説明

ポリ乳酸繊維構造物

【課題】アイロン耐熱性および耐加水分解性に優れた衣料用として展開可能なポリ乳酸繊維構造物を汎用的に提供する。
【解決手段】ポリL−乳酸とポリD−乳酸の重量割合が30:70〜70:30であって、該ポリL−乳酸および/またはポリD−乳酸のカルボキシル基末端の少なくとも一部が末端封鎖剤により封鎖されているポリ乳酸繊維を少なくとも一部に用いてなる繊維構造物であり、該繊維構造物のJISL−1057アイロン収縮試験におけるアイロンアタリ発生が140℃以上であることを特徴とするポリ乳酸含有繊維構造物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実用的耐熱性および耐加水分解性を有するポリ乳酸繊維構造物に関する。更に詳しくは、パッド・スチーム法またはサーモゾル法で染色されたポリ乳酸繊維のアイロンアタリ発生が140℃以上であり、耐熱性および耐加水分解性に優れているポリ乳酸繊維構造物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の目的から、自然環境下で分解される生分解性ポリマーが注目され、世界中で研究されている。ポリ乳酸は、その原料である乳酸あるいはラクチドが、天然物から製造することができるので、単なる生分解性ポリマーとしてではなく、地球環境に配慮した汎用性ポリマーとして利用も検討されている。ポリ乳酸は室温や高温の水中における加水分解性が非常に高く、さらには空気中の水分によっても分解されるという性質を持っている。このため、熱水の存在下、高温、高湿度条件化で分解による強度低下が著しいため、使用が制限されてきた。
【0003】
衣料用繊維の大部分は染色加工工程中、熱水処理やアルカリ処理が不可欠である。これらの処理は、ポリ乳酸繊維全体の強力低下をもたらすため、用途展開に対して大きな障害となってきた。
【0004】
これらを解決する手段として、カルボキシル基末端を封鎖する特開2001−261797号広報、特開2002−30208号広報が開示されている。しかしながら、これらの方法は得られた繊維構造物の耐熱性に問題があった。
ポリ乳酸の耐熱性を上げるために、結晶核剤を添加する方法が特開2008−050583号公報などに開示されている。しかし、製糸工程や延伸工程で問題が発生し、実用的なポリ乳酸繊維は得られなかった。
ポリ乳酸を芯部に用い、鞘部に融点が200℃以上の結晶性ポリエステルや熱可塑性ポリアミド樹脂を用いた芯鞘複合繊維にして耐熱性を向上させる技術が特許第4487563号広報、特開2007−169849号広報に開示されているが、単独糸ではない。
ポリ乳酸繊維の染色方法は、分散染料により高温(100℃〜130℃)で処理する手法が知られている。この公知技術としては、特許第3731432号広報や特開2003−49374が知られている。しかし、ポリ乳酸の末端カルボキシル基は、130℃近傍の熱水中や高温多湿の環境下において遊離プロトンを発生する。熱水中の高温、高圧下ではこの遊離プロトンが触媒として作用するために、加水分解が促進されるという問題があった。また、ポリ乳酸は、融点が約170℃前後と低く、熱により軟化、溶融する性質を持つため、高温、高圧下のロープ状態で染色する液流染色機ではタテ方向に不均一な張力がかかり、ロープ状のシワ欠点が多数発生し、布帛の表面品位を悪化するという問題点があった。発色性は向上することはできるが、実用耐熱性に欠け、品位的にも衣料用繊維構造物としては必ずしも望ましいものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−261797号広報
【特許文献2】特開2002−30208号広報
【特許文献3】特開2008−50583号公報
【特許文献4】特許第4487563号広報
【特許文献5】特開2007−169849号広報
【特許文献6】特許第3731432号公報
【特許文献7】特開2003−49374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上記の問題点を克服し、アイロン耐熱性および耐加水分解性に優れた衣料用として展開可能なポリ乳酸繊維構造物を汎用的に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、次のような構成を有する。
(1) ポリL−乳酸とポリD−乳酸の重量割合が30:70〜70:30であって、該ポリL−乳酸および/またはポリD−乳酸のカルボキシル基末端の少なくとも一部が末端封鎖剤により封鎖されているポリ乳酸繊維を少なくとも一部に用いてなる繊維構造物であり、該繊維構造物のJIS L−1057 アイロン収縮試験におけるアイロンアタリ発生が140℃以上であることを特徴とするポリ乳酸含有繊維構造物。
(2) 該繊維構造物が、95℃〜105℃のスチーム条件で染色されていることを特徴とする上記(1)に記載のポリ乳酸含有繊維構造物
(3) 該繊維構造物が、130℃〜170℃の乾熱条件で染色されていることを特徴とする上記(1)に記載のポリ乳酸含有繊維構造物
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、実用的耐熱性を有するポリ乳酸繊維構造物を提供することができる。また、得られたポリ乳酸繊維構造物は、耐加水分解性および堅牢性、風合いにも優れているため、シャツ地等の衣料用途に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明を実施するための形態につき詳細に説明する。
【0010】
本発明のポリ乳酸繊維はポリL−乳酸とポリD−乳酸とのブレンド物からなることを特徴とする。
【0011】
本発明のポリ乳酸繊維に用いるポリL−乳酸とポリD−乳酸のブレンド割合としては重量比で、ポリL−乳酸:ポリD−乳酸が30:70から70:30の間である。ステレオコンプレックス結晶の生成促進および含有割合向上の観点から、40:60から60:40の間であることがさらに好ましく、50:50であることがより好ましい。ブレンドして繊維に成形した後、140℃以上の高温熱処理を施してラセミ結晶を形成させたステレオコンプレックスにすると、融点を200〜230℃まで高めることができる。
【0012】
また、上記ポリ乳酸の重量平均分子量は10万以上であることが、耐加水分解性、耐熱性、成形性の観点から好ましい。重量平均分子量を10万以上とすることで、得られる成形物の力学特性や耐久性に優れたものが得られるばかりでなく、溶融流動性や結晶化特性も良好なものとなる。このことから、重量平均分子量は12万〜40万の範囲であるとより好ましく、14万〜25万の範囲が最も好ましい。
【0013】
上記ポリ乳酸の製造方法は、ポリ乳酸を原料として一旦環状二量体であるラクチドを生成せしめ、その後開環重合を行う二段階のラクチド法と、ポリ乳酸を原料として溶媒中で直接脱水縮合を行う一段階の直接重合法が知られている。本発明で用いるポリ乳酸はいずれの製法によって得られたものであってもよい。
【0014】
本発明においては、ポリ乳酸繊維が、予め末端封鎖剤を含有していることが好ましい。ポリ乳酸繊維の染色工程に代表される高い湿熱処理では、強度低下として表面化しなくても、分子量の低下やカルボキシル末端基量が増大するなど、確実にポリ乳酸繊維にダメージは付与される。ポリ乳酸繊維が末端封鎖剤を含有していることで、染色中の加水分解が抑制され、分子量の低下を抑制したり、カルボキシル末端基量の増加を抑制または減少することができ、ポリ乳酸繊維の耐加水分解性をさらに向上することができる。
末端封鎖剤を予め含有しているポリ乳酸繊維は、ポリ乳酸ポリマーの溶融状態でカルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物などの末端封鎖剤を適量反応させることで得ることができる。末端封鎖剤のポリ乳酸繊維への含有方法としては、例えば、重合反応終了直後の溶融状態のポリ乳酸ポリマーに末端封鎖剤を添加し攪拌・反応させる方法、ポリ乳酸のチップに末端封鎖剤を添加・混合した後に反応缶あるいはエクストルーダなどで混練・反応させる方法、エクストルーダでポリエステル系ポリマーに液状の末端封鎖剤を連続的に添加し、混練・反応させる方法などがあるが、これらの方法に限定されるわけではない。
本発明でポリ乳酸繊維に予め含有させる末端封鎖剤として用いられる化合物は、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物から選ばれる付加反応型化合物であることが好ましい。
末端封鎖剤を付与するもう1つの方法として、末端封鎖剤を繊維に吸尽させる場合の態様例を以下に示す。
処理する方法の1例として、液流染色機などで前記した末端封鎖剤を含む液中に被処理物を浸し、常圧または加圧の下、90〜110℃で加熱処理することが好ましい。その加熱処理時間は20〜60分間が好ましい。末端封鎖剤を含む処理液を循環させながら加工すると、繊維への処理の均一性が向上するので好ましい。このときに末端封鎖剤が繊維の外側に付着し、繊維内部に吸尽・拡散する。
【0015】
本発明のポリ乳酸繊は分散染料で染色されていても良い。染色方法としては、拡布状態またはロープ状態での染色する方法があるが、いずれの方法であっても良い。
拡布状態で染色するとは、95℃〜105℃の温度でスチーム処理または、130℃〜170℃の温度で乾熱処理することは好ましい。ロープ状態で染色するとは、液流染色機などで分散染料を含む液中に被処理物を浸し、常圧または加圧の下、90〜130℃で加熱処理することが好ましい。その加熱処理時間は20〜60分間が好ましい。
【0016】
ポリ乳酸繊維を95℃〜105℃のスチーム条件で染色するとは、染色液をパディング乾燥した後、95℃〜105のスチームで処理を行い拡布状態で染色するパッド・スチーム染色法である。
パッド・スチーム処理温度は、染料が繊維内部へ十分拡散することができ、且つ加水分解による繊維の強度低下が起こりにくい温度として、好ましくは95〜105℃、より好ましくは105℃が良い。95℃以下でのスチーム処理では、染料が繊維中へ十分拡散することができず、発色性不良となる。また、105℃以上では、繊維中へ拡散した染料がスチーム中への昇華が起こり、濃度低下がみられる。発明におけるスチームまたは乾熱処理とは染色処理によるものであることが好ましい。拡布状態でのスチームまたは乾熱処理は、布帛の幅方向に折り曲げられた部分がなく、平面状態でスチームまたは乾熱処理するものである。スチーム処理に用いる溶媒やその他薬剤は特に限定することなく使用することができる。
また、130℃〜170℃の乾熱条件で染色するとは、染色液をパディングした乾燥した後、130℃〜170℃の高温乾熱にて処理を行い拡布状態で染色するサーモゾル染色法である。
サーモゾル処理温度は、染料が繊維中へ十分拡散することができ、且つ加水分解による繊維の強度低下が起こりにくい温度として、好ましくは130〜170℃、より好ましくは140〜160℃が良い。130℃以下での乾熱処理では、染料が繊維中へ十分拡散することができず、発色性不良となる。また、170℃以上では、繊維中へ拡散した染料が空気中への昇華が起こり、濃度低下がみられる。また、風合いも粗硬なものとなる。乾熱処理に用いるその他薬剤は特に限定することなく使用することができる。
ロープ状態で染色するとは、液流染色機などで分散染料を含む液中に被処理物を浸し、常圧または加圧の下、90〜130℃で加熱処理することが好ましい。その加熱処理時間は20〜60分間が好ましい。染料が繊維内部へ十分吸尽することができ、且つ加水分解による繊維の強度低下が起こりにくい温度として、好ましくは100〜120℃、より好ましくは110℃が良い。90℃以下での浴中処理では、染料が繊維中へ十分吸尽することができず、発色性不良となる。また、130℃以上では、ポリ乳酸繊維加水分解が促進され、強度低下がみられる。浴中乾熱処理に用いるその他薬剤は特に限定することなく使用することができる。
【0017】
本発明における分散染料としては、昇華性染料、例えば、アゾ系、アントラキノン系、ジフェニルアミン系、ナフトキノン系などが挙げられる。分散染料のタイプとしては、Easy Leveling(E)タイプとSublimation Fast(S)タイプの中間のSEタイプがあるが、SタイプまたはSEタイプが好ましい。さらには、SEタイプがより好ましい。Eタイプは分子量が小さく、ムラになりにくいが、昇華堅牢度が悪く、余り高温を与えると機内昇華が起こり、かえって濃度低下を引き起こすという問題がある。Sタイプは、分子量が大きく、昇華堅牢度は良好である。SEタイプは、EタイプとSタイプの中間の分子量で、均染性、昇華堅牢度が良好である。
染料濃度は特に限定されないが、衣料用途に適した高堅牢性を得るために十分な染料濃度であればよい。
ポリ乳酸繊維と他の繊維とを混用し布帛にする場合には、例えば本発明のポリ乳酸繊維の混用比率は、編織物の全体重量に対して、10重量%以上で90%重量以下であることが好ましく、最も好ましくは20重量%以上、80重量%以下である。
【0018】
ポリ乳酸繊維の混率が上記範囲にある場合には、染色加工後のポリ乳酸繊維の分解糸強度、編織物の破裂強力や引裂強力を満足させることができ、アイロン耐熱性および風合いを向上させることができる。混用する他の繊維は適正な染料によりポリ乳酸繊維と同様に有彩色に染色して使用することが好ましい。他の繊維としてはウール、絹、レーヨン、アセテート、あるいはポリエステル、ナイロン、アクリル、ビニロン、ポリオレフィン、ポリウレタン等の繊維が挙げられるが、綿、麻、レーヨン、テンセルなどのセルロース繊維が好ましい。
混用の態様としては、他の繊維からなる繊維構造物との各種組み合わせのほか、他の繊維との混繊糸、複合仮撚糸、混紡糸、長短複合糸、流体加工糸、カバリングヤーン、合撚、交織、交編、パイル織編物、混綿詰め綿、長繊維や短繊維の混合不織布、フェルトが例示される。
【0019】
また、本発明のポリ乳酸繊維仕上加工としては、繊維表面上にオルガノポリシロキサンおよび/またはポリエチレンワックスを有するまたは、メラミン系樹脂の被膜または、ポリアルキレンオキサイドを主体とし、アクリル基および/またはメタクリル基を有する重合体を用いてなる被膜を有していてもよい。また、これらの処理液には、制電剤、撥水剤、柔軟剤、消臭剤などを適宜加えてもよい。
【実施例】
【0020】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、本実施例における、各種測定・評価は以下の方法を用いた。
(1)アイロン耐熱性
下記実施例にて得られた布帛に対して、表面温度130,140,150,160に設定した規定のアイロンを用いて、JIS L 1057「織物及び編物のアイロン収縮率試験方法」で試験を行い、変化のないものを◎、アタリ、硬化が僅かに見られるものを○、アタリ、硬化が明確に見られるものを△、アタリが顕著もしくは溶融してしまったものを×として4段階で耐熱性を評価し、○以上を合格とした。
(2)ポリ乳酸の融点
TA Instruments社製DSC2920modulatedDSCを用いて、昇温速度10℃/min、試料量10mgにて融点ピークを求め、そのピークトップ位置をポリ乳酸の融点とした。
(3)汗堅牢度
下記実施例で得られた布帛をJIS L 0848「汗に対する染色堅ろう度試験方法」で37±2℃条件下で4時間放置し、変退色と綿汚染を評価した。
(4)耐光堅牢度
下記実施例で得られた布帛をJIS L 0842「紫外線カーボンアーク灯に対する染色堅ろう度試験方法」で20時間照射後の変色を評価した。
(5)布帛の染色加工後耐加水分解性
下記実施例で得られた布帛と、相対湿度90%温度70℃の雰囲気中(ジャングルテスト条件)で7日間放置した布帛の引裂強力差または破裂強力差を強度保持率として評価した。引裂強力は、エレメンドルフ形引裂試験機を用いJIS L 1096「織物および編物の生地試験方法」に準じて。破裂強力については、ミューレン型破裂強度試験機を用いて、JIS L1096「織物および編物の生地試験方法」に準じて測定した。
強度保持率の計算方法は、(ジャングルテスト未加工布の引裂強力または破裂強力−ジャングルテスト後の引裂強力または破裂強力)/ジャングルテスト未加工布の引裂強力または破裂強力×100としてパーセンテージで表示した。
(6)官能試験による硬さ評価:10人の被験者が、布帛の硬さを3段階で評価し、その平均値とした。(○柔らかい△やや硬い ×硬い)
[実施例1]
ポリ乳酸繊維(ポリL−乳酸(PLLA):ポリD−乳酸(PLDA)重量比率50:50、イソシアヌレート化合物1.0重量%、滑剤0.8重量%、融点213℃)からなる84dtex×48フィラメントのマルチフィラメント糸条を経糸および緯糸に用いて、津田駒LKS55インチレピア織機で平組織に製織した。ついで、株式会社花山工業製ドラム型リラクサーを用いて拡布状態にして80℃で連続精練をした後、アートス社製ピンテンターを用いて、乾熱130℃、60秒で熱処理し、仕上げた。
【0021】
得られた布帛を連続染色機(分散染料(Kayalon Poly. Rubine3GL−S 150% 27g/l)、PH調整剤、均染剤、マイグレーション防止剤、浸透剤、水)に全面浸漬し、約30%の絞り量にて引き上げ、ピンテンターを用いて温度110℃で2分乾燥したのち、常圧スチーマで湿度100%RH、温度105℃で10分間のスチーム処理を行った。得られた染色布の評価結果をまとめて表1中に記載する。
[実施例2]
スチーム処理を95℃に変更した以外は実施例1と同様にして染色布を得た。得られた染色布の評価結果をまとめて表1中に記載する。
[実施例3]
スチーム処理を140℃の乾熱1分間の乾熱処理(サーモゾル法)に変更した以外は実施例1と同様にして染色布を得た。得られた染色布の評価結果をまとめて表1中に記載する。
[実施例4]
スチーム処理を160℃の乾熱1分間の乾熱処理(サーモゾル法)に変更した以外は実施例1と同様にして染色布を得た。得られた染色布の評価結果をまとめて表1中に記載する。
[実施例5]
染色工程前の布帛に対し、カルボジイミド化合物が3%owf、浴比1:30の液中で、110℃、30分の条件で常法による加工を行い、水洗し、風乾させた以外は、実施例1と同様にして染色布を得た。得られた染色布の評価結果をまとめて表1中に記載する。
[実施例6]
染色方法を日金加工株式会社製の液流染色機による110℃の浴中処理に変更し、浴中処理の染色液は分散染料(Kayalon Poly. Rubine3GL−S 150% 1.0%owf)と、PH調整剤、均染剤と水を使用した以外は、実施例1と同様にして染色布を得た。得られた染色布の評価結果をまとめて表1中に記載する。
[実施例7]
染色液にカルボジイミド化合物を3%owf、追加した以外は実施例6と同様にして染色布を得た。得られた染色布の評価結果をまとめて表1中に記載する。
[比較例1]
ポリ乳酸繊維(ポリL−乳酸(PLLA):ポリD−乳酸(PLDA)重量比率98.5:1.5とし、融点を160℃とし、イソシアヌレート化合物0重量%にした以外は実施例1と同様にして、染色布を得た。得られた染色布の評価結果をまとめて表1中に記載する。
[比較例2]
ポリ乳酸繊維(ポリL−乳酸(PLLA):ポリD−乳酸(PLDA)重量比率98.5:1.5、融点160℃とした以外は実施例1と同様にして染色布を得た。得られた染色布の評価結果をまとめて表1中に記載する。
[比較例3]
スチーム処理を140℃の乾熱1分間の乾熱処理(サーモゾル法)に変更した以外は比較例1と同様にして染色布を得た。得られた染色布の評価結果をまとめて表1中に記載する。
[比較例4]
スチーム処理を140℃の乾熱1分間の乾熱処理(サーモゾル法)に変更した以外は比較例2と同様にして染色布を得た。得られた染色布の評価結果をまとめて表1中に記載する。
[比較例5]
スチーム処理を180℃の乾熱1分間の乾熱処理(サーモゾル法)に変更した以外は実施例1と同様にして染色布を得た。得られた染色布の評価結果をまとめて表1中に記載する。
[比較例6]
比較例1の精練・熱処理後の布帛を用いて日金加工(株)製の液流染色機で110℃の浴中処理をし、浴中処理の染色液は分散染料(Kayalon Poly. Rubine3GL−S 150% 1.0%owf)、PH調整剤、均染剤と水を使用した以外は、比較例1と同様にして染色布を得た。得られた染色布の評価結果をまとめて表1中に記載する。
【0022】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の繊維構造物は、耐熱性と耐加水分解性の両面において優れているという特徴があり、本発明のポリ乳酸繊維が単独または他の繊維と混用されてなり、かつ染色を含む加工を施した繊維構造物であって、織物、編物、不織布、フェルト等の布帛形態、あるいはコート、セーター、その他の外衣、下着、パンスト、靴下、裏地、芯地、スポーツ衣料などの衣料用途に好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリL−乳酸とポリD−乳酸の重量割合が30:70〜70:30であって、該ポリL−乳酸および/またはポリD−乳酸のカルボキシル基末端の少なくとも一部が末端封鎖剤により封鎖されているポリ乳酸繊維を少なくとも一部に用いてなる繊維構造物であり、該繊維構造物のJIS L−1057 アイロン収縮試験におけるアイロンアタリ発生が140℃以上であることを特徴とするポリ乳酸含有繊維構造物。
【請求項2】
該繊維構造物が、95℃〜105℃のスチーム条件で染色されていることを特徴とする請求項1に記載のポリ乳酸含有繊維構造物
【請求項3】
該繊維構造物が、130℃〜170℃の乾熱条件で染色されていることを特徴とする請求項1に記載のポリ乳酸含有繊維構造物

【公開番号】特開2013−28881(P2013−28881A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−166554(P2011−166554)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】