説明

マイクロアレイ作製用基板の製造方法

【課題】より安価で、確実に試料の位置選択的固定化をすることができるマイクロアレイ作製用基板の製造方法を提供する。
【解決手段】マイクロアレイ作製用基板の製造方法であって、少なくとも、下記一般式(1)YSi−(CH−X(1)(式中、mは3以上20以下の整数を、Xは酸によって水酸基に変換される水酸基前駆体官能基を、Yは独立してハロゲン原子又は炭素数1から4のアルコキシ基を示す)で示されるシラン化合物を用いて、基板上に単分子膜を形成する工程と、前記Xで示される水酸基前駆体官能基を水酸基に変換する工程を有し、該前記Xで示される水酸基前駆体官能基を水酸基に変換する工程は、光酸発生剤として請求項中に示した特定の式を含むポリマー層を前記単分子膜上に形成した後、高エネルギー線を用いてパターン形状を前記基板上に照射するものであることを特徴とするマイクロアレイ作製用基板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物機能分子、特にDNA配列解析、遺伝子診断など、遺伝子の配列に係わる検査技術に関し、それらの分析に用いる分析用素子作製用基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒトゲノム解析をはじめとする遺伝子のDNA配列の解析は近年急速に発展し、それらの情報を基に、遺伝子の機能の研究や、遺伝子による疾病の診断等への展開を見せている。また、これら遺伝子の解析、機能研究を大規模かつ短時間で行なうための技術として、いわゆるDNAチップ、DNAマイクロアレイの研究が数多く行なわれている。
【0003】
DNAマイクロアレイは、微小空間に特定配列のDNAを固定化し、サンプル中の相補的配列を持つDNA鎖を検出するものであるが、大規模、かつ高速処理可能であるDNAマイクロアレイ作成の方法論として、非特許文献1では半導体の作成方法である光リソグラフィーを用いて、DNA配列の位置選択的な合成を多段階に渡って行ない、多種類のDNAで修飾されたマイクロアレイを驚くほど少ない工程で作成する方法を提案している。これによれば、系統的に位置選択的に異なるヌクレオチドを15回結合させることを繰り返すことで、10億種類を超えるDNA配列を一度に検査するためのマイクロアレイを作成することができる可能性が示された。
【0004】
一方、上記相補的配列を持つDNA鎖の検出を電気的に行なうことができれば高速、かつ簡便な方法で分析が可能となる。このような電気的な検出を目的とした半導体装置を用いてDNAマイクロアレイを作成する試みとして、特許文献1、2等がすでに知られている。これらの半導体装置は、従来より知られてきた電界効果型トランジスタによるセンサーの応用として、微細チップ上で相補的DNA鎖の有無を検出するというものである。
【0005】
ところで、上記のような、大規模かつ高速に分析を可能とするDNAマイクロアレイを作成するためには、マイクロアレイ作成用基板上のDNA鎖の固定が、微小空間に対して位置選択的に、かつ剥がれ等の問題を起こさないように行なう必要がある。DNAをはじめとする生物機能分子の分析のため、それらを金属上に2次元的に固定化する方法は、金表面上でのイオウ原子の特異的吸着を使用する方法が知られており、例えば特許文献1にも記載されている。一方、固定化された分子が剥がれを起こさずに、かつ確実に酵素を半導体上に固定されるように、基板上に酸化ケイ素鎖を持つ単分子膜を形成し、ケイ素原子から伸びるアルキル鎖に酵素を固定する方法はかなり以前より知られており、特許文献3で開示されている。また、この方法は上記特許文献2でも適用可能であることが言及されている。
【0006】
マイクロアレイ作成のため、DNAやペプチド等の認識用の材料を基板上に固定化する際、上記酸化ケイ素鎖を持つ単分子膜による方法は、上記のように剥がれ等の問題を起こしにくい固定化方法である。
【0007】
また、DNAアレイの高性能化を考えた場合、非特許文献1に示されたようなマイクロリソグラフィー法を適用した位置選択的固定化が必要になる。しかし、非特許文献1に示されたようなマイクロリソグラフィー法は煩雑で高価であり、より安価に製造でき、確実に試料の位置選択的固定化をすることができるマイクロアレイ作製用基板が求められていた。
さらには、電界効果型トランジスタによるセンサーの応用として、DNAセンサーを作成するため、DNAやペプチド等の認識用の材料を基板上に固定化する際、上記酸化ケイ素鎖を持つ単分子膜による方法は、基板とプローブとの距離を短く、かつ安定して得られる固定方法である。
【0008】
【特許文献1】再公表特許WO2003/087798号公報
【特許文献2】特開2005−77210号公報
【特許文献3】特開昭62−50657号公報
【非特許文献1】CHEMTECH Feb. 1997 pp.22
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、より安価で、確実に試料の位置選択的固定化をすることができるマイクロアレイ作製用基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、マイクロアレイ作製用基板の製造方法であって、少なくとも、下記一般式(1)
Si−(CH−X (1)
(式中、mは3以上20以下の整数を表し、Xは水酸基前駆体官能基であり、酸によって水酸基に変換される基を示す。Yは独立してハロゲン原子又は炭素数1から4のアルコキシ基を示す。)
で示されるシラン化合物を用いて、基板上に単分子膜を形成する工程と、
前記Xで示される水酸基前駆体官能基を水酸基に変換する工程を有し、
該前記Xで示される水酸基前駆体官能基を水酸基に変換する工程は、
光酸発生剤として下記一般式(2)もしくは(3)
【化3】

(式中、Rは同一でも異なってもよく、水素原子、フッ素原子、塩素原子、ニトロ基、又は炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状の置換もしくは非置換のアルキル基又はアルコキシ基を示す。qは独立して0又は1であり、pは1又は2である。rは0〜4の整数、r’は0〜5の整数である。)
【化4】

(式中、Rは、炭素数3〜10の直鎖状、分岐状又は環状の置換もしくは非置換のアルキル基又はアルコキシ基、あるいは置換もしくは非置換のフェニル基、カンファーを示す。)
を含むポリマー層を前記単分子膜上に形成した後、高エネルギー線を用いてパターン形状を前記基板上に照射するものであることを特徴とするマイクロアレイ作製用基板の製造方法を提供する(請求項1)。
【0011】
このように、発生酸と効率的に反応する水酸基前駆体官能基を有して安価であるシラン化合物を用いて単分子膜を形成し、該単分子膜上に、位置選択的な光に対して効率的に酸を発生する光酸発生剤を含むポリマー層を形成し、露光により光酸発生剤が発生する酸により目標部位の水酸基前駆体官能基を水酸基に変換することで、安価でより確実に、基板上に位置選択的な水酸基を有する単分子膜を得ることができる。このような単分子膜を有するマイクロアレイ作製用基板を用いれば、目的とする位置に確実に試料の位置選択的固定化をすることができる。
【0012】
この場合、前記一般式(1)中、Xで示される水酸基前駆体官能基が、アルコキシ基部分の炭素数が1〜6のアルコキシメトキシ基および/またはオキシラニル基であってもよい(請求項2)。
【0013】
このように、酸処理で水酸基に変換される上記Xで示される水酸基前駆体官能基の具体的態様としては、アルコキシ基部分の炭素数が1〜6のアルコキシメトキシ基および/またはオキシラニル基を挙げることができる。
【0014】
また、前記一般式(1)で表されるシラン化合物を用いて単分子膜を形成する工程において、該シラン化合物に下記一般式(4)および(5)
Y’Si−(CH−CH (4)
Y’Si−(CH−OCH (5)
(式中、nは0以上(m−2)以下の整数を表す。mは前記一般式(1)中の値である。Y’はハロゲン原子又は炭素数1から4のアルコキシ基を示す。)
で示されるシラン化合物の内、少なくとも一種類以上混合し、該混合物を用いて前記単分子膜を形成することが好ましい(請求項3)。
【0015】
一般式(4)および(5)で表されるシラン化合物の内、少なくとも一種以上を、一般式(1)で表されるシラン化合物と混合して前記単分子膜を形成することにより、単分子膜が形成する平均表面より固定化のための水酸基を外に配置することができ、固定化される部位周辺の空間を確保することができる。これにより固定化操作が確実に行なえると共に、結果として固定化された材料の周辺に空いた空間が確保され、実際の分析に使用する際、固定化された材料によって試験サンプルの認識を確実に行なうことができる。
また、一般式(5)で表されるシラン化合物を一般式(4)で表されるシラン化合物と合わせて用いることで、接触角の上昇を伴うことなく、一般式(1)で表されるシラン化合物との混合を行うことが可能となり好適である。
【0016】
また、前記水酸基前駆体官能基を水酸基に変換する工程において、光酸発生剤を含むポリマー層を形成した後、加熱処理を行い、さらに、高エネルギー線を用いてパターン形状を基板上に照射した後、加熱処理を行い、その後に前記ポリマー層を除去することが好ましい(請求項4)。
【0017】
このように、光酸発生剤を含む材料を用いてポリマー層を形成した後、加熱処理することで溶剤を揮発させ、その材料を基板上に固定することでその後の操作、特に露光時の基板の取り扱いが容易となる。また、高エネルギー線の照射後、加熱処理を行うことで、発生酸と単分子膜上の水酸基前駆体官能基との反応を完了させ、反応を促進させることができる。
【0018】
また、前記高エネルギー線を、波長250nm〜400nmの範囲のものとすることが好ましい(請求項5)。
【0019】
このように前記高エネルギー線を、波長250nm〜400nmの範囲のものとすれば、単分子膜を形成するシラン化合物と基板との結合を切断して、シラン化合物の基板からの脱落をもたらしたりする恐れが小さい。
【0020】
また、前記マイクロアレイは、生体分子の検査に用いることができる(請求項6)。
【0021】
また、本発明では、前記水酸基前駆体官能基を水酸基に変換する工程を経て生じた水酸基に、5’−末端を酸脱離基で保護し、かつ3’−末端をホスホアミダイト化したモノヌクレオチドを脱水環境下にて付加させた基板を、前記光酸発生剤を含むポリマー層を用いて5’−末端の酸脱離基を水酸基に変換する工程を含むマイクロアレイ作製用基板の製造方法を提供することができる(請求項7)。
また、前記5’−末端を保護する酸脱離基が、ジメトキシトリチル基であることが好ましい(請求項8)。
【0022】
すなわち、本発明による単分子膜と光酸発生剤によるマイクロアレイ作成方法はオリゴヌクレオチド伸張に応用することが出来る。
【0023】
このように前記マイクロアレイは、生物機能分子、特にDNA配列解析、遺伝子診断など、遺伝子の配列に係わる検査に用いることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上説明したように、本発明のマイクロアレイ作製用基板の製造方法を用いることにより、安価でより確実に、基板上に位置選択的な水酸基をもつマイクロアレイ作製用基板が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明者らは、より確実に、基板上に位置選択的な水酸基を発生させるためには、発生酸と効率的に反応するよう、単分子膜を形成するシラン化合物の官能基として水酸基前駆体官能基が選択されるべきであり、また、位置選択的な光に対して効率的に酸を発生する光酸発生剤が選択されるべきであると考えた。
【0026】
そこで、本発明者らは鋭意検討及び研究を重ねた結果、1段階の反応で確実に水酸基に変換可能な水酸基前駆体を官能基として持つ酸化ケイ素鎖を有する単分子膜を経由すること、および、光に対して効率的に酸を発生する光酸発生剤を見つけることで、上記課題を解決することができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0027】
すなわち、本発明は、マイクロアレイ作製用基板の製造方法であって、少なくとも、下記一般式(1)
Si−(CH−X (1)
(式中、mは3以上20以下の整数を表し、Xは水酸基前駆体官能基であり、酸によって水酸基に変換される基を示す。Yは独立してハロゲン原子又は炭素数1から4のアルコキシ基を示す。)
で示されるシラン化合物を用いて、基板上に単分子膜を形成する工程と、
前記Xで示される水酸基前駆体官能基を水酸基に変換する工程を有し、
該前記Xで示される水酸基前駆体官能基を水酸基に変換する工程は、
光酸発生剤として下記一般式(2)もしくは(3)
【化5】

(式中、Rは同一でも異なってもよく、水素原子、フッ素原子、塩素原子、ニトロ基、又は炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状の置換もしくは非置換のアルキル基又はアルコキシ基を示す。qは独立して0又は1であり、pは1又は2である。rは0〜4の整数、r’は0〜5の整数である。)
【化6】

(式中、Rは、炭素数3〜10の直鎖状、分岐状又は環状の置換もしくは非置換のアルキル基又はアルコキシ基、あるいは置換もしくは非置換のフェニル基、カンファーを示す。)
を含むポリマー層を前記単分子膜上に形成した後、高エネルギー線を用いてパターン形状を前記基板上に照射するものであることを特徴とするマイクロアレイ作製用基板の製造方法を提供する。
【0028】
本発明のマイクロアレイ作製用基板より製造されるマイクロアレイは、データ取得方法の原理として、蛍光法、電気的方法等、その方法を限定するものではないが、半導体装置上で本発明の方法を適用してマイクロアレイ作成用基板とする際に、特に好ましく適用される。
【0029】
半導体装置を用い、電気的方法で分析を行う場合、半導体装置としては、特許文献1に示された様に、キャパシタ上に固定を行なう方法や、特許文献2に示されたようにゲート電極あるいはゲート電極に接続されたフローティング電極表面に固定を行なう方法等が知られている。
【0030】
本発明の方法を使用する際、固定化を行なうための材料の最表面が金属酸化膜である場合には、表面の水酸基が十分あり、直接後述のケイ素化合物で表面処理をしてやることで、酸化ケイ素鎖を持つ単分子膜を形成することができる。また、最表層が金属膜である場合には、最表層の自然酸化膜を使用しても良いし、表層付近のみをオゾン、過酸化水素水、水、酸素プラズマ等の方法で酸化することにより適用できる。また、電気的方法によらない検出方法では、樹脂基板上に適用するケースも考えられるが、そのような場合には、表面を酸素雰囲気中で電子線やイオンビームで処理することで、酸化ケイ素鎖を持つ単分子膜を形成できることが特開平4−221630号公報に開示されている。
【0031】
単分子膜は、基板全面に形成しても良いが、必要な部位のみに形成することが一般的であり、レジスト膜を使用して位置選択的に単分子膜を形成することができる。この操作については良く知られたものであり、ここで使用するレジストとしては、特に制限を設ける必要はないが、より微細な位置に選択的に処理を行うためには化学増幅型レジストを使用することが好ましい。
【0032】
ここで使用する化学増幅型レジストとしては、単分子膜を形成する工程で、レジスト膜上には単分子膜が形成されてしまわないことが好ましく、レジスト材料に使用する樹脂には重合単位として、水酸基を含むものが5モル%以下であることが好ましく、より好ましくは水酸基を持つユニットが含まれないことが好ましい。そこで、この意味でもレジストのタイプとしては、メカニズム上水酸基の存在が必須であるノボラック系のレジストや、通常水酸基に基づく架橋により溶解性変化を起こすネガ型レジストよりも、化学増幅型ポジ型レジストを選択することが好ましい。
【0033】
上記のような、原理上水酸基の存在を必須としないポジ型レジストに使用する樹脂としては、酸分解性保護基で保護された酸性官能基を持つユニットとArFエキシマレーザー用に開発された所謂密着性基とが組合された重合体を用いることが好ましい。
【0034】
酸分解性保護基で保護された酸性官能基を持つユニットとしては、第3級アルキル基、第3級アルコキシカルボニル基、アセタール基等で保護されたフェノール性OHを持つユニット、より具体的には保護されたビニルフェノールや、同様に保護されたカルボキシル基、より具体的には保護されたビニル安息香酸、(メタ)アクリル酸等が使用できる。これらのものは既に多数が公知である(例えば特開2006−225476号公報、特開2006−328259号公報)。
【0035】
また、ArFエキシマレーザー用に開発された所謂密着性基としては、ユニット中に環状エーテル構造、ラクトン構造を持つユニットであり、特にラクトン構造を持つものが効果が大きい。これらについても既に多数が公知である(例えば特開2006−328259号公報)。
【0036】
上記の2種のユニットの重合比は、酸分解性保護基で保護された酸性官能基を持つユニットが20モル%より大きければ解像性が低くなる恐れが少なく、また、密着性基を持つユニットが40モル%より大きければ剥がれ問題を生じる恐れが少ない。
【0037】
レジスト膜形成用組成物には更に酸発生剤や、必要に応じ、塩基性物質、界面活性剤等が加えられるが、これらについては多数が公知であり(例えば特開2006−225476号公報、特開2006−328259号公報)、基本的には何れのものも使用することができる。また、レジストパターンを形成する方法もすでに公知であり、それらを適用することで、マスクが必要な部位のみをマスクすることができる。
【0038】
酸化ケイ素鎖を持つ単分子膜を形成するための工程は、たとえば、上記の方法により認識用材料を固定化する場所以外の面を保護するレジストパターンを形成した、あるいは全面に処理をしても良い場合にはレジストパターン特に設けない非被膜基板を、下記一般式(1)
Si−(CH−X (1)
(式中、mは3以上20以下の整数を表し、Xは水酸基前駆体官能基であり、酸によって水酸基に変換される基を示す。Yは独立してハロゲン原子又は炭素数1から4のアルコキシ基を示す。)
で示されるシラン化合物を含む処理液で処理することで基板上に単分子膜を形成する。
【0039】
上記一般式中mが3以上であれば、単分子膜を形成することができるが、後述するように、固定化する材料の空間を作る方法を適用する場合には、mは5以上が好ましく、より好ましくは8以上である。
【0040】
水酸基前駆体官能基Xは、いわゆる保護基で保護された水酸基、あるいはビジナルジオールである。そのような保護基としては、多数のものが公知であり、代表的なものとしては、アシル基、オキシラニル基、アセタール基等を挙げることができる。これらの前駆体官能基のうち、後工程において、得られた単分子膜上の特定部位にのみ認識用材料を固定するためにはレジストを使用して単分子膜の特定部位をマスクするが、ここで化学増幅型レジストを使用する場合には、単分子膜が塩基性物質で汚染されていないことが好ましく、酸性処理で脱保護できるものが好ましい。酸性条件で脱保護できるものとしては、上記例の中ではオキシラニル基やアセタール基を挙げることができる。また、アセタール基のうち、Xがメトキシメトキシ基であるものや、オキシラニル基であるものは、立体的に小さいため、単分子膜の形成が容易である。
【0041】
認識用材料を固定化するための官能基である水酸基の周囲の空間が密でない方が固定化し易いことは容易に想像できるが、そのような状態を作るためには、上記一般式(1)で表されるシラン化合物と共に、鎖長のやや短いアルキル鎖を持つ下記一般式(4)および(5)
Y’Si−(CH−CH (4)
Y’Si−(CH−OCH (5)
(式中、nは0以上(m−2)以下の整数を表す。mは前記一般式(1)中の値である。Y’はハロゲン原子又は炭素数1から4のアルコキシ基を示す。)
で表されるシラン化合物の内、少なくとも一種類以上と混合して使用することが好ましい。また、一般式(1)で表されるシラン化合物に対して化合物(4)および(5)で表される化合物は1倍モル以上使用されることが好ましく、より好ましくは4倍モル以上である。また、固定化量を確保するためには、200倍モル以下であることが好ましく、より好ましくは100倍モル以下である。
【0042】
上記のシラン化合物による酸化ケイ素鎖を持つ単分子膜の形成方法については特許文献3で開示されている方法で行なうことができる。即ち単分子膜を形成するためには、例えば、極性の非常に低い溶剤を用い、上記一般式(1)で表されるシラン化合物に加え一般式(4)および(5)で表されるシラン化合物のうち少なくとも一種類以上との混合物を2.0x10−2〜5.0x10−2モル/lと比較的希薄な溶液として、それに被膜したくない部分をレジストで保護してあっても良い被膜基板を、例えばトリクロロシランの場合、2〜3分間、例えばトリメトキシシランの場合、2時間浸漬する。
【0043】
このように単分子膜を基板上に形成した後、前記Xで示される水酸基前駆体官能基を水酸基に変換する工程を行うことにより、水酸基を固定化のための官能基として持つ酸化ケイ素鎖を持つ単分子膜で被膜されたマイクロアレイ作製用基板が得られる。
【0044】
上記水酸基前駆体官能基の水酸基への変換(脱保護)を、基板上で位置選択的に行う為に、本発明では特定の光酸発生剤を含むポリマー層を前記単分子膜上に形成した後、高エネルギー線を用いてパターン形状を前記基板上に照射する。
【0045】
上記ポリマー層形成材料に含まれる特定の光酸発生剤として、下記一般式(2)
もしくは(3)が挙げられる。
【0046】
【化7】

(式中、Rは同一でも異なってもよく、水素原子、フッ素原子、塩素原子、ニトロ基、又は炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状の置換もしくは非置換のアルキル基又はアルコキシ基を示す。qは独立して0又は1であり、pは1又は2である。rは0〜4の整数、r’は0〜5の整数である。)
【0047】
【化8】

(式中、Rは、炭素数3〜10の直鎖状、分岐状又は環状の置換もしくは非置換のアルキル基又はアルコキシ基、あるいは置換もしくは非置換のフェニル基、カンファーを示す。)
【0048】
上記一般式(2)において、Rは同一でも異なってもよく、水素原子、フッ素原子、塩素原子、ニトロ基、炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状の置換もしくは非置換のアルキル基又はアルコキシ基を示し、具体的には水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、sec−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、sec−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、iso−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ヘキシル基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチル基、n−オクチルオキシ基、n−デシル基、n−デシルオキシ基、n−ドデシル基、n−ドデシルオキシ基等が挙げられる。中でも水素原子、メチル基、エチル基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチルオキシ基が好適に用いられ、更に、水素原子、メチル基がより好適に用いられる。qは独立して0又は1であり、pは1又は2である。rは0〜4の整数、r’は0〜5の整数である。アレーンスルホニル基におけるアリールスルホニルオキシ基の置換位置はいずれでもよく、制限されるものではない。中でも好ましい例として、アレーンスルホニル基がベンゼンスルホニル基の場合は4−位が好ましく、ナフタレンスルホニル基の場合は1−ナフタレンスルホニル基と2−ナフタレンスルホニル基で異なるが、1−ナフタレンスルホニル基の場合には4−位あるいは5−位、又は8−位が好ましく、2−ナフタレンスルホニル基の場合には6−位が好ましい。
【0049】
より具体的に、(アリールスルホニルオキシ)アレーンスルホニルオキシ基としては、4−(4’−トルエンスルホニルオキシ)ベンゼンスルホニルオキシ基、4−(ベンゼンスルホニルオキシ)ベンゼンスルホニルオキシ基、4−(4’−メトキシベンゼンスルホニルオキシ)ベンゼンスルホニルオキシ基、4−(4’−フルオロベンゼンスルホニルオキシ)ベンゼンスルホニルオキシ基、4−(4’−トリフルオロメチルベンゼンスルホニルオキシ)ベンゼンスルホニルオキシ基、4−(ペンタフルオロベンゼンスルホニルオキシ)ベンゼンスルホニルオキシ基、4−(2−ナフタレンスルホニルオキシ)ベンゼンスルホニルオキシ基、3−メトキシ−4−(4’−トルエンスルホニルオキシ)ベンゼンスルホニルオキシ基、3−メチル−4−(4’−トルエンスルホニルオキシ)ベンゼンスルホニルオキシ基、2−(4’−トルエンスルホニルオキシ)ナフタレン−6−スルホニルオキシ基1−(4’−トルエンスルホニルオキシ)ナフタレン−4−スルホニルオキシ基、1−(4’−トルエンスルホニルオキシ)ナフタレン−8−スルホニルオキシ基、2,5−ビス(4’−トルエンスルホニルオキシ)ベンゼンスルホニルオキシ基、2,5−ビス(4’−メトキシベンゼンスルホニルオキシ)ベンゼンスルホニルオキシ基等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0050】
上記一般式(3)において、Rは、炭素数3〜10の直鎖状、分岐状又は環状の置換もしくは非置換のアルキル基又はアルコキシ基を示し、より具体的には、n−プロピル基、sec−プロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、sec−プロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、iso−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ヘキシル基、n−ヘキシルオキシ基、n−オクチル基、n−オクチルオキシ基、n−デシル基、n−デシルオキシ基等が挙げられる。あるいはRは、置換もしくは非置換のフェニル基、カンファーを示し、より具体的には、フェニル基、p−メチルフェニル基、カンファーなどが挙げられる。
【0051】
これら光酸発生剤は波長250nm〜400nmの範囲の光に対しても酸発生能があり、好適である。
【0052】
上記ポリマー層形成材料のポリマーとしては、高エネルギー線を透過し、上記光酸発生剤と混合可能であれば、いずれでも良い。
また、ポリマー層形成材料は、有機溶剤、塩基性化合物、界面活性剤のいずれか1つ以上を含有することができる。
【0053】
本発明で使用される有機溶剤としては、ポリマー、酸発生剤、その他の添加剤等が溶解可能な有機溶剤であればいずれでもよい。このような有機溶剤としては、例えば、シクロヘキサノン、メチル−2−n−アミルケトン等のケトン類、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert−ブチル、プロピオン酸tert−ブチル、プロピレングリコールモノtert−ブチルエーテルアセテート等のエステル類、γ−ブチロラクトン等のラクトン類が挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して使用することができるが、これらに限定されるものではない。本発明では、これらの有機溶剤の中でもポリマー層形成材料成分中の酸発生剤の溶解性が最も優れているジエチレングリコールジメチルエーテルや1−エトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びその混合溶剤が好ましく使用される。
【0054】
有機溶剤の使用量は、ポリマー100質量部に対して200〜3,000質量部、特に400〜2,500質量部が好適である。
【0055】
更に、本発明のポリマー層形成材料には、塩基性化合物として含窒素有機化合物を1種又は2種以上配合することができる。
【0056】
このような含窒素有機化合物としては、第一級、第二級、第三級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシ基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、水酸基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド類、イミド類、カーバメート類等が挙げられる。
【0057】
具体的には、第一級の脂肪族アミン類として、アンモニア、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ペンチルアミン、tert−アミルアミン、シクロペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、セチルアミン、メチレンジアミン、エチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン等が例示され、第二級の脂肪族アミン類として、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−sec−ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジシクロペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、ジドデシルアミン、ジセチルアミン、N,N−ジメチルメチレンジアミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルテトラエチレンペンタミン等が例示され、第三級の脂肪族アミン類として、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリイソプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−sec−ブチルアミン、トリペンチルアミン、トリシクロペンチルアミン、トリヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリヘプチルアミン、トリオクチルアミン、トリノニルアミン、トリデシルアミン、トリドデシルアミン、トリセチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルメチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルテトラエチレンペンタミン等が例示される。
【0058】
また、混成アミン類としては、例えばジメチルエチルアミン、メチルエチルプロピルアミン、ベンジルアミン、フェネチルアミン、ベンジルジメチルアミン等が例示される。芳香族アミン類及び複素環アミン類の具体例としては、アニリン誘導体(例えばアニリン、N−メチルアニリン、N−エチルアニリン、N−プロピルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、2−メチルアニリン、3−メチルアニリン、4−メチルアニリン、エチルアニリン、プロピルアニリン、トリメチルアニリン、2−ニトロアニリン、3−ニトロアニリン、4−ニトロアニリン、2,4−ジニトロアニリン、2,6−ジニトロアニリン、3,5−ジニトロアニリン、N,N−ジメチルトルイジン等)、ジフェニル(p−トリル)アミン、メチルジフェニルアミン、トリフェニルアミン、フェニレンジアミン、ナフチルアミン、ジアミノナフタレン、ピロール誘導体(例えばピロール、2H−ピロール、1−メチルピロール、2,4−ジメチルピロール、2,5−ジメチルピロール、N−メチルピロール等)、オキサゾール誘導体(例えばオキサゾール、イソオキサゾール等)、チアゾール誘導体(例えばチアゾール、イソチアゾール等)、イミダゾール誘導体(例えばイミダゾール、4−メチルイミダゾール、4−メチル−2−フェニルイミダゾール等)、ピラゾール誘導体、フラザン誘導体、ピロリン誘導体(例えばピロリン、2−メチル−1−ピロリン等)、ピロリジン誘導体(例えばピロリジン、N−メチルピロリジン、ピロリジノン、N−メチルピロリドン等)、イミダゾリン誘導体、イミダゾリジン誘導体、ピリジン誘導体(例えばピリジン、メチルピリジン、エチルピリジン、プロピルピリジン、ブチルピリジン、4−(1−ブチルペンチル)ピリジン、ジメチルピリジン、トリメチルピリジン、トリエチルピリジン、フェニルピリジン、3−メチル−2−フェニルピリジン、4−tert−ブチルピリジン、ジフェニルピリジン、ベンジルピリジン、メトキシピリジン、ブトキシピリジン、ジメトキシピリジン、4−ピロリジノピリジン、2−(1−エチルプロピル)ピリジン、アミノピリジン、ジメチルアミノピリジン等)、ピリダジン誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾリジン誘導体、ピペリジン誘導体、ピペラジン誘導体、モルホリン誘導体、インドール誘導体、イソインドール誘導体、1H−インダゾール誘導体、インドリン誘導体、キノリン誘導体(例えばキノリン、3−キノリンカルボニトリル等)、イソキノリン誘導体、シンノリン誘導体、キナゾリン誘導体、キノキサリン誘導体、フタラジン誘導体、プリン誘導体、プテリジン誘導体、カルバゾール誘導体、フェナントリジン誘導体、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、1,10−フェナントロリン誘導体、アデニン誘導体、アデノシン誘導体、グアニン誘導体、グアノシン誘導体、ウラシル誘導体、ウリジン誘導体等が例示される。
【0059】
更に、カルボキシ基を有する含窒素化合物としては、例えばアミノ安息香酸、インドールカルボン酸、アミノ酸誘導体(例えばニコチン酸、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、グリシルロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、リジン、3−アミノピラジン−2−カルボン酸、メトキシアラニン)等が例示され、スルホニル基を有する含窒素化合物として3−ピリジンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム等が例示され、水酸基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物としては、2−ヒドロキシピリジン、アミノクレゾール、2,4−キノリンジオール、3−インドールメタノールヒドレート、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2,2’−イミノジエタノール、2−アミノエタノ−ル、3−アミノ−1−プロパノール、4−アミノ−1−ブタノール、4−(2−ヒドロキシエチル)モルホリン、2−(2−ヒドロキシエチル)ピリジン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、1−[2−(2−ヒドロキシエトキシ)エチル]ピペラジン、ピペリジンエタノール、1−(2−ヒドロキシエチル)ピロリジン、1−(2−ヒドロキシエチル)−2−ピロリジノン、3−ピペリジノ−1,2−プロパンジオール、3−ピロリジノ−1,2−プロパンジオール、8−ヒドロキシユロリジン、3−クイヌクリジノール、3−トロパノール、1−メチル−2−ピロリジンエタノール、1−アジリジンエタノール、N−(2−ヒドロキシエチル)フタルイミド、N−(2−ヒドロキシエチル)イソニコチンアミド等が例示される。アミド類としては、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、プロピオンアミド、ベンズアミド、1−シクロヘキシルピロリドン等が例示される。イミド類としては、フタルイミド、サクシンイミド、マレイミド等が例示される。カーバメート類としては、N−t−ブトキシカルボニル−N,N−ジシクロヘキシルアミン、N−t−ブトキシカルボニルベンズイミダゾール、オキサゾリジノン等が例示される。
【0060】
更に下記一般式(B)−1で示される含窒素有機化合物が例示される。

N(X11)(Y11)3−a (B)−1
(式中、a=1、2又は3である。側鎖X11は同一でも異なっていてもよく、下記一般式(X1)〜(X3)で表すことができる。側鎖Y11は同一又は異種の、水素原子もしくは直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜20のアルキル基を示し、エーテル基もしくはヒドロキシル基を含んでもよい。また、X11同士が結合して環を形成してもよい。)
【0061】
−R2’−O−R3 (X1)
−R4−O−R5−CO−R6(X2)
−R7−COO−R8 (X3)
【0062】
上記一般式(X1)〜(X3)中、R2’、R4、R7は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R3、R6は水素原子、又は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、ラクトン環を1あるいは複数含んでいてもよい。
【0063】
R5は単結合、又は炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、R8は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基であり、ヒドロキシ基、エーテル基、エステル基、ラクトン環を1あるいは複数含んでいてもよい。
【0064】
一般式(B)−1で表される化合物として具体的には、トリス(2−メトキシメトキシエチル)アミン、トリス{2−(2−メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(2−メトキシエトキシメトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−メトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−エトキシエトキシ)エチル}アミン、トリス{2−(1−エトキシプロポキシ)エチル}アミン、トリス[2−{2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシ}エチル]アミン、4,7,13,16,21,24−ヘキサオキサ−1,10−ジアザビシクロ[8.8.8]ヘキサコサン、4,7,13,18−テトラオキサ−1,10−ジアザビシクロ[8.5.5]エイコサン、1,4,10,13−テトラオキサ−7,16−ジアザビシクロオクタデカン、1−アザ−12−クラウン−4、1−アザ−15−クラウン−5、1−アザ−18−クラウン−6、トリス(2−ホルミルオキシエチル)アミン、トリス(2−アセトキシエチル)アミン、トリス(2−プロピオニルオキシエチル)アミン、トリス(2−ブチリルオキシエチル)アミン、トリス(2−イソブチリルオキシエチル)アミン、トリス(2−バレリルオキシエチル)アミン、トリス(2−ピバロイルオキシエチル)アミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(アセトキシアセトキシ)エチルアミン、トリス(2−メトキシカルボニルオキシエチル)アミン、トリス(2−tert−ブトキシカルボニルオキシエチル)アミン、トリス[2−(2−オキソプロポキシ)エチル]アミン、トリス[2−(メトキシカルボニルメチル)オキシエチル]アミン、トリス[2−(tert−ブトキシカルボニルメチルオキシ)エチル]アミン、トリス[2−(シクロヘキシルオキシカルボニルメチルオキシ)エチル]アミン、トリス(2−メトキシカルボニルエチル)アミン、トリス(2−エトキシカルボニルエチル)アミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(メトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(メトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(エトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(エトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(2−メトキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(2−メトキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(2−ヒドロキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(2−アセトキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−[(メトキシカルボニル)メトキシカルボニル]エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−[(メトキシカルボニル)メトキシカルボニル]エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(2−オキソプロポキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(2−オキソプロポキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(テトラヒドロフルフリルオキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−(テトラヒドロフルフリルオキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−[(2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル)オキシカルボニル]エチルアミン、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)2−[(2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル)オキシカルボニル]エチルアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)2−(4−ヒドロキシブトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ホルミルオキシエチル)2−(4−ホルミルオキシブトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−ホルミルオキシエチル)2−(2−ホルミルオキシエトキシカルボニル)エチルアミン、N,N−ビス(2−メトキシエチル)2−(メトキシカルボニル)エチルアミン、N−(2−ヒドロキシエチル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(2−アセトキシエチル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(2−ヒドロキシエチル)ビス[2−(エトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(2−アセトキシエチル)ビス[2−(エトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(3−ヒドロキシ−1−プロピル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(3−アセトキシ−1−プロピル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−(2−メトキシエチル)ビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−ブチルビス[2−(メトキシカルボニル)エチル]アミン、N−ブチルビス[2−(2−メトキシエトキシカルボニル)エチル]アミン、N−メチルビス(2−アセトキシエチル)アミン、N−エチルビス(2−アセトキシエチル)アミン、N−メチルビス(2−ピバロイルオキシエチル)アミン、N−エチルビス[2−(メトキシカルボニルオキシ)エチル]アミン、N−エチルビス[2−(tert−ブトキシカルボニルオキシ)エチル]アミン、トリス(メトキシカルボニルメチル)アミン、トリス(エトキシカルボニルメチル)アミン、N−ブチルビス(メトキシカルボニルメチル)アミン、N−ヘキシルビス(メトキシカルボニルメチル)アミン、β−(ジエチルアミノ)−δ−バレロラクトンが例示される。
【0065】
更に下記一般式(B)−2に示される環状構造を持つ含窒素有機化合物が例示される。
【0066】
【化9】

【0067】
(式中、X11は前述の通り、R9は炭素数2〜20の直鎖状又は分岐状のアルキレン基であり、カルボニル基、エーテル基、エステル基、スルフィド基を1個あるいは複数個含んでいてもよい。)
【0068】
式(B)−2として具体的には、1−[2−(メトキシメトキシ)エチル]ピロリジン、1−[2−(メトキシメトキシ)エチル]ピペリジン、4−[2−(メトキシメトキシ)エチル]モルホリン、1−[2−[(2−メトキシエトキシ)メトキシ]エチル]ピロリジン、1−[2−[(2−メトキシエトキシ)メトキシ]エチル]ピペリジン、4−[2−[(2−メトキシエトキシ)メトキシ]エチル]モルホリン、酢酸2−(1−ピロリジニル)エチル、酢酸2−ピペリジノエチル、酢酸2−モルホリノエチル、ギ酸2−(1−ピロリジニル)エチル、プロピオン酸2−ピペリジノエチル、アセトキシ酢酸2−モルホリノエチル、メトキシ酢酸2−(1−ピロリジニル)エチル、4−[2−(メトキシカルボニルオキシ)エチル]モルホリン、1−[2−(t−ブトキシカルボニルオキシ)エチル]ピペリジン、4−[2−(2−メトキシエトキシカルボニルオキシ)エチル]モルホリン、3−(1−ピロリジニル)プロピオン酸メチル、3−ピペリジノプロピオン酸メチル、3−モルホリノプロピオン酸メチル、3−(チオモルホリノ)プロピオン酸メチル、2−メチル−3−(1−ピロリジニル)プロピオン酸メチル、3−モルホリノプロピオン酸エチル、3−ピペリジノプロピオン酸メトキシカルボニルメチル、3−(1−ピロリジニル)プロピオン酸2−ヒドロキシエチル、3−モルホリノプロピオン酸2−アセトキシエチル、3−(1−ピロリジニル)プロピオン酸2−オキソテトラヒドロフラン−3−イル、3−モルホリノプロピオン酸テトラヒドロフルフリル、3−ピペリジノプロピオン酸グリシジル、3−モルホリノプロピオン酸2−メトキシエチル、3−(1−ピロリジニル)プロピオン酸2−(2−メトキシエトキシ)エチル、3−モルホリノプロピオン酸ブチル、3−ピペリジノプロピオン酸シクロヘキシル、α−(1−ピロリジニル)メチル−γ−ブチロラクトン、β−ピペリジノ−γ−ブチロラクトン、β−モルホリノ−δ−バレロラクトン、1−ピロリジニル酢酸メチル、ピペリジノ酢酸メチル、モルホリノ酢酸メチル、チオモルホリノ酢酸メチル、1−ピロリジニル酢酸エチル、モルホリノ酢酸2−メトキシエチル、2−メトキシ酢酸2−モルホリノエチル、2−(2−メトキシエトキシ)酢酸2−モルホリノエチル、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸2−モルホリノエチル、ヘキサン酸2−モルホリノエチル、オクタン酸2−モルホリノエチル、デカン酸2−モルホリノエチル、ラウリン酸2−モルホリノエチル、ミリスチン酸2−モルホリノエチル、パルミチン酸2−モルホリノエチル、ステアリン酸2−モルホリノエチルが例示される。
【0069】
更に、一般式(B)−3〜(B)−6で表されるシアノ基を含む含窒素有機化合物が例示される。
【0070】
【化10】

(式中、X11、R9、aは前述の通り、R10、R11は同一又は異種の炭素数1〜4の直鎖状又は分岐状のアルキレン基である。)
【0071】
上記式(B)−3〜(B)−6で表されるシアノ基を含む含窒素有機化合物として具体的には3−(ジエチルアミノ)プロピオノニトリル、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピオノニトリル、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)−3−アミノプロピオノニトリル、N,N−ビス(2−ホルミルオキシエチル)−3−アミノプロピオノニトリル、N,N−ビス(2−メトキシエチル)−3−アミノプロピオノニトリル、N,N−ビス[2−(メトキシメトキシ)エチル]−3−アミノプロピオノニトリル、N−(2−シアノエチル)−N−(2−メトキシエチル)−3−アミノプロピオン酸メチル、N−(2−シアノエチル)−N−(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピオン酸メチル、N−(2−アセトキシエチル)−N−(2−シアノエチル)−3−アミノプロピオン酸メチル、N−(2−シアノエチル)−N−エチル−3−アミノプロピオノニトリル、N−(2−シアノエチル)−N−(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピオノニトリル、N−(2−アセトキシエチル)−N−(2−シアノエチル)−3−アミノプロピオノニトリル、N−(2−シアノエチル)−N−(2−ホルミルオキシエチル)−3−アミノプロピオノニトリル、N−(2−シアノエチル)−N−(2−メトキシエチル)−3−アミノプロピオノニトリル、N−(2−シアノエチル)−N−[2−(メトキシメトキシ)エチル]−3−アミノプロピオノニトリル、N−(2−シアノエチル)−N−(3−ヒドロキシ−1−プロピル)−3−アミノプロピオノニトリル、N−(3−アセトキシ−1−プロピル)−N−(2−シアノエチル)−3−アミノプロピオノニトリル、N−(2−シアノエチル)−N−(3−ホルミルオキシ−1−プロピル)−3−アミノプロピオノニトリル、N−(2−シアノエチル)−N−テトラヒドロフルフリル−3−アミノプロピオノニトリル、N,N−ビス(2−シアノエチル)−3−アミノプロピオノニトリル、ジエチルアミノアセトニトリル、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノアセトニトリル、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)アミノアセトニトリル、N,N−ビス(2−ホルミルオキシエチル)アミノアセトニトリル、N,N−ビス(2−メトキシエチル)アミノアセトニトリル、N,N−ビス[2−(メトキシメトキシ)エチル]アミノアセトニトリル、N−シアノメチル−N−(2−メトキシエチル)−3−アミノプロピオン酸メチル、N−シアノメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピオン酸メチル、N−(2−アセトキシエチル)−N−シアノメチル−3−アミノプロピオン酸メチル、N−シアノメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アミノアセトニトリル、N−(2−アセトキシエチル)−N−(シアノメチル)アミノアセトニトリル、N−シアノメチル−N−(2−ホルミルオキシエチル)アミノアセトニトリル、N−シアノメチル−N−(2−メトキシエチル)アミノアセトニトリル、N−シアノメチル−N−[2−(メトキシメトキシ)エチル]アミノアセトニトリル、N−(シアノメチル)−N−(3−ヒドロキシ−1−プロピル)アミノアセトニトリル、N−(3−アセトキシ−1−プロピル)−N−(シアノメチル)アミノアセトニトリル、N−シアノメチル−N−(3−ホルミルオキシ−1−プロピル)アミノアセトニトリル、N,N−ビス(シアノメチル)アミノアセトニトリル、1−ピロリジンプロピオノニトリル、1−ピペリジンプロピオノニトリル、4−モルホリンプロピオノニトリル、1−ピロリジンアセトニトリル、1−ピペリジンアセトニトリル、4−モルホリンアセトニトリル、3−ジエチルアミノプロピオン酸シアノメチル、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピオン酸シアノメチル、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)−3−アミノプロピオン酸シアノメチル、N,N−ビス(2−ホルミルオキシエチル)−3−アミノプロピオン酸シアノメチル、N,N−ビス(2−メトキシエチル)−3−アミノプロピオン酸シアノメチル、N,N−ビス[2−(メトキシメトキシ)エチル]−3−アミノプロピオン酸シアノメチル、3−ジエチルアミノプロピオン酸(2−シアノエチル)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−3−アミノプロピオン酸(2−シアノエチル)、N,N−ビス(2−アセトキシエチル)−3−アミノプロピオン酸(2−シアノエチル)、N,N−ビス(2−ホルミルオキシエチル)−3−アミノプロピオン酸(2−シアノエチル)、N,N−ビス(2−メトキシエチル)−3−アミノプロピオン酸(2−シアノエチル)、N,N−ビス[2−(メトキシメトキシ)エチル]−3−アミノプロピオン酸(2−シアノエチル)、1−ピロリジンプロピオン酸シアノメチル、1−ピペリジンプロピオン酸シアノメチル、4−モルホリンプロピオン酸シアノメチル、1−ピロリジンプロピオン酸(2−シアノエチル)、1−ピペリジンプロピオン酸(2−シアノエチル)、4−モルホリンプロピオン酸(2−シアノエチル)が例示される。
【0072】
更に、下記一般式(B)−7で表されるイミダゾール骨格及び極性官能基を有する含窒素有機化合物が例示される。
【0073】
【化11】

【0074】
(式中、R12は炭素数2〜20の直鎖状、分岐状又は環状の極性官能基を有するアルキル基であり、極性官能基としては水酸基、カルボニル基、エステル基、エーテル基、スルフィド基、カーボネート基、シアノ基、アセタール基のいずれかを1個あるいは複数個含む。R13、R14、R15は水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アリール基又はアラルキル基である。)
【0075】
更に、下記一般式(B)−8で示されるベンズイミダゾール骨格及び極性官能基を有する含窒素有機化合物が例示される。
【0076】
【化12】

【0077】
(式中、R16は水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アリール基、又はアラルキル基である。R17は炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状の極性官能基を有するアルキル基であり、極性官能基としてエステル基、アセタール基、シアノ基のいずれかを一つ以上含み、その他に水酸基、カルボニル基、エーテル基、スルフィド基、カーボネート基のいずれかを一つ以上含んでいてもよい。)
【0078】
更に、下記一般式(B)−9及び(B)−10で示される極性官能基を有する含窒素複素環化合物が例示される。
【0079】
【化13】

【0080】
(式中、Aは窒素原子又は≡C−R24である。Bは窒素原子又は≡C−R25である。R18は炭素数2〜20の直鎖状、分岐状又は環状の極性官能基を有するアルキル基であり、極性官能基としては水酸基、カルボニル基、エステル基、エーテル基、スルフィド基、カーボネート基、シアノ基又はアセタール基を一つ以上含む。R19、R20、R21、R22は水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又はアリール基であるか、又はR19とR20、R21とR22はそれぞれ結合してベンゼン環、ナフタレン環あるいはピリジン環を形成してもよい。R23は水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又はアリール基である。R24、R25は水素原子、炭素数1〜10の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、又はアリール基である。R23とR25は結合してベンゼン環又はナフタレン環を形成してもよい。)
【0081】
更に、下記一般式(B)−11、12、13及び14で示される芳香族カルボン酸エステル構造を有する含窒素有機化合物が例示される。
【0082】
【化14】

【0083】
(式中、R26は炭素数6〜20のアリール基又は炭素数4〜20のヘテロ芳香族基であって、水素原子の一部又は全部が、ハロゲン原子、炭素数1〜20の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数1〜10のアシルオキシ基、又は、炭素数1〜10のアルキルチオ基で置換されていてもよい。R27はCO2R28、OR29又はシアノ基である。R28は一部のメチレン基が酸素原子で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基である。R29は一部のメチレン基が酸素原子で置換されていてもよい炭素数1〜10のアルキル基又はアシル基である。R30は単結合、メチレン基、エチレン基、硫黄原子又は−O(CH2CH2O)a−基である。a=0,1,2,3又は4である。R31は水素原子、メチル基、エチル基又はフェニル基である。Vは窒素原子又はCR32である。Wは窒素原子又はCR33である。Zは窒素原子又はCR34である。R32、R33、R34はそれぞれ独立に水素原子、メチル基又はフェニル基であるか、あるいはR32とR33又はR33とR34が結合して、炭素数6〜20の芳香環又は炭素数2〜20のヘテロ芳香環を形成してもよい。)
【0084】
更に、下記一般式(B)−15で示される7−オキサノルボルナン−2−カルボン酸エステル構造を有する含窒素有機化合物が例示される。
【0085】
【化15】

【0086】
(式中、R35は水素、又は炭素数1〜10の直鎖状、分枝状又は環状のアルキル基である。R36及びR37はそれぞれ独立に、エーテル、カルボニル、エステル、アルコール、スルフィド、ニトリル、アミン、イミン、アミドなどの極性官能基を一つ又は複数含んでいてもよい炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、又は炭素数7〜20のアラルキル基であって、水素原子の一部がハロゲン原子で置換されていてもよい。R36とR37は互いに結合して、炭素数2〜20のヘテロ環又はヘテロ芳香環を形成してもよい。)
【0087】
なお、含窒素有機化合物の配合量は、ポリマー100質量部に対して0.001〜2質量部、特に0.01〜1質量部が好適である。配合量が0.001質量部以上であれば十分な配合効果が得られ、2質量部以下であれば感度が低下する恐れが少ない。
【0088】
本発明のポリマー層形成材料には、上記成分以外に任意成分として塗布性を向上させるために慣用されている界面活性剤を添加することができる。なお、任意成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0089】
ここで、界面活性剤としては非イオン性のものが好ましく、パーフルオロアルキルポリオキシエチレンエタノール、フッ素化アルキルエステル、パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルEO付加物、含フッ素オルガノシロキサン系化合物等が挙げられる。例えばフロラード「FC−430」、「FC−431」、「FC−4430」(いずれも住友スリーエム(株)製)、サーフロン「S−141」、「S−145」、「KH−10」、「KH−20」、「KH−30」、「KH−40」(いずれも旭硝子(株)製)、ユニダイン「DS−401」、「DS−403」、「DS−451」(いずれもダイキン工業(株)製)、メガファック「F−8151」(大日本インキ工業(株)製)、「X−70−092」、「X−70−093」(いずれも信越化学工業(株)製)等を挙げることができる。好ましくは、フロラード「FC−4430」(住友スリーエム(株)製)、「KH−20」、「KH−30」(いずれも旭硝子(株)製)、「X−70−093」(信越化学工業(株)製)が挙げられる。
【0090】
上記ポリマー層形成材料を用いて、光酸発生剤を含むポリマー層を形成した後、加熱処理を行うことが好ましい。これによって溶剤を揮発させ、その材料を基板上に固定することでその後の操作、特に露光時の基板の取り扱いが容易となる。
【0091】
次に、高エネルギー線を用いて、たとえばマスクもしくはレーザー描画により目的のパターン形状を前記基板上に照射する。これにより、ポリマー層の照射部位で酸が発生し、この酸が下層の単分子膜の対応部位で、上記Xで示される水酸基前駆体官能基を水酸基に変換する。これによって、基板上に位置選択的な水酸基を有する単分子膜を得ることができる。
【0092】
また、上記の水酸基前駆体官能基を水酸基に変換する工程を経て生じた水酸基に、5’−末端を酸脱離基で保護し、かつ3’−末端をホスホアミダイト化したモノヌクレオチドを脱水環境下にて付加させた基板を、前記光酸発生剤を含むポリマー層を用いて5’−末端の酸脱離基を水酸基に変換することができる。ここで、5’−末端を保護する酸脱離基としては、ジメトキシトリチル基が好ましく用いることができる。このように、本発明におけるマクレアレイ作成方法は、オリゴヌクレオチド伸長に応用することができる。
【0093】
なお、高エネルギー線の照射後、加熱処理を行えば、発生酸と単分子膜上の水酸基前駆体官能基との反応を完了させ、反応を促進させることができるため好ましい。
また、前記高エネルギー線を、波長250nm〜400nmの範囲のものとすれば、単分子膜を形成するシラン化合物と基板との結合を切断して、シラン化合物の基板からの脱落をもたらしたりする恐れが小さいため、好ましい。
【0094】
この後、ポリマー層を定法に従って除去し、基板上に位置選択的な水酸基を有する単分子膜を有するマイクロアレイ作製用基板を得ることができる。
【実施例】
【0095】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0096】
(製造例1)10−(メトキシメトキシ)デシルトリメトキシシランの製造
窒素雰囲気下、80℃で、10−(メトキシメトキシ)−1−デセン100gと触媒量の塩化白金酸テトラヒドロフラン溶液の混合物にトリメトキシシラン64gと酢酸0.57gの混合物を滴下した。80℃で3時間かき混ぜた後、反応混合物を減圧蒸留して目的物131gを得た。
【0097】
10−(メトキシメトキシ)デシルトリメトキシシラン
沸点 142度/66Pa
IR(液膜)νmax:2927、2854、2840、1465、1191、1143、1089、1049cm−1
13C−NMR(150MHz、CDCl)δ:9.10、22.55、26.18、29.19、29.39、29.56、29.71、33.09、50.44、55.03、67.84、96.34ppm
H−NMR(600MHz、CDCl)δ:0.59−0.62(2H、m)、1.21−1.39(14H、m)、1.52−1.57(2H、quintet様)、3.32(3H、s)、3.48(2H、t、J=7Hz)、3.53(9H、s)、4.58(2H、s)ppm.
【0098】
(製造例2)単分子膜形成材料溶液の調整
製造例1で得た10−(メトキシメトキシ)デシルトリメトキシシラン2.1gとヘキシルトリメトキシシラン5.9gの4%ジクロロメタン−ヘキサン1リットル溶液を調製して単分子膜形成材料溶液を得た。
【0099】
(製造例3)高分子化合物の調製
ポリマー層を形成する材料に添加されるポリマー成分として、各々のモノマーを組み合わせてイソプロピルアルコール溶媒下で共重合反応を行い、ヘキサンに晶出し、更にヘキサンで洗浄を繰り返した後に単離、乾燥して以下に示す組成のポリマー1を得た。得られたポリマーの組成は1H−NMR、分子量および分散度はゲルパーミエーションクロマトグラフにより確認した。
【0100】
ポリマー1(polymer 1)
分子量(Mw)=7,300
分散度(Mw/Mn)=1.67
【0101】
【化16】

【0102】
(製造例4)ポリマー層形成材料の調製
polymer1 80質量部、光酸発生剤(CGI−1397、チバスペシャリティケミカルズ社製:上記一般式(3)において、Rがn−プロピル基のもの) 6質量部を酢酸1−メトキシイソプロピル 720部に溶解し、フィルターろ過してポリマー層形成材料とした。
【0103】
(製造例5)レジスト用ポリマーの製造
t−ブトキシスチレン:1−エチルシクロペンチルメタクリレート:β−メタクリロイロキシ−γ−ブチロラクトン=30:10:60
【0104】
t−ブトキシスチレン17.6g、1−エチルシクロペンチルメタクリレート18.2g、β−メタクリロイロキシ−γ−ブチロラクトン17.0gをメチルイソブチルケトン1100gに溶解し、AIBN1.3gを加えて80℃8時間加熱した。これを大量のヘキサンに注いで沈殿をさせ、さらに沈殿を少量のメチルイソブチルケトンに溶解した後、大量のヘキサンで再沈殿を行なった。この操作により質量平均分子量が約8000、分散度2.0の上記組成の共重合体を得た。
【0105】
(製造例6)レジスト組成物の調製
(t−ブトキシスチレン:1−エチルシクロペンチルメタクリレート:β−メタクリロイロキシ−γ−ブチロラクトン=30:10:60)80質量部、トリフェニルスルホニウムp−トルエンスルホネート6質量部、トリブチルアミン0.5質量部をPGMEA 720部に溶解し、フィルターろ過してレジスト組成物とした。
【0106】
(マイクロアレイ作製用基板の製造:実施例1)
被加工基板1a上に上記製造例6で調製したレジスト組成物の溶液をスピンコートし、100℃90秒間プリベークを行なって膜厚0.3μmのレジスト膜1bを得た(図1(1))。
【0107】
次にこのレジスト膜1bに対し、マスクパターン2cを用いて、単分子膜を形成する部位にKrFエキシマレーザー光2dを照射した(図1(2))。露光後、110℃90秒間ポストベークを行い、2.38%のTMAH水溶液で現像することにより、単分子膜を形成する部位に開口部を持つレジストパターンを得た(図1(3))。
【0108】
次に、製造例2で得た単分子膜形成材料溶液4eに先の基板1aを3分間浸漬して(図1(4))、単分子膜5fを形成した(図1(5))。
【0109】
上記浸漬処理を行った基板に対し、上記製造例4で調製したポリマー層形成材料をスピンコートし、100℃5分間プリベークを行なって膜厚0.3μmのポリマー層6gを得た(図1(6))。
【0110】
次にこのポリマー層6gに対し、マスクパターン7hを用いて、水酸基を形成する部位にi線(365nm)7iを照射し(図1(7))、その後100℃5分間ポストベークを行った(図1(8))。これにより、ポリマー層の照射部位7jで酸が発生し、この酸が下層の単分子膜の部位8kのメトキシメトキシ基を水酸基に変換した(図1(8))。
【0111】
次に、酢酸1−メトキシイソプロピルおよびアセトン洗浄によりポリマー層8gを除去した(図1(9))。
さらに上記処理基板9aをプロピレングリコールモノメチルエーテルに浸漬してレジスト膜9bを除去した(図1(10))。
その結果、認識材料を固定化する位置10kに水酸基を固定用の官能基として持つ酸化ケイ素鎖を持つ単分子膜10fが形成されたマイクロアレイ作製用基板10aが得られた。
【0112】
(実施例2〜7、比較例1〜6)
ポリマー層形成用材料を、製造例4にならって調製するが、光酸発生剤として、上記一般式(3)において、Rがn−プロピル基のもの(光酸発生剤1)、Rがp−メチルフェニル基のもの(光酸発生剤2)、また、ジ(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム4−メチルフェニルスルホン酸塩(光酸発生剤3)をそれぞれ表1に示すような濃度となるように調整した(実施例2〜7、比較例1〜3)。ここで、溶剤としてプロピレングリコールアセテートを用いた。表2に混合後24時間後の溶解性を示す。
【0113】
【表1】

【0114】
【表2】

【0115】
表2に示されるように、実施例2〜7は固形分沈澱なく溶解できたが、比較例1〜3では、固形分沈澱が発生した。そこで、光酸発生剤3を表3に示すように調整し(比較例4〜6)、溶剤として乳酸エチルを用いたところ、固形分沈澱なく溶解できた。尚、表2、3において、○は固形分沈澱なし、×は固形分沈澱有りを示す。
【0116】
【表3】

【0117】
次に、10−(メトキシメトキシ)ドデシルトリメトキシシランのみで構成される単分子膜が形成された基板上に、上記のように調整した実施例2〜7および比較例4〜6の反応液を、それぞれスピンコートした。
【0118】
続けて80℃5分間プリベークを行って膜厚0.3μmのポリマー層を単分子膜上に形成した。
さらにポリマー層にi線を2000mJ/cmの露光量で照射し、80℃20分間ポストベークを行った。続けてTHFを掛け流してポリマー層を除去し、スピンドライを行い、水による表面接触角を測定した(塩酸メタノール混合液中、60℃で30分間加熱した前後の表面接触角変化を測定)。結果を表4に示す。尚、表面接触角は、反応前は73度、反応後は62度であった。
【0119】
【表4】

【0120】
この結果から、発生酸が同じである実施例4〜6、比較例4〜6に大きな違いが見られ、比較例4〜6については、酸の発生が見られなかったと考えられる。
【0121】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0122】
【図1】本発明に係るマイクロアレイ作製用基板の製造方法の一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0123】
1a…基板、 1b…レジスト膜、 2c…マスクパターン、
2d…エキシマレーザー光、 4e…単分子膜形成材料溶液、
5f…単分子膜、 6a…マイクロアレイ作製用基板、
6g…ポリマー層、 7h…マスクパターン、 7i…i線、
7j…ポリマー層の照射部位、
8k…単分子膜の水酸基変換部位、 8g…ポリマー層、 9a…基板、
9b…レジスト膜、 10a…マイクロアレイ作製用基板、
10k…認識材料を固定化する位置、 10f…単分子膜。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロアレイ作製用基板の製造方法であって、少なくとも、下記一般式(1)
Si−(CH−X (1)
(式中、mは3以上20以下の整数を表し、Xは水酸基前駆体官能基であり、酸によって水酸基に変換される基を示す。Yは独立してハロゲン原子又は炭素数1から4のアルコキシ基を示す。)
で示されるシラン化合物を用いて、基板上に単分子膜を形成する工程と、
前記Xで示される水酸基前駆体官能基を水酸基に変換する工程を有し、
該前記Xで示される水酸基前駆体官能基を水酸基に変換する工程は、
光酸発生剤として下記一般式(2)もしくは(3)
【化1】

(式中、Rは同一でも異なってもよく、水素原子、フッ素原子、塩素原子、ニトロ基、又は炭素数1〜12の直鎖状、分岐状又は環状の置換もしくは非置換のアルキル基又はアルコキシ基を示す。qは独立して0又は1であり、pは1又は2である。rは0〜4の整数、r’は0〜5の整数である。)
【化2】

(式中、Rは、炭素数3〜10の直鎖状、分岐状又は環状の置換もしくは非置換のアルキル基又はアルコキシ基、あるいは置換もしくは非置換のフェニル基、カンファーを示す。)
を含むポリマー層を前記単分子膜上に形成した後、高エネルギー線を用いてパターン形状を前記基板上に照射するものであることを特徴とするマイクロアレイ作製用基板の製造方法。
【請求項2】
前記一般式(1)中、Xで示される水酸基前駆体官能基が、アルコキシ基部分の炭素数が1〜6のアルコキシメトキシ基および/またはオキシラニル基である請求項1に記載のマイクロアレイ作製用基板の製造方法。
【請求項3】
前記一般式(1)で表されるシラン化合物を用いて単分子膜を形成する工程において、該シラン化合物に下記一般式(4)および(5)
Y’Si−(CH−CH (4)
Y’Si−(CH−OCH (5)
(式中、nは0以上(m−2)以下の整数を表す。mは前記一般式(1)中の値である。Y’はハロゲン原子又は炭素数1から4のアルコキシ基を示す。)
で示されるシラン化合物の内、少なくとも一種類以上混合し、該混合物を用いて前記単分子膜を形成することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマイクロアレイ作製用基板の製造方法。
【請求項4】
前記水酸基前駆体官能基を水酸基に変換する工程において、光酸発生剤を含むポリマー層を形成した後、加熱処理を行い、さらに、高エネルギー線を用いてパターン形状を基板上に照射した後、加熱処理を行い、その後に前記ポリマー層を除去することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のマイクロアレイ作製用基板の製造方法。
【請求項5】
前記高エネルギー線を、波長250nm〜400nmの範囲のものとすることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のマイクロアレイ作製用基板の製造方法。
【請求項6】
前記マイクロアレイが、生体分子の検査に用いられることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載のマイクロアレイ作製用基板の製造方法。
【請求項7】
前記水酸基前駆体官能基を水酸基に変換する工程を経て生じた水酸基に、5’−末端を酸脱離基で保護し、かつ3’−末端をホスホアミダイト化したモノヌクレオチドを脱水環境下にて付加させた基板を、前記光酸発生剤を含むポリマー層を用いて5’−末端の酸脱離基を水酸基に変換する工程を含む、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のマイクロアレイ作製用基板の製造方法。
【請求項8】
前記5’−末端を保護する酸脱離基が、ジメトキシトリチル基であることを特徴とする請求項7に記載のマイクロアレイ作製用基板の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−268179(P2008−268179A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9434(P2008−9434)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】