説明

ポンプ付き容器

【課題】所定量の内容物を残した状態でポンプによる内容物の取り出しを停止して、内容物の残量が少なくなったことをユーザーに認識させ、さらに内容物の補充や新規購入が必要であることを認識させることができ、しかも残存する内容物を簡単な操作で迅速に取り出せるポンプ付き容器を提供する。
【解決手段】容器本体1に、内容物Cの殆どを収容する主室5と、数回分の使用量に相当する予備内容物C1を収容する予備室6とを設ける。予備室6に、予備室6の容積を減少して予備内容物C1を主室5側へ送る送出具26を設ける。ポンプ3による主室5の内容物Cの取り出しが不能となった時点で、内容物の残りが少なくなったことをユーザーに認識させることができる。この後、送出具26を予備室6の容積が減少する向きに変位操作して予備内容物C1を主室5側へ送出し、ポンプ3で取り出せるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧水や、シャンプー、リンスなどの頭髪用洗浄液に代表される液状の内容物を取り出すためのポンプを備える容器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種のポンプ付き容器の基本構造は、本出願人が先に提案した特許文献1に公知である。そこではポンプ付き容器を、容器本体と、液状の内容物を取り出すためのポンプと、容器本体の内部を上側の気相部と下側の液相部とに区分する仕切体などで構成している。仕切体は、液相部の液位の変化に追随して下方摺動でき、内容物が空気に触れて酸化あるいは変質するのを防止する。ポンプの吸込口には、容器本体の内底に達する吸引パイプが連結してあり、内容物を容器本体の底側部分から吸引して取り出すことができる。容器本体の底壁は吸引パイプの吸引口に向かって低くなるように形成してある。
【0003】
上記のポンプ付き容器は、吸引パイプの吸引口を底壁の最も低い位置に臨ませているため、内容物を最後まで無駄なく使い切ることができる。しかし、前回の使用時に必要量の内容物を取り出すことができた場合には、内容物の残量が1回分の使用量に満たなかったとしても、ユーザーがそのことを意識することは少ない。殆どの場合は、ポンプによる内容物の取り出しができなくなって始めて、容器が空になったことを認識する。そのため、内容物を補充し、あるいは内容物入りのポンプ付き容器を新たに購入するまでの間、不自由な思いをすることになる。
【0004】
上記のような不具合を解消するために、数回分の使用量が残る状態でポンプによる内容物の取り出しを停止して、その残量が少なくなったことをユーザーが認識できるようにしたポンプ付き容器が提案されている(特許文献2)。そこでは、内容物の上面を平坦にする浮蓋が容器本体の内部に配置してあり、吸引パイプの下部に設けたストッパーで浮蓋の下降摺動を規制して、ポンプによる内容物の取り出しを停止し、所定量の内容物を残すようにしている。ストッパーはフランジ状に形成してあり、吸引パイプに形成した周回状の溝で受け止められている。ポンプによる内容物の取り出しが停止された状態では、残った内容物の上面の形状がすり鉢状になる。
【0005】
容器内に残る内容物を取り出すときは、容器本体にねじ込み連結されたポンプを容器本体から緩めて分離し、浮蓋を容器本体の上蓋で受け止めた状態でポンプを介して吸引パイプを強制的に引き抜き、ストッパーと吸引パイプの溝との係合を解除して、浮蓋を吸引パイプの溝より下方に位置させる。この状態でポンプを容器本体に再びねじ込むことにより、残った内容物をポンプで吸引することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−267416号公報(段落番号0019、図1参照)
【特許文献2】特開2007−261680号公報(段落番号0014、図2参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2のポンプ付き容器によれば、所定量の内容物を残した状態でポンプによる内容物の取り出しを停止して、内容物の残量が少なくなったことをユーザーに認識させることができる。しかし、容器内に残る内容物を取り出す際には、ポンプを容器本体から分離して浮蓋の位置を下降させ、ポンプを再び容器本体にねじ込む必要があるため、一連の操作に多くの手間と時間が掛かり煩わしい。ポンプを着脱する間に、内容物が空気に晒されてしまう不利もある。
【0008】
また、浮蓋がストッパーで受け止められた状態において、内容物がすり鉢状に残ることを前提とするので、内容物の粘度が低い場合にすり鉢形状を保持できず、吸引パイプの吸引口の位置まで内容物が取り出されてしまい、充分な量の内容物を残せなくなる。また、容器本体を傾斜姿勢で収納する場合には、内容物が吸引パイプの吸引口を覆うように流動して、次回使用時に残存する内容物がポンプで取り出されるおそれがあり、この場合にも充分な量の内容物を確実に残せないことがある。
【0009】
本発明の目的は、数回分の使用量に相当する内容物を残した状態で、ポンプによる内容物の取り出しを一旦停止して、内容物の残量が少なくなったことをユーザーに認識させ、さらに内容物の補充や新規購入が必要であることを認識させることができ、しかも、容器内に残る内容物を取り出すための操作を簡便化して、内容物を迅速に取り出すことができるポンプ付き容器を提供することにある。
本発明の目的は、内容物の粘度が低い場合であっても、適量の内容物を残した状態でポンプによる内容物の取り出しを停止でき、低粘度の内容物から比較的粘度が高い内容物まで広範に適用できる、汎用性に優れたポンプ付き容器を提供することにある。
本発明の目的は、容器本体が傾斜姿勢で収納される場合であっても、適量の内容物を残した状態でポンプによる内容物の取り出しを停止でき、しかも、使用開始から内容物を使い切るまで、内容物が空気に触れるのを防止できるポンプ付き容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るポンプ付き容器は、図1および図2に示すように、液状の内容物Cを収容する容器本体1と、容器本体1の上部に装着されて内容物Cを取り出すためのポンプ3と、ポンプ3の吸込口に連結されて内容物Cを容器本体1の底面側から吸い込む吸引パイプ15とを備えている。容器本体1は、内容物Cの殆どを収容する上方の主室5と、数回分の使用量に相当する予備内容物C1を収容する下方の予備室6とを備えている。予備室6に、予備室6の容積を減少して予備内容物C1を主室5側へ送る送出具26を設ける。ポンプ3による主室5の内容物Cの取り出しが不能となった時点で、送出具26を予備室6の容積が減少する向きに変位操作する。以て、主室5側へ送出された予備内容物C1をポンプ3で取り出すようにする。
【0011】
図3に示すように、容器本体1の内部に、主室5を上側の気相部5Aと、下側の液相部5Bとに区分する仕切体7を配置する。仕切体7は、主室5内の液相部5Bの液位変化に追随しながら吸引パイプ15に沿って下降摺動できるように設ける。仕切体7の下摺動限界位置より下方に予備室6を配置する。
【0012】
図1に示すように、予備室6は、容器本体1の主筒壁1aに連続して下向きに開口する下筒壁1bと、下筒壁1bに装着した底蓋25とで区画し、底蓋25の内面側に送出具26を配置する。送出具26は、予備内容物C1を主室5へ向かって送出する弁体34と、底蓋25に開口した操作開口32を介して予備室6の外面に臨む操作体38とを含んで構成する。送出具26の移動を規制する規制構造を、操作体38の近傍に設ける。以て、規制構造の規制機能を解除した状態において、送出具26を予備室6の容積が減少する向きに移動できるようにする。
【0013】
図1に示すように、規制構造は、互いに係合する一対の係合体33・40で構成する。係合体33・40の一方は操作開口32の開口周縁壁に、他方は開口周縁壁に臨む送出具26の下面に形成する。
【0014】
図1に示すように、スタンドを兼ねる底キャップ4を容器本体1の底に回転自在に装着して、下筒壁1bと底蓋25の外面を覆うようにする。規制構造は、図11に示すように、操作体38に形成したねじ体48と、底キャップ4の内面に設けられて、ねじ体48と噛み合うねじ体49とで構成する。送出具26は、底蓋25と送出具26との間に設けた回り止め構造で回転不能に保持する。
【0015】
図1に示すように、スタンドを兼ねる底キャップ4を容器本体1の底に装着して、下筒壁1bと底蓋25の外面を覆うようにする。底キャップ4の内面に、操作体38の少なくとも一部を収容して、操作体38が不用意に押し込み操作されるのを防護する筒ボス44を設ける。
【0016】
容器本体1の内部に、主室5を上側の気相部5Aと、下側の液相部5Bとに区分する仕切体7を配置する。仕切体7は、主室5内の液相部5Bの液位変化に追随しながら吸引パイプ15に沿って下降摺動できるように設ける。仕切体7の中央部分に、吸引パイプ15の外周面に密着するボス部22を設ける。ボス部22は、上ボス61および下ボス62で構成する。上ボス61および下ボス62は、それぞれ径方向へ弾性変形可能なテーパー状のシール筒63・70を有する。両シール筒63・70の突端に、吸引パイプ15の外周面に接触するシール部66・72を形成する。
【発明の効果】
【0017】
本発明においては、容器本体1に内容物Cの殆どを収容する主室5と、数回分の使用量に相当する予備内容物C1を収容する予備室6とを設け、予備室6内に設けた送出具26を操作することにより、予備室6内の予備内容物C1を主室5へ送出できるようにした。したがって、本発明のポンプ付き容器によれば、主室5内の内容物Cを消費し切った時点で、ポンプ3による内容物の取り出しを一旦停止して、内容物の残量が少なくなったことをユーザーに認識させ、さらに内容物の補充や新規購入が必要であることを認識させることができる。
【0018】
また、ポンプ3による内容物の取り出しが停止したのちは、送出具26で予備室6内の予備内容物C1を主室5側へ送出して、所定量の予備内容物C1をポンプで取り出すことができるので、内容物を補充し、あるいは新規購入するまでの間、ユーザーが不自由を感じることもない。さらに、予備室6側に設けた送出具26を操作して、予備内容物C1を主室5側へ送出するので、従来のこの種のポンプ付き容器に比べて、容器内に残る内容物を取り出すための操作を著しく簡便化して、内容物を迅速に取り出すことができる。
【0019】
さらに、本発明においては、内容物の粘度が低い場合であっても、適量の内容物を確実に残した状態で、ポンプ3による内容物の取り出しを停止でき、低粘度の内容物から比較的粘度が高い内容物まで広範に適用できる、汎用性に優れたポンプ付き容器が得られる。同様に、容器本体1が傾斜姿勢で収納される場合であっても、適量の内容物を確実に残した状態でポンプ3による内容物の取り出しを停止できる。
【0020】
容器本体1の内部に、液相部5Bの液位変化に追随して下降摺動する仕切体7を配置し、仕切体7の下摺動限界位置より下方に予備室6を配置すると、仕切体7が下摺動限界位置まで下降した状態でポンプ3による内容物の取り出しを停止できる。したがって、常に所定量の予備内容物C1が予備室6に確実に残る状態でポンプ3による内容物の取り出しを停止して、内容物が補充され、あるいは新規購入されるまでの時間を、残った予備内容物C1を使用することで稼ぐことができる。さらに、使用開始から内容物を使い切るまで、内容物が空気に触れるのを仕切体7で確実に防止できる利点もある。
【0021】
予備室6を下筒壁1bと底蓋25とで区画し、底蓋25の内面側に配置した送出具26の移動を規制構造で規制し、その規制機能を解除した状態において、送出具26を予備室6の容積が減少する向きに移動できるようにすると、不用意に送出具26が移動するのを確実に規制できる。例えば、落下衝撃を受けた送出具26が、予備室6の容積を減少する向きに移動することを規制できる。つまり、ユーザーが明確な意図を持って送出具26を操作し、規制構造の規制機能を解除するまでは、送出具26の移動を確実に規制して、主室5内の内容物Cが消費されるまでの間、所定量の予備内容物C1を予備室6に確実に残すことができる。
【0022】
底蓋25の操作開口32の開口周縁壁に設けた係合体33と、開口周縁壁に臨む送出具26の下面に形成した係合体40とで規制構造を構成すると、送出具26に設けた操作体38を予備室6の内部へ向かって単に押し込み操作するだけで、規制構造の規制機能を解除できる。したがって、ポンプ3による内容物の取り出しが停止した後の、容器内に残る内容物を取り出すための手間を省いて、内容物をさらに迅速に取り出すことができる。なお、規制構造の規制機能が解除された後の送出具26は、ポンプ3による内容物の取り出しに追随して送出具26が徐々に上昇する形態と、送出具26が限界位置まで一気に押し込み操作される形態のいずれであってもよい。
【0023】
スタンドを兼ねる底キャップ4を容器本体1の底に回転自在に装着し、操作体38に形成したねじ体48と、底キャップ4に設けたねじ体49とで規制構造を構成すると、底キャップ4を回転操作することで規制構造の規制機能を解除できる。したがって、操作体38を操作するための道具や工具を用意する必要がなく、必要時には手軽にしかも速やかに操作体38を予備室6の容積が減少する向きに変位操作できる。送出具26を、底蓋25と送出具26との間に設けた回り止め構造で回転不能に保持するのは、底キャップ4を回転操作するとき、送出具26が底キャップ4と連れ回りするのを阻止して、規制構造の規制機能を確実に解除するためである。
【0024】
スタンドを兼ねる底キャップ4を容器本体1の底に装着して、底キャップ4の内面に設けた筒ボス44の内部に操作体38の少なくとも一部を収容すると、通常の使用状態において、操作体38がユーザーの不注意で押し込み操作されるのを防止できる。また、操作体38が他物と衝突し、あるいは落下衝撃を受けて押し込み操作されるのを、底キャップ4で確実に防止でき、全体として誤使用や不注意による機能破壊を生じることのない信頼性に優れたポンプ付き容器が得られる。
【0025】
仕切体7に設けられるボス部22を上ボス61および下ボス62で構成し、両ボス61・62を、テーパー状のシール筒63・70と、両シール筒63・70の突端に設けられるシール部66・72で構成すると、吸引パイプ15の外周面の上下2個所を同時にシールできる。したがって、仕切体7による気相部5Aと液相部5Bとの区分をより確実に行なって、内容物Cに空気が触れるのを防止できる。また、両ボス61・62のシール筒63・70を径方向へ弾性変形可能に構成するので、吸引パイプ15の外直径寸法のばらつきをシール筒63・70が弾性変形することで吸収でき、これにより内容物Cの液位の変化に追随して仕切体7を円滑に下降摺動できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】予備室とその周辺構造を示す縦断面図である。
【図2】ポンプ付き容器の側面図である。
【図3】ポンプ付き容器の縦断側面図である。
【図4】ポンプ付き容器の一部を破断した分解側面図である。
【図5】予備内容物の取り出し状態を示す縦断面図である。
【図6】製造時における内容物の充填形態を示す分解断面図である。
【図7】吸引パイプに対する仕切体のシール構造を示す断面図である。
【図8】上ボスのシール部を示す斜視図である。
【図9】図7におけるA−A線断面図である。
【図10】図7におけるB−B線断面図である。
【図11】送出具の別の実施例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(実施例) 図1ないし図10は本発明に係るポンプ付き容器の実施例を示す。図2においてポンプ付き容器は、液状の内容物Cを収容する容器本体1と、容器本体1の上部に装着される上蓋2と、内容物Cを取り出すポンプ3と、スタンドを兼ねて容器本体1の下部に装着される底キャップ4などで構成する。図4に示すように、容器本体1は、その大半を占める断面円形の大径の主筒壁1aと、主筒壁1aの下端に連続して形成される断面円形の小径の下筒壁1bとで形成してある。主筒壁1aの内部に内容物Cの殆どを収容する主室5が区画され、下筒壁1bの内部に予備内容物C1を収容する予備室6が区画してある。容器本体1の内部には、主室5を上側の気相部5Aと、下側の液相部5Bとに区分する仕切体7が配置してある。
【0028】
上蓋2は、ポンプ3の支持台を兼ねており、ポンプ3が装着された上蓋2を容器本体1に圧嵌係合することにより、容器本体1の上開口を塞いでいる。図3においてポンプ3は、シリンダー9、ピストン10、シリンダー9の吸込口および吐出口を開閉する吸入弁11および吐出弁12と、これら両弁を閉じ付勢する弁ばね13などで構成してあり、従来ポンプと同じ構造に構成してある。シリンダー9の吸込口には吸引パイプ15が連結してあり、シリンダー9の吐出口の側にはノズル16を備えたノズルキャップ17が連結してある。ノズルキャップ17を弁ばね13に抗して、繰り返し押し込み操作することにより、吸入弁11および吐出弁12を交互に開閉させて、主室5に収容された内容物Cを吸引パイプ15を介してシリンダー9内に吸引し、さらにノズル16を介して加圧送出できる。
【0029】
仕切体7は、弾性に富むシリコーンゴムなどを素材とするプラスチック成形品からなり、その周面に設けられる摺動壁20と、底壁21と、底壁21の中央に設けられるボス部22などで上向きに開口する有底筒状に形成してある。摺動壁20の上下には、主室5の内周面に密着するリップ部23が設けてあり、ボス部22の上下端は吸引パイプ15の外周面に密着している。このように、リップ部23およびボス部22を、主室5の内周面および吸引パイプ15の外周面で密着案内することにより、気相部5A内の空気が液相部5B内の内容物Cに触れるのを確実に防止できる。仕切体7とシリンダー9との間には、仕切体7を押し下げ付勢するばね24が配置してある。
【0030】
吸引パイプ15は押し出し成形法で形成されており、その外直径寸法に0.1〜0.15mmのばらつきがある。また、吸引パイプ15の断面形状のばらつきもある。このようなばらつきがあると、例えば、内容物Cの液位が低下するとき、仕切体7の下降摺動を円滑に行なえないことがある。あるいは、吸引パイプ15とボス部22との間の隙間を介して、内容物Cが空気に晒され、あるいは、内容物Cが漏れ出るおそれがある。このような不具合を解消するために、仕切体7のボス部22を図7ないし図10に示すように構成している。
【0031】
図7においてボス部22は、上ボス61と下ボス62とで構成する。上ボス61は、上すぼまりテーパー状のシール筒63と、シール筒63の下端に連続して形成される装着筒64とを一体に備えている。装着筒64を、底壁21の中央上面に設けた連結ボス65に外嵌することにより、上ボス61を仕切体7と一体化できる。図8および図9に示すように、シール筒63は他の部位よりも薄肉に形成されて、その上端開口にシール部66が形成してある。シール筒63の周囲5個所には、シール筒63を保形するための補強リブ67が等間隔おきに形成してある。補強リブ67は、シール筒63の上端より上方に突設してあり、上端部分の内面に吸引パイプ15を差し込み案内するためのガイド面68が下すぼまり状に形成してある。ガイド面68の下端はシール部66に連続している。シール部66は、吸引パイプ15の外周面に線接触状に外接して気密状態を維持しており、その直径寸法は吸引パイプ15の外直径寸法(標準寸法)より僅かに小さく設定してある。
【0032】
図7および図10に示すように、下ボス62は、底壁21の下面側に突設される下すぼまりテーパー状のシール筒70と、シール筒70の周囲5個所に等間隔おきに形成した保形用の補強リブ71とで構成する。シール筒70は他の部位よりも薄肉に形成されて、その下端開口にシール部72が設けてある。シール部72の直径寸法は、上ボス61のシール部66の直径寸法と同じに設定してある。
【0033】
上ボス61のシール部66、および下ボス62のシール部72は、それぞれシール筒63・70が拡径方向、あるいは縮径方向へ弾性変形することで、吸引パイプ15の外直径寸法のばらつきを吸収する。したがって、内容物Cの液位が低下するときの仕切体7の下降摺動を円滑に行なうことができ、さらに、吸引パイプ15とボス部22との間の隙間を介して内容物Cが空気に晒され、あるいは内容物Cが漏れ出るのを確実に防止できる。
【0034】
仕切体7は図3に示す最上端位置から、図1に示すように底壁21の周縁寄りが主室5の底壁8で受け止められるまで、主室5内の液相部5Bの液位変化に追随して、シール状態を維持しながら下降摺動できる。仕切体7が下降して、主室5の底壁8で受け止められた下摺動限界位置においては、吸引パイプ15の吸引口18は仕切体7の底壁21より下方に位置している。同様に、予備室6は仕切体7の下摺動限界位置より下方に配置してある。なお、気相部5Aは、容器本体1と上蓋2との間に設けられた通気構造(不図示)を介して大気と常に連通している。
【0035】
予備室6は、主室5内の内容物Cが消費された状態において、数回分の使用量に相当する予備内容物C1を収容するために設けてある。予備室6は、先に説明した下筒壁1bと、下筒壁1bの下面開口を塞ぐ底蓋25とで区画する。底蓋25の内面側には、予備内容物C1を主室5側へ送給するための送出具26が配置してある。
【0036】
図1において底壁25は、下筒壁1bに下側から外嵌するねじ筒28と、ねじ筒28の下端に連続して上突状に形成される蓋壁29と、蓋壁29の中央上部に突設されるボス部30とを一体に備えたプラスチック成形品からなる。ねじ筒28の内面と下筒壁1bの外面との間には、互いに噛み合う雄ねじと雌ねじとからなるねじ構造31が設けてあり、このねじ構造31によって底壁25が下筒壁1bに固定してある。ボス部30には、下すぼまりテーパー状の操作開口32が上下貫通状に形成してあり、操作開口32の下側の開口周縁に係合段部(係合体)33が形成してある。
【0037】
送出具26は、予備内容物C1を主室5へ向かって送出する弁体34と、操作体38とを一体に備えたポリエチレン製のプラスチック成形品からなる。弁体34は、下筒壁1bの内周壁に密着する摺動壁35と、摺動壁35の内面に連続する区分壁36と、区分壁36の中央において下すぼまりテーパー状に凹む凹部壁37とで構成する。操作体38は棒状に形成されて、凹部壁37の下面から下向きに突設してある。送出具26を底蓋25の内面側に組み付けた状態において、凹部壁37は操作開口32に密着する状態で受け止められており、操作体38はその殆どの部分が操作開口32より下方に、したがって予備室6の外面に突出している。摺動壁35の周面上下には、下筒壁1bの内周壁に密着するリップ部39が形成してある。
【0038】
上記のように送出具26は、下筒壁1bの下面開口を底蓋25の内面側において封止して、実質的に予備室6を区画し予備内容物C1を封止している。主室5に収容された内容物Cがポンプ3で消費されるまでの間、送出具26が主室5側へ移動するのを規制するために、操作体38の近傍、詳しくは底蓋25の操作開口32と凹部壁37の底壁周縁との間に規制構造を設けている。規制構造は、先に説明した係合段部33と、凹部壁37の底壁周縁に周回状に張り出した係合リング(係合体)40とからなり、係合リング40の外周面を係合段部33の内周縁で受け止めて、常態において送出具26が上向きに移動するのを規制している。なお、送出具26と底蓋25との間の空間は、図示していないスリットを介して大気と連通してある。
【0039】
図1に示すように底キャップ4は、上向きに開口する有底筒状のプラスチック成形品からなり、丸筒からなる筒壁の内面に周回状の係合リブ43が形成してあり、平坦な底壁の中央に操作体38を収容する筒ボス44が形成してある。底蓋25のねじ筒28の外面には、先の係合リブ43に対応して係合リブ45が形成してあり、両係合リブ43・45を係合することにより、底キャップ4が底蓋25に対して分離不能に固定されて、下筒壁1bと底蓋25の外面を覆っている。この状態の筒壁は、容器本体1の主筒壁1aの周面と面一状になっている。筒ボス44は、通常の使用状態において操作体38が不用意に押し込み操作されるのを防護するために設けてある。
【0040】
次に、ポンプ付き容器の使用法を説明する。使用開始状態における仕切体7は、図3に示す位置にある。ノズルキャップ17でポンプ3を押し下げ操作して内容物Cを取り出すと、ポンプ3の吸引作用で内容物Cがノズル16から送出され、この送出量に見合う分だけ内容物Cの液位が下がり、同時に液位の低下に追随して仕切体7が主筒壁1aの内面および吸引パイプ15に沿って下降する。内容物Cが消費されるのに伴ない内容物Cの液位は徐々に低下し、主室5内の内容物Cが消費された状態では、内容物Cの液位は吸引パイプ15の吸引口18の高さ位置まで低下する。この状態では、ポンプ3による内容物の取り出しを行なうことができないので、ユーザーは内容物の残量が予備内容物C1だけになったことを認識でき、さらに、ユーザーに対して内容物の補充や新規購入が必要であることを認識させることができる。
【0041】
上記のように、内容物の取り出しが不能になった以後は、筒ボス44の下開口から操作体38を予備室6へ向かって上側へ押し込み操作して、図5に示すように、係合リング40を弾性変形させながら、一対の係合体33・40の係合状態を解除する。これにより、送出具26は上向きに移動して予備室6の容積を減少させ、その分だけ予備内容物C1の液位を吸引口18よりも上側へ上昇させる。したがって、予備内容物C1をポンプ3で取り出すことができる。基本的に、操作体38は棒状体を筒ボス44の内面に差し込んで押し込み操作する。しかし、適当な大きさの棒状体がない場合には、底キャップ4を取り外して、底蓋25の外に露出する操作体38を手指で押し込み操作して、係合体33・40の係合状態を解除することができる。
【0042】
一対の係合体33・40の係合状態を解除するときの操作体38の押し込み量は、少なくとも一対の係合体33・40の係合を解除できる量であれば足りる。以後の係合リング40は、図5に示すように、その周縁が操作開口32に沿って自由に上方移動できるので、予備内容物C1がポンプ3で取り出されるのに伴なって、送出具26を予備内容物C1とともに上昇移動できる。最終的には、図5に想像線で示すように、送出具26は摺動壁35の上側のリップ部39が下筒壁1bの内面上端に設けた規制段部46で受け止められる位置まで上向きに摺動する。規制段部46は、勢い余って押し込み操作された送出具26を受け止めて、送出具26が主室5側へ入り込むのを規制できる。
【0043】
以上のように本発明では、主室5内の内容物Cを消費したのちは、送出具26に設けた操作体38を押し込み操作して、送出具26を押し上げることにより、予備室6内の予備内容物C1の液位を上昇できるので、より少ない手間で予備内容物C1を迅速に取り出すことができる。また、従来のこの種のポンプ付き容器に比べて、予備内容物C1を取り出すための一連の操作を著しく簡便化できる。
【0044】
以上のように構成した、ポンプ付き容器の組み立て、および内容部Cの充填は以下のようにして行なう。まず図6に示すように、底蓋25、送出体26、底キャップ4以外の部品を容器本体1に組み付けておく。また、底蓋25に送出具26を圧嵌係合して、両者を一体化しておく。容器本体1を上下に反転した状態で、所定量の内容物Cを、予備室6の開口を利用して容器本体1の内部に充填する。次に、送出具26の摺動壁35を予備室6内に嵌め込みながら、底蓋25を下筒壁1bに限界位置までねじ込んで、底蓋25を容器本体1と一体化する。最後に底キャップ4を底蓋25に対して圧嵌係合して、底キャップ4を容器本体1と一体化する。最後に、ノズルキャップ17の外面に保護キャップ47(図2参照)を装着してポンプ付き容器を完成する。上記と同様にして、内容物の補充をユーザー自身が行なうこともできる。
【0045】
容器本体1に充填するときの内容物Cの量が多いと、底蓋25を下筒壁1bにねじ込む過程で内容物Cの一部が溢れ出ることがある。しかし、仕切体7をばね24で移動付勢しておくと、底蓋25で押し込まれた内容物Cの圧力が上昇するのに応じて、仕切体7がばね24の付勢力に抗して内容物Cの圧力と釣り合う位置まで上蓋2側へ移動するので、内容物Cの一部が溢れ出るのを防止できる。
【0046】
図11は、本発明に係るポンプ付き容器の別の実施例を示す。そこでは、短軸状の操作体38の外周面に形成した雄ねじ(ねじ体)48と、底キャップ4の内面中央に設けたねじボス(ねじ体)49とで規制構造を構成した。底キャップ4を回転操作すると、雄ねじ48とねじボス49との噛み合いが解除される。したがって送出具26の拘束状態を解除して、送出具26を上方移動可能な状態に開放することができる。底キャップ4を回転操作するとき、送出具26が連れ回りするのを防ぐために、送出具26と底蓋25との間に回り止め構造を設けている。回り止め構造は、区分壁36の下面側に設けたリブ状の突起50と、突起50に対応して底蓋25の操作開口32の内面に設けた係合溝51とで構成する。また、底キャップ4と容器本体1の接合面に浅い周回凹部を形成し、周回凹部に粘着テープ52を周回状に貼着して、粘着テープ52を剥離して除去しない限りは、底キャップ4を回転操作できないようにした。他は先の実施例と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。
【0047】
上記の実施例では、一対の係合体33・40の係合状態を解除した後に、ポンプ3による予備内容物C1の取り出し動作に連動して送出具26を上方摺動させるようにしたが、その必要はない。例えば、一対の係合体33・40の係合状態を解除するのと同時に、送出具26を規制段部46で規定される上昇限界位置まで押し上げて、予備内容物C1をポンプ3で取り出すことができる。同様に、送出具26は、図11で説明した雄ねじ48とねじボス49のねじ送り動作によって、規制段部46で規定される上昇限界位置まで押し上げ移動することができる。あるいは、送出具26を雄ねじ48とねじボス49のねじ送り動作で少しずつ押し上げ操作してもよい。
【0048】
予備室6は容器本体1とは別体に形成した中空体で形成することができる。例えば、エルボ状の中空体で予備室6を形成することができる。その場合には、送出具26を横向きに開口する予備室6に沿って、容器本体1の中心軸線と交差する向き(径方向)に押し込み操作して、予備室6内の予備内容物C1を主室5側へ送出することができる。このように、予備室6の容積を減少させるための送出具26の移動方向は、上下、左右、前後方向の任意方向に変更でき、必要があれば斜め方向に移動操作して予備室6の容積を減少させることができる。
【0049】
本発明におけるポンプ付き容器は、内容物Cが酸化、あるいは変質しにくいものである場合には、仕切体7を省略することができる。その場合には、吸引口18より下側の空間が予備室6となる。送出体7の移動を規制する規制構造は、送出体7と下筒壁1bとの間に設けることができる。底蓋25の構造によっては、底キャップ4を省略して、底蓋25がスタンドを兼ねるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0050】
1 容器本体
3 ポンプ
5 主室
5A 気相部
5B 液相部
6 予備室
15 吸引パイプ
25 底蓋
26 送出具
32 操作開口
34 弁体
38 操作体
C 内容物
C1 予備内容物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状の内容物(C)を収容する容器本体(1)と、容器本体(1)の上部に装着されて内容物(C)を取り出すためのポンプ(3)と、ポンプ(3)の吸込口に連結されて内容物(C)を容器本体(1)の底面側から吸い込む吸引パイプ(15)とを備えており、
容器本体(1)は、内容物(C)の殆どを収容する上方の主室(5)と、数回分の使用量に相当する予備内容物(C1)を収容する下方の予備室(6)とを備えており、
予備室(6)に、予備室(6)の容積を減少して予備内容物(C1)を主室(5)側へ送る送出具(26)が設けられており、
ポンプ(3)による主室(5)の内容物(C)の取り出しが不能となった時点で、送出具(26)を予備室(6)の容積が減少する向きに変位操作して、主室(5)側へ送出された予備内容物(C1)をポンプ(3)で取り出すことができることを特徴とするポンプ付き容器。
【請求項2】
容器本体(1)の内部に、主室(5)を上側の気相部(5A)と、下側の液相部(5B)とに区分する仕切体(7)が配置されており、
仕切体(7)は、主室(5)内の液相部(5B)の液位変化に追随しながら吸引パイプ(15)に沿って下降摺動できるように設けられており、
仕切体(7)の下摺動限界位置より下方に予備室(6)が配置してある請求項1に記載のポンプ付き容器。
【請求項3】
予備室(6)が、容器本体(1)の主筒壁(1a)に連続して下向きに開口する下筒壁(1b)と、下筒壁(1b)に装着した底蓋(25)とで区画されて、底蓋(25)の内面側に送出具(26)が配置されており、
送出具(26)は、予備内容物(C1)を主室(5)へ向かって送出する弁体(34)と、底蓋(25)に開口した操作開口(32)を介して予備室(6)の外面に臨む操作体(38)とを含んで構成されており、
送出具(26)の移動を規制する規制構造が、操作体(38)の近傍に設けられており、
規制構造の規制機能を解除した状態において、送出具(26)を予備室(6)の容積が減少する向きに移動できる請求項1または2に記載のポンプ付き容器。
【請求項4】
規制構造が互いに係合する一対の係合体(33・40)で構成されており、
係合体(33・40)の一方が操作開口(32)の開口周縁壁に、他方が開口周縁壁に臨む送出具(26)の下面に形成してある請求項3に記載のポンプ付き容器。
【請求項5】
スタンドを兼ねる底キャップ(4)が容器本体(1)の底に回転自在に装着されて、下筒壁(1b)と底蓋(25)の外面を覆っており、
規制構造が、操作体(38)に形成したねじ体(48)と、底キャップ(4)の内面に設けられて、ねじ体(48)と噛み合うねじ体(49)とで構成されており、
送出具(26)が、底蓋(25)と送出具(26)との間に設けた回り止め構造で回転不能に保持してある請求項3に記載のポンプ付き容器。
【請求項6】
スタンドを兼ねる底キャップ(4)が容器本体(1)の底に装着されて、下筒壁(1b)と底蓋(25)の外面を覆っており、
底キャップ(4)の内面に、操作体(38)の少なくとも一部を収容して、操作体(38)が不用意に押し込み操作されるのを防護する筒ボス(44)が設けてある請求項3または4に記載のポンプ付き容器。
【請求項7】
容器本体(1)の内部に、主室(5)を上側の気相部(5A)と、下側の液相部(5B)とに区分する仕切体(7)が配置されており、
仕切体(7)は、主室(5)内の液相部(5B)の液位変化に追随しながら吸引パイプ(15)に沿って下降摺動できるように設けられており、
仕切体(7)の中央部分に、吸引パイプ(15)の外周面に密着するボス部(22)が設けられており、
ボス部(22)が、上ボス(61)および下ボス(62)で構成されており、
上ボス(61)および下ボス(62)は、それぞれ径方向へ弾性変形可能なテーパー状のシール筒(63・70)を有し、
両シール筒(63・70)の突端に、吸引パイプ(15)の外周面に接触するシール部(66・72)が形成してある請求項1から6のいずれかに記載のポンプ付き容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−189026(P2010−189026A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−34573(P2009−34573)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(398000428)株式会社ハタ (3)
【Fターム(参考)】