ポリマー被覆フィバーグラスの水暴露による故障の可能性を早期に検出するためのインディケータ
【解決課題】ストレス侵食破損、フラッシュアンダー、又は放電活動状態によるロッドの破壊により間近に迫る故障の可能性を早期に警告する手段を含む複合絶縁体を提供する。
【解決手段】ポリマー筐体によって取り囲まれ、その両端に金属の末端取付具に接続されるファイバーグラスロッドを含む複合絶縁体は、染料含有化学的ドーパントが適用される。ドーパントはファイバーグラス外面の近傍周囲に配され、移動および分散特性を持ち、乾燥条件で不活性であり、絶縁体内に配置される。そのため、水分が筐体を経由し絶縁体外面の透過通路を通ってロッドに浸透すると活性化され、同じ透過通路から滲み出すか、または筐体全体に分散する。次に、活性化ドーパントは、絶縁体筐体の外面に堆積物または染色痕を形成する。ドーパントは、視覚的に特定可能であるか、または、1種以上の特異的波長で放射線に対して感受性を持つ油溶性染料、インディケータ、または、染色化合物を含む。ドーパントはまた、ナノ粒子可能化材料で処方することもできる。絶縁体外面における活性化ドーパントの堆積物は、適切な画像装置または肉眼による、該絶縁体外面の画像において検出することが可能である。
【解決手段】ポリマー筐体によって取り囲まれ、その両端に金属の末端取付具に接続されるファイバーグラスロッドを含む複合絶縁体は、染料含有化学的ドーパントが適用される。ドーパントはファイバーグラス外面の近傍周囲に配され、移動および分散特性を持ち、乾燥条件で不活性であり、絶縁体内に配置される。そのため、水分が筐体を経由し絶縁体外面の透過通路を通ってロッドに浸透すると活性化され、同じ透過通路から滲み出すか、または筐体全体に分散する。次に、活性化ドーパントは、絶縁体筐体の外面に堆積物または染色痕を形成する。ドーパントは、視覚的に特定可能であるか、または、1種以上の特異的波長で放射線に対して感受性を持つ油溶性染料、インディケータ、または、染色化合物を含む。ドーパントはまた、ナノ粒子可能化材料で処方することもできる。絶縁体外面における活性化ドーパントの堆積物は、適切な画像装置または肉眼による、該絶縁体外面の画像において検出することが可能である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に電力伝送線のための絶縁体に関する。さらに具体的には、化学的ドーパントを適用した、伝送および分配要素、例えば、複合(非セラミック)絶縁体、またはポリマー被覆ファイバーグラス容器であって、ファイバーグラスコアの環境暴露による故障発生の高度の危険度性を持つユニットの特定が改良されたものに関する。
【0002】
(関連出願に対する相互参照)
本出願は、本出願の譲受人に対して譲渡された、2003年8月14日出願、名称「ファイバーグラスロッドの外界暴露による故障の可能性を早期に検出するための化学物品注入複合絶縁体」なる、現在係属中の特許出願第10/641,511号の一部継続出願である。
【背景技術】
【0003】
電力伝送および分配システムは、しばしば極端になる環境および動作条件においても、構造的完全性を維持し、適切にその働きを実行しなければならない各種絶縁成分を含む。例えば、見上げる高さの電力伝送線は、送電ケーブルを、それらケーブルを支える鉄塔から絶縁するための絶縁体を必要とする。従来の絶縁体は、セラミック、例えば、ガラス製であるが、セラミック絶縁体は、通常、重くかつ脆いので、いくつかの、新規絶縁材料が開発されている。セラミックスに代わるものとして、複合ポリマー材料が、1970年代半ば頃、伝送システム絶縁体への使用のために開発された。このような複合絶縁体は、「非セラミック絶縁体」(NCI)、またはポリマー絶縁体とも呼ばれるが、エチレンプロピレンゴム(EPR)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、シリコンゴム、または他の類似材料のような材料から構成される絶縁体筐体を用いる。絶縁体筐体は、通常、機械的負荷を支える、ファイバーグラス製(別に、ファイバー強化プラスチック、またはグラス強化プラスチック)のコアまたはロッドの周囲に巻きつけられる。ファイバーグラスロッドは、通常、樹脂で囲まれたグラスファイバーから製造される。グラスファイバーは、E−ガラス、または類似の材料から製造されてもよく、樹脂は、エポキシ、ビニールエステル、ポリエステル、または類似の材料であってもよい。ロッドは通常、金属製の末端取付具またはフランジに接続される。取付具またはフランジは、張力を、ケーブルおよび伝送線鉄塔に伝える。
【0004】
複合絶縁体は、従来のセラミックおよびガラス絶縁体に勝るいくつかの利点、例えば、重量がより軽いこと、材料コストおよび設置コストが低いこと、を示すが、複合絶縁体は、環境的または操作条件に関連するストレスによるある種の故障に対し敏感である。例えば、絶縁体は、過熱または粗雑な取り扱いによるロッドの機械的故障、または汚染による絶縁体放電を被る可能性がある。複合絶縁体故障の大きな原因の一つは、ポリマー絶縁体筐体を浸透し、ファイバーグラスロッドに接触するに至る水分によるものである。一般に、複合絶縁体に対する水分浸入と関連する故障には大きく三つのモードがある。それらは、ストレス侵食亀裂(脆弱破損)、フラッシュアンダー、および放電活動によるロッドの破壊である。
【0005】
脆弱破損とも呼ばれるストレス侵食亀裂は、複合絶縁体と関連するもっとも一般的な故障モードの一つである。「脆弱破損」という用語は、一般に、張力負荷と組み合わされた電解腐食によって引き起こされる故障の、目視による外見を記述するために用いられる。脆弱破損と関連する故障機構は、一般に、グラスファイバー中の金属イオンの酸または水分滲出があって、これがストレス侵食亀裂をもたらすとされている。脆弱破損理論は、ポリマー筐体中の通路を通る水の浸透、および、ロッド内部における水の蓄積を必要とする。水は、ロッド内部のグラスファイバーに対する侵食を酸によって助けられる。このような酸は、エポキシ硬化剤の加水分解によってグラスファイバー内に滞在するものであるか、あるいは、コロナ形成硝酸に由来するものであるか、そのいずれかである。図1は、脆弱破損によって生じた、複合絶縁体のロッド内部における故障パターンの一例を示す。筐体102は、ファイバーグラスロッド104を取り囲む。折損108は、ロッドが、水分と長期に接触し、それがロッド内の線維106の切断を招くことによるストレス侵食によって引き起こされる。
【0006】
フラッシュアンダーとは、水分がファイバーグラスロッドに接触し、ロッド、またはロッドと絶縁体筐体との間の界面に沿って遡上する場合に典型的に見られる電気故障モードである。水分、および、水分による放電活動の副産物が、絶縁体にそってある臨界距離延長すると、絶縁体は、印加電圧にもはや耐えられなくなり、フラッシュアンダー条件が出現する。これは、しばしば、絶縁体ロッドの縦裂けまたは穿孔として認められる。これが起こると、絶縁体はもはや、伝送線構造から導電体を電気的に分離することができなくなる。
【0007】
放電活動によるロッドの破壊は、機械的故障モードである。この故障モードでは、水分およびその他の汚染物質が、雨除けシステムに浸透し、ロッドに接触し、内部放電活動を招く。これらの内部放電は、ロッドの線維および樹脂の基質を破壊し、最終的には、ユニットは、印加された負荷を保持することができなくなり、その時点でロッドは通常破断する。この破壊は、放電活動に関連する、熱的、化学的、および力学的力によって起こる。
【0008】
この三つの主要故障モードは、機械的乃至電気的完全性の喪失を意味するものであるから、このような故障が、伝送線絶縁体に起こった場合、それは極めて重大となる可能性がある。複合絶縁体の強度および完全性は、主に、ロッドの、内在的な電気的および機械的強度、末端取付具およびシールの設計と材料、ゴム製雨除けシステムの設計と材料、ロッドの付着法、および、環境および野外における展開条件を含むその他の条件に依存する。前述したように、多くの複合絶縁体故障が、絶縁体ロッドを含むファイバーグラス材料に対する水の浸入と結びつく。
【0009】
三つの故障モード−脆弱破損、フラッシュアンダー、および、放電活動によるロッドの破壊は全て絶縁体ロッドにおいて起こるので、これらの故障は、筐体によって隠され、簡単な検査では容易に見ることも感受することもできない。例えば、水分浸入による故障を検出するための絶縁体の簡単な目視検査は、極めて長時間で、高価となる可能性のある綿密な目視を必要とするが、一般に、決定的な「可」または「不可」評価をもたらさない。さらにある場合においては、目視技術によるロッド故障の検出は単純に不可能なことがある。前記故障モードの内の一つによって引き起こされる、放電活動に伴う不全状態を特定するには、他の検査技術、例えば、昼間コロナおよび赤外技術を用いることが可能である。そのような試験は、絶縁体よりも若干距離離れて実行することが可能であるが、少数の故障モードしか検出できないという限界がある。さらに、放電活動は、検出のための検査時間において存在していなければならず、かつ、オペレータによる、比較的高レベルの技術および分析が要求される。
【0010】
ロッドコアが水分に暴露されることに関連する故障モードの検出をやり易くするために、破局的な傷害が起こる前に、透過通路を通じて筐体の表面に向けて移動する染料、または類似のマーカーを使用することが明らかにされている。これは、一般に、ストレス侵食、フラッシュアンダー、または放電活動によるロッドの破壊によって早晩起こる故障に関して早期の警告を与えるための効果的手段となり、かつ、ある距離から、故障症状が実際に表明されることを要せず検査することを可能とする。しかしながら、このタイプの検査機構に使用される染料またはマーカーの組成は、染料が暴露される環境条件にとってはもちろん、染料の存在を検出する検出技術に関連する実際的限界からも、極めて重要である。
【0011】
あるシステムは、極めて目に付きやすい水溶性染料、例えば、メチレンブルーを用いる。このタイプの染料は、典型的非セラミック絶縁体のポリマーシースにおいて折損部位まで効果的に移動し、従って、絶縁体筐体を通過する水分浸透の有効なインディケータとなることが示されている。しかしながら、ある水溶性染料は、光感受性を持ち、屋外条件に暴露されると時間とともに褪色することがある。さらに、多くの非セラミック絶縁体筐体は、シリコンゴムによって製造される。一般に、シリコンゴムは染色しにくい。シリコンゴムと共に使用される色素は大抵、重合前にシリコンの中に混ぜ合わされる。従って、屋外においてシリコンゴム筐体を染色するように意図されるマーカーは、特別に処方されなければならない。
【0012】
従って、筐体を通る水分浸透による絶縁体コアの予想される故障について警告を発するために、シリコンおよびその他のポリマー筐体を用いる、非セラミック絶縁体用の自己診断システムにおいて使用される半永久的染料を提供することは望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ロッドの環境暴露によって早晩起こることが予想される故障に関して早期の警告を与えるための手段を含む複合絶縁体、または他のポリマー容器が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
ポリマー筐体によって取り囲まれるファイバーグラスロッドで、該ロッドの両端において金属製末端取付具に接合されるロッドを含む複合絶縁体は、その内部に染料主体の化学ドーパントを適用される。ドーパントは、ファイバーグラスの外面近傍周囲、例えば、ロッドと筐体の間のコーティングに分散される。ドーパントはまた、ロッドの基質全体、例えば、ファイバーグラスロッドの樹脂成分に分散させることも可能である。ドーパントは、移動および分散特性を持つように、かつ、乾燥状態では不活性であり、絶縁体成分と適合的であるように処方される。ドーパントは絶縁体の中に配置され、そのため、水分が、絶縁体外面の透過通路を通じてロッドまで浸入した場合、ドーパントが活性化されて、同じ透過通路を通じて沁み出るか、または、ポリマー筐体を貫通してシース面まで分散する。次に、活性化ドーパントは、絶縁体筐体の外面に堆積物を形成する。ドーパントは、シリコンゴム、またはその他のポリマー筐体表面に接着するが、空気や日光による光酸化に対しては抵抗性を持つように処方される。ドーパントは、目視で特定されるか、または、1種以上の特異的波長を持つ放射線に対して感受性を持つことが可能な、油溶性染料、または染色物、またなインディケータを含む。絶縁体外面における活性化ドーパントの堆積は、それぞれ、適切な画像記録装置または肉眼によって、絶縁体の外面を画像記録または目視することによって検出することが可能である。ドーパントは、有機染料であって、該染料がシリコンゴムと共有的に結合することを可能とする官能基と共に合成される有機染料、または染色物、ミセル、あるいは、シリコン油、非水性溶媒、またはシリコンゴムに混和することが可能なインディケータを含む。別態様として、ドーパントは、比較的永続的な蛍光量子収率を示す非有機染料、例えば、輸送機構内におけるドーパントとして量子ドットを用いる有機染料を含むことも可能である。
【0015】
本発明の、他の目的、形態、特質、および利点は、付属の図面、および後述の詳細な説明から明白となろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、付属の図面の描画対象において限定のためではなく、例示として示される。図面では、類似の参照番号は、同じ要素を示す。
【0017】
ファイバーグラスロッドまたはガラス強化樹脂材料の環境暴露による、早晩起こることが予想される故障に関して早期の警告を与えるための、油溶性化学的ドーパントを含む複合絶縁体または容器が記載される。下記の記載において、説明の都合上、数多くの特異的詳細が、本発明の徹底的理解を実現するために記載される。しかしながら、当業者にとっては、本発明は、これらの特異的詳細の変異種を用いても実行が可能であることは明白であろう。別の場合では、説明をやり易くするために、よく知られた構造および装置が、ブロックダイアグラム形式で示される。好ましい実施態様の記述は、本明細書に付属の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
【0018】
高容量(数百キロボルト)電力伝送線に使用されるために、セラミック絶縁体に代わるものとして1950年代に軽量の複合絶縁体が開発された。この絶縁体によって得られる利点は、大きな減量、故障率の低下、低い設置コスト、および、従来のセラミック絶縁体に勝る他の、様々な長所であった。複合絶縁体は、通常、二つの、金属製末端取付具に取り付けたファイバーグラスロッド、該ロッドを取り巻くポリマーまたはゴムのシースまたは筐体を含む。通常、シースは、絶縁体の表面から水を分散させる成形雨除けを持ち、シリコンまたはエチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)系ゴム、またはその他の類似の材料から作製される。
【0019】
図2Aは、本発明の1種以上の実施態様を含むことが可能な、懸垂型複合絶縁体を示す。懸垂絶縁体は、通常、I−紐、V−紐、または終端アプリケーションにおける張力負荷を担持するように構成される。図2Aでは、電力線206が、鉄塔201と203の間に懸垂される。複合絶縁体202および204は、導電体206が2本の鉄塔の間に延びている間、該導電体を支える。絶縁体202および204の内部のファイバーグラスロッドの完全性は不可欠で、どんな僅かな故障であっても、それは、導電体206と、鉄塔201と203の内のどちらかとの間の電気的ショートをもたらすか、または導電体206をアースに落とす可能性がある。
【0020】
本発明の実施態様はまた、他のタイプの伝送および配布ラインおよびサブステーション絶縁体に設置してもよい。さらに、本発明の実施態様を実現するために、他のタイプの伝送および配布成分を使用してもよい。そのようなものとして、ブッシング、終末端子、サージ防止器、および、他の複合物品、すなわち、絶縁機能を発揮し、かつ、環境からの保護を図るべき、複合成分またはファイバーグラス内部成分の外面から成る他の任意のタイプの複合物品が挙げられる。本発明はまた、グラスファイバー強化樹脂が、水浸透故障を抱える構造的応用、例えば、複合構成の、燃料保存タンクまたは容器に使用される、他の産業にも応用される。
【0021】
図2Bは、本発明の1種以上の実施態様を含むことが可能な、ポスト型複合絶縁体を示す。ポスト絶縁体は、通常、張力、屈曲、または圧縮負荷を担持する。図2Bでは、導電体216が、その頂上にポスト絶縁体212および214を持つ鉄塔間に延びる。これらの絶縁体はまた、ポリマーまたはゴム筐体、および金属末端取付具によって囲まれるファイバーグラスコアを含む。懸垂型およびポスト型絶縁体の外にも、本発明の局面は、ポリマーまたはゴムの筐体の内部に密封コアを含む、他の、任意のタイプの絶縁体、例えば、相間絶縁体、および、全ての伝送および分配線を始め、ケーブル伝送および装置ブッシングにも適用が可能である。
【0022】
図2Aに示される複合絶縁体202は、通常、ゴムまたはポリマー筐体に納められたファイバーグラスロッド、および、ロッドの末端に付着される金属末端取付具から成る。末端取付具と絶縁体筐体間の界面を気密にし、かつ、ロッドを環境から密封するためにゴムシールが用いられる。このシールは、絶縁体の設計に応じていくつかの形態を取ることが可能である。ある設計は、O−リング、または圧縮シールを含み、一方、別の設計は、ゴムの筐体を直接金属末端取付具に接着する。電力線絶縁体は屋外で展開されるために、環境条件の影響、例えば、雨および汚染物質に対する暴露を受ける。これらの条件は、絶縁体の完全を弱め、失墜させ、最終的に、機械的故障、および、断線または回路の短絡を招く可能性がある。
【0023】
水分が、絶縁体内部のファイバーグラスロッドに接触することが可能となると、種々の故障モードが誘発される。比較的一般的な故障タイプの一つは、脆弱破損型故障であって、この場合、ロッドのグラスファイバーが、ストレス侵食亀裂によって破損する。ファイバーグラスロッドに対する水分の浸入によって引き起こされる、他の故障型としては、フラッシュアンダー、および、放電活動によるロッドの破壊がある。絶縁体故障の大部分と言わないまでも、相当の割合が、機械的故障または電気的負荷条件によるものではなく、むしろ水分浸透によって引き起こされる。従って、ロッドに対する水分の浸入について早期に検出することは、現場で故障が生じる前に適切な方策の遂行が確保される点から見ても極めて貴重である。
【0024】
絶縁体は、気密となるように設計され、製造されているけれども、水分は、いくつかの異なるやり方で、絶縁体の筐体に浸透し、ファイバーロッドと接触することが可能である。例えば、水分は、絶縁体筐体そのものにおける、ひび割れ、孔、または空洞、末端取付具の欠損部、または、筐体と末端取付具との間の不完全なシールによって形成される隙間を通じて浸入することが可能である。このような条件は、製造不備、または、時間による変性、または、電線工夫および/または厳しい環境条件による粗雑な取り扱いによって生じることがある。
【0025】
現在の検査技術は、通常、水分の存在、および脆弱破損によってもたらされるロッド内亀裂、ロッドを破壊する可能性のある放電、または、炭素化による電場の変化の開始を検出しようとする。しかしながら、これらの技術は一般に、水分が検査時点で存在すること、または、放電による傷害が、与えられた検査技術、例えば、目視検査、またはX線等によって簡単に視認可能であることを要求する。
【0026】
ドーパント構成
本発明の一つの実施態様では、化学的ドーパントが、絶縁体ロッドの表面内、またはその上、または、樹脂線維基質の中に取り入れられる。水分が絶縁体筐体を浸透し、ロッドに接触すると、ドーパントは活性化される。この文意では、「活性化」という用語は、加水分解、界面活性剤添加または無添加下における可溶化、保護コーティングの溶解、または、水の存在によるドーパントの化学的放出で、ドーパントの絶縁体表面への移動を可能とする放出を意味する。一つの構成では、活性化ドーパントは、活性化されると、水分がロッドに浸透するのを可能にする筐体内部の透過通路、例えば、亀裂または隙間を通って移動することが可能である。別の構成では、水活性化ドーパントは、ポリマー筐体内部を横切って分散し、絶縁体の表面に達する。一旦絶縁体の外表面に出ると、ドーパントの存在は、使用されるドーパントのタイプに感受性を持つ検出手段によって認められる。例えば、蛍光染色ドーパントは、紫外線(UV)ランプを用いることによって視覚的に認められる。絶縁体の外側においてドーパントを検出することは、たとえ水分が、検査時点において、絶縁体の上、または内部に存在しなくとも、あるいは、亀裂または隙間が簡単に視認できなくとも、以前に、ロッドのコアに対する水分の接触があったことを示す。
【0027】
本発明の局面は、複合絶縁体の故障においては、水がゴムの筐体を貫いて移動し、化学的侵食によってグラスファイバーを傷めるという事実を利用する。水は、筐体、およびグラスファイバーを取り巻く樹脂に対しては事実上不活性である。水は、通常、筐体および/またはロッド樹脂内部の亀裂の外、筐体と末端取付具の間の気密不良部に対する浸透によってファイバーに達する。水溶性染料が水の通路に存在すると、染料はその水に溶解する。通路または亀裂は、水の残留分子を含む可能性が高いから、染料は、絶縁体筐体の外面に向かって戻り移動する。この染料の移動は、濃度勾配によって駆動される。化学的平衡は最低エネルギー状態であるから、染料は、水が存在する所ではどこでも均一濃度になろうとし、そのため染料は高濃度の内部から移動して、染料がゼロまたは低濃度の外部に向かう。さらに、多くの染料は、水に溶解すると、高い浸透圧を持つので、筐体外部への移動は浸透圧によっても助長される。
【0028】
図3は、本発明の一つの実施態様による、絶縁体筐体の水分浸透を表示するための、化学的ドーパント適用複合絶縁体の構造を示す。複合絶縁体300は、ゴムまたはポリマー筐体306によって取り囲まれるファイバーグラスロッド301を含む。ロッド301の両端には、末端取付具302が付着し、該取付具は、絶縁体筐体306に対し、ゴムの密封リング304によって密栓される。図3に示す実施態様では、化学的ドーパント308は、ファイバーグラスロッド301の表面の少なくとも一部にそって塗布される。ドーパントは、ロッド301の外面、または絶縁体306の内面に、あるいは、絶縁体筐体にロッドを挿入する前、または、絶縁体筐体をロッドの周囲に巻きつける前に塗布してもよい。別態様として、ドーパントは、末端取付具を、ロッドの一端または両端に付着する前に、絶縁体筐体とロッドの間に注入してもよい。ドーパント/染料層308は、一枚の独立した染料層、染料を含むコーティング/接着層、または、染料を浸みこませたゴムかエポキシの表面層であってもよい。接着性の中間層があれば、それは、ゴムの筐体と、複合ロッドの間の接着をさらに強くするので、水分浸透を起こりにくくする。この層もナノクレイを含んでもよい。こうすると、拡散通路長を増すことによって水分浸透の抑制を助長する可能性がある。
【0029】
ドーパント308は、ロッド表面の周囲に、または、図3に示すものとは異なる、他の様々な形状のファイバーグラスロッドの構造内部に分散させてもよい。図4は、本発明のさらに別の実施態様による、絶縁体筐体の水分浸透を表示するための、化学的ドーパント適用複合絶縁体の構造を示す。複合絶縁体400は、ゴムまたはポリマー筐体406によって取り囲まれるファイバーグラスロッド401を含む。ロッド401の両端には、末端取付具402が付着し、該取付具は、絶縁体筐体406に対し、ゴムの密封リング404によって密栓される。図4に示す実施態様では、化学的ドーパント408は、末端取付具402の下面、および、シール404の下面の少なくとも一部にそって塗布される。図4に示す実施態様は、図3に示したものと同様に、ロッド401の前面にそってドーパンを含むように拡張することも可能である。図4に示すようなドーパントの設置は、シール404の故障の際、または、末端取付具402と絶縁体筐体406の間の密封が不全の際、ドーパントの活性化と移動を促進する。
【0030】
図3および4に示す実施態様は、ドーパントが、ファイバーグラスロッド301または401の表面に対して近位に塗布された絶縁体を示す。別態様として、ドーパントは、ファイバーグラスロッドの内部全体に分布させてもよい。この実施態様では、ドーパント注入工程を、ファイバーグラスロッドの製造の中に組み込むことが可能である。ファイバーグラスロッドは、一般に、ガラス−樹脂基質を形成するよう樹脂で束ねられたグラスファイバー(例えば、E−ガラス)を含む。この実施態様では、ドーパントは、ファイバーグラスロッドの製造前に、樹脂化合物に加えてもよい。ドーパントは、ロッドの断面全体に渡って均等に分布してもよい。この場合、放出されるドーパントの量は、ロッドが外部環境に曝され、損傷されるにつれて、増加する。これによって、検査中に観察されるドーパントの量が、ロッド内部の傷害のレベルを表示することが可能となり、そのため欠損絶縁体を特定する確率が高まる。
【0031】
本発明のさらに別の実施態様では、ドーパントを、絶縁体筐体を含むゴムまたはポリマー材料全体に渡って分布させてもよい。この実施態様では、ドーパントは、絶縁体筐体の深部層でロッド近傍に設置することが好ましい。そのようにすると、水分が、筐体表面の近くにではなく、ロッド近傍の絶縁体に浸透した場合に活性化されるからである。同様に、ドーパントは、図3に示すように、ロッドの表面にそってではなく、ファイバーグラスロッドそのものの上層全体に分布させてもよい。このさらに別の実施態様では、水分が絶縁体筐体ばかりでなく、ロッドの、ドーパントが存在する層にまで浸透した場合に、ドーパントが活性化されることになる。ドーパントは、特定の製造条件および要求に従って、液状、粉末状、マイクロカプセル封入体、または類似のタイプの化合物であってもよい。
【0032】
ドーパントは、ロッド、絶縁体筐体、または末端取付具の表面におけるコーティングを可能とするように、または絶縁体内部で流動可能とするように、または、ドーパントがロッド全体に渡って分布される実施態様では、ファイバーグラス基質と混合可能となるように、液状または半液状(ゲル)組成物として構成されてもよい。別態様として、ドーパントは、絶縁体またはロッド内部に設置されるように、粉末物質(乾燥)または同様の組成物として構成されてもよい。ドーパントはまた、ロッドの組成、および絶縁体に関連する製造技術に応じて、顆粒状化合物として製造されてもよい。
【0033】
例えば製造工程の際に、複合絶縁体にドーパントを塗布する機構は、固体粒子を、ロッド、末端取付具、および/または筐体の内面に付着させる静電気的牽引力またはファンデルワールス力を含んでもよい。ドーパントはまた、樹脂またはゴムの表面に共有的に結合され、しかもその結合は、水分と接触すると弱められるか、破壊されるようになっていてもよい。それとは別に、ドーパントは、ロッド上において、接着層、すなわち、エポキシ、または類似の物質から成る余分のコーティングの中に取り込ませてもよいし、あるいは、ゴム製筐体の硫化すなわち硬化工程の際に、ファイバーグラスロッドと接触するゴム層の中に混合させてもよい。
【0034】
図5は、本発明のさらに別の実施態様による、絶縁体筐体の水分浸透を表示するための、化学的ドーパント適用複合絶縁体の構造を示す。複合絶縁体500は、末端取付具を付着させたゴムまたはポリマー筐体によって取り囲まれるファイバーグラスロッド501を含む。図5に示す実施態様では、化学的ドーパント508は、微小カプセル封入染料、または、該染料の塩としてロッド全体に渡って分布する。そのような塩形状では、ドーパントは、危機に侵された絶縁ロッド501内に存在する酸または水によって活性化される。塩または微小カプセル封入染料として、ドーパントが絶縁体内部で移動することはまずない。酸または水に暴露されてイオン形を取ると、ドーパントは、ロッド内を、また、絶縁体筐体内の任意の透過通路から、はるかに自由に移動することが可能となる。このような微小カプセル封入染料はまた、図3および4に示す実施態様の場合のように、ロッドの表面または筐体の内部で用いる際、ドーパントを包むために使用することも可能である。
【0035】
微小カプセル化実施態様では、染料が製造プラントを汚染することがないよう保護し、製造工程時、絶縁体筐体の外側が染料によって汚染される危険性を極小とするために、染料を水溶性ポリマーでコートすることも可能である。このようなポリマーコーティングもまた、製造工程時、周囲の水分に対する暴露によって染料が加水分解または活性化されるのを防ぐ助けをする。
【0036】
微小カプセル封入に関して、別の実施態様は、カプセルそのものが透過通路から出て移動することが可能な、そのようなカプセルの中に染料を封入する。この場合、染料液は、透明な(観察媒体に対して透明な)微小カプセルコーティングの中に含まれる。水分の浸入に遭うと、染料含有カプセルは、筐体表面に移動し、筐体の表面組織によって捕捉される。次に、この染料は、コーティングを貫通する適切な波長によって検出することが可能である。この実施態様では、染料は、シクロデキストリン分子の中に包含される。一般に、シクロデキストリンは、僅かに水溶性であり(例えば、1.8gm/100ml)、そのため、多量の水分に暴露されると、コーティングの溶解を招く可能性がある。別の封入形態は、バッキーボール分子の使用である。この実施態様では、フラーレン(バッキーボール)は、その内部に別の小型の分子を含むことが可能であり、従ってナノカプセルとして働く。ナノカプセルのサイズは、透過通路を経由する移動が可能となるように選ばなければならない。
【0037】
図3から5までを参照しながら前述した実施態様は、ロッド、筐体、末端取付具、および絶縁体のシールに対して配すべきドーパントの、様々の例示の配置を具体的に示したもので、本実施態様の、その他の、様々な改変、および組み合わせが可能であることを示す。
【0038】
ドーパント組成
水溶性ドーパント
前述の実施態様では、ドーパントは、絶縁体筐体を浸透し、絶縁体ロッドの外面で、またはその近傍で、ドーパントに接触する水によって活性化される化学物質である。水は、筐体またはシール、または、末端取付具、シール、および筐体間の任意の界面における、亀裂、隙間、または他の空洞スペースを経由して絶縁体筐体またはゴム製シールを浸透すると仮定される。一つの実施態様では、ドーパントは、透過通路にそって浸出し、絶縁筐体の外面にそって移動することが可能な物質を含む。本発明の実施態様は、水が絶縁体の内部に移動するのであれば、同様のサイズおよび多孔性を持つ化合物も、同様に移動が可能でなければならないという事実を利用する。ドーパントは、環境の中には簡単に見出せない元素から構成され、そのため、濃度勾配によって、二方向拡散または透過通路においてドーパントの外向き移動が促進され、かつ、環境汚染による擬似陽性が回避される。
【0039】
本発明の一つの実施態様では、ドーパント、例えば、ドーパント308は、水溶性レーザー染料である。このようなドーパントの一つの例は、ローダミン590クロリド(ローダミン6Gとも呼ばれる)である。この化合物は、479nmに吸収最大値を持ち、レーザー染料としては、5x10E−5モル濃度で用いられる。この染料は、過塩素酸塩およびテトラフルオロホウ酸塩としても市販されている。もう一つの好適な化合物は、ジナトリウムフルオレセイン(ウラニンとも呼ばれる)。この化合物は、4x10E−3のモル濃度でレーザー染料として用いられると、412nmに吸収最大値、および536−568nmの蛍光範囲を持つ。地下水追跡染料もドーパントとして使用することが可能である。地下水追跡染料は、レーザー染料と類似の蛍光特性を持つが、肉眼では見ることができない。
【0040】
本発明の別態様では、ドーパントは赤外線吸収染料であってもよい。そのような染料の一つの例として、シアニン染料、例えば、ヘプタメチンシアニン、フタロシアニン、およびナフタロシアミン染料が挙げられる。他の例としては、特に、キノンおよび金属複合染料が挙げられる。上記例示の染料の内のいくつかは、時に、「水不溶性」染料とも呼ばれる。それらの可溶性が、水2000部について1部未満のことがあるからである。一般に、百万について数部の桁の水の溶液は、検出可能な変化をもたらすのに十分である。さらに高い水可溶性を持つ染料を用いることも可能である。
【0041】
一般に、本発明のために使用されるドーパントの特徴としては、非浸透または非傷害絶縁体の内部に滞在するドーパントばかりでなく、絶縁体の中で長期に渡って(例えば、数十年)、様々な環境ストレス、例えば、温度サイクル、コロナ放電、風負荷等の下でも安定で、化学的に不活性に留まるドーパントの移動の欠如が挙げられる。ドーパントとして望ましい他の特徴としては、強力な検出器反応、水と相関する移動/分散特徴、一旦活性化された場合長期(例えば少なくとも1年)に渡って環境において安定であり、そのため絶縁体に対する水分浸入の後長期に検出可能であること、がある。
【0042】
一つの実施態様では、ドーパントは、恒久的染色物の添加によって強化することが可能である。こうすると、たとえドーパント自身が絶縁体の外で長く滞在できなくとも、絶縁体表面におけるドーパントの存在に関し持続的な印象を保持することが可能となる。染料は、水分に接触すると有効に溶解する微小カプセル封入型として提供されてもよい。このような微小カプセル封入は、染料の寿命を延ばし、かつ、絶縁体の性能に及ぼすかもしれないどんな僅かの影響でもそれを抑えるのに役立つ。さらに、ドーパントとしての使用に好適なのは、技術的には染料として知られないいくつかの物質である。例えば、ポリスチレンは、ドーパントとして使用することが可能である。ポリスチレンは、約260nmにピークの吸収励起を持ち、約330nmにピークの蛍光を持つ。この実施態様では、ポリスチレンは、ナノ球の中に封入され、該球は、絶縁体外面に接着するようにコートされる。絶縁体外部に移動した場合、ポリスチレン球を励起する励起源として水銀光が使われ、適切な検出器、例えば、昼光コロナ(例えば、DayCor(商標))カメラを用いて検出することが可能となる。このカメラは、UV太陽光の不可視帯域内の240−280nm範囲の放射(コロナ放電は、通常、230nmから405nmのUV放射を発射する)を検出することが可能である。
【0043】
ポリスチレン球は、風化ゴムのものよりも低いが、新鮮ゴムのものよりも高い表面エネルギーを持つ材料でコートされてもよいし、またはそのような材料で製造されてもよい。このようにすると、該球は、絶縁体の内面ではゴムを濡らすことがなく、しかし、雨に打たれた外面ではそれを濡らして接着する。雨に打たれ荒れたゴム表面による物理的捕捉は、ナノ球が筐体から洗い落とされるのを防ぐのに役立つ。それとは別に、絶縁体内部では不活性で、日光に曝されると活性を持つ「太陽糊」を用いて、絶縁体表面に対するナノ球の接着を助けることも可能である。
【0044】
ドーパントはまた、最強の信号が非水性溶液において得られる、水に不溶の染料から構成されてもよい。そのような化合物の一つの例が、電子部品の冷却のための非導電性流体として使用されるポリアルファオレフィン(PAO)である。PAOは液体であり、親油性染料の溶媒として使用される。この実施態様では、染料はPAOに溶解され、ロッドと筐体の間の液体層として添加される。透過通路を介して水分に暴露されると、PAO−染料液は、筐体中の、暴露されたゴムを選択的に濡らし、次に、毛管作用によって筐体の外部に移動する。それと関連する別態様として、有機溶媒またはPAOを微小カプセルに封入して、水溶性コーティングに取り込んでもよい。水溶性微小カプセルを、水に不溶の染料と乾燥混合し、次に、この混合粉末を絶縁体の内部に設置してもよい。浸透する水分に接触すると、水溶性カプセルは溶解し、放出された有機溶媒による染料の溶解を引き起こす。次に、この有機溶媒−染料溶液は、ゴムを濡らし、絶縁体筐体の外に移動する。
【0045】
図6Aおよび6Bは、本発明の一つの実施態様によって、複合絶縁体のロッドに浸透した水分の存在下にドーパントが活性化され、移動する様を示す。図6Aでは、雨620からの水分は、複合絶縁体の筐体607における亀裂606を浸透する。亀裂606は、水分が、絶縁体筐体を通過してロッドにまで浸透することを可能とする透過通路を表す。もう一つの透過通路608は、シール609の欠陥によって引き起こされた可能性がある。ドーパント604は、図3に示すように、筐体607の内面とロッド602の外面の間に配される。水分に接触すると、ドーパント604の一部610または612が活性化される。絶縁体におけるドーパントと、絶縁体の外側の環境との間のドーパントの濃度差によって、活性化ドーパントは、透過経路606または608から外に移動させられる。絶縁体の内部から絶縁体筐体表面への活性化ドーパントの移動が、図6Bに示される。図6Bに示すように、活性化されると、活性化ドーパントは、透過通路から沁みだし、流れて、筐体表面に堆積物614または616を形成する。浸透性染料または染色物が用いられると、滲出染料614は、図6Bに示すように、厳密な表面堆積物ではなく、むしろ筐体のポリマーネットワークの浸透を通じて筐体の中で混ぜ合わされる。ドーパントとして使用された染料または染色物に応じて、堆積物の存在は、適切な画像または目視装置を用いることによって認識することが可能である。
【0046】
図7は、本発明の一つの実施態様による、複合絶縁体のロッドまで浸透した水分の存在下におけるドーパントの活性化、移動、および検出を示す。図6Bに示すように、絶縁筐体に亀裂が入るか、またはシールが効果的でない場合、ロッドは暴露され、ドーパントは、絶縁体の外面に移動する。図7は、水が絶縁体筐体の内部に浸透する、二つの例示の事例を示す。亀裂706は、図6Aおよび6Bに示すものと同様、絶縁体の筐体そのものにおける空洞である。これによって生じた水の浸入は、ドーパント704の活性化710を招く。次に、活性化されたドーパントは、亀裂706を通って遡上し、絶縁体筐体の表面にドーパント堆積物714を形成する。もう一つのタイプの透過通路は、シール709と筐体707、および/または末端取付具711との間の隙間によって形成される可能性がある。これは、図7に隙間708として描かれる。水分がこの隙間を通って浸透すると、ドーパント704は活性化される。次に、この活性化ドーパント712は、隙間708の外に流れ出て堆積物716を形成する。ドーパントの組成に応じて、絶縁体表面におけるドーパントの存在は、適切な検出手段によって検出することが可能である。例えば、発信源720は、適切な波長における通信に対して感受性を持つ染料、例えば、レーザー励起蛍光染料を含む、ドーパント堆積物714または716の存在を明らかにすることが可能な、レーザー、または紫外線送信機を示す。同様に、発信源718は、視覚的、紫外線、または超スペクトラムカメラであってもよい。反射、吸収、または、特定の波長における蛍光を通じてドーパントの堆積体の存在を検出するには、ノッチフィルターを用いることも可能である。これらの検査装置では、オペレータは、ある距離から絶縁体の検査を実行することが可能である(染料が、可視の波長範囲の光を反射するならば、肉眼でも欠陥ユニットを特定することが可能である)。これらの装置はまた、自動化検査工程にも適応される。絶縁体の外面におけるドーパントの検出は、絶縁体ロッドが、シール欠陥、または絶縁体筐体における亀裂、または、絶縁体または末端取付具における他の可能な空洞を通じて水分に曝されていることの確実な証拠を与える。現実の故障、例えば、ロッドの脆弱破損はまだ存在していないとはいうものの、ロッドの水分に対する暴露は、このような故障モードが最終的には起こることを示す。この状況では、絶縁体は、必要に応じて使い続けることも、交換することも可能である。このようにして、ドーパント適用複合絶縁体は、自己診断機構を備え、かつ、欠陥過程の早い時期に高度危険性の警告を発する。使用する染料および発信源のタイプに応じて、検出器は、独立ユニット(図示せず)であっても、発信源718または720と一体化したユニットであっても、あるいは、肉眼的に検出可能な染料の場合は、ヒトのオペレータであってもよい。
【0047】
ドーパントの組成および検出手段によっては、検出可能な信号を発生するのに、ごく微量の染料が存在するだけであってもよい。例えば、絶縁体表面において百万部当たり1部の染料(1ppm)があるだけで、あるドーパント/染料組成物にとっては、UV、IR、レーザー、または他の同様な検出手段を用いた場合、信号を生成するのに十分な場合がある。絶縁体内部におけるドーパントの分布および包装も、用いるドーパントのタイプに依存する。例えば、ファイバーグラスロッドの1kgセクションは、約10グラムの染料を含んでもよい(でコートされてもよい)。
【0048】
油溶性ドーパント
本発明の一つの実施態様では、筐体を経由する水分の浸透を示すために使用されるドーパントは、図3、4、および5に示すように、シリコンゴムに対してより優れた接着性、および、外部条件における褪色に対してより抵抗性を示すように処方された、油性の染料または染色化合物である。
【0049】
NCI筐体内のドーパントとして油溶性染料を用いることは、水分浸透領域において、筐体内部の透過通路を経由する移動、および筐体表面にそう移動を促進するために、ある輸送機構を必要とする。このような輸送機構としては、油性染料を封入し、NCIポリマー筐体の機械的破損にそって移動可能なミセル、または、NCIポリマー筐体全体に広がる染料の分散を可能とする一般的可溶化システムが挙げられる。
【0050】
一つの実施態様では、図3、4、または5に示されるように、NCIコアまたは筐体の表面の中または上に分布するドーパントは、凝集してミセル構造に集結される油溶性染料を含む。一般に、ミセルは、界面活性分子の特定の集合化であり、該ミセルでは、疎水性(極性連続相における)または親水性(非極性連続相における)末端が、連続相を回避するために内向きに集合する。界面活性剤が、臨界ミセル濃度を超えて存在すると、該界面活性剤は乳化剤として作用する。ミセルシステムでは、一旦ドーパントが水の存在下に活性化されると、溶媒と染料はミセルコアの中に包含される。これは図8Aに図示される。同図において、溶媒および染料802は、ミセル構造804の内部に包含される。
【0051】
図8Bは、表面806、例えば、非セラミック絶縁体のポリマー筐体の表面を経由する、ミセル構造804の分散を示す。ミセルは、筐体表面に向かう水透過通路(浸入/浸出ルート)にそって移動する。一旦表面に達すると、ミセル構造内部の油と染料は、図8Cの染色領域808によって示されるように、筐体のポリマー材料の中に分散する。これは、ポリマー筐体を染める。ミセル構造を用いる油溶性ドーパントの実施態様では、筐体の外面に向かうには二つの可能なルートがある。第一は、ポリマーを経由する溶媒と染料の分散である。第二は、外面に向かう水通路にそう、ミセルの移動である。これは、図9Aに、それぞれ通路902および904として描かれる。
【0052】
油溶性ドーパントシステムの別の実施態様では、ドーパントは、細胞の親油性領域を染める染料を含んでもよい。これらは、オイル赤O、オイル青N、およびスーダンIVのような染料を含んでもよい。燃料、油、およびグリスに着色するために使用されるマーカー技術も、油溶性染料として使用が可能である。例えば、石油分留液に溶解したUnisol(登録商標)染料濃縮液または同様の染料も、シリコン油における分散剤として使用され、本発明の実施態様における油溶性染料化合物として用いるのに好適である。同様に、溶媒の中に分散されてペーストを形成する色素を含む、シリコンゴム用に使用されるペイントも使用が可能である。一つの実施態様では、親油性および水溶性染料のためのシリコン粒子輸送システムを形成するために乳化剤を使用することも可能である。染料はまた、シリコングリスに縣濁させた水活性化微小カプセル、または、シリコン油またはオリゴマーを含む、水活性化微小カプセルの中に封入してもよい。
【0053】
染料のカプセル内封入の方法に応じて、NCIコアにおける水の透過および存在による筐体経由染料の分散は、いくつかの異なる方法で実現される。そのような方法としては、毛管作用、浸透圧勾配、ポリマー筐体を通過するドーパントの分散、およりミセルの移動が挙げられる。一つの実施態様では、ある種の化合物、例えば、メチレンブルー、または同様の水溶性成分を、油溶性化合物と組み合わせ、水の存在下に圧を形成させ、それによって染料の、筐体の表面に向う、および該表面にそう移動を助長させてもよい。
【0054】
さらに別の実施態様では、油性ドーパントは、ナノ技術が可能にした材料、例えば、半導体量子ドット、金または銀のナノ粒子等を含んでもよい。これらの化合物は、極端に小さく、通常僅かに数千原子またはそれ以下である。このため、これらの化合物は異常な光学的性質を帯びるが、この性質は、ドットのサイズおよび/または組成を変えることによって、目的に合わせて特異的に適合させることができる。これらの性質は、ドット分子の中に電子を「量子封じ込め」することによって得られる。一つの実施態様では、有機染料分子を、量子ドット粒子によって置換してもよい。量子ドットの典型的コア直径は5nmである。量子ドットは、それらの、他の物質に向かう化学的牽引、または、他の物質から遠ざかる化学的反発を調節することが可能な他の成分によって「蓋」をされても、または封入されてもよい。小さいサイズであるために、量子ドットは、非セラミック絶縁体のポリマー筐体の外面に移動することが可能である。一般に、量子ドットインディケータは、有機染料よりも物理的にはるかに頑丈であり、また、標準的蛍光染料に比べてはるかに高い量子収率をもって蛍光を発する。量子ドット化合物は、通常、半導体材料(例えば、カドミウム、セレン化物等)から作られるので、それらはサイズが小さく、濃度が低いので、電力絶縁体用途では極めて小さな電気作用しか持たない。量子ドット化合物は、図8Aに示すように、ミセル構造の中に含めることも可能である。
【0055】
水溶性染料実施態様に関して前述したように、油溶性染料によるドーパントの検出は、可視の彩色または陰影マーカーを与える、染色物、染料、インク、または色素のための視覚技術、または、赤外範囲において検出可能なマーカーのための赤外技術を用いることが可能である。
【0056】
前述の実施態様の内のいくつかは、油溶性ドーパント、例えば、石油由来物質に向けられていたけれども、他の、非水溶性、または非水性ドーパントも使用が可能であることに注意しなければならない。そのようなものとして、ミネラル、植物、動物、または合成源から得られた物質で造られたもので、一般に、粘ちょうで、各種有機溶媒には溶解するが、水には溶解しないドーパントが挙げられる。
【0057】
上に論じた実施態様は、浸透水分によって活性化されて筐体の外に移動する染料を含むドーパントを説明した。それとは別に、ドーパントは、筐体の表面に存在する物質と組み合わせて作動する活性化剤を含むことも可能である。ドーパントが表面に移動すると、化学反応が起こって、染料を「現像」し、これが、筐体の表面において見られるか、または別のやり方で検出される。関連実施態様では、筐体は、吸収剤を含んでもよい。吸収剤は、ドーパントまたは染料が筐体外面にそって広がるのを助け、それによって染色面積を拡大する。ウィッキング剤は、防水性筐体の機能性を維持するために疎水性でなければならない。従って、この実施態様では、親油性染料が使用される。
【0058】
さらに別の実施態様として、筐体そのものの外面を処理する、例えば、外部の表面にそって移動した染料による筐体の染色をやり易くするように、オゾンまたはプラズマ処理することも可能である。
【0059】
本発明の一つの実施態様では、自動化検査システムが提供される。この実施態様では、非セラミック絶縁体が、適切な画像装置、例えば、ディジタルスティルカメラまたはビデオカメラによって定期的に走査される。画像が収集され、次に、絶縁体の表面に滲出した染料の存在を検出するために、リアルタイムで分析される。データベースは、様々なドーパントの量を持つ絶縁体に対応するいくつかの画像を保存する。捕捉画像は、コントラスト、色、またはその他の指定表示に関して保存画像と比較される。もしも捕捉画像が、ドーパント無しの画像と一致すれば、試験は、「良し」の読み取りを戻す。もしも捕捉画像が、若干のドーパントが存在する画像と一致するならば、試験は、「不良」の読み取りを戻し、フラグを立てるか、オペレータにメッセージを送るかし、さらに画像を処理して、存在するドーパントのレベルか、または擬似陽性の表示を決める。さらに詳細な処理としては、例えば、捕捉画像をろ過して、何か表面コントラストがあれば、それは、環境、照明、陰影、材料の違い、または、滲出ドーパントの実際の存在とは無関係な他の理由によるものかを決定することが挙げられる。
【0060】
本発明の局面も、外部保護カバーを備えたシステムであって、筐体を通過する水の浸透によってシステムの故障が誘発される可能性のある、他の、任意の、複合システムまたはポリマー製品にも適用が可能である。複合加圧システムは、このクラスの品目の一例である。例えば、車両用に使用される、または保存用の圧縮天然ガス(CNG)タンクは、よくファイバーグラスで造られるが、前述したような侵食破損または関連欠陥によって故障することがある。このようなタンクは、通常、水分浸透を阻止するために、防水ライナー、または不透シーラーによって被われる。このようなタンクまたは容器に用いられる複合カバーは、水分浸入に対して十分にしっかりした外部障壁を持たないことがよくあり、水浸透に対して脆弱である。タンクを含むフィアバーグラス材料は、図3、4、または5に示し、かつ、非セラミック絶縁体に関連して前述したように、その内部に染料を取り込んでもよく、あるいは、染料を化学的に塗布してもよい。防水ライナーまたはシールを浸透する水分に対するタンク材料の暴露は、染料のタンク表面に対する移動を引き起こし、該表面において染料は視覚的または自動化手段によって認識される。
【0061】
ある用途では、水分ではなく酸に対する暴露が、故障の可能性を招く場合がある。実際の設置条件に応じて、ドーパントは、水に対する暴露ではなく、酸の放出(例えば、5以下のpH)に対してのみ反応するように構成させることも可能である。酸の存在下にドーパントを活性化するために、微小カプセル封入技術、または、製薬学における逆転腸内コーティング、例えば、6以上のpHでは溶解しないコーティングも使用することが可能である。別態様として、中性pHでは透明であるが、ある酸性レベルにおいて発色するpH感受性染料も使用が可能である。
【0062】
前記説明において、環境に対する絶縁体コアの暴露による、複合絶縁体または類似の物品において故障条件の出現に関して早期の警告を発するためのインディケータが記述された。本発明は、特異的な例示の実施態様に関して記述されたけれども、これらの実施態様に種々の改変および変更を、特許請求の範囲に記載される本発明の、さらに広い精神および範囲から逸脱することなく、実行することが可能であることは明白である。従って、明細書および図面は、限定的な意味としてではなく、例示的な意味として考慮すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、脆弱破損によって生じた、複合絶縁体のロッド内部における故障パターンの一例を示す。
【図2A】図2Aは、本発明の1種以上の実施態様を含むことが可能な、懸垂型複合絶縁体を示す。
【図2B】図2Bは、本発明の1種以上の実施態様を含むことが可能な、ポスト型複合絶縁体を示す。
【図3】図3は、本発明の一つの実施態様による、絶縁体筐体の水分浸透を表示するための、化学的ドーパント適用複合絶縁体の構造を示す。
【図4】図4は、本発明の第1の別の実施態様による、絶縁体筐体の水分浸透を表示するための、化学的ドーパント適用複合絶縁体の構造を示す。
【図5】図5は、本発明の第2の実施態様による、絶縁体筐体の水分浸透を表示するための、化学的ドーパント適用複合絶縁体の構造を示す。
【図6A】図6Aは、本発明の一つの実施態様による、複合絶縁体のロッドに浸透した水分の存在下におけるドーパントの活性化を示す。
【図6B】図6Bは、図6Aの活性化ドーパントの移動を示す。
【図7】図7は、本発明の一つの実施態様による、活性化ドーパントと、水分の絶縁体ロッドに対する浸透を確認するための活性化ドーパント検出手段を備えた複合絶縁体を示す。
【図8A】図8Aは、本発明の一つ以上の実施態様による、油性ドーパントを封入するのに使用が可能なミセル構造を示す。
【図8B】図8Bは、本発明の一つの実施態様による、絶縁体筐体の表面に対するミセル構造の移動を示す。
【図8C】図8Cは、本発明の一つの実施態様による、ミセルからの染料の放出、およびポリマー表面を経由する分散を示す。
【図9A】図9Aは、本発明の一つの実施態様によって、非セラミック絶縁体の筐体を経由する油溶性染料の放出を示す。
【図9B】図9Bは、図9Aにおける油溶性染料のさらに詳細な図を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に電力伝送線のための絶縁体に関する。さらに具体的には、化学的ドーパントを適用した、伝送および分配要素、例えば、複合(非セラミック)絶縁体、またはポリマー被覆ファイバーグラス容器であって、ファイバーグラスコアの環境暴露による故障発生の高度の危険度性を持つユニットの特定が改良されたものに関する。
【0002】
(関連出願に対する相互参照)
本出願は、本出願の譲受人に対して譲渡された、2003年8月14日出願、名称「ファイバーグラスロッドの外界暴露による故障の可能性を早期に検出するための化学物品注入複合絶縁体」なる、現在係属中の特許出願第10/641,511号の一部継続出願である。
【背景技術】
【0003】
電力伝送および分配システムは、しばしば極端になる環境および動作条件においても、構造的完全性を維持し、適切にその働きを実行しなければならない各種絶縁成分を含む。例えば、見上げる高さの電力伝送線は、送電ケーブルを、それらケーブルを支える鉄塔から絶縁するための絶縁体を必要とする。従来の絶縁体は、セラミック、例えば、ガラス製であるが、セラミック絶縁体は、通常、重くかつ脆いので、いくつかの、新規絶縁材料が開発されている。セラミックスに代わるものとして、複合ポリマー材料が、1970年代半ば頃、伝送システム絶縁体への使用のために開発された。このような複合絶縁体は、「非セラミック絶縁体」(NCI)、またはポリマー絶縁体とも呼ばれるが、エチレンプロピレンゴム(EPR)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、シリコンゴム、または他の類似材料のような材料から構成される絶縁体筐体を用いる。絶縁体筐体は、通常、機械的負荷を支える、ファイバーグラス製(別に、ファイバー強化プラスチック、またはグラス強化プラスチック)のコアまたはロッドの周囲に巻きつけられる。ファイバーグラスロッドは、通常、樹脂で囲まれたグラスファイバーから製造される。グラスファイバーは、E−ガラス、または類似の材料から製造されてもよく、樹脂は、エポキシ、ビニールエステル、ポリエステル、または類似の材料であってもよい。ロッドは通常、金属製の末端取付具またはフランジに接続される。取付具またはフランジは、張力を、ケーブルおよび伝送線鉄塔に伝える。
【0004】
複合絶縁体は、従来のセラミックおよびガラス絶縁体に勝るいくつかの利点、例えば、重量がより軽いこと、材料コストおよび設置コストが低いこと、を示すが、複合絶縁体は、環境的または操作条件に関連するストレスによるある種の故障に対し敏感である。例えば、絶縁体は、過熱または粗雑な取り扱いによるロッドの機械的故障、または汚染による絶縁体放電を被る可能性がある。複合絶縁体故障の大きな原因の一つは、ポリマー絶縁体筐体を浸透し、ファイバーグラスロッドに接触するに至る水分によるものである。一般に、複合絶縁体に対する水分浸入と関連する故障には大きく三つのモードがある。それらは、ストレス侵食亀裂(脆弱破損)、フラッシュアンダー、および放電活動によるロッドの破壊である。
【0005】
脆弱破損とも呼ばれるストレス侵食亀裂は、複合絶縁体と関連するもっとも一般的な故障モードの一つである。「脆弱破損」という用語は、一般に、張力負荷と組み合わされた電解腐食によって引き起こされる故障の、目視による外見を記述するために用いられる。脆弱破損と関連する故障機構は、一般に、グラスファイバー中の金属イオンの酸または水分滲出があって、これがストレス侵食亀裂をもたらすとされている。脆弱破損理論は、ポリマー筐体中の通路を通る水の浸透、および、ロッド内部における水の蓄積を必要とする。水は、ロッド内部のグラスファイバーに対する侵食を酸によって助けられる。このような酸は、エポキシ硬化剤の加水分解によってグラスファイバー内に滞在するものであるか、あるいは、コロナ形成硝酸に由来するものであるか、そのいずれかである。図1は、脆弱破損によって生じた、複合絶縁体のロッド内部における故障パターンの一例を示す。筐体102は、ファイバーグラスロッド104を取り囲む。折損108は、ロッドが、水分と長期に接触し、それがロッド内の線維106の切断を招くことによるストレス侵食によって引き起こされる。
【0006】
フラッシュアンダーとは、水分がファイバーグラスロッドに接触し、ロッド、またはロッドと絶縁体筐体との間の界面に沿って遡上する場合に典型的に見られる電気故障モードである。水分、および、水分による放電活動の副産物が、絶縁体にそってある臨界距離延長すると、絶縁体は、印加電圧にもはや耐えられなくなり、フラッシュアンダー条件が出現する。これは、しばしば、絶縁体ロッドの縦裂けまたは穿孔として認められる。これが起こると、絶縁体はもはや、伝送線構造から導電体を電気的に分離することができなくなる。
【0007】
放電活動によるロッドの破壊は、機械的故障モードである。この故障モードでは、水分およびその他の汚染物質が、雨除けシステムに浸透し、ロッドに接触し、内部放電活動を招く。これらの内部放電は、ロッドの線維および樹脂の基質を破壊し、最終的には、ユニットは、印加された負荷を保持することができなくなり、その時点でロッドは通常破断する。この破壊は、放電活動に関連する、熱的、化学的、および力学的力によって起こる。
【0008】
この三つの主要故障モードは、機械的乃至電気的完全性の喪失を意味するものであるから、このような故障が、伝送線絶縁体に起こった場合、それは極めて重大となる可能性がある。複合絶縁体の強度および完全性は、主に、ロッドの、内在的な電気的および機械的強度、末端取付具およびシールの設計と材料、ゴム製雨除けシステムの設計と材料、ロッドの付着法、および、環境および野外における展開条件を含むその他の条件に依存する。前述したように、多くの複合絶縁体故障が、絶縁体ロッドを含むファイバーグラス材料に対する水の浸入と結びつく。
【0009】
三つの故障モード−脆弱破損、フラッシュアンダー、および、放電活動によるロッドの破壊は全て絶縁体ロッドにおいて起こるので、これらの故障は、筐体によって隠され、簡単な検査では容易に見ることも感受することもできない。例えば、水分浸入による故障を検出するための絶縁体の簡単な目視検査は、極めて長時間で、高価となる可能性のある綿密な目視を必要とするが、一般に、決定的な「可」または「不可」評価をもたらさない。さらにある場合においては、目視技術によるロッド故障の検出は単純に不可能なことがある。前記故障モードの内の一つによって引き起こされる、放電活動に伴う不全状態を特定するには、他の検査技術、例えば、昼間コロナおよび赤外技術を用いることが可能である。そのような試験は、絶縁体よりも若干距離離れて実行することが可能であるが、少数の故障モードしか検出できないという限界がある。さらに、放電活動は、検出のための検査時間において存在していなければならず、かつ、オペレータによる、比較的高レベルの技術および分析が要求される。
【0010】
ロッドコアが水分に暴露されることに関連する故障モードの検出をやり易くするために、破局的な傷害が起こる前に、透過通路を通じて筐体の表面に向けて移動する染料、または類似のマーカーを使用することが明らかにされている。これは、一般に、ストレス侵食、フラッシュアンダー、または放電活動によるロッドの破壊によって早晩起こる故障に関して早期の警告を与えるための効果的手段となり、かつ、ある距離から、故障症状が実際に表明されることを要せず検査することを可能とする。しかしながら、このタイプの検査機構に使用される染料またはマーカーの組成は、染料が暴露される環境条件にとってはもちろん、染料の存在を検出する検出技術に関連する実際的限界からも、極めて重要である。
【0011】
あるシステムは、極めて目に付きやすい水溶性染料、例えば、メチレンブルーを用いる。このタイプの染料は、典型的非セラミック絶縁体のポリマーシースにおいて折損部位まで効果的に移動し、従って、絶縁体筐体を通過する水分浸透の有効なインディケータとなることが示されている。しかしながら、ある水溶性染料は、光感受性を持ち、屋外条件に暴露されると時間とともに褪色することがある。さらに、多くの非セラミック絶縁体筐体は、シリコンゴムによって製造される。一般に、シリコンゴムは染色しにくい。シリコンゴムと共に使用される色素は大抵、重合前にシリコンの中に混ぜ合わされる。従って、屋外においてシリコンゴム筐体を染色するように意図されるマーカーは、特別に処方されなければならない。
【0012】
従って、筐体を通る水分浸透による絶縁体コアの予想される故障について警告を発するために、シリコンおよびその他のポリマー筐体を用いる、非セラミック絶縁体用の自己診断システムにおいて使用される半永久的染料を提供することは望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ロッドの環境暴露によって早晩起こることが予想される故障に関して早期の警告を与えるための手段を含む複合絶縁体、または他のポリマー容器が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
ポリマー筐体によって取り囲まれるファイバーグラスロッドで、該ロッドの両端において金属製末端取付具に接合されるロッドを含む複合絶縁体は、その内部に染料主体の化学ドーパントを適用される。ドーパントは、ファイバーグラスの外面近傍周囲、例えば、ロッドと筐体の間のコーティングに分散される。ドーパントはまた、ロッドの基質全体、例えば、ファイバーグラスロッドの樹脂成分に分散させることも可能である。ドーパントは、移動および分散特性を持つように、かつ、乾燥状態では不活性であり、絶縁体成分と適合的であるように処方される。ドーパントは絶縁体の中に配置され、そのため、水分が、絶縁体外面の透過通路を通じてロッドまで浸入した場合、ドーパントが活性化されて、同じ透過通路を通じて沁み出るか、または、ポリマー筐体を貫通してシース面まで分散する。次に、活性化ドーパントは、絶縁体筐体の外面に堆積物を形成する。ドーパントは、シリコンゴム、またはその他のポリマー筐体表面に接着するが、空気や日光による光酸化に対しては抵抗性を持つように処方される。ドーパントは、目視で特定されるか、または、1種以上の特異的波長を持つ放射線に対して感受性を持つことが可能な、油溶性染料、または染色物、またなインディケータを含む。絶縁体外面における活性化ドーパントの堆積は、それぞれ、適切な画像記録装置または肉眼によって、絶縁体の外面を画像記録または目視することによって検出することが可能である。ドーパントは、有機染料であって、該染料がシリコンゴムと共有的に結合することを可能とする官能基と共に合成される有機染料、または染色物、ミセル、あるいは、シリコン油、非水性溶媒、またはシリコンゴムに混和することが可能なインディケータを含む。別態様として、ドーパントは、比較的永続的な蛍光量子収率を示す非有機染料、例えば、輸送機構内におけるドーパントとして量子ドットを用いる有機染料を含むことも可能である。
【0015】
本発明の、他の目的、形態、特質、および利点は、付属の図面、および後述の詳細な説明から明白となろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、付属の図面の描画対象において限定のためではなく、例示として示される。図面では、類似の参照番号は、同じ要素を示す。
【0017】
ファイバーグラスロッドまたはガラス強化樹脂材料の環境暴露による、早晩起こることが予想される故障に関して早期の警告を与えるための、油溶性化学的ドーパントを含む複合絶縁体または容器が記載される。下記の記載において、説明の都合上、数多くの特異的詳細が、本発明の徹底的理解を実現するために記載される。しかしながら、当業者にとっては、本発明は、これらの特異的詳細の変異種を用いても実行が可能であることは明白であろう。別の場合では、説明をやり易くするために、よく知られた構造および装置が、ブロックダイアグラム形式で示される。好ましい実施態様の記述は、本明細書に付属の特許請求の範囲を限定することを意図するものではない。
【0018】
高容量(数百キロボルト)電力伝送線に使用されるために、セラミック絶縁体に代わるものとして1950年代に軽量の複合絶縁体が開発された。この絶縁体によって得られる利点は、大きな減量、故障率の低下、低い設置コスト、および、従来のセラミック絶縁体に勝る他の、様々な長所であった。複合絶縁体は、通常、二つの、金属製末端取付具に取り付けたファイバーグラスロッド、該ロッドを取り巻くポリマーまたはゴムのシースまたは筐体を含む。通常、シースは、絶縁体の表面から水を分散させる成形雨除けを持ち、シリコンまたはエチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)系ゴム、またはその他の類似の材料から作製される。
【0019】
図2Aは、本発明の1種以上の実施態様を含むことが可能な、懸垂型複合絶縁体を示す。懸垂絶縁体は、通常、I−紐、V−紐、または終端アプリケーションにおける張力負荷を担持するように構成される。図2Aでは、電力線206が、鉄塔201と203の間に懸垂される。複合絶縁体202および204は、導電体206が2本の鉄塔の間に延びている間、該導電体を支える。絶縁体202および204の内部のファイバーグラスロッドの完全性は不可欠で、どんな僅かな故障であっても、それは、導電体206と、鉄塔201と203の内のどちらかとの間の電気的ショートをもたらすか、または導電体206をアースに落とす可能性がある。
【0020】
本発明の実施態様はまた、他のタイプの伝送および配布ラインおよびサブステーション絶縁体に設置してもよい。さらに、本発明の実施態様を実現するために、他のタイプの伝送および配布成分を使用してもよい。そのようなものとして、ブッシング、終末端子、サージ防止器、および、他の複合物品、すなわち、絶縁機能を発揮し、かつ、環境からの保護を図るべき、複合成分またはファイバーグラス内部成分の外面から成る他の任意のタイプの複合物品が挙げられる。本発明はまた、グラスファイバー強化樹脂が、水浸透故障を抱える構造的応用、例えば、複合構成の、燃料保存タンクまたは容器に使用される、他の産業にも応用される。
【0021】
図2Bは、本発明の1種以上の実施態様を含むことが可能な、ポスト型複合絶縁体を示す。ポスト絶縁体は、通常、張力、屈曲、または圧縮負荷を担持する。図2Bでは、導電体216が、その頂上にポスト絶縁体212および214を持つ鉄塔間に延びる。これらの絶縁体はまた、ポリマーまたはゴム筐体、および金属末端取付具によって囲まれるファイバーグラスコアを含む。懸垂型およびポスト型絶縁体の外にも、本発明の局面は、ポリマーまたはゴムの筐体の内部に密封コアを含む、他の、任意のタイプの絶縁体、例えば、相間絶縁体、および、全ての伝送および分配線を始め、ケーブル伝送および装置ブッシングにも適用が可能である。
【0022】
図2Aに示される複合絶縁体202は、通常、ゴムまたはポリマー筐体に納められたファイバーグラスロッド、および、ロッドの末端に付着される金属末端取付具から成る。末端取付具と絶縁体筐体間の界面を気密にし、かつ、ロッドを環境から密封するためにゴムシールが用いられる。このシールは、絶縁体の設計に応じていくつかの形態を取ることが可能である。ある設計は、O−リング、または圧縮シールを含み、一方、別の設計は、ゴムの筐体を直接金属末端取付具に接着する。電力線絶縁体は屋外で展開されるために、環境条件の影響、例えば、雨および汚染物質に対する暴露を受ける。これらの条件は、絶縁体の完全を弱め、失墜させ、最終的に、機械的故障、および、断線または回路の短絡を招く可能性がある。
【0023】
水分が、絶縁体内部のファイバーグラスロッドに接触することが可能となると、種々の故障モードが誘発される。比較的一般的な故障タイプの一つは、脆弱破損型故障であって、この場合、ロッドのグラスファイバーが、ストレス侵食亀裂によって破損する。ファイバーグラスロッドに対する水分の浸入によって引き起こされる、他の故障型としては、フラッシュアンダー、および、放電活動によるロッドの破壊がある。絶縁体故障の大部分と言わないまでも、相当の割合が、機械的故障または電気的負荷条件によるものではなく、むしろ水分浸透によって引き起こされる。従って、ロッドに対する水分の浸入について早期に検出することは、現場で故障が生じる前に適切な方策の遂行が確保される点から見ても極めて貴重である。
【0024】
絶縁体は、気密となるように設計され、製造されているけれども、水分は、いくつかの異なるやり方で、絶縁体の筐体に浸透し、ファイバーロッドと接触することが可能である。例えば、水分は、絶縁体筐体そのものにおける、ひび割れ、孔、または空洞、末端取付具の欠損部、または、筐体と末端取付具との間の不完全なシールによって形成される隙間を通じて浸入することが可能である。このような条件は、製造不備、または、時間による変性、または、電線工夫および/または厳しい環境条件による粗雑な取り扱いによって生じることがある。
【0025】
現在の検査技術は、通常、水分の存在、および脆弱破損によってもたらされるロッド内亀裂、ロッドを破壊する可能性のある放電、または、炭素化による電場の変化の開始を検出しようとする。しかしながら、これらの技術は一般に、水分が検査時点で存在すること、または、放電による傷害が、与えられた検査技術、例えば、目視検査、またはX線等によって簡単に視認可能であることを要求する。
【0026】
ドーパント構成
本発明の一つの実施態様では、化学的ドーパントが、絶縁体ロッドの表面内、またはその上、または、樹脂線維基質の中に取り入れられる。水分が絶縁体筐体を浸透し、ロッドに接触すると、ドーパントは活性化される。この文意では、「活性化」という用語は、加水分解、界面活性剤添加または無添加下における可溶化、保護コーティングの溶解、または、水の存在によるドーパントの化学的放出で、ドーパントの絶縁体表面への移動を可能とする放出を意味する。一つの構成では、活性化ドーパントは、活性化されると、水分がロッドに浸透するのを可能にする筐体内部の透過通路、例えば、亀裂または隙間を通って移動することが可能である。別の構成では、水活性化ドーパントは、ポリマー筐体内部を横切って分散し、絶縁体の表面に達する。一旦絶縁体の外表面に出ると、ドーパントの存在は、使用されるドーパントのタイプに感受性を持つ検出手段によって認められる。例えば、蛍光染色ドーパントは、紫外線(UV)ランプを用いることによって視覚的に認められる。絶縁体の外側においてドーパントを検出することは、たとえ水分が、検査時点において、絶縁体の上、または内部に存在しなくとも、あるいは、亀裂または隙間が簡単に視認できなくとも、以前に、ロッドのコアに対する水分の接触があったことを示す。
【0027】
本発明の局面は、複合絶縁体の故障においては、水がゴムの筐体を貫いて移動し、化学的侵食によってグラスファイバーを傷めるという事実を利用する。水は、筐体、およびグラスファイバーを取り巻く樹脂に対しては事実上不活性である。水は、通常、筐体および/またはロッド樹脂内部の亀裂の外、筐体と末端取付具の間の気密不良部に対する浸透によってファイバーに達する。水溶性染料が水の通路に存在すると、染料はその水に溶解する。通路または亀裂は、水の残留分子を含む可能性が高いから、染料は、絶縁体筐体の外面に向かって戻り移動する。この染料の移動は、濃度勾配によって駆動される。化学的平衡は最低エネルギー状態であるから、染料は、水が存在する所ではどこでも均一濃度になろうとし、そのため染料は高濃度の内部から移動して、染料がゼロまたは低濃度の外部に向かう。さらに、多くの染料は、水に溶解すると、高い浸透圧を持つので、筐体外部への移動は浸透圧によっても助長される。
【0028】
図3は、本発明の一つの実施態様による、絶縁体筐体の水分浸透を表示するための、化学的ドーパント適用複合絶縁体の構造を示す。複合絶縁体300は、ゴムまたはポリマー筐体306によって取り囲まれるファイバーグラスロッド301を含む。ロッド301の両端には、末端取付具302が付着し、該取付具は、絶縁体筐体306に対し、ゴムの密封リング304によって密栓される。図3に示す実施態様では、化学的ドーパント308は、ファイバーグラスロッド301の表面の少なくとも一部にそって塗布される。ドーパントは、ロッド301の外面、または絶縁体306の内面に、あるいは、絶縁体筐体にロッドを挿入する前、または、絶縁体筐体をロッドの周囲に巻きつける前に塗布してもよい。別態様として、ドーパントは、末端取付具を、ロッドの一端または両端に付着する前に、絶縁体筐体とロッドの間に注入してもよい。ドーパント/染料層308は、一枚の独立した染料層、染料を含むコーティング/接着層、または、染料を浸みこませたゴムかエポキシの表面層であってもよい。接着性の中間層があれば、それは、ゴムの筐体と、複合ロッドの間の接着をさらに強くするので、水分浸透を起こりにくくする。この層もナノクレイを含んでもよい。こうすると、拡散通路長を増すことによって水分浸透の抑制を助長する可能性がある。
【0029】
ドーパント308は、ロッド表面の周囲に、または、図3に示すものとは異なる、他の様々な形状のファイバーグラスロッドの構造内部に分散させてもよい。図4は、本発明のさらに別の実施態様による、絶縁体筐体の水分浸透を表示するための、化学的ドーパント適用複合絶縁体の構造を示す。複合絶縁体400は、ゴムまたはポリマー筐体406によって取り囲まれるファイバーグラスロッド401を含む。ロッド401の両端には、末端取付具402が付着し、該取付具は、絶縁体筐体406に対し、ゴムの密封リング404によって密栓される。図4に示す実施態様では、化学的ドーパント408は、末端取付具402の下面、および、シール404の下面の少なくとも一部にそって塗布される。図4に示す実施態様は、図3に示したものと同様に、ロッド401の前面にそってドーパンを含むように拡張することも可能である。図4に示すようなドーパントの設置は、シール404の故障の際、または、末端取付具402と絶縁体筐体406の間の密封が不全の際、ドーパントの活性化と移動を促進する。
【0030】
図3および4に示す実施態様は、ドーパントが、ファイバーグラスロッド301または401の表面に対して近位に塗布された絶縁体を示す。別態様として、ドーパントは、ファイバーグラスロッドの内部全体に分布させてもよい。この実施態様では、ドーパント注入工程を、ファイバーグラスロッドの製造の中に組み込むことが可能である。ファイバーグラスロッドは、一般に、ガラス−樹脂基質を形成するよう樹脂で束ねられたグラスファイバー(例えば、E−ガラス)を含む。この実施態様では、ドーパントは、ファイバーグラスロッドの製造前に、樹脂化合物に加えてもよい。ドーパントは、ロッドの断面全体に渡って均等に分布してもよい。この場合、放出されるドーパントの量は、ロッドが外部環境に曝され、損傷されるにつれて、増加する。これによって、検査中に観察されるドーパントの量が、ロッド内部の傷害のレベルを表示することが可能となり、そのため欠損絶縁体を特定する確率が高まる。
【0031】
本発明のさらに別の実施態様では、ドーパントを、絶縁体筐体を含むゴムまたはポリマー材料全体に渡って分布させてもよい。この実施態様では、ドーパントは、絶縁体筐体の深部層でロッド近傍に設置することが好ましい。そのようにすると、水分が、筐体表面の近くにではなく、ロッド近傍の絶縁体に浸透した場合に活性化されるからである。同様に、ドーパントは、図3に示すように、ロッドの表面にそってではなく、ファイバーグラスロッドそのものの上層全体に分布させてもよい。このさらに別の実施態様では、水分が絶縁体筐体ばかりでなく、ロッドの、ドーパントが存在する層にまで浸透した場合に、ドーパントが活性化されることになる。ドーパントは、特定の製造条件および要求に従って、液状、粉末状、マイクロカプセル封入体、または類似のタイプの化合物であってもよい。
【0032】
ドーパントは、ロッド、絶縁体筐体、または末端取付具の表面におけるコーティングを可能とするように、または絶縁体内部で流動可能とするように、または、ドーパントがロッド全体に渡って分布される実施態様では、ファイバーグラス基質と混合可能となるように、液状または半液状(ゲル)組成物として構成されてもよい。別態様として、ドーパントは、絶縁体またはロッド内部に設置されるように、粉末物質(乾燥)または同様の組成物として構成されてもよい。ドーパントはまた、ロッドの組成、および絶縁体に関連する製造技術に応じて、顆粒状化合物として製造されてもよい。
【0033】
例えば製造工程の際に、複合絶縁体にドーパントを塗布する機構は、固体粒子を、ロッド、末端取付具、および/または筐体の内面に付着させる静電気的牽引力またはファンデルワールス力を含んでもよい。ドーパントはまた、樹脂またはゴムの表面に共有的に結合され、しかもその結合は、水分と接触すると弱められるか、破壊されるようになっていてもよい。それとは別に、ドーパントは、ロッド上において、接着層、すなわち、エポキシ、または類似の物質から成る余分のコーティングの中に取り込ませてもよいし、あるいは、ゴム製筐体の硫化すなわち硬化工程の際に、ファイバーグラスロッドと接触するゴム層の中に混合させてもよい。
【0034】
図5は、本発明のさらに別の実施態様による、絶縁体筐体の水分浸透を表示するための、化学的ドーパント適用複合絶縁体の構造を示す。複合絶縁体500は、末端取付具を付着させたゴムまたはポリマー筐体によって取り囲まれるファイバーグラスロッド501を含む。図5に示す実施態様では、化学的ドーパント508は、微小カプセル封入染料、または、該染料の塩としてロッド全体に渡って分布する。そのような塩形状では、ドーパントは、危機に侵された絶縁ロッド501内に存在する酸または水によって活性化される。塩または微小カプセル封入染料として、ドーパントが絶縁体内部で移動することはまずない。酸または水に暴露されてイオン形を取ると、ドーパントは、ロッド内を、また、絶縁体筐体内の任意の透過通路から、はるかに自由に移動することが可能となる。このような微小カプセル封入染料はまた、図3および4に示す実施態様の場合のように、ロッドの表面または筐体の内部で用いる際、ドーパントを包むために使用することも可能である。
【0035】
微小カプセル化実施態様では、染料が製造プラントを汚染することがないよう保護し、製造工程時、絶縁体筐体の外側が染料によって汚染される危険性を極小とするために、染料を水溶性ポリマーでコートすることも可能である。このようなポリマーコーティングもまた、製造工程時、周囲の水分に対する暴露によって染料が加水分解または活性化されるのを防ぐ助けをする。
【0036】
微小カプセル封入に関して、別の実施態様は、カプセルそのものが透過通路から出て移動することが可能な、そのようなカプセルの中に染料を封入する。この場合、染料液は、透明な(観察媒体に対して透明な)微小カプセルコーティングの中に含まれる。水分の浸入に遭うと、染料含有カプセルは、筐体表面に移動し、筐体の表面組織によって捕捉される。次に、この染料は、コーティングを貫通する適切な波長によって検出することが可能である。この実施態様では、染料は、シクロデキストリン分子の中に包含される。一般に、シクロデキストリンは、僅かに水溶性であり(例えば、1.8gm/100ml)、そのため、多量の水分に暴露されると、コーティングの溶解を招く可能性がある。別の封入形態は、バッキーボール分子の使用である。この実施態様では、フラーレン(バッキーボール)は、その内部に別の小型の分子を含むことが可能であり、従ってナノカプセルとして働く。ナノカプセルのサイズは、透過通路を経由する移動が可能となるように選ばなければならない。
【0037】
図3から5までを参照しながら前述した実施態様は、ロッド、筐体、末端取付具、および絶縁体のシールに対して配すべきドーパントの、様々の例示の配置を具体的に示したもので、本実施態様の、その他の、様々な改変、および組み合わせが可能であることを示す。
【0038】
ドーパント組成
水溶性ドーパント
前述の実施態様では、ドーパントは、絶縁体筐体を浸透し、絶縁体ロッドの外面で、またはその近傍で、ドーパントに接触する水によって活性化される化学物質である。水は、筐体またはシール、または、末端取付具、シール、および筐体間の任意の界面における、亀裂、隙間、または他の空洞スペースを経由して絶縁体筐体またはゴム製シールを浸透すると仮定される。一つの実施態様では、ドーパントは、透過通路にそって浸出し、絶縁筐体の外面にそって移動することが可能な物質を含む。本発明の実施態様は、水が絶縁体の内部に移動するのであれば、同様のサイズおよび多孔性を持つ化合物も、同様に移動が可能でなければならないという事実を利用する。ドーパントは、環境の中には簡単に見出せない元素から構成され、そのため、濃度勾配によって、二方向拡散または透過通路においてドーパントの外向き移動が促進され、かつ、環境汚染による擬似陽性が回避される。
【0039】
本発明の一つの実施態様では、ドーパント、例えば、ドーパント308は、水溶性レーザー染料である。このようなドーパントの一つの例は、ローダミン590クロリド(ローダミン6Gとも呼ばれる)である。この化合物は、479nmに吸収最大値を持ち、レーザー染料としては、5x10E−5モル濃度で用いられる。この染料は、過塩素酸塩およびテトラフルオロホウ酸塩としても市販されている。もう一つの好適な化合物は、ジナトリウムフルオレセイン(ウラニンとも呼ばれる)。この化合物は、4x10E−3のモル濃度でレーザー染料として用いられると、412nmに吸収最大値、および536−568nmの蛍光範囲を持つ。地下水追跡染料もドーパントとして使用することが可能である。地下水追跡染料は、レーザー染料と類似の蛍光特性を持つが、肉眼では見ることができない。
【0040】
本発明の別態様では、ドーパントは赤外線吸収染料であってもよい。そのような染料の一つの例として、シアニン染料、例えば、ヘプタメチンシアニン、フタロシアニン、およびナフタロシアミン染料が挙げられる。他の例としては、特に、キノンおよび金属複合染料が挙げられる。上記例示の染料の内のいくつかは、時に、「水不溶性」染料とも呼ばれる。それらの可溶性が、水2000部について1部未満のことがあるからである。一般に、百万について数部の桁の水の溶液は、検出可能な変化をもたらすのに十分である。さらに高い水可溶性を持つ染料を用いることも可能である。
【0041】
一般に、本発明のために使用されるドーパントの特徴としては、非浸透または非傷害絶縁体の内部に滞在するドーパントばかりでなく、絶縁体の中で長期に渡って(例えば、数十年)、様々な環境ストレス、例えば、温度サイクル、コロナ放電、風負荷等の下でも安定で、化学的に不活性に留まるドーパントの移動の欠如が挙げられる。ドーパントとして望ましい他の特徴としては、強力な検出器反応、水と相関する移動/分散特徴、一旦活性化された場合長期(例えば少なくとも1年)に渡って環境において安定であり、そのため絶縁体に対する水分浸入の後長期に検出可能であること、がある。
【0042】
一つの実施態様では、ドーパントは、恒久的染色物の添加によって強化することが可能である。こうすると、たとえドーパント自身が絶縁体の外で長く滞在できなくとも、絶縁体表面におけるドーパントの存在に関し持続的な印象を保持することが可能となる。染料は、水分に接触すると有効に溶解する微小カプセル封入型として提供されてもよい。このような微小カプセル封入は、染料の寿命を延ばし、かつ、絶縁体の性能に及ぼすかもしれないどんな僅かの影響でもそれを抑えるのに役立つ。さらに、ドーパントとしての使用に好適なのは、技術的には染料として知られないいくつかの物質である。例えば、ポリスチレンは、ドーパントとして使用することが可能である。ポリスチレンは、約260nmにピークの吸収励起を持ち、約330nmにピークの蛍光を持つ。この実施態様では、ポリスチレンは、ナノ球の中に封入され、該球は、絶縁体外面に接着するようにコートされる。絶縁体外部に移動した場合、ポリスチレン球を励起する励起源として水銀光が使われ、適切な検出器、例えば、昼光コロナ(例えば、DayCor(商標))カメラを用いて検出することが可能となる。このカメラは、UV太陽光の不可視帯域内の240−280nm範囲の放射(コロナ放電は、通常、230nmから405nmのUV放射を発射する)を検出することが可能である。
【0043】
ポリスチレン球は、風化ゴムのものよりも低いが、新鮮ゴムのものよりも高い表面エネルギーを持つ材料でコートされてもよいし、またはそのような材料で製造されてもよい。このようにすると、該球は、絶縁体の内面ではゴムを濡らすことがなく、しかし、雨に打たれた外面ではそれを濡らして接着する。雨に打たれ荒れたゴム表面による物理的捕捉は、ナノ球が筐体から洗い落とされるのを防ぐのに役立つ。それとは別に、絶縁体内部では不活性で、日光に曝されると活性を持つ「太陽糊」を用いて、絶縁体表面に対するナノ球の接着を助けることも可能である。
【0044】
ドーパントはまた、最強の信号が非水性溶液において得られる、水に不溶の染料から構成されてもよい。そのような化合物の一つの例が、電子部品の冷却のための非導電性流体として使用されるポリアルファオレフィン(PAO)である。PAOは液体であり、親油性染料の溶媒として使用される。この実施態様では、染料はPAOに溶解され、ロッドと筐体の間の液体層として添加される。透過通路を介して水分に暴露されると、PAO−染料液は、筐体中の、暴露されたゴムを選択的に濡らし、次に、毛管作用によって筐体の外部に移動する。それと関連する別態様として、有機溶媒またはPAOを微小カプセルに封入して、水溶性コーティングに取り込んでもよい。水溶性微小カプセルを、水に不溶の染料と乾燥混合し、次に、この混合粉末を絶縁体の内部に設置してもよい。浸透する水分に接触すると、水溶性カプセルは溶解し、放出された有機溶媒による染料の溶解を引き起こす。次に、この有機溶媒−染料溶液は、ゴムを濡らし、絶縁体筐体の外に移動する。
【0045】
図6Aおよび6Bは、本発明の一つの実施態様によって、複合絶縁体のロッドに浸透した水分の存在下にドーパントが活性化され、移動する様を示す。図6Aでは、雨620からの水分は、複合絶縁体の筐体607における亀裂606を浸透する。亀裂606は、水分が、絶縁体筐体を通過してロッドにまで浸透することを可能とする透過通路を表す。もう一つの透過通路608は、シール609の欠陥によって引き起こされた可能性がある。ドーパント604は、図3に示すように、筐体607の内面とロッド602の外面の間に配される。水分に接触すると、ドーパント604の一部610または612が活性化される。絶縁体におけるドーパントと、絶縁体の外側の環境との間のドーパントの濃度差によって、活性化ドーパントは、透過経路606または608から外に移動させられる。絶縁体の内部から絶縁体筐体表面への活性化ドーパントの移動が、図6Bに示される。図6Bに示すように、活性化されると、活性化ドーパントは、透過通路から沁みだし、流れて、筐体表面に堆積物614または616を形成する。浸透性染料または染色物が用いられると、滲出染料614は、図6Bに示すように、厳密な表面堆積物ではなく、むしろ筐体のポリマーネットワークの浸透を通じて筐体の中で混ぜ合わされる。ドーパントとして使用された染料または染色物に応じて、堆積物の存在は、適切な画像または目視装置を用いることによって認識することが可能である。
【0046】
図7は、本発明の一つの実施態様による、複合絶縁体のロッドまで浸透した水分の存在下におけるドーパントの活性化、移動、および検出を示す。図6Bに示すように、絶縁筐体に亀裂が入るか、またはシールが効果的でない場合、ロッドは暴露され、ドーパントは、絶縁体の外面に移動する。図7は、水が絶縁体筐体の内部に浸透する、二つの例示の事例を示す。亀裂706は、図6Aおよび6Bに示すものと同様、絶縁体の筐体そのものにおける空洞である。これによって生じた水の浸入は、ドーパント704の活性化710を招く。次に、活性化されたドーパントは、亀裂706を通って遡上し、絶縁体筐体の表面にドーパント堆積物714を形成する。もう一つのタイプの透過通路は、シール709と筐体707、および/または末端取付具711との間の隙間によって形成される可能性がある。これは、図7に隙間708として描かれる。水分がこの隙間を通って浸透すると、ドーパント704は活性化される。次に、この活性化ドーパント712は、隙間708の外に流れ出て堆積物716を形成する。ドーパントの組成に応じて、絶縁体表面におけるドーパントの存在は、適切な検出手段によって検出することが可能である。例えば、発信源720は、適切な波長における通信に対して感受性を持つ染料、例えば、レーザー励起蛍光染料を含む、ドーパント堆積物714または716の存在を明らかにすることが可能な、レーザー、または紫外線送信機を示す。同様に、発信源718は、視覚的、紫外線、または超スペクトラムカメラであってもよい。反射、吸収、または、特定の波長における蛍光を通じてドーパントの堆積体の存在を検出するには、ノッチフィルターを用いることも可能である。これらの検査装置では、オペレータは、ある距離から絶縁体の検査を実行することが可能である(染料が、可視の波長範囲の光を反射するならば、肉眼でも欠陥ユニットを特定することが可能である)。これらの装置はまた、自動化検査工程にも適応される。絶縁体の外面におけるドーパントの検出は、絶縁体ロッドが、シール欠陥、または絶縁体筐体における亀裂、または、絶縁体または末端取付具における他の可能な空洞を通じて水分に曝されていることの確実な証拠を与える。現実の故障、例えば、ロッドの脆弱破損はまだ存在していないとはいうものの、ロッドの水分に対する暴露は、このような故障モードが最終的には起こることを示す。この状況では、絶縁体は、必要に応じて使い続けることも、交換することも可能である。このようにして、ドーパント適用複合絶縁体は、自己診断機構を備え、かつ、欠陥過程の早い時期に高度危険性の警告を発する。使用する染料および発信源のタイプに応じて、検出器は、独立ユニット(図示せず)であっても、発信源718または720と一体化したユニットであっても、あるいは、肉眼的に検出可能な染料の場合は、ヒトのオペレータであってもよい。
【0047】
ドーパントの組成および検出手段によっては、検出可能な信号を発生するのに、ごく微量の染料が存在するだけであってもよい。例えば、絶縁体表面において百万部当たり1部の染料(1ppm)があるだけで、あるドーパント/染料組成物にとっては、UV、IR、レーザー、または他の同様な検出手段を用いた場合、信号を生成するのに十分な場合がある。絶縁体内部におけるドーパントの分布および包装も、用いるドーパントのタイプに依存する。例えば、ファイバーグラスロッドの1kgセクションは、約10グラムの染料を含んでもよい(でコートされてもよい)。
【0048】
油溶性ドーパント
本発明の一つの実施態様では、筐体を経由する水分の浸透を示すために使用されるドーパントは、図3、4、および5に示すように、シリコンゴムに対してより優れた接着性、および、外部条件における褪色に対してより抵抗性を示すように処方された、油性の染料または染色化合物である。
【0049】
NCI筐体内のドーパントとして油溶性染料を用いることは、水分浸透領域において、筐体内部の透過通路を経由する移動、および筐体表面にそう移動を促進するために、ある輸送機構を必要とする。このような輸送機構としては、油性染料を封入し、NCIポリマー筐体の機械的破損にそって移動可能なミセル、または、NCIポリマー筐体全体に広がる染料の分散を可能とする一般的可溶化システムが挙げられる。
【0050】
一つの実施態様では、図3、4、または5に示されるように、NCIコアまたは筐体の表面の中または上に分布するドーパントは、凝集してミセル構造に集結される油溶性染料を含む。一般に、ミセルは、界面活性分子の特定の集合化であり、該ミセルでは、疎水性(極性連続相における)または親水性(非極性連続相における)末端が、連続相を回避するために内向きに集合する。界面活性剤が、臨界ミセル濃度を超えて存在すると、該界面活性剤は乳化剤として作用する。ミセルシステムでは、一旦ドーパントが水の存在下に活性化されると、溶媒と染料はミセルコアの中に包含される。これは図8Aに図示される。同図において、溶媒および染料802は、ミセル構造804の内部に包含される。
【0051】
図8Bは、表面806、例えば、非セラミック絶縁体のポリマー筐体の表面を経由する、ミセル構造804の分散を示す。ミセルは、筐体表面に向かう水透過通路(浸入/浸出ルート)にそって移動する。一旦表面に達すると、ミセル構造内部の油と染料は、図8Cの染色領域808によって示されるように、筐体のポリマー材料の中に分散する。これは、ポリマー筐体を染める。ミセル構造を用いる油溶性ドーパントの実施態様では、筐体の外面に向かうには二つの可能なルートがある。第一は、ポリマーを経由する溶媒と染料の分散である。第二は、外面に向かう水通路にそう、ミセルの移動である。これは、図9Aに、それぞれ通路902および904として描かれる。
【0052】
油溶性ドーパントシステムの別の実施態様では、ドーパントは、細胞の親油性領域を染める染料を含んでもよい。これらは、オイル赤O、オイル青N、およびスーダンIVのような染料を含んでもよい。燃料、油、およびグリスに着色するために使用されるマーカー技術も、油溶性染料として使用が可能である。例えば、石油分留液に溶解したUnisol(登録商標)染料濃縮液または同様の染料も、シリコン油における分散剤として使用され、本発明の実施態様における油溶性染料化合物として用いるのに好適である。同様に、溶媒の中に分散されてペーストを形成する色素を含む、シリコンゴム用に使用されるペイントも使用が可能である。一つの実施態様では、親油性および水溶性染料のためのシリコン粒子輸送システムを形成するために乳化剤を使用することも可能である。染料はまた、シリコングリスに縣濁させた水活性化微小カプセル、または、シリコン油またはオリゴマーを含む、水活性化微小カプセルの中に封入してもよい。
【0053】
染料のカプセル内封入の方法に応じて、NCIコアにおける水の透過および存在による筐体経由染料の分散は、いくつかの異なる方法で実現される。そのような方法としては、毛管作用、浸透圧勾配、ポリマー筐体を通過するドーパントの分散、およりミセルの移動が挙げられる。一つの実施態様では、ある種の化合物、例えば、メチレンブルー、または同様の水溶性成分を、油溶性化合物と組み合わせ、水の存在下に圧を形成させ、それによって染料の、筐体の表面に向う、および該表面にそう移動を助長させてもよい。
【0054】
さらに別の実施態様では、油性ドーパントは、ナノ技術が可能にした材料、例えば、半導体量子ドット、金または銀のナノ粒子等を含んでもよい。これらの化合物は、極端に小さく、通常僅かに数千原子またはそれ以下である。このため、これらの化合物は異常な光学的性質を帯びるが、この性質は、ドットのサイズおよび/または組成を変えることによって、目的に合わせて特異的に適合させることができる。これらの性質は、ドット分子の中に電子を「量子封じ込め」することによって得られる。一つの実施態様では、有機染料分子を、量子ドット粒子によって置換してもよい。量子ドットの典型的コア直径は5nmである。量子ドットは、それらの、他の物質に向かう化学的牽引、または、他の物質から遠ざかる化学的反発を調節することが可能な他の成分によって「蓋」をされても、または封入されてもよい。小さいサイズであるために、量子ドットは、非セラミック絶縁体のポリマー筐体の外面に移動することが可能である。一般に、量子ドットインディケータは、有機染料よりも物理的にはるかに頑丈であり、また、標準的蛍光染料に比べてはるかに高い量子収率をもって蛍光を発する。量子ドット化合物は、通常、半導体材料(例えば、カドミウム、セレン化物等)から作られるので、それらはサイズが小さく、濃度が低いので、電力絶縁体用途では極めて小さな電気作用しか持たない。量子ドット化合物は、図8Aに示すように、ミセル構造の中に含めることも可能である。
【0055】
水溶性染料実施態様に関して前述したように、油溶性染料によるドーパントの検出は、可視の彩色または陰影マーカーを与える、染色物、染料、インク、または色素のための視覚技術、または、赤外範囲において検出可能なマーカーのための赤外技術を用いることが可能である。
【0056】
前述の実施態様の内のいくつかは、油溶性ドーパント、例えば、石油由来物質に向けられていたけれども、他の、非水溶性、または非水性ドーパントも使用が可能であることに注意しなければならない。そのようなものとして、ミネラル、植物、動物、または合成源から得られた物質で造られたもので、一般に、粘ちょうで、各種有機溶媒には溶解するが、水には溶解しないドーパントが挙げられる。
【0057】
上に論じた実施態様は、浸透水分によって活性化されて筐体の外に移動する染料を含むドーパントを説明した。それとは別に、ドーパントは、筐体の表面に存在する物質と組み合わせて作動する活性化剤を含むことも可能である。ドーパントが表面に移動すると、化学反応が起こって、染料を「現像」し、これが、筐体の表面において見られるか、または別のやり方で検出される。関連実施態様では、筐体は、吸収剤を含んでもよい。吸収剤は、ドーパントまたは染料が筐体外面にそって広がるのを助け、それによって染色面積を拡大する。ウィッキング剤は、防水性筐体の機能性を維持するために疎水性でなければならない。従って、この実施態様では、親油性染料が使用される。
【0058】
さらに別の実施態様として、筐体そのものの外面を処理する、例えば、外部の表面にそって移動した染料による筐体の染色をやり易くするように、オゾンまたはプラズマ処理することも可能である。
【0059】
本発明の一つの実施態様では、自動化検査システムが提供される。この実施態様では、非セラミック絶縁体が、適切な画像装置、例えば、ディジタルスティルカメラまたはビデオカメラによって定期的に走査される。画像が収集され、次に、絶縁体の表面に滲出した染料の存在を検出するために、リアルタイムで分析される。データベースは、様々なドーパントの量を持つ絶縁体に対応するいくつかの画像を保存する。捕捉画像は、コントラスト、色、またはその他の指定表示に関して保存画像と比較される。もしも捕捉画像が、ドーパント無しの画像と一致すれば、試験は、「良し」の読み取りを戻す。もしも捕捉画像が、若干のドーパントが存在する画像と一致するならば、試験は、「不良」の読み取りを戻し、フラグを立てるか、オペレータにメッセージを送るかし、さらに画像を処理して、存在するドーパントのレベルか、または擬似陽性の表示を決める。さらに詳細な処理としては、例えば、捕捉画像をろ過して、何か表面コントラストがあれば、それは、環境、照明、陰影、材料の違い、または、滲出ドーパントの実際の存在とは無関係な他の理由によるものかを決定することが挙げられる。
【0060】
本発明の局面も、外部保護カバーを備えたシステムであって、筐体を通過する水の浸透によってシステムの故障が誘発される可能性のある、他の、任意の、複合システムまたはポリマー製品にも適用が可能である。複合加圧システムは、このクラスの品目の一例である。例えば、車両用に使用される、または保存用の圧縮天然ガス(CNG)タンクは、よくファイバーグラスで造られるが、前述したような侵食破損または関連欠陥によって故障することがある。このようなタンクは、通常、水分浸透を阻止するために、防水ライナー、または不透シーラーによって被われる。このようなタンクまたは容器に用いられる複合カバーは、水分浸入に対して十分にしっかりした外部障壁を持たないことがよくあり、水浸透に対して脆弱である。タンクを含むフィアバーグラス材料は、図3、4、または5に示し、かつ、非セラミック絶縁体に関連して前述したように、その内部に染料を取り込んでもよく、あるいは、染料を化学的に塗布してもよい。防水ライナーまたはシールを浸透する水分に対するタンク材料の暴露は、染料のタンク表面に対する移動を引き起こし、該表面において染料は視覚的または自動化手段によって認識される。
【0061】
ある用途では、水分ではなく酸に対する暴露が、故障の可能性を招く場合がある。実際の設置条件に応じて、ドーパントは、水に対する暴露ではなく、酸の放出(例えば、5以下のpH)に対してのみ反応するように構成させることも可能である。酸の存在下にドーパントを活性化するために、微小カプセル封入技術、または、製薬学における逆転腸内コーティング、例えば、6以上のpHでは溶解しないコーティングも使用することが可能である。別態様として、中性pHでは透明であるが、ある酸性レベルにおいて発色するpH感受性染料も使用が可能である。
【0062】
前記説明において、環境に対する絶縁体コアの暴露による、複合絶縁体または類似の物品において故障条件の出現に関して早期の警告を発するためのインディケータが記述された。本発明は、特異的な例示の実施態様に関して記述されたけれども、これらの実施態様に種々の改変および変更を、特許請求の範囲に記載される本発明の、さらに広い精神および範囲から逸脱することなく、実行することが可能であることは明白である。従って、明細書および図面は、限定的な意味としてではなく、例示的な意味として考慮すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、脆弱破損によって生じた、複合絶縁体のロッド内部における故障パターンの一例を示す。
【図2A】図2Aは、本発明の1種以上の実施態様を含むことが可能な、懸垂型複合絶縁体を示す。
【図2B】図2Bは、本発明の1種以上の実施態様を含むことが可能な、ポスト型複合絶縁体を示す。
【図3】図3は、本発明の一つの実施態様による、絶縁体筐体の水分浸透を表示するための、化学的ドーパント適用複合絶縁体の構造を示す。
【図4】図4は、本発明の第1の別の実施態様による、絶縁体筐体の水分浸透を表示するための、化学的ドーパント適用複合絶縁体の構造を示す。
【図5】図5は、本発明の第2の実施態様による、絶縁体筐体の水分浸透を表示するための、化学的ドーパント適用複合絶縁体の構造を示す。
【図6A】図6Aは、本発明の一つの実施態様による、複合絶縁体のロッドに浸透した水分の存在下におけるドーパントの活性化を示す。
【図6B】図6Bは、図6Aの活性化ドーパントの移動を示す。
【図7】図7は、本発明の一つの実施態様による、活性化ドーパントと、水分の絶縁体ロッドに対する浸透を確認するための活性化ドーパント検出手段を備えた複合絶縁体を示す。
【図8A】図8Aは、本発明の一つ以上の実施態様による、油性ドーパントを封入するのに使用が可能なミセル構造を示す。
【図8B】図8Bは、本発明の一つの実施態様による、絶縁体筐体の表面に対するミセル構造の移動を示す。
【図8C】図8Cは、本発明の一つの実施態様による、ミセルからの染料の放出、およびポリマー表面を経由する分散を示す。
【図9A】図9Aは、本発明の一つの実施態様によって、非セラミック絶縁体の筐体を経由する油溶性染料の放出を示す。
【図9B】図9Bは、図9Aにおける油溶性染料のさらに詳細な図を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力伝送ケーブルを支えるための複合絶縁体であって、
外面と、第1末端および第2末端を有するロッド;
内面と外面とを有し、該ロッドを取り囲む筐体であって、該筐体の内面は、該ロッドの外面の少なくとも一部に近接する筐体;
該ロッドの外面、および該筐体の内面の近傍に配される油溶性ドーパントであって、染料を含み、水の存在下に分散するように処方され、該ドーパントは水分に暴露されると、筐体内部の透過通路を経由して筐体の外面に移動し、外面の可視部分にそって分散し、外面の可視部分に、筐体に対する水浸入の存在を示す、半永久的および認識可能な染色痕を残すように構成される油溶性ドーパント;
を含む前記複合絶縁体。
【請求項2】
ロッドはファイバーグラスロッドを含み、前記筐体はシリコン性ゴムから造られることを特徴とする、請求項1の複合絶縁体。
【請求項3】
前記染料はミセル構造の中に封入され、前記筐体外面に向かう前記ドーパントの移動は、ミセルの移動を通じて起こることを特徴とする、請求項2の複合絶縁体。
【請求項4】
前記染料は、シリコンゴムを染めるためのシロキサン修飾染料を含むことを特徴とする、請求項2の複合絶縁体。
【請求項5】
前記染料は、前記ドーパントを前記筐体外面に移動させるための輸送流体として、シリコン油、トルエン、または非水性溶媒を含むことを特徴とする、請求項2の複合絶縁体。
【請求項6】
前記染料は、前記筐体外面を染めるためのナノ粒子可能化材料を含むことを特徴とする、請求項2の複合絶縁体。
【請求項7】
前記化学的ドーパントが、前記ロッドの外面にそって配されることを特徴とする、請求項1の複合絶縁体。
【請求項8】
前記筐体の第1末端と第1末端取付具の間に設置される第1ゴムシール;および、
前記筐体の第2末端と第2末端取付具の間に設置される第2ゴムシール;
をさらに含むことを特徴とする、請求項1の複合絶縁体。
【請求項9】
前記ドーパントが、前記ロッドの外面と、前記第1末端取付具および前記第2末端取付具との間に配されることを特徴とする、請求項8の複合絶縁体。
【請求項10】
前記ドーパントが、前記ロッドを含むグラスファイバー基質全体に渡って配されることを特徴とする、請求項1の複合絶縁体。
【請求項11】
紫外線検出手段、赤外線検出手段、目視検査手段、レーザー放射励起蛍光手段、レーザー放射励起吸収手段、または超スペクトラム画像化検出手段から成るグループから選ばれる工程によって、前記ドーパントが検出可能となることを特徴とする、請求項1の複合絶縁体。
【請求項12】
電力伝送線を、支持塔から絶縁するための絶縁体であって、
第1末端と第2末端を有するファイバーグラスロッド;
該ロッドの外面に巻きつけられるゴム性筐体;
該筐体と該ロッドの間に配される、油溶性染料を含む化学的ドーパントを含み、該ドーパントは、水分が該筐体に浸透し、該ロッドに接触することを可能とする透過通路から滲み出し、透過通路における水分の存在によってもたらされる濃度勾配によって駆動される移動パターンに従って、該筐体外面の一部にそって移動するように構成される、
ことを特徴とする、前記絶縁体。
【請求項13】
前記油溶性染料は、ミセル構造の内部に封入され、移動パターンは、ミセルの移動によってさらに駆動されることを特徴とする、請求項12の絶縁体。
【請求項14】
前記油溶性染料は、前記ゴム性筐体を染めるためのシロキサン修飾染料を含み、前記移動パターンは、前記ドーパントの前記筐体に広がる分散によってさらに駆動されることを特徴とする、請求項12の複合絶縁体。
【請求項15】
前記油溶性染料が、ナノ粒子可能化材料を含むことを特徴とする、請求項12の複合絶縁体。
【請求項16】
前記油溶性染料は、前記ドーパントが活性化されると、指定の波長において放射に感度を持ち、前記透過通路から滲み出ることを特徴とする、請求項12の絶縁体。
【請求項17】
絶縁体内部のロッドが水分に暴露されることによる絶縁体故障の可能性の早期検出を実現するための方法であって、
該ロッドの周囲にシリコン筐体を付属させること;
該ロッドの外面および該筐体の内面近傍に油溶性染料を含むドーパントを挿入することを含み、該ドーパントは、水分が該筐体に浸透し、該ロッドに接触することを可能とする透過通路から滲み出し、外面の可視部にそって分散し、外面の可視部に、該筐体における該透過通路の存在を示す、半永久的で、認識可能な染色痕を残すように構成され、該ドーパント内の該染料は、該絶縁体から指定の距離において認識可能である、前記方法。
【請求項18】
該染料は、ミセル構造内封入染料、シロキサン修飾染料、酸反応性染料システム、または、ナノ粒子可能化材料によって処方されるインディケータの内の一つを含むことを特徴とする、請求項17の方法。
【請求項19】
前記ドーパントは、前記ロッド表面における水の存在下に前記筐体の外面に向かって移動するように構成され、前記ドーパントの移動は、毛管力、浸透圧勾配、濃度勾配、染料拡散、およびミセル移動から事実上成るグループから選ばれる手段によって駆動されることを特徴とする、請求項18の方法。
【請求項20】
前記染料は、指定の波長において伝達された放射を反射するように構成される、請求項19の方法。
【請求項21】
紫外線検出手段、赤外線検出手段、目視検査手段、レーザー放射励起蛍光手段、レーザー放射励起吸収手段、または超スペクトラム画像化検出手段から成るグループから選ばれる工程によって、前記ドーパントが検出可能となることを特徴とする、請求項20の方法。
【請求項1】
電力伝送ケーブルを支えるための複合絶縁体であって、
外面と、第1末端および第2末端を有するロッド;
内面と外面とを有し、該ロッドを取り囲む筐体であって、該筐体の内面は、該ロッドの外面の少なくとも一部に近接する筐体;
該ロッドの外面、および該筐体の内面の近傍に配される油溶性ドーパントであって、染料を含み、水の存在下に分散するように処方され、該ドーパントは水分に暴露されると、筐体内部の透過通路を経由して筐体の外面に移動し、外面の可視部分にそって分散し、外面の可視部分に、筐体に対する水浸入の存在を示す、半永久的および認識可能な染色痕を残すように構成される油溶性ドーパント;
を含む前記複合絶縁体。
【請求項2】
ロッドはファイバーグラスロッドを含み、前記筐体はシリコン性ゴムから造られることを特徴とする、請求項1の複合絶縁体。
【請求項3】
前記染料はミセル構造の中に封入され、前記筐体外面に向かう前記ドーパントの移動は、ミセルの移動を通じて起こることを特徴とする、請求項2の複合絶縁体。
【請求項4】
前記染料は、シリコンゴムを染めるためのシロキサン修飾染料を含むことを特徴とする、請求項2の複合絶縁体。
【請求項5】
前記染料は、前記ドーパントを前記筐体外面に移動させるための輸送流体として、シリコン油、トルエン、または非水性溶媒を含むことを特徴とする、請求項2の複合絶縁体。
【請求項6】
前記染料は、前記筐体外面を染めるためのナノ粒子可能化材料を含むことを特徴とする、請求項2の複合絶縁体。
【請求項7】
前記化学的ドーパントが、前記ロッドの外面にそって配されることを特徴とする、請求項1の複合絶縁体。
【請求項8】
前記筐体の第1末端と第1末端取付具の間に設置される第1ゴムシール;および、
前記筐体の第2末端と第2末端取付具の間に設置される第2ゴムシール;
をさらに含むことを特徴とする、請求項1の複合絶縁体。
【請求項9】
前記ドーパントが、前記ロッドの外面と、前記第1末端取付具および前記第2末端取付具との間に配されることを特徴とする、請求項8の複合絶縁体。
【請求項10】
前記ドーパントが、前記ロッドを含むグラスファイバー基質全体に渡って配されることを特徴とする、請求項1の複合絶縁体。
【請求項11】
紫外線検出手段、赤外線検出手段、目視検査手段、レーザー放射励起蛍光手段、レーザー放射励起吸収手段、または超スペクトラム画像化検出手段から成るグループから選ばれる工程によって、前記ドーパントが検出可能となることを特徴とする、請求項1の複合絶縁体。
【請求項12】
電力伝送線を、支持塔から絶縁するための絶縁体であって、
第1末端と第2末端を有するファイバーグラスロッド;
該ロッドの外面に巻きつけられるゴム性筐体;
該筐体と該ロッドの間に配される、油溶性染料を含む化学的ドーパントを含み、該ドーパントは、水分が該筐体に浸透し、該ロッドに接触することを可能とする透過通路から滲み出し、透過通路における水分の存在によってもたらされる濃度勾配によって駆動される移動パターンに従って、該筐体外面の一部にそって移動するように構成される、
ことを特徴とする、前記絶縁体。
【請求項13】
前記油溶性染料は、ミセル構造の内部に封入され、移動パターンは、ミセルの移動によってさらに駆動されることを特徴とする、請求項12の絶縁体。
【請求項14】
前記油溶性染料は、前記ゴム性筐体を染めるためのシロキサン修飾染料を含み、前記移動パターンは、前記ドーパントの前記筐体に広がる分散によってさらに駆動されることを特徴とする、請求項12の複合絶縁体。
【請求項15】
前記油溶性染料が、ナノ粒子可能化材料を含むことを特徴とする、請求項12の複合絶縁体。
【請求項16】
前記油溶性染料は、前記ドーパントが活性化されると、指定の波長において放射に感度を持ち、前記透過通路から滲み出ることを特徴とする、請求項12の絶縁体。
【請求項17】
絶縁体内部のロッドが水分に暴露されることによる絶縁体故障の可能性の早期検出を実現するための方法であって、
該ロッドの周囲にシリコン筐体を付属させること;
該ロッドの外面および該筐体の内面近傍に油溶性染料を含むドーパントを挿入することを含み、該ドーパントは、水分が該筐体に浸透し、該ロッドに接触することを可能とする透過通路から滲み出し、外面の可視部にそって分散し、外面の可視部に、該筐体における該透過通路の存在を示す、半永久的で、認識可能な染色痕を残すように構成され、該ドーパント内の該染料は、該絶縁体から指定の距離において認識可能である、前記方法。
【請求項18】
該染料は、ミセル構造内封入染料、シロキサン修飾染料、酸反応性染料システム、または、ナノ粒子可能化材料によって処方されるインディケータの内の一つを含むことを特徴とする、請求項17の方法。
【請求項19】
前記ドーパントは、前記ロッド表面における水の存在下に前記筐体の外面に向かって移動するように構成され、前記ドーパントの移動は、毛管力、浸透圧勾配、濃度勾配、染料拡散、およびミセル移動から事実上成るグループから選ばれる手段によって駆動されることを特徴とする、請求項18の方法。
【請求項20】
前記染料は、指定の波長において伝達された放射を反射するように構成される、請求項19の方法。
【請求項21】
紫外線検出手段、赤外線検出手段、目視検査手段、レーザー放射励起蛍光手段、レーザー放射励起吸収手段、または超スペクトラム画像化検出手段から成るグループから選ばれる工程によって、前記ドーパントが検出可能となることを特徴とする、請求項20の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図9A】
【図9B】
【公表番号】特表2008−536264(P2008−536264A)
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−504072(P2008−504072)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/008218
【国際公開番号】WO2006/107493
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(504361322)エレクトリック パワー リサーチ インスティテュート (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/008218
【国際公開番号】WO2006/107493
【国際公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(504361322)エレクトリック パワー リサーチ インスティテュート (2)
【Fターム(参考)】
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