説明

マイクロインジェクション装置、捕捉プレート、およびマイクロインジェクション方法

【課題】細胞内に確実に薬液を注入するとともに、キャピラリ針の先端を保護すること。
【解決手段】キャピラリ針101は、内部に保持している薬液を吐出機構部111から吐出圧が加えられるタイミングで吐出する。キャピラリ針移動機構部108は、キャピラリ針101の長手方向の変位を制御部110へ通知する。捕捉座標記憶部109は、細胞が捕捉される捕捉座標をあらかじめ記憶する。制御部110は、キャピラリ針移動機構部108からキャピラリ針101の長手方向の変位の通知を受け、キャピラリ針101が最大限に突き出された後、所定の位置まで引き上げられた時に、吐出機構部111へ薬液の吐出を指示する。吐出機構部111は、制御部110から薬液の吐出が指示されると、キャピラリ針101の内部に吐出圧を加え、キャピラリ針101の先端から薬液を吐出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロインジェクション装置、捕捉プレート、およびマイクロインジェクション方法に関し、特に、細胞内に確実に薬液を注入するとともに、キャピラリ針の先端を保護することができるマイクロインジェクション装置、捕捉プレート、およびマイクロインジェクション方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、細胞内に遺伝子を直接注入することにより、細胞の遺伝情報を改変する研究が盛んに行われている。この研究が進めば、遺伝子の役割が解明されるとともに、例えば個人の遺伝的特性に適合した遺伝子治療を行うテーラメード医療が可能となる。細胞内に遺伝子を注入する方式としては、電気的な方法(エレクトロポレーション)、化学的な方法(リポフェクション)、生物的な方法(ベクター法)、機械的な方法(マイクロインジェクション)、および光学的な方法(レーザインジェクション)などが提案されている。しかし、電気的な方式は、大電流を流して細胞膜を破るため細胞へのダメージが大きく、化学的な方式は、導入可能な遺伝子に制限があるため効率が悪く、生物的な方法は、すべての材料を導入できずに安全性が確認できないなどの欠点がある。一方で、機械的な方法であるマイクロインジェクションは、最も安全で効率が高い方法として注目されている。
【0003】
マイクロインジェクションにおいては、図13に示すように、キャピラリ針10が細胞Cの位置へ自動的に移動し、薬液を直接注入する。このとき、キャピラリ針10が正確に細胞Cの位置へ移動するためには、シャーレ20内での細胞Cの位置を固定する必要がある。そこで、図13においては、複数の貫通孔が設けられた捕捉プレート30がシャーレ20内に設置され、捕捉プレート30のシャーレ20底面側を負圧にすることにより、細胞Cが捕捉プレート30の貫通孔に吸い寄せられている。
【0004】
具体的には、図13において、シャーレ20内は緩衝液で満たされており、捕捉プレート30および細胞Cは、緩衝液に浸っている。そして、シャーレ20の底面から緩衝液が吸引されることにより、捕捉プレート30のシャーレ20底面側が負圧となり、細胞Cは捕捉プレート30に穿設された貫通孔に吸い寄せられる。これにより、細胞Cの位置は捕捉プレート30の貫通孔の位置に固定され、貫通孔の座標があらかじめ記憶されていれば、キャピラリ針10を細胞Cの位置へ正確に移動させることが可能となる。
【0005】
ところで、吸引によって細胞Cの位置を固定する場合には、細胞の大きさと貫通孔の大きさとの関係を適切に調整することが困難である。すなわち、例えば図14に示すように、細胞Cの大きさに対して捕捉プレート30の貫通孔が大きすぎる場合には、吸引により細胞Cそのものが貫通孔から吸引される虞がある。また、例えば図15に示すように、細胞Cの大きさに対して捕捉プレート30の貫通孔が小さすぎる場合には、確実に細胞Cの位置を固定することができず、キャピラリ針10の接触に伴って細胞Cが動いてしまうことがある。
【0006】
そこで、例えば特許文献1においては、捕捉プレートに直径が小さい貫通孔を穿設するとともに、貫通孔の周囲に直径が大きい凹み部を設けることが記載されている。すなわち、特許文献1に記載の捕捉プレートにおいては、周囲より高さが低くなった円形平面の凹み部の中心に貫通孔が設けられている。このような捕捉プレートによれば、貫通孔からの吸引により細胞が捕捉プレートに吸着されると同時に、凹み部によって細胞の位置が確実に固定される。
【0007】
【特許文献1】特開2005−318851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、一般に細胞の細胞膜は柔軟性に富んでいるため、キャピラリ針を突き出しても破れにくく、薬液を確実に細胞内に注入することが困難であるという問題がある。具体的には、例えば図16に示すように、円形の凹み部と貫通孔によって細胞が確実に固定されていても、キャピラリ針の突き出しに伴って細胞の上側細胞膜が細胞内まで伸張し、キャピラリ針先端の細胞内への進入が妨げられることがある。そして、この状態でキャピラリ針先端から薬液が吐出されても、薬液は細胞内へ注入されることがなく、マイクロインジェクションは失敗に終わる。
【0009】
また、図16に示すように、上側細胞膜が下側細胞膜に接触する程度にまでキャピラリ針の突き出し量を大きくすれば、上側細胞膜が破れてキャピラリ針の先端が細胞内へ進入すると考えられるが、この場合には、キャピラリ針先端が下側細胞膜にほぼ当接しているため、キャピラリ針先端と下側細胞膜の間に薬液を注入するのに十分な空間がなくなってしまう。
【0010】
さらに、キャピラリ針の突き出し量を大きくしすぎると、キャピラリ針の先端が下側細胞膜も貫通し、細胞外で薬液が吐出されてしまう虞があるとともに、キャピラリ針の先端が捕捉プレートに圧接されて破損してしまうことがある。特に、マイクロインジェクションにおいては、対象となる細胞が数μmから数十μm程度の大きさであるため、キャピラリ針の移動も微小なものとなる。このため、例えば1〜2μm程度の誤差であっても、キャピラリ針が捕捉プレートに圧接されることがあり、キャピラリ針が破損する可能性が大きい。
【0011】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、細胞内に確実に薬液を注入するとともに、キャピラリ針の先端を保護することができるマイクロインジェクション装置、捕捉プレート、およびマイクロインジェクション方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明は、細胞に物質を注入するマイクロインジェクション装置であって、細胞を捕捉して位置を固定する捕捉プレートと、前記捕捉プレートによって捕捉された細胞に物質を注入するキャピラリ針と、前記キャピラリ針を長手方向先端側へ突き出した後、長手方向根元側へ引き上げる移動機構部と、前記移動機構部によって前記キャピラリ針が所定位置まで引き上げられた際に、前記キャピラリ針の先端から物質を吐出させる吐出制御部とを有する構成を採る。
【0013】
この構成によれば、キャピラリ針が突き出される際に上側の細胞膜を破るとともに、キャピラリ針が引き上げられてキャピラリ針の先端と下側の細胞膜との間に空間ができたタイミングでキャピラリ針の先端から物質を吐出する。このため、細胞膜が破られる前に物質が吐出されたり、物質を注入するのに十分な空間が細胞内に形成されていない状態で物質が吐出されたりすることがなく、細胞内に確実に薬液を注入することができる。
【0014】
また、本発明は、上記構成において、前記捕捉プレートは、細胞を捕捉する複数の捕捉孔があらかじめ定められた座標に形成される構成を採る。
【0015】
この構成によれば、細胞を捕捉する捕捉孔の座標があらかじめ定められているため、捕捉プレートを移動させて捕捉孔の位置をキャピラリ針の先端が到達する位置に合わせることが容易であり、捕捉孔に捕捉された細胞を対象としてマイクロインジェクションを行うことができる。
【0016】
また、本発明は、上記構成において、前記捕捉孔は、平面視形状が円形であり、直径が細胞の直径の70〜80%に相当する構成を採る。
【0017】
この構成によれば、細胞に対する捕捉孔の直径が小さすぎもせず大きすぎもせず、捕捉孔によって細胞を確実に固定することができる。
【0018】
また、本発明は、上記構成において、前記捕捉プレートは、いずれか一方の面に細胞を捕捉する平面部と、前記平面部のいずれか他方の面の周囲に密閉された空間が形成されるように前記平面部を支持する脚部とを有し、前記平面部は、細胞を捕捉する一方の面が円柱形状に陥没する複数の捕捉孔を備える構成を採る。
【0019】
この構成によれば、平面部を挟む両側の空間は、平面部によって遮断されているため、平面部に貫通孔を設けて一方の空間を負圧状態にすれば、他方の空間に存在する細胞を捕捉孔に吸着することができる。
【0020】
また、本発明は、上記構成において、前記捕捉孔は、底面に前記平面部を貫通する貫通孔が形成される構成を採る。
【0021】
この構成によれば、貫通孔が平面部を挟む両側の空間の通路となるため、一方の空間を負圧状態にすることにより、他方の空間に存在する緩衝液を吸引し、これに伴って緩衝液中の細胞を捕捉孔に吸着することができる。
【0022】
また、本発明は、上記構成において、前記貫通孔は、直径が1〜2μmまたは細胞の直径の10〜20%に相当する構成を採る。
【0023】
この構成によれば、細胞に対する貫通孔の直径が大きすぎることがなく、細胞が貫通孔内へ吸引されてしまうことを防止することができる。
【0024】
また、本発明は、上記構成において、前記捕捉孔は、底面の前記キャピラリ針が前記移動機構部によって突き出された際の先端到達位置付近にさらに円柱形状に陥没するリセス部が形成される構成を採る。
【0025】
この構成によれば、キャピラリ針が突き出される際の移動に誤差が生じた場合でも、過度に突き出されたキャピラリ針が捕捉孔の底面に接触することがなく、キャピラリ針の先端を保護し破損を防止することができる。
【0026】
また、本発明は、上記構成において、前記リセス部は、底面の直径が3〜4μmかつ深さが2〜3μmの円柱形状に前記捕捉孔の底面が陥没して形成される構成を採る。
【0027】
この構成によれば、キャピラリ針の位置の微調整や突き出しに誤差が生じても、十分にキャピラリ針の先端を保護することができる。
【0028】
また、本発明は、物質を注入するために緩衝液中の細胞を捕捉して位置を固定する捕捉プレートであって、当該捕捉プレートを貫通し、直径が細胞の直径と比較して十分小さい貫通孔と、前記貫通孔付近に捕捉された細胞に物質を注入するキャピラリ針の先端到達位置付近が円柱形状に陥没するリセス部とを有する構成を採る。
【0029】
この構成によれば、捕捉プレートを挟む一方の空間を負圧状態にすることにより、捕捉プレートを挟む他方の空間に存在する細胞を貫通孔を介して吸着することができるとともに、キャピラリ針が突き出される際の移動に誤差が生じた場合でも、過度に突き出されたキャピラリ針が捕捉プレートに接触することがなく、キャピラリ針の先端を保護し破損を防止することができる。
【0030】
また、本発明は、細胞を捕捉して位置を固定する捕捉プレートと、前記捕捉プレートによって捕捉された細胞に物質を注入するキャピラリ針とを備えたマイクロインジェクション装置におけるマイクロインジェクション方法であって、前記キャピラリ針を長手方向先端側へ突き出す突出ステップと、前記突出ステップ後、前記キャピラリ針を長手方向根元側へ引き上げる引上ステップと、前記引上ステップにおいて前記キャピラリ針が所定位置まで引き上げられた際に、前記キャピラリ針の先端から物質を吐出する吐出ステップとを有するようにした。
【0031】
この方法によれば、キャピラリ針が突き出される際に上側の細胞膜を破るとともに、キャピラリ針が引き上げられてキャピラリ針の先端と下側の細胞膜との間に空間ができたタイミングでキャピラリ針の先端から物質を吐出する。このため、細胞膜が破られる前に物質が吐出されたり、物質を注入するのに十分な空間が細胞内に形成されていない状態で物質が吐出されたりすることがなく、細胞内に確実に薬液を注入することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、細胞内に確実に薬液を注入するとともに、キャピラリ針の先端を保護することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
本発明の骨子は、キャピラリ針が最大限に突き出された後、引き上げ方向の移動が開始されてから薬液を吐出するとともに、捕捉プレートのキャピラリ針長手方向の延長線上付近に窪みを設けてキャピラリ針の先端と捕捉プレートの接触を防止することである。以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0034】
図1は、本発明の一実施の形態に係る自動マイクロインジェクション装置100の構成を模式的に示す図である。同図に示す自動マイクロインジェクション装置100は、キャピラリ針101、シャーレ102、捕捉プレート103、ステージ104、照明105、吸引部106、ステージ移動機構部107、キャピラリ針移動機構部108、捕捉座標記憶部109、制御部110、吐出機構部111、CCD(Charge Coupled Device)カメラ112、および倒立顕微鏡113を有している。
【0035】
キャピラリ針101は、キャピラリ針移動機構部108に取り付けられ、水平面上を移動するとともに、長手方向に突き出されたり引き上げられたりする。そして、キャピラリ針101は、内部に保持している薬液を吐出機構部111から吐出圧が加えられるタイミングで吐出する。
【0036】
シャーレ102は、高さに対して底面の直径が大きい略円柱状の容器であり、細胞が生存可能な緩衝液で満たされている。シャーレ102は、ステージ104上に載置されており、ステージ104とともに水平面上を移動する。
【0037】
捕捉プレート103は、シャーレ102の中央に収容され、シャーレ102の底面と平行な平面部に設けられた捕捉孔の位置で緩衝液中の細胞を捕捉する。捕捉プレート103の脚部とシャーレ102の底面との間は密閉されており、捕捉プレート103のシャーレ102底面側と捕捉プレート103の上側とは捕捉プレート103の捕捉孔のみを介して連続している。捕捉プレート103の具体的な形状および機能については、後に詳述する。
【0038】
ステージ104は、ステージ移動機構部107に固定され、上面にシャーレ102を載置可能となっている。そして、ステージ104は、ステージ移動機構部107の制御によって、捕捉プレート103によって捕捉されたインジェクション対象の細胞が照明105の鉛直下方かつ倒立顕微鏡113のレンズの鉛直上方に位置するように水平面上を移動する。なお、ステージ104は、CCDカメラ112が捕捉プレート103上の細胞を撮影可能なように、透明な材料で製造されているか、または、捕捉プレート103が位置する中央部分に撮影用の穴が設けられている。
【0039】
照明105は、捕捉プレート103に捕捉された細胞を照らす光源であり、倒立顕微鏡113のレンズの鉛直上方に設けられている。照明105の位置は、常に固定されている。
【0040】
吸引部106は、捕捉プレート103のシャーレ102底面側から緩衝液を吸引し、捕捉プレート103のシャーレ102底面側を負圧状態にする。
【0041】
ステージ移動機構部107は、制御部110からの指示に従ってステージ104を水平面上に移動させる。具体的には、ステージ移動機構部107は、細胞が捕捉される捕捉プレート103の捕捉孔の座標が照明105の鉛直下方かつ倒立顕微鏡113のレンズの鉛直上方に位置するようにステージ104を移動させる。
【0042】
キャピラリ針移動機構部108は、インジェクション時のキャピラリ針101の先端が照明105の鉛直下方かつ倒立顕微鏡113のレンズの鉛直上方に位置するようにキャピラリ針101を水明面上に移動させる。また、キャピラリ針移動機構部108は、キャピラリ針101の水平面上の移動が完了した後、キャピラリ針101を長手方向の先端側へ突き出し、その後、キャピラリ針101を長手方向の根元側へ引き上げる。このとき、キャピラリ針移動機構部108は、キャピラリ針101の長手方向の変位を制御部110へ通知する。
【0043】
捕捉座標記憶部109は、シャーレ102内の捕捉プレート103に設けられた捕捉孔の座標を記憶する。換言すれば、捕捉座標記憶部109は、細胞が捕捉される捕捉座標をあらかじめ記憶する。
【0044】
制御部110は、捕捉座標記憶部109から捕捉孔の座標を読み出し、読み出した座標を照明105の鉛直下方かつ倒立顕微鏡113のレンズの鉛直上方に位置させるようにステージ移動機構部107へ指示する。また、制御部110は、ステージ104の位置が調整されると、キャピラリ針移動機構部108へキャピラリ針101の位置の微調整を支持する。
【0045】
さらに、制御部110は、キャピラリ針移動機構部108からキャピラリ針101の長手方向の変位の通知を受け、キャピラリ針101が最大限に突き出された後、所定の位置まで引き上げられた時に、吐出機構部111へ薬液の吐出を指示する。すなわち、制御部110は、キャピラリ針101が捕捉プレート103に最も接近した後、捕捉プレート103からキャピラリ針101の先端までの高さが所定の高さに達したタイミングで薬液の吐出を吐出機構部111へ指示する。
【0046】
吐出機構部111は、制御部110から薬液の吐出が指示されると、キャピラリ針101の内部に吐出圧を加え、キャピラリ針101の先端から薬液を吐出させる。
【0047】
CCDカメラ112は、倒立顕微鏡113によって拡大された細胞であって捕捉プレート103に捕捉された細胞に薬液が注入される様子を撮影する。また、CCDカメラ112は、薬液の注入後、細胞に生じた変化などを撮影する。
【0048】
倒立顕微鏡113は、照明105の鉛直下方を拡大可能な位置に設置され、キャピラリ針101の先端付近および捕捉プレート103に捕捉された細胞を拡大する。
【0049】
図2は、本実施の形態に係る捕捉プレート103の構成を示す平面図である。同図に示すように、捕捉プレート103の中央の平面部202には複数の捕捉孔201が形成されている。これらの捕捉孔201は、平面部202に規則的に配列されていても良いが、図2に示すようにランダムに配置されることにより、平面部202に亀裂を生じにくくさせ強度を確保することができる。特に、本実施の形態においては、平面部202を挟んで一方の側(すなわちシャーレ102底面側)が負圧状態となって、平面部202に圧力がかかるため、ある程度は平面部202の強度を確保しておく必要がある。
【0050】
また、平面部202における捕捉孔201の座標は、捕捉座標記憶部109によってあらかじめ記憶されている。したがって、捕捉孔201の座標が照明105の鉛直下方かつ倒立顕微鏡113のレンズの鉛直上方に位置するようにステージ104を水平面上で移動させることにより、捕捉孔201に捕捉された細胞をインジェクション対象の細胞とすることができる。後述するように、この捕捉孔201の直径は、インジェクション対象の細胞の直径のおよそ70〜80%が望ましい。具体的には、例えば細胞の直径が16μm程度であれば、捕捉孔201の直径は12μm程度が望ましい。
【0051】
図3は、図2のAA線断面を示す断面図である。同図に示すように、捕捉プレート103は平面部202の周囲に脚部203が形成されており、脚部203がシャーレ102の底面に密着し、捕捉孔201内に設けられた貫通孔のみが周囲の緩衝液の通路となる。すなわち、図3においては図示を省略したが、捕捉孔201の底面には貫通孔が設けられており、平面部202の下側が負圧になることにより、平面部202の上側の緩衝液は、捕捉孔201の底面に設けられた貫通孔を通路として平面部202の下側へ吸引される。このとき、緩衝液とともに緩衝液中の細胞が捕捉孔201に吸着され、捕捉孔201によって細胞が捕捉される。
【0052】
平面部202から捕捉孔201の底面までの深さは、細胞を確実に固定可能な深さであり、例えば細胞の直径が16μm程度であれば、3〜4μm程度が望ましい。したがって、平面部202の厚さは、捕捉孔201の深さより大きいことが要求され、例えば10μm程度とされる。
【0053】
図4は、本実施の形態に係る捕捉孔201の構成を示す平面図である。同図に示すように、捕捉孔201内には、複数の貫通孔201aが形成されるとともに、円形のリセス部201bが設けられている。なお、貫通孔201aは、捕捉孔201内に1つだけ形成しても良く、捕捉孔201内に複数の貫通孔201aを形成する場合にも、その配置は、図4に示すものに限定されない。
【0054】
貫通孔201aの直径は、捕捉対象の細胞の直径と比較して十分に小さく、例えば1〜2μm程度である。または、細胞の直径に対して貫通孔201aの直径を10〜20%程度としても良い。これらの貫通孔201aは、捕捉孔201の下側が負圧となった際に、緩衝液の通路となり細胞を吸着する。本実施の形態においては、1つの捕捉孔201内に複数の貫通孔201aを形成することにより、細胞に対する吸着力を大きくしている。
【0055】
リセス部201bは、捕捉孔201の底面とキャピラリ針101長手方向の延長線との交点を中心とした円形部分が陥没して形成される。すなわち、本実施の形態においては、図1に示したように、キャピラリ針101の長手方向が鉛直方向に対して所定の角度となるように設けられているため、リセス部201bは、捕捉孔201の中心からずれた位置に形成されているが、キャピラリ針101の長手方向が鉛直方向に一致していれば、リセス部201bは、捕捉孔201の中心に形成されることになる。
【0056】
リセス部201bは、キャピラリ針移動機構部108によってキャピラリ針101が突き出される際、突き出し量に誤差が生じて過大となった場合の逃げとして機能する。したがって、リセス部201bの直径は、キャピラリ針101の先端が接触し得る捕捉孔201の底面の範囲に応じて決定され、例えば3〜4μm程度にするのが望ましい。リセス部201bを設けることにより、キャピラリ針101の突き出し量が過大となった場合でも、キャピラリ針101の先端がリセス部201bの範囲内に収まって、捕捉プレート103に接触することがなく破損を防止することができる。
【0057】
図5は、図4のBB線断面を示す断面図である。図4および図5に示すように、リセス部201bは、捕捉孔201の底面が円柱状に陥没して形成される一方、貫通孔201aは、捕捉プレート103の捕捉孔201の底面を貫通して形成されている。リセス部201bの深さは、キャピラリ針101の突き出し量の誤差に応じて決定され、例えば2〜3μm程度にするのが望ましい。
【0058】
貫通孔201aは、捕捉孔201の底面を貫通することにより、捕捉プレート103がシャーレ102内に設置された際、平面部202を挟んだ両側の空間を連続させる唯一の通路となる。このため、平面部202の下側が負圧になれば、貫通孔201aによって平面部202の上側に存在する細胞が吸着される。
【0059】
図6は、上述した構成の捕捉孔201の直径と細胞捕捉力の関係の一例を示す図である。ここでは、細胞の平均直径を16μmとして細胞捕捉力を測定した。同図から明らかなように、捕捉孔201の直径が12μm程度のときに細胞捕捉力が最大となり、捕捉プレート103が最も効率良く細胞を捕捉することが分かる。捕捉孔201の直径12μmは、細胞の平均直径16μmの75%に相当し、上述したように、捕捉孔201の直径は、細胞の直径の70〜80%程度であるのが望ましいことが分かる。
【0060】
すなわち、捕捉孔201の直径が細胞に比して小さすぎると、細胞全体の大きさに対して捕捉孔201内に収まる部分が小さく、細胞を確実に固定することができない。反対に、捕捉孔201の直径が細胞に比して大きすぎると、細胞全体が捕捉孔201内に収まった上に細胞の周囲に余裕が生じ、この場合も細胞を確実に固定することができない。
【0061】
次いで、上記のように構成された自動マイクロインジェクション装置100によるインジェクション動作について、図7に示すフロー図を参照しながら説明する。
【0062】
インジェクション開始時には、シャーレ102内に捕捉プレート103が設置され、複数の細胞が生存する緩衝液が満たされている。この状態で、吸引部106によって捕捉プレート103のシャーレ102底面側の吸引が開始される(ステップS101)。吸引が開始されることにより、捕捉プレート103のシャーレ102底面側が負圧となり、シャーレ102内の緩衝液が捕捉プレート103の貫通孔201aを通過して捕捉プレート103のシャーレ102底面側へ流入する。これに伴って、緩衝液中の細胞が貫通孔201aに吸着され、捕捉孔201によって捕捉される。これにより、細胞は、捕捉プレート103の捕捉孔201の座標に固定されたことになる。
【0063】
一方、制御部110によって、すべての捕捉孔201の座標が捕捉座標記憶部109から読み込まれる(ステップS102)。上述したように、捕捉孔201には細胞が捕捉されているため、捕捉孔201の座標は細胞が捕捉された捕捉座標に他ならない。制御部110によって捕捉座標が読み込まれると、いずれか1つの捕捉座標が制御部110からステージ移動機構部107へ通知され、この捕捉座標をインジェクション対象の位置へ移動させるように指示される。すなわち、細胞が捕捉された捕捉座標が照明105の鉛直下方かつ倒立顕微鏡113のレンズの鉛直上方に位置するようにステージ104の位置を調整することがステージ移動機構部107に要求される。
【0064】
そして、ステージ移動機構部107によって、ステージ104の位置が調整される(ステップS103)。具体的には、ステージ移動機構部107によって、ステージ104が水平面上を移動し、ステージ104上のシャーレ102および捕捉プレート103が制御部110からの指示通りの位置に固定される。また、キャピラリ針移動機構部108によって、キャピラリ針101の先端が薬液吐出時に照明105の鉛直下方に位置するように、キャピラリ針101の水平方向の位置が微調整される(ステップS104)。
【0065】
ステージ104およびキャピラリ針101の水平方向の位置が調整されると、キャピラリ針移動機構部108によって、キャピラリ針101が長手方向の先端側へ突き出される(ステップS105)。キャピラリ針101長手方向の延長線上には、捕捉プレート103の捕捉孔201によって細胞が捕捉されている。したがって、キャピラリ針101が突き出されると、やがてキャピラリ針101の先端が細胞に接触する。具体的には、キャピラリ針101の先端が細胞の細胞膜を押圧し、図8に示すように、キャピラリ針101の先端が細胞301の上側細胞膜301aを貫通する。
【0066】
このとき、細胞301の上側細胞膜301aは、柔軟性に富んでいるため、キャピラリ針101の突き出しに伴って伸張するが、上側細胞膜301aが下側細胞膜301bに接するまで伸張すると、キャピラリ針101の先端付近では細胞膜が二重になり強度が向上する。これにより、上側細胞膜301aの伸張が抑制され、キャピラリ針101の先端が上側細胞膜301aを貫通する。すなわち、下側細胞膜301bが上側細胞膜301aを支えることにより、キャピラリ針101が上側細胞膜301aを貫通することができる。
【0067】
このようにキャピラリ針101に上側細胞膜301aを貫通させるために、キャピラリ針101が突き出される最中、キャピラリ針移動機構部108によって、キャピラリ針101の先端が捕捉孔201の底面から所定の高さに到達したか否かが判断される(ステップS106)。一般に、図10に示すように、キャピラリ針101の先端の高さが1μm程度にまでなると、薬液の導入率が大きくなることから、キャピラリ針101の先端と捕捉孔201の底面との距離が1μm程度になるまでキャピラリ針101を突き出せば、キャピラリ針101の先端が上側細胞膜301aを貫通すると考えられる。そこで、キャピラリ針移動機構部108によって、キャピラリ針101の先端が捕捉孔201の底面から例えば1μmの高さに到達したか否かが判断される。
【0068】
この結果、キャピラリ針101の先端が所定位置に到達すると(ステップS106Yes)、今度はキャピラリ針移動機構部108によって、キャピラリ針101が長手方向の根元側へ引き上げられ始める(ステップS107)。この段階では、まだキャピラリ針101の先端から薬液が吐出されることはなく、単にキャピラリ針101の先端によって上側細胞膜301aが破られたのみである。ただし、上側細胞膜301aが破られているため、この段階で、上側細胞膜301aの伸張によって薬液が細胞内に注入されない状況が回避されたことになる。
【0069】
そして、キャピラリ針101が引き上げられる最中、キャピラリ針移動機構部108から制御部110へキャピラリ針101の長手方向の変位が通知され、キャピラリ針101の先端が細胞の中心付近まで引き上げられると、制御部110によって、薬液を吐出するように吐出機構部111へ指示される。換言すれば、キャピラリ針101が最大限に突き出されてから所定の高さにまで引き上げられたタイミングで、薬液の吐出が制御部110から吐出機構部111へ指示される。
【0070】
そして、吐出機構部111によって、キャピラリ針101の内部に吐出圧が加えられ、キャピラリ針101の先端から薬液が吐出される(ステップS108)。このとき、キャピラリ針101の先端は、細胞の中心付近にまで引き上げられているため、図9に示すように、キャピラリ針101の先端と下側細胞膜301bとの間に薬液を注入するのに十分な空間がある。このため、キャピラリ針101の先端から吐出された薬液が細胞外に溢れ出ることがなく、確実に細胞内に注入される。
【0071】
キャピラリ針101の先端から薬液が吐出された後、キャピラリ針101が初期位置まで引き上げられると、制御部110によって、捕捉座標記憶部109から読み込まれたすべての捕捉座標についてインジェクションが完了したか否かが判断され(ステップS109)、まだ完了していない捕捉座標がある場合には(ステップS109No)、ステージ移動機構部107によるステージ104の移動から処理が繰り返される。こうして、すべての捕捉座標に捕捉された細胞のインジェクションが完了する。
【0072】
ところで、上述したように、キャピラリ針101を突き出す際には、先端が捕捉孔201の底面から1μm程度にまで接近する。このため、キャピラリ針移動機構部108による制御の誤差があると、比較的頻繁にキャピラリ針101の先端が捕捉孔201の底面の高さまで到達することがあると考えられる。しかし、本実施の形態においては、捕捉孔201の底面のキャピラリ針101長手方向の延長線上にリセス部201bが設けられているため、キャピラリ針101が過度に突き出された場合でも、先端が捕捉孔201の底面に接触することがない。
【0073】
すなわち、図11に示すように、キャピラリ針101の突き出しに誤差が生じ、キャピラリ針101の先端101aが上側細胞膜301aのみならず下側細胞膜301bまで貫通し、捕捉孔201の底面の高さにまで到達しても、先端101aは、リセス部201bに進入するのみで、捕捉プレート103に接触することがない。このため、キャピラリ針101の先端101aが破損することがない。
【0074】
また、本実施の形態においては、キャピラリ針101が最大限に突き出されたタイミングで薬液が吐出されるのではなく、キャピラリ針101が引き上げられている最中に薬液が吐出される。したがって、たとえ図11に示す状態となっても、キャピラリ針101の先端101aが細胞外にある状態で薬液が吐出されることがなく、確実に細胞内で薬液が吐出される。
【0075】
次に、本実施の形態に係る捕捉プレート103の製造方法について、図12を参照しながら説明する。図12は、捕捉プレート103の製造過程1〜8を示す図である。
【0076】
捕捉プレート103は、SOI(Silicon On Insulator)基板を用いて製造される。まず、レジストパターニングにより、捕捉孔201の形状がSOI基板に転写される(製造過程1)。そして、厚さ10μm程度の活性層シリコン層にRIE(Reactive Ion Etching)によって貫通孔201aが形成される(製造過程2)。同様に、RIEによってリセス部201bおよび捕捉孔201全体の円柱形状が形成される(製造過程3、4)。こうして、捕捉プレート103の捕捉孔201の形状が整えられる。
【0077】
そして、捕捉孔201が形成されたSOI基板全体が熱酸化によりシリコン酸化膜で保護された後(製造過程5)、脚部203に相当する部分がマスクされて平面部202の下側のシリコン酸化膜が緩衝フッ酸(BHF)によってエッチングされる(製造過程6)。引き続き、平面部202の下側の活性層シリコン層が水酸化カリウム(KOH)溶液によって異方性エッチングされ(製造過程7)、最後に全体のシリコン酸化膜が緩衝フッ酸(BHF)によって除去されて捕捉プレート103が完成する(製造過程8)。
【0078】
このように、本実施の形態に係る捕捉プレート103は、捕捉孔201がRIEによってエッチングされるため、微小な貫通孔201aやリセス部201bなども精度良く形成される。結果として、キャピラリ針101が過度に突き出された場合でも、正確な位置に形成されたリセス部201bによって、キャピラリ針101の先端を確実に保護することができる。
【0079】
以上のように、本実施の形態によれば、キャピラリ針が最大限に突き出された後、引き上げられる最中に薬液を吐出するとともに、細胞を捕捉する捕捉孔のキャピラリ針先端が到達する部分にはリセス部を形成しておく。このため、確実に細胞膜が破られるように、最大限に突き出された際のキャピラリ針と捕捉孔の底面との距離を小さくしてもキャピラリ針の先端がリセス部に進入するのみで破損することがなく、細胞内に薬液が注入される空間が形成されたタイミングで薬液を吐出することができる。結果として、細胞内に確実に薬液を注入するとともに、キャピラリ針の先端を保護することができる。
【0080】
(付記1)細胞に物質を注入するマイクロインジェクション装置であって、
細胞を捕捉して位置を固定する捕捉プレートと、
前記捕捉プレートによって捕捉された細胞に物質を注入するキャピラリ針と、
前記キャピラリ針を長手方向先端側へ突き出した後、長手方向根元側へ引き上げる移動機構部と、
前記移動機構部によって前記キャピラリ針が所定位置まで引き上げられた際に、前記キャピラリ針の先端から物質を吐出させる吐出制御部と
を有することを特徴とするマイクロインジェクション装置。
【0081】
(付記2)前記捕捉プレートは、
細胞を捕捉する複数の捕捉孔があらかじめ定められた座標に形成されることを特徴とする付記1記載のマイクロインジェクション装置。
【0082】
(付記3)前記捕捉孔は、
平面視形状が円形であり、直径が細胞の直径の70〜80%に相当することを特徴とする付記2記載のマイクロインジェクション装置。
【0083】
(付記4)前記捕捉プレートは、
いずれか一方の面に細胞を捕捉する平面部と、
前記平面部のいずれか他方の面の周囲に密閉された空間が形成されるように前記平面部を支持する脚部とを有し、
前記平面部は、
細胞を捕捉する一方の面が円柱形状に陥没する複数の捕捉孔を備えることを特徴とする付記1記載のマイクロインジェクション装置。
【0084】
(付記5)前記捕捉孔は、
底面に前記平面部を貫通する貫通孔が形成されることを特徴とする付記4記載のマイクロインジェクション装置。
【0085】
(付記6)前記貫通孔は、
直径が1〜2μmまたは細胞の直径の10〜20%に相当することを特徴とする付記5記載のマイクロインジェクション装置。
【0086】
(付記7)前記捕捉孔は、
底面の前記キャピラリ針が前記移動機構部によって突き出された際の先端到達位置付近にさらに円柱形状に陥没するリセス部が形成されることを特徴とする付記4記載のマイクロインジェクション装置。
【0087】
(付記8)前記リセス部は、
底面の直径が3〜4μmかつ深さが2〜3μmの円柱形状に前記捕捉孔の底面が陥没して形成されることを特徴とする付記7記載のマイクロインジェクション装置。
【0088】
(付記9)物質を注入するために緩衝液中の細胞を捕捉して位置を固定する捕捉プレートであって、
当該捕捉プレートを貫通し、直径が細胞の直径と比較して十分小さい貫通孔と、
前記貫通孔付近に捕捉された細胞に物質を注入するキャピラリ針の先端到達位置付近が円柱形状に陥没するリセス部と
を有することを特徴とする捕捉プレート。
【0089】
(付記10)細胞を捕捉して位置を固定する捕捉プレートと、前記捕捉プレートによって捕捉された細胞に物質を注入するキャピラリ針とを備えたマイクロインジェクション装置におけるマイクロインジェクション方法であって、
前記キャピラリ針を長手方向先端側へ突き出す突出ステップと、
前記突出ステップ後、前記キャピラリ針を長手方向根元側へ引き上げる引上ステップと、
前記引上ステップにおいて前記キャピラリ針が所定位置まで引き上げられた際に、前記キャピラリ針の先端から物質を吐出する吐出ステップと
を有することを特徴とするマイクロインジェクション方法。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、細胞内に確実に薬液を注入するとともに、キャピラリ針の先端を保護する場合に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】一実施の形態に係る自動マイクロインジェクション装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】一実施の形態に係る捕捉プレートの構成を示す平面図である。
【図3】一実施の形態に係る捕捉プレートの構成を示す断面図である。
【図4】一実施の形態に係る捕捉孔の構成を示す平面図である。
【図5】一実施の形態に係る捕捉孔の構成を示す断面図である。
【図6】捕捉孔の直径と細胞捕捉力の関係を示す図である。
【図7】一実施の形態に係るインジェクション動作を示すフロー図である。
【図8】一実施の形態に係るインジェクションの過程を説明する図である。
【図9】図8に続く図である。
【図10】針の高さと薬液の導入率の関係を示す図である。
【図11】一実施の形態に係るインジェクション時のキャピラリ針先端付近を示す拡大図である。
【図12】一実施の形態に係る捕捉プレートの製造方法を示す図である。
【図13】インジェクション時の細胞捕捉方法の一例を示す図である。
【図14】捕捉された細胞の様子の一例を示す図である。
【図15】捕捉された細胞の様子の他の一例を示す図である。
【図16】インジェクション時の細胞の形状を示す図である。
【符号の説明】
【0092】
101 キャピラリ針
102 シャーレ
103 捕捉プレート
104 ステージ
105 照明
106 吸引部
107 ステージ移動機構部
108 キャピラリ針移動機構部
109 捕捉座標記憶部
110 制御部
111 吐出機構部
112 CCDカメラ
113 倒立顕微鏡
201 捕捉孔
201a 貫通孔
201b リセス部
202 平面部
203 脚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞に物質を注入するマイクロインジェクション装置であって、
細胞を捕捉して位置を固定する捕捉プレートと、
前記捕捉プレートによって捕捉された細胞に物質を注入するキャピラリ針と、
前記キャピラリ針を長手方向先端側へ突き出した後、長手方向根元側へ引き上げる移動機構部と、
前記移動機構部によって前記キャピラリ針が所定位置まで引き上げられた際に、前記キャピラリ針の先端から物質を吐出させる吐出制御部と
を有することを特徴とするマイクロインジェクション装置。
【請求項2】
前記捕捉プレートは、
細胞を捕捉する複数の捕捉孔があらかじめ定められた座標に形成されることを特徴とする請求項1記載のマイクロインジェクション装置。
【請求項3】
前記捕捉孔は、
平面視形状が円形であり、直径が細胞の直径の70〜80%に相当することを特徴とする請求項2記載のマイクロインジェクション装置。
【請求項4】
前記捕捉プレートは、
いずれか一方の面に細胞を捕捉する平面部と、
前記平面部のいずれか他方の面の周囲に密閉された空間が形成されるように前記平面部を支持する脚部とを有し、
前記平面部は、
細胞を捕捉する一方の面が円柱形状に陥没する複数の捕捉孔を備えることを特徴とする請求項1記載のマイクロインジェクション装置。
【請求項5】
前記捕捉孔は、
底面に前記平面部を貫通する貫通孔が形成されることを特徴とする請求項4記載のマイクロインジェクション装置。
【請求項6】
前記貫通孔は、
直径が1〜2μmまたは細胞の直径の10〜20%に相当することを特徴とする請求項5記載のマイクロインジェクション装置。
【請求項7】
前記捕捉孔は、
底面の前記キャピラリ針が前記移動機構部によって突き出された際の先端到達位置付近にさらに円柱形状に陥没するリセス部が形成されることを特徴とする請求項4記載のマイクロインジェクション装置。
【請求項8】
前記リセス部は、
底面の直径が3〜4μmかつ深さが2〜3μmの円柱形状に前記捕捉孔の底面が陥没して形成されることを特徴とする請求項7記載のマイクロインジェクション装置。
【請求項9】
物質を注入するために緩衝液中の細胞を捕捉して位置を固定する捕捉プレートであって、
当該捕捉プレートを貫通し、直径が細胞の直径と比較して十分小さい貫通孔と、
前記貫通孔付近に捕捉された細胞に物質を注入するキャピラリ針の先端到達位置付近が円柱形状に陥没するリセス部と
を有することを特徴とする捕捉プレート。
【請求項10】
細胞を捕捉して位置を固定する捕捉プレートと、前記捕捉プレートによって捕捉された細胞に物質を注入するキャピラリ針とを備えたマイクロインジェクション装置におけるマイクロインジェクション方法であって、
前記キャピラリ針を長手方向先端側へ突き出す突出ステップと、
前記突出ステップ後、前記キャピラリ針を長手方向根元側へ引き上げる引上ステップと、
前記引上ステップにおいて前記キャピラリ針が所定位置まで引き上げられた際に、前記キャピラリ針の先端から物質を吐出する吐出ステップと
を有することを特徴とするマイクロインジェクション方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−271866(P2008−271866A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−119924(P2007−119924)
【出願日】平成19年4月27日(2007.4.27)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】