説明

ポンプの筒先制御装置

【目的】 ポンプの筒先制御装置において、放水ノズル側でのポンプ運転制御の操作を、ポンプ側の状態を確認しながら、適切に行えるようにすること。ポンプ側からの情報信号を伝達する場合においても、ホ−スに沿わせる導線数を増さず、導線端子接続部構造の単純化、防水、ノイズ防止、送信の確実化を行うこと。
【構成】 ポンプ1側にポンプの状態を検知して発信する発信手段と、放水ノズル5側にその情報信号を受信し表示する受信・表示手段を設けた。放水ノズル側とポンプ側のそれぞれの発信手段は、1つが合成交流信号を発信し、他の1つが直流信号を発信するものであって、同一の導線を使用して双方向に信号を伝達するようにした。ポンプ側の発信手段中に、自動的に又は放水ノズル側からの指令信号により、同一時間帯で1つの情報を選択切換する切換器を設けた。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は消防ポンプ等のポンプの筒先制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】消防ポンプ等のように、動力を付けたポンプにホ−スを何本も長く接続して、その一番先に接続した放水ノズルを両手で持って放水作業をする場合に、消防ポンプの側で運転操作するのではなく、放水ノズルを持って放水作業をしている者が放水ノズル側で消防ポンプの運転を操作するのが、ポンプの筒先制御装置である。従来のポンプの筒先制御装置は、ホ−スに送信のための導線を沿わせ、放水ノズル側の操作部にポンプの運転を制御するための信号の送信装置を有し、一方的に制御の指令を出すだけであった。
【0003】
【発明が解決しようとする問題点】この場合、ポンプ側の状態がどうなっているかを放水作業員は知らないから、放水ノズル側での運転操作に不都合を生じたり、適正を欠く場合がある。例えば、ポンプ(即ちポンプ駆動用のエンジン)を始動させる場合に気化器のスロットル開度が始動位置にあることが必要であり、始動信号を送る場合にそのことを放水ノズル側で確認したい。又、放水運転中に放水量を増したいと考えた場合に、そのためにエンジン回転数をあげることができるかどうかを知っておく方がよい。そうでないとエンジン回転数を上げすぎてエンジン焼付きを起こすことも考えられる。
【0004】次に前記の対策として、放水ノズル側にディスプレ−を備え、ポンプ側からの信号発信により、運転状況を表示させる場合に、次のような問題がある。ポンプ側と放水ノズル側とで、電気信号のやり取りをするために、ホ−スに送信のための導線を沿わせ、ホ−スを長く接続する時にはホ−スの両端の接続金具(雄、雌、1ヶづつが付いている)を用いて接続するのであるが、導線もまた、接続金具を利用してここに端子を出しておき、ホ−スの接続即導線の接続としたい。火災の消火作業においては、できるだけ早く準備動作を終わらせて放水消火に入ることが重要である。だが、ホ−スの中は水が流れるのであり、接続金具端部の状況によっては、絶縁が不完全になったり、送信が不完全になったり、ノイズを発生させたりする問題を生ずる。双方向送信の場合導線を増すことは、ホ−ス接続部の極数の増加、接続金具等の複雑化、前記の問題の発生の助長、コストアップ等を生ずることになる。
【0005】
【問題点を解決するための手段】ポンプ側に必要な情報となるポンプの状態を検知してそれを電気信号に変え放水ノズル側に発信する発信手段と、放水ノズル側に前記のポンプ側からの信号を受信してポンプ側の情報を表示する受信・表示手段を設けた。放水ノズル側とポンプ側のそれぞれの発信手段は、1つが合成交流信号を発信し、他の1つが直流を信号として発信するものであって、ホ−スに沿わせた同一の導線を使用して双方向に信号を伝達できるようにした。
【0006】また、ポンプ側から複数の情報信号を発信するためのポンプ側の発信手段に、情報信号を1から他の1つに切換える切換器を設けた。この情報信号の切換器は、ポンプの運転状態に応じて自動的に切換る自動切換器、又は、放水ノズル側の送信部からの情報を指定するための信号を受信して切換る切換器とした。
【0007】
【実施例】図は、本考案をエンジン付可搬消防ポンプの筒先制御装置に実施した例である。1が動力用のエンジンと消防用ポンプとが−体に構成されたエンジンであって、枠に−体に構成され、ハンドルを持って運べるものである。2がポンプの吐出口であって、その先にホ−ス3が複数個、直列に接続されている。ホ−ス3の両端は雌、雄の接続金具4,4・・が1ケづづついて、簡単に接続し、長くつなぐことができる。ホ−ス3の一番先に放水ノズル5が同じく接続されている。
【0008】筒先制御のできない消防ポンプの場合は、消火作業を行うのに、ポンプの操作(始動・停止・流動制御等)を行うための人がポンプのそばに1名と、長くつないだホ−スの先に放水ノズルを持って、火元に向けて消火放水をする人1名、及び、この2人の間の連絡をつとめる伝令員の3名が必要であった。これが筒先制御可能になると、放水ノズルを持って消火作業をする人1名で、消火しやすいように自由にポンプを操作することができる。
【0009】エンジンポンプ1は、ポンプのそばで手動操作をすることが可能である。その外に筒先制御を可能とする装置が設けてある。図1、2おいて、6は放水ノズル5の外部に取りつけられた操作部であって、エンジンポンプ1を運転制御するためのものである。この操作部6は、電源7、ポンプ側に制御用信号を発信する発信手段8、ポンブ側からの信号を受信してデイスプレ−に表示する受信・表示手段9から構成される。電源7は電池である。発信手段8はスイッチ部10と、合成交流信号を出す発信手段11(例えば水晶発信器)から成る。受信・表示手段9は、比較器12、ディスプレ−増巾器13、ディスプレ−14から成る。15は安定回路である。
【0010】エンジンポンプ1側には電源16がある。これは、エンジンポンプ1側の各電気機器を動かすもので、エンジンの点火装置や始動スタ−タ用と共用のバッテリである。17は、放水ノズル側から制御用信号を受信し、解読し、各制御手段に分配伝達する受信手段であって、増巾器18、解読器19、増巾器20、光アイソレ−タ21から成る。22はエンジンポンプ1の制御手段で、この実施例では2つの制御内容を有している。即ち1つは、エンジンポンプ1を始動・停止させるもので、 始動停止スイッチング部22とコントロ−ラ23から成る。もう1つは、ポンプの流量制御をエンジンの回転数の変更で行うもので、駆動器24、ギヤ−ドモ−タ25から成る。ギヤ−ドモ−タ25はスロットルを動かす。
【0011】さらにエンジンポンプ1側には、エンジンポンプ1の状態を検知して、それを電気信号に変え放水ノズル側に発信する発信手段26を有する。エンジンポンプ1側から発信する電気信号は直流である。また、この実施例では、2つの情報信号を送る。1つはエンジンポンプ1の運転開始前にスロットル開度を知らせることであって、ギヤ−ドモ−タ25、ポテンショメ−タ27、スロットル位置検出器28から成る。もう1つの情報信号は、エンジンポンプ1の運転中に流量制御のためにエンジン回転数を知らせることであって、エンジン回転数とマグネトの発電量が連動していることを利用して、マグネト29、整流器30により発信する。さらに自動切換器31、発信器32、整流器33は、エンジン回転が始まるとマグネトの発電を受けてスロットル位置検出器28の出力を止めて、エンジン回転数のみを発信させる。
【0012】ホ−ス3,3・・にはそれぞれ2本の導線を沿わせており、それぞれのホ−ス、ポンプ吐出口、放水ノズルが接続金具4,4・・で接続される時、この導線もそれぞれの端子が接続される。接続金具端部にある導線の端子接続部は一応防水構造となっており、浸水したり電気がリ−クするのを防ぐ構造となっている。導線はエンジンポンプ1側の制御部と放水ノズル側の操作部を電気的に接続している。
【0013】
【発明の効果】エンジンポンプ側に必要な情報となるエンジンポンプの状態を検知して情報信号として発信する発信手段と、放水ノズル側にその信号を受信して表示する受信表示手段を設けたので、放水ノズル5を両手で持って消火放水作業をする者は、エンジンポンプの状態を知りなから、エンジンポンプを適切に1人で遠隔操作することができる。
【0014】放水ノズル5側から発信する信号は合成交流信号であり、エンジンポンプ1側から発信する信号は直流であるから、同一の導線を使用して双方向に信号を伝達することができる。+側と−側の導線を考えるとホ−スに沿わせる導線は2本で間に合う。さらに、エンジンポンプ1側から複数の情報信号を発信するための発信手段に、情報信号を同一時間帯に1つだけ選択切換する切換器を有するから、導線を増す必要がない。実施例では、エンジンが回転を始める前は、スロットル開度のみを信号として発信し、エンジンが回転を始めると、マグネト29の発電を受信して自動切換器31がスロットル位置検出器28の出力を自動的に停止させるので、マグネト29からの情報信号のみが伝達されることになる。ポンプ側から発信する情報信号の切換器は実施例のような自動切換器のみではなく、放水ノズル側から情報選択信号を送って情報を切換る切換器とすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例として、本考案の筒先制御装置を含むエンジン付可搬消防ポンプの全体組立図。
【図2】図1についてのブロックダイヤグラム
【符号の説明】
1 ポンプ(エンジンポンプ)
3 ホ−ス(導線入り)
5 放水ノズル
6 操作部
8 放水ノズル側の発信手段
9 放水ノズル側の受信・表示手段
17 エンジポンプ側の受信手段
22 エンジンポンプの制御手段
26 エンジンポンプ側の発信手段
31 自動切換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ポンプと、そのポンプの吐出口に接続したホースと、ホースの先に接続した放水ノズルと、ポンプ側にポンプの始動・停止・流量制御等を行うための制御手段と、放水ノズル側に制御のための操作部と、前記の制御手段と操作部を電気的に接続する導線をホースに沿わせて有するものにおいて、ポンプ側にポンプの状態を検知してそれを電気信号に変え放水ノズル側に発信する発信手段と,放水ノズル側に前記のポンプ側からの信号を受信してポンプ側の情報を表示する受信・表示手段を有することを特徴とするポンプの筒先制御装置。
【請求項2】 放水ノズル側とポンプ側のそれぞれの発信手段は、1つが合成交流信号を発信し、他の1つが直流を信号として発信するものであって、ホ−スに沿わせた同一の導線を使用して双方向に信号を伝達することを特徴とする請求項1に記載のポンプの筒先制御装置。
【請求項3】 ポンプ側から発信・伝達する情報(発信すべきポンプの状態の種類)は複数であって、ポンプ側の発信手段は伝達すべき情報信号を1から他の1つへ切換える切換器を有して、ホ−スに沿わせた同一の導線を使用して複数の情報をを伝達すると共に、前記の情報信号の切換器は、ポンプの運転状態に応じて自動的に切換える自動切換器 又は、放水ノズル側の送信部からの情報指定信号を受信して切換える切換器であることを特徴とする請求項1、請求項2に記載のポンブの筒先制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開平6−170009
【公開日】平成6年(1994)6月21日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−199806
【出願日】平成3年(1991)7月16日
【出願人】(000109945)トーハツ株式会社 (8)