説明

ポリ(アリールアミン)およびそのフィルム

【課題】正電荷を輸送する望ましい特性を維持しつつ、比較的に少量のポリマーを用いて調整されるフィルム、該フィルムから調整されたポリマー発光ダイオードデバイス及び該ポリマーの製造方法を提供する。
【解決手段】特定の構造を有するジアリールジアミンとハロ芳香族化合物を触媒の存在下で反応させる。ポリ(アリールアミン)の製造に有用なモノマーは、各アミノ部分が3個のアリール部分に結合している2個のアミノ部分を含み、そして2個のハロ部分が所望によりモノマーに結合している。ポリ(アリールアミン)から製造されたフィルム、並びに、このようなフィルムを含む電子写真デバイスおよび電光デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリ(アリールアミン)、ポリ(アリールアミン)およびそのフィルムを製造するための方法に関する。ポリ(アリールアミン)のフィルムは発光ダイオード中の電荷輸送層として有用である。
【背景技術】
【0002】
低い酸化電位を明らかに示すトリアリールアミンは対応するラジカルカチオンに容易に酸化される。このカチオンは中性の出発アミンに同様に容易に還元される。この酸化/還元プロセスは可逆的であり、そして何回も繰り返すことができる。この為、トリアリールアミンは電荷輸送材料として広く用いられており、特に、ホール(正電荷)の輸送のために用いられている。
【0003】
電荷輸送材料は電子写真デバイス(コピー機およびプリンター)および発光ダイオードのような電光デバイスの効率的な操作に欠かせない。両方の用途において、トリアリールアミンはフィルムの形態として用いられる。電子写真用途では、トリアリールアミンおよびポリマーバインダーは適切な溶剤中に溶解され、そして得られた溶液は塗布のために用いられる。米国特許第5,352,554号および同第5,352,834号明細書を参照されたい。有用な電荷輸送特性のフィルムを得るために、最終配合物中のトリアリールアミンの装填量はできるだけ高くなければならない。低い濃度では、トリアリールアミンは電荷キャリアを輸送するのではなく、それらをトラップするように作用するであろう(D. M. Pai, J. F. Yanus, M. Stolka, J. Phys. Chem., Vol. 88,, p.4714 (1984) ) 。もし、トリアリールアミン化合物がポリマーバインダーから分離し、または、ポリマーバインダー中において結晶の微細分散体へと結晶化されるならば、フィルムはその意図した目的をもはや達成することができない。
【0004】
有機電光デバイスは、通常、電圧が印加されたときにホールおよび電子がデバイス中に注入されそして輸送されるように、陽極と陰極との間に有機フィルムもしくは有機フィルムの積層体をサンドイッチすることにより製造される。有機層内のホールと電子との組み合わせにより励起子が生じ、それが、グランド状態への放射崩壊を経て、光の形態で励起エネルギーを放出することができる。光が観測されるためには、電極の1つは透明である必要がある。トリアリールアミンのフィルムが発光フィルムと陽極との間に従来の気相蒸着により付着されるときに、デバイスの効率の主な改良は達成された。C. W. Tang, S. A. Van Slyke,Appl. Phys. Lett., Vol. 51, p.913 (1987)および米国特許第4,539,507号明細書を参照されたい。このタイプのデバイスの問題の1つは操作の間に生じる熱により有機フィルムが結晶化する傾向があることである。C. Adachi, T. Tsutsui, S. Saito, Appl. Phys. Lett.,Vol. 56, p.799 (1990)を参照されたい。有機層と電極との接触は結晶化により破壊され、デバイスが破損することがある。J. Kido. M. Kohda, Appl. Phys. Lett., Vol. 61, p.761 (1992) を参照されたい。
【0005】
芳香族アミドおよびトリアリールアミン基からなるコポリマーは電光デバイス中のホール輸送層として教示されている。JP0531163−Aを参照されたい。これらのコポリマーは、活性なトリアリールアミン基の濃度がアミドコモノマーの存在により抑えられるので、電光デバイス中の使用にはあまり望ましくない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
フィルムを形成することができる比較的に高分子量の電荷輸送性化合物が必要である。正電荷を輸送する望ましい特性を維持しながら、比較的に少量のポリマーを用いて調製されうるフィルムが必要である。このようなフィルムから調製されたポリマー発光ダイオードデバイスも必要である。このような化合物を製造するための方法も必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は式(I)
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、Rは各場合に独立に、C1-24ヒドロカルビル、C1-24ヒドロカルビルオキシ、C1-24ヒドロカルビルチオオキシまたはC1-24ヒドロカルビルカルボキシルであり、
Ar1 およびAr2 は各場合に独立に、C6-18アリール部分であって、1個以上のC1-24ヒドロカルビル、C1-24ヒドロカルビルオキシ、C1-24ヒドロカルビルチオオキシまたはC1-24ヒドロカルビルカルボキシルにより置換されていてよく、
Aは各場合に独立に、水素またはハロゲンであり、
xは各場合に独立に、0〜1の正の数であり、
nは各場合に独立に、0〜4の整数であり、そして、
mは各場合に独立に、5〜1000の数である)
の1種以上の化合物を含むポリ(アリールアミン)組成物である。
【0010】
本発明は、さらに、このようなポリ(アリールアミン)から製造したフィルム、並びに、このようなフィルムを含む電子写真デバイスおよび電光デバイス、例えば、ポリマー発光ダイオードに関する。
【0011】
本発明は、また、ポリ(アリールアミン)を製造するための方法に関する。このような方法の1つは、ジハロゲン化テトラアリール−1,2−フェニレンジアミンのような1種以上のモノマーを、触媒量の二価のニッケル塩、二価のニッケルイオンを0価の状態に還元することができる少なくとも理論量の材料、リガンドとして作用することができる材料および極性溶剤中での反応を促進することができる一定量の化合物、並びに、必要に応じて、芳香族炭化水素もしくはエーテルを含む補助溶剤と、1種以上のポリ(アリールアミン)が製造されるような条件下において接触させることを含む。
【0012】
本発明のポリマーはフィルムを形成し、それはフィルムを形成することができる比較的に高分子量の電荷輸送性化合物である。フィルムは、正電荷を輸送する望ましい特性を維持しながら、比較的に少量のポリマーを用いて製造されうる。ここに開示される方法は開示される化合物を製造するための効率的な手段を提供する。本発明のこれらおよび他の利点は次の説明により明らかであろう。
【0013】
好ましくは、Rは、各場合に独立に、C1-12ヒドロカルビル、C1-12アルコキシ、C1-12チオアルコキシ、C1-12アリールオキシ、C1-12チオアリールオキシ部分であるか、または、C1-12アルコキシ、C1-12チオアルコキシ、C1-12アリールオキシおよびC1-12チオアリールオキシ部分により置換されていてよいC1-12ヒドロカルビルである。より好ましくは、Rは各場合に独立に、C1-5 アルコキシ、C1-5 チオアルコキシまたはC1-6 ヒドロカルビルである。最も好ましくは、Rは、各場合に独立に、メチルまたはメトキシである。
【0014】
好ましくは、Ar1 およびAr2 は、各場合に独立に、C6-18芳香族基であり、C1-12ヒドロカルビル、C1-12アルコキシ、C1-12チオアルコキシ、C1-12アリールオキシおよびC1-12チオアリールオキシ部分により置換されていてよい。より好ましくは、Ar1 およびAr2 は、各場合に独立に、フェニル、ナフチルまたはビフェニル基であり、C1-5 アルコキシまたはC1-6 アルキルにより置換されていてよい。さらにより好ましくは、Ar1 およびAr2 は、各場合に独立に、アニソール、メトキシナフタレン、メトキシビフェニル、フェニルまたはトルエンに由来するものである。最も好ましくは、Ar1 はフェニルであり、そしてAr2 は各場合に独立に4−メトキシフェニルまたはフェニルである。
【0015】
好ましくは、Aは各場合に独立に、水素、塩素または臭素である。
好ましくは、nは0または1の数である。より好ましくは、nは0である。
好ましくは、mは5〜500の数である。より好ましくは、mは5〜100の数である。
【0016】
本発明のポリ(アリールアミン)は希釈溶液中または固体状態で強いフォトルミネッセンスを示す。このような材料が300〜700ナノメートルの波長の光にさらされるときに、材料は400〜800ナノメートルの帯域の波長の光を放出する。より好ましくは、このような材料は300〜400ナノメートルの波長の光を吸収し、そして400〜650ナノメートルの帯域の波長の光を放出する。本発明のポリ(アリールアミン)は一般的な有機溶剤中に容易に可溶である。それは従来の技術により薄いフィルムまたはコーティングに加工することが可能である。本発明のポリ(アリールアミン)は好ましくは+0.1ボルト以上、より好ましくは+0.4ボルト以上で、好ましくは+1.0ボルト以下、より好ましくは+0.7ボルト以下の酸化電位を有する。
【0017】
本発明のポリ(アリールアミン)は250ダルトン以上、より好ましくは500ダルトン以上、さらにより好ましくは1,000ダルトン以上で、好ましくは1,000,000ダルトン以下、より好ましくは500,000ダルトン以下、そして最も好ましくは50,000ダルトン以下の重量平均分子量を有する。分子量はポリスチレン標品を用いてゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより決定される。
【0018】
好ましくは、ポリ(アリールアミン)は5以下の多分散(Mw/Mn)を示し、より好ましくは4以下であり、さらにより好ましくは3以下であり、そして最も好ましくは2.5以下である。
【0019】
ポリ(アリールアミン)の製造に有用なモノマーは、好ましくは、各アミノ部分が3個のアリール部分に結合している2個のアミノ基を含み、2個のハロ部分が所望によりこのモノマーに結合していてよいものである。好ましくは、ポリ(アリールアミン)は5〜1000個のモノマーを含む。好ましくは、本発明のポリ(アリールアミン)の製造に有用なモノマーは下記式(II)および(III)により示される。
【0020】
【化2】

【0021】
(式中、A、Ar1 、Ar2 、Rおよびnは上記に規定した通りである)。好ましいモノマーはジハロゲン化N,N,N’,N’−テトラアリール−1,4−フェニレンジアミンである。このようなハロゲン化モノマーは、例えば、1種以上のジアリールジアミンとハロ芳香族化合物とを、対応する式(II)または(III)のモノマーを生成するのに十分な反応条件において接触させることにより製造されうる。この目的に有用なジアリールジアミンは下記式(IV)および(V)に示されている。
【0022】
【化3】

【0023】
(式中、A、Ar1 、Ar2 、Rおよびnは上記に規定した通りである)。このようなジアリールジアミンは、N,N’−ジアリール−1,4−フェニレンジアミンまたはN,N−ジアリール−1,4−フェニレンジアミンのような化合物であることができる。
【0024】
ジアリールジアミンは1種以上のモノマーが製造されるような条件下において、ハロ芳香族化合物と接触される。好ましくは、ジアリールジアミンとハロ芳香族化合物との接触はGauthierおよびFrechet のSynthesis, P.383 (1987) の手順により、または、Guram, RennelsおよびBuchwaldのAngewandte Chemie International Edition in English, Vol. 34, p.1348 (1995)の手順により行われる。ジアリールジアミンおよびハロ芳香族化合物は銅粉末および炭酸カリウムの存在下に接触されそして加熱されるか、または、接触はナトリウムt−ブトキシドおよび、パラジウム化合物とトリ−O−トリルホスフィンとを含む触媒の存在下において行われる。好ましくは、もし銅粉末および炭酸カリウムが用いられるならば、出発材料としてヨード芳香族化合物は用いられてよい。好ましくは、もしナトリウムt−ブトキシドおよび、パラジウム化合物とトリ−O−トリルホスフィンとを含む触媒が用いられるならば、出発材料としてブロモ芳香族化合物は用いられてよい。
【0025】
ハロ芳香族化合物は下記式(VI)の化合物を含む。
A−Ar1 −B (VI)
(式中、AおよびBは各場合に独立に、水素またはハロゲンであり、そして、Ar1 は上記に規定した通りである)。好ましくは、Aは各場合に独立に、水素、塩素または臭素であり、そしてBは各場合に独立に、臭素またはヨウ素である。用いられるハロ芳香族化合物の量は、反応混合物中に存在するジアリールジアミン化合物のアミン窒素原子を完全に置換するために十分な量である。好ましくは、ジアリールジアミンはハロ芳香族化合物と1:10以下のモル比で接触され、より好ましくは1:5以下のモル比、そしてさらにより好ましくは1:3以下のモル比で接触される。
【0026】
モノマーを製造するための反応体はモノマーを生成するために十分な速度で反応が進行する温度に加熱される。好ましくは、反応温度は100℃以上であり、より好ましくは120℃以上であり、そしてさらにより好ましくは150℃以上である。好ましくは、反応温度は300℃以下であり、より好ましくは250℃以下であり、そしてさらにより好ましくは200℃以下である。反応時間は、反応温度、触媒の量および反応体の濃度による。反応時間は好ましくは5時間以上であり、より好ましくは10時間以上であり、そしてさらにより好ましくは20時間以上である。反応時間は、50時間以下であり、より好ましくは40時間以下であり、そして最も好ましくは30時間以下である。
【0027】
本方法において用いられる溶剤の量は広い範囲にわたって変わることができる。一般に、できるだけ少量の溶剤を用いることが望ましい。好ましくは、ジアリールジアミン1モル当たりに1リットル以下の溶剤を用い、より好ましくは0.5リットル以下の溶剤を用い、そして最も好ましくは0.1リットル以下の溶剤を用いる。用いる溶剤の量の下限は実用性により決まり、即ち、溶液の取扱性並びに溶剤中の反応体および生成物の可溶性により決まる。
【0028】
本発明のポリ(アリールアミン)は、触媒量の二価ニッケル塩、少なくとも理論量の亜鉛粉末、三置換ホスフィンおよび極性溶剤中でのカップリング反応を促進することができる一定量の化合物並びに、必要に応じて、芳香族炭化水素もしくはエーテルを含む補助溶剤の存在下において行われる、ハロゲン化物カップリング反応(以下において、「重合反応」と呼ぶ)により製造されうる。ニッケル(0価)触媒は、リガンドとして作用することができる材料、および、必要に応じて、反応を促進することができる材料の存在下において、還元剤と二価ニッケル塩を接触させることにより、その場で製造されうる。
【0029】
好ましい態様において、本発明のポリ(アリールアミン)は、Colon らのJournal of Polymer Science, Part A, Polymer Chemistry Edition, Vol. 28, p.367 (1990)およびColon らのJournal of Organic Chemistry, Vol.51, p.2627 (1986) の手順により、ニッケル触媒の存在下にモノマーを接触させることにより製造される。
【0030】
重合反応は好ましくは極性溶剤中において行われ、好ましくはジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−シクロヘキシルピロリジノンまたはN−メチルピロリジノン中において行われる。50体積%以下の非アミド補助溶剤は用いられてよい。好ましくは、補助溶剤は芳香族炭化水素およびエーテルであり、例えば、テトラヒドロフランである。このプロセスは好ましくは酸素および湿分の非存在下に行われる。というのは、酸素の存在は触媒に対して有害であり、そして有意な量の水の存在はこのプロセスの停止を早くしすぎるからである。より好ましくは、反応は窒素またはアルゴンのような不活性雰囲気下において行われる。
【0031】
触媒は好ましくは二価のニッケル塩から形成される。ニッケル塩は反応条件下において0価の状態に転化されうるいずれのニッケル塩であってもよい。好ましくは、ニッケル塩はニッケルハロゲン化物であり、塩化ニッケルおよび臭化ニッケルは最も好ましい。二価のニッケル塩は、存在するモノマーの量を基準として、0.01モル%以上、より好ましくは0.1モル%以上、そして最も好ましくは1.0モル%以上の量で存在する。存在する二価のニッケル塩の量は、存在するモノマーの量を基準として、好ましくは30モル%以下、より好ましくは15モル%以下である。
【0032】
ニッケルにより触媒される重合反応は二価のニッケルイオンを0価の状態に還元することができる材料の存在下において行われる。適切な材料はニッケルよりも容易に酸化されるいずれの金属をも含む。好ましい金属は亜鉛、マグネシウム、カルシウムおよびリチウムを含む。好ましい還元剤は粉末の形態の亜鉛である。ニッケルの量を基準として少なくとも理論量の還元剤は反応全体を通してニッケル種を0価の状態に維持するために必要である。還元剤は、用いられるモノマーの量を基準として、好ましくは、150モル%以上、より好ましくは200モル%以上、そして最も好ましくは250モル%以上の量で存在する。還元剤は、モノマーの量を基準として、好ましくは500モル%以下、より好ましくは400モル%以下、そして最も好ましくは300モル%以下の量で存在する。
【0033】
重合反応はリガンドとして作用することができる材料の存在下において行われる。好ましいリガンドはトリヒドロカルビルホスフィンを含む。より好ましいリガンドはトリアリールもしくはトリアルキルホスフィンであり、トリフェニルホスフィンは最も好ましい。リガンドとして作用することができる化合物は、モノマーの量を基準として、10モル%以上、より好ましくは20モル%以上の量で存在する。リガンドとして作用することができる化合物は、モノマーの量を基準として、好ましくは100モル%以下、より好ましくは50モル%以下、そして最も好ましくは40モル%以下の量で存在する。
【0034】
重合反応は反応が合理的な速度で進行するいずれの温度で行われてもよい。反応は、好ましくは25℃以上であり、より好ましくは50℃以上であり、そして最も好ましくは70℃以上である。25℃未満では、反応速度は許容されないほど低い。好ましくは、反応は200℃以下、より好ましくは150℃以下、そして最も好ましくは125℃以下で行われる。実質的に200℃を越える温度は触媒の分解を起こしうる。反応時間は反応温度、触媒の量および反応体の濃度による。反応時間は、好ましくは1時間以上であり、そしてより好ましくは10時間以上である。反応時間は100時間以下であり、より好ましくは72時間以下であり、そして最も好ましくは48時間以下である。このプロセスにおいて用いられる溶剤の量は広い範囲で変化されうる。一般に、できるだけ少量の溶剤を用いることが望ましい。好ましくは、モノマー1モル当たりに10リットル以下の溶剤が用いられ、より好ましくは5リットル以下の溶剤が用いられ、そして最も好ましくは2リットル以下の溶剤が用いられる。用いられる溶剤の量の下限は実用性により決まり、即ち、溶液の取扱性並びに溶剤中の反応体および生成物の可溶性により決まる。
【0035】
別の態様において、本発明のポリ(アリールアミン)は、Ioyda らのBulletin of the Chemical Society of Japan, Vol.63, p.80 (1990)に開示された方法により製造されうる。このような方法は上記に記載した方法と同様である。詳細には、触媒はニッケルハロゲン化物ビストリフェニルホスフィン錯体として導入される二価のニッケル塩である。反応は種々の極性溶剤中において行われうる。これらの溶剤はアセトン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランおよびアセトニトリルを含むことができる。反応はテトラエチルアンモニウムヨージドのような有機可溶性ヨウ化物を10モル%添加することにより促進される。このような反応は20℃〜100℃の温度で1〜24時間行われる。
【0036】
別の態様において、本発明のポリ(アリールアミン)はYamamotoのProgress in Polymer Science, Vol. 17, p.1153 (1992) に開示された方法により製造することができる。このような方法は上記に記載した方法と同様である。このような方法において、モノマーは、少なくとも理論量の、ニッケル(1,5−シクロオクタジエン)錯体の形態のニッケル触媒、および、少なくとも理論量の、リガンドとしての1,5−シクロオクタジエンと、テトラヒドロフランのような不活性溶剤中において接触される。反応は好ましくは70℃以上で2日間以上行われる。
【0037】
別の態様において、本発明のポリ(アリールアミン)はMiyaura らのSynthetic Communication, Vol.11, p.513 (1981) およびWallowらのAmerican Chemical Society Polymer Preprint, Vol. 34 (1), p.1009 (1993)に開示された方法により製造されうる。このような方法において、モノマー上のハロゲンは対応するリチオもしくグリニャール部分(lithio- or Grignard moieties)に転化される。このような方法は当業界においてよく知られており、例えば、March のAdvanced Organic Chemistry, 第2 版、pp.408〜414(McGraw-Hill, 1977)を参照されたい。得られたリチオもしくはグリニャール誘導体はトリアルキルボレートと反応し、対応するホウ素含有酸(boronic acid)を形成する: M. RehalinらのMakromoleculaire Chemie, Vol. 191, pp.1991〜2003 (1990) に開示されている通りである。得られたホウ素含有酸誘導体は、触媒量のテトラキス(トリフェニルホスフィン)−パラジウム(0)および水性塩基の存在下に、本発明のポリ(アリールアミン)が製造される条件下において接触される。
【0038】
テトラキス(トリフェニルホスフィン)−パラジウム(0)は可溶性パラジウム塩(例えば、酢酸パラジウムまたは塩化パラジウム)および少なくとも4モル等量のトリフェニルホスフィンの添加により、その場で発生されうる。触媒は所望の反応を起こさせそして反応を合理的な速度に速めるために十分な量で存在する。好ましくは、触媒は、存在するモノマーの量を基準として、0.01モル%以上の量で存在し、より好ましくは0.1モル%以上であり、そして最も好ましくは1.0モル%以上である。テトラキス(トリフェニルホスフィン)−パラジウム(0)は、モノマーの量を基準として、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下、そして最も好ましくは5モル%以下の量で存在する。
【0039】
上記の反応体は、反応体と反応せず、または、触媒を失活させない溶剤中で接触される。好ましい溶剤は芳香族炭化水素、低級アルカノール、脂肪族エーテルおよびN,N−ジアルキルアミドを含み、トルエンおよびエタノールはより好ましい。
【0040】
Miyaura らの文献に開示された方法は、好ましくは、酸素の非存在下で行われる。というのは、酸素の存在は触媒に有害であるからである。より好ましくは、反応は窒素またはアルゴンのような不活性雰囲気下において行われる。
【0041】
上記の反応は反応が合理的な速度で進むいずれの温度で行われてもよい。好ましくは、反応は50℃以上の温度で行われ、より好ましくは70℃以上の温度で行われ、そして最も好ましくは80℃以上の温度で行われる。50℃未満であると、反応速度は許容されないほど低い。反応は、好ましくは150℃以下、より好ましくは130℃以下、そして最も好ましくは100℃以下の温度で行われる。実質的に150℃より高い温度は触媒を分解させることがある。反応時間は反応温度、触媒の量および反応体の濃度による。反応時間は、好ましくは10時間以上であり、そしてより好ましくは20時間以上である。反応時間は100時間以下であり、より好ましくは50時間以下であり、そして最も好ましくは20時間以下である。本方法に用いられる溶剤の量は広い範囲で変化しうる。一般に、できるだけ少量の溶剤を用いることが望ましい。好ましくは、ジアリールジアミン1モル当たりに100リットル以下の溶剤が用いられ、より好ましくは75リットル以下の溶剤が用いられ、そして最も好ましくは50リットル以下の溶剤が用いられる。用いる溶剤の量の下限は実用性により決まり、即ち、溶液の取扱性並びに溶剤中の反応体および生成物の可溶性により決まる。
【0042】
上記の全ての製造法により得られたポリ(アリールアミン)は従来技術により回収され、好ましい技術はろ過および非溶剤を用いた沈殿を含む。ポリ(アリールアミン)はコーティングおよびフィルムを製造するのに有用である。
【0043】
このようなコーティングおよびフィルムはポリマー発光ダイオード中における電荷輸送層、電子デバイスのための保護コーティング、および蛍光コーティングとして有用である。ポリマー発光ダイオードデバイスは1対の電極の間に配置された電光性物質を含む。電圧が電極の間に印加されるときに、電光性物質は可視光を放出する。通常、電極の1つは透明であり、それを通して光が光ることができる。このデバイスは陽極および陰極を含み、この陽極および陰極の間に電光性物質としてホール輸送層および電子輸送層を含む。このようなデバイスの例として、米国特許第4,356,429号、同第4,539,507号、同第4,885,211号、同第5,047,687号、同第5,059,862号および同第5,061,561号明細書を参照されたい。コーティングまたはフィルムの厚さは最終の用途による。一般に、このような厚さは0.01〜200ミクロンであってよい。コーティングが蛍光コーティングとして用いられる態様において、コーティングまたはフィルムの厚さは50〜200ミクロンである。コーティングがエレクトロニクス保護層として用いられる態様において、コーティングの厚さは5〜20ミクロンであることができる。コーティングがポリマー発光ダイオードにおいて用いられる態様において、形成される厚さは0.05〜2ミクロンである。ポリ(アリールアミン)は、良好な、ピンホールを有せずそして欠陥を有しないフィルムを形成する。このようなフィルムは当業界においてよく知られている手段により製造でき、例えば、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティングおよびローラーコーティングを含む。このようなコーティングは、組成物を基材に塗布すること、および、塗布した組成物を、フィルムが形成するような条件に付すことを含む方法により製造される。
【0044】
好ましい態様において、基材に塗布される組成物は、一般的な有機溶剤中に溶解したポリ(アリールアミン)を含む。好ましい溶剤は脂肪族炭化水素、塩素化炭化水素、芳香族炭化水素、ケトンおよびエーテルである。このような溶剤は比較的に低い極性を有することが好ましい。好ましくは、溶液は、0.5〜10重量%のポリ(アリールアミン)を含む。薄いコーティングを得るために、組成物が0.5〜5.0重量%のポリ(ジ(トリアリールアミン))を含むことが好ましい。この組成物は、その後、所望の方法により適切な基材に塗布される。フィルムは、好ましくは実質的に均質な厚さであり、そしてピンホールを実質的に有しない。
【実施例】
【0045】
次の実施例は例示の目的でのみ含まれ、そして請求の範囲を制限することを意図しない。特に指示がないかぎり、全ての部および百分率は重量基準である。
【0046】
ポリマーのガラス転移温度は示差走査熱量計により決定した。内部粘度測定は25℃、0.5dL/gで行った。分子量はポリスチレン標品に対するゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより決定した。循環電圧分析は対照としてAg/AgClを用いて行った:酸化電位はジクロロメタン溶液または白金電極上に付着したポリマーフィルムのいずれかを用いて決定した。
【0047】
例1−モノマーであるN,N’−ジフェニル−N,N’−ジ−(4−メトキシフェニル)−1,4−フェニレンジアミンの製造
N,N’−ジフェニル−1,4−フェニレンジアミン(46.3g、0.18モル)、4−ヨードフェニルメチルエーテル(100.0g、0.43モル)、銅ブロンズ粉(28g、0.44モル)、炭酸カリウム(166g、1.2モル)、18−クラウン−6エーテル(7.9g、0.03モル)および1,2−ジクロロベンゼン(400ml)を、メカニカルスターラー、窒素インレットおよび凝縮器を具備した反応器に添加した。この混合物を180℃で90時間加熱し、その間、反応より生じた水を窒素をゆっくりと流すことにより除去した。24時間後に、熱い反応混合物を床を通してろ過しそして減圧下に濃縮し、暗褐色の粘性液体を提供し、それをシリカゲル床を通してヘキサンとともにパーコレートし、色を幾分か取り除いた。アセトンから2回、再結晶化させることにより、55.7g(66%)の褐色の結晶のモノマーを提供した。
【0048】
例2−モノマーであるN,N’−ジ−(4−ブロモフェニル)−N,N’−ジ−(4−メトキシフェニル)−1,4−フェニルジアミンの製造
N−ブロモスクシミド(19.0g、0.11モル)およびジメチルホルムアミド(DMF)(150mL)の溶液を、DMF(150mL)中のN,N’−ジフェニル−N,N’−ジ(4−メトキシフェニル)−1,4−フェニレンジアミン(25.0g、0.053モル)の攪拌されている溶液中に添加した。この反応混合物を1Lのトルエンに添加し、そして60℃に加熱した。この温かい溶液を60℃において水で(1000mLで4回)洗浄した。このトルエン溶液を無水MgSO4 上で乾燥し、シリカゲル床を通してろ過し、その後、減圧下に濃縮した。未精製の生成物をトルエン/ヘキサンから2回再結晶させて、褐色の結晶のモノマー(21.6g、65%)を乾燥後に提供した。
【0049】
例3−N,N’−ジ−(4−ブロモフェニル)−N,N’−ジ−(4−メトキシフェニル)−1,4−フェニレンジアミンの重合
重合反応器にN,N’−ジ−(4−ブロモフェニル)−N,N’−ジ−(4−メトキシフェニル)−1,4−フェニレンジアミン(6.3g、10ミリモル)、トリフェニルホスフィン(1.35g、5ミリモル)、亜鉛粉末(2.0g、30ミリモル)およびニッケルクロリド−2,2’−ビピリジン錯体(NiCl2 −Bipy)(0.1g、0.45ミリモル)を入れた。反応器を約0.2mmHgに脱気し、その後、窒素でパージし、このサイクルを7回繰り返した。この反応器に無水ジメチルアセトアミド(DMAc)20mLを(シリンジを通して)添加した。この反応混合物を250rpmの攪拌速度で攪拌しながら80℃に加熱した。数分後に、反応混合物はグレーから赤褐色に変色し、時間経過に伴いさらに濃くなった。1時間後、固体のグリーンケークが形成され、混合が困難になった。この反応器に、25mLのDMAcおよび40mLのトルエンを添加し、固体ケークを溶解させた。この反応物を80℃で18時間攪拌した。この反応混合物を500mLのアセトンに添加し、生成物を沈殿させた。この沈殿物を回収し、そしてアセトンで(150mLで3回)洗浄した。この沈殿物を300mLのクロロベンゼンに溶解させ、その後、ろ過助剤の床を通してろ過した。このクロロベンゼン溶液を300mLの水性の3NHClおよび水(300mLで2回)で洗浄した。クロロベンゼン混合物を、その後、100mLの水および50mLのエチレンジアミンを含むフラスコに添加した。この混合物を60℃で2時間攪拌した。クロロベンゼン混合物の水性層を除去し、そしてクロロベンゼン混合物のトルエン層を水で(200mLで3回)洗浄した。クロロベンゼン混合物を約50mLの体積に濃縮し、その後、300mLのアセトンにゆっくりと添加した。黄色の沈殿物としてポリマーが形成した。この黄色の沈殿物を回収し、アセトンで(200mLで2回)洗浄し、その後、乾燥して4.4g(94%)の黄色い粉末を提供した。このポリマーの性質を表Iに示す。この例のポリマーは発光ダイオードデバイス中のホール輸送材料のために有用である。
【0050】
例4−N,N’−ジ−(4−ブロモフェニル)−N,N’−ジ−(4−メトキシフェニル)−1,4−フェニルジアミンの重合
上記の例をN,N’−ジ−(4−ブロモフェニル)−N,N’−ジ−(4−メトキシフェニル)−1,4−フェニレンジアミン(6.3g、10ミリモル)、トリフェニルホスフィン(1.31g、50ミリモル)、亜鉛粉末(2.0g、30ミリモル)、NiCl2 −Bipy(0.086g、0.3ミリモル)およびN−メチルピロリジノン(20mL)を用いて繰り返した。重合は約6時間後に停止した。ポリマーケークをトルエン(200mL)中に溶解させ、そして得られた混合物を床を通してろ過し、無機塩を除去した。このろ過されたトルエン溶液を約50mLの体積まで減らし、その後、約800mLのアセトン中に注ぎ、所望のポリマーを沈殿させた。この固形物をろ過により回収し、そして60℃で一晩、真空炉中において乾燥し、3.47gの、トルエン中の内部粘度が0.08dL/gである黄色いポリマーを提供した。この例のポリマーは発光ダイオードデバイス中のホール輸送材料のために有用である。
【0051】
例5−N,N’−ジ−(4−ブロモフェニル)−N,N’−ジ−(4−メトキシフェニル)−1,4−フェニレンジアミンの重合
N,N’−ジ−(4−ブロモフェニル)−N,N’−ジ−(4−エトキシフェニル)−1,4−フェニレンジアミン(3.15g、5ミリモル)、トリフェニルホスフィン(0.66g、25モル)、亜鉛粉末(1.00g、15ミリモル)、NiCl2 −Bipy(0.05g、0.17ミリモル)およびN−シクロヘキシルピロリジノン(11mL)を用いて上記の例を繰り返した。重合を90℃で25時間行い、そしてポリマー生成物(2.0g、内部粘度0.09dL/g)を上記と同一の手順により単離した。この例のポリマーは発光ダイオードデバイス中のホール輸送材料のために有用である。
【0052】
例6−N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ−(3−クロロフェニル)−1,4−フェニレンジアミンの製造
例1の手順に従って、N,N’−ジフェニル−1,4−フェニレンジアミン(13.0g、0.05モル)、3−ヨードクロロベンゼン(31.0g、0.13モル)、銅ブロンズ粉(7.5g、0.13モル)、18−クラウン−6(2.40g、0.09モル)、粉末炭酸カリウム(50.14g、0.36モル)および1,2−ジクロロベンゼン(120mL)の混合物を190℃で20時間加熱した。この熱い反応混合物を、トルエン(50mL)で洗浄した床を通してろ過した。この合わせたろ液から真空下においてトルエンを除去し、そして得られた暗褐色の油をシリカゲルカラム(5cm×25cm、溶離液としてヘキサン中の5%CH2 Cl2 )でクロマトグラフにかけ、7.4g(31%)の薄い黄色の粘性油を提供し、それは放置したときに固形化した。メタノール−アセトンからの再結晶により、4.6g(19%)のモノマー生成物を白色のフレーク(m.p.124〜127℃)として得た。
【0053】
例7−N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ−(3−クロロフェニル)−1,4−フェニレンジアミンの製造
酢酸パラジウム(180mg、0.8ミリモル)およびトリ−O−トリルホスフィン(536mg、1.7ミリモル)およびトルエン(40mL)の混合物を周囲温度において30分間攪拌し、均質な黄色い溶液が形成した。N,N’−ジフェニル−1,4−フェニレンジアミン(5.2g、20ミリモル)、3−ブロモクロロベンゼン(9.6g、50ミリモル)、ナトリウムtert−ブトキシド(5.4g、56ミリモル)およびさらなるトルエン(120mL)を反応容器中において上記の混合物中に添加した。窒素のゆっくりとしたパージを行いながら、反応容器をオイルバス中に置き、そして攪拌されている反応物を14時間加熱還流した。この反応混合物を周囲温度に冷却し、塩化水素酸(6mL)で処理し、そして床を通してろ過した。減圧下でのロータベーパーを用いた溶剤の除去により、暗褐色の粘性油を得た。シリカゲルカラム(5cm×25cm、溶離液としてヘキサン中10%トルエンを用いる)上でのフラッシュクロマトグラフィーにより、黄色い油を提供し、それは周囲温度で放置したときに固形化した。メタノール/アセトンからの再結晶により、7.3g(76%)の生成物を白色のフレーク(m.p.125〜127℃)として得た。
【0054】
例8−N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ−(3−クロロフェニル)−1,4−フェニレンジアミンの重合
N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ−(3−クロロフェニル)−1,4−フェニレンジアミン(1.2g,2.5ミリモル)、トリフェニルホスフィン(327.5mg、1.25ミリモル)、亜鉛粉末(490mg、7.5ミリモル)およびNiCl2 −Bipy(21.5mg、0.075ミリモル)を乾燥した反応器に添加した。この反応器を約3mm/Hgに脱気し、その後、窒素を満たした。このサイクルを5回繰り返した。3.5mLのN−メチルピロリジノンを反応器に添加し、そして3回反応器を脱気し、そして窒素を満たした。この反応混合物を攪拌し、70℃でオイルバス中において20時間加熱した。このようにして形成されたポリマーケークを熱いクロロベンゼン(40mL)中に溶解させた。この溶液をろ過し、そして約10mLに濃縮した。アセトン(100mL)をこの溶液に添加し、ポリマーを白色粉末として沈殿させた。アセトンで洗浄し、そして60℃で一晩真空炉内で乾燥させて、0.78g(76%)のポリマー生成物を提供した。このポリマーの性質を表Iに示す。この例のポリマーは発光ダイオードデバイス中のホール輸送材料のために有用である。
【0055】
例9−N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ−(3−クロロフェニル)−1,4−フェニレンジアミンの重合
全ての固体試薬の量の10倍の量を用いて上記の例を繰り返した。N−シクロヘキシルピロリジノン(13mL)およびN−メチルピロリジノン(23mL)を溶剤として用いた。重合を70℃で8時間および90℃で10時間行った。ポリマーの収率は8.7g(85%)であった。ポリマーの性質を表Iに示す。この例のポリマーは発光ダイオードデバイス中のホール輸送材料のために有用である。
【0056】
例10−N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ−(3−クロロフェニル)−1,4−フェニレンジアミンの重合
溶剤がN−シクロヘキシルピロリジノンおよびN−メチルピロリジノンの1:1混合物(合計で4mL)であったことを除いては例8を繰り返した。重合を70℃で10時間進行させた。単離した生成物(910mg、88%)は0.13dL/gのCH2 Cl2 中の内部粘度を有した。この例のポリマーは発光ダイオードデバイス中のホール輸送材料のために有用である。
【0057】
例11−N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ−(4−クロロフェニル)−1,4−フェニレンジアミン
酢酸パラジウム(270mg、1.2ミリモル)およびトリ−O−トリルホスフィン(804mg、2.6ミリモル)およびトルエン(20mL)の混合物を、均質の黄色い溶液が形成されるまで周囲温度で30分間攪拌した。この溶液に、N,N’−ジフェニル−1,4−フェニレンジアミン(7.8g、30ミリモル)、4−ブロモクロロベンゼン(18.9g、99ミリモル)、ナトリウムtert−ブトキシド(8.1g、84ミリモル)およびさらなるトルエン(250mL)を添加した。窒素をゆっくりパージし、反応容器をオイルバス中に置き、そして攪拌されている反応物を12時間加熱還流させた。この反応混合物を周囲温度に冷却し、塩化水素酸(9mL)で処理し、そしてろ過助剤床を通してろ過した。減圧下においてロータベーパーで溶剤を除去し、暗褐色の粘性油を提供した。シリカゲルカラム上でのフラッシュクロマトグラフィー(5cm×25cm、50%ベンゼン/ヘキサンを溶離液として用いる)により、薄い黄色の固体が得られた。ベンゼン/ヘキサンからの再結晶により、11.9g(82%)の生成物は白色フラックとして得られた。HPLC分析は生成物が>99%純度であることを示した。
【0058】
例12−N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ−(4−クロロフェニル)−1,4−フェニレンジアミン
オーバーヘッドスターラー、窒素インレットおよび還流凝縮器を具備した1Lの3つ口丸底フラスコに、N,N’−ジフェニル−1,4−フェニレンジアミン(13.0g、0.05モル)、4−ヨードクロロベンゼン(31.0g、0.13モル)、銅ブロンズ粉(12.7g,0.20モル)、18−クラウン−6−エーテル(2.6g、0.10モル)、粉末炭酸カリウム(50.1g、0.36モル)および1,2−ジクロロベンゼン(120mL)を入れた。凝縮器を通して窒素をゆっくりとパージしながら、反応容器をオイルバス中に置き、そして攪拌されている反応物を200℃で20時間加熱した。この熱い反応混合物を、トルエン(50mL)で洗浄したろ過助剤床を通してろ過し、濾液を減圧下においてロータベーパーで濃縮した。溶剤残留物をKugelrohr装置でさらに除去し、暗褐色の粘性油を提供した。シリカゲルカラム上でのフラッシュクロマトグラフィー(5cm×25cm、溶離液としてヘキサン中5%CH2 Cl2 を用いる)により、9.6gの灰白色の固体を得た。未精製の生成物をトルエンおよびアセトンでさらに洗浄し、6.1g(25%)のオフホワイトの粉末材料を提供した。この例のポリマーは発光ダイオードデバイス中のホール輸送材料のために有用である。
【0059】
例13−N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ−(4−クロロフェニル)−1,4−フェニレンジアミンの重合
メカニカルスターラー、窒素/真空インレットおよびゴム隔壁を具備した、乾燥した反応器に、N,N’−ジフェニル−N,N’−ジ−(4−クロロフェニル)−1,4−フェニレンジアミン(12.0g、25.0ミリモル)、トリフェニルホスフィン(3.3g、12.6ミリモル)、亜鉛粉末(4.9g、75ミリモル)およびNiCl2 −Bipy(0.22g、0.75ミリモル)を添加した。反応器を約3mmHgに脱気し、その後、窒素でパージした。このサイクルを5回繰り返した。この反応器に45mlのN−シクロヘキシルピロリジノンおよび27mLのN−メチルピロリジノンをシリンジを通して添加した。さらに3回、反応器を脱気しそして窒素でパージした。この反応物を300rpmの攪拌速度でオイルバス中で70℃に加熱した。このグレーの均質混合物は赤褐色の液体に徐々に変化し、それは時間の経過とともにますます粘性になった。70℃で10時間および90℃で10時間攪拌を続けた。反応の終了後、暗緑褐色の粘性の材料が観測された。未精製の生成物を、熱いクロロベンゼン(300mL)中に溶解させ、短いアルミナカラムを通してろ過し、亜鉛ダストを除去した。濾液を約100mLにロータベーパーで濃縮し、そしてこの溶液をアルミナカラムを通して通過させ、THFとともに溶離させた。この溶液の体積を約100mLに減少させ、そしてポリマーをアセトン(500mL)で沈殿させた。この生成物をろ過により回収し、アセトンで洗浄し、そして60℃において真空炉内で一晩乾燥させ、9.53g(93%)の薄い黄色の粉末を提供した。このポリマーの性質を表Iに示す。この例のポリマーは発光ダイオードデバイス中のホール輸送材料のために有用である。
【0060】
例14−電光デバイス
クロロベンゼン中の3%溶液からITO−ガラス(20オーム/スケアのシート抵抗率)上にスピンコーティングすることにより、例13のポリマーのフィルム(約80nm厚さ)を形成させることにより電光デバイスを製造した。このフィルムはホール輸送層として作用した。発光性ポリマーであるポリ(9,9−二置換フッ素−2,7−ジイル)の2%トルエン溶液を、このホール輸送層の上にスピンコーティングにより塗布し、約100nmの厚さのフィルムを提供した。その後、カルシウム金属を発光性ポリマーの上に熱蒸発により蒸着させ、それは陰極として作用した。デバイスにフォワードバイアスを印加したときに、青い光を約9ボルトで観測した。130cd/m2 の光出力を16ボルト、電流密度10mA/cm2 で観測した。ホール輸送層を有しない同様のデバイスは約11ボルトのターンオンボルトを有し、14ボルト、10mA/cm2 の電流密度で約3cd/m2 の光出力を有した。これは本発明のホール輸送性ポリマーによって改良がなされうることを例示している。
【0061】
表I
例3 例8 例9 例13
内部粘度 CH2Cl2中 CH2Cl2中 THF 中 THF 中
0.13dL/g 0.12dL/g 0.13dL/g 0.16dL/g
Mn 7200ダルトン 6300ダルトン
Mw 13700ダルトン 14500ダルトン
Tg 171 ℃ 175 ℃ 222 ℃
可逆酸化 フィルム: 溶液: フィルム: フィルム:
ポテンシャル 0.52、0.84V 0.54V 0.63 、1.00V 0.6111、0.96V
溶液: 溶液: 溶液:
0.41、0.86V 0.52、0.92V 0.60 、1.0V
青色 溶液および 溶液および 溶液および 溶液および
蛍光 フィルム フィルム フィルム フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)
【化1】

(式中、Rは、各場合に独立に、C1-24ヒドロカルビル、C1-24ヒドロカルボキシ、C1-24ヒドロカルビルチオオキシまたはC1-24ヒドロカルビルカルボキシルであり、
Ar1 およびAr2 は、各場合に独立に、C6-18アリール部分であり、それはC1-12ヒドロカルビル、C1-12ヒドロカルビルオキシ、C1-12ヒドロカルビルチオオキシまたはC1-12ヒドロカルビルカルボキシルにより置換されていてよく、
Aは、各場合に独立に、水素またはハロゲンであり、
xは、各場合に独立に、0〜1の正の数であり、
nは、各場合に独立に、0〜4の整数であり、そして、
mは5〜1000の数である)
の1種以上の化合物を含むポリ(アリールアミン)組成物。
【請求項2】
Rは、各場合に独立に、C1-12アルコキシ、C1-12チオアルコキシ、C1-12アリールオキシまたはC1-12チオアリールオキシ部分であり、それは、C1-12アルコキシ、C1-12チオアルコキシ、C1-12アリールオキシまたはC1-12チオアリールオキシ部分により置換されていてよく、
Ar1 およびAr2 は、各場合に独立に、C6 〜C18芳香族基であり、それは、C1-12アルコキシ、C1-12チオアルコキシ、C1-12アリールオキシまたはC1-12チオアリールオキシ部分により置換されていてよく、
Aは、各場合に独立に、水素、塩素および臭素であり、そして、
mは5〜500の数である、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
Rは、各場合に独立に、C1-5 アルコキシ、C1-5 チオアルコキシまたはC1-6 ヒドロカルビルであり、
Ar1 およびAr2 は、各場合に独立に、ベンゼン、ナフタレンまたはビフェニルに由来するものであり、それは、C1-5 アルコキシおよびC1-6 ヒドロカルビルにより置換されていてよく、
nは、各場合に独立に、0または1の整数であり、そして、
mは5〜100の数である、請求項2記載の組成物。
【請求項4】
Rは、各場合に独立に、メチルまたはメトキシであり、
Ar1 およびAr2 は、各場合に独立に、アニソール、メトキシナフタレン、ベンゼンまたはトルエンに由来するものであり、そして、
mは5〜100の数である、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
Ar1 は、各場合に独立に、フェニレンであり、
Ar2 は、各場合に独立に、4−メトキシフェニルまたはベンゼンに由来するものであり、
nは、各場合に独立に、0の整数であり、そして
mは5〜100の数である、請求項4記載の組成物。
【請求項6】
下記式(II)および(III)
【化2】

に対応する1種以上のモノマーを、触媒量の二価ニッケル塩、少なくとも理論量の、二価ニッケルイオンを0価の状態に還元することができる材料、およびリガンドとして作用することができる材料、および極性溶剤中の反応を促進することができる一定量の化合物、および、必要に応じて、芳香族炭化水素もしくはエーテルを含む補助溶剤と、請求項1記載のポリ(アリールアミン)を生じるような条件下において接触させることを含む、請求項1記載の組成物の製造法。
【請求項7】
1種以上のモノマーはハロ芳香族化合物と、下記式(IV)および(V)のうちの1つ以上に対応する1種以上のジアリールジアミンとを、式(II)または(III)の化合物が生成されるような条件下において接触させることにより製造される、請求項6記載の方法。
【化3】

【請求項8】
ハロ芳香族化合物は、下記式(VI)
A−Ar1 −B (VI)
(式中、AおよびBは、各場合に独立に、水素またはハロゲンであり、そしてAr1 は、各場合に独立に、C6-18アリール部分であり、それは重合反応を妨害しない部分により置換されていてよい)の化合物を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
Aは水素、塩素または臭素であり、そしてBは臭素またはヨウ素であり、そしてAr1 は、各場合に独立に、ナフタレン、ビフェニル、アニソール、メトキシナフタレン、メトキシビフェニル、ベンゼンまたはトルエンに由来するものである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
式(IV)および(V)の1種以上の化合物は式(VI):A−Ar1 −Bの化合物と触媒の存在下において反応される、請求項9記載の方法。
【請求項11】
触媒は銅粉末であるか、または、パラジウムおよびトリ−O−トリルホスフィンである、請求項10記載の方法。
【請求項12】
触媒の量はハロ芳香族化合物の量に対して0.1モル%〜1000モル%である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
二価ニッケル塩はモノマーの量を基準として0.1〜10モル%の量で存在し、二価ニッケルイオンを0価の状態に還元することができる材料は亜鉛粉末でありそしてモノマーの量を基準として10〜500モル%の量で存在し、リガンドとして作用することができる材料はトリアリールホスフィンでありそしてモノマーの量を基準として10〜100モル%の量で存在し、そして、反応を促進することができる化合物の量は二価ニッケル塩を基準として10〜100モル%で存在する、請求項6記載の方法。
【請求項14】
反応温度は50〜150℃である、請求項6記載の方法。
【請求項15】
請求項1記載の組成物を含む、フィルム。
【請求項16】
請求項1記載の組成物を基材に適用し、そして適用した組成物をフィルムが形成される条件下に付すことを含む、フィルムの製造法。
【請求項17】
0.01〜200ミクロンの厚さを有する、請求項15記載のフィルム。

【公開番号】特開2008−69367(P2008−69367A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−279072(P2007−279072)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【分割の表示】特願平10−509717の分割
【原出願日】平成9年7月14日(1997.7.14)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】