説明

ポンプ式容器の内容物放出機構および内容物放出機構を備えたポンプ式製品

【課題】内容物放出口の位置が放出操作にともなって移動しないポンプ式容器の内容物放出機構に関し、操作性および利便性の向上とともに、当該機構を備えた製品ごとのバラツキを抑えて放出動作の精度の向上を図る。
【解決手段】放出口(孔部13a)を内容物が横方向(ポンプ式容器の上下方向と略直交する方向)に放出される態様とし、操作部(操作ボタン1)を内容物放の出方向とは逆の横方向後側に押圧される態様とした。また、放出モード設定操作中の放出モードから放出終了モードへ移行するときに、第1のスカート部(後スカート部2b)が移行用孔部(孔部3c)まで進み、かつ同時に第2のスカート部(前スカート部2a)が解除作動部(突状部3e)に当接する態様としているので、中間収納域Dと容器の内部空間とが連通して蓄圧式の吐出弁(環状縁部9a,環状テーパ面10a)へ作用する内容物の圧力が下がり、吐出弁は閉状態になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ式容器の内容物放出機構に関し、特に内容物が横方向に放出される固定タイプの放出口(=操作部の作動時にも移動しない態様の放出口)および、内容物放出方向とは逆の横方向に押圧される態様の操作部を備えた内容物放出機構に関する。
【0002】
また、内容物の放出モードへの設定操作にともない操作部が所定ストロークだけ移動したときには、吐出弁がそれまでの開状態(=放出モード)から閉状態(=放出終了モード)へと確実に切り換わる機構とすることにより、ポンプ式製品の放出モードの設定操作時に内容物放出口の位置が操作部に応じて動くのを防ぐとともに、内容物の放出開始動作および放出終了動作をいわばシャープにしたものである。
【0003】
本発明の内容物放出機構は、点鼻薬剤をはじめとする後述の各種内容物のポンプ機構として用いられる。
【0004】
なお、本明細書で用いる「ポンプ式」とは、利用者が、操作部や、容器の一部(周面部分など)などを例えば押圧することにより内容物収納空間の容積が小さくなって、その中の内容物が外部空間に放出される方式を示しており、いわゆる押出式,チューブ式なども含む概念である。
【0005】
また、「横方向」とはポンプ式容器の上下方向と略直交する方向のことであり、容器内容物の放出口(孔部)の側を「前」とし、それと反対側を「後」としている。すなわち図1〜図4の左側方向が「前」で、右側方向が「後」となる。
【背景技術】
【0006】
従来、ポンプ式容器に収納された内容物の放出口を操作部とは別の固定部材に設けた内容物放出機構としては、下記の特許文献1で開示のものがある。なお、以下の[ ]付きの番号はそれぞれ当該特許文献での参照番号を示している。
【0007】
ここでは押圧体[15],シール体[14]および大ピストン[23]が一体化しており、操作部である押圧体を利用者が押し下げると大ピストンも下方向に移動する。
【0008】
その結果、大ピストン[23]と、これに対して相対移動可能な小ピストン[22]の透孔[22c1]を塞いでいる吸込弁としての弾性体チューブ[22e]と、の間の空間[B]内の薬液の圧力が上昇する。
【0009】
この押圧体[15]の押下げ操作を何回かやって空間[B]内の薬液圧力が所定値まで上がると、その圧力によって小ピストン[22]が押下げられて、両ピストンの接触部分(吐出弁)である円錐形段部[23c1]などが離間する。これにより空間[B]内の薬液は、当該離間部分,軸孔[23c],空間[D]を経てノズル[16]のノズル孔[16a1]から患部に噴射される。
【0010】
なおノズル[16]は、容器本体[11]と一体のアダプタ[13]に固定されており、押圧体[15]の押下げ操作時にも移動することはない。
【0011】
以上のポンプ式容器の内容物放出機構は、そのノズル孔[16a1]を備えたノズル[16]が押圧体[15]から独立した別部材であって、当該押圧体の操作時にも当該ノズルが下動しない構成となっており、この点では使い勝手のよいものである。
【0012】
その一方で、押圧体[15]と連動する大ピストン[23]の他にこれと相対的に上下動可能な小ピストン[22]を設けて、これらピストン間の接触・離間により吐出弁の作用を呈している。また、吸込弁として作用するのは、小ピストン[22]の透孔[22c1]とこれを塞いでいる弾性体チューブ[22e]である。
【0013】
そして、放出モードにおける上記吐出弁は、空間[B]内の薬液がノズル孔[16a1]から噴射されて当該空間内部の薬液の圧力がいわば徐々に減少して閾値以下になった段階で閉じ、放出終了モードへと移行する。すなわち、当該空間内部の薬液圧力の減少にともない、小ピストン[22]が上方に復帰して大ピストン[23]の軸孔[23c]を閉じるので、薬液は噴射されなくなる。
【0014】
上記内容物放出機構は、このように吸込弁だけでなく吐出弁までも上下方向の上流側通路部に設けた大ピストン[23]およびピストン[22]などにより形成している、すなわち当該上流側通路部に続くノズル孔[16a1]までの下流側通路部には弁部材は存在しないため、全体の構造が複雑化してしまい、薬液の流れもスムーズではないという点で改善の余地があった。
【0015】
また、放出モードにおける空間[B]内の薬液圧力が徐々に減少する態様のため、薬液の噴射終了動作(放出モードから放出終了モードへの移行動作)のシャープさにかけるという点で改善の余地があった。
【0016】
これらの点を解決したポンプ式容器の内容物放出機構として、本件出願人は下記の特許文献2のものを提案済みである。
【特許文献1】特許第3177695号公報
【特許文献2】国際公開第2007/086156号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
ただ、この特許文献2においては、利用者が容器を手に持った状態での操作性に優れて利便性の高い、内容物が横方向に放出され、かつ操作部が後側(横方向)へ横押しされるタイプの内容物放出機構を利用するまでの考えにいたっていない。
【0018】
本発明は、上記特許文献2の内容物放出機構の利点を備えるとともに、内容物の横方向への放出動作および操作部の横方向後側への移動による放出モード設定操作を行えるようにして、ポンプ式容器の内容物放出機構のより優れた操作性および利便性を確保することを目的とする。
【0019】
なお、上記特許文献2の内容物放出機構の利点は、
(a)内容物の吐出弁を、操作部と連動するピストンと吸込弁との間に形成される上流側通路部ではなく、これと連通して、(操作部と連動することのない)固定タイプの内容物放出口へと進む下流側通路部に設けているので、ポンプ構造のシンプル化や内容物の流れのスムーズ化を図ることができ、
(b)吐出弁を蓄圧式のものとし、さらには利用者が操作部を所定ストロークだけ移動させた段階での当該吐出弁に対する内容物圧力の急減により(それまでの操作部の移動により放出モードの開状態となっていた)当該吐出弁がいわば瞬時に閉じるようにしているので、内容物の放出開始および放出終了の各動作自体のシャープ化を図る、すなわち当該各動作のいわゆる「きれ」をよくすることができ、
(c)操作部およびこれと一体のピストンを静止モード位置に付勢するための第1の弾性部材や吐出弁を閉状態に付勢するための第2の弾性部材を内容物の通路部の外側に配し、さらには吸込弁を合成樹脂製のものとしているので、内容物放出機構の構成要素である金属部分が内容物と接触する機会をなくして、当該接触にともなう内容物の性状変化や機構自体の性能劣化などの抑止を図ることができる、
などの点である。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、以上の課題を次のようにして解決する。
(1)ポンプ式容器に収納された内容物を放出口(例えば後述の孔部13a)から外部空間に放出するための操作対象である操作部(例えば後述の操作ボタン1)と、
前記操作部と連動するピストン(例えば後述の鞘状ピストン2)と、
前記ピストンの移動に応じて作動する吸込弁(例えば後述の環状テーパ面15c,スプリング付き弁16)と、
前記ピストンのシール作用部分(例えば後述の後スカート部2b)を案内し、かつ、前記吐出弁が開状態となる放出モードから当該吐出弁が閉状態に復帰した放出終了モードへの移行用孔部(例えば後述の孔部3c)を周面部分に形成したシリンダ(例えば後述の内側筒状部3d)と、
前記吸込弁から前記移行用孔部にいたる第1の通路部(例えば後述の上流側通路域A,中間通路域B)と、
前記移行用孔部から前記放出口にいたる第2の通路部(例えば後述の中間通路域B,下流側通路域C)と、
前記第2の通路部に設けられた吐出弁(例えば後述の環状縁部9a,環状テーパ面10a)と、
前記ポンプ式容器の開口部キャップ(例えば後述のネジキャップ3)と一体化されて、前記放出口を、前記操作部の作動時にも移動しない態様で設定するための放出口設定用部材(例えば後述の通路用連結部8,ノズル状ピース9,出力側ピース13)と、を備え、
前記操作部とともに前記ピストンのシール作用部分が、その静止モード位置から、放出モード位置を経て前記移行用孔部まで進むことにより、前記第2の通路部が前記第1の通路部以外の容器内部に通じる空間域とも連通して前記吐出弁へ作用する圧力が下がり、その結果それまでの放出モードから放出終了モードに移行し、
前記放出口は、内容物が横方向に放出される態様のものであり、
前記操作部は、内容物放出方向とは逆の横方向後側に押圧される態様のものである、
形のポンプ式容器の内容物放出機構を用いる。
(2)上記(1)において、
前記第1の通路部は、
前記吸込弁から続く上流側通路部分(例えば後述の上流側通路域A)と前記移行用孔部にいたる中間通路部分(例えば後述の中間通路域B)とを備え、
前記第2の通路部は、
前記中間通路部分と、前記放出口にいたる下流側通路部分(例えば後述の下流側通路域C)とを備え、
前記ピストンは、
前記シール作用部分としての第1のスカート部(例えば後述の後スカート部2b)と、当該スカート部とは別で前記シリンダに案内されてシール作用呈する第2のスカート部(例えば後述の前スカート部2a)とを、前後方向の隔てた部分に備え、
前記シリンダは、
前記第1のスカート部および前記第2のスカート部を案内する内周面に、当該第2のスカート部のシール作用を解除するための解除作動部(例えば後述の突状部3e)を、静止モードにおける当該第1,第2のスカート部の間に位置する態様で備え、
前記第1のスカート部が前記移行用孔部まで進んだときに前記第2のスカート部が前記解除作動部に当接して当該第2のスカート部のシール作用が解除されることにより、前記中間通路部分が容器内部と連通する、
形のものを用いる。
【0021】
本発明は、以上の特徴を持つ内容物放出機構を対象とするとともに、この内容物放出機構を備えたポンプ式製品も対象にしている。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、このように上記(a)〜(c)の利点を備えるとともに、内容物の横方向への放出動作および操作部の横方向後側への移動による放出モード設定操作を行えるようにしているので、ポンプ式容器の内容物放出機構のより優れた操作性および利便性を確保することができる。
【0023】
また、放出モード設定操作にともなって放出モードから放出終了モードへ移行するタイミングを、操作部と一体のピストンに形成された第1,第2のスカート部のそれぞれが所定箇所まで移動する時点、すなわち第1のスカート部が放出終了モードへの移行用孔部まで進み、かつ第2のスカート部がそのシール作用の解除作動部に当接する時点に設定している。そのため、放出モードから放出終了モードへの移行時点のポンプ式製品間におけるバラツキを少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1乃至図4を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0025】
これらの図において、
図1は内容物放出機構の静止モードを示し、
図2は図1の内容物放出機構の放出モード(内容物噴射中)を示し、
図3は図2に続く放出終了モードを示し、
図4は図3に続く(放出モード設定操作解除後の)復帰モードを示している。
【0026】
なお、以下のアルファベット付き参照番号が示す構成要素(例えば外側環状底面部分1a)はアルファベットなしの参照番号の構成要素(例えば操作ボタン1)の一部であることを示している。
【0027】
図1〜図4において、
1は横方向へ移動する鞘状の操作ボタン,
1aは後述のコイルスプリング7を受ける外側環状底面部分,
2は操作ボタン1と嵌合して一体化された鞘状ピストン,
2aは後述の内側筒状部3dの内周面に当接して放出モードの終了段階で一部が当該内周面から離間(図3参照)する前スカート部,
2bは後述の内側筒状部3dの内周面に当接して内容物の中間収納域Dの画定作用(シール作用)を呈する後スカート部,
2cは鞘状ピストン2の外周面に例えば複数箇所(1箇所でもよい)形成され、放出モードの終了段階で後述の環状ラバー6の前端部分をまたいで当該ラバーの内外の空間域を連通させる位置まで移動して外気を容器内部へ流入させる(図3参照)ためのスリット,
3は後述の容器本体18の開口側筒状部に螺合したネジキャップ,
3aは上流側通路域Aの一部を構成する縦方向の内側筒状部,
3bは内容物がいわば双方向に流れる中間通路域Bの一部を後述の通路用連結部8(内側筒状部8b)との間に設定する縦方向の外側筒状部,
3cは中間通路域Bおよび中間収納域Dの連通用の孔部,
3dは鞘状ピストン2の前スカート部2aおよび後スカート部2bと密接して当該各スカート部に対する案内機能を備えた横方向の内側筒状部,
3eは当該内側筒状部の内周面の周方向に例えば1個(複数個でもよい)形成され、少なくとも噴射終了段階では前スカート部2aの一部が乗り上げて下流側通路域Cおよび中間通路域Bと容器本体内部とを連通させるための突状部(図3参照),
3fは後述のピストン規制部4の外周面部分と嵌合する内周面を備えた横方向の外側筒状部,
3gは噴射終了時に下流側通路域Cや中間通路域Bなどの内容物を容器内部へ流入させ、また、外気を容器内部へ流入させるための流入用孔部(図3参照),
3hは内側筒状部3dの前端側部分に飛び飛びに形成されて内容物や外気の当該流入用孔部への通過域として作動する切欠状部,
4はネジキャップ3の外側筒状部3fの内周面に嵌合して鞘状ピストン2の静止モード位置を規制し、容器内部への、負圧防止用の外気流入路や噴射終了時の内容物流入路を形成する筒状のピストン規制部,
4aは静止モードにおいて鞘状ピストン2の前スカート部2aの内周面と密接するシール作用面,
5はピストン規制部4の外周面の前側部分に嵌合して後述のコイルスプリング7を受ける筒状の受け部,
6は外端側鍔部分がピストン規制部4と受け部5との間に挟持されて内端部分が鞘状ピストン2の外周面に当接する環状ラバー,
7は操作ボタン1と受け部5との間に設定されて当該操作ボタンおよび鞘状ピストン2を静止モード位置方向(=図示左方向)に付勢するコイルスプリング,
8はネジキャップ3の外側筒状部3bの外周面に嵌合して内容物の上流側通路域Aの一部を設定する通路用連結部,
8aは当該一部通路域を構成する断面L字状の貫通部分,
8bは当該貫通部分の一部(前半部分)を画定する縦方向の内側筒状部,
8cは当該内側筒状部の直ぐ外に形成されてネジキャップ3の外側筒状部3bと嵌合する縦方向の外側筒状部,
8dは貫通部分8aの一部(後半部分)を画定する横方向の内側筒状部,
8eは当該内側筒状部の前端側周面に形成された内容物通過用の切欠状部,
8fは内側筒状部8bの直ぐ外に形成されてその内周面に後述のピストン10の後スカート部10cが密接する横方向の中間筒状部,
8gは当該中間筒状部の外に形成されて後述のノズル状ピース9が嵌合する横方向の外側筒状部,
9は当該外側筒状部に嵌合して吐出弁の構成要素として作用を呈するノズル状ピース,
9aは当該ノズル状ピースの内面部分であって後述のピストン10の環状テーパ面10aとともに蓄圧式の吐出弁を構成する環状縁部,
10はノズル状ピース9の内部に配されて吐出弁機能を持つピストン,
10aは当該ピストンの周面部分であって環状縁部9aとともに蓄圧式の吐出弁を構成する環状テーパ面,
10bはノズル状ピース9の内周面に密接した前スカート部,
10cは通路用連結部8の中間筒状部8fの内周面に密接した後スカート部,
10dは下流側通路域Cを構成する貫通部分,
11は通路用連結部8の中間筒状部8fと外側筒状部8gとの間の環凹状部分に設けられて後述のコイルスプリング12を受ける筒状の受け部,
12はピストン10と受け部11との間に設定されて当該ピストンを静止モード位置方向(=図示左方向)に付勢するコイルスプリング,
13はノズル状ピース9の前端側凹状部に嵌合して内容物放出部として作用する出力側ピース,
13aは内容物出力用の孔部,
13bは当該孔部へと続く凹状部分に形成されてそれぞれの間が内容物通路域として作用する複数のリブ状部,
14は出力側ピース13のリブ状部13bに保持されて吐出弁から孔部13aまでの内容物通路域を設定する鞘状の中間ピース,
15はネジキャップ3の下側開口域内部の上端側部分に保持された筒状のハウジング,
15aは当該保持の対象となる環状鍔部,
15bはネジキャップ3の流入用孔部3gに続く部分であって負圧防止用の外気や噴射終了時の通路域内容物が容器内部に流入するための縦方向の溝状貫通部,
15cは後述のスプリング付き弁16を受ける環状テーパ面,
15dは当該環状テーパ面の直下方に形成された内容物流入用の孔部,
16はハウジング15の上側空間域に保持された吸込弁としてのスプリング付き弁,
17はハウジング15の下側空間域に保持された内容物吸込用のチューブ,
18は内容物を収納した容器本体,
18aは開口側筒状部の上端部分,
19はハウジング15の環状鍔部15aと容器本体18の上端部分18aとの間に挟持されて容器内外のシール作用を呈する環状ラバー,
をそれぞれ示している。
【0028】
また、内容物の通路域などとして、
Aはチューブ17から内容物流入用の孔部15dを経てハウジング内部空間域,ネジキャップ3の内側筒状部3aおよび通路用連結部8の内側筒状部8b,8dなどにいたる上流側通路域,
Bは通路用連結部8の内側筒状部8dと中間筒状部8fとの間および通路用連結部8の内側筒状部8bとネジキャップ3の外側筒状部3bとの間などからなる中間通路域,
Cはピストン10の貫通部分10dおよび吐出弁作用域などを経て出力側ピース13の孔部13aにいたる下流側通路域,
Dは鞘状ピストン2の後スカート部2bとネジキャップ3の内側筒状部3a,3dなどによって画定される内部空間であって、中間通路域Bを介する形で内容物が流入出する中間収納域,
をそれぞれ示している。
【0029】
以上の各構成要素の中、金属製のコイルスプリング7,12以外のものはナイロン,ポリアセタール,ポリエチレン,ポリプロピレン,ポリエチレンテレフタレート,ポリブエチレンテレフタレート,NBR,ネオプレン,ブチルゴムなどからなる合成樹脂製要素である。
【0030】
図2〜図4において、概略、
(11)図2の矢印方向は、外部空間へ放出される内容物の流れ方向を示し、
(12)図3の実線矢印方向は、鞘状ピストン2の前スカート部2aの先端部分がネジキャップ3(内側筒状部3d)の突状部3eに乗り上げたときに生じる内容物の容器本体内部への流れ方向を示し、
(13)図3の点線矢印方向は、スリット2cが環状ラバー6の前端部分をまたぐ位置まで移動したときに生じる外気の容器本体内部への流れ方向を示し、
(14)図4の矢印方向は、操作ボタン1が前方に移動して静止モード位置に復帰するとき、すなわち吐出弁が閉じて吸込弁が開いた状態での、容器本体内部から中間収納域Dに流入する内容物の流れ方向を示している。
【0031】
図1の静止モードでは、
(21)操作ボタン1および鞘状ピストン2がコイルスプリング7の作用により前方に移動して当該ピストンの前スカート部2aがピストン規制部4のシール作用面4aと密接した状態に保持され、
(22)吸込弁および吐出弁が閉じ、
(23)内容物が、(少なくともポンプ式製品を1回でも使用した後の)吸込弁から連通用の孔部15dを経て吐出弁および中間収納域Dにいたるまでの各空間域(通路域など)に入っている。
【0032】
図2の放出モード、すなわち操作ボタン1を後方に引いて鞘状ピストン2の前スカート部2aがまだネジキャップ3(内側筒状部3d)の突状部3eに乗り上げていない状態では、
(31)鞘状ピストン2の後方への移動操作に応じる形でピストン10に作用する圧力が次第に高まり、
(32)ピストン10の環状平面などで受ける図示右方向への全圧力が、当該ピストンに対するコイルスプリング12などの図示左方向への駆動力より強くなった時点で、当該ピストンは図示右方向に移動し、
(33)この移動により、それまで密接していた吐出弁の、ノズル状ピース9の環状縁部9aとピストン10の環状テーパ面10aとが離間し(吸込弁の、スプリング付き弁16とそれを受ける環状テーパ面15cとは閉じたままである)、
(34)この吐出弁が「開」状態に移行することにより、それまで中間収納域Dなどに収納されていた内容物が中間通路域Bおよび下流側通路域Cを経て出力側ピース13の孔部13aから外部空間に放出される。
【0033】
図2の放出モードへの移行時、鞘状ピストン2が後方へ移動するのにともない当該ピストンの前スカート部2aの図示左側の空間域(前スカート部2aとネジキャップ3の内側筒状部3d,ピストン規制部4などで画定される空間域)の容積が増加し、流入用孔部3gおよび溝状貫通部15bを介して当該空間域と連通する容器本体18の内部空間は負圧化していく。
【0034】
図3の、鞘状ピストン2が図2よりも後方に移動して、当該ピストンの後スカート部2bの先端部分が連通用の孔部3cの位置まで移動し、かつ、前スカート部2aの先端部分がネジキャップ3(内側筒状部3d)の突状部3eに乗った状態の放出終了モードでは、
(41)上記(23)の各空間域が概略「前スカート部2aの乗上げ周辺部分と内側筒状部3dとの隙間−ピストン2の外周面と内側筒状部3dの内周面との間の空間域−切欠状部3h−内側筒状部3dの外周面とピストン規制部4の内周面との間の空間域−流入用孔部3g−溝状貫通部15b」のルートにより容器本体18の内部空間域と連通し、
(42)この連通により、上記(23)の各空間域における被収納内容物は容器本体18の内部空間域に流入して、ピストン2の環状平面などが図示右方向に受ける圧力も低下し、
(43)その結果、ピストン2がコイルスプリング12の弾性付勢力で図示左方向に復帰して、それまで開いていた吐出弁が確実に「閉」状態となる。
【0035】
このように、利用者が静止モードの操作ボタン1を所定ストロークだけ引くことにより上記(41)の容器本体内部へのルートが確立されると、いわば瞬時に、それまでの内容物放出状態から放出終了モードに移行する。
【0036】
また、図3の放出終了モードではスリット2cが環状ラバー6の前端部分をまたぐ位置まで移動するので、外部空間より外気が、概略「操作ボタン1と受け部5との間の空間域−鞘状ピストン2と受け部5との間の空間域−スリット2c−鞘状ピストン2とピストン規制部4との間の空間域−切欠状部3h−内側筒状部3dの外周面とピストン規制部4の内周面との間の空間域−流入用孔部3g−溝状貫通部15b」を経て、容器本体18の内部空間に流入する。その結果、当該内部空間の負圧化が解消される。
【0037】
そして利用者が操作ボタン1の押圧操作(引き操作)を止める、すなわち操作ボタン1から指を離すと、当該操作ボタンおよび鞘状ピストン2はコイルスプリング7の弾性付勢力で静止モード位置に復帰する。
【0038】
図4に示すように、この鞘状ピストン2の静止モード位置への復帰にともなって、
(51)当該ピストンの後スカート部2bの先端部分がネジキャップ3の孔部3cの位置から前進して内側筒状部3dの内周面部分まで移動し、
(52)この後スカート部2bの移動により、上記(41)の、中間通路域B,下流側通路域,中間収納域Dなどの各空間域と容器本体18の内部空間との連通状態が解除され、
(53)当該解除後の当該各空間域の容積増加に応じる形で、それまで閉状態であった吸込弁(スプリング付き弁16)が容器本体の内容物圧力を受けて上動し、吸込弁は「開」となる。なお、吐出弁は閉じたままである。
【0039】
その結果、容器本体12の内容物がチューブ17および孔部15dを経て上流側通路域Aに流入し、弁16に対して下方向にかかる当該通路域の内容物圧力および当該弁の自重が、弁16に対して上方向にかかる容器本体側の内容物圧力を上回ったときに、当該弁はスプリングの作用で下方に移動して環状テーパ面15cと当接する。すなわち吸込弁が閉じて図1の静止モードに復帰することになる。
【0040】
また、スリット2cが前方位置に復帰移動して鞘状ピストン2の当該スリット以外の外周面部分と環状ラバー6とが密接するので、外部空間から容器本体18の内部空間へ外気を流入させるための通路域は遮断され、当該通路行きを逆流して操作ボタン1と受け部5との間の隙間から内容物が漏れ出すことはない。
【0041】
操作ボタン1(鞘状ピストン2)およびピストン10の付勢部材としていわゆるアウタースプリングとしてのコイルスプリング7,12を用いることより、放出対象である内容物が金属に触れる程度をできるだけ少なくし、金属接触にともなう内容物の変化などを防止している。
【0042】
本願発明が図示の実施形態に限定されないことは勿論である。
例えば上流側通路域Aに代えて、スプリング付き弁16の直下流域(ハウジング15の内部空間)から中間収納域Dへ通じる(孔部3cとは別の)孔部を、ネジキャップ3の内側筒状部3aの対応部分に形成してもよい。
【0043】
容器内容物の対象としては、液状,発泡性(泡状),ペースト状,ジェル状,粉状などの各種性状のものがある。
【0044】
本発明が適用されるポンプ式製品としては、点鼻薬剤,洗浄剤,清掃剤,制汗剤,冷却剤,筋肉消炎剤,ヘアスタイリング剤,ヘアトリートメント剤,染毛剤,育毛剤,化粧品,シェービングフォーム,食品,液滴状のもの(ビタミンなど),医薬品,医薬部外品,塗料,園芸用剤,忌避剤(殺虫剤),クリーナー,消臭剤,洗濯のり,ウレタンフォーム,消火器,接着剤,潤滑剤などの各種用途のものがある。
【0045】
容器本体に収納する内容物に配合される成分としては例えば、粉状物,油成分,アルコール類,界面活性剤,高分子化合物,各用途に応じた有効成分,水などが挙げられる。
【0046】
粉状物としては、金属塩類粉末,無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。例えば、タルク,カオリン,アルミニウムヒドロキシクロライド(アルミ塩),アルギン酸カルシウム,金粉,銀粉,雲母,炭酸塩,硫酸バリウム,セルロース,これらの混合物などを用いる。
【0047】
油成分としては、シリコーン油,パーム油,ユーカリ油,ツバキ油,オリーブ油,ホホバ油,パラフィン油,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,リノール酸,リノレン酸などを用いる。
【0048】
アルコール類としては、エタノールなどの1価の低級アルコール,ラウリルアルコールなどの1価の高級アルコール,エチレングリコール,グリセリン,1,3−ブチレングリコールなどの多価アルコールなどを用いる。
【0049】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。
【0050】
高分子化合物としては、メチルセルロース,ゼラチン,デンプン,カゼイン,ヒドロキシエチルセルロース,キサンタンガム,カルボキシビニルポリマーなどを用いる。
【0051】
各用途に応じた有効成分としては、サリチル酸メチル,インドメタシンなどの消炎鎮痛剤、安息香酸ナトリウム,クレゾールなどの除菌剤、ヒレスロイド,ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤、酸化亜鉛などの制汗剤、カンフル,メントールなどの清涼剤、エフェドリン,アドレナリンなどの抗喘息薬、スクラロース,アスパルテームなどの甘味料、エポキシ樹脂,ウレタンなどの接着剤や塗料、パラフェニレンジアミン,アミノフェノールなどの染料,リン酸二水素アンモニウム,炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。
【0052】
さらに、上記内容物以外の、懸濁剤,紫外線吸収剤,乳化剤,保湿剤,酸化防止剤、金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】内容物放出機構の静止モードを示す説明図である。
【図2】図1の内容物放出機構の放出モードを示す説明図である。
【図3】図2に続く放出終了モードを示す説明図である。
【図4】図3に続く復帰モードを示す説明図である。
【符号の説明】
【0054】
1:操作ボタン
1a:外側環状底面部分
2:鞘状ピストン
2a:前スカート部
2b:後スカート部
2c:スリット
3:ネジキャップ
3a:縦方向の内側筒状部
3b:縦方向の外側筒状部
3c:孔部
3d:横方向の内側筒状部
3e:突状部
3f:横方向の外側筒状部
3g:流入用孔部
3h:切欠状部
4:ピストン規制部
4a:シール作用面
5:受け部
6:環状ラバー
7:コイルスプリング
8:通路用連結部
8a:貫通部分
8b:縦方向の内側筒状部
8c:縦方向の外側筒状部
8d:横方向の内側筒状部
8e:切欠状部
8f:横方向の中間筒状部
8g:横方向の外側筒状部
9:ノズル状ピース
9a:環状縁部
10:ピストン
10a:環状テーパ面
10b:前スカート部
10c:後スカート部
10d:貫通部分
11:受け部
12:コイルスプリング
13:出力側ピース
13a:孔部
13b:複数のリブ状部
14:中間ピース
15:ハウジング
15a:環状鍔部
15b:溝状貫通部
15c:環状テーパ面
15d:孔部
16:スプリング付き弁
17:チューブ
18:容器本体
18a:開口側筒状部の上端部分
19:環状ラバー
A:上流側通路域
B:中間通路域
C:下流側通路域
D:中間収納域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ式容器に収納された内容物を放出口から外部空間に放出するための操作対象である操作部と、
前記操作部と連動するピストンと、
前記ピストンの移動に応じて作動する吸込弁と、
前記ピストンのシール作用部分を案内し、かつ、前記吐出弁が開状態となる放出モードから当該吐出弁が閉状態に復帰した放出終了モードへの移行用孔部を周面部分に形成したシリンダと、
前記吸込弁から前記移行用孔部にいたる第1の通路部と、
前記移行用孔部から前記放出口にいたる第2の通路部と、
前記第2の通路部に設けられた吐出弁と、
前記ポンプ式容器の開口部キャップと一体化されて、前記放出口を、前記操作部の作動時にも移動しない態様で設定するための放出口設定用部材と、を備え、
前記操作部とともに前記ピストンのシール作用部分が、その静止モード位置から、放出モード位置を経て前記移行用孔部まで進むことにより、前記第2の通路部が前記第1の通路部以外の容器内部に通じる空間域とも連通して前記吐出弁へ作用する内容物の圧力が下がり、その結果それまでの放出モードから放出終了モードに移行し、
前記放出口は、内容物が横方向に放出される態様のものであり、
前記操作部は、内容物放出方向とは逆の横方向後側に押圧される態様のものである、
ことを特徴とするポンプ式容器の内容物放出機構。
【請求項2】
前記第1の通路部は、
前記吸込弁から続く上流側通路部分と前記移行用孔部にいたる中間通路部分とを備え、
前記第2の通路部は、
前記中間通路部分と、前記放出口にいたる下流側通路部分とを備え、
前記ピストンは、
前記シール作用部分としての第1のスカート部と、当該スカート部とは別で前記シリンダに案内されてシール作用呈する第2のスカート部とを、前後方向の隔てた部分に備え、
前記シリンダは、
前記第1のスカート部および前記第2のスカート部を案内する内周面に、当該第2のスカート部のシール作用を解除するための解除作動部を、静止モードにおける当該第1,第2のスカート部の間に位置する態様で備え、
前記第1のスカート部が前記移行用孔部まで進んだときに前記第2のスカート部が前記解除作動部に当接して当該第2のスカート部のシール作用が解除されることにより、前記中間通路部分が容器内部と連通する、
ことを特徴とする請求項1記載のポンプ式容器の内容物放出機構。
【請求項3】
請求項1または2記載の内容物放出機構を備え、かつ、内容物を収容した、
ことを特徴とするポンプ式製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−269658(P2009−269658A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−123184(P2008−123184)
【出願日】平成20年5月9日(2008.5.9)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【出願人】(000190068)伸晃化学株式会社 (55)
【Fターム(参考)】