ポータブルトイレ
【課題】使用者が着座している便座部の荷重を均一に受けるのに有利で、荷重受け部材の耐久性の向上に有利であり、且つ、排泄物容器に汚水が貯留されているときであっても、汚水の飛散を抑制するのに有利なポータブルトイレを提供する。
【解決手段】ポータブルトイレは、使用者が着座する便座部1の荷重を受ける荷重受け部材7を備える。荷重受け部材7は、便座部1の前端部1fから後端部1rに向けて延設されていると共に排泄物容器5の鍔部52を載置する載置面73を有する。排泄物容器5の鍔部52を載置した荷重受け部材7を基体4の前方にスライドさせることにより、荷重受け部材7の前後方向における長さ寸法の1/3以上を基体4内に納めつつ、局部洗浄部20,21と排泄物容器3,5との干渉を回避させる第1操作と、排泄物容器3を荷重受け部材7から持ち上げる第2操作とを実施する。
【解決手段】ポータブルトイレは、使用者が着座する便座部1の荷重を受ける荷重受け部材7を備える。荷重受け部材7は、便座部1の前端部1fから後端部1rに向けて延設されていると共に排泄物容器5の鍔部52を載置する載置面73を有する。排泄物容器5の鍔部52を載置した荷重受け部材7を基体4の前方にスライドさせることにより、荷重受け部材7の前後方向における長さ寸法の1/3以上を基体4内に納めつつ、局部洗浄部20,21と排泄物容器3,5との干渉を回避させる第1操作と、排泄物容器3を荷重受け部材7から持ち上げる第2操作とを実施する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポータブルトイレに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、使用者が着座する便座部と、鍔部を有する排泄物容器と、排泄物容器を収容する容器収容空間を有すると共に便座部を搭載する基体と、使用者が着座する便座部の荷重を受ける荷重受け部材とを備えるポータブルトイレが開示されている。排泄物容器は、使用者から排出された排泄物を受けるものである。このものによれば、基体に対してスライド可能な荷重受け部材が設けられている。そして排泄物容器の鍔部の全体を荷重受け部材を載置している。排泄物容器を基体から取り出すにあたっては、排泄物容器の鍔部を載置した荷重受け部材を基体の前側にスライドさせることにより、排泄物容器の全部を基体から引き出して露出させる操作と、基体から露出させた荷重受け部材から排泄物容器を持ち上げて取り出す操作とを実施することにしている。この場合、排泄物容器の全部を基体から露出させるため、排泄物容器の鍔部を載置した荷重受け部材の引き出し距離が大きくなる。この結果、排泄物容器に排泄物と共に汚れた汚水が貯留されている場合、排泄物容器を載せた荷重受け部材をスライドさせるとき、汚水の水面の揺動量が増加し、汚水が基体の周囲に飛散するおそれがあった。
【0003】
また、特許文献2にも、排泄物容器の鍔部を保持するポータブルトイレが開示されている。このポータブルトイレによれば、図12及び図13に示すように、荷重受け部材500は、便座部600の荷重を受けるものである。荷重受け部材500は、使用者が着座している便座部600の前半分610を受ける第1荷重受け部材501と、使用者が着座している便座部600の後半分620を受ける第2荷重受け部材502とで形成されている。第1荷重受け部材501は基体700の前方側つまり矢印F方向にスライド可能とされている。第2荷重受け部材502は基体700に固定されている。
【特許文献1】特開2002−85290号公報
【特許文献2】特開2002−78640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した図12及び図13に示すポータブルトイレによれば、荷重受け部材500は基体700に装備されている。この荷重受け部材500は、前述したように、使用者が着座している便座部600の前半分610を受ける第1荷重受け部材501と、使用者が着座している便座部600の後半分620を受ける第2荷重受け部材502とで形成されている。このため可動側の第1荷重受け部材501と固定側の第2荷重受け部材502とは別体であり、第1荷重受け部材501は後端部505を有しており、第2荷重受け部材502は前端部506を有する。このものによれば、排泄物容器800の全部を基体700から引き出して露出させずとも良い。
【0005】
しかしながら荷重受け部材500が可動側の第1荷重受け部材501と固定側の第2荷重受け部材502とに分割されていると、第1荷重受け部材501による高さ支持位置と第2荷重受け部材502による支持高さとを高精度に合致させるには限界がある。このため、第1荷重受け部材501と第2荷重受け部材502とで荷重を均一に受けるには限界がある。荷重を均一に受けるために、構造が複雑化するおそれがある。
【0006】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、使用者が着座している便座部の荷重を均一に受けるのに有利で、荷重受け部材の耐久性の向上に有利であり、且つ、排泄物容器に汚水が貯留されているときであっても、汚水の飛散を抑制するのに有利なポータブルトイレを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るポータブルトイレは、使用者が着座する便座部と、鍔部を有する排泄物容器と、使用者の局部を洗浄する局部洗浄部と、排泄物容器を収容すると共に前記便座部及び局部洗浄ノズルを搭載する基体と、使用者が着座する便座部からの荷重を受ける荷重受け部材とを具備するポータブルトイレにおいて、
荷重受け部材は、
便座部の前端部から後端部に向けて延設されていると共に排泄物容器の鍔部を上方に持ち上げ可能に載置する載置面を有しており、基体の前方に向けて基体にスライド可能に設けられており、且つ、
荷重受け部材は、
排泄物容器の前記鍔部を載置した荷重受け部材を基体の前方にスライドさせることにより、荷重受け部材の前後方向における長さ寸法の1/3以上を基体内に納めつつ、局部洗浄部と排泄物容器との干渉を回避させる第1操作と、排泄物容器を荷重受け部材から持ち上げる第2操作とを実施可能に設定されていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明に係るポータブルトイレによれば、荷重受け部材の載置面は、便座部の前端部から後端部に向けて延設されており、排泄物容器の鍔部を載置する。このため、使用者が便座部に着座しているとき、便座部からの荷重全体を荷重受け部材で受けることができる。このため便座部からの荷重全体を荷重受け部材で効果的に受けることができる。
【0009】
本発明に係るポータブルトイレによれば、荷重受け部材は、荷重受け部材の載置面に排泄物容器の鍔部を着脱可能に載置した状態で、基体の前方側に向けて基体にスライド可能に設定されている。そして、荷重受け部材は、荷重受け部材の前後方向における長さ寸法の1/3以上を基体内に納めつつ、局部洗浄部と排泄物容器との干渉を回避させる第1操作と、排泄物容器を荷重受け部材から持ち上げる第2操作とにより、排泄物容器を荷重受け部材から離脱させる。このように排泄物容器を荷重受け部材から離脱させるときには、荷重受け部材の前後方向における長さ寸法の1/3以上が基体内に納められている。このため、特許文献1に係る技術とは異なり、排泄物容器の全体を基体から露出させずとも良い。故に、排泄物容器のスライド距離が短くなる。この結果、排泄物容器に汚水が貯留されているときであっても、汚水が泄物容器外に飛散することが抑制される。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るポータブルトイレによれば、荷重受け部材は便座部の前端部から後端部に向けて延設されているため、使用者が着座している便座部からの荷重全体を荷重受け部材で受けることができる。このため特許文献2に係る技術とは異なり、便座部からの荷重を荷重受け部材の全体で効果的に受けることができ、荷重受け部材の耐久性の向上に有利である。
【0011】
本発明に係るポータブルトイレによれば、荷重受け部材は、排泄物容器を載置した荷重受け部材を基体の前方にスライドさせる第1操作と、排泄物容器を荷重受け部材から持ち上げる第2操作とにより、排泄物容器を荷重受け部材から離脱させる。このため排泄物容器を荷重受け部材から離脱させるとき、スライド量を低減させることができる。この結果、排泄物を含む汚水を貯留している排泄物容器をスライドさせるときであっても、排泄物容器内の汚水の水面が過剰に揺動することが抑制される。ひいては、排泄物容器内の汚の水面が過剰に揺動して排泄物容器外に飛散することが抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係るポータブルトイレは、使用者が着座する便座部と、鍔部を有する排泄物容器と、排泄物容器を収容する容器収容空間を有すると共に便座部を搭載する基体と、使用者が着座する便座部の荷重を受ける荷重受け部材とを備える。荷重受け部材で受けられた便座部からの荷重は、基体に受けられる。好ましくは、排泄物容器は、使用者の排泄物を受ける内バケツと、内バケツの全体を収容する外バケツとで形成されている。内バケツ及び外バケツは樹脂を基材とすることが好ましい。外バケツは鍔部を有する形態を例示できる。そして、外バケツの鍔部が荷重受け部材の載置面に着脱可能に載置される形態を採用できる。また、好ましくは、外バケツの鍔部は使用位置の便座部の外縁よりも外方に延設されている。このように外バケツの鍔部は便座部の外縁よりも外方に延設されていれば、汚れやすい便座部付近の汚れを外バケツの鍔部が受けることができ、便座の汚れが基体に移行することが抑制される。
【0013】
本発明に係るポータブルトイレによれば、荷重受け部材は、排泄物容器の前記鍔部を載置した荷重受け部材を基体の前方にスライドさせることにより、荷重受け部材の前後方向における長さ寸法の1/3以上(例えば1/2以上,2/3以上)を基体内に納めつつ、局部洗浄部と排泄物容器との干渉を回避させる第1操作と、排泄物容器を荷重受け部材から持ち上げる第2操作とを実施可能に設定されている。排泄物容器を洗浄する排泄物容器洗浄部と、排泄物容器洗浄部及び局部洗浄部に給水可能な水タンクと、水タンクの水を排泄物容器洗浄部に給水する給水手段とが、基体に設けられている形態を例示できる。排泄物容器洗浄部は、水を吐出させて排泄物容器の壁面に付着している汚れを清掃するためのものである。排泄物容器洗浄部については、ポータブルトイレに搭載されている水タンク等の給水源から給水しても良いし、あるいは、ポータブルトイレとは別体の給水源から給水しても良い。水タンクは基体に対して着脱式でも良いし、基体に固定されている固定式でも良い。水タンクは、基体の後部側に設けられていても良いし、基体の底部側または側面側に設けられていても良い。給水手段は水タンクの水を排泄物容器洗浄部に給水するものであり、モータを有する電動ポンプ、あるいは、手動ポンプを例示できる。
【0014】
排泄物容器洗浄部に繋がる給水経路と、局部洗浄部に繋がる給水経路とは互いに独立している形態を例示できる。この場合、排泄物容器洗浄部に繋がる給水経路に第1給水手段が設けられている形態を採用できる。また、局部洗浄部に繋がる給水経路に第2給水手段が設けられている形態を採用できる。排泄物容器洗浄部に繋がる給水経路にはヒータが設けられておらず、局部洗浄部に繋がる給水経路にはヒータが設けられている形態を例示できる。この場合、使用者の局部を洗浄する水を加熱できるため、使用者の局部を洗浄する際における不快感を無くし得る。また排泄物容器を洗浄する水を加熱しないため、熱エネルギーを節約することができる。
【実施例1】
【0015】
以下、本発明の実施例1について図1〜図11を参照して具体的に説明する。本実施例に係るポータブルトイレは、図1に示すように、使用者の尻部が着座する便座部1を有する局部洗浄装置2と、排泄物を受ける排泄物容器3と、便座部1及び排泄物容器3を有する基体4とを備える。基体4は、木質の固定フレーム40と、固定フレーム40に前方(矢印F方向)に引き出し可能に設けられた木質の荷重受け部材7とを備える。ここで前方とは、便座部1に着座する使用者の顔が向く方向を意味する。後方とは、便座部1に着座する使用者の背中が向く方向を意味する。固定フレーム40は、外バケツ5を収容可能な容器収容空間42と、床面側に配置された底板部43と、基体4の前部側に設けられた前板部44と、底板部43よりも上側に設けられた中板部45と、使用者の肘掛けとして機能する肘掛け部46と、基体4の後部4r側において底板部43から上方に向けて縦方向に延設された背板部47と、背板部47に架設され使用者の背中に対面する比較的厚肉のクッション性を有する背もたれ部48と、便座部1の高さ位置を調整する高さ調整機構49とを有する。なお、固定フレーム40は後部側に、移動用のキャスター40wを有する。固定フレーム40の前側を持ち上げれば、キャスター40wによりポータブルトイレを容易に移動させることができる。
【0016】
局部洗浄装置2は、局部洗浄部20を搭載する本体部21と、本体部21に上下方向に揺動可能に枢支された便座部1とを備える。局部洗浄部20は、使用者の排便後の局部を洗浄する第1局部洗浄部20fと、ビデ用の第2局部洗浄部20sとで形成されている。局部洗浄部20はノズル式とされており、基体4のうち便座部1の後部側に設けられており、便座部1に着座する使用者の局部に対面可能とされている。但し、第1局部洗浄部20f及びビデ用の第2局部洗浄部20sとのうちのいずれか一方としても良い。図1に示すように、排泄物容器3Aは、樹脂を基材とする内バケツ3と、内バケツ3を収容可能な樹脂を基材とする外バケツ5とで形成されている。内バケツ3は、上面に開口30を有する排泄物収容室31をもち、後部3r側に凹部35を有する。内バケツ3は回動可能な取っ手32を有する。内バケツ3の開口30を閉鎖する着脱可能な容器蓋36が設けられている。容器蓋36は、指先で摘む摘み部37を有する。外バケツ5は、上面に形成された開口50を有すると共に内バケツ3を収容可能な収容室51と、上面の開口50から横外方にフランジ状に延設された鍔部52と、鍔部52の後部に設けられた凹部55と、係止部57とを有する。凹部55は内バケツ3の凹部35と対面する。凹部35,55は、主として、局部洗浄部20(20f,20s)との衝突を避けるためのものである。
【0017】
鍔部52の上面には、便座部1を載せて支持する載置面53が形成されている。外バケツ5は基体4の固定フレーム40の容器収容空間42内に着脱可能に収容される。内バケツ3は外バケツ5の収容室51内に着脱可能に収容される。図2に示すように、内バケツ3内に挿入されて内バケツ3内を洗浄する棒状をなす排泄物容器洗浄部8が設けられている。排泄物容器洗浄部8は基体4に対して別体をなしており、所定距離持ち運び可能とされており、先端部に水を噴出するノズル部8kと、指先で掴むことが可能な把手部8hとを有する。ノズル部8kは、棒状の排泄物容器洗浄部8の軸芯PA方向に沿って水を吐出する。この場合、ノズル部8kから吐出される水の水圧は、設計の単純化を図るため一段でも良いし、あるいは、複数段に切替可能であっても良い。ノズル部8kから吐出される水としては、水の噴出の拡開角度が大きいシャワー噴出の形態でも良いし、あるいは、シャワー噴出でない形態でも良い。周囲への水の飛散を抑えるためには、水の噴出の拡開角度はあまり大きくない方が良いといえる。
【0018】
排泄物容器洗浄部8は、水の噴出停止、水の噴出を切り替えるスイッチ部80を有する。排泄物容器洗浄部8に給水可能な水タンク84が基体4に設けられている。水タンク84は基体4の後部4r、つまり、便座部1に着座する使用者の背中側においてタンクホルダ部4xを介して設けられている。水タンク84は後方を向いている。水タンク84は、縦長の偏平容器状をなす四角タンク形状をなしており、上面84u、側面84s、後面84r、前面84fとをもつ。水タンク84は、厚み寸法t1は幅寸法、高さ寸法に比較して小さいので、水タンク84がポータブルトイレに搭載されていても、ポータブルトイレの設置スペースの増大は防止されている。水タンク84は、水タンク84の上部に設けられ水道水等の水を補給する補給口85と、補給口85を開閉する着脱可能な蓋部材86とを有する。補給口85は水タンク84の上部に設けられているため、給水作業に有利である。補給口85の高さ位置は、背もたれ部48の上面48u、背板部47の上端47uよりも低く設定されている。このため介助者が水タンク84の補給口85に給水しているとき、背もたれ部48は、便座部1に着座している使用者と、介助者による給水作業との分離性を高めることができる。また、背もたれ部48が便座部1と水タンク84との間に設けられているため、使用者の背中が水タンク84に直接的に接触することが抑制される。
【0019】
図2に示すように、水タンク84には水量を示すインジケータ84wが設けられている。図2に示すように、ワイヤ等の線状体で形成された支持面87が水タンク84の後面84rに掛けられて水タンク84の支持性が高められている。水タンク84の側面84sの下部には給水具88が設けられている。なお、水タンク84の側面84sには、排泄物容器洗浄部8を引っかけて仮保持するホルダー84xが設けられている。図2に示すように、可撓性を有する給水管としての給水ホース89の一端部89aは給水具88に接続されており、給水ホース89の他端部89cは排泄物容器洗浄部8の基端部に接続されている。給水ホース89は3次元的な可撓性を有すると共に、所定の長さを有する。従って、排泄物容器洗浄部8は給水ホース89の長さに相当するぶん移動可能とされている。なお、内バケツ3を基体4から外したときであっても、内バケツ3が基体4の近傍に設置されていれば、給水ホース89により排泄物容器洗浄部8は内バケツ3に届くようになっている。図3に示すように、水タンク84は、上側に設けられ水を収容可能なタンク室84aと、タンク室84aの下側に設けられた制御室84cとを有する。タンク室84aの水容量は、内バケツ3の洗浄処理と使用者の局部洗浄処理とをそれぞれ所定回数実行できるように設定されている。図3に示すように、制御室84cは、タンク室84aに互いに独立して繋がる第1給水経路91及び第2給水経路92と、第1給水経路91に設けられ排泄物容器洗浄部8に給水可能な第1給水手段93と、第2給水経路92に設けられ局部洗浄部20(20f、20s)に給水可能な第2給水手段96と、コントローラ99とを有する。コントローラ99は、第1信号線93sを介して第1給水手段93を制御すると共に、第2信号線96sを介して第2給水手段96を制御する。第1給水手段93は、給水機能を有する第1電動ポンプ94と、第1電動ポンプ94を駆動させる第1モータ95とを備えている。第2給水手段96は、給水機能を有する第2電動ポンプ97と、第2電動ポンプ97を駆動させる第2モータ98とを備えている。コントローラ99にはアダプタ90を介して商用電源(AC100ボルト)が接続される。
【0020】
上記した第1給水手段93の第1電動ポンプ94及び第2給水手段96の第2電動ポンプ97は、互いに独立して駆動する。故に、第1電動ポンプ94が故障等により停止したとしても、第2電動ポンプ97は駆動可能である。第2電動ポンプ97が故障等により停止したとしても、第1電動ポンプ94は駆動可能である。上記したように本実施例によれば、第1給水手段93の第1電動ポンプ94及び第2給水手段96の第2電動ポンプ97とは互いに独立して駆動するように設定されている。このため排泄物容器洗浄部8に給水する水圧と、局部洗浄部20(20f、20s)に給水する水圧とを同じとしても良いし、異なる値にとすることもでき、水圧設定の自由度を高めることができる。また、排泄物容器洗浄部8に給水する単位時間あたりの水量と、局部洗浄部20(20f、20s)に給水する単位時間当たりの水量とを同じとしても良いし、異なる値とすることもでき、水量設定の自由度を高めることができる。換言すると、排泄物容器洗浄部8に給水する水圧P1と、局部洗浄部20(20f、20s)に給水する水圧P2とを、内バケツ3の洗浄に要請される洗浄力、局部洗浄に要請される洗浄力等に応じて個別に設定できる。なお、P1=P2またはP1≒P2でも良いし、P1>P2でも良いし、P1<P2でも良い。また排泄物容器洗浄部8に給水する単位時間当たりの水量V1と、局部洗浄部20(20f、20s)に給水する単位時間当たりの水量V2とを、内バケツ3の洗浄に要請される洗浄力、局部洗浄に要請される洗浄力等に応じて個別に設定できる。なお、V1=V2またはV1≒V2でも良いし、V1>V2でも良いし、V1<V2でも良い。
【0021】
なお、コストダウンを考慮すると、第1給水手段93の第1電動ポンプ94及び第2給水手段96の第2電動ポンプ97は、同種のものを採用できる。 タンク室84aには水位検知手段84eが設けられている。水位検知手段84eの水位信号は信号線84fを介してコントローラ99に入力される。水タンク84内の水は局部洗浄部20と排泄物容器洗浄部8の双方に共用される。なお、タンク室84aの水位が過剰に低減すると、コントローラ99は第1給水手段93及び第2給水手段96を停止させ、表示LED等の報知手段によりその旨を報知する。
【0022】
第2給水経路92は、水タンク84のタンク室84aと局部洗浄部20(20f、20s)とを繋ぐ給水通路であり、局部洗浄装置2に内蔵されている。第2給水経路92の水を加熱する電気式のヒータ25が局部洗浄装置2内に設けられている。本実施例によれば、局部洗浄部20(20f、20s)に供給させる水をヒータ25により加熱できるため、使用者の局部を温水により洗浄することができる。このため局部洗浄時における不快感を発生させない。これに対して、第1給水経路91は排泄物容器洗浄部8に繋がるものであるが、第1給水経路91の水は一般的には使用者の局部に直接触れるものではないため、水を加熱する要請は少なく、ヒータは設けられていない。従って、排泄物容器洗浄部8に供給される水の温度は基本的にはタンク室84aの水温である。このため電気エネルギの低減に貢献できる。
【0023】
本実施例によれば、図4は荷重受け部材7の平面視を示す。図4に示すように荷重受け部材7は木質の枠状をなしており、前側に形成され介助者等の指先が掛けられて操作される引き出し操作部70と、外バケツ5を収容する開口72mを有する枠部72とを備えている。荷重受け部材7の前後方向における長さ寸法は、LAとして示される。荷重受け部材7の枠部72の上面には、外バケツ5の鍔部52が載置される載置面73が形成されている。従って、荷重受け部材7の枠部72の上面の載置面73に外バケツ5の鍔部52を載せ得るようにされている。図5は、荷重受け部材7の開口72mに外バケツ5の容器部分を嵌め込みつつ、荷重受け部材7の枠部72の上面の載置面73に外バケツ5の鍔部52を載せた状態を示す。
【0024】
本実施例によれば、図5に示すように、荷重受け部材7は、便座部1の前端部1fから後端部1rに向けて延設されている。そして使用者が便座部1に着座するときには、便座部1に着座している荷重は、便座部1を介して外バケツ5の鍔部52、ひいては荷重受け部材7に伝わる。ここで、前記した特許文献2に係る技術と異なり、荷重受け部材7は前後に分割した分割部品ではなく、一体部品である。このため外バケツ5の鍔部52の全体が一体部品である荷重受け部材7の載置面53に載せられる。このため、便座部1からの荷重を分散させる均一分散性を高めることができ、ひいては便座部1からの荷重を支持する支持性を高めることができ、荷重受け部材7の耐久性を向上させることができる。ここで、荷重受け部材7の枠部72は、基体4の平坦状の支持面4k(図9参照)に載置された状態で、基体4に対して前後方向にスライド可能とされている。従って、荷重受け部材7で受けられた荷重は、基体4の平坦状の支持面4kで受けられる。
【0025】
本実施例によれば、荷重受け部材7の引き出し操作部70は、基体4の固定フレーム40に対して前方(矢印F方向)に引出し可能とされている。荷重受け部材7の引き出し操作部70を前方(矢印F方向)に引き出せば、荷重受け部材7は基体4の固定フレーム40から離脱可能とされているため、荷重受け部材7に保持されている外バケツ5も前方(矢印F方向)に引き出され、外バケツ5に収容されている内バケ 次に、本実施例に係るポータブルトイレの一般的な清掃方法について説明する。まず、内バケツ3の開口30が露出している状態において、図7に示すように、棒状の排泄物容器洗浄部8を内バケツ3の排泄物収容室31に挿入する。そして、排泄物容器洗浄部8のスイッチ80を操作し、第1給水手段93を駆動させる。これにより第1電動ポンプ94により排泄物容器洗浄部8に給水し、排泄物容器洗浄部8のノズル部8kから水を吐出させる。このように排泄物容器洗浄部8のノズル部8kから吐出した水により、内バケツ3内を洗浄することができ、内バケツ3を衛生的にできる。また外バケツ5を清掃したいときには、外バケツ5を露出させる。この状態において、棒状の排泄物容器洗浄部8を外バケツ5の収容室51に挿入し、排泄物容器洗浄部8から噴出した水により外バケツ5内を洗浄する。給水ホース89は可撓性を有するため、排泄物容器洗浄部8の位置、向きを任意に変えることができるため、内バケツ3や外バケツ5の清掃に便利である。内バケツ3に水を貯めておきたいときには、排泄物容器洗浄部8のノズル部8kから水を内バケツ3内に吐出させれば良い。排泄物容器洗浄部8のノズル部8kから吐出される水は、局部洗浄の場合とは異なり、ヒータ25で加熱されていないため、一般的には常温水である。ツ3も前方(矢印F方向)に引き出される。
【0026】
局部洗浄機能を有しない従来のポータブルトイレによれば、局部洗浄装置2が基体4に設けられていない。このため従来のポータブルトイレによれば、内バケツ3の後部3rと局部洗浄部20との干渉が発生しないため、便座部1を上方に回動させた状態で、内バケツ3を基体4の固定フレーム40に対してそのまま上方に持ち上げれば、内バケツ3を固定フレーム40から取り外すことができるものであった。しかしながら、局部洗浄機能を有するタイプのポータブルトイレによれば、局部洗浄装置2が基体4に設けられており、ノズル式の局部洗浄部20が内バケツ3の排泄物収容室31に臨むように配置されることが多い。更に、局部洗浄部20から吐出される水を排泄物収容室3が受け止める必要があるため、排泄物収容室3の後部3rは局部洗浄部20よりも後方に位置することになる(図5参照)。この場合、便座部1を上方に揺動させた状態で、内バケツ3をそのまま上方に持ち上げれば、内バケツ3の後部3rと局部洗浄装置2の局部洗浄部20とが干渉する(図5参照)。
【0027】
そこで本実施例によれば、前方(矢印F方向)にスライド可能な荷重受け部材7の載置面73に外バケツ5の鍔部52を載せると共に、その外バケツ5の収容室51内に内バケツ3を収容する方式が採用されている。そして内バケツ3内に溜まった排泄物を廃棄するときには、図6に示すように、内バケツ3を収容する状態の外バケツ5の鍔部52を載せた荷重受け部材7の引き出し操作部70を、介助者等が前方(矢印F方向)に向けて少しスライド(ΔS)させる第1操作を実施する。ΔSとしては40〜50ミリメートルに設定できる。荷重受け部材7がΔSのストロークぶんスライドしたとき、荷重受け部材7は、これの前後方向における長さ寸法LAの1/3以上、特に、2/3以上が基体4内にまだ納められている。
【0028】
上記した第1操作によるスライドに伴い、図6に示すように、外バケツ5の後部5r、内バケツ3の後部3rが前方(矢印F方向)に移動し、内バケツ3の後部3rと局部洗浄装置2の局部洗浄部20との干渉が回避される。更に、外バケツ5の後部5rと局部洗浄装置2の局部洗浄部20との干渉が回避される。
【0029】
上記のように干渉を回避した状態で、介助者等が内バケツ3を上方(矢印Y1方向)に持ち上げる第2操作を実施すれば、内バケツ3の後部3rと局部洗浄部20とを干渉させることなく、内バケツ3を持ち上げて外バケツ5から離脱させることができる。そして、離脱させた内バケツ3内に溜まっている排泄物Wを廃棄することができ、内バケツ3の清掃処理に便利である。また、上記のように干渉を回避した状態で、外バケツ5を上方(矢印Y1方向)に持ち上げれば、局部洗浄部20と外バケツ5の後部5rとを干渉させることなく、外バケツ5を持ち上げて基体4の容器収容空間42から離脱させることができる。従って、外バケツ5の清掃処理も便利である。
【0030】
ところで、荷重受け部材7を前方に引き出す際に、特許文献1に係る技術のように、荷重受け部材7に支持されている内バケツ3や外バケツ5の全部が基体4の固定フレーム40から完全に引き出されるまで、荷重受け部材7を前方に移動させる方式も考えられる。しかしながらこの場合には、内バケツ3を前方にスライドさせる距離が長い関係上、内バケツ3の排泄物収容室31内に貯留されている汚水の水面WAがスライドに伴い過剰に揺動して、汚水が内バケツ3の周囲に飛散するおそれがあり、好ましくない。この点本実施例によれば、荷重受け部材7に支持されている内バケツ3や外バケツ5の全体が基体4の固定フレーム40から引き出されるまで荷重受け部材7を前方に移動させずとも良い。即ち、前記したように第1操作による荷重受け部材7のスライド(スライド量ΔS)により、内バケツ3の後部3rと局部洗浄装置2の局部洗浄部20との干渉を回避でき、また、外バケツ5の後部5rと局部洗浄装置2の局部洗浄部20との干渉を回避できる。上記のように回避した状態で、内バケツ3を上方に持ち上げたり、外バケツ5を上方に持ち上げる第2操作を実施する方式が採用されている。このため本実施例によれば、内バケツ3を載せた荷重受け部材7を前方にスライドさせる距離 (ΔS)が少しで済み、荷重受け部材7に支持されている内バケツ3の排泄物収容室31内の汚水の水面WAの揺動を抑えることができ、汚水の周囲への飛散を抑えることができる。
【0031】
更に説明を加える。図8に示すように、内バケツ3に容器蓋36が被着されているときには、内バケツ3の容器蓋36の後部36rと局部洗浄装置2の局部洗浄部20(20f,20s)とが干渉し、容器蓋36を上方に持ち上げることができず、ひいては容器蓋36を外すことができないおそれがある。そこで前述したように、図9示すように、便座部1を上方に揺動させて退避位置にさせた状態で、容器蓋36を被着した内バケツ3をセットしている荷重受け部材7を前方(矢印F方向)に少しスライド(スライド量=ΔS)させる第1操作を実施すれば、内バケツ3の容器蓋36の後部36rと局部洗浄装置2の局部洗浄部20との干渉が直ちに回避される(図9参照)。このため図10に示すように容器蓋36を上方に持ち上げる第2操作を実施し、内バケツ3から外すことができる。そして、容器蓋36を外した状態で、排泄物容器洗浄部8を内バケツ3内に挿入し、排泄物容器洗浄部8から吐出した水により内バケツ3を洗浄することができる。必要に応じて、図11に示すように内バケツ3を外バケツ5の収容室51から取り外すこともできる。
【0032】
ところで、基体1の固定フレーム40は木質であり、風合い及び意匠性を高め易いという利点を有する。また、便座1は使用の際に汚れ易いものである。便座部1に付着した汚れが使用者の動作等により固定フレーム40側に移動することも間々ある。木質の固定フレーム40は、汚れが付着すると、樹脂に比較して汚れや臭いがしみ込むおそれがある。この点本実施例によれば、図7に示すように、外バケツ5の鍔部52は便座部1の外縁1pよりも外方に延設されている。このため図7に示すように便座部1を下方に回動させて使用位置に設定しているときには、便座部1の外縁1pと木質の基体4の固定フレーム40との間には、樹脂を基材とする外バケツ5の鍔部52が存在している。故に、便座部1に付着した汚れが使用者の動作等により固定フレーム4側に移動するときであっても、その汚れを外バケツ5の鍔部52で受けることができる。鍔部52は樹脂を基材としており、鍔部52への汚れの含浸は抑えられる。このように本実施例によれば、外バケツ5の鍔部52が便座部1の外縁1pと木質の基体4の固定フレーム40との間に介在しているため、木質の固定フレーム40に汚れや臭いがしみ込むことを抑えるのに有利である。なお、排泄物容器洗浄部8のノズル部8kから吐出される水で外バケツ5の鍔部52を清掃するときには、その清掃後の水を外バケツ5内または内バケツ3内に流すことができる。
【0033】
本実施例によれば、図2に示すように、水タンク84は基体4の後部4rの背もたれ部48の後方に、つまり、便座部1に着座する使用者の背中側において設けられている。更に、背もたれ部48の上面48uの高さ位置は補給口85の高さ位置よりも高く設定されている。このため、背もたれ部48の後方においてやかん等の貯水容器または水道ホース等を用いて水タンク4の補給口85へ介助者等が給水作業している作業中において、便座部1に着座している使用者が動いたとしても、使用者の身体がやかん等の貯水容器または水道ホース等に当たることが抑制され、水タンク84の補給口85への給水作業を損なうことが抑えられている。従って背もたれ部48は、使用者に対する背もたれ機能と、仕切部材としての機能との双方を兼務する。
【0034】
(その他)
本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は高齢者、障害者、負傷者、健常者等が使用するポータブルトイレに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】ポータブルトイレから内バケツ、容器蓋、外バケツを外した状態を示す斜視図である。
【図2】内バケツ、容器蓋、外バケツを取り付けたポータブルトイレを後方から視認した斜視図である。
【図3】水タンク付近を示す構成図である。
【図4】スライダ部材の平面図である。
【図5】内バケツを収容する外バケツのフランジ部をスライダ部材に載せている状態を模式的に示す断面図である。
【図6】内バケツを収容する外バケツのフランジ部をスライダ部材に載せつつ、スライダ部材を前方にスライドさせた状態を模式的に示す断面図である。
【図7】内バケツ、容器蓋、外バケツを取り付けたポータブルトイレを前方から視認した斜視図である。
【図8】便座部を上方に揺動させた状態のポータブルトイレを前方から視認した斜視図である。
【図9】便座部を上方に揺動させた状態で、荷重受け部材を前方にスライドさせた状態のポータブルトイレを前方から視認した斜視図である。
【図10】便座部を上方に揺動させた状態で、荷重受け部材を前方にスライドさせ、更に容器蓋を内バケツから外す状態のポータブルトイレを前方から視認した斜視図である。
【図11】便座部を上方に揺動させた状態で、荷重受け部材を前方にスライドさせ、更に内バケツを外バケツから外す状態のポータブルトイレを前方から視認した斜視図である。
【図12】従来技術に係り、分割タイプの荷重受け部材で便座部を支持している形態を示す構成図である。
【図13】従来技術に係り、分割タイプの荷重受け部材の第1荷重受け部材を前方に引き出した形態を示す構成図である。
【符号の説明】
【0037】
図中、1は便座部、2は局部洗浄装置、20は局部洗浄部、21は本体部、3は内バケツ、31は排泄物収容室、36は容器蓋、4は基体、40は固定フレーム、48は背もたれ部(仕切部材)、5は外バケツ、52は鍔部、7は荷重受け部材、73は載置面、8は排泄物容器洗浄部、80はスイッチ、84は水タンク、89は給水ホース、93は第1給水手段、96は第2給水手段を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明はポータブルトイレに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、使用者が着座する便座部と、鍔部を有する排泄物容器と、排泄物容器を収容する容器収容空間を有すると共に便座部を搭載する基体と、使用者が着座する便座部の荷重を受ける荷重受け部材とを備えるポータブルトイレが開示されている。排泄物容器は、使用者から排出された排泄物を受けるものである。このものによれば、基体に対してスライド可能な荷重受け部材が設けられている。そして排泄物容器の鍔部の全体を荷重受け部材を載置している。排泄物容器を基体から取り出すにあたっては、排泄物容器の鍔部を載置した荷重受け部材を基体の前側にスライドさせることにより、排泄物容器の全部を基体から引き出して露出させる操作と、基体から露出させた荷重受け部材から排泄物容器を持ち上げて取り出す操作とを実施することにしている。この場合、排泄物容器の全部を基体から露出させるため、排泄物容器の鍔部を載置した荷重受け部材の引き出し距離が大きくなる。この結果、排泄物容器に排泄物と共に汚れた汚水が貯留されている場合、排泄物容器を載せた荷重受け部材をスライドさせるとき、汚水の水面の揺動量が増加し、汚水が基体の周囲に飛散するおそれがあった。
【0003】
また、特許文献2にも、排泄物容器の鍔部を保持するポータブルトイレが開示されている。このポータブルトイレによれば、図12及び図13に示すように、荷重受け部材500は、便座部600の荷重を受けるものである。荷重受け部材500は、使用者が着座している便座部600の前半分610を受ける第1荷重受け部材501と、使用者が着座している便座部600の後半分620を受ける第2荷重受け部材502とで形成されている。第1荷重受け部材501は基体700の前方側つまり矢印F方向にスライド可能とされている。第2荷重受け部材502は基体700に固定されている。
【特許文献1】特開2002−85290号公報
【特許文献2】特開2002−78640号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した図12及び図13に示すポータブルトイレによれば、荷重受け部材500は基体700に装備されている。この荷重受け部材500は、前述したように、使用者が着座している便座部600の前半分610を受ける第1荷重受け部材501と、使用者が着座している便座部600の後半分620を受ける第2荷重受け部材502とで形成されている。このため可動側の第1荷重受け部材501と固定側の第2荷重受け部材502とは別体であり、第1荷重受け部材501は後端部505を有しており、第2荷重受け部材502は前端部506を有する。このものによれば、排泄物容器800の全部を基体700から引き出して露出させずとも良い。
【0005】
しかしながら荷重受け部材500が可動側の第1荷重受け部材501と固定側の第2荷重受け部材502とに分割されていると、第1荷重受け部材501による高さ支持位置と第2荷重受け部材502による支持高さとを高精度に合致させるには限界がある。このため、第1荷重受け部材501と第2荷重受け部材502とで荷重を均一に受けるには限界がある。荷重を均一に受けるために、構造が複雑化するおそれがある。
【0006】
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、使用者が着座している便座部の荷重を均一に受けるのに有利で、荷重受け部材の耐久性の向上に有利であり、且つ、排泄物容器に汚水が貯留されているときであっても、汚水の飛散を抑制するのに有利なポータブルトイレを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るポータブルトイレは、使用者が着座する便座部と、鍔部を有する排泄物容器と、使用者の局部を洗浄する局部洗浄部と、排泄物容器を収容すると共に前記便座部及び局部洗浄ノズルを搭載する基体と、使用者が着座する便座部からの荷重を受ける荷重受け部材とを具備するポータブルトイレにおいて、
荷重受け部材は、
便座部の前端部から後端部に向けて延設されていると共に排泄物容器の鍔部を上方に持ち上げ可能に載置する載置面を有しており、基体の前方に向けて基体にスライド可能に設けられており、且つ、
荷重受け部材は、
排泄物容器の前記鍔部を載置した荷重受け部材を基体の前方にスライドさせることにより、荷重受け部材の前後方向における長さ寸法の1/3以上を基体内に納めつつ、局部洗浄部と排泄物容器との干渉を回避させる第1操作と、排泄物容器を荷重受け部材から持ち上げる第2操作とを実施可能に設定されていることを特徴とするものである。
【0008】
本発明に係るポータブルトイレによれば、荷重受け部材の載置面は、便座部の前端部から後端部に向けて延設されており、排泄物容器の鍔部を載置する。このため、使用者が便座部に着座しているとき、便座部からの荷重全体を荷重受け部材で受けることができる。このため便座部からの荷重全体を荷重受け部材で効果的に受けることができる。
【0009】
本発明に係るポータブルトイレによれば、荷重受け部材は、荷重受け部材の載置面に排泄物容器の鍔部を着脱可能に載置した状態で、基体の前方側に向けて基体にスライド可能に設定されている。そして、荷重受け部材は、荷重受け部材の前後方向における長さ寸法の1/3以上を基体内に納めつつ、局部洗浄部と排泄物容器との干渉を回避させる第1操作と、排泄物容器を荷重受け部材から持ち上げる第2操作とにより、排泄物容器を荷重受け部材から離脱させる。このように排泄物容器を荷重受け部材から離脱させるときには、荷重受け部材の前後方向における長さ寸法の1/3以上が基体内に納められている。このため、特許文献1に係る技術とは異なり、排泄物容器の全体を基体から露出させずとも良い。故に、排泄物容器のスライド距離が短くなる。この結果、排泄物容器に汚水が貯留されているときであっても、汚水が泄物容器外に飛散することが抑制される。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るポータブルトイレによれば、荷重受け部材は便座部の前端部から後端部に向けて延設されているため、使用者が着座している便座部からの荷重全体を荷重受け部材で受けることができる。このため特許文献2に係る技術とは異なり、便座部からの荷重を荷重受け部材の全体で効果的に受けることができ、荷重受け部材の耐久性の向上に有利である。
【0011】
本発明に係るポータブルトイレによれば、荷重受け部材は、排泄物容器を載置した荷重受け部材を基体の前方にスライドさせる第1操作と、排泄物容器を荷重受け部材から持ち上げる第2操作とにより、排泄物容器を荷重受け部材から離脱させる。このため排泄物容器を荷重受け部材から離脱させるとき、スライド量を低減させることができる。この結果、排泄物を含む汚水を貯留している排泄物容器をスライドさせるときであっても、排泄物容器内の汚水の水面が過剰に揺動することが抑制される。ひいては、排泄物容器内の汚の水面が過剰に揺動して排泄物容器外に飛散することが抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係るポータブルトイレは、使用者が着座する便座部と、鍔部を有する排泄物容器と、排泄物容器を収容する容器収容空間を有すると共に便座部を搭載する基体と、使用者が着座する便座部の荷重を受ける荷重受け部材とを備える。荷重受け部材で受けられた便座部からの荷重は、基体に受けられる。好ましくは、排泄物容器は、使用者の排泄物を受ける内バケツと、内バケツの全体を収容する外バケツとで形成されている。内バケツ及び外バケツは樹脂を基材とすることが好ましい。外バケツは鍔部を有する形態を例示できる。そして、外バケツの鍔部が荷重受け部材の載置面に着脱可能に載置される形態を採用できる。また、好ましくは、外バケツの鍔部は使用位置の便座部の外縁よりも外方に延設されている。このように外バケツの鍔部は便座部の外縁よりも外方に延設されていれば、汚れやすい便座部付近の汚れを外バケツの鍔部が受けることができ、便座の汚れが基体に移行することが抑制される。
【0013】
本発明に係るポータブルトイレによれば、荷重受け部材は、排泄物容器の前記鍔部を載置した荷重受け部材を基体の前方にスライドさせることにより、荷重受け部材の前後方向における長さ寸法の1/3以上(例えば1/2以上,2/3以上)を基体内に納めつつ、局部洗浄部と排泄物容器との干渉を回避させる第1操作と、排泄物容器を荷重受け部材から持ち上げる第2操作とを実施可能に設定されている。排泄物容器を洗浄する排泄物容器洗浄部と、排泄物容器洗浄部及び局部洗浄部に給水可能な水タンクと、水タンクの水を排泄物容器洗浄部に給水する給水手段とが、基体に設けられている形態を例示できる。排泄物容器洗浄部は、水を吐出させて排泄物容器の壁面に付着している汚れを清掃するためのものである。排泄物容器洗浄部については、ポータブルトイレに搭載されている水タンク等の給水源から給水しても良いし、あるいは、ポータブルトイレとは別体の給水源から給水しても良い。水タンクは基体に対して着脱式でも良いし、基体に固定されている固定式でも良い。水タンクは、基体の後部側に設けられていても良いし、基体の底部側または側面側に設けられていても良い。給水手段は水タンクの水を排泄物容器洗浄部に給水するものであり、モータを有する電動ポンプ、あるいは、手動ポンプを例示できる。
【0014】
排泄物容器洗浄部に繋がる給水経路と、局部洗浄部に繋がる給水経路とは互いに独立している形態を例示できる。この場合、排泄物容器洗浄部に繋がる給水経路に第1給水手段が設けられている形態を採用できる。また、局部洗浄部に繋がる給水経路に第2給水手段が設けられている形態を採用できる。排泄物容器洗浄部に繋がる給水経路にはヒータが設けられておらず、局部洗浄部に繋がる給水経路にはヒータが設けられている形態を例示できる。この場合、使用者の局部を洗浄する水を加熱できるため、使用者の局部を洗浄する際における不快感を無くし得る。また排泄物容器を洗浄する水を加熱しないため、熱エネルギーを節約することができる。
【実施例1】
【0015】
以下、本発明の実施例1について図1〜図11を参照して具体的に説明する。本実施例に係るポータブルトイレは、図1に示すように、使用者の尻部が着座する便座部1を有する局部洗浄装置2と、排泄物を受ける排泄物容器3と、便座部1及び排泄物容器3を有する基体4とを備える。基体4は、木質の固定フレーム40と、固定フレーム40に前方(矢印F方向)に引き出し可能に設けられた木質の荷重受け部材7とを備える。ここで前方とは、便座部1に着座する使用者の顔が向く方向を意味する。後方とは、便座部1に着座する使用者の背中が向く方向を意味する。固定フレーム40は、外バケツ5を収容可能な容器収容空間42と、床面側に配置された底板部43と、基体4の前部側に設けられた前板部44と、底板部43よりも上側に設けられた中板部45と、使用者の肘掛けとして機能する肘掛け部46と、基体4の後部4r側において底板部43から上方に向けて縦方向に延設された背板部47と、背板部47に架設され使用者の背中に対面する比較的厚肉のクッション性を有する背もたれ部48と、便座部1の高さ位置を調整する高さ調整機構49とを有する。なお、固定フレーム40は後部側に、移動用のキャスター40wを有する。固定フレーム40の前側を持ち上げれば、キャスター40wによりポータブルトイレを容易に移動させることができる。
【0016】
局部洗浄装置2は、局部洗浄部20を搭載する本体部21と、本体部21に上下方向に揺動可能に枢支された便座部1とを備える。局部洗浄部20は、使用者の排便後の局部を洗浄する第1局部洗浄部20fと、ビデ用の第2局部洗浄部20sとで形成されている。局部洗浄部20はノズル式とされており、基体4のうち便座部1の後部側に設けられており、便座部1に着座する使用者の局部に対面可能とされている。但し、第1局部洗浄部20f及びビデ用の第2局部洗浄部20sとのうちのいずれか一方としても良い。図1に示すように、排泄物容器3Aは、樹脂を基材とする内バケツ3と、内バケツ3を収容可能な樹脂を基材とする外バケツ5とで形成されている。内バケツ3は、上面に開口30を有する排泄物収容室31をもち、後部3r側に凹部35を有する。内バケツ3は回動可能な取っ手32を有する。内バケツ3の開口30を閉鎖する着脱可能な容器蓋36が設けられている。容器蓋36は、指先で摘む摘み部37を有する。外バケツ5は、上面に形成された開口50を有すると共に内バケツ3を収容可能な収容室51と、上面の開口50から横外方にフランジ状に延設された鍔部52と、鍔部52の後部に設けられた凹部55と、係止部57とを有する。凹部55は内バケツ3の凹部35と対面する。凹部35,55は、主として、局部洗浄部20(20f,20s)との衝突を避けるためのものである。
【0017】
鍔部52の上面には、便座部1を載せて支持する載置面53が形成されている。外バケツ5は基体4の固定フレーム40の容器収容空間42内に着脱可能に収容される。内バケツ3は外バケツ5の収容室51内に着脱可能に収容される。図2に示すように、内バケツ3内に挿入されて内バケツ3内を洗浄する棒状をなす排泄物容器洗浄部8が設けられている。排泄物容器洗浄部8は基体4に対して別体をなしており、所定距離持ち運び可能とされており、先端部に水を噴出するノズル部8kと、指先で掴むことが可能な把手部8hとを有する。ノズル部8kは、棒状の排泄物容器洗浄部8の軸芯PA方向に沿って水を吐出する。この場合、ノズル部8kから吐出される水の水圧は、設計の単純化を図るため一段でも良いし、あるいは、複数段に切替可能であっても良い。ノズル部8kから吐出される水としては、水の噴出の拡開角度が大きいシャワー噴出の形態でも良いし、あるいは、シャワー噴出でない形態でも良い。周囲への水の飛散を抑えるためには、水の噴出の拡開角度はあまり大きくない方が良いといえる。
【0018】
排泄物容器洗浄部8は、水の噴出停止、水の噴出を切り替えるスイッチ部80を有する。排泄物容器洗浄部8に給水可能な水タンク84が基体4に設けられている。水タンク84は基体4の後部4r、つまり、便座部1に着座する使用者の背中側においてタンクホルダ部4xを介して設けられている。水タンク84は後方を向いている。水タンク84は、縦長の偏平容器状をなす四角タンク形状をなしており、上面84u、側面84s、後面84r、前面84fとをもつ。水タンク84は、厚み寸法t1は幅寸法、高さ寸法に比較して小さいので、水タンク84がポータブルトイレに搭載されていても、ポータブルトイレの設置スペースの増大は防止されている。水タンク84は、水タンク84の上部に設けられ水道水等の水を補給する補給口85と、補給口85を開閉する着脱可能な蓋部材86とを有する。補給口85は水タンク84の上部に設けられているため、給水作業に有利である。補給口85の高さ位置は、背もたれ部48の上面48u、背板部47の上端47uよりも低く設定されている。このため介助者が水タンク84の補給口85に給水しているとき、背もたれ部48は、便座部1に着座している使用者と、介助者による給水作業との分離性を高めることができる。また、背もたれ部48が便座部1と水タンク84との間に設けられているため、使用者の背中が水タンク84に直接的に接触することが抑制される。
【0019】
図2に示すように、水タンク84には水量を示すインジケータ84wが設けられている。図2に示すように、ワイヤ等の線状体で形成された支持面87が水タンク84の後面84rに掛けられて水タンク84の支持性が高められている。水タンク84の側面84sの下部には給水具88が設けられている。なお、水タンク84の側面84sには、排泄物容器洗浄部8を引っかけて仮保持するホルダー84xが設けられている。図2に示すように、可撓性を有する給水管としての給水ホース89の一端部89aは給水具88に接続されており、給水ホース89の他端部89cは排泄物容器洗浄部8の基端部に接続されている。給水ホース89は3次元的な可撓性を有すると共に、所定の長さを有する。従って、排泄物容器洗浄部8は給水ホース89の長さに相当するぶん移動可能とされている。なお、内バケツ3を基体4から外したときであっても、内バケツ3が基体4の近傍に設置されていれば、給水ホース89により排泄物容器洗浄部8は内バケツ3に届くようになっている。図3に示すように、水タンク84は、上側に設けられ水を収容可能なタンク室84aと、タンク室84aの下側に設けられた制御室84cとを有する。タンク室84aの水容量は、内バケツ3の洗浄処理と使用者の局部洗浄処理とをそれぞれ所定回数実行できるように設定されている。図3に示すように、制御室84cは、タンク室84aに互いに独立して繋がる第1給水経路91及び第2給水経路92と、第1給水経路91に設けられ排泄物容器洗浄部8に給水可能な第1給水手段93と、第2給水経路92に設けられ局部洗浄部20(20f、20s)に給水可能な第2給水手段96と、コントローラ99とを有する。コントローラ99は、第1信号線93sを介して第1給水手段93を制御すると共に、第2信号線96sを介して第2給水手段96を制御する。第1給水手段93は、給水機能を有する第1電動ポンプ94と、第1電動ポンプ94を駆動させる第1モータ95とを備えている。第2給水手段96は、給水機能を有する第2電動ポンプ97と、第2電動ポンプ97を駆動させる第2モータ98とを備えている。コントローラ99にはアダプタ90を介して商用電源(AC100ボルト)が接続される。
【0020】
上記した第1給水手段93の第1電動ポンプ94及び第2給水手段96の第2電動ポンプ97は、互いに独立して駆動する。故に、第1電動ポンプ94が故障等により停止したとしても、第2電動ポンプ97は駆動可能である。第2電動ポンプ97が故障等により停止したとしても、第1電動ポンプ94は駆動可能である。上記したように本実施例によれば、第1給水手段93の第1電動ポンプ94及び第2給水手段96の第2電動ポンプ97とは互いに独立して駆動するように設定されている。このため排泄物容器洗浄部8に給水する水圧と、局部洗浄部20(20f、20s)に給水する水圧とを同じとしても良いし、異なる値にとすることもでき、水圧設定の自由度を高めることができる。また、排泄物容器洗浄部8に給水する単位時間あたりの水量と、局部洗浄部20(20f、20s)に給水する単位時間当たりの水量とを同じとしても良いし、異なる値とすることもでき、水量設定の自由度を高めることができる。換言すると、排泄物容器洗浄部8に給水する水圧P1と、局部洗浄部20(20f、20s)に給水する水圧P2とを、内バケツ3の洗浄に要請される洗浄力、局部洗浄に要請される洗浄力等に応じて個別に設定できる。なお、P1=P2またはP1≒P2でも良いし、P1>P2でも良いし、P1<P2でも良い。また排泄物容器洗浄部8に給水する単位時間当たりの水量V1と、局部洗浄部20(20f、20s)に給水する単位時間当たりの水量V2とを、内バケツ3の洗浄に要請される洗浄力、局部洗浄に要請される洗浄力等に応じて個別に設定できる。なお、V1=V2またはV1≒V2でも良いし、V1>V2でも良いし、V1<V2でも良い。
【0021】
なお、コストダウンを考慮すると、第1給水手段93の第1電動ポンプ94及び第2給水手段96の第2電動ポンプ97は、同種のものを採用できる。 タンク室84aには水位検知手段84eが設けられている。水位検知手段84eの水位信号は信号線84fを介してコントローラ99に入力される。水タンク84内の水は局部洗浄部20と排泄物容器洗浄部8の双方に共用される。なお、タンク室84aの水位が過剰に低減すると、コントローラ99は第1給水手段93及び第2給水手段96を停止させ、表示LED等の報知手段によりその旨を報知する。
【0022】
第2給水経路92は、水タンク84のタンク室84aと局部洗浄部20(20f、20s)とを繋ぐ給水通路であり、局部洗浄装置2に内蔵されている。第2給水経路92の水を加熱する電気式のヒータ25が局部洗浄装置2内に設けられている。本実施例によれば、局部洗浄部20(20f、20s)に供給させる水をヒータ25により加熱できるため、使用者の局部を温水により洗浄することができる。このため局部洗浄時における不快感を発生させない。これに対して、第1給水経路91は排泄物容器洗浄部8に繋がるものであるが、第1給水経路91の水は一般的には使用者の局部に直接触れるものではないため、水を加熱する要請は少なく、ヒータは設けられていない。従って、排泄物容器洗浄部8に供給される水の温度は基本的にはタンク室84aの水温である。このため電気エネルギの低減に貢献できる。
【0023】
本実施例によれば、図4は荷重受け部材7の平面視を示す。図4に示すように荷重受け部材7は木質の枠状をなしており、前側に形成され介助者等の指先が掛けられて操作される引き出し操作部70と、外バケツ5を収容する開口72mを有する枠部72とを備えている。荷重受け部材7の前後方向における長さ寸法は、LAとして示される。荷重受け部材7の枠部72の上面には、外バケツ5の鍔部52が載置される載置面73が形成されている。従って、荷重受け部材7の枠部72の上面の載置面73に外バケツ5の鍔部52を載せ得るようにされている。図5は、荷重受け部材7の開口72mに外バケツ5の容器部分を嵌め込みつつ、荷重受け部材7の枠部72の上面の載置面73に外バケツ5の鍔部52を載せた状態を示す。
【0024】
本実施例によれば、図5に示すように、荷重受け部材7は、便座部1の前端部1fから後端部1rに向けて延設されている。そして使用者が便座部1に着座するときには、便座部1に着座している荷重は、便座部1を介して外バケツ5の鍔部52、ひいては荷重受け部材7に伝わる。ここで、前記した特許文献2に係る技術と異なり、荷重受け部材7は前後に分割した分割部品ではなく、一体部品である。このため外バケツ5の鍔部52の全体が一体部品である荷重受け部材7の載置面53に載せられる。このため、便座部1からの荷重を分散させる均一分散性を高めることができ、ひいては便座部1からの荷重を支持する支持性を高めることができ、荷重受け部材7の耐久性を向上させることができる。ここで、荷重受け部材7の枠部72は、基体4の平坦状の支持面4k(図9参照)に載置された状態で、基体4に対して前後方向にスライド可能とされている。従って、荷重受け部材7で受けられた荷重は、基体4の平坦状の支持面4kで受けられる。
【0025】
本実施例によれば、荷重受け部材7の引き出し操作部70は、基体4の固定フレーム40に対して前方(矢印F方向)に引出し可能とされている。荷重受け部材7の引き出し操作部70を前方(矢印F方向)に引き出せば、荷重受け部材7は基体4の固定フレーム40から離脱可能とされているため、荷重受け部材7に保持されている外バケツ5も前方(矢印F方向)に引き出され、外バケツ5に収容されている内バケ 次に、本実施例に係るポータブルトイレの一般的な清掃方法について説明する。まず、内バケツ3の開口30が露出している状態において、図7に示すように、棒状の排泄物容器洗浄部8を内バケツ3の排泄物収容室31に挿入する。そして、排泄物容器洗浄部8のスイッチ80を操作し、第1給水手段93を駆動させる。これにより第1電動ポンプ94により排泄物容器洗浄部8に給水し、排泄物容器洗浄部8のノズル部8kから水を吐出させる。このように排泄物容器洗浄部8のノズル部8kから吐出した水により、内バケツ3内を洗浄することができ、内バケツ3を衛生的にできる。また外バケツ5を清掃したいときには、外バケツ5を露出させる。この状態において、棒状の排泄物容器洗浄部8を外バケツ5の収容室51に挿入し、排泄物容器洗浄部8から噴出した水により外バケツ5内を洗浄する。給水ホース89は可撓性を有するため、排泄物容器洗浄部8の位置、向きを任意に変えることができるため、内バケツ3や外バケツ5の清掃に便利である。内バケツ3に水を貯めておきたいときには、排泄物容器洗浄部8のノズル部8kから水を内バケツ3内に吐出させれば良い。排泄物容器洗浄部8のノズル部8kから吐出される水は、局部洗浄の場合とは異なり、ヒータ25で加熱されていないため、一般的には常温水である。ツ3も前方(矢印F方向)に引き出される。
【0026】
局部洗浄機能を有しない従来のポータブルトイレによれば、局部洗浄装置2が基体4に設けられていない。このため従来のポータブルトイレによれば、内バケツ3の後部3rと局部洗浄部20との干渉が発生しないため、便座部1を上方に回動させた状態で、内バケツ3を基体4の固定フレーム40に対してそのまま上方に持ち上げれば、内バケツ3を固定フレーム40から取り外すことができるものであった。しかしながら、局部洗浄機能を有するタイプのポータブルトイレによれば、局部洗浄装置2が基体4に設けられており、ノズル式の局部洗浄部20が内バケツ3の排泄物収容室31に臨むように配置されることが多い。更に、局部洗浄部20から吐出される水を排泄物収容室3が受け止める必要があるため、排泄物収容室3の後部3rは局部洗浄部20よりも後方に位置することになる(図5参照)。この場合、便座部1を上方に揺動させた状態で、内バケツ3をそのまま上方に持ち上げれば、内バケツ3の後部3rと局部洗浄装置2の局部洗浄部20とが干渉する(図5参照)。
【0027】
そこで本実施例によれば、前方(矢印F方向)にスライド可能な荷重受け部材7の載置面73に外バケツ5の鍔部52を載せると共に、その外バケツ5の収容室51内に内バケツ3を収容する方式が採用されている。そして内バケツ3内に溜まった排泄物を廃棄するときには、図6に示すように、内バケツ3を収容する状態の外バケツ5の鍔部52を載せた荷重受け部材7の引き出し操作部70を、介助者等が前方(矢印F方向)に向けて少しスライド(ΔS)させる第1操作を実施する。ΔSとしては40〜50ミリメートルに設定できる。荷重受け部材7がΔSのストロークぶんスライドしたとき、荷重受け部材7は、これの前後方向における長さ寸法LAの1/3以上、特に、2/3以上が基体4内にまだ納められている。
【0028】
上記した第1操作によるスライドに伴い、図6に示すように、外バケツ5の後部5r、内バケツ3の後部3rが前方(矢印F方向)に移動し、内バケツ3の後部3rと局部洗浄装置2の局部洗浄部20との干渉が回避される。更に、外バケツ5の後部5rと局部洗浄装置2の局部洗浄部20との干渉が回避される。
【0029】
上記のように干渉を回避した状態で、介助者等が内バケツ3を上方(矢印Y1方向)に持ち上げる第2操作を実施すれば、内バケツ3の後部3rと局部洗浄部20とを干渉させることなく、内バケツ3を持ち上げて外バケツ5から離脱させることができる。そして、離脱させた内バケツ3内に溜まっている排泄物Wを廃棄することができ、内バケツ3の清掃処理に便利である。また、上記のように干渉を回避した状態で、外バケツ5を上方(矢印Y1方向)に持ち上げれば、局部洗浄部20と外バケツ5の後部5rとを干渉させることなく、外バケツ5を持ち上げて基体4の容器収容空間42から離脱させることができる。従って、外バケツ5の清掃処理も便利である。
【0030】
ところで、荷重受け部材7を前方に引き出す際に、特許文献1に係る技術のように、荷重受け部材7に支持されている内バケツ3や外バケツ5の全部が基体4の固定フレーム40から完全に引き出されるまで、荷重受け部材7を前方に移動させる方式も考えられる。しかしながらこの場合には、内バケツ3を前方にスライドさせる距離が長い関係上、内バケツ3の排泄物収容室31内に貯留されている汚水の水面WAがスライドに伴い過剰に揺動して、汚水が内バケツ3の周囲に飛散するおそれがあり、好ましくない。この点本実施例によれば、荷重受け部材7に支持されている内バケツ3や外バケツ5の全体が基体4の固定フレーム40から引き出されるまで荷重受け部材7を前方に移動させずとも良い。即ち、前記したように第1操作による荷重受け部材7のスライド(スライド量ΔS)により、内バケツ3の後部3rと局部洗浄装置2の局部洗浄部20との干渉を回避でき、また、外バケツ5の後部5rと局部洗浄装置2の局部洗浄部20との干渉を回避できる。上記のように回避した状態で、内バケツ3を上方に持ち上げたり、外バケツ5を上方に持ち上げる第2操作を実施する方式が採用されている。このため本実施例によれば、内バケツ3を載せた荷重受け部材7を前方にスライドさせる距離 (ΔS)が少しで済み、荷重受け部材7に支持されている内バケツ3の排泄物収容室31内の汚水の水面WAの揺動を抑えることができ、汚水の周囲への飛散を抑えることができる。
【0031】
更に説明を加える。図8に示すように、内バケツ3に容器蓋36が被着されているときには、内バケツ3の容器蓋36の後部36rと局部洗浄装置2の局部洗浄部20(20f,20s)とが干渉し、容器蓋36を上方に持ち上げることができず、ひいては容器蓋36を外すことができないおそれがある。そこで前述したように、図9示すように、便座部1を上方に揺動させて退避位置にさせた状態で、容器蓋36を被着した内バケツ3をセットしている荷重受け部材7を前方(矢印F方向)に少しスライド(スライド量=ΔS)させる第1操作を実施すれば、内バケツ3の容器蓋36の後部36rと局部洗浄装置2の局部洗浄部20との干渉が直ちに回避される(図9参照)。このため図10に示すように容器蓋36を上方に持ち上げる第2操作を実施し、内バケツ3から外すことができる。そして、容器蓋36を外した状態で、排泄物容器洗浄部8を内バケツ3内に挿入し、排泄物容器洗浄部8から吐出した水により内バケツ3を洗浄することができる。必要に応じて、図11に示すように内バケツ3を外バケツ5の収容室51から取り外すこともできる。
【0032】
ところで、基体1の固定フレーム40は木質であり、風合い及び意匠性を高め易いという利点を有する。また、便座1は使用の際に汚れ易いものである。便座部1に付着した汚れが使用者の動作等により固定フレーム40側に移動することも間々ある。木質の固定フレーム40は、汚れが付着すると、樹脂に比較して汚れや臭いがしみ込むおそれがある。この点本実施例によれば、図7に示すように、外バケツ5の鍔部52は便座部1の外縁1pよりも外方に延設されている。このため図7に示すように便座部1を下方に回動させて使用位置に設定しているときには、便座部1の外縁1pと木質の基体4の固定フレーム40との間には、樹脂を基材とする外バケツ5の鍔部52が存在している。故に、便座部1に付着した汚れが使用者の動作等により固定フレーム4側に移動するときであっても、その汚れを外バケツ5の鍔部52で受けることができる。鍔部52は樹脂を基材としており、鍔部52への汚れの含浸は抑えられる。このように本実施例によれば、外バケツ5の鍔部52が便座部1の外縁1pと木質の基体4の固定フレーム40との間に介在しているため、木質の固定フレーム40に汚れや臭いがしみ込むことを抑えるのに有利である。なお、排泄物容器洗浄部8のノズル部8kから吐出される水で外バケツ5の鍔部52を清掃するときには、その清掃後の水を外バケツ5内または内バケツ3内に流すことができる。
【0033】
本実施例によれば、図2に示すように、水タンク84は基体4の後部4rの背もたれ部48の後方に、つまり、便座部1に着座する使用者の背中側において設けられている。更に、背もたれ部48の上面48uの高さ位置は補給口85の高さ位置よりも高く設定されている。このため、背もたれ部48の後方においてやかん等の貯水容器または水道ホース等を用いて水タンク4の補給口85へ介助者等が給水作業している作業中において、便座部1に着座している使用者が動いたとしても、使用者の身体がやかん等の貯水容器または水道ホース等に当たることが抑制され、水タンク84の補給口85への給水作業を損なうことが抑えられている。従って背もたれ部48は、使用者に対する背もたれ機能と、仕切部材としての機能との双方を兼務する。
【0034】
(その他)
本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できるものである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は高齢者、障害者、負傷者、健常者等が使用するポータブルトイレに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】ポータブルトイレから内バケツ、容器蓋、外バケツを外した状態を示す斜視図である。
【図2】内バケツ、容器蓋、外バケツを取り付けたポータブルトイレを後方から視認した斜視図である。
【図3】水タンク付近を示す構成図である。
【図4】スライダ部材の平面図である。
【図5】内バケツを収容する外バケツのフランジ部をスライダ部材に載せている状態を模式的に示す断面図である。
【図6】内バケツを収容する外バケツのフランジ部をスライダ部材に載せつつ、スライダ部材を前方にスライドさせた状態を模式的に示す断面図である。
【図7】内バケツ、容器蓋、外バケツを取り付けたポータブルトイレを前方から視認した斜視図である。
【図8】便座部を上方に揺動させた状態のポータブルトイレを前方から視認した斜視図である。
【図9】便座部を上方に揺動させた状態で、荷重受け部材を前方にスライドさせた状態のポータブルトイレを前方から視認した斜視図である。
【図10】便座部を上方に揺動させた状態で、荷重受け部材を前方にスライドさせ、更に容器蓋を内バケツから外す状態のポータブルトイレを前方から視認した斜視図である。
【図11】便座部を上方に揺動させた状態で、荷重受け部材を前方にスライドさせ、更に内バケツを外バケツから外す状態のポータブルトイレを前方から視認した斜視図である。
【図12】従来技術に係り、分割タイプの荷重受け部材で便座部を支持している形態を示す構成図である。
【図13】従来技術に係り、分割タイプの荷重受け部材の第1荷重受け部材を前方に引き出した形態を示す構成図である。
【符号の説明】
【0037】
図中、1は便座部、2は局部洗浄装置、20は局部洗浄部、21は本体部、3は内バケツ、31は排泄物収容室、36は容器蓋、4は基体、40は固定フレーム、48は背もたれ部(仕切部材)、5は外バケツ、52は鍔部、7は荷重受け部材、73は載置面、8は排泄物容器洗浄部、80はスイッチ、84は水タンク、89は給水ホース、93は第1給水手段、96は第2給水手段を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が着座する便座部と、鍔部を有する排泄物容器と、使用者の局部を洗浄する局部洗浄部と、前記排泄物容器を収容すると共に前記便座部及び局部洗浄ノズルを搭載する基体と、使用者が着座する前記便座部からの荷重を受ける荷重受け部材とを具備するポータブルトイレにおいて、
前記荷重受け部材は、
前記便座部の前端部から後端部に向けて延設されていると共に前記排泄物容器の前記鍔部を上方に持ち上げ可能に載置する載置面を有しており、前記基体の前方に向けて前記基体にスライド可能に設けられており、且つ、
前記荷重受け部材は、
前記排泄物容器の前記鍔部を載置した前記荷重受け部材を前記基体の前方にスライドさせることにより、前記荷重受け部材の前後方向における長さ寸法の1/3以上を前記基体内に納めつつ、前記局部洗浄部と前記排泄物容器との干渉を回避させる第1操作と、前記排泄物容器を前記荷重受け部材から持ち上げる第2操作とを実施可能に設定されていることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項2】
請求項1において、前記排泄物容器は、使用者の排泄物を受ける内バケツと、前記内バケツを収容すると共に鍔部を有する外バケツとで形成されていることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記外バケツの前記鍔部が前記荷重受け部材の前記載置面に着脱可能に載置されており、前記内バケツの全体は前記外バケツ内に収容されていることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項4】
請求項2または請求項3において、前記外バケツの前記鍔部は前記便座部の外縁よりも外方に延設されていることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうちのいずれか一項において、排泄物容器を洗浄する排泄物容器洗浄部と、前記排泄物容器洗浄部及び前記局部洗浄部に給水可能な水タンクと、前記水タンクの水を前記排泄物容器洗浄部に給水する給水手段とが、前記基体に設けられていることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項1】
使用者が着座する便座部と、鍔部を有する排泄物容器と、使用者の局部を洗浄する局部洗浄部と、前記排泄物容器を収容すると共に前記便座部及び局部洗浄ノズルを搭載する基体と、使用者が着座する前記便座部からの荷重を受ける荷重受け部材とを具備するポータブルトイレにおいて、
前記荷重受け部材は、
前記便座部の前端部から後端部に向けて延設されていると共に前記排泄物容器の前記鍔部を上方に持ち上げ可能に載置する載置面を有しており、前記基体の前方に向けて前記基体にスライド可能に設けられており、且つ、
前記荷重受け部材は、
前記排泄物容器の前記鍔部を載置した前記荷重受け部材を前記基体の前方にスライドさせることにより、前記荷重受け部材の前後方向における長さ寸法の1/3以上を前記基体内に納めつつ、前記局部洗浄部と前記排泄物容器との干渉を回避させる第1操作と、前記排泄物容器を前記荷重受け部材から持ち上げる第2操作とを実施可能に設定されていることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項2】
請求項1において、前記排泄物容器は、使用者の排泄物を受ける内バケツと、前記内バケツを収容すると共に鍔部を有する外バケツとで形成されていることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記外バケツの前記鍔部が前記荷重受け部材の前記載置面に着脱可能に載置されており、前記内バケツの全体は前記外バケツ内に収容されていることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項4】
請求項2または請求項3において、前記外バケツの前記鍔部は前記便座部の外縁よりも外方に延設されていることを特徴とするポータブルトイレ。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうちのいずれか一項において、排泄物容器を洗浄する排泄物容器洗浄部と、前記排泄物容器洗浄部及び前記局部洗浄部に給水可能な水タンクと、前記水タンクの水を前記排泄物容器洗浄部に給水する給水手段とが、前記基体に設けられていることを特徴とするポータブルトイレ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−94901(P2006−94901A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−281234(P2004−281234)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(397039676)日本クリエイト・トレイディング株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(397039676)日本クリエイト・トレイディング株式会社 (5)
【Fターム(参考)】
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