ポリマー間の相互作用の機構を使用する、ポリマー性接着組成物の調製方法
吸水性感圧接着性組成物で用いる成分の選択方法を提供する。本方法は、フィルム形成ポリマーを選択する工程、選択されたフィルム形成ポリマーとラダー様高分子間複合体を形成することができるラダー様非共有結合性架橋剤、および少なくとも1つの選択されたフィルム形成ポリマーまたは選択されたラダー様非共有結合性架橋剤と骨組み(carcass)様複合体を形成することができる骨組み様非共有結合性架橋剤を選択する工程を含む。接着性ヒドロゲルは、膨潤状態で高い接着性を示し、従来の感圧接着剤と生体接着剤との間の間隙を埋める。得られた組成物の調製方法および使用方法も開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、ポリマー組成物に関する。より詳細には、本発明は、ヒドロゲルおよび接着性組成物、前記組成物の製造のための材料を選択する方法、薬物送達系(例えば、局所、経皮、経粘膜、イオン泳動)、医学的皮膚被覆、創傷包帯剤および創傷治癒製品、ならびに生体用電極などの治療への適用ならびに歯漂白(tooth whitening)製品などの薬用化粧品への適用のためのこれらの組成物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
種々の型の帯具および創傷包帯剤が公知であり、創傷および熱傷の保護に使用されている。典型的には、創傷包帯剤は、創傷滲出液を除去して創傷を乾燥させ、治癒を促進するように吸収材料で作製されている。創傷包帯剤はまた、抗生物質または局所麻酔薬などの1つまたは複数の薬理学的活性成分(active agent)を含み得る。一般的に使用されている創傷包帯剤には、ガーゼおよび綿のパッドなどの繊維性材料が含まれ、これらは、吸収性があるという点で有利であるが、繊維が創傷または新規に形成された組織に接着し、除去時に創傷を傷付け得ることが問題である。他の創傷包帯剤は、泡およびスポンジを使用して調製されているが、これらの材料の吸収性は制限されることが多い。さらに、このような創傷包帯剤は、それ自体に接着性がないので、接着テープが必要である。
【0003】
親水性感圧接着剤(「PSA」)は、種々の医薬品および化粧品(局所および経皮薬物送達系、創傷包帯剤、フェイスマスク、口腔および粘膜投与のためにデザインされた生体接着フィルム、ならびに歯漂白ストリップなど)で使用されている。親水性PSAの一般的な顕著な特徴は、典型的には、湿った生体基材に接着することであり、従来の疎水性(ゴムベースの)PSAは、典型的には、湿った場合にその接着特性が失われる。
【0004】
PSAの接着特性は、製品がどのようにしてどこで使用されるかによって変化する。経皮薬物送達および局所適用のために、例えば、接着パッチは、使用直後はタックが高いが、このようなタックが全適用期(1日〜1週間)に維持されなければならない。口腔パッチおよび歯科用ストリップ(tooth strip)のために、弾性ポリマーフィルムを使用することがしばしば望ましく、この弾性ポリマーフィルムは、乾燥表面に接着しないが、水和した柔軟な粘膜表面および/または湿った固形組織(歯など)の表面に適用した場合に高いタック性を示す。創傷包帯剤および他の種々の目的のために、パッチ除去時の皮膚の損傷を回避するために、大量の水での膨潤下でその接着性を失う水溶性接着剤または不溶性ヒドロゲル接着剤のいずれかが好ましい。フェイスマスクおよびいくつかの歯漂白製品は、水溶液またはエタノール−水溶液の形態の親水性ポリマー組成物を使用するのが最良であり、この親水性ポリマー組成物は、表面に置いた後に乾燥し、それにより、下にある組織表面に接着するが、他の表面に接着しない不溶性ポリマーフィルムを形成する。
【0005】
医薬品および化粧品で有用なポリマー材料の接着特性を有効に調整するために、接着特性の基本となる機構の分子的洞察に基づいてデザイン方法が開発されている。最近確立されたように、感圧接着は、分子レベルで、2つの明らかに両立しない分子構造型のカップリングに起因する。これにより、強い凝集相互作用エネルギーと増強された自由体積との間に微妙なバランス(fine balance)が存在することが明らかとなっている。例えば、非特許文献1;非特許文献2;および非特許文献3を参照のこと。
【0006】
PSAポリマーの分子構造の「自由体積」特性により、PSA材料が巨視的レベルでの高いタックおよび液体様流動性を示し、それにより、接着剤固化(adhesive bond)が急速に起こる。「凝集相互作用エネルギー」または「凝集エネルギー」特性は、PSAポリマーの凝集強さを示し、一連の接着剤接合の不成立(failure)時の剥離エネルギー(detaching energy)の損失を示す。この所見に基づいて、新規の親水性接着剤を得るための一般的な方法は、非接着性親水性高分子量ポリマーを適切な単鎖可塑剤と物理的に混合する工程を含む、Feldstein et al.に付与された特許文献1に記載されている。
【0007】
種々のPSAでは、異なる分子構造によって適切な凝集エネルギー量および自由体積が得られ、それにより、ポリマー材料の接着特性が定義される。例えば、アクリル系PSAでは、その強い凝集相互作用エネルギーは側鎖中のアルキルラジカルの相互疎水性引力の結果であるのに対して、巨大な自由体積は、側鎖中の負電荷のカルボキシル基または大量のイソアルキルラジカルの静電反発力に起因する。合成ゴムでは、巨大な自由体積は、高用量且つ低密度の粘着樹脂分子の添加によって得られる。親水性接着剤では、特許文献2に記載のように、高分子量のポリビニルラクタム(すなわち、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)(「PVP」)またはポリビニルカプロラクタム(「PVCap」))を単鎖ポリエチレングリコール(「PEG」)とブレンドした場合、高い凝集強度は、例えば、PVPのカルボニル基とPEGの相補末端ヒドロキシルとの間の水素結合に起因する一方で、巨大な自由体積は、適切な長さおよび可動性のPEG鎖の両末端の反応基の位置に起因する。
【0008】
ポリマー材料の接着特性を担う高凝集エネルギーと巨大な自由体積との間の適切なバランスは、種々のPSA特性の評価によって達成される。例えば、凝集エネルギーと自由体積との比によって、ポリマーのガラス転移温度(Tg)および弾性率(E)の値が定義される。凝集エネルギーがより高くなり自由体積がより低くなるほどTgおよびEの値も高くなる。全PSAが約−55℃〜−30℃の範囲のTgおよび約1〜105PaのEを示すことが十分に認識されている。
【0009】
特許文献3では、親水性ポリマーおよび可塑剤は、互いに水素結合または静電結合することができ、接着強度、凝集強度、および親水性などの接着性組成物の重要な特徴を至適化する比で存在する。可塑剤は、両末端に相補反応性官能基を有し、両末端基が親水性ポリマー中で相補官能基と相互作用する場合、可塑剤は、親水性ポリマーのより長い鎖の間の非共有結合性架橋剤として作用する。その際に、可塑剤は、PSAポリマーブレンドの凝集強さが増強された可塑化効果と組み合わされる。新規の親水性PSAの調整のためのこの分子デザイン方法には、長鎖高Tg親水性ポリマーの接着能力および最良に接着する親水性ポリマーと可塑剤(凝集増強剤(cohesive enhancer))との比が記載されている。
【0010】
乾燥時、特許文献4に記載の接着剤(例えば、高分子量PVPと200〜600g/molの分子量範囲のオリゴマーPEGとのブレンド)は、乾燥表面に対する接着性が比較的低い。基材表面を湿らせるか、接着剤が吸水した場合に接着性が増加する。接着剤が5〜10%の吸着水(absorbed water)を含む場合に接着性が最大になる。これは、通常、相対湿度が50%の大気に接着剤が曝露された場合にそうである。さらに、水と直接接触する場合、接着剤は溶解する。しかし、これらの接着剤は、共有結合性架橋を含まないので、膨潤性を示すが、水不溶性の接着剤を必要とする用途に適切ではない。特に、これらの先行技術の接着剤は、さらに一層高い水和レベル(例えば、15%およびそれを超える吸着水)でより高い接着性を示すことが望ましい場合にあまり有用ではない。
【0011】
したがって、先行技術は、凝集強度、接着強度、タック、弾性、および水膨潤性に関して調整することができるポリマーおよびヒドロゲル組成物を開示しているが、分子レベルで凝集相互作用エネルギーと自由体積との釣り合わせに注目した新規の親水性PSAを調製するための分子デザイン法を開発することが依然として望ましい。
【0012】
これらの問題を解決するために、本発明は、可溶性ポリマーのブレンドによる水不溶性フィルム形成組成物を得る方法に関する。これは過去に試みられているが(例えば、Chambers et al.に付与された特許文献5およびLorenz et al.に付与された特許文献6(カルボキシル含有ポリマーと多価アルコールおよびポリアミンとの混合)およびShirai et al.に付与された特許文献7およびZajaczkowskiに付与された特許文献8(ポリアクリル酸「PAA」の架橋またはアクリル酸と2価および3価の金属(Ca2+、Al3+)の塩とのコポリマー))、これらの手順は全て混合技術による非接着性吸水剤の生成に関する。
【特許文献1】米国特許第6,576,712号明細書
【特許文献2】米国特許第6,576,712号明細書
【特許文献3】米国特許第6,576,712号明細書
【特許文献4】米国特許第6,576,712号明細書
【特許文献5】米国特許第5,597,873号明細書
【特許文献6】米国特許第5,306,504号明細書
【特許文献7】米国特許第4,771,105号明細書
【特許文献8】米国特許第5,726,250号明細書
【非特許文献1】Feldstein et al.Polym.Mater.Sci.Eng.(1999)81:465−466
【非特許文献2】Feldstein et al.,General approach to the molecular design of hydrophilic pressure−sensitive adhesives,Proceed.25th Annual Meeting Adhesion Soc.and 2nd World Congress on Adhesion and Relative Phenomena,February 2002,Orlando,FL,vol.l(Oral Presentations),p.292−294
【非特許文献3】Chalykh et al.J.Adhesion(2002)78(8):667−694
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の開示
本発明の1つの態様は、接着性組成物であって、水膨潤性不水溶性ポリマーおよび水溶性ポリマーから選択されるフィルム形成ポリマーと、骨格の反復単位中に相補反応性官能基を含み、且つ前記フィルム形成ポリマーとラダー様高分子間複合体を形成することができるラダー様非共有結合性架橋剤と、前記相補反応性官能基をその末端に含み、且つ少なくとも1つのフィルム形成ポリマーまたはラダー様非共有結合性架橋剤と骨組み(carcass)様複合体を形成することができる骨組み様非共有結合性架橋剤と、前記フィルム形成ポリマーの量がラダー様非共有結合性架橋剤の量または骨組み様非共有結合性架橋剤の量よりも多いこととを含む、接着性組成物に関する。
【0014】
本発明の別の態様は、接着性組成物で用いるポリマー成分を選択する方法であって、(a)フィルム形成ポリマーを選択する工程と、(b)骨格の反復単位中に相補反応性官能基を含み、且つ選択された前記フィルム形成ポリマーとラダー様高分子間複合体を形成することができるラダー様非共有結合性架橋剤を選択する工程と、(c)相補反応性官能基をその末端に含み、且つ少なくとも1つの選択された前記フィルム形成ポリマーまたは選択された前記ラダー様非共有結合性架橋剤と骨組み様複合体を形成することができる骨組み様非共有結合性架橋剤を選択する工程と、ここで、前記フィルム形成ポリマーの量が前記ラダー様非共有結合性架橋剤の量または前記骨組み様非共有結合性架橋剤の量よりも多いこととを含む方法に関する。
【0015】
本発明の別の態様は、接着性組成物を製造する方法であって、(a)(i)フィルム形成ポリマーを選択する工程と、(ii)骨格の反復単位中に相補反応性官能基を含み、且つ選択された前記フィルム形成ポリマーとラダー様高分子間複合体を形成することができるラダー様非共有結合性架橋剤を選択する工程と、(iii)相補反応性官能基をその末端に含み、且つ少なくとも1つの選択された前記フィルム形成ポリマーまたは選択された前記ラダー様非共有結合性架橋剤と骨組み様複合体を形成することができる骨組み様非共有結合性架橋剤を選択する工程と、ここで、前記フィルム形成ポリマーの量が前記ラダー様非共有結合性架橋剤の量または前記骨組み様非共有結合性架橋剤の量よりも多いことと、(b)前記フィルム形成ポリマー、前記ラダー様非共有結合性架橋剤、および前記骨組み様非共有結合性架橋剤を混合する工程と、(c)溶融押出成形または溶液流延法によって接着性組成物を形成する工程とを含む方法に関する。
【0016】
本発明の方法によって生成された接着性組成物は、先行技術と比較して多数の有意な利点を提供する。特に、これらの組成物は、先行技術を超える1つまたは複数の以下の利点を提供する:取り扱いが容易なこと、接着、吸収、透明性、および膨潤性などの性質を調節および至適化することができるように製造中に容易に修飾されること、組成物が湿るまで粘着性を示さないように水分の存在下でタックが増減するように処方することができること、活性成分が含まれる場合、粘膜面上への(例えば、使用者の口内への)組成物からのその漏れが最小であること、使用者が歯または口腔表面からヒドロゲル組成物を除去することなく漂白範囲を見ることができるように半透明に加工することができること、歯茎または口内の粘膜の損傷を最小にすること、快適且つ穏やかに温めることができること、皮膚、歯、または粘膜面から容易に除去され、且つ残渣を残さないこと、装着または作用の持続時間を延長することができること、および種々の活性成分を徐放および制御放出することができること。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
I.定義および命名法
本発明を詳述する前に、他で示さない限り、本発明は特定のヒドロゲル材料または製造過程に制限されず、制限されないものとして変化し得ると理解すべきである。本明細書中で使用される専門用語が特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本発明を制限することを意図しないとも理解すべきである。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上他で明確に示されない限り、複数形を含むことに留意しなければならない。したがって、例えば、「親水性ポリマー(a hydrophilic polymer)」には、単一の親水性ポリマーだけでなく、2つまたはそれ以上の異なる親水性ポリマーの組み合わせまたは混合物も含まれ、「可塑剤(a plasticizer)」には、単一の可塑剤と同様に2つまたはそれ以上の異なる可塑剤の組み合わせまたは混合物も含まれる。
【0018】
本発明の説明および主張では、下記の定義にしたがって、以下の専門用語を使用する。
【0019】
「疎水性」および「親水性」ポリマーの定義は、100%の相対湿度(rh)でのポリマーによって吸収される水蒸気量に基づく。この分類にしたがって、疎水性ポリマーは、100%の相対湿度で1重量%の水しか吸収せず、中程度の親水性ポリマーは1から10重量%の水を吸収し、親水性ポリマーは10重量%を超える水を吸収することができ、吸湿性ポリマーは20重量%を超える水を吸収する。「水膨潤性」ポリマーは、水媒体に浸漬された場合にその重量の少なくとも25重量%、好ましくは少なくとも50重量%を超える量の水を吸収するポリマーである。
【0020】
用語「架橋された」は、本明細書中で、共有結合または非共有結合のいずれかによって起こる分子内および/または分子間架橋を含む組成物をいう。「非共有」結合には、水素結合および静電(イオン)結合の両方が含まれる。
【0021】
用語「ポリマー」には、ホモポリマー(直鎖および分枝ポリマー構造)が含まれ、架橋ポリマーおよびコポリマー(架橋されていても架橋されていなくてもよい)(それにより、ブロックコポリマー、交互コポリマー、およびランダムコポリマーなども含まれる)も含まれる。本明細書中で「オリゴマー」と呼ばれる化合物は、分子量が約1000Da未満、好ましくは約800Da未満のポリマーである。
【0022】
用語「水不溶性」は、水への溶解度が5重量%未満、好ましくは3重量%未満、より好ましくは1重量%未満(20℃の水中で測定)のポリマー、化合物、または組成物をいう。
【0023】
用語「ヒドロゲル」は、弾性ゲルを形成するための相当量の水を吸収することができる水膨潤性ポリマーマトリクスをいうために従来の意味で使用され、ここで、「マトリクス」は、共有結合性架橋または非共有結合性架橋によって互いに保持された高分子の三次元網目構造である。水性環境下に置かれた場合、乾燥ヒドロゲルは架橋の程度によって許容される範囲まで膨潤する。
【0024】
用語「ヒドロゲル組成物」は、ヒドロゲルを含むか、完全にヒドロゲルから構成される組成物をいう。そのようなものとして、「ヒドロゲル組成物」には、ヒドロゲル自体だけでなく、ヒドロゲルおよび1つまたは複数の非ヒドロゲル成分を含む組成物または疎水性相中に分散した親水性成分(ヒドロゲルを含み得るかヒドロゲルであり得る)を含む組成物(例えば、浸水コロイド)が含まれる。
【0025】
用語「タック」および「タック性を示す」は、性質を示す。しかし、本明細書中で使用される、用語「実質的に非タック性」、「わずかにタック性を示す」、および「タック性を示す」を、PKIタック測定、TRBTタック測定、またはPSAタック測定/Polyken Probe(Solutia,Inc.)で得た値を使用して定量することができる。用語「実質的に非タック性」は、タック値が約25g−cm/秒未満のヒドロゲル組成物を意味し、「わずかなタック性」は、タック値が約25g−cm/秒〜約100g−cm/秒のヒドロゲル組成物を意味し、「タック」は、タック値が少なくとも100g−cm/秒のヒドロゲル組成物を意味する。
【0026】
用語「感圧接着剤」(PSA)は、短期間(例えば、1〜5秒間)の非常にわずかな外圧の印加で任意の表面に強力に接着するポリマー材料に関する。
【0027】
用語「生体接着剤」は、粘膜組織などの高度に水和した生体表面に対して感圧接着特性を示すヒドロゲルを意味する。
【0028】
用語「複合体」または「高分子間複合体」は、その高分子間の好ましい相互作用の結果として形成される2つまたはそれを超える相補ポリマーの高分子の会合をいう。一般に、フィルム形成ポリマーと、ラダー様架橋剤と、骨組み様架橋剤との間のポリマー間複合体は、水素結合、静電結合、イオン結合、またはこれらの組み合わせによって形成される。
【0029】
用語「ラダー様」は、ポリマー骨格の反復単位中の相補反応性官能基間で特異的相互作用が起こる、相補高分子が会合した複合体または複合体形成機構と定義する。エントロピーに関する理由のために、官能基は個別ではなく協力的様式で結合し、それにより、比較的短く且つ強固な結合を有する配列が形成される。図2に示したこの複合体の概略的構造は、ラダーに似ている。
【0030】
用語「骨組み様」は、より長いポリマー鎖の骨格の反復単位中の相補官能基とより短いオリゴマー鎖の両末端の反応基との間に特異的相互作用が生じる相補高分子とオリゴマー鎖とが会合した複合体または複合体形成機構と定義する。ラダー様複合体と対照的に、用語「骨組み様」は、図1に概略的に示すように、より長いポリマー鎖の間の架橋が非常に長く、この方法によって形成された網目構造の密度がはるかに低いことを強調する。
【0031】
ラダー様複合体および骨組み様複合体は、相補高分子中の反応基の間の特異的相互作用によって架橋し、それにより、「網目構造」を示す。本発明の文脈では、用語「網目構造」を、用語「複合体」と交換可能に使用するが、より詳細には、図3に概略的に示す高分子間複合体の超分子構造をいう。
【0032】
用語「活性成分」、「薬学的活性成分」、および「薬物」を、所望の薬理学的効果または生理学的効果を引き起こし、且つ治療的、予防的、または美容的に有効な薬剤を含む化学物質または化合物をいうために本明細書中で交換可能に使用する。この用語は、本明細書中に特に記載の活性成分の薬学的に許容可能な、薬理学的に活性な誘導体およびアナログ(塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝産物、包接複合体、およびアナログなどが含まれるが、これらに限定されない)も含む。用語「活性成分」、「薬学的活性成分」、および「薬物」を使用する場合、活性成分自体ならびに薬学的に許容可能な、薬理学的に活性な塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝産物、包接複合体、およびアナログなどが含まれると理解すべきである。
【0033】
用語、薬用化粧品活性成分の「有効量」または「薬用化粧品的(cosmeceutically)有効量」は、非毒性であるが、所望の美容的効果を得るのに十分な薬用化粧品的活性成分の量を意味する。用語、薬物または薬理学的活性成分の「有効量」または「治療有効量」は、非毒性であるが、所望の治療効果を得るのに十分な薬物または薬剤の量を意味することを意図する。「有効な」量は、被験体、個体の年齢および一般的症状、および特定の活性成分などによって変化する。したがって、正確な「有効量」を特定することが常に可能というわけではない。しかし、当業者は、任意の各症例に適切な「有効な」量を、日常的な実験を使用して決定することができる。さらに、濃度が治療に有効な範囲内の量の活性成分を送達するために処方物を迅速に適用するのに十分な範囲内である限り、本発明の組成物または投薬形態に組み込まれる活性成分の正確な「有効」量は重要ではない。
【0034】
用語「経皮」薬物送達は、薬物が皮膚組織を通過して個体の血流に入るような個体の皮膚または粘膜への活性成分の投与を意味する。他で示さない限り、「経皮」は、「経粘膜」薬物投与(すなわち、薬物が粘膜組織を通過して個体の血流に入るような個体の粘膜(例えば、舌下、口腔、膣、直腸、尿道)表面への薬物の投与)を含むことを意図する。
【0035】
用語「局所投与」は、皮膚または粘膜などの体表への活性成分の送達(例えば、種々の皮膚障害の防止または治療における局所薬物投与、化粧品(保湿剤、マスク、日焼け止め剤など)の塗布など)を意味するためにその従来の意味で使用される。経皮投与と対照的に、局所投与は、全身効果よりもむしろ局所効果がある。
【0036】
用語「表面」または「体表」を、ヒトの身体または身体開口部上に存在する任意の表面をいうために使用する。したがって、「体表」には、例として、歯、皮膚、または粘膜組織(粘膜内層を有する体腔の内面が含まれる)が含まれる。他で示さない限り、本明細書中で使用される、用語「皮膚」は、粘膜組織を含む(逆の場合も同様)と解釈すべきである。同様に、用語「経皮」(「経皮薬物投与」および「経皮薬物送達系」など)を本明細書中で使用する場合、明確に区別しない限り、「経皮」および「局所」への投与および系は共に同様であることを意図すると理解すべきである。
【0037】
II.接着性組成物−主要な組成物
溶液の裏打ち層(backing layer)への成形およびその後の乾燥、外圧、または押し出し手段の際に均一なフィルムを形成することができる水膨潤性親水性接着性組成物(接着性ヒドロゲル)を得ることが望ましい。好ましくは、このような組成物も水不溶性である。フィルム形成能力は、ブレンドが共有結合性架橋を含まない場合に最適である。組成物が不混和性または部分的混和性を示す場合に非ブレンド成分の性質の間でブレンドの性質が典型的には中間であるので、特異的ポリマーのブレンドにより、特別に調整した性質を有する複合物を得るための都合の良い方法が得られる。水不溶性の複合物を作製するために、水不溶性材料を、通常、水溶性材料と混合する。しかし、これを行う場合、接着を好まない相分離がしばしば起こり得る。さらに、ブレンド成分の不溶性が、ブレンド調製手順(しばしば、共通の溶媒への全成分の溶解およびその後の溶液の成形および乾燥を含む)を妨げ得る。
【0038】
各成分の性質が新規且つ非典型的なポリマー複合材料の調製には、高度な技術が必要である。各ブレンド成分が互いに有利に強く相互作用することができる場合、この困難を解決することができる。典型的には、このような相互作用は、水素結合、静電結合、またはイオン結合に起因する。この場合、2つまたはそれを超える可溶性ポリマーの混合により、図2に概略的に示すように、膨潤性を示すが、不溶性を示すか部分的に溶解するラダー様複合体が得られる。
【0039】
これらの問題を解決するために、本発明は、可溶性ポリマーのブレンド、詳細には、親水性ポリマーと水素結合、静電結合、またはイオン結合することができる相補高分子とのブレンドによる水不溶性フィルム形成組成物を得る方法に関する。
【0040】
少なくとも1つのブレンド成分はフィルム形成ポリマーであり、少なくとも1つのブレンド成分はフィルム形成ポリマーのラダー様非共有結合性架橋剤であり、少なくとも1つのブレンド成分はフィルム形成ポリマーの骨組み様非共有結合性架橋剤である。本発明の要は、フィルム形成ポリマーがいずれかの架橋剤よりも高濃度で存在するということである。この濃度は、フィルム形成の特徴を決定する要因である。したがって、フィルム形成ポリマーまたはラダー様非共有結合性架橋剤のいずれかとして適切な材料が存在し得ると同時に、組成物におけるその機能および役割は、組成物中に存在する材料の量によって決定される。
【0041】
例えば、カルボキシルプロトン供与性官能基を保有するアクリレートポリマーなどのポリ酸またはヒドロキシルプロトン供与性官能基を保有するポリオールおよびポリ(N−ビニルラクタム)またはポリアミンなどのプロトン受容性ポリマーは、フィルム形成ポリマーまたはラダー様非共有結合性架橋剤としての使用に適している。ポリ(N−ビニルラクタム)の量より大量のアクリレートポリマーまたは他のプロトン供与性ポリマーを有する組成物では、アクリレートポリマーがフィルム形成ポリマーとしての機能を果たし、ポリ(N−ビニルラクタム)、ポリアミン、または別のプロトン受容性ポリマーがラダー様架橋剤としての機能を果たす。同様に、アクリレートポリマーの量より大量のポリ(N−ビニルラクタム)またはポリアミンを有する組成物では、ポリ(N−ビニルラクタム)またはポリアミンがフィルム形成ポリマーとしての機能を果たし、アクリレートポリマーがラダー様架橋剤としての機能を果たす。
【0042】
したがって、本発明の1つの実施形態は、接着性組成物で用いるポリマー成分を選択する方法である。本方法は、第1に、フィルム形成ポリマーを選択する工程を含む。次いで、(1)骨格の反復単位中に相補反応性官能基を含み、且つ(2)選択されたフィルム形成ポリマーとラダー様高分子間複合体を形成することができるラダー様非共有結合性架橋剤を選択する。最後に、(1)相補反応性官能基をその末端に含み、且つ(2)少なくとも1つの選択されたフィルム形成ポリマーまたは選択されたラダー様非共有結合性架橋剤と骨組み様複合体を形成することができる骨組み様非共有結合性架橋剤を選択する。骨組み様非共有結合性架橋剤は、好ましくは、フィルム形成ポリマーおよびラダー様非共有結合性架橋剤の両方と適合するか少なくとも部分的に適合する。本方法は、上記材料選択だけでなく、材料の使用量の選択も含む。特に、フィルム形成ポリマーの量は、ラダー様非共有結合性架橋剤の量または骨組み様非共有結合性架橋剤の量よりも多い。本方法はまた、1つまたは複数のさらなるラダー様非共有結合性架橋剤を選択する工程および/または1つまたは複数のさらなる骨組み様非共有結合性架橋剤を選択する工程を含み得る。このようなさらなる架橋剤を、第1の架橋剤と同一または類似の基準(すなわち、所望の複合体との相補性および形成能力)に基づいて選択する。
【0043】
典型的には、組成物は、フィルム形成ポリマーを含むが、1つを超えるラダー様架橋剤および/または1つを超える骨組み様架橋剤を含み得る。
【0044】
本発明の水不溶性フィルム形成組成物の接着プロフィールを、材料、構成比、およびブレンド中の水の量に基づいて調整することができる。水和に関して所望の接着プロフィールが得られるように、ラダー様架橋剤およびフィルム形成ポリマーの量との比を選択する。一般に、比較的弱い水素結合および巨大な自由体積によって比較的わずかに架橋する組成物は、乾燥状態で初期タックを示す。高分子間複合体中の網目構造の架橋度および凝集強度がいくつかの臨界値を超えて移動し、自由体積下で凝集エネルギーが支配し、このような組成物は、乾燥状態で通常は非タック性を示す。しかし、このブレンド中の自由体積が増加するにつれて、接着性が即座に出現する。親水性ポリマーには水が良好な可塑剤であるので、水の吸収によって接着性を改善することができる。静電結合は水素結合より非常に強いので、カルボキシル基を保有するポリマーブレンド中の凝集は、通常、水酸基を有するポリマーから作製された材料中の凝集より高い。このようなブレンド中の接着は、より高い吸着水濃度下で出現する。可動性ポリマーは、強固な鎖を有するポリマーよりも凝集性が高い。例として、フィルム形成ポリマーとしてのPVPブレンドについて、ラダー様架橋剤がOH基またはセルロースを保有する強固な鎖セルロースエステルである場合、組成物は、一般に、水(例えば、湿った表面)との接触前にタック性を示すが、組成物が湿気を吸収するにつれて段階的にタックが失われる。ラダー様架橋剤がアクリレートポリマーまたはカルボン酸基とのコポリマーである場合、一般に、水との接触前に実質的に非タック性であるが、湿った表面との接触の際にタック性を示すようになる。
A.フィルム形成ポリマー
フィルム形成ポリマーは、ラダー様架橋剤の量または骨組み様架橋剤の量よりも高濃度で接着性組成物中に存在し、フィル形成特性を示す。典型的には、フィルム形成ポリマーの量は組成物の約20〜95重量%の範囲である一方で、ラダー様架橋剤の量は約0.5〜40重量%の範囲であり、骨組み様架橋剤の量は約0.5〜60重量%の範囲である。下記のように、組成物のバランスは、可塑剤および粘着付与剤、水または他の溶媒、活性成分、およびpH調整剤などの成分で構成することができる。
【0045】
典型的には、フィルム形成ポリマーは比較的高分子量のポリマーであり、分子量は、約20,000〜3,000,000の範囲内、好ましくは100,000〜2,000,000の範囲内、より典型的には約500,000〜1,500,000の範囲である。
【0046】
フィルム形成ポリマーは、ラダー様架橋剤の官能反復単位および骨組み様架橋剤の末端官能基と水素結合または静電結合を形成することができる。適切なフィルム形成ポリマーには、例として、親水性ポリマー、水膨潤性水不溶性ポリマー、水溶性ポリマー、親水性モノマーと疎水性モノマーとのコポリマー、およびこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
1.親水性ポリマー
例示的合成親水性ポリマーには、例として、ポリ(ジアルキルアミノアルキルアクリレート)、ポリ(ジアルキルアミノアルキルメタクリレート)、ポリアミン、ポリビニルアミン、ポリ(アルキレンイミン)、ポリアクリル酸(PAA)およびポリメタクリル酸(PMA)などの置換および非置換アクリル酸ポリマーおよびメタクリル酸ポリマー、ポリマレイン酸、ポリスルホン酸、ポリ(N−ビニルラクタム)、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリ(ヒドロキシアルキルアクリレート)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(N−ビニルアクリルアミド)、ポリ(N−アルキルアクリルアミド)、これらのホモポリマー、コポリマー、および組み合わせ、ならびに他の親水性モノマー型(例えば、酢酸ビニル)とのコポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
例示的天然親水性ポリマーには、例として、水酸基およびカルボキシル基を含むセルロースの極性誘導体(カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートなど)、アルギン酸、キトサン、およびゼラチンが含まれるが、これらに限定されない。
【0049】
好ましい親水性ポリマー(フィルム形成ポリマー)は合成ポリマーであり、ポリ(ジアルキルアミノアルキルアクリレート)、ポリ(ジアルキルアミノアルキルメタクリレート)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリビニルアミン、ポリ(N−ビニルラクタム)(ポリ(N−ビニルピロリドン)(例えば、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン))、ポリ(N−ビニル−2−バレロラクタム)、およびポリ(N−ビニルカプロラクタム)(例えば、ポリ(N−ビニル−2−カプロラクタム))など)、ポリアルキレンオキシド(ポリエチレンオキシド(PEO)およびポリプロピレンオキシドなど)、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、およびポリ(ヒドロキシアルキルアクリレート)(ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート(ポリHEMA))、ポリ(ヒドロキシエチルアクリレート)など)、ならびにこれらのコポリマーが含まれる。
【0050】
他の適切な親水性ポリマーには、N−ビニルラクタムモノマー、カルボキシビニルモノマー、マレイン酸モノマー、ジアルキルアミノアルキルアクリレートモノマーもしくはジアルキルアミノアルキルメタクリレートモノマー、エチレンオキシドモノマー、ビニルエステルモノマー、カルボキシビニルエステルモノマー、ビニルアミドモノマー、および/またはヒドロキシビニルモノマーに由来する反復単位が含まれる。このようなポリマーには、例として、ポリビニルアミン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリ(N−ビニルラクタム)、ポリ(N−ビニルアクリルアミド)、ポリ(N−アルキルアクリルアミド)、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、およびポリビニルフェノールが含まれるが、これらに限定されない。
【0051】
本明細書中で有用なポリ(N−ビニルラクタム)は、好ましくは、ポリ(N−ビニルラクタム)コポリマーの総モノマー単位の大部分を示すN−ビニルラクタムモノマー単位とN−ビニルラクタムモノマー単位との非架橋ホモポリマーまたはコポリマーである。本発明と組み合わせて使用するのに好ましいポリ(N−ビニルラクタム)を、1つまたは複数の以下のN−ビニルラクタムモノマーの重合によって調製する:N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−バレロラクタム、およびN−ビニルカプロラクタム。N−ビニルラクタムモノマー単位で有用な非N−ビニルラクタムコモノマーの非限定的な例には、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸またはその塩、および酢酸ビニルが含まれる。
【0052】
ポリ(N−アルキルアクリルアミド)には、例として、ポリ(メタクリルアミド)およびポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)が含まれる。
【0053】
カルボキシビニルモノマーのポリマーを、典型的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、イタコン酸および無水物、1,2−ジカルボン酸(マレイン酸またはフマル酸など)、無水マレイン酸、またはこのクラスの範囲内の好ましい親水性ポリマー(ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸が含まれるが、ポリアクリル酸が最も好ましい)との混合物から形成する。
【0054】
本明細書中で好ましい親水性ポリマーは以下である:ポリ(N−ビニルラクタム)(特に、ポリ(N−ビニルピロリドン)(PVP)、およびポリ(N−ビニルカプロラクタム)(PVCap))、ポリ(N−ビニルアセトアミド)(特に、ポリアセトアミド自体)、カルボキシビニルモノマーのポリマー(特に、ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸)、ポリマレイン酸、ならびにそのコポリマーおよびブレンド。PVPおよびPVCapが特に好ましい。
【0055】
2.水膨潤性水不溶性ポリマー
例示的な水膨潤性水不溶性ポリマーには、例として、セルロースエステルなどのセルロース誘導体、アクリレートベースのポリマーまたはコポリマー、およびその組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。水膨潤性水不溶性ポリマーは、水溶液中に浸漬された場合に少なくともいくらかは膨潤することができるが、水不溶性である。このポリマーは、セルロースエステル(例えば、酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース(CAP)、酢酸酪酸セルロース(CAB)、プロピオン酸セルロース(CP)、酪酸セルロース(CB)、プロピオン酸酪酸セルロース(CPB)、二酢酸セルロース(CDA)、または三酢酸セルロース(CTA)など)から構成され得る。これらのセルロースエステルは、米国特許第1,698,049号、同第1,683,347号、同第1,880,808号、同第1,880,560号、同第1,984,147号、同第2,129,052号、および同第3,617,201号に記載されており、当該分野で公知の技術を使用して調製することができるか、購入することができる。本明細書中で適切な市販のセルロースエステルには、CA320、CA398、CAB381、CAB551、CAB553、CAP482、CAP504が含まれ、これらは全てEastman Chemical Company,Kingsport,Tenn.から利用可能である。このようなセルロースエステルは、典型的には、約10,000と約75,000との間の多数の平均分子量を有する。
【0056】
一般に、セルロースエステルは、セルロースとセルロースエステルモノマー単位との混合物を含み、例えば、市販の酢酸酪酸セルロースは、酢酸セルロースモノマー単位ならびに酪酸セルロースモノマー単位および非エステル化セルロースモノマー単位を含む一方で、酢酸プロピオン酸セルロースは、プロピオン酸セルロースなどのモノマー単位を含む。本明細書中の好ましいセルロースエステルは、以下に示すように、ブチリル、プロピオニル、アセチル、および非エステル化(OH)セルロース成分(content)を有する酢酸プロピオン酸セルロース組成物および酢酸酪酸セルロース組成物である。
【0057】
【表1】
好ましい分子量、ガラス転移温度(Tg)、および融点(Tm)も示す。また、適切なセルロースポリマーは、典型的には、25℃で0.5gのサンプルを含む100mlの重量比が60/40のフェノール/テトラクロロエタン溶液で測定した固有粘度(I.V.)が、約0.2〜約3.0dl/g、好ましくは約1〜約1.6dl/gである。溶媒成形(solvent casting)技術を使用して調製した場合、より高い凝集強度を得て、それにより、フィルム形成を容易にするように水膨潤性水不溶性ポリマーを選択すべきである(一般に、例えば、酢酸プロピオン酸セルロースは酢酸酪酸セルロースよりも凝集強度をより高く改良する傾向がある)。
【0058】
他のセルロース誘導体には、ヒドロキシアルキルセルロースモノマー単位またはカルボキシアルキルセルロースモノマー単位を含むセルロースポリマーが含まれる。
【0059】
他の好ましい水膨潤性水不溶性ポリマーは、一般に、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、および/または他のビニルモノマーから形成されたアクリレートベースのポリマーまたはコポリマーである。これらのうちのいくつかは、上記の親水性ポリマーにも分類される。適切なアクリレートポリマーは、Rohm Pharma(Germany)から商標「Eudragit」で市販されている。Eudragit(登録商標)シリーズのE、L、S、RL、RS、およびNEコポリマーは、有機溶媒に溶解した状態、水分散液、または乾燥粉末として市販されている。好ましいアクリレートポリマーは、メタクリル酸とメタクリル酸メチルとのコポリマー(Eudragit LおよびEudragitSシリーズのポリマーなど)である。特に好ましいこのようなコポリマーは、Eudragit L 30D−55およびEudragit L 100−55である(後者のコポリマーは水で再構成することができるEudragit L 30D−55の噴霧乾燥形態である)。Eudragit L 30D−55およびEudragit L 100−55コポリマーの分子量は約135,000Daであり、遊離カルボキシル基とエステル基との比は約1:1である。Eudragit L 100−55コポリマーは、一般に、pH5.5未満の水性流動物中で不溶性を示す。別の特に適切なメタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマーは、EudragitS 100であり、これは、遊離カルボキシル基とエステル基との比が約1:2であるという点でEudragit L 30D−55と異なる。EudragitS 100は、pH5.5未満で不溶性を示すが、Eudragit L 30D−55と異なり、pH5.5〜7.0の範囲の水性流動物にあまり溶解しない。このコポリマーは、pH7.0以上で溶解性を示す。pH6.0未満で不溶性を示す限り、Eudragit L 30D−55とEudragitS 100との間のpH依存性溶解プロフィールを有するEudragit L 100を使用することもできる。当業者は、Eudragit L 30D−55、L 100−55、L 100、およびS 100を類似のpH依存性可溶特性を有する他の許容可能なポリマーと置換することができることを認識する。他の適切なアクリレートポリマーは、BASF AG(Germany)から商標「Kollicoat」として市販されているメタクリル酸/アクリル酸エチルコポリマーである。例えば、Kollicoat MAEは、Eudragit L 100−55と同一の分子量を有する。
【0060】
水膨潤性水不溶性ポリマーがアクリル酸ポリマーまたはアクリレートポリマーである場合、可逆的に乾燥することができる(すなわち、水および任意の他の溶媒の除去後、乾燥ヒドロゲルを、水の添加によってその元の状態に再構成することができる)ヒドロゲルが得られる。さらに、アクリル酸/アクリレート水膨潤性ポリマーを使用して調製した親水性ヒドロゲルは、一般に、水との接触前は実質的に非タック性であるが、湿った表面との接触の際にタック性を示すようになる(歯の表面などの口腔内部などで見出される)。水との接触前に非タック性であるこの性質により、ヒドロゲルがタック性を示す前または同時に選択された表面上に位置づけるか再度位置づけることができる。例えば、一旦水和されると、ヒドロゲルはタック性を示すようになり、歯または粘膜表面などの表面に接着することができる。
【0061】
さらに、アクリレート含有組成物は、一般に、pH5.5〜6.0未満の水または他の水溶液中に組成物を浸漬した際に約400%〜1500%の範囲で膨潤し得るにもかかわらず、水性環境下での膨潤率および膨潤範囲が予め決定したpHに依存するようにアクリレートポリマーと他の材料との比を選択することができる。この特徴により、漂白剤または他の活性成分が遡及的に組み込まれる(ペルオキシド、ペルオキシ酸、クロライト、安定剤、香味物質などを含む組成物の負荷など)。
【0062】
それに反して、水膨潤性水不溶性ポリマーとしてのセルロースエステルの組み込みにより、湿った表面への適用前に組成物はタック性を示すが、水の吸収時にタック性を示さない。歯から生成物を最終的に除去するためにタック性を減少させることが望ましい場合にこのような組成物が望ましいと認識される。
【0063】
3.水溶性ポリマー
例示的な水溶性ポリマーには、例として、水溶性セルロース由来のポリマー、ビニルアルコールのホモポリマーおよびコポリマー、ビニルフェノールのホモポリマーおよびコポリマー、エチレンオキシドのホモポリマーおよびコポリマー、マレイン酸のホモポリマーおよびコポリマー、コラーゲン、ゼラチン、アルギネート、デンプン、および天然に存在するポリサッカリド、ならびにこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。ポリマーには、・・・が含まれる。
【0064】
例示的な水溶性セルロース由来ポリマーには、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、水和セルロース(セロファン)、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース、ならびにこれらの組み合わせが含まれる。
【0065】
例示的な天然に存在するポリサッカリドには、種々の起源の寒天(ガム寒天(gum agar)など)、アルギネート(アルギン酸、アルギン酸塩(例えば、アルギン酸カルシウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸ナトリウム)など)、アルギン酸誘導体(例えば、ポリエチレングリコールアルギネート、Kelcoloid(登録商標)、Monsanto)、カラギーナン(κ−、ι−、およびλ−カラギーナンが含まれる)、キチン、キトサン、グルコマンナン、ジェランガム(Kelcogel(登録商標)、Monsanto)、ゼラチン、グアーガム(TIC Gums)、アラビアゴム、ガティガム、カラヤゴム、トラガカントゴム、イナゴマメゴム、ペクチン(ペクチンなどおよびアミロペクチンなど)、プルラン、デンプンおよびデンプン誘導体(酢酸ジャガイモデンプン、Clearam(登録商標)CH10、Roquetteなど)、タマリンドガム、キサンタン(キサンタンガムなど)、ならびにこれらの組み合わせが含まれる。
【0066】
例示的な水溶性マレイン酸ポリマーには、International Specialty Productsの商標Gantrez(登録商標)で市販されている水溶性マレイン酸ポリマーが含まれる。Gantrez(登録商標)製品は、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸との合成コポリマーのファミリーである。Gantrez ANは、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマーである。Gantrez Sシリーズは、メチルビニルエーテルとマレイン酸とのコポリマー(Gantrez S−97など)を示す。Gantrez ESは、マレイン酸の半エステル形態であり、一定範囲の異なるアルキル鎖長および分子量のメチルビニルエーテルとマレイン酸とのコポリマーを示す。したがって、Gantrez ES−225およびGantrez ES−425は、メチルビニルエーテルとマレイン酸とのコポリマーのモノエチルエステルおよびモノブチルエステルである。
【0067】
B.ラダー様非共有結合性架橋剤
フィルム形成ポリマーのラダー様非共有結合性架橋剤は、好ましくは、骨格の反復単位中に相補反応性官能基を含む長鎖ポリマーであり、親水性高分子量フィルム形成ポリマーとラダー様高分子間複合体を形成することができる。この複合体は、水溶性または水不溶性であり得るが、好ましくは水不溶性である。
【0068】
ラダー様架橋剤の1つの機能は、ブレンドに不溶性および限定的膨潤を提供することである。本質的に、ラダー様架橋剤は、ゲル形成剤としての機能を果たすことができる。ラダー様架橋剤に適切な相補反応性官能基には、水酸基、カルボキシル基、フェノール基、スルホ基、およびアミノ基(その全てが親水性ポリマーブレンドと非共有結合性架橋することができる)が含まれる。典型的には、これらのポリマーは、約10,000〜1,000,000g/molの範囲内、任意選択的に100,000〜300,000g/molの長さを有する。フィルム形成ポリマーよりも低い分子量のラダー様架橋剤を選択することが望ましいかもしれない。
【0069】
ラダー様架橋剤としての使用に適切な例示的長鎖ポリマーには、例として、フィルム形成ポリマーとして使用するための上記の親水性ポリマー、水膨潤性水不溶性ポリマー、および水溶性ポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0070】
上記のように、フィルム形成ポリマーおよびラダー様非共有結合性架橋剤は共に同一のポリマークラスに相当し、ポリマー骨格の反復単位中に水素結合、静電結合、またはイオン結合することができる反応基を保有するので、フィルム形成ポリマーまたはラダー様非共有結合性架橋剤のいずれかとして同一の材料を使用することができる。組成物中でのその機能および役割は、組成物に存在する材料の量によって決定され、最も大量に存在する材料がフィルム形成ポリマーとして機能する(すなわち、フィルム形成ポリマーとそのラダー様架橋剤との間の相違がその濃度を問題とする)。主な成分を、典型的には、フィルム形成ポリマーといい、少ない方の成分をラダー様非共有結合性架橋剤という。したがって、本発明の目的のために、どのポリマーが主なフィルム形成ポリマーとしての機能を果たし、どのポリマーがラダー様非共有結合性架橋剤として機能するかということは重要ではない。
【0071】
それにもかかわらず、フィルム形成ポリマーおよびラダー様非共有結合性架橋剤の相補性は、本発明の重要な態様である。フィルム形成ポリマーおよびラダー様非共有結合性架橋剤の例示的な相補官能基および結合型のリストを以下に示す。プロトン供与相補基とプロトン受容相補基との間の水素結合の顕著な特徴は、両反応基およびその相互作用の生成物の電荷は変化しないことである。静電結合は、最初に荷電されていないプロトン供与基とプロトン受容基との間の相互作用であり、イオン結合を形成する。最後に、イオン結合は、反対に荷電した基の相互作用であり、イオン結合を形成する。
【0072】
【表2】
組成物はまた、第2のラダー様非共有結合性架橋剤を含み得る。第1のラダー様架橋剤と同様に、第2のラダー様架橋剤はまた、骨格の反復単位中に相補反応性官能基を含む。しかし、第2のラダー様架橋剤は、フィルム形成ポリマーまたは第1のラダー様架橋剤とラダー様高分子間複合体を形成することができる。
【0073】
C.骨組み様非共有結合性架橋剤
骨組み様非共有結合性架橋剤は、好ましくは、相補反応性官能基をその末端に含み、且つ少なくとも1つのフィルム形成ポリマーまたはラダー様非共有結合性架橋剤と骨組み様複合体を形成することができる。典型的には、骨組み様非共有結合性架橋剤は、その単鎖の両末端に反応基を有する親水性オリゴマーである。
【0074】
骨組み様架橋剤の1つの機能は、親水性ポリマーブレンドの接着特性に影響を与えることである。骨組み様架橋剤に適切な相補反応性官能基には、水酸基、カルボキシル基、およびアミノ基(その全てが親水性ポリマーブレンドと非共有結合性架橋することができる)が含まれる。
【0075】
好ましくは、骨組み様非共有結合性架橋剤は、水酸基、アミノ基、またはカルボキシル基を末端とする。一般に、骨組み様非共有結合性架橋剤の分子量は、約45〜約800の範囲、好ましくは約45〜約600の範囲である。
【0076】
例示的な骨組み様架橋剤には、例として、その鎖中に約1〜20個のアルキレンオキシド単位を含むモノマーおよびオリゴマーのアルキレングリコール(ポリアルキレングリコール(例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール(PG)、およびポリエチレングリコール)など)(末端カルボキシル基ポリアルキレングリコールなどの末端カルボキシル基オリゴマーアルキレングリコールおよび末端アミノ基ポリアルキレングリコールなどの末端アミノ基オリゴマーアルキレングリコールが含まれる)、ポリアルコール(低分子量多価アルコール(例えば、グリセロールまたはソルビトール)など)、ブタンジオールからオクタンジオールまでのアルカンジオール、二価カルボン酸、エーテルアルコール(例えば、グリコールエーテル)、およびポリ(アルキレングリコール二価酸)、ならびにこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0077】
好ましい骨組み様架橋剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、末端カルボキシル基オリゴ−アルキレングリコール(末端カルボキシル基ポリ(エチレングリコール)など)、および多価アルコールである。特に好ましい架橋剤は、低分子量ポリアルキレングリコール(分子量200〜600)(ポリエチレングリコール400など)である。
【0078】
骨組み様架橋剤はまた、例えば、骨組み様架橋剤がポリエチレングリコール400などの化合物である場合、低分子量可塑剤としての機能を果たし得る。このような骨組み様架橋剤の可塑剤は、好ましくは、他の成分と混和性を示し、組成物のガラス転移温度(Tg)および弾性率を減少させることができる。あるいは、低分子量可塑剤として異なる化合物を含めることができる。
【0079】
骨組み様非共有結合性架橋剤は、典型的には、ガラス転移温度Tgが約−100℃〜約−30℃の範囲であり、融点Tmが約20℃未満である。骨組み様非共有結合性架橋剤はまた、無定形であり得る。フィルム形成ポリマーおよびラダー様非共有結合性架橋剤のTg値と骨組み様非共有結合性架橋剤のTgとの間の差は、好ましくは、約50℃超、より好ましくは約100℃超、最も好ましくは約150℃〜約300℃の範囲である。フィルム形成ポリマー、ラダー様非共有結合性架橋剤、および骨組み様非共有結合性架橋剤は、適合性がある(すなわち、均一なブレンドを形成することができる)。
【0080】
Feldstein et al.の米国特許公開番号2002/0037977号で考察されているように、骨組み様非共有結合性架橋剤と組成物の他の成分との比は、接着強度および凝集強度の両方に影響を与え得る。例えば、骨組み様非共有結合性架橋剤は、フィルム形成ポリマー/骨組み様非共有結合性架橋剤ブレンドのガラス転移温度を、以下の式(1):
【0081】
【数1】
(式中、Tg推定は、ブレンドの推定ガラス転移温度であり、Wpolは、ブレンド中のフィルム形成ポリマーの重量分率であり、Wplは、ブレンド中の骨組み様非共有結合性架橋剤の重量分率であり、Tg polはフィルム形成ポリマーのガラス転移温度でありTg plは骨組み様非共有結合性架橋剤のガラス転移温度である)
で示されるFoxの式によって予想されるより高い程度に減少させる。本特許出願でも説明されるように、至適化された接着強度および凝集強度を有する接着組成物を、フィルム形成ポリマーおよび骨組み様非共有結合性架橋剤およびその相対量の選択によって調製し、Tg推定からの所定の偏差を得ることができる。一般に、接着を最大にするために、Tg推定からの所定の偏差は最大の負の偏差であり、接着を最小にするために、Tg推定からの任意の負の偏差を最小にする。
【0082】
上記のように、組成物はまた、フィルム形成ポリマーまたは第1のラダー様架橋剤とラダー様高分子間複合体を形成することができる第2のラダー様非共有結合性架橋剤を含み得る。第2のラダー様架橋剤を含む場合、骨組み様非共有結合性架橋剤はまた、第2のラダー様架橋剤と骨組み複合体を形成することができる。
【0083】
例えば、アクリレートポリマー(Eudragit E 100)を、フィルム形成ポリマーとして選択することができる。第1のラダー様架橋剤は、Eudragit E 100フィルム形成ポリマーとラダー様高分子間複合体を形成するEudragit L−100−55であり得る。第2のラダー様架橋剤は、Eudragit L−100−55(第1のラダー様架橋剤)とラダー様高分子間複合体を形成するPVPであり得る。骨組み様架橋剤は、第2のラダー様架橋剤PVPと骨組み様複合体を形成するPEGであり得る。
【0084】
D.例示的な接着性組成物
例示的組成物は、フィルム形成ポリマーとしてのポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)(「PVP」)および骨組み様非共有結合性架橋剤としてのポリエチレングリコール(「PEG」)を含む。PVP−PEG接着性ブレンドと中程度の親水性または水不溶性を示すポリマーであるラダー様非共有結合性架橋剤との混合により、ブレンドの親水性および溶解速度が減少する。溶解速度をさらに減少させるか不溶性混合物を得るために、PVP−PEGブレンドを、その反復単位中に相補(PVPに関して)反応性官能基を保有するポリマーと混合することができる。PVPがその反復単位中にプロトン受容性カルボニル基を含むので、相補反応性官能基は、好ましくは、プロトン供与性の水酸基またはカルボキシル基である。したがって、PVPおよびPEGとともに使用するために、適切なラダー様非共有結合性架橋剤は、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸などの長鎖ポリマー、そのホモポリマーおよびコポリマー、ならびにスルホン酸およびアルギン酸である。
【0085】
別の例示的組成物は、上記のPVP−PEGを有するラダー様非共有結合性架橋剤としてメタクリル酸とメタクリル酸メチルとのコポリマーを使用する。本組成物を使用して、本発明の原理が容易に理解される。
【0086】
PVP−PEG複合体は、高凝集強さ(PVP−PEG水素結合に起因する)と巨大な自由体積(PEG鎖の相当な長さおよび可動性に起因する)とを併せ持つ。PVP−PEGブレンド中の自由体積の増加を強調するために、この複合体構造型を、「骨組み様」構造と定義する(図1を参照のこと)。複合体の骨組み様構造は、PEG単鎖の両末端の反応性官能基の位置に起因する。ラダー様非共有結合性架橋剤が骨格の反復単位中に反応性官能基を含む場合、得られた複合体は、いわゆる「ラダー様」構造を有する(図2を参照のこと)。高分子間複合体のラダー様型は、Kabanov et al.(1979)Vysokomol.Soed.21(A):243−281によって最初に説明されている。骨組み様複合体の形成により、凝集強度および自由体積が増強され(PVP−PEGブレンドの接着特性を決定する)、図2に示すラダー様複合体の形成により、ブレンドの可溶性が喪失し、自由体積の減少にともなって凝集強度が増加する。このような理由により、ラダー様複合体の構造から接着性は得られない。
【0087】
自由体積の減少および凝集エネルギーの増加により、PVPとのラダー様複合体が得られる長鎖ポリマーと混合したPVP−PEGブレンドは、初期粘着力がないかごくわずかである。しかし、長鎖ポリマーを含む非接着性PVP−PEGブレンドが水によって可塑化するので、ブレンドのガラス転移温度はより低い値にシフトし(感圧性接着剤の典型的な特徴である)、接着力が増加する。
【0088】
接着性組成物中の成分の一定の好ましい組み合わせが存在する。例えば、フィルム形成ポリマーがポリ(N−ビニルラクタム)(ポリ(N−ビニルピロリドン)またはポリ(N−ビニルカプロラクタム)など)である場合、ラダー様架橋剤は、好ましくは、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリビニルアルコール、ポリ(ヒドロキシアルキルアクリレート)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)(ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)など)、メタクリル酸コポリマー、または任意の他のカルボキシル含有Eudragitである。
【0089】
同様に、フィルム形成ポリマーがポリ(ジアルキルアミノアルキルアクリレート)またはポリ(ジアルキルアミノアルキルメタクリレート)である場合、ラダー様架橋剤は、典型的には、ヒドロキシル含有ポリマー(ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、またはポリマレイン酸など)である。フィルム形成ポリマーがポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、またはポリ(ヒドロキシアルキルアクリレート)(ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)など)である場合、ラダー様架橋剤は、好ましくは、ポリ(N−ビニルラクタム)(ポリ(N−ビニルピロリドン)またはポリ(N−ビニルカプロラクタム)など)およびポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、またはポリマレイン酸のホモポリマーもしくはコポリマーである。フィルム形成ポリマーがポリエチレンオキシドである場合、適切なラダー様架橋剤は、ポリ酸(アクリル酸、メタクリル酸、およびマレイン酸のホモポリマーおよびコポリマーなど)である。ポリ(N−ジアルキルアミノアルキルアクリレート)とアルキルアクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、またはエタクリレートモノマーとのコポリマー、ポリ(N−ジアルキルアミノアルキルメタクリレート)とアルキルアクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、またはエタクリレートモノマーとのコポリマーを、フィルム形成ポリマーまたはラダー様架橋剤の両方として対応するホモポリマーの代わりに使用することができる。
【0090】
上記の任意の組み合わせのために、好ましい骨組み様架橋剤は、その鎖中に約1〜20個のアルキレンオキシド単位を含むオリゴマーのアルキレングリコール(ポリエチレングリコールなど)、末端カルボキシル基オリゴマーアルキレングリコール(末端カルボキシル基ポリ(エチレングリコール)など)、または多価アルコールである。
【0091】
適切なブレンドの他の例を以下に示す。
【0092】
【表3】
*Eudragit E−100は、Rohm Pharma Polymersから市販されている2−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、およびメチルメタクリレートの2:1:1コポリマーである。
**米国特許第6,576,712号に記載。
【0093】
本明細書中で使用したアプローチを例証するために、PVP−PEG−Eudragitブレンドを、典型的な例として使用したが、このアプローチは一般例であり、他の水溶性親水性ポリマーを使用して容易に再現することができる。
【0094】
接着性ポリマーブレンドの性質を評価し、実施例に記載する。これらのポリマーブレンドの挙動は、共有結合性架橋ポリマーの典型であることが見出された。しかし、共有結合性結合系と対照的に、骨組み様非共有結合性架橋剤およびラダー様非共有結合性架橋剤を含む三重ポリマーブレンドを、簡素な過程を使用して容易に調製することができ、さらに、化学架橋ポリマーを使用して達成することができないフィルム形成ポリマー特性が得られる。
【0095】
別の例示的な組成物は、以下を含む:水膨潤性水不溶性ポリマーおよび水溶性ポリマーから選択されるフィルム形成ポリマー、骨格の反復単位中に相補反応性官能基を含み、且つフィルム形成ポリマーとラダー様高分子間複合体を形成することができるラダー様非共有結合性架橋剤、および相補反応性官能基をその末端に含み、且つ少なくとも1つのフィルム形成ポリマーまたはラダー様非共有結合性架橋剤と骨組み様複合体を形成することができる骨組み様非共有結合性架橋剤。フィルム形成ポリマーの量は、いずれかの架橋剤の量よりも多い。
【0096】
III.接着性組成物−選択成分
本発明の接着性組成物は、体表への生成物の接着が必要であるか望ましい多数のさらなる状況で有用である。これらの適用には、例えば、薬物送達系、創傷包帯剤、導電性ヒドロゲル、足に適用するための圧力除去クッション(踵用クッションが含まれる)、肘用パッド、膝用パッド、脛用パッド、前腕用パッド、手首用パッド、指用パッド、べんち用パッド、たこ用パッド、水疱用パッド、腱膜瘤用パッド、およびつま先用パッド(これらは全て、床擦れ(dicubitis)、静脈、および足の糖尿病性壊疸などのための活性成分を含み得る)、口腔内適用(歯漂白ストリップ、口臭治療のための気分転換フィルム、および咽喉痛、口内炎/口唇潰瘍、歯肉炎、歯周炎、口腔感染、歯周病変、齲歯または虫歯、および他の歯周疾患を治療するための口腔ケア製品など)、経粘膜適用、医療機器、診断システム、および体表に貼り付けるべき他のデバイスを貼り付けるための接着剤、吻合デバイス、人工挿入物、およびフェイスマスクのためのシーラント、音、振動、または衝撃を吸収する材料、化粧品および薬用化粧品用ゲル生成物中のキャリア、ならびに当業者によって公知であるか容易に確認可能であるか依然として発見されていない多数の他の用途が含まれる。
【0097】
特定の意図する用途に依存して、組成物中に組み込むか組成物と組み合わせて医療用パッチ、包帯、またはデバイスを形成することができる多数の成分が存在する。以下に詳述する。
【0098】
A.活性成分
任意の本明細書中に記載の組成物を、活性成分を含み、それにより、体表に適用された場合に活性成分が体表を伝達する活性成分送達系として作用するように修飾することができる。組成物に負荷された活性成分の放出は、典型的には、膨潤制御拡散機構を介した水の吸収および薬剤の脱離を含む。活性成分含有組成物を、例として、経皮薬物送達系、創傷包帯剤、局所薬学的処方物、移植薬物送達系、経口投薬形態、および歯漂白ストリップなどで使用することができる。
【0099】
このような薬剤は、薬用化粧品的または治療的に有効な量で存在するであろう。本発明の組成物に組み込み、局所または全身に(例えば、経皮、経口、または薬物の全身投与に適切な他の投薬形態を使用して)送達させることができる適切な活性成分には、以下が含まれるが、これらに限定されない:アドレナリン作動薬、副腎皮質性ステロイド、副腎皮質抑制薬、嫌酒薬、アルドステロンアンタゴニスト、アミノ酸、アンモニア解毒薬、同化薬、蘇生薬、鎮痛薬、アンドロゲン薬(androgenic agent)、麻酔薬、食欲抑制化合物、食欲減退薬、アンタゴニスト、下垂体前葉活性化因子および下垂体前葉抑制薬、抗ざ瘡薬、抗アドレナリン作動薬、抗アレルギー薬、抗アメーバ薬、抗アンドロゲン薬、抗貧血薬、抗狭心症薬、抗不安薬、抗関節炎薬、抗喘息薬および他の呼吸器薬(respiratory drug)、抗アテローム硬化性動脈硬化薬、抗菌薬、抗癌薬(抗悪性腫瘍薬および抗癌補助促進薬(anti−cancer supplemetary potentiating agent)、抗コリン作動薬、抗胆石形成薬(anticholelithogenic agent)、抗凝血薬、抗コクシジウム薬、抗痙攣薬、抗うつ薬、抗糖尿病薬、止瀉薬、抗利尿薬、解毒薬、抗ジスキネジー薬、制吐薬、抗てんかん薬、抗エストロゲン薬、抗線維素溶解薬、抗真菌薬、抗緑内障薬、抗蠕虫薬、抗血友病薬、抗血友病因子、抗出血薬、抗ヒスタミン薬、抗高脂血症薬剤、抗高リポタンパク質血症薬、抗高血圧薬、抗低血圧薬、抗感染症薬(抗生物質および抗ウイルス薬など)、抗炎症薬(ステロイド系および非ステロイド系の両方)、抗角質化薬、抗マラリア薬、抗菌薬、抗片頭痛薬、抗有糸分裂薬、抗カビ薬、制嘔吐薬、抗新生物薬、抗好中球減少症薬、抗強迫症薬(anti−obsessional agent)、駆虫薬、抗パーキンソン病薬、抗ニューモシチス薬(anti−pneumocystic agent)、抗増殖薬、抗前立腺肥大薬、抗原虫薬、止痒薬、抗乾癬薬、抗精神病薬、解熱薬、鎮痙薬、抗リウマチ薬、抗住血吸虫薬、抗脂漏薬、鎮痙薬、抗歯石薬および抗結石薬、抗血栓薬、抗結核薬、鎮咳薬、抗潰瘍薬、抗尿路結石薬、抗ウイルス薬、抗不安薬、食欲抑制薬、注意欠陥障害(ADD)薬および注意欠陥多動障害(ADHD)薬、静菌薬および殺菌薬、良性前立腺過形成治療薬、血糖調節薬、骨吸収阻害薬、気管支拡張薬、炭酸脱水酵素阻害薬、循環器官用薬(抗狭心症薬、抗不整脈薬、β遮断薬、カルシウムチャネル拮抗薬、心抑制剤、心血管薬、心保護薬(cardioprotectant)、および強心薬が含まれる)、中枢神経系(CNS)薬、中枢神経系刺激薬、催胆薬、コリン作動薬、コリン作動性アゴニスト、コリンエステラーゼ不活性化剤、コクシジウム抑制薬、認知アジュバント(cognition adjuvant)および認知増強剤(cognition enhancer)、感冒薬(充血除去薬が含まれる)、抑制薬、診断補助薬、利尿薬、ドーパミン作動薬、外部寄生虫駆除薬、催吐薬、プラーク、結石、または齲蝕の形成を阻害する酵素、酵素インヒビター、エストロゲン、血栓溶解薬、フッ化物抗齲歯/抗虫歯薬、遊離酸素ラジカルスカベンジャー、消化管運動薬、遺伝物質、糖質コルチコイド、生殖腺刺激成分、発毛刺激薬、止血薬、薬草療法薬、ヒスタミンH2受容体アンタゴニスト、ホルモン、抗ホルモン薬(hormonolytics)、催眠薬、低コレステロール血症薬、血糖降下薬、抗高脂血症薬、血圧降下剤、HMGCoA還元酵素インヒビター、免疫薬、免疫調整薬、免疫調節薬、免疫賦活薬、免疫抑制剤、不能治療補助薬、インヒビター、角質溶解薬、ロイコトリエンインヒビター、LHRHアゴニスト、肝臓障害治療薬、ルテオリジン薬、記憶アジュバント、精神活動増強剤(mental performance enhancer)、金属キレート剤(エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩など)、有糸分裂インヒビター、気分調節薬(mood regulator)、粘液溶解薬、粘膜保護薬、筋弛緩薬、散瞳薬、麻薬アンタゴニスト、鼻充血除去薬、神経弛緩薬、神経筋遮断薬、神経保護薬、ニコチン、NMDAアンタゴニスト、非ホルモン性ステロール誘導体、栄養剤(ビタミン、必須アミノ酸、および脂肪酸など)、点眼薬(抗緑内障薬など)、分娩促進薬、鎮痛薬、副交感神経遮断薬、ペプチド薬、プラスミノーゲン活性化因子、血小板活性化因子アンタゴニスト、血小板凝集インヒビター、脳卒中後および頭部外傷後治療薬、増強剤、黄体ホルモン、プロスタグランジン、前立腺成長インヒビター、創傷清浄薬(wound cleansing agent)としてのタンパク質分解酵素、プロサイロトロピン薬(prothyrotropin agent)、覚醒剤、向精神薬、放射性薬剤、調節薬(regulator)、弛緩薬、再分配薬(repartitioning agent)、抗疥癬薬、硬化薬、鎮静薬、鎮静−催眠薬、選択的アデノシンA1アンタゴニスト、セロトニンアンタゴニスト、セロトニンインヒビター、セロトニン受容体アンタゴニスト、ステロイド(プロゲストゲン、エストロゲン、副腎皮質ステロイド、アンドロゲン、および同化薬が含まれる)、禁煙薬、刺激薬、抑制薬、交感神経興奮薬、共力薬、甲状腺ホルモン、甲状腺インヒビター、甲状腺ホルモン様薬(thyromimetic agent)、精神安定薬、知覚過敏症薬(tooth desensitizing agent)、歯の漂白剤(過酸化物、金属亜塩素酸塩、過ホウ酸塩、ペルカーボネート、過酸、およびこれらの組み合わせなど)、不安定狭心症薬、尿酸排泄促進薬、血管収縮薬、血管拡張薬(全身、冠状動脈、末梢、および脳が含まれる)、傷薬、創傷治癒薬、およびキサンチンオキシダーゼインヒビターなど。
【0100】
本発明の接着性組成物が有用な特定の有効成分には、アナバシン、カプサイシン、オキシブチニン、二硝酸イソソルビド、アミノサリチル酸、ニトログリセリン、ベラパミル、プロプラノロール、シラボリン(silabolin)、フォリドン(foridone)、クロニジン、シチシン、フェナゼパム(phenazepam)、ニフェジピン、フルアシジン(fluacizin)、およびサルブタモールが含まれるが、これらに限定されない。
【0101】
組成物は、任意の美容活性成分も含み得る。本明細書中で使用される、「美容活性成分」には、皮膚、歯、または周辺組織の外観を望ましく変化させるための組成物から放出することができるか、新鮮な息などの社会的に望ましい特徴を使用者に付与する任意の物質が含まれる。例えば、美容活性成分は、気分転換剤または歯の漂白または脱色に影響を与える薬剤であり得る。西洋社会のある文化または一定のセグメントで歯の着色が有意または望ましいことを認識して、美容活性成分は歯の色または色合いに影響を与える任意の薬剤でもあり得る。
【0102】
B.他の成分
本明細書中に記載の方法によって作製された組成物はまた、従来の添加物(吸収性充填剤、防腐剤、pH調整剤、可塑剤、軟化剤、増粘剤、抗酸化剤、色素、染料、導電種(conductive species)、屈折性粒子、安定剤、強化剤(toughening agent)、粘着付与剤または接着剤、タック性減少剤(detackifier)、香味物質および甘味料、抗酸化剤、ならびに透過増強剤(permeation enhancer)など)を含み得る。接着性を減少または消失すべき実施形態では、従来のタック性減少剤を使用することができる。これらの添加物およびその量を、ヒドロゲル組成物の所望の化学的性質および物理的性質を有意に妨害しないような方法で選択する。
【0103】
吸収充填剤を、接着剤を皮膚または他の体表に塗布した場合に水和の程度を制御するように有利に組み込むことができる。このような充填剤には、微結晶性セルロース、タルク、粘土、ラクトース、グアーガム、カオリン、マンニトール、コロイド状シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、疎水性デンプン、硫酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸カルシウム二水和物、紙布(woven paper)、不織布、および木綿素材が含まれ得る。他の適切な充填剤は、不活性(すなわち、実質的に非吸着性)であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタンポリエーテルアミドコポリマー、ポリエステル、ポリエステルコポリマー、ナイロン、およびレーヨンが含まれる。1つの好ましい充填剤は、コロイド状シリカ(例えば、Cab−O−Sil(登録商標)(Cabot Corporation,Boston MAから市販されている))である。
【0104】
防腐剤には、例として、p−クロロ−m−クレゾール、フェニルエチルアルコール、フェノキシエチルアルコール、クロロブタノール、4−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル、4−ヒドロキシ安息香酸プロピルエステル、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン二酢酸塩またはグルコン酸クロルヘキシジン、エタノール、およびプロピレングリコールが含まれる。
【0105】
pH調整剤として有用な化合物には、組成物のpHを個体の体表のpHに確実に適合させるために含めることができるグリセロール緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、リン酸緩衝液、およびクエン酸−リン酸緩衝液が含まれるが、これらに限定されない。さらに、組成物を歯の表面に塗布する場合、歯が脱灰することなく最適に漂白させるために、pH調整剤を添加して確実に組成物のpHを口内環境のpHと適合させて歯の表面からミネラルが滲出しないようにすることができ、カルシウムおよび/またはフッ化塩を組成物に含めることができる。
【0106】
適切な可塑剤および軟化剤には、例として、リン酸アルキルおよびリン酸アリール(リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジル、およびリン酸トリフェニルなど)、クエン酸アルキルおよびクエン酸エステル(クエン酸トリメチル、クエン酸トリエチル、およびクエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリブチルおよびクエン酸アセチルトリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、およびクエン酸トリヘキシルなど)、グリセリン酸アルキル、グリコール酸アルキル、アジピン酸ジアルキル(アジピン酸ジオクチル(DOA;アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)とも呼ぶ)、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジ(2−メチルエチル)、およびアジピン酸ジヘキシルなど)、フタル酸ジアルキル、フタル酸ジシクロアルキル、フタル酸ジアリール、および混合フタル酸アルキル−アリール(フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジアミル、およびフタル酸ジカプリルと示されるフタル酸エステルが含まれる)、セバシン酸ジアルキル(セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジプロピル、セバシン酸ジブチル、およびセバシン酸ジノニルなど)、コハク酸ジアルキル(コハク酸ジエチルおよびコハク酸ジブチルなど)、酒石酸ジアルキル(酒石酸ジエチルおよび酒石酸ジブチルなど)、グリコールエステルおよびグリセロールエステル(二酢酸グリセロール、三酢酸グリセロール(トリアセチン)、モノ乳酸二酢酸グリセロール(glycerol monolactate diacetate)、グリコール酸メチルフタリルエチル、グリコール酸ブチルフタリルブチル、二酢酸エチレングリコール、二酪酸エチレングリコール、二酢酸トリエチレングリコール、二酪酸トリエチレングリコール、および二プロピオン酸トリエチレングリコールなど)、親水性界面活性剤、好ましくは、親水性非イオン性界面活性剤(例えば、糖の部分的脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪アルコールエーテル、およびポリエチレングリコール−ソルビタン−脂肪酸エステルなど)、非イオン性界面活性剤(エチルセロソルブなど)、エチルからオクチルまでの低級アルコール、低級ジオール(1,2−および1,3−プロピレングリコールなど)、低分子量ポリ(アルキレンオキシド)(ポリプロピレングリコールおよびポリエチレングリコールなど)、多価アルコール(グリセロールなど)、ソルビトール、酒石酸エステル(酒石酸ジブチルなど)、ならびにこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0107】
骨組み様非共有結合性架橋剤自体が可塑剤として作用することができるので、一般に、さらなる可塑剤を組み込む必要はない。しかし、さらなる低分子量可塑剤を組成物中に含めることは、いくつかの場合、有利であり得る。例えば、接着性組成物の接着性および吸水性を、適量の可塑剤の添加によって容易に調節することができる。可塑化機構により、自由体積が増加する。自由体積の増加により、可塑剤は、凝集エネルギーと自由体積との間のバランス(接着調節因子である)を修正する。フィルム形成ポリマー、ラダー様架橋剤、および骨組み様架橋剤が親水性材料であることが好ましいので、適切な可塑剤も事実上親水性であることが好ましい。
【0108】
好ましい増粘剤は、天然に存在する化合物またはその誘導体であり、例として、コラーゲン、ガラクトマンナン、デンプン、デンプン誘導体および加水分解物、セルロース誘導体(メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、コロイド状ケイ酸、および糖(ラクトース、サッカロース、フルクトース、およびグルコースなど)が含まれる。合成増粘剤(ポリビニルアルコール、ビニルピロリドン−酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールなど)も使用することができる。
【0109】
人体に関連して食品、薬剤、または化粧品と共に一般に使用されている色素および染料型(特に、「認証可能(certifiable)」または「認証免除(exempt from certification)」として分類される食品中での使用が許可されている着色料)を使用して、組成物を着色することができる。これらの着色化合物は、植物、ミネラル、または動物などの天然供給源に由来し得るか、天然誘導体の合成対応物であり得る。
【0110】
連邦食品医薬品化粧品法の下で現在認定されている食品および摂取薬物用の着色化合物には、FD&C Red No.3(テトラヨードフルオレセインのナトリウム塩)、Food Red 17(6−ヒドロキシ−5−{(2−メトキシ−5−メチル−4−スルホフェニル)アゾ}−2−ナフタレンスルホン酸の二ナトリウム塩)、Food Yellow 13(キノフタロンまたは2−(2−キノリル)インダンジオンのモノスルホン酸およびジスルホン酸混合物のナトリウム塩)、FD&C Yellow No.5(4−p−スルホフェニルアゾ−l−p−スルホフェニル−5−ヒドロキシピラゾール−3カルボン酸のナトリウム塩)、FD&C Yellow No.6(p−スルホフェニルアゾ−B−ナフトール−6−モノスルホネートのナトリウム塩)、FD&C Green No.3(4−{[4−(N−エチル−p−スルホベンジルアミノ)−フェニル]−(4−ヒドロキシ−2−スルホニウム−フェニル)−メチレン}−[l−(N−エチル−N−p−スルホベンジル)−3,5−シクロヘキサジエンイミン]の二ナトリウム塩)、FD&C Blue No.1(ジベンジルジエチル−ジアミノトリフェニルカルビノールトリスルホン酸無水物の二ナトリウム塩)、FD&C Blue No.2(インジゴチンのジスルホン酸のナトリウム塩)、FD&C Red No.40、Orange B、およびCitrus Red No.2などの染料、ならびに種々の比率でのこれらの組み合わせが含まれる。
【0111】
FDA認証が免除されている着色化合物には、アンナット抽出物、β−アポ−8’−カロテナール、β−カロテン、ビート粉末、カンタキサンチン、カラメル色素、ニンジン油、コチニール抽出物(カルミン)、焙煎し、部分的に脱脂し、調理済みの綿実粉、グルコン酸第一鉄、果汁、ブドウ色素抽出物、ブドウ果皮抽出物(エノシアニナ)、パプリカ、パプリカオレオレシン、リボフラビン、サフラン、ターメリック、ターメリックオレオレシン、野菜汁、および種々の比率でのこれらの組み合わせが含まれる。
【0112】
組成物で用いる着色化合物の形態には、好ましくは、色素形態の添加物が含まれるが、ヒドロゲル組成物中で使用される材料と適合するレーキ形態も含まれ得る。粉末、顆粒、液体、または他の特定目的のための形態である場合、水溶性染料を、本発明の方法にしたがって使用することができる。好ましくは、「レーキ」(すなわち、染料の水溶性形態)を使用する。例えば、着色化合物の懸濁液を使用する場合、レーキ形態の添加物を使用することができる。アルミナ上のFD&C染料のカルシウムまたはアルミニウム塩の伸展(extending)によって調製された適切な水不溶性染料レーキには、FD&C Green #1レーキ、FD&C Blue #2レーキ、FD&C R&D #30レーキ、およびFD&C # Yellow 15レーキが含まれる。
【0113】
他の適切な着色化合物には、非毒性水不溶性無機色素(二酸化チタン、酸化クロムグリーン、ウルトラマリンブルーおよびピンク、ならびに酸化鉄など)が含まれる。このような色素の粒子サイズは、好ましくは、約5〜約1000ミクロン、より好ましくは約250〜約500ミクロンの範囲である。組成物中の着色化合物の濃度は、好ましくは、約0.05〜10重量%、より好ましくは約0.1〜5重量%である。多色にするために1つを超える着色化合物が存在し得る。これらの複数の色を、ストリップ、ドット、渦、または消費者が楽しみを見出すことができる任意の他のデザインの模様にすることができる。着色化合物を、他の外観を良くする物質(光沢のある粒子など)と共に使用することができる。
【0114】
生体用電極および他の電気療法(すなわち、電極または他の導電部材を体表に付着するために)で使用するために、導電種の封入によって組成物を導電性にすることができる。例えば、感圧接着性を示すように配合した組成物を使用して、経皮神経刺激電極、電気外科用対極板(electrosurgical return electrode)、またはEKG電極を患者の皮膚または粘膜組織に付着させることができる。これらの適用は、伝導率を増強し、導電種を含むためのヒドロゲル組成物の修飾を含む。伝導率を増強するために、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の添加またはフィルム形成ポリマーまたはラダー様架橋剤としてのその使用は有益であり得る。適切な導電種は、イオン伝導性電解液、特に皮膚または他の体表への塗布のために使用される伝導性接着剤の製造で通常使用されるイオン伝導性電解液であり、イオン性無機塩、有機化合物、またはこれらの組み合わせが含まれる。イオン伝導性電解液の例には、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、酢酸モノエタノールアミン、酢酸ジエタノールアミン、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸カルシウム、塩化リチウム、過塩素酸リチウム、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、およびレドックス対(第二鉄塩と第一鉄塩との混合物(硫酸第二鉄とグルコン酸第一鉄との混合物など)など)が含まれるが、これらに限定されない。好ましい塩は、塩化カリウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、および酢酸マグネシウムであり、EKGへの適用には塩化カリウムが最も好ましい。実質的に任意の量の電解液が本発明の接着性組成物中に存在することができるにもかかわらず、典型的には、電解液は、組成物の約0.1〜15重量%の範囲の濃度で存在する。
【0115】
屈折性粒子は、接着剤に当たった光を屈折および反射する粒子であり、組成物を見る角度が変化するにつれて反射光の色が変化する。例示的屈折性粒子は、アルミメッキを施したエンボス加工ポリエステルから作製した粒子である。
【0116】
適切な安定剤には、パラベン(メチルパラベンおよびプロピルパラベンなど)が含まれる。
【0117】
組成物の接着性およびタック性を改良するために粘着付与剤または接着剤を含めることもでき、特に、組成物を大量の機械的ストレスに供するような様式で使用する場合の接着性の維持に有利である。タック改良の基礎をなす機構は、粘着付与剤分子の巨大なサイズおよび疎水性に起因する。高分子間複合体組成物と混合した場合、粘着付与剤は、自由体積を増加させることができ、凝集エネルギーにのみわずかに影響を与える。適切な粘着付与剤は、固体でも液体でもよい。例示的材料には、タック性ゴム(ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ブチルゴム、ポリスチレン−イソプレンコポリマー、ポリスチレン−ブタジエンコポリマー、およびネオプレン(ポリクロロプレン)など)が含まれる。好ましい接着剤には、低分子量ポリイソブチレンおよびブチルゴムが含まれる。本明細書中の適切な粘着付与剤の他の例は、以前から感圧接着剤と共に使用されている粘着付与剤(例えば、ロジン、ロジンエステル(例えば、Arizona Chemicalから販売されているSylvagum(登録商標)RE 85K(以前は、Zonester(登録商標)85K Resin))、ポリテルペン、およびベンゼン環の大部分(全てではない)がシクロヘキサン環に変換された水素化芳香族樹脂(例えば、Hercules製のRegalrez樹脂ファミリー(Regalrez 1018、1033、1065、1078、および1126、ならびにRegalite R−100など)、Arakawa ChemicalのArkon樹脂ファミリー(Arkon P−85、P−100、P−115、およびP−125など)、および水素化多環式樹脂(典型的には、ジシクロペンタジエン樹脂(Exxon Chemical Co.製のEscorez 5300、5320、5340、および5380など))である。
【0118】
接着性を減少または排除すべき実施形態では、従来のタック性減少剤も使用することができる。適切なタック性減少剤には、架橋ポリビニルピロリドン、シリカゲル、およびベントナイトなどが含まれる。
【0119】
口腔で使用される組成物のために、任意の天然または合成の香味物質または食品添加物(Chemicals Used in Food Processing,Pub.No.1274,National Academy of Sciences,pages 63−258などに記載)を、本発明の組成物中に含めることができる。適切な香味物質には、当該分野で公知のウィンターグリーン、ペパーミント、スペアミント、メントール、フルーツフレーバー、バニラ、シナモン、スパイス、フレーバーオイル、および含油樹脂、ならびにこれらの組み合わせが含まれる。香味物質の使用量は、通常、好みの問題であり、フレーバー型、個別のフレーバー、および所望の強さなどの要因の影響を受ける。好ましくは、組成物は、約0.1〜5重量%の香味物質を含む。甘味料(スクロース、フルクトース、アスパルテーム、キシリトール、およびサッカリンなど)も含むことができる。好ましくは、組成物は、約0.001〜5.0重量%の量の甘味料を含む。
【0120】
熱、光、夾雑物、および他の要因の全てにより、ヒドロゲル組成物が酸化される。したがって、処理および/または保存中の光誘導性酸化、化学物質誘導性酸化、および熱誘導性酸化分解から保護するために組成物中に抗酸化剤を含めることができる。当業者に認識されているように、酸化的分解は、ペルオキシラジカルの生成を含み、これが有機材料と反応してヒドロペルオキシドを形成する。一次抗酸化剤はペルオキシフリーラジカル捕捉剤であり、二次抗酸化剤によってヒドロキシペルオキシドの分解が誘導され、それにより、材料をヒドロキシペルオキシドによる分解から保護する。ほとんどの一次抗酸化剤は立体障害フェノールであり、本明細書中で使用するためのこのような好ましい化合物は、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン(例えば、Ciba−Geigy Corp.,Hawthorne,NYのIrganox(登録商標)1010)およびl,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス[3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジル]ベンゼン(例えば、Ethyl Corp.のEthanox(登録商標)330)である。一次抗酸化剤と置換するか補足することができる特に好ましい二次抗酸化剤は、亜リン酸トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)(例えば、Ciba−Geigy Corp.から販売されているIrgafos(登録商標)168)である。他の抗酸化剤(多機能性抗酸化剤が含まれるが、これに限定されない)も有用である。多機能性抗酸化剤は、一次抗酸化剤および二次抗酸化剤の両方としての機能を果たす。Ciba−Geigy製のIrganox(登録商標)1520 Dは、多機能性抗酸化剤の一例である。ビタミンE抗酸化剤(Ciba−GeigyからIrganox(登録商標)E17として販売されているものなど)も、本発明の組成物で有用である。他の適切な抗酸化剤には、アスコルビン酸、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、酢酸トコフェロール、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ビス(l,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ブチルプロパンジオエート(Tinuvin(登録商標)144としてCiba−Geigy Corp.から市販されている)、ならびにオクタデシル3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート(オクタデシル3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネートとしても公知)(Uniroyal Chemical Co.,Middlebury,CTから市販されているNaugard(登録商標)76)およびビス(l,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルセバケート)( Ciba−Geigy Corp.から市販されているTinuvin(登録商標)765)が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、抗酸化剤は、ヒドロゲル組成物の約2重量%までの量で存在し、典型的には、抗酸化剤の量は、約0.05重量%〜1.5重量%の範囲である。
【0121】
1つまたは複数の透過増強剤を、本明細書中に記載の組成物中に含めることができる。皮膚または粘膜を介した治療に有効な流れ(flux)を得るために、いくつかの活性成分と共に適切な透過増強剤を投与することが望ましいかもしれない。適切な透過増強剤の選択は、送達される薬剤および組成物の他の成分との増強剤の適合性に依存する。
【0122】
例示的な透過増強剤には、例として、スルホキシド(ジメチルスルホキシド(DMSO)およびデシルメチルスルホキシド(C10MSO)など)、エーテル(ジエチレングリコールモノエチルエーテル(Transcutol(登録商標)として市販されている)およびジエチレングリコールモノメチルエーテルなど)、界面活性剤(ラウリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、Poloxamer(231、182、184)、Tween(登録商標)(20、40、60、80)、およびレシチン(Fawzi et al.に付与された米国特許第4,783,450号)など)、1−置換アザシクロヘプタン−2−オン(特に、Nelson Research & Development Co.,Irvine,CAから市販されている1−n−ドデシルシクロアザシクロヘプタン−2−オン(Azone(登録商標))(Cooperに付与された米国特許第4,557,934号、Rajadhyakshaに付与された米国特許第3,989,816号、同第4,316,893号、および同第4,405,616号を参照のこと)、アルコール(エタノール、プロパノール、オクタノール、デカノール、およびベンジルアルコールなど)、脂肪酸(ラウリル酸、オレイン酸、および吉草酸など)、脂肪酸エステル(ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、メチルプロピオネート、およびオレイン酸エチルなど)、ポリオールおよびそのエステル(プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセロール、ブタンジオール、ポリエチレングリコール、およびポリエチレングリコールモノラウレート(PEGML、例えば、Leeper et al.に付与された米国特許第4,568,343号を参照のこと)など)、アミドおよび他の窒素化合物(尿素、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、およびトリエタノールアミンなど)、テルペン、アルカノン、および有機酸(特に、サリチル酸およびサリチル酸塩、クエン酸、およびコハク酸)、ならびにこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0123】
基材を、組成物に貼ることもできる。基材は、製造中に組成物が接着する任意の表面であり、永久的基材(例えば、裏打ち部材)または一過性基材(例えば、製造ツール、装置表面、または剥離ライナー)であり得る。例示的な基材には、柔軟性のある弾力材(織物など)および開放気泡(ポリウレタン、ポリスチレン、およびポリエチレンフォームなど)、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエーテルアミド、ならびに非高分子材料(ワックス(例えば、マイクロクリスタリンワックスまたはパラフィンワックス)またはワックス/泡ラミネートなど)が含まれる。基材の厚さは、典型的には、約15ミクロン〜約250ミクロンの範囲である。基材を、包埋するか、装飾品が体表上での組成物の適切な変形に必要な基材の粘弾性を妨害しない限り、装飾品(ビーズまたはラインストーンなど)で装飾することもできる。基材は、消費者が楽しめるか魅力を感じる文字、単語、または画像を示すこともできる。基材はまた、組成物が磨耗した場合に目立たないように半透明であり得る。しかし、磨耗した場合に組成物を容易に見つけられるように基材または組成物を光学的に着色することができる。好ましくは、着色が好ましい場合、基材中に色が存在する。例えば、消費者が楽しみを見出すことができるように、基材を、明るいか鮮やかな色で着色することができる。したがって、基材は、着色化合物(例えば、染料、色素、または基材を形成する材料に添加した場合に呈色することができる物質など)を含み得る。
【0124】
組成物を剥離ライナーに付着させることもでき、剥離ライナーは、適用前に系を保護するために役立つ使い捨ての要素である。剥離ライナーを、組成物自体だけでなく任意の活性成分に対しても不透過性であり、且つ接着性組成物から容易に剥がされる材料から形成されるべきである。剥離ライナーを、典型的には、シリコンまたはフルオロカーボンで処理し、一般に、ポリエステルおよびポリエチレンテレフタラートから作製する。
【0125】
本発明の組成物はまた、送達系またはパッチ(例えば、経皮薬物送達デバイス)での使用に適切である。例示的な系は、薬物の容器(reservoir)、外側に面した裏打ち層、および体表に系を貼り付けるための手段を含むであろう。このような系の製造では、組成物を、裏打ち層または剥離ライナーに成型するか押し出し、系の皮膚接触面としての機能を果たすことができる。組成物を、患者の体表に系を貼り付けるために組成物に積層した従来の皮膚接触接着剤と共に、このような系の内側の活性成分の容器としても使用することができる。
【0126】
活性成分の局所投与、経皮投与、または経粘膜投与のための系は、典型的には、1つまたは複数の以下を含み得る:有効量の活性成分を含む容器、活性成分の体表との伝達関係において系を維持するための接着手段、裏打ち層、速度調節膜、および反対面に曝露された接着剤を被覆して保存中および使用前の接着面を保護する使い捨て剥離ライナー。多くのこのようなデバイスでは、容器はまた、接着手段としての機能を果たすことができ、本発明の組成物を、容器および/または接着手段として使用することができる。
【0127】
IV.作製方法
本発明の組成物の性質は、製造中の1つまたは複数のパラメータの調整によって容易に調節される。例えば、接着性を増加、減少、または排除するために、組成物の接着強度を、製造中に調節することができる。異なる成分の型および/または量を変化させることまたは製造様式の変化によってこれを行うことができる。また、製造過程に関して、従来の溶融押し出し過程を使用して調製した組成物は、一般に、必ずではないが、溶液流延技術を使用して調製した組成物といくらか異なる性能特性を有する。さらに、水との接触の際に組成物が膨潤する程度は、材料の選択によって変化し得る。組成物の外観は、無色透明から半透明〜不透明まで変化し得る。さらに、一定の組成物を、成分の相対量の変化または製造法の変化(半透明ヒドロゲルは、溶融押し出しよりも溶液流延を使用してより容易に得られる)によって半透明にすることができる。この様式では、半透明組成物は、使用者が治療過程(創傷治癒)または美容過程(例えば、ホワイトニング)の途中経過を観察し、所望の効果が得られたかどうかを判断することが可能である。
【0128】
本明細書中に記載の組成物は、一般に、溶融押し出しが可能であるので、簡潔なブレンドおよび押し出し過程を使用して調製することができる。組成物の成分を秤量し、一般に、高温(例えば、約90〜170℃、典型的には100〜140℃)(必ずしも必要ではない)で、例えば、BrabenderまたはBaker Perkins Blenderを使用して混合する。必要に応じて溶媒または水を添加することができる。得られた組成物を、単軸または二軸の押し出し成形機を使用して押し出するかペレット化することができる。あるいは、各成分を1成分ずつ溶融し、その後に混合して押し出すことができる。組成物を、適切な基材または裏打ち部材上に直接的に所望の厚さに押し出すことができる。組成物を最初に押し出し、その後に裏打ち部材に対して圧力をかけるか、裏打ち部材に積層することもできる。剥離ライナーを含めることもできる。得られたフィルムの厚さは、ほとんどの目的では、約0.050〜0.80mmの範囲、より通常には、約0.37〜0.47mmの範囲である。
【0129】
あるいは、組成物を、溶液流延、適切な溶媒(例えば、酢酸エチルまたは低級アルカノール(例えば、エタノール、イソプロピルアルコールなど)などの揮発性溶媒が特に好ましい)中での典型的には約35〜60重量%の範囲の濃度での成分の混合によって調製することができる。上記のように、溶液を、基材、裏打ち部材、または剥離ライナー上に流延する。雰囲気温度で混合および流延を行うことが好ましい。フィルムでコーティングした材料を、約80〜100℃、最適には約90℃の温度範囲で、約1〜4時間の範囲、最適には約2時間焼成する。したがって、本発明の1つの実施形態は、成分を含む溶媒溶液を調製する工程と、溶液の層を基材上に堆積させて基材上をコーティングする工程と、コーティングした基材を約80〜100℃の範囲の温度に約1〜4時間の範囲の期間加熱し、それにより、基材上に接着性組成物を得る工程とを含む、本発明の組成物を調製する方法である。
【0130】
したがって、本発明の1つの実施形態は、接着性組成物の製造方法である。第1に、材料を選択し、その後に溶融押し出しまたは溶液流延によって混合して接着性組成物を形成する。上記のように材料を選択する。フィルム形成ポリマーを最初に選択する。次いで、(1)骨格の反復単位中に相補反応性官能基を含み、且つ(2)選択されたフィルム形成ポリマーとラダー様高分子間複合体を形成することができるラダー様非共有結合性架橋剤を選択する。最後に、(1)相補反応性官能基をその末端に含み、且つ(2)少なくとも1つの選択されたフィルム形成ポリマーまたは選択されたラダー様非共有結合性架橋剤と骨組み様複合体を形成することができる骨組み様非共有結合性架橋剤を選択し、ここで、フィルム形成ポリマーの量がラダー様非共有結合性架橋剤の量または骨組み様非共有結合性架橋剤の量よりも多い。
【0131】
タック性組成物が望ましい場合、溶液流延が好ましい過程である。実質的に非タック性の組成物の調製には溶融押し出しが好ましい。溶融押し出し技術または溶液流延技術のいずれかを使用して半透明の組成物を調製することができるが、典型的には、これらの実施形態には溶液流延が好ましい。
【0132】
これら全ての成分を共に混合する場合、フィルム形成ポリマー、ラダー様非共有結合性架橋剤、および骨組み様非共有結合性架橋剤の成分に活性成分を添加することができる。溶媒中に溶解した組成物に活性成分を固体または溶液として添加することができる。次いで、混合物を、従来のように適切な基材上に流延して乾燥させるが、この負荷法を使用する場合、乾燥温度は低温であることが望ましい。この様式で調製した組成物を、雰囲気温度で約1時間〜数日間の範囲で乾燥させることができる。
【0133】
あるいは、成分の混合後に活性成分を添加し、組成物を調製することができる。組成物への活性成分の1つの負荷方法は、所望の活性成分(例えば、歯の漂白剤)を含む水溶液を適切な基材上に配置した組成物の表面に積層するか活性成分を基材上に直接配置する工程を含む。次いで、剥離ライナーを組成物の上部に取り付けてサンドイッチ構造を形成し、活性成分を含む溶液を、その水膨潤特性によって組成物に吸収させる。したがって、本発明の1つの実施形態は、以下の工程:押し出し成形機によって成分を溶融処理して押し出し組成物を形成する工程と、適切な侵食性裏打ち部材上に所望の厚さのフィルムとして組成物を押し出す工程と、冷却時に、活性成分(例えば、過酸化物)の水溶液を含むフィルムを負荷する工程とを含む、薬物含有組成物の形成方法である。あるいは、基材上に積層した組成物を、所望の濃度の活性成分を含む溶液中に浸漬し、組成物に溶液を吸収させる。液体吸収時の重量増加率の測定により、組成物の活性成分負荷率を決定し、調節することができる。
【0134】
本発明はまた、多層系を有することも意図する。例えば、保存中に主な活性成分と適合することができないさらなる活性成分を含むことが望ましいかもしれない。この様式では、一方の層が主な活性成分を含む層であり、他方の層がさらなる活性成分を含むことができる。これらの他方の層を、本発明の組成物または当該分野で公知の任意の他の生体適合性処方物(例えば、ポリイソブチレン、ジメチルシロキサン、エチレン酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニル、酢酸セルロース、酪酸セルロース、プロピオン酸セルロース、エチルセルロース、および水不溶性アクリレート)から作製することができる。さらに、層の順序に依存して、タック性層(例えば、体表上に直接配置される層)および非タック性層(例えば、接触することが望ましくない衣類または他の領域の最も近くに配置される外層)を有することが望ましいかもしれない。多層系を有することの別の利点は、最外層で使用されるポリマーの比を非タック性層が得られるように変化させて、製品中に個別の裏打ち層を含めることを回避することができることである。
【0135】
典型的なフィルムの厚さは、約0.050mm〜0.80mm、好ましくは、0.25〜0.50mmである。フィルムの厚さは重要ではなく、フィルムに組み込まれる任意の活性成分の所望の濃度、組成物が体表に接着する時間、および装着者によって望まれる快適さのレベルなどによって変化させることができる。
【0136】
V.使用方法
特に、組成物を、そのパッケージから製品を取り出し、剥離ライナー(含まれる場合)を除去し、組成物を所望の体表に適用すること(例えば、漂白することが望ましい歯への適用または創傷包帯剤もしくは薬物送達系として使用するための任意の体表への配置)によって簡単に使用することができる。本発明の組成物を、種々のサイズおよび形状で提供することができる。
【0137】
裏打ち部材を含むことができ、組成物からの活性成分の漏れを減少させるか防止する一方で、使用者が所望の時間組成物を装着する(すなわち、その後に組成物が薬物を一方向に(例えば、粘膜組織などの付着した体表のみに向かって)送達させる)ために、活性成分を密封するか不透過性にするように配合することができる。あるいは、二方向に(例えば、口腔の粘膜表面および周辺環境の両方に)薬物を送達させるために所定の透過性を有する裏打ち部材を配合することができる。透過レベル(すなわち、その選択性)を使用して、付着表面および周辺環境への相対送達速度を調節することもできる。
【0138】
組成物を、できるだけ短期間(数分間、数時間、一日中、または一晩)所望の位置に保持し、その後に、所望の治療効果または美容効果が達成された場合に除去することができる。あるいは、口腔などの湿った環境下に置かれた場合、組成物を放置したままにして、完全に侵食させることができる。したがって、本発明の1つの実施形態では、歯の漂白方法は、漂白が必要な歯に組成物を適用する工程を単純に含むことができ、別の実施形態では、方法は、所望の漂白度が得られた場合に組成物を除去する工程をさらに含むことができる。
【0139】
必要に応じて、半透明組成物を得ることができ、他人に対して目障りでないか目立たないように装着される。有効成分を含まない系をデザインし、口腔表面の保護包帯剤として(例えば、創傷包帯剤として)使用することもできる。
【0140】
組成物を、長期間装着することができるが、典型的には、約10分間〜約24時間の所定の期間装着し、その後に組成物を除去するか侵食することができる。歯の漂白に適用するために、好ましい期間は、約10分間〜約8時間(例えば、一晩)であり、30分間〜1時間が好ましい実施形態である。他の活性成分については、治療または薬用化粧品的に有効な時間を、使用する活性成分および治療条件に基づいて容易に決定することができる。
【0141】
1つの実施形態では、組成物は固体であり、製造中に裏打ち部材に付着している。したがって、組成物を1工程で適用する。あるいは、組成物は非固体であり、裏打ち部材と個別に製造し、パッケージングすることができる。この場合、組成物を最初に使用者によって適用し、その後に使用者が裏打ち部材を組成物の外面に適用する。いずれかの実施形態では、使用者は、指および親指の先で裏打ち部材に通常の指圧を印可すること、任意選択的に、適用前に組成物または体表をわずかに湿らせることによって組成物を体表上(例えば、歯または他の口腔組織の上部または下部周辺)に形成することができる。平均的な成人の指または親指の先の表面積が約1cm2であると仮定すれば、指および親指の先によって得られる通常の圧力は、約100,000〜約150,000パスカル(すなわち、3ポンドまたは1.36kg)/cm2である。典型的には、各指および親指の先によって約1秒間または2秒間、組成物に圧力を印可する。一旦指および親指の先によって裏打ち部材に印加された圧力が除去されると、組成物は形成された体表の形状を維持して体表に接着する。
【0142】
使用者が組成物を除去する準備ができている場合、組成物を体表から剥がすことによって簡単に組成物を除去することができる。必要に応じて、さらに治療するために、組成物を再度接着することができる。残存する任意の残渣は最少であり、従来の洗浄方法、歯または口腔の洗浄方法を使用して除去することができる。
【0143】
本発明の1つの実施形態では、組成物は固体であり、感圧接着剤であり、且つ吸水する。
【0144】
組成物を、非固体組成物として適用することもできる(例えば、液体またはゲルとして適用する)。例えば、使用者は、歯または他の体表に適用するためにチューブから指に組成物を押し出すこと、組成物をチューブから歯に直接押し出すこと、ブラシまたは他のアプリケーターによって組成物を適用することなどが可能である。次いで、侵食性裏打ち部材を、液体またはゲルを適用した後に個別の工程として適用することができる。溶媒、液体、またはゲルの蒸発後、組成物が乾燥してマトリクス型ポリマーフィルムまたはゲルが体表に形成される。この液体またはゲルのフィルム形成組成物の1つの実施形態では、組成物は、流動性を得るのに十分な水または他の溶媒を含む。この組成物の別の実施形態では、液体またはゲル組成物のポリマー成分は、雰囲気温度および約4℃の冷蔵温度の両方にて水−エタノール混合物に溶解性を示し、溶媒蒸発の際に混和性を示す。この液体またはゲルのフィルム形成組成物のさらに別の実施形態では、ポリマー組成物は、エタノール−水混合物中での臨界溶液温度がより低い(約36℃)。口腔で使用するために、得られたフィルム(溶媒蒸発後)は、組成物とエナメル質との間の接触を長続きさせるために、体温で唾液に不溶であるかゆっくり溶解することが好ましい。
【0145】
以下の実施例は、当業者にどのようにして本発明の組成物を作製し、使用するのかを完全に開示および説明するために記載し、本発明者らが発明と見なす範囲を制限することを意図しない。数値(例えば、量、温度など)を正確に記載するように努めたが、いくらかのエラーおよび偏差が存在するはずである。他で示さない限り、部は重量部であり、温度は摂氏(℃)であり、圧力は、大気圧または大気圧付近である。
略語
DMAEMA メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル
Eudragit E 100 メタクリル酸コポリマー(Rohm America Inc.)
Eudragit L 100 メタクリル酸コポリマー(Rohm America Inc.)
Eudragit L 100−55 メタクリル酸コポリマー(Rohm America Inc.)
Eudragit S 100 メタクリル酸コポリマー(Rohm America Inc.)
Gantrez S−97 マレイン酸−メチルビニルエーテルコポリマー(International Specialty Products)
HPC ヒドロキシプロピルセルロース(MW=1,150,000)
HPMCP フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース
PEO ポリエチレンオキシド(MW=200,000 g/mol)
PG 1,2−プロピレングリコール
PVA ポリ(ビニルアルコール)(MW=75,000)
PVP90 Kollidon(登録商標)90Fポリビニルピロリドン(BASF)
PEG400 ポリエチレングリコール400
TBC クエン酸トリブチル
TEC クエン酸トリエチル
【実施例】
【0146】
実施例1 フィルム形成ポリマーのラダー様架橋型と骨組み様架橋型との組み合わせに基づいた接着性組成物の調製および性質
第1に、フィルム形成ポリマーとしてPVP90を選択する。この場合、PVPとの水不溶性ラダー様高分子間複合体の形成によって非共有結合でPVPと架橋することができる相補ポリマーの例は、以下である:ポリアクリル酸(PAA)のホモポリマーまたはコポリマー、ポリメタクリル酸(PMA)、マレイン酸のホモポリマーまたはコポリマー、ポリビニルアルコール(PVA)のホモポリマーまたはコポリマー、ポリビニルフェノール、アルギン酸、およびヒドロキシプロピルセルロース(HPC)のホモポリマーまたはコポリマー。PVPの1つのこのような非共有結合性架橋剤は、Rohm Pharma PolymersからEudragit L 100−55として市販されているメタクリル酸と酢酸エチルとのコポリマー(1:1)である。Eudragit L 100−55と接着性PVP90−PEG400混合物とのブレンドにより、不溶性の均一な単相混合物が形成される。水に不溶性である場合、以下の表および図4および5に示すように、三重PVP−PEG−Eudragitブレンドを、ゾル画分(%)および膨潤比に関して特徴づけた。
【0147】
フィルムの調製:50gのPEG400を、200gのエタノール中に溶解した。強く撹拌しながら、以下に示す量のEudragit L 100−55粉末を添加した。強く撹拌しながら、以下に示す量のPVP90粉末を添加した。混合物を2時間撹拌して、均一な溶液を得た。溶液を2〜5時間静置して、気泡を消した。ポリマーフィルムを、PET裏打ちへの溶液流延およびその後の3日間にわたる雰囲気温度での乾燥によって調製した。0.20±0.03mmのフィルムを得た。得られたフィルム中の含水量を、120℃での蒸発散重量によって測定した。フィルム中の含水量は、11±1.5重量%の範囲であることが見いだされた。
【0148】
【表4】
フィルムの膨潤性を、重量測定によって試験した。サンプルを、0.1M緩衝液に入れ、サンプル重量に対して少なくとも200倍の溶液を採取した。サンプルを、25℃で3日間保存した。膨潤溶液を、正確に取り出し、110℃で乾燥させた。膨潤比およびゾル画分を、以下のように計算した:膨潤比=md/ms;ゾル画分(%)=100(m0−md)/m0(式中、m0は初期サンプル重量であり、msは膨潤サンプルの重量であり、mdは乾燥後のサンプル重量である)。
【0149】
上記に示すデータにしたがって、水中でのpHが高いほど膨潤比が高くなるのに対して、溶解性ブレンド画分は、わずかしかpHの影響を受けなかった。pHが高いほど、Eudragitカルボキシル基のイオン化の程度が高くなり、且つラダー様複合体の水中での膨潤が高くなる。このデータは、ブレンドの水への溶解性(ゾル画分に関して示す)が、Eudragitとの非共有結合性架橋によって調節され、且つ架橋剤の含有量に依存することを意味する。実際、Eudragit濃度の増加に伴って、ゾル画分が相対的に減少した(図4)。ゾル画分の値は、ブレンド中のPEG400の含有量に近似する一方で(図5)、PVPは、主に、Eudragitとのラダー様架橋によって不溶性状態であった。
【0150】
膨潤比は、フィルム形成ポリマー(PVP)の非共有結合性架橋度の基準である。ラダー様架橋剤(Eudragit L 100−55)の濃度が高いほど、膨潤比が低くなり、且つPVP−Eudragit水素結合の網目構造の密度が高くなる(図4)。骨組み様架橋剤(PEG)により、膨潤比およびゾル画分の両方が増加した(図5)。これにより、PVP−PEG−Eudragit三重ブレンドの膨潤および溶解を、ブレンド組成物の変化によって容易に変化させることができる。
【0151】
フィルム形成ポリマー(PVP90)とラダー様架橋剤(Eudragit L 100−55)との比および骨組み様架橋剤(PEG400)の含有量の変化は、接着性ヒドロゲルの機械的性質を調節するための実行可能なツールであることが見いだされた。PVP−PEG−Eudragitヒドロゲルの引っ張り特性は、凝固したゴムの引っ張り特性の典型である(図6)。Feldstein et al.に付与された米国特許第6,576,712号に記載のラダー様非共有結合性架橋剤(Eudragit)のPVP−PEG接着剤への添加により、機械的強度が著しく増加し、柔軟性が喪失した。最終的な引っ張り応力は、8%Eudragit含有率で最大になる一方で、破壊時の最大伸長は、単相ブレンドのEudragit濃度の増加によって速やかに減少した。36%Eudragitブレンドを例とする二相組成物は、凝集強度の喪失に伴って柔軟性がわずかに増加した。骨組み様架橋剤(PEG)は、PVP−PEG−Eudragit三重ブレンドの良好な可塑剤であった。PEG含有量の増加により、ヒドロゲルフィルムの柔軟性が促進された(図7)。
【0152】
実施例2 膨潤状態のヒドロゲルの接着特性
本実施例は、水和度の関数としてのPVP−PEG−Eudragit L 100−55ブレンドの接着特性を証明する。フィルムの調製:30gのPEG400を、280gのエタノールに溶解した。強く撹拌しながら、12gのEudragit L 100−55粉末を添加した。強く撹拌しながら、58gのPVP90粉末を添加した。混合物を2時間撹拌して、均一な溶液を得た。溶液を5時間静置して、気泡を消した。ポリマーフィルムを、PET裏打ちへの溶液流延およびその後の1日間にわたる雰囲気温度での乾燥によって調製した。次いで、フィルムを110℃のオーブン中で一晩乾燥させた。0.20±0.04mmのサイズのフィルムを得た。異なる水和度のPVP−PEG−Eudragit L 100−55フィルムを、フィルム表面上への調節された量の蒸留水の噴霧によって調製した。次いで、フィルムを、PET剥離ライナーで被覆し、アルミニウムポーチに秤量し、フィルムサンプル内の水を確実に均一に分布させるために7日間保存した。得られたフィルム中の含水量を、120℃での蒸発散重量によって測定した。11〜40重量%以上の範囲の水和度のフィルムを、以下の表に示すように調製した。水和PVP−PEG−Eudragitフィルムの接着特性(図8〜10)を、TAXT2テクスチャー分析器を使用したASTM D 2979法にしたがって試験した。平均粗さが50nmであるステンレススチールプローブを使用し、接触圧力は0.8MPaであり、接触時間は1秒であり、剥離速度は0.1mm/秒であった。
【0153】
【表5】
プローブタック応力−歪み曲線における最大応力値は、伝統的に、タックの基準と見なされている。約15〜17%水和度でタックが最大であることが立証された(図8および9)。しかし、より正確な接着の基準は、一連の剥離過程(剥離仕事)において消滅した総エネルギー量である。剥離仕事を、膨潤ヒドロゲル中の含水量の関数として図10に示す。図10中のデータから認められるように、プローブへの接着は、水和度40%でさえも十分に高かった。比較的低いブレンドの水和度で、接着剤固化しない型は常に接着性を示した。吸着水の含有量が50%を超えると、剥離型が凝集性を示すようになった。これにより、PVP/PEG/Eudragit L 100−55(12%)ブレンドは、感圧接着剤(高接着)および生体接着剤(一連の水への膨潤における接着性の増大)の両方に特有の性質をもつことが明らかになった。接着性と水和下でタックを増加させる能力とのこのような固有の組み合わせは、以前に全く報告されていなかった。
【0154】
実施例3 PVP−PEG接着剤とのブレンドの性能特性に対するメタクリル酸コポリマーの組成物の効果
以下の実施例では、フィルム形成ポリマーとしてPVP90を選択したのに対して、メタクリル酸メチルとメタクリル酸(Eudragit L 100とEudragit S 100)とのコポリマーは、ラダー様架橋剤としての役割を果たした。PEG400を、骨組み様架橋剤として使用した。フィルムを調製し、試験した。
【0155】
Eudragit L 100は、疎水性モノマーの組成物である点がEudragit L 100−55と異なる一方で、メタクリル酸のモノマー単位の含有量が同一(50%)である。Eudragit L 100−55では、疎水性モノマー単位がアクリル酸エチルで示される一方で、Eudragit L 100は、メタクリル酸とメタクリル酸メチルとのコポリマーである。同様に、Eudragit S 100は、メタクリル酸単位の含有量が減少している点で(50%が33%に減少)Eudragit L 100と区別されるのに対して、メタクリル酸メチルは、両コポリマー中で疎水性モノマーである。
【0156】
フィルムの調製:40gのPEG400を、280gの水/エタノール(1:1)混合物に溶解した。必要量の水酸化ナトリウムを溶解した(以下の表に示す)。強く撹拌しながら、12gのEudragit L 100−55粉末を添加した。強く撹拌しながら、58gのPVP90粉末を添加した。混合物を2時間撹拌して、均一な溶液を得た。溶液を5時間静置して、気泡を消した。ポリマーフィルムを、PET裏打ちへの溶液流延およびその後の3日間にわたる雰囲気温度での乾燥によって調製した。0.20±0.04mmの厚さのフィルムを得た。フィルム中の含水量を、120℃での蒸発散重量によって測定した。フィルムの水和度は、10±1.5重量%であった。
【0157】
これらのPVP−PEG−Eudragitフィルムの接着特性を以下に示す。
【0158】
【表6】
PVP−PEGブレンドとラダー様架橋剤としてのEudragit L 100とのブレンドは水溶性であることが見いだされた一方で、ラダー様架橋剤としてEudragit S 100を含むブレンドは、水膨潤性ヒドロゲルであった。
【0159】
実施例4 フィルム形成ポリマーとしてのメタクリル酸コポリマーおよびラダー様架橋剤としてのPVPを含む組成物
実施例1〜3に記載のように、フィルム形成ポリマーはPVPであり、ラダー様架橋剤は、Eudragit L 100−55、L 100、またはS 100であり、本実施例は、Eudragitがフィルム形成ポリマーとしての機能を果たし、ラダー様架橋剤がPVPである逆組成物(inverted composition)を示す。ゾル画分は、水溶性骨組み様架橋剤(PEG)の含有量と密接に対応し、ラダー様高分子間複合体の形成によって不溶性生成物が得られることを示していた。
【0160】
【表7】
これにより、PVP−PEG−Eudragit L 100−55ブレンドの組成の変化により、種々の程度の親水性の接着性材料が得られ、膨潤比の値は、2〜60の範囲であった。
【0161】
実施例5 非アクリル酸カルボキシル含有ラダー様架橋剤とのPVP−PEG骨組み様複合体の段階的に溶解する膨潤性の接着性ブレンド
フィルム形成ポリマーとしてPVP90を選択し、骨組み様架橋剤および接着増強剤としてPEG400を選択した。次いで、マレイン酸とカルボキシル基を保有するセルロース誘導体とのコポリマーを評価し、適切なラダー様架橋剤であると決定された。
【0162】
PVP−PEG複合体中のラダー様架橋剤としてのマレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマーの大部分使用例のうちの1つは、Gantrez S−97コポリマーである。40重量%のPEGならびに5、10、15重量%のGantrezを含むPVPブレンドを、水−エタノール溶液(1:1)中での流延/乾燥によって得た。全ブレンドが水溶性であるにも関わらず、フィルムの全溶解のために必要な時間はラダー様架橋剤(Gantrez)の含有量と直線関係にあった。対照的に、ブレンド中のGantrezの含有率が低いほど、接着性が高くなる。
【0163】
異なるカルボキシル含有ポリマーがPVPなどの電子供与親水性ポリマーの適切なラダー様架橋剤であるという提案を支持する別の典型的な例は、HPMCPである。PEG400を、PVP90の骨組み様架橋剤として使用した。
【0164】
フィルムの調製:40gのPEG400を、240gのエタノール/水混合物(80(重量部のエタノール部分):20(重量部の水部分))に溶解した。次いで、強く撹拌しながら、必要量のHPMCPおよびPVPを溶解した。混合物を2時間撹拌して、均一な溶液を得た。溶液を5時間以上静置して、気泡を消した。ポリマーフィルムを、PET裏打ちへの溶液流延およびその後の3日間にわたる雰囲気温度での乾燥によって調製した。0.20±0.04mmの厚さのフィルムを得た。これらの膨潤ヒドロゲルの接着挙動は、PVP−PEG−Eudragit L 100−55ブレンドによって示されるパターンに従った。フィルムの膨潤特性および溶解特性を、以下に示した。
【0165】
【表8】
実施例6 接着性ヒドロゲル中のPVPのラダー様架橋剤としてのヒドロゲル含有親水性ポリマーの使用
本明細書中でPVPと例示される電子供与親水性フィルム形成ポリマーの適切なラダー様架橋剤のリストはポリ酸だけではない。他の適切な親水性ポリマーは、その反復単位中に水酸基を保有する。本実施例は、PVPのラダー様架橋剤としてのPVAおよびHPCなどのヒドロゲル含有セルロース誘導体の適切性を証明する。
【0166】
PVP90と骨組み様架橋剤としてのPVA、PEG、PG、またはグリセロールとのブレンドを、以下のように調製することができる。強く撹拌しながら、必要量のPVAを、95℃の蒸留水に溶解した(1重量部のPVAを溶解するために、9重量部の水を要した)。次いで、強く撹拌しながら、必要量のPGおよびPVPを溶解した。混合物を85℃で2時間撹拌して、均一な溶液を得た。ポリマーフィルムを、裏打ち部材への溶液流延およびその後の3日間にわたる雰囲気温度での乾燥によって調製した。0.20±0.02mmの厚さのフィルムを得た。フィルムの接着特性は、PVP−PEG−Eudragit L 100−55ブレンドで認められた接着特性と類似していることが見いだされた。ゾル−ゲル分析の結果を、以下に列挙する。
【0167】
【表9】
別の適切なPVPのラダー様架橋剤HPCである。高分子量のPVP90(58.67重量%)、PEG400(29.33%)、およびHPCを、撹拌しながらエチルアルコールに溶解した。得られた溶液を、剥離ライナー上に流延し、50℃で乾燥させた。別のブレンド生成方法は、以下の実施例11に示す成分の直接的混合およびその後の混合物の押し出し成形を含む。調製されたブレンドは、62%の可溶性画分および膨潤比10.13を有していた。処方物の接着特性は、PVP−PEG−Eudragit L 100−55によって示されるパターンに従う。
【0168】
58.67重量%のPVP90、29.33重量%のPEG400、9.6重量%のHPC、および2.4重量%のEudragit L 100−55を含む接着性ブレンドを、上記のように調製した。本組成物の特性は、Eudragit L 100−55とPVP−PEG−HPCブレンドとの間の特性であることが見いだされた。ゾル画分の含有量は48%であり、膨潤比は6.8であった。
【0169】
実施例7 ラダー様架橋剤と骨組み様架橋剤との組み合わせを含む高分子間複合体に基づいた無PVP接着性ヒドロゲル
PVPが本発明の接着剤中でフィルム形成成分としての機能を果たすことが適切な親水性ポリマーの最も首尾の良い代表例の1つであるが、他の適切なフィルム形成ポリマーには、PEOが含まれる。PEOは、PVPと比較して遥かに弱い電子供与ポリマーである。この理由のために、PEOは、ポリ酸などの強いプロトン供与ポリマーと十分に強い水素結合を形成することができる。
【0170】
68.2重量%のPEO、骨組み様架橋剤としての25重量%のPG、およびラダー様架橋剤としての6.8重量%のGantrez S−97を含むブレンドを、水溶液の流延/乾燥によって調製した。調製された厚さが0.2mmのフィルムは強く凝集し(最終的な引っ張り応力は、5.0MPaであった)、Gantrez S−97のカルボキシル基とのH結合によってPEOが架橋していることを示す。水へのフィルム浸漬の際、フィルムは1〜2分間溶解した。中程度に水和したフィルムで相当なタックが認められた。13重量%の水を含むフィルムで最大タック(約0.8MPa)が認められた。
【0171】
実施例8 ラダー様高分子間複合体に基づいた接着性組成物の調製および特性
上記の親水性接着剤がポリマー成分の間の水素結合によって形成される一方で、以下の表に示したサンプルは、フィルム形成ポリマーのH結合および静電架橋によるカップリングによって調製されたヒドロゲルの性質を示す。静電相互作用は、一般に、H結合よりも強い。Eudragit E−100を、フィルム形成ポリマーとして使用し、これは、DMAEMAと、メタクリル酸ブチルと、メタクリル酸メチル(2:1:1)とのコポリマーである。DMAEMAのモノマー単位は、ラダー様架橋剤(Eudragit L 100−55)中でカルボキシル基と静電結合を形成することができる。
【0172】
【表10】
実施例9 従来の感圧接着剤および生体接着剤と比較した高分子間複合体に基づいた接着性組成物の性能特性
本発明の三重ブレンドヒドロゲル(PVP−PEG−Eudragit L 100−55)の特性を、以下の特性と比較した:従来の感圧接着剤(PSA;DURO−TAK(登録商標)34−4230、National Starch and Chemicals)、古典的な生体接着剤(共有結合性架橋ポリアクリル酸ポリマーであるCarbopol(登録商標)974PおよびNoveon(登録商標)AA1(共に、B.F.Goodrich,Co.)、Feldstein et al.に付与された米国特許第6,576,712号に記載のPVP−PEG二重(binary)ブレンド、ならびに本発明の親水性接着剤(実施例1〜7)。
【0173】
【表11】
上記でSISブロックコポリマーベースのDURO−TAK(登録商標)34−4230接着剤を例とするPSAは、粘弾性ポリマーの特定のクラスを示す。短時間(1〜2秒間)のわずかな外圧の印加における種々の基材と強い接着剤固化を形成することができる。ヒトで使用するための典型的なPSAは主にガラス転移温度が低い(−120〜−30℃の範囲)(通常は粘着樹脂の添加によって増加する)疎水性エラストマーに基づくことは注目に値する。PSAの一般的性質は、基材表面が湿った場合の接着性の喪失である。この理由のために、従来のPSAを、高度に水和し、且つ柔軟な生体組織(口腔粘膜など)へのために使用することができない。この目的のために、通常は親水性生体接着剤を使用するが、これは、一般に、乾燥状態で非タック性を示すが、湿った基材に接着する。しかし、このような生体接着剤の接着強度は、通常、PSAの接着強度よりもはるかに低い。
【0174】
このデータから認められるように、本発明の接着剤は、感圧接着剤と生体接着剤の両方の性質を有する。実際、その接着強度は、PSAに特有であり、生体接着剤のような湿った基材に対する接着性が増加した。ヒドロゲル組成の変化によって、非共有結合性架橋ヒドロゲルに基づいた生成物の接着性水分吸着および機械的性質をさらに容易に調節することができる(図3〜7を参照のこと)。
【0175】
従来のアクリル酸PSAおよび本発明の高分子間複合体に基づいた3つのグレードの接着剤のin vivoでの乾燥および湿ったヒト前腕の皮膚への引き剥がし粘着力を評価した。データにより、米国特許第6,576,712号に記載の水溶性PVP−PEG接着剤の接着特性が、従来のPSAの特徴である高接着性と生体接着剤の特徴である湿った皮膚および生体組織に接着する能力とを組み合わせることによってPSAおよび生体接着剤の性質を共有することが確立された。本発明の水溶性PVP−PEG接着剤およびPVP−PEG−Eudragit L 100−55接着剤の接着挙動を、以下の2つの異なるグレードの従来のPSAの性質と比較した:SISベースのDURO−TAK(登録商標)34−4230 PSAおよびアクリル酸PSA(3M)。
【0176】
剥離下での最大応力に関して示すと、高分子間複合体に基づいた接着剤のタックは、従来のPSAのタックに匹敵することが見いだされた。しかし、本発明の接着性ブレンドの異なる特徴は、フィルム形成ポリマーの鎖の非共有結合性架橋に起因する最大伸長値がより低いことであった。骨組み様架橋がラダー様架橋よりも著しく弱いので、水溶性PVP−PEG接着剤は、ラダー様架橋型を有する接着剤よりもプローブ剥離が強いことを示した。これに関して、ラダー様架橋によって得られた接着剤の流動性および最大伸長を増加させるための主なツールが、水への膨潤過程で可塑剤として機能することができる骨組み様架橋剤との混合による網目構造密度の希薄化およびラダー様架橋剤の濃度の減少でもあることに留意することが適切である。
【0177】
実施例10 ポリマー成分の直接鉄器混合およびその後の押し出し成形による接着性フィルムの調製
本発明の親水性および両親媒精接着剤の挙動は、共有結合性架橋ポリマーに特有である。しかし、共有結合性架橋系と対照的に、高分子間複合体に基づいた接着剤を、より簡潔なブレンド過程を使用して容易に調製することができ、さらに、架橋ポリマーを使用して結合することができないフィルム形成特性が得られる。
【0178】
上記実施例に記載の処方物を溶液の流延およびその後の乾燥によって調製する一方で、本発明の接着性フィルムを乾燥状態の成分の直接的混合およびその後の押し出し成形によって生成することもできる。Thermo Haake Mixerを使用して直接混合するのに対して、Skania Single−Screw Extruderを使用して押し出し成形過程を行った。混合および押し出し成形手順を以下に記載する。
【0179】
PVP−PEG−Eudragit組成物の調製
ブレンド組成物は以下であった:58.7重量%PVP90、9.33重量%PEG400、および12.0重量%Eudragit L 100−55。
【0180】
混合手順:全量のPEGおよびEudragitを室温で混合した。次いで、都合のよい調度に到達させるために室温で一定量のPVPを添加し、プレミックスを生成した。このプレミックスを30rpmにて55℃で撹拌しながらミキサー中に入れた。次いで、撹拌強度を60rpmに増加させて、残存するPVPの一部を導入した。混合レジメ(regime)を以下に示す。
【0181】
【表12】
押し出し成形手順:約5ミルの厚さのフィルムを調製するために、スリット厚が100μmおよび幅が6.5cmの金型を構築した。以下に示すように、2つの温度レジメ(regime)(IおよびII)を使用した。
【0182】
【表13】
次いで、2つのPET抗接着フィルムの間に処方物層を押し出し成形し(いかなるフィルムも含まない)、約5〜7mm/cの線速度で引き延ばした。
PVP−PEG−HPC組成物の調製
ブレンド組成物は、以下であった:58.67重量%PVP90、29.33重量%PEG400、および12.0重量%HPC。混合手順は上記のとおりであり、混合レジメを以下に示す。
【0183】
【表14】
押し出し成形手順は上記のとおりであり、レジメを以下に示す。
【0184】
【表15】
PVP−PEG−HPC−Eudragit組成物の調製
ブレンド組成物は以下であった:58.67重量%PVP90、29.33重量%PEG400、9.60重量%HPC、および2.40重量%Eudragit L 100−55。混合および押し出し成形手順は上記のとおりであり、レジメを以下に示す。
【0185】
【表16】
【0186】
実施例11 創傷包帯剤
以下のサンプルは、どのようにして本発明のヒドロゲル組成物を銀含有抗菌創傷包帯剤のために使用することができるのかについて例示する。
【0187】
【表17】
抗菌包帯剤は、水および滲出液に不溶であるが膨潤性を示し、したがって、大量の滲出液を吸収する。包帯剤は最初はタック性を示し、乾燥および中程度に滲出した創傷に対して良好な接着性を維持するが、大量の水での洗浄によって痛みを伴うことなく皮膚から除去することができた。したがって、本実施例の包帯剤は、床擦れ、糖尿病性潰瘍、動脈潰瘍、および種々の潰瘍の治療に有用である。
【0188】
Agイオン選択電極を使用した電位差測定法を使用して、包帯剤からの銀放出を研究した。濃度範囲が2.5×10−6〜10−3Mの硝酸銀水溶液を使用して、Agイオン選択電極を較正した。円形のフィルムサンプル(直径1インチ、面積5cm2)を、金型で切断し、両面テープによってガラスプレートに積層した。上面がAg放出側であるガラスプレートをビーカーに入れ、50mlの蒸留水をビーカーに注いだ。次いで、系をペトリ皿で覆い、オーブンに入れ、25±0.2℃に設定した。特定の時点後、サンプル上のビーカー中の受容体溶液を撹拌し、銀イオン選択電極を使用して銀濃度を測定した。測定後、受容体溶液を除去し、50mlの蒸留水と置換した。蓄積Ag放出を計算し、1cm2の抗菌包帯剤あたりのμgで示した。サンプル11−1は、大量の硫酸銀を送達することが見いだされた。
【0189】
実施例12 歯漂白ストリップ
歯漂白のための組成物の1つの実施形態を、溶融押し出し過程を使用して以下の成分から調製した。
【0190】
【表18】
成分を、以下のようにBrabender単一スクリュー押し出し成型機にて融解処理した。100〜150℃で、Eudragit L 100−55を、最初に押し出し成形機に添加し、その後にPVPおよびPEGを添加した。組成物を、2つのポリエチレンテレフタラート剥離ライナーの間に厚さ0.35mmに押し出した。過酸化水素溶液を、押し出したフィルムに添加した。歯表面に適用した場合、その直後に最初に非タック性を示すフィルムが象牙質に接着し、唾液で膨潤してゆっくり溶解し、過酸化水素を放出する。
【0191】
図11は、PVP−PEG−Eudragit L 100−55組成物に基づいた歯漂白ストリップおよびCrest Whitestrips(商標)(Procter&Gamble Co.,Cincinnati,OH;「Crest Product」と呼ばれる)からの過酸化水素のin vivo放出プロフィールを比較したものである。Crest Productは、薄いポリエチレンフィルム上のCarbopol 956ゲル中に5.3%の過酸化水素を含んでいた。Carbopolは、ポリアクリル酸の共有結合性架橋によって作製された生体接着性ヒドロゲルの古典的な代表例である。過酸化水素のin vivo放出量を、予め決定した装着期間における歯表面から除去された生成物中の過酸化水素の残存によって測定した。本発明の組成物により、Crest Productと比較して、過酸化水素の放出期間が延長された。実際に、Crest Product中のCarbopolベースのマトリクスと比較して、本発明の生体接着性PVP−PEG−Eudragit L 100−55フィルムによって溶解速度が遅延された。同様に、本発明の組成物からの過酸化水素放出時間の延長により、歯漂白効果が改善された。
【0192】
実施例13 液体歯漂白処方物
本発明に記載の接着性ブレンドを、接着性フィルムの形態または適切な部位の乾燥時にフィルムを形成することができる適切な溶媒を含む溶液として適用することができる。液体歯漂白剤を調製するために、以下の成分を混合した。
【0193】
【表19】
Eudragit RLは、Rohm Pharma Polymersから市販されているトリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロリドとエチルアクリレートおよびメチルメタクリレートとのコポリマー(0.2:1:2)である。水性溶媒中に不溶であるので、ヒドロゲル組成物中で、急速な溶解からヒドロゲルフィルムを保護するために役立つ。
【0194】
歯表面に適用し、30秒間乾燥させた場合、液体組成物は、薄いヒドロゲルフィルムを形成し、歯上に30分間を超えて保持され、歯漂白効果が得られる。
【0195】
実施例14 治療薬を含む接着性マトリクス
以下の組成物を、以下に列挙した成分のエタノールへの溶解、溶液の流延、および50℃での乾燥によって調製した。
【0196】
サンプルは、フィルム形成ポリマーとしてアクリレートポリマー(Eudragit E 100)を使用する。Eudragit L−100−55はEudragit E 100のラダー様架橋剤であり、PVPはEudragit L−100−55のラダー様架橋剤である。PVPはまた、ブレンドの親水性を増加させるのに役立つ。PEGは、PVPの骨組み様架橋剤である。サンプルは、可塑剤としてクエン酸アルキル(TEC)も含む。
【0197】
【表20】
実施例15 液体フィルム形成包帯
本実施例では、接着剤を、可溶性ラダー様架橋剤のためのラダー様架橋剤および骨組み様架橋剤と共に可溶性ラダー様架橋剤と配合した。主成分は、不溶性フィルム形成ポリマーであり、可塑剤を含んでいた。
【0198】
サンプル15−1〜15−4は、液体包帯としての皮膚への適用に適切な液体組成物を示したものである。サンプル15−1は、不溶性フィルム形成ポリマー(Eudragit RS)およびこのポリマーの可塑剤(クエン酸トリブチル(TBC))を含む歯漂白のための液体処方物である。Eudragit RSは、Rohm Pharma Polymersから市販されているトリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロリド(0.1)とエチルアクリレート(1)およびメチルメタクリレート(2)とのコポリマーである。サンプル15−2〜15−4は、PVPラダー様架橋剤のためのラダー様架橋剤を含まない。
【0199】
皮膚適用のための液体包帯および口唇ヘルペス(cold sore)組成物はまた、局所麻酔などの活性成分を含み得る。適切な局所麻酔には、塩酸ジブカイン、ジブカイン、塩酸リドカイン、リドカイン、ベンゾカイン、p−ブチルアミノ安息香酸2−(ジエチルアミノ)エチルエステルヒドロクロリド、塩酸プロカイン、塩酸テトラカイン、塩酸クロロプロカイン、塩酸オキシプロカイン、メピバカイン、塩酸コカイン、および塩酸ピペロカインが含まれる。
【0200】
任意の天然または合成香味物質(Chemicals Used in Food Processing,Pub.No.1274,National Academy of Sciences,pages 63−258に記載の香味物質など)を、本発明の組成物に含めることができる。適切な香味物質には、当業者には公知であるように、ウィンターグリーン、ペパーミント、スペアミント、メントール、フルーツフレーバー、バニラ、シナモン、香辛料、フレーバーオイル(クローブオイル)、および含油樹脂、ならびにこれらの組み合わせが含まれる。香味物質の使用量は、通常、好みの問題であり、フレーバー型、個別のフレーバー、および所望の強さなどの要因の影響を受ける。
【0201】
サンプル15−3はまた、モノオレイン酸グリセロール(Peceol,Gattefosse,France)などの皮膚軟化剤を含む。
【0202】
【表21】
本発明の実施には、他で示さない限り、ポリマー化学、接着剤製造、およびヒドロゲル調製のための従来技術を使用し、これらは当業者の範囲内である。このような技術は、文献中に完全に説明されている。
【0203】
本発明を好ましい特定の実施形態と組み合わせて記載しているが、上記の説明および実施例は例示を意図し、本発明の範囲を限定しないと理解すべきである。他の態様、利点、および修正形態が、本発明に属する当業者に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0204】
【図1】図1は、骨組み様PVP−PEGネットワーク複合体の略図である。PVP−PEG複合体は、高凝集強さ(PVP−PEG水素結合に起因する)と巨大な自由体積(PEG鎖の相当な長さおよび可動性に起因する)とを併せ持つ。PVP−PEGブレンド中の自由体積の増加を強調するために、この複合体構造型を、「骨組み様」構造と定義する。複合体の骨組み様構造は、PEG単鎖の両末端の反応性官能基の位置に起因する。
【図2】図2は、ラダー様非共有結合性架橋剤としての相補プロトン供与ポリマーとのラダー様PVP複合体の略図である。相補ポリマーが骨格の反復単位中に反応性官能基を含む場合、得られた複合体は、いわゆる「ラダー様」構造を有する。
【図3】図3は、骨組み様架橋型とラダー様架橋型とを組み合わせた高分子間複合体の略図を示す。「FFP」はフィルム形成ポリマーを示し、「CCL」は骨組み様非共有結合性架橋剤を示し、「LLC」はラダー様非共有結合性架橋剤を示す。
【図4】図4は、水素結合、ラダー様架橋剤、Eudragit L 100−55の濃度の関数としてのPVP(50重量%)とPEGおよびEudragit L 100−55との三重ブレンドについてのゾル分率および膨潤比(pH4.6)を示す。
【図5】図5は、水素結合、骨組み様架橋剤、PEGの濃度に対するPVPとPEGおよびEudragit L 100−55との三重ブレンド(PVP:Eudragit比は5:1)についてのゾル分率および膨潤比(pH4.6)の依存を示す。
【図6】図6は、20mm/分の絞り率での一軸伸長下でのPVP−PEG−Eudragit L 100−55ブレンドフィルムの破壊までの引張り応力−歪み曲線に対する非共有結合性ラダー様架橋剤(Eudragit L 100−55)の効果を示す。骨組み様架橋剤PEGの濃度を、50重量%に固定した。
【図7】図7は、20mm/分の絞り率での一軸伸長下でのPVP−PEG−Eudragit L 100−55ブレンドフィルムの破壊までの引張り応力−歪み曲線に対する非共有結合性骨組み様架橋剤(PEG)の効果を示す。PVP:Eudragit L 100−55比は5:1である。
【図8】図8は、組成物が58重量%のPVP、30重量%のPEG、および12重量%のEudragit L 100−55を含む場合のPVP−PEG−Eudragit L 100−55ブレンドの接着特性に対する吸着水の影響を示す。吸着水の量(重量%)を示す。
【図9】図9は、PVP−PEG−Eudragit L 100−55ヒドロゲルについての接着剤剥離対吸着水の重量分率下での最大応力および最大伸長のプロットである。
【図10】図10は、PVP−PEG−Eudragit L 100−55ヒドロゲルについての吸着水の関数としての接着剤剥離の仕事量を示す。
【図11】図11は、Carbopol生体接着剤およびPVP−PEG−Eudragit L 100−55ヒドロゲルに基づいた歯漂白ストリップからの過酸化水素のin vivo放出プロフィールを示す。
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、ポリマー組成物に関する。より詳細には、本発明は、ヒドロゲルおよび接着性組成物、前記組成物の製造のための材料を選択する方法、薬物送達系(例えば、局所、経皮、経粘膜、イオン泳動)、医学的皮膚被覆、創傷包帯剤および創傷治癒製品、ならびに生体用電極などの治療への適用ならびに歯漂白(tooth whitening)製品などの薬用化粧品への適用のためのこれらの組成物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
種々の型の帯具および創傷包帯剤が公知であり、創傷および熱傷の保護に使用されている。典型的には、創傷包帯剤は、創傷滲出液を除去して創傷を乾燥させ、治癒を促進するように吸収材料で作製されている。創傷包帯剤はまた、抗生物質または局所麻酔薬などの1つまたは複数の薬理学的活性成分(active agent)を含み得る。一般的に使用されている創傷包帯剤には、ガーゼおよび綿のパッドなどの繊維性材料が含まれ、これらは、吸収性があるという点で有利であるが、繊維が創傷または新規に形成された組織に接着し、除去時に創傷を傷付け得ることが問題である。他の創傷包帯剤は、泡およびスポンジを使用して調製されているが、これらの材料の吸収性は制限されることが多い。さらに、このような創傷包帯剤は、それ自体に接着性がないので、接着テープが必要である。
【0003】
親水性感圧接着剤(「PSA」)は、種々の医薬品および化粧品(局所および経皮薬物送達系、創傷包帯剤、フェイスマスク、口腔および粘膜投与のためにデザインされた生体接着フィルム、ならびに歯漂白ストリップなど)で使用されている。親水性PSAの一般的な顕著な特徴は、典型的には、湿った生体基材に接着することであり、従来の疎水性(ゴムベースの)PSAは、典型的には、湿った場合にその接着特性が失われる。
【0004】
PSAの接着特性は、製品がどのようにしてどこで使用されるかによって変化する。経皮薬物送達および局所適用のために、例えば、接着パッチは、使用直後はタックが高いが、このようなタックが全適用期(1日〜1週間)に維持されなければならない。口腔パッチおよび歯科用ストリップ(tooth strip)のために、弾性ポリマーフィルムを使用することがしばしば望ましく、この弾性ポリマーフィルムは、乾燥表面に接着しないが、水和した柔軟な粘膜表面および/または湿った固形組織(歯など)の表面に適用した場合に高いタック性を示す。創傷包帯剤および他の種々の目的のために、パッチ除去時の皮膚の損傷を回避するために、大量の水での膨潤下でその接着性を失う水溶性接着剤または不溶性ヒドロゲル接着剤のいずれかが好ましい。フェイスマスクおよびいくつかの歯漂白製品は、水溶液またはエタノール−水溶液の形態の親水性ポリマー組成物を使用するのが最良であり、この親水性ポリマー組成物は、表面に置いた後に乾燥し、それにより、下にある組織表面に接着するが、他の表面に接着しない不溶性ポリマーフィルムを形成する。
【0005】
医薬品および化粧品で有用なポリマー材料の接着特性を有効に調整するために、接着特性の基本となる機構の分子的洞察に基づいてデザイン方法が開発されている。最近確立されたように、感圧接着は、分子レベルで、2つの明らかに両立しない分子構造型のカップリングに起因する。これにより、強い凝集相互作用エネルギーと増強された自由体積との間に微妙なバランス(fine balance)が存在することが明らかとなっている。例えば、非特許文献1;非特許文献2;および非特許文献3を参照のこと。
【0006】
PSAポリマーの分子構造の「自由体積」特性により、PSA材料が巨視的レベルでの高いタックおよび液体様流動性を示し、それにより、接着剤固化(adhesive bond)が急速に起こる。「凝集相互作用エネルギー」または「凝集エネルギー」特性は、PSAポリマーの凝集強さを示し、一連の接着剤接合の不成立(failure)時の剥離エネルギー(detaching energy)の損失を示す。この所見に基づいて、新規の親水性接着剤を得るための一般的な方法は、非接着性親水性高分子量ポリマーを適切な単鎖可塑剤と物理的に混合する工程を含む、Feldstein et al.に付与された特許文献1に記載されている。
【0007】
種々のPSAでは、異なる分子構造によって適切な凝集エネルギー量および自由体積が得られ、それにより、ポリマー材料の接着特性が定義される。例えば、アクリル系PSAでは、その強い凝集相互作用エネルギーは側鎖中のアルキルラジカルの相互疎水性引力の結果であるのに対して、巨大な自由体積は、側鎖中の負電荷のカルボキシル基または大量のイソアルキルラジカルの静電反発力に起因する。合成ゴムでは、巨大な自由体積は、高用量且つ低密度の粘着樹脂分子の添加によって得られる。親水性接着剤では、特許文献2に記載のように、高分子量のポリビニルラクタム(すなわち、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)(「PVP」)またはポリビニルカプロラクタム(「PVCap」))を単鎖ポリエチレングリコール(「PEG」)とブレンドした場合、高い凝集強度は、例えば、PVPのカルボニル基とPEGの相補末端ヒドロキシルとの間の水素結合に起因する一方で、巨大な自由体積は、適切な長さおよび可動性のPEG鎖の両末端の反応基の位置に起因する。
【0008】
ポリマー材料の接着特性を担う高凝集エネルギーと巨大な自由体積との間の適切なバランスは、種々のPSA特性の評価によって達成される。例えば、凝集エネルギーと自由体積との比によって、ポリマーのガラス転移温度(Tg)および弾性率(E)の値が定義される。凝集エネルギーがより高くなり自由体積がより低くなるほどTgおよびEの値も高くなる。全PSAが約−55℃〜−30℃の範囲のTgおよび約1〜105PaのEを示すことが十分に認識されている。
【0009】
特許文献3では、親水性ポリマーおよび可塑剤は、互いに水素結合または静電結合することができ、接着強度、凝集強度、および親水性などの接着性組成物の重要な特徴を至適化する比で存在する。可塑剤は、両末端に相補反応性官能基を有し、両末端基が親水性ポリマー中で相補官能基と相互作用する場合、可塑剤は、親水性ポリマーのより長い鎖の間の非共有結合性架橋剤として作用する。その際に、可塑剤は、PSAポリマーブレンドの凝集強さが増強された可塑化効果と組み合わされる。新規の親水性PSAの調整のためのこの分子デザイン方法には、長鎖高Tg親水性ポリマーの接着能力および最良に接着する親水性ポリマーと可塑剤(凝集増強剤(cohesive enhancer))との比が記載されている。
【0010】
乾燥時、特許文献4に記載の接着剤(例えば、高分子量PVPと200〜600g/molの分子量範囲のオリゴマーPEGとのブレンド)は、乾燥表面に対する接着性が比較的低い。基材表面を湿らせるか、接着剤が吸水した場合に接着性が増加する。接着剤が5〜10%の吸着水(absorbed water)を含む場合に接着性が最大になる。これは、通常、相対湿度が50%の大気に接着剤が曝露された場合にそうである。さらに、水と直接接触する場合、接着剤は溶解する。しかし、これらの接着剤は、共有結合性架橋を含まないので、膨潤性を示すが、水不溶性の接着剤を必要とする用途に適切ではない。特に、これらの先行技術の接着剤は、さらに一層高い水和レベル(例えば、15%およびそれを超える吸着水)でより高い接着性を示すことが望ましい場合にあまり有用ではない。
【0011】
したがって、先行技術は、凝集強度、接着強度、タック、弾性、および水膨潤性に関して調整することができるポリマーおよびヒドロゲル組成物を開示しているが、分子レベルで凝集相互作用エネルギーと自由体積との釣り合わせに注目した新規の親水性PSAを調製するための分子デザイン法を開発することが依然として望ましい。
【0012】
これらの問題を解決するために、本発明は、可溶性ポリマーのブレンドによる水不溶性フィルム形成組成物を得る方法に関する。これは過去に試みられているが(例えば、Chambers et al.に付与された特許文献5およびLorenz et al.に付与された特許文献6(カルボキシル含有ポリマーと多価アルコールおよびポリアミンとの混合)およびShirai et al.に付与された特許文献7およびZajaczkowskiに付与された特許文献8(ポリアクリル酸「PAA」の架橋またはアクリル酸と2価および3価の金属(Ca2+、Al3+)の塩とのコポリマー))、これらの手順は全て混合技術による非接着性吸水剤の生成に関する。
【特許文献1】米国特許第6,576,712号明細書
【特許文献2】米国特許第6,576,712号明細書
【特許文献3】米国特許第6,576,712号明細書
【特許文献4】米国特許第6,576,712号明細書
【特許文献5】米国特許第5,597,873号明細書
【特許文献6】米国特許第5,306,504号明細書
【特許文献7】米国特許第4,771,105号明細書
【特許文献8】米国特許第5,726,250号明細書
【非特許文献1】Feldstein et al.Polym.Mater.Sci.Eng.(1999)81:465−466
【非特許文献2】Feldstein et al.,General approach to the molecular design of hydrophilic pressure−sensitive adhesives,Proceed.25th Annual Meeting Adhesion Soc.and 2nd World Congress on Adhesion and Relative Phenomena,February 2002,Orlando,FL,vol.l(Oral Presentations),p.292−294
【非特許文献3】Chalykh et al.J.Adhesion(2002)78(8):667−694
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
発明の開示
本発明の1つの態様は、接着性組成物であって、水膨潤性不水溶性ポリマーおよび水溶性ポリマーから選択されるフィルム形成ポリマーと、骨格の反復単位中に相補反応性官能基を含み、且つ前記フィルム形成ポリマーとラダー様高分子間複合体を形成することができるラダー様非共有結合性架橋剤と、前記相補反応性官能基をその末端に含み、且つ少なくとも1つのフィルム形成ポリマーまたはラダー様非共有結合性架橋剤と骨組み(carcass)様複合体を形成することができる骨組み様非共有結合性架橋剤と、前記フィルム形成ポリマーの量がラダー様非共有結合性架橋剤の量または骨組み様非共有結合性架橋剤の量よりも多いこととを含む、接着性組成物に関する。
【0014】
本発明の別の態様は、接着性組成物で用いるポリマー成分を選択する方法であって、(a)フィルム形成ポリマーを選択する工程と、(b)骨格の反復単位中に相補反応性官能基を含み、且つ選択された前記フィルム形成ポリマーとラダー様高分子間複合体を形成することができるラダー様非共有結合性架橋剤を選択する工程と、(c)相補反応性官能基をその末端に含み、且つ少なくとも1つの選択された前記フィルム形成ポリマーまたは選択された前記ラダー様非共有結合性架橋剤と骨組み様複合体を形成することができる骨組み様非共有結合性架橋剤を選択する工程と、ここで、前記フィルム形成ポリマーの量が前記ラダー様非共有結合性架橋剤の量または前記骨組み様非共有結合性架橋剤の量よりも多いこととを含む方法に関する。
【0015】
本発明の別の態様は、接着性組成物を製造する方法であって、(a)(i)フィルム形成ポリマーを選択する工程と、(ii)骨格の反復単位中に相補反応性官能基を含み、且つ選択された前記フィルム形成ポリマーとラダー様高分子間複合体を形成することができるラダー様非共有結合性架橋剤を選択する工程と、(iii)相補反応性官能基をその末端に含み、且つ少なくとも1つの選択された前記フィルム形成ポリマーまたは選択された前記ラダー様非共有結合性架橋剤と骨組み様複合体を形成することができる骨組み様非共有結合性架橋剤を選択する工程と、ここで、前記フィルム形成ポリマーの量が前記ラダー様非共有結合性架橋剤の量または前記骨組み様非共有結合性架橋剤の量よりも多いことと、(b)前記フィルム形成ポリマー、前記ラダー様非共有結合性架橋剤、および前記骨組み様非共有結合性架橋剤を混合する工程と、(c)溶融押出成形または溶液流延法によって接着性組成物を形成する工程とを含む方法に関する。
【0016】
本発明の方法によって生成された接着性組成物は、先行技術と比較して多数の有意な利点を提供する。特に、これらの組成物は、先行技術を超える1つまたは複数の以下の利点を提供する:取り扱いが容易なこと、接着、吸収、透明性、および膨潤性などの性質を調節および至適化することができるように製造中に容易に修飾されること、組成物が湿るまで粘着性を示さないように水分の存在下でタックが増減するように処方することができること、活性成分が含まれる場合、粘膜面上への(例えば、使用者の口内への)組成物からのその漏れが最小であること、使用者が歯または口腔表面からヒドロゲル組成物を除去することなく漂白範囲を見ることができるように半透明に加工することができること、歯茎または口内の粘膜の損傷を最小にすること、快適且つ穏やかに温めることができること、皮膚、歯、または粘膜面から容易に除去され、且つ残渣を残さないこと、装着または作用の持続時間を延長することができること、および種々の活性成分を徐放および制御放出することができること。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(発明の詳細な説明)
I.定義および命名法
本発明を詳述する前に、他で示さない限り、本発明は特定のヒドロゲル材料または製造過程に制限されず、制限されないものとして変化し得ると理解すべきである。本明細書中で使用される専門用語が特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本発明を制限することを意図しないとも理解すべきである。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上他で明確に示されない限り、複数形を含むことに留意しなければならない。したがって、例えば、「親水性ポリマー(a hydrophilic polymer)」には、単一の親水性ポリマーだけでなく、2つまたはそれ以上の異なる親水性ポリマーの組み合わせまたは混合物も含まれ、「可塑剤(a plasticizer)」には、単一の可塑剤と同様に2つまたはそれ以上の異なる可塑剤の組み合わせまたは混合物も含まれる。
【0018】
本発明の説明および主張では、下記の定義にしたがって、以下の専門用語を使用する。
【0019】
「疎水性」および「親水性」ポリマーの定義は、100%の相対湿度(rh)でのポリマーによって吸収される水蒸気量に基づく。この分類にしたがって、疎水性ポリマーは、100%の相対湿度で1重量%の水しか吸収せず、中程度の親水性ポリマーは1から10重量%の水を吸収し、親水性ポリマーは10重量%を超える水を吸収することができ、吸湿性ポリマーは20重量%を超える水を吸収する。「水膨潤性」ポリマーは、水媒体に浸漬された場合にその重量の少なくとも25重量%、好ましくは少なくとも50重量%を超える量の水を吸収するポリマーである。
【0020】
用語「架橋された」は、本明細書中で、共有結合または非共有結合のいずれかによって起こる分子内および/または分子間架橋を含む組成物をいう。「非共有」結合には、水素結合および静電(イオン)結合の両方が含まれる。
【0021】
用語「ポリマー」には、ホモポリマー(直鎖および分枝ポリマー構造)が含まれ、架橋ポリマーおよびコポリマー(架橋されていても架橋されていなくてもよい)(それにより、ブロックコポリマー、交互コポリマー、およびランダムコポリマーなども含まれる)も含まれる。本明細書中で「オリゴマー」と呼ばれる化合物は、分子量が約1000Da未満、好ましくは約800Da未満のポリマーである。
【0022】
用語「水不溶性」は、水への溶解度が5重量%未満、好ましくは3重量%未満、より好ましくは1重量%未満(20℃の水中で測定)のポリマー、化合物、または組成物をいう。
【0023】
用語「ヒドロゲル」は、弾性ゲルを形成するための相当量の水を吸収することができる水膨潤性ポリマーマトリクスをいうために従来の意味で使用され、ここで、「マトリクス」は、共有結合性架橋または非共有結合性架橋によって互いに保持された高分子の三次元網目構造である。水性環境下に置かれた場合、乾燥ヒドロゲルは架橋の程度によって許容される範囲まで膨潤する。
【0024】
用語「ヒドロゲル組成物」は、ヒドロゲルを含むか、完全にヒドロゲルから構成される組成物をいう。そのようなものとして、「ヒドロゲル組成物」には、ヒドロゲル自体だけでなく、ヒドロゲルおよび1つまたは複数の非ヒドロゲル成分を含む組成物または疎水性相中に分散した親水性成分(ヒドロゲルを含み得るかヒドロゲルであり得る)を含む組成物(例えば、浸水コロイド)が含まれる。
【0025】
用語「タック」および「タック性を示す」は、性質を示す。しかし、本明細書中で使用される、用語「実質的に非タック性」、「わずかにタック性を示す」、および「タック性を示す」を、PKIタック測定、TRBTタック測定、またはPSAタック測定/Polyken Probe(Solutia,Inc.)で得た値を使用して定量することができる。用語「実質的に非タック性」は、タック値が約25g−cm/秒未満のヒドロゲル組成物を意味し、「わずかなタック性」は、タック値が約25g−cm/秒〜約100g−cm/秒のヒドロゲル組成物を意味し、「タック」は、タック値が少なくとも100g−cm/秒のヒドロゲル組成物を意味する。
【0026】
用語「感圧接着剤」(PSA)は、短期間(例えば、1〜5秒間)の非常にわずかな外圧の印加で任意の表面に強力に接着するポリマー材料に関する。
【0027】
用語「生体接着剤」は、粘膜組織などの高度に水和した生体表面に対して感圧接着特性を示すヒドロゲルを意味する。
【0028】
用語「複合体」または「高分子間複合体」は、その高分子間の好ましい相互作用の結果として形成される2つまたはそれを超える相補ポリマーの高分子の会合をいう。一般に、フィルム形成ポリマーと、ラダー様架橋剤と、骨組み様架橋剤との間のポリマー間複合体は、水素結合、静電結合、イオン結合、またはこれらの組み合わせによって形成される。
【0029】
用語「ラダー様」は、ポリマー骨格の反復単位中の相補反応性官能基間で特異的相互作用が起こる、相補高分子が会合した複合体または複合体形成機構と定義する。エントロピーに関する理由のために、官能基は個別ではなく協力的様式で結合し、それにより、比較的短く且つ強固な結合を有する配列が形成される。図2に示したこの複合体の概略的構造は、ラダーに似ている。
【0030】
用語「骨組み様」は、より長いポリマー鎖の骨格の反復単位中の相補官能基とより短いオリゴマー鎖の両末端の反応基との間に特異的相互作用が生じる相補高分子とオリゴマー鎖とが会合した複合体または複合体形成機構と定義する。ラダー様複合体と対照的に、用語「骨組み様」は、図1に概略的に示すように、より長いポリマー鎖の間の架橋が非常に長く、この方法によって形成された網目構造の密度がはるかに低いことを強調する。
【0031】
ラダー様複合体および骨組み様複合体は、相補高分子中の反応基の間の特異的相互作用によって架橋し、それにより、「網目構造」を示す。本発明の文脈では、用語「網目構造」を、用語「複合体」と交換可能に使用するが、より詳細には、図3に概略的に示す高分子間複合体の超分子構造をいう。
【0032】
用語「活性成分」、「薬学的活性成分」、および「薬物」を、所望の薬理学的効果または生理学的効果を引き起こし、且つ治療的、予防的、または美容的に有効な薬剤を含む化学物質または化合物をいうために本明細書中で交換可能に使用する。この用語は、本明細書中に特に記載の活性成分の薬学的に許容可能な、薬理学的に活性な誘導体およびアナログ(塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝産物、包接複合体、およびアナログなどが含まれるが、これらに限定されない)も含む。用語「活性成分」、「薬学的活性成分」、および「薬物」を使用する場合、活性成分自体ならびに薬学的に許容可能な、薬理学的に活性な塩、エステル、アミド、プロドラッグ、活性代謝産物、包接複合体、およびアナログなどが含まれると理解すべきである。
【0033】
用語、薬用化粧品活性成分の「有効量」または「薬用化粧品的(cosmeceutically)有効量」は、非毒性であるが、所望の美容的効果を得るのに十分な薬用化粧品的活性成分の量を意味する。用語、薬物または薬理学的活性成分の「有効量」または「治療有効量」は、非毒性であるが、所望の治療効果を得るのに十分な薬物または薬剤の量を意味することを意図する。「有効な」量は、被験体、個体の年齢および一般的症状、および特定の活性成分などによって変化する。したがって、正確な「有効量」を特定することが常に可能というわけではない。しかし、当業者は、任意の各症例に適切な「有効な」量を、日常的な実験を使用して決定することができる。さらに、濃度が治療に有効な範囲内の量の活性成分を送達するために処方物を迅速に適用するのに十分な範囲内である限り、本発明の組成物または投薬形態に組み込まれる活性成分の正確な「有効」量は重要ではない。
【0034】
用語「経皮」薬物送達は、薬物が皮膚組織を通過して個体の血流に入るような個体の皮膚または粘膜への活性成分の投与を意味する。他で示さない限り、「経皮」は、「経粘膜」薬物投与(すなわち、薬物が粘膜組織を通過して個体の血流に入るような個体の粘膜(例えば、舌下、口腔、膣、直腸、尿道)表面への薬物の投与)を含むことを意図する。
【0035】
用語「局所投与」は、皮膚または粘膜などの体表への活性成分の送達(例えば、種々の皮膚障害の防止または治療における局所薬物投与、化粧品(保湿剤、マスク、日焼け止め剤など)の塗布など)を意味するためにその従来の意味で使用される。経皮投与と対照的に、局所投与は、全身効果よりもむしろ局所効果がある。
【0036】
用語「表面」または「体表」を、ヒトの身体または身体開口部上に存在する任意の表面をいうために使用する。したがって、「体表」には、例として、歯、皮膚、または粘膜組織(粘膜内層を有する体腔の内面が含まれる)が含まれる。他で示さない限り、本明細書中で使用される、用語「皮膚」は、粘膜組織を含む(逆の場合も同様)と解釈すべきである。同様に、用語「経皮」(「経皮薬物投与」および「経皮薬物送達系」など)を本明細書中で使用する場合、明確に区別しない限り、「経皮」および「局所」への投与および系は共に同様であることを意図すると理解すべきである。
【0037】
II.接着性組成物−主要な組成物
溶液の裏打ち層(backing layer)への成形およびその後の乾燥、外圧、または押し出し手段の際に均一なフィルムを形成することができる水膨潤性親水性接着性組成物(接着性ヒドロゲル)を得ることが望ましい。好ましくは、このような組成物も水不溶性である。フィルム形成能力は、ブレンドが共有結合性架橋を含まない場合に最適である。組成物が不混和性または部分的混和性を示す場合に非ブレンド成分の性質の間でブレンドの性質が典型的には中間であるので、特異的ポリマーのブレンドにより、特別に調整した性質を有する複合物を得るための都合の良い方法が得られる。水不溶性の複合物を作製するために、水不溶性材料を、通常、水溶性材料と混合する。しかし、これを行う場合、接着を好まない相分離がしばしば起こり得る。さらに、ブレンド成分の不溶性が、ブレンド調製手順(しばしば、共通の溶媒への全成分の溶解およびその後の溶液の成形および乾燥を含む)を妨げ得る。
【0038】
各成分の性質が新規且つ非典型的なポリマー複合材料の調製には、高度な技術が必要である。各ブレンド成分が互いに有利に強く相互作用することができる場合、この困難を解決することができる。典型的には、このような相互作用は、水素結合、静電結合、またはイオン結合に起因する。この場合、2つまたはそれを超える可溶性ポリマーの混合により、図2に概略的に示すように、膨潤性を示すが、不溶性を示すか部分的に溶解するラダー様複合体が得られる。
【0039】
これらの問題を解決するために、本発明は、可溶性ポリマーのブレンド、詳細には、親水性ポリマーと水素結合、静電結合、またはイオン結合することができる相補高分子とのブレンドによる水不溶性フィルム形成組成物を得る方法に関する。
【0040】
少なくとも1つのブレンド成分はフィルム形成ポリマーであり、少なくとも1つのブレンド成分はフィルム形成ポリマーのラダー様非共有結合性架橋剤であり、少なくとも1つのブレンド成分はフィルム形成ポリマーの骨組み様非共有結合性架橋剤である。本発明の要は、フィルム形成ポリマーがいずれかの架橋剤よりも高濃度で存在するということである。この濃度は、フィルム形成の特徴を決定する要因である。したがって、フィルム形成ポリマーまたはラダー様非共有結合性架橋剤のいずれかとして適切な材料が存在し得ると同時に、組成物におけるその機能および役割は、組成物中に存在する材料の量によって決定される。
【0041】
例えば、カルボキシルプロトン供与性官能基を保有するアクリレートポリマーなどのポリ酸またはヒドロキシルプロトン供与性官能基を保有するポリオールおよびポリ(N−ビニルラクタム)またはポリアミンなどのプロトン受容性ポリマーは、フィルム形成ポリマーまたはラダー様非共有結合性架橋剤としての使用に適している。ポリ(N−ビニルラクタム)の量より大量のアクリレートポリマーまたは他のプロトン供与性ポリマーを有する組成物では、アクリレートポリマーがフィルム形成ポリマーとしての機能を果たし、ポリ(N−ビニルラクタム)、ポリアミン、または別のプロトン受容性ポリマーがラダー様架橋剤としての機能を果たす。同様に、アクリレートポリマーの量より大量のポリ(N−ビニルラクタム)またはポリアミンを有する組成物では、ポリ(N−ビニルラクタム)またはポリアミンがフィルム形成ポリマーとしての機能を果たし、アクリレートポリマーがラダー様架橋剤としての機能を果たす。
【0042】
したがって、本発明の1つの実施形態は、接着性組成物で用いるポリマー成分を選択する方法である。本方法は、第1に、フィルム形成ポリマーを選択する工程を含む。次いで、(1)骨格の反復単位中に相補反応性官能基を含み、且つ(2)選択されたフィルム形成ポリマーとラダー様高分子間複合体を形成することができるラダー様非共有結合性架橋剤を選択する。最後に、(1)相補反応性官能基をその末端に含み、且つ(2)少なくとも1つの選択されたフィルム形成ポリマーまたは選択されたラダー様非共有結合性架橋剤と骨組み様複合体を形成することができる骨組み様非共有結合性架橋剤を選択する。骨組み様非共有結合性架橋剤は、好ましくは、フィルム形成ポリマーおよびラダー様非共有結合性架橋剤の両方と適合するか少なくとも部分的に適合する。本方法は、上記材料選択だけでなく、材料の使用量の選択も含む。特に、フィルム形成ポリマーの量は、ラダー様非共有結合性架橋剤の量または骨組み様非共有結合性架橋剤の量よりも多い。本方法はまた、1つまたは複数のさらなるラダー様非共有結合性架橋剤を選択する工程および/または1つまたは複数のさらなる骨組み様非共有結合性架橋剤を選択する工程を含み得る。このようなさらなる架橋剤を、第1の架橋剤と同一または類似の基準(すなわち、所望の複合体との相補性および形成能力)に基づいて選択する。
【0043】
典型的には、組成物は、フィルム形成ポリマーを含むが、1つを超えるラダー様架橋剤および/または1つを超える骨組み様架橋剤を含み得る。
【0044】
本発明の水不溶性フィルム形成組成物の接着プロフィールを、材料、構成比、およびブレンド中の水の量に基づいて調整することができる。水和に関して所望の接着プロフィールが得られるように、ラダー様架橋剤およびフィルム形成ポリマーの量との比を選択する。一般に、比較的弱い水素結合および巨大な自由体積によって比較的わずかに架橋する組成物は、乾燥状態で初期タックを示す。高分子間複合体中の網目構造の架橋度および凝集強度がいくつかの臨界値を超えて移動し、自由体積下で凝集エネルギーが支配し、このような組成物は、乾燥状態で通常は非タック性を示す。しかし、このブレンド中の自由体積が増加するにつれて、接着性が即座に出現する。親水性ポリマーには水が良好な可塑剤であるので、水の吸収によって接着性を改善することができる。静電結合は水素結合より非常に強いので、カルボキシル基を保有するポリマーブレンド中の凝集は、通常、水酸基を有するポリマーから作製された材料中の凝集より高い。このようなブレンド中の接着は、より高い吸着水濃度下で出現する。可動性ポリマーは、強固な鎖を有するポリマーよりも凝集性が高い。例として、フィルム形成ポリマーとしてのPVPブレンドについて、ラダー様架橋剤がOH基またはセルロースを保有する強固な鎖セルロースエステルである場合、組成物は、一般に、水(例えば、湿った表面)との接触前にタック性を示すが、組成物が湿気を吸収するにつれて段階的にタックが失われる。ラダー様架橋剤がアクリレートポリマーまたはカルボン酸基とのコポリマーである場合、一般に、水との接触前に実質的に非タック性であるが、湿った表面との接触の際にタック性を示すようになる。
A.フィルム形成ポリマー
フィルム形成ポリマーは、ラダー様架橋剤の量または骨組み様架橋剤の量よりも高濃度で接着性組成物中に存在し、フィル形成特性を示す。典型的には、フィルム形成ポリマーの量は組成物の約20〜95重量%の範囲である一方で、ラダー様架橋剤の量は約0.5〜40重量%の範囲であり、骨組み様架橋剤の量は約0.5〜60重量%の範囲である。下記のように、組成物のバランスは、可塑剤および粘着付与剤、水または他の溶媒、活性成分、およびpH調整剤などの成分で構成することができる。
【0045】
典型的には、フィルム形成ポリマーは比較的高分子量のポリマーであり、分子量は、約20,000〜3,000,000の範囲内、好ましくは100,000〜2,000,000の範囲内、より典型的には約500,000〜1,500,000の範囲である。
【0046】
フィルム形成ポリマーは、ラダー様架橋剤の官能反復単位および骨組み様架橋剤の末端官能基と水素結合または静電結合を形成することができる。適切なフィルム形成ポリマーには、例として、親水性ポリマー、水膨潤性水不溶性ポリマー、水溶性ポリマー、親水性モノマーと疎水性モノマーとのコポリマー、およびこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
1.親水性ポリマー
例示的合成親水性ポリマーには、例として、ポリ(ジアルキルアミノアルキルアクリレート)、ポリ(ジアルキルアミノアルキルメタクリレート)、ポリアミン、ポリビニルアミン、ポリ(アルキレンイミン)、ポリアクリル酸(PAA)およびポリメタクリル酸(PMA)などの置換および非置換アクリル酸ポリマーおよびメタクリル酸ポリマー、ポリマレイン酸、ポリスルホン酸、ポリ(N−ビニルラクタム)、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリ(ヒドロキシアルキルアクリレート)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(N−ビニルアクリルアミド)、ポリ(N−アルキルアクリルアミド)、これらのホモポリマー、コポリマー、および組み合わせ、ならびに他の親水性モノマー型(例えば、酢酸ビニル)とのコポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
例示的天然親水性ポリマーには、例として、水酸基およびカルボキシル基を含むセルロースの極性誘導体(カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートなど)、アルギン酸、キトサン、およびゼラチンが含まれるが、これらに限定されない。
【0049】
好ましい親水性ポリマー(フィルム形成ポリマー)は合成ポリマーであり、ポリ(ジアルキルアミノアルキルアクリレート)、ポリ(ジアルキルアミノアルキルメタクリレート)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリビニルアミン、ポリ(N−ビニルラクタム)(ポリ(N−ビニルピロリドン)(例えば、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン))、ポリ(N−ビニル−2−バレロラクタム)、およびポリ(N−ビニルカプロラクタム)(例えば、ポリ(N−ビニル−2−カプロラクタム))など)、ポリアルキレンオキシド(ポリエチレンオキシド(PEO)およびポリプロピレンオキシドなど)、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、およびポリ(ヒドロキシアルキルアクリレート)(ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート(ポリHEMA))、ポリ(ヒドロキシエチルアクリレート)など)、ならびにこれらのコポリマーが含まれる。
【0050】
他の適切な親水性ポリマーには、N−ビニルラクタムモノマー、カルボキシビニルモノマー、マレイン酸モノマー、ジアルキルアミノアルキルアクリレートモノマーもしくはジアルキルアミノアルキルメタクリレートモノマー、エチレンオキシドモノマー、ビニルエステルモノマー、カルボキシビニルエステルモノマー、ビニルアミドモノマー、および/またはヒドロキシビニルモノマーに由来する反復単位が含まれる。このようなポリマーには、例として、ポリビニルアミン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリ(N−ビニルラクタム)、ポリ(N−ビニルアクリルアミド)、ポリ(N−アルキルアクリルアミド)、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、およびポリビニルフェノールが含まれるが、これらに限定されない。
【0051】
本明細書中で有用なポリ(N−ビニルラクタム)は、好ましくは、ポリ(N−ビニルラクタム)コポリマーの総モノマー単位の大部分を示すN−ビニルラクタムモノマー単位とN−ビニルラクタムモノマー単位との非架橋ホモポリマーまたはコポリマーである。本発明と組み合わせて使用するのに好ましいポリ(N−ビニルラクタム)を、1つまたは複数の以下のN−ビニルラクタムモノマーの重合によって調製する:N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−バレロラクタム、およびN−ビニルカプロラクタム。N−ビニルラクタムモノマー単位で有用な非N−ビニルラクタムコモノマーの非限定的な例には、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリルアミド、2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸またはその塩、および酢酸ビニルが含まれる。
【0052】
ポリ(N−アルキルアクリルアミド)には、例として、ポリ(メタクリルアミド)およびポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAM)が含まれる。
【0053】
カルボキシビニルモノマーのポリマーを、典型的には、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、イタコン酸および無水物、1,2−ジカルボン酸(マレイン酸またはフマル酸など)、無水マレイン酸、またはこのクラスの範囲内の好ましい親水性ポリマー(ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸が含まれるが、ポリアクリル酸が最も好ましい)との混合物から形成する。
【0054】
本明細書中で好ましい親水性ポリマーは以下である:ポリ(N−ビニルラクタム)(特に、ポリ(N−ビニルピロリドン)(PVP)、およびポリ(N−ビニルカプロラクタム)(PVCap))、ポリ(N−ビニルアセトアミド)(特に、ポリアセトアミド自体)、カルボキシビニルモノマーのポリマー(特に、ポリアクリル酸およびポリメタクリル酸)、ポリマレイン酸、ならびにそのコポリマーおよびブレンド。PVPおよびPVCapが特に好ましい。
【0055】
2.水膨潤性水不溶性ポリマー
例示的な水膨潤性水不溶性ポリマーには、例として、セルロースエステルなどのセルロース誘導体、アクリレートベースのポリマーまたはコポリマー、およびその組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。水膨潤性水不溶性ポリマーは、水溶液中に浸漬された場合に少なくともいくらかは膨潤することができるが、水不溶性である。このポリマーは、セルロースエステル(例えば、酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース(CAP)、酢酸酪酸セルロース(CAB)、プロピオン酸セルロース(CP)、酪酸セルロース(CB)、プロピオン酸酪酸セルロース(CPB)、二酢酸セルロース(CDA)、または三酢酸セルロース(CTA)など)から構成され得る。これらのセルロースエステルは、米国特許第1,698,049号、同第1,683,347号、同第1,880,808号、同第1,880,560号、同第1,984,147号、同第2,129,052号、および同第3,617,201号に記載されており、当該分野で公知の技術を使用して調製することができるか、購入することができる。本明細書中で適切な市販のセルロースエステルには、CA320、CA398、CAB381、CAB551、CAB553、CAP482、CAP504が含まれ、これらは全てEastman Chemical Company,Kingsport,Tenn.から利用可能である。このようなセルロースエステルは、典型的には、約10,000と約75,000との間の多数の平均分子量を有する。
【0056】
一般に、セルロースエステルは、セルロースとセルロースエステルモノマー単位との混合物を含み、例えば、市販の酢酸酪酸セルロースは、酢酸セルロースモノマー単位ならびに酪酸セルロースモノマー単位および非エステル化セルロースモノマー単位を含む一方で、酢酸プロピオン酸セルロースは、プロピオン酸セルロースなどのモノマー単位を含む。本明細書中の好ましいセルロースエステルは、以下に示すように、ブチリル、プロピオニル、アセチル、および非エステル化(OH)セルロース成分(content)を有する酢酸プロピオン酸セルロース組成物および酢酸酪酸セルロース組成物である。
【0057】
【表1】
好ましい分子量、ガラス転移温度(Tg)、および融点(Tm)も示す。また、適切なセルロースポリマーは、典型的には、25℃で0.5gのサンプルを含む100mlの重量比が60/40のフェノール/テトラクロロエタン溶液で測定した固有粘度(I.V.)が、約0.2〜約3.0dl/g、好ましくは約1〜約1.6dl/gである。溶媒成形(solvent casting)技術を使用して調製した場合、より高い凝集強度を得て、それにより、フィルム形成を容易にするように水膨潤性水不溶性ポリマーを選択すべきである(一般に、例えば、酢酸プロピオン酸セルロースは酢酸酪酸セルロースよりも凝集強度をより高く改良する傾向がある)。
【0058】
他のセルロース誘導体には、ヒドロキシアルキルセルロースモノマー単位またはカルボキシアルキルセルロースモノマー単位を含むセルロースポリマーが含まれる。
【0059】
他の好ましい水膨潤性水不溶性ポリマーは、一般に、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、および/または他のビニルモノマーから形成されたアクリレートベースのポリマーまたはコポリマーである。これらのうちのいくつかは、上記の親水性ポリマーにも分類される。適切なアクリレートポリマーは、Rohm Pharma(Germany)から商標「Eudragit」で市販されている。Eudragit(登録商標)シリーズのE、L、S、RL、RS、およびNEコポリマーは、有機溶媒に溶解した状態、水分散液、または乾燥粉末として市販されている。好ましいアクリレートポリマーは、メタクリル酸とメタクリル酸メチルとのコポリマー(Eudragit LおよびEudragitSシリーズのポリマーなど)である。特に好ましいこのようなコポリマーは、Eudragit L 30D−55およびEudragit L 100−55である(後者のコポリマーは水で再構成することができるEudragit L 30D−55の噴霧乾燥形態である)。Eudragit L 30D−55およびEudragit L 100−55コポリマーの分子量は約135,000Daであり、遊離カルボキシル基とエステル基との比は約1:1である。Eudragit L 100−55コポリマーは、一般に、pH5.5未満の水性流動物中で不溶性を示す。別の特に適切なメタクリル酸−メタクリル酸メチルコポリマーは、EudragitS 100であり、これは、遊離カルボキシル基とエステル基との比が約1:2であるという点でEudragit L 30D−55と異なる。EudragitS 100は、pH5.5未満で不溶性を示すが、Eudragit L 30D−55と異なり、pH5.5〜7.0の範囲の水性流動物にあまり溶解しない。このコポリマーは、pH7.0以上で溶解性を示す。pH6.0未満で不溶性を示す限り、Eudragit L 30D−55とEudragitS 100との間のpH依存性溶解プロフィールを有するEudragit L 100を使用することもできる。当業者は、Eudragit L 30D−55、L 100−55、L 100、およびS 100を類似のpH依存性可溶特性を有する他の許容可能なポリマーと置換することができることを認識する。他の適切なアクリレートポリマーは、BASF AG(Germany)から商標「Kollicoat」として市販されているメタクリル酸/アクリル酸エチルコポリマーである。例えば、Kollicoat MAEは、Eudragit L 100−55と同一の分子量を有する。
【0060】
水膨潤性水不溶性ポリマーがアクリル酸ポリマーまたはアクリレートポリマーである場合、可逆的に乾燥することができる(すなわち、水および任意の他の溶媒の除去後、乾燥ヒドロゲルを、水の添加によってその元の状態に再構成することができる)ヒドロゲルが得られる。さらに、アクリル酸/アクリレート水膨潤性ポリマーを使用して調製した親水性ヒドロゲルは、一般に、水との接触前は実質的に非タック性であるが、湿った表面との接触の際にタック性を示すようになる(歯の表面などの口腔内部などで見出される)。水との接触前に非タック性であるこの性質により、ヒドロゲルがタック性を示す前または同時に選択された表面上に位置づけるか再度位置づけることができる。例えば、一旦水和されると、ヒドロゲルはタック性を示すようになり、歯または粘膜表面などの表面に接着することができる。
【0061】
さらに、アクリレート含有組成物は、一般に、pH5.5〜6.0未満の水または他の水溶液中に組成物を浸漬した際に約400%〜1500%の範囲で膨潤し得るにもかかわらず、水性環境下での膨潤率および膨潤範囲が予め決定したpHに依存するようにアクリレートポリマーと他の材料との比を選択することができる。この特徴により、漂白剤または他の活性成分が遡及的に組み込まれる(ペルオキシド、ペルオキシ酸、クロライト、安定剤、香味物質などを含む組成物の負荷など)。
【0062】
それに反して、水膨潤性水不溶性ポリマーとしてのセルロースエステルの組み込みにより、湿った表面への適用前に組成物はタック性を示すが、水の吸収時にタック性を示さない。歯から生成物を最終的に除去するためにタック性を減少させることが望ましい場合にこのような組成物が望ましいと認識される。
【0063】
3.水溶性ポリマー
例示的な水溶性ポリマーには、例として、水溶性セルロース由来のポリマー、ビニルアルコールのホモポリマーおよびコポリマー、ビニルフェノールのホモポリマーおよびコポリマー、エチレンオキシドのホモポリマーおよびコポリマー、マレイン酸のホモポリマーおよびコポリマー、コラーゲン、ゼラチン、アルギネート、デンプン、および天然に存在するポリサッカリド、ならびにこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。ポリマーには、・・・が含まれる。
【0064】
例示的な水溶性セルロース由来ポリマーには、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、水和セルロース(セロファン)、およびヒドロキシプロピルメチルセルロース、ならびにこれらの組み合わせが含まれる。
【0065】
例示的な天然に存在するポリサッカリドには、種々の起源の寒天(ガム寒天(gum agar)など)、アルギネート(アルギン酸、アルギン酸塩(例えば、アルギン酸カルシウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸ナトリウム)など)、アルギン酸誘導体(例えば、ポリエチレングリコールアルギネート、Kelcoloid(登録商標)、Monsanto)、カラギーナン(κ−、ι−、およびλ−カラギーナンが含まれる)、キチン、キトサン、グルコマンナン、ジェランガム(Kelcogel(登録商標)、Monsanto)、ゼラチン、グアーガム(TIC Gums)、アラビアゴム、ガティガム、カラヤゴム、トラガカントゴム、イナゴマメゴム、ペクチン(ペクチンなどおよびアミロペクチンなど)、プルラン、デンプンおよびデンプン誘導体(酢酸ジャガイモデンプン、Clearam(登録商標)CH10、Roquetteなど)、タマリンドガム、キサンタン(キサンタンガムなど)、ならびにこれらの組み合わせが含まれる。
【0066】
例示的な水溶性マレイン酸ポリマーには、International Specialty Productsの商標Gantrez(登録商標)で市販されている水溶性マレイン酸ポリマーが含まれる。Gantrez(登録商標)製品は、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸との合成コポリマーのファミリーである。Gantrez ANは、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマーである。Gantrez Sシリーズは、メチルビニルエーテルとマレイン酸とのコポリマー(Gantrez S−97など)を示す。Gantrez ESは、マレイン酸の半エステル形態であり、一定範囲の異なるアルキル鎖長および分子量のメチルビニルエーテルとマレイン酸とのコポリマーを示す。したがって、Gantrez ES−225およびGantrez ES−425は、メチルビニルエーテルとマレイン酸とのコポリマーのモノエチルエステルおよびモノブチルエステルである。
【0067】
B.ラダー様非共有結合性架橋剤
フィルム形成ポリマーのラダー様非共有結合性架橋剤は、好ましくは、骨格の反復単位中に相補反応性官能基を含む長鎖ポリマーであり、親水性高分子量フィルム形成ポリマーとラダー様高分子間複合体を形成することができる。この複合体は、水溶性または水不溶性であり得るが、好ましくは水不溶性である。
【0068】
ラダー様架橋剤の1つの機能は、ブレンドに不溶性および限定的膨潤を提供することである。本質的に、ラダー様架橋剤は、ゲル形成剤としての機能を果たすことができる。ラダー様架橋剤に適切な相補反応性官能基には、水酸基、カルボキシル基、フェノール基、スルホ基、およびアミノ基(その全てが親水性ポリマーブレンドと非共有結合性架橋することができる)が含まれる。典型的には、これらのポリマーは、約10,000〜1,000,000g/molの範囲内、任意選択的に100,000〜300,000g/molの長さを有する。フィルム形成ポリマーよりも低い分子量のラダー様架橋剤を選択することが望ましいかもしれない。
【0069】
ラダー様架橋剤としての使用に適切な例示的長鎖ポリマーには、例として、フィルム形成ポリマーとして使用するための上記の親水性ポリマー、水膨潤性水不溶性ポリマー、および水溶性ポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0070】
上記のように、フィルム形成ポリマーおよびラダー様非共有結合性架橋剤は共に同一のポリマークラスに相当し、ポリマー骨格の反復単位中に水素結合、静電結合、またはイオン結合することができる反応基を保有するので、フィルム形成ポリマーまたはラダー様非共有結合性架橋剤のいずれかとして同一の材料を使用することができる。組成物中でのその機能および役割は、組成物に存在する材料の量によって決定され、最も大量に存在する材料がフィルム形成ポリマーとして機能する(すなわち、フィルム形成ポリマーとそのラダー様架橋剤との間の相違がその濃度を問題とする)。主な成分を、典型的には、フィルム形成ポリマーといい、少ない方の成分をラダー様非共有結合性架橋剤という。したがって、本発明の目的のために、どのポリマーが主なフィルム形成ポリマーとしての機能を果たし、どのポリマーがラダー様非共有結合性架橋剤として機能するかということは重要ではない。
【0071】
それにもかかわらず、フィルム形成ポリマーおよびラダー様非共有結合性架橋剤の相補性は、本発明の重要な態様である。フィルム形成ポリマーおよびラダー様非共有結合性架橋剤の例示的な相補官能基および結合型のリストを以下に示す。プロトン供与相補基とプロトン受容相補基との間の水素結合の顕著な特徴は、両反応基およびその相互作用の生成物の電荷は変化しないことである。静電結合は、最初に荷電されていないプロトン供与基とプロトン受容基との間の相互作用であり、イオン結合を形成する。最後に、イオン結合は、反対に荷電した基の相互作用であり、イオン結合を形成する。
【0072】
【表2】
組成物はまた、第2のラダー様非共有結合性架橋剤を含み得る。第1のラダー様架橋剤と同様に、第2のラダー様架橋剤はまた、骨格の反復単位中に相補反応性官能基を含む。しかし、第2のラダー様架橋剤は、フィルム形成ポリマーまたは第1のラダー様架橋剤とラダー様高分子間複合体を形成することができる。
【0073】
C.骨組み様非共有結合性架橋剤
骨組み様非共有結合性架橋剤は、好ましくは、相補反応性官能基をその末端に含み、且つ少なくとも1つのフィルム形成ポリマーまたはラダー様非共有結合性架橋剤と骨組み様複合体を形成することができる。典型的には、骨組み様非共有結合性架橋剤は、その単鎖の両末端に反応基を有する親水性オリゴマーである。
【0074】
骨組み様架橋剤の1つの機能は、親水性ポリマーブレンドの接着特性に影響を与えることである。骨組み様架橋剤に適切な相補反応性官能基には、水酸基、カルボキシル基、およびアミノ基(その全てが親水性ポリマーブレンドと非共有結合性架橋することができる)が含まれる。
【0075】
好ましくは、骨組み様非共有結合性架橋剤は、水酸基、アミノ基、またはカルボキシル基を末端とする。一般に、骨組み様非共有結合性架橋剤の分子量は、約45〜約800の範囲、好ましくは約45〜約600の範囲である。
【0076】
例示的な骨組み様架橋剤には、例として、その鎖中に約1〜20個のアルキレンオキシド単位を含むモノマーおよびオリゴマーのアルキレングリコール(ポリアルキレングリコール(例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール(PG)、およびポリエチレングリコール)など)(末端カルボキシル基ポリアルキレングリコールなどの末端カルボキシル基オリゴマーアルキレングリコールおよび末端アミノ基ポリアルキレングリコールなどの末端アミノ基オリゴマーアルキレングリコールが含まれる)、ポリアルコール(低分子量多価アルコール(例えば、グリセロールまたはソルビトール)など)、ブタンジオールからオクタンジオールまでのアルカンジオール、二価カルボン酸、エーテルアルコール(例えば、グリコールエーテル)、およびポリ(アルキレングリコール二価酸)、ならびにこれらの組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。
【0077】
好ましい骨組み様架橋剤は、ポリエチレングリコール(PEG)、末端カルボキシル基オリゴ−アルキレングリコール(末端カルボキシル基ポリ(エチレングリコール)など)、および多価アルコールである。特に好ましい架橋剤は、低分子量ポリアルキレングリコール(分子量200〜600)(ポリエチレングリコール400など)である。
【0078】
骨組み様架橋剤はまた、例えば、骨組み様架橋剤がポリエチレングリコール400などの化合物である場合、低分子量可塑剤としての機能を果たし得る。このような骨組み様架橋剤の可塑剤は、好ましくは、他の成分と混和性を示し、組成物のガラス転移温度(Tg)および弾性率を減少させることができる。あるいは、低分子量可塑剤として異なる化合物を含めることができる。
【0079】
骨組み様非共有結合性架橋剤は、典型的には、ガラス転移温度Tgが約−100℃〜約−30℃の範囲であり、融点Tmが約20℃未満である。骨組み様非共有結合性架橋剤はまた、無定形であり得る。フィルム形成ポリマーおよびラダー様非共有結合性架橋剤のTg値と骨組み様非共有結合性架橋剤のTgとの間の差は、好ましくは、約50℃超、より好ましくは約100℃超、最も好ましくは約150℃〜約300℃の範囲である。フィルム形成ポリマー、ラダー様非共有結合性架橋剤、および骨組み様非共有結合性架橋剤は、適合性がある(すなわち、均一なブレンドを形成することができる)。
【0080】
Feldstein et al.の米国特許公開番号2002/0037977号で考察されているように、骨組み様非共有結合性架橋剤と組成物の他の成分との比は、接着強度および凝集強度の両方に影響を与え得る。例えば、骨組み様非共有結合性架橋剤は、フィルム形成ポリマー/骨組み様非共有結合性架橋剤ブレンドのガラス転移温度を、以下の式(1):
【0081】
【数1】
(式中、Tg推定は、ブレンドの推定ガラス転移温度であり、Wpolは、ブレンド中のフィルム形成ポリマーの重量分率であり、Wplは、ブレンド中の骨組み様非共有結合性架橋剤の重量分率であり、Tg polはフィルム形成ポリマーのガラス転移温度でありTg plは骨組み様非共有結合性架橋剤のガラス転移温度である)
で示されるFoxの式によって予想されるより高い程度に減少させる。本特許出願でも説明されるように、至適化された接着強度および凝集強度を有する接着組成物を、フィルム形成ポリマーおよび骨組み様非共有結合性架橋剤およびその相対量の選択によって調製し、Tg推定からの所定の偏差を得ることができる。一般に、接着を最大にするために、Tg推定からの所定の偏差は最大の負の偏差であり、接着を最小にするために、Tg推定からの任意の負の偏差を最小にする。
【0082】
上記のように、組成物はまた、フィルム形成ポリマーまたは第1のラダー様架橋剤とラダー様高分子間複合体を形成することができる第2のラダー様非共有結合性架橋剤を含み得る。第2のラダー様架橋剤を含む場合、骨組み様非共有結合性架橋剤はまた、第2のラダー様架橋剤と骨組み複合体を形成することができる。
【0083】
例えば、アクリレートポリマー(Eudragit E 100)を、フィルム形成ポリマーとして選択することができる。第1のラダー様架橋剤は、Eudragit E 100フィルム形成ポリマーとラダー様高分子間複合体を形成するEudragit L−100−55であり得る。第2のラダー様架橋剤は、Eudragit L−100−55(第1のラダー様架橋剤)とラダー様高分子間複合体を形成するPVPであり得る。骨組み様架橋剤は、第2のラダー様架橋剤PVPと骨組み様複合体を形成するPEGであり得る。
【0084】
D.例示的な接着性組成物
例示的組成物は、フィルム形成ポリマーとしてのポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)(「PVP」)および骨組み様非共有結合性架橋剤としてのポリエチレングリコール(「PEG」)を含む。PVP−PEG接着性ブレンドと中程度の親水性または水不溶性を示すポリマーであるラダー様非共有結合性架橋剤との混合により、ブレンドの親水性および溶解速度が減少する。溶解速度をさらに減少させるか不溶性混合物を得るために、PVP−PEGブレンドを、その反復単位中に相補(PVPに関して)反応性官能基を保有するポリマーと混合することができる。PVPがその反復単位中にプロトン受容性カルボニル基を含むので、相補反応性官能基は、好ましくは、プロトン供与性の水酸基またはカルボキシル基である。したがって、PVPおよびPEGとともに使用するために、適切なラダー様非共有結合性架橋剤は、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸などの長鎖ポリマー、そのホモポリマーおよびコポリマー、ならびにスルホン酸およびアルギン酸である。
【0085】
別の例示的組成物は、上記のPVP−PEGを有するラダー様非共有結合性架橋剤としてメタクリル酸とメタクリル酸メチルとのコポリマーを使用する。本組成物を使用して、本発明の原理が容易に理解される。
【0086】
PVP−PEG複合体は、高凝集強さ(PVP−PEG水素結合に起因する)と巨大な自由体積(PEG鎖の相当な長さおよび可動性に起因する)とを併せ持つ。PVP−PEGブレンド中の自由体積の増加を強調するために、この複合体構造型を、「骨組み様」構造と定義する(図1を参照のこと)。複合体の骨組み様構造は、PEG単鎖の両末端の反応性官能基の位置に起因する。ラダー様非共有結合性架橋剤が骨格の反復単位中に反応性官能基を含む場合、得られた複合体は、いわゆる「ラダー様」構造を有する(図2を参照のこと)。高分子間複合体のラダー様型は、Kabanov et al.(1979)Vysokomol.Soed.21(A):243−281によって最初に説明されている。骨組み様複合体の形成により、凝集強度および自由体積が増強され(PVP−PEGブレンドの接着特性を決定する)、図2に示すラダー様複合体の形成により、ブレンドの可溶性が喪失し、自由体積の減少にともなって凝集強度が増加する。このような理由により、ラダー様複合体の構造から接着性は得られない。
【0087】
自由体積の減少および凝集エネルギーの増加により、PVPとのラダー様複合体が得られる長鎖ポリマーと混合したPVP−PEGブレンドは、初期粘着力がないかごくわずかである。しかし、長鎖ポリマーを含む非接着性PVP−PEGブレンドが水によって可塑化するので、ブレンドのガラス転移温度はより低い値にシフトし(感圧性接着剤の典型的な特徴である)、接着力が増加する。
【0088】
接着性組成物中の成分の一定の好ましい組み合わせが存在する。例えば、フィルム形成ポリマーがポリ(N−ビニルラクタム)(ポリ(N−ビニルピロリドン)またはポリ(N−ビニルカプロラクタム)など)である場合、ラダー様架橋剤は、好ましくは、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリビニルアルコール、ポリ(ヒドロキシアルキルアクリレート)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)(ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)など)、メタクリル酸コポリマー、または任意の他のカルボキシル含有Eudragitである。
【0089】
同様に、フィルム形成ポリマーがポリ(ジアルキルアミノアルキルアクリレート)またはポリ(ジアルキルアミノアルキルメタクリレート)である場合、ラダー様架橋剤は、典型的には、ヒドロキシル含有ポリマー(ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、またはポリマレイン酸など)である。フィルム形成ポリマーがポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、またはポリ(ヒドロキシアルキルアクリレート)(ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)など)である場合、ラダー様架橋剤は、好ましくは、ポリ(N−ビニルラクタム)(ポリ(N−ビニルピロリドン)またはポリ(N−ビニルカプロラクタム)など)およびポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、またはポリマレイン酸のホモポリマーもしくはコポリマーである。フィルム形成ポリマーがポリエチレンオキシドである場合、適切なラダー様架橋剤は、ポリ酸(アクリル酸、メタクリル酸、およびマレイン酸のホモポリマーおよびコポリマーなど)である。ポリ(N−ジアルキルアミノアルキルアクリレート)とアルキルアクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、またはエタクリレートモノマーとのコポリマー、ポリ(N−ジアルキルアミノアルキルメタクリレート)とアルキルアクリレートモノマー、メタクリレートモノマー、またはエタクリレートモノマーとのコポリマーを、フィルム形成ポリマーまたはラダー様架橋剤の両方として対応するホモポリマーの代わりに使用することができる。
【0090】
上記の任意の組み合わせのために、好ましい骨組み様架橋剤は、その鎖中に約1〜20個のアルキレンオキシド単位を含むオリゴマーのアルキレングリコール(ポリエチレングリコールなど)、末端カルボキシル基オリゴマーアルキレングリコール(末端カルボキシル基ポリ(エチレングリコール)など)、または多価アルコールである。
【0091】
適切なブレンドの他の例を以下に示す。
【0092】
【表3】
*Eudragit E−100は、Rohm Pharma Polymersから市販されている2−ジメチルアミノエチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、およびメチルメタクリレートの2:1:1コポリマーである。
**米国特許第6,576,712号に記載。
【0093】
本明細書中で使用したアプローチを例証するために、PVP−PEG−Eudragitブレンドを、典型的な例として使用したが、このアプローチは一般例であり、他の水溶性親水性ポリマーを使用して容易に再現することができる。
【0094】
接着性ポリマーブレンドの性質を評価し、実施例に記載する。これらのポリマーブレンドの挙動は、共有結合性架橋ポリマーの典型であることが見出された。しかし、共有結合性結合系と対照的に、骨組み様非共有結合性架橋剤およびラダー様非共有結合性架橋剤を含む三重ポリマーブレンドを、簡素な過程を使用して容易に調製することができ、さらに、化学架橋ポリマーを使用して達成することができないフィルム形成ポリマー特性が得られる。
【0095】
別の例示的な組成物は、以下を含む:水膨潤性水不溶性ポリマーおよび水溶性ポリマーから選択されるフィルム形成ポリマー、骨格の反復単位中に相補反応性官能基を含み、且つフィルム形成ポリマーとラダー様高分子間複合体を形成することができるラダー様非共有結合性架橋剤、および相補反応性官能基をその末端に含み、且つ少なくとも1つのフィルム形成ポリマーまたはラダー様非共有結合性架橋剤と骨組み様複合体を形成することができる骨組み様非共有結合性架橋剤。フィルム形成ポリマーの量は、いずれかの架橋剤の量よりも多い。
【0096】
III.接着性組成物−選択成分
本発明の接着性組成物は、体表への生成物の接着が必要であるか望ましい多数のさらなる状況で有用である。これらの適用には、例えば、薬物送達系、創傷包帯剤、導電性ヒドロゲル、足に適用するための圧力除去クッション(踵用クッションが含まれる)、肘用パッド、膝用パッド、脛用パッド、前腕用パッド、手首用パッド、指用パッド、べんち用パッド、たこ用パッド、水疱用パッド、腱膜瘤用パッド、およびつま先用パッド(これらは全て、床擦れ(dicubitis)、静脈、および足の糖尿病性壊疸などのための活性成分を含み得る)、口腔内適用(歯漂白ストリップ、口臭治療のための気分転換フィルム、および咽喉痛、口内炎/口唇潰瘍、歯肉炎、歯周炎、口腔感染、歯周病変、齲歯または虫歯、および他の歯周疾患を治療するための口腔ケア製品など)、経粘膜適用、医療機器、診断システム、および体表に貼り付けるべき他のデバイスを貼り付けるための接着剤、吻合デバイス、人工挿入物、およびフェイスマスクのためのシーラント、音、振動、または衝撃を吸収する材料、化粧品および薬用化粧品用ゲル生成物中のキャリア、ならびに当業者によって公知であるか容易に確認可能であるか依然として発見されていない多数の他の用途が含まれる。
【0097】
特定の意図する用途に依存して、組成物中に組み込むか組成物と組み合わせて医療用パッチ、包帯、またはデバイスを形成することができる多数の成分が存在する。以下に詳述する。
【0098】
A.活性成分
任意の本明細書中に記載の組成物を、活性成分を含み、それにより、体表に適用された場合に活性成分が体表を伝達する活性成分送達系として作用するように修飾することができる。組成物に負荷された活性成分の放出は、典型的には、膨潤制御拡散機構を介した水の吸収および薬剤の脱離を含む。活性成分含有組成物を、例として、経皮薬物送達系、創傷包帯剤、局所薬学的処方物、移植薬物送達系、経口投薬形態、および歯漂白ストリップなどで使用することができる。
【0099】
このような薬剤は、薬用化粧品的または治療的に有効な量で存在するであろう。本発明の組成物に組み込み、局所または全身に(例えば、経皮、経口、または薬物の全身投与に適切な他の投薬形態を使用して)送達させることができる適切な活性成分には、以下が含まれるが、これらに限定されない:アドレナリン作動薬、副腎皮質性ステロイド、副腎皮質抑制薬、嫌酒薬、アルドステロンアンタゴニスト、アミノ酸、アンモニア解毒薬、同化薬、蘇生薬、鎮痛薬、アンドロゲン薬(androgenic agent)、麻酔薬、食欲抑制化合物、食欲減退薬、アンタゴニスト、下垂体前葉活性化因子および下垂体前葉抑制薬、抗ざ瘡薬、抗アドレナリン作動薬、抗アレルギー薬、抗アメーバ薬、抗アンドロゲン薬、抗貧血薬、抗狭心症薬、抗不安薬、抗関節炎薬、抗喘息薬および他の呼吸器薬(respiratory drug)、抗アテローム硬化性動脈硬化薬、抗菌薬、抗癌薬(抗悪性腫瘍薬および抗癌補助促進薬(anti−cancer supplemetary potentiating agent)、抗コリン作動薬、抗胆石形成薬(anticholelithogenic agent)、抗凝血薬、抗コクシジウム薬、抗痙攣薬、抗うつ薬、抗糖尿病薬、止瀉薬、抗利尿薬、解毒薬、抗ジスキネジー薬、制吐薬、抗てんかん薬、抗エストロゲン薬、抗線維素溶解薬、抗真菌薬、抗緑内障薬、抗蠕虫薬、抗血友病薬、抗血友病因子、抗出血薬、抗ヒスタミン薬、抗高脂血症薬剤、抗高リポタンパク質血症薬、抗高血圧薬、抗低血圧薬、抗感染症薬(抗生物質および抗ウイルス薬など)、抗炎症薬(ステロイド系および非ステロイド系の両方)、抗角質化薬、抗マラリア薬、抗菌薬、抗片頭痛薬、抗有糸分裂薬、抗カビ薬、制嘔吐薬、抗新生物薬、抗好中球減少症薬、抗強迫症薬(anti−obsessional agent)、駆虫薬、抗パーキンソン病薬、抗ニューモシチス薬(anti−pneumocystic agent)、抗増殖薬、抗前立腺肥大薬、抗原虫薬、止痒薬、抗乾癬薬、抗精神病薬、解熱薬、鎮痙薬、抗リウマチ薬、抗住血吸虫薬、抗脂漏薬、鎮痙薬、抗歯石薬および抗結石薬、抗血栓薬、抗結核薬、鎮咳薬、抗潰瘍薬、抗尿路結石薬、抗ウイルス薬、抗不安薬、食欲抑制薬、注意欠陥障害(ADD)薬および注意欠陥多動障害(ADHD)薬、静菌薬および殺菌薬、良性前立腺過形成治療薬、血糖調節薬、骨吸収阻害薬、気管支拡張薬、炭酸脱水酵素阻害薬、循環器官用薬(抗狭心症薬、抗不整脈薬、β遮断薬、カルシウムチャネル拮抗薬、心抑制剤、心血管薬、心保護薬(cardioprotectant)、および強心薬が含まれる)、中枢神経系(CNS)薬、中枢神経系刺激薬、催胆薬、コリン作動薬、コリン作動性アゴニスト、コリンエステラーゼ不活性化剤、コクシジウム抑制薬、認知アジュバント(cognition adjuvant)および認知増強剤(cognition enhancer)、感冒薬(充血除去薬が含まれる)、抑制薬、診断補助薬、利尿薬、ドーパミン作動薬、外部寄生虫駆除薬、催吐薬、プラーク、結石、または齲蝕の形成を阻害する酵素、酵素インヒビター、エストロゲン、血栓溶解薬、フッ化物抗齲歯/抗虫歯薬、遊離酸素ラジカルスカベンジャー、消化管運動薬、遺伝物質、糖質コルチコイド、生殖腺刺激成分、発毛刺激薬、止血薬、薬草療法薬、ヒスタミンH2受容体アンタゴニスト、ホルモン、抗ホルモン薬(hormonolytics)、催眠薬、低コレステロール血症薬、血糖降下薬、抗高脂血症薬、血圧降下剤、HMGCoA還元酵素インヒビター、免疫薬、免疫調整薬、免疫調節薬、免疫賦活薬、免疫抑制剤、不能治療補助薬、インヒビター、角質溶解薬、ロイコトリエンインヒビター、LHRHアゴニスト、肝臓障害治療薬、ルテオリジン薬、記憶アジュバント、精神活動増強剤(mental performance enhancer)、金属キレート剤(エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム塩など)、有糸分裂インヒビター、気分調節薬(mood regulator)、粘液溶解薬、粘膜保護薬、筋弛緩薬、散瞳薬、麻薬アンタゴニスト、鼻充血除去薬、神経弛緩薬、神経筋遮断薬、神経保護薬、ニコチン、NMDAアンタゴニスト、非ホルモン性ステロール誘導体、栄養剤(ビタミン、必須アミノ酸、および脂肪酸など)、点眼薬(抗緑内障薬など)、分娩促進薬、鎮痛薬、副交感神経遮断薬、ペプチド薬、プラスミノーゲン活性化因子、血小板活性化因子アンタゴニスト、血小板凝集インヒビター、脳卒中後および頭部外傷後治療薬、増強剤、黄体ホルモン、プロスタグランジン、前立腺成長インヒビター、創傷清浄薬(wound cleansing agent)としてのタンパク質分解酵素、プロサイロトロピン薬(prothyrotropin agent)、覚醒剤、向精神薬、放射性薬剤、調節薬(regulator)、弛緩薬、再分配薬(repartitioning agent)、抗疥癬薬、硬化薬、鎮静薬、鎮静−催眠薬、選択的アデノシンA1アンタゴニスト、セロトニンアンタゴニスト、セロトニンインヒビター、セロトニン受容体アンタゴニスト、ステロイド(プロゲストゲン、エストロゲン、副腎皮質ステロイド、アンドロゲン、および同化薬が含まれる)、禁煙薬、刺激薬、抑制薬、交感神経興奮薬、共力薬、甲状腺ホルモン、甲状腺インヒビター、甲状腺ホルモン様薬(thyromimetic agent)、精神安定薬、知覚過敏症薬(tooth desensitizing agent)、歯の漂白剤(過酸化物、金属亜塩素酸塩、過ホウ酸塩、ペルカーボネート、過酸、およびこれらの組み合わせなど)、不安定狭心症薬、尿酸排泄促進薬、血管収縮薬、血管拡張薬(全身、冠状動脈、末梢、および脳が含まれる)、傷薬、創傷治癒薬、およびキサンチンオキシダーゼインヒビターなど。
【0100】
本発明の接着性組成物が有用な特定の有効成分には、アナバシン、カプサイシン、オキシブチニン、二硝酸イソソルビド、アミノサリチル酸、ニトログリセリン、ベラパミル、プロプラノロール、シラボリン(silabolin)、フォリドン(foridone)、クロニジン、シチシン、フェナゼパム(phenazepam)、ニフェジピン、フルアシジン(fluacizin)、およびサルブタモールが含まれるが、これらに限定されない。
【0101】
組成物は、任意の美容活性成分も含み得る。本明細書中で使用される、「美容活性成分」には、皮膚、歯、または周辺組織の外観を望ましく変化させるための組成物から放出することができるか、新鮮な息などの社会的に望ましい特徴を使用者に付与する任意の物質が含まれる。例えば、美容活性成分は、気分転換剤または歯の漂白または脱色に影響を与える薬剤であり得る。西洋社会のある文化または一定のセグメントで歯の着色が有意または望ましいことを認識して、美容活性成分は歯の色または色合いに影響を与える任意の薬剤でもあり得る。
【0102】
B.他の成分
本明細書中に記載の方法によって作製された組成物はまた、従来の添加物(吸収性充填剤、防腐剤、pH調整剤、可塑剤、軟化剤、増粘剤、抗酸化剤、色素、染料、導電種(conductive species)、屈折性粒子、安定剤、強化剤(toughening agent)、粘着付与剤または接着剤、タック性減少剤(detackifier)、香味物質および甘味料、抗酸化剤、ならびに透過増強剤(permeation enhancer)など)を含み得る。接着性を減少または消失すべき実施形態では、従来のタック性減少剤を使用することができる。これらの添加物およびその量を、ヒドロゲル組成物の所望の化学的性質および物理的性質を有意に妨害しないような方法で選択する。
【0103】
吸収充填剤を、接着剤を皮膚または他の体表に塗布した場合に水和の程度を制御するように有利に組み込むことができる。このような充填剤には、微結晶性セルロース、タルク、粘土、ラクトース、グアーガム、カオリン、マンニトール、コロイド状シリカ、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、疎水性デンプン、硫酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸カルシウム二水和物、紙布(woven paper)、不織布、および木綿素材が含まれ得る。他の適切な充填剤は、不活性(すなわち、実質的に非吸着性)であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタンポリエーテルアミドコポリマー、ポリエステル、ポリエステルコポリマー、ナイロン、およびレーヨンが含まれる。1つの好ましい充填剤は、コロイド状シリカ(例えば、Cab−O−Sil(登録商標)(Cabot Corporation,Boston MAから市販されている))である。
【0104】
防腐剤には、例として、p−クロロ−m−クレゾール、フェニルエチルアルコール、フェノキシエチルアルコール、クロロブタノール、4−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル、4−ヒドロキシ安息香酸プロピルエステル、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン二酢酸塩またはグルコン酸クロルヘキシジン、エタノール、およびプロピレングリコールが含まれる。
【0105】
pH調整剤として有用な化合物には、組成物のpHを個体の体表のpHに確実に適合させるために含めることができるグリセロール緩衝液、クエン酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、リン酸緩衝液、およびクエン酸−リン酸緩衝液が含まれるが、これらに限定されない。さらに、組成物を歯の表面に塗布する場合、歯が脱灰することなく最適に漂白させるために、pH調整剤を添加して確実に組成物のpHを口内環境のpHと適合させて歯の表面からミネラルが滲出しないようにすることができ、カルシウムおよび/またはフッ化塩を組成物に含めることができる。
【0106】
適切な可塑剤および軟化剤には、例として、リン酸アルキルおよびリン酸アリール(リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジル、およびリン酸トリフェニルなど)、クエン酸アルキルおよびクエン酸エステル(クエン酸トリメチル、クエン酸トリエチル、およびクエン酸アセチルトリエチル、クエン酸トリブチルおよびクエン酸アセチルトリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、およびクエン酸トリヘキシルなど)、グリセリン酸アルキル、グリコール酸アルキル、アジピン酸ジアルキル(アジピン酸ジオクチル(DOA;アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)とも呼ぶ)、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジ(2−メチルエチル)、およびアジピン酸ジヘキシルなど)、フタル酸ジアルキル、フタル酸ジシクロアルキル、フタル酸ジアリール、および混合フタル酸アルキル−アリール(フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジ(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジアミル、およびフタル酸ジカプリルと示されるフタル酸エステルが含まれる)、セバシン酸ジアルキル(セバシン酸ジエチル、セバシン酸ジプロピル、セバシン酸ジブチル、およびセバシン酸ジノニルなど)、コハク酸ジアルキル(コハク酸ジエチルおよびコハク酸ジブチルなど)、酒石酸ジアルキル(酒石酸ジエチルおよび酒石酸ジブチルなど)、グリコールエステルおよびグリセロールエステル(二酢酸グリセロール、三酢酸グリセロール(トリアセチン)、モノ乳酸二酢酸グリセロール(glycerol monolactate diacetate)、グリコール酸メチルフタリルエチル、グリコール酸ブチルフタリルブチル、二酢酸エチレングリコール、二酪酸エチレングリコール、二酢酸トリエチレングリコール、二酪酸トリエチレングリコール、および二プロピオン酸トリエチレングリコールなど)、親水性界面活性剤、好ましくは、親水性非イオン性界面活性剤(例えば、糖の部分的脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪アルコールエーテル、およびポリエチレングリコール−ソルビタン−脂肪酸エステルなど)、非イオン性界面活性剤(エチルセロソルブなど)、エチルからオクチルまでの低級アルコール、低級ジオール(1,2−および1,3−プロピレングリコールなど)、低分子量ポリ(アルキレンオキシド)(ポリプロピレングリコールおよびポリエチレングリコールなど)、多価アルコール(グリセロールなど)、ソルビトール、酒石酸エステル(酒石酸ジブチルなど)、ならびにこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0107】
骨組み様非共有結合性架橋剤自体が可塑剤として作用することができるので、一般に、さらなる可塑剤を組み込む必要はない。しかし、さらなる低分子量可塑剤を組成物中に含めることは、いくつかの場合、有利であり得る。例えば、接着性組成物の接着性および吸水性を、適量の可塑剤の添加によって容易に調節することができる。可塑化機構により、自由体積が増加する。自由体積の増加により、可塑剤は、凝集エネルギーと自由体積との間のバランス(接着調節因子である)を修正する。フィルム形成ポリマー、ラダー様架橋剤、および骨組み様架橋剤が親水性材料であることが好ましいので、適切な可塑剤も事実上親水性であることが好ましい。
【0108】
好ましい増粘剤は、天然に存在する化合物またはその誘導体であり、例として、コラーゲン、ガラクトマンナン、デンプン、デンプン誘導体および加水分解物、セルロース誘導体(メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)、コロイド状ケイ酸、および糖(ラクトース、サッカロース、フルクトース、およびグルコースなど)が含まれる。合成増粘剤(ポリビニルアルコール、ビニルピロリドン−酢酸ビニルコポリマー、ポリエチレングリコール、およびポリプロピレングリコールなど)も使用することができる。
【0109】
人体に関連して食品、薬剤、または化粧品と共に一般に使用されている色素および染料型(特に、「認証可能(certifiable)」または「認証免除(exempt from certification)」として分類される食品中での使用が許可されている着色料)を使用して、組成物を着色することができる。これらの着色化合物は、植物、ミネラル、または動物などの天然供給源に由来し得るか、天然誘導体の合成対応物であり得る。
【0110】
連邦食品医薬品化粧品法の下で現在認定されている食品および摂取薬物用の着色化合物には、FD&C Red No.3(テトラヨードフルオレセインのナトリウム塩)、Food Red 17(6−ヒドロキシ−5−{(2−メトキシ−5−メチル−4−スルホフェニル)アゾ}−2−ナフタレンスルホン酸の二ナトリウム塩)、Food Yellow 13(キノフタロンまたは2−(2−キノリル)インダンジオンのモノスルホン酸およびジスルホン酸混合物のナトリウム塩)、FD&C Yellow No.5(4−p−スルホフェニルアゾ−l−p−スルホフェニル−5−ヒドロキシピラゾール−3カルボン酸のナトリウム塩)、FD&C Yellow No.6(p−スルホフェニルアゾ−B−ナフトール−6−モノスルホネートのナトリウム塩)、FD&C Green No.3(4−{[4−(N−エチル−p−スルホベンジルアミノ)−フェニル]−(4−ヒドロキシ−2−スルホニウム−フェニル)−メチレン}−[l−(N−エチル−N−p−スルホベンジル)−3,5−シクロヘキサジエンイミン]の二ナトリウム塩)、FD&C Blue No.1(ジベンジルジエチル−ジアミノトリフェニルカルビノールトリスルホン酸無水物の二ナトリウム塩)、FD&C Blue No.2(インジゴチンのジスルホン酸のナトリウム塩)、FD&C Red No.40、Orange B、およびCitrus Red No.2などの染料、ならびに種々の比率でのこれらの組み合わせが含まれる。
【0111】
FDA認証が免除されている着色化合物には、アンナット抽出物、β−アポ−8’−カロテナール、β−カロテン、ビート粉末、カンタキサンチン、カラメル色素、ニンジン油、コチニール抽出物(カルミン)、焙煎し、部分的に脱脂し、調理済みの綿実粉、グルコン酸第一鉄、果汁、ブドウ色素抽出物、ブドウ果皮抽出物(エノシアニナ)、パプリカ、パプリカオレオレシン、リボフラビン、サフラン、ターメリック、ターメリックオレオレシン、野菜汁、および種々の比率でのこれらの組み合わせが含まれる。
【0112】
組成物で用いる着色化合物の形態には、好ましくは、色素形態の添加物が含まれるが、ヒドロゲル組成物中で使用される材料と適合するレーキ形態も含まれ得る。粉末、顆粒、液体、または他の特定目的のための形態である場合、水溶性染料を、本発明の方法にしたがって使用することができる。好ましくは、「レーキ」(すなわち、染料の水溶性形態)を使用する。例えば、着色化合物の懸濁液を使用する場合、レーキ形態の添加物を使用することができる。アルミナ上のFD&C染料のカルシウムまたはアルミニウム塩の伸展(extending)によって調製された適切な水不溶性染料レーキには、FD&C Green #1レーキ、FD&C Blue #2レーキ、FD&C R&D #30レーキ、およびFD&C # Yellow 15レーキが含まれる。
【0113】
他の適切な着色化合物には、非毒性水不溶性無機色素(二酸化チタン、酸化クロムグリーン、ウルトラマリンブルーおよびピンク、ならびに酸化鉄など)が含まれる。このような色素の粒子サイズは、好ましくは、約5〜約1000ミクロン、より好ましくは約250〜約500ミクロンの範囲である。組成物中の着色化合物の濃度は、好ましくは、約0.05〜10重量%、より好ましくは約0.1〜5重量%である。多色にするために1つを超える着色化合物が存在し得る。これらの複数の色を、ストリップ、ドット、渦、または消費者が楽しみを見出すことができる任意の他のデザインの模様にすることができる。着色化合物を、他の外観を良くする物質(光沢のある粒子など)と共に使用することができる。
【0114】
生体用電極および他の電気療法(すなわち、電極または他の導電部材を体表に付着するために)で使用するために、導電種の封入によって組成物を導電性にすることができる。例えば、感圧接着性を示すように配合した組成物を使用して、経皮神経刺激電極、電気外科用対極板(electrosurgical return electrode)、またはEKG電極を患者の皮膚または粘膜組織に付着させることができる。これらの適用は、伝導率を増強し、導電種を含むためのヒドロゲル組成物の修飾を含む。伝導率を増強するために、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の添加またはフィルム形成ポリマーまたはラダー様架橋剤としてのその使用は有益であり得る。適切な導電種は、イオン伝導性電解液、特に皮膚または他の体表への塗布のために使用される伝導性接着剤の製造で通常使用されるイオン伝導性電解液であり、イオン性無機塩、有機化合物、またはこれらの組み合わせが含まれる。イオン伝導性電解液の例には、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、酢酸モノエタノールアミン、酢酸ジエタノールアミン、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硫酸カルシウム、塩化リチウム、過塩素酸リチウム、クエン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、およびレドックス対(第二鉄塩と第一鉄塩との混合物(硫酸第二鉄とグルコン酸第一鉄との混合物など)など)が含まれるが、これらに限定されない。好ましい塩は、塩化カリウム、塩化ナトリウム、硫酸マグネシウム、および酢酸マグネシウムであり、EKGへの適用には塩化カリウムが最も好ましい。実質的に任意の量の電解液が本発明の接着性組成物中に存在することができるにもかかわらず、典型的には、電解液は、組成物の約0.1〜15重量%の範囲の濃度で存在する。
【0115】
屈折性粒子は、接着剤に当たった光を屈折および反射する粒子であり、組成物を見る角度が変化するにつれて反射光の色が変化する。例示的屈折性粒子は、アルミメッキを施したエンボス加工ポリエステルから作製した粒子である。
【0116】
適切な安定剤には、パラベン(メチルパラベンおよびプロピルパラベンなど)が含まれる。
【0117】
組成物の接着性およびタック性を改良するために粘着付与剤または接着剤を含めることもでき、特に、組成物を大量の機械的ストレスに供するような様式で使用する場合の接着性の維持に有利である。タック改良の基礎をなす機構は、粘着付与剤分子の巨大なサイズおよび疎水性に起因する。高分子間複合体組成物と混合した場合、粘着付与剤は、自由体積を増加させることができ、凝集エネルギーにのみわずかに影響を与える。適切な粘着付与剤は、固体でも液体でもよい。例示的材料には、タック性ゴム(ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ブチルゴム、ポリスチレン−イソプレンコポリマー、ポリスチレン−ブタジエンコポリマー、およびネオプレン(ポリクロロプレン)など)が含まれる。好ましい接着剤には、低分子量ポリイソブチレンおよびブチルゴムが含まれる。本明細書中の適切な粘着付与剤の他の例は、以前から感圧接着剤と共に使用されている粘着付与剤(例えば、ロジン、ロジンエステル(例えば、Arizona Chemicalから販売されているSylvagum(登録商標)RE 85K(以前は、Zonester(登録商標)85K Resin))、ポリテルペン、およびベンゼン環の大部分(全てではない)がシクロヘキサン環に変換された水素化芳香族樹脂(例えば、Hercules製のRegalrez樹脂ファミリー(Regalrez 1018、1033、1065、1078、および1126、ならびにRegalite R−100など)、Arakawa ChemicalのArkon樹脂ファミリー(Arkon P−85、P−100、P−115、およびP−125など)、および水素化多環式樹脂(典型的には、ジシクロペンタジエン樹脂(Exxon Chemical Co.製のEscorez 5300、5320、5340、および5380など))である。
【0118】
接着性を減少または排除すべき実施形態では、従来のタック性減少剤も使用することができる。適切なタック性減少剤には、架橋ポリビニルピロリドン、シリカゲル、およびベントナイトなどが含まれる。
【0119】
口腔で使用される組成物のために、任意の天然または合成の香味物質または食品添加物(Chemicals Used in Food Processing,Pub.No.1274,National Academy of Sciences,pages 63−258などに記載)を、本発明の組成物中に含めることができる。適切な香味物質には、当該分野で公知のウィンターグリーン、ペパーミント、スペアミント、メントール、フルーツフレーバー、バニラ、シナモン、スパイス、フレーバーオイル、および含油樹脂、ならびにこれらの組み合わせが含まれる。香味物質の使用量は、通常、好みの問題であり、フレーバー型、個別のフレーバー、および所望の強さなどの要因の影響を受ける。好ましくは、組成物は、約0.1〜5重量%の香味物質を含む。甘味料(スクロース、フルクトース、アスパルテーム、キシリトール、およびサッカリンなど)も含むことができる。好ましくは、組成物は、約0.001〜5.0重量%の量の甘味料を含む。
【0120】
熱、光、夾雑物、および他の要因の全てにより、ヒドロゲル組成物が酸化される。したがって、処理および/または保存中の光誘導性酸化、化学物質誘導性酸化、および熱誘導性酸化分解から保護するために組成物中に抗酸化剤を含めることができる。当業者に認識されているように、酸化的分解は、ペルオキシラジカルの生成を含み、これが有機材料と反応してヒドロペルオキシドを形成する。一次抗酸化剤はペルオキシフリーラジカル捕捉剤であり、二次抗酸化剤によってヒドロキシペルオキシドの分解が誘導され、それにより、材料をヒドロキシペルオキシドによる分解から保護する。ほとんどの一次抗酸化剤は立体障害フェノールであり、本明細書中で使用するためのこのような好ましい化合物は、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン(例えば、Ciba−Geigy Corp.,Hawthorne,NYのIrganox(登録商標)1010)およびl,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス[3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジル]ベンゼン(例えば、Ethyl Corp.のEthanox(登録商標)330)である。一次抗酸化剤と置換するか補足することができる特に好ましい二次抗酸化剤は、亜リン酸トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)(例えば、Ciba−Geigy Corp.から販売されているIrgafos(登録商標)168)である。他の抗酸化剤(多機能性抗酸化剤が含まれるが、これに限定されない)も有用である。多機能性抗酸化剤は、一次抗酸化剤および二次抗酸化剤の両方としての機能を果たす。Ciba−Geigy製のIrganox(登録商標)1520 Dは、多機能性抗酸化剤の一例である。ビタミンE抗酸化剤(Ciba−GeigyからIrganox(登録商標)E17として販売されているものなど)も、本発明の組成物で有用である。他の適切な抗酸化剤には、アスコルビン酸、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、酢酸トコフェロール、没食子酸プロピル、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ビス(l,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ブチルプロパンジオエート(Tinuvin(登録商標)144としてCiba−Geigy Corp.から市販されている)、ならびにオクタデシル3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート(オクタデシル3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネートとしても公知)(Uniroyal Chemical Co.,Middlebury,CTから市販されているNaugard(登録商標)76)およびビス(l,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニルセバケート)( Ciba−Geigy Corp.から市販されているTinuvin(登録商標)765)が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、抗酸化剤は、ヒドロゲル組成物の約2重量%までの量で存在し、典型的には、抗酸化剤の量は、約0.05重量%〜1.5重量%の範囲である。
【0121】
1つまたは複数の透過増強剤を、本明細書中に記載の組成物中に含めることができる。皮膚または粘膜を介した治療に有効な流れ(flux)を得るために、いくつかの活性成分と共に適切な透過増強剤を投与することが望ましいかもしれない。適切な透過増強剤の選択は、送達される薬剤および組成物の他の成分との増強剤の適合性に依存する。
【0122】
例示的な透過増強剤には、例として、スルホキシド(ジメチルスルホキシド(DMSO)およびデシルメチルスルホキシド(C10MSO)など)、エーテル(ジエチレングリコールモノエチルエーテル(Transcutol(登録商標)として市販されている)およびジエチレングリコールモノメチルエーテルなど)、界面活性剤(ラウリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム、Poloxamer(231、182、184)、Tween(登録商標)(20、40、60、80)、およびレシチン(Fawzi et al.に付与された米国特許第4,783,450号)など)、1−置換アザシクロヘプタン−2−オン(特に、Nelson Research & Development Co.,Irvine,CAから市販されている1−n−ドデシルシクロアザシクロヘプタン−2−オン(Azone(登録商標))(Cooperに付与された米国特許第4,557,934号、Rajadhyakshaに付与された米国特許第3,989,816号、同第4,316,893号、および同第4,405,616号を参照のこと)、アルコール(エタノール、プロパノール、オクタノール、デカノール、およびベンジルアルコールなど)、脂肪酸(ラウリル酸、オレイン酸、および吉草酸など)、脂肪酸エステル(ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、メチルプロピオネート、およびオレイン酸エチルなど)、ポリオールおよびそのエステル(プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセロール、ブタンジオール、ポリエチレングリコール、およびポリエチレングリコールモノラウレート(PEGML、例えば、Leeper et al.に付与された米国特許第4,568,343号を参照のこと)など)、アミドおよび他の窒素化合物(尿素、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、2−ピロリドン、1−メチル−2−ピロリドン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、およびトリエタノールアミンなど)、テルペン、アルカノン、および有機酸(特に、サリチル酸およびサリチル酸塩、クエン酸、およびコハク酸)、ならびにこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0123】
基材を、組成物に貼ることもできる。基材は、製造中に組成物が接着する任意の表面であり、永久的基材(例えば、裏打ち部材)または一過性基材(例えば、製造ツール、装置表面、または剥離ライナー)であり得る。例示的な基材には、柔軟性のある弾力材(織物など)および開放気泡(ポリウレタン、ポリスチレン、およびポリエチレンフォームなど)、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリエーテルアミド、ならびに非高分子材料(ワックス(例えば、マイクロクリスタリンワックスまたはパラフィンワックス)またはワックス/泡ラミネートなど)が含まれる。基材の厚さは、典型的には、約15ミクロン〜約250ミクロンの範囲である。基材を、包埋するか、装飾品が体表上での組成物の適切な変形に必要な基材の粘弾性を妨害しない限り、装飾品(ビーズまたはラインストーンなど)で装飾することもできる。基材は、消費者が楽しめるか魅力を感じる文字、単語、または画像を示すこともできる。基材はまた、組成物が磨耗した場合に目立たないように半透明であり得る。しかし、磨耗した場合に組成物を容易に見つけられるように基材または組成物を光学的に着色することができる。好ましくは、着色が好ましい場合、基材中に色が存在する。例えば、消費者が楽しみを見出すことができるように、基材を、明るいか鮮やかな色で着色することができる。したがって、基材は、着色化合物(例えば、染料、色素、または基材を形成する材料に添加した場合に呈色することができる物質など)を含み得る。
【0124】
組成物を剥離ライナーに付着させることもでき、剥離ライナーは、適用前に系を保護するために役立つ使い捨ての要素である。剥離ライナーを、組成物自体だけでなく任意の活性成分に対しても不透過性であり、且つ接着性組成物から容易に剥がされる材料から形成されるべきである。剥離ライナーを、典型的には、シリコンまたはフルオロカーボンで処理し、一般に、ポリエステルおよびポリエチレンテレフタラートから作製する。
【0125】
本発明の組成物はまた、送達系またはパッチ(例えば、経皮薬物送達デバイス)での使用に適切である。例示的な系は、薬物の容器(reservoir)、外側に面した裏打ち層、および体表に系を貼り付けるための手段を含むであろう。このような系の製造では、組成物を、裏打ち層または剥離ライナーに成型するか押し出し、系の皮膚接触面としての機能を果たすことができる。組成物を、患者の体表に系を貼り付けるために組成物に積層した従来の皮膚接触接着剤と共に、このような系の内側の活性成分の容器としても使用することができる。
【0126】
活性成分の局所投与、経皮投与、または経粘膜投与のための系は、典型的には、1つまたは複数の以下を含み得る:有効量の活性成分を含む容器、活性成分の体表との伝達関係において系を維持するための接着手段、裏打ち層、速度調節膜、および反対面に曝露された接着剤を被覆して保存中および使用前の接着面を保護する使い捨て剥離ライナー。多くのこのようなデバイスでは、容器はまた、接着手段としての機能を果たすことができ、本発明の組成物を、容器および/または接着手段として使用することができる。
【0127】
IV.作製方法
本発明の組成物の性質は、製造中の1つまたは複数のパラメータの調整によって容易に調節される。例えば、接着性を増加、減少、または排除するために、組成物の接着強度を、製造中に調節することができる。異なる成分の型および/または量を変化させることまたは製造様式の変化によってこれを行うことができる。また、製造過程に関して、従来の溶融押し出し過程を使用して調製した組成物は、一般に、必ずではないが、溶液流延技術を使用して調製した組成物といくらか異なる性能特性を有する。さらに、水との接触の際に組成物が膨潤する程度は、材料の選択によって変化し得る。組成物の外観は、無色透明から半透明〜不透明まで変化し得る。さらに、一定の組成物を、成分の相対量の変化または製造法の変化(半透明ヒドロゲルは、溶融押し出しよりも溶液流延を使用してより容易に得られる)によって半透明にすることができる。この様式では、半透明組成物は、使用者が治療過程(創傷治癒)または美容過程(例えば、ホワイトニング)の途中経過を観察し、所望の効果が得られたかどうかを判断することが可能である。
【0128】
本明細書中に記載の組成物は、一般に、溶融押し出しが可能であるので、簡潔なブレンドおよび押し出し過程を使用して調製することができる。組成物の成分を秤量し、一般に、高温(例えば、約90〜170℃、典型的には100〜140℃)(必ずしも必要ではない)で、例えば、BrabenderまたはBaker Perkins Blenderを使用して混合する。必要に応じて溶媒または水を添加することができる。得られた組成物を、単軸または二軸の押し出し成形機を使用して押し出するかペレット化することができる。あるいは、各成分を1成分ずつ溶融し、その後に混合して押し出すことができる。組成物を、適切な基材または裏打ち部材上に直接的に所望の厚さに押し出すことができる。組成物を最初に押し出し、その後に裏打ち部材に対して圧力をかけるか、裏打ち部材に積層することもできる。剥離ライナーを含めることもできる。得られたフィルムの厚さは、ほとんどの目的では、約0.050〜0.80mmの範囲、より通常には、約0.37〜0.47mmの範囲である。
【0129】
あるいは、組成物を、溶液流延、適切な溶媒(例えば、酢酸エチルまたは低級アルカノール(例えば、エタノール、イソプロピルアルコールなど)などの揮発性溶媒が特に好ましい)中での典型的には約35〜60重量%の範囲の濃度での成分の混合によって調製することができる。上記のように、溶液を、基材、裏打ち部材、または剥離ライナー上に流延する。雰囲気温度で混合および流延を行うことが好ましい。フィルムでコーティングした材料を、約80〜100℃、最適には約90℃の温度範囲で、約1〜4時間の範囲、最適には約2時間焼成する。したがって、本発明の1つの実施形態は、成分を含む溶媒溶液を調製する工程と、溶液の層を基材上に堆積させて基材上をコーティングする工程と、コーティングした基材を約80〜100℃の範囲の温度に約1〜4時間の範囲の期間加熱し、それにより、基材上に接着性組成物を得る工程とを含む、本発明の組成物を調製する方法である。
【0130】
したがって、本発明の1つの実施形態は、接着性組成物の製造方法である。第1に、材料を選択し、その後に溶融押し出しまたは溶液流延によって混合して接着性組成物を形成する。上記のように材料を選択する。フィルム形成ポリマーを最初に選択する。次いで、(1)骨格の反復単位中に相補反応性官能基を含み、且つ(2)選択されたフィルム形成ポリマーとラダー様高分子間複合体を形成することができるラダー様非共有結合性架橋剤を選択する。最後に、(1)相補反応性官能基をその末端に含み、且つ(2)少なくとも1つの選択されたフィルム形成ポリマーまたは選択されたラダー様非共有結合性架橋剤と骨組み様複合体を形成することができる骨組み様非共有結合性架橋剤を選択し、ここで、フィルム形成ポリマーの量がラダー様非共有結合性架橋剤の量または骨組み様非共有結合性架橋剤の量よりも多い。
【0131】
タック性組成物が望ましい場合、溶液流延が好ましい過程である。実質的に非タック性の組成物の調製には溶融押し出しが好ましい。溶融押し出し技術または溶液流延技術のいずれかを使用して半透明の組成物を調製することができるが、典型的には、これらの実施形態には溶液流延が好ましい。
【0132】
これら全ての成分を共に混合する場合、フィルム形成ポリマー、ラダー様非共有結合性架橋剤、および骨組み様非共有結合性架橋剤の成分に活性成分を添加することができる。溶媒中に溶解した組成物に活性成分を固体または溶液として添加することができる。次いで、混合物を、従来のように適切な基材上に流延して乾燥させるが、この負荷法を使用する場合、乾燥温度は低温であることが望ましい。この様式で調製した組成物を、雰囲気温度で約1時間〜数日間の範囲で乾燥させることができる。
【0133】
あるいは、成分の混合後に活性成分を添加し、組成物を調製することができる。組成物への活性成分の1つの負荷方法は、所望の活性成分(例えば、歯の漂白剤)を含む水溶液を適切な基材上に配置した組成物の表面に積層するか活性成分を基材上に直接配置する工程を含む。次いで、剥離ライナーを組成物の上部に取り付けてサンドイッチ構造を形成し、活性成分を含む溶液を、その水膨潤特性によって組成物に吸収させる。したがって、本発明の1つの実施形態は、以下の工程:押し出し成形機によって成分を溶融処理して押し出し組成物を形成する工程と、適切な侵食性裏打ち部材上に所望の厚さのフィルムとして組成物を押し出す工程と、冷却時に、活性成分(例えば、過酸化物)の水溶液を含むフィルムを負荷する工程とを含む、薬物含有組成物の形成方法である。あるいは、基材上に積層した組成物を、所望の濃度の活性成分を含む溶液中に浸漬し、組成物に溶液を吸収させる。液体吸収時の重量増加率の測定により、組成物の活性成分負荷率を決定し、調節することができる。
【0134】
本発明はまた、多層系を有することも意図する。例えば、保存中に主な活性成分と適合することができないさらなる活性成分を含むことが望ましいかもしれない。この様式では、一方の層が主な活性成分を含む層であり、他方の層がさらなる活性成分を含むことができる。これらの他方の層を、本発明の組成物または当該分野で公知の任意の他の生体適合性処方物(例えば、ポリイソブチレン、ジメチルシロキサン、エチレン酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニル、酢酸セルロース、酪酸セルロース、プロピオン酸セルロース、エチルセルロース、および水不溶性アクリレート)から作製することができる。さらに、層の順序に依存して、タック性層(例えば、体表上に直接配置される層)および非タック性層(例えば、接触することが望ましくない衣類または他の領域の最も近くに配置される外層)を有することが望ましいかもしれない。多層系を有することの別の利点は、最外層で使用されるポリマーの比を非タック性層が得られるように変化させて、製品中に個別の裏打ち層を含めることを回避することができることである。
【0135】
典型的なフィルムの厚さは、約0.050mm〜0.80mm、好ましくは、0.25〜0.50mmである。フィルムの厚さは重要ではなく、フィルムに組み込まれる任意の活性成分の所望の濃度、組成物が体表に接着する時間、および装着者によって望まれる快適さのレベルなどによって変化させることができる。
【0136】
V.使用方法
特に、組成物を、そのパッケージから製品を取り出し、剥離ライナー(含まれる場合)を除去し、組成物を所望の体表に適用すること(例えば、漂白することが望ましい歯への適用または創傷包帯剤もしくは薬物送達系として使用するための任意の体表への配置)によって簡単に使用することができる。本発明の組成物を、種々のサイズおよび形状で提供することができる。
【0137】
裏打ち部材を含むことができ、組成物からの活性成分の漏れを減少させるか防止する一方で、使用者が所望の時間組成物を装着する(すなわち、その後に組成物が薬物を一方向に(例えば、粘膜組織などの付着した体表のみに向かって)送達させる)ために、活性成分を密封するか不透過性にするように配合することができる。あるいは、二方向に(例えば、口腔の粘膜表面および周辺環境の両方に)薬物を送達させるために所定の透過性を有する裏打ち部材を配合することができる。透過レベル(すなわち、その選択性)を使用して、付着表面および周辺環境への相対送達速度を調節することもできる。
【0138】
組成物を、できるだけ短期間(数分間、数時間、一日中、または一晩)所望の位置に保持し、その後に、所望の治療効果または美容効果が達成された場合に除去することができる。あるいは、口腔などの湿った環境下に置かれた場合、組成物を放置したままにして、完全に侵食させることができる。したがって、本発明の1つの実施形態では、歯の漂白方法は、漂白が必要な歯に組成物を適用する工程を単純に含むことができ、別の実施形態では、方法は、所望の漂白度が得られた場合に組成物を除去する工程をさらに含むことができる。
【0139】
必要に応じて、半透明組成物を得ることができ、他人に対して目障りでないか目立たないように装着される。有効成分を含まない系をデザインし、口腔表面の保護包帯剤として(例えば、創傷包帯剤として)使用することもできる。
【0140】
組成物を、長期間装着することができるが、典型的には、約10分間〜約24時間の所定の期間装着し、その後に組成物を除去するか侵食することができる。歯の漂白に適用するために、好ましい期間は、約10分間〜約8時間(例えば、一晩)であり、30分間〜1時間が好ましい実施形態である。他の活性成分については、治療または薬用化粧品的に有効な時間を、使用する活性成分および治療条件に基づいて容易に決定することができる。
【0141】
1つの実施形態では、組成物は固体であり、製造中に裏打ち部材に付着している。したがって、組成物を1工程で適用する。あるいは、組成物は非固体であり、裏打ち部材と個別に製造し、パッケージングすることができる。この場合、組成物を最初に使用者によって適用し、その後に使用者が裏打ち部材を組成物の外面に適用する。いずれかの実施形態では、使用者は、指および親指の先で裏打ち部材に通常の指圧を印可すること、任意選択的に、適用前に組成物または体表をわずかに湿らせることによって組成物を体表上(例えば、歯または他の口腔組織の上部または下部周辺)に形成することができる。平均的な成人の指または親指の先の表面積が約1cm2であると仮定すれば、指および親指の先によって得られる通常の圧力は、約100,000〜約150,000パスカル(すなわち、3ポンドまたは1.36kg)/cm2である。典型的には、各指および親指の先によって約1秒間または2秒間、組成物に圧力を印可する。一旦指および親指の先によって裏打ち部材に印加された圧力が除去されると、組成物は形成された体表の形状を維持して体表に接着する。
【0142】
使用者が組成物を除去する準備ができている場合、組成物を体表から剥がすことによって簡単に組成物を除去することができる。必要に応じて、さらに治療するために、組成物を再度接着することができる。残存する任意の残渣は最少であり、従来の洗浄方法、歯または口腔の洗浄方法を使用して除去することができる。
【0143】
本発明の1つの実施形態では、組成物は固体であり、感圧接着剤であり、且つ吸水する。
【0144】
組成物を、非固体組成物として適用することもできる(例えば、液体またはゲルとして適用する)。例えば、使用者は、歯または他の体表に適用するためにチューブから指に組成物を押し出すこと、組成物をチューブから歯に直接押し出すこと、ブラシまたは他のアプリケーターによって組成物を適用することなどが可能である。次いで、侵食性裏打ち部材を、液体またはゲルを適用した後に個別の工程として適用することができる。溶媒、液体、またはゲルの蒸発後、組成物が乾燥してマトリクス型ポリマーフィルムまたはゲルが体表に形成される。この液体またはゲルのフィルム形成組成物の1つの実施形態では、組成物は、流動性を得るのに十分な水または他の溶媒を含む。この組成物の別の実施形態では、液体またはゲル組成物のポリマー成分は、雰囲気温度および約4℃の冷蔵温度の両方にて水−エタノール混合物に溶解性を示し、溶媒蒸発の際に混和性を示す。この液体またはゲルのフィルム形成組成物のさらに別の実施形態では、ポリマー組成物は、エタノール−水混合物中での臨界溶液温度がより低い(約36℃)。口腔で使用するために、得られたフィルム(溶媒蒸発後)は、組成物とエナメル質との間の接触を長続きさせるために、体温で唾液に不溶であるかゆっくり溶解することが好ましい。
【0145】
以下の実施例は、当業者にどのようにして本発明の組成物を作製し、使用するのかを完全に開示および説明するために記載し、本発明者らが発明と見なす範囲を制限することを意図しない。数値(例えば、量、温度など)を正確に記載するように努めたが、いくらかのエラーおよび偏差が存在するはずである。他で示さない限り、部は重量部であり、温度は摂氏(℃)であり、圧力は、大気圧または大気圧付近である。
略語
DMAEMA メタクリル酸2−ジメチルアミノエチル
Eudragit E 100 メタクリル酸コポリマー(Rohm America Inc.)
Eudragit L 100 メタクリル酸コポリマー(Rohm America Inc.)
Eudragit L 100−55 メタクリル酸コポリマー(Rohm America Inc.)
Eudragit S 100 メタクリル酸コポリマー(Rohm America Inc.)
Gantrez S−97 マレイン酸−メチルビニルエーテルコポリマー(International Specialty Products)
HPC ヒドロキシプロピルセルロース(MW=1,150,000)
HPMCP フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース
PEO ポリエチレンオキシド(MW=200,000 g/mol)
PG 1,2−プロピレングリコール
PVA ポリ(ビニルアルコール)(MW=75,000)
PVP90 Kollidon(登録商標)90Fポリビニルピロリドン(BASF)
PEG400 ポリエチレングリコール400
TBC クエン酸トリブチル
TEC クエン酸トリエチル
【実施例】
【0146】
実施例1 フィルム形成ポリマーのラダー様架橋型と骨組み様架橋型との組み合わせに基づいた接着性組成物の調製および性質
第1に、フィルム形成ポリマーとしてPVP90を選択する。この場合、PVPとの水不溶性ラダー様高分子間複合体の形成によって非共有結合でPVPと架橋することができる相補ポリマーの例は、以下である:ポリアクリル酸(PAA)のホモポリマーまたはコポリマー、ポリメタクリル酸(PMA)、マレイン酸のホモポリマーまたはコポリマー、ポリビニルアルコール(PVA)のホモポリマーまたはコポリマー、ポリビニルフェノール、アルギン酸、およびヒドロキシプロピルセルロース(HPC)のホモポリマーまたはコポリマー。PVPの1つのこのような非共有結合性架橋剤は、Rohm Pharma PolymersからEudragit L 100−55として市販されているメタクリル酸と酢酸エチルとのコポリマー(1:1)である。Eudragit L 100−55と接着性PVP90−PEG400混合物とのブレンドにより、不溶性の均一な単相混合物が形成される。水に不溶性である場合、以下の表および図4および5に示すように、三重PVP−PEG−Eudragitブレンドを、ゾル画分(%)および膨潤比に関して特徴づけた。
【0147】
フィルムの調製:50gのPEG400を、200gのエタノール中に溶解した。強く撹拌しながら、以下に示す量のEudragit L 100−55粉末を添加した。強く撹拌しながら、以下に示す量のPVP90粉末を添加した。混合物を2時間撹拌して、均一な溶液を得た。溶液を2〜5時間静置して、気泡を消した。ポリマーフィルムを、PET裏打ちへの溶液流延およびその後の3日間にわたる雰囲気温度での乾燥によって調製した。0.20±0.03mmのフィルムを得た。得られたフィルム中の含水量を、120℃での蒸発散重量によって測定した。フィルム中の含水量は、11±1.5重量%の範囲であることが見いだされた。
【0148】
【表4】
フィルムの膨潤性を、重量測定によって試験した。サンプルを、0.1M緩衝液に入れ、サンプル重量に対して少なくとも200倍の溶液を採取した。サンプルを、25℃で3日間保存した。膨潤溶液を、正確に取り出し、110℃で乾燥させた。膨潤比およびゾル画分を、以下のように計算した:膨潤比=md/ms;ゾル画分(%)=100(m0−md)/m0(式中、m0は初期サンプル重量であり、msは膨潤サンプルの重量であり、mdは乾燥後のサンプル重量である)。
【0149】
上記に示すデータにしたがって、水中でのpHが高いほど膨潤比が高くなるのに対して、溶解性ブレンド画分は、わずかしかpHの影響を受けなかった。pHが高いほど、Eudragitカルボキシル基のイオン化の程度が高くなり、且つラダー様複合体の水中での膨潤が高くなる。このデータは、ブレンドの水への溶解性(ゾル画分に関して示す)が、Eudragitとの非共有結合性架橋によって調節され、且つ架橋剤の含有量に依存することを意味する。実際、Eudragit濃度の増加に伴って、ゾル画分が相対的に減少した(図4)。ゾル画分の値は、ブレンド中のPEG400の含有量に近似する一方で(図5)、PVPは、主に、Eudragitとのラダー様架橋によって不溶性状態であった。
【0150】
膨潤比は、フィルム形成ポリマー(PVP)の非共有結合性架橋度の基準である。ラダー様架橋剤(Eudragit L 100−55)の濃度が高いほど、膨潤比が低くなり、且つPVP−Eudragit水素結合の網目構造の密度が高くなる(図4)。骨組み様架橋剤(PEG)により、膨潤比およびゾル画分の両方が増加した(図5)。これにより、PVP−PEG−Eudragit三重ブレンドの膨潤および溶解を、ブレンド組成物の変化によって容易に変化させることができる。
【0151】
フィルム形成ポリマー(PVP90)とラダー様架橋剤(Eudragit L 100−55)との比および骨組み様架橋剤(PEG400)の含有量の変化は、接着性ヒドロゲルの機械的性質を調節するための実行可能なツールであることが見いだされた。PVP−PEG−Eudragitヒドロゲルの引っ張り特性は、凝固したゴムの引っ張り特性の典型である(図6)。Feldstein et al.に付与された米国特許第6,576,712号に記載のラダー様非共有結合性架橋剤(Eudragit)のPVP−PEG接着剤への添加により、機械的強度が著しく増加し、柔軟性が喪失した。最終的な引っ張り応力は、8%Eudragit含有率で最大になる一方で、破壊時の最大伸長は、単相ブレンドのEudragit濃度の増加によって速やかに減少した。36%Eudragitブレンドを例とする二相組成物は、凝集強度の喪失に伴って柔軟性がわずかに増加した。骨組み様架橋剤(PEG)は、PVP−PEG−Eudragit三重ブレンドの良好な可塑剤であった。PEG含有量の増加により、ヒドロゲルフィルムの柔軟性が促進された(図7)。
【0152】
実施例2 膨潤状態のヒドロゲルの接着特性
本実施例は、水和度の関数としてのPVP−PEG−Eudragit L 100−55ブレンドの接着特性を証明する。フィルムの調製:30gのPEG400を、280gのエタノールに溶解した。強く撹拌しながら、12gのEudragit L 100−55粉末を添加した。強く撹拌しながら、58gのPVP90粉末を添加した。混合物を2時間撹拌して、均一な溶液を得た。溶液を5時間静置して、気泡を消した。ポリマーフィルムを、PET裏打ちへの溶液流延およびその後の1日間にわたる雰囲気温度での乾燥によって調製した。次いで、フィルムを110℃のオーブン中で一晩乾燥させた。0.20±0.04mmのサイズのフィルムを得た。異なる水和度のPVP−PEG−Eudragit L 100−55フィルムを、フィルム表面上への調節された量の蒸留水の噴霧によって調製した。次いで、フィルムを、PET剥離ライナーで被覆し、アルミニウムポーチに秤量し、フィルムサンプル内の水を確実に均一に分布させるために7日間保存した。得られたフィルム中の含水量を、120℃での蒸発散重量によって測定した。11〜40重量%以上の範囲の水和度のフィルムを、以下の表に示すように調製した。水和PVP−PEG−Eudragitフィルムの接着特性(図8〜10)を、TAXT2テクスチャー分析器を使用したASTM D 2979法にしたがって試験した。平均粗さが50nmであるステンレススチールプローブを使用し、接触圧力は0.8MPaであり、接触時間は1秒であり、剥離速度は0.1mm/秒であった。
【0153】
【表5】
プローブタック応力−歪み曲線における最大応力値は、伝統的に、タックの基準と見なされている。約15〜17%水和度でタックが最大であることが立証された(図8および9)。しかし、より正確な接着の基準は、一連の剥離過程(剥離仕事)において消滅した総エネルギー量である。剥離仕事を、膨潤ヒドロゲル中の含水量の関数として図10に示す。図10中のデータから認められるように、プローブへの接着は、水和度40%でさえも十分に高かった。比較的低いブレンドの水和度で、接着剤固化しない型は常に接着性を示した。吸着水の含有量が50%を超えると、剥離型が凝集性を示すようになった。これにより、PVP/PEG/Eudragit L 100−55(12%)ブレンドは、感圧接着剤(高接着)および生体接着剤(一連の水への膨潤における接着性の増大)の両方に特有の性質をもつことが明らかになった。接着性と水和下でタックを増加させる能力とのこのような固有の組み合わせは、以前に全く報告されていなかった。
【0154】
実施例3 PVP−PEG接着剤とのブレンドの性能特性に対するメタクリル酸コポリマーの組成物の効果
以下の実施例では、フィルム形成ポリマーとしてPVP90を選択したのに対して、メタクリル酸メチルとメタクリル酸(Eudragit L 100とEudragit S 100)とのコポリマーは、ラダー様架橋剤としての役割を果たした。PEG400を、骨組み様架橋剤として使用した。フィルムを調製し、試験した。
【0155】
Eudragit L 100は、疎水性モノマーの組成物である点がEudragit L 100−55と異なる一方で、メタクリル酸のモノマー単位の含有量が同一(50%)である。Eudragit L 100−55では、疎水性モノマー単位がアクリル酸エチルで示される一方で、Eudragit L 100は、メタクリル酸とメタクリル酸メチルとのコポリマーである。同様に、Eudragit S 100は、メタクリル酸単位の含有量が減少している点で(50%が33%に減少)Eudragit L 100と区別されるのに対して、メタクリル酸メチルは、両コポリマー中で疎水性モノマーである。
【0156】
フィルムの調製:40gのPEG400を、280gの水/エタノール(1:1)混合物に溶解した。必要量の水酸化ナトリウムを溶解した(以下の表に示す)。強く撹拌しながら、12gのEudragit L 100−55粉末を添加した。強く撹拌しながら、58gのPVP90粉末を添加した。混合物を2時間撹拌して、均一な溶液を得た。溶液を5時間静置して、気泡を消した。ポリマーフィルムを、PET裏打ちへの溶液流延およびその後の3日間にわたる雰囲気温度での乾燥によって調製した。0.20±0.04mmの厚さのフィルムを得た。フィルム中の含水量を、120℃での蒸発散重量によって測定した。フィルムの水和度は、10±1.5重量%であった。
【0157】
これらのPVP−PEG−Eudragitフィルムの接着特性を以下に示す。
【0158】
【表6】
PVP−PEGブレンドとラダー様架橋剤としてのEudragit L 100とのブレンドは水溶性であることが見いだされた一方で、ラダー様架橋剤としてEudragit S 100を含むブレンドは、水膨潤性ヒドロゲルであった。
【0159】
実施例4 フィルム形成ポリマーとしてのメタクリル酸コポリマーおよびラダー様架橋剤としてのPVPを含む組成物
実施例1〜3に記載のように、フィルム形成ポリマーはPVPであり、ラダー様架橋剤は、Eudragit L 100−55、L 100、またはS 100であり、本実施例は、Eudragitがフィルム形成ポリマーとしての機能を果たし、ラダー様架橋剤がPVPである逆組成物(inverted composition)を示す。ゾル画分は、水溶性骨組み様架橋剤(PEG)の含有量と密接に対応し、ラダー様高分子間複合体の形成によって不溶性生成物が得られることを示していた。
【0160】
【表7】
これにより、PVP−PEG−Eudragit L 100−55ブレンドの組成の変化により、種々の程度の親水性の接着性材料が得られ、膨潤比の値は、2〜60の範囲であった。
【0161】
実施例5 非アクリル酸カルボキシル含有ラダー様架橋剤とのPVP−PEG骨組み様複合体の段階的に溶解する膨潤性の接着性ブレンド
フィルム形成ポリマーとしてPVP90を選択し、骨組み様架橋剤および接着増強剤としてPEG400を選択した。次いで、マレイン酸とカルボキシル基を保有するセルロース誘導体とのコポリマーを評価し、適切なラダー様架橋剤であると決定された。
【0162】
PVP−PEG複合体中のラダー様架橋剤としてのマレイン酸とメチルビニルエーテルとのコポリマーの大部分使用例のうちの1つは、Gantrez S−97コポリマーである。40重量%のPEGならびに5、10、15重量%のGantrezを含むPVPブレンドを、水−エタノール溶液(1:1)中での流延/乾燥によって得た。全ブレンドが水溶性であるにも関わらず、フィルムの全溶解のために必要な時間はラダー様架橋剤(Gantrez)の含有量と直線関係にあった。対照的に、ブレンド中のGantrezの含有率が低いほど、接着性が高くなる。
【0163】
異なるカルボキシル含有ポリマーがPVPなどの電子供与親水性ポリマーの適切なラダー様架橋剤であるという提案を支持する別の典型的な例は、HPMCPである。PEG400を、PVP90の骨組み様架橋剤として使用した。
【0164】
フィルムの調製:40gのPEG400を、240gのエタノール/水混合物(80(重量部のエタノール部分):20(重量部の水部分))に溶解した。次いで、強く撹拌しながら、必要量のHPMCPおよびPVPを溶解した。混合物を2時間撹拌して、均一な溶液を得た。溶液を5時間以上静置して、気泡を消した。ポリマーフィルムを、PET裏打ちへの溶液流延およびその後の3日間にわたる雰囲気温度での乾燥によって調製した。0.20±0.04mmの厚さのフィルムを得た。これらの膨潤ヒドロゲルの接着挙動は、PVP−PEG−Eudragit L 100−55ブレンドによって示されるパターンに従った。フィルムの膨潤特性および溶解特性を、以下に示した。
【0165】
【表8】
実施例6 接着性ヒドロゲル中のPVPのラダー様架橋剤としてのヒドロゲル含有親水性ポリマーの使用
本明細書中でPVPと例示される電子供与親水性フィルム形成ポリマーの適切なラダー様架橋剤のリストはポリ酸だけではない。他の適切な親水性ポリマーは、その反復単位中に水酸基を保有する。本実施例は、PVPのラダー様架橋剤としてのPVAおよびHPCなどのヒドロゲル含有セルロース誘導体の適切性を証明する。
【0166】
PVP90と骨組み様架橋剤としてのPVA、PEG、PG、またはグリセロールとのブレンドを、以下のように調製することができる。強く撹拌しながら、必要量のPVAを、95℃の蒸留水に溶解した(1重量部のPVAを溶解するために、9重量部の水を要した)。次いで、強く撹拌しながら、必要量のPGおよびPVPを溶解した。混合物を85℃で2時間撹拌して、均一な溶液を得た。ポリマーフィルムを、裏打ち部材への溶液流延およびその後の3日間にわたる雰囲気温度での乾燥によって調製した。0.20±0.02mmの厚さのフィルムを得た。フィルムの接着特性は、PVP−PEG−Eudragit L 100−55ブレンドで認められた接着特性と類似していることが見いだされた。ゾル−ゲル分析の結果を、以下に列挙する。
【0167】
【表9】
別の適切なPVPのラダー様架橋剤HPCである。高分子量のPVP90(58.67重量%)、PEG400(29.33%)、およびHPCを、撹拌しながらエチルアルコールに溶解した。得られた溶液を、剥離ライナー上に流延し、50℃で乾燥させた。別のブレンド生成方法は、以下の実施例11に示す成分の直接的混合およびその後の混合物の押し出し成形を含む。調製されたブレンドは、62%の可溶性画分および膨潤比10.13を有していた。処方物の接着特性は、PVP−PEG−Eudragit L 100−55によって示されるパターンに従う。
【0168】
58.67重量%のPVP90、29.33重量%のPEG400、9.6重量%のHPC、および2.4重量%のEudragit L 100−55を含む接着性ブレンドを、上記のように調製した。本組成物の特性は、Eudragit L 100−55とPVP−PEG−HPCブレンドとの間の特性であることが見いだされた。ゾル画分の含有量は48%であり、膨潤比は6.8であった。
【0169】
実施例7 ラダー様架橋剤と骨組み様架橋剤との組み合わせを含む高分子間複合体に基づいた無PVP接着性ヒドロゲル
PVPが本発明の接着剤中でフィルム形成成分としての機能を果たすことが適切な親水性ポリマーの最も首尾の良い代表例の1つであるが、他の適切なフィルム形成ポリマーには、PEOが含まれる。PEOは、PVPと比較して遥かに弱い電子供与ポリマーである。この理由のために、PEOは、ポリ酸などの強いプロトン供与ポリマーと十分に強い水素結合を形成することができる。
【0170】
68.2重量%のPEO、骨組み様架橋剤としての25重量%のPG、およびラダー様架橋剤としての6.8重量%のGantrez S−97を含むブレンドを、水溶液の流延/乾燥によって調製した。調製された厚さが0.2mmのフィルムは強く凝集し(最終的な引っ張り応力は、5.0MPaであった)、Gantrez S−97のカルボキシル基とのH結合によってPEOが架橋していることを示す。水へのフィルム浸漬の際、フィルムは1〜2分間溶解した。中程度に水和したフィルムで相当なタックが認められた。13重量%の水を含むフィルムで最大タック(約0.8MPa)が認められた。
【0171】
実施例8 ラダー様高分子間複合体に基づいた接着性組成物の調製および特性
上記の親水性接着剤がポリマー成分の間の水素結合によって形成される一方で、以下の表に示したサンプルは、フィルム形成ポリマーのH結合および静電架橋によるカップリングによって調製されたヒドロゲルの性質を示す。静電相互作用は、一般に、H結合よりも強い。Eudragit E−100を、フィルム形成ポリマーとして使用し、これは、DMAEMAと、メタクリル酸ブチルと、メタクリル酸メチル(2:1:1)とのコポリマーである。DMAEMAのモノマー単位は、ラダー様架橋剤(Eudragit L 100−55)中でカルボキシル基と静電結合を形成することができる。
【0172】
【表10】
実施例9 従来の感圧接着剤および生体接着剤と比較した高分子間複合体に基づいた接着性組成物の性能特性
本発明の三重ブレンドヒドロゲル(PVP−PEG−Eudragit L 100−55)の特性を、以下の特性と比較した:従来の感圧接着剤(PSA;DURO−TAK(登録商標)34−4230、National Starch and Chemicals)、古典的な生体接着剤(共有結合性架橋ポリアクリル酸ポリマーであるCarbopol(登録商標)974PおよびNoveon(登録商標)AA1(共に、B.F.Goodrich,Co.)、Feldstein et al.に付与された米国特許第6,576,712号に記載のPVP−PEG二重(binary)ブレンド、ならびに本発明の親水性接着剤(実施例1〜7)。
【0173】
【表11】
上記でSISブロックコポリマーベースのDURO−TAK(登録商標)34−4230接着剤を例とするPSAは、粘弾性ポリマーの特定のクラスを示す。短時間(1〜2秒間)のわずかな外圧の印加における種々の基材と強い接着剤固化を形成することができる。ヒトで使用するための典型的なPSAは主にガラス転移温度が低い(−120〜−30℃の範囲)(通常は粘着樹脂の添加によって増加する)疎水性エラストマーに基づくことは注目に値する。PSAの一般的性質は、基材表面が湿った場合の接着性の喪失である。この理由のために、従来のPSAを、高度に水和し、且つ柔軟な生体組織(口腔粘膜など)へのために使用することができない。この目的のために、通常は親水性生体接着剤を使用するが、これは、一般に、乾燥状態で非タック性を示すが、湿った基材に接着する。しかし、このような生体接着剤の接着強度は、通常、PSAの接着強度よりもはるかに低い。
【0174】
このデータから認められるように、本発明の接着剤は、感圧接着剤と生体接着剤の両方の性質を有する。実際、その接着強度は、PSAに特有であり、生体接着剤のような湿った基材に対する接着性が増加した。ヒドロゲル組成の変化によって、非共有結合性架橋ヒドロゲルに基づいた生成物の接着性水分吸着および機械的性質をさらに容易に調節することができる(図3〜7を参照のこと)。
【0175】
従来のアクリル酸PSAおよび本発明の高分子間複合体に基づいた3つのグレードの接着剤のin vivoでの乾燥および湿ったヒト前腕の皮膚への引き剥がし粘着力を評価した。データにより、米国特許第6,576,712号に記載の水溶性PVP−PEG接着剤の接着特性が、従来のPSAの特徴である高接着性と生体接着剤の特徴である湿った皮膚および生体組織に接着する能力とを組み合わせることによってPSAおよび生体接着剤の性質を共有することが確立された。本発明の水溶性PVP−PEG接着剤およびPVP−PEG−Eudragit L 100−55接着剤の接着挙動を、以下の2つの異なるグレードの従来のPSAの性質と比較した:SISベースのDURO−TAK(登録商標)34−4230 PSAおよびアクリル酸PSA(3M)。
【0176】
剥離下での最大応力に関して示すと、高分子間複合体に基づいた接着剤のタックは、従来のPSAのタックに匹敵することが見いだされた。しかし、本発明の接着性ブレンドの異なる特徴は、フィルム形成ポリマーの鎖の非共有結合性架橋に起因する最大伸長値がより低いことであった。骨組み様架橋がラダー様架橋よりも著しく弱いので、水溶性PVP−PEG接着剤は、ラダー様架橋型を有する接着剤よりもプローブ剥離が強いことを示した。これに関して、ラダー様架橋によって得られた接着剤の流動性および最大伸長を増加させるための主なツールが、水への膨潤過程で可塑剤として機能することができる骨組み様架橋剤との混合による網目構造密度の希薄化およびラダー様架橋剤の濃度の減少でもあることに留意することが適切である。
【0177】
実施例10 ポリマー成分の直接鉄器混合およびその後の押し出し成形による接着性フィルムの調製
本発明の親水性および両親媒精接着剤の挙動は、共有結合性架橋ポリマーに特有である。しかし、共有結合性架橋系と対照的に、高分子間複合体に基づいた接着剤を、より簡潔なブレンド過程を使用して容易に調製することができ、さらに、架橋ポリマーを使用して結合することができないフィルム形成特性が得られる。
【0178】
上記実施例に記載の処方物を溶液の流延およびその後の乾燥によって調製する一方で、本発明の接着性フィルムを乾燥状態の成分の直接的混合およびその後の押し出し成形によって生成することもできる。Thermo Haake Mixerを使用して直接混合するのに対して、Skania Single−Screw Extruderを使用して押し出し成形過程を行った。混合および押し出し成形手順を以下に記載する。
【0179】
PVP−PEG−Eudragit組成物の調製
ブレンド組成物は以下であった:58.7重量%PVP90、9.33重量%PEG400、および12.0重量%Eudragit L 100−55。
【0180】
混合手順:全量のPEGおよびEudragitを室温で混合した。次いで、都合のよい調度に到達させるために室温で一定量のPVPを添加し、プレミックスを生成した。このプレミックスを30rpmにて55℃で撹拌しながらミキサー中に入れた。次いで、撹拌強度を60rpmに増加させて、残存するPVPの一部を導入した。混合レジメ(regime)を以下に示す。
【0181】
【表12】
押し出し成形手順:約5ミルの厚さのフィルムを調製するために、スリット厚が100μmおよび幅が6.5cmの金型を構築した。以下に示すように、2つの温度レジメ(regime)(IおよびII)を使用した。
【0182】
【表13】
次いで、2つのPET抗接着フィルムの間に処方物層を押し出し成形し(いかなるフィルムも含まない)、約5〜7mm/cの線速度で引き延ばした。
PVP−PEG−HPC組成物の調製
ブレンド組成物は、以下であった:58.67重量%PVP90、29.33重量%PEG400、および12.0重量%HPC。混合手順は上記のとおりであり、混合レジメを以下に示す。
【0183】
【表14】
押し出し成形手順は上記のとおりであり、レジメを以下に示す。
【0184】
【表15】
PVP−PEG−HPC−Eudragit組成物の調製
ブレンド組成物は以下であった:58.67重量%PVP90、29.33重量%PEG400、9.60重量%HPC、および2.40重量%Eudragit L 100−55。混合および押し出し成形手順は上記のとおりであり、レジメを以下に示す。
【0185】
【表16】
【0186】
実施例11 創傷包帯剤
以下のサンプルは、どのようにして本発明のヒドロゲル組成物を銀含有抗菌創傷包帯剤のために使用することができるのかについて例示する。
【0187】
【表17】
抗菌包帯剤は、水および滲出液に不溶であるが膨潤性を示し、したがって、大量の滲出液を吸収する。包帯剤は最初はタック性を示し、乾燥および中程度に滲出した創傷に対して良好な接着性を維持するが、大量の水での洗浄によって痛みを伴うことなく皮膚から除去することができた。したがって、本実施例の包帯剤は、床擦れ、糖尿病性潰瘍、動脈潰瘍、および種々の潰瘍の治療に有用である。
【0188】
Agイオン選択電極を使用した電位差測定法を使用して、包帯剤からの銀放出を研究した。濃度範囲が2.5×10−6〜10−3Mの硝酸銀水溶液を使用して、Agイオン選択電極を較正した。円形のフィルムサンプル(直径1インチ、面積5cm2)を、金型で切断し、両面テープによってガラスプレートに積層した。上面がAg放出側であるガラスプレートをビーカーに入れ、50mlの蒸留水をビーカーに注いだ。次いで、系をペトリ皿で覆い、オーブンに入れ、25±0.2℃に設定した。特定の時点後、サンプル上のビーカー中の受容体溶液を撹拌し、銀イオン選択電極を使用して銀濃度を測定した。測定後、受容体溶液を除去し、50mlの蒸留水と置換した。蓄積Ag放出を計算し、1cm2の抗菌包帯剤あたりのμgで示した。サンプル11−1は、大量の硫酸銀を送達することが見いだされた。
【0189】
実施例12 歯漂白ストリップ
歯漂白のための組成物の1つの実施形態を、溶融押し出し過程を使用して以下の成分から調製した。
【0190】
【表18】
成分を、以下のようにBrabender単一スクリュー押し出し成型機にて融解処理した。100〜150℃で、Eudragit L 100−55を、最初に押し出し成形機に添加し、その後にPVPおよびPEGを添加した。組成物を、2つのポリエチレンテレフタラート剥離ライナーの間に厚さ0.35mmに押し出した。過酸化水素溶液を、押し出したフィルムに添加した。歯表面に適用した場合、その直後に最初に非タック性を示すフィルムが象牙質に接着し、唾液で膨潤してゆっくり溶解し、過酸化水素を放出する。
【0191】
図11は、PVP−PEG−Eudragit L 100−55組成物に基づいた歯漂白ストリップおよびCrest Whitestrips(商標)(Procter&Gamble Co.,Cincinnati,OH;「Crest Product」と呼ばれる)からの過酸化水素のin vivo放出プロフィールを比較したものである。Crest Productは、薄いポリエチレンフィルム上のCarbopol 956ゲル中に5.3%の過酸化水素を含んでいた。Carbopolは、ポリアクリル酸の共有結合性架橋によって作製された生体接着性ヒドロゲルの古典的な代表例である。過酸化水素のin vivo放出量を、予め決定した装着期間における歯表面から除去された生成物中の過酸化水素の残存によって測定した。本発明の組成物により、Crest Productと比較して、過酸化水素の放出期間が延長された。実際に、Crest Product中のCarbopolベースのマトリクスと比較して、本発明の生体接着性PVP−PEG−Eudragit L 100−55フィルムによって溶解速度が遅延された。同様に、本発明の組成物からの過酸化水素放出時間の延長により、歯漂白効果が改善された。
【0192】
実施例13 液体歯漂白処方物
本発明に記載の接着性ブレンドを、接着性フィルムの形態または適切な部位の乾燥時にフィルムを形成することができる適切な溶媒を含む溶液として適用することができる。液体歯漂白剤を調製するために、以下の成分を混合した。
【0193】
【表19】
Eudragit RLは、Rohm Pharma Polymersから市販されているトリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロリドとエチルアクリレートおよびメチルメタクリレートとのコポリマー(0.2:1:2)である。水性溶媒中に不溶であるので、ヒドロゲル組成物中で、急速な溶解からヒドロゲルフィルムを保護するために役立つ。
【0194】
歯表面に適用し、30秒間乾燥させた場合、液体組成物は、薄いヒドロゲルフィルムを形成し、歯上に30分間を超えて保持され、歯漂白効果が得られる。
【0195】
実施例14 治療薬を含む接着性マトリクス
以下の組成物を、以下に列挙した成分のエタノールへの溶解、溶液の流延、および50℃での乾燥によって調製した。
【0196】
サンプルは、フィルム形成ポリマーとしてアクリレートポリマー(Eudragit E 100)を使用する。Eudragit L−100−55はEudragit E 100のラダー様架橋剤であり、PVPはEudragit L−100−55のラダー様架橋剤である。PVPはまた、ブレンドの親水性を増加させるのに役立つ。PEGは、PVPの骨組み様架橋剤である。サンプルは、可塑剤としてクエン酸アルキル(TEC)も含む。
【0197】
【表20】
実施例15 液体フィルム形成包帯
本実施例では、接着剤を、可溶性ラダー様架橋剤のためのラダー様架橋剤および骨組み様架橋剤と共に可溶性ラダー様架橋剤と配合した。主成分は、不溶性フィルム形成ポリマーであり、可塑剤を含んでいた。
【0198】
サンプル15−1〜15−4は、液体包帯としての皮膚への適用に適切な液体組成物を示したものである。サンプル15−1は、不溶性フィルム形成ポリマー(Eudragit RS)およびこのポリマーの可塑剤(クエン酸トリブチル(TBC))を含む歯漂白のための液体処方物である。Eudragit RSは、Rohm Pharma Polymersから市販されているトリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロリド(0.1)とエチルアクリレート(1)およびメチルメタクリレート(2)とのコポリマーである。サンプル15−2〜15−4は、PVPラダー様架橋剤のためのラダー様架橋剤を含まない。
【0199】
皮膚適用のための液体包帯および口唇ヘルペス(cold sore)組成物はまた、局所麻酔などの活性成分を含み得る。適切な局所麻酔には、塩酸ジブカイン、ジブカイン、塩酸リドカイン、リドカイン、ベンゾカイン、p−ブチルアミノ安息香酸2−(ジエチルアミノ)エチルエステルヒドロクロリド、塩酸プロカイン、塩酸テトラカイン、塩酸クロロプロカイン、塩酸オキシプロカイン、メピバカイン、塩酸コカイン、および塩酸ピペロカインが含まれる。
【0200】
任意の天然または合成香味物質(Chemicals Used in Food Processing,Pub.No.1274,National Academy of Sciences,pages 63−258に記載の香味物質など)を、本発明の組成物に含めることができる。適切な香味物質には、当業者には公知であるように、ウィンターグリーン、ペパーミント、スペアミント、メントール、フルーツフレーバー、バニラ、シナモン、香辛料、フレーバーオイル(クローブオイル)、および含油樹脂、ならびにこれらの組み合わせが含まれる。香味物質の使用量は、通常、好みの問題であり、フレーバー型、個別のフレーバー、および所望の強さなどの要因の影響を受ける。
【0201】
サンプル15−3はまた、モノオレイン酸グリセロール(Peceol,Gattefosse,France)などの皮膚軟化剤を含む。
【0202】
【表21】
本発明の実施には、他で示さない限り、ポリマー化学、接着剤製造、およびヒドロゲル調製のための従来技術を使用し、これらは当業者の範囲内である。このような技術は、文献中に完全に説明されている。
【0203】
本発明を好ましい特定の実施形態と組み合わせて記載しているが、上記の説明および実施例は例示を意図し、本発明の範囲を限定しないと理解すべきである。他の態様、利点、および修正形態が、本発明に属する当業者に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0204】
【図1】図1は、骨組み様PVP−PEGネットワーク複合体の略図である。PVP−PEG複合体は、高凝集強さ(PVP−PEG水素結合に起因する)と巨大な自由体積(PEG鎖の相当な長さおよび可動性に起因する)とを併せ持つ。PVP−PEGブレンド中の自由体積の増加を強調するために、この複合体構造型を、「骨組み様」構造と定義する。複合体の骨組み様構造は、PEG単鎖の両末端の反応性官能基の位置に起因する。
【図2】図2は、ラダー様非共有結合性架橋剤としての相補プロトン供与ポリマーとのラダー様PVP複合体の略図である。相補ポリマーが骨格の反復単位中に反応性官能基を含む場合、得られた複合体は、いわゆる「ラダー様」構造を有する。
【図3】図3は、骨組み様架橋型とラダー様架橋型とを組み合わせた高分子間複合体の略図を示す。「FFP」はフィルム形成ポリマーを示し、「CCL」は骨組み様非共有結合性架橋剤を示し、「LLC」はラダー様非共有結合性架橋剤を示す。
【図4】図4は、水素結合、ラダー様架橋剤、Eudragit L 100−55の濃度の関数としてのPVP(50重量%)とPEGおよびEudragit L 100−55との三重ブレンドについてのゾル分率および膨潤比(pH4.6)を示す。
【図5】図5は、水素結合、骨組み様架橋剤、PEGの濃度に対するPVPとPEGおよびEudragit L 100−55との三重ブレンド(PVP:Eudragit比は5:1)についてのゾル分率および膨潤比(pH4.6)の依存を示す。
【図6】図6は、20mm/分の絞り率での一軸伸長下でのPVP−PEG−Eudragit L 100−55ブレンドフィルムの破壊までの引張り応力−歪み曲線に対する非共有結合性ラダー様架橋剤(Eudragit L 100−55)の効果を示す。骨組み様架橋剤PEGの濃度を、50重量%に固定した。
【図7】図7は、20mm/分の絞り率での一軸伸長下でのPVP−PEG−Eudragit L 100−55ブレンドフィルムの破壊までの引張り応力−歪み曲線に対する非共有結合性骨組み様架橋剤(PEG)の効果を示す。PVP:Eudragit L 100−55比は5:1である。
【図8】図8は、組成物が58重量%のPVP、30重量%のPEG、および12重量%のEudragit L 100−55を含む場合のPVP−PEG−Eudragit L 100−55ブレンドの接着特性に対する吸着水の影響を示す。吸着水の量(重量%)を示す。
【図9】図9は、PVP−PEG−Eudragit L 100−55ヒドロゲルについての接着剤剥離対吸着水の重量分率下での最大応力および最大伸長のプロットである。
【図10】図10は、PVP−PEG−Eudragit L 100−55ヒドロゲルについての吸着水の関数としての接着剤剥離の仕事量を示す。
【図11】図11は、Carbopol生体接着剤およびPVP−PEG−Eudragit L 100−55ヒドロゲルに基づいた歯漂白ストリップからの過酸化水素のin vivo放出プロフィールを示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着性組成物であって、
水膨潤性不水溶性ポリマーおよび水溶性ポリマーから選択されるフィルム形成ポリマーと、
骨格の反復単位中に相補反応性官能基を含み、且つ該フィルム形成ポリマーとラダー様高分子間複合体を形成することができるラダー様非共有結合性架橋剤と、
該相補反応性官能基をその末端に含み、且つ少なくとも1つのフィルム形成ポリマーまたはラダー様非共有結合性架橋剤と骨組み様複合体を形成することができる骨組み様非共有結合性架橋剤と、
を含み、
ここで、該フィルム形成ポリマーの量が、該ラダー様非共有結合性架橋剤の量または該骨組み様非共有結合性架橋剤の量よりも多い、接着性組成物。
【請求項2】
約20重量%〜95重量%の前記フィルム形成ポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
約0.5重量%〜40重量%の前記ラダー様架橋剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
約0.5重量%〜60重量%の前記骨組み様架橋剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記水膨潤性不水溶性ポリマーが、セルロース誘導体ならびにアクリレートベースのポリマーおよびコポリマーから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記セルロース誘導体が、非エステル化セルロースモノマー単位、酢酸セルロースモノマー単位、および酪酸セルロースモノマー単位またはプロピオン酸セルロースモノマー単位のいずれかを含むセルロースエステルポリマーである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記セルロース誘導体が、ヒドロキシアルキルセルロースモノマー単位またはカルボキシアルキルセルロースモノマー単位を含むポリマーである、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記アクリレートベースのポリマーまたはコポリマーが、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、およびメタクリル酸エチルのポリマーまたはコポリマーから選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
前記水溶性ポリマーが、水溶性セルロース由来のポリマー、ビニルアルコールのホモポリマーおよびコポリマー、ビニルフェノールのホモポリマーおよびコポリマー、エチレンオキシドのホモポリマーおよびコポリマー、マレイン酸のホモポリマーおよびコポリマー、コラーゲン、ゼラチン、アルギネート、デンプン、ならびに天然に存在するポリサッカリドから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記水溶性セルロース由来ポリマーが、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、水和セルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記天然に存在するポリサッカリドが、寒天、アルギネート、アルギン酸誘導体、カラギーナン、キチン、キトサン、グルコマンナン、ジェランガム、ゼラチン、グアーガム、アラビアゴム、ガティガム、カラヤゴム、トラガカントゴム、イナゴマメゴム、ペクチン、プルラン、デンプンおよびデンプン誘導体、タマリンドガム、ならびにキサンタンから選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記ラダー様非共有結合性架橋剤が、親水性ポリマー、水膨潤性水不溶性ポリマー、水溶性ポリマー、親水性モノマーと疎水性モノマーとのコポリマー、およびこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記親水性ポリマーが、ポリ(ジアルキルアミノアルキルアクリレート)、ポリ(ジアルキルアミノアルキルメタクリレート)、ポリアミン、ポリビニルアミン、ポリ(アルキレンイミン)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリスルホン酸、ポリ(N−ビニルラクタム)、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリ(ヒドロキシアルキルアクリレート)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(N−ビニルアクリルアミド)、ポリ(N−アルキルアクリルアミド)、水酸基およびカルボキシル基を含むセルロースの極性誘導体、アルギン酸、キトサン、ゼラチン、これらの組み合わせおよびコポリマーから選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記水膨潤性水不溶性ポリマーが、セルロース誘導体、アクリレートベースのポリマーおよびコポリマー、ならびにこれらの組み合わせから選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
前記セルロース誘導体が、非エステル化セルロースモノマー単位、酢酸セルロースモノマー単位、および酪酸セルロースモノマー単位またはプロピオン酸セルロースモノマー単位のいずれかを含むセルロースエステルポリマーである、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記セルロース誘導体が、ヒドロキシアルキルセルロースモノマー単位またはカルボキシアルキルセルロースモノマー単位を含むポリマーである、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記アクリレートベースのポリマーまたはコポリマーが、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、およびメタクリル酸エチルのポリマーおよびコポリマーから選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
前記水溶性ポリマーが、水溶性セルロース由来のポリマー、ビニルアルコールのホモポリマーおよびコポリマー、ビニルフェノールのホモポリマーおよびコポリマー、エチレンオキシドのホモポリマーおよびコポリマー、マレイン酸のホモポリマーおよびコポリマー、コラーゲン、ゼラチン、アルギネート、デンプン、天然に存在するポリサッカリド、ならびにこれらの組み合わせから選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項19】
前記骨組み様非共有結合性架橋剤が、その鎖中に約1〜20個のアルキレンオキシド単位を含むモノマーおよびオリゴマーのアルキレングリコール、ポリアルコール、アルカンジオール、二価カルボン酸、エーテルアルコール、ポリ(アルキレングリコール二価酸)、およびこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
少なくとも1つの活性成分をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
吸収性充填剤、防腐剤、pH調整剤、可塑剤、軟化剤、増粘剤、抗酸化剤、色素、染料、導電種、屈折性粒子、安定剤、強化剤、粘着付与剤または接着剤、タック性減少剤、香味物質および甘味料、抗酸化剤、ならびに透過増強剤から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
前記フィルム形成ポリマーがアクリレートポリマーであり、前記ラダー様架橋剤がポリ(N−ビニルラクタム)であり、前記骨組み様架橋剤がその鎖中に約1〜20個のアルキレンオキシド単位を含むオリゴマーアルキレングリコールである、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
骨格の反復単位中に相補反応性官能基を含み、且つフィルム形成ポリマーとラダー様高分子間複合体を形成することができる第2のラダー様非共有結合性架橋剤または第1のラダー様非共有結合性架橋剤をさらに含み、
ここで、前記骨組み様非共有結合性架橋剤が、少なくとも1つのフィルム形成ポリマー、第1のラダー様非共有結合性架橋剤、または第2のラダー様非共有結合性架橋剤と骨組み様複合体を形成することができる、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
前記第2のラダー様非共有結合性架橋剤が、第1のラダー様非共有結合性架橋剤とラダー様高分子間複合体を形成することができ、前記骨組み様非共有結合性架橋剤が前記第2のラダー様非共有結合性架橋剤と骨組み様複合体を形成することができる、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記フィルム形成ポリマーおよび前記第1のラダー様架橋剤がアクリレートポリマーであり、前記第2のラダー様架橋剤がポリ(N−ビニルラクタム)であり、前記骨組み様架橋剤がその鎖中に約1〜20個のアルキレンオキシド単位を含むオリゴマーアルキレングリコールである、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
接着性組成物で用いるポリマー成分を選択する方法であって、
(a)フィルム形成ポリマーを選択する工程と、
(b)骨格の反復単位中に相補反応性官能基を含み、且つ選択された該フィルム形成ポリマーとラダー様高分子間複合体を形成することができるラダー様非共有結合性架橋剤を選択する工程と、
(c)相補反応性官能基をその末端に含み、且つ少なくとも1つの選択された該フィルム形成ポリマーまたは選択された該ラダー様非共有結合性架橋剤と骨組み様複合体を形成することができる骨組み様非共有結合性架橋剤を選択する工程と、
を包含し、
ここで、該フィルム形成ポリマーの量が、該ラダー様非共有結合性架橋剤の量または該骨組み様非共有結合性架橋剤の量よりも多い、方法。
【請求項27】
前記フィルム形成ポリマーの量が組成物の約20重量%〜95重量%であり、前記ラダー様架橋剤の量が組成物の約0.5重量%〜40重量%であり、前記骨組み様架橋剤の量が組成物の約0.5重量%〜60重量%である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記フィルム形成ポリマーが、親水性ポリマー、水膨潤性水不溶性ポリマー、水溶性ポリマー、および親水性モノマーと疎水性モノマーとのコポリマーから選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記親水性ポリマーが、ポリ(ジアルキルアミノアルキルアクリレート)、ポリ(ジアルキルアミノアルキルメタクリレート)、ポリアミン、ポリビニルアミン、ポリ(アルキレンイミン)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリスルホン酸、ポリ(N−ビニルラクタム)、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリ(ヒドロキシアルキルアクリレート)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(N−ビニルアクリルアミド)、ポリ(N−アルキルアクリルアミド)、水酸基およびカルボキシル基を含むセルロースの極性誘導体、アルギン酸、キトサン、ゼラチン、ならびにこれらのコポリマーから選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記水膨潤性水不溶性ポリマーが、セルロース誘導体ならびにアクリレートベースのポリマーおよびコポリマーから選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記セルロース誘導体が、非エステル化セルロースモノマー単位、酢酸セルロースモノマー単位、および酪酸セルロースモノマー単位またはプロピオン酸セルロースモノマー単位のいずれかを含むセルロースエステルポリマーである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記セルロース誘導体が、ヒドロキシアルキルセルロースモノマー単位またはカルボキシアルキルセルロースモノマー単位を含むポリマーである、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記アクリレートベースのポリマーまたはコポリマーが、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、およびメタクリル酸エチルのポリマーおよびコポリマーから選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記水溶性ポリマーが、水溶性セルロース由来のポリマー、ビニルアルコールのホモポリマーおよびコポリマー、ビニルフェノールのホモポリマーおよびコポリマー、エチレンオキシドのホモポリマーおよびコポリマー、マレイン酸のホモポリマーおよびコポリマー、コラーゲン、ゼラチン、アルギネート、デンプン、ならびに天然に存在するポリサッカリドから選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
前記ラダー様非共有結合性架橋剤が、親水性ポリマー、水膨潤性水不溶性ポリマー、水溶性ポリマー、親水性モノマーと疎水性モノマーとのコポリマー、およびこれらの組み合わせから選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項36】
前記親水性ポリマーが、ポリ(ジアルキルアミノアルキルアクリレート)、ポリ(ジアルキルアミノアルキルメタクリレート)、ポリアミン、ポリビニルアミン、ポリ(アルキレンイミン)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリスルホン酸、ポリ(N−ビニルラクタム)、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリ(ヒドロキシアルキルアクリレート)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(N−ビニルアクリルアミド)、ポリ(N−アルキルアクリルアミド)、水酸基およびカルボキシル基を含むセルロースの極性誘導体、アルギン酸、キトサン、ゼラチン、これらの組み合わせおよびコポリマーから選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記水膨潤性水不溶性ポリマーが、セルロース誘導体、アクリレートベースのポリマーおよびコポリマー、ならびにこれらの組み合わせから選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記セルロース誘導体が、非エステル化セルロースモノマー単位、酢酸セルロースモノマー単位、および酪酸セルロースモノマー単位またはプロピオン酸セルロースモノマー単位のいずれかを含むセルロースエステルポリマーである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記セルロース誘導体が、ヒドロキシアルキルセルロースモノマー単位またはカルボキシアルキルセルロースモノマー単位を含むポリマーである、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記アクリレートベースのポリマーまたはコポリマーが、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、およびメタクリル酸エチルのポリマーおよびコポリマーから選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記水溶性ポリマーが、水溶性セルロース由来のポリマー、ビニルアルコールのホモポリマーおよびコポリマー、ビニルフェノールのホモポリマーおよびコポリマー、エチレンオキシドのホモポリマーおよびコポリマー、マレイン酸のホモポリマーおよびコポリマー、コラーゲン、ゼラチン、アルギネート、デンプン、天然に存在するポリサッカリド、ならびにこれらの組み合わせから選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
1つまたは複数のさらなるラダー様非共有結合性架橋剤を選択する工程をさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項43】
前記骨組み様非共有結合性架橋剤が、その鎖中に約1〜20個のアルキレンオキシド単位を含むモノマーおよびオリゴマーのアルキレングリコール、ポリアルコール、アルカンジオール、二価カルボン酸、エーテルアルコール、ポリ(アルキレングリコール二価酸)、およびこれらの組み合わせから選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項44】
1つまたは複数のさらなる骨組み様非共有結合性架橋剤を選択する工程をさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
接着性組成物を製造する方法であって、
(a)(i)フィルム形成ポリマーを選択する工程と、
(ii)骨格の反復単位中に相補反応性官能基を含み、且つ選択された該フィルム形成ポリマーとラダー様高分子間複合体を形成することができるラダー様非共有結合性架橋剤を選択する工程と、
(iii)相補反応性官能基をその末端に含み、且つ少なくとも1つの選択された該フィルム形成ポリマーまたは選択された該ラダー様非共有結合性架橋剤と骨組み様複合体を形成することができる骨組み様非共有結合性架橋剤を選択する工程と、ここで、前記フィルム形成ポリマーの量が前記ラダー様非共有結合性架橋剤の量または前記骨組み様非共有結合性架橋剤の量よりも多いことと、
(b)前記フィルム形成ポリマー、前記ラダー様非共有結合性架橋剤、および前記骨組み様非共有結合性架橋剤を混合する工程と、
(c)溶融押出成形または溶液流延法によって接着性組成物を形成する工程と
を含む、方法。
【請求項1】
接着性組成物であって、
水膨潤性不水溶性ポリマーおよび水溶性ポリマーから選択されるフィルム形成ポリマーと、
骨格の反復単位中に相補反応性官能基を含み、且つ該フィルム形成ポリマーとラダー様高分子間複合体を形成することができるラダー様非共有結合性架橋剤と、
該相補反応性官能基をその末端に含み、且つ少なくとも1つのフィルム形成ポリマーまたはラダー様非共有結合性架橋剤と骨組み様複合体を形成することができる骨組み様非共有結合性架橋剤と、
を含み、
ここで、該フィルム形成ポリマーの量が、該ラダー様非共有結合性架橋剤の量または該骨組み様非共有結合性架橋剤の量よりも多い、接着性組成物。
【請求項2】
約20重量%〜95重量%の前記フィルム形成ポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
約0.5重量%〜40重量%の前記ラダー様架橋剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
約0.5重量%〜60重量%の前記骨組み様架橋剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記水膨潤性不水溶性ポリマーが、セルロース誘導体ならびにアクリレートベースのポリマーおよびコポリマーから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記セルロース誘導体が、非エステル化セルロースモノマー単位、酢酸セルロースモノマー単位、および酪酸セルロースモノマー単位またはプロピオン酸セルロースモノマー単位のいずれかを含むセルロースエステルポリマーである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記セルロース誘導体が、ヒドロキシアルキルセルロースモノマー単位またはカルボキシアルキルセルロースモノマー単位を含むポリマーである、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記アクリレートベースのポリマーまたはコポリマーが、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、およびメタクリル酸エチルのポリマーまたはコポリマーから選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
前記水溶性ポリマーが、水溶性セルロース由来のポリマー、ビニルアルコールのホモポリマーおよびコポリマー、ビニルフェノールのホモポリマーおよびコポリマー、エチレンオキシドのホモポリマーおよびコポリマー、マレイン酸のホモポリマーおよびコポリマー、コラーゲン、ゼラチン、アルギネート、デンプン、ならびに天然に存在するポリサッカリドから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記水溶性セルロース由来ポリマーが、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、水和セルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記天然に存在するポリサッカリドが、寒天、アルギネート、アルギン酸誘導体、カラギーナン、キチン、キトサン、グルコマンナン、ジェランガム、ゼラチン、グアーガム、アラビアゴム、ガティガム、カラヤゴム、トラガカントゴム、イナゴマメゴム、ペクチン、プルラン、デンプンおよびデンプン誘導体、タマリンドガム、ならびにキサンタンから選択される、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記ラダー様非共有結合性架橋剤が、親水性ポリマー、水膨潤性水不溶性ポリマー、水溶性ポリマー、親水性モノマーと疎水性モノマーとのコポリマー、およびこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記親水性ポリマーが、ポリ(ジアルキルアミノアルキルアクリレート)、ポリ(ジアルキルアミノアルキルメタクリレート)、ポリアミン、ポリビニルアミン、ポリ(アルキレンイミン)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリスルホン酸、ポリ(N−ビニルラクタム)、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリ(ヒドロキシアルキルアクリレート)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(N−ビニルアクリルアミド)、ポリ(N−アルキルアクリルアミド)、水酸基およびカルボキシル基を含むセルロースの極性誘導体、アルギン酸、キトサン、ゼラチン、これらの組み合わせおよびコポリマーから選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
前記水膨潤性水不溶性ポリマーが、セルロース誘導体、アクリレートベースのポリマーおよびコポリマー、ならびにこれらの組み合わせから選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項15】
前記セルロース誘導体が、非エステル化セルロースモノマー単位、酢酸セルロースモノマー単位、および酪酸セルロースモノマー単位またはプロピオン酸セルロースモノマー単位のいずれかを含むセルロースエステルポリマーである、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記セルロース誘導体が、ヒドロキシアルキルセルロースモノマー単位またはカルボキシアルキルセルロースモノマー単位を含むポリマーである、請求項14に記載の組成物。
【請求項17】
前記アクリレートベースのポリマーまたはコポリマーが、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、およびメタクリル酸エチルのポリマーおよびコポリマーから選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
前記水溶性ポリマーが、水溶性セルロース由来のポリマー、ビニルアルコールのホモポリマーおよびコポリマー、ビニルフェノールのホモポリマーおよびコポリマー、エチレンオキシドのホモポリマーおよびコポリマー、マレイン酸のホモポリマーおよびコポリマー、コラーゲン、ゼラチン、アルギネート、デンプン、天然に存在するポリサッカリド、ならびにこれらの組み合わせから選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項19】
前記骨組み様非共有結合性架橋剤が、その鎖中に約1〜20個のアルキレンオキシド単位を含むモノマーおよびオリゴマーのアルキレングリコール、ポリアルコール、アルカンジオール、二価カルボン酸、エーテルアルコール、ポリ(アルキレングリコール二価酸)、およびこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項20】
少なくとも1つの活性成分をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項21】
吸収性充填剤、防腐剤、pH調整剤、可塑剤、軟化剤、増粘剤、抗酸化剤、色素、染料、導電種、屈折性粒子、安定剤、強化剤、粘着付与剤または接着剤、タック性減少剤、香味物質および甘味料、抗酸化剤、ならびに透過増強剤から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項22】
前記フィルム形成ポリマーがアクリレートポリマーであり、前記ラダー様架橋剤がポリ(N−ビニルラクタム)であり、前記骨組み様架橋剤がその鎖中に約1〜20個のアルキレンオキシド単位を含むオリゴマーアルキレングリコールである、請求項1に記載の組成物。
【請求項23】
骨格の反復単位中に相補反応性官能基を含み、且つフィルム形成ポリマーとラダー様高分子間複合体を形成することができる第2のラダー様非共有結合性架橋剤または第1のラダー様非共有結合性架橋剤をさらに含み、
ここで、前記骨組み様非共有結合性架橋剤が、少なくとも1つのフィルム形成ポリマー、第1のラダー様非共有結合性架橋剤、または第2のラダー様非共有結合性架橋剤と骨組み様複合体を形成することができる、請求項1に記載の組成物。
【請求項24】
前記第2のラダー様非共有結合性架橋剤が、第1のラダー様非共有結合性架橋剤とラダー様高分子間複合体を形成することができ、前記骨組み様非共有結合性架橋剤が前記第2のラダー様非共有結合性架橋剤と骨組み様複合体を形成することができる、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記フィルム形成ポリマーおよび前記第1のラダー様架橋剤がアクリレートポリマーであり、前記第2のラダー様架橋剤がポリ(N−ビニルラクタム)であり、前記骨組み様架橋剤がその鎖中に約1〜20個のアルキレンオキシド単位を含むオリゴマーアルキレングリコールである、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
接着性組成物で用いるポリマー成分を選択する方法であって、
(a)フィルム形成ポリマーを選択する工程と、
(b)骨格の反復単位中に相補反応性官能基を含み、且つ選択された該フィルム形成ポリマーとラダー様高分子間複合体を形成することができるラダー様非共有結合性架橋剤を選択する工程と、
(c)相補反応性官能基をその末端に含み、且つ少なくとも1つの選択された該フィルム形成ポリマーまたは選択された該ラダー様非共有結合性架橋剤と骨組み様複合体を形成することができる骨組み様非共有結合性架橋剤を選択する工程と、
を包含し、
ここで、該フィルム形成ポリマーの量が、該ラダー様非共有結合性架橋剤の量または該骨組み様非共有結合性架橋剤の量よりも多い、方法。
【請求項27】
前記フィルム形成ポリマーの量が組成物の約20重量%〜95重量%であり、前記ラダー様架橋剤の量が組成物の約0.5重量%〜40重量%であり、前記骨組み様架橋剤の量が組成物の約0.5重量%〜60重量%である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記フィルム形成ポリマーが、親水性ポリマー、水膨潤性水不溶性ポリマー、水溶性ポリマー、および親水性モノマーと疎水性モノマーとのコポリマーから選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記親水性ポリマーが、ポリ(ジアルキルアミノアルキルアクリレート)、ポリ(ジアルキルアミノアルキルメタクリレート)、ポリアミン、ポリビニルアミン、ポリ(アルキレンイミン)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリスルホン酸、ポリ(N−ビニルラクタム)、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリ(ヒドロキシアルキルアクリレート)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(N−ビニルアクリルアミド)、ポリ(N−アルキルアクリルアミド)、水酸基およびカルボキシル基を含むセルロースの極性誘導体、アルギン酸、キトサン、ゼラチン、ならびにこれらのコポリマーから選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記水膨潤性水不溶性ポリマーが、セルロース誘導体ならびにアクリレートベースのポリマーおよびコポリマーから選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記セルロース誘導体が、非エステル化セルロースモノマー単位、酢酸セルロースモノマー単位、および酪酸セルロースモノマー単位またはプロピオン酸セルロースモノマー単位のいずれかを含むセルロースエステルポリマーである、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記セルロース誘導体が、ヒドロキシアルキルセルロースモノマー単位またはカルボキシアルキルセルロースモノマー単位を含むポリマーである、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記アクリレートベースのポリマーまたはコポリマーが、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、およびメタクリル酸エチルのポリマーおよびコポリマーから選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記水溶性ポリマーが、水溶性セルロース由来のポリマー、ビニルアルコールのホモポリマーおよびコポリマー、ビニルフェノールのホモポリマーおよびコポリマー、エチレンオキシドのホモポリマーおよびコポリマー、マレイン酸のホモポリマーおよびコポリマー、コラーゲン、ゼラチン、アルギネート、デンプン、ならびに天然に存在するポリサッカリドから選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項35】
前記ラダー様非共有結合性架橋剤が、親水性ポリマー、水膨潤性水不溶性ポリマー、水溶性ポリマー、親水性モノマーと疎水性モノマーとのコポリマー、およびこれらの組み合わせから選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項36】
前記親水性ポリマーが、ポリ(ジアルキルアミノアルキルアクリレート)、ポリ(ジアルキルアミノアルキルメタクリレート)、ポリアミン、ポリビニルアミン、ポリ(アルキレンイミン)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、ポリスルホン酸、ポリ(N−ビニルラクタム)、ポリアルキレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリ(ヒドロキシアルキルアクリレート)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(N−ビニルアクリルアミド)、ポリ(N−アルキルアクリルアミド)、水酸基およびカルボキシル基を含むセルロースの極性誘導体、アルギン酸、キトサン、ゼラチン、これらの組み合わせおよびコポリマーから選択される、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
前記水膨潤性水不溶性ポリマーが、セルロース誘導体、アクリレートベースのポリマーおよびコポリマー、ならびにこれらの組み合わせから選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記セルロース誘導体が、非エステル化セルロースモノマー単位、酢酸セルロースモノマー単位、および酪酸セルロースモノマー単位またはプロピオン酸セルロースモノマー単位のいずれかを含むセルロースエステルポリマーである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記セルロース誘導体が、ヒドロキシアルキルセルロースモノマー単位またはカルボキシアルキルセルロースモノマー単位を含むポリマーである、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記アクリレートベースのポリマーまたはコポリマーが、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、およびメタクリル酸エチルのポリマーおよびコポリマーから選択される、請求項37に記載の方法。
【請求項41】
前記水溶性ポリマーが、水溶性セルロース由来のポリマー、ビニルアルコールのホモポリマーおよびコポリマー、ビニルフェノールのホモポリマーおよびコポリマー、エチレンオキシドのホモポリマーおよびコポリマー、マレイン酸のホモポリマーおよびコポリマー、コラーゲン、ゼラチン、アルギネート、デンプン、天然に存在するポリサッカリド、ならびにこれらの組み合わせから選択される、請求項35に記載の方法。
【請求項42】
1つまたは複数のさらなるラダー様非共有結合性架橋剤を選択する工程をさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項43】
前記骨組み様非共有結合性架橋剤が、その鎖中に約1〜20個のアルキレンオキシド単位を含むモノマーおよびオリゴマーのアルキレングリコール、ポリアルコール、アルカンジオール、二価カルボン酸、エーテルアルコール、ポリ(アルキレングリコール二価酸)、およびこれらの組み合わせから選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項44】
1つまたは複数のさらなる骨組み様非共有結合性架橋剤を選択する工程をさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
接着性組成物を製造する方法であって、
(a)(i)フィルム形成ポリマーを選択する工程と、
(ii)骨格の反復単位中に相補反応性官能基を含み、且つ選択された該フィルム形成ポリマーとラダー様高分子間複合体を形成することができるラダー様非共有結合性架橋剤を選択する工程と、
(iii)相補反応性官能基をその末端に含み、且つ少なくとも1つの選択された該フィルム形成ポリマーまたは選択された該ラダー様非共有結合性架橋剤と骨組み様複合体を形成することができる骨組み様非共有結合性架橋剤を選択する工程と、ここで、前記フィルム形成ポリマーの量が前記ラダー様非共有結合性架橋剤の量または前記骨組み様非共有結合性架橋剤の量よりも多いことと、
(b)前記フィルム形成ポリマー、前記ラダー様非共有結合性架橋剤、および前記骨組み様非共有結合性架橋剤を混合する工程と、
(c)溶融押出成形または溶液流延法によって接着性組成物を形成する工程と
を含む、方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2008−512214(P2008−512214A)
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−531449(P2007−531449)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/032525
【国際公開番号】WO2006/029407
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(505316978)コリウム インターナショナル, インコーポレイテッド (5)
【出願人】(503013358)エイ.ブイ.トップチーブ インスティテュート オブ ペトロケミカル シンセシス (9)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【国際出願番号】PCT/US2005/032525
【国際公開番号】WO2006/029407
【国際公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(505316978)コリウム インターナショナル, インコーポレイテッド (5)
【出願人】(503013358)エイ.ブイ.トップチーブ インスティテュート オブ ペトロケミカル シンセシス (9)
【Fターム(参考)】
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