説明

ポリマー碍管用FRP筒

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する利用分野】本発明は、マンドレル上にガラスロービングを巻き付けるフィラメントワインディング法により作製したポリマー碍管用FRP筒の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ガス遮断機等の電力用機器を構成するポリマー碍管として、FRP筒と、このFRP筒の外周面に設けた外被部と、FRP筒の少なくとも一端部に設けたフランジ金具とからなるポリマー碍管が使用されている。図4はこのようなポリマー碍管の一例の構成を示す図である。図4に示す例において、ポリマー碍管51は、FRP筒52とゴムからなる外被部53とから構成されている。また、外被部53は、FRP筒52の外周面全体に設けられた外被胴54と、この外被胴54から突出する笠部55とから構成されている。そして、FRP筒52の両端部には、フランジ金具56を設けている。
【0003】上述したポリマー碍管51に使用されるFRP筒52は、コスト、生産性、電気的・機械的性能を総合的に評価して、図5に示すように、マンドレル57上に図示しない離型剤を介してエポキシ樹脂とアミンもしくは酸無水物系の効果剤を配合した樹脂を含浸させたガラスロービング58を清浄な室内でボイドの発生を抑制しながら複数本同時に巻き付けるフィラメントワインディング法により作製されている。
【0004】このとき、従来のフィラメントワインディング法では、複数のガラスロービング58をFRP筒52の中心軸Oに対する角度θがおよそ20度から60度の範囲のある一定に角度をもって交互にマンドレル57上に積層していく。その角度θは、予め求めた内圧や曲げ荷重に耐えるよう構造設計面で決定される。通常、一旦角度θを決定した後はその一定の角度θでFRP筒52を形成している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】図4に示すようにテーパ形状のポリマー碍管51を得るためには、図6に示すように、細径部61、テーパ部62および太径部63とからなるFRP筒52を作製する必要がある。この場合、太径部63を基準として太径部63を所定の肉厚に仕上げ代を加えた肉厚に仕上げようとすると、マンドレル57の回転数とガラスロービングの送りが不変のため、細径部61では大幅に肉厚が増してしまい、材料使用が増すと共に外径が大きくなり取付金具も大径化してしまうため、更に重量も増すことから、外周全面の切削加工が不可欠であった。この仕上げ加工をする必要があるため、FRP筒52をフィラメントワインディング法で作製すると、コスト高、長納期となる問題があった。
【0006】本発明の目的は上述した課題を解消して、大幅なコストダウンおよび納期短縮が可能なポリマー碍管用FRP筒を提供しようとするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明のポリマー碍管用FRP筒は、マンドレル上にガラスロービングを巻き付けるフィラメントワインディング法により作製した、細径部、テーパ部および太径部からなるポリマー碍管用FRP筒において、FRP筒の中心軸に対するガラスロービングの巻き角度θを、太径部側から細径部に順次小さくなるよう設定するとともに、FRP筒の両端のフランジ接合部と端面のみ加工し、その他の外周面は未加工のままとすることを特徴とするものである。
【0008】本発明では、ガラスロービングの巻き角度θを太径部側から細径部側向けて順次小さくなるようにすること、およびFRP筒のフランジ接合部および端部以外の外周面を未加工のままとすることで、加工箇所を大幅に減少させることができ、コストダウン、納期短縮が可能となる。
【0009】
【発明の実施の形態】図1は本発明のポリマー碍管用FRP筒の一例の構成を示す断面図である。図1に示す例において、FRP筒1は、断面が直線形状の細径部2と、断面がテーパ形状に順次大きくなるテーパ部3と、断面が直線形状の太径部4とから構成される。
【0010】そして、本発明第1の特徴は、図1では現れてこないが、ガラスロービングの巻き角度θを、太径部4のガラスロービングの巻き角度θから細径部2のガラスロービングの巻き角度θまで順次小さくなるよう構成したことである。これにより、太径部4を基準にガラスロービングの巻き角度θを決定してFRP筒1を作製しても、細径部2の肉厚を従来より大幅に薄くすることができ、FRP筒1の外周面をほとんど仕上げ加工しなくても良いレベルとすることができる。
【0011】また、本発明の第2の特徴は、上述したようにある程度均一な肉厚を有するFRP筒1を得ることができることにより、FRP筒1の加工を両端の細径部2および太径部6に設けたフランジ接合部5および6と両端面7のみにし、それ以外のFRP筒1の外周面8は未加工のままとする点である。なお、フランジ接合部5および6の加工は特に限定するものでないが、図2に示すように、加工したフランジ接合部5、6において、外周部の未加工のままとした部分8の端部から実際にフランジ金具が接合する部分までの厚みを段階的に変化させること、すなわちその部分をR形状に面取りすることが好ましい。
【0012】上述したガラスロービングの巻き角度に関する第1の特徴と、FRP筒1の加工に関する第2の特徴との両者を兼ね備えた本発明のポリマー碍管用FRP筒1では、従来に比べて加工箇所を大幅に減少させることができる。
【0013】図2は本発明のポリマー碍管用FRP筒1を作製する際のフィラメントワインディング法の様子を示す図である。本発明でも従来例と同様に、マンドレル11上に図示しない離型剤を介してエポキシ樹脂とアミンもしくは酸無水物系の硬化剤を配合した樹脂を含浸させたガラスロービング12を清浄な室内でボイドの発生を抑制しながら複数本同時に巻き付けて実施している。最後に、硬化したガラスロービング12の層をマンドレル11から引き抜くことで、所望のFRP筒1を得ている。
【0014】上述した本発明の第1の特徴を図2を例にとって説明すると、ガラスロービング12をマンドレル11に巻き付ける際、FRP筒1の中心軸Oに対するガラスロービング12の巻き角度θを、太径部6におけるガラスロービング12の巻き角度θ1 から細径部2のガラスロービング12の巻き角度θ2 まで徐々に小さくすることとなる。最後に、硬化後マンドレル11から引き抜いて形成したFRP筒1の両端部のフランジ接合部5および6と両端面を研削加工して設けることで、最終的な本発明のFRP筒1を得ることができる。
【0015】図3は実際に本発明のポリマー碍管用FRP筒1にフランジ金具21を装着した例を示す図である。図3に示すように、フランジ金具21をFRP筒1に完全に装着した状態で、フランジ接合部5(6)の加工幅Xを、フランジ金具21のFRP筒1の端面からの高さYより若干大きくして、フランジ接合部5(6)の未加工部への立ち上がり部22とフランジ金具21の端部とが直接接触しないよう構成すると、接触させた場合にこの部分で発生しがちな寸法の相対位置確保の手間を治具使用などにより低減できるため好ましい。
【0016】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明によれば、ガラスロービングの巻き角度θを太径部側から細径部側向けて順次小さくなるようにしているため、およびFRP筒のフランジ接合部および端部以外の外周面を未加工のままとしているため、加工箇所を大幅に減少させることができ、コストダウン、納期短縮が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリマー碍管用FRP筒の一例の構成を示す断面図である。
【図2】本発明のポリマー碍管用FRP筒を作製する際のフィラメントワインディング法の様子を示す図である。
【図3】本発明のポリマー碍管用FRP筒にフランジ金具を装着した例を示す図である。
【図4】ポリマー碍管の一例の構成を示す図である。
【図5】従来のフィラメントワインディング法の様子を示す図である。
【図6】従来のポリマー碍管用FRP筒の一例の構成を示す図である。
【符号の説明】
1 FRP筒、2 細径部、3 テーパ部、4 太径部、5、6 フランジ接合部、7 端面、8 外周部、11 マンドレル、12 ガラスロービング、21 フランジ金具、22 立ち上がり部

【特許請求の範囲】
【請求項1】マンドレル上にガラスロービングを巻き付けるフィラメントワインディング法により作製した、細径部、テーパ部および太径部からなるポリマー碍管用FRP筒において、FRP筒の中心軸に対するガラスロービングの巻き角度θを、太径部側から細径部に順次小さくなるよう設定するとともに、FRP筒の両端のフランジ接合部と端面のみ加工し、その他の外周面は未加工のままとすることを特徴とするポリマー碍管用FRP筒。
【請求項2】前記加工したフランジ接合部において、外周部の未加工のままとした部分の端部から実際にフランジ金具が接合する部分までの厚みを段階的に変化させる請求項1記載のポリマー碍管用FRP筒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【特許番号】特許第3043985号(P3043985)
【登録日】平成12年3月10日(2000.3.10)
【発行日】平成12年5月22日(2000.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−61036
【出願日】平成8年3月18日(1996.3.18)
【公開番号】特開平9−259668
【公開日】平成9年10月3日(1997.10.3)
【審査請求日】平成9年12月10日(1997.12.10)
【出願人】(000004064)日本碍子株式会社 (2,325)
【参考文献】
【文献】特開 昭62−246206(JP,A)
【文献】特開 昭60−32208(JP,A)
【文献】特開 平7−308016(JP,A)
【文献】特開 昭52−135370(JP,A)