説明

ポリラクテートとその共重合体生成能が改善された変異微生物を利用したポリラクテートとその共重合体の製造方法

本発明は、コエンザイムA供与体及びラクテートの生成の増加のためにコエンザイムA供与体及びラクテートの生成経路に関与する遺伝子が遺伝工学的に操作されている変異微生物を利用してポリラクテートまたはその共重合体を製造する方法に関する。本発明によれば、微生物の代謝経路中にコエンザイムA供与体とラクテートの量を同時に増加させることによって、ポリラクテートとラクテート含量が高いヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体を効率的に生合成することができ、産業的に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリラクテートとその共重合体生成能が改善された変異微生物を利用したポリラクテートとその共重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリラクテート(polylactate;PLA)は、ラクテートから由来する代表的な生分解性高分子であって、汎用高分子または医療用高分子としての応用性が高い高分子である。現在PLAは、微生物発酵によって生産されたラクテートを重合して製造さALP-33835 れているが、ラクテートの直接重合によっては低分子量(1000−5000ダルトン)のPLAだけが生成される。100,000ダルトン以上のPLAを合成するためには、ラクテートの直接重合により得られた低分子量のPLAから鎖連結剤(chain coupling agent)を利用してさらに分子量が大きいPLAに重合する方法があるが、鎖連結剤を利用するので、高分子量のPLAを製造する方法は、有機溶剤や鎖連結剤の添加によって工程が複雑になり、また、これらの除去が容易でないという短所がある。現在商用化されている高分子量PLA生産工程は、ラクテートをラクチドに転換した後、ラクチドリングの開環縮合反応によりPLAを合成する方法が使用されている。
【0003】
一方、ポリヒドロキシアルカノエート(polyhydroxyalkanoate;PHA)は、過度な炭素源が存在し、且つリン、窒素、マグネシウム、酸素などの他の営養分が足りないとき、微生物がエネルギーや炭素源貯蔵物質としてその内部に蓄積するポリエステルである。PHAは、既存の石油から由来する合成高分子と類似な物性を有し、且つ完全な生分解性を示すので、既存の合成プラスチックを代替する物質として認識されている。
【0004】
微生物からPHAを生産するためには、微生物の代謝産物をPHAモノマーに転換する酵素とPHAモノマーを利用してPHA高分子を合成するPHA合成酵素が必須である。
【0005】
PHA合成酵素は、ヒドロキシアシル−CoA(hydroxyacyl−CoA)を基質として使用してPHAを合成する。しかし、2番−炭素位置に水酸化されたラクテートのようなヒドロキシアルカノエートは、PHA合成酵素の基質特異性に適していないため、自然的に、または組み換え細胞や植物を利用してPLA及びその共重合体を製造した例はなかった。これより、本発明者らは、ラクチル−CoAを提供するために、クロストリジウム・プロピオニカム(Clostridium propionicum)由来のプロピオニル−CoAトランスフェラーゼとこれを基質として利用するシュードモナス属6−19(Pseudomonas sp. 6-19)のポリヒドロキシアルカノエート合成酵素の変異体を使用して成功的にPLA及びPLA共重合体を合成することができた(特許文献1)。
【0006】
しかし、既存に開発された微生物のPLA及びPLA共重合体の生成効率は、未だ低いため、PLA及びPLA共重合体の生成能がさらに良好な微生物の開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国特許出願第10−2005−0043798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、ポリラクテートまたはその共重合体を効率的に生産する変異微生物を利用してポリラクテートまたはその共重合体を効率的に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、コエンザイムA供与体及びラクテートの生成の増加のためにコエンザイムA供与体及びラクテートの生成経路に関与する1つ以上の遺伝子が遺伝工学的に操作されている変異微生物を利用してポリラクテートまたはその共重合体を製造する方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、微生物の代謝経路中にラクテートとコエンザイムA供与体の量を同時に増加させることによって、ポリラクテートとラクテート含量が高いヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体を効率的に生合成することができ、産業的に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ackA、adhE、acs、ppcまたはldhA遺伝子を不活性化または増幅させて、ポリラクテートとその共重合体の生成能を高めた変異微生物の内部代謝経路を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ポリラクテートまたはその共重合体を効率的に合成するためには、ポリラクテートの単量体であるラクチルCoAの生成を増加させなければならない。このためには、ラクチルCoAの生合成に必要なコエンザイムA供与体の量が増加すると同時に、主要前駆基質であるラクテートの量が増加するように、微生物の代謝フローが変更される必要がある。コエンザイムA供与体及びラクテートのうちいずれか1つの量が増加するといって、ラクチルCoAの生合成効率が大きく増進されるわけではない。したがって、本発明では、微生物の代謝過程中にコエンザイムA供与体及びラクテートの量を同時に増加させて、ポリラクテートまたはその共重合体の生合成効率を高め、高分子内のラクテート含量を高めようとする。
【0013】
ラクテートの供給は、外部でラクテートを供給し、ラクテートトランスポーター(lactate transporter)を通じて細胞内に導入する方法と、嫌気条件でブドウ糖から生成される細胞内ラクテートを利用する方法がある。外部で供給する場合は、ラクテートの取り込み(uptake)が制限されることができる。また、細胞外で供給されたラクテートは、大膓菌の細胞膜に存在するD−ラクテート脱水素化酵素(D−lactatede hydrogenase)とL−ラクテート脱水素化酵素(L−lactatede hydrogenase)によってピルベートに転換されながら細胞内に伝達されるが、これは、ラクチルCoAの生成を増加させようとする本発明の目的に適していない。したがって、本発明では、グルコースを利用してラクテートを生成し、これからラクチル−CoAを合成する経路を選択し、ラクチル−CoAの生成が増加するように、微生物の代謝経路を遺伝工学的に操作しようとする。
【0014】
このために、本発明は、コエンザイムA供与体及びラクテートの生成の増加のためにコエンザイムA供与体及びラクテートの生成経路に関与する1つ以上の遺伝子が遺伝工学的に操作されている変異微生物を製造し;上記変異微生物をグルコースまたはグルコースとヒドロキシアルカノエートを含む培地中で培養し;上記変異微生物からポリラクテートまたはヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体を回収することを含むポリラクテートまたはヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体の製造方法を提供しようとする。
【0015】
本発明の一態様において、上記コエンザイムA供与体は、アセチルコエンザイムAであることができる。コエンザイムA供与体のうち、アセチルコエンザイムAは、グルコースを利用してラクテートを合成する微生物の代謝経路中でコエンザイム供与体になることができる可能性が高い。
【0016】
コエンザイムA供与体の1つであるアセチルコエンザイムAの量を増加させるために、微生物のアセテートの生成経路に関与する酵素をコーディングする遺伝子またはエタノールの生成経路に関与する酵素をコーディングする遺伝子を不活性化させるか、または、アセテートをアセチルコエンザイムA(Acetyl CoA)に再転換する酵素をコーディングする遺伝子を増幅させることができる。上記遺伝子のうち2つ以上の遺伝子を不活性化または増幅させることによって、アセチルコエンザイムAの量をさらに増加させることもできる。
【0017】
ラクチルCoAの生成のためにコエンザイムAを提供することができるコエンザイムA供与体は、アセチルコエンザイムA以外にも、β−ケトアジピル−CoA(β−ketoadipyl−CoA)、γ−ブチロベタイニル−CoA(γ−butyrobetainyl−CoA)、(R)−メチルマロニル−CoA((R)−methylmalonyl−CoA)、(S)−メチル−マロニル−CoA((S)−methyl−malonyl−CoA)、2’−(5’’−ホスホリボシル)−3’−デホスホ−CoA(2’−(5’’−phosphoribosyl)−3’−dephospho−CoA)、2’−(5’’−トリホスホリボシル)−3’−デホスホ−CoA(2’−(5’’−triphosphoribosyl)−3’−dephospho−CoA)、3、4−ジヒドロキシフェニルアセチル−CoA(3、4−dihydroxyphenylacetyl−CoA)、3−ヒドロキシアジピル−CoA(3−hydroxyadipyl−CoA)、3−ヒドロキシブチリル−CoA(3−hydroxybutyryl−CoA)、3−ヒドロキシフェニルアセチル−CoA(3−hydroxyphenylacetyl−CoA)、3−メチルクロトニル−CoA(3−methylcrotonyl−CoA)、4−ヒドロキシフェニルアセチル−CoA(4−hydroxyphenylacetyl−CoA)、フェニルアセチル−CoAのcis−ジヒドロジオール誘導体(cis−dihydrodiol derivative of phenylacetyl−CoA)、Δ2−エノイル−CoA(Δ2−enoyl−CoA)、2−trans−4−cis−ジエノイル−CoA(2−trans−4−cis−dienoyl−CoA)、3−ヒドロキシアシル−CoA(3−hydroxyacyl−CoA)、3−ケトアシル−CoA(3−ketoacyl−CoA)、cis−2−エノイル−CoA(cis−2−enoyl−CoA)、cis−3−エノイル−CoA(cis−3−enoyl−CoA)、trans−2−エノイル−CoA(trans−2−enoyl−CoA)、trans−3−エノイル−CoA(trans−3−enoyl−CoA)、cis−2、3−デヒドロアシル−CoA(cis−2、3−dehydroacyl−CoA)、D−3−ヒドロキシアシル−CoA(D−3−hydroxyacyl−CoA)、脂肪アシルCoA(fatty acyl CoA)、長鎖アシル−CoA(long−chain acyl−CoA)、trans、trans−Δ2−Δ4−ジエノイル−CoA(trans、trans−Δ2−Δ4−dienoyl−CoA)、極長鎖脂肪アシル−CoA(very long chain fatty acyl−CoA)、CoA誘導体(CoA derivative)、アセトアセチル−CoA(acetoacetyl−CoA)、アセチル−CoA(acetyl−CoA)、ω−カルボキシアシル−CoA(ω−carboxyacyl−CoA)、アシル−CoA(acyl−CoA)、L−3−ヒドロキシアシル−CoA(L−3−hydroxyacyl−CoA)、ブチリル−CoA(butyryl−CoA)、コエンザイムA(CoA)、コエンザイム−A−グループ(CoA)、クマロイル−CoA(coumaroyl−CoA)、クロトノベタイニル−CoA(crotonobetainyl−CoA)、クロトニル−CoA(crotonyl−CoA)、D−カルニチニル−CoA(D−carnitinyl−CoA)、デホスホ−CoA(dephospho−CoA)、ホルミル−CoA(formyl−CoA)、イソバレリル−CoA(isovaleryl−CoA)、L−カルニチニル−CoA(L−carnitinyl−CoA)、マロニル−CoA(malonyl−CoA)、O−スクシニルベンゾイル−CoA(O−succinylbenzoyl−CoA)、オキサリル−CoA(oxalyl−CoA)、パルミトイルCoA(palmitoyl CoA)、フェニルアセチル−CoA(phenylacetyl−CoA)、ピメロイル−CoA(pimeloyl−CoA)、プロピオニル−CoA(propionyl−CoA)、スクシニル−CoA(succinyl−CoA)、trans−Δ2、cis−Δ4−デカジエノイル−CoA(trans−Δ2、cis−Δ4−decadienoyl−CoA)、trans−Δ2−デセノイル−CoA(trans−Δ2−decenoyl−CoA)、ラクチルCoA(lactyl CoA)などが利用されることができる。コエンザイムA供与体としてアセチルコエンザイムA以外のものを利用する場合、これらのコエンザイムA供与体の量の増加のために、上記不活性化または増幅される遺伝子の種類が変化することができる。
【0018】
これと同時に、微生物の代謝フロー中にラクテートの量を増加させるために、微生物のホスホエノールピルベート(phosphoenolpyruvate)の消耗反応に関与する酵素をコーディングする遺伝子を不活性化させるか、または、ピルベートからラクテートへの転換に関与する酵素をコーディングする遺伝子を増幅させることができる。上記遺伝子のうち2つ以上の遺伝子を不活性化または増幅させることによって、ラクテートの量をさらに増加させることもできる。一般的に嫌気条件でブドウ糖から生成される細胞内ラクテートを利用するためには、まず、細胞成長のために好気条件で充分に成長させた後、ラクテート生成のために嫌気条件またはマイクロ嫌気条件に変更させなければならないが、上記のようにラクテートの量が増加するように遺伝子を操作する場合には、1段階培養だけでも細胞成長とともに細胞内ラクテートを利用した高分子生産が同時に達成されることができる効率的な生産システムを構築することができるようになる。
【0019】
本発明において、上記微生物は、ポリラクテートまたはその共重合体を合成することができる微生物であれば、いずれのものでも使用可能である。このような微生物としては、バクテリア、酵母、かびなどが含まれることができる。上記バクテリアとしては、例えば、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、エシェリキア(Escherichia)属、ラルストニア(Ralstonia)属、バシルロス(Bacillus)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属などが含まれることができる。これらに限定されるものではないが、本発明の一態様において、上記バクテリアは、大膓菌(Escherichia coli)であってもよい。本発明の一実施例では、大膓菌XL1−Blueを遺伝工学的に操作した変異大膓菌を開示するが、本発明の微生物は、これに限定されない。
【0020】
本発明の一態様において、上記アセテートの生成経路に関与する酵素は、例えば、アセテートキナーゼであってもよく、上記酵素をコーディングする遺伝子は、ackAであってもよい。
【0021】
本発明の一態様において、上記エタノールの主要生成経路に関与する酵素は、例えば、アセトアルデヒドデヒドロゲナーゼであってもよく、上記酵素をコーディングする遺伝子は、adhEであってもよい。
【0022】
本発明の一態様において、上記アセテートをアセチルコエンザイムAに再転換する酵素は、例えば、アセチルコエンザイムA合成酵素であってもよく、上記酵素をコーディングする遺伝子は、acsであってもよい。
【0023】
本発明の一態様において、上記ホスホエノールピルベートの消耗反応に関与する酵素は、例えば、ホスホエノールピルベートカルボキシラーゼであってもよく、上記酵素をコーディングする遺伝子は、ppcであってもよい。
【0024】
本発明の一態様において、上記ピルベートからラクテートへの転換に関与する酵素は、例えば、ラクテートデヒドロゲナーゼであってもよく、上記酵素をコーディングする遺伝子は、ldhAであってもよい。
【0025】
本発明の他の態様において、上記変異微生物は、アセテートの生成経路に関与する酵素をコーディングする遺伝子が不活性化されていて、同時に、ホスホエノールピルベートの消耗反応に関与する酵素をコーディングする遺伝子が不活性化されていて、ピルベートからラクテートへの転換に関与する酵素をコーディングする遺伝子が増幅されていてもよい。
【0026】
本発明のさらに他の態様において、上記変異微生物は、アセテートの生成経路に関与する酵素をコーディングする遺伝子が不活性化されていて、アセテートをアセチルコエンザイムA(Acetyl CoA)に再転換する酵素をコーディングする遺伝子が増幅されていて、同時に、ホスホエノールピルベートの消耗反応に関与する酵素をコーディングする遺伝子が不活性化されていて、ピルベートからラクテートへの転換に関与する酵素をコーディングする遺伝子が増幅されていてもよい。
【0027】
本発明において、「不活性化」というのは、遺伝子が変異によって転写されないか、または、転写されたmRNAが本来のタンパク質に正確に翻訳されないことを言う。遺伝子を「不活性化」させるためには、遺伝子を欠失させるか、または、遺伝子の核酸配列に変化を起こして変異させることができる。
【0028】
本発明において、「増幅」というのは、遺伝子の発現量が本来の発現量より増加したことを言う。変異させる前の微生物に増幅させようとする遺伝子が存在しない場合には、1つ以上の上記遺伝子を上記微生物に導入して増幅させることができ、変異させる前の微生物に増幅させようとする遺伝子が存在する場合には、同じ方法で1つ以上の遺伝子を上記微生物に追加に導入するか、または、既存に存在する遺伝子の発現量が増加するように遺伝工学的に操作することができる。例えば、発現を増幅させる遺伝子が変異させようとする微生物内に存在する場合、上記遺伝子の発現を作動させる固有のプロモータを強力プロモータに置換することによって、上記遺伝子の発現を増幅させることができる。したがって、本発明の一態様において、上記遺伝子の増幅は、固有プロモータ(native promoter)の強力プロモータ(strong promoter)への置換によるものであることができる。このような強力プロモータの例としては、trcプロモータ、tacプロモータ、T7プロモータ、lacプロモータなどが含まれる。
【0029】
上記変異微生物は、ピルベートが増加するように追加に操作されることができる。ピルベートは、コエンザイムA供与体の1つであるアセチルコエンザイムAとラクテートの共通的な前具体として、ピルベートが増加すればアセチルコエンザイムAとラクテートの量が増加するようになる。したがって、本発明のさらに他の態様において、上記変異微生物は、ピルベートが増加するように追加に1つ以上の下記遺伝子が追加に弱化または不活性化されていてもよい:aceE、aceF、lpdA、pfkA、pfkB、tpiA、sdhA、sdhB、sdhC、sdhD、fumA、fumB、fumC、eptB、gpmA、gpmB、ptsG、mdh、ppc、pgi、glgC、sucA、sucB、ribA、folE、pflBなど。例えば、ピルベートをアセチルコエンザイムAに転換させるピルベート脱水素化酵素をコーディングする遺伝子であるaceE、aceF、lpdAまたはピルベートをポルメートに転換させるピルベートポルメートリアーゼをコーディングする遺伝子であるpflBを弱化または不活性化させれば、ピルベートが増加し、且つアセチルコエンザイムAとラクテートの量が増加するようになる。また、マレートをオキサロアセテートに転換させるマレート脱水素化酵素をコーディングする遺伝子であるmdhを弱化または不活性化させることによって、マレートからピルベートへの代謝フローを強化させることができる。これとは異なって、ピルベートの前具体であるホスホエノールピルベートを消耗しながらブドウ糖を取り込む役目をするホスホトランスフェラーゼ酵素群の1つをコーディングする遺伝子であるptsG、または、ブドウ糖からピルベートに転換される当該過程中にグリセルアルデヒド3−フォスフェートをジヒドロキシアセトンフォスフェートに転換させるトリオースフォスフェート異性化酵素をコーディングする遺伝子であるtpiAを弱化または不活性させることによって、ピルベートへの代謝フローを増加させることもできる。
【0030】
上記変異微生物をグルコースを含む培地で培養すれば、微生物からポリラクテートを収得することができ、上記変異微生物をグルコース及びヒドロキシアルカノエートを含む培地中で培養すれば、微生物からヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体を収得することができる。培地に含ませるヒドロキシアルカノエートの種類によって収得されるヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体の種類は変わることができる。
【0031】
本発明の一態様において、上記ヒドロキシアルカノエートは、3−ヒドロキシブチレート(3−hydroxybutyrate)、3−ヒドロキシ吉草酸(3−hydroxyvalerate)、4−ヒドロキシブチレート(4−hydroxybutyrate)、炭素数が6〜14個の中間鎖長さの(D)−3−ヒドロキシカルボン酸((D)−3−hydroxycarboxylic acid)、2−ヒドロキシプロピオン酸(2−hydroxypropionic acid)、3−ヒドロキシプロピオン酸(3−hydroxypropionic acid)、3−ヒドロキシヘキサン酸(3−hydroxyhexanoic acid)、3−ヒドロキシヘプタン酸(3−hydroxyheptanoic acid)、3−ヒドロキシオクタン酸(3−hydroxyoctanoic acid)、3−ヒドロキシノナン酸(3−hydroxynonanoic acid)、3−ヒドロキシデカン酸(3−hydroxydecanoic acid)、3−ヒドロキシウンデカン酸(3−hydroxyundecanoic acid)、3−ヒドロキシドデカン酸(3−hydroxydodecanoic acid)、3−ヒドロキシテトラデカン酸(3−hydroxytetradecanoic acid)、3−ヒドロキシヘキサデカン酸(3−hydroxyhexadecanoic acid)、4−ヒドロキシ吉草酸(4−hydroxyvaleric acid)、4−ヒドロキシヘキサン酸(4−hydroxyhexanoic acid)、4−ヒドロキシヘプタン酸(4−hydroxyheptanoic acid)、4−ヒドロキシオクタン酸(4−hydroxyoctanoic acid)、4−ヒドロキシデカン酸(4−hydroxydecanoic acid)、5−ヒドロキシ吉草酸(5−hydroxyvaleric acid)、5−ヒドロキシヘキサン酸(5−hydroxyhexanoic acid)、6−ヒドロキシドデカン酸(6−hydroxydodecanoic acid)、3−ヒドロキシ−4−ペンテン酸(3−hydroxy−4−pentenoic acid)、3−ヒドロキシ−4−trans−ヘキセン酸(3−hydroxy−4−trans−hexenoic acid)、3−ヒドロキシ−4−cis−ヘキセン酸(3−hydroxy−4−cis−hexenoic acid)、3−ヒドロキシ−5−ヘキセン酸(3−hydroxy−5−hexenoic acid)、3−ヒドロキシ−6−trans−オクテン酸(3−hydroxy−6−trans−octenoic acid)、3−ヒドロキシ−6−cis−オクテン酸(3−hydroxy−6−cis−octenoic acid)、3−ヒドロキシ−7−オクテン酸(3−hydroxy−7−octenoic acid)、3−ヒドロキシ−8−ノネン酸(3−hydroxy−8−nonenoic acid)、3−ヒドロキシ−9−デセン酸(3−hydroxy−9−decenoic acid)、3−ヒドロキシ−5−cis−ドデセン酸(3−hydroxy−5−cis−dodecenoic acid)、3−ヒドロキシ−6−cis−ドデセン酸(3−hydroxy−6−cis−dodecenoic acid)、3−ヒドロキシ−5−cis−テトラデセン酸(3−hydroxy−5−cis−tetradecenoic acid)、3−ヒドロキシ−7−cis−テトラデセン酸(3−hydroxy−7−cis−tetradecenoic acid)、3−ヒドロキシ−5、8−cis−cis−テトラデセン酸(3−hydroxy−5、8−cis−cis−tetradecenoic acid)、3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸(3−hydroxy−4−methylvaleric acid)、3−ヒドロキシ−4−メチルヘキサン酸(3−hydroxy−4−methylhexanoic acid)、3−ヒドロキシ−5−メチルヘキサン酸(3−hydroxy−5−methylhexanoic acid)、3−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン酸(3−hydroxy−6−methylheptanoic acid)、3−ヒドロキシ−4−メチルオクタン酸(3−hydroxy−4−methyloctanoic acid)、3−ヒドロキシ−5−メチルオクタン酸(3−hydroxy−5−methyloctanoic acid)、3−ヒドロキシ−6−メチルオクタン酸(3−hydroxy−6−methyloctanoic acid)、3−ヒドロキシ−7−メチルオクタン酸(3−hydroxy−7−methyloctanoic acid)、3−ヒドロキシ−6−メチルノナン酸(3−hydroxy−6−methylnonanoic acid)、3−ヒドロキシ−7−メチルノナン酸(3−hydroxy−7−methylnonanoic acid)、3−ヒドロキシ−8−メチルノナン酸(3−hydroxy−8−methylnonanoic acid)、3−ヒドロキシ−7−メチルデカン酸(3−hydroxy−7−methyldecanoic acid)、3−ヒドロキシ−9−メチルデカン酸(3−hydroxy−9−methyldecanoic acid)、3−ヒドロキシ−7−メチル−6−オクテン酸(3−hydroxy−7−methyl−6−octenoic acid)、リンゴ酸(malic acid)、3−ヒドロキシコハク酸−メチルエステル(3−hydroxysuccinic acid−methyl ester)、3−ヒドロキシアジピン酸−メチルエステル(3−hydroxyadipinic acid−methyl ester)、、3−ヒドロキシスベリン酸−メチルエステル(3−hydroxysuberic acid−methyl ester)、3−ヒドロキシアゼライン酸−メチルエステル(3−hydroxyazelaic acid−methyl ester)、3−ヒドロキシセバシン酸−メチルエステル(3−hydroxysebacic acid−methyl ester)、3−ヒドロキシスベリン酸−エチルエステル(3−hydroxysuberic acid−ethyl ester)、3−ヒドロキシセバシン酸−エチルエステル(3−hydroxysebacic acid−ethyl ester)、3−ヒドロキシピメリン酸−プロピルエステル(3−hydroxypimelic acid−propylester)、3−ヒドロキシセバシン酸−ベンジルエステル(3−hydroxysebacic acid−benzilester)、3−ヒドロキシ−8−アセトキシオクタン酸(3−hydroxy−8−acetoxyoctanoic acid)、3−ヒドロキシ−9−アセトキシノナン酸(3−hydroxy−9−acetoxynonanoic acid)、フェノキシ−3−ヒドロキシブチレート(phenoxy−3−hydroxybutyric acid)、フェノキシ−3−ヒドロキシ吉草酸(phenoxy−3−hydroxyvaleric acid)、フェノキシ−3−ヒドロキシヘプタン酸(phenoxy−3−hydroxyheptanoic acid)、フェノキシ−3−ヒドロキシオクタン酸(phenoxy−3−hydroxyoctanoic acid)、para−シアノフェノキシ−3−ヒドロキシブチレート(para−cyanophenoxy−3−hydroxybutyric acid)、para−シアノフェノキシ−3−ヒドロキシ吉草酸(para−cyanophenoxy−3−hydroxyvaleric acid)、para−シアノフェノキシ−3−ヒドロキシヘキサン酸(para−cyanophenoxy−3−hydroxyhexanoic acid)、para−ニトロフェノキシ−3−ヒドロキシヘキサン酸(para−nitrophenoxy−3−hydroxyhexanoic acid)、3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸(3−hydroxy−5−phenylvaleric acid)、3−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルブチレート(3−hydroxy−5−cyclohexylbutyric acid)、3、12−ジヒドロキシドデカン酸(3、12−dihydroxydodecanoic acid)、3、8−ジヒドロキシ−5−cis−テトラデセン酸(3、8−dihydroxy−5−cis−tetradecenoic acid)、3−ヒドロキシ−4、5−エポキシデカン酸(3−hydroxy−4、5−epoxydecanoic acid)、3−ヒドロキシ−6、7−エポキシドデカン酸(3−hydroxy−6、7−epoxydodecanoic acid)、3−ヒドロキシ−8、9−エポキシ−5、6−cis−テトラデカン酸(3−hydroxy−8、9−epoxy−5、6−cis−tetradecanoic acid)、7−シアノ−3−ヒドロキシヘプタン酸(7−cyano−3−hydroxyheptanoic acid)、9−シアノ−3−ヒドロキシノナン酸(9−cyano−3−hydroxynonanoic acid)、3−ヒドロキシ−7−フルオロヘプタン酸(3−hydroxy−7−fluoroheptanoic acid)、3−ヒドロキシ−9−フルオロノナン酸(3−hydroxy−9−fluorononanoic acid)、3−ヒドロキシ−6−クロロヘキサン酸(3−hydroxy−6−chlorohexanoic acid)、3−ヒドロキシ−8−クロロオクタン酸(3−hydroxy−8−chlorooctanoic acid)、3−ヒドロキシ−6−ブロモヘキサン酸(3−hydroxy−6−bromohexanoic acid)、3−ヒドロキシ−8−ブロモオクタン酸(3−hydroxy−8−bromooctanoic acid)、3−ヒドロキシ−11−ブロモウンデカン酸(3−hydroxy−11−bromoundecanoic acid)、3−ヒドロキシ−2−ブテン酸(3−hydroxy−2−butenoic acid)、6−ヒドロキシ−3−ドデセン酸(6−hydroxy−3−dodecenoic acid)、3−ヒドロキシ−2−メチルブチレート(3−hydroxy−2−methylbutyric acid)、3−ヒドロキシ−2−メチル吉草酸(3−hydroxy−2−methylvaleric acid)、及び3−ヒドロキシ−2、6−ジメチル−5−ヘプテン酸(3−hydroxy−2、6−dimethyl−5−heptenoic acid)よりなる群から選択される1つ以上のものであることができる。
【0032】
本発明の一実施例では、大膓菌XL1−Blueを遺伝工学的に操作し、ポリ(D−ラクテート)とラクテート含量が高いポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−D−ラクテート)を効率的に生産する方法について開示している。本発明の方法によれば、その他のの多様なポリ(ヒドロキシアルカノエート−ラクテート)を製造することが可能である。
【0033】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法は、詳細に後述されている実施例を参照すれば明確になる。しかし、本発明は、以下に開示される実施例に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態に具現され、ただ本実施例は、本発明の開示が完全にし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇によって定義されるだけである。
【0034】
実施例1:ポリラクテートと3−ヒドロキシブチレート−ラクテート共重合体を効率的に生成する変異微生物の製作
下記実施例1では、膓菌XL1−Blueにおいてアセテートの生成経路に関与する酵素をコーディングする遺伝子であるackAまたはエタノールの生成経路に関与する酵素をコーディングする遺伝子であるadhEを不活性化させるか、アセテートをアセチルコエンザイムAに再転換する酵素をコーディングする遺伝子であるacsを増幅させると同時に、ホスホエノールピルベートの消耗反応に関与する酵素をコーディングする遺伝子であるppcを不活性化させるか、ピルベートからラクテートへの転換に関与する酵素をコーディングする遺伝子であるldhAを増幅させ、上記のように変異させた大膓菌をPHA合成酵素の遺伝子とプロピオニル−CoA−トランスフェラーゼの遺伝子を含む組み換えベクターに形質転換することによって、ポリラクテートまたはその共重合体を効率的に生産する変異大膓菌を製造した。図1は、ackA、adhE、acs、ppcまたはldhA遺伝子を不活性化または増幅させて、ポリラクテートとその共重合体生成能を高めた変異微生物の内部代謝経路を示すものである。
【0035】
実施例1−1:アセチル−CoA及びラクテートの量が増加した変異微生物の製作
1−1−1:ackA、adhEまたはppc遺伝子の欠失
大膓菌XL1−Blue(Stratagene)において下記プライマーでone step inactivation方法(Warner et al., PNAS, 6;97(12):6640−6645、2000)を利用して、ackA、adhEまたはppcを欠失させた。
【0036】
ackA遺伝子の欠失のために、pMlocXベクター[Lee K.H., Park J.H., Kim T.Y., Kim H.U. & Lee S.Y., Systems metabolic engineering of Escherichia coli for L−threonine production. Molecular systems biology 3, 149(2007)]を鋳型にして配列番号1及び3のプライマーで1次PCRを行った。この時、得られたDNA切片を鋳型にして配列番号2及び4のプライマーを使用して2次プライマー延長PCRを行った。2次PCRを通じて得られたDNA切片を獲得し、ラムダレッドリコンビナーゼ(λ−red recombinase)が発現されたXL1−Blue及びXL1−Blue由来の突然変異菌株のコンピテント細胞(electroporation-competent cell)にエレクトロポレーション(electroporation)し、ackA遺伝子欠失突然変異菌株を製作した。ackA遺伝子欠失の確認のために、配列番号5及び6のプライマーでコロニーPCRを行った。
【0037】
また、ppc遺伝子の欠失のために、同じ方法で配列番号7及び9、8及び10のプライマーが順次に使用され、欠失の確認のために、配列番号11及び12のプライマーが使用された。
【0038】
また、adhE遺伝子の欠失のために、同じ方法で配列番号13及び15、14及び16のプライマーが順次に使用され、欠失の確認のために、配列番号17及び18のプライマーが使用された。
【0039】
1−1−2:acsまたはldhA遺伝子の増幅
上記1−1−1に記述したように、one step inactivation方法(Warner et al., PNAS, 6;97(12):6640−6645, 2000)を利用して、acsとldhAの大膓菌染色体DNA上の各々の固有プロモータを強力プロモータの1つであるtrcプロモータに置換させて増幅した。
【0040】
acs遺伝子の固有プロモットーのtrcプロモータへの置換のために、pMloxCベクターを鋳型にして配列番号19及び22のプライマーで1次PCRを行い、この時、得られたDNA切片を鋳型にして配列番号20及び23のプライマーで2次PCRを行った。2次PCRを通じて得られたDNA切片を鋳型にして配列番号21及び24のプライマーで3次PCRを行い、最後のDNA切片を獲得した。これをラムダレッドリコンビナーゼ(λ−red recombinase)が発現されたXL1−Blue及びXL1−Blue由来の突然変異菌株のコンピテント細胞(electroporation-competent cell)にエレクトロポレーション(electroporation)し、acs遺伝子の固有プロモータがtrcプロモータに置換された突然変異菌株を製作した。acs遺伝子のプロモータ置換を確認するために、配列番号25及び26のプライマーでコロニーPCRを行った。
【0041】
また、ldhA遺伝子の固有遺伝子のtrcプロモータへの置換のために、同じ方法で配列番号27及び30、28及び31、29及び32のプライマーが順次に使用され、置換の確認のために、配列番号33及び34のプライマーが使用された。
【0042】
1−1−3:ackA、adhE、acs、ppcまたはldhAが不活性化または増幅された変異微生物の製造
上記1−1−1または1−1−2の過程を通じて、ackA、adhE、acs、ppcまたはldhAが様々な組合で不活性化または増幅された変異微生物JLX1−9を製作した。
【0043】
表1は、上記方法で製作された大膓菌XL1−Blue由来の突然変異菌株の染色体DNA特徴を示すものである。
【0044】
【表1】

【0045】
実施例1−2:PHA合成酵素の遺伝子とプロピオニル−CoA−トランスフェラーゼの遺伝子を含む組み換えベクターの製作
1−2−1.pPs619C1300−CPPCT組み換えベクターの製作
Pseudomonas sp.6−19(KCTC 11027BP)由来のPHA合成酵素(phaC1Ps6−19)遺伝子を分離するために、Pseudomonas sp.6−19の全体DNAを抽出し、phaC1Ps6−19遺伝子配列(Ae-Jin Song,Master’s Thesis, Department of Chemical and Biomolecular Engineering, KAIST, 2004)に基づく配列番号35及び36の塩基配列を有するプライマーを製作し、PCRを行い、phaC1Ps6−19遺伝子を収得した。PCR反応物をアガロスゲル電気泳動し、phaC1 Ps6−19遺伝子に該当する1.7kbpサイズの遺伝子切片を確認した。
【0046】
phaC1 Ps6−19合成酵素の発現のために単量体供給酵素と合成酵素が一緒に発現されるオペロン形態の常時的発現システムを導入した。
【0047】
pSYL105ベクター(Lee et al., Biotech.Bioeng., 1994, 44:1337−1347)においてRalstonia eutropha H16由来のPHB生産オペロンが含有されたDNA切片をBamHI/EcoRIで切断し、pBluescript II(Stratagene)のBamHI/EcoRI認識部位に挿入することによって、pReCAB組み換えベクターを製造した。
【0048】
pReCABベクターは、PHA合成酵素(phaCRE)と単量体供給酵素(phaARE&phaBRE)がPHBオペロンプロモータによって常時的に発現され、大膓菌でも良好に作動すると知られている(Lee et al., Biotech. Bioeng., 1994, 44:1337−1347)。pReCABベクターをBstBI/SbfIで切断し、R.eutropha H16 PHA合成酵素(phaCRE)を除去した後、上記で収得したphaC1 Ps6−19遺伝子をBstBI/SbfI認識部位に挿入することによって、pPs619C1−ReAB組み換えベクターを製造した。
【0049】
BstBI/SbfI認識部位が各々両端に1つずつ含まれたphaC1 Ps6−19合成酵素遺伝子切片を作るために、まず、内在しているBstBI位置をSDM(site directed mutagenesis)方法でアミノ酸の変換なしに除去し、BstBI/SbfI認識部位を添加するために、配列番号37及び38、配列番号39及び40、配列番号41及び配列番号42の塩基配列を有するプライマーを利用してオーバーラッピングPCRを行った。
【0050】
上記phaC1Ps6−19合成酵素のPHB合成可否を確認するために、pPs619C1−ReAB組み換えベクターをE.coli XL−1Blue(Stratagene)に形質転換させ、これをPHB検出培地(LB寒天、グルコース20g/L、 ナイルレッド0.5μg/mL)で生育させた結果、PHB生成が観察されなかった。
【0051】
SCL(short chain length)活性に影響を及ぼすアミノ酸位置3ヶ所をアミノ酸配列配列分析を通じて探し出し、配列番号43乃至48のプライマーを使用したSDM方法を利用して下記表2のようなphaC1Ps6−19合成酵素変異体を作った。
【0052】
【表2】

【0053】
これらの組み換えベクターをE.coli XL−1Blueに形質転換させ、これをPHB検出培地(LB寒天、グルコース20g/L、ナイルレッド0.5μg/mL)で生育させた。その結果、pPs619C1200−ReABに形質転換されたE.coli XL−1Blue及びpPs619C1300−ReABに形質転換されたE.coli XL−1BlueにおいていずれもPHB生成を確認することができた。
【0054】
すなわち、単量体供給酵素であるphaAREとphaBREによってグルコースから3HB−CoAが生成され、これを基質にしてphaC1Ps6−19合成酵素SCL変異体(phaC1Ps6−19200&phaC1Ps6−19300)がPHBを合成したものである。
【0055】
これに、PLA及びPLA共重合体合成時に必要な単量体であるラクチル−CoAを提供するためのプロピオニル−CoAトランスフェラーゼが一緒に発現されるオペロン形態の常時的発現されるシステムを構築するために、クロストリジウム・プロピオニカム(Clostridium propionicum)由来のプロピオニル−CoAトランスフェラーゼ(CP−PCT)を使用した。
【0056】
cp−pctは、クロストリジウム・プロピオニカム(Clostridium propionicum)の染色体DNAを配列番号49及び配列番号50のプライマーを利用してPCRして得られた断片を使用した。この時、元々野生型CP−PCTに存在するNdeI siteをクローニングの容易性のためにSDM方法を利用して除去した。また、SbfI/NdeI認識部位を添加するために、配列番号51と52の塩基配列を有するプライマーを利用してオーバーラッピングPCRを行った。
【0057】
phaC1Ps6−19合成酵素SCL変異体であるphaC1Ps6−19300を含むpPs619C1300−ReABベクターをSbfI/NdeIで切断し、Ralstonia eutrophus H16由来の単量体供給酵素(phaARE & phaBRE)を除去した後、上記PCRクローニングしたCP−PCT遺伝子をSbfI/NdeI認識部位に挿入することによって、pPs619C1300−CPPCT組み換えベクターを製造した。
【0058】
1−2−2.pPs619C1300−CPPCT532組み換えベクターの製作
CP−PCTの場合、大膓菌で高発現される場合、深刻な代謝障害を起こし、毒性を示すと知られているが、一般的に組み換えタンパク質発現に広く使用されるtacプロモータやT7プロモータを使用したIPTGによる発現誘導システムでは、誘導体添加と同時に組み換え大膓菌がすべて死滅した。
【0059】
したがって、lactyl−CoAを効率的に提供することができるクロストリジウム・プロピオニカム由来プロピオン酸CoAトランスフェラーゼ(Clostridium propionicum propionate CoA transferase)変異体の開発が必要である。
【0060】
このために、弱く発現されるが微生物成長によって持続的に発現される常時的発現システムを使用してラクテート重合体及びラクテート共重合体の合成に成功した。
【0061】
cp−pctに無作為的突然変異(random mutagenesis)を導入するために、上記1−2−1で製作されたpPs619C1300−CPPCTを鋳型にし、配列番号53及び54のプライマーを利用してMn2+が添加され、dNTPsの濃度差が存在する条件でError−prone PCRを実施した。
【0062】
その後、無作為的突然変異が含まれたPCR断片を増幅するために、上記配列番号53及び54のプライマーを利用して一般条件でPCRした。
【0063】
phaC1Ps6−19合成酵素SCL変異体であるphaC1Ps6−19300を含有するpPs619C1300−CPPCTベクターをSbfI/NdeIで切断し、野生型cp−pctを除去した後、上記増幅された突然変異PCR断片をSbfI/NdeI認識部位に挿入させたライゲーションミックスを作り、E.coli JM109に導入し、〜10^5程度規模のCP−PCTライブラリを製作した。
【0064】
上記製作されたCP−PCTライブラリは、高分子検出培地(LB寒天、グルコース20g/L、3HB 1g/L、 ナイルレッド0.5μg/mL)で3日間生育させた後、高分子生成可否を確認するスクリーニング作業を行い、〜80余個体の候補を1次選定した。これら候補を高分子が生成される条件で4日間液体培養(LB寒天、グルコース20g/L、3HB 1g/L、アンピシリン100mg/L、37℃)し、FACS(Florescence Activated Cell Sorting)分析し、最終2個体を選定した。
【0065】
上記製作されたCP−PCT変異体の突然変異位置を探すために、遺伝子塩基配列を分析した。その結果は、下記の表3の通りである。
【0066】
【表3】

【0067】
上記最終選別された突然変異体(CP−PCT Variant 512, CP−PCT Variant 522)を基本にさらに上記Error−prone PCRの方法で無作為的突然変異を行い、下記表4に示されたようなCP−PCT変異体531−536を得た。
【0068】
【表4】

【0069】
その後、CpPct532突然変異が含まれたPCR断片を増幅するために、上記配列番号53及び54のプライマーを利用して一般条件でPCRした。上記pPs619C1300−CPPCTベクターをSbfI/NdeIで切断し、CPPCT部分を除去した後、上記増幅されたCpPct532PCR断片をSbfI/NdeI認識部位に挿入させたライゲーションミックスを作り、pPs619C1300−CPPCT532ベクターを製造した。
【0070】
1−2−3.pPs619C1400−CPPCT532(p400−532)組み換えベクターの製作
ラクチル−CoAを効率的に利用しないPHA合成酵素を利用してPLA及びPLA共重合体を合成する時には、合成効率が非常に低いため、PLA及びPLA共重合体を合成するためには、ラクチル−CoAを効率的に利用することができるPHA合成酵素が非常に重要であると言える。これより、本発明者らは、シュードモナス属6−19(Pseudomonas sp.6−19)のポリヒドロキシアルカノエート合成酵素の変異体を使用して、ラクチル−CoAを基質として使用してラクテート重合体及びラクテート共重合体を高効率で製造することができるシステムを発明した。
【0071】
上記1−2−1で製作されたphaC1Ps6−19合成酵素変異体(phaC1Ps6−19300)を基礎にして配列番号55及び56のプライマーを使用したSDM方法を利用してE130D、S325T、S477R及びQ481Mが変異されたアミノ酸配列を有するPseudomonas属6−19由来PHA合成酵素変異体(phaC1Ps6−19400)を製作した。
【0072】
これから得た組み換えベクター(pPs619C1400−CPPCT532)をE.coli JM109に形質転換させ、これを3HBが含まれた重合体検出培地(LB寒天、グルコース20g/L、3HB 2g/L、 ナイルレッド0.5μg/mL)で生育させた結果、重合体生成を確認することができた。
【0073】
1−2−4.pPs619C1310−CPPCT532(p310−532)組み換えベクターの製作
ラクチル−CoAを効率的に利用しないPHA合成酵素を利用してPLA及びPLA共重合体を合成する時には、合成効率が非常に低いため、PLA及びPLA共重合体を合成するためには、ラクチル−CoAを効率的に利用することができるPHA合成酵素が非常に重要であると言える。これより、上記1−2−1で製作されたphaC1Ps6−19合成酵素変異体(phaC1Ps6−19300)を基礎にして配列番号57及び58、59、60のプライマーを使用したSDM方法を利用してE130D、S477F及びQ481Kが変異されたアミノ酸配列を有するPseudomonas属6−19由来PHA合成酵素変異体(phaC1Ps6−19310)を製作した。
【0074】
これから得た組み換えベクター(pPs619C1310−CPPCT532)をE.coli JM109に形質転換させ、これを3HBが含まれた重合体検出培地(LB寒天、グルコース20g/L、3HB 2g/L、 ナイルレッド0.5μg/mL)で生育させた結果、重合体生成を確認することができた。
【0075】
1−3.ポリラクテートと3−ヒドロキシブチレート−ラクテート共重合体を効率的に生成する変異微生物の製作
実施例1−1で製作されたアセチル−CoA及びラクテートの量が増加した変異微生物に上記実施例1−2−3及び1−2−4で製作されたpPs619C1400−CPPCT532またはpPs619C1310−CPPCT532ベクターを導入することによって、ポリラクテートとポーリ(3−ヒドロキシブチレート−co−ラクテート)を効率的に生成する変異微生物を製作した。
【0076】
上記変異微生物をテトラサイクリン10μg/mL、アンピシリン100μg/mL及びグルコース20g/Lが添加されたLB平板培地で選別した。この形質転換菌株を10mLのLB培地に接種し、30℃で12時間、前培養を行った。その後、蒸留水1リットル当たり20gのグルコース、6.67gのKHPO、4gの(NHHPO、0.8gのクエン酸、0.8gのMgSO・7HO、5mLのtrace metal solution(蒸留水1リットル当たり10gのFeSO・7HO、1.35gのCaCl、2.25gのZnSO・7HO、0.5gのMnSO・4HO、1gのCuSO・5HO、0.106gの(NH)6Mo24・4HO、0.23gのNaO7・10HO、10mLの35%HClを含む)の成分があり、10N NaOHでpHを7.0に調整した100mLの培地を含む250mLフラスコに上記前培養液1mLをテトラサイクリン10μg/mL、アンピシリン100μg/mL及びチアミン10μg/mLとともに接種し、30℃で200rpmで72時間乃至96時間培養した。この時、ポリ(3−ヒドロキシブチレート−co−ラクテート)共重合体の生成のために、培養初期にDL−3−ヒドロキシブチレートナトリウム塩(ACROS)2g/Lを一回乃至二回供給した。突然変異菌株のうちppc遺伝子の欠失に起因して細胞成長が難しい菌株を培養するためにスクシネート4g/Lが添加された。また、trcプロモータに置換されたldhA及びacs遺伝子の発現のために、OD600 0.5程度に1mMのIPTGが添加された。
【0077】
培養終了後、遠心分離して培養液から菌体を回収した。回収した菌体を蒸留水で3回洗浄した後、100℃の乾燥器で24時間乾燥し、乾燥した菌体のうち一部を採取し、ガスクロマトグラフィ(GC)分析を行うことによって、細胞内合成されたP(3HB−co−LA)含量を測定した。分析に使用された標準物質は、P(3HB−co−3HV)共重合体(これらのうち3HVの含量は重量比で約12%)及びポリラクテートホモポリマーであった。上記代謝操作によってPLAホモポリマーの3〜10wt%程度の生成が可能になり、P(3HB−co−LA)共重合体の生成は、高分子内のLA分率が1.7〜4.3倍増加し、高分子含量が1.4〜27.3倍増加する優れた改善効果を示した。
【0078】
実施例2:ポリラクテートと3−ヒドロキシブチレート−ラクテート共重合体を効率的に生成する変異微生物の培養体積条件による高分子生成能比較
フラスコ培養において、培養条件とこれによるラクテート生成程度が微生物の細胞成長(バイオマス)とP(3HB−co−LA)生成に及ぼす影響を調べるために、培養体積を異ならしめて培養することにした。このために、250mLフラスコに50mL、100mL、150mLの培地を入れ、XB/p400−532菌株を培養した。上記XB/p400−532菌株は、大膓菌XL1−Blueの代謝フローを操作しないまま、pPs619C1400−CPPCT532ベクターを導入した菌株である。
【0079】
下記表5は、XB/p400−532菌株の培養体積条件による高分子生成結果を示すものである。
【0080】
【表5】

【0081】
予想の通り、培地体積が増加するにつれて、相対的に(マイクロ)嫌気条件が形成されながら細胞成長は弱化し、これにより、高分子含量は、約1.5倍増加した。また、(マイクロ)嫌気条件によるラクテートの生成が増加しながら高分子内のラクテート分率は、2.2倍程度増加した。
【0082】
これを基盤にして代謝的に操作された本発明の変異微生物JLX7/p400−532の効果を確認するために、培養体積を50mL、100mLにしてフラスコ培養を施行した。
【0083】
下記表6は、XB/p400−532菌株と本発明の変異微生物JLX7/p400−532の培養体積条件による高分子生成結果を示したものである。
【0084】
【表6】

【0085】
50mLの培養体積で培養した時、宿主菌株としてXB/p400−532を使用した場合と比較して、P(3HB−co−LA)含量は、1.24倍増加し、高分子濃度も1.98倍増加した。また、高分子内のラクテート(LA)分率が14.32mol%から49.55mol%と約3.46倍増加した。100mLの培養体積で培養した時、宿主菌株としてXB/p400−532を使用した場合と比較して、P(3HB−co−LA)含量は、1.62倍増加し、高分子濃度も2.98倍増加した。高分子内のLA分率も40.45mol%から63.95mol%と1.58倍増加した。
【0086】
PLA共重合体内のLA分率が高分子物性において重要な影響を及ぼすので、LA分率の増大及び調節は、菌株改良において重要な部分である。
【0087】
50mLの培養体積で培養した時、LA分率が14.32mol%から49.55mol%と約3.46倍増加したのに対し、100mLの培養体積で培養した時は、40.45mol%から63.95mol%と1.58倍増加する、相対的に増加幅が低い結果を示したが、LA分率の絶対値は、最も高い値(63.95mol%)を示した。言い換えれば、50mLの培養場合、その増加幅は、相対的に高いが50mol%水準であって、100ml培養での値(63.95mol%)を超えなかった。これは、遺伝子水準での代謝工学とともに培養条件もPLAとその共重合体生産において最適化しなければならない調節因子であることを意味する。
【0088】
実施例3:変異遺伝子の組合による変異微生物の高分子生成能比較
本発明の変異微生物に適用された遺伝的突然変異の組合が高分子生成能増加に及ぼす効果を確認した。
【0089】
上記場合のように、基本培地は、MR培地に炭素源としてグルコース20g/L、マーカーとしてテトラサイクリン10μg/mL、アンピシリン100μg/mL及びチアミン10μg/mLを供給した。また、培養初期にDL−3−ヒドロキシブチレートナトリウム塩(ACROS)2g/Lを1回(p310−532の場合、M20)乃至2回(p400−532の場合、−M18)供給し、30℃で200rpmで72時間培養した。
【0090】
宿主菌株としてXB、JLX1菌株を使用した場合は、追加事項なしに上記培養条件のまま培養し、JLX3、JLX5、JLX6、JLX7、JLX8菌株を使用した場合には、ppc遺伝子の欠失による細胞成長阻害を補完するために、スクシネート4g/Lを培養初期に追加に供給した。JLX2、JLX4、JLX5、JLX7、JLX8菌株を使用した場合は、ptrc−ldhAまたはptrc−ldhAとptrc−acsの発現を誘導するために、OD600 0.5程度に1mM IPTGを供給した。
【0091】
下記表7は、XB野生型及び表1のJLX1、JLX2、JLX3、JLX4、JLX5、JLX6、JLX7菌株を宿主菌株にしてp400−532ベクターを各々導入した変異微生物の高分子生成能を示したものである。
【0092】
【表7】

【0093】
また、下記表8は、XB野生型及び表1のJLX1、JLX2、JLX3、JLX4、JLX5、JLX6、JLX7、JLX8菌株を宿主菌株にしてp310−532ベクターを各々導入した変異微生物の高分子生成能を示したものである。
【0094】
【表8】

【0095】
ポリマーの生成は、宿主菌株の代謝フローとポリマー生成に直接的に影響を及ぼす酵素の活性すべてによって影響を受ける。したがって、表7及び表8から明らかなように、同じ宿主細胞であるとしても、適用された酵素活性によって生成されるポリマー内LA分率、ポリマー含量などが変わることが分かり、それにもかかわらず、全般的に、JLX5、JLX7またはJLX8菌株の場合、高分子生成能が常に優れていることが分かった。
【0096】
実施例4:3−ヒドロキシブチレートの供給量による高分子生成能比較
PLA単一重合体とラクテート(LA)含量が高いP(3HB−co−LA)共重合体の生合成のために、3−ヒドロキシブチレート(3HB)供給量を調節し、その生成能を調べた。
【0097】
表9は、宿主菌株としてXB野生型及びJLX7菌株を使用し、p400−532ベクターを導入した時、3HB供給量(0、0.5、1、2、4、8g/L)による高分子生成能を示したものである。
【0098】
【表9】

【0099】
表10は、宿主菌株としてXB野生型及びJLX7、JLX8、JLX9菌株を使用し、p310−532ベクターを導入した時、3HB供給量(0、0.5、1、2、4g/L)による高分子生成能を示したものである。
【0100】
【表10】

【0101】
p400−532とp310−532の場合、いずれも、宿主細胞がXB野生型の場合は、PLAホモポリマーと50mol%以上のLAを有するP(3HB−co−LA)共重合体を生成しないのに対し、JLX7、JLX8、またはJLX9の場合、PLAホモポリマーを3〜10wt%生成することができ、50〜86mol%水準のLAを有するP(3HB−co−LA)共重合体を13〜65wt%生成することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コエンザイムA供与体及びラクテートの生成の増加のためにコエンザイムA供与体及びラクテートの生成経路に関与する1つ以上の遺伝子が遺伝工学的に操作されている変異微生物を製造し、
上記変異微生物をグルコースまたはグルコースとヒドロキシアルカノエートを含む培地中で培養し、
上記変異微生物からポリラクテートまたはヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体を回収することを含むことを特徴とするポリラクテートまたはヒドロキシアルカノエート−ラクテート共重合体の製造方法。
【請求項2】
上記コエンザイムA供与体が、アセチルコエンザイムA(acetyl−CoA)、β−ケトアジピル−CoA(β−ketoadipyl−CoA)、γ−ブチロベタイニル−CoA(γ−butyrobetainyl−CoA)、(R)−メチルマロニル−CoA((R)−methylmalonyl−CoA)、(S)−メチル−マロニル−CoA((S)−methyl−malonyl−CoA)、2’−(5’’−ホスホリボシル)−3’−デホスホ−CoA(2’−(5’’−phosphoribosyl)−3’−dephospho−CoA)、2’−(5’’−トリホスホリボシル)−3’−デホスホ−CoA(2’−(5’’−triphosphoribosyl)−3’−dephospho−CoA)、3、4−ジヒドロキシフェニルアセチル−CoA(3、4−dihydroxyphenylacetyl−CoA)、3−ヒドロキシアジピル−CoA(3−hydroxyadipyl−CoA)、3−ヒドロキシブチリル−CoA(3−hydroxybutyryl−CoA)、3−ヒドロキシフェニルアセチル−CoA(3−hydroxyphenylacetyl−CoA)、3−メチルクロトニル−CoA(3−methylcrotonyl−CoA)、4−ヒドロキシフェニルアセチル−CoA(4−hydroxyphenylacetyl−CoA)、フェニルアセチル−CoAのcis−ジヒドロジオール誘導体(cis−dihydrodiol derivative of phenylacetyl−CoA)、Δ2−エノイル−CoA(Δ2−enoyl−CoA)、2−trans−4−cis−ジエノイル−CoA(2−trans−4−cis−dienoyl−CoA)、3−ヒドロキシアシル−CoA(3−hydroxyacyl−CoA)、3−ケトアシル−CoA(3−ketoacyl−CoA)、cis−2−エノイル−CoA(cis−2−enoyl−CoA)、cis−3−エノイル−CoA(cis−3−enoyl−CoA)、trans−2−エノイル−CoA(trans−2−enoyl−CoA)、trans−3−エノイル−CoA(trans−3−enoyl−CoA)、cis−2、3−デヒドロアシル−CoA(cis−2、3−dehydroacyl−CoA)、D−3−ヒドロキシアシル−CoA(D−3−hydroxyacyl−CoA)、脂肪アシルCoA(fatty acyl CoA)、長鎖アシル−CoA(long−chain acyl−CoA)、trans、trans−Δ2−Δ4−ジエノイル−CoA(trans、trans−Δ2−Δ4−dienoyl−CoA)、極長鎖脂肪アシル−CoA(very long chain fatty acyl−CoA)、CoA誘導体(CoA derivative)、アセトアセチル−CoA(acetoacetyl−CoA)、アセチル−CoA(acetyl−CoA)、ω−カルボキシアシル−CoA(ω−carboxyacyl−CoA)、アシル−CoA(acyl−CoA)、L−3−ヒドロキシアシル−CoA(L−3−hydroxyacyl−CoA)、ブチリル−CoA(butyryl−CoA)、コエンザイムA(CoA)、コエンザイム−A−グループ(CoA)、クマロイル−CoA(coumaroyl−CoA)、クロトノベタイニル−CoA(crotonobetainyl−CoA)、クロトニル−CoA(crotonyl−CoA)、D−カルニチニル−CoA(D−carnitinyl−CoA)、デホスホ−CoA(dephospho−CoA)、ホルミル−CoA(formyl−CoA)、イソバレリル−CoA(isovaleryl−CoA)、L−カルニチニル−CoA(L−carnitinyl−CoA)、マロニル−CoA(malonyl−CoA)、O−スクシニルベンゾイル−CoA(O−succinylbenzoyl−CoA)、オキサリル−CoA(oxalyl−CoA)、パルミトイルCoA(palmitoyl CoA)、フェニルアセチル−CoA(phenylacetyl−CoA)、ピメロイル−CoA(pimeloyl−CoA)、プロピオニル−CoA(propionyl−CoA)、スクシニル−CoA(succinyl−CoA)、trans−Δ2、cis−Δ4−デカジエノイル−CoA(trans−Δ2、cis−Δ4−decadienoyl−CoA)、trans−Δ2−デセノイル−CoA(trans−Δ2−decenoyl−CoA)及びラクチルCoA(lactyl CoA)よりなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
上記変異微生物が、コエンザイムA供与体の生成の増加のためにアセテートの生成経路に関与する酵素をコーディングする遺伝子またはエタノールの生成経路に関与する酵素をコーディングする遺伝子が不活性化されているか、アセテートをアセチルコエンザイムAに再転換する酵素をコーディングする遺伝子が増幅されていることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
上記変異微生物が、ラクテートの生成の増加のためにホスホエノールピルベートの消耗反応に関与する酵素をコーディングする遺伝子が不活性化されているか、ピルベートからラクテートへの転換に関与する酵素をコーディングする遺伝子が増幅されていることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
上記変異微生物が、バクテリア、酵母及びかびよりなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項6】
上記バクテリアは、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、エシェリキア(Escherichia)属、ラルストニア(Ralstonia)属、バシルロス(Bacillus)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属よりなる郡から選択されることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
上記バクテリアは、大膓菌(Escherichia coli)であることを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
上記アセテートの生成経路に関与する酵素をコーディングする遺伝子がackAであることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項9】
上記エタノールの生成経路に関与する酵素をコーディングする遺伝子がadhEであることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項10】
アセテートをアセチルコエンザイムAに再転換する酵素をコーディングする遺伝子がacsであることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項11】
上記ホスホエノールピルベートの消耗反応に関与する酵素をコーディングする遺伝子がppcであることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項12】
ピルベートからラクテートへの転換に関与する酵素をコーディングする遺伝子がldhAであることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項13】
上記変異微生物が、コエンザイムA供与体の生成の増加のためにアセテートの生成経路に関与する酵素をコーディングする遺伝子が不活性化されていて、ラクテートの生成の増加のためにホスホエノールピルベートの消耗反応に関与する酵素をコーディングする遺伝子が不活性化されていて、ピルベートからラクテートへの転換に関与する酵素をコーディングする遺伝子が増幅されていることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項14】
上記変異微生物が、コエンザイムA供与体の生成の増加のためにアセテートの生成経路に関与する酵素をコーディングする遺伝子が不活性化されていて、アセテートをアセチルコエンザイムA(Acetyl CoA)に再転換する酵素をコーディングする遺伝子が増幅されていて、ラクテートの生成の増加のためにホスホエノールピルベートの消耗反応に関与する酵素をコーディングする遺伝子が不活性化されていて、ピルベートからラクテートへの転換に関与する酵素をコーディングする遺伝子が増幅されていることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項15】
上記遺伝子の発現の増幅は、固有プロモータ(native promoter)の強力プロモータ(strong promoter)への置換により行われることを特徴とする請求項3または4に記載の製造方法。
【請求項16】
上記強力プロモータは、trcプロモータ、tacプロモータ、T7プロモータ及びlacプロモータよりなる群から選択されることを特徴とする請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
上記変異微生物は、aceE、aceF、lpdA、pfkA、pfkB、tpiA、sdhA、sdhB、sdhC、sdhD、fumA、fumB、fumC、eptB、gpmA、gpmB、ptsG、mdh、pgi、glgC、sucA、sucB、ribA、folE及びpflBよりなる群から選択されるいずれか1つ以上の遺伝子が追加に弱化または不活性化されていることを特徴とする請求項8乃至12のいずれかに記載の製造方法。
【請求項18】
上記ヒドロキシアルカノエートは、
3−ヒドロキシブチレート(3−hydroxybutyrate)、3−ヒドロキシ吉草酸(3−hydroxyvalerate)、4−ヒドロキシブチレート(4−hydroxybutyrate)、炭素数が6〜14個の中間鎖長さの(D)−3−ヒドロキシカルボン酸((D)−3−hydroxycarboxylic acid)、2−ヒドロキシプロピオン酸(2−hydroxypropionic acid)、3−ヒドロキシプロピオン酸(3−hydroxypropionic acid)、3−ヒドロキシヘキサン酸(3−hydroxyhexanoic acid)、3−ヒドロキシヘプタン酸(3−hydroxyheptanoic acid)、3−ヒドロキシオクタン酸(3−hydroxyoctanoic acid)、3−ヒドロキシノナン酸(3−hydroxynonanoic acid)、3−ヒドロキシデカン酸(3−hydroxydecanoic acid)、3−ヒドロキシウンデカン酸(3−hydroxyundecanoic acid)、3−ヒドロキシドデカン酸(3−hydroxydodecanoic acid)、3−ヒドロキシテトラデカン酸(3−hydroxytetradecanoic acid)、3−ヒドロキシヘキサデカン酸(3−hydroxyhexadecanoic acid)、4−ヒドロキシ吉草酸(4−hydroxyvaleric acid)、4−ヒドロキシヘキサン酸(4−hydroxyhexanoic acid)、4−ヒドロキシヘプタン酸(4−hydroxyheptanoic acid)、4−ヒドロキシオクタン酸(4−hydroxyoctanoic acid)、4−ヒドロキシデカン酸(4−hydroxydecanoic acid)、5−ヒドロキシ吉草酸(5−hydroxyvaleric acid)、5−ヒドロキシヘキサン酸(5−hydroxyhexanoic acid)、6−ヒドロキシドデカン酸(6−hydroxydodecanoic acid)、3−ヒドロキシ−4−ペンテン酸(3−hydroxy−4−pentenoic acid)、3−ヒドロキシ−4−trans−ヘキセン酸(3−hydroxy−4−trans−hexenoic acid)、3−ヒドロキシ−4−cis−ヘキセン酸(3−hydroxy−4−cis−hexenoic acid)、3−ヒドロキシ−5−ヘキセン酸(3−hydroxy−5−hexenoic acid)、3−ヒドロキシ−6−trans−オクテン酸(3−hydroxy−6−trans−octenoic acid)、3−ヒドロキシ−6−cis−オクテン酸(3−hydroxy−6−cis−octenoic acid)、3−ヒドロキシ−7−オクテン酸(3−hydroxy−7−octenoic acid)、3−ヒドロキシ−8−ノネン酸(3−hydroxy−8−nonenoic acid)、3−ヒドロキシ−9−デセン酸(3−hydroxy−9−decenoic acid)、3−ヒドロキシ−5−cis−ドデセン酸(3−hydroxy−5−cis−dodecenoic acid)、3−ヒドロキシ−6−cis−ドデセン酸(3−hydroxy−6−cis−dodecenoic acid)、3−ヒドロキシ−5−cis−テトラデセン酸(3−hydroxy−5−cis−tetradecenoic acid)、3−ヒドロキシ−7−cis−テトラデセン酸(3−hydroxy−7−cis−tetradecenoic acid)、3−ヒドロキシ−5、8−cis−cis−テトラデセン酸(3−hydroxy−5、8−cis−cis−tetradecenoic acid)、3−ヒドロキシ−4−メチル吉草酸(3−hydroxy−4−methylvaleric acid)、3−ヒドロキシ−4−メチルヘキサン酸(3−hydroxy−4−methylhexanoic acid)、3−ヒドロキシ−5−メチルヘキサン酸(3−hydroxy−5−methylhexanoic acid)、3−ヒドロキシ−6−メチルヘプタン酸(3−hydroxy−6−methylheptanoic acid)、3−ヒドロキシ−4−メチルオクタン酸(3−hydroxy−4−methyloctanoic acid)、3−ヒドロキシ−5−メチルオクタン酸(3−hydroxy−5−methyloctanoic acid)、3−ヒドロキシ−6−メチルオクタン酸(3−hydroxy−6−methyloctanoic acid)、3−ヒドロキシ−7−メチルオクタン酸(3−hydroxy−7−methyloctanoic acid)、3−ヒドロキシ−6−メチルノナン酸(3−hydroxy−6−methylnonanoic acid)、3−ヒドロキシ−7−メチルノナン酸(3−hydroxy−7−methylnonanoic acid)、3−ヒドロキシ−8−メチルノナン酸(3−hydroxy−8−methylnonanoic acid)、3−ヒドロキシ−7−メチルデカン酸(3−hydroxy−7−methyldecanoic acid)、3−ヒドロキシ−9−メチルデカン酸(3−hydroxy−9−methyldecanoic acid)、3−ヒドロキシ−7−メチル−6−オクテン酸(3−hydroxy−7−methyl−6−octenoic acid)、リンゴ酸(malic acid)、3−ヒドロキシコハク酸−メチルエステル(3−hydroxysuccinic acid−methyl ester)、3−ヒドロキシアジピン酸−メチルエステル(3−hydroxyadipinic acid−methyl ester)、3−ヒドロキシスベリン酸−メチルエステル(3−hydroxysuberic acid−methyl ester)、3−ヒドロキシアゼライン酸−メチルエステル(3−hydroxyazelaic acid−methyl ester)、3−ヒドロキシセバシン酸−メチルエステル(3−hydroxysebacic acid−methyl ester)、3−ヒドロキシスベリン酸−エチルエステル(3−hydroxysuberic acid−ethyl ester)、3−ヒドロキシセバシン酸−エチルエステル(3−hydroxysebacic acid−ethyl ester)、3−ヒドロキシピメリン酸−プロピルエステル(3−hydroxypimelic acid−propylester)、3−ヒドロキシセバシン酸−ベンジルエステル(3−hydroxysebacic acid−benzilester)、3−ヒドロキシ−8−アセトキシオクタン酸(3−hydroxy−8−acetoxyoctanoic acid)、3−ヒドロキシ−9−アセトキシノナン酸(3−hydroxy−9−acetoxynonanoic acid)、フェノキシ−3−ヒドロキシブチレート(phenoxy−3−hydroxybutyric acid)、フェノキシ−3−ヒドロキシ吉草酸(phenoxy−3−hydroxyvaleric acid)、フェノキシ−3−ヒドロキシヘプタン酸(phenoxy−3−hydroxyheptanoic acid)、フェノキシ−3−ヒドロキシオクタン酸(phenoxy−3−hydroxyoctanoic acid)、para−シアノフェノキシ−3−ヒドロキシブチレート(para−cyanophenoxy−3−hydroxybutyric acid)、para−シアノフェノキシ−3−ヒドロキシ吉草酸(para−cyanophenoxy−3−hydroxyvaleric acid)、para−シアノフェノキシ−3−ヒドロキシヘキサン酸(para−cyanophenoxy−3−hydroxyhexanoic acid)、para−ニトロフェノキシ−3−ヒドロキシヘキサン酸(para−nitrophenoxy−3−hydroxyhexanoic acid)、3−ヒドロキシ−5−フェニル吉草酸(3−hydroxy−5−phenylvaleric acid)、3−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルブチレート(3−hydroxy−5−cyclohexylbutyric acid)、3、12−ジヒドロキシドデカン酸(3、12−dihydroxydodecanoic acid)、3、8−ジヒドロキシ−5−cis−テトラデセン酸(3、8−dihydroxy−5−cis−tetradecenoic acid)、3−ヒドロキシ−4、5−エポキシデカン酸(3−hydroxy−4、5−epoxydecanoic acid)、3−ヒドロキシ−6、7−エポキシドデカン酸(3−hydroxy−6、7−epoxydodecanoic acid)、3−ヒドロキシ−8、9−エポキシ−5、6−cis−テトラデカン酸(3−hydroxy−8、9−epoxy−5、6−cis−tetradecanoic acid)、7−シアノ−3−ヒドロキシヘプタン酸(7−cyano−3−hydroxyheptanoic acid)、9−シアノ−3−ヒドロキシノナン酸(9−cyano−3−hydroxynonanoic acid)、3−ヒドロキシ−7−フルオロヘプタン酸(3−hydroxy−7−fluoroheptanoic acid)、3−ヒドロキシ−9−フルオロノナン酸(3−hydroxy−9−fluorononanoic acid)、3−ヒドロキシ−6−クロロヘキサン酸(3−hydroxy−6−chlorohexanoic acid)、3−ヒドロキシ−8−クロロオクタン酸(3−hydroxy−8−chlorooctanoic acid)、3−ヒドロキシ−6−ブロモヘキサン酸(3−hydroxy−6−bromohexanoic acid)、3−ヒドロキシ−8−ブロモオクタン酸(3−hydroxy−8−bromooctanoic acid)、3−ヒドロキシ−11−ブロモウンデカン酸(3−hydroxy−11−bromoundecanoic acid)、3−ヒドロキシ−2−ブテン酸(3−hydroxy−2−butenoic acid)、6−ヒドロキシ−3−ドデセン酸(6−hydroxy−3−dodecenoic acid)、3−ヒドロキシ−2−メチルブチレート(3−hydroxy−2−methylbutyric acid)、3−ヒドロキシ−2−メチル吉草酸(3−hydroxy−2−methylvaleric acid)、及び3−ヒドロキシ−2、6−ジメチル−5−ヘプテン酸(3−hydroxy−2、6− dimethyl−5−heptenoic acid)よりなる群から選択される1つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−525807(P2011−525807A)
【公表日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−516124(P2011−516124)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【国際出願番号】PCT/KR2009/003389
【国際公開番号】WO2009/157702
【国際公開日】平成21年12月30日(2009.12.30)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【出願人】(500192470)コリア・アドヴァンスド・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー (12)
【Fターム(参考)】