説明

ポータブルトイレなどにおける排泄物を封入したパック体の処理方法

【課題】 介護施設や一般家庭などに設置される比較的小容量のポータブルトイレに溜まるパック体に封入された排泄物を、合理的に処理するための方法を提供すること。
【解決手段】 家庭や介護施設などに置いて使用される可搬型トイレにおいて排泄物を排泄のつど柔軟な防水性の袋状のパック材に収容して封止し、排泄物の封入パック体Pとしてそのトイレに溜めるようにしたトイレから前記パック体Pを回収する、回収したパック体Pを処理容器1に投入して当該容器1内で各パック体Pを破る、前記容器1内で破られたパック体Pとその内容物である排泄物とを水を主体とする液体により濯ぎつつ分離する、容器1内で分離された排泄物と濯ぎ液体を前記容器1から下水道又は浄化槽へ送り込む一方、容器内に分離されて残ったパック体Pを前記容器1から取出して不燃ゴミ乃至産業廃棄物として処理すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、介護施設や老人ホーム、或は、一般家庭などにおいて使用されるポータブルトイレに溜まるパック体に封入された排泄物の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の発明者は、先に工事現場やイベント会場などのような臨時の場所で使用される仮設のトイレ設備において、そのトイレ設備に溜まる排泄の度にパックされる排泄物のパック体を回収して処理する管理システムを特願2003−300830号として提案している。
【0003】
仮設トイレ設備に溜まるパック体に封入された排泄物を回収して処理することを含む先に提案した管理システムは、病院や介護施設など、或は、一般家庭においても使用されるポータブルトイレに対しても適用できるアイデアであった。
【0004】
しかし、病院や介護施設など、或は、一般家庭でも使用されるポータブルトイレにおいて、そのトイレに溜まるパック体に封入された排泄物の処理を、多人数で使用するイベント会場などの仮設トイレ設備に大量に溜まるパック体に封入された排泄物と同様に取扱うには無理がある。
【0005】
即ち、提案した上記管理システムは大がかり過ぎて、一般家庭や介護施設などに設置される小容量タイプのポータブルトイレに溜まるパック体に封入された排泄物を取扱うには、逆に手間やコストの面で折合わないからである。なお、上記のポータブルトイレや仮設トイレ設備における排泄物を封入するためのパック体については、特許文献1〜3などにより公知である。
【特許文献1】特開平6−30857号公報
【特許文献2】特開平7−275162号公報
【特許文献2】特開平6−30857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような点に鑑み、介護施設や一般家庭などに設置される比較的小容量のポータブルトイレに溜まるパック体に封入された排泄物を、合理的に処理するための方法を提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することを目的としてなされた本発明方法の構成は、
(イ) 家庭や介護施設などに置いて使用される可搬型トイレにおいて排泄物を排泄のつど柔軟な防水性の袋状のパック材に収容して封止し、排泄物の封入パック体としてそのトイレに溜めるようにしたトイレから前記パック体を回収する、
(ロ) 回収したパック体を処理容器に投入して当該容器内で各パック体を破る、
(ハ) 前記容器内で破られたパック体とその内容物である排泄物とを水を主体とする液体により濯ぎつつ分離する、
(ニ) 容器内で分離された排泄物と濯ぎ液体を前記容器から下水道又は浄化槽へ送り込む一方、容器内に分離されて残ったパック体を前記容器から取出して不燃ゴミ乃至産業廃棄物として処理する、
ことを特徴とするものである。
【0008】
そして、上記の本発明方法に用いて好適な排泄物を封入したパック体の処理装置の構成は、壁面のほぼ全域に透水部を形成した回転槽と、該回転槽を外側から覆う固定槽と、前記回転槽の内部に対して昇降自在であり、かつ、少なくとも先端にカッタを備えた腕を放射状に設けて当該腕の内部に液体を供給し、前記腕から放出するよにした中空軸とを具備した処理装置であって、回転する回転槽に投入された排泄物を封入したパック体を前記中空軸の腕に設けたカッタにより破ると共に、腕から放出される液体によって破れたパック体と、その中から流出する排泄物と濯ぎ流すことにより、排泄物と濯ぎ液体は回転槽の透水部から固定槽へ流出させる一方、前記液体で濯がれたパック体は回転槽内に残すようにしたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、回収する排泄物を封入したパック体を処理容器内で破袋すると同時に、水などの液体をその容器内に供給することにより濯ぎながら排泄物とパック体を分離し、分離された排泄物は液体と一緒に下水道などに送り出すと共に、前記液体に濯がれて容器内に残ったパック体を前記容器内から取出して不燃ゴミなどとして処理するので、至って簡単かつ合理的にパック体とその中の排泄物を分離し、分離されたパック体と排泄物とを分別して、それぞれに適合した最終処理場へ向けて別々に送り出すことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に本発明方法の実施の形態例について図を参照しつつ説明する。図1は本発明方法における処理プロセスのフローチャート、図2はパック体を破って排泄物とパック体を液体で濯ぎつつ分離する図1の本発明方法で使用する処理装置の一例の概要を示す断面図、図3は排泄物のパック体の一例の斜視図である。
【0011】
本発明方法を適用するポータブルトイレや仮設トイレ設備における排泄物のパック体は、図3に例示するように、柔軟な熱可塑性の長尺の管状フィルムを折畳んでカセット状にし図示しないトイレに設置されるフィルムFが、その下端が熱シールS1された状態で、上部を開口して排泄物容器P(以下、パック体Pともいう)としてセットされ、上部の開口部から排泄物が当該容器Pに納まる(排泄が終る)と、上部が熱シールS2されると共にカセット状に折畳まれる管状のフィルムFから引出されてカットされ、当該トイレのいわば便壷部(図示せず)に自然落下し、図3の態様のパック体Pとなって排泄のつどに溜まる。
【0012】
内部に排泄物を収容した状態で封止されたパック体Pは、ポータブルトイレの容量にもよるが、一例として6回〜12回程度分が溜まると、適宜回収されて図2に例示した本発明処理装置に投入してその中でパック体Pとその中の排泄物を分離し、両者を分別して処理するようにしたので、以下この点について述べる。
【0013】
図2において、1は、壁面の略全域がメッシュ構造やパンチメダルの小孔などによる透水部2に形成された回転槽で、底1aの中央に垂下させて設けた軸3が軸受4に支持されてモータを主体とする回転駆動源5に接続されている。
【0014】
6は上記回転槽1の外側に、十分な隙間Gを保って当該槽1を外側から覆うように配設された固定槽で、その底6aには排出口7が形成されている。前記回転槽1はその軸受4において、この固定槽6の底6aと一緒に架台8に載架支持されていると共に、架台8は、図2の例では左下部がヒンジ8aによって、ベース台9に対し起立,伏倒可能に設けられている。この起伏には、図示しないがシリンダや送りネジ機構などの駆動力を利用する。
【0015】
上記排出口7には、排水管10が排水用カップリング10aを介して接続自在に接続されていると共に、ここではシャッタ式の開閉弁11が設けられている。11aは前記弁11のソレノイドなどによる開閉駆動源である。
【0016】
一方、上記回転槽1に対しては、その上方から内部を中空にした中空軸12が昇降自在に配置されている。中空軸12は、その上下方向において、軸に対して放射状乃至少なくとも二方に延びた中空腕13が複数段に亘って設けられている。中空腕13は稍下向きの傾斜角を付けて設けることが好ましい。
【0017】
各中空腕13の少なくとも先端、好ましくは先端部と中間部に破断手段たるカッタ14が設けられており、各中空腕13の中空部が、ここでは腕13の先端部のカッタ14の先端まで形成されていると共に、ノズル状の小孔が放出口として設けられている。各腕13の中間にも放出口13aが設けられている。本発明における上記カッタ14には、刃物のほか噴射水流などによる噴射液流カッタや熱溶断式のカッタを用いることができる。また、収容されたパック体Pを機械プレス力で破裂させる方式を採ることもできる。
【0018】
上記中空軸12の少なくとも回転槽1より上方には、回転継手15を介して給水パイプ16が接続されている。ここで、給水パイプ16は、給水用カップリング16aを介して回転継手15に接続されていると共に、カップリング16aの手前にバルブ16bを備えている。
【0019】
また、上記中空軸12の上部は、当該軸12を昇降自在に保持するための昇降機構を兼ねる軸支持機構17により支持されている。昇降機構はモータを備えたラック,ピニオン17a,17bや図示しないが送りネジ、或は、シリンダなどにより形成され、軸支持機構は、前記ラック,ピニオン17a,17bに兼用させたり、図示しないリニアスライド機構などを用いる。以上により、本発明方法に用いる処理装置の一例を形成する。
【0020】
上記のように形成された本発明方法を実施するための一例の処理装置は、次のように使用する。
まず、回転槽1の上部の蓋1b,1cを開放して中空軸12をその昇降機構17を駆動して上昇させ、この軸12の各中空腕13を回転槽1の上方へ待避させた状態にする。このとき、給水管16の長さが足りないなどの事情があるときは、そのカプラー16aで給水管16と軸12の回転継手15を切り離しておく。
【0021】
上記のようにして蓋1b,1cが開放され槽内に何も無い状態になったところで、回収してきた複数の排泄物のパック体Pを回転槽1の中に投入する。パック体Pの投入量は、槽1の容積の略1/2〜1/3程度とし、この状態でモータ5を起動して回転槽1を一方、又は、正逆方向を切換えつつ比較的低速で回転させる。
【0022】
槽1の上記回転中に、昇降機構17を起動させて中空軸12を降下させ、各中空腕13が回転槽1の内部に位置付けられるまで緩やかに降下させる。回転槽1の回転中に中空軸12が当該槽12の中に進入すことにより、各中空腕13の先端や中間に付けたカッタ14に触れるか乃至は接近した各パック体Pは、その外皮がそのカッタ14によって破断乃至切裂されるので、内部の排泄物が槽内に流出し始める。
【0023】
このようになった状態で、或は、それ以前から回転継手15にカプラー16aを介して接続されている給水パイプ16からバルブ16bを開けて水を供給すると、その水は回転継手15を経由して中空軸12の中空通路を流下し、各中空腕13の放出口13aやカッタ14の先端などに設けた放出口14aから、回転槽1の内部に勢い良く放出される。
【0024】
上記の水放出によって回転槽1の内部で切裂乃至破断されたパック体Pから流出する排泄物は、この回転槽1が回転していることにもよってパック体Pからさらに流し出されてこの槽1に設けたメッシュや小孔などによる透水部2から固定槽6へ流出する一方、パック体Pは透水部2から固定槽6側へは透水部2から流出できないので、回転槽1の内部に残る。
即ち、回転する回転槽1の中で、パック体Pとその中に封止して収められていた排泄物が当該回転槽1の内部において分離され、分離された後、排泄物は回転槽1から固定槽6の内部に流出させられる一方、パック体Pは回転槽1の内部に残って、分別させられるのである。このため、水放出時の回転槽1の回転は、高速回転が望ましい。また、水放出時には、中空軸12を上下動させると濯ぎ効果が高まる。
【0025】
このように、回転槽1の回転とその中への水の供給によって、回転槽1の内部に残っているパック体Pは充分に濯がれて汚物の付着が取り除かれ、かつ、この槽1内の排泄物は透水部2から固定槽6に流出されてしまう。
【0026】
固定槽6に流出させられた排泄物は、開閉弁11が開けられた排出口7から排水管10に排出されて、図示しないが既設の下水道、或は、浄化槽に移送される。
【0027】
一方、回転槽1の内部に残った破断され、水で濯がれて付着物が洗い流されたパック体Pは、槽1の回転を止め、蓋1b,1cを開放し、中空軸12を槽外に上昇させたところで、この処理装置を架台8においてベース台9に対してヒンジ8aで伏倒させ、回転槽1の内部にあるパック体Pをかき出し、これを不燃ゴミ、或は、産業廃棄物として、既設の設備などで処理する。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明方法は、上記の排泄物を封入したパック体を回収して、上記の処理装置によってパック体と排泄物の分離、そして分離後の両者の分別扱いを繰返すことにより、一般家庭や病院などの施設で回収される排泄物が封入されたパック体を、合理的かつ省力的に処理することができる。
【0029】
また、本発明方法によれば、上記処理装置により分離されて分別されるパック体と排泄物は、それぞれ別個に既存の処理施設や設備において最終処理ができるから、処理のための新たな設備などを設けることなくポータブルトイレに溜まるパック体に封入された排泄物の処理ができ、従って、きわめて実用性が高い。
【0030】
上記の本発明方法は、一般家庭や病院等の施設に設置れる個人ユースのポータブルトイレに溜まる排泄物が封入されたパック体の処理のみならず、イベント会場や工事現場などに設置される容量が大きな仮設トイレ設備に溜まる大量のパックされた排泄物の処理にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明方法における処理プロセスのフローチャート。
【図2】パック体を破って排泄物とパック体を液体で濯ぎつつ分離する図1の本発明方法で使用する処理装置の一例の概要を示す断面図。
【図3】排泄物のパック体の一例の斜視図。
【符号の説明】
【0032】
1 回転槽
2 透水部
3 軸
4 軸受
5 回転駆動源
6 固定槽
7 排出口
8 架台
9 ベース台
10 排水管
11 開閉弁
12 回転軸
13 中空軸
14 カッタ
15 回転継手
16 給水管
17 昇降機構兼軸支持機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ) 家庭や介護施設などに置いて使用される可搬型トイレにおいて排泄物を排泄のつど柔軟な防水性の袋状のパック材に収容して封止し、排泄物の封入パック体としてそのトイレに溜めるようにしたトイレから前記パック体を回収する、
(ロ) 回収したパック体を処理容器に投入して当該容器内で各パック体を破る、
(ハ) 前記容器内で破られたパック体とその内容物である排泄物とを水を主体とする液体により濯ぎつつ分離する、
(ニ) 容器内で分離された排泄物と濯ぎ液体を前記容器から下水道又は浄化槽へ送り込む一方、容器内に分離されて残ったパック体を前記容器から取出して不燃ゴミ乃至産業廃棄物として処理する、
ことを特徴とするポータブルトイレにおける排泄物を封入したパック体の処理方法。
【請求項2】
液体は処理容器内に勢いよく噴出させて供給する請求項1のポータブルトイレにおける排泄物を封入したパック体の処理方法。
【請求項3】
液体供給時に処理容器を高速回転させる請求項2のポータブルトイレにおける排泄物を封入したパック体の処理方法。
【請求項4】
壁面のほぼ全域に透水部を形成した回転槽と、該回転槽を外側から覆う固定槽と、前記回転槽の内部に対して昇降自在であり、かつ、少なくとも先端に破断手段を備えた腕を放射状に設けて当該腕の内部に液体を供給し、前記腕から放出するよにした中空軸とを具備した処理装置であって、回転する回転槽に投入された排泄物を封入したパック体を前記中空軸の腕に設けた破断手段により破ると共に、腕から放出される液体によって破れたパック体と、その中から流出する排泄物と濯ぎ流すことにより、排泄物と濯ぎ液体は回転槽の透水部から固定槽へ流出させる一方、前記液体で濯がれたパック体は回転槽内に残すようにしたことを特徴とする排泄物を封入したパック体の処理装置。
【請求項5】
パック体の破断手段には、封止されたパック体に機械的プレス力,噴射水流等による剪断力,刃物による切断力,熱による溶断の少なくとも一つを用いた請求項4の排泄物を封入したパック体の処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−55810(P2006−55810A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−242777(P2004−242777)
【出願日】平成16年8月23日(2004.8.23)
【出願人】(391046610)日本セイフティー株式会社 (25)
【Fターム(参考)】