説明

ポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物の製造方法

ポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物を製造するための新規な方法を開示する。本方法は、アリールイオウ化合物をハロゲン及びフルオロ塩と反応させてポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物を形成することを含む。ポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物をフッ化物源と反応させて、目標のポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、2つ又は3つのペンタフルオロスルファニル基で置換されている芳香族化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002]アリールイオウ五フッ化物化合物は、医薬、農薬、及び新物質の開発において、1種類以上の五フッ化イオウ基を種々の有機分子中に導入するために用いられる。特に、アリールイオウ五フッ化物は、液晶の開発、殺菌剤、除草剤、及び殺虫剤のような生物活性化学物質、並びに他の同様の材料における有用な化合物として(生成物又は中間体として)示されている[Fluorine-containing Synthons (ACS Symposium Series 911), V.A. Soloshonok編, American Chemical Society (2005), pp. 108-113を参照]。特に、2つ以上のペンタフルオロスルファニル基(SF)を有する芳香族化合物は、1つのペンタフルオロスルファニル基を有する芳香族化合物と比較してこれらの用途においてより有用であるので、関心が増加している。現時点においては、僅かなかかる化合物しかうまく合成されておらず、例えば、3,5−ビス(ペンタフルオロスルファニル)ニトロベンゼン、3,5−ビス(ペンタフルオロスルファニル)アニリン、1,3,5−トリス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン、及び1,2,4−トリス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼンがこれまで合成されており、これらの製造の困難性が示されている。このように、且つここで更に議論するように、2つ又は3つのペンタフルオロスルファニル基を有する芳香族化合物を製造するための従来の合成方法は製造するのが困難であることが分かっており、当該技術における懸案事項である。
【0003】
[0003]従来は、2つ又は3つのペンタフルオロスルファニル基を有する芳香族化合物は、以下の方法:(1)AgFによるポリ(ニトロベンゼンジスルフィド)のフッ素化(J. Am. Chem. Soc., vol.82 (1962), pp.3064-3072を参照);又は(2)SFClをアセチレンと反応させ、次にhν照射下でBrによって臭素化し、脱臭化水素し、亜鉛によって還元してペンタフルオロスルファニルアセチレン(HC≡CSF)を与える;の1つによって合成される。次に、ペンタフルオロスルファニルアセチレンをCo(CO)と反応させてコンプレックス:Co(CO)(HC≡CSFを与え、コンプレックスをBrの存在下で分解して1,2,4−トリス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼンを与える(Chem. Ber., vol.119, pp.453-463 (1986)を参照)。SFClの存在下でのペンタフルオロスルファニルアセチレンの光反応によって、1,3,5−トリス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼンが与えられる(Chem. Ber., vol.119, pp.453-463 (1986)を参照)。
【0004】
[0004]上記の合成法のそれぞれは、それを工業的に実施不能にする1以上の欠点を有している。例えば、前者の方法は、非常に低い収率を与え、高価な反応試薬であるAgFが必要である。後者の方法は、高価で毒性のガスであるSFCl、及び多くの反応工程(これにより低い収率の最終生成物がもたらされる)が必要である。
【0005】
[0005]更に、ビス(ニトロフェニル)ジスルフィドを分子フッ素(F)、CFOF、又はCF(OF)と反応させることによって、関連する化合物であるp−及びm−(ペンタフルオロスルファニル)ニトロベンゼンを製造したことが報告されている(Tetrahedron, vol.56, 3399-3408 (2000);USP−2004/0249209−A1)。しかしながら、F、CFOF、及び/又はCF(OF)は、非常に毒性で、腐食性で、危険なガスであり、それらの取り扱いは、ガスの製造、貯蔵、及び使用の観点から費用がかかる。更に、F、CFOF、及び/又はCF(OF)を用いることが必要な合成方法は、それらの非常に大きな反応性(このため、失活させないと芳香環のフッ素化のような副反応を引き起こす)のために、ニトロ置換(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物のような失活させた(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物の製造に限られる。また、ジフェニルジスルフィド及びジ(p−トリル)ジスルフィドをそれぞれXeFと反応させることによって、(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン及びp−(ペンタフルオロスルファニル)トルエンを製造したことも報告されている(J. Fluorine Chem., vol.125 (2004), pp.549-552)。しかしながら、この方法は高価な試薬であるXeFを必要とする。したがって、ペンタフルオロスルファニル芳香族化合物に関して知られている製造方法に関連する問題点のために、この物質を工業的に安全で、コスト的に有効で、適時に製造することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0249209−A1号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Fluorine-containing Synthons (ACS Symposium Series 911), V.A. Soloshonok編, American Chemical Society (2005), pp. 108-113
【非特許文献2】J. Am. Chem. Soc., vol.82 (1962), pp.3064-3072
【非特許文献3】Chem. Ber., vol. 119, pp.453-463 (1986)
【非特許文献4】Tetrahedron, vol.56, 3399-3408 (2000)
【非特許文献5】J. Fluorine Chem., vol.125 (1004), pp.549-552
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0006]本発明は、上記で議論した問題点の1以上を克服することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[0007]本発明は、式(I):
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、R、R、R、R、及びRの1つ又は2つはペンタフルオロスルファニル(SF)基であり、残りのそれぞれは、水素原子、ハロゲン原子、1〜18個の炭素原子を有する置換又は非置換アルキル基、ニトロ基、及びシアノ基からなる群から選択される)
によって表されるポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物の新規な製造方法を提供する。
【0012】
本発明の幾つかの態様は、式(II):
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’の1つ又は2つはSR基であり、残りのそれぞれは、水素原子、ハロゲン原子、1〜18個の炭素原子を有する置換又は非置換アルキル基、ニトロ基、及びシアノ基からなる群から選択され;Rは、水素原子、シリル基、金属原子、アンモニウム基、ホスホニウム基、又はハロゲン原子であり;或いは、Rはそれ自体の分子又は他の分子の他のRと組合わさって単結合を形成する)
で表されるアリールイオウ化合物を、塩素、臭素、ヨウ素、及びハロゲン間化合物の群から選択されるハロゲン、並びにフルオロ塩(M、式III)と反応させてポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物を形成することを含む。ポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物は、式(IV):
【0015】
【化3】

【0016】
(式中、R1”、R2”、R3”、R4”、及びR5”の1つ又は2つはSFX基であり、残りのそれぞれは、水素原子、ハロゲン原子、1〜18個の炭素原子を有する置換又は非置換アルキル基、ニトロ基、及びシアノ基からなる群から選択され;Xは、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である)
によって表される。ポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物(式IV)をフッ化物源と反応させて、ポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物(式I)を形成する。
【0017】
[0008]本発明の幾つかの態様はまた、式(II)で表されるアリールイオウ化合物を、塩素、臭素、ヨウ素、及びハロゲン間化合物の群から選択されるハロゲン、並びにフルオロ塩(M、式III)と反応させて、式(IV)によって表されるポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物を形成することによってポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物(式I)を製造する方法も提供する。ポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物(式IV)を、塩素、臭素、ヨウ素、及びハロゲン間化合物の群から選択されるハロゲンの存在下でフッ化物源と反応させて、ポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物(式I)を形成する。
【0018】
[0009]本発明の幾つかの態様はまた、式(V):
【0019】
【化4】

【0020】
(式中、R1”’、R2”’、R3”’、R4”’、及びR5”’の1つ又は2つはSF基であり、残りのそれぞれは、水素原子、ハロゲン原子、1〜18個の炭素原子を有する置換又は非置換アルキル基、ニトロ基、及びシアノ基からなる群から選択される)
によって表されるアリールイオウ三フッ化物を、塩素、臭素、ヨウ素、及びハロゲン間化合物の群から選択されるハロゲン、並びにフルオロ塩(式III)と反応させて、式(IV)で表されるポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物を形成することによって、ポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物(式I)を製造する方法も提供する。ポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物(式IV)をフッ化物源と反応させて、ポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物(式I)を形成する。
【0021】
[0010]本発明の幾つかの態様はまた、式(V)で表されるアリールイオウ三フッ化物を、塩素、臭素、ヨウ素、及びハロゲン間化合物の群から選択されるハロゲン、並びにフルオロ塩(式III)と反応させて、式(IV)によって表されるポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物を形成することによって、ポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物(式I)を製造する方法も提供する。ポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物(式IV)を、塩素、臭素、ヨウ素、及びハロゲン間化合物の群から選択されるハロゲンの存在下でフッ化物源と反応させて、ポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物(式I)を形成する。
【0022】
[0011]本発明の幾つかの態様は更に、式(II)によって表されるアリールイオウ化合物を、塩素、臭素、ヨウ素、及びハロゲン間化合物の群から選択されるハロゲン、並びに式(III)で表されるフルオロ塩と反応させて、式(IV)のポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物を形成することによって、ポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物(式IV)を製造する方法を提供する。
【0023】
[0012]本発明の幾つかの態様は、式(V)によって表されるアリールイオウ三フッ化物を、塩素、臭素、ヨウ素、及びハロゲン間化合物の群から選択されるハロゲン、並びに式(III)によって表されるフルオロ塩と反応させて、式(IV)で表されるポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物を形成することによって、ポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物(式IV)を製造する方法を提供する。
【0024】
[0013]本発明の幾つかの態様は、式(IV)によって表されるポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物をフッ化物源と反応させて、ポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物を形成することによって、ポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物(式I)を製造する方法を提供する。
【0025】
[0014]更に、本発明の幾つかの態様は、式(IV)によって表されるポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物を、塩素、臭素、ヨウ素、及びハロゲン間化合物の群から選択されるハロゲンの存在下でフッ化物源と反応させて、ポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物を形成することによって、ポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物(式I)を製造する方法を提供する。
【0026】
[0015]本発明の幾つかの態様はまた、式(I)(R=H)によって表されるポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物をハロゲン化剤及び酸と反応させて、式(I)(R=Y)のポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物を形成することによって、式(I)(R=Y)によって表されるハロゲン化ポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物を製造する方法も提供する。
【0027】
【化5】

【0028】
(式中、Yは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であるハロゲン原子であり;R、R、R、及びRの1つ又は2つはペンタフルオロスルファニル(SF)基であり、残りのそれぞれは、水素原子、ハロゲン原子、1〜18個の炭素原子を有する置換又は非置換アルキル基、ニトロ基、及びシアノ基からなる群から選択される)
[0016]更に、本発明は、式(IV’):
【0029】
【化6】

【0030】
(式中、R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’の1つ又は2つはSFClであり、残りのそれぞれは、水素原子、ハロゲン原子、1〜18個の炭素原子、好ましくは1〜10個の炭素原子、より好ましくは1〜4個の炭素原子を有する置換又は非置換アルキル基、ニトロ基、及びシアノ基である)
によって表される新規なポリ(クロロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物を提供する。
【0031】
[0017]最後に、本発明は、式(I”):
【0032】
【化7】

【0033】
(式中、R、R、R、R、及びRの1つはSF基であり、残りのそれぞれは水素原子及びハロゲン原子からなる群から選択される)
によって表される新規なビス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン化合物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
[[0018]本発明の幾つかの態様を特徴付けるこれらの及び種々の他の特徴並びに有利性は、以下の詳細な説明を読み、特許請求の範囲を検討することから明らかになるであろう。
【0035】
[0019]本発明の幾つかの態様は、式(I)によって表されるポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物を製造するための工業的に有用な方法を提供する。ポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物は、生物活性化学物質の開発、材料科学、及び他の同様の用途において生成物又は中間体として用いることができる。当該技術における従来の方法とは異なり、本発明方法は、短いプロセス、即ち限られた数の工程及び低コストの試薬を用いて、ポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物のより良好な収率を得る。更に、本発明方法は、殆どの従来技術の手順(例えばFガスを用いることが必要な手順)と比較してより大きな程度の全体的な安全性を与える。
【0036】
[0020]本発明の特徴は、ここで示すプロセスが他の従来の方法と比較して低いコストで行われることである。例えば、銀又はキセノンをベースとする反応を行うための試薬は桁違いの費用がかかるのに対して、本発明は比較的安価な材料、例えば塩素(Cl)のようなハロゲン、及びフッ化カリウム(KF)のようなフルオロ塩を用いる。
【0037】
[0021]本発明の幾つかの態様は、式(II)によって表されるアリールイオウ化合物を、塩素、臭素、ヨウ素、及びハロゲン間化合物の群から選択されるハロゲン、並びに式(III)で表されるフルオロ塩と反応させて、式(IV)によって表されるポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物を形成することを含む(例えば反応式1、プロセスI及びIIを参照)方法を含む。次に、ポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物をフッ化物源と反応させて、式(I)によって表されるポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物を形成する。
【0038】
【化8】

【0039】
[0022]式(I)、(II)、(III)、及び(IV)に関して、R、R、R、R、及びRの1つ又は2つはSF基であり、残りのそれぞれは、水素原子、ハロゲン原子、1〜18個の炭素原子、好ましくは1〜10個の炭素原子、より好ましくは1〜4個の炭素原子を有する置換又は非置換アルキル基、ニトロ基、及びシアノ基からなる群から選択され;R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’の1つ又は2つはSR基であり、残りのそれぞれは、水素原子、ハロゲン原子、1〜18個の炭素原子、好ましくは1〜10個の炭素原子、より好ましくは1〜4個の炭素原子を有する置換又は非置換アルキル基、ニトロ基、及びシアノ基からなる群から選択され;R1”、R2”、R3”、R4”、及びR5”の1つ又は2つはSFX基であり、残りのそれぞれは、水素原子、ハロゲン原子、1〜18個の炭素原子、好ましくは1〜10個の炭素原子、より好ましくは1〜4個の炭素原子を有する置換又は非置換アルキル基、ニトロ基、及びシアノ基からなる群から選択され;Rは、水素原子、シリル基、金属原子、アンモニウム基、ホスホニウム基、又はハロゲン原子であり;或いは、Rはそれ自体の分子又は他の分子の他のRと組合わさって単結合を形成する。ここで、ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である。
【0040】
[0023]Mに関しては、Mは、金属原子、アンモニウム基、又はホスホニウム基であり;Xに関しては、Xは、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である。
【0041】
[0024]ここで用いる「アルキル」という用語は、線状、分岐、又は環式のアルキルである。ここで用いる「置換アルキル」という用語は、本発明の反応を制限しない、ハロゲン原子、置換又は非置換アリール基、及び/又は1つ又は複数の酸素原子、1つ又は複数の窒素原子、1つ又は複数のイオウ原子などの1つ又は複数のヘテロ原子を有するか又は有しない任意の他の基などの1以上の置換基を有するアルキル基を意味する。
【0042】
[0025]式(IV)のポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物は、下記に示すSFX置換基に基づくトランス構造及びシス構造から構成される立体異性体を含み、SFX基を有する芳香族化合物はArSFXによって表される。
【0043】
【化9】

【0044】
[0026]XFS−アリーレン−SFXによって表される2つのSFX置換基を有する芳香族化合物を下記に示す。
【0045】
【化10】

【0046】
[0027]同様に、本発明の3つのSFX基を有する芳香族化合物は、トランス,トランス,トランス−異性体、トランス,トランス,シス−異性体、トランス,シス,シス−異性体、及びシス,シス,シス−異性体などの立体異性体を含む。
【0047】
[0028]反応式1、3〜10を検討する際の参照のために、表1に構造名及び化学式を与える。
【0048】
[0029]
【0049】
【表1】

【0050】
プロセスI(反応式1):
[0030]プロセスIは、式(II)によって表されるアリールイオウ化合物を、塩素、臭素、ヨウ素、及びハロゲン間化合物の群から選択されるハロゲン、並びにフルオロ塩(M、式III)と反応させて、式(IV)によって表されるポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物を形成することを含む。
【0051】
[0031]R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’の1つ又は2つがSR基であり、Rが、水素原子、シリル基、金属原子、アンモニウム基、又はホスホニウム基であり、残りのそれぞれが、水素原子、ハロゲン原子、1〜18個の炭素原子、好ましくは1〜10個の炭素原子、より好ましくは1〜4個の炭素原子を有する置換又は非置換アルキル基、ニトロ基、及びシアノ基からなる群から選択される場合には、本発明の式(II)によって表される代表的なアリールイオウ化合物としては、ベンゼンジチオールの各異性体、メチルベンゼンジチオールの各異性体、エチルベンゼンジチオールの各異性体、n−プロピルベンゼンジチオールの各異性体、イソプロピルベンゼンジチオールの各異性体、n−ブチルベンゼンジチオールの各異性体、sec−ブチルベンゼンジチオールの各異性体、イソブチルベンゼンジチオールの各異性体、tert−ブチルベンゼンジチオールの各異性体、ペンチルベンゼンジチオールの各異性体、ヘキシルベンゼンジチオールの各異性体、ヘプチルベンゼンジチオールの各異性体、オクチルベンゼンジチオールの各異性体、ノニルベンゼンジチオールの各異性体、デシルベンゼンジチオールの各異性体、フルオロベンゼンジチオールの各異性体、ジフルオロベンゼンジチオールの各異性体、トリフルオロベンゼンジチオールの各異性体、テトラフルオロベンゼンジチオールの各異性体、クロロベンゼンジチオールの各異性体、ブロモベンゼンジチオールの各異性体、ヨードベンゼンジチオールの各異性体、ニトロベンゼンジチオールの各異性体、シアノベンゼンジチオールの各異性体、ベンゼントリチオールの各異性体、フルオロベンゼントリチオールの各異性体、ジフルオロベンゼントリチオールの各異性体、トリフルオロベンゼントリチオールの各異性体、及び他の同様の化合物;ここで例示するベンゼンジチオール又はベンゼントリチオール化合物のS−トリメチルシリル、S−トリエチルシリル、S−トリプロピルシリル、S−ジメチル−tert−ブチルシリル、及びS−ジメチルフェニルシリル誘導体;ここで例示するベンゼンジチオール又はベンゼントリチオール化合物のリチウム、ナトリウム、及びカリウム塩;ここで例示するベンゼンジチオール又はベンゼントリチオール化合物のアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、及びテトラブチルアンモニウム塩;ここで例示するベンゼンジチオール又はベンゼントリチオール化合物のテトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラプロピルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、及びテトラフェニルホスホニウム塩;が挙げられるが、これらに限定されない。Rがハロゲン原子である式(II)のアリールイオウ化合物の例は、ベンゼンジ(スルフェニルクロリド)の各異性体、ニトロベンゼンジ(スルフェニルクロリド)の各異性体、及び他の同様の化合物である。上記の式(II)の化合物のそれぞれは、合成化学の理解されている原理にしたがうか又は文献(例えば、J. Org. Chem., vol.46, pp.3070-3073 (1981);Chem. Ber., vol.106, pp.719-720 (1973);Chem. Ber., vol.106, pp.2419-2426 (1973);J. Org. Chem., vol.45, pp.4376-4380 (1980);(それぞれを全ての目的のために参照として本明細書中に包含する)を参照)にしたがって製造することができ、或いは適当な供給元(例えば、Sigma-Aldrich、Acros、TCI、Lancaster、Alfa Aesar等を参照)から入手することができる。
【0052】
[0032]R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’の1つ又は2つがSRであり、Rがそれ自体の分子又は他の分子の他のRと組合わさって単結合を形成していてよく、残りのそれぞれが、水素原子、ハロゲン原子、1〜18個の炭素原子、好ましくは1〜10個の炭素原子、より好ましくは1〜4個の炭素原子を有する置換又は非置換アルキル基、ニトロ基、及びシアノ基からなる群から選択される場合には、式(II)によって表される代表的なアリールイオウ化合物としては、次式:
【0053】
【化11】

【0054】
によって例示される単位の重合体又は二量体化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0055】
[0033]重合体又は二量体化合物の上記式(II)の化合物のそれぞれは、合成化学の理解されている原理にしたがうか又は文献(例えば、J. Am. Chem. Soc., vol.82, pp.3064-3072 (1962)(全ての目的のために参照として本明細書中に包含する)を参照)にしたがって製造することができる。
【0056】
[0034]本発明において用いる代表的なハロゲンとしては、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)、及びClF、BrF、ClBr、ClI、ClI、及びBrIのようなハロゲン間化合物が挙げられる。
【0057】
[0035]式(III)で表されるフルオロ塩は、容易に入手でき、金属フッ化物、アンモニウムフッ化物、及びホスホニウムフッ化物によって例示されるものである。プロセスIは、1種類以上のフルオロ塩を用いて行うことができる。好適な金属フッ化物の例は、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム(噴霧乾燥フッ化カリウムを含む)、フッ化ルビジウム、及びフッ化セシウムのようなアルカリ金属フッ化物である。好適なアンモニウムフッ化物の例は、テトラメチルアンモニウムフルオリド、テトラエチルアンモニウムフルオリド、テトラプロピルアンモニウムフルオリド、テトラブチルアンモニウムフルオリド、ベンジルトリメチルアンモニウムフルオリド、ベンジルトリエチルアンモニウムフルオリドなどである。好適なホスホニウムフッ化物の例は、テトラメチルホスホニウムフルオリド、テトラエチルホスホニウムフルオリド、テトラプロピルホスホニウムフルオリド、テトラブチルホスホニウムフルオリド、テトラフェニルホスホニウムフルオリド、テトラトリルホスホニウムフルオリドなどである。入手容易性及び高い収率を得る能力の観点からは、フッ化カリウム及びフッ化セシウムのようなアルカリ金属フッ化物、並びにテトラメチルアンモニウムフルオリド及びテトラブチルアンモニウムフルオリドのようなアンモニウムフッ化物が好ましく、コストの観点からフッ化カリウムが最も好ましい。
【0058】
[0036]フルオロ塩(式III)は、金属フッ化物とアンモニウムフッ化物又はホスホニウムフッ化物との混合物、アンモニウムフッ化物とホスホニウムフッ化物との混合物、又は金属フッ化物、アンモニウムフッ化物、及びホスホニウムフッ化物の混合物として用いることができる。
【0059】
[0037]フルオロ塩(式III)としては、金属フッ化物と、F以外のアニオン部分を有するアンモニウム塩との混合物;F以外のアニオン部分を有する金属塩とアンモニウムフッ化物との混合物;金属フッ化物と、F以外のアニオン部分を有するホスホニウム塩との混合物;F以外のアニオン部分を有する金属塩とホスホニウムフッ化物との混合物;アンモニウムフッ化物と、F以外のアニオン部分を有するホスホニウム塩との混合物;或いはF以外のアニオン部分を有するアンモニウム塩とホスホニウムフッ化物との混合物;を用いることもできる。更に、金属フッ化物、アンモニウムフッ化物、及びF以外のアニオン部分を有するホスホニウム塩の混合物;金属フッ化物、F以外のアニオン部分を有するアンモニウム塩、及びホスホニウムフッ化物の混合物;F以外のアニオン部分を有する金属塩、アンモニウムフッ化物、及びホスホニウムフッ化物の混合物;金属フッ化物、F以外のアニオン部分を有するアンモニウム塩、及びF以外のアニオン部分を有するホスホニウム塩の混合物;などを用いることができる。これらの塩は、それ自体の間のアニオン部分の相互交換反応にかけることができる(例えば反応式2参照)。
【0060】
【化12】

【0061】
[0038]反応は用いる溶媒に対するフルオロ塩の溶解度に依存する可能性があるので、これらの塩の組合せによってプロセスIにおける反応を促進させることができる。このように、フッ化物アニオン(F)の高い濃度によって、反応中に利用できるフッ化物アニオンが増加する。したがって、Fの有効濃度を増加させるようにこれらの塩の好適な組合せを選択することができる。F以外のアニオン部分を有する金属塩、アンモニウム塩、及びホスホニウム塩の量(金属フッ化物、アンモニウムフッ化物、及び/又はホスホニウムフッ化物の量に対して用いる量)は、触媒量から、反応を妨げないか或いは生成物の収率を劇的に減少させない任意の量までで選択することができる。F以外のアニオン部分は、反応を制限しないか或いは生成物の収率をさほど減少させない任意のアニオンから選択することができる。F以外のアニオン部分の例としては、Cl、Br、I、BF、PF、SOOCOCHOCOCFOSOCHOSOCFOSOOSOOSOCHOSOBrなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらの中では、比較的高い収率の反応の理由から、1つ又は複数の酸素アニオンを有しないアニオン部分(F以外)が好ましく、Cl、BF、及びPFがより好ましい。更に、そのコストの理由からClが最も好ましい。
【0062】
[0039]反応の効率及び収率の観点から、プロセスIは、好ましくは1種類以上の溶媒の存在下で行う。溶媒は、好ましくは不活性で極性の非プロトン性溶媒である。好ましい溶媒は、出発材料及び試薬、中間体、及び/又は最終生成物と実質的に反応しない。好適な溶媒としては、ニトリル、エーテル、ニトロ化合物など、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。代表的なニトリルは、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどである。代表的なエーテルは、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、t−ブチルメチルエーテル、ジオキサン、グライム、ジグライム、トリグライムなどである。代表的なニトロ化合物は、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン、ニトロベンゼンなどである。他の好適な溶媒と比較して生成物の比較的より高い収率を与えるという観点から、アセトニトリルがプロセスIにおいて用いるのに好ましい溶媒である。
【0063】
[0040]プロセスIにおける生成物の良好な収率を得るために、反応温度を約−60℃〜+70℃の範囲で選択することができる。より好ましくは、反応温度は約−40℃〜+50℃の範囲で選択することができる。更に好ましくは、反応温度は約−20℃〜+40℃の範囲で選択することができる。
【0064】
[0041]プロセスIの反応条件は、生成物の経済的に良好な収率が得られるように最適化する。R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’の1つがSR(R=水素原子、シリル基、金属原子、アンモニウム基、又はホスホニウム基)である場合には、約6モル〜約30モルのハロゲンを約1モルのアリールイオウ化合物(式II)と化合させて、ポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物(式IV)の良好な収率を得る。R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’の2つがSR(R=水素原子、シリル基、金属原子、アンモニウム基、又はホスホニウム基)である場合には、約9モル〜約45モルのハロゲンを約1モルのアリールイオウ化合物(式II)と化合させて、ポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物(式IV)の良好な収率を得る。
【0065】
[0042]R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’の1つがSR(R=ハロゲン原子)である場合には、約4モル〜約20モルのハロゲンを約1モルのアリールイオウ化合物(式II)と化合させて、ポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物(式IV)の良好な収率を得る。R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’の2つがSR(R=ハロゲン原子)である場合には、約6モル〜約30モルのハロゲンを約1モルのアリールイオウ化合物(式II)を化合させて、ポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物(式IV)の良好な収率を得る。
【0066】
[0043] R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’の1つがSR(Rは他のRと一緒に単結合を形成する)である場合には、約5モル〜約25モルのハロゲンを約1モルのアリールイオウ化合物(式II)の1つの単位と化合させて、ポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物(式IV)の良好な収率を得る。R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’の2つがSR(Rは他のRと一緒に単結合を形成する)である場合には、約7.5モル〜約37.5モルのハロゲンを約1モルのアリールイオウ化合物(式II)の1つの単位と化合させて、ポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物(式IV)の良好な収率を得る。
【0067】
[0044]R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’の1つがSRである場合には、プロセスIの幾つかの態様において用いるフルオロ塩(式III)の量は、生成物の経済的に良好な収率を得るためには、式(II)のアリールイオウ化合物1モル又はアリールイオウ化合物の1つの単位1モルに対して約8〜約40モルの範囲であってよい。R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’の2つがSRである場合には、プロセスIの幾つかの態様において用いるフルオロ塩(式III)の量は、生成物の経済的に良好な収率を得るためには、式(II)のアリールイオウ化合物1モル又はアリールイオウ化合物の1つの単位1モルに対して約12〜約60モルの範囲であってよい。
【0068】
[0045]プロセスIの反応時間は、反応温度、並びに基材、試薬、及び溶媒のタイプ及び量によって変化することを注意すべきである。このように、反応時間は、一般に特定の反応を完了させるのに必要な時間量として定められるが、約0.5時間乃至数日、好ましくは2〜3日以内であってよい。
【0069】
プロセスII(反応式1):
[0046]本発明の幾つかの態様は、反応式1で示す、プロセスIで得られるポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物とフッ化物源との反応であるプロセスIIを含む。
【0070】
[0047]プロセスIIにおいて用いることができるフッ化物源は、ポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物(式IV)に対してフッ化物活性を示す化合物である。副生成物であるアリールスルホニルフルオリド(1つ又は複数のSOF置換基を有する芳香族化合物)が形成されないか又はこれらの形成が抑制されるので、無水のフッ化物源が好ましく用いられる。SOF置換基は、水分子(HO)が存在する場合とSFX置換基から誘導される可能性がある。
【0071】
[0048]プロセスIIは1種類以上のフッ化物源を用いて行うことができる。フッ化物源は、周期律表の典型元素のフッ化物、周期律表の遷移元素のフッ化物、及び典型元素及び/又は遷移元素のこれらのフッ化物の間の混合物若しくは化合物から選択することができる。
【0072】
[0049]フッ化物源には、フッ化物源とフッ化物源活性化化合物との混合物又は化合物が含まれる。それ単独ではポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物(式IV)のためのフッ化物源として満足に機能しない(その低い反応性のため)比較的安価なフッ化物源を、比較的安価なフッ化物源活性化化合物によって活性化することができるので、フッ化物源とフッ化物源活性化化合物との組合せはコストパフォーマンスにとって有益である。
【0073】
[0050]更に、フッ化物源は、本発明の反応を制限しない1種類又は複数の有機分子との混合物、塩、又はコンプレックスであってよい。
【0074】
[0051]典型元素のフッ化物の好適な例としては、周期律表の1族元素のフッ化物、例えばフッ化水素(HF)、並びにアルカリ金属フッ化物:LiF、NaF、KF、RbF、及びCsF;2族元素のフッ化物(アルカリ土類金属フッ化物)、例えばBeF、MgF、MgFCl、CaF、SrF、BaFなど;13族元素のフッ化物、例えばBF、BFCl、BFCl、AlF、AlFCl、AlFCl、GaF、InFなど;14族元素のフッ化物、例えばSiF、SiFCl、SiFCl、SiFCl、GeF、GeF、GeFCl、SnF、SnF、PbF、PbFなど;15族元素のフッ化物、例えばPF、PF、AsF、AsF、SbF、SbF、SbFCl、SbFCl、SbFCl、SbFCl、BiF、BiFなど;16族元素のフッ化物、例えばOF、SF、SeF、SeF、TeF、TeFなど;17族元素のフッ化物、例えばF、ClF、ClF、BrF、BrF、IFなど;が挙げられる。これらの中で、生成物収率、利用可能性、及びコストの理由で13〜15族元素のフッ化物が好ましく、BF、AlF、AlFCl、SiF、PF、PF、SbF、SbF、SbFCl、及びSbFClが好ましく例示される。
【0075】
[0052]遷移元素のフッ化物(遷移金属フッ化物)の好適な例としては、周期律表の3族元素のフッ化物、例えばScF、YF、LaFなど;4族元素のフッ化物、例えばTiF、ZrF、ZrF、HfFなど;5族元素のフッ化物、例えばVF、VF、NbF、TaFなど;6族元素のフッ化物、例えばCrF、MoF、WFなど;7族元素のフッ化物、例えばMnF、MnF、ReFなど;8族元素のフッ化物、例えばFeF、RuF、RuF、OsF、OsF、OsFなど;9族元素のフッ化物、例えばCoF、CoF、RhF、IrFなど;10族元素のフッ化物、例えばNiF、PdF、PtF、PtF、PtFなど;11族元素のフッ化物、例えばCuF、CuFCl、AgF、AgFなど;及び12族元素のフッ化物、例えばZnF、ZnFCl、CdF、HgFなど;が挙げられる。遷移元素のフッ化物の中では、11族元素(Cu、Ag、Au)及び12族元素(Zn、Cd、Hg)のフッ化物が好ましく例示される。実際の運転、収率、及びコストの観点から、ZnF及びCuFが更に好ましい。
【0076】
[0053]典型元素及び/又は遷移元素のフッ化物の間の混合物又は化合物の好適な例としては、HBF(フッ化水素(HF)とBFとの化合物)、HPF、HAsF、HSbF、LiF/HF(フッ化リチウム(LiF)とフッ化水素(HF)との混合物又は塩)、NaF/HF、KF/HF、CsF/HF、(CHNF/HF、(CNF/HF、(CNF/HF、ZnF/HF、CuF/HF、BF/HF、AlF/HF、SiF/BF、SiF/PF、SiF/SbF、PF/PF、AsF/AsF、SbF/SbF、SbF/SbF/HF、ZnF/SbF、ZnF/SbF/HF、KF/SbF、KF/SbF/HFなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
[0054]本発明において用いることができるフッ化物源活性化化合物としては、SbCl、AlCl、PCl、BCl、及び他の同様の化合物が挙げられるが、これらに限定されない。フッ化物とフッ化物源活性化化合物との混合物又は化合物の好適な例としては、SbF/SbCl、BF/SbCl、AlF/SbCl、SiF/SbCl、GeF/SbCl、SnF/SbCl、PbF/SbCl、BiF/SbCl、HF/SbCl、ZnF/SbCl、CuF/SbCl、FeF/SbCl、TiF/SbCl、SbF/AlCl、BF/AlCl、AlF/AlCl、SiF/AlCl、GeF/AlCl、SnF/AlCl、PbF/AlCl、BiF/AlCl、HF/AlCl、ZnF/AlCl、CuF/AlCl、FeF/AlCl、TiF/AlCl、SbF/PCl、BF/PCl、AlF/PCl、SiF/PCl、GeF/PCl、SnF/PCl、PbF/PCl、BiF/PCl、HF/PCl、ZnF/PCl、CuF/PCl、FeF/PCl、SbF/BCl、BF/BCl、AlF/BCl、SiF/BCl、GeF/BCl、SnF/BCl、PbF/BCl、BiF/BCl、HF/BCl、ZnF/BCl、CuF/BCl、及び他の同様の化合物の組合せが挙げられるが、これらに限定されない。フッ化物とフッ化物源活性化化合物とのこれらの混合物又は化合物の中で、生成物収率及びコストパフォーマンスの観点から13〜15族元素のフッ化物とフッ化物源活性化化合物との混合物又は化合物が好ましく、この中で、Sb、Al、及びPのような元素の回収及び再生利用の更なる観点から、SbF/SbCl、AlF/AlCl、及びPF/PClがより好ましい。フッ化物源に対するフッ化物源活性化化合物の使用量は、触媒量から、本発明の反応を害しない任意の量までである。1モルのフッ化物源に対するフッ化物源活性化化合物の好ましい量は、コストパフォーマンス及び反応効率並びに収率の観点から、約0.005モル〜約1.5モル、より好ましくは約0.01モル〜約1モル、更に好ましくは約0.03モル〜約0.5モルの範囲で選択することができる。
【0078】
[0055]フッ化物との混合物、塩、又はコンプレックスのために用いることができる有機分子の中では、ピリジン類、例えばピリジン、メチルピリジン、ジメチルピリジン、トリメチルピリジンなど;エーテル類、例えばジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテルなど;アルキルアミン類、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミンなど;ニトリル類、例えばアセトニトリル、プロピオニトリルなど;が好ましい。これらの中では、利用可能性及びコストの理由で、ピリジン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、トリエチルアミン、及びアセトニトリルがより好ましい。フッ化物と有機分子との混合物、塩、又はコンプレックスの好適な例としては、BFジエチルエーテラート(BF・O(C)、BFジメチルエーテラート、BFジブチルエーテラート、BFテトラヒドロフランコンプレックス、BFアセトニトリルコンプレックス(BF・NCCH)、HBFジエチルエーテラート、HF/ピリジン(フッ化水素とピリジンの混合物)、HF/メチルピリジン、HF/ジメチルピリジン、HF/トリメチルピリジン、HF/トリメチルアミン、HF/トリエチルアミン、HF/ジメチルエーテル、HF/ジエチルエーテルなどが挙げられるが、これらに限定されない。HF/ピリジンとしては、利用可能性の理由で約70重量%のフッ化水素と約30重量%のピリジンの混合物が好ましい。
【0079】
[0056]上述のフッ化物源のこれらの例の中で、フッ化水素、周期律表の遷移元素のフッ化物、周期律表の13〜15族元素のフッ化物、及びこれらの混合物又は化合物、並びにこれらのフッ化物とフッ化物源活性化化合物との混合物又は化合物が好ましい。これらの中で、13〜15族元素のフッ化物がプロセスIIの反応のために更に好ましい。13〜15族元素のフッ化物は、フッ化物源活性化化合物と共に好ましく用いることができる。
【0080】
[0057]幾つかの態様においては、(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物とフッ化物源との反応は不活性ガス(例えば窒素(実施例2参照))を流すことによって遅延する可能性があるので、反応混合物から生成する可能性がある反応混合物上の蒸気及び/又は気体を、例えば不活性ガスを反応混合物に通して流すことによるか又は他の方法によって除去することは好ましくない。反応蒸気を除去して反応が遅延することは予測しないので、これは本発明者らによって発見された予期しなかった知見であった。したがって、反応器を一定の圧力に保持することによるか、又は窒素のような不活性ガスを充填したバルーンを反応器に装備することによるか、或いは任意の他の同様の方法で、式(IV)のポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物とフッ化物源との反応を閉止又は密封反応器内で行うことが好ましい場合がある可能性がある。このように、本発明の幾つかの態様では反応蒸気を存在させることが容易である。
【0081】
[0058]プロセスIIは、溶媒を用いるか又は用いないで行うことができる。溶媒の使用は穏やかで効率的な反応のために好ましい。溶媒を用いる場合には、アルカン、ハロカーボン、芳香族物質、エーテル、ニトリル、ニトロ化合物を用いることができる。アルカンの例としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、ウンデカン、及び他の同様の化合物の直鎖、分岐、環式異性体が挙げられる。ハロカーボンの例としては、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロトリフルオロエタン、ペルフルオロペンタン、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロシクロヘキサン、ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロオクタン、ペルフルオロノナン、ペルフルオロデカン、ペルフルオロデカリン、Fluorinert FC-72、FC-75、FC-77、FC-84、FC-87、FC-104、及びFC-40、並びに他の同様の化合物が挙げられる。Fluorinert FCシリーズは、3M Companyによって製造されているペルフッ素化有機化合物である。代表的な芳香族物質としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、フルオロベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、ベンゾトリフルオリド、及び他の同様の化合物が挙げられる。代表的なエーテルとしては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジ(イソプロピル)エーテル、ジブチルエーテル、ジオキサン、グライム(1,2−ジメトキシエタン)、ジグライム、トリグライム、及び他の同様の化合物が挙げられる。代表的なニトリルとしては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、及び他の同様の化合物が挙げられる。代表的なニトロ化合物としては、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロベンゼン、及び他の同様の化合物が挙げられる。これらの中で、アルカン及びハロカーボンが好ましい。反応のために用いるフッ化物源が液体である場合には、反応物質及び溶媒の両方として用いることができる。この代表例は、フッ化水素、及びフッ化水素とピリジンとの混合物である。フッ化水素、及びフッ化水素とピリジンとの混合物は、溶媒として使用可能な可能性がある。
【0082】
[0059]プロセスIIに関する収率を最適にするためには、反応温度を約−100℃〜約+250℃の範囲で選択する。より通常的には、反応温度は約−80℃〜約+230℃の範囲で選択する。最も通常的には、反応温度は約−80℃〜約+200℃の範囲で選択する。
【0083】
[0060]生成物の経済的に良好な収率を得るために、分子あたりn個の反応性フッ化物(反応のために用いることができる)を与えるフッ化物源の量を、ポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物(式IV参照)のSFXの1つの単位の1モルに対して約1/n〜約20/nモルの範囲で選択することができる。フッ化物源の量がより少ないと収率が減少し、更なる量のフッ化物源は収率をさほど増加させないので、より通常的には、この量は、収率及びコストの観点から約1/n〜約10/nモルの範囲で選択することができる。
【0084】
[0061]プロセスIに関して記載したように、プロセスIIの反応時間も、反応温度、基材、試薬、溶媒、及びこれらの使用量によって変化する。したがって、反応条件を変化させてプロセスIIの反応を完了させるために必要な時間量を定めることができるが、この時間は約1分乃至数日間、好ましくは2〜3日以内であってよい。
【0085】
[0062]プロセスIIは、好ましくは無水条件下で行う。無水条件は、副生成物である1つ又は複数の−SOF基を有する化合物が形成されないか又はこれらの形成が抑制されるので好ましい。含水又は湿潤状態は、含まれる水の量、及び試薬、溶媒の性質、並びに他の反応条件に応じて副生成物を生成する可能性がある。得られる生成物が1種類又は複数の副生成物で汚染されている場合には、相間移動触媒を用いるか又は用いない加水分解、好ましくはアルカリ加水分解によって生成物を精製することができる。副生成物を、生成物から容易に分離される対応するスルホン酸又はスルホン酸塩に加水分解する。
【0086】
[0063]プロセスIIは、含水又は湿潤条件下で行うこともできる。幾つかの場合においては、含水又は湿潤条件によって反応を促進させることができる。ここでの含水又は湿潤条件は、多くの方法、例えば(1)含水又は湿潤状態の上述のフッ化物源を用いること;(2)湿潤状態の上述の溶媒を用いること;(3)湿潤状態のポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物(式IV)を用いること;(4)適当な量の水、蒸気、又は水蒸気を、フッ化物源、ポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物(式IV)、溶媒、及び/又は反応混合物又は反応系に加えること;(5)湿潤空気を、フッ化物源、ポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物(式IV)、溶媒、及び/又は反応混合物又は反応系に導入すること;及び/又は(6)反応を湿潤空気中で行うこと;などで形成することができる。得られる生成物が副生成物である−SOF基を有する化合物で汚染されている場合には、相間移動触媒を用いるか又は用いない加水分解、好ましくはアルカリ加水分解によって生成物を精製することができる。副生成物を、生成物から容易に分離される対応するスルホン酸又はスルホン酸塩に加水分解する。
【0087】
[0064]本発明の幾つかの態様は、式(II)で表されるアリールイオウ化合物を、塩素、臭素、ヨウ素、及びハロゲン間化合物の群から選択されるハロゲン、並びに式(III)で表されるフルオロ塩と反応させて、式(IV)によって表されるポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物を形成することを含む(例えば、反応式3のプロセスI及びII’を参照)方法を包含する。次に、ポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物を、塩素、臭素、ヨウ素、及びハロゲン間化合物の群から選択されるハロゲンの存在下でフッ化物源と反応させて、式(I)によって表されるポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物を形成する。
【0088】
【化13】

【0089】
[0065]式(I)、(II)、(III)、及び(IV)に関して、R、R、R、R、R、R、R1’、R2’、R3’、R4’、R5’、R1”、R2”、R3”、R4”、R5”、M、及びXは、上記に定義したものと同じ意味を有する。
【0090】
[0066]プロセスIは上記で説明した通りである。
【0091】
[0067]プロセスII’は次の修正:ポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物とフッ化物源との反応を、塩素、臭素、ヨウ素、及びハロゲン間化合物の群から選択されるハロゲンの存在下で行う:を行う他は上記のプロセスIIと同じである。実施例8において示されるように、(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物とフッ化物源との反応はハロゲンの存在下で活性化されるので、ポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物とフッ化物源との反応はハロゲンの存在下で活性化されると予想される。
【0092】
[0068]ハロゲンは、フッ化物源を活性化し、及び/又はこの反応中に起こる可能性があるポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物(式IV)の不均化又は還元を抑制すると予想される。したがって、他のフッ化物源活性化及び/又は不均化若しくは還元抑制化合物は、本発明の範囲内である。ハロゲンの存在下での反応は、反応器にハロゲンガスを充填するか、ハロゲンを反応混合物に加えるか、ハロゲンを反応混合物中に溶解するか、ハロゲンのガス又は蒸気を反応混合物又は反応器中に流すか、又は他の同様の手段によって行うことができる。ハロゲンの中では、コストの理由で塩素(Cl)が好ましい。
【0093】
[0069]幾つかの場合においては、ハロゲンの存在下で行うプロセスII’の反応中に、基材、試薬、及び反応条件によって、出発化合物又は生成物の芳香環のハロゲン化が起こって新たにハロゲン化された生成物が形成される可能性がある。本発明は、かかる反応及び新たにハロゲン化された生成物も包含する。
【0094】
[0070]ハロゲンの量は、触媒量から大過剰量までである。コストの観点からは、ポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物(式IV)のSFXの1つの単位1モルに対して、触媒量乃至約5モルのハロゲンが好ましく選択される。
【0095】
[0071]本発明の幾つかの態様は、式(V)で表されるアリールイオウ三フッ化物を、ハロゲン(塩素、臭素、ヨウ素、又はハロゲン間化合物)及び式(III)で表されるフルオロ塩と反応させて、式(IV)で表されるポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物を形成し(プロセスIII)、得られるポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物をフッ化物源と反応させて、式(I)で表されるポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物を形成する(プロセスII)を含む方法を包含する。プロセスIII及びIIを示す反応式4を以下に示す。
【0096】
【化14】

【0097】
[0072]式(I)、(III)、(IV)、及び(V)に関して、R、R、R、R、R、R1”、R2”、R3”、R4”、R5”、R1”’、R2”’、R3”’、R4”’、R5”’、M、及びXは、上記に定義したものと同じ意味を有する。
【0098】
プロセスIII(反応式4):
[0073]本発明の幾つかの態様は、式(V)で表されるアリールイオウ三フッ化物を、塩素、臭素、ヨウ素、及びハロゲン間化合物の群から選択されるハロゲン、並びにフルオロ塩(式III)と反応させて、式(IV)で表されるポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物を形成することによって、ポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物(式I)を製造する方法を提供する。
【0099】
[0074]式(V)によって表される本発明の代表的なアリールイオウ三フッ化物は、文献(J. Am. Chem. Soc., vol.82 (1962), pp.3064-3072、及びJ. Fluorine Chem. vol.33 (2003), pp.2505-2509(全ての目的のために参照として本明細書中に包含する)を参照)に記載されているようにして製造することができ、ベンゼンジ(イオウトリフルオリド)の各異性体、及びベンゼントリ(イオウトリフルオリド)の各異性体によって例示されるが、これらに限定されない。
【0100】
[0075]反応機構の考察に基づくと、アリールイオウ三フッ化物(式V)はプロセスIにおける中間体であってよい。
【0101】
[0076]本発明においてプロセスIIIのために用いることができるハロゲンは、反応において用いる量を除いて上記に記載したプロセスIに関するものと同じである。
【0102】
[0077]プロセスIIIのための式(III)で表されるフルオロ塩は、反応において用いる量を除いて上記に記載したプロセスIに関するものと同じである。
【0103】
[0078]プロセスIIIの反応は溶媒を用いて行うことが好ましい。好適な溶媒の例は、上記に記載のプロセスIに関するものと同じである。
【0104】
[0079]生成物の経済的に良好な収率を得るために、プロセスIIIの反応温度は−60℃〜+70℃の範囲で選択することができる。より好ましくは、温度は−40℃〜+50℃の範囲で選択することができる。更に好ましくは、温度は−20℃〜+40℃の範囲で選択することができる。
【0105】
[0080]R1”’、R2”’、R3”’、R4”’、及びR5”’の1つがSFである場合には、約2モル〜約10モルのハロゲンを約1モルのアリールイオウ三フッ化物(式V)と化合させて、ポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物(式IV)の良好な収率を得る。R1”’、R2”’、R3”’、R4”’、及びR5”’の2つがSFである場合には、約3モル〜約15モルのハロゲンを約1モルのアリールイオウ三フッ化物(式V)と化合させて、ポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物(式IV)の良好な経済的収率を得る。
【0106】
[0081]プロセスIIIに関する反応時間は、反応温度、基材、試薬、溶媒、及びそれらの使用量によって定まる。したがって、上記のパラーメーターの変更に基づいてそれぞれの反応を完了させるのに必要な時間を選択することができるが、これは約0.5時間乃至数日間、好ましくは2〜3日以内であってよい。
【0107】
プロセスII(反応式4):
[0082]プロセスIIは上記で説明した通りである。
【0108】
[0083]本発明の幾つかの態様は、式(V)で表されるアリールイオウ三フッ化物を、ハロゲン(塩素、臭素、ヨウ素、又はハロゲン間化合物)及び式(III)で表されるフルオロ塩と反応させて、式(IV)で表されるポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物を形成し(プロセスIII)、得られるポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物を、塩素、臭素、ヨウ素、及びハロゲン間化合物の群から選択されるハロゲンの存在下でフッ化物源と反応させて、式(I)で表されるポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物を形成する(プロセスII’)ことを含む方法を包含する。プロセスIII及びII’を示す反応式5を下記に示す。
【0109】
【化15】

【0110】
[0084]式(I)、(III)、(IV)、及び(V)に関して、R、R、R、R、R、R1”、R2”、R3”、R4”、R5”、R1”’、R2”’、R3”’、R4”’、R5”’、M、及びXは、上記に定義したものと同じ意味を有する。
【0111】
[0085]プロセスIII及びII’は上記に記載した通りである。
【0112】
[0086]更に、本発明は、式(II)で表されるアリールイオウ化合物を、塩素、臭素、ヨウ素、及びハロゲン間化合物の群から選択されるハロゲン、並びに式(III)で表されるフルオロ塩と反応させて、ポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物を形成することを含む、式(IV)で表されるポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物を製造する方法(反応式6、プロセスI)を包含する。
【0113】
【化16】

【0114】
[0087]式(II)、(III)、及び(IV)に関して、R1’、R2’、R3’、R4’、R5’、R、R1”、R2”、R3”、R4”、R5”、M、及びXは、上記に定義したものと同じ意味を表す。
【0115】
[0088]プロセスIは上記で記載する。
【0116】
[0089]更に、本発明は、式(V)で表されるアリールイオウ三フッ化物を、塩素、臭素、ヨウ素、及びハロゲン間化合物の群から選択されるハロゲン、並びに式(III)で表されるフルオロ塩と反応させて、ポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物を形成することを含む、式(IV)で表されるポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物を製造する方法(反応式7、プロセスIII)を包含する。
【0117】
【化17】

【0118】
[0090]式(III)、(IV)、及び(V)に関して、R1”、R2”、R3”、R4”、R5”、R1”’、R”’、R3”’、R4”’、R5”’、M、及びXは、上記に定義したものと同じ意味を表す。
【0119】
[0091]プロセスIIIは上記で記載した通りである。
【0120】
[0092]更に、本発明は、式(IV)で表されるポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物をフッ化物源と反応させてポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物を形成することを含む、式(I)で表されるポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物を製造する方法(反応式8、プロセスII)を包含する。
【0121】
【化18】

【0122】
[0093]式(I)及び(IV)関して、R、R、R、R、R、R1”、R、R3”、R4”、R5”、及びXは、上記に定義したものと同じ意味を表す。
【0123】
[0094]プロセスIIは上記で記載した通りである。
【0124】
[0095]更に、本発明は、式(IV)で表されるポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物を、塩素、臭素、ヨウ素、及びハロゲン間化合物の群から選択されるハロゲンの存在下でフッ化物源と反応させて、ポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物を形成することを含む、式(I)で表されるポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物を製造する方法(反応式9、プロセスII’)を包含する。
【0125】
【化19】

【0126】
[0096]式(I)及び(IV)関して、R、R、R、R、R、R1”、R、R3”、R4”、R5”、及びXは、上記に定義したものと同じ意味を表す。
【0127】
[0097]プロセスII’は上記で記載した通りである。
【0128】
[0098]本発明によれば、式(I)で表されるポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物を、入手可能な出発材料から容易に且つコスト効率よく製造することができる。
【0129】
[0099]また、式(I)(R=H)で表されるヒドロポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物を、ハロゲン化剤及び酸と反応させて、式(I)(R=Y)のポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物を形成することによって、式(I)のポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物の中で式(I)(R=Y)によって表されるハロゲン化ポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物が製造される(反応式10、プロセスIV)。
【0130】
【化20】

【0131】
[00100]式(I)(R=H)及び(I)(R=Y)に関して、Yは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であるハロゲン原子であり;R、R、R、及びRの1つ又は2つはペンタフルオロスルファニル(SF)基であり、残りのそれぞれは、水素原子、ハロゲン原子、1〜18個の炭素原子、好ましくは1〜10個の炭素原子、より好ましくは1〜4個の炭素原子を有する置換又は非置換アルキル基、ニトロ基、及びシアノ基からなる群から選択される。
【0132】
[00101]ベンゼン環が少なくとも2つの強電子吸引性SF基によって大きく不活性化されているので、プロセスIVはハロゲン化のために強反応条件を必要とする。プロセスIVのために用いることができる好ましいハロゲン化剤としては、ハロゲン、例えばフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、及びヨウ素(I);N−ハロイミド、例えばN−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミド、N−ヨードスクシンイミド、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインなど;ハロゲン酸化物、例えば臭素酸ナトリウム、臭素酸カリウム、ヨウ素酸ナトリウム、ヨウ素酸カリウム、塩素酸カリウムなど;及びこれらの混合物が挙げられる。プロセスIVにおいて用いることのできる好ましい酸としては、硫酸、フルオロ硫酸、クロロ硫酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸など;及びこれらの水溶液、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0133】
[00102]通常、プロセスIVにおいて用いる酸又はその水溶液は溶媒として作用するので、プロセスIVの反応のために更なる溶媒は必要でない。他の溶媒が必要な場合には、水、酢酸、無水酢酸、プロピオン酸、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素などを用いることができる。
【0134】
[00103]プロセスIVに関する収率を最適にするためには、反応温度を約−30℃〜約+200℃、好ましくは−10℃〜約+170℃、より好ましくは約0℃〜約+150℃で選択することができる。
【0135】
[00104]プロセスIVを用いる生成物の経済的に良好な収率を得るために、分子あたりn個の反応性ハロゲン原子種(反応のために用いることができる)を与えるハロゲン化剤の量を、式(I)(R=H)の分子1モルに対して約1/n〜約20/nモルの範囲で選択することができる。より通常的には、この量は収率及びコストの観点から約1/n〜約10/nの範囲で選択することができる。
【0136】
[00105]上記に記載したように、プロセスIVの反応時間は、反応温度、基材、試薬、溶媒、及びそれらの使用量によって変化する。したがって、反応条件を変化させてプロセスIVの反応を完了させるために必要な時間量を定めることができるが、この時間は約1分乃至数日間、好ましくは2〜3日以内であってよい。
【0137】
[00106]本発明はまた、式(I)のポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物を製造するための有用な中間体として、式(IV’):
【0138】
【化21】

【0139】
(式中、(式中、R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’の1つ又は2つはSFClであり、残りのそれぞれは、水素原子、ハロゲン原子、1〜18個の炭素原子、好ましくは1〜10個の炭素原子、より好ましくは1〜4個の炭素原子を有する置換又は非置換アルキル基、ニトロ基、及びシアノ基である)
によって表される新規なポリ(クロロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物も提供する。残りは、好ましくは、水素原子及びハロゲン原子からなる群から選択される。ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であってよい。
【0140】
[00107]これらの中で、1,2−、1,3−、及び1,4−ビス(クロロテトラフルオロスルファニル)ベンゼン、1,3−ビス(クロロテトラフルオロスルファニル)−5−フルオロ−、−クロロ−、−ブロモ−、及び−ヨード−ベンゼン、1,4−ビス(クロロテトラフルオロスルファニル)−2,5−ジフルオロベンゼン、1,4−ビス(クロロテトラフルオロスルファニル)−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼン、1,2,3−、1,2,4−、及び1,3,5−トリス(クロロテトラフルオロスルファニル)ベンゼン、及び1,3,5−トリフルオロ−2,4,6−トリス(クロロテトラフルオロスルファニル)ベンゼンが好ましい。1,3−及び1,4−ビス(クロロテトラフルオロスルファニル)ベンゼン、1,3−ビス(クロロテトラフルオロスルファニル)−5−ブロモベンゼン、1,4−ビス(クロロテトラフルオロスルファニル)−2,5−ジフルオロベンゼン、1,4−ビス(クロロテトラフルオロスルファニル)−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼン、及び1,3,5−トリス(クロロテトラフルオロスルファニル)ベンゼンがより好ましい。
【0141】
[00108]本発明はまた、式(I’):
【0142】
【化22】

【0143】
(式中、R、R、R、R、及びRの1つはSF基であり、残りのそれぞれは水素原子及びハロゲン原子からなる群から選択される)
によって表される新規で有用なビス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン化合物を提供する。ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子であってよい。
【0144】
[00109]これらの中で、1,2−ビス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン、1,3−ビス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン、1,4−ビス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン、1,3−ビス(ペンタフルオロスルファニル)−5−フルオロ−、−クロロ−、−ブロモ−、及び−ヨード−ベンゼン、1,4−ビス(ペンタフルオロスルファニル)−2,5−ジフルオロベンゼン、及び1,4−ビス(ペンタフルオロスルファニル)−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼンが好ましい。1,3−ビス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン、1,4−ビス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン、1,3−ビス(ペンタフルオロスルファニル)−5−ブロモベンゼン、1,4−ビス(ペンタフルオロスルファニル)−2,5−ジフルオロベンゼン、及び1,4−ビス(ペンタフルオロスルファニル)−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼンがより好ましい。
【実施例】
【0145】
[00110]以下の実施例によって本発明をより詳細に示すが、本発明はこれらに限定されるとはみなされないことを理解すべきである。
【0146】
実施例:
[00111]以下の実施例は例示目的のみのために与えるものであり、本発明の範囲を限定することは意図しない。以下の実施例を検討する際の参照のために、構造名及び化学式を表2及び3に与える。
【0147】
【表2】

【0148】
【表3】

【0149】
実施例1:1,3−ベンゼンジチオールからの1,3−ビス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン(Ia)の合成:
【0150】
【化23】

【0151】
[00102](プロセスI)500mLのフルオロポリマー(PFA)製反応器に、磁気スターラー、氷浴、ガス(N、Cl)入口チューブ、及びCaClチューブによって保護されているガス出口チューブを装備した。気体流は、デジタルコントローラーによって制御し、デジタル積算器によって測定した。容器に無水フッ化カリウム(100g、1.72モル)を充填し、窒素流下の反応のためにセットアップした。無水アセトニトリル(300mL)、次に1,3−ベンゼンジチオール(9.78g、68.7ミリモル)を加えた。氷浴中においてN流下で攪拌しながら1時間冷却した後、Nを停止し、次に激しく攪拌しながら塩素ガスを60〜80mL/分で液面下に導入した。約6時間かけて、合計で27.11L(1.21モル)のClを加えた。次に、攪拌しながら反応を室温にした。2日間攪拌及び反応させた後、反応混合物を濾過し、乾燥アセトニトリル(200mL)で洗浄した。次に、室温において真空下で溶解を除去し、粗生成物(23.2g、粗収率93%)を白色の固体として残留させ、これを冷凍庫内においてペンタンから再結晶させて1,3−ビス(クロロテトラフルオロスルファニル)ベンゼン(IVa)の白色の結晶(14.08g、収率56%)を得た。分析用の試料を得るために、結晶の一部を更に再結晶させた。1,3−ビス(クロロテトラフルオロスルファニル)ベンゼン(IVa)の特性及びスペクトルデータを下記に示す:融点82〜83.5℃(密封毛細管内);19F-NMR (CDCl3)δ136.14 (s, SF4Cl); 1H-NMR (CDCl3)δ8.12(t, J=2.0Hz, 1H, 2-H), 7.89 (dd, J=8.3, 2.0Hz, 2H, 4,6-H), 7.58 (t, J=8.3Hz, 1H, 5-H); 13C-NMR (CDCl3)δ155.12 (5重線, J=20.6Hz), 129.25 (s), 129.04 (t, J=4.3Hz), 124.12 (5重線, J=4.9Hz)。元素分析;CClに関する計算値;C,19.85%,H,1.11%;測定値;C,20.30%,H,1.20%。NMRは、得られた1,3−ビス(クロロテトラフルオロスルファニル)ベンゼンがトランス,トランス−異性体であることを示した。
【0152】
[00113](プロセスII)130mLのフルオロポリマー(PFA)製の反応器に、磁気スターラー、油浴、ガス(N)入口チューブ、出口、及び水凝縮器を装備した。容器に、無水ZnF(6.33g、61.2ミリモル)、及びプロセスIにおいて製造した1,3−ビス(クロロテトラフルオロスルファニル)ベンゼン(IVa)(10.02g、27.6ミリモル)を充填し、反応のためにセットアップした。Nパージの後、装置をバルーン(水凝縮器をバルーンに接続した)でキャップし、反応器を140℃に17時間加熱した。次に、反応混合物を室温に冷却し、ペンタンで抽出した。ペンタン溶液を濾過し、溶媒を除去して固体(8.25g)を得た。固体の19F−NMR分析は、1,3−ビス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン(Ia)が出発材料(IVa)から54%の収率で製造されたことを示した。冷凍庫内においてペンタンから再結晶させることによって、純粋な生成物を白色の結晶として得た。1,3−ビス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン(Ia)の特性及びスペクトルデータを下記に示す:融点:62〜62.8℃(密封毛細管内);19F-NMR (CDCl3)δ81.88 (5重線, J=150.4Hz, 2F, 2xSF), 62.95 (d, J=150.4Hz, 8F, 2xSF4); 1H-NMR (CDCl3)δ8.16 (t, J=2.0Hz, 1H, 2-H), 7.93 (dd, J=8.2, 2.0Hz, 2H, 4,6-H), 7.63 (t, J=8.2Hz, 1H, 5-H); 13C-NMR (CDCl3)δ153.72 (5重線, J=19.1Hz), 129.49 (s), 129.25 (t, J=4.7Hz), 124.34 (m);GC-Mass m/z 330 (M+)。元素分析;C10に関する計算値;C,21.82%,H,1.22%;測定値,C,21.79%,H,1.52%。
【0153】
実施例2〜5:対応するアリールイオウ化合物からのポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物(Ic)〜(If)の合成:
[00114](プロセスI)実施例1のプロセスIと同様の方法で、式(II)のアリールイオウ化合物を、アセトニトリル中において塩素及びフッ化カリウムと反応させた。表4に、実施例2〜5に関するアリールイオウ化合物、試薬、及び溶媒の量、反応条件、並びに結果を、実施例1のものと一緒に示す。生成物であるポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物(IVc)〜(IVf)の特性及びスペクトルデータを下記に示す。
【0154】
[00105]プロセスIから得られた生成物(IVc)〜(IVf)のSFClの化学構造に関して、19F−NMR分析は、実施例2における反応によってSFClにおけるトランス構造を有する生成物(IVc)が得られたことを示した。実施例3における反応により、トランス:シスの比が93:7であるトランス及びシス構造を有する生成物(IVd)が得られた。実施例4における反応により、トランス:シスの比が57:43であるトランス及びシス構造を有する生成物(IVe)が得られた。実施例5における反応により、トランス構造を有する生成物(IVf)が得られた。
【0155】
[00116]プロセスIの後処理に関し、実施例2に関しては、反応混合物を濾過し、乾燥ジクロロメタンで洗浄した。真空によって濾液を乾燥して17.2g(収率74%)の生成物(IVc)(トランス,トランス−異性体)を得て、これを乾燥ジクロロメタンで洗浄してIVcの分析試料を得た。実施例3に関しては、反応混合物を濾過し、乾燥アセトニトリル、次にクロロホルムで洗浄した。真空によって濾液を乾燥して白色の固体を得て、これを少量の乾燥ジクロロメタンで洗浄して13.2g(収率52%)のIVdを得た。これは、殆どトランス,トランス−異性体(トランス/シス=96/4)であった。実施例4に関しては、反応混合物を濾過し、乾燥クロロホルムで洗浄した。真空によって濾液を乾燥して白色の固体を得た。固体を乾燥ジクロロメタン及びペンタンの1:1混合物から再結晶させ、濾過して6.76gの純粋なIVeを得た。これは、トランス,トランス−及びシス,シス−異性体の混合物(トランス/シス=80/20)であった。濾液から得られた固体の再結晶を繰り返すことによって、更に15.25gが得られた。IVeの全量は22.0g(収率79%)であった。実施例5に関しては、反応混合物を濾過し、乾燥アセトニトリル、次にジクロロメタンで洗浄した。真空によって濾液を乾燥して白色の固体を得て、これをジクロロメタン及びペンタンの混合物から再結晶させて10.55gの粗生成物(粗収率84%)を得て、これをペンタンから再結晶させることによって精製した。
【0156】
[00117](プロセスII)フルオロポリマー(PFA)製の容器に、プロセスIから得られた9.89g(27.2ミリモル)のIVc、及び320mLのFluorinert FC-72(SynQuest laboratories, Inc.から入手できる、56℃の沸点を有するペルフッ素化有機化合物)を窒素雰囲気下で充填し、混合物を約−80℃の浴上で冷却した。35mLのFC-72中の2.10mL(30ミリモル)のSbFの溶液を攪拌した混合物に加え、混合物を約8時間かけて室温に徐々に加温した。室温において一晩攪拌した後、反応混合物を濾過し、KFで処理し、次に濾過した。減圧によって溶媒を除去し、残渣をFC-72から再結晶させて5.83g(65%)の生成物Icを得た。FC-72で十分に洗浄することによってIcの純粋な試料が得られた。
【0157】
[00118]Icの製造において用いた上記プロセスIIと同様の方法で、生成物Id、Ie、及びIfを製造した。表4に、実施例2〜5の、出発材料であるIVd〜f、試薬、及び溶媒の量、反応条件、及び結果を示す。生成物(Ic)〜(If)の特性及びスペクトルデータを下記に示す。
【0158】
[00119]プロセスIIの後処理に関し、実施例2に関しては上記に記載した通りであった。実施例3に関しては、反応混合物を濾過し、KFで処理し、次に濾過した。減圧下で溶媒を除去し、残渣をペンタンから再結晶させて5.27g(52%)の生成物Idを得た。実施例4に関しては、反応混合物を濾過し、KFで処理し、次に濾過した。濾液を濃縮して生成物Ieの結晶(3.36g、収率67%)を得た。実施例5に関しては、反応混合物を濾過し、KFで処理し、次に濾過した。濾液を乾燥して0.87gの生成物Ifを得た。反応混合物から得られた固体をKFでクエンチし、FC-72で抽出して更に1.1gを得た。これは、GC分析によって約0.48gの生成物であることが分かった。全収量は約1.35g(36%)であった。
【0159】
【表4】

【0160】
[00120]生成物(IVa)及び(Ia)の特性及びスペクトルデータは実施例1において示したものと同様である。生成物(IVc)〜(IVf)及び(Ic)〜(If)の特性及びスペクトルデータを下記に示す。
【0161】
[00121]1,4−ビス(クロロテトラフルオロスルファニル)ベンゼン(IVc):融点:200.8〜201.6℃;19F-NMR (CDCl3)δ135.72 (s, 8F);1H-NMR (CDCl3)δ7.84 (s, 4H);13C-NMR (CDCl3)δ156.90(5重線, J=20.2Hz), 126.73 (m); GC-Mass m/z 330 (M+)。元素分析;CClに関する計算値;C,19.85%,H,1.11%;測定値;C,19.71%,H,1.10%。NMR分析は、得られた生成物(IVc)がトランス,トランス−異性体であることを示した。
【0162】
[00122]1,4−ビス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン(Ic);融点:108.8−109.7℃;19F-NMR (CDCl3)δ80.6〜82.7 (m, 2F), 62.55 (d, J=149.9Hz, 8F);1H-NMR (CDCl3)δ7.88 (s, 4H);13C-NMR (CDCl3)δ155.53 (5重線, J=19.0Hz), 126.91 (m); GC-Mass m/z 330 (M+)。元素分析:C10に関する計算値;C,21.82%,H,1.22%;測定値;C,21.59%,H,1.23%。
【0163】
[00123]1,4−ビス(クロロテトラフルオロスルファニル)−2,5−ジフルオロベンゼン(IVd):融点:161.5〜162.9℃(トランス及びシス構造の96:4混合物);19F-NMR (CDCl3)(トランス及びシス構造の96:4混合物)δ155.63 (m, シス-SF), 138.52 (m, トランス-SF4), 112.95 (m, シス-SF2), 71.37 (m, シス-SF), -109.25 (m, CF); 1H-NMR (CDCl3)(トランス及びシス構造の96:4混合物)δ7.63 (m, 2H); 13C-NMR (CDCl3)(トランス及びシス構造の96:4混合物)δ150.75 (d, J=263.3Hz), 143.94 (m), 118.50 (m)。元素分析(トランス及びシス構造の96:4混合物);CCl10に関する計算値;C,18.06%,H,0.51%;測定値;C,18.01%,H,0.51%。
【0164】
[00124]1,4−ビス(ペンタフルオロスルファニル)−2,5−ジフルオロベンゼン(Id);融点:73.0〜74.6℃;19F-NMR (CDCl3)δ76.3〜78.5 (m, 2F), 67.71 (dd, J=152.3, 24.8Hz, 8F), -109.77 (m, 2F); 1H-NMR (CDCl3)δ7.67(m, 2H);13C-NMR (CDCl3)δ151.07 (d, J=262.3Hz), 142.76 (m), 118.54 (dm, J=26.0Hz); GC-Mass m/z 366 (M+)。元素分析;C12に関する計算値;C,19.68%,H,0.55%;測定値;C,19.33%,H,0.58%。
【0165】
[00125]1,4−ビス(クロロテトラフルオロスルファニル)−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼン(IVe);融点:135〜141℃(トランス及びシス構造の80:20混合物);19F-NMR (CDCl3)(トランス及びシス構造の62:38混合物)δ148.6〜150.4 (m, シス-SF), 142.22 (m, トランス-SF4), 122.9〜124.2 (m, シス-SF2), 77.7〜79.2 (m, シス-SF), -129.2〜-130.3 (m, CF, トランス及びシス);13C-NMR (CDCl3)(トランス及びシス構造の62:38混合物)δ 143.7〜144.7 (m), 140.2〜141.2 (m), 134.5 (m)。元素分析;(トランス及びシス構造の80:20混合物);CCl12に関する計算値;C,16.56%,H,0.00%;測定値;C,16.54%,H,<0.05%。
【0166】
[00126]1,4−ビス(ペンタフルオロスルファニル)−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼン(If);融点:129.2〜130.0℃;19F-NMR (CDCl3)δ71.0-74.4 (m, 10F), -130.8 (m, 4F);13C-NMR (CDCl3)δ144.9 (m), 141.3 (m), 133.3 (m);GC-Mass m/z 402 (M+)。元素分析;C14に関する計算値;C,17.92%,H,0.00%;測定値;C,17.99%,H,<0.05%。
【0167】
[00127]1,3,5−トリス(クロロテトラフルオロスルファニル)ベンゼン(IVf);19F-NMR (CDCl3)δ135.32 (s);1H-NMR (CDCl3)δ8.24 (s);13C-NMR (CDCl3)δ127.01 (m), 154.96 (5重線, J=22.9Hz)。NMR分析は、得られた生成物(IVf)がトランス,トランス,トランス−異性体であることを示した。
【0168】
[00128]1,3,5−トリス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン(If):融点:132.8〜133.5℃;19F-NMR (CDCl3)δ63.31 (dm, J=151.8Hz, 12F), 78.3-80.5 (m, 3F);1H-NMR (CDCl3)δ8.31 (s);13C-NMR (CDCl3)δ153.65 (5重線, J=21.3Hz), 127.31 (m); GC-Mass m/z 456 (M+)。元素分析;C15に関する計算値;C,15.79%,H,0.66%;測定値;C,15.48%,H,0.62%。
【0169】
実施例6:1,3−ビス(クロロテトラフルオロスルファニル)−5−ブロモベンゼン(IVb)の製造:
【0170】
【化24】

【0171】
[00129](プロセスI)240mLのフルオロポリマー(PFA)製反応器に、磁気スターラー、氷浴、ガス(N、Cl)入口チューブ、及びCaClチューブによって保護されているガス出口チューブを装備した。気体流は、デジタルコントローラーによって制御し、デジタル積算器によって測定した。容器に無水フッ化カリウム(30g、0.51モル)及び5−ブロモ−1,3−ベンゼンジチオール(2.97g、13.4ミリモル)を充填し、窒素流下の反応のためにセットアップした。無水アセトニトリル(120mL)を加え、スラリーを雰囲気温度において約1時間攪拌し、その後、氷浴上で約1時間攪拌を継続した。Nを停止し、次に激しく攪拌しながら塩素ガスを約30mL/分で液面下に導入した。約4時間で、合計で7.91L(0.35モル)のClを加えた。次に、反応混合物を攪拌しながら一晩で室温にした。反応混合物を窒素でパージし、次に吸引濾過し、アセトニトリルで洗浄した。反応溶液に少量のフッ化カリウムを加え、次に約4mmHgの真空下で雰囲気温度において溶媒を除去して、白色の固体を残留させた。少量の乾燥ジクロロメタンを加えて生成物を溶解し、次に濾過してフッ化カリウム及び他の不溶分を除去した。真空下でジクロロメタンを除去することによって、粗生成物(5.39g、粗収率91%)が白色の粉末として得られた。冷凍庫内においてペンタンから再結晶させることによって、4.16g(収率65%)の1,3−ビス(クロロテトラフルオロスルファニル)−5−ブロモベンゼンが得られた。融点:146.1〜148℃(分解を伴う);19F-NMR δ (CDCl3) 135.8 ppm (s);1H-NMR δ (CDCl3) 8.05 (m, 1H), 8.02 (m, 2H);13C-NMR δ (CDCl3) 155.58 (5重線, J=21.7Hz, C-1,3), 132.20 (m, C-4,6), 122.79 (m, C-2), 122.29 (s, C-5)。NMR分析は、得られた1,3−ビス(クロロテトラフルオロスルファニル)−5−ブロモベンゼンがトランス,トランス−異性体であることが示された。
【0172】
実施例7:1,3−ビス(ペンタフルオロスルファニル)−5−ブロモベンゼン(Ib)の製造:
【0173】
【化25】

【0174】
[00130]単一のポート及び止水栓を有する30mLのキャップ付きフルオロポリマー(PFA)製の反応器に、1,3−ビス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン(Ia)(1.65g、5ミリモル)、N−ブロモスクシンイミド(NBS)(3.4g、19ミリモル)、及び濃硫酸(6mL)を充填した。止水栓を閉止して反応を密封し、混合物を60〜65℃の油浴上で磁気攪拌しながら22時間加熱した。冷却した後、反応混合物を、炭酸ナトリウム希水溶液及びクロロホルムの混合物中にクエンチした。分離した後、水性相をクロロホルムで抽出し、有機抽出物を合わせて硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過した。濾液を蒸発乾固させて固体を得た。これはGC分析によると1,3−ビス(ペンタフルオロスルファニル)−5−ブロモベンゼンと1,3−ビス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼンの71:29混合物であった。混合物を、シリカゲル上で溶出液としてヘキサンを用いてカラムクロマトグラフィーにかけて、純粋な1,3−ビス(ペンタフルオロスルファニル)−5−ブロモベンゼン(Ib)(収率約64%)を得た。融点:65.9〜66.4℃(密封毛細管内);19F-NMR δ(CDCl3) 79.4-81.6 (m, 2F), 62.9-63.6 (m, 8F);1H-NMR δ(CDCl3) 8.05-8.10 (m);13C-NMR δ(CDCl3) 154.17 (p, J=20.2Hz), 132.41 (t, J=4.3Hz), 122.98 (p, J=5.1, 4.3Hz), 122.53 (s);GC-Mass m/z 410(M+), 408 (M+)。元素分析;CBrF10に関する計算値;C,17.62%,H,0.74%;測定値;C,17.61%,H,0.73%。
【0175】
実施例8:不活性ガス(窒素)の流動なし、低速流、及び高速流、並びにハロゲン(Cl)流下での(クロロテトラフルオロスルファニル)ベンゼン(PhSFCl)とZnFとの反応:
【0176】
【化26】

【0177】
を充填したバルーンを用いた実験1(N流なし):
[00131]乾燥ボックス内において、フルオロポリマー製の反応容器に1.0g(4.54ミリモル)のトランス−(クロロテトラフルオロスルファニル)ベンゼン(トランス−PhSFCl)及び0.28g(2.7ミリモル)の無水ZnFを充填した。反応容器を乾燥ボックスから取り出し、Nを充填したバルーンを取りつけた。反応混合物を120℃において4時間攪拌した。反応混合物を19F−NMRによって分析した。結果を表5に示す。
【0178】
5.4mL/分の速度のN流を用いた実験2(Nの低速流):
[00132]乾燥ボックス内において、フルオロポリマー製の50mL反応容器に、10.0g(0.045モル)のトランス−PhSFCl及び2.8g(0.027モル)の無水ZnFを充填した。反応容器を乾燥ボックスから取り出し、フルオロポリマー製の凝縮器を取りつけ、Nガス流動装置に接続した。5.4mL/分の速度でNを流しながら、反応混合物を120℃にゆっくりと加熱した。Nを流しながら反応混合物を120℃において5時間攪拌した。室温に冷却した後、反応混合物を19F−NMRによって分析した。結果を表5に示す。
【0179】
26.9mL/分の速度のN流を用いた実験3(Nの高速流):
[00133]乾燥ボックス内において、フルオロポリマー製の50mL反応容器に、10.0g(0.045モル)のトランス−PhSFCl及び2.8g(0.027モル)の無水ZnFを充填した。反応容器を乾燥ボックスから取り出し、フルオロポリマー製の凝縮器を取りつけ、Nガス流動装置に接続した。26.9mL/分の速度でNを流しながら、反応混合物を120℃にゆっくりと加熱した。Nを流しながら反応混合物を120℃において5時間攪拌した。室温に冷却した後、反応混合物を19F−NMRによって分析した。結果を表5に示す。
【0180】
4.6mL/分の速度のCl流を用いた実験4(ハロゲン流):
[00134]乾燥ボックス内において、フルオロポリマー製の50mL反応容器に、10.0g(0.045モル)のトランス−PhSFCl及び2.8g(0.027モル)の無水ZnFを充填した。反応容器を乾燥ボックスから取り出し、フルオロポリマー製の凝縮器を取りつけ、Clガス流動装置に接続した。4.6mL/分の速度でClを流しながら、反応混合物を120℃にゆっくりと加熱した。Clを流しながら反応混合物を120℃において攪拌した。反応の進行を19F−NMRによって監視した。120℃で40分後において、反応混合物中に3種類の主要化合物(トランス−PhSFCl、シス−PhSFCl、及びPhSF)が存在していることが検出された。トランス−PhSFCl:シス−PhSFCl:PhSFのモル比は、0.5:3.3:100であった。120℃で更に60分後において、19F−NMRによると、トランス−及びシス−PhSFClが消失し、PhSFのみが検出された。反応は120℃において1.7時間以内で完了した。NMR分析は、PhSFが92%の収率で製造されたことを示した。この結果を表5に示す。この実験は、塩素の存在によって反応が大きく促進され、生成物が高収率で得られることを示した。この実験はまた、トランス−PhSFClの異性体化によってシス−PhSFClが中間的に形成され、シス−PhSFClが生成物であるPhSFに転化することも示した。
【0181】
【表5】

【0182】
[00135]数多くの態様を参照して本発明を特に示し記載したが、本発明の精神及び範囲から逸脱することなくここで開示した種々の態様に対して形態及び詳細における変更を行うことができ、ここで開示する種々の態様は特許請求の範囲に対する限定として働くことは意図しないことが、当業者によって理解されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(I):
【化1】

で表されるポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物の製造方法であって、
式(II):
【化2】

で表されるアリール硫黄化合物を、塩素、臭素、ヨウ素、及びハロゲン間化合物からなる群から選択されるハロゲン、並びに式(III):
・・・・・・・(III)
で表されるフルオロ塩と反応させて式(IV):
【化3】

で表されるポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物を形成し、得られるポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物をフッ化物源と反応させてポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物を形成することを含み、
ここで、R、R、R、R、及びRの1つ又は2つはSF基であり、残りのそれぞれは、水素原子、ハロゲン原子、1〜18個の炭素原子を有する置換又は非置換アルキル基、ニトロ基、及びシアノ基からなる群から選択され;R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’の1つ又は2つはSR基であり、残りのそれぞれは、水素原子、ハロゲン原子、1〜18個の炭素原子を有する置換又は非置換アルキル基、ニトロ基、及びシアノ基からなる群から選択され;R1”、R2”、R3”、R4”、及びR5”の1つ又は2つはSFX基であり、残りのそれぞれは、水素原子、ハロゲン原子、1〜18個の炭素原子を有する置換又は非置換アルキル基、ニトロ基、及びシアノ基からなる群から選択され;
は、水素原子、シリル基、金属原子、アンモニウム基、ホスホニウム基、又はハロゲン原子であり;或いは、Rはそれ自体の分子又は他の分子の他のRと組合わさって単結合を形成し;
Mは、金属原子、アンモニウム基、又はホスホニウム基であり;
Xは、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である;
上記方法。
【請求項2】
アリールイオウ化合物と反応させるハロゲンが塩素(Cl)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
式(III)で表されるフルオロ塩がアルカリ金属フッ化物である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
フッ化物源が、周期律表の典型元素のフッ化物、周期律表の遷移元素のフッ化物、及び典型元素及び/又は遷移元素のこれらのフッ化物の間の混合物若しくは化合物、並びにこれらのフッ化物とフッ化物源活性化化合物及び/又は有機分子との混合物、化合物、塩、若しくはコンプレックスからなる群から選択される少なくとも1つの物質である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
得られるポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物とフッ化物源との反応を、塩素、臭素、ヨウ素、及びハロゲン間化合物からなる群から選択されるハロゲンの存在下で行って、ポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物を形成することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
式(I):
【化4】

で表されるポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物の製造方法であって、
式(V):
【化5】

で表されるアリールイオウ三フッ化物を、塩素、臭素、ヨウ素、及びハロゲン間化合物からなる群から選択されるハロゲン、並びに式(III):
・・・・・(III)
で表されるフルオロ塩と反応させて式(IV):
【化6】

で表されるポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物を形成し、得られるポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物をフッ化物源と反応させてポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物を形成することを含み、
ここで、R、R、R、R、及びRの1つ又は2つはSF基であり、残りのそれぞれは、水素原子、ハロゲン原子、1〜18個の炭素原子を有する置換又は非置換アルキル基、ニトロ基、及びシアノ基からなる群から選択され;R1”、R2”、R3”、R4”、及びR5”の1つ又は2つはSFX基であり、残りのそれぞれは、水素原子、ハロゲン原子、1〜18個の炭素原子を有する置換又は非置換アルキル基、ニトロ基、及びシアノ基からなる群から選択され;R1”’、R2”’、R3”’、R4”’、及びR5”’の1つ又は2つはSF基であり、残りのそれぞれは、水素原子、ハロゲン原子、1〜18個の炭素原子を有する置換又は非置換アルキル基、ニトロ基、及びシアノ基からなる群から選択され;
Mは、金属原子、アンモニウム基、又はホスホニウム基であり;
Xは、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である;
上記方法。
【請求項7】
アリールイオウ三フッ化物と反応させるハロゲンが塩素(Cl)である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
式(III)で表されるフルオロ塩がアルカリ金属フッ化物である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
フッ化物源が、周期律表の典型元素のフッ化物、周期律表の遷移元素のフッ化物、及び典型元素及び/又は遷移元素のこれらのフッ化物の間の混合物若しくは化合物、並びにこれらのフッ化物とフッ化物源活性化化合物及び/又は有機分子との混合物、化合物、塩、若しくはコンプレックスからなる群から選択される少なくとも1つの物質である、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
得られるポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物とフッ化物源との反応を、塩素、臭素、ヨウ素、及びハロゲン間化合物の群から選択されるハロゲンの存在下で行って、ポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物を形成することを更に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
式(IV):
【化7】

で表されるポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物の製造方法であって、
式(II):
【化8】

で表されるアリールイオウ化合物を、塩素、臭素、ヨウ素、及びハロゲン間化合物からなる群から選択されるハロゲン、並びに式(III):
・・・・・(III)
で表されるフルオロ塩と反応させてポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物を形成することを含み、
ここで、R1”、R2”、R3”、R4”、及びR5”の1つ又は2つはSFX基であり、残りのそれぞれは、水素原子、ハロゲン原子、1〜18個の炭素原子を有する置換又は非置換アルキル基、ニトロ基、及びシアノ基からなる群から選択され;R1’、R2’、R3’、R4’、及びR5’の1つ又は2つはSR基であり、残りのそれぞれは、水素原子、ハロゲン原子、1〜18個の炭素原子を有する置換又は非置換アルキル基、ニトロ基、及びシアノ基からなる群から選択され;
は、水素原子、シリル基、金属原子、アンモニウム基、ホスホニウム基、又はハロゲン原子であり;或いは、Rはそれ自体の分子又は他の分子の他のRと組合わさって単結合を形成し;
Mは、金属原子、アンモニウム基、又はホスホニウム基であり;
Xは、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である;
上記方法。
【請求項12】
アリールイオウ化合物と反応させるハロゲンが塩素(Cl)である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
式(III)で表されるフルオロ塩がアルカリ金属フッ化物である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
式(IV):
【化9】

で表されるポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物の製造方法であって、
式(V):
【化10】

で表されるアリールイオウ三フッ化物を、塩素、臭素、ヨウ素、及びハロゲン間化合物からなる群から選択されるハロゲン、並びに式(III):
・・・・・(III)
で表されるフルオロ塩と反応させてポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物を形成することを含み、
ここで、R1”、R2”、R3”、R4”、及びR5”の1つ又は2つはSFX基であり、残りのそれぞれは、水素原子、ハロゲン原子、1〜18個の炭素原子を有する置換又は非置換アルキル基、ニトロ基、及びシアノ基からなる群から選択され;R1”’、R2”’、R3”’、R4”’、及びR5”’の1つ又は2つはSF基であり、残りのそれぞれは、水素原子、ハロゲン原子、1〜18個の炭素原子を有する置換又は非置換アルキル基、ニトロ基、及びシアノ基からなる群から選択され;
Mは、金属原子、アンモニウム基、又はホスホニウム基であり;
Xは、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である;
上記方法。
【請求項15】
アリールイオウ三フッ化物と反応させるハロゲンが塩素(Cl)である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
式(III)で表されるフルオロ塩がアルカリ金属フッ化物である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
式(I):
【化11】

で表されるポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物の製造方法であって、
式(IV):
【化12】

で表されるポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物をフッ化物源と反応させてポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物を形成することを含み、
ここで、R、R、R、R、及びRの1つ又は2つはSF基であり、残りのそれぞれは、水素原子、ハロゲン原子、1〜18個の炭素原子を有する置換又は非置換アルキル基、ニトロ基、及びシアノ基からなる群から選択され;R1”、R2”、R3”、R4”、及びR5”の1つ又は2つはSFX基であり、残りのそれぞれは、水素原子、ハロゲン原子、1〜18個の炭素原子を有する置換又は非置換アルキル基、ニトロ基、及びシアノ基からなる群から選択され;
Xは、塩素原子、臭素原子、又はヨウ素原子である;
上記方法。
【請求項18】
フッ化物源が、周期律表の典型元素のフッ化物、周期律表の遷移元素のフッ化物、及び典型元素及び/又は遷移元素のこれらのフッ化物の間の混合物若しくは化合物、並びにこれらのフッ化物とフッ化物源活性化化合物及び/又は有機分子との混合物、化合物、塩、若しくはコンプレックスからなる群から選択される少なくとも1つの物質である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
Xが塩素原子である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
ポリ(ハロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物とフッ化物源との反応を、塩素、臭素、ヨウ素、及びハロゲン間化合物の群から選択されるハロゲンの存在下で行って、ポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物を形成することを更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
式(I)(R=Y):
【化13】

で表されるハロゲン化ポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物の製造方法であって、
式(I)(R=H):
【化14】

で表されるポリ(ペンタフルオロスルファニル)芳香族化合物をハロゲン化剤及び酸と反応させることを含み、
ここで、Yはハロゲンであり;R、R、R、及びRの1つ又は2つはSF基であり、残りのそれぞれは、水素原子、ハロゲン原子、1〜18個の炭素原子を有する置換又は非置換アルキル基、ニトロ基、及びシアノ基からなる群から選択される;
上記方法。
【請求項22】
式(IV’):
【化15】

(式中、R1”、R2”、R3”、R4”、及びR5”の1つ又は2つはSFCl基であり、残りのそれぞれは、水素原子、ハロゲン原子、1〜18個の炭素原子を有する置換又は非置換アルキル基、ニトロ基、及びシアノ基からなる群から選択される)
によって表されるポリ(クロロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物。
【請求項23】
残りのそれぞれが水素原子及びハロゲン原子からなる群から選択される、請求項22に記載のポリ(クロロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物。
【請求項24】
1,2−、1,3−、及び1,4−ビス(クロロテトラフルオロスルファニル)ベンゼン、1,3−ビス(クロロテトラフルオロスルファニル)−5−フルオロ−、−クロロ−、−ブロモ−、及び−ヨード−ベンゼン、1,4−ビス(クロロテトラフルオロスルファニル)−2,5−ジフルオロベンゼン、1,4−ビス(クロロテトラフルオロスルファニル)−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼン、1,2,3−、1,2,4−、及び1,3,5−トリス(クロロテトラフルオロスルファニル)ベンゼン、及び1,3,5−トリフルオロ−2,4,6−トリス(クロロテトラフルオロスルファニル)ベンゼンからなる群から選択される、請求項22に記載のポリ(クロロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物。
【請求項25】
1,3−ビス(クロロテトラフルオロスルファニル)ベンゼン、1,3−ビス(クロロテトラフルオロスルファニル)−5−ブロモベンゼン、1,4−ビス(クロロテトラフルオロスルファニル)ベンゼン、1,4−ビス(クロロテトラフルオロスルファニル)−2,5−ジフルオロベンゼン、1,4−ビス(クロロテトラフルオロスルファニル)−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼン、及び1,3,5−トリス(クロロテトラフルオロスルファニル)ベンゼンからなる群から選択される、請求項22に記載のポリ(クロロテトラフルオロスルファニル)芳香族化合物。
【請求項26】
式(I”):
【化16】

(式中、R、R、R、R、及びRの1つはSF基であり、残りのそれぞれは水素原子及びハロゲン原子からなる群から選択される)
によって表されるビス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン化合物。
【請求項27】
1,2−ビス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン、1,3−ビス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン、1,3−ビス(ペンタフルオロスルファニル)−5−フルオロ−、−クロロ−、−ブロモ−、及び−ヨード−ベンゼン、1,4−ビス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン、1,4−ビス(ペンタフルオロスルファニル)−2,5−ジフルオロベンゼン、及び1,4−ビス(ペンタフルオロスルファニル)−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼンからなる群から選択される、請求項26に記載のビス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン化合物。
【請求項28】
1,3−ビス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン、1,3−ビス(ペンタフルオロスルファニル)−5−ブロモベンゼン、1,4−ビス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン、1,4−ビス(ペンタフルオロスルファニル)−2,5−ジフルオロベンゼン、及び1,4−ビス(ペンタフルオロスルファニル)−2,3,5,6−テトラフルオロベンゼンからなる群から選択される、請求項26に記載のビス(ペンタフルオロスルファニル)ベンゼン。

【公表番号】特表2012−503016(P2012−503016A)
【公表日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−528043(P2011−528043)
【出願日】平成21年9月21日(2009.9.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/057714
【国際公開番号】WO2010/033930
【国際公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】