説明

マイクロカプセルの製造方法、マイクロカプセル塗布膜の形成方法及びマイクロカプセルの製造装置

【課題】マイクロカプセルの粒径を均一に形成するのに好適なマイクロカプセルの製造方法を提供する。
【解決手段】第1流路管200Aの外径よりも大きい内径を有する第2流路管200Bの内側に第1流路管200Aを同心となる位置関係で配置した構成の同心二重構造のノズルから、タンク80内に充填された疎水性のバインダー溶液95中に、第1流路管200Aの管内である第1流路201Aを介して第1流体吐出開口部211Aから電気泳動粒子を分散媒に分散させた疎水性の分散液60を吐出し、第1流路管200Aの外周面と第2流路管200Bの内周面との間隙部である第2流路201Bを介して第2流体吐出開口部211Bから光硬化性樹脂を含有する親水性のカプセル前駆体70を吐出し、吐出したこれら流体材料に光照射部83から光を照射することで、球殻状のカプセル体70’を外郭部として、内側に分散液60を内包したマイクロカプセル90を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動粒子を分散媒に分散した分散液を内包したマイクロカプセルの製造方法、マイクロカプセル塗布膜の形成方法及びマイクロカプセルの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気泳動粒子を分散媒に分散した分散液を樹脂材料によりカプセル化(内包)したマイクロカプセルの製造方法として、例えば、特許文献1に記載された技術がある。
かかるマイクロカプセルの製造方法においては、電気泳動粒子が油相中に分散した有機分散液と水性媒体(特に水)とを含む混合系に剪断力(撹拌などの剪断力、超音波などの振動剪断力など)を作用させて、水性媒体中に有機分散液を分散させることでマイクロカプセルを形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−259323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の従来技術においては、水性媒体中に攪拌や振動剪断力を付加することによって水性媒体中に分散させる形でマイクロカプセルを形成しているため、カプセルの粒径が不均一になるという問題があった。カプセルの粒径が不均一になる場合、所望の粒径のものを選り分ける分級作業が必要となる。
そこで、本発明は、このような従来の技術の有する未解決の課題に着目してなされたものであって、マイクロカプセルの粒径を均一に形成するのに好適なマイクロカプセルの製造方法、マイクロカプセル塗布膜の形成方法及びマイクロカプセルの製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔形態1〕 上記目的を達成するために、形態1のマイクロカプセルの製造方法は、流体の流路となる第1流路管と、前記第1流路管の外径よりも大きい内径を有する第2流路管とを有し、前記第1流路管を前記第2流路管の内側に同心となる位置関係で配置した構成の流体流路管と、前記第1流路管の端部に形成された第1流体吐出開口部と、前記第1流路管の外周面と前記第2流路管の内周面との間隙部における前記第1流体吐出開口部と同じ側の端部に形成された第2流体吐出開口部とを備えた二重構造のノズルを用いてマイクロカプセルを製造するマイクロカプセルの製造方法であって、
前記第1流路管内を介して前記第1流体吐出開口部から、電気泳動粒子を分散媒に分散した親水性又は疎水性を有する分散液を吐出し、
前記間隙部を介して前記第2流体吐出開口部から、親水性又は疎水性のうち前記分散液と異なる性質を有するカプセル前駆体を、前記分散液の吐出に合わせて吐出することにより、前記カプセル前駆体が外郭部となって前記分散液を内包した構成のマイクロカプセルを形成することを特徴としている。
【0006】
これにより、親水性及び疎水性について分散液とカプセル前駆体とが反対の性質を有することから、これらを二重構造のノズルから吐出後において各性質の違いによる相互作用によって、分散液をカプセル前駆体が外郭部として内包した状態のマイクロカプセルを形成することができる。
更に、二重構造のノズルの各開口部の径及び材料の吐出量によってマイクロカプセルの径を決めることができるので、径の均一なマイクロカプセルを形成することができる。
【0007】
〔形態2〕 更に、形態2のマイクロカプセルの製造方法は、形態1のマイクロカプセルの製造方法において、前記第2流路管の外径よりも大きい内径を有する第3流路管を有し、前記二重構造のノズルを、前記流体流路管を前記第3流路管の内側に同心となる位置関係で配置すると共に、前記第2流路管の外周面と前記第3流路管の内周面との第2間隙部における前記第1流体吐出開口部及び前記第2流体吐出開口部と同じ側の端部に第3流体吐出開口部を形成した構成の三重構造のノズルとし、
前記第2間隙部を介して前記第3流体吐出開口部から、親水性及び疎水性のうち前記カプセル前駆体と異なる性質を有する接着材料を、前記分散液及び前記カプセル前駆体の吐出に合わせて吐出することにより、前記接着材料が最外郭部となって前記分散液を内包したカプセル前駆体を更に内包した構成のマイクロカプセルを形成することを特徴としている。
【0008】
これにより、親水性及び疎水性について分散液とカプセル前駆体とが反対な性質を有し、かつカプセル前駆体と接着材料とが反対の性質を有する。このことから、これらを三重構造のノズルから吐出後において各流体材料間の性質の違いによる相互作用によって、分散液をカプセル前駆体が内包した状態のものを更に接着材料で内包した構成のマイクロカプセルを形成することができる。
更に、最外郭に接着材料による膜を形成することができるので、このマイクロカプセルを用いて電気泳動シート等の薄型の表示デバイスを製造した際に、マイクロカプセル自身の接着力によってシート基板からの剥離強度を高めることができる。
【0009】
〔形態3〕 更に、形態3のマイクロカプセルの製造方法は、形態1のマイクロカプセルの製造方法において、親水性及び疎水性のうち前記カプセル前駆体と異なる性質を有したバインダー溶液の供給された容器であって、該容器内のバインダー溶液に少なくとも前記第1流体吐出開口部及び前記第2流体吐出開口部の全体が浸かるように前記二重構造のノズルを浸けた状態で、前記分散液及び前記カプセル前駆体を前記バインダー溶液中に吐出して前記マイクロカプセルを形成することを特徴としている。
【0010】
これにより、親水性及び疎水性について分散液とカプセル前駆体とが反対な性質を有し、かつバインダー溶液とカプセル前駆体とが反対の性質を有することから、これらの相互作用によってマイクロカプセルの形成を容易とすると共に、マイクロカプセルをバインダー溶液によって溶解等することなく包み込むことができる。加えて、電気泳動シート等のデバイスを製造する際に、マイクロカプセルを含むバインダー溶液をそのまま基板上に塗布することができるので、製造工程を簡易化することができる。
【0011】
〔形態4〕 更に、形態4のマイクロカプセルの製造方法は、形態3のマイクロカプセルの製造方法において、前記容器内のバインダー溶液に、前記分散液及び前記カプセル前駆体の吐出方向と同じ方向の流れを生じさせることを特徴としている。
これにより、ノズルから吐出された流体材料である分散液及びカプセル前駆体のノズルからの切れを良くすることができる。
【0012】
〔形態5〕 更に、形態5のマイクロカプセルの製造方法は、形態3のマイクロカプセルの製造方法において、前記第1流体吐出開口部及び前記第2流体吐出開口部の周辺のバインダー溶液部分の前記吐出方向の流速を加速する流速加速部を設けて、前記バインダー溶液部分の流速とその他の部分の流速とに緩急を生じさせることを特徴としている。
これにより、ノズルから吐出された流体材料である分散液及びカプセル前駆体のノズルからの切れを良くすることができると共に、吐出後のマイクロカプセルの形状形成を安定的に行わせることができる。
【0013】
〔形態6〕 更に、形態6のマイクロカプセルの製造方法は、形態3乃至5のいずれか1のマイクロカプセルの製造方法において、前記容器内のバインダー溶液を攪拌する攪拌部を設けて、前記容器内のバインダー溶液を攪拌することを特徴としている。
これにより、バインダー溶液中で形成されたマイクロカプセルを攪拌することができるので、カプセル同士のくっつきやカプセルの偏り等を抑えることができる。
【0014】
〔形態7〕 更に、形態7のマイクロカプセルの製造方法は、形態1並びに3乃至6のいずれか1のマイクロカプセルの製造方法において、前記カプセル前駆体を光硬化性を有する材料とし、
前記第1流体吐出開口部及び前記第2流体吐出開口部から吐出された前記分散液及び前記プセル前駆体が、前記マイクロカプセルの体を形成後に光を照射して前記カプセル前駆体を硬化させることを特徴としている。
これにより、マイクロカプセルの外郭部を硬質化することができるので、マイクロカプセルの変形強度、機械強度等を高めることができる。
【0015】
〔形態8〕 更に、形態8のマイクロカプセルの製造方法は、形態2のマイクロカプセルの製造方法において、親水性及び疎水性のうち前記接着材料と異なる性質を有する液体の供給された容器であって、該容器内の液体に少なくとも前記第1流体吐出開口部、前記第2流体吐出開口部及び前記第3流体吐出開口部の全体が浸かるように前記三重構造のノズルを浸けた状態で、前記分散液、前記カプセル前駆体及び前記接着材料を前記液体中に吐出して前記マイクロカプセルを形成することを特徴としている。
これにより、親水性及び疎水性について分散液とカプセル前駆体とが反対な性質を有し、かつ容器内の液体とカプセル前駆体とが反対の性質を有することから、これらの相互作用によってマイクロカプセルの形成を容易とすることができる。
【0016】
〔形態9〕 更に、形態9のマイクロカプセルの製造方法は、形態8のマイクロカプセルの製造方法において、前記容器内の液体に、前記分散液、前記カプセル前駆体及び前記接着材料の吐出方向と同じ方向の流れを発生させることを特徴としている。
これにより、ノズルから吐出された流体材料である分散液、カプセル前駆体及び接着材料のノズルからの切れを良くすることができる。
【0017】
〔形態10〕 更に、形態10のマイクロカプセルの製造方法は、形態9のマイクロカプセルの製造方法において、前記第1流体吐出開口部、前記第2流体吐出開口部及び前記第3流体吐出開口部の周辺の液体部分の前記吐出方向の流速を加速する流速加速部を設けて、前記液体部分の流速とその他の部分の流速とに緩急を生じさせることを特徴としている。
これにより、ノズルから吐出された流体材料である分散液、カプセル前駆体及び接着材料のノズルからの切れを良くすることができると共に、吐出後のマイクロカプセルの形状形成を安定的に行わせることができる。
【0018】
〔形態11〕 更に、形態11のマイクロカプセルの製造方法は、形態8乃至10のいずれか1のマイクロカプセルの製造方法において、前記容器内の液体を攪拌する攪拌部を設けて、前記容器内の液体を攪拌することを特徴としている。
これにより、液体中で形成されたマイクロカプセルを攪拌することができるので、カプセル同士のくっつきや偏りを抑制することができる。
【0019】
〔形態12〕 更に、形態12のマイクロカプセルの製造方法は、形態2並びに8乃至11のいずれか1のマイクロカプセルの製造方法において、前記カプセル前駆体を光硬化性を有する材料とし、
前記第1流体吐出開口部、前記第2流体吐出開口部及び前記第3流体吐出開口部から吐出された前記分散液、カプセル前駆体及び前記接着材料が、前記マイクロカプセルの体を形成後に光を照射して前記カプセル前駆体を硬化させることを特徴としている。
これにより、カプセル前駆体部分を硬質化することができるので、マイクロカプセルの変形強度、機械強度等を高めることができる。
【0020】
〔形態13〕 一方、上記目的を達成するために、形態13のマイクロカプセルの塗布膜の形成方法は、形態1並びに形態3乃至7のいずれか1項に記載のマイクロカプセルの製造方法を用いて前記バインダー溶液中に形成したマイクロカプセルを、バインダー溶液と共に基板上に塗布することにより、前記基板上にマイクロカプセルを含有するバインダー溶液の塗布膜を形成することを特徴としている。
これにより、マイクロカプセルを含有するバインダー溶液(塗布液)の抵抗を安定化することができると共に、塗布液の製造工程を従来と比較して簡易化(工程数を低減)することができるので、製造コストを低減することができる。
【0021】
〔形態14〕 また、上記目的を達成するために、形態14のマイクロカプセルの製造装置は、流体の流路となる第1流路管と、前記第1流路管の外径よりも大きい内径を有する第2流路管とを有し、前記第1流路管を前記第2流路管の内側に同心となる位置関係で配置した構成の流体流路管と、
前記第1流路管と連通する第1流体室と、
前記第1流路管の外周面と前記第2流路管の内周面との間隙部と連通する第2流体室と、
前記第1流体室に第1流体を供給する第1流体供給部と、
前記第2流体室に第2流体を供給する第2流体供給部と、
前記第1流路管の前記第1流体室と連通する側の端部とは反対側の端部に形成された第1流体吐出開口部と、
前記間隙部の前記第2流体室と連通する側の端部とは反対側の端部に形成された第2流体吐出開口部と、
前記第1流体室内の圧力を変更する第1圧力変更部と、
前記第2流体室内の圧力を変更する第2圧力変更部と、を備え、
前記第1流体供給部は、前記第1流体室に前記第1流体として電気泳動粒子を分散媒に分散した親水性又は疎水性を有する分散液を供給し、
前記第2流体供給部は、前記第2流体室に前記第2流体として親水性及び疎水性のうち前記分散液と異なる性質を有するカプセル前駆体を供給し、
前記第1圧力変更部は、前記第1流体室内の圧力を変更して該第1流体室に供給された前記分散液を前記第1流体吐出開口部から吐出し、
前記第2圧力変更部は、前記第2流体室内の圧力を変更して該第2流体室に供給された前記カプセル前駆体を、前記分散液の吐出に合わせて前記第2流体吐出開口部から吐出することを特徴としている。
【0022】
このような構成であれば、第1流体供給部によって第1流体室に分散液が供給され、第1圧力変更部で第1流体室内の圧力が変更されると、第1流体室内の圧力変化によって分散液の第1流路管へ向かっての流れが発生する。これにより、分散液が第1流路管を通って第1流体吐出開口部から吐出される。同様に、第2流体供給部によって第2流体室にカプセル前駆体が供給され、第2圧力変更部で分散液の吐出に合わせて第2流体室内の圧力が変更されると、カプセル前駆体の第2流路管に向かっての流れが発生し、これにより、カプセル前駆体が第2流路管を通って第2流体吐出開口部から吐出される。
【0023】
このようにして、分散液の第1流体吐出開口部からの吐出に合わせて第2流体吐出開口部からカプセル前駆体が吐出されることで、両者の親水性及び疎水性についての逆特性による相互作用によって、カプセル前駆体が外郭部として分散液を内包した構成のマイクロカプセルを形成することができる。
これにより、上記形態1のマイクロカプセルの製造方法と同等の効果を得ることができる。
【0024】
〔形態15〕 更に、上記目的を達成するために、形態15のマイクロカプセルの製造装置は、形態14のマイクロカプセルの製造装置において、前記流体流路管は、前記第2流路管の外径よりも大きい内径を有する第3流路管を有し、前記第2流路管を前記第3流路管の内側に同心となる位置関係で配置すると共に前記第1流路管を前記2流路管の内側に同心となる位置関係で配置した構成となっており、
前記第2流路管の外周面と前記第3流路管の内周面との第2間隙部と連通する第3流体室と、
前記第3流体室に第3流体を供給する第3流体供給部と、
前記第2間隙部の前記第3流体室と連通する側の端部とは反対側の端部に形成された第3流体吐出開口部と、
前記第3流体室内の圧力を変更する第3圧力変更部と、を更に備え、
前記第3流体供給部は、前記第3流体室に前記第3流体として親水性又は疎水性のうち前記カプセル前駆体と異なる性質を有する接着材料を供給し、
前記第3圧力変更部は、前記第3流体室内の圧力を変更して前記第3流体吐出開口部から前記接着材料を、前記分散液及び前記カプセル前駆体の吐出に合わせて吐出することを特徴としている。
【0025】
このような構成であれば、第3流体供給部によって第3流体室に接着材料が供給され、第3圧力変更部で分散液及びカプセル前駆体の吐出に合わせて第3流体室内の圧力が変更されると、第3流体室内の圧力変化によって接着材料の第3流路管へ向かっての流れが発生する。これにより、接着材料が第3流路管を通って第3流体吐出開口部から吐出される。
【0026】
このようにして、分散液の第1流体吐出開口部からの吐出及びカプセル前駆体の第2流体吐出開口部からの吐出に合わせて第3流体吐出開口部から接着材料が吐出されることで、これらの親水性及び疎水性についての逆特性による相互作用によって、接着材料が最外郭部としてカプセル前駆体が分散液を内包したものを更に内包した構成のマイクロカプセルを形成することができる。
これにより、上記形態2のマイクロカプセルの製造方法と同等の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】(a)は、流体吐出装置1の概略構成を示す説明図であり、(b)は、(a)におけるA−A’断面図であり、(c)は、流体吐出開口部211を正面から見た図である。
【図2】駆動部30の詳細な構成を示すブロック図である。
【図3】駆動部30における吐出動作制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図4】マイクロカプセルの製造装置2の概略構成を模式的に示した図である。
【図5】(a)は、マイクロカプセルの構成例を模式的に示す図であり、(b)は、マイクロカプセルの塗布液を模式的に示す図である。
【図6】MC製造装置2における流体加速部80bの付近を拡大した模式図である。
【図7】MC製造装置2における各種構成部の動作及び作用を簡易化して示す模式図である。
【図8】MC塗布液96によるMC塗布膜300の形成手順を示す模式図である。
【図9】(a)は、流体吐出装置1’の概略構成を示す説明図であり、(b)は、(a)におけるB−B’断面図であり、(c)は、流体吐出開口部211’を正面から見た図である。
【図10】駆動部30’の詳細な構成を示すブロック図である。
【図11】本実施形態のマイクロカプセルの構成例を模式的に示す図である。
【図12】MC製造装置2’における流体加速部80bの付近を拡大した模式図である。
【図13】MC製造装置2’における各種構成部の動作及び作用を簡易化して示す模式図である。
【図14】量産用のMC製造装置の構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づき説明する。図1〜図8は、本発明に係るマイクロカプセルの製造方法、マイクロカプセル塗布膜の形成方法及びマイクロカプセルの製造装置の第1実施形態を示す図である。
(流体吐出装置の構成)
まず、本発明に係るマイクロカプセルの製造装置を構成する流体吐出装置1の構成を図1に基づき説明する。図1(a)は、本実施形態に係る流体吐出装置1の概略構成を示す説明図であり、(b)は、(a)におけるA−A’断面図であり、(c)は、流体吐出開口部211を正面から見た図である。
【0029】
流体吐出装置1は、図1(a)に示すように、第1流体60を収容する流体容器10Aと、接続チューブ15A及び25Aと、ポンプ20Aと、第2流体70を収容する流体容器10Bと、接続チューブ15B及び25Bと、ポンプ20Bとを含んで構成される。
流体吐出装置1は、更に、接続チューブ15A及び25Aを介してポンプ20Aから供給される第1流体60と、接続チューブ15B及び25Bを介してポンプ20Bから供給される第2流体70とに対してそれぞれ吐出圧力を付与する圧力付与部100を備えている。
【0030】
圧力付与部100は、第1流体吐出用圧電素子401Aと、第1流体室501Aと、第1入口流路管502Aと、第1出口流路511Aと、第2流体吐出用圧電素子401Bと、第2流体室501Bと、第2入口流路管502Bと、第2出口流路511Bとを含んで構成される。
流体吐出装置1は、更に、第1流体吐出用圧電素子401A及び第2流体吐出用圧電素子401Bを駆動する駆動部30を含んで構成される。第1流体吐出用圧電素子401Aと駆動部30とは、駆動信号を供給するための2本の供給線JPZT1(−)及びJPZT1(+)を絶縁材料によって被覆した被覆線45Aによって電気的に接続されており、第2流体吐出用圧電素子401Bと駆動部30とは、駆動信号を供給するための2本の供給線JPZT2(−)及びJPZT2(+)を絶縁材料によって被覆した被覆線45Bによって電気的に接続されている。
【0031】
流体吐出装置1は、更に、圧力付与部100に接続された流体流路管200を備え、流体流路管200の先端部には流体吐出開口部211が形成されている。
流体流路管200は、円筒形状の第1流路管200Aと、第1流路管200Aの外径よりも大きい内径を有する円筒形状の第2流路管200Bとを有し、図1(b)のA−A’断面図に示すように、第2流路管200Bが第1流路管200Aを同心で内包した同心二重の構造を有している。
【0032】
この同心二重の構造によって、流体流路管200は、図1(b)に示すように、第1流路管200Aの管内である第1流路201Aと、第1流路管200Aの外周面と第2流路管200Bの内周面との間隙部から構成される第2流路201Bとを有する。
なお、第1流体室501Aと第1流路201Aとは第1出口流路511Aを介して連通し、第2流体室501Bと第2流路201Bとは第2出口流路511Bを介して連通している。また、第1流体室501Aと圧力付与部100の接続チューブ25Aの挿着部である第1入口流路管502Aとは連通し、第2流体室501Bと圧力付与部100の接続チューブ25Bの挿着部である第2入口流路管502Bとは連通している。
【0033】
また、上記同心二重の構成によって、流体吐出開口部211は、図1(c)に示すように、第1流路管200Aの開口部である第1流体吐出開口部211Aと、上記間隙部の開口部である第2流体吐出開口部211Bとを有する。
以上より、本実施形態では、第1流路管200Aと、第2流路管200Bと、第1流体吐出開口部211Aと、第2流体吐出開口部211Bとから同心二重構造のノズルを構成している。
【0034】
(流体吐出装置1における流体の流動について)
流体容器10Aに収容された第1流体60は、接続チューブ15Aを介してポンプ20Aによって吸引され、一定の圧力で接続チューブ25Aを介して第1流体室501Aに供給される。第1流体室501Aは、第1流体吐出用圧電素子401Aの伸縮力によってその容積を変更可能な構成を有している。従って、駆動部30からの駆動信号によって第1流体吐出用圧電素子401Aを伸縮して第1流体室501Aの容積を変更することで第1流体室501A内の圧力を変更することができる。この圧力の変更によって、第1流体室501A内の第1流体60に吐出力を付与し、第1流路201A、第1流体吐出開口部211Aを通して第1流体60を吐出する。
【0035】
同様に、流体容器10Bに収容された第2流体70は、接続チューブ15Bを介してポンプ20Bによって吸引され、一定の圧力で接続チューブ25Bを介して第2流体室501Bに供給される。第2流体室501Bは、第2流体吐出用圧電素子401Bの伸縮力によってその容積を変更可能な構成を有している。従って、駆動部30からの駆動信号によって第2流体吐出用圧電素子401Bを伸縮して第2流体室501Bの容積を変更することで第2流体室501A内の圧力を変更することができる。この圧力の変更によって、第2流体室501B内の第2流体70に吐出力を付与して、第2流路201B、第2流体吐出開口部211Bを通して第2流体70を吐出する。
なお、ポンプ20A及び20Bに限らず、輸液バッグ等に第1流体60及び第2流体70を収容し、スタンド等によって圧力付与部100よりも高い位置に保持するようにしてもよい。これにより、ポンプ20A及び20Bは不要とし、構成を簡素化することができる。
【0036】
また、本実施形態において流体吐出装置1は、第1入口流路管502A側のイナータンスが、第1出口流路511A側のイナータンスよりも大きくなるように、第1入口流路管502Aの流路長及び断面積、第1出口流路511Aの流路長及び断面積が設計されている。また、第2入口流路管502B側のイナータンスが、第2出口流路511B側のイナータンスよりも大きくなるように、第2入口流路管502Bの流路長及び断面積、第2出口流路511Bの流路長及び断面積が設計されている。
【0037】
ここで、イナータンスは、イナータンスをL、流体の密度をρ、流路の断面積をS、流路の長さをhとしたとき、L=ρ×h/Sで表される。流路の圧力差をΔP、流路を流れる流体の流量をQとした場合に、イナータンスLを用いて流路内の運動方程式を変形することで、ΔP=L×dQ/dtという関係が導き出される。
つまり、イナータンスLは、流量の時間変化に与える影響度合いを示しており、イナータンスLが大きいほど流量の時間変化が少なく、イナータンスLが小さいほど流量の時間変化が大きくなる。
【0038】
(駆動部30の構成)
次に、図2に基づき、駆動部30の詳細な構成を説明する。
ここで、図2は、駆動部30の詳細な構成を示すブロック図である。
駆動部30は、図2に示すように、動作制御部30aと、第1駆動信号供給部30bと、第2駆動信号供給部30cと、データ記憶部30dと、同期信号発生部30fとを含んで構成されている。
動作制御部30aは、流体吐出装置1の入力装置(不図示)からの操作入力に応じて、各構成部に動作指令を与える役割を担うもので、第1駆動信号供給部30bの駆動信号の供給処理、第2駆動信号供給部30cの駆動信号の供給処理などの各種動作処理を制御する機能を有している。
【0039】
具体的に、動作制御部30aは、流体吐出装置1の駆動スイッチ(不図示)がオフの状態からオンの状態になったと判定したときに、流体を吐出させるために第1駆動信号供給部30b及び第2駆動信号供給部30cに対して吐出駆動指令を出力する。
これによって、同期信号発生部30fからの同期信号に同期して、第1駆動信号供給部30bから第1駆動信号が第1流体吐出用圧電素子401A(以下、単に圧電素子401Aという)に供給される。これにより、圧電素子401Aが伸張動作を行い、第1流体室501Aが縮小し室内の第1流体60が圧縮され、第1流体60が第1出口流路511A及び第1流路201Aを介して第1流体吐出開口部211Aから吐出される。
【0040】
一方、同期信号発生部30fからの同期信号に同期して第2駆動信号供給部30cから第2駆動信号が第2流体吐出用圧電素子401B(以下、単に圧電素子401Bという)に供給される。これにより、圧電素子401Bが伸張動作を行い、第2流体室501Bが縮小し室内の第2流体70が圧縮され、第1流体60が第2出口流路511B及び第2流路201Bを介して第2流体吐出開口部211Bから吐出される。
【0041】
また、流体吐出装置1の駆動スイッチがオンの状態からオフの状態になったときに、流体の吐出を停止させるために第1駆動信号供給部30b及び第2駆動信号供給部30cに対して吐出停止指令を出力する。これによって、流体の吐出が停止する。
データ記憶部30dは、設定される吐出強さに対応する、周期や振幅の異なる複数種類の信号波形の波形情報、各構成部の処理に用いるデータなどを記憶する記憶媒体を含んで構成されている。データ記憶部30dは、各構成部からの読み出し要求に応じて記憶媒体に記憶されたデータを読み出し、各構成部からの書き込み要求に応じて記憶媒体にデータを書き込む機能を有している。
【0042】
具体的に、第1駆動信号供給部30b及び第2駆動信号供給部30cは、吐出駆動指令に含まれる吐出駆動用の波形指定情報に基づき、それぞれ該当する波形情報(デジタルの波形データ)をデータ記憶部30dから読み出す。そして、読み出した波形情報をDA変換してアナログの駆動信号を生成し、該生成した駆動信号を同期信号に同期させて圧電素子401A及び401Bにそれぞれ供給する。なお、波形指定情報は、吐出強さに応じた吐出駆動用の信号波形に付された識別情報などとなる。
【0043】
更に、第1駆動信号供給部30b及び第2駆動信号供給部30cは、動作制御部30aからの吐出停止指令に応じて、第1及び第2駆動信号の供給を停止する機能を有している。本実施の形態では、第1及び第2駆動信号の供給途中で動作制御部30aから停止指令が入力されたときは、供給途中の1周期の波形を最後まで圧電素子401A及び401Bに供給してから第1及び第2駆動信号の供給を停止するようになっている。
同期信号発生部30fは、セラミック振動子、水晶振動子などの発振子、カウンター(又はPLL回路)などを含み、発振子から出力される信号を基準クロック信号clkとして、該clkから同期信号を生成する機能を有している。そして、同期信号を第1駆動信号供給部30b及び第2駆動信号供給部30cに供給する。
【0044】
なお、駆動部30は、上記各構成部の機能をソフトウェアを用いて実現するため、および上記各機能の実現に必要なハードウェアを制御するソフトウェアを実行するためのコンピューターシステムを備えている。このコンピューターシステムのハードウェア構成は、図示しないが、プロセッサー(Processer)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)とを有し、これらの間を各種内外バスで接続した構成となっている。
更に、バスには、IEEE1394、USB、パラレルポート等の入出力インターフェース(I/F)を介して、例えば、CRTまたはLCDモニター等の表示装置、操作パネル、マウス、キーボード等の入力装置が接続されている。
【0045】
そして、電源を投入すると、ROM等に記憶されたシステムプログラムが、ROMに予め記憶された上記各部の機能を実現するための各種専用のコンピュータープログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムに記述された命令に従ってプロセッサーが各種リソースを駆使して所定の制御および演算処理を行うことで前述したような各機能を実現するようになっている。
【0046】
(吐出動作制御処理)
次に、図3に基づき、駆動部30における吐出動作制御処理の処理手順を説明する。
ここで、図3は、駆動部30における吐出動作制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
プロセッサーによって専用のプログラムが実行され、動作制御処理が開始されると、図3に示すように、まず、ステップS100に移行する。
ステップS100では、動作制御部30aにおいて、流体吐出装置1の駆動スイッチがオンになったか否かを判定する。そして、オンになったと判定した場合(Yes)は、ステップS102に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、オンになるまで判定処理を繰り返す。
【0047】
ステップS102に移行した場合は、動作制御部30aにおいて、第1駆動信号供給部30bに対して第1吐出駆動指令を出力し、第2駆動信号供給部30cに対して第2吐出駆動指令を出力して、ステップS104に移行する。
ステップS104では、第1駆動信号供給部30bにおいて、第1吐出駆動指令に含まれる指定波形の識別情報に基づき、圧電素子401Aの駆動に用いる吐出駆動用の第1波形データをデータ記憶部30dから読み出す。一方、第2駆動信号供給部30cにおいて、第2吐出駆動指令に含まれる指定波形の識別情報に基づき、圧電素子401Bの駆動に用いる吐出駆動用の第2波形データをデータ記憶部30dから読み出して、ステップS106に移行する。
【0048】
ステップS106では、第1駆動信号供給部30bにおいて、ステップS104で読み出した第1波形データのデジタルの波形信号をアナログの波形信号にDA変換する。一方、第2駆動信号供給部30cにおいて、ステップS104で読み出した第2波形データのデジタルの波形信号をアナログの波形信号にDA変換して、ステップS108に移行する。
【0049】
ステップS108では、第1駆動信号供給部30bにおいて、同期信号発生部30fからの同期信号に同期して、ステップS106でDA変換して得られたアナログの信号波形からなる第1駆動信号を、圧電素子401Aに出力する。一方、第2駆動信号供給部30cにおいて、同期信号発生部30fからの同期信号に同期して、ステップS106でDA変換して得られたアナログの信号波形からなる第2駆動信号を、圧電素子401Bに出力して、ステップS110に移行する。
【0050】
ステップS110では、動作制御部30aにおいて、流体吐出装置1の駆動スイッチがオフになったか否かを判定し、オフになったと判定した場合(Yes)は、ステップS112に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS108に移行する。
ステップS112では、動作制御部30aにおいて、第1駆動信号供給部30bに対して第1吐出停止指令を出力し、第2駆動信号供給部30cに対して第2吐出停止指令を出力して、ステップS114に移行する。
【0051】
ステップS114に移行した場合は、第1駆動信号供給部30b及び第2駆動信号供給部30cにおいて、出力信号は1周期の途中か否かを判定し、途中であると判定した場合(Yes)は、ステップS116に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS118に移行する。
ステップS116に移行した場合は、第1駆動信号供給部30b及び第2駆動信号供給部30cにおいて、1周期分の第1駆動信号及び第2駆動信号を全て出力後に、第1駆動信号及び第2駆動信号の供給を停止して、ステップS100に移行する。
【0052】
一方、ステップS118に移行した場合は、第1駆動信号供給部30b及び第2駆動信号供給部30cにおいて、第1駆動信号及び第2駆動信号の供給を直ちに停止して、ステップS100に移行する。
つまり、第1駆動信号供給部30b及び第2駆動信号供給部30cは、第1駆動信号及び第2駆動信号を、吐出停止指令があるまで繰り返し出力(供給)する。
【0053】
(マイクロカプセルの製造装置の構成)
次に、図4に基づき、本実施形態のマイクロカプセルの製造装置の構成を説明する。
ここで、図4は、マイクロカプセルの製造装置2の概略構成を模式的に示した図である。
マイクロカプセルの製造装置2(以下、MC製造装置2という)は、図4に示すように、流体吐出装置1と、タンク80と、キャリア流体供給部81と、流体排出部82と、光照射部83と、攪拌機84と、接続管85及び87と、ポンプ86とを含んで構成される。
【0054】
タンク80は、上部に開口部を有し筒型先細り形状のタンク上部80aと、タンク上部80aと連通しかつタンク上部80aの径よりも小さい径の筒型形状の流体加速部80bと、タンク上部80aの径よりも大きい径でかつ流体加速部80bと連通する筒型形状のタンク下部80cとを含んで構成される。
また、タンク80における少なくとも流体加速部80bは、遮光性を有する材料から形成されており、外部からの光を遮断する機能を有している。
【0055】
キャリア流体供給部81は、流体吐出装置1を流体吐出開口部211を下方に向けた状態で固定する固定部を有すると共に、タンク上部80aの開口部を封止する。更に、キャリア流体供給部81は、開口部を封止時にタンク上部80aと連通する流体通路が内部に形成された構成を有している。更に、キャリア流体供給部81は、流体通路と連通しかつ外部に突出開口した入口流路を有し、該入口流路を介して所定圧力で供給されるキャリア流体95を、流体通路を介してタンク上部80a内に供給する。これにより、タンク上部80a内に供給されるキャリア流体95には、所定圧力によって図中下矢印方向への流速が付加される。
【0056】
また、流体吐出装置1は、流体吐出開口部211が流体加速部80bの中程の位置に到達するように固定される。
そして、タンク上部80aに供給されたキャリア流体95は、タンク上部80aの径よりも小さい径の流体加速部80bを通ることによってその下方向への流速を加速させて、タンク下部80cへと供給される。従って、流体吐出装置1の流体吐出開口部211から吐出される第1流体60及び第2流体70は、流体加速部80bにおいて加速されたキャリア流体95中に吐出されることになる。
【0057】
流体排出部82は、タンク下部80cの下端部近傍に形成され、タンク下部80cと連通しかつ外部に突出開口した排出口である。
光照射部83は、光源(ランプ光、レーザ光、電子線など)とその駆動源とから構成されており、流体吐出装置1から吐出形成され、流体加速部80bからタンク下部80cへと流入したマイクロカプセル90(後述)に対して光を照射する。
【0058】
攪拌機84は、タンク下部80cの底部に固定配置され、アクチュエーターと該アクチュエーターの回転軸に軸支されたプロペラ部とを備えている。攪拌機84は、アクチュエーターを駆動することによってプロペラ部を回転させて、タンク下部80cのキャリア流体95内に存在するマイクロカプセル90を攪拌する機能を有している。
接続管85は、ポンプ86によってタンク下部80cから流体排出部82を介して吸引されたキャリア流体95のポンプ86への通路である。
【0059】
ポンプ86は、タンク下部80c内のキャリア流体95を吸引すると共に、吸引したキャリア流体95を接続管87を介してキャリア流体供給部81に供給する。更に、ポンプ86は、流体吐出装置1からの分散液60及びカプセル前駆体70の吐出によって増加する容積分のキャリア流体95を排出する機能を有している。
接続管87は、ポンプ86から所定圧力で排出されるキャリア流体95のキャリア流体供給部81への通路である。
【0060】
(マイクロカプセル及びその塗布液の製造プロセスにおいて用いる流体材料について)
次に、本実施形態のMC製造装置2を用いたマイクロカプセル及びマイクロカプセルの塗布液の製造プロセスにおいて用いる流体材料について説明する。本実施形態では、MC製造装置2を用いて、マイクロカプセルに加えてその塗布液を製造する。
【0061】
まず、第1流体60として、電気泳動粒子61を液相の分散媒62に分散させた親水性又は疎水性の分散液(以下、分散液60という)を用意し、第2流体70として、親水性及び疎水性について分散液60と反対の性質を有するカプセル前駆体(以下、カプセル前駆体70という)を用意する。更に、キャリア流体95として、親水性及び疎水性についてカプセル前駆体70とは反対の性質を有するバインダー溶液(以下、バインダー溶液95という)を用意する。つまり、分散液60が疎水性であれば、カプセル前駆体70は親水性、キャリア流体95は疎水性となるようにそれぞれ材料を選定する。また、分散液60が親水性であれば、カプセル前駆体70は疎水性、キャリア流体95は親水性となるようにそれぞれ材料を選定する。
【0062】
分散媒62としては、例えば、各種水(例えば、蒸留水、純水等)、メタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ等のセロソルブ類、酢酸メチル等のエステル類、アセトン等のケトン類、ペンタン等の脂肪族炭化水素類(流動パラフィン)、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、ベンゼン等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素類、ピリジン等の芳香族復素環類、アセトニトリル等のニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、カルボン酸塩またはその他、シリコーンオイル等の各種油類等が挙げられ、これらを単独または混合物として用いることができる。
中でも、分散媒62としては、沸点が80度以上の炭化水素、シリコーンオイルが好ましい。
【0063】
また、分散媒62(分散液60)中には、必要に応じて、例えば、電解質、アルケニルコハク酸エステルのような界面活性剤(アニオン性またはカチオン性)、金属石鹸、樹脂材料、ゴム材料、油類、ワニス、コンパウンド等の粒子からなる荷電制御剤、シラン系カップリング剤等の分散剤、潤滑剤、安定化剤等の各種添加剤を添加するようにしてもよい。
【0064】
さらに、分散媒62を着色する場合には、分散媒62に、必要に応じて、アントラキノン系染料、アゾ系染料、インジゴイド系染料等の各種染料を溶解するようにしてもよい。
電気泳動粒子61は、帯電した(荷電を有する)帯電粒子であり、外部(図示しない電極)から電界が与えられることにより、分散液60中を電気泳動する。電気泳動粒子61としては、顔料粒子、樹脂粒子またはこれらの複合粒子のうちの少なくとも1種を用いることができる。
【0065】
顔料粒子を組成する顔料としては、例えば、アニリンブラック、カーボンブラック等の黒色顔料、酸化チタン、酸化アンチモン等の白色顔料、モノアゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン、黄鉛、黄色酸化鉄等の黄色顔料、キナクリドンレッド、クロムバーミリオン等の赤色顔料、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー等の青色顔料、フタロシアニングリーン等の緑色顔料等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
また、樹脂粒子を組成する樹脂材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、尿素系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスチレン、ポリエステル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。複合粒子としては、例えば、顔料粒子の表面を樹脂材料や他の顔料で被覆したもの、樹脂粒子の表面を顔料で被覆したもの、顔料と樹脂材料とを適当な組成比で混合した混合物で構成される粒子等が挙げられる。
顔料粒子の表面を他の顔料で被覆した粒子としては、例えば、酸化チタン粒子の表面を、酸化珪素や酸化アルミニウムで被覆したものを例示することができ、かかる粒子は、白色粒子として用いることができる。また、カーボンブラック粒子またはその表面を被覆した粒子は、着色粒子(黒色粒子)として用いることができる。
【0067】
また、電気泳動粒子61の形状は、それぞれ、特に限定されないが、球形状であるのが好ましい。
カプセル前駆体70は、吐出時は流体(液状体)であって、最終的に内包する分散液60の揮発や漏出を抑制するために、分散液60に対してバリア性を有する材料であることが望ましい。バリア性の観点からは、最終的にマイクロカプセルの外殻部として分散液60を内包した状態において硬化又は架橋する材料が好ましい。カプセル前駆体70として、例えば、ゲル化剤、光硬化性樹脂、UVインク、モノマーなどを含有する皮膜組成物からなる液状体などを用いることができる。
【0068】
カプセル前駆体70を構成する樹脂材料について、具体例を挙げると、アラビアゴムなどのゴムを含む材料、アラビアゴムとゼラチンとの複合材料、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、尿素樹脂、ポリアミド、ポリエーテルのような各種樹脂材料が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0069】
また、カプセル前駆体70を構成する樹脂材料には、それぞれ、架橋剤(ゲル化剤)により架橋(立体架橋)構造を形成するようにしてもよい。
また、カプセル前駆体70を構成する樹脂材料(モノマー・オリゴマー・ポリマー)に、それぞれ、光重合開始剤を添加して光硬化性樹脂を含有するカプセル前駆体70を構成し、紫外線等の光を照射することで硬化するようにしてもよい。
【0070】
このように、架橋構造を形成したり、光硬化したりすることで、マイクロカプセル90の強度を向上させることができる。
なお、カプセル前駆体70は、例えば、光硬化する前の光硬化性樹脂等の外郭部(カプセル体)を形成する前の状態のものを指すが、架橋構造を有する樹脂材料から構成される場合など、カプセル体を形成した後も状態が変わらない(硬化等しない)ものも含む。
【0071】
バインダー溶液95の構成材料としては、カプセル本体90との親和性(密着性)に優れ、絶縁性に優れ、かつ、比較的高い誘電率を有する樹脂材料(絶縁性または微小電流のみが流れる樹脂材料)が好適に使用される。
このような樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸メチル樹脂、塩化ビニル樹脂、セルロース系樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂等の各種樹脂材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
(マイクロカプセル及び塗布液の製造プロセス)
次に、図4〜図8に基づき、上記MC製造装置2によるマイクロカプセル及びマイクロカプセルの塗布液の具体的な製造プロセスを説明する。
ここで、図5(a)は、マイクロカプセルの構成例を模式的に示す図であり、(b)は、マイクロカプセルの塗布液を模式的に示す図である。また、図6は、MC製造装置2における流体加速部80bの付近を拡大した模式図である。また、図7は、MC製造装置2における各種構成部の動作及び作用を簡易化して示す模式図である。また、図8は、MC塗布液96によるMC塗布膜300の形成手順を示す模式図である。
【0073】
まず、図5に基づき、MC製造装置2によって製造するマイクロカプセル及びマイクロカプセルの塗布液(以下、MC塗布液という)の構成例について説明する。
以下の説明において製造するマイクロカプセル90は、図5(a)に示すように、カプセル前駆体70を光硬化して形成される球殻状の外郭部(カプセル体70’)の内側に分散液60を内包した構成となっている。つまり、製造するマイクロカプセル90は球状をなしたものとなる。
【0074】
また、分散液60は、図5(a)に示すように、黒色(B)及び白色(W)の互いに電気的極性の異なる2種類の電気泳動粒子61B及び61Wを疎水性の分散媒62に分散させた構成となっている。また、カプセル前駆体70は、少なくとも親水性の光硬化性樹脂を含有する構成となっている。
また、以下の説明においては、キャリア流体95として疎水性のバインダー溶液95を用い、バインダー溶液95中にマイクロカプセル90を形成することで、図5(b)に示すように、多数のマイクロカプセル90をバインダー溶液95中に分散させたMC塗布液96を製造する。
ここで、MC塗布液96は、バインダー溶液95の有する粘着性又は接着性によって、基板上にそのまま塗布する形態で電気泳動シート(例えば電子ペーパーなど)の製造等に用いることができる。
【0075】
次に、上記図5に示すマイクロカプセル90及びMC塗布液96の製造プロセスについて説明する。
まず、図4に示す姿勢で固定配置された流体吐出装置1の流体容器10Aに、図5(a)に示す構成の疎水性の分散液60を収容する。更に、流体容器10Bに、少なくとも光硬化性樹脂を含有する親水性のカプセル前駆体70を収容する。
更に、タンク80内にバインダー溶液95を充填し、ポンプ86を駆動する。これにより、図4中の矢印S1〜S3に示すように、流体排出部82及び接続管85を介して、タンク下部80c内のバインダー溶液95が吸引される。吸引されたバインダー溶液95は、図4中の矢印S4〜S8に示すように、接続管87、キャリア流体供給部81における入口流路及び流体流路を介してタンク上部80a内へと流れ込む。
【0076】
タンク上部80a内に流れ込んだバインダー溶液95は、図4中の矢印S9〜S10に示すように流体加速部80b内に流れ込む。そして、流体加速部80bの径がタンク上部80aよりも小さくなることによる圧力の変化によって、図4中の矢印S11〜S12に示す方向に加速され、その後、流体加速部80bよりも径の大きいタンク下部80cに流入することで流速が弱まる。
このように、ポンプ86を駆動することによって、タンク80c→ポンプ86→キャリア流体供給部81→タンク80a→タンク80b(加速)→タンク80c→ポンプ86→・・・といったバインダー溶液95の循環が行われる。
【0077】
次に、バインダー溶液95をタンク80内に循環した状態で、流体吐出装置1のスイッチをオンにする(ステップS100の「Yes」の分岐)。これにより、流体吐出装置1は、動作制御部30aにおいて、まず、第1駆動信号供給部30bに第1吐出駆動指令を、第2駆動信号供給部30cに第2吐出駆動指令をそれぞれ出力する(ステップS102)。
これにより、第1駆動信号供給部30aは第1吐出駆動指令に対応する第1波形データをデータ記憶部30dから読み出し、第2駆動信号供給部30bは第2吐出駆動指令に対応する第2波形データをデータ記憶部30dから読み出す(ステップS104)。
【0078】
ここで、第1波形データ及び第2波形データは、流体吐出装置1の1回の吐出によって、1つのマイクロカプセル90を形成することができる吐出量の分散液60及びカプセル前駆体70が吐出されるように駆動信号の波形パターンが設定されたデータとなる。この吐出量は、所望するマイクロカプセルの径などに応じて異なる。また、分散液60及びカプセル前駆体70の粘性等の性質によって、同じ吐出圧力でも吐出量などが異なってくるため、吐出する流体の特性に応じて適切な波形データを作成する。
【0079】
引き続き、第1駆動信号供給部30bは第1波形データをD/A変換して第1駆動信号を生成し、第2駆動信号供給部30cは第2波形データをD/A変換して第2駆動信号を生成する(ステップS106)。
更に、第1駆動信号供給部30b,第2駆動信号供給部30cは、第1駆動信号,第2駆動信号を、同期信号発生部30fから供給される同期信号に同期して、圧電素子401A,401Bに、供給線45A,45Bを介してそれぞれ出力する(ステップS108)。
【0080】
ここで、例えば、吐出開始タイミングについては、分散液60と、カプセル前駆体70とが略同時のタイミングで、あるいは、カプセル前駆体70が分散液60より所定時間だけ先行するタイミングで吐出を開始するように、第1波形データ及び第2波形データを構成することで設定できる。加えて、吐出終了のタイミングについては、分散液60と、カプセル前駆体70とが略同時のタイミングで、あるいは、分散液60がカプセル前駆体70より所定時間だけ先行するタイミングで吐出を終了するように、第1波形データ及び第2波形データを構成することで設定できる。
【0081】
この吐出開始タイミングから吐出終了タイミングまでと次の吐出開始までのインターバル期間とが第1〜第2駆動信号の1周期となり、この1周期の駆動信号で1つのマイクロカプセル90が形成される。このような駆動信号を連続して出力することで、複数のマイクロカプセル90を連続して形成することができる。
一方、流体吐出装置1は、駆動スイッチがオンにされたことに応じて、初期動作として、第1駆動信号の供給前に、ポンプ20Aを駆動して、流体容器10Aに収容された分散液60を接続チューブ15A及び25Aを介して吸引し、吸引した分散液60を第1入口流路管502Aへと供給する。
【0082】
同様に、第2駆動信号の供給前に、ポンプ20Bを駆動して、流体容器10Bに収容されたカプセル前駆体70を接続チューブ15B及び25Bを介して吸引し、吸引したカプセル前駆体70を第2入口流路管502Bへと供給する。
具体的に、第1駆動信号の供給前は、ポンプ20Aによって第1入口流路管502Aには、常に一定圧力の液圧で分散液60が供給されている。その結果、圧電素子401Aが動作を行わない場合、ポンプ20Aの吐出力と第1入口流路管502A側全体の流体抵抗値の差とによって分散液60は第1流体室501A内に流動する。
【0083】
同様に、第2駆動信号の供給前は、ポンプ20Bによって第2入口流路管502Bには、常に一定圧力の液圧でカプセル前駆体70が供給されている。その結果、圧電素子401Bが動作を行わない場合、ポンプ20Bの吐出力と第2入口流路管502B側全体の流体抵抗値の差とによってカプセル前駆体70は第2流体室501B内に流動する。
この状態で、圧電素子401Aに第1駆動信号が入力され、急激に圧電素子401Aが伸張したとすると、第1流体室501A内の圧力は急速に上昇する。
この圧力は、第1入口流路管502Aに加えられていたポンプ20Aによる圧力より大きいため、第1入口流路管502A側から第1流体室501A内への分散液60の流入はその圧力によって減少し、第1出口流路511Aからの流出は増加する。
【0084】
しかし、第1入口流路管502Aのイナータンスは、第1出口流路511Aのイナータンスよりも大きいため、第1入口流路管502Aから分散液60が第1流体室501Aへ流入する流量の減少量よりも、第1出口流路511Aから吐出される分散液60の増加量のほうが大きいため、第1流路管200A(第1流路201A)にパルス状の流体吐出、つまり、脈動流が発生する。この吐出の際の圧力変動が、第1流路管200A内を伝播して、先端の第1流体吐出開口部211Aから分散液60が吐出される。
【0085】
同様に、圧電素子401Bに第2駆動信号が入力され、急激に圧電素子401Bが伸張したとすると、第2流体室501B内の圧力は急速に上昇する。
この圧力は、第2入口流路管502Bに加えられていたポンプ20Bによる圧力より大きいため、第2入口流路管502B側から第2流体室501B内へのカプセル前駆体70の流入はその圧力によって減少し、第2出口流路511Bからの流出は増加する。
【0086】
しかし、第2入口流路管502Bのイナータンスは、第2出口流路511Bのイナータンスよりも大きいため、第2入口流路管502Bからカプセル前駆体70が第2流体室501Bへ流入する流量の減少量よりも、第2出口流路511Bから吐出されるカプセル前駆体70の増加量のほうが大きいため、第2流路201Bにパルス状の流体吐出、つまり、脈動流が発生する。この吐出の際の圧力変動が、第2流路201B内を伝播して、先端の第2流体吐出開口部211Bからカプセル前駆体70が吐出される。
【0087】
一方、第1流体室501A及び第2流体室501B内は、第1入口流路管502A及び第2入口流路管502Bからの流体流入量の減少と第1出口流路511A及び第2出口流路511Bからの流体流出の増加との相互作用で、圧力上昇直後に真空状態となる。
そして、伸長状態にある圧電素子401A及び401Bは各駆動波形の立ち下がり波形形状に応じた速度で収縮していき、最終的に流体の流れは、駆動信号を供給する前の定常状態へと復帰する。なお、分散液60及びカプセル前駆体70を区別しない場合は単に流体といっている。
【0088】
このようにして、第1流体吐出開口部211A及び第2流体吐出開口部211Bから吐出された分散液60及びカプセル前駆体70は、図6に示すように、流体加速部80bにおいて加速されたバインダー溶液95によって、図中の矢印の方向に加速される。
また、分散液60及びカプセル前駆体70がバインダー溶液95中に吐出されることで、疎水性の分散液60と、親水性のカプセル前駆体70と、疎水性のバインダー溶液との相互作用によって、吐出された分散液60を吐出されたカプセル前駆体70が包み込み、やがてカプセル前駆体70の内側に分散液60が内包された球状体を形成する。
【0089】
この球状体は、吐出方向と同じバインダー溶液95の流れ方向に移動して、タンク下部80c内へと流れ込む。タンク下部80cは、流体加速部80bよりも径が大きいため、流速が緩やかとなる。タンク80cに流れ込んだ球状体は、図7に示すように、流れ込んですぐに光照射部83によって光を照射される。球状体の外郭部は光硬化性樹脂を含有するカプセル前駆体70によって構成されているため、光を照射されたカプセル前駆体70が硬化してカプセル体70’へと変化する。これにより、球状体はマイクロカプセル90となる。なお、タンク80は、遮光性を有する材料で構成されているため、分散液60及びカプセル前駆体70が吐出後において、しばらくはカプセル前駆体70に光が当たらないようになっている。また、バインダー溶液95は、図7に示すように、攪拌機84によって攪拌されているため、マイクロカプセル90は、タンク下部80c内のバインダー溶液95中に偏在(凝集)せずに分散する。
【0090】
上記一連のマイクロカプセル90の形成プロセスを必要な回数繰り返し行うことで、やがて、タンク下部80cのバインダー溶液95中には所望密度(所望量)のマイクロカプセル90が散在した状態となり、MC塗布液96が構成される。
このようにして構成されたMC塗布液96を、コーター等を用いて、図8に示すように、シート基板320に直接塗布することによって、マイクロカプセル90の塗布膜(MC塗布膜)300を形成することができる。
【0091】
(作用・効果)
以上、本実施形態のMC製造装置2は、同心二重構造のノズルにおける第1流路管200Aの管内である第1流路201Aを介して第1流体吐出開口部211Aから第1流体(分散液60)を、キャリア流体95(バインダー溶液95)中に吐出することができる。加えて、同心二重構造のノズルにおける第2流路201Bを介して第2流体吐出開口部211Bから第2流体(カプセル前駆体70)を、バインダー溶液95中に吐出することができる。
【0092】
また、分散液60及びカプセル前駆体70の吐出タイミングは、各波形データによって、両者を略同時に吐出、一方を他方に対して所定時間だけずらして吐出等、設定することができる。加えて、分散液60及びカプセル前駆体70の吐出停止タイミングは、各波形データによって、これらを略同時に吐出停止、それぞれを所定時間ずつずらして吐出停止等、設定することができる。
【0093】
また、分散液60を疎水性とした場合は、カプセル前駆体70を親水性、バインダー溶液95を疎水性とし、分散液60を親水性とした場合は、カプセル前駆体70を疎水性、バインダー溶液95を親水性とした。
以上のことから、吐出した分散液60と、吐出したカプセル前駆体70と、これらの受け側となるバインダー溶液95との相互作用によって、球殻状のカプセル前駆体70の内側に分散液60が内包された球状体を形成することができる。カプセル前駆体70がゲル化剤を含有する場合は、この球状体をマイクロカプセルの完成形とすることも可能である。本実施形態では、カプセル強度(変形強度、機械強度等)を高めるべく、光硬化性樹脂を含有するカプセル前駆体70を用いた。
【0094】
具体的に、本実施形態のMC製造装置2は、光硬化性樹脂を含有するカプセル前駆体70を用いた場合に、光照射部83によって、上記球状体に対して光を照射することができる。これにより、最外郭部を形成するカプセル前駆体70をカプセル体70’へと硬化させて、マイクロカプセル90を形成することができる。
このようにして形成されるマイクロカプセル90は、第1流路管200Aの内径及び第2流路管200Bの内径によって粒径(分散液部分の径及びカプセル体を含めた全体の径)が決まるため、複数(大量)のマイクロカプセル90を形成する場合に、粒径の均一なマイクロカプセルを容易に形成することができる。
【0095】
更に、本実施形態のMC製造装置2は、ポンプ86、接続管85及び87によって、流体排出部82から、タンク下部80c内のバインダー溶液95を吸引し、吸引したバインダー溶液95をキャリア流体供給部81を介して、タンク上部80a内に供給する(圧をかける)ことで、タンク80内に充填したバインダー溶液95を循環させることができる。
【0096】
これにより、タンク80内に充填された少なくとも流体吐出開口部211前後のバインダー溶液95に対して、流体吐出装置1の吐出方向と同方向の流れを形成することができる。従って、流体吐出開口部211から吐出された分散液60及びカプセル前駆体70のノズルからの切れを良くすることができる。
加えて、本実施形態では、流体加速部80bにおいて、バインダー溶液95の上記吐出方向の流速を加速することができるので、流体吐出開口部211から吐出された分散液60及びカプセル前駆体70のノズルからの切れを、より良くすることができる。
【0097】
更に、本実施形態のMC製造装置2は、分散液60及びカプセル前駆体70の吐出前後の流速を速め、以降の流速を緩めることができるので、流体のノズルからの切れを良くすると共に、吐出後の光の照射、球状体の形成等を精度良く行うことができる。
更に、本実施形態のMC製造装置2は、バインダー溶液95中においてマイクロカプセル90を形成することができるので、タンク下部80c内において、所望密度(所望量)のマイクロカプセル90を形成することによって、タンク下部80c内にMC塗布液96を形成することができる。このMC塗布液96は、例えば、シート基板上に直接塗布して用いることができるので、従来のMC塗布液の製造工程と比較して簡易化(工程数を低減)することができるので、製造コストを低減することができる。
【0098】
また、従来の懸濁重合等によって製造されるマイクロカプセルの場合、マイクロカプセルに付着した水等の液体を除去する必要があり、液体の除去後にバインダー溶液に分散させる。このときに、液体が除去しきれず、液体とバインダー溶液とが混ざり合ってしまうとバインダー溶液(MC塗布液)の抵抗が不安定となる。これに対して、本実施形態のMC製造装置2は、バインダー溶液中でマイクロカプセルを形成するので、バインダー溶液に水等が混ざることがなくMC塗布液の抵抗を安定させることができる。
【0099】
更に、本実施形態のMC製造装置2は、攪拌機84によって、タンク下部80c内に形成されたマイクロカプセル90を攪拌することができるので、タンク下部80cにおいて複数(多数)のマイクロカプセル90がタンク内で凝集するのを防ぐことができる。
ここで、マイクロカプセル90が凝集するとカプセル同士がくっつくなどの不具合が発生する可能性があるので、このようなくっつき等の凝集による不具合の発生を低減することができる。
【0100】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態を図面に基づき説明する。図9〜図13は、本発明に係るマイクロカプセルの製造方法、マイクロカプセル塗布膜の形成方法及びマイクロカプセルの製造装置の第2実施形態を示す図である。
本実施形態においては、第1実施形態の流体吐出装置1における同心二重のノズル構造を同心三重のノズル構造として第3流路を追加し、3つの圧電素子によって3つの流路及び吐出口から第1流体、第2流体、第3流体をそれぞれ吐出するように構成した点で上記第1実施形態と異なる。
更に、上記第1実施形態のMC製造装置2における流体吐出装置1を、同心三重構造のノズルを備えた流体吐出装置に置換してなるMC製造装置によって、上記第1実施形態におけるマイクロカプセル90の外周面を、更に接着材料によって形成される外郭部で覆った構造のマイクロカプセルを製造する点で上記第1実施形態と異なる。
【0101】
以下、上記第1実施形態と同じ構成部は、同じ符号を付して適宜説明を省略し、異なる点を詳細に説明する。
(流体吐出装置の構成)
まず、本実施形態に係る流体吐出装置1’の構成を図9に基づき説明する。図9(a)は、本実施形態に係る流体吐出装置1’の概略構成を示す説明図であり、(b)は、(a)におけるB−B’断面図であり、(c)は、流体吐出開口部211’を正面から見た図である。
【0102】
流体吐出装置1’は、図9(a)に示すように、第1流体60を収容する流体容器10Aと、接続チューブ15A及び25Aと、ポンプ20Aと、第2流体70を収容する流体容器10Bと、接続チューブ15B及び25Bと、ポンプ20Bとを含んで構成される。
流体吐出装置1’は、更に、第3流体75を収容する流体容器10Cと、接続チューブ15C及び25Cと、ポンプ20Cと、圧力付与部100’とを含んで構成される。
【0103】
流体吐出装置1’は、更に、第1流体60、第2流体70及び第3流体75に対してそれぞれ吐出圧力を付与する圧力付与部100’を含んで構成される。
圧力付与部100’は、第1,第2,第3流体吐出用圧電素子401A,401B,401Cと、第1,第2,第3流体室501A,501B,501Cと、第1,第2,第3出口流路511A,511B,511Cとを含んで構成される。
圧力付与部100’は、更に、第1,第2,第3入口流路管502A,502B,502Cと、第1,第2,第3出口流路511A,511B,511Cとを含んで構成される。
【0104】
流体吐出装置1’は、更に、第1流体吐出用圧電素子401A、第2流体吐出用圧電素子401B及び第3流体吐出用圧電素子401Cを駆動する駆動部30’を含んで構成される。第1流体吐出用圧電素子401Aと駆動部30’とは、駆動信号を供給するための2本の供給線JPZT1(−)及びJPZT1(+)を絶縁材料によって被覆した被覆線45Aによって電気的に接続されている。また、第2流体吐出用圧電素子401Bと駆動部30’とは、駆動信号を供給するための2本の供給線JPZT2(−)及びJPZT2(+)を絶縁材料によって被覆した被覆線45Bによって電気的に接続されている。また、第3流体吐出用圧電素子401Cと駆動部30’とは、駆動信号を供給するための2本の供給線JPZT3(−)及びJPZT3(+)を絶縁材料によって被覆した被覆線45Cによって電気的に接続されている。
【0105】
流体吐出装置1’は、更に、圧力付与部100’に接続された流体流路管200’を備え、流体流路管200’の先端部には流体吐出開口部211’が形成されている。
流体流路管200’は、第1流路管200Aと、第1流路管200Aの外径よりも大きい内径を有する第2流路管200Bと、第2流路管200Bの外径よりも大きい内径を有する第3流路管200Cとを有している。そして、図9(b)のB−B’断面図に示すように、第2流路管200Bが第1流路管200Aを同心で内包し、第1流路管200Aを内包した第2流路管200Bを更に同心で内包した同心三重の構造を有している。
【0106】
この同心三重の構造によって、流体流路管200’は、図9(b)に示すように、第1流路201Aと、第2流路201Bと、第2流路管200Bの外周面と第3流路管200Cの内周面との間の第2間隙部から構成される第3流路201Cとを有する。
なお、第3流体室501Cと第3流路201Cとは第3出口流路511Cを介して連通している。また、第3流体室501Cと圧力付与部100’の接続チューブ25Cの挿着部である第3入口流路管502Cとは連通している。
【0107】
また、上記同心三重の構成によって、流体吐出開口部211’は、図9(c)に示すように、第1流体吐出開口部211Aと、第2流体吐出開口部211Bと、上記第2間隙部の開口部である第3流体吐出開口部211Cとを有する。
以上より、本実施形態では、第1流路管200Aと、第2流路管200Bと、第3流路管200Cと、第1流体吐出開口部211Aと、第2流体吐出開口部211Bと、第3流体吐出開口部211Cとから同心三重構造のノズルを構成している。
【0108】
(流体吐出装置1’における流体の流動について)
ここで、第1流体60及び第2流体70の流動については、上記第1実施形態と同様となる。従って、以下、第3流体75の流動について説明する。
流体容器10Cに収容された第3流体75は、接続チューブ15Cを介してポンプ20Cによって吸引され、一定の圧力で接続チューブ25Cを介して第3流体室501Cに供給される。第3流体室501Cは、第3流体吐出用圧電素子401Cの伸縮力によってその容積を変更可能な構成を有している。従って、駆動部30’からの駆動信号によって第3流体吐出用圧電素子401Cを伸縮して第3流体室501Cの容積を変更することで第3流体室501C内の圧力を変更することができる。この圧力の変更によって、第3流体室501C内の第3流体75に吐出力を付与し、第3流路201C、第3流体吐出開口部211Cを通して第3流体75を吐出する。
なお、ポンプ20Cに限らず、輸液バッグ等に第3流体75を収容し、スタンド等によって圧力付与部100’よりも高い位置に保持するようにしてもよい。これにより、ポンプ20Cを不要とし、構成を簡素化することができる。
【0109】
また、本実施形態において流体吐出装置1’は、第1入口流路管502A側のイナータンスが、第1出口流路511A側のイナータンスよりも大きくなるように、第1入口流路管502Aの流路長及び断面積、第1出口流路511Aの流路長及び断面積が設計されている。また、第2入口流路管502B側のイナータンスが、第2出口流路511B側のイナータンスよりも大きくなるように、第2入口流路管502Bの流路長及び断面積、第2出口流路511Bの流路長及び断面積が設計されている。また、第3入口流路管502C側のイナータンスが、第3出口流路511C側のイナータンスよりも大きくなるように、第3入口流路管502Cの流路長及び断面積、第3出口流路511Cの流路長及び断面積が設計されている。
【0110】
(駆動部30’の構成)
次に、図10に基づき、駆動部30’の詳細な構成を説明する。
ここで、図10は、駆動部30’の詳細な構成を示すブロック図である。
駆動部30’は、図10に示すように、動作制御部30aと、第1駆動信号供給部30bと、第2駆動信号供給部30cと、データ記憶部30dと、同期信号発生部30fと、第3駆動信号供給部30gとを含んで構成されている。
動作制御部30aは、流体吐出装置1’の入力装置(不図示)からの操作入力に応じて、各構成部に動作指令を与える役割を担うもので、第1駆動信号供給部30bの駆動信号の供給処理、第2駆動信号供給部30cの駆動信号の供給処理、第3駆動信号供給部30gの駆動信号の供給処理などの各種動作処理を制御する機能を有している。
【0111】
具体的に、動作制御部30aは、流体吐出装置1’の駆動スイッチ(不図示)がオフの状態からオンの状態になったと判定したときに、流体を吐出させるために第1駆動信号供給部30b、第2駆動信号供給部30c及び第3駆動信号供給部30gに対して吐出駆動指令を出力する。
これによって、同期信号発生部30fからの同期信号に同期して、第3駆動信号供給部30gから第3駆動信号が第3流体吐出用圧電素子401C(以下、単に圧電素子401Cという)に供給される。これにより、圧電素子401Cが伸張動作を行い、第3流体室501Cが縮小し室内の第3流体75が圧縮され、第3流体75が第3出口流路511C及び第3流路201Cを介して第3流体吐出開口部211Cから吐出される。
【0112】
なお、第1駆動信号供給部30b及び第2駆動信号供給部30cの第1駆動信号及び第2駆動信号に対する吐出動作については、上記第1実施形態と同様となるので説明を省略する。
また、流体吐出装置1’の駆動スイッチがオンの状態からオフの状態になったときに、流体の吐出を停止させるために第1駆動信号供給部30b、第2駆動信号供給部30c及び第3駆動信号供給部30gに対して吐出停止指令を出力する。これによって、流体の吐出が停止する。
【0113】
具体的に、第3駆動信号供給部30gは、吐出駆動供給指令に含まれる吐出駆動用の波形指定情報に基づき、それぞれ該当する波形情報(デジタルの波形データ)をデータ記憶部30dから読み出す。そして、読み出した波形情報をDA変換してアナログの駆動信号を生成し、該生成した駆動信号(第3駆動信号)を同期信号に同期させて圧電素子401Cに供給する。
【0114】
更に、第3駆動信号供給部30gは、動作制御部30aからの吐出停止指令に応じて、第3駆動信号の供給を停止する機能を有している。本実施形態では、第3駆動信号の供給途中で動作制御部30aから停止指令が入力されたときは、供給途中の1周期の波形を最後まで圧電素子401Cに供給してから第3駆動信号の供給を停止するようになっている。
本実施形態の同期信号発生部30fは、生成した同期信号を第1駆動信号供給部30b、第2駆動信号供給部30c及び第3駆動信号供給部30gにそれぞれ供給する。
【0115】
なお、駆動部30’は、上記各構成部の機能をソフトウェアを用いて実現するため、および上記各機能の実現に必要なハードウェアを制御するソフトウェアを実行するためのコンピューターシステムを備えている。このコンピューターシステムのハードウェア構成は、図示しないが、プロセッサー(Processer)と、RAM(Random Access Memory)と、ROM(Read Only Memory)とを有し、これらの間を各種内外バスで接続した構成となっている。
更に、バスには、IEEE1394、USB、パラレルポート等の入出力インターフェース(I/F)を介して、例えば、CRTまたはLCDモニター等の表示装置、操作パネル、マウス、キーボード等の入力装置が接続されている。
【0116】
そして、電源を投入すると、ROM等に記憶されたシステムプログラムが、ROMに予め記憶された上記各部の機能を実現するための各種専用のコンピュータープログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムに記述された命令に従ってプロセッサーが各種リソースを駆使して所定の制御および演算処理を行うことで前述したような各機能を実現するようになっている。
【0117】
(吐出動作制御処理)
次に、図3に基づき、駆動部30’における吐出動作制御処理の処理手順を説明する。
駆動部30’における吐出動作制御処理は、上記第1実施形態の駆動部30の吐出動作制御処理に、第3駆動信号供給部30gによる吐出制御処理が加わるだけで、処理手順の流れは図3に示すフローチャートと同様となる。従って、以下、図3に基づき、本実施形態の吐出動作制御処理の処理手順を説明する。
プロセッサーによって専用のプログラムが実行され、動作制御処理が開始されると、図3に示すように、まず、ステップS100に移行する。
【0118】
ステップS100では、動作制御部30aにおいて、流体吐出装置1の駆動スイッチがオンになったか否かを判定する。そして、オンになったと判定した場合(Yes)は、ステップS102に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、オンになるまで判定処理を繰り返す。
ステップS102に移行した場合は、動作制御部30aにおいて、第1駆動信号供給部30bに対して第1吐出駆動指令を出力し、第2駆動信号供給部30cに対して第2吐出駆動指令を出力し、第3駆動信号供給部30gに対して第3吐出駆動指令を出力して、ステップS104に移行する。
【0119】
ステップS104では、第1駆動信号供給部30bにおいて、第1吐出駆動指令に含まれる指定波形の識別情報に基づき、圧電素子401Aの駆動に用いる吐出駆動用の第1波形データをデータ記憶部30dから読み出す。一方、第2駆動信号供給部30cにおいて、第2吐出駆動指令に含まれる指定波形の識別情報に基づき、圧電素子401Bの駆動に用いる吐出駆動用の第2波形データをデータ記憶部30dから読み出す。また、第3駆動信号供給部30gにおいて、第3吐出駆動指令に含まれる指定波形の識別情報に基づき、圧電素子401Cの駆動に用いる吐出駆動用の第3波形データをデータ記憶部30dから読み出して、ステップS106に移行する。
【0120】
ステップS106では、第1駆動信号供給部30bにおいて、ステップS104で読み出した第1波形データのデジタルの波形信号をアナログの波形信号にDA変換する。一方、第2駆動信号供給部30cにおいて、ステップS104で読み出した第2波形データのデジタルの波形信号をアナログの波形信号にDA変換する。また、第3駆動信号供給部30gにおいて、ステップS104で読み出した第3波形データのデジタルの波形信号をアナログの波形信号にDA変換して、ステップS108に移行する。
【0121】
ステップS108では、第1駆動信号供給部30bにおいて、同期信号発生部30fからの同期信号に同期して、ステップS106でDA変換して得られたアナログの信号波形からなる第1駆動信号を、圧電素子401Aに出力する。一方、第2駆動信号供給部30cにおいて、同期信号発生部30fからの同期信号に同期して、ステップS106でDA変換して得られたアナログの信号波形からなる第2駆動信号を、圧電素子401Bに出力する。また、第3駆動信号供給部30gにおいて、同期信号発生部30fからの同期信号に同期して、ステップS106でDA変換して得られたアナログの信号波形からなる第3駆動信号を、圧電素子401Cに出力して、ステップS110に移行する。
【0122】
ステップS110では、動作制御部30aにおいて、流体吐出装置1’の駆動スイッチがオフになったか否かを判定し、オフになったと判定した場合(Yes)は、ステップS112に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS108に移行する。
ステップS112では、動作制御部30aにおいて、第1駆動信号供給部30bに対して第1吐出停止指令を出力し、第2駆動信号供給部30cに対して第2吐出停止指令を出力し、第3駆動信号供給部30gに対して第3吐出停止指令を出力して、ステップS114に移行する。
【0123】
ステップS114に移行した場合は、第1駆動信号供給部30b、第2駆動信号供給部30c及び第3駆動信号供給部30gにおいて、出力信号は1周期の途中か否かを判定し、途中であると判定した場合(Yes)は、ステップS116に移行し、そうでないと判定した場合(No)は、ステップS118に移行する。
ステップS116に移行した場合は、第1駆動信号供給部30b、第2駆動信号供給部30c及び第3駆動信号供給部30gにおいて、1周期分の第1駆動信号、第2駆動信号及び第3駆動信号を全て出力後に、第1駆動信号、第2駆動信号及び第3駆動信号の供給を停止して、ステップS100に移行する。
【0124】
一方、ステップS118に移行した場合は、第1駆動信号供給部30b、第2駆動信号供給部30c及び第3駆動信号供給部30gにおいて、第1駆動信号、第2駆動信号及び第3駆動信号の供給を直ちに停止して、ステップS100に移行する。
つまり、第1駆動信号供給部30b、第2駆動信号供給部30c及び第3駆動信号供給部30gは、第1駆動信号、第2駆動信号及び第3駆動信号を、吐出停止指令があるまで繰り返し出力(供給)する。
【0125】
(マイクロカプセルの製造装置の構成)
本実施形態のMC製造装置2’の構成は、上記第1実施形態のMC製造装置2における流体吐出装置1を本実施形態の流体吐出装置1’に置換し、キャリア流体95を、キャリア流体97に置換し、マイクロカプセル90を、マイクロカプセル98に置換した構成となる。その他の構成は、MC製造装置2と同様となる。
【0126】
(マイクロカプセルの製造プロセスにおいて用いる流体材料について)
次に、本実施形態のMC製造装置2’を用いたマイクロカプセルの製造プロセスにおいて用いる流体材料について説明する。
まず、第1流体60として、上記第1実施形態と同様の分散液60を用意し、第2流体70として、上記第1実施形態と同様のカプセル前駆体70を用意する。
そして、第3流体75として、親水性及び疎水性についてカプセル前駆体70とは反対の性質を有する接着材料を用意する。
【0127】
また、キャリア流体97として、親水性及び疎水性について接着材料75とは反対の性質を有する液体を用意する。つまり、分散液60が疎水性であれば、カプセル前駆体70は親水性、接着材料75は疎水性、キャリア流体97は親水性となるようにそれぞれ材料を選定する。また、分散液60が親水性であれば、カプセル前駆体70は疎水性、接着材料75は親水性、キャリア流体97は疎水性となるようにそれぞれ材料を選定する。
接着材料75の構成材料としては、例えば、EVAエマルジョン、ウレタンエマルジョンなどを用いることができる。
また、キャリア流体97としては、例えば、水などを用いることができる。
【0128】
(マイクロカプセルの製造プロセス)
次に、図4、図11〜図13に基づき、上記MC製造装置2’によるマイクロカプセルの具体的な製造プロセスを説明する。
ここで、図11は、本実施形態のマイクロカプセルの構成例を模式的に示す図である。また、図12は、MC製造装置2’における流体加速部80bの付近を拡大した模式図である。また、図13は、MC製造装置2’における各種構成部の動作及び作用を簡易化して示す模式図である。
【0129】
まず、図11に基づき、MC製造装置2’によって製造するマイクロカプセルの構成例について説明する。
以下の説明において製造するマイクロカプセル98は、図11に示すように、カプセル前駆体70を光硬化して形成される球殻状の外郭部(カプセル体70’)の内側に分散液60を内包したもの(第1実施形態のマイクロカプセル90)を、更に球殻状の接着材料75によって包み込んだ構成となっている。従って、本実施形態のマイクロカプセル98も球状をなしている。
【0130】
分散液60は、上記第1実施形態の図5(a)に示すものと同様の構成(疎水性)となっており、カプセル前駆体70も、上記第1実施形態の図5(a)に示すものと同様の構成(親水性)となっている。
また、接着材料75として、EVAエマルジョン、ウレタンエマルジョン等の疎水性のものを用い、キャリア流体97として、水(以下、水97という)を用いる。
【0131】
次に、上記図11に示すマイクロカプセル98の製造プロセスについて説明する。
まず、図4に示す姿勢で固定配置された流体吐出装置1’の流体容器10Aに、図11に示す構成の疎水性の分散液60を収容し、流体容器10Bに、少なくとも親水性の光硬化性樹脂を含有するカプセル前駆体70を収容する。更に、流体容器10Cに、疎水性の接着材料75を収容する。
【0132】
更に、タンク80内に水97を充填し、ポンプ86を駆動する。これにより、上記第1実施形態のバインダー溶液95と同様に、タンク下部80c内の水97が吸引され、吸引された水97が、図4中の矢印S4〜S8に示すように、タンク上部80a内へと流れ込む。更に、タンク上部80a内に流れ込んだ水97は、図4中の矢印S9〜S10に示すように流体加速部80b内に流れ込み、そこでの圧力変化によって、図4中の矢印S11〜S12に示す方向に加速され、その後、タンク下部80cに流入することで流速が弱まる。そして、上記第1実施形態のバインダー溶液95と同様に、タンク80c→ポンプ86→キャリア流体供給部81→タンク80a→タンク80b(加速)→タンク80c→ポンプ86→・・・といった水97の循環が行われる。
【0133】
次に、水97をタンク80内に循環した状態で、流体吐出装置1’のスイッチをオンにする(ステップS100の「Yes」の分岐)。これにより、流体吐出装置1’は、動作制御部30aにおいて、まず、第1駆動信号供給部30bに第1吐出駆動指令を、第2駆動信号供給部30cに第2吐出駆動指令を、第3駆動信号供給部30gに第3吐出駆動指令をそれぞれ出力する(ステップS102)。
第1駆動信号供給部30aは第1吐出駆動指令に対応する第1波形データを、第2駆動信号供給部30bは第2吐出駆動指令に対応する第2波形データを、第3駆動信号供給部30gは第3波形データを、それぞれデータ記憶部30dから読み出す(ステップS104)。
【0134】
ここで、第1波形データ、第2波形データ及び第3波形データは、流体吐出装置1’の1回の吐出によって、1つのマイクロカプセル98を形成することができる吐出量の分散液60、カプセル前駆体70及び接着材料75が吐出されるように駆動信号の波形パターンが設定されたデータとなる。この吐出量は、所望するマイクロカプセルの径などに応じて異なる。また、分散液60、カプセル前駆体70及び接着材料75の粘性等の性質によって、同じ吐出圧力でも吐出量などが異なってくるため、吐出する流体の特性に応じて適切な波形データを作成する。
【0135】
引き続き、第1駆動信号供給部30bは第1波形データをD/A変換して第1駆動信号を生成し、第2駆動信号供給部30cは第2波形データをD/A変換して第2駆動信号を生成し、第3駆動信号供給部30gは第3波形データをD/A変換して第3駆動信号を生成する(ステップS106)。
更に、第1駆動信号供給部30b,第2駆動信号供給部30c,第3駆動信号供給部30gは、第1駆動信号,第2駆動信号,第3駆動信号を、同期信号発生部30fから供給される同期信号に同期して、圧電素子401A,401B,401Cに、供給線45A,45B,45Cを介してそれぞれ出力する(ステップS108)。
【0136】
ここで、例えば、吐出開始タイミングについては、分散液60と、カプセル前駆体70と、接着材料75とが略同時のタイミングで、あるいは、カプセル前駆体70が分散液60より所定時間だけ先行し、かつ接着材料75がカプセル前駆体70より所定時間だけ先行するタイミングで吐出を開始するように、第1波形データ、第2波形データ及び第3波形データを構成することで設定できる。加えて、吐出終了のタイミングについては、分散液60と、カプセル前駆体70と、接着材料75とが略同時のタイミングで、あるいは、分散液60がカプセル前駆体70より所定時間だけ先行しかつカプセル前駆体70が接着材料75より所定時間だけ先行するタイミングで吐出を終了するように、第1波形データ、第2波形データ及び第3波形データを構成することで設定できる。
【0137】
この吐出開始タイミングから吐出終了タイミングまでと次の吐出開始までのインターバル期間とが第1〜第3駆動信号の1周期となり、この1周期の駆動信号で1つのマイクロカプセル98が形成される。このような駆動信号を連続して出力することで、複数のマイクロカプセル98を連続して形成することができる。
一方、流体吐出装置1’は、駆動スイッチがオンにされたことに応じて、初期動作として、第3駆動信号の供給前に、ポンプ20Cを駆動して、流体容器10Cに収容された接着材料75を接続チューブ15C及び25Cを介して吸引し、吸引した接着材料75を第3入口流路管502Cへと供給する。
【0138】
具体的に、第3駆動信号の供給前は、ポンプ20Cによって第3入口流路管502Cには、常に一定圧力の液圧で接着材料75が供給されている。その結果、圧電素子401Cが動作を行わない場合、ポンプ20Cの吐出力と第3入口流路管502C側全体の流体抵抗値の差とによって接着材料75は第3流体室501C内に流動する。
なお、分散液60及びカプセル前駆体70の駆動信号の供給前における流動は、上記第1実施形態と同様となるので説明を省略する。
【0139】
この状態で、圧電素子401Cに第3駆動信号が入力され、急激に圧電素子401Cが伸張したとすると、第3流体室501C内の圧力は急速に上昇する。
この圧力は、第3入口流路管502Cに加えられていたポンプ20Cによる圧力より大きいため、第3入口流路管502C側から第3流体室501C内への接着材料75の流入はその圧力によって減少し、第3出口流路511Cからの流出は増加する。
【0140】
しかし、第3入口流路管502Cのイナータンスは、第3出口流路511Cのイナータンスよりも大きいため、第3入口流路管502Cから接着材料75が第3流体室501Cへ流入する流量の減少量よりも、第3出口流路511Cから吐出される接着材料75の増加量のほうが大きいため、第3流路管200C(第3流路201C)にパルス状の流体吐出、つまり、脈動流が発生する。この吐出の際の圧力変動が、第3流路管200C内を伝播して、先端の第3流体吐出開口部211Cから接着材料75が吐出される。
なお、分散液60及びカプセル前駆体70の駆動信号の供給後における吐出動作は、上記第1実施形態と同様となるので説明を省略する。
【0141】
一方、第1流体室501A、第2流体室501B及び第3流体室501C内は、第1入口流路管502A、第2入口流路管502B及び第3入口流路管502Cからの流体流入量の減少と第1出口流路511A、第2出口流路511B及び第3出口流路511Cからの流体流出の増加との相互作用で、圧力上昇直後に真空状態となる。
そして、伸長状態にある圧電素子401A、401B及び401Cは各駆動波形の立ち下がり波形形状に応じた速度で収縮していき、最終的に流体の流れは、駆動信号を供給する前の定常状態へと復帰する。なお、分散液60、カプセル前駆体70及び接着材料75を区別しない場合は単に流体といっている。
このようにして、第1流体吐出開口部211A、第2流体吐出開口部211B及び第3流体吐出開口部211Cから吐出された分散液60、カプセル前駆体70及び接着材料75は、図12に示すように、流体加速部80bにおいて加速された水97によって、図中の矢印の方向に加速される。
【0142】
また、分散液60、カプセル前駆体70及び接着剤75が水97中に吐出されることで、疎水性の分散液60と、親水性のカプセル前駆体70と、疎水性の接着材料75と、水97との相互作用によって、吐出された分散液60を吐出されたカプセル前駆体70が包み込んでいき、更に、吐出された接着材料75が分散液60を内包したカプセル前駆体70を包み込んでいく。やがて接着材料75の内側にカプセル前駆体70が、このカプセル前駆体70の内側に分散液60がそれぞれ内包された球状体を形成する。
【0143】
この球状体は、吐出方向と同じ水97の流れ方向に移動して、タンク下部80c内へと流れ込む。タンク下部80cは、流体加速部80bよりも径が大きいため、流速が緩やかとなる。タンク80cに流れ込んだ球状体は、図13に示すように、流れ込んですぐに光照射部83によって光を照射される。これにより、光を照射されたカプセル前駆体70が硬化してカプセル体70’へと変化する。これにより、球状体はマイクロカプセル98となる。なお、タンク80は、少なくとも流体加速部80bが遮光性を有する材料で構成されているため、分散液60、カプセル前駆体70及び接着剤75が吐出後において、しばらくはカプセル前駆体70に光が当たらないようになっている。また、水97は、攪拌機84によって攪拌されているため、マイクロカプセル98は、タンク下部80c内の水97中に凝集せずに分散する。
【0144】
このようにして形成されたマイクロカプセル98は、上記第1実施形態のマイクロカプセル90に対して最外郭部に接着剤の膜(層)が付加された構成となる。
上記一連のマイクロカプセル98の形成プロセスを必要な回数繰り返し行うことで、所望量のマイクロカプセル98を形成することができる。
【0145】
(作用・効果)
以上、本実施形態のMC製造装置2’は、同心三重構造のノズルにおける第1流路管200Aの管内である第1流路201Aを介して第1流体吐出開口部211Aから第1流体(分散液60)を、キャリア流体97(例えば水)中に吐出することができる。加えて、同心三重構造のノズルにおける第2流路201Bを介して第2流体吐出開口部211Bから第2流体(カプセル前駆体70)を、キャリア流体97中に吐出することができる。更に、同心三重構造のノズルにおける第3流路201Cを介して第3流体吐出開口部211Cから第3流体(接着材料75)を、キャリア流体97中に吐出することができる。
【0146】
また、分散液60、カプセル前駆体70及び接着材料75の吐出タイミングを、各波形データによって、これらを略同時に吐出、それぞれを所定時間ずつずらして吐出等、設定することができる。加えて、分散液60、カプセル前駆体70及び接着材料75の吐出停止タイミングを、各波形データによって、これらを略同時に吐出停止、それぞれを所定時間ずつずらして吐出停止等、設定することができる。
また、分散液60を疎水性とした場合は、カプセル前駆体70を親水性、接着材料75を疎水性、キャリア流体97を親水性とし、分散液60を親水性とした場合は、カプセル前駆体70を疎水性、接着材料75を親水性、キャリア流体97を疎水性とした。
【0147】
以上のことから、吐出した分散液60と、吐出したカプセル前駆体70と、吐出した接着材料75と、これらの受け側となるキャリア流体97との相互作用によって、球殻状の接着材料75を最外郭としてその内側に、球殻状のカプセル前駆体70の内側に分散液60が内包されたものを更に内包した球状体を形成することができる。
ここで、カプセル前駆体70が、吐出後に硬化等するなど状態の変化しないもの、あるいは状態を変化させる工程を不要とするものである場合は、この球状体をマイクロカプセルの完成形とすることが可能である。本実施形態では、カプセル強度(変形強度、機械強度等)を高めるべく、光硬化性樹脂を含有するカプセル前駆体70を用いている。
【0148】
具体的に、本実施形態のMC製造装置2’は、光硬化性樹脂を含有するカプセル前駆体70を用いた場合に、光照射部83によって、上記球状体に対して光を照射することができる。これにより、カプセル前駆体70をカプセル体70’へと光硬化させて、マイクロカプセル98を形成することができる。
このようにして形成されるマイクロカプセル98は、第1流路管200Aの内径、第2流路管200Bの内径及び第3流路管200Cの内径によって粒径(分散液部分の径及びカプセル体を含めた全体の径)が決まるため、複数(大量)のマイクロカプセル98を形成する場合に、粒径の均一なマイクロカプセルを容易に形成することができる。
【0149】
また、マイクロカプセル98の最外郭部に接着材料75による膜(層)を形成することができるので、その粘着性又は接着性によって、このマイクロカプセル98を対向配置された2枚のシート基板間に配置した際に、各基板からの剥離強度を向上することができる。
また、粒径を均一にできることから、上記対向シート基板間に複数のマイクロカプセル98を配置した場合に、基板間に気泡が入りにくくすることができる。これにより、例えば、電気泳動粒子を移動させるために、基板間に電界をかけた場合に、気泡による電界強度の低下等が発生するのを低減することができる。
【0150】
更に、本実施形態のMC製造装置2’は、ポンプ86、接続管85及び87によって、流体排出部82から、タンク下部80c内のキャリア流体97を吸引し、吸引したキャリア流体97をキャリア流体供給部81を介して、タンク上部80a内に供給することで、タンク80内に充填したキャリア流体97を循環させることができる。
これにより、タンク80内に充填された少なくとも流体吐出開口部211前後のキャリア流体97に対して、流体吐出装置1’の吐出方向と同方向の流れを形成することができる。従って、流体吐出開口部211’から吐出された分散液60、カプセル前駆体70及び接着材料75のノズルからの切れを良くすることができる。
【0151】
加えて、本実施形態では、流体加速部80bにおいて、キャリア流体97の上記吐出方向の流速を加速することができるので、流体吐出開口部211’から吐出された分散液60、カプセル前駆体70及び接着材料75のノズルからの切れを、より良くすることができる。
更に、本実施形態のMC製造装置2’は、分散液60、カプセル前駆体70及び接着材料75の吐出前後の流速を速め、以降の流速を緩めることができるので、流体のノズルからの切れを良くすると共に、吐出後の光の照射、球状体の形成等を精度良く行うことができる。
【0152】
更に、本実施形態のMC製造装置2’は、攪拌機84によって、タンク下部8c内に形成されたマイクロカプセル98を攪拌することができるので、タンク下部80cにおいて複数(多数)のマイクロカプセル98がタンク内で凝集するのを防ぐことができる。
これにより、マイクロカプセル98同士がくっつく等の凝集による不具合の発生を低減することができる。
【0153】
(変形例)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態をとり得ることはいうまでもない。
例えば、上記各実施形態においては、流体吐出装置1及び1’を単体で用いる構成のMC製造装置2及び2’を例に挙げて説明したが、この構成に限らない。
ここで、図14(a)は、変形例に係るMC製造装置の概略構成を示す模式図であり、(b)は、(a)におけるC−C’断面図である。
【0154】
図14(a)及び(b)に示すように、例えば、MC製造装置2において、複数(図では3つ)の流体吐出装置1を並べて配置できるように、タンク80及びキャリア流体供給部81を構成して、複数の流体吐出装置1からバインダー溶液95中に分散液60及びカプセル前駆体70を吐出できる構成としてもよい。
なお、図14(a)に示す構成であれば、バインダー溶液95に付与される流速によって、流体を吐出時に、隣接する流体吐出装置1同士から吐出される流体が混ざらないようにすることができる。
上記構成によって、MC塗布液96の製造効率を向上することができる。
【0155】
なお、このことは、MC製造装置2’も同様であり、MC製造装置2’において複数の流体吐出装置1’を並べて配置できるようにタンク80及びキャリア流体供給部81を構成して、複数の流体吐出装置1’からキャリア流体97中に分散液60、カプセル前駆体70及び接着材料75を吐出できる構成としてもよい。これにより、マイクロカプセル98の製造効率を向上することができる。
【0156】
また、上記各実施形態において、光照射部83の位置をより下方にして、タンク下部80cに流入した分散液60等の各流体材料に対して光の照射前に攪拌機84による攪拌方向の力を付与する構成としてもよい。また、専用の攪拌機を設ける構成としてもよい。
この構成によって、各流体材料の親水性及び疎水性の相互作用による球状体への移行を促進することができる。
【0157】
また、上記各実施形態において、キャリア流体95及び97をタンク80内を循環させて、キャリア流体に流速を付加する構成を例に挙げて説明したがこの構成に限らず、プロペラを用いる等の別の構成で流速を付加する構成、あるいは流速を付加しない構成としてもよい。
また、上記各実施形態において、上記循環による流速の付加に加えて、タンク80に流体加速部80bを設けて、各流体材料の吐出前後のキャリア流体95及び97を加速する構成を例に挙げて説明したが、この構成に限らず、循環による流速を付与するだけで加速しない構成としてもよい。
【0158】
また、上記各実施形態において、圧電素子の伸縮力によって流体室の圧力を変更する構成を例に挙げて説明したが、この構成に限らず、例えば、ピストン等の別のアクチュエーターによって流体室の圧力を変更する構成としてもよい。
また、上記第1実施形態において、キャリア流体95をバインダー溶液95とせずに、MC塗布液を構成する材料以外のものを用いて、マイクロカプセル90を形成する構成としてもよい。
【0159】
(本発明との対応関係)
以上説明した実施形態において、流体容器10A、接続チューブ15A及び25A、ポンプ20Aは、第1流体供給部に対応し、流体容器10B、接続チューブ15B及び25B、ポンプ20Bは、第2流体供給部に対応する。
また、流体容器10C、接続チューブ15C及び25C、ポンプ20Cは、第3流体供給部に対応する。
また、第1流体吐出用圧電素子401A及び圧力付与部30又は30’は、第1圧力変更部に対応し、第2流体吐出用圧電素子401B及び圧力付与部30又は30’は、第2圧力変更部に対応する。
また、第3流体吐出用圧電素子401C及び圧力付与部30’は、第3圧力変更部に対応する。
【符号の説明】
【0160】
1,1’…流体吐出装置、2,2’…マイクロカプセルの製造装置、10A〜10C…流体容器、15A〜15C…接続チューブ、20A〜20C,86…ポンプ、30,30’…駆動部、30a,30a’…動作制御部、30b,30c,30g…第1,第2,第3駆動信号供給部、30d…データ記憶部、30f…同期信号発生部、80…タンク、80b…流体加速部、83…光照射部、84…攪拌機、100,100’…圧力付与部、200,200’…流体流路管、200A〜200C…第1〜第3流路管、201A〜201C…第1〜第3流路、211,211’…流体吐出開口部、211A〜211C…第1〜第3流体吐出開口部、300…MC塗布膜、320…シート基板、401A〜401C…第1〜第3流体吐出用圧電素子、501A〜501C…第1〜第3流体室、502A〜502C…第1〜第3入口流路管、511A〜511C…第1〜第3出口流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流路となる第1流路管と、前記第1流路管の外径よりも大きい内径を有する第2流路管とを有し、前記第1流路管を前記第2流路管の内側に同心となる位置関係で配置した構成の流体流路管と、前記第1流路管の端部に形成された第1流体吐出開口部と、前記第1流路管の外周面と前記第2流路管の内周面との間隙部における前記第1流体吐出開口部と同じ側の端部に形成された第2流体吐出開口部とを備えた二重構造のノズルを用いてマイクロカプセルを製造するマイクロカプセルの製造方法であって、
前記第1流路管内を介して前記第1流体吐出開口部から、電気泳動粒子を分散媒に分散した親水性又は疎水性を有する分散液を吐出し、
前記間隙部を介して前記第2流体吐出開口部から、親水性又は疎水性のうち前記分散液と異なる性質を有するカプセル前駆体を、前記分散液の吐出に合わせて吐出することにより、前記カプセル前駆体が外郭部となって前記分散液を内包した構成のマイクロカプセルを形成することを特徴とするマイクロカプセルの製造方法。
【請求項2】
前記第2流路管の外径よりも大きい内径を有する第3流路管を有し、前記二重構造のノズルを、前記流体流路管を前記第3流路管の内側に同心となる位置関係で配置すると共に、前記第2流路管の外周面と前記第3流路管の内周面との第2間隙部における前記第1流体吐出開口部及び前記第2流体吐出開口部と同じ側の端部に第3流体吐出開口部を形成した構成の三重構造のノズルとし、
前記第2間隙部を介して前記第3流体吐出開口部から、親水性及び疎水性のうち前記カプセル前駆体と異なる性質を有する接着材料を、前記分散液及び前記カプセル前駆体の吐出に合わせて吐出することにより、前記接着材料が最外郭部となって前記分散液を内包したカプセル前駆体を更に内包した構成のマイクロカプセルを形成することを特徴とする請求項1に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項3】
親水性及び疎水性のうち前記カプセル前駆体と異なる性質を有したバインダー溶液の供給された容器であって、該容器内のバインダー溶液に少なくとも前記第1流体吐出開口部及び前記第2流体吐出開口部の全体が浸かるように前記二重構造のノズルを浸けた状態で、前記分散液及び前記カプセル前駆体を前記バインダー溶液中に吐出して前記マイクロカプセルを形成することを特徴とする請求項1に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項4】
前記容器内のバインダー溶液に、前記分散液及び前記カプセル前駆体の吐出方向と同じ方向の流れを生じさせることを特徴とする請求項3に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項5】
前記第1流体吐出開口部及び前記第2流体吐出開口部の周辺のバインダー溶液部分の前記吐出方向の流速を加速する流速加速部を設けて、前記バインダー溶液部分の流速とその他の部分の流速とに緩急を生じさせることを特徴とする請求項4に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項6】
前記容器内のバインダー溶液を攪拌する攪拌部を設けて、前記容器内のバインダー溶液を攪拌することを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載のマクロカプセルの製造方法。
【請求項7】
前記カプセル前駆体を光硬化性を有する材料とし、
前記第1流体吐出開口部及び前記第2流体吐出開口部から吐出された前記分散液及び前記プセル前駆体が、前記マイクロカプセルの体を形成後に光を照射して前記カプセル前駆体を硬化させることを特徴とする請求項1並びに請求項3乃至6のいずれか1項に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項8】
親水性及び疎水性のうち前記接着材料と異なる性質を有する液体の供給された容器であって、該容器内の液体に少なくとも前記第1流体吐出開口部、前記第2流体吐出開口部及び前記第3流体吐出開口部の全体が浸かるように前記三重構造のノズルを浸けた状態で、前記分散液、前記カプセル前駆体及び前記接着材料を前記液体中に吐出して前記マイクロカプセルを形成することを特徴とする請求項2に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項9】
前記容器内の液体に、前記分散液、前記カプセル前駆体及び前記接着材料の吐出方向と同じ方向の流れを発生させることを特徴とする請求項8に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項10】
前記第1流体吐出開口部、前記第2流体吐出開口部及び前記第3流体吐出開口部の周辺の液体部分の前記吐出方向の流速を加速する流速加速部を設けて、前記液体部分の流速とその他の部分の流速とに緩急を生じさせることを特徴とする請求項9に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項11】
前記容器内の液体を攪拌する攪拌部を設けて、前記容器内の液体を攪拌することを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載のマクロカプセルの製造方法。
【請求項12】
前記カプセル前駆体を光硬化性を有する材料とし、
前記第1流体吐出開口部、前記第2流体吐出開口部及び前記第3流体吐出開口部から吐出された前記分散液、カプセル前駆体及び前記接着材料が、前記マイクロカプセルの体を形成後に光を照射して前記カプセル前駆体を硬化させることを特徴とする請求項2並びに請求項8乃至11のいずれか1項に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項13】
請求項1並びに請求項3乃至7のいずれか1項に記載のマイクロカプセルの製造方法を用いて前記バインダー溶液中に形成したマイクロカプセルを、バインダー溶液と共に基板上に塗布することにより、前記基板上にマイクロカプセルを含有するバインダー溶液の塗布膜を形成することを特徴とするマイクロカプセル塗布膜の形成方法。
【請求項14】
流体の流路となる第1流路管と、前記第1流路管の外径よりも大きい内径を有する第2流路管とを有し、前記第1流路管を前記第2流路管の内側に同心となる位置関係で配置した構成の流体流路管と、
前記第1流路管と連通する第1流体室と、
前記第1流路管の外周面と前記第2流路管の内周面との間隙部と連通する第2流体室と、
前記第1流体室に第1流体を供給する第1流体供給部と、
前記第2流体室に第2流体を供給する第2流体供給部と、
前記第1流路管の前記第1流体室と連通する側の端部とは反対側の端部に形成された第1流体吐出開口部と、
前記間隙部の前記第2流体室と連通する側の端部とは反対側の端部に形成された第2流体吐出開口部と、
前記第1流体室内の圧力を変更する第1圧力変更部と、
前記第2流体室内の圧力を変更する第2圧力変更部と、を備え、
前記第1流体供給部は、前記第1流体室に前記第1流体として電気泳動粒子を分散媒に分散した親水性又は疎水性を有する分散液を供給し、
前記第2流体供給部は、前記第2流体室に前記第2流体として親水性及び疎水性のうち前記分散液と異なる性質を有するカプセル前駆体を供給し、
前記第1圧力変更部は、前記第1流体室内の圧力を変更して該第1流体室に供給された前記分散液を前記第1流体吐出開口部から吐出し、
前記第2圧力変更部は、前記第2流体室内の圧力を変更して該第2流体室に供給された前記カプセル前駆体を、前記分散液の吐出に合わせて前記第2流体吐出開口部から吐出することを特徴とするマイクロカプセルの製造装置。
【請求項15】
前記流体流路管は、前記第2流路管の外径よりも大きい内径を有する第3流路管を有し、前記第2流路管を前記第3流路管の内側に同心となる位置関係で配置すると共に前記第1流路管を前記2流路管の内側に同心となる位置関係で配置した構成となっており、
前記第2流路管の外周面と前記第3流路管の内周面との第2間隙部と連通する第3流体室と、
前記第3流体室に第3流体を供給する第3流体供給部と、
前記第2間隙部の前記第3流体室と連通する側の端部とは反対側の端部に形成された第3流体吐出開口部と、
前記第3流体室内の圧力を変更する第3圧力変更部と、を更に備え、
前記第3流体供給部は、前記第3流体室に前記第3流体として親水性又は疎水性のうち前記カプセル前駆体と異なる性質を有する接着材料を供給し、
前記第3圧力変更部は、前記第3流体室内の圧力を変更して前記第3流体吐出開口部から前記接着材料を、前記分散液及び前記カプセル前駆体の吐出に合わせて吐出することを特徴とする請求項14に記載のマイクロカプセルの製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−213738(P2012−213738A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81646(P2011−81646)
【出願日】平成23年4月1日(2011.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】