説明

ポンプの押下ヘッド

【課題】上方付勢状態で押し込み可能に起立したステムの上端部に嵌着させた装着筒部材に対して、弁部材及び梃部材を内蔵する本体を摺動下降可能に嵌合し、常時安定した液の噴出を行え、液切れが良く、液噴出の際の押し下げが容易である押下ヘッドの改良であり、上記効果を発揮しつつポンプの背丈を低くコンパクトに形成できる押下ヘッドを提案する。
【解決手段】装着筒部材Aを、ステム7外周上端部に嵌着させた装着筒10上部より環状摺動片11を突設するとともに、環状摺動片外周に本体Bのシリンダ筒23を摺動可能に嵌合させることにより、シリンダ筒がステムの外方に於いて摺動できる様に構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポンプの押下ヘッドに関し、詳しくは、装着したポンプの液噴出後の液切れが良く、ヘッド内での液詰まり等がなく、また、液噴出の際の押し下げが容易であるポンプの押下ヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
液体噴出ポンプとして、口頸部に装着キャップを嵌合して容器体に装着するとともに、装着キャップ上方に上方付勢状態で押し込み可能に突出したステムの上端に押下ヘッドを嵌着したものが知られている。また、これらのポンプの押下ヘッドとして、ステム内と連通する摺動筒を立設した装着筒部材と、摺動筒外周に嵌合させたシリンダ上方に、先端に噴出口を開口した弁室を備えるとともに、装着筒部材に対して押し下げ可能に設けた本体と、前方付勢状態で噴出口を閉塞し、シリンダ内より噴出口に至る流路を画成した弁部材と、弁部材と連繋させてヘッドの押し下げにより開弁させる特殊構成の梃部材とを備えたものが提案されている。(例えば特許文献1参照)
【0003】
この様な押下ヘッドを備えた液体噴出ポンプは常時安定した液の噴出を行えるとともに、液きれが良く、噴出口の密閉性に優れ、しかもヘッドの押し下げを容易に行え、また、長期の使用にも安定した液の噴出を行える優れたものである。
【特許文献1】特開2002−326044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、この様な押下ヘッドを備えた液体噴出ポンプは上記した特有の効果を発揮するものであるが、頭部が大きくなり、特に高さが高くなる傾向がある。従って、背の低さ、コンパクトさを要求されるポンプへ適応し難く、また、全体的なデザインも制約を受ける傾向がある。
【0005】
本発明は上記した特殊形態の押下ヘッドを更に改良したものであって、装着したポンプをコンパクトに形成でき、デザインの制約も少なく、しかも従来のこの種のポンプが備える、常時安定した液の噴出、液切れの良さ、噴出口の良好な密閉性、ヘッドの容易な押し下げ、耐久性等の効果を併せて発揮することのできる優れたポンプの押下ヘッドを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の押下ヘッドは、ポンプのステム上端に嵌着して使用する。装着するポンプの形態は、ステムを押し下げることによりポンプ内の液がステムより噴出する如く構成したものであれば採用でき、例えば、シリンダとピストンとを備えた一般的なポンプ構造を備えたもの、或いはエアゾールタイプのもの等を採用できる。
【0007】
本発明の押下ヘッドは、装着筒部材と、本体と、弁部材と、梃部材とを備えている。
【0008】
装着筒部材はステムの上端に嵌着固定してステム内と本体のシリンダ筒内とを液密に連通させるもので、合成樹脂等により形成される。また、本体のシリンダ筒内周に摺動可能に嵌合する環状摺動片を備えている。この摺動嵌合片はステムの外周上端部に嵌着固定した装着筒の上部より突設しており、ステムから上方へ若干突出した状態であっても、或いはステムの上端と同じか或いはステムの上端より下方位置に於いて、装着筒の上部より外方へ突出した形態であっても良い。また、その形状としては上方に広がるテーパ状、所謂逆スカート状であっても或いは環状突部の形態をとっても良い。更に装着筒の外周下部からは梃部材の下端を係止するための支持壁を備えている。支持壁の形状は上記梃部材の下端を係止出来れば特に限定されないが、その外周縁部を本体の周壁内周を案内する案内縁部として構成すると良い。案内縁部の具体的構成としては、その外周面を本体周壁内周面と僅かに隙間をあけた状態とすれば良く、外周縁部を筒状に形成しても良い。
【0009】
本体は下端部のシリンダ筒上に、先端に噴出口を開口した弁室を備えており、弁部材及び梃部材を内蔵している。また、ステムに対して装着筒部材を介して押し下げ可能に装着しており、合成樹脂等により形成される。
【0010】
弁部材は、弁室内において前方付勢状態で噴出口を閉塞し、また、シリンダ筒内より噴出口に至る流路を画成したもので、合成樹脂或いはエラストマー等により形成される。
【0011】
梃部材は合成樹脂等により形成され、装着筒部材に対する本体の押し下げ時に弁部材を後方へ引き出す如く揺動可能に枢着したもので、弁部材の後端部に上端を連繋させるとともに、下端部を装着筒部材の支持壁上面に当接係止させ、本体の押し下げ時に支持壁により下端部を押し上げられて弁部材を引き出す如く構成している。
【0012】
第1の手段として、上方付勢状態で押し込み可能にステム7を起立したポンプに装着する押下ヘッドであって、ステム7外周上端部に嵌着させた装着筒10上部より環状摺動片11を突設するとともに、装着筒10下部より外方へフランジ状の支持壁12を延設してなる装着筒部材Aと、環状摺動片11外周に摺動下降可能に嵌合させたシリンダ筒23上方に、先端に噴出口aを開口した弁室Rを備えるとともに、装着筒部材Aに対して押し下げ可能に設けた本体Bと、弁室R内において前方付勢状態で噴出口aを閉塞し、且つ、シリンダ筒23内より噴出口aに至る流路を画成してなる弁部材Cと、弁部材Cの後端部に上端を連繋させるとともに、下端部を支持壁12上面に当接係止させ、且つ、装着筒部材Aに対する本体Bの押し下げ時に弁部材Cを後方へ引き出す如く揺動可能に本体Bに枢着した梃部材Dとを備え、ステム7に対する本体Bの押下抗力がステム7自体の押下抗力より小である如く構成した。
【0013】
第2の手段として、前記第1の手段に於いて、装着筒部材Aの支持壁12外周縁部を本体Bの周壁20内周を案内する案内縁部として構成した。
【発明の効果】
【0014】
以上説明した如く本発明の押下ヘッドは、既述構成としたことにより、従来のこの種の押下ヘッドと比較して、その装着筒部材Aを、ステム7上端から殆ど突出しない或いは全く突出しない状態でセットすることができ、押下ヘッド1の高さを低くできて全体的にコンパクトな液体噴出器を得られる。また、構造的には装着筒部材の変更の他に、例えばシリンダ筒23の径を若干大きくする程度で大幅な変更がなく、構造変更による製造コストの上昇を極力押さえることができる。更に、従来のこの種のポンプが備える液切れの良さ、噴出口aの良好な密閉性、ヘッドの容易な押し下げ、耐久性等の効果を併せて発揮するものである。
【0015】
また、装着筒部材Aの支持壁12外周縁部を本体Bの周壁20内周を案内する案内縁部として構成した場合には、シリンダ筒23と環状摺動片11との嵌合のみで支持されている本体Bの上下動をより安定的に行える利点を兼ね備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施例の形態を図面を参照して説明する。
【0017】
図1に於いて1は本発明押下ヘッドであり、該押下ヘッド1は容器体2に装着した液体噴出ポンプ3の上端部を構成している。容器体2は、胴部4より口頸部5を起立した合成樹脂製のものを使用している。液体噴出ポンプ3は、口頸部5に装着キャップ6を嵌合して容器体2に装着するとともに、装着キャップ6上方に上方付勢状態で押し込み可能に突設したステム7の上端に押下ヘッド1を嵌着し、押下ヘッド1を押し下げることにより容器体内へ垂下したシリンダ8内の液がステム7を介して押下ヘッド1の噴出口aより噴出する如く構成している。
【0018】
押下ヘッド1は、装着筒部材Aと、本体Bと、弁部材Cと、梃部材Dとを備えている。
【0019】
装着筒部材Aは、ステム7の外周上端部に嵌着させた装着筒10上部より環状摺動片11を突設するとともに、装着筒10下部より外方へフランジ状の支持壁12を延設している。更に、支持壁12外周縁部からは案内筒13を立設している。環状摺動片11は、上方へ拡開するテーパ筒状をなす所謂逆スカート状で、上端縁をステム7上端より若干上方へ突出している。また、案内筒13の後部両側所定位置には梃部材Dの後述する枢着軸の案内筒13に対する相対的上下動を可能ならしめるための切溝15を設けている。
【0020】
本体Bは、ケーシングB1と噴出口部材B2とで構成している。ケーシングB1は周壁20上端縁より頂壁21を延設してなる下端開口の有頂筒状をなし、周壁20前部に前端を開口した横筒22を後方へ一体に延設し、更に横筒22下面よりシリンダ筒23を垂設しており、上記環状摺動片11外周に摺動下降可能にシリンダ筒23を嵌合させて装着している。横筒22下面のシリンダ筒23内中央部には棒状突起24を垂設している。この棒状突起24はステム7の内周上端に周方向複数突設した係止リブに吐出弁の弁体14が引っ掛かる不都合を防止するために設けている。
【0021】
上記横筒22は後部に梃部材Dの上部が収納できるスペースをあけており、また、後壁中央に窓孔を穿設し、その周囲の後壁前面より前方へシール筒25を突設し、下部にはシリンダ筒23内と連通する連絡口を設けている。更に前部には噴出口部材B2を嵌着させている。この噴出口部材B2は先端に噴出口aを開口させて横筒22とともに弁室Rを形成するもので、横筒22内前部に後部を液密に嵌着させるとともに、前部をテーパ状に縮径してその先端に噴出口aを開口している。また、内部には周方向複数のリブを突設している。
【0022】
弁部材Cは、横棒状をなし、外周前後方向中間部より後方へスカート状部を延設するとともに、スカート状部後端縁より折り返した逆スカート状部の外周縁をシール筒25内周に摺動可能に嵌合させている。また、横筒22の後壁前面とスカート状部の分岐部分とに介在させたコイルスプリング30により前方へ付勢して先端を噴出口aに圧接して閉塞している。また、後端を上記窓孔より突出させ、突出部分に梃部材係合用の環状凹部31を凹設している。これにより、シリンダ筒23内から連絡口を介して横筒22内を通り噴出口aに至る流路を画成している。
【0023】
梃部材Dは、図2に示す如き形態をなし、上端部を弁部材Cの後端部に連係した垂直板部40下端部より前方へ下る二股の傾斜板部41を延設するとともに、各傾斜板部41の下端部を装着筒10両側の支持壁12上面に当接係止させている。本実施例に於ける梃部材Dと弁部材Cとの連係は、垂直板部40の上端部中央に設けた切欠部42に弁部材Cの上記環状凹部31を嵌合させている。また、屈折部分両側に突設した枢着軸43を、それぞれケーシング周壁20両側の軸受(図示せず)に回動可能に嵌合させている。
【0024】
そして、コイルスプリング30により前方付勢された弁部材Cにより垂直板部40上部の連係部分を常時前方へ付勢させており、本体Bの押し下げにより、装着筒部材Aの支持壁12が傾斜板部41を押し上げて梃部材Dを回動させ、コイルスプリング30の前方付勢力に抗して弁部材Cを後方へ引き出す如く構成している。
【0025】
本発明では、この様な押下ヘッドに於いて、ステム7に対する本体Bの押下抗力がステム自体の押下抗力より小になる様に構成している。この様に構成するために、基本的には装着するポンプのステムを上方付勢させるための弾性材の弾発力よりも、弁部材Cを前方付勢させるための弾性材の弾発力を小さく選択すれば良く、その他環状摺動片とシリンダ筒との摩擦力,梃部材の揺動時の摩擦力等を考慮してこれらを選択すれば良い。
【0026】
上記の如く構成した液体噴出ポンプ3は、図1の状態から押下ヘッド1を押し下げると、ステム7自体の押下抗力の方が本体Bのステム7に対する押下抗力より大きいため、最初ステム7は下がらず、装着筒部材Aに対して本体Bが下降する。この際、梃部材Dの下端部が装着筒部材Aの支持壁12上面に押し上げられて枢着軸43を中心に回動し、その上端部が後方へ回動して弁部材Cをコイルスプリング30の弾発力に抗して後方へ移行させ、噴出口aが開く。次いでステム7が下降し、該ステム7の下降によりポンプ内の液がステム7よりシリンダ筒23を通り、連絡口から流路を介して噴出口aより外部へ噴出する。
【0027】
次に押下ヘッド1の押圧を解除すると、最初ステム7の上方付勢力により押下ヘッド1が上昇する。この際、例えば押下ヘッド1上面を押圧した手が離れないうちにステム7の上昇が行われ、噴出口aは開いたままの状態で行われる。従って、この時点で横筒22内は負圧状態となる。次いで、手を離す余地ができ、コイルスプリング30の弾発力により弁部材Cが前方へ移行して噴出口aを閉塞し、それに伴い梃部材Dにより本体Bを装着筒部材Aに対して上方へ押上げ、元の状態に戻る。
【0028】
図3は他の例を示すもので、図1の例に於いて、弁部材をのスカート状部の部分を別体に形成し、また、外周前後方向中間部に突設した係止突起32と横筒22の後壁との間にコイルスプリング30を介在させて弁部材Cを前方付勢させている。その他は図1の例と同様であるので説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明押下ヘッドの縦断面図である。(実施例1)
【図2】本発明押下ヘッドを構成する梃部材の斜視図である。(実施例1)
【図3】本発明押下ヘッドの縦断面図である。(実施例2)
【符号の説明】
【0030】
A…装着筒部材,10…装着筒,11…環状摺動片,12…支持壁
B…本体,23…シリンダ筒
C…弁部材
D…梃部材
R…弁室
a…噴出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方付勢状態で押し込み可能にステム7を起立したポンプに装着する押下ヘッドであって、ステム7外周上端部に嵌着させた装着筒10上部より環状摺動片11を突設するとともに、装着筒10下部より外方へフランジ状の支持壁12を延設してなる装着筒部材Aと、環状摺動片11外周に摺動下降可能に嵌合させたシリンダ筒23上方に、先端に噴出口aを開口した弁室Rを備えるとともに、装着筒部材Aに対して押し下げ可能に設けた本体Bと、弁室R内において前方付勢状態で噴出口aを閉塞し、且つ、シリンダ筒23内より噴出口aに至る流路を画成してなる弁部材Cと、弁部材Cの後端部に上端を連繋させるとともに、下端部を支持壁12上面に当接係止させ、且つ、装着筒部材Aに対する本体Bの押し下げ時に弁部材Cを後方へ引き出す如く揺動可能に本体Bに枢着した梃部材Dとを備え、ステム7に対する本体Bの押下抗力がステム7自体の押下抗力より小である如く構成したことを特徴とするポンプの押下ヘッド。
【請求項2】
装着筒部材Aの支持壁12外周縁部を本体Bの周壁20内周を案内する案内縁部として構成してなる請求項1記載のポンプの押下ヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−229604(P2007−229604A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−53728(P2006−53728)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】