説明

ポリ袋用閉鎖器具およびポリ袋の閉鎖方法

【課題】 ポリ袋を損傷することなく、確実にポリ袋の開口を閉鎖することができ、落としたときにはすぐに気が付くことができるようなポリ袋用閉鎖器具を提供する。
【解決手段】 ポリ袋用閉鎖器具10を、金属製の棒部材から成る直線部11の両側に湾曲部12,13をとなめらかに連続して全体略S字形状にしたので、ポリ袋20を損傷させない。S字形状の両端に略球状の金属製の膨出部14を設けたので、ポリ袋が脱落しにくくなるとともに、ポリ袋用閉鎖器具を落とした際に音がして、使用者に気付かせることができる。さらに、直線部11にポリ袋20の開口部21側の所定位置を縒って巻き付け、その両側を湾曲部12,13に引っ掛けると、直線部11が斜めになるので、ポリ袋用閉鎖器具10を持ち上げた際に、巻き付け部22が直線部11に沿って下方へ移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口したポリ袋を一時的に閉鎖してほこり等の侵入を防止するためのポリ袋用閉鎖器具およびポリ袋の閉鎖方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品などを工業的規模で生産する際、食品原料を予め計量してポリ袋等の袋に小分けして収容し、ほこり等の異物が混入しないように、また、収容物がこぼれないように袋の開口部を閉鎖する。この際、袋の開口部をヒートシールで密封したり、結んだりして閉鎖することも可能だが、多数の袋を閉鎖する場合には、工数の増加、コストアップ、作業員の労力の負担等、の問題がある。また、生産途中においては、容易に閉鎖を解除して袋の開口部を開ける必要がある。
【0003】
そこで、袋の開口部を閉鎖するための簡易な閉鎖器具が提案されている(例えば特許文献1参照)。
図6(A)〜(D)に示すように、閉鎖器具100A〜100D(なお、以下において閉鎖器具を総称する際には、「閉鎖器具100」と表示する。)は、袋101を構成する素材を圧縮した状態で挿入する挿入口102と、この挿入口102に連続し、かつ、袋101を囲んだ状態で把持する把持部103を有するユニット104を一もしくは複数個有する。
【0004】
従って、袋101の開口部を閉鎖する際には、閉鎖器具100の挿入口102に袋101を通して、袋を絞ることにより開口部を閉鎖する。あるいは、複数の挿入口102を有する場合には、各挿入口102に挿入することにより、開口部を閉鎖する。
【0005】
このとき、閉鎖器具100の把持部103と袋101との間の接触摩擦によって、閉鎖器具100は袋101から脱落しないので、袋101の開口部を容易に閉鎖することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実登3003806号公報(第1図〜第4図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述したような袋用の閉鎖器具100においては、挿入口102が鋭利(鋭利部105)になっているため、閉鎖器具100を着脱する際に、袋101を破損するおそれがある。
【0008】
また、図6に示すように、袋101を挿入口102あるいは上下の挿入口102にまっすぐに通して使用するため、袋101が重い場合や、閉鎖器具100が袋101の大きさに対応していない場合には、閉鎖器具100を持ち上げたときに閉鎖器具100から抜け落ちるおそれがある。
【0009】
さらに、前述したように、特に食品生産工場で使用する際には、異物混入は絶対に避けなければならず、閉鎖器具100を落として紛失した場合には、紛失した閉鎖器具100を発見できなければ、それまでに生産して袋101に収容した食品加工品全てが使用できなくなるおそれもある。このため、紛失したことがすぐにわかるようにすることが望まれる。
【0010】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みなされたものであって、ポリ袋を損傷することなく、確実にポリ袋の開口を閉鎖することができ、紛失したときにはすぐに気が付くことができるようなポリ袋用閉鎖器具およびポリ袋の閉鎖方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明のポリ袋用閉鎖器具は、ポリ袋の開口部を閉鎖するためのポリ袋用閉鎖器具であって、前記ポリ袋の開口部側所定位置を縒って細くした巻き付け部を巻き付ける金属製の棒部材からなる直線部と、前記直線部の両端になめらかに連続し、前記ポリ袋の巻き付け部を前記直線部に巻き付けた両側部分を引っ掛ける金属製の棒部材からなる略円弧状の湾曲部と、前記湾曲部の先端に取り付けた略球状の金属製の膨出部とを有し、前記直線部およびこの直線部の両側の前記湾曲部とが略同一面上にあって全体略S字形状を形成し、両湾曲部を上下方向に並べると前記直線部が斜めになる構成を有している。
【0012】
この構成により、全体略S字形状のポリ袋用閉鎖器具を金属製の棒部材から形成し、直線部と両側に設けられる湾曲部とをなめらかに連続したので、ポリ袋を損傷させない。また、S字形状の両端に略球状の金属製の膨出部を設けたので、ポリ袋が脱落しにくくなるとともに、ポリ袋用閉鎖器具を落とした際に音がして、使用者に気付かせることができ、ポリ袋用閉鎖器具の損失を防止するとともに、異物混入を防止することができる。さらに、直線部にポリ袋を縒って巻き付け、その両側を湾曲部に引っ掛けると、直線部が斜めになるので、ポリ袋用閉鎖器具を持ち上げた際に、ポリ袋の巻き付け部が直線部に沿って下方へ移動する。このため、下に位置する巻き付け部は、上から押さえられ、摩擦力が増大するので、ポリ袋の落下を防止して、確実にポリ袋を閉鎖することができる。
【0013】
また、本発明のポリ袋用閉鎖器具は、前記ポリ袋の前記開口部の周長と、前記湾曲部の内径との比が、100対1〜10である構成を有している。
【0014】
この構成により、ポリ袋の開口部の周長と、湾曲部の内径との比を100対1〜10とすることにより、ポリ袋がポリ袋用閉鎖器具から抜けにくく、かつ、装着しやすくなる。すなわち、湾曲部の内径が100対10よりも大きくなると、ポリ袋に対して湾曲部の内径が大きくなりすぎるので、抜けやすくなる。一方、湾曲部の内径が100対1以下になると、湾曲部の内径が小さくなりすぎるので、ポリ袋を湾曲部に通しにくくなる。
【0015】
また、本発明のポリ袋用閉鎖器具は、前記膨出部の直径が、5〜20mmである構成を有している。
【0016】
この構成により、膨出部の直径を5〜20mmとすることにより、ポリ袋の損傷を防止するとともに、ポリ袋を湾曲部に通しやすくなる。
【0017】
さらに、本発明のポリ袋の閉鎖方法は、ポリ袋用閉鎖器具の直線部に、前記ポリ袋の巻き付け部を2回以上巻き付けた後、前記直線部の両側の湾曲部に前記巻き付け部を引っ掛けるものである。
【0018】
この構成により、直線部にポリ袋を縒って2回以上巻き付け、その両側を湾曲部に引っ掛けると、直線部が斜めになるので、ポリ袋用閉鎖器具を持ち上げた際に、ポリ袋の巻き付け部が直線部に沿って下方へ移動する。このため、下に位置するポリ袋の巻き付け部は、上から押さえられ、摩擦力が増大するので、ポリ袋の落下を防止して、確実にポリ袋を閉鎖することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、全体略S字形状のポリ袋用閉鎖器具を、金属製の棒部材から形成し、直線部と両側に設けられる湾曲部とをなめらかに連続したので、ポリ袋を損傷させない。また、S字形状の両端に略球状の金属製の膨出部を設けたので、ポリ袋が脱落しにくくなるとともに、ポリ袋用閉鎖器具を落とした際に音がして、使用者に気付かせることができ、ポリ袋用閉鎖器具の紛失を防止するとともに、異物混入を防止することができる。さらに、直線部にポリ袋の開口部側の所定位置を縒って巻き付け、その両側を湾曲部に引っ掛けると、直線部が斜めになるので、ポリ袋用閉鎖器具を持ち上げた際に、ポリ袋の巻き付け部が直線部に沿って下方へ移動する。このため、下に位置するポリ袋の巻き付け部は、上から押さえられ、摩擦力が増大するので、ポリ袋の落下を防止して、確実にポリ袋を閉鎖することができるという効果を有するポリ袋用閉鎖器具およびポリ袋の閉鎖方法を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態にかかるポリ袋用閉鎖器具の斜視図である。
【図2】ポリ袋を広げた状態の斜視図である。
【図3】ポリ袋用閉鎖器具の直線部にポリ袋を巻き付けた状態を示す斜視図である。
【図4】本発明にかかるポリ袋用閉鎖器具によってポリ袋を閉鎖した状態を示す斜視図である。
【図5】ポリ袋の開口部の周長と湾曲部の内径との比に対するすり抜けにくさおよび通し易さの検証結果を示す表である。
【図6】(A)〜(D)は、従来の閉鎖器具の平面図および使用状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
【0022】
図1に示すように、本発明に係る実施形態であるポリ袋用閉鎖器具10は、ポリ袋20(図2参照)の開口部21を閉鎖するためのものであり、直線部11と、この直線部11の両端になめらかに連続する略円弧状の湾曲部12,13と、各湾曲部12,13の先端に取り付けた略球状の膨出部14とを有する。直線部11は、ポリ袋20の開口部21側の所定位置を縒って細くした巻き付け部22を巻き付ける部分であり、両湾曲部12,13は直線部11に巻き付けた巻き付け部の両側を引っ掛ける部分である。
【0023】
直線部11および両湾曲部12,13は金属製の棒部材から形成されており、略同一面上にあって全体略S字形状を呈している。従って、直線部11および両湾曲部12,13は、例えば、1本の棒部材を屈曲して形成することができる。また、膨出部14も金属製であり、湾曲部12,13の先端に接合する。
【0024】
膨出部14の直径D2は、5〜20mmとするのが好ましい。すなわち、直径D2が5mm未満の場合には、ポリ袋20を損傷するおそれがあり、20mm以上の場合には、ポリ袋20を湾曲部12,13に通しにくくなるためである。なお、8〜15mmとするのがより好ましい。
【0025】
図1および図2に示すように、ポリ袋20の開口部21の周長Lと、湾曲部12,13の内径D1との比は、100対1〜10とするのが好ましい。すなわち、図5に示すように、周長Lに対する内径D1の比が、100対10以上になると、ポリ袋20の開口部の大きさに対して湾曲部12,13の内径D1が大きくなりすぎるので、抜けやすくなる。一方、比が100対1以下になると、湾曲部12,13の内径D1が小さくなりすぎるので、ポリ袋20を湾曲部12,13に通しにくくなる。これより、100対1〜10とするのが好ましい。さらに、100対1.5〜8とするのがより好ましい。
【0026】
従って、例えば、開口部21の周長Lが120cmの場合には、湾曲部12,13の内径D1は、3cm程度とすることができる。なお、この場合には、周長L:内径D1=100:2.5である。
【0027】
次に、前述したポリ袋用閉鎖器具10を用いたポリ袋20の閉鎖方法(閉鎖動作)について説明する。
まず、食品原料等の収容物を収容したポリ袋20の開口部21側の所定位置を縒って細くして巻き付け部22を形成する。収容物を下にして巻き付け部22の中間部にポリ袋用閉鎖器具10の直線部11をあてて、巻き付け部22を直線部11に2回以上巻き付ける(図3参照)。巻き付けた巻き付け部22の下側および上側の巻き付け部22を、直線部11の両側の湾曲部12,13に引っ掛ける。このとき、両湾曲部12,13を上下方向に並べると、直線部11が斜めになる(図4参照)。
【0028】
以上、説明した本発明にかかる実施形態の発明によれば、全体略S字形状のポリ袋用閉鎖器具10を、金属製の棒部材から形成し、直線部11と両側に設けられる湾曲部12,13とをなめらかに連続したので、ポリ袋用閉鎖器具10をポリ袋10に取り付ける際に、ポリ袋20を損傷させない。また、金属製なので、裁断されて異物として混入するのを防止できる。
【0029】
また、S字形状の両端に略球状の金属製の膨出部14を設けたので、ポリ袋20が脱落しにくくなるとともに、ポリ袋用閉鎖器具10を落とした際に音がして、使用者に気付かせることができ、ポリ袋用閉鎖器具の損失を防止するとともに、異物混入を防止することができる。
【0030】
さらに、直線部11にポリ袋20の開口部21側の所定位置を縒って巻き付け、その両側を湾曲部12,13に引っ掛けると、直線部11が斜めになるので、ポリ袋用閉鎖器具10を持ち上げた際に、ポリ袋20の巻き付け部22が直線部11に沿って下方へ移動する。このため、下に位置するポリ袋の巻き付け部22は、上から押さえられ、摩擦力が増大するので、ポリ袋20の落下を防止して、確実にポリ袋20を閉鎖することができる。
【0031】
また、ポリ袋20の開口部21の周長Lと、湾曲部12,13の内径Dとの比を100対1〜10とすることにより、ポリ袋20がポリ袋用閉鎖器具10から抜けにくく、かつ、装着しやすくなる。
【0032】
また、膨出部14の直径を5〜20mmとすることにより、ポリ袋20の損傷を防止するとともに、ポリ袋20を湾曲部12,13に通しやすくなる。
【0033】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0034】
10 ポリ袋用閉鎖器具
11 直線部
12,13 湾曲部
14 膨出部
20 ポリ袋
21 開口部
22 巻き付け部
D1 湾曲部の内径
D2 膨出部の直径
L 開口部の周長

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ袋の開口部を閉鎖するためのポリ袋用閉鎖器具であって、
前記ポリ袋の開口部側所定位置を縒って細くした巻き付け部を巻き付ける金属製の棒部材からなる直線部と、
前記直線部の両端になめらかに連続し、前記ポリ袋の巻き付け部を前記直線部に巻き付けた両側部分を引っ掛ける金属製の棒部材からなる略円弧状の湾曲部と、
前記湾曲部の先端に取り付けた略球状の金属製の膨出部とを有し、
前記直線部およびこの直線部の両側の前記湾曲部とが略同一面上にあって全体略S字形状を形成し、両湾曲部を上下方向に並べると前記直線部が斜めになることを特徴とするポリ袋用閉鎖器具。
【請求項2】
前記ポリ袋の前記開口部の周長と、前記湾曲部の内径との比が、100対1〜10であることを特徴とする請求項1記載のポリ袋用閉鎖器具。
【請求項3】
前記膨出部の直径が、5〜20mmであることを特徴とする請求項1または2記載のポリ袋用閉鎖器具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のポリ袋用閉鎖器具の直線部に、前記ポリ袋の巻き付け部を2回以上巻き付けた後、前記直線部の両側の湾曲部に前記巻き付け部を引っ掛けることを特徴とするポリ袋の閉鎖方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−219104(P2011−219104A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−87608(P2010−87608)
【出願日】平成22年4月6日(2010.4.6)
【出願人】(000001421)キユーピー株式会社 (657)
【Fターム(参考)】