastics Additives Handbook, 5th Edition, Hanser Publishers, Munich, 2001, pp. 813−882
【非特許文献3】http://www.atofina.com/groupe/actucomm/print.cfm?IdComm=5052
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、データ記憶媒体に用いるのに適当な様々な材料が入手できるが、データ記憶媒体用途への益々厳密になる要求を満たすのに必要な属性を併せ持つ新たなポリマー材料が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態では、本発明のポリマー材料の製造方法は、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリ(アルケニル芳香族)及び溶剤を含有する第1溶液を第1濾過システムにて濾過して第1濾液を形成し、前記第1濾液を濃縮して、固形分レベル(重量%)が第1濾液よりも高い第2溶液を形成し、前記第2溶液を第2濾過システムにて濾過して第2濾液を形成し、前記第2濾液から、ポリ(アリーレンエーテル)及びポリ(アルケニル芳香族)を含有するポリマー材料を単離する工程を含む。
【0008】
別の実施形態では、本発明のポリマー材料の製造方法は、ポリ(アリーレンエーテル)及び溶剤を含有する第1溶液を第1濾過システムにて濾過して第1濾液を形成し、前記第1濾液をポリ(アルケニル芳香族)と混合して第2溶液を形成し、前記第2溶液を第2濾過システムにて濾過して第2濾液を形成し、前記第2濾液から、ポリ(アリーレンエーテル)及びポリ(アルケニル芳香族)を含有するポリマー材料を単離する工程を含む。
【0009】
他の実施形態では、本発明のポリマー材料の製造方法は、ポリ(アリーレンエーテル)、ポリ(アルケニル芳香族)及び溶剤を含有する過熱溶液を溶液濾過システムにて濾過して濾液を形成し、前記濾液から、ポリ(アリーレンエーテル)及びポリ(アルケニル芳香族)を含有するポリマー材料を単離する工程を含む。
【0010】
このポリマー材料から製造した物品を含む他の実施形態については後述する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
高面積密度の記憶媒体には良好な表面品質が要求されるので、現在のデータ記憶媒体を粒状不純物の量が限定された材料から製造するのが望ましい。美的な欠陥があると消費者が品質の劣る製品とみなすことになるので、ゲルやポリマー材料炭化物のような可視粒状不純物は望ましくない。約50μmより大きい寸法の粒子は成形品内で応力集中部分として働き、成形品の衝撃強度を下げるおそれがある。寸法約1μmの粒状不純物はヘーズの増加に寄与し、ヘーズの増加は、このような不純物を含有する材料から成形した物品を通しての光の透過、即ち物品の透明性に影響を与える。最も重要なこととして、粒状不純物は記憶媒体の表面品質に影響し、これにより読取正確性、データ記憶(ストレージ)及び複製性に影響する。
【0012】
ポリ(アリーレンエーテル)は高温で酸化分解を受けるので、ポリ(アリーレンエーテル)組成物にはしばしば、可視粒子、即ち「黒班」や他のもっと小さい微細粒子が存在する。ポリ(アリーレンエーテル)は、押出機で高い剪断速度及び/又は高温で加工されると、炭化された「黒班」を形成しがちである。
【0013】
上述した必要を満たす本発明のポリマー材料の製造方法は、押出機でポリ(アリーレンエーテル)及び/又はポリ(アルケニル芳香族)の溶液を濾過する工程を含む。濾過工程は、ポリマー材料中に存在する粒状不純物を除去して、粒状不純物の量が少なくなったポリマー材料を得る。
【0014】
ここで用いる用語「可視粒状不純物を実質的に含有しない」とは、ライトボックスで見たとき、10gのポリマー材料を50mlのクロロホルム(CHCl)に溶解したサンプル中に観察される可視黒班の数が5個未満であることを意味する。肉眼に見える粒子は代表的には直径40μm超の粒子である。
【0015】
ここで用いる用語「約15μmより大きい粒状不純物を実質的に含有しない」とは、40gのポリマー材料を400mlのCHClに溶解したサンプルにおいて、寸法約15μmの粒子の1g当たりの数が50個未満であることを意味する。この数は、ABS2アナライザー(Pacific Instruments社製)を用い、20mlのポリマー材料溶液をアナライザーに1ml/分(±5%)の流量で流して測定した場合の、各20mlのポリマー材料溶液の5つのサンプルの平均に基づいている。
【0016】
ここで用いる用語「ポリマー材料」は、ポリ(アリーレンエーテル)又はポリ(アルケニル芳香族)又は両者の組合せを包含する。
【0017】
以下に、ポリマー材料の溶液を濾過して、存在するかもしれない粒状不純物を除去することによりポリマー材料を精製する方法を説明する。ポリ(アリーレンエーテル)、ポリ(アルケニル芳香族)又は両者の組合せの溶液から粒状不純物を除去することは、現在知られている濾過システム又は装置によって達成できる。好ましくは、溶液を、フィルター材料タイプ、フィルター孔径及びフィルター形状が同一か異なる複数の濾過システムにて2回以上濾過して、特定の用途に適当なクリーンなポリマー材料を得る。複数の濾過工程を含む方法に用いる濾過システムは同じでも異なってもよい。
【0018】
一実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)及び溶剤の溶液をポリ(アルケニル芳香族)の不在下で濾過する。別の実施形態では、濾過すべき溶液がポリ(アリーレンエーテル)、ポリ(アルケニル芳香族)及び溶剤を含有する。溶液を調製するポリ(アリーレンエーテル)又はポリ(アルケニル芳香族)の形態はどのような形態でもよいが、粉末、フレーク又はペレットであるのが好ましい。さらに、溶液の調製に使用するポリ(アリーレンエーテル)及び/又はポリ(アルケニル芳香族)ソースは、反応器又は反応容器からの直接の生成物フィード流れでもよい。
【0019】
濾過すべき溶液を形成するために、ポリ(アリーレンエーテル)及び/又はポリ(アルケニル芳香族)を、所望に応じて加熱しながら、適当な溶剤と合わせる。こうして調製される溶液のポリ(アリーレンエーテル)及び/又はポリ(アルケニル芳香族)の固形分レベル(重量%)は、使用する特定の濾過システムに基づいて効率よい濾過が可能であれば、どのようなレベルでもよい。溶液の固形分レベル(重量%)は、ポリマー材料及び溶剤の合計量に基づいて1〜99重量%の固形分程度が適当である。この範囲内で、約90重量%以下の固形分レベルを用いることができ、約80重量%以下が好ましく、約70重量%以下がさらに好ましい。またこの範囲内で、約30重量%以上の固形分レベルを用いることができ、約40重量%以上が好ましく、約50重量%以上がさらに好ましい。
【0020】
濾過すべき溶液を、濾過工程以前及び/又は濾過工程中に加熱してもよい。濾過工程以前及び/又は濾過工程中の溶液の温度は約50℃〜約250℃とするのが適当である。この範囲内で、約210℃以下の温度を用いることができ、約190℃以下が好ましく、約180℃以下がさらに好ましい。またこの範囲内で、約100℃以上の温度を用いることができ、約130℃以上が好ましく、約160℃以上がさらに好ましい。
【0021】
濾過工程以前及び/又は濾過工程中の溶液の温度は、o−ジクロロベンゼン溶剤を使用し、溶液を大気圧で濾過する場合には、約100℃〜約170℃とするのが適当である。この範囲内で、約170℃以下の温度を用いることができ、約160℃以下が好ましく、約150℃以下がさらに好ましい。またこの範囲内で、約100℃以上の温度を用いることができ、約120℃以上が好ましく、約130℃以上がさらに好ましい。
【0022】
一実施形態では、濾過すべき溶液を過熱する。用語「過熱」は、溶液を大気圧での溶剤の沸点よりも高い温度に加熱することを包含する。この実施形態では、過熱溶液の温度を、大気圧での溶剤の沸点より約2℃〜約200℃高くすることができる。複数種の溶剤が存在する場合には、溶液を複数の溶剤成分のうち少なくとも1種に関して過熱する。過熱は、溶液を加圧下で加熱することにより達成できる。別の実施形態では、溶液に減圧を適用し、周囲圧力が溶液中の溶剤の蒸気圧より低くなるようにすることで、過熱を達成することができる。この場合、溶液が大気圧での溶剤の沸点より低い温度であるにもかかわらず、溶液が過熱状態にあると言うことができる。溶液を過熱することの利点は、単離ポリマー材料を得るための溶剤の除去に好都合でかつ除去が迅速になることである。
【0023】
溶液の濾過及び/又はポリマー材料の単離は、不活性な雰囲気、例えば窒素雰囲気中で行って、これらの操作の高温でポリマー材料の酸化劣化が進むのを防止するのが好ましい。
【0024】
適当な濾過システムには、種々の材料、例えば燒結金属、布、ポリマー繊維、天然繊維、紙、金属メッシュ、パルプ、セラミック又はこれらの材料の組合せなどから作製されたフィルターがある。フィルターとしては、Pall社により製造されたフィルターなどの、くねり度の高い燒結金属フィルターが特に有用である。
【0025】
フィルターの幾何形状は、コーン、プリーツ、キャンドル、積重ね、平坦、巻回又はこれらの組合せなどとすることができる。
【0026】
フィルターの孔径は、0.01μm〜100μmの範囲の寸法又はそれ以上とすることができる。この範囲内で、孔径は約50μm以下を使用でき、約20μm以下が好ましく、約15μm以下がさらに好ましい。またこの範囲内で、孔径は約0.1μm以上が好ましく、約3μm以上がさらに好ましく、約5μm以上が特に好ましい。
【0027】
適当な濾過プロセスには、重力濾過、圧力濾過、真空濾過、バッチ濾過、連続濾過、又はこれらの濾過法の組合せなどがある。
【0028】
本方法に用いる濾過システムの数はいくつでもよい。単一の濾過システムを用いてもよいし、2個以上を直列又は並列に使用してもよい。
【0029】
本発明の方法から得られるポリマー材料は、可視粒状不純物を実質的に含まないか、約15μmより大きい粒状不純物を実質的に含まないか、その両方であるのが好ましい。
【0030】
用語「ポリ(アリーレンエーテル)」は、ポリフェニレンエーテル(PPE)及びポリ(アリーレンエーテル)共重合体;グラフト共重合体;ポリ(アリーレンエーテル)エーテルアイオノマー;及びアルケニル芳香族化合物、ビニル芳香族化合物及びポリ(アリーレンエーテル)などのブロック共重合体;これらのうち少なくとも1つを含む組合せなどを含む。ポリ(アリーレンエーテル)自体は、次式(I)で表される複数個の構造単位を含む公知のポリマーである。
【0031】
【化1】

各構造単位について、各Qは独立にハロゲン、第一又は第二低級アルキル(例えば炭素原子数7以下のアルキル)、フェニル、ハロアルキル、アミノアルキル、炭化水素オキシ及びハロゲン原子と酸素原子との間に2個以上の炭素原子が介在するハロ炭化水素オキシ基などであり、各Qは独立に水素、ハロゲン、第一又は第二低級アルキル、フェニル、ハロアルキル、炭化水素オキシ及びハロゲン原子と酸素原子との間に2個以上の炭素原子が介在するハロ炭化水素オキシ基などである。用語「ハロアルキル」は、部分的に又は完全にハロゲン置換されたアルキル基など、1個以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基を含む。好ましくは、各Qがアルキル又はフェニル、特にC1−4アルキル基であり、各Qが水素又はC1−4アルキル基である。
【0032】
ポリ(アリーレンエーテル)のホモポリマーもコポリマー(共重合体)も含まれる。ホモポリマーとしては2,6−ジメチルフェニレンエーテル単位を含むものが好ましい。共重合体としては、例えば2,6−ジメチルフェニレンエーテル単位を2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位と組み合わせて含有するランダム共重合体や、2,6−ジメチルフェノールと2,3,6−トリメチルフェノールとの共重合により得られる共重合体が適当である。また、ビニル単量体やポリスチレンのようなポリマーをグラフトすることにより製造した部分を含有するポリ(アリーレンエーテル)や、カップリング剤、例えば低分子量ポリカーボネート、キノン類、複素環類及びホルマール類が2つのポリ(アリーレンエーテル)鎖のヒドロキシ基と公知の態様で反応してより高分子量のポリマーを生成するカップリング型ポリ(アリーレンエーテル)も包含される。ポリ(アリーレンエーテル)はさらに、上記のすくなくとも1つを含む組合せも包含する。ポリ(アリーレンエーテル)としては、米国特許第6407200号(Singhら)及び米国特許第6437084号(Birsakら)に記載されているものなど、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンエーテル)及びポリ(2,6−ジメチルフェニレンエーテル−コ−2,3,6−トリメチルフェニレンエーテル)が好適である。
【0033】
ポリ(アリーレンエーテル)は通常、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)で測定して、数平均分子量が約3,000〜40,000原子質量単位(amu)、重量平均分子量が約20,000〜80,000amuである。ポリ(アリーレンエーテル)は、固有粘度(IV)が、クロロホルム中25℃で測定して、約0.10〜約0.60デシリットル/グラム(dl/g)とすることができる。この範囲内で、固有粘度約0.48以下が好ましく、約0.40以下がさらに好ましい。またこの範囲内で、固有粘度約0.29以上が好ましく、約0.33dl/g以上がさらに好ましい。高固有粘度のポリ(アリーレンエーテル)と低固有粘度のポリ(アリーレンエーテル)との組合せを用いることもできる。2つの固有粘度のポリ(アリーレンエーテル)を使用する場合、両者の比の決定は、使用するポリ(アリーレンエーテル)の正確な固有粘度と望ましい最終的な物性とにある程度依存する。
【0034】
適当なポリ(アリーレンエーテル)としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジラウリル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジフェニル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジメトキシ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエトキシ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メトキシ−6−エトキシ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−ステアリロキシ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジクロロー1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−フェニル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エトキシ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−クロロ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジブロモ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(3−ブロモ−2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、及び上記ポリ(アリーレンエーテル)の混合物などがあるが、これらに限らない。
【0035】
塩基滴定可能な官能化ポリ(アリーレンエーテル)樹脂としては、適切な酸又は無水物官能化剤との反応により製造したものが適当であるが、これらに限らない。例えば、ポリ(アリーレンエーテル)と、α,β−不飽和カルボニル化合物、例えば無水マレイン酸、マレイン酸、フマル酸、無水シトラコン酸、シトラコン酸、無水イタコン酸、イタコン酸、無水アコニット酸、アコニット酸、及びこれらのエステル及びアミン;α−ヒドロキシカルボニル化合物、例えばカルボン酸、具体的にはクエン酸、マレイン酸;5−ヒドロキシベンゼン−1,2,4−トリカルボン酸無水物の誘導体、例えば5−アセチル誘導体又は4−エステル誘導体、具体的にはフェニルエステル;無水トリメリト酸アリールエステル、例えば無水トリメリト酸フェニルサリチレート;並びに上記のもののうち少なくとも1つを含む反応生成物及び組合せとの溶融反応により製造したものを使用できる。或いはまた、ポリ(アリーレンエーテル)を適当な溶剤中で酸性基もしくは潜在的酸性基で官能化することができる。このようなプロセスの例には、ポリ(アリーレンエーテル)をテトラヒドロフラン(THF)中でメタレーション(炭素−金属結合形成)した後、二酸化炭素でクエンチする方法や、ポリ(アリーレンエーテル)をトルエン溶液中で無水トリメリト酸酸クロリドで封鎖する方法がある。代表的には、(ポリ(フェニレンエーテル)及び官能化剤の重量に基づいて)約10重量%以下の官能化剤を使用でき、約6重量%以下が好ましく、約1.5重量%〜約4重量%が特に好ましい。
【0036】
一実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)は封鎖ポリ(アリーレンエーテル)を含む。封鎖は、ポリ(アリーレンエーテル)鎖の末端ヒドロキシ基の酸化を抑制するのに用いることができる。末端ヒドロキシ基は、例えばアシル化反応を介して不活性化封鎖剤で封鎖することにより不活性化することができる。封鎖剤は、反応性の低いポリ(アリーレンエーテル)をもたらすものを選ぶのが望ましく、これにより高温での加工中のポリマー鎖の架橋及びゲル又は黒班の形成を低減もしくは防止する。封鎖剤としては、例えばサリチル酸、アントラニル酸もしくはこれらの置換誘導体などのエステルがあり、中でもサリチル酸のエステル、特にサリチル酸カーボネート及び線状ポリサリチレートが好ましい。ここで用いる用語「サリチル酸のエステル」は、カルボキシ基、ヒドロキシ基又はその両方がエステル化された化合物を含む。サリチル酸エステルとしては、例えばサリチル酸フェニルなどのアリールサリチレート、アセチルサリチル酸、サリチル酸カーボネート、そして線状ポリサリチレート及びジサリチリド及びトリサチリリドのような環状化合物を含むポリサリチレートが適当である。封鎖剤としてはサリチル酸カーボネート及びポリサリチレートが好ましく、特に線状ポリサリチレートが好ましい。封鎖する場合、ポリ(アリーレンエーテル)を80%以下の任意の所望の程度まで封鎖することができるが、ヒドロキシ基の約90%以下、特に100%以下を封鎖するのが好ましい。適当な封鎖ポリ(アリーレンエーテル)及びその製造方法が米国特許第4760118号(Whiteら)及び同第6306978号(Braatら)に記載されている。
【0037】
ポリ(アリーレンエーテル)をポリサリチレートで封鎖することは、また、ポリ(アリーレンエーテル)鎖中に存在するアミノアルキル末端基の量を減らすと考えられる。アミノアルキル基は、ポリ(アリーレンエーテル)を生成するプロセスにアミンを使用する酸化カップリング反応の結果である。ポリ(アリーレンエーテル)の末端ヒドロキシ基に対してオルト位にあるアミノアルキル基は、高温で分解を受けやすい。分解は、結果として第一又は第二アミンを再生し、キノンメチド末端基を生成すると考えられ、それが今度は2,6−ジアルキル−1−ヒドロキシフェニル末端基を発生するおそれがある。アミノアルキル基を含有するポリ(アリーレンエーテル)をポリサリチレートで封鎖することは、このようなアミノ基を取り去り、その結果ポリマー鎖の末端ヒドロキシ基が封鎖状態となり、2−ヒドロキシ−N,N−アルキルベンズアミン(サリチルアミド)が形成されると考えられる。アミノ基の除去及び封鎖により、ポリ(アリーレンエーテル)が高温に対して一層安定になり、この結果としてポリ(アリーレンエーテル)の加工中のゲルや黒班のような分解物が一層少なくなる。
【0038】
上述したところから、本発明で想定されているポリ(アリーレンエーテル)樹脂は、構造単位や副次的な化学的特徴は色々異なるが、現在知られているポリ(アリーレンエーテル)樹脂の多くを含むことが、当業者に明らかである。
【0039】
ポリ(アリーレンエーテル)は代表的には、触媒系及び溶剤の存在下での少なくとも1種のモノヒドロキシ芳香族化合物の酸化カップリングにより製造する。ポリ(アリーレンエーテル)の合成に使用する一価フェノールは特に限定されない。モノヒドロキシ芳香族化合物としては、次式(II)で表されるものが適当である。
【0040】
【化2】

式中、各Qは独立にハロゲン、第一又は第二低級アルキル(例えば炭素原子数7以下のアルキル)、フェニル、ハロアルキル、アミノアルキル、炭化水素オキシ及びハロゲン原子と酸素原子との間に2個以上の炭素原子が介在するハロ炭化水素オキシ基などであり、各Qは独立に水素、ハロゲン、第一又は第二低級アルキル、フェニル、ハロアルキル、炭化水素オキシ及びハロゲン原子と酸素原子との間に2個以上の炭素原子が介在するハロ炭化水素オキシ基などである。好ましくは、各Qがアルキル又はフェニル、特にC1−4アルキル基であり、各Qが水素又はC1−4アルキル基である。モノヒドロキシフェノール類としては、2,6−ジメチルフェノール及び2,3,6−トリメチルフェノールが好ましい。
【0041】
一実施形態では、モノヒドロキシフェノールが、純度約99重量%超、好ましくは99.67重量%超、さらに好ましくは99.83重量%超の2,6−ジメチルフェノールである。さらに2,6−ジメチルフェノールは、アニソール含量が約0.11重量%未満、特に0.067重量%未満であるのが好ましい。アニソールには、例えばアニソール、2−メチルアニソール、4−メチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール、2,6−ジメチルアニソール、2,4,6−トリメチルアニソール及びこれらのアニソール類の1種以上を含む組合せが含まれる。、2,6−ジメチルフェノールは、他の有機不純物含量が約0.090重量%未満、特に0.065重量%未満であるのが好ましい。他の有機不純物には、例えば2,6−ジメチルシクロヘキサノン、7−メチル(2,3)ジヒドロベンゾフラン及び(2,3)ジヒドロベンゾフランが含まれる。アニソール及び他の有機不純物の量を最小限にすることは、得られるポリ(フェニレンエーテル)の臭いを少なくすると考えられる。
【0042】
一価フェノールの酸化カップリングは酸素含有ガスを使用し、酸素含有ガスは代表的には酸素(O)又は空気であり、酸素が好ましい。
【0043】
酸化カップリングに適当な有機溶剤には、溶剤が酸化反応に干渉したり、参加したりしない限りで、脂肪族アルコール、ケトン、脂肪族及び芳香族炭化水素、クロロ炭化水素、ニトロ炭化水素、エーテル、エステル、アミド、混成エーテル−エステル、スルホキシドなど及びこれらの有機溶剤の少なくとも1つを含む組合せがある。溶剤としては、C−C18芳香族炭化水素、例えばベンゼン、トルエン及びキシレン、ハロゲン化炭化水素、例えばジクロロメタン及びクロロホルム;及びハロゲン化芳香族炭化水素、例えばクロロベンゼン及びジクロロベンゼンが好ましい。
【0044】
溶剤は、C−C18芳香族炭化水素に加えて、ポリ(アリーレンエーテル)の貧溶剤であるC−C脂肪族アルコール、例えばn−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、n−ペンタノールなど、及びこれらのC−C脂肪族アルコールの少なくとも1つを含む組合せを含有してもよい。溶剤は、C−C18芳香族炭化水素及びC−C脂肪族アルコールに加えて、さらに、ポリ(アリーレンエーテル)の反溶剤として作用するメタノールもしくはエタノールを含有してもよい。C−C18芳香族炭化水素、C−C脂肪族アルコール及びメタノールもしくはエタノールはどのような割合で組み合わせてもよいが、溶剤が約50重量%以上のC−C18芳香族炭化水素を含有するのが好ましい。
【0045】
触媒系は、代表的には、少なくとも1種の重金属化合物、例えば銅、マンガン又はコバルト化合物を、通常他の材料との組合せで含有する。適当な触媒系には、塩化第一銅、塩化第二銅、臭化第一銅、臭化第二銅、硫酸第一銅、硫酸第二銅、テトラアミン硫酸第一銅、テトラアミン硫酸第二銅、酢酸第一銅、酢酸第二銅、プロピオン酸第一銅、酪酸第二銅、ラウリル酸第二銅、パルミチン酸第一銅及び安息香酸第一銅;及び同様のマンガン塩及びコバルト塩がある。上記金属塩を直接添加する代わりに、金属もしくは金属酸化物と無機酸、有機酸もしくはそのような酸の水溶液とを添加し、対応する金属塩もしくは水和物を形成することも可能である。
【0046】
触媒系は、モノ−もしくはジアルキルアミン、芳香族アミン又はN,N’−ジアルキルアルキレンジアミンと錯形成してもよい。適当な第一、第二及び第三アミンの例には、モノ−及びジメチルアミン、モノ−及びジエチルアミン、モノ−及びジプロピルアミン、モノ−及びジブチルアミン、モノ−及びジベンジルアミン、モノ−及びジシクロヘキシルアミン、モノ−及びジエタノールアミン、メチルエチルアミン、メチルプロピルアミン、メチルシクロヘキシルアミン、エチルイソプロピルアミン、ベンジルメチルアミン、オクチルクロロベンジルアミン、メチルフェネチルアミン、ベンジルエチルアミン、ジメチルブチルアミン、N,N’−ジアルキルエチレンジアミン類、例えばN,N’−ジ−tert−ブチルエチレンジアミン及びN,N’−ジイソプロピルエチレンジアミン、N,N,N’−トリアルキルエチレンジアミン類、N,N’−ジアルキルプロピレンジアミン類及びN,N,N’−トリアルキルプロピレンジアミン類があるが、これらに限らない。
【0047】
公知のポリ(フェニレンエーテル)製造方法には、欧州特許出願公開第1167421号、同第1167419号及び同第1167420号(すべて本発明の先行技術として援用する)がある。別のポリ(フェニレンエーテル)の製造方法が、例えば米国特許第6407200号、同第5250486号、同第5017655号、同第4092294号、同第4083828号、同第4054553号、同第3962181号、同第3838102号、同第3733299号、同第3661848号、同第3642699号、同第3639656号、同第3365422号、同第3306875号及び同第3306874号(すべて本発明の先行技術として援用する)に記載されている。上述したところから、本発明で想定されているポリ(アリーレンエーテル)は、処理条件、反応試薬、触媒などは様々に変わりうるが、現在知られているあらゆる方法で製造できることが当業者に明らかである。
【0048】
本明細書で用いる用語「ポリ(アルケニル芳香族)樹脂」は、塊状重合、懸濁重合及びエマルジョン重合など当業界で周知の方法により製造したポリマーであって、下記構造(III)を有するアルケニル芳香族単量体から誘導された構造単位を少なくとも25重量%含有するポリマーを含む。
【0049】
【化3】

式中、Rは水素、C−Cアルキル又はハロゲンであり、Zはビニル、ハロゲン又はC−Cアルキルであり、pは0〜5である。アルケニル芳香族単量体としては、スチレン、クロロスチレン及びビニルトルエンが好ましい。ポリ(アルケニル芳香族)樹脂には、アルケニル芳香族単量体のホモポリマー;アルケニル芳香族単量体、例えばスチレンと1種以上の異なる単量体、例えばアクリロニトリル、ブタジエン、α−メチルスチレン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン及び無水マレイン酸とのランダム共重合体;及びゴム変性剤と(上述した通りの)アルケニル芳香族単量体のホモポリマーとのブレンド及び/又はグラフトを含むゴム変性ポリ(アルケニル芳香族)樹脂がある。ここで、ゴム変性剤は少なくとも1種のC−C10非芳香族ジエン単量体、例えばブタジエンもしくはイソプレンの重合生成物とすることができ、またゴム変性ポリ(アルケニル芳香族)樹脂は、アルケニル芳香族単量体のホモポリマー約98〜約70重量%とゴム変性剤約2〜約30重量%とからなり、好ましくはアルケニル芳香族単量体のホモポリマー約88〜約94重量%とゴム変性剤約6〜約12重量%とからなる。このようなゴム変性ポリスチレンには耐衝撃性ポリスチレン(通常HIPSと略称)がある。
【0050】
ポリ(アルケニル芳香族)樹脂には、非エラストマー状ブロック共重合体、例えばスチレンとポリオレフィンとの二ブロック、三ブロック及び多ブロック共重合体もある。スチレンとブタジエンの非エラストマー状ブロック共重合体組成物を用いることもでき、これらは直鎖状ブロック、ラジアルブロック又はテーパードブロック共重合体骨格を有し、ブタジエン成分が約35重量%まで存在する。これらは、数社から、例えばAtofina社から登録商標FINACLEARにて、Chevron Phillips Chemical社から登録商標K−RESINSにて市販されている。
【0051】
ポリ(アルケニル芳香族)樹脂は、スチレン−ポリオレフィン−メチルメタクリレートのブロック共重合体、特にAtofina社から入手できる、ポリスチレン、1,4−ポリブタジエン及びシンジオタクチックなポリメチルメタクリレートのブロックを含有するポリ(スチレン−β−1,4−ブタジエン−β−メチルメタクリレート)(SBM)も包含する。Atofina社から入手できるSBMブロック共重合体には、AF−X223、AF−X333、AF−X012、AF−X342、AF−X004及びAF−X250がある。
【0052】
ポリ(アルケニル芳香族)としては、Rが水素、低級アルキル又はハロゲン、Zがビニル、ハロゲン又は低級アルキル、pが0〜5である式(III)のアルケニル芳香族単量体のホモポリマーが好ましい。アルケニル芳香族単量体のホモポリマーとしては、スチレンから誘導されたホモポリマー、即ちホモポリスチレンが特に好ましい。ホモポリスチレンはその重量の99%以上、特にその重量の100%がスチレンであるのが好ましい。
【0053】
ポリ(アルケニル芳香族)樹脂の立体規則性は、アタクチックでもシンジオタクチックでもよい。特に好ましいポリ(アルケニル芳香族)樹脂は、アタクチック及びシンジオタクチックホモポリスチレンである。適当なアタクチックなホモポリスチレンが、例えばChevron社からEB3300にて、またBASF社からP1800にて市販されている。アタクチックなホモポリスチレンは「結晶ポリスチレン」樹脂と称することもある。有用なシンジオタクチックなポリスチレン樹脂(SPS)がDow Chemical社から登録商標QUESTRAにて市販されている。
【0054】
ポリ(アルケニル芳香族)樹脂は、数平均分子量約20,000〜100,000原子質量単位(amu)で、重量平均分子量約10,000〜300,000amuとすることができる。
【0055】
濾過すべきポリ(アリーレンエーテル)及びポリ(アルケニル芳香族)の溶液並びに対応する単離ポリマー材料は、ポリ(アルケニル芳香族)及びポリ(アリーレンエーテル)の全重量に基づいて、約90〜約10重量%の量のポリ(アリーレンエーテル)と約10〜約90重量%の量のポリ(アルケニル芳香族)とを含有することができる。この範囲内で、ポリ(アリーレンエーテル)の量は約80重量%以下とすることができ、約70重量%以下が好ましく、約60重量%以下が特に好ましい。またこの範囲内で、ポリ(アリーレンエーテル)の量は約20重量%以上とするのが好ましく、約30重量%以上がさらに好ましく、約40重量%以上が特に好ましい。この範囲内で、ポリ(アルケニル芳香族)の量は約80重量%以下とすることができ、約70重量%以下が好ましく、約60重量%以下が特に好ましい。またこの範囲内で、ポリ(アルケニル芳香族)の量は約20重量%以上とするのが好ましく、約30重量%以上がさらに好ましく、約40重量%以上が特に好ましい。
【0056】
溶液を形成するのに用いるポリ(アリーレンエーテル)は、任意の入手可能なソースからの任意の形態、例えばペレット、粉末、フレークなどであっても、反応器又は反応容器からの直接の生成物フィード流れとしての溶液形態でもよい。
【0057】
濾過すべき溶液に用いるのに適当な溶剤には、ハロゲン化芳香族溶剤、ハロゲン化脂肪族溶剤、非ハロゲン化芳香族溶剤、非ハロゲン化脂肪族溶剤又はこれらの混合物がある。ハロゲン化芳香族溶剤としては、ハロベンゼン類、o−ジクロロベンゼン、クロロベンゼンなどが適当であるが、これらに限らない。ハロゲン化脂肪族溶剤としては、クロロホルム、メチレンクロライド、1,2−ジクロロエタンなどが適当であるが、これらに限らない。非ハロゲン化芳香族溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、アニソール、ニトロベンゼンなどが適当であるが、これらに限らない。非ハロゲン化脂肪族溶剤としては、アセトン、酢酸エチルなどが適当であるが、これらに限らない。溶剤は、ポリ(アリーレンエーテル)樹脂及び/又はポリ(アルケニル芳香族)の製造プロセスで使用する重合溶剤と同じタイプでもよい。
【0058】
ポリマー材料を濾液から単離する方法は特に限定されない。樹脂から溶剤を除去するのに当業界で知られた適当な方法を採用できる。このような方法には、沈殿、蒸留、スプレー乾燥、脱蔵、フラッシュ容器を用いる蒸発、これらの組合せなどがあるが、これらに限らない。ポリマー材料は、粉末、フレーク又はペレットの形態で単離することができる。
【0059】
濾液からのポリマー材料の沈殿は、濾液に反溶剤を添加することにより行うことができる。所望に応じて、反溶剤の添加前に、濾液を濃縮してもよい。本方法は、所望に応じて、さらに、通常の(粒状不純物の濾過とは異なる)捕集濾過法又は固液分離法を用いて、沈殿したポリマー材料を単離する工程を含んでもよい。適当な捕集濾過装置には、回転フィルター、連続回転真空フィルター、連続移動床フィルター、バッチフィルターなどがある。適当な固液分離装置には、連続固液遠心分離器がある。
【0060】
沈殿による単離は、所望に応じて、さらに、単離された濾過ポリマー材料を洗浄する工程を含んでもよい。洗浄は、例えば捕集フィルター上で直接追加の反溶剤で行うか、捕集フィルター又は固液分離装置からの「粉末ウェットケーキ」を追加の反溶剤と撹拌層内で混合することによって行うことができる。単離された濾過ポリマー材料を洗浄する方法としては、2段階の再スラリー化・固液分離プロセス方式を用いるのが好ましい。この実施形態では、捕集フィルターからのウェットケーキを撹拌層内で反溶剤で洗浄し、つぎにポリマー材料/溶剤/反溶剤混合物を固液連続遠心分離器で分離し、遠心分離器からのポリマー材料ウェットケーキを連続撹拌層内で反溶剤と再度混合し、ついで第2の固液遠心分離器で2回目の固液分離を行うことができる。
【0061】
一実施形態では、沈殿により単離ポリ(フェニレンエーテル)は、その最大粉末固有粘度(IV)の目標からのずれが約3.0ml/g未満であるのが好ましく、約1.5ml/g未満であるのがさらに好ましい。さらに、沈殿したポリ(フェニレンエーテル)は、熱処理時の粉末IVの増加が約13.8ml/g未満であり、約12.5ml/g未満であるのが好ましい。ここで言う「熱処理」とは、ポリ(フェニレンエーテル)を285℃で4分間フィルムプレスすることを意味する。
【0062】
ポリマー材料を濾液から脱蔵プロセスにより単離することもできる。脱蔵押出機及びプロセスは当業界で周知であり、代表的には、溶剤除去用の多数のベントセクションを設けた二軸押出機を含む。脱蔵押出機は、ほとんどの場合、単純な供給、脱蔵及び液体シール形成などの作用に適合した様々なタイプの要素を有するスクリューを備える。これらの要素には、単純な輸送用に設計された前進フライトスクリュー要素、並びに強力な混合を達成する及び/又はシールを生成する逆向きフライトスクリュー円筒要素がある。片方のスクリューを他方より長くして、押出中の材料のダイを通しての効率よい流れを促進するよう構成した、逆回転、非噛合式二軸押出機が特に好適である。このような装置は、Welding Engineers社を始めとして多数の製造業者から入手できる。
【0063】
一実施形態では、単離は、濾液の予備濃縮(溶剤の部分的蒸発)及び脱蔵押出工程を含む。予備濃縮中、溶剤の大部分を蒸発により除去し、好ましくは高温、例えば約150〜約300℃の範囲の温度、さらに好ましくは約180〜約260℃の範囲の温度及び/又は高圧、例えば約2〜約75バールの範囲の圧力、さらに好ましくは約5〜約50バールの範囲の圧力での蒸発により除去する。予備濃縮により、濾液中に存在する溶剤の約1.0〜99%を除去する。この範囲内で、溶剤の約90%以下、好ましくは80%以下、さらに好ましくは約70%以下を除去する。予備濃縮の後に、脱蔵押出を行って残留溶剤を除去する。
【0064】
脱蔵プロセスを用いてポリマー材料を完全に単離する方法の別法として、1種以上の樹脂を同じプロセス中に脱蔵されたポリマー材料に添加することができる。1種以上の樹脂を脱蔵押出機に供給してもよいが、別の押出機を使用してもよい。可能な例としては、1種以上の樹脂を脱蔵押出機に溶融供給したり、脱蔵押出機からのポリマー材料を第2の配合押出機に溶融供給したり、これらを組合せたりすることができる。1種以上の樹脂は、広い範囲から選ぶことができ、また耐衝撃性改良剤、滑剤、難燃剤、顔料、着色剤などの添加剤を含有することもできる。
【0065】
ポリマーの単離についてここに記載したいくつかのプロセスを用いて、ポリマーを単離することなく、濾液を濃縮することもできる。濾液の濃縮により、濾液中のポリマー材料の固形分レベル(重量%)に比較して、ポリマー材料の固形分レベル(重量%)の増大した溶液が得られる。ポリマー材料の固形分レベル(重量%)として約1.0〜99重量%固形分までの濃縮を達成できる。この範囲内で、ポリマー材料の固形分レベル(重量%)約90%以下への濃縮を使用でき、ポリマー材料及び溶剤の全重量に基づいて約80重量%以下の固形分が好ましく、約70重量%以下の固形分がさらに好ましい。またこの範囲内で、ポリマー材料の固形分レベル(重量%)約10%以上への濃縮を使用でき、ポリマー材料及び溶剤の全重量に基づいて約30重量%以上の固形分が好ましく、約50重量%以上の固形分がさらに好ましい。
【0066】
ポリ(アリーレンエーテル)のブレンドを製造する場合、溶剤、単量体及び他の低分子量材料を押出機からベント系を通して除去する。ポリ(アリーレンエーテル)もしくはポリ(アリーレンエーテル)樹脂ブレンドからの揮発性物質の除去を改良するのに特に有用な方法には、米国特許第5204410号(Baneviciusら)、米国特許第5102591号(Hassonら)、米国特許第4994217号(Banevicius)及び米国特許第4992222号(Baneviciusら)に記載されているような、スチームストリッピングがある。スチームストリッピングは代表的には、水又はスチームの注入ポートを有し、ストリッピングされた揮発物及び水を除去するのに十分な真空ベント能力を備える押出機で行う。水又はスチームがストリッピング剤として好ましく、使用割合はポリマー組成物の約15重量%以下であり、これを押出機バレルの長さに沿って配置された2つ以上の注入口間で均等にもしくは不均等に分割する。使用割合は約0.25〜約15重量%が好ましい。通常この範囲内の量が、真空系に負荷をかけることなく、揮発物を除去するのに極めて効果的であるからである。0.5〜約5重量%が最も好ましい。
【0067】
濾液から単離されるポリマー材料をペレットの形態で単離するのが好ましい。ポリマー材料を公知の方法でペレット化することができる。例えば、押出機又は同様の装置から押出したポリマー材料のストランドをクリーンな水浴で冷却するか、水スプレーにより冷却し、ついで細断してペレットにする。水は、水浴又はスプレーに使用する前に、濾過して不純物を除去することができる。形成されたペレットを、当業界で標準的な乾燥方法、例えば遠心乾燥機、バッチ又は連続オーブン乾燥機、流動床などを用いて乾燥することができる。所望に応じて、ポリマー材料を「クリーンルーム」内でペレットとして単離して、周囲からのポリマー材料の汚染を防止することができる。ある好適なペレット化法では、水中ダイフェースペレッタイザーシステムを用いる。適当なペレット化法が米国特許第6372175号に記載されている。ダイフェースペレッタイザーを含む有用なペレット化機械が米国特許第3973890号、同第4421470号及び同第5607700号に記載されている。
【0068】
ポリマー材料のペレットを押し出すのではなく、ポリマー材料をダイアセンブリを適切に選択することにより繊維、チューブ、フィルム、シートなどに押し出すことができる。
【0069】
所望に応じて、単離ポリマー材料はさらに、難燃剤、離型剤及び他の滑剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線安定剤、顔料、染料、着色剤、帯電防止剤、導電剤、充填剤など及びこれらの添加剤の少なくとも1つを含む組合せから選ばれる添加剤を含有することができる。当業者であれば特定の添加剤及びその添加量を適切に選択することができる。添加剤が濾過以前に存在する場合には、その添加剤は本発明の方法に選んだ特定の濾過システムを妨害しないようなものを選択するべきである。
【0070】
一実施形態では、添加剤をポリマー材料に濾過工程後に周知の方法で添加することができ、それはポリマー材料の単離前でも後でもよい。さらに、ポリマー材料の用途によっては、添加剤の存在が、成形物の表面品質に悪影響を与えてはならない。充填剤含有物品の成形時に適切な平滑表面を確保するには、成形時に特別な加工条件が必要になることもある。
【0071】
当業界で知られた顔料及び染料の例には、”Plastic Additives Handbook,4th Edition”,R.Gachter and H.Muller(eds.),P.P.Klemchuck(assoc.ed.),Hansen Publishers,New York,1993中の章「着色剤」に記載されたものがある。
【0072】
着色剤には有機及び無機の顔料及び染料がある。適当な無機着色剤には、カーボンブラック、酸化鉄、二酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛などがある。適当な有機着色剤には、下記の化学物質類:アンタントロン、アントラキノン、ベンズイミダゾロン、ジケトピロロ−ピロール、ジオキサジン、ジアゾ、インダントロン、イソインドリン、イソインドリノン、ナフトール、ペリノン、ペリレン、フタロシアニン、ピラントロン、キナクリドン、キノフタロンなどから選ばれるものがある。
【0073】
ポリマー材料は、リン酸塩難燃剤のような非ハロゲン化難燃剤及びハロゲン化難燃剤を含む、難燃剤を含有してもよい。適当な難燃剤の例には、前掲の”Plastic Additives Handbook”の章「難燃剤」に記載されたものがある。
【0074】
一実施形態では、本発明のポリマー材料の製造方法は、溶剤、ポリ(フェニレンエーテル)及びポリスチレンの全重量に基づいて、約60〜約30重量%のポリ(フェニレンエーテル)及び約40〜約70重量%のポリスチレンを含有する、第1溶液を第1濾過システムにて濾過して第1濾液を形成し、前記第1濾液を濃縮して、固形分レベル(重量%)が第1濾液よりも高い第2溶液を形成し、前記第2溶液を第2濾過システムにて濾過して第2濾液を形成し、前記第2濾液から、ポリ(アリーレンエーテル)及びポリ(アルケニル芳香族)を含有する、可視粒状不純物を実質的に含まないポリマー材料を単離する工程を含む。
【0075】
別の実施形態では、本発明の方法のいずれかにより製造したポリマー材料から物品を作製する。特に好ましい物品には、データ記憶媒体、具体的には光、磁気及び光磁気データ記憶媒体があるが、これらに限らない。このような媒体には、コンパクトディスク、書き換え可能なコンパクトディスク、デジタル汎用ディスク(DVD)、データアーカイブ技術用の高密度ディスク(Blu−rayディスクなどのDVR)などがある。
【0076】
物品は種々の成形及び加工技術で作製することができる。物品を形成する技術としては、射出成形、発泡プロセス、射出−圧縮、回転成形、2ショット成形、微孔質成形、フィルムキャスティング、押出、プレス成形、ブロー成形、ダイレクト成形(概略をAdedejiらの国際公開第02/43943号参照)などが適当である。成形技術としては射出成形が好ましい。
【0077】
ポリマー材料を用いて、例えばデータ記憶媒体基板を形成する場合、追加の加工工程、例えば当業界で周知の方法の中でも特に、電気メッキ、コーティング技術(スピンコーティング、スプレーコーティング、蒸着、スクリーンプリンティング、塗布、浸漬、スパッタリング、真空堆積、電着、メニスカスコーティングなど)、ラミネーション、データスタンピング、エンボス加工、表面研磨、付着及びこれらの方法の少なくとも1つを含む組合せを使用して、ポリマー材料基板の上に所望の層を設層することができる。本質的には、基板には、所望に応じて、基板の片面又は両面に配置された所望の表面造形部、片面又は両面に(例えば光磁気材料の)データ記憶層、また保護、誘電及び/又は反射層をその場で形成することができる。基板は実質的に均質か、テーパか、凹状か、凸状の幾何形状を持つことができ、所望に応じて種々のタイプ及び幾何形状の補強を施して、表面一体性や平滑性を劣化することなく、剛性を増すことができる。
【0078】
ポリマー材料記憶媒体の1例は、射出成形されたポリマー材料基板を備え、基板は所望に応じて、中空な(バブル、キャビティなど)コア又は充填材(繊維、球など様々な形態の金属、プラスチック、ガラス、セラミックなど)コアを有してもよい。基板上には、データ層、誘電層、反射層及び/又は保護層を含む種々の層が配置される。これらの層は、通常の材料から構成され、製造する媒体のタイプに応じて配置される。例えば、第一面媒体では、これらの層は、保護層、誘電層、データ記憶層、誘電層、そして基板に接触して配置される反射層とすることができる。本発明のポリマー材料から製造することのできる好適なデータ記憶媒体が、本出願の優先権出願と共に係属中の米国特許出願第10/648609号「寸法安定性に優れたデータ記憶媒体」(2003年8月26日出願)に開示されている。
【0079】
本発明を以下の実施例によりさらに具体的に説明するが、実施例は本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0080】
1つの実施例(実施例1)と1つの比較例(比較例1)を製造して、ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン樹脂ブレンドの溶液を濾過することが、得られる単離材料の粒状不純物の量に与える効果を具体的に示す。
実施例1
ポリフェニレンエーテル(PPE、GE Plastics社製のIV0.33のPPE粉末)及びポリスチレン(xPS、L3050)の40/60(重量比)ブレンドを下記の手順で製造した。窒素雰囲気中で撹拌しながら、予熱(約125℃)した試薬級o−ジクロロベンゼン(ODCB)の所定量に72.6kgのPPE粉末及び108.9kgのxPSを添加して、固形分20重量%の溶液を形成した。溶液を約170℃に加熱し、孔径5μmのフィルターバッグにて重力濾過した。
【0081】
第1濾過工程の完了後、蒸留によりODCBの一部を除去して、固形分20重量%の溶液を、約40重量%の固形分を含有するポリマー/溶剤混合物に予備濃縮した。ポリマー/溶剤混合物をフィードタンクに入れ、窒素下で約160℃の温度及び約80psig(5.6kg/cm)の圧力に維持した。歯車ポンプを用いて、ポリマー/溶剤混合物を約72lb/hr(32.7kg/hr)の流量で、約310℃(590°F)に維持したシェル/チューブ型熱交換器に移送した。窒素を用いて、歯車ポンプのポンプヘッドを確保するのに十分な圧力(約80psig=5.6kg/cm)を得た。
【0082】
熱交換器から出てきた、温度約270〜280℃のポリマー/溶剤混合物を並列に配列した2つの燒結金属フィルター(PALL社製、孔径13μmのプリーツフィルター、1フィルター当たりの表面積約1.5ft=0.14m)に供給して、供給溶液中の粒状不純物を除去した。フィルターハウジングの温度を約280℃に維持した。
【0083】
濾過したポリマー/溶剤混合物をつぎに、圧力制御フラッシュ弁を介して、L/D比約40の10バレル、直径25mm、噛合式同方向回転二軸押出機の第2バレルの下流端に供給した。圧力制御フラッシュ弁での溶液の温度は約280〜285℃であった。押出機はスクリュー回転速度約575rpm、駆動トルク約20%で運転した。押出機バレルの測定温度は、321℃、299℃、318℃、291℃、290℃、290℃、289℃及び290℃(ダイ)であった。
【0084】
押出機には、第1バレルの上流で密封室を取り付けた。密封室は、溶剤除去工程の前及び途中で窒素ガスを制御して導入できるよう構成された窒素ラインを有する。押出機にはさらに、第2バレルで、押出機のバレルに直交配置された側部フィーダーを取り付けた。側部フィーダーは加熱せず、L/D比が約10で、前進搬送要素のみからなる2つのスクリューを備えた。押出機バレルから最も離れた端部で、側部フィーダーに単一大気圧ベント、即ちベント(第1ベント)を取り付けた。側部フィーダーのスクリューの搬送要素は、材料を押出機に向かってかつ側部フィーダーベントから遠ざかる方向へ搬送するような形状とした。
【0085】
押出機にはさらに、第1バレル及び第4バレルに2つの大気圧ベント(第2ベント及び第3ベント)を、また第5バレル、第7バレル、及び第9バレルに3つの真空ベント(即ち、減圧で作動するベント)(第4ベント、第5ベント、第6ベント)を設けた。3つの大気圧ベント(押出機に2つ、側部フィーダーに1つ)は各々、溶剤蒸気除去ライン、凝縮器及び液体溶剤受け入れ容器を備える溶剤除去・回収マニホールドに連結した。真空ベントも同様に溶剤回収できる構成とした。第3、4、5及び6ベントにタイプCインサートを設けた。第1及び第2ベントにはベントインサートを設けなかった。
【0086】
押出機スクリュー要素は、搬送要素及び混練要素両者からなる。押出機及び側部フィーダー両方の搬送要素のすべてが前進フライト搬送要素であった。混練要素には、機能に応じて、中立、前進フライト及び後進フライト混練要素を使用した。押出機の第2及び第3バレルでは、前進及び中立フライト混練要素からなる混練ブロックを使用した。押出機スクリューには、後進フライト混練要素から構成される混練ブロックからなるメルトシールを設けた。メルトシールは第5及び第8バレルに配置した。真空ベントは、第5バレル、第7バレル及び第9バレルのメルトシールの下流に配置し、約28インチ水銀(711.2mmHg、完全真空、即ちゼロ絶対圧力を示す真空計の読取値が約30インチ水銀、即ち762mmHgとなる)の真空レベルで作動させた。
【0087】
シェル/チューブ型熱交換器を凝縮器として使用して、上記プロセスで除去されたODCB溶剤を回収した。軽い真空(約1インチ水銀、即ち25.4mmHg)を、溶剤蒸気を大気圧ベントから受けとる熱交換器にかけ、溶剤蒸気を排気した。押出機のダイフェース(メルト温度約310℃)から出てくる脱蔵したPPE−xPS樹脂をストランド化、ペレット化した。
【0088】
実験に先だって、スクリュー、ベントポートアダプター、ベントインサート、ダイヘッド/プレートを454℃砂浴に入れることにより、押出機を完全にクリーニングした。再組立前に、押出機バレルをブラシで磨いた。真空ベントは、12時間の長期ランの間少なくとも15分おきに視覚検査により調べたところ、ランの間中クリーンなままであった。12時間の実験全体に使用したフィルターハウジングは1つだけであった。フィルター前後の圧力差はランの間中一定であった。表1に実施例1の処理データを示す。
【0089】
【表1】

比較例1は、一部の変更を除いて実施例1と同様に製造した。最も重要な変更として、PPE−xPS溶液をフィルターバッグを通しての重力濾過により1回だけ濾過した。さらに、溶液を、単離に用いる押出機への導入前に過熱しなかった。PPE−xPS溶液を製造するにあたり、12.1kgのIV0.33のPPE粉末と18.1kgのL3050グレードxPSを十分な量のODCB中で混合することにより10重量%固形分の溶液を形成した。得られた溶液を約170℃に加熱し、孔径5μmのフィルターバッグにて重力濾過した。蒸留によりODCBを除去することにより、濾液を約40重量%固形分の溶液に濃縮した。
【0090】
溶液をシェル/チューブ型加熱器で過熱せず、また溶剤からのポリマー材料の単離に先だって2つの燒結金属フィルターの組合せにて濾過しなかった。ポリマー材料の単離は、10個のバレル(L/D=40)、2孔ダイプレート及び6個のベントを有する直径25mm、噛合式同方向回転二軸押出機で行った。6個のベントのうち2個は供給ポートより上流に位置し、大気圧で作動し、残りの4個のベントは供給ポートより下流に位置し、比較的高いレベルの真空(約28インチ水銀=711.2mmHg)で作動した。第1及び第2大気圧ベントはそれぞれ、押出機第1バレル及び押出機の第2バレルに連結した側部フィーダーに配置した。供給溶液を押出機に、第2バレルの下流端に位置する注入ポートから直接添加した。ベントとして作動する側部フィーダーを押出機に第2バレルの位置で連結した。最後に、押出機を実験に先立ってクリーニングしなかったが、供給溶液として用いるのと同じ溶液でしばらくの間パージした。比較例1の処理条件は表1に示す通りである。
【0091】
実施例1及び比較例1の単離したPPE−xPSを、濾過材料中に存在する粒状不純物の量について調べた。可視粒状物の粒子数は、下記の手順で測定した。ポリシールキャップ付きの2オンスのサンプルボトル6個を濾過空気の流れに当てて存在する粒状物をすべて除去した。これらのボトルを少量のクロロホルム(CHCl)でリンスした。50mlのCHClを各サンプルボトルに加え、キャップを閉めた。ライトボックスを用いて、可視黒班又は繊維の数を各CHClブランクについて記録した。10.00gの量のサンプルをクリーンなアルミニウムパン上に秤量し、CHCl含有ボトルに加えた。単離したポリマー材料各々につき2つのサンプルを2つのブランクとともに作製した。サンプルを溶解させた後、ライトボックスで可視黒班があるか否か観察した。ブランク、実施例1及び比較例1についての可視粒子の分析結果を表2に示す。
【0092】
レーザー光散乱法を用いるABS2アナライザー(Pacific Instruments)を用いて、濾過材料中に存在する粒径5〜100μmの範囲の粒状不純物を検出した。実施例1からの16.0gのサンプルをクリーンなポリエチレンボトルに入れた400mlのCHClに溶解した。この手順を比較例の材料についても繰り返した。20mlの量の各サンプル溶液をABS2アナライザーの検出器に流量1ml/分(±5%)にて流した。この間に、サンプル中に存在する粒径約5〜100μmの範囲の粒子の量を検出器で測定した。各ボトルから5つのサンプルをとり、平均して最終的な粒径粒子数を算出した。実施例1及び比較例1についてのABS2アナライザーによる粒子分析の結果を表2に示す。
【0093】
【表2】

上記実験の結果から分かるように、実施例1で使用した方法から、比較例1と比較して粒状不純物の量が格段に少なくなったPPE−xPS材料が得られた。実施例1の溶液を13μmの燒結金属フィルターにてさらに濾過すると、粒径15μm以下の粒状不純物の量が著しく減少した材料となった。
【0094】
実施例1はさらに、ポリフェニレンエーテル及びポリスチレンを含有する比較的低い固形分(重量%)の溶液の単離/脱蔵を具体的に説明している。ポリマー/溶剤混合物の過熱により、比較例1の流量の2倍の効率よい溶剤除去が可能になり、単離ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン複合材料が得られる。
【0095】
以上、本発明を種々の実施形態について説明したが、本発明の要旨から逸脱することなく、実施形態に種々の変更を加えたり、本発明の構成要素を均等物に置き換えたりできることが当業者に明らかである。さらに、本発明の要旨から逸脱することなく、特定の状況や材料を本発明の教示に適合させるよう種々の変更を加えることができる。したがって、本発明は、発明を実施するための最良の形態として開示した特定の実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内に入るすべての実施形態を包含する。
【0096】
列挙した特許、特許出願、その他の文献はすべて本発明の先行技術としてここに援用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ(アリーレンエーテル)、ポリ(アルケニル芳香族)及び溶剤を含有する第1溶液を第1濾過システムにて濾過して第1濾液を形成し、
前記第1濾液を濃縮して、固形分レベル(重量%)が第1濾液よりも高い第2溶液を形成し、
前記第2溶液を第2濾過システムにて濾過して第2濾液を形成し、
前記第2濾液から、ポリ(アリーレンエーテル)及びポリ(アルケニル芳香族)を含有する、可視粒状不純物を実質的に含まないポリマー材料を単離する
工程を含む、ポリマー材料の製造方法。
【請求項2】
ポリ(アリーレンエーテル)及び溶剤を含有する第1溶液を第1濾過システムにて濾過して第1濾液を形成し、
前記第1濾液をポリ(アルケニル芳香族)と混合して第2溶液を形成し、
前記第2溶液を第2濾過システムにて濾過して第2濾液を形成し、
前記第2濾液から、ポリ(アリーレンエーテル)及びポリ(アルケニル芳香族)を含有する、可視粒状不純物を実質的に含まないポリマー材料を単離する
工程を含む、ポリマー材料の製造方法。
【請求項3】
前記第1濾過システム及び第2濾過システムは各々独立に孔径約0.01〜約50μmのフィルターを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1濾過システム及び第2濾過システムは各々独立に、焼結金属フィルター、布フィルター、繊維フィルター、紙フィルター、パルプフィルター、メタルメッシュフィルター、セラミックフィルター又はこれらのフィルターの組合せを含み、前記第1濾過システム及び第2濾過システムは各々独立に、幾何形状がコーン、プリーツ、キャンドル、積み重ね、平坦、巻回又はこれらの幾何形状の少なくとも1つを含む組合せであるフィルターを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
ポリマー材料を単離する工程は、ポリマー材料を第2濾液から沈殿させるか、脱蔵押出機、フラッシュ容器、蒸留システム又はこれらの少なくとも1つを含む組合せを用いて、第2濾液から溶剤を除去する工程を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリ(アリーレンエーテル)は、下記構造式:
【化1】

[各構造単位について、各Qは独立に第一又は第二C−Cアルキル、フェニル、ハロアルキル、アミノアルキル、炭化水素オキシ又はハロゲン原子と酸素原子との間に2個以上の炭素原子が介在するハロ炭化水素オキシ基であり、各Qは独立に水素、ハロゲン、第一又は第二低級アルキル、フェニル、ハロアルキル、炭化水素オキシ又はハロゲン原子と酸素原子との間に2個以上の炭素原子が介在するハロ炭化水素オキシ基である]で表される複数個の構造単位を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリ(アルケニル芳香族)は、次式:
【化2】

(式中のRは水素、C−Cアルキル又はハロゲンであり、Zはビニル、ハロゲン又はC−Cアルキルであり、pは0〜5である)で表されるアルケニル芳香族単量体から誘導された構造単位を25重量%以上含有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリマー材料は、約60〜約30重量%のポリ(アリーレンエーテル)及び約40〜約70重量%のポリ(アルケニル芳香族)を含有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項9】
前記ポリマー材料はさらに、難燃剤、離型剤、滑剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線安定剤、顔料、染料、着色剤、帯電防止剤、導電剤又はこれらの添加剤の少なくとも1つを含む組合せを含有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の方法により製造したポリマー材料を含有し、射出成形、ブロー成形、押出、シート押出、フィルム押出、異形押出、引抜成形、圧縮成形、熱成形、圧力成形、油圧成形又は真空成形により形成された、物品。

【公表番号】特表2007−504302(P2007−504302A)
【公表日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524836(P2006−524836)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【国際出願番号】PCT/US2004/027694
【国際公開番号】WO2005/021650
【国際公開日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】