説明

マイクロエマルジョンおよび気道疾患を防ぐためのその使用

【課題】上気道感染症に関連する症状(例えば感冒)を予防又は低減する方法を提供する。
【解決手段】非極性脂質、少なくとも1つの極性溶媒、界面活性剤および極性脂質を含む新規マイクロエマルジョン。これらの構成要素のマイクロエマルジョンにより、浮遊微小粒子を実質的に取り込む環境を提供し、そのような粒子を閉じ込めるのに用いることができる。該マイクロエマルジョンは、哺乳類における浮遊微小粒子により間接的または直接的に引き起こされる症状を防ぐのに特に適応されている。さらに、該マイクロエマルジョンを含む組成物と、その組成物を投与することを含む処置方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規マイクロエマルジョンに関する。より詳細には、本発明は、哺乳類における症状を予防するのに有用である新規マイクロエマルジョンに関し、その症状は、間接的または直接的に浮遊微小粒子により引き起こされる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
空中浮遊アレルゲンへの暴露により引き起こされる気道疾患は、豊かな社会への主要な健康問題となっている。例えば、アレルギー性鼻炎(季節ごとの、通年性のおよび職業的な)の有病率は20%またはそれ以上であり、増加している。従って、米国喘息及びアレルギー基金(American asthma and Allergy Foundation)は近年、診療所開業医を訪れた年間約1700万人が、アレルギー性鼻炎に起因していると報告している。また、彼らは、3500万のアメリカ人が、花粉アレルゲンにアレルギーがあると報告している。罹患率およびこれらアレルギー反応自体が有する社会経済の因果関係のほかに、それらは、喘息を進行させる危険要因として考えられている。実際、気管支喘息の進行を妨げる一つの方法は、アレルギー性鼻炎状態を処置することである。
【0003】
上気道感染症(ウィルスおよびバクテリアにより引き起こされる)はまた、主要な健康問題である。例えば、感冒は、非常に蔓延している疾患である:感冒発症例の数は、0〜4歳の年齢群においては年5%と推定され、5〜19歳の年齢群においては年3発症例に減少する。これらの感染は、感冒の場合に顕著であり、喘息および「慢性閉塞性肺疾患」の再燃の主要な原因として考えられている。
【0004】
「非アレルギー性非感染性(血管神経性)鼻炎」は、蔓延している状態(アレルギー性鼻炎および上気道感染症と比較して)が少ない。それにもかかわらず、これが、鼻症状がある患者の一般的な鑑別診断である。
【0005】
花粉およびアレルゲン自体、ならびにウィルス、バクテリアおよび他の外生要因は、浮遊微小粒子として発生する。花粉は典型的には15〜60μmの直径を有する。一方、ウィルス粒子は、典型的には直径が0.1〜0.5μmであり、バクテリアおよび他の原核生物のサイズは、0.1〜約5μmと広範な範囲にわたる。タバコの煙、印刷用インクおよび「非アレルギー性非感染性(血管神経性)鼻炎」を生じうる職業的な因子は、広範な範囲のサイズの粒子とも考えられている。アレルギー性鼻炎、上気道感染症および「非アレルギー性非感染性(血管神経性)鼻炎」に関連する疾患プロセスおよび症状を生じるために、疾患を生じる粒子は、粘膜面に接触しなければならない。
【0006】
アレルギー性鼻炎に結びつくメカニズムは、吸入された花粉/アレルゲンが鼻粘膜上皮と接触すること、かつ鼻粘膜に存在する免疫反応性および炎症細胞との相互作用を含む。特異抗体(免疫グロブリン)は、これら細胞のある表面に位置している。アレルゲンはその細胞表面上のレセプターと架橋し、その結果、これらの細胞の活性化と、炎症性メディエータの放出を生じる。これらのメディエータは、順々に、粘膜中のある細胞と構造体(例えば、腺、血管、神経終末)に作用し、炎症とアレルギー性鼻炎の症状、すなわち、鼻の痒み/くしゃみ、分泌および閉塞とを生じる。
【0007】
上気道感染症は、ウィルスおよびバクテリアが上気道の粘膜と相互作用することにより生じる。最も一般的な原因は、ライノウイルスであり、このライノウィルスは、特定な粘膜レセプターに結合し、炎症反応が引き起こされる。このプロセスは、順々に、感冒の症状(くしゃみ、水っぽい分泌、減少した鼻開通、熱と頭痛を伴う風邪症状)を引き起こす。
【0008】
「非アレルギー性非感染性(血管神経性)鼻炎」は、時々アレルゲンおよび感染性因子以外の浮遊微小粒子により引き起こされる。病態生理学的プロセスにより、アレルギー性鼻炎のものと非常に類似の徴候を生じる。しかしながら、このことは明確には理解されていない。
【0009】
アレルギー性鼻炎のようなタイプIのアレルギー疾患の最も良い処置は、アレルゲンを避けることであろう。しかしながら、この方法は、多かれ少なかれ、特に空中浮遊アレルゲン(花粉により運ばれるものも含む)には、不可能である。加えて、この論理的思考の方向は、「非アレルギー性非感染性(血管神経性)鼻炎」を引き起こす感染性因子および粒子に適用される。
【0010】
アレルギー性鼻炎のための薬物学的処置は、典型的には、前記に概説したような炎症経路を介在することを目的とする。一般的に使用される現在の処置には、局所的、経口的および全身的グルコ−コルチコステロイド、局所的および経口的抗ヒスタミン剤、局所的クロモグリク酸塩、経口的ロイコトリエン−アンタゴニスト、局所的および経口的な充血除去剤、局所的および経口的な抗コリン作用薬、ならびに免疫療法、すなわち、増加した忍容性の状態を生じるための、関連したアレルゲンへの繰り返し暴露を含む。しかしながら、アレルギー性鼻炎の全ての症状を処置または減じる、単一の入手可能な医薬品/処置は無く、そのような炎症調節処置は、副作用の可能性が無くはない。最も成功している処置は、局所的コルチコステロイドであろう。しかし、局所的コルチコステロイドの使用には、局所的および全身的な悪影響のリスクの可能性が付随する。抗ヒスタミン剤製剤が一般に用いられ、しかし、その効能は限られている。局所的充血除去剤(decongestent)が用いられるが、当該分野の医師には勧められていない。
【0011】
抗生物質およびバクテリアを標的とする他の化学療法薬、ウィルス、特にインフルエンザウィルスを標的とする抗ウィルス化合物ならびに局所的および経口的な充血除去剤以外には、上気道感染症に対する確立された薬物学的処置は現在のところ存在しない。
【0012】
抗生物質は、バクテリアにより引き起こされるある種の上気道感染症を処置するのに用いることができるであろう。しかしながら、経口的および鼻充血除去剤(アルファ−アゴニスト)を除いて、感冒(ウィルス感染により引き起こされる)に利用できる処置は無い。ノイラミニダーゼ阻害剤ザナミビル(zanamivir)は、インフルエンザAおよびBの処
置に近年導入されたが、その効能は限られている。
【0013】
「非アレルギー性非感染性(血管神経性)鼻炎」のための処置には、局所的グルココルチコステロイド、局所的抗コリン作用薬および局所的カプサイチンを含む。しかしながらこれらの処置に共通するのは、その限られた効能である。
【0014】
花粉を含む浮遊微小粒子の鼻粘膜暴露を克服する試みは、米国特許第US6,109,262(特許文献1)に示されている。特別の粘着性鼻フィルターを用い、そのフィルターを鼻経路内に物理的に配置し、浮遊微小粒子を集める。開示されているその方法およびフィルターは、治療的、防御的または予防的な使用であると言われている。
【0015】
Inter. Arch. Allergy Immunol. 121:85, 2000(非特許文献1)は、アレルギー症状を減じるため、季節ごとのアレルギー性鼻炎を有する患者の鼻粘膜に鉱油を定期的に適用することの実用性を教示している。この文献においては、脂肪酸がアレルギー性鼻炎を予防するのに有用であろうことが示唆されている。脂肪、例えば、ある種のトリグリセリドと油の鼻粘膜への局所的適用は、また、鼻粘膜の感想を処置するのに市販されている(Nozoil(登録商標)、Pharmacure Health Care AB, Sweden)。
【0016】
ドイツ特許第DE20016125号(特許文献2)において、吸入アレルギー反応、特に花粉症の予防のための鼻軟膏が、示されている。その軟膏は、飽和炭化水素とタンニンの混合物を含み、形成された機械的障壁フィルムが、アレルゲンが鼻粘膜に入るのを防いでいる。同様に、特開平07−258070号(特許文献3)には、アレルギー性鼻炎を処置するための鼻洗浄剤が記載されている。鼻洗浄剤は、pH3.5〜5.5の油/水タイプのエマルジョンからなり、鼻腔中に噴霧した後に油状フィルムを形成する。ドイツ特許第DE20016125号(特許文献4)でも同様に、油を鼻粘膜上に塗布し、非均質フィルムを形成している。
【0017】
細胞への大部分のライノウィルス亜型の結合は、細胞レセプター、細胞間接着分子1(ICAM−1)に左右される。JAMAは(1999,5月19;281(19):1797-804(非特許文献
2))、溶液として、または粉体として吸入された組換え可溶性ICAM-1は、実験的なライノウィルス感冒の重篤度を減じることを教示している。
【0018】
上記方法は、粘膜面に到達する前に浮遊微小粒子を抽出すること、または、空気および表面の間に障壁を形成することを試みているが、いずれも特に効果的ではなく、広い範囲の炎症状態に対して効果的であると一般的に示されたものは無い。特に、形成された油のフィルムは、効果的な防御を形成していることが確認されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】米国特許第6,109,262号明細書
【特許文献2】独国特許発明第20016125号明細書
【特許文献3】特開平07−258070号公報
【特許文献4】独国特許発明第20016125号明細書
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Inter. Arch. Allergy Immunol. 121:85, 2000
【非特許文献2】JAMA, 1999,5月19日;281(19):1797-804
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
従って、この局所的領域にも、新規でより有効な処置に対して、明白な必要性が存在していた。さらに、アレルギー性鼻炎のように、予防的な意味で、上気道感染症に関連する上記症状(例えば感冒)を予防または低減する方法の必要性が存在していた。単一の組成物が広い範囲のこのような状態に対して効果的であれば、もっとも望ましいであろう。
【0022】
浮遊微小粒子を捕獲することが可能な製剤を提供し、それにより、上述の問題を防止することが、したがって、明らかに有利であろう。
【0023】
さらに、浮遊微小粒子を捕獲可能で、外側粘膜細胞膜とのそれらの相互作用を妨害または阻害可能な製剤を提供することが有利であろう。
【0024】
さらに、飲み下されたり、またはくしゃみをする(すなわち、それとともに身体から除去される)とき、粘液の後に続く製剤を提供することが有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0025】
これらの目的は、界面活性剤、少なくとも1つの極性溶媒、非極性脂質および極性脂質を含むマイクロエマルジョンにより達成される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、くしゃみ、分泌および鼻うっ血を参照する全体の鼻症状スコアの評価を示す。
【図2】図2は、α2−マクログロブリンの評価を示す。
【図3】図3は、4つの製剤についての組成と粘度を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
我々はここに、驚いたことに、ウィルス、バクテリア、花粉、アレルゲン、ほこり、かび、真菌胞子、動物の鱗屑および他の固形エアロゾル粒子に例示される浮遊微小粒子が、特定のマイクロエマルジョンにより捕獲され得ること、それによって呼吸管状態を減じる傾向を見出した。同様のマイクロエマルジョンは、これまでには開示されていなかった。
【0028】
第1の観点において、本発明は従って、非極性脂質、少なくとも1つの極性溶媒および界面活性剤を含むマイクロエマルジョンであって、極性脂質をさらに含むことを特徴とするマイクロエマルジョンを提供する。
【0029】
さらなる観点において、本発明は、浮遊微小粒子を閉じ込めるのに適するマイクロエマルジョンであって、非極性脂質、少なくとも1つの極性溶媒、界面活性剤、極性脂質ならびに任意に不活性担体および/もしくは賦形剤を含むか、またはそれらからなり、前記粒子を実質的に取り込むような環境であることを特徴とするマイクロエマルジョンを提供する。ひとつの好ましい実施形態において、これらは、マイクロエマルジョンの単独の構成要素である。
【0030】
本発明のマイクロエマルジョンは、哺乳類患者への適用に適するように組成物として製剤化されたとき、それ自体、および薬剤と組み合わせたときの両方で、非常に有用である。別の観点において、本発明は、従って、例えば、哺乳類の鼻、目、耳、咽頭および/または喉頭の表在性膜上皮(peripheral membrane lining)へ投与するのに適する組成物であって、前記組成物が、医薬的に効果的な量のマイクロエマルジョン、特に本発明のマイクロエマルジョンを含むことを特徴とする組成物を提供する。そのような組成物は、ひとつの実施形態において、薬物剤も含んでもよい。
【0031】
さらなる観点において、本発明は、直接的または間接的に浮遊微小粒子により引き起こされた患者における気道疾患を予防する方法を提供する。その方法は、前記患者の少なくとも1つの表面を、本発明のマイクロエマルジョンまたは組成物で接触させることを含む。さらなる観点において、本発明は、浮遊微小粒子が哺乳類の外側粘膜細胞膜に到達するのを防ぐ方法を提供する。その方法は、前記哺乳類の前記外側粘膜細胞膜に、予防的に有効量の本発明のマイクロエマルジョンまたは組成物を投与する工程を含む。
【0032】
さらなる観点において、本発明は、治療における使用のための本発明のマイクロエマルジョンを提供し、さらなる観点において、本発明は、空中浮遊花粉、バクテリアおよび/またはウィルスにより引き起こされた気道疾患を含む、直接的または間接的に浮遊微小粒子により引き起こされた疾患の処置または予防のための薬品の製造における、本発明のマイクロエマルジョンまたは組成物の使用を提供する。
【0033】
理論に縛られることなく、本発明は、空中浮遊粒子固有の性質を利用していると考えられる。典型的には、そのような粒子は疎水性核を有し得、同時に静電気的に帯電している。それにより、前記粒子は親水性特性を受ける。しかしながら、その電荷は鼻に入り、粘液細胞膜に接触するとすぐ失われ、その結果、疎水性特性が優勢になる。従って、空中浮遊のとき、そのような粒子(花粉等)が親水性表面を有し、それは親水性環境内で実質的に必ず捕獲される。
【0034】
本発明者らは、ここに、油は浮遊微小粒子により引き起こされる症状を効果的に防がない、というのは、そのような粒子は油によって効果的に濡らされないからであると考えている。油は、粒子上の表面静電荷を放電することができず、従ってそれらを濡らしたり、または封入することができない。
【0035】
同様に、水性システムは、粒子の表面を放電するが、そのとき、水のような極性媒質によって効果的に封入されない疎水性表面は暴露される。したがって、本マイクロエマルジョンの性質は、それらが適用しても「壊れて」油フィルムを形成しないが、マイクロエマルジョンのままであるようなもので実質的にあることに留意することが、重要である。
【0036】
マイクロエマルジョンは、典型的には、透明溶液のように見えるが、1つの液相から別の液相への熱力学的に安定な分散である。前記マイクロエマルジョンにおける非極性と極性(例えば、油と水)範囲は、乱雑で複雑な微細構造を示す。油/水界面の非常に低い界面張力、約100nmまたはそれ以下の小さな液滴直径ならびに、適切なサイズの水範囲が、浮遊微小粒子を捕獲するのに有利な特性である。
【0037】
本発明のマイクロエマルジョンにおける平均(最頻値)液滴直径(直径)は、通常5〜200nm、特に10〜150nm、より好ましくは20〜100nmであろう。前記組成物のマイクロエマルジョンの性質を失わないようにするため、検出不可能な割合の液滴(例えば0.1%未満)は500nmを超え、好ましくはこれ以内は350nmを超え、最も好ましくは0.1%以内は250nmを超える。液滴直径は、当該分野の当業者によく知られた技術で測定できる。特に、レーザー光散乱/回折方法は標準的である。レイリー散乱または低温電子顕微鏡(cryo-TEM)のような技術を必要とする方法は、しかしながら、約300nmより小さい粒子サイズを検査する必要がある。
【0038】
発明者の非結合理論は、浮遊微小粒子が、本発明を用いてもたらされた特定の自己集合親水性/疎水性構造体により捕捉されることができるということである。本発明のマイクロエマルジョンは、環境を提供し、その環境は、実質的にその粒子を取り込む(取り囲む)ことができる。
【0039】
加えて、本発明のマイクロエマルジョンは、薬物等のような活性剤を含有する必要はない。この実施形態において、このようにして得た剤から由来する副作用は無い。
【0040】
さらに、粘度を減少させるために大量の極性溶媒を含有する噴霧可能なマイクロエマルジョンが提供される。加えて、本発明のマイクロエマルジョンは、前記粘膜上に均質的に広げることが可能であり、飲み下されたり、またはくしゃみをしたときに粘液の後に、防御的バリアとしてのみならず、浮遊微小粒子用捕獲剤としても機能する。この意味で、前記粒子は効果的に捕獲され、粘膜面との相互作用から防がれ、その後、相互作用領域から除去される。
【0041】
本発明によるマイクロエマルジョンは、外側に開いた体腔全てを並べる粘膜細胞膜の保護に効果的である。従って、鼻、目、耳、咽頭および喉頭の表在性膜上皮は保護されうる。しかしながら、鼻腔、咽頭および/または喉頭における粒子を捕獲するのに用いられるのが好ましい。
【0042】
マイクロエマルジョンは、界面活性剤の界面薄膜により安定化された、2つの不混和性液体の、熱力学的に安定な、透明な分散として定義することができる。これに関しては、マイクロエマルジョンは、界面活性剤および共界面活性剤の適切な量を含有する2つの不混和性液体の透明な熱力学的安定な分散である。
【0043】
マイクロエマルジョンは、一般に、少なくとも1つの連続相と、不連続、分散「液滴」を典型的には含む更なる相とを含む。特定のエマルジョンに選択された脂質の種類および割合に依り、これらの液滴は、乱雑で、「液体の」液滴であり、かつ/または、規則的もしくは不規則的な内部構造(例えば、立方体または六方晶系の液晶、薄板状または「海綿状」相のもののような)を有していてもよいことは、当該分野の当業者に明らかであろう。そのような液滴の全ては、ここに記載のマイクロエマルジョンの範囲に含まれることが明らかであろう。1つの好ましい実施形態において、液滴は、液相非極性脂質を含む。
【0044】
明細書および請求の範囲における界面活性剤の意味は、当該分野の当業者によく知られた現在よく使われているものに従う。良好な界面活性剤は、マイクロエマルジョンの大量な分散相の両方において、低い溶解性を有するべきである。
【0045】
前記界面活性剤は、通常、長鎖疎水性尾部と、小さな親水性頭部基を有する有機ポリマーであり、アニオン性、非イオン性、カチオン性またはアンフェノテリック(ampheoteric)であってもよい。イオン性界面活性剤より人間に害が少ないので、非イオン性界面活
性剤が好ましい。
【0046】
適切な非イオン性界面活性剤は、ポリオキシエチレン化(ethylenated)アルキルフェ
ノール類(大部分は、p−オクチル−、p−ノニル−、p−ドデシル−、ジ−ノニルフェノール類)、ポリオキシエチレン化直鎖アルコール類、ポリオキシエチレン化ポリオキシプロピレングリコール類、ポリオキシエチレン化メルカプタン類、長鎖カルボン酸エステル類(天然脂肪酸、プロピレングリコール、ソルビトールのグリセリルおよびポリグリセリルエステル類、およびポリオキシエチレン化ソルビトールエステル類、ポリオキシエチレングリコールエステル類)およびアルカノールアミン類(ジエタノールアミン−、イソプロパノールアミン-脂肪酸縮合物)である。食用界面活性剤は、主に、グリセロール、ソルビトールおよびプロピレングリコールを元にしたエステルである。
【0047】
前記界面活性剤は、両親媒性化合物(例えば、ポリソルベート、ポロクサマー)または脂肪酸ポリオキシエチレンであるのが好ましい。前記両親媒性化合物は、ポリソルベート80が最も好ましい。
【0048】
適切なイオン性界面活性剤は、コハク酸エステル、クエン酸エステルおよびジアセチル酒石酸エステルである。レシチンは、正電荷を含有する好ましい界面活性剤である。
【0049】
所望の量の界面活性剤は、本発明のマイクロエマルジョンに用いられる他の要素に依る。しかしながら、界面活性剤濃度は、その臨界ミセル濃度(CMC)を常に超える。
【0050】
前記親水性−疎水性バランス、すなわち、親水性部分の疎水性部分に対するモル比は、水および油における界面活性剤の相互溶解性における温度最大値を有する。この最大値は、温度間隔を包含するよう適合され、その中で、例えば室温および身体温度付近で、本発明のマイクロエマルジョンは、用いられることが意図されている。前記界面活性剤の前記親水性−疎水性バランスは、7を越えないのが好ましい。従って、前記界面活性剤は、前記マイクロエマルジョンの0.1〜20%(wt/wt)、好ましくは1〜10%(wt/wt)を構成する。
【0051】
マイクロエマルジョンの2つの液体層の間の表面張力は、少なくとも1つの極性溶媒の添加により、さらに低くしてゼロに近づけることが可能である。従って、前記極性溶媒は、本発明のマイクロエマルジョンにおいて共界面活性剤として作用してもよく、前記マイクロエマルジョンシステムの安定性を向上させる小さな分子であるのが好ましい。極性溶媒の増量により、また、粘度を低下させ、より良い微小粘度が、マイクロエマルジョン液滴中で得られる。
【0052】
典型的には、そのような極性溶媒は、短鎖アルコール類、例えば、エタノールからブタノール、グリコール類、例えば、プロピレングリコール、または中鎖アルコール類、アミン類、または酸類である。好ましい極性溶媒は、プロピレングリコールおよび/またはポリエチレングリコールおよび/または生理的食塩水である。
【0053】
水および緩衝液水媒質は、また、マイクロエマルジョンシステム(様々な塩と緩衝液を含む)中の一つの相を別の相に可溶化するのに用いられてもよい。好ましくは、その塩は、アルカリおよびアルカリ土類ハロゲン化物、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウムまたは硫酸ナトリウムである。様々な緩衝液、例えばクエン酸塩緩衝液、リン酸緩衝液、HEPES、トリス緩衝液等を、そのような緩衝液がその目的に生理学的に許容可能な程度まで、用いることができる。
【0054】
明らかに、前記極性溶媒は、適用時に前記マイクロエマルジョンに含まれていてもよく、これは、本発明の好ましい観点を形成する。別の観点において、しかしながら、前記極性液体は、接触によりすぐ、粘膜面から、適用の間(例えば、脂質/界面活性剤混合物と溶媒の共適用により)または、液体(特に水性液体)の吸着のいずれかにより、適用時に前記マイクロエマルジョン中に組み込まれてもよい。この観点において、前記「マイクロエマルジョン」は、実際には,「マイクロエマルジョン前駆体」と理解できるが、両方の場合、本発明の結果と機能が等価であり、従って、文脈が示す場合、両方の観点が本明細書に包含されることが明らかであろう。しかしながら、「マイクロエマルジョン前駆体」が用いられる場合、これは、示された有利な効果を生じるのに少なくとも十分な程度に、ここに示すように真のマイクロエマルジョンを生じることが必要であろう。
【0055】
前記極性溶媒は、本発明のマイクロエマルジョン中に存在する場合、マクロエマルジョンの5から95%(wt/wt)、好ましくは10から55%(wt/wt)を構成する。また、前記少なくとも1つの極性溶媒は、pH5.5を超えるpHを有するのが好ましい。
【0056】
前記マイクロエマルジョン中の前記極性脂質は、適切な両親媒性アルコールもしくはアミン、ステロール(例えば、コレステロール)、脂溶性ビタミン、グリセリド、リン脂質、糖脂質、スフィンゴ脂質またはそれらの混合物であってもよい。存在する場合、前記グリセリドは、モノアシルグリセリド、例えばモノオレイン酸グリセリン、モノリノール酸グリセリンまたはグリセリルモノリネノレート(monolinenoleate)であるのが好ましい

【0057】
前記極性脂質は、本発明の前記マイクロエマルジョンの1から99%(wt/wt)、好ましくは10から75%(wt/wt)、最も好ましくは20から50%(wt/wt)を構成してもよい。
【0058】
単独の構成要素として、それ自体に、非極性脂質、少なくとも1つの極性溶媒、界面活性剤および極性脂質(任意に不活性担体または賦形剤と共に)からなる前記マイクロエマルジョンは、浮遊微小粒子を濡らし、かつ実質的に取り込むことができる環境を提供することは、本発明の重要な観点である。
【0059】
本発明の前記マイクロエマルジョンは、また、1またはそれ以上の非極性脂質、例えば、ジアシルグリセリド類、トリアシルグリセリド類、鉱油類、パラフィン油類およびエステル類ならびに、22より多い炭素原子総数を有する脂肪酸のエーテルまたはワックスを含む。前記非極性脂質は、トリアシルグリセリドが好ましい。
【0060】
優れたマイクロエマルジョンは、前記非極性脂質として非極性油類、例えば直鎖アルカン類を用いることによりうまく形成される。トリグリセリド類は食用であるので、トリグリセリド類が好ましく、他の脂質は十分に耐えられることが可能な量で個々にまたは混合物として用いることが可能である。
【0061】
明らかに、トリグリセリドのような要素は、合成的に製造もしくは修飾されるか、または大量に精製することができる。代わりに、かつ好ましくは、これらは自然源からのもののように、利用可能な混合物として用いることができる。自然源には、動物油類および植物油類が含まれる。
【0062】
許容可能な動物油類には、肝油、ラノリン油、ミンク油、オレンジ・ラッフィー油およびサメ肝油が含まれる。許容可能な植物油類には、アーモンド油、杏仁油、アボカド油、ヒマシ油、ココナツ油、トウモロコシ油、月見草油、ホホバ油、オリーブ油、ベニバナ油、ゴマ油、大豆油および小麦胚種油が含まれる。シリコーン油の幾つか、例えば、ある直鎖状ポリシロキサン類および環状ジメチルポリシロキサン類(例えば、シクロメチコン)も、許容可能である。前記植物油はゴマ油が好ましい。
【0063】
前記非極性脂質は、1から99%(wt/wt)、好ましくは5から75%(wt/wt)、最も好ましくは5から35%(wt/wt)の前記マイクロエマルジョンを構成するのが好ましい。
【0064】
本発明によるマイクロエマルジョンは、浮遊微小粒子が形成された均質な(マイクロエマルジョン)フィルム中に閉じ込められなければならないような多数の適用がある。これらには異なる種類のフィルターデバイスを含み、これは、例えば空気清浄および/または汚染除去のために用いることが可能である。しかしながら、本発明のエマルジョンは、空中浮遊粒子を閉じ込めるため、直接的な人への使用に、すなわち、鼻、目、耳、咽頭および喉頭の表在性膜上皮へ適用されるのが特に適当である。
【0065】
前記マイクロエマルジョン(microemulsiors)は、局所的に適用することが可能である。局所適用には、例えば、噴霧剤もしくは点滴剤、1回量にしたピペット、前記エマルジョンを凍結乾燥して得られた散剤、タンポンまたは塗布剤を含む。鼻貯留デバイスは、ヒト鼻(nasEl)気道粘膜上に制御された量の前記エマルジョンを適用せずに用いることが可能である。本発明のマイクロエマルジョン(microemulsior)を含有する口噴霧装置または鼻噴霧装置を用いるのが好ましい。
【0066】
散剤を用いる場合、本発明の前記マイクロエマルジョンを乾燥することにより通常は製造することができる。これにより、従って、溶媒を含まないか、または溶媒が少ないマイクロエマルジョン前駆体を生じる。これらの前駆体は、前記粘膜面で水性流体と接触および水性流体を取り込むことにより、真のマイクロエマルジョンを(少なくともある程度までは)再度形成する。明らかに、乾燥粉末状マイクロエマルジョン/前駆体を生じる通常の方法は、凍結乾燥であるが、当該分野の当業者は、噴霧乾燥のような乾燥散剤を生じるのに用いられる等価な技術の多くを認識しているであろう。散剤はまた、粒子サイズを調整するために粉砕および/または凝集させてもよい。
【0067】
散剤を生じる場合、散剤の乾燥特性、取り扱い特性および/または再生マイクロエマルジョン中への前記脂質要素の再懸濁を向上させるため他の剤を含むのも有利である。適切な剤は、一般に水溶性であり、ポリマー、塩および糖を含む。
【0068】
本発明は、鼻、目、耳、咽頭および喉頭の表在性膜上皮で起きる、またはその中で起こる、炎症プロセスの最初の段階に重点的に取り組んでいるが、これには限定されない。例えば、鼻粘膜で、またはその中で、炎症により、前炎症性ケモカインおよびサイトカインのレベルの増加、特定の炎症細胞の補充および活性化、ならびに前記粘膜の末端器官(例えば、微小循環、分泌器官および繊毛システム)機能の変化を生じる。炎症プロセスは、部分的には異なる炎症細胞を特徴とするが、上気道感染症とも関連する。提示の一つの観点において、従って、活性剤を加えて本発明のマイクロエマルジョンを含む組成物が提供される。特に、この活性剤は、一般に、これらの炎症細胞、システムまたは症状に対して局所効果を有する薬剤である。好ましい実施形態において、本発明は従って、本発明のマイクロエマルジョンと局所作用薬物とを含む組成物を提供する。
【0069】
適切な局所作用薬物には、抗アレルギー薬物(anti-allergical drug)(例えばグルココルチコステロイド)、抗ヒスタミン剤、ロイコトリエンアンタゴニスト、クロモグリク酸塩、充血除去剤(例えばアルファ-アゴニスト)、抗コリン作用薬薬物および抗感染症薬(anti-infection drug)(例えば抗生物質または抗ウィルス化合物)を含む。特に適切な薬物には、ブデソニド、ベクロメタゾン二プロピオン酸塩およびロラタジンを含む。そのような薬物の混合物も、同様に適する。本発明の組成物は、さらなる担体を必要としないが、所望であれば、適切な医薬的に許容される(tollerable)担体または賦形剤を含んでもよい。
【0070】
実施例
本発明を、以下の実施例を参照してより詳細に記載し説明する。しかしながら、これらの例は本発明をどのような意味にも限定するものではないことが理解されるであろう。この文章の全ての節において引用した参照全ての開示は、ここに、参照として取り込む。
【実施例1】
【0071】
組成物の一例の製造
以下の組成(w/w%)を有する20mlのマイクロエマルジョンを製造した。
成分 量(w/w%)
グリセロール・モノオレエート 34
プロピレングリコール 23
ポリエチレングリコール400 18
ゴマ油 11
生理的食塩水 10
ポリソルベート80 4
【実施例2】
【0072】
悪影響
実施例1による前記マイクロエマルジョンを、ヒト有志に投与する噴霧メカニズムを備えたフラスコ上に詰めた。悪影響の兆候または苦情はなされなかった。
【実施例3】
【0073】
湿潤挙動および表面への塗布
製剤の湿潤挙動を調べ、水および油参照液剤(表1に示したような組成物)による湿潤と比較した。モデル表面は、混じりけのない表面を得るために、エタノールで洗浄するか、または450℃に一晩加熱するかいずれかにより処理されたガラス顕微鏡用スライドであった。
【0074】
混じりけのない水平に配置されたガラス表面の上部上に20μLまたは50μLを適用した後、視覚的に液体レンズを生じた(evolution)。15分後、前記液体レンズの直径
を測定した(表2)。製剤1はゴマ油および純粋な生理的食塩水と比較して、両面の湿潤が優れていたことが分かった。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【実施例4】
【0077】
オオアワガエリ花粉の飲み込み
オオアワガエリ花粉粒(grans)、Phleum pratense (Allergon, batch 011303101)を製剤1、参照1または参照2と接触させた(実施例3参照)。その方法を、顕微鏡用スライド(エタノール洗浄)上で、次いで光学顕微鏡において行った。生理的食塩水(参照1)で花粉粒を濡らし、その量をすばやく飲み込んだ。同様の状況が製剤1でも見られ、一方、参照2(ゴマ油)では、この方法はより遅く、飲み込みはすぐに起きなかった。
【実施例5】
【0078】
花粉アレルギーの防止
鼻誘発の実行可能性を試験するために、実施例1によるマイクロエマルジョンを鼻貯留デバイス(Greiff L ら、 Clin Exp Allergy. 1990 May; 20(3):253-9)を用いて9人の患者の鼻腔に投与した。また、プラシーボ(生理的食塩水)をこのデバイスを用いて投与した。
【0079】
この鼻貯留デバイスで14mlの生理的食塩水を装填し、投与することにより洗浄を行った。
【0080】
鼻誘発を間に少なくとも1週あけて2回行った。単純盲検プラシーボ制御法で研究を行った。1回の往診で実施例1のマイクロエマルジョンを、別の機会にプラシーボ(等張生理的食塩水)を与えた。両方の処置(マイクロエマルジョンおよびプラシーボ)を、右の鼻腔中に鼻貯留デバイス(14ml)で与えた。
【0081】
攻撃鼻症状を評価する前に、2つの鼻洗浄(それぞれ1分)を前記貯留デバイスを用いて行った。14mlの生理的食塩水でのこれらの洗浄を、鼻粘膜面上に蓄積していた細胞の無いメディエータを減らすために行った。その後、基準線を確立するために5分間の生理的食塩水洗浄を行った。
【0082】
前記マイクロエマルジョンとプラシーボ(生理的食塩水)を無作為な順番で前記貯留デバイスを用いて供給した。前記処置(プラシーボおよび生理的食塩水)により、2.5分の間、鼻粘膜面と接触し続けた。
【0083】
その後、前記処置を解除し、もう一度患者の症状を評価した。前記処置供給後5分間で、中程度量のアレルゲンによる鼻アレルゲン攻撃を、先の洗浄と同じ方法で同じ鼻腔に行い、処置を供給した(右鼻腔)。前記患者についてアレルゲン攻撃後10分間、第3の症状評価を行い、2回目の5分間洗浄を同様に行った。5分間洗浄の両方を集め、後の分析のため、即座に2000rpmで冷遠心分離し、凍結(−18℃)させた。
【0084】
鼻症状を、課題の前(基準線)、課題の直前(前)およびアレルゲン攻撃の10分後に先に説明したように記録した。鼻症状、鼻水の垂れている鼻および閉塞を、0=症状無し、1=軽い症状、2=中程度の症状、3=重度の症状と記録した。加えて、くしゃみの数を数えた。
【0085】
くしゃみ
くしゃみの数を、前記マイクロエマルジョンおよびプラシーボでの予備処置後の花粉アレルギーを有する9人の患者に、基準線、アレルゲン攻撃の前および10分後に測定した。
【0086】
アレルゲンは、マイクロエマルジョンおよびプラシーボ処置の両方の後、前記処置の間に著しい相違なく、アレルギー患者にくしゃみを引き起こした。
【0087】
鼻炎
鼻分泌の主観的評価もまた、前記マイクロエマルジョンおよびプラシーボでの予備処置後の花粉アレルギーを有する9人の患者に、基準線、アレルゲン攻撃の前および10分後に行った。
【0088】
アレルゲンは、マイクロエマルジョンおよびプラシーボ処置の両方の後、前記処置の間に著しい相違なく、アレルギー患者に鼻分泌を引き起こした。
【0089】
鼻うっ血
同様に、鼻うっ血の主観的評価を前記マイクロエマルジョンおよびプラシーボでの予備処置後の花粉アレルギーを有する9人の患者に、基準線、アレルゲン攻撃の前および10分後に行った。
【0090】
アレルゲン攻撃により、マイクロエマルジョンおよびプラシーボの両方で処置後のアレルギー患者において、鼻うっ血が増加した。しかしながら、前記マイクロエマルジョンはプラシーボ(*=p<0.05)と比較して、鼻うっ血を著しく低減させた。
【0091】
全体の鼻症状スコア
図1は、くしゃみ、分泌および鼻うっ血を参照する全体の鼻症状スコアの評価を示す。
【0092】
アレルゲン攻撃により、マイクロエマルジョンおよびプラシーボの両方で処置後のアレルギー患者において、全体の鼻症状スコアを増加させた。しかしながら、前記マイクロエマルジョンは、プラシーボ(*=p<0.011)と比較して、全体の症状を著しく低減させた。
【0093】
【表4】

【実施例6】
【0094】
鼻粘膜炎症
α2−マクログロブリンを鼻粘膜炎症の指標として鼻洗浄において測定した。実施例1によるマイクロエマルジョンとプラシーボとでの処置の後、花粉アレルギーの9人の患者にアレルゲン攻撃の前、および10分後に試料を集めた。
【0095】
図2に示すように、前記アレルゲン攻撃により、プラシーボ処置後の(*=p<0.01)α2−マクログロブリンの鼻粘膜産出品を著しく増加させたが、マイクロエマルジョンでの処置後では増加させなかった。さらに、α2−マクログロブリンのレベルにおける著しい相違が、アレルゲン攻撃後の10分後に、マイクロエマルジョンとプラシーボとの間で見られた(*p<0.05)。
【0096】
【表5】

【実施例7】
【0097】
製剤における粘度調整
製剤の粘度は、適切な組成変化により調整し、減らすことが可能である。4つの製剤についての組成と粘度を表6と図3に示す。
【0098】
【表6】

【実施例8】
【0099】
主薬を有する製剤
以下の組成物を実施例1と同様にして製造した。
成分: 量(w/w%)
グリセロールモノオレエート 34
プロピレングリコール 23
ポリエチレングリコール400 18
ゴマ油 11
生理的食塩水 10
ポリソルベート80 4
【0100】
主薬を含有する製剤を、2.5mgの主薬を5mLの前記組成物に添加することにより製造した。前記製剤を穏やかに39℃まで温めて、溶解を促進させた。前記主薬の最終濃度は、従って約0.5mg/mlであり、これは、これらの物質の市場で入手可能な製剤で用いられる濃度に相当する。
【0101】
以下の主薬を用いた:ブデソニド、ベクロメタゾン二プロピオン酸塩およびロラタジン。
【実施例9】
【0102】
臨床研究No.2
別の組成物で臨床研究を9人のアレルギー患者に行った。目的は実施例5についてである。前記研究は、コントロールとして生理的食塩水と交差させた。症状スコアは、基準線でと、処置(生理的食塩水またはマイクロエマルジョン)後と、花粉攻撃後に得た。鼻粘膜炎症は、しかしながら、この研究では測定しなかった。
【0103】
成分: 量(w/w%)
グリセロールモノオレエート 37.8
プロピレングリコール 25.6
ポリエチレングリコール400 20.0
ゴマ油 12.2
ポリソルベート80 4.4
【0104】
【表7】

【0105】
前記研究により、症状スコアは、マイクロエマルジョンで処置した後にアレルゲン誘発を行ったとき、プラシーボでの処置後より低いことが示された。
【実施例10】
【0106】
ウィルス感染に対する保護
前記マイクロエマルジョンのウィルス感染に対して保護する能力を、細胞培養において研究した。2つの異なる細胞株から細胞単層をウェルプレートにおいて成長させた。用いた細胞株はMadin-Darby イヌ腎臓細胞(MDCK)とヒト唾液腺細胞(HSG)であった。ヒト・インフルエンザAウィルスを、実験で用いた。用いたウィルスの量は、ウェル中の細胞の50%を感染さすのに必要な量の15倍であった。
【0107】
2つの実験組成物を試験した。これらは実施例1で説明したようにして製造した。

【0108】
実験1−組成物と予め混合するウィルス
ウィルスを、5または10μLの前記組成物AまたはBと混合し、その後、細胞培養に添加した。ウェルプレートを1時間37℃でインキュベートした。前記組成物をその後洗浄し、前記プレートをさらに24〜48時間インキュベートした。前記細胞をその後固定し、感染度合いを固相ELISA(酸素結合免疫吸着検査法(enzyme linked immunosorbent assay))により測定した。感染度合いは、490nmでの吸光度として分光光度計により測定した。その結果を490nmでの光学密度として表した。前記組成物の添加をしないウィルスを、コントロールとして用いた。
【0109】
【表8】

【0110】
【表9】

【0111】
実験2−組成物で予め処理された細胞
組成物AまたはBを、ウェルプレート中の細胞培養に添加した。用いた組成物の量は、5、10、15および20μLであった。ウィルスをその後、前記ウェルに添加した。前記ウェルプレートを、1時間37℃でインキュベートした。前記組成物をその後洗浄し、前記プレートをさらに24〜48時間インキュベートした。前記細胞をその後固定し、感染度合いを固相ELISA(酸素結合免疫吸着検査法)で測定した。感染度合いは、490nmでの吸光度として分光光度計により測定した。その結果を490nmでの光学密度として表した。前記組成物の添加をしないウィルスを、コントロールとして用いた。
【0112】
【表10】

【0113】
【表11】

【0114】
その結果により、例AおよびBの両方は、インフルエンザAウィルスでの感染から、培養株中細胞を保護することが示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非極性脂質、少なくとも1つの極性溶媒および界面活性剤を含むマイクロエマルジョンであって、極性脂質をさらに含むことを特徴とするマイクロエマルジョン。
【請求項2】
浮遊微小粒子を閉じ込めるのに適するマイクロエマルジョンであって、それが、単独の構成要素として、非極性脂質、少なくとも1つの極性溶媒、界面活性剤、極性脂質および任意に不活性担体および/または賦形剤からなり、前記粒子を実質的に取り込むような環境であることを特徴とするマイクロエマルジョン。
【請求項3】
請求項1または2に記載のマイクロエマルジョンであって、前記極性脂質が、アルコール脂質、アミン脂質、ステロール、脂溶性ビタミン、グリセリド、リン脂質、糖脂質もしくはスフィンゴ脂質、またはそれらの混合物であるマイクロエマルジョン。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のマイクロエマルジョンであって、前記極性脂質が、モノアシルグリセリドを含むマイクロエマルジョン。
【請求項5】
請求項4に記載のマイクロエマルジョンであって、前記モノアシルグリセリドが、モノオレイン酸グリセリン、モノリノール酸グリセリンまたはグリセリルモノリネノレートであるマイクロエマルジョン。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のマイクロエマルジョンであって、前記非極性脂質が、ジアシルグリセリド、トリアシルグリセリド、動物油、植物油、鉱油、パラフィン油、パラフィンエステルまたは脂肪酸のエーテルもしくはワックスであり、前記非極性脂質が、22より多い炭素原子総数を有するマイクロエマルジョン。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のマイクロエマルジョンであって、前記非極性脂質が、ゴマ油を含むマイクロエマルジョン。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のマイクロエマルジョンであって、前記非極性脂質が、5〜35%(wt/wt)の前記マイクロエマルジョンを構成するマイクロエマルジョン。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のマイクロエマルジョンであって、前記極性溶媒が、水、緩衝液、グリコール、アルコールまたはそれらの混合物であるマイクロエマルジョン。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のマイクロエマルジョンであって、前記極性溶媒が、5〜95%(wt/wt)、好ましくは10〜55%(wt/wt)の前記マイクロエマルジョンを構成するマイクロエマルジョン。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のマイクロエマルジョンであって、前記極性溶媒の少なくとも1つの要素が、pH5.5を超えるpHを有するマイクロエマルジョン。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載のマイクロエマルジョンであって、前記極性溶媒が、プロピレングリコールおよび/またはポリエチレングリコールおよび/または生理的食塩水を含むマイクロエマルジョン。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載のマイクロエマルジョンであって、前記界面活性剤が、7を超える親水性−疎水性バランスを有するマイクロエマルジョン。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載のマイクロエマルジョンであって、前記界面活性剤が、ポリソルベート、ポロクサマーまたは脂肪酸ポリオキシエチレンであるマイクロエマルジョン。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載のマイクロエマルジョンであって、前記界面活性剤が、ポリソルベート、ポロクサマーまたは脂肪酸ポリオキシエチレンであるマイクロエマルジョン。
【請求項16】
請求項15に記載のマイクロエマルジョンであって、前記ポリソルベートが、ポリソルベート80であるマイクロエマルジョン。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載のマイクロエマルジョンであって、前記極性脂質が、20〜50%(wt/wt)の前記マイクロエマルジョンを構成するマイクロエマルジョン。
【請求項18】
哺乳類の鼻、目、耳、咽頭および/または喉頭の表在性膜上皮への投与に適した組成物であって、それが、医薬的に効果的な量の請求項1〜17のいずれかに記載のマイクロエマルジョンを含むことを特徴とする組成物。
【請求項19】
請求項18に記載の組成物であって、前記組成物が、局所作用薬物も含む組成物。
【請求項20】
請求項18または19に記載の組成物であって、前記局所作用薬物が、抗アレルギー薬物、充血除去剤または抗感染症薬である組成物。
【請求項21】
請求項18〜20のいずれかに記載の組成物であって、前記局所作用薬物が、ブデソニド、ベクロメタゾン二プロピオン酸塩およびロラタジンである組成物。
【請求項22】
請求項1〜17のいずれかに記載のマイクロエマルジョンを含有する口噴霧装置または鼻噴霧装置。
【請求項23】
請求項1〜17のいずれかに記載のマイクロエマルジョンを含むフィルター・デバイス。
【請求項24】
請求項18〜21のいずれかに記載の組成物を含有する口噴霧装置または鼻噴霧装置。
【請求項25】
直接的または間接的に浮遊微小粒子により引き起こされた患者における気道疾患を予防する方法であって、前記方法は、前記患者の少なくとも1つの表面(好ましくは少なくとも1つの粘膜面)を請求項18〜21のいずれかに記載の組成物で接触させることを含む方法。
【請求項26】
浮遊微小粒子が哺乳類の外側粘膜細胞膜に到達するのを防ぐ方法であって、前記方法は、前記哺乳類の前記外側粘膜細胞膜に予防的に有効な量の請求項18〜21のいずれかに記載の組成物を投与する工程を含む方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法であって、前記組成物が、口腔投与または鼻腔内投与される方法。
【請求項28】
治療における使用のための請求項1〜17のいずれかに記載のマイクロエマルジョン。
【請求項29】
空中浮遊花粉、バクテリアおよび/またはウィルスにより引き起こされた気道疾患を含む、直接的または間接的に浮遊微小粒子により引き起こされた疾患の処置または予防のための薬品の製造における請求項1〜17のいずれかに記載のマイクロエマルジョンの使用。
【請求項30】
請求項29に記載の使用であって、前記疾患が、アレルギー性鼻炎、感冒、ウィルスにより引き起こされた上気道感染症、バクテリアにより引き起こされた上気道感染症および/または非アレルギー性非感染性鼻炎である使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−51892(P2012−51892A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209280(P2011−209280)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【分割の表示】特願2006−518350(P2006−518350)の分割
【原出願日】平成16年7月7日(2004.7.7)
【出願人】(506009017)ネアーズ エービー (2)
【Fターム(参考)】