説明

ポンプ装置及び給湯システム

【課題】簡易且つ安価な構成で循環回路の湯水の凍結を防止可能なポンプ装置を提供する。また、そのようなポンプ装置を備えることにより、複雑な制御が実施可能な制御装置をユニット毎に設けることなく、簡易且つ安価な構成で循環回路の湯水の凍結を防止可能な給湯システムを提供する。
【解決手段】外部の制御装置5が発信した制御信号を受信可能であり、少なくとも主用の循環ポンプ24と臨時用の循環ポンプ25、さらにポンプ側温度検知手段32を備えたポンプ装置において、ポンプ側温度検知手段32が所定温度以下を検知したことを条件に、主用の循環ポンプ24を運転する。そして、臨時用の循環ポンプ25が休止した状態において、外部の制御装置5から臨時用の循環ポンプ25を運転させる制御信号を受信した場合、運転中の主用の循環ポンプ24を強制的に停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湯水を加熱可能な熱源装置に接続された循環流路に対し、湯水を通水、滞留させる循環ポンプを有するポンプ装置、及びそのようなポンプ装置を備えた給湯システムに関する。より詳細には、循環流路等の液体流路の凍結を予防可能なポンプ装置、及び給湯システムに関する。
【背景技術】
【0002】
主にホテルや銭湯等の商業施設において使用される、即出湯が可能な給湯装置が広く知られている。この種の給湯装置では、バーナ等で構成される燃焼部、燃焼部で生成された高温の燃焼ガスにより湯水を加熱する熱交換部といった通常の給湯装置の構成に加えて、湯水を循環する循環回路を備えている。そして、予め湯水を生成し、カラン、シャワー等の給湯栓が利用者によって開かれる(以下出湯要求とも称す)までの間、生成した湯水を設定温度に維持したまま循環回路内で待機させる。例えば、特許文献1にその技術が開示されている。
【0003】
このような商業施設で使用される給湯装置は、長期間に亘って継続運転が可能な給湯装置が望ましい。即ち、給湯装置を休止してしまうと施設の営業を休止しなければならず、施設を運営する上で好ましくない。
【0004】
そこで、給湯装置を継続して運転させるための技術として、循環回路で湯水を循環させるための循環ポンプを2基設け、1基を予備として使用する給湯装置が考えられる。この給湯装置では、1方の循環ポンプをメンテナンスしている最中に、他方の循環ポンプで湯水を循環させることができるため、循環ポンプのメンテナンス中であっても給湯装置の運転を継続できる。したがって、給湯装置の連続使用期間を長くすることができる。
【0005】
さらに商業施設で使用される給湯装置は、将来的な拡張の可能性がある。即ち、建屋を建て増しする等の理由により、建屋内にカラン、シャワー等の出湯機器の数が増加されると、同時により多くの出湯要求が発生する可能性がある。この場合、1回あたりの出湯要求量が増加するので、より多くの湯水を同時に加熱する必要が生じる。そのため、給湯装置により多くの燃焼部及び熱交換部が必要となる。
【0006】
こういった場合に燃焼部及び熱交換部が容易に追加できるように、商業施設で使用される給湯装置では、湯水を加熱するための燃焼部及び熱交換部等と、循環回路に湯水を循環させるための循環ポンプや膨張タンク等とをそれぞれ別途ユニット化したものがある。このような湯水加熱用のユニットと、湯水循環用のユニットとを配管で接続して構成される給湯装置では、新たな湯水加熱用のユニットを配管で接続するだけで燃焼部及び熱交換部を給湯装置に追加できるので、拡張性が高い構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−159869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、冬季に外気の温度が極めて低くなる寒冷地で給湯装置を運用した場合、給湯装置の配管や循環回路等の液体流路が外気によって冷却されることにより、液体流路内の湯水が凍結してしまうおそれがある。
【0009】
このような湯水の凍結を防止する方法として、外気温度が一定以下を検知したことを条件に、循環回路の湯水を加熱、循環させる凍結防止運転を実施するという方法がある。
【0010】
しかしながら、上記した湯水加熱用のユニットと、湯水循環用のユニットとを別途設けた給湯装置では、各ユニットが離れた位置に配されている場合がある。このとき、それぞれのユニットの配置位置の間に温度差が生じることがある。具体的には、例えば、湯水循環用のユニットの周囲の温度が、湯水加熱用のユニットの周囲の温度に比べて著しく低い場合がある。
【0011】
この場合、湯水加熱用のユニットで検知した温度に基づいて凍結防止運転を実施する構成であれば、湯水循環用のユニットの周囲の温度が低くなった場合であっても、湯水加熱用のユニットの周囲の温度が低くならない限り凍結防止運転を実施しない。そのため、湯水加熱用のユニットの周囲の温度が低くならず、湯水循環用のユニットの周囲の温度だけが低くなった場合、凍結防止運転が実施されず、湯水循環用のユニット近傍の配管で湯水が凍結してしまうという問題がある。
【0012】
加えて、上記した2基の循環ポンプの内の1基を運転させ、他の1基を休止させる構成の給湯装置では、循環回路の湯水を加熱、循環させる凍結防止運転を実施する場合、凍結防止運転中に2基の循環ポンプを交互に運転させる必要がある。つまり、いずれか一方の循環ポンプのみを運転させて循環回路の湯水を加熱、循環を行うと、運転させなかった側の循環ポンプ及び当該循環ポンプ近傍の配管で湯水が凍結してしまう。また、2基の循環ポンプを同時に動かすと、配管内に流れる湯水の流量が多くなりすぎてしまい、配管等に過剰な負荷がかかってしまう。そのため、この種の給湯装置では、凍結防止運転中に2基の循環ポンプを1つずつ交互に運転させなければならず、1基のみの循環ポンプを有する給湯装置で凍結防止運転を行う場合と比べて、凍結防止運転時の制御が複雑になってしまうという問題がある。
【0013】
即ち、商業施設で使用される給湯装置において、循環回路の湯水を加熱、循環させる凍結防止運転を実施する場合、離れた位置に配された各ユニット間に温度差が生じるという問題と、循環ポンプの運転の制御が複雑になってしまうという問題がある。
【0014】
そこで、これらの問題を解決する技術として、各ユニットにそれぞれ温度検知手段と制御装置とを備え付け、互いに信号を送受信させる構成が考えられる。即ち、いずれかのユニットで温度の低下を検知した場合、温度の低下を検知したユニットから他のユニットに信号を発信する。そして、湯水加熱用のユニットに設けた制御装置、又は湯水循環用に設けたユニットの制御装置のいずれかによって凍結防止運転を制御する。
また、各ユニットに温度検知手段を設け、いずれか一つのユニットに設けた給湯装置全体を制御する制御装置に対し、検知した温度情報を送信する構成が考えられる。即ち、1つユニットに制御装置を設け、その制御装置と物理的若しくは電気的に接続された温度検知手段(センサー)を他のユニットに配する。そして、温度の低下を検知した温度検知手段が制御装置へと信号を発信し、信号を受信した制御装置によって凍結防止運転を制御する。
【0015】
しかしながら、前者の構成では、温度変化の情報を送受信可能な制御装置が各ユニットにそれぞれ必要となる。即ち、全てのユニットに複雑な制御を実施可能な制御装置を設けなければならず、給湯装置の製造コストが増大してしまう。また、後者の構成では、制御装置を複数設ける必要はないものの、制御装置から各ユニットまで配線を伸ばしたり、各ユニットに温度情報を送信するための機器を設ける必要がある。そのため、各ユニットの配置位置が制限されるといった設計上の問題や、凍結防止運転のためだけに温度情報を送信する機構を設けなければならず、構成が複雑になってしまうという問題がある。
【0016】
そこで本発明は、上記した従来技術の問題点に鑑み、通常の運転において少なくとも1基の循環ポンプが休止する複数の循環ポンプを備え、湯水加熱用のユニットから離れた位置に配されている場合であっても、複雑な制御が実施可能な制御装置を設けることなく、簡易且つ安価な構成で循環回路の湯水の凍結を防止可能なポンプ装置を提供することを課題とする。また、そのようなポンプ装置を備えた給湯システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するための請求項1に記載の発明は、湯水を加熱する熱源装置と配管によって接続され、前記熱源装置内を含む前記熱源装置との間の配管内に所定温度の湯水を滞留させる機能、及び前記配管内に通液流れを形成する機能を有し、外部の制御装置が発信した制御信号を受信可能なポンプ装置であって、複数の循環ポンプと、ポンプ装置側温度検知手段とを有し、ポンプ装置側温度検知手段が所定温度以下を検知したことを条件に、少なくとも1台の循環ポンプを運転するものであり、少なくとも1台の循環ポンプが運転し、少なくとも1台の循環ポンプが休止した状態において、外部の制御装置から休止中の循環ポンプを運転させる制御信号を受信した場合、運転中の循環ポンプを停止させる機能を有することを特徴とするポンプ装置である。
【0018】
本発明のポンプ装置では、ポンプ装置側温度検知手段が所定温度以下を検知したことを条件に、少なくとも1台の循環ポンプを運転している。このことにより、ポンプ装置の近傍の温度が低下したとき、循環ポンプ自身を含む当該循環ポンプ近傍の配管内に水流が形成されるので、ポンプ装置近傍に位置する配管内で湯水が凍結することがない。
【0019】
さらに、本発明のポンプ装置では、少なくとも1台の循環ポンプが運転し、少なくとも1台の循環ポンプが休止した状態において、外部の制御装置から休止中の循環ポンプを運転させる制御信号を受信した場合に運転中の循環ポンプを停止させている。このことにより、ポンプ装置が凍結防止のために循環ポンプの運転を開始した後、外部の制御装置によって湯水を循環させる運転が開始された場合、つまり、ポンプ装置自身による循環ポンプの運転と、外部の制御装置による循環ポンプの運転とが同時に実施されてしまった場合であっても、規定の基数以上の循環ポンプが同時に運転してしまうことがない。
【0020】
このことにつき、具体的に説明すると、ポンプ装置が凍結防止のために循環ポンプの運転を実施している状態で、さらに休止中の循環ポンプを運転させてしまうと、運転中の循環ポンプに加えて休止中の循環ポンプが運転してしまう状態となる。そのため、同時に運転される循環ポンプの数が同時に運転可能な循環ポンプの最大数を超えてしまうおそれがある。そこで本発明のポンプ装置では、少なくとも1台の循環ポンプが運転している状態で、外部の制御装置からの休止中の循環ポンプを運転させる制御信号を受信した場合、受信時に運転中であった循環ポンプの運転を停止する。このため、外部の制御装置が運転させた循環ポンプのみが運転されるので、同時に運転される循環ポンプの数が過剰に増加することがない。
【0021】
以上のことから、本発明のポンプ装置では、ポンプ装置が単独で温度低下を検知して循環ポンプを運転する。そのため、ポンプ装置が湯水加熱用のユニット(制御装置)から離れた位置にあっても、ポンプ装置付近の温度低下を確実に検知可能であり、他のユニットや制御装置との位置関係によらず、ポンプ装置近傍の配管内における湯水の凍結を防止できる。また、本発明のポンプ装置では、ポンプ装置自身による循環ポンプの運転と、外部の制御装置による循環ポンプの運転とが同時に実施されても、同時に運転される循環ポンプの数が過剰に増加しない。つまり、ポンプ装置が単独で湯水の凍結を防止するための循環ポンプの運転を実施しても、このポンプ装置による運転が通常の制御装置による運転を阻害しない。そのため、ポンプ装置から外部へ温度等に関する情報を送信するような複雑な制御を行うことなく、簡易な構成で、ポンプ装置近傍の配管内における湯水の凍結を防止できる。
【0022】
請求項2に記載の発明は、前記熱源装置と、請求項1に記載のポンプ装置とが配管によって接続され、双方の機器を含む間の配管内に所定温度の湯水を滞留させて、要求に応じて滞留された湯水から出湯させる機能を備えたことを特徴とする給湯システムである。
【0023】
本発明の給湯システムは、請求項1に記載のポンプ装置を備えているので、ポンプ装置が熱源装置(湯水加熱用のユニット)等に設けた制御装置から離れた位置にある場合であっても、ポンプ装置近傍の気温低下を確実に検知可能となっている。そのため、当該ポンプ装置近傍の配管内における湯水の凍結を確実に防止できる。また、このような湯水の凍結を防止するために、ポンプ装置側に複雑な制御を実施する制御装置を必要としないので、給湯システムを安価且つ簡易な構成とすることができる。
【0024】
請求項3に記載の発明は、前記熱源装置が前記制御装置を備え、当該制御装置によって給湯システムの運転が制御可能であることを特徴とする請求項2に記載の給湯システムである。
【0025】
本発明の給湯システムでは、熱源装置が給湯システム全体の運転を制御する制御装置を備える構成であってもよい。即ち、本発明の給湯システムは、ポンプ装置側に複雑な制御を実施する制御装置を必要としないので、熱源装置(湯水加熱用のユニット)が備える制御装置を熱源装置自身だけでなくポンプ装置を含む給湯システム全体の運転を制御する制御装置とすることで、給湯システム全体の制御が可能となる。このことから、各ユニットに対してそれぞれ複雑な制御を実施する制御装置を設ける必要がないので、給湯システムを安価且つ簡易な構成とすることができる。
【0026】
請求項4に記載の発明は、前記熱源装置は循環水温度検知手段を有しており、循環水温度検知手段が所定温度以下を検知したことを条件に、前記制御装置が少なくとも1つの循環ポンプを運転させる凍結防止運転を実施することを特徴とする請求項2又は3に記載の給湯システムである。
【0027】
かかる構成によると、ポンプ装置による湯水の凍結防止のための循環ポンプの運転に引き続いて、制御装置による給湯システムに対する凍結防止運転を実施可能となっている。具体的に説明すると、まず、ポンプ装置の近傍の温度が低下したとき、ポンプ装置が循環ポンプを運転し、ポンプ装置の近傍に位置する配管内の湯水の凍結を防止する。続いて、ポンプ装置近傍の凍結防止のために循環させた湯水の温度が低いことを条件に、制御装置が熱源装置を含む給湯システムの循環回路の凍結を防止するための運転を実施する。このことにより、ポンプ装置近傍における配管の凍結防止のための運転を実施したとき、ポンプ装置近傍だけでなく給湯システムの循環回路全体の凍結を防止する必要があれば、循環回路の凍結を防止するための運転を実施することができる。
またこのように、熱源装置が循環水の温度を検知する構成とすることにより、制御装置等で温度情報を送信することなく、熱源装置から離れた位置の温度低下を熱源装置側で認識できる。即ち、ポンプ装置が循環ポンプを運転して循環水を形成し、この循環水の温度が低いか否かを熱源装置で検知することで、循環水が通水される経路のいずれかの部分において周辺温度が低下しているか否かを判別できる。このことにより、制御装置から離れた位置に温度情報を送信するための機器を設ける必要がないので、給湯システムを安価且つ簡易な構成とすることができる。
【0028】
請求項5に記載の発明は、前記凍結防止運転は、複数の循環ポンプを1つずつ順次運転させることを特徴とする請求項4に記載の給湯システムである。
【0029】
かかる構成によると、給湯システムが通常運転において休止させる予備の循環ポンプを備えた構成であっても、凍結運転時に予備の循環ポンプを運転させる。そのため、給湯システムが有する全ての循環ポンプにおいて、各循環ポンプ自身を含む各循環ポンプ近傍の配管内に湯水の流路が形成される。このことにより、通常休止させている循環ポンプ、及びその循環ポンプ近傍の配管においても、湯水の凍結を確実に防止することができる。
また、循環ポンプを1つずつ順次運転させることにより循環ポンプの同時運転を防止するため、配管内における湯水の流量過多の発生をより確実に防止できる。このことにより、配管等に過剰な負荷がかかることがなく、エロージョン等の問題が発生しない。
【発明の効果】
【0030】
本発明のポンプ装置は、単独で温度低下を検知して循環ポンプを運転可能となっている。そのため、ポンプ装置が制御装置(制御装置側の温度検知手段)から離れた位置にあっても、ポンプ装置付近の温度低下を確実に検知可能であり、ポンプ装置近傍の配管内における湯水の凍結を確実に防止できるという効果がある。また本発明のポンプ装置は、ポンプ装置が単独で湯水の凍結を防止するための循環ポンプの運転を実施しても、このポンプ装置による運転が通常の制御装置による運転を阻害しない。そのため、ポンプ装置から外部へ温度等に関する情報を送信するような複雑な制御を行うことなく、簡易且つ安価な構成で、ポンプ装置近傍の配管内における湯水の凍結を防止できるという効果がある。
そして本発明の給湯システムは、上記したポンプ装置を備えるので、複雑な制御が実施可能な制御装置を数多く設けることなく、簡易且つ安価な構成で循環回路の湯水の凍結を防止できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態に係る給湯システムを示す作動原理図である。
【図2】図1のポンプ駆動装置を示す回路図である。
【図3】図1の給湯システムの給湯運転時の湯水の流れを示す概念図である。
【図4】図1の給湯システムの即湯運転時の湯水の流れを示す概念図である。
【図5】図1の給湯システムの給湯器本体が実施する凍結防止運転の手順を示すフローチャートである。
【図6】図1の給湯システムのポンプユニットが実施する周辺温度低下時の運転の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、本発明の実施形態に係る給湯システム1について説明する。
本実施形態に係る給湯システム1は、図1で示すように、複数(本実施形態では2台)の給湯器本体(熱源装置)2と、ポンプユニット3(ポンプ装置)とを組み合わせたものであり、これらが配管等を用いて連結されている。そして、給湯器本体2の内の1台は制御装置5を内蔵しており、制御装置5によって、複数の給湯器本体2を集約的に制御可能となっている。また、この制御装置5は、ポンプユニット3に内蔵されたポンプ駆動装置8に信号を送信可能となっており、ポンプ駆動装置8は受信した信号に基づいて、複数の循環ポンプ24,25(本実施形態では2基)の各々を運転、停止させることができる。
【0033】
給湯器本体2は、蓋部(図示せず)と本体部から構成される熱源用筐体10を有し、熱源用筐体10内に燃料ガスを燃焼する燃焼装置11が内蔵されている。本実施形態の給湯器本体2は、基本的に2台とも同じ機能及び能力を備えた給湯器となっており、具体的には、1方の給湯器本体2には、自身を含む給湯システム1全体の各ユニット(給湯器本体2,給湯器本体2,ポンプユニット3)を制御する制御装置5が内蔵されており、他方の給湯器本体2には、自身に内蔵された燃焼装置11等の制御を行うコントローラ7が内蔵されている点で異なっている。
【0034】
給湯器本体2の燃焼装置11は、燃焼部12と、燃焼部12で燃焼して生成された燃焼ガスの熱エネルギーを回収して湯水を加熱する熱交換部13と、燃焼装置11に空気を供給する送風機14とを備えている。
【0035】
燃焼部12は、燃料系統(図示しない)が接続され、その燃料系統から供給される燃料ガスを燃焼する複数のバーナ15によって構成されている。
【0036】
熱交換部13は、主に顕熱を回収して湯水が加熱される一次熱交換器18と、一次熱交換器18より燃焼ガスの流れ方向下流側に位置し、燃焼ガスに含まれる水蒸気の主に潜熱を回収して湯水が加熱される二次熱交換器19を有する。なお、二次熱交換器19では、潜熱回収時に凝縮水(ドレン)が発生するため、本実施形態の熱交換部13には、二次熱交換器19で発生したドレンを外部に排水するドレン排出系統20が設けられている。
【0037】
送風機14は、公知のそれと同様のものであり、内部に図示しないファンとファンモータとを備えている。そして、送風機14は、制御装置5又はコントローラ7からの信号に基づいて、ファンモータの回転数を可変することにより、送風量を調整できるものである。
【0038】
制御装置5は、給湯器本体2内の各種センサ等の機器及び給湯器側コントローラ7と信号の送受信が可能となっており、ポンプ駆動装置8に対して信号の送信が可能となっている。そして、給湯器本体2の各機器の制御が可能となっている。また、制御装置5は図示しないサーミスタ等の温度センサを備えており、給湯器本体2(制御装置5を内蔵する給湯器本体2)の周辺温度を検知可能となっている。
【0039】
給湯器側コントローラ7は、制御装置5との信号の送受信を行うことが可能となっている。また、受信した信号に基づいて、給湯器本体2内の各機器を制御可能となっている。
【0040】
ポンプユニット3は、蓋部と本体部(図示せず)から構成されるポンプユニット用筐体22を有し、ポンプユニット用筐体22内に、2つの循環ポンプ24、25と、配管内の過剰な圧力上昇や圧力低下を均一化する膨張タンク78、循環ポンプ24、25の運転を制御するポンプ駆動装置8とが内蔵されている。
【0041】
循環ポンプ24、25は、図示しないモータを駆動源として湯水を送水するもので、公知の渦巻きポンプが採用されている。なお、本実施形態では、1台の循環ポンプ24が主だって使用されるポンプとなっており、もう一方の循環ポンプ25が臨時用のポンプとなっている。この臨時用で使用される循環ポンプ25は、主だって使用される循環ポンプ24の故障時やメンテナンス時等に使用されるポンプとなっている。
なお、この予備用の循環ポンプ25は、臨時用のポンプとして使用するだけでなく、もう一方の循環ポンプ24と交互に使用してもよい。即ち、本実施形態の給湯システム1では、2基の循環ポンプ24,25を交互に使用するローテーション運転が実施可能となっている。
【0042】
膨張タンク78は、湯水の温度変化に起因した体積の膨張に伴う圧力上昇、又は体積の収縮に伴う圧力低下を抑制する密閉型のタンクである。
【0043】
ポンプ駆動装置8は、本実施形態の特徴的な構成であり、以下詳細に説明する。
ポンプ駆動装置8は、給湯システム1を集約的に制御可能な制御装置5と電気的に接続された状態となっている。即ち、ポンプ駆動装置8は、制御装置5からの信号を受信して、2つの循環ポンプ24,25を運転するものである。このポンプ駆動装置8は、図2で示されるように、主だって使用される循環ポンプ24に電気を供給する主ポンプ側操作回路28と、臨時用として使用される循環ポンプ25に電気を供給する副ポンプ側操作回路29を有している。そして、主ポンプ側操作回路28と副ポンプ側操作回路29は、それぞれ独立して交流電源30に接続された状態となっている。
【0044】
主ポンプ側操作回路28は、制御装置5からの信号によって開閉する主ポンプ用リレー35と、この主ポンプ用リレー35と電気的に並列に接続されたバイパススイッチング回路31を有している。そして、バイパススイッチング回路31には、開閉器32(ポンプ側温度検知手段)と、強制断絶用リレー33のスイッチ部分33aとが直列に接続された状態となっている。
【0045】
開閉器32は、公知のバイメタルスイッチであり、温度変化に基づく開閉動作により、開閉器32の両端部分が電気的に接続した状態と、開閉器32の両端部分が電気的に断絶した状態とを切り替え可能となっている。より具体的には、開閉器32が規定温度Tc(例えば摂氏3度)以下を検知したとき、開閉器32は閉状態となり、開閉器32の両端部分が電気的に接続される。そして、開閉器32が閉状態において規定温度Td(例えば摂氏9度)以上を検知したとき、開閉器32は開状態となり、開閉器32の両端部分が電気的に断絶される。
【0046】
強制断絶用リレー33は、常時閉のリレーであり、スイッチ部分33aがバイパススイッチング回路31に接続されており、コイル部分33bが副ポンプ側操作回路29に接続された状態となっている。そして、副ポンプ側操作回路29に電気が流れた状態になると、スイッチ部分33aが接点から離間した状態(開状態)となり、バイパススイッチング回路31のスイッチ部分33aの両端が電気的に断絶された状態となる。対して、副ポンプ側操作回路29に電気が流れていない状態であれば、スイッチ部分33aが接点と接触した状態(閉状態)となり、スイッチ部分33aの両端が電気的に接続された状態となる。つまり、強制断絶用リレー33は、b接点の電磁リレーとなっている。
【0047】
この主ポンプ側操作回路28は、制御装置5によって主ポンプ用リレー35が閉じられた場合、又は、開閉器32と強制断絶用リレー33のスイッチ部分33aとがいずれも閉じられた場合のいずれかの場合に通電状態となり、循環ポンプ24が運転される。
【0048】
対して副ポンプ側操作回路29は、制御装置5からの信号によって開閉する副ポンプ用リレー36を有しており、制御装置5によって副ポンプ用リレー36が閉じられた場合に通電状態となり、循環ポンプ25が運転される。
【0049】
ここで、ポンプ駆動装置8は、制御装置5の信号によって主ポンプ側操作回路28の通電状態(閉状態)と断絶状態(開状態)とを切り替えると共に、副ポンプ側操作回路29の通電状態(閉状態)と断絶状態(開状態)とを切り替える。そして、このとき、主ポンプ側操作回路28と副ポンプ側操作回路29とが同時に通電状態とならないように切り替えを行う。このことにより、主用の循環ポンプ24と臨時用の循環ポンプ25とを交互に運転する。換言すると、ポンプ駆動装置8は、主ポンプ側操作回路28が閉状態であり副ポンプ側操作回路29が開状態である状態と、主ポンプ側操作回路28が開状態であり副ポンプ側操作回路29が閉状態である状態とを交互に切り替えることによって、循環ポンプ24,25を交互に運転可能となっている。
なお、この本実施形態のポンプ駆動装置8は、マイコン等を必要としないので、低圧回路等を必要とせず、安価に構成可能となっている。
【0050】
次に、本実施形態の給湯システム1における流路について説明する。
給湯システム1には、主に、給湯を目的とした給湯系統40と、排水を目的とした排水系統41が備えられている。
【0051】
給湯系統40は、給湯運転時に湯水が流れる給湯時経路と、即湯運転時に湯水が流れる即湯時経路との2経路を備えている。本実施形態では、これらの経路が、図示しない給水源から送水される湯水を給湯器本体2に流す給水流路42と、給湯器本体2から吐出された湯水をカランやシャワー等によって構成される給湯栓59側に流す出湯流路43と、給湯栓59側から再び給湯器本体2側に湯水を循環させる給湯側戻り流路44とで構成されている。
より具体的には、図3で示されるように、給湯時経路は、給水流路42と出湯流路43とによって形成され、図4で示されるように、即湯時経路は、給水流路42の一部と、出湯流路43と、給湯側戻り流路44とを構成要素とする循環回路45によって形成されている。
【0052】
給水流路42は、図1で示されるように、上流側から下流側に向かって順番に、給水源と接続された給水主配管47と、給水主配管47から分岐した給水分岐配管48、49と、給湯器本体2の内部の配管であって熱交換部13の上流側に接続された内部上流側流路50とで形成されている。また、内部上流側流路50には、熱交換部13をバイパスするバイパス配管51が接続されている。即ち、給水流路42は、給水主配管47を通過した湯水を、いずれか一方あるいは双方の給湯器本体2の熱交換部13に湯水を供給する流路である。
【0053】
ここで、制御装置5を内蔵する給湯器本体2では、内部上流側流路50の中途に湯水流量センサ53や入水温度センサ54(循環水温度検知手段)が設けられ、さらにバイパス配管51の中途には、バイパス水量センサ55と水量調整弁56が設けられている。そして、各機器は制御装置5と電気的に接続されている。
【0054】
また、給湯器側コントローラ7を内蔵する給湯器本体2においても、同様に、内部上流側流路50の中途に湯水流量センサ53や入水温度センサ54が設けられており、バイパス配管51の中途に、バイパス水量センサ55と水量調整弁56が設けられている。そして、各機器は給湯器側コントローラ7と電気的に接続された状態となっている。
【0055】
出湯流路43は、下流側から上流側に向かって順番に、給湯栓59と接続された出湯主配管60と、出湯主配管60から分岐した出湯分岐配管61、62と、給湯器本体2の内部の配管であって熱交換部13の下流側に接続された内部下流側流路63とで形成されている。即ち、出湯流路43は、熱交換部13を通過した湯水を、給湯栓59に供給する流路となっている。
なお、給湯器本体2の内部下流側流路63の中途には、流量調整弁64や出湯温度センサ65等が設けられており、各機器が共に内蔵された制御装置5又はコントローラ7と電気的に接続された状態となっている。
【0056】
給湯側戻り流路44は、出湯流路43よりも湯水の流れ方向下流側に位置した流路であって、この給湯側戻り流路44に湯水を通水することにより、出湯流路43を通過した湯水を再び給湯器本体2側へ送水可能となっている。即ち、給湯側戻り流路44が、給水流路42の一部及び出湯流路43と連続することにより、湯水を循環可能な循環回路45を形成している。
【0057】
即ち、給湯側戻り流路44は、給湯栓59を基準として上流側から下流側に向かって順番に、出湯主配管60の下流側端部と接続された戻り主配管70と、戻り主配管70の下流側端部とポンプユニット3との間に位置する繋ぎ配管71と、ポンプユニット3の内部配管72と、給水主配管47の中途に接続されたポンプユニット分岐配管73とで形成されている。即ち、給湯側戻り流路44は、給湯栓59から出湯しない湯水を、ポンプユニット3を介して給水主配管47へ流す流路である。
【0058】
ここで、ポンプユニット3の内部配管72の中途には、循環ポンプ24、25が配されている。より具体的には、ポンプユニット3の内部配管72には、主用の循環ポンプ24が配された主ポンプ側流路74と、臨時用の循環ポンプ25が配された副ポンプ側流路75とが設けられており、副ポンプ側流路75は、主ポンプ側流路74をバイパスする流路となっている。そして、主ポンプ側流路74の主用の循環ポンプ24の下流側と、副ポンプ側流路75の臨時用の循環ポンプ25の下流側には、それぞれ逆止弁76,77が設けられている。
【0059】
そして、2つの循環ポンプ24、25よりもさらに上流側に膨張タンク78が配されている。
【0060】
排水系統41は、上記したドレン排出系統20を一部に備えたドレン排水流路82と、湯水排出系統83を一部に備えた湯水排水流路84によって構成されている。
【0061】
ドレン排水流路82は、外部の配管等と接続された排水主配管85と、排水主配管85から給湯器本体2に分岐した給湯側排水分岐配管86と、ドレン排出系統20とで形成されている。
【0062】
湯水排水流路84は、排水主配管85と、排水主配管85からポンプユニット3に分岐したユニット側排水分岐配管87と、湯水排出系統83とで構成されている。
【0063】
即ち、排水系統41は、給湯器本体2やポンプユニット3から排出されたドレンや不要な湯水を外部に排水する流路である。
【0064】
次に本実施形態の給湯システム1における動作について説明する。
本実施形態の給湯システム1は、主な機能として給湯運転、循環運転、凍結防止運転の3つの運転を実施可能な構成とされている。
【0065】
給湯運転は、給水源(図示せず)から給湯器本体2に湯水を供給し、給湯器本体2で加熱された湯水を給湯栓59から出湯する運転である。具体的に説明すると、図3で示されるように、給湯栓59を開くと給水源(図示せず)から給水流路42に湯水が供給され、給湯系統40へ通水される。そして、給湯器本体2に湯水が供給される。すると、燃料系統(図示せず)から燃料ガスが燃焼部12へ供給されてバーナ15による燃焼運転が開始される。このことにより発生した燃焼ガスによって、熱交換部13を流れる湯水が加熱される。そして、熱交換部13で加熱された湯水は、バイパス配管51を通過した加熱前の湯水と混合されて適温に調整された後、出湯主配管60を通過して給湯栓59より出湯される。
【0066】
なお、給湯運転では、1基のみの給湯器本体2で湯水を加熱するだけでなく、複数の給湯器本体2,2で湯水を加熱してもよい。即ち、それぞれの給湯器本体2,2で加熱した湯水を各出湯分岐配管61,62から出湯主配管60へと流し、給湯栓59より出湯してもよい。
【0067】
循環運転は、給湯栓59が開かれたときに即座に出湯するため、予め加熱した湯水を循環回路45内に循環、滞留させておく運転である。具体的に説明すると、図4で示されるように、給湯栓59が閉じられた状態で循環ポンプ24を運転することによって、循環回路45内に湯水の循環流を形成する。このとき、循環回路45は、制御装置5を内蔵した給湯器本体2の内部と、ポンプユニット3の内部とをそれぞれ通過している。そして、循環回路45が内部を通過する給湯器本体2は、複数の給湯器本体2の内で1基のみとなっている。また、循環回路45に湯水を循環させたとき、給湯器本体2に内蔵された入水温度センサ54によって循環している湯水の温度が検知可能となっており、循環している湯水の温度が所定の温度より低い場合、熱交換部13で循環している湯水を加熱する。
【0068】
ここで循環運転を実施するとき、通常状態では、臨時用の循環ポンプ25を休止した状態で循環ポンプ24を運転させる。しかしながら、主用の循環ポンプ24が故障した場合や、主用の循環ポンプ24と臨時用の循環ポンプ25とを交互に運転するローテーション運転を実施する場合等では、主用の循環ポンプ24を停止し、臨時用の循環ポンプ25を運転する循環運転を実施可能となっている。
【0069】
以上のように、本実施形態の給湯システム1は、給湯栓59で出湯要求がないとき、循環運転が可能となっている。しかしながら、このような給湯システムを実際の商業施設で運用する場合、節電等の理由により夜間等の営業休止時間帯において給湯システムの全運転を休止する場合がある。ここで、外気の温度が著しく低下する寒冷地等において給湯システムを長時間休止させると、循環回路45内に滞留する湯水が凍結してしまうおそれがある。
【0070】
そこで、本実施形態の給湯システム1では、所定時間の間、循環運転を停止したときに起こり得る循環回路45の凍結を防止するために、凍結防止運転を実施する。本実施形態の凍結防止運転について以下で詳細に説明する。
【0071】
本実施形態では、図5で示されるように、制御装置5の温度センサが規定温度Ta(例えば、摂氏5.5度)以下を検知した場合(ステップ1でYesの場合)、制御装置5がポンプ駆動装置8に主用の循環ポンプ24を運転させるための駆動信号を発信する(ステップ22)。そして、主用の循環ポンプ24が運転されることにより、循環回路45に湯水の循環流が形成される。
【0072】
そして、湯水の循環流が形成されると、入水温度センサ54によって内部上流側流路50を流れる湯水の温度が規定温度Tb(例えば、摂氏5.5度)以下であるか否かを判別する(ステップ3)。そして、湯水の温度が規定温度Tb以下である(ステップ3でYesである)ことを条件に、主用の循環ポンプ24の運転と臨時用の循環ポンプ25の運転を順次行う凍結防止運転を実施する(ステップ4)。
【0073】
具体的に説明すると、凍結防止運転では、まず主用の循環ポンプ24を規定時間t1(例えば20分)運転させて、主ポンプ側流路74を含む循環回路45に内に循環流を形成する。次に、主用の循環ポンプ24運転開始から規定時間t1経過した後、主用の循環ポンプ24の運転を停止すると共に、臨時用の循環ポンプ25の運転を開始する。そして、臨時用の循環ポンプ25を規定時間t2(例えば10分)運転させて、副ポンプ側流路75を含む循環回路45に内に循環流を形成する。即ち、凍結防止運転では、主用の循環ポンプ24と臨時用の循環ポンプ25とをそれぞれ1基ずつ、途切れることなく連続して運転させる。
【0074】
さらに具体的には、図2で示されるように、制御装置5が駆動装置8に対して主用の循環ポンプ24を運転させるための信号を発信し、主ポンプ用リレー35を閉じた状態とし、副ポンプ用リレー36を開いた状態とする。そのことにより、主ポンプ側操作回路28を通電状態して主用の循環ポンプ24を運転すると共に、副ポンプ側操作回路29を断絶して臨時用の循環ポンプ25を停止した状態とする。そして、主用の循環ポンプ24の運転開始から規定時間t1が経過した後、制御装置5が臨時用の循環ポンプ25を運転させるための信号を発信し、主ポンプ用リレー35を開いた状態とし、副ポンプ用リレー36を閉じた状態とする。そして、主ポンプ側操作回路28を断絶して主用の循環ポンプ24を停止するとともに、副ポンプ側操作回路29を通電状態として臨時用の循環ポンプ25を運転する。このことにより、凍結防止運転を実施する。
【0075】
そして凍結防止運転が終了する(臨時用の循環ポンプ25の運転開始から規定時間t2が経過する)と、入水温度センサ54によって内部上流側流路50を流れる湯水の温度が判別される(ステップ5)。
【0076】
循環している湯水の温度が規定温度Tbより低い場合(ステップ5でNoの場合)、再び、ステップ4とステップ5の動作を実施する。具体的には、循環している湯水の温度が規定温度Tbより低い場合(ステップ5でNoの場合)、臨時用の循環ポンプ25の運転を停止すると共に、主用の循環ポンプ24の運転を開始する。そして、再び、凍結防止運転を実施する(ステップ4)。即ち、規定時間t1だけ主用の循環ポンプ24を運転し、その後、規定時間t2だけ臨時用の循環ポンプ25を運転する。そして、凍結防止運転の終了時に内部上流側流路50を流れる湯水の温度を判別する(ステップ5)。
【0077】
凍結防止運転を実施した後、循環回路45を循環している湯水の温度(内部上流側流路50を流れる湯水の温度)が規定温度Tbより高い場合(ステップ5でYesの場合)、主用の循環ポンプ24及び臨時用の循環ポンプ25の運転を停止して(ステップ6)、凍結防止運転を終了する。
【0078】
以上で本実施形態の凍結防止運転の説明を終了する。
【0079】
ここで、本実施形態の給湯システム1を実際に運用するとき、制御装置5を内蔵した給湯器本体2と、ポンプユニット3とが離れた位置に配される場合がある。例えば、給湯器本体2とポンプユニット3のいずれか一方を屋内に設置し、他方を屋外に設置して給湯システム1を運用する場合も考えられる。このように、給湯器本体2とポンプユニット3とを離れた位置に配すると、給湯器本体2の周辺温度とポンプユニット3の周辺温度に大きな差が生じてしまうことがある。このとき、給湯器本体2の制御装置5で周辺温度の低下を検知するだけでは、ポンプユニット3の周辺温度の低下が検知できない。そのため、給湯器本体2の周辺温度が低下せずにポンプユニット3の周辺温度だけが低下した場合、凍結防止運転が実施されず、ポンプユニット3の内部及び近傍の配管が凍結してしまうおそれがある。
【0080】
このため、本実施形態の給湯システム1では、上記した給湯器本体2による凍結防止運転に加えて、ポンプユニット3が周辺温度の低下を条件に主用の循環ポンプ24を運転している。即ち、給湯器本体2の制御装置5が周辺温度の低下を検知したときに主用の循環ポンプ24を運転させる(ステップ1及びステップ2の動作)だけでなく、ポンプユニット3のポンプ駆動装置8が周辺温度の低下を検知したときにも循環ポンプ24を運転させている。このことにより、給湯器本体2の周辺温度が低下した場合だけでなく、ポンプユニット3の周辺温度が低下した場合においても、上記した、主用の循環ポンプ24の運転と臨時用の循環ポンプ25の運転を交互に行う凍結防止運転を実行することができる。以下で、ポンプユニット3のポンプ駆動装置8が周辺温度の低下を検知したときの動作について、詳細に説明する。
【0081】
ポンプユニット3では、図6で示されるように、開閉器32で所定温度Tc(例えば摂氏3度)以下が検知された場合、即ち、ポンプユニット3の周辺温度が低下して所定温度Tc以下となり、開閉器32が閉じた状態となった場合(ステップ21でYesの場合)、ポンプ駆動装置8による主用の循環ポンプ24の運転が開始される(ステップ22)。具体的に説明すると、図2で示されるように、ポンプユニット3の開閉器32が閉じることで、主ポンプ側操作回路28と、バイパススイッチング回路31によって閉成された電気回路が形成される。このことにより、ポンプ駆動装置8による循環ポンプ24の運転が開始される。そして、循環ポンプ24の運転によって循環回路45に湯水の循環流が形成される。
【0082】
そして、このポンプ駆動装置8による循環ポンプ24の運転は、開閉器32で所定温度Td(例えば摂氏9度)以上が検知されるまで(ステップ23がNoの間)継続される。そして、開閉器32で所定温度Td以上が検知された場合、即ち、ポンプユニット3の周辺温度が上昇して所定温度Td以上となり、開閉器32が開いた状態となった場合(ステップ23でYesの場合)、バイパススイッチング回路31が断絶され、循環ポンプ24の運転が停止される。
【0083】
ここで、制御装置5を内蔵する給湯器本体2では、湯水流量センサ53によって内部上流側流路50に湯水が流れているか否かを常に監視し、内部上流側流路50に湯水が流れたとき、入水温度センサ54によって内部上流側流路50を流れる湯水の温度が規定温度Tb以下であるか否かを判別している(図5のステップ3)。したがって、ポンプユニット3が主用の循環ポンプ24を運転し、循環回路45に湯水の循環流が形成された(ステップ22が実施された)とき、形成された循環水の温度がTb以下であれば、上記したステップ4以下の処理を実施する。
【0084】
このように、本実施形態では、給湯器本体2とポンプユニット3とがそれぞれ独立して、周囲の温度低下を条件に主用の循環ポンプ24を運転する動作を実施している。そして、給湯器本体2とポンプユニット3のどちらが主用の循環ポンプ24を運転させた場合であっても、主用の循環ポンプ24の運転により形成された湯水の循環流の温度が規定温度Tb以下であれば、凍結防止運転を実施する。このことにより、給湯器本体2とポンプユニット3の間で、複雑な制御信号をやり取りすることなく、ポンプユニット3側の周辺温度の低下を条件に、凍結防止運転を実行することができる。そのため、ポンプユニット3側から給湯器本体2側へ周辺温度の低下に関わる情報を送信するといった複雑な制御を実施する必要がないので、ポンプユニット3側に複雑な制御を実施可能な制御装置を配さなくてもよく、給湯システム1の製造コストを低減できるという利点がある。
【0085】
しかしながら、その反面、給湯器本体2とポンプユニット3とがそれぞれ独立して循環ポンプ24,25を運転させるため、ポンプユニット3による主用の循環ポンプ24の運転中に、制御装置5による臨時用の循環ポンプ25の駆動信号が発せられてしまうという問題がある。
【0086】
具体的に説明すると、ポンプユニット3が上記したステップ22の処理を実行して循環回路45に湯水の循環流が形成されると、給湯器本体2では形成された循環水の温度が規定温度Tb以下であるか否かを判別する。そして、ポンプユニット3が形成した循環水の温度が規定温度Tb以下であった場合、給湯器本体2は凍結防止運転を開始する(ステップ4以下を実行する)。ここで、ポンプユニット3側で所定温度Td以上が検知される(図6のステップ23でYesとなる)前に、給湯器本体2側の凍結防止運転(図5のステップ4)で臨時用の循環ポンプ25の運転が開始されてしまった場合、ポンプユニット3による主用の循環ポンプ24の運転中に制御装置5が臨時用の循環ポンプ25を動かそうとしてしまう。
【0087】
そこで、本実施形態の給湯システム1では、ポンプユニット3による主用の循環ポンプ24の運転中に制御装置5が臨時用の循環ポンプ25を運転させるための信号を発信してしまっても、主用の循環ポンプ24と臨時用の循環ポンプ25の同時運転を防止可能な構成となっている。そのことにより、給湯器本体2とポンプユニット3とがそれぞれ独立して循環ポンプ24,25を運転する動作を実施しても、主用の循環ポンプ24と臨時用の循環ポンプ25の同時運転を防止可能となっている。このことにつき、図2を参照しつつ、以下で具体的に説明する。
【0088】
上記したように、ポンプユニット3が主用の循環ポンプ24を運転する場合、バイパススイッチング回路31の開閉器32と、強制断絶用リレー33のスイッチ部分33aとを閉じた状態とすることで主ポンプ側操作回路28を通電状態としている。そして、制御装置5が臨時用の循環ポンプ25を運転する場合、主ポンプ用リレー35を開いた状態とし、副ポンプ用リレー36を閉じた状態とすることで、副ポンプ側操作回路29を通電状態としている。ここで、本実施形態の給湯システム1では、副ポンプ側操作回路29が通電状態となると、バイパススイッチング回路31が断絶される構成となっている。即ち、副ポンプ側操作回路29が通電状態となり、強制断絶用リレー33のコイル部分33bに電気が流れると、バイパススイッチング回路31に接続された強制断絶用リレー33のスイッチ部分33aが接点から離間する構成となっている。このことにより、制御装置5が臨時用の循環ポンプ25の運転するための信号を発信し、臨時用の循環ポンプ25の運転が開始されると、同時にバイパススイッチング回路31が断絶され、ポンプユニット3による主用の循環ポンプ24の運転が停止する。このため、ポンプユニット3による主用の循環ポンプ24の運転中に、制御装置5による臨時用の循環ポンプ25の駆動信号が発せられても、主用の循環ポンプ24と臨時用の循環ポンプ25が同時運転しない。
【0089】
即ち、本実施形態の給湯システム1は、給湯器本体2(制御装置5)とポンプユニット3(ポンプ区駆動装置8)の間で制御信号をやりとりすることなく、主用の循環ポンプ24と臨時用の循環ポンプ25の同時運転を防止可能な構成となっている。そのため、ポンプ区駆動装置8の構成を簡易化することができる。
【0090】
上記した実施形態では、給湯装置本体2の制御装置5が周辺温度の低下を検知したときに主用の循環ポンプ24を運転させる(ステップ1及びステップ2の動作を実施する)ことにより、凍結防止運転を実施するか否かを判別するための循環流を形成したが、本発明の給湯システムはこれに限るものではない。例えば、制御装置5が所定時間毎に主用の循環ポンプ24を運転させる構成であってもよい。即ち、制御装置5が所定時間毎に主用の循環ポンプ24を運転させ、循環回路45に循環流を形成し、形成された循環流が規定温度Tb以下であれば凍結防止運転を実施する構成であってもよい。
【0091】
また、この凍結防止運転を実施するか否かを判別するための循環流は、臨時用の循環ポンプ25によって形成してもよい。例えば、制御装置5が周辺温度の低下を検知したときに臨時用の循環ポンプ25を運転させる構成であってもよい。
【0092】
さらにまた、上記した実施形態では、ポンプユニット3が周辺温度の低下を検知したとき、主用の循環ポンプ24を運転させる例を示したが、本発明の給湯システムはこれに限るものではない。例えば、ポンプユニット3が周辺温度の低下を検知したとき、臨時用の循環ポンプ25を運転させる構成であってもよい。このとき、ポンプ駆動装置のバイパススイッチング回路を主ポンプ側操作回路でなく副ポンプ側操作回路に設けてもよい。
【0093】
また、上記した実施形態では、2基の循環ポンプ24,25をそれぞれ運転して循環回路45に循環流を形成する凍結防止運転を実施したが、本発明の給湯システム1はこれに限るものではない。例えば、循環回路45に循環流を形成したとき、同時に熱交換部13で湯水を加熱する構成であってもよい。即ち、循環ポンプ24,25を運転すると共に、熱交換部13による湯水の加熱をおこなう凍結防止運転を実施してもよい。
【0094】
上記した実施形態では、主用の循環ポンプ24を規定時間t1運転させた後、臨時用の循環ポンプ25を規定時間t2運転させる凍結防止運転を実施したが、本発明の給湯システム1はこれに限るものではない。例えば、主用の循環ポンプ24又は臨時用の循環ポンプ25のみを運転する凍結防止運転を実施してもよい。しかしながら、上記したように主用の循環ポンプ24を運転させた後、臨時用の循環ポンプ25を運転させる構成であれば、主ポンプ側流路74と副ポンプ側流路75の2つの流路において流路内の湯水の凍結を防止でき、且つ、2基の循環ポンプ24,25の双方の凍結を防止できるため望ましい。
【0095】
さらに上記した実施形態では、ポンプ駆動装置8の温度検知手段として、所定温度以下を検知すると閉状態となり、所定温度以上を検知する開状態となる開閉器32を使用した例を示したが、本発明の給湯システムはこれに限るものではない。例えば、温度センサ(サーミスタ)と連動したスイッチを備えた構成とし、所定温度以下を検知した場合にスイッチを閉状態としてもよい。
【0096】
また、ポンプ駆動装置8はタイマを備えた構成としてもよい。即ち、規定温度Td以上となったときにポンプユニット3による主用の循環ポンプ24の運転を終了する構成でなく、主用の循環ポンプ24が所定時間だけ運転したことを条件にポンプユニット3による主用の循環ポンプ24の運転を終了する構成であってもよい。しかしながら、上記した構成によると、ポンプ駆動装置8の構成をより安価且つ容易にできるので、望ましい。
【0097】
上記した実施形態では、循環ポンプを2つ備える構成の給湯システム1を示したが、本発明の給湯システムはこれに限るものではない。例えば、3つ以上の循環ポンプを備えた給湯システムであってもよい。バイパススイッチング回路やリレーを複数設けて回路に組み込む等の手段により、給湯器本体2側による循環ポンプの運転と、ポンプユニット3側による循環ポンプの運転とが同時に実施された場合であっても、規定の数以上のポンプが同時に運転されなければよい。
【符号の説明】
【0098】
1 給湯システム
2 給湯器本体(熱源装置)
3 ポンプユニット(ポンプ装置)
5 制御装置
24 循環ポンプ
25 循環ポンプ
32 開閉器(ポンプ側温度検知手段)
54 入水温度センサ(循環水温度検知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湯水を加熱する熱源装置と配管によって接続され、前記熱源装置内を含む前記熱源装置との間の配管内に所定温度の湯水を滞留させる機能、及び前記配管内に通液流れを形成する機能を有し、外部の制御装置が発信した制御信号を受信可能なポンプ装置であって、
複数の循環ポンプと、ポンプ側温度検知手段とを有し、
ポンプ側温度検知手段が所定温度以下を検知したことを条件に、少なくとも1台の循環ポンプを運転するものであり、
少なくとも1台の循環ポンプが運転し、少なくとも1台の循環ポンプが休止した状態において、外部の制御装置から休止中の循環ポンプを運転させる制御信号を受信した場合、運転中の循環ポンプを停止させる機能を有することを特徴とするポンプ装置。
【請求項2】
前記熱源装置と、請求項1に記載のポンプ装置とが配管によって接続され、双方の機器を含む間の配管内に所定温度の湯水を滞留させて、要求に応じて滞留された湯水から出湯させる機能を備えたことを特徴とする給湯システム。
【請求項3】
前記熱源装置が前記制御装置を備え、当該制御装置によって給湯システムの運転が制御可能であることを特徴とする請求項2に記載の給湯システム。
【請求項4】
前記熱源装置は循環水温度検知手段を有しており、
循環水温度検知手段が所定温度以下を検知したことを条件に、前記制御装置が少なくとも1つの循環ポンプを運転させる凍結防止運転を実施することを特徴とする請求項2又は3に記載の給湯システム。
【請求項5】
前記凍結防止運転は、複数の循環ポンプを1つずつ順次運転させることを特徴とする請求項4に記載の給湯システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−2787(P2013−2787A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137239(P2011−137239)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】