説明

ポリラジカル化合物

【課題】安定ラジカル基を有し、電解液に溶出せずかつ親和性を有し、蓄電デバイス用等に用いることができ、安価で効率的に製造できる、新規なポリラジカル化合物の提供。
【解決手段】一般式(i)、(ii)及び(iii)からなる群から選ばれる少なくとも一種で表される構造単位(X)と、一般式(viii)及び(ix)からなる群から選ばれる少なくとも一種で表される3〜6価の基である構造単位(Y)とが、化学的に結合していることを特徴とするポリラジカル化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子材料、特にリチウム二次電池等の電極活物質への適用に好適なポリラジカル化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信システムの発展とともに、ノート型パソコン、携帯電話などの携帯電子機器が急激に普及してきた。携帯電子機器は、高機能化される一方で、機能や形状などの多様化も進んでいる。そこで、その電源である電池に対して、小型化、軽量化、高エルギー密度化、高出力密度化などの様々な要求が高まっている。
【0003】
高エネルギー密度の電池としては、1990年代以降、リチウムイオン電池が広く用いられるようになった。このリチウムイオン電池は、電極活物質として正極にマンガン酸リチウムやコバルト酸リチウムといったリチウム含有遷移金属酸化物を用い、負極に炭素を用いたものであり、リチウムイオンの電極活物質への挿入・脱離反応を利用して充放電を行う。リチウムイオン電池は、大きなエネルギー密度を有し、またサイクル特性に優れているため、携帯電話をはじめとした種々の電子機器の電源として利用されている。一方、大きな出力を得ることが難しく、また、充電のために長時間を要するという欠点もある。
【0004】
大きな出力を得ることの出来る蓄電デバイスとして、電気二重層キャパシタが知られている。この電気二重層キャパシタは、大電流を一度に放出できるため、大きな出力を得ることが可能である。しかしながら、エネルギー密度は非常に小さく、しかも小型化が困難であることから、多くの携帯電子機器の電源としては適していない。
【0005】
また、導電性高分子を電極材料に用いた非水電解質キャパシタも提案されている(特許文献1参照)。この非水電解質キャパシタにおいては、大きな出力を得ることができ、従来の電気二重層キャパシタに比べて高いエネルギー密度を有している。しかしながら、導電性高分子を電極活物質として用いた電池と同様に、発生するドープ濃度に限界があり、エネルギー密度は小さいものであった。
【0006】
一方、特許文献2では、正極及び負極の少なくとも一方の電極活物質がラジカル材料を含有することを特徴とする二次電池が提案され、特許文献3及び4では、ニトロキシドポリマー材料を正極中に含有した蓄電デバイスが提案されている。これら二次電池等の蓄電デバイスは、電極活物質(ラジカル化合物)自体の電極反応が速いため、大電流で充放電ができ、そのため高い出力が得られるとされている。
【0007】
そして、特許文献3や特許文献4では、ニトロキシドポリマーとして、ポリ(4−メタクロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)(以下、PTMAと略記する)やPTMAの架橋体が、特許文献5ではポリ(4−ビニルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル)(以下、PTVEと略記する)が開示されている。
【0008】
しかしながら、上記特許文献3によると、PTMAは2,2,6,6−テトラメチルピペリジンメタクリレートモノマーをラジカル重合し、次いでピペリジンの2級アミノ基をm−クロロ過安息香酸等で酸化して合成される。ここでラジカル化反応は、高分子反応であるため、全ての2級アミノ基を全てラジカル化することが非常に困難である。非特許文献1には、過酸化物を使用してPTMAの前駆体をラジカル化する場合、ラジカル化率が70%前後にとどまると記載されている。
【0009】
また、特許文献4には、4−メタクロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルを、アルキルリチウムなどを用いてアニオン重合し、PTMAを直接合成する方法が開示されているが、アルキルリチウムなどを用いるアニオン重合は無水状態で、極低温下、不活性ガス中で反応させる必要があり、安価で工業的に製造することが困難である。
【0010】
また、特許文献5によると、PTVEは、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−ビニルオキシ−1−イルモノマーを−78℃の極低温下で重合させて合成している。したがって、PTVEも安価で工業的に製造することが困難である。
このように、従来、一般的に用いられているラジカルポリマーは、効率的に製造されるものではなかった。
【0011】
また、特許文献4によれば、PTMAは、耐溶媒安定性が不十分で、電極活物質が電解液を構成する溶媒に溶出するため、二次電池の性能安定性が不十分であるという問題点があり、これを解決する手段として、PTMAを架橋する方法が提案されている。しかし、上記のごとく、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンメタクリレートモノマーを架橋剤の存在下、ラジカル重合し、次いでピペリジンの2級アミノ基をm−クロロ過安息香酸等の酸化剤で酸化する反応は、高分子反応であるため、全ての2級アミノ基を全てラジカル化することはさらに困難となり、高容量化が困難であるという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2000−315527号公報
【特許文献2】特許第3687736号公報
【特許文献3】特開2002−304996号公報
【特許文献4】国際公開第2005/116092号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2006/082708号パンフレット
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】独立法人新エネルギー・産業技術機構、平成15年度成果報告書、エネルギー使用合理化技術戦略的開発、エネルギー使用合理化技術実用化開発、バックアップ用高出力有機ラジカル電池の研究開発、管理番号100003336(公開日2004年09月15日)p8
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の課題は、安定ラジカル基を有し、電解液に溶出せずかつ親和性を有し、蓄電デバイス用等に用いることができ、安価で効率的に製造できる、新規なポリラジカル化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するため、鋭意検討した結果、ラジカル部位を有するとともに、マイケル付加反応に対して活性な水素原子を有する化合物と、活性不飽和基を有する化合物とを反応させて、ポリラジカル化合物を製造すると、重合反応が温和な条件下で進行するため、ポリラジカル化合物のラジカル部位の失活が起こらないこと、マイケル付加は逐次重合反応で進行するために架橋点が多く、溶剤に不溶化し易いが、この方法で製造されたポリラジカル化合物は、ゲル化点が低いために、溶剤に対して高い膨潤性を示し、定量的かつ高速の酸化還元反応を示すことなどの知見が得られ、本発明を完成するに至った。
【0016】
すなわち、本発明は、下記一般式(i)、(ii)及び(iii)からなる群から選ばれる少なくとも一種で表される構造単位(X)と、下記一般式(viii)及び(ix)からなる群から選ばれる少なくとも一種で表される3〜6価の基である構造単位(Y)とが、化学的に結合していることを特徴とするポリラジカル化合物を提供する。
【0017】
【化1】

(式中、Zはそれぞれ独立して下記式(iv)、(v)及び(vi)並びに一般式(vii)からなる群から選ばれる一種で表される1価の基である。)
【0018】
【化2】

(式中、R1及びR2はそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基又はアルコキシ基であり;・はラジカルである。)
【0019】
【化3】

(式中、R3はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基であり;R4はメチル基又は水酸基であり;R5及びR6はそれぞれ独立して水素原子又は(メタ)アクリロイル基であり;Aはそれぞれ独立して下記一般式(x)で表される二価の基であり;jは0又は1であり、kは0以上の整数であり、lは1以上の整数であり、j+k+lは3であり;o及びpはそれぞれ独立して0又は1であり、m及びrはそれぞれ独立して0以上の整数であり、n及びqはそれぞれ独立して1以上の整数であり、m+n+o及びp+q+rは3であり;aは0〜10の整数である。)
【0020】
【化4】

(式中、R7は水素原子又はメチル基であり、ただし、一般式(x)中の酸素原子は一般式(viii)及び(ix)中のAに隣接するメチレン基を構成する炭素原子に結合する。)
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、安定ラジカル基を有し、電解液に溶出せずかつ親和性を有し、蓄電デバイス用等に用いることができ、安価で効率的に製造できる、新規なポリラジカル化合物が得られる。かかるポリラジカル化合物は、充放電に関与するラジカルの割合が高く、電解液に対する溶解性が低く、かつ膨潤性が高いので、電極活物質として有用である。また、マイケル付加反応で簡便な工程、温和な条件下で合成できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1の新規ポリラジカル化合物のFT−IRスペクトルを示す図である。
【図2】実施例2の硬化反応におけるFT−IRスペクトルの経時変化を示す図である。
【図3】実施例3の新規ポリラジカル化合物のFT−IRスペクトルを示す図である。
【図4】実施例4の新規ポリラジカル化合物のFT−IRスペクトルを示す図である。
【図5】実施例9の新規ポリラジカル化合物のFT−IRスペクトルを示す図である。
【図6】参考例1の新規ポリラジカル化合物のFT−IRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明のポリラジカル化合物は、下記一般式(i)、(ii)及び(iii)からなる群から選ばれる少なくとも一種で表される構造単位(X)と、下記一般式(viii)及び(ix)からなる群から選ばれる少なくとも一種で表される3〜6価の基である構造単位(Y)とが、化学的に結合していることを特徴とする。
【0024】
【化5】

(式中、Zはそれぞれ独立して下記式(iv)、(v)及び(vi)並びに一般式(vii)からなる群から選ばれる一種で表される1価の基である。)
【0025】
【化6】

(式中、R1及びR2はそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基又はアルコキシ基であり;・はラジカルである。)
【0026】
【化7】

(式中、R3はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基であり;R4はメチル基又は水酸基であり;R5及びR6はそれぞれ独立して水素原子又は(メタ)アクリロイル基であり;Aはそれぞれ独立して下記一般式(x)で表される二価の基であり;jは0又は1であり、kは0以上の整数であり、lは1以上の整数であり、j+k+lは3であり;o及びpはそれぞれ独立して0又は1であり、m及びrはそれぞれ独立して0以上の整数であり、n及びqはそれぞれ独立して1以上の整数であり、m+n+o及びp+q+rは3であり;aは0〜10の整数である。)
【0027】
【化8】

(式中、R7は水素原子又はメチル基であり、ただし、一般式(x)中の酸素原子は一般式(viii)及び(ix)中のAに隣接するメチレン基を構成する炭素原子に結合する。)
【0028】
すなわち、本発明のポリラジカル化合物は、構造単位(X)の前記一般式(i)、(ii)又は(iii)中で結合先が特定されていない結合手「−」の少なくとも一つと、構造単位(Y)の前記一般式(viii)又は(ix)中で結合先が特定されていない結合手「−」の少なくとも一つとで、共有結合を形成している化合物である。ただし、構造単位(X)における前記結合手のうちの一つは、構造単位(Y)ではなく水素原子との間の結合を形成していることがある。そして、構造単位(Y)における前記結合手のうちの一部は、構造単位(X)ではなく水素原子との間の結合を形成していることがある。
【0029】
Zはそれぞれ独立して前記式(iv)、(v)及び(vi)並びに一般式(vii)で表される1価の基からなる群から選ばれる一種の1価の基である。そして、前記一般式(i)、(ii)及び(iii)において、Zはすべて同一でも異なっていても良く、一部が同一であっても良い。
【0030】
R1及びR2はそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基又はアルコキシ基である。
前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基が例示できる。
前記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基が例示できる。
R1及びR2としては、前記アルコキシ基が好ましい。
また、「・」はラジカルであり、構造単位(X)はラジカル部位を有するものである。
【0031】
構造単位(X)は、前記一般式(i)、(ii)及び(iii)で表されるものからなる群から選ばれる少なくとも一種であり、二種以上である場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0032】
本発明において、構造単位(X)は、前記一般式(i)又は(iii)で表されるものが好ましい。
また、前記一般式(i)、(ii)及び(iii)において、Zは前記式(iv)又は前記一般式(vii)で表されるものが好ましい。
【0033】
R3はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基である。すなわち、前記一般式(viii)及び(ix)において、複数のR3はすべて同一でも異なっていても良く、一部が同一であっても良い。
R4はメチル基又は水酸基である。
【0034】
R5及びR6はそれぞれ独立して水素原子又は(メタ)アクリロイル基である。
Aはそれぞれ独立して前記一般式(x)で表される二価の基である。すなわち、前記一般式(viii)及び(ix)において、複数のAはすべて同一でも異なっていても良く、一部が同一であっても良い。
R7は水素原子又はメチル基である。ただし、一般式(x)中の酸素原子は、一般式(viii)及び(ix)中のAに隣接するメチレン基を構成する炭素原子に結合し、一般式(x)中のメチレン基を構成する炭素原子は、一般式(viii)及び(ix)中のAに隣接する酸素原子に結合する。
【0035】
jは0又は1であり、kは0以上の整数であり、lは1以上の整数であり、j+k+lは3である。
o及びpはそれぞれ独立して0又は1であり、m及びrはそれぞれ独立して0以上の整数であり、n及びqはそれぞれ独立して1以上の整数であり、m+n+o及びp+q+rは3である。
aは0〜10の整数であり、0〜6であることが好ましく、0〜3であることがより好ましく、0であることが特に好ましい。
【0036】
構造単位(Y)は、前記一般式(viii)及び(ix)で表されるものからなる群から選ばれる少なくとも一種であり、二種以上である場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0037】
本発明において、構造単位(Y)は、前記一般式(viii)で表されるものが好ましい。
【0038】
本発明において、前記一般式(viii)で表される構造単位(Y)の好ましいものとしては、下記一般式(viii−1)で表されるものが例示できる。そして、前記一般式(ix)で表される構造単位(Y)の好ましいものとしては、下記一般式(ix−1)で表されるものが例示できる。
【0039】
【化9】

(式中、R3、R4、R5、R6、j、k、l、m、n、o、p、q、rはそれぞれ前記と同じである。)
【0040】
本発明のポリラジカル化合物は、化合物(A)、化合物(B)及び触媒(C)を必須成分としてマイケル付加反応を行うことで製造できる。
ここで化合物(A)とは、構造単位(X)のうち、構造単位(Y)との間で結合を形成している炭素原子が、構造単位(Y)に代わり水素原子と結合した化合物であり、下記一般式(i’)、(ii’)又は(iii’)で表される化合物である。そして、マイケル付加反応において求核種として作用する化合物であり、前記水素原子は、マイケル付加反応で活性なものであって、この活性な水素原子が結合している炭素原子又は窒素原子が、前記化合物(B)との反応部位となる。
また、化合物(B)とは、構造単位(Y)のうち、構造単位(X)との間で結合を形成している炭素原子が、構造単位(X)と結合する代わりに、また、該炭素原子に隣接する炭素原子が水素原子と結合する代わりに、これら炭素原子間で二重結合を形成した化合物であり、下記一般式(viii’)又は(ix’)で表される化合物である。そして、前記二重結合は、マイケル付加反応における活性不飽和基であり、化合物(A)との反応部位となる。
【0041】
【化10】

(式中、Z、R3、R4、R5、R6、A、j、k、l、m、n、o、p、q、r、aはそれぞれ前記と同じである。)
【0042】
化合物(A)としては、市販品を使用しても良いし、公知の方法で製造したものを使用しても良い。化合物(A)の製造方法としては、活性な水素原子を有する化合物と、ラジカル部位を有する化合物とを反応させて製造する方法が例示できる。
例えば、前記一般式(i’)又は(ii’)で表される化合物(A)を製造する場合には、ラジカル部位を有する化合物として、前記一般式(i’)又は(ii’)において、カルボニル基に隣接する酸素原子の代わりに水酸基がZに結合したアルコール類又はフェノール類が例示できる。そして、活性な水素原子を有する化合物として、前記一般式(i’)又は(ii’)において、Zの代わりにアルキル基が、カルボニル基に隣接する酸素原子に結合したカルボン酸エステルが例示できる。これらアルコール類又はフェノール類と、カルボン酸エステルとを反応させて、エステル交換反応を行うことで、容易に化合物(A)を製造できる。
【0043】
化合物(B)は、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等、2官能以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物と併用することもできる。
【0044】
触媒(C)としては、マイケル付加反応において通常使用される、エノレートアニオンを生成させるための強塩基やトリアルキルホスフィンが例示できる。
【0045】
前記強塩基の触媒(C)の好ましいものとしては、一つ以上の水素原子がアルキル基又はアリール基で置換されたアンモニア(前記アルキル基又はアリール基は、一つ以上の炭素原子が窒素原子で置換されていても良く、前記アルキル基又はアリール基が相互に結合して環構造を形成していても良い)が例示できる。
【0046】
前記アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状及び環状のいずれでも良いが、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
前記直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基は、炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜8であることがより好ましく、1〜6であることが特に好ましい。より具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が例示できる。
前記環状のアルキル基は、単環構造及び多環構造のいずれでも良いが、炭素数が5〜10であることが好ましく、5〜7であることがより好ましい。より具体的には、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデカニル基等が例示できる。
前記アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
【0047】
前記アリール基は、単環構造及び多環構造のいずれでも良いが、単環構造であることが好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0048】
前記アルキル基又はアリール基は、一つ以上の炭素原子が窒素原子で置換されていても良い。置換されている窒素原子の数は、1〜3であることが好ましく、1又は2であることがより好ましい。
【0049】
前記アルキル基又はアリール基は、相互に結合して環構造を形成していても良い。ここで、環構造を形成するとは、アルキル基又はアリール基の炭素原子同士の間で結合を形成し、前記アンモニアの窒素原子と共に環構造を形成することを指す。また、前記アルキル基又はアリール基の一つ以上の炭素原子が窒素原子で置換されている場合には、この置換されている窒素原子が環構造を形成していても良い。
前記強塩基の触媒(C)は、二つの前記アルキル基又はアリール基が環構造を形成した単環構造でも良いし、三つの前記アルキル基又はアリール基が環構造を形成した多環構造でも良い。
【0050】
水素原子を置換している前記アルキル基又はアリール基が複数である場合、これらアルキル基又はアリール基は、すべて同一でも異なっていても良く、一部が同一でも良い。
また、水素原子を置換している前記アルキル基又はアリール基の総数は、3であることが好ましい。
【0051】
本発明においては、一つ以上の水素原子がアルキル基又はアリール基で置換されたアンモニアとしては、一つ以上の水素原子がアルキル基で置換されたアンモニアが好ましい。なかでもより好ましいものとしては、ジアザビシクロオクタン等の第3級アミン;テトラメチルグアニジン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン等のグアニジン又はアミジン類等が例示できる。
【0052】
さらに、前記強塩基の触媒(C)の好ましいものとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化合物;ナトリウムメトキサイド、カリウムエトキサイド等のアルカリ金属アルコキサイド;テトラブチルアンモニウムヒドロキサイド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキサイド等の第4級アンモニウムヒドロキサイド;テトラブチルアンモニウムカーボネート、ベンジルトリメチルアンモニウムカーボネート等の第4級アンモニウムカーボネートも例示できる。
【0053】
さらに、前記強塩基の触媒(C)としては、テトラブチルアンモニウムフロライド、ベンジルトリメチルアンモニウムフロライド及びこれらのフッ素がテトラヒドロボレートに置換されたもの等、カウンターアニオンがフッ素又はテトラヒドロボレートである第4級アンモニウム塩等も使用できる。
【0054】
触媒(C)としては、第三級アミン、イミダゾール化合物又はジアザビシクロ化合物が好ましい。そして、これらのなかでも、エステルの加水分解性の抑制等の観点から、下記式(15)で表される1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン、下記式(16)で表される1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン、又は下記式(17)で表されるテトラメチルグアニジンがより好ましい。
【0055】
【化11】

【0056】
前記トリアルキルホスフィンの触媒(C)としては、公知のものが使用できるが、炭素数5〜20の直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基を有するものが好ましい。
前記トリアルキルホスフィンにおける三つのアルキル基は、すべて同一でも良いし、すべて異なっていても良く、二つが同一でも良い。
前記トリアルキルホスフィンの触媒(C)としては、好ましいものとして、トリシクロペンチルホスフィン、トリス(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ−n−ヘキシルホスフィン、トリス(2−エチルヘキシル)ホスフィン、トリ−n−オクチルホスフィン、トリ−n−デシルホスフィン、トリ−n−ドデシルホスフィン、トリステアリルホスフィン等が例示できる。これらの中でも、トリシクロヘキシルホスフィン、トリ−n−オクチルホスフィン、トリ−n−ドデシルホスフィンが特に好ましい。
【0057】
触媒(C)は一種を単独で使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率は、目的に応じて任意に選択できる。
【0058】
本発明においては、化合物(A)中の活性な水素原子と、化合物(B)中の活性不飽和基との比率は、目的に応じて任意に設定できる。例えば、ポリラジカル化合物(硬化物)の可撓性、耐溶媒性及び硬度等の諸特性は、架橋密度に依存するので、用途に応じて所望の架橋密度とすることで、容易に調整できる。したがって、化合物(A)及び化合物(B)の使用比率は、活性な水素原子及び活性不飽和基の数を考慮して、適宜調整すれば良い。
なかでも本発明においては、化合物(A)中の活性な水素原子二つあたりの、化合物(B)中の活性不飽和基の数が、好ましくは1/5〜5、より好ましくは1/3〜3となるように、化合物(A)及び化合物(B)の使用比率を調整することが好ましい。
【0059】
触媒(C)は、化合物(A)、化合物(B)及び触媒(C)を含有する、マイケル付加反応し得る組成物(硬化性組成物)中の含有量が0.05〜5.0質量%であることが好ましく、0.5〜2.0質量%であることがより好ましい。触媒(C)の使用量は、マイケル付加反応の反応速度(硬化速度)及びポットライフを考慮し、適宜調節できる。
なお、本明細書においては、触媒(C)の存在下、化合物(A)及び化合物(B)を反応させてなる硬化物である化合物を「ポリラジカル化合物」と称し、化合物(A)、化合物(B)及び触媒(C)等を混合した、マイケル付加反応し得る組成物、すなわち反応(硬化)前の組成物を「硬化性組成物」と称する。
【0060】
本発明のポリラジカル化合物は、例えば、各成分を均一に混合するか又は溶解させ、反応させることによって製造できる。反応は、室温又は加熱下で行うことが好ましい。
好ましい反応方法としては、室温で所定時間反応させ、次いで加熱下でさらに所定時間反応させる方法が例示できる。なかでも、室温での反応は、15〜30℃で0.5〜6時間行うことが好ましく、18〜25℃で1〜4時間行うことがより好ましい。そして、加熱下での反応は、60〜100℃で0.5〜6時間行うことが好ましく、70〜90℃で1〜4時間行うことがより好ましい。
反応は、溶媒共存下で行うことが好ましい。この時の溶媒は、化合物(A)、化合物(B)等の反応に必要な各成分と反応しないものから適宜選択すれば良い。好ましい反応溶媒として具体的には、n−ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン等の脂肪族又は芳香族系炭化水素;クロロホルム等のハロゲン系炭化水素;酢酸エチル等のエステル類;エタノール等のアルコール類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類等が例示できる。
【0061】
前記硬化性組成物は、例えば、蓄電材料である電池の電極活物質層の形成に特に有用であり、アルミニウム箔等の金属、ITO等の透明導電性電極を有するガラス、プラスチック及び紙等の様々な基板上に、塗工して硬化させることもできる。
【0062】
電極活物質層の形成時には、後述するいずれの方法においても、硬化性組成物中に、フィラー、流動化剤(flow agent)、湿潤剤、滑剤、脱ガス剤、脱気剤、柔軟剤、溶媒等の公知の添加剤を含有させても良い。
【0063】
前記溶媒の好ましいものとしては、反応溶媒として先に例示したものが挙げられる。
【0064】
本発明のポリラジカル化合物は、電池の電極活物質として有用であり、薄層タイプで高い電池容量が得られ、各種電子機器の小型軽量化に好適な電池の電極用材料として有用である。また、正極及び負極の一方の電極、又は両方の電極における電極活物質として使用できる。
【0065】
電極活物質層は、公知の方法で形成できる。例えば、前記ポリラジカル化合物を分散させ、集電体上に塗布して乾燥する方法が例示できる。
【0066】
電極活物質層は、硬化性組成物から集電体上に直接塗膜として形成することもできる。この場合、均一に混合又は溶解させた硬化性組成物を集電体上に塗布し、これを硬化させる方法が例示できる。硬化は、室温又は加熱下で行うことが好ましい。
加熱下での硬化は、60〜100℃で0.5〜18時間行うことが好ましく、70〜90℃で1〜16時間行うことがより好ましい。反応させる成分によっては、このように加熱硬化させた後、さらに、昇温して硬化を行っても良く、この場合、100〜140℃で0.5〜6時間行うことが好ましく、110〜130℃で1〜4時間行うことがより好ましい。また、加熱下での硬化の前に、あらかじめ室温で硬化を行っても良く、この場合、15〜30℃で12〜36時間行うことが好ましく、18〜25℃で18〜30時間行うことがより好ましい。
【0067】
電極活物質層を、硬化性組成物から集電体上に直接塗膜として形成する場合には、触媒(C)を化合物(A)中に溶解させ、次いでこれを塗工する前に、さらに化合物(B)を添加して混合するのが好ましい。この方法により、触媒が局部的に高濃度になるのを避けることができる。また、この方法では、硬化性組成物のポットライフが高められ、塗工性が良好になるという利点がある。さらに、ポリラジカル化合物の製造から塗工までの工程をまとめて行うことができるので、工程を大幅に簡略化できる点で、特に好ましい。
【0068】
電極活物質層を形成する場合、本発明のポリラジカル化合物は、単独で使用しても良いし、他の電極活物質と併用しても良い。そして、本発明のポリラジカル化合物は、一種を使用しても良いし、二種以上を併用しても良い。他の電極活物質と併用する場合には、本発明のポリラジカル化合物の電極活物質総量中の含有量は、10〜90質量%であることが好ましく、20〜80質量%であることがより好ましい。
【0069】
本発明のポリラジカル化合物を正極に用いる場合、併用する他の電極活物質としては、金属酸化物、ジスルフィド化合物、他の安定ラジカル化合物、導電性高分子等が例示できる。
前記金属酸化物としては、LiMnO、LiMn(0<x<2)等のマンガン酸リチウム又はスピネル構造を有するマンガン酸リチウム;MnO;LiCoO;LiNiO;LiyV(0<y<2);オリビン系材料であるLiFePO;スピネル構造中のMnの一部を他の遷移金属で置換した材料であるLiNi0.5Mn1.5、LiCr0.5Mn1.5、LiCo0.5Mn1.5、LiCoMnO、LiNi0.5Mn0.5、LiNi0.33Mn0,33Co0.33、LiNi0.8Co0.2、LiN0.5Mn1.5−zTizO(0<z<1.5)等が例示できる。
【0070】
前記ジスルフィド化合物としては、ジチオグリコール、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾール、S−トリアジン−2,4,6−トリチオール等が例示できる。
【0071】
前記他の安定ラジカル化合物としては、2,2−ジフェニルピクリル−1−ヒドラジル、ガルビノキシル等が例示できる。
【0072】
前記導電性高分子としては、ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリアニリン、ポリピロール等が例示できる。
【0073】
これらの中でも、併用する他の電極活物質としては、マンガン酸リチウム又はLiCoOが好ましい。
併用する他の電極活物質は、一種でも良いし、二種以上でも良い。
【0074】
本発明のポリラジカル化合物を負極に用いる場合、併用する他の電極活物質としては、グラファイト、非晶質カーボン、金属リチウム、リチウム合金、導電性高分子等が例示できる。また、他の安定ラジカル化合物を併用しても良い。
前記他の電極活物質の形状は特に限定されず、例えば、金属リチウムでれば薄膜状、バルク状、粉末を固めたもの、繊維状、フレーク状等が例示できる。
前記他の電極活物質としては、金属リチウム又はグラファイトが好ましい。
併用する他の電極活物質は、一種でも良いし、二種以上でも良い。
【0075】
電極活物質層の形成時には、硬化性組成物中に導電付与剤を併用することもできる。
前記導電付与剤としては、活性炭、グラファイト、カーボンブラック、アセチレンブラック、炭素繊維等の炭素材料;ポリアセチレン、ポリフェニレン、ポリアニリン、ポリピロール等の導電性高分子が例示できる。これらのなかでも、炭素繊維が好ましい。さらに炭素繊維としては、50nmから300nmの平均繊維径を有するものが好ましい。
【0076】
電極活物質層の形成時には、硬化性組成物中に電極の各構成材料間の結びつきを強めるために、結着剤を併用することもできる。
前記結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ビニリデンフロライド−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフロライド−テトラフルオロエチレン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイミド、各種ポリウレタン等の樹脂バインダが例示できる。
結着剤は、単独で使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。
電極中の結着剤の含有量は、5〜30質量%であることが好ましい。
【0077】
本発明のポリラジカル化合物を二次電池用の電極活物質として用いる場合には、電極反応をより円滑に行うために、酸化還元反応の進行を促進する触媒を用いることもできる。
前記触媒としては、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリアセン等の導電性高分子;ピリジン誘導体、ピロリドン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、アクリジン誘導体等の塩基性化合物;金属イオン錯体等が例示できる。
触媒は、単独で使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。
電極中の触媒の含有量は、10質量%以下であることが好ましい。
【0078】
負極集電体、正極集電体としては、ニッケル、アルミニウム、銅、金、銀、アルミニウム合金、ステンレス、炭素等からなる箔、金属平板、メッシュ状等の形状のものを使用できる。なかでも、電位的な安定性より、正極の集電体としてはアルミ箔が、負極の集電体としては銅箔が好ましい。
また、集電体に触媒効果を付与したり、電極活物質と集電体とを化学結合させたりしても良い。
【0079】
一方、前記正極及び負極が接触しないように、ポリエチレン、ポリプロピレン等からなる多孔質フィルムや不織布等のセパレータも使用できる。
【0080】
本発明のポリラジカル化合物を二次電池用の電極活物質に用いる場合には、電解質は、負極と正極の両極間の荷電担体輸送を行うものであり、通常は20℃で10−5〜10−1S/cmのイオン伝導性を有していることが好ましい。
前記電解質としては、例えば、電解質塩を溶剤に溶解した電解液を利用できる。
前記電解質塩としては、LiPF、LiClO、LiBF、LiCFSO、Li(CFSON、Li(CSON、Li(CFSOC、Li(CSOC等が例示できる。これら電解質塩は、単独で使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0081】
また、電解液の作製に用いる溶剤としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン、スルホラン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン等の有機溶媒が例示できる。これら溶剤は、単独で使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0082】
さらに、前記電解質としては、固体電解質も使用できる。
固体電解質として使用する高分子化合物としては、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−モノフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−トリフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン−テトラフルオロエチレン三元共重合体等のフッ化ビニリデン系重合体;アクリロニトリル−メチルメタクリレート共重合体、アクリロニトリル−メチル(メタ)アクリレート共重合体、アクリロニトリル−エチル(メタ)アクリレート共重合体、アクリロニトリル−エチル(メタ)アクリレート共重合体、アクリロニトリル−(メタ)アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−(メタ)アクリル酸共重合体、アクリロニトリル−ビニルアセテート共重合体等のアクリロニトリル系重合体;ポリエチレンオキサイド、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、これらの(メタ)アクリレート体やメタクリレート体の重合体等が例示できる。
これらの固体電解質は、電解液を含有させ、ゲル状にして使用しても良いし、前記電解質塩を併用しても良い。
【0083】
電極の作製方法は特に限定されず、使用する材料に応じて適宜選択できる。例えば、ポリラジカル化合物を分散、塗布して電極活物質層を形成する場合には、ポリラジカル化合物を実質的に溶解しない又は膨潤させない溶媒(媒体)に混合して分散させることにより分散体とし、この時のポリラジカル化合物の平均粒径を2〜25μmの範囲とすることが好ましい。ここで、分散方法としては、例えば、ビーズミル、ロールミル又はニーダー等を利用する方法が例示できる。これらのなかでも、ビーズミルを利用する方法が好ましい。
【0084】
ポリラジカル化合物の分散体である電極スラリーを作製し易くするために、増粘剤を用いることもできる。
前記増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ヒドロキシエチル、ポリアクリル酸アンモニウム、ポリアクリル酸ソーダ等が例示できる。
増粘剤は、単独で使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。
電極中の増粘剤の含有量は、0.1〜5質量%であることが好ましい。
【0085】
電極の作製方法としては、電極活物質としてポリラジカル化合物自体を用いて作製する方法と、前記集電体上に、ポリラジカル化合物を形成する硬化性組成物を直接塗布して硬化させる方法が例示できる。なお、いずれの方法においても、化合物(B)を、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等、2官能以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物と併用しても電極を作製できる。
【0086】
電極活物質としてポリラジカル化合物自体を用いて作製する場合には、ポリラジカル化合物の前記分散体を含有する分散液に導電付与材を混合して電極形成用インキとし、これを電極集電体上に塗布し、加熱又は常温で溶媒を揮発させることにより、電極を得る方法が好ましい。ここで使用する、ポリラジカル化合物を実質的に溶解しない又は膨潤させない溶媒(媒体)としては、水が好ましい。ポリラジカル化合物と導電付与剤との質量比(導電付与剤に対するポリラジカル化合物の質量比、ポリラジカル化合物/導電付与剤)は、1.5〜18であることが好ましく、2〜13であることがより好ましい。
【0087】
前記集電体上に、ポリラジカル化合物を形成する硬化性組成物を直接塗布して硬化させる場合には、正極又は負極の作製に適用する方式は特に限定されないが、好ましいものとして印刷方式又は塗工方式が例示できる。より具体的には、スクリーン印刷方式、ロータリースクリーン印刷方式、グラビア印刷方式、グラビアオフセット印刷方式、フレキソ印刷方式、ダイコート法、キャップコート法、ロールコート法等が例示できる。
【0088】
本発明のポリラジカル化合物を電極活物質として用いた二次電池において、その形状は特に限定されない。電池形状として具体的には、電極積層体;巻回体を金属ケース、樹脂ケース又はアルミニウム箔等の金属箔と合成樹脂フィルムとからなるラミネートフィルム等によって封止したもの等が例示でき、円筒型、角型、コイン型、シート型等とすることができる。
【0089】
また、電極を対極、セパレータを挟んで積層又は巻回して外装体で包み、電解液を注入して封止する等の方法も例示できる。
【0090】
本発明のポリラジカル化合物を電極活物質として用いた二次電池において、電極からのリードの取り出し、外装等のその他の製造条件は特に限定されない。
【0091】
本発明のポリラジカル化合物は、電池の電極用材料だけでなく、有機太陽電池、有機メモリ用材料、電磁波吸収剤、酸化還元触媒、酸化防止剤、アクチュエーター等への適用にも好適である。
【実施例】
【0092】
以下、本発明の詳細について、実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0093】
[製造例1]
(原料の製造)
下記式(10)で表される2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル アセトアセテートを、以下のように合成した。
【0094】
【化12】

【0095】
4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル8.61g(50mmol)をトルエン中、tert−ブチルアセトアセテート7.91g(50mmol)と反応させた。100℃で15時間撹拌後、減圧下でトルエンを除き、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒アセトン/石油エーテル=1/3)で精製し、式(1)で示される化合物を製造した(収量9.22g、収率72%)。
【0096】
得られた2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル アセトアセテートのNMRは、式(10)で示されるラジカル体をアセトンに溶解し、2当量のL−アスコルビン酸を加えて室温で30分撹拌し(溶液の橙色が消色し、無色透明となる)、得られた透明溶液を濃縮し、アスコルビン酸をろ別し、ろ液からヒドロキシルアミン体を得、ヒドロキシルアミン体として測定及び同定した。
1H−NMR (500MHz、CDCl3、ヒドロキシルアミン体);δ(ppm): 5.18 (m, 1H, COOCH), 3.45 (s, 2H, COCH2CO), 2.29 (s, 3H, COCH3), 1.97 (d, 2H, CH2), 1.58 (d, 2H, CH2), 1.26 (d, 12H, CH3)。13C−NMR (500MHz、CDCl3、ヒドロキシルアミン体) δ(ppm);207.0 (COCH3), 166.6 (CH2CO), 70.0 (OCHCH2), 67.5 (COCH2CO), 60.4 (NC(CH3)2), 43.3 (OCHCH2),31.0 (C(CH3)2), 30.3 (COCH3), 20.5 (C(CH3)2)。
【0097】
得られたポリラジカル化合物の質量分析、元素分析及びESR測定結果を以下に示す。
質量分析(m/z): [M+1] : 256; 計算値 256.15
元素分析値(Found): C, 60.9; H 8.6 N, 5.5%.理論値(Calcd): C, 60.9; H 8.6 N, 5.5%
ESRシグナルg=2.0062積分値よりラジカルの定量的な保持を確認した。
【0098】
[実施例1]
(ポリラジカル化合物の製造(1))
ポリラジカル化合物を、以下の手順で熱硬化により製造した。
【0099】
製造例1で製造した2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル アセトアセテート500mg及びトリメチロールプロパントリアクリレート385mgのトルエン溶液に、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン9mgのトルエン溶液を、室温下で撹拌しながら、10分間で添加した。室温で2時間撹拌した後、80℃に昇温し、2時間反応を継続した。冷却後析出物をろ別、乾燥して、下記反応式(III)で表わされる反応の生成物であるポリラジカル化合物を製造した(収量840mg、収量95%)。
【0100】
【化13】

【0101】
得られたポリラジカル化合物の元素分析値は下記の通りであり、理論値とほぼ一致した。
元素分析値(Found): C, 60.9; H 7.9 N; 2.3%, 理論値(Calcd): C, 60.7; H 7.8 N; 2.5%
【0102】
FT−IRスペクトルを図1に示した。SQUID帯磁率測定により、ラジカルの定量的な保持を確認した。硬化物をアセトン中に3日間浸漬し、浸漬前後の乾燥重量を測定して求めたゲル分率は99%であった。
【0103】
[実施例2]
(ポリラジカル化合物の塗膜の製造(1))
ポリラジカル化合物の薄膜を、以下の手順により集電体基板上に形成した。
製造例1で製造した2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル アセトアセテート500mg、トリメチロールプロパントリアクリレート385mg及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン9mgを混合した硬化性組成物を、バーコーター(番手#3)でグラッシーカーボン電極基板(ニラコ社製 GC−20S)上に塗布した。そして、24時間静置し、80℃で2時間加熱して硬化させ、前記反応式(III)で表わされる反応の生成物であるポリラジカル化合物の薄膜を製造した(質量2.8mg、塗布面積2cm)。
【0104】
得られたポリラジカル化合物の薄膜のFT−IRスペクトルの経時変化を図2に示す。C=C二重結合の伸縮振動を示す1650cm−1のシグナルは、時間の経過とともに減少し、24時間後のC=C二重結合の転化率は88%であった(図2挿入図)。
元素分析値は下記の通りであり、理論値とほぼ一致した。
元素分析値(Found): C, 60.9; H 7.9 N; 2.3%, 理論値(Calcd): C, 60.7; H 7.8 N; 2.5%
【0105】
SQUID帯磁率測定により、ラジカルの定量的な保持を確認した。硬化物をアセトン中に3日間浸漬し、浸漬前後の乾燥重量を測定して求めたゲル分率は99%であった。動的粘弾性測定から、Tgは58℃、架橋密度は0.52mMであった。また、硬化物をアセトニトリル中に3日間浸漬して求めた膨潤度(膨潤ゲル体積/乾燥ゲル体積)は2.7であり、電解液に対する高い膨潤性を示した。
【0106】
グラッシーカーボン電極基板上に形成した薄膜の電気化学応答を、サイクリックボルタンメトリーにより測定した。より具体的には、過塩素酸テトラブチルアンモニウムを支持電解質として、アセトニトリル溶液中において、薄膜を形成したグラッシーカーボン電極を作用極、白金メッシュ電極を対極、Ag/AgClを参照極として、得られた薄膜について、0〜1.5V vs.Ag/AgClの範囲を1mV/sの掃引速度で測定した。グラッシーカーボン電極の凹凸表面へのアンカー効果により、高い膨潤度にもかかわらず硬化膜の剥離は見られなかった。その結果、アノード側0.75Vに酸化還元波が現れ、繰り返し掃引してもピーク電流値は減少せず、極めて安定であった。サイクリックボルタモグラムの積分値から算出した酸化還元容量は46mAh/gであった。すべてのラジカルが充放電に関与した場合の充放電容量密度は59mAh/gであるため、充放電に関与したラジカルの割合は78%であった。
以上より、ポリラジカル化合物の薄膜は、優れた充放電特性を示し、二次電池の正極として機能することが確認できた。
【0107】
[実施例3]
(ポリラジカル化合物の製造(2))
トリメチロールプロパントリアクリレート385mgの代わりに、ペンタエリスリトールテトラアクリレート458mgを用いたこと以外は、実施例1と同様に反応及び処理を行い、下記反応式(IV)で表わされる反応の生成物であるポリラジカル化合物を製造した(収量928g、収量96%)。
【0108】
【化14】

【0109】
得られたポリラジカル化合物のFT−IRスペクトルを図3に示す。
元素分析値は下記の通りであり、理論値とほぼ一致した。
元素分析値(Found): C, 59.5; H 7.5 N; 3.1%, 理論値(Calcd): C, 59.7; H 7.5 N; 3.2%
【0110】
得られたポリラジカル化合物をアセトン中に3日間浸漬し、浸漬前後の乾燥重量を測定して求めたゲル分率は99%であった。動的粘弾性測定から、Tgは71℃、架橋密度は0.82Mであった。
【0111】
[実施例4]
(ポリラジカル化合物の製造(3))
4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル171mg、ペンタエリスリトールテトラアクリレート198mg及び塩化マグネシウム3.5mgを混合した硬化性組成物を、実施例2と同様の方法で、80℃で12時間加熱し、次いで120℃で2時間加熱して硬化させ、下記反応式(VI)で表わされる反応の生成物であるポリラジカル化合物を製造した。
【0112】
【化15】

【0113】
得られたポリラジカル化合物のFT−IRスペクトルを図4に示す。
元素分析値は下記の通りであり、理論値とほぼ一致した。
元素分析値(Found): C, 61.5; H 8.9 N; 7.1%, 理論値(Calcd): C, 61.9; H 8.8 N; 7.6%.
【0114】
測定セルのサイクリックボルタモグラムの積分値から算出した、ポリラジカル化合物の酸化還元容量は58mAh/gであった。すべてのラジカルが充放電に関与した場合の充放電容量密度は73mAh/gであるため、充放電に関与したラジカルの割合は85%であった。
【0115】
[実施例5]
(ポリラジカル化合物の塗膜の製造(2))
製造例1で得られた2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル アセトアセテート500mg、トリメチロールプロパントリアクリレート385mg及び1,8−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン9mgを混合した硬化性組成物から、実施例2と同様の方法で薄膜電極を製造した。
実施例2と同様の方法で測定セルを作製し、薄膜電極の電気化学応答をサイクリックボルタンメトリーにより測定した。測定セルのサイクリックボルタモグラムの積分値から算出した酸化還元容量は48mAh/gであった。すべてのラジカルが充放電に関与した場合の充放電容量密度は59mAh/gであるため、充放電に関与したラジカルの割合は81%であった。
以上より、ポリラジカル化合物の薄膜は、優れた充放電特性を示し、二次電池の正極として機能することが確認できた。
【0116】
[実施例6]
(ポリラジカル化合物の塗膜の製造(3))
製造例1で得られた2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル アセトアセテート500mg、トリメチロールプロパントリアクリレート385mg及びテトラメチルグアニジン9mgを混合した硬化性組成物から、実施例2と同様の方法で薄膜電極を製造した。
実施例2と同様の方法で測定セルを作製し、薄膜電極の電気化学応答をサイクリックボルタンメトリーにより測定した。測定セルのサイクリックボルタモグラムの積分値から算出した酸化還元容量は51mAh/gであった。すべてのラジカルが充放電に関与した場合の充放電容量密度は59mAh/gであるため、充放電に関与したラジカルの割合は86%であった。
以上より、ポリラジカル化合物の薄膜は、優れた充放電特性を示し、二次電池の正極として機能することが確認できた。
【0117】
[実施例7]
(ポリラジカル化合物の塗膜の製造(4))
4−(ビス(4−メトキシフェニル)アミノ)ベンジル アセトアセテート200mgとトリメチロールプロパントリアクリレート94mgを混合し、50℃で撹拌して溶解させ、室温に戻し、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン6mgを混合した硬化性組成物から、実施例2と同様の方法で、下記反応式(VII)で表わされる反応の生成物であるポリラジカル化合物の薄膜を製造した。
【0118】
【化16】

【0119】
測定セルのサイクリックボルタモグラムの積分値から算出した酸化還元容量は、31mAh/gであった。すべてのラジカルが充放電に関与した場合の充放電容量密度は、43mAh/gであるため、充放電に関与したラジカルの割合は72%であった。
以上より、ポリラジカル化合物の薄膜は、優れた充放電特性を示し、二次電池の正極として機能することが確認できた。
【0120】
[実施例8]
(ポリラジカル化合物の塗膜の製造(5))
製造例1で得られた2、2、6、6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル アセトアセテート500mg、トリメチロールプロパントリアクリレート385mg、トルエン0.85mL及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン9mgを混合した硬化性組成物に、炭素フェルト電極(日本カーボン社製、GF−20、10×10×2mm)を10秒間浸漬して引き上げた。24時間静置し、80℃で2時間加熱して硬化させた(薄膜質量23.2mg/フェルト質量23.5mg)。
得られた薄膜の電気化学応答を、サイクリックボルタンメトリーにより測定した。より具体的には、過塩素酸テトラブチルアンモニウムを支持電解質としてアセトニトリル溶液中において、薄膜を作製した炭素フェルト電極を作用極、炭素フェルト電極を対極、Ag/AgClを参照極として、得られた薄膜について、0〜1.5V vs.Ag/AgClの範囲を1mV/sの掃引速度で測定した。その結果、アノード側0.75Vに酸化還元波が現れ、繰り返し掃引してもピーク電流値は減少せず、極めて安定であった。サイクリックボルタモグラムの積分値から算出した酸化還元容量は49mAh/gであった。すべてのラジカルが充放電に関与した場合の充放電容量密度は59mAh/gであるため、充放電に関与したラジカルの割合は83%であった。
以上より、ポリラジカル化合物の薄膜は、優れた充放電特性を示し、二次電池の正極として機能することが確認できた。
【0121】
[実施例9]
(ポリラジカル化合物の塗膜の製造(6))
製造例1で得られた2、2、6、6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル アセトアセテート256mg、ペンタエリスリトールテトラアクリレート176mg及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン5mgを混合した硬化性組成物を、実施例2と同様の方法で硬化し、薄膜電極を形成した。
得られたポリラジカル化合物の薄膜のFT−IRスペクトルを図5に示す。
実施例2と同様の方法で測定セルを作製し、薄膜電極の電気化学応答をサイクリックボルタンメトリーにより測定した。測定セルのサイクリックボルタモグラムの積分値から算出した酸化還元容量は53mAh/gであった。すべてのラジカルが充放電に関与した場合の充放電容量密度は62mAh/gであるため、充放電に関与したラジカルの割合は85%であった。
以上より、ポリラジカル化合物の薄膜は、優れた充放電特性を示し、二次電池の正極として機能することが確認できた。
【0122】
[参考例1]
(ポリラジカル化合物の塗膜の製造)
製造例1で得られた2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル アセトアセテート200mg、トリメチロールプロパントリアクリレート77mg、ブタンジオールジアクリレート77mg及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン 3.5mgを混合した硬化性組成物を、実施例2と同様の方法でグラッシーカーボン電極基板(ニラコ社製、GC−20S)上に塗布して硬化させ、下記反応式(V)で表わされる反応の生成物であるポリラジカル化合物の薄膜を製造した。
【0123】
【化17】

【0124】
得られたポリラジカル化合物の薄膜のFT−IRスペクトルを図6に示す。
元素分析値は下記の通りであり、理論値とほぼ一致した。
元素分析値(Found): C, 60.2; H 7.9 N; 3.1%, 理論値(Calcd): C, 60.8; H 7.9 N; 3.0%.
【0125】
実施例2と同様の方法で測定セルを作製し、薄膜電極の電気化学応答をサイクリックボルタンメトリーにより測定した。測定セルのサイクリックボルタモグラムの積分値から算出した酸化還元容量は45mAh/gであった。すべてのラジカルが充放電に関与した場合の充放電容量密度は59mAh/gであるため、充放電に関与したラジカルの割合は77%であった。
以上より、ポリラジカル化合物の薄膜は、優れた充放電特性を示し、二次電池の正極として機能することが確認できた。
【0126】
[比較例1]
下記式(18)で示される4−メタクロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル−4−イル 240mg(1.00mmol)を、エタノ−ル中、アゾビスイソブチロニトリル8.2mg(0.05mmol)を開始剤として、70℃で二時間攪拌し、ラジカル重合を試みた。しかし、重合体は全く得られなかった。
【0127】
【化18】

【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明は、二次電池の電極活物質等に利用可能である。また、有機太陽電池、有機メモリ用材料、電磁波吸収剤、酸化還元触媒、酸化防止剤、アクチュエーター等への利用にも好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(i)、(ii)及び(iii)からなる群から選ばれる少なくとも一種で表される構造単位(X)と、下記一般式(viii)及び(ix)からなる群から選ばれる少なくとも一種で表される3〜6価の基である構造単位(Y)とが、化学的に結合していることを特徴とするポリラジカル化合物。
【化1】

(式中、Zはそれぞれ独立して下記式(iv)、(v)及び(vi)並びに一般式(vii)からなる群から選ばれる一種で表される1価の基である。)
【化2】

(式中、R1及びR2はそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキル基又はアルコキシ基であり;・はラジカルである。)
【化3】

(式中、R3はそれぞれ独立して水素原子又はメチル基であり;R4はメチル基又は水酸基であり;R5及びR6はそれぞれ独立して水素原子又は(メタ)アクリロイル基であり;Aはそれぞれ独立して下記一般式(x)で表される二価の基であり;jは0又は1であり、kは0以上の整数であり、lは1以上の整数であり、j+k+lは3であり;o及びpはそれぞれ独立して0又は1であり、m及びrはそれぞれ独立して0以上の整数であり、n及びqはそれぞれ独立して1以上の整数であり、m+n+o及びp+q+rは3であり;aは0〜10の整数である。)
【化4】

(式中、R7は水素原子又はメチル基であり、ただし、一般式(x)中の酸素原子は一般式(viii)及び(ix)中のAに隣接するメチレン基を構成する炭素原子に結合する。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−74316(P2011−74316A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229789(P2009−229789)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(899000068)学校法人早稲田大学 (602)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】