説明

マイクロカプセル付着糸の製造方法

【課題】 後加工によって、繊維表面にマイクロカプセルが付着した様々な素材の糸を、連続的に生産できる一連の製造方法の提供を課題とする。
【解決手段】 1メートル当たりの撚り回数が300以上1300以下で、伸張状態での太さが60ミクロン以上のマルチフィラメント糸又は紡績糸を2本以上用いて、1メートル当たり200以上1200以下の撚り回数で撚り合わせた糸、又はその撚り合わせ糸をさらに多段階に撚り合わせた糸を、1本でローラを通過させて粒子径50ミクロン以下のマイクロカプセルとバインダーを含有する分散液を塗布する工程、過飽和な分散液を絞り取る工程、乾燥工程、巻き取り工程という一連の工程によって処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維表面にマイクロカプセルが付着した糸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでの繊維表面にマイクロカプセルが付着した繊維の製造方法としては、紡糸段階で付着させる方法と後加工による方法がある。紡糸段階での方法としては、紡出直後のポリマー流にマイクロカプセル分散液を接触させる特許文献1記載の方法が知られている。後加工による方法としては、繊維を予めカチオン化処理した後にマイクロカプセルを吸尽染色させる特許文献2記載の方法、マイクロカプセル分散液を付着させた糸から余分な液を除去して揺動又は回転式加温乾燥機中で加温、乾燥する特許文献3記載の方法が知られている。
【特許文献1】特開平11−350240
【特許文献2】特開平5−33276
【特許文献3】特開2001−207386
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
紡糸段階でマイクロカプセルを付着させる方法では、繊維素材として溶融紡糸が可能なポリエステルなどの合成繊維に限定され、それ以外の方法で紡糸される繊維や綿、絹などの天然繊維には応用できない。また、大規模な紡糸設備が必要となるため、多品種・小ロット生産には対応しにくい。
【0004】
繊維を予めカチオン化処理した後にマイクロカプセルを吸尽染色させる後加工法では、静電気の引力でマイクロカプセルを繊維上に吸着させて少量のバインダーで接着できるため、風合いの柔らかい仕上がりが得られるという利点がある。しかし、前処理として繊維をカチオン化する必要があるため、バッチ式の多段階の工程となって加工コストが高くなる。また、カチオン化処理では染色機などの処理設備が汚染されやすいため、一般にカチオン化処理専用の設備を用意する必要があり、この点でも加工コストが高くなるという問題点がある。
【0005】
マイクロカプセル分散液を付着させた糸から余分な液を除去して揺動又は回転式加温乾燥機中で加温、乾燥する方法でも、同時に加工する糸同士が結着しないように特殊な乾燥機を利用する必要があるため、連続的な処理が不可能であり、そのために加工コストと生産効率の面で問題がある。
【0006】
本発明は、上記の従来の事情に鑑み、繊維表面にマイクロカプセルが付着した様々な素材の糸を、連続的に生産できる一連の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者らは、繊維表面にマイクロカプセルが付着した糸を連続的に製造するためには、1本の糸を走行させながら、ローラを通過させてマイクロカプセルとバインダーを含有する分散液を塗布する工程、過飽和な分散液を絞り取る工程、乾燥工程、巻き取り工程という一連の方法によって製造を行うべきであると考えた。しかし、研究の結果、糸をローラに通過させながらマイクロカプセルを含む分散液を塗布して絞り取る方法で、糸にマイクロカプセルを付着させるためには、後述の理由によって、糸の構造とマイクロカプセルの粒子径を適した条件に調整しなければならないこと分かった。
【0008】
繊維をマイクロカプセル分散液で処理する従来の方法では、繊維をマイクロカプセル分散液の浴中に低い緊張状態で充分に浸漬させている。このような低い緊張状態での十分な時間の処理では、溶液中で繊維間が広がるために、数十ミクロンのマイクロカプセルを繊維束内部に取り込んでバインダーで付着させることが可能となる。しかし、糸1本をローラに通過させて処理する場合では、繊維に張力が掛かるために、単繊維同士が互いに密着して広がらない。特に、合成繊維やレーヨンなどの再生繊維のように、繊維径にバラツキが小さく直線的に伸びている素材では、マイクロカプセルが保持されるために必要な繊維束内の空隙が非常に小さくなる。
【0009】
さらに、糸を連続的に走行させながらの処理では、糸をマイクロカプセル分散液中に長時間浸漬させることが出来ない。ローラを通過させてマイクロカプセル分散液を塗布する時間は一瞬であるため、マイクロカプセルが繊維束内部まで浸透する時間な余裕はない。また、糸同士の結着と装置の汚染を防ぐために、過飽和に塗布されたマイクロカプセル分散液は圧力を加えて絞り取られるが、その工程によって一旦は繊維に付着したマイクロカプセルも、粒径が大きい場合には選択的に絞り出されて大部分が除去されてしまう。
【0010】
以上のような考察から、本発明によって製造に用いられる糸の構造としては、張力が掛かってもマイクロカプセルの粒子径に比べて充分なサイズの空隙を構造的に保持できる、撚り合わせ糸の構造を有したものでなければならないという考えに至った。そして、研究の結果、マイクロカプセルを効率的に付着できる糸の構造は、1メートル当たりの撚り回数が300以上1300以下で、伸張状態での太さが60ミクロン以上のマルチフィラメント糸又は紡績糸を2本以上用いて、1メートル当たり200以上1200以下の撚り回数で撚り合わせたものであるという結論に達した。また、撚り合わせ糸をさらに撚り合わせて、2段階以上に撚り合わせた構造の糸も、マイクロカプセルを効率的に付着できた。このような構造を有する糸では、撚り合わされた糸と糸の間が螺旋状に続く空隙として保持される。この螺旋状の空隙は、ローラを通過する一瞬の間にもマイクロカプセル分散液を吸収することができ、過飽和な分散液を絞り取る工程でも完全に潰れることはなく、付着したマイクロカプセルを保持することができる。
【0011】
マイクロカプセルの粒子径は小さいほど効率良く付着できるが、限度としては、撚り合わせ糸の構造によって保持できる空隙サイズよりも小さい必要がある。また、過飽和なマイクロカプセル分散液を絞り取る工程の後に、圧力の除去による緩和によってマイクロカプセルが繊維束内部に移動するためには、繊維径と比較して大き過ぎるマイクロカプセルは好ましくない。以上のことから検討した結果、マイクロカプセルの粒子径は50ミクロン以下に調整すべきであるという結論に至った。
【0012】
以上のような鋭意研究の結果、本発明の発明者らは、繊維表面にマイクロカプセルが付着した様々な素材の糸を連続的に製造する手段として、1メートル当たりの撚り回数が300以上1300以下で、伸張状態での太さが60ミクロン以上のマルチフィラメント糸又は紡績糸を2本以上用いて、1メートル当たり200以上1200以下の撚り回数で撚り合わせた糸、又はその撚り合わせ糸をさらに多段階に撚り合わせた糸を、1本でローラを通過させて粒子径50ミクロン以下のマイクロカプセルとバインダーを含有する分散液を塗布する工程、過飽和な分散液を絞り取る工程、乾燥工程、巻き取り工程という一連の工程によって行う、本発明の製造方法を完成するに至った。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、以上説明したように構成されているので、以下に記載されるような効果を奏する。
【0014】
糸1本を走行させてローラを通過させながらマイクロカプセル分散液を塗布し、続いて過飽和な分散液を絞り取り、さらに乾燥と巻き取りを連続した工程で行う製造方法であるため、糸同士の結着というトラブルが発生することなく、低コストで効率の良い製造が可能となる。
【0015】
また、後加工による製造方法であるため、ポリエステルなどの合成繊維、綿や絹などの天然繊維、レーヨンなどの再生繊維、アセテートなどの半合成繊維などの様々な繊維素材に対して実施可能である。糸とマイクロカプセル分散液の種類を切り替えることも容易にできるため、多品種・小ロット生産にも対応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明で撚り合わせ糸を構成するために利用する糸の素材としては、マイクロカプセル分散液に対して濡れ性を有するものであれば、特に制限されることなく使用できる。具体的には、綿、麻などのセルロース繊維、絹、毛などのタンパク質繊維、レーヨン、キュプラなどの再生繊維、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ビニロン、ポリプロピレンなどの合成繊維、アセテートなどの半合成繊維、ガラス繊維などの人造無機繊維が挙げられる。これらの素材からなる糸は、マルチフィラメント糸又は紡績糸のいずれでも使用可能である。すなわち、絹、レーヨン、キュプラ、アセテート、ナイロン、ポリエステルなどのフィラメント糸の束に撚りをかけたものを用いることができる。また、上記の単独素材の紡績糸を用いることができるとともに、2種類以上の素材を混紡した糸を用いることも可能である。
【0017】
撚り合わせ糸を構成するために利用する糸の形態としては、マルチフィラメント糸又は紡績糸のいずれであっても、1メートル当たりの撚り回数が300以上1300以下であり、伸張時の太さは60ミクロン以上のものを用いることができる。マイクロカプセルが吸着できる空隙を撚り合わされた糸と糸の間で保持するためには、マイクロカプセルの粒子径に比べて十分に太い糸が、潰れることなく円形に近い断面を保持しつつ撚り合わされていなければならない。そのためには、糸の伸張時の太さは小さくとも60ミクロン以上でなければならないが、それ以上の太さであれば特に制限されることなく使用でき、100ミクロン以上であればより好ましい。一般的に糸の太さの指標として用いられる繊度は、正確には太さを表すものではないので一概には言えないが、太さを60ミクロン以上とするためには、平均的な繊維では40デニール程度の繊度が必要となる。また、1メートル当たりの撚り回数については、300未満の少ない回数では複数の糸を撚り合わせた時に断面形状が潰れてしまうため、マイクロカプセルが吸着できる空隙を保持できない。一方、撚り回数が多過ぎる場合は空隙の保持性は良好となるが、繊維同士が強く密着されるために処理液の糸内部への浸透性が悪化するので、1300を越える撚り回数は好ましくない。以上の考察から、1メートル当たりの撚り回数は300以上1300以下となるが、より好ましい条件としては500以上900以下の撚り回数であることが挙げられる。
【0018】
表面にマイクロカプセルを付着させるための撚り合わせ糸は、上述のマルチフィラメント糸又は紡績糸を2本以上用いて、1メートル当たり200以上1200以下の回数で撚り合わせることによって準備できる。撚り合わせる糸の本数は通常2本又は3本で行うが、4本以上で撚り合わせることも可能である。撚り合わせる複数の糸は同種類のものを用いることもできるが、別種類の糸を組み合わせて撚り合わせても良い。また、2本以上の糸を撚り合わせた糸を2本以上用意し、それらを更に1メートル当たり200以上1200以下の回数で撚り合わせることによって、2段階で撚り合わされた糸を準備することもできる。さらに、撚り合わせの回数を3回以上の多段階にすることも、特に制限されることなく行うことができる。多段階に撚り合わされた糸では、1本の糸内部に大小の異なる大きさの空隙が配置された構造となる。この構造によって、粒子径の大きいマイクロカプセルを大きい空隙で取り込むことができるとともに、比較的小さいマイクロカプセルはさらに内部の小さい空隙に移動することによって強固に吸着できる。
【0019】
本発明で利用するマイクロカプセルとしては、粒子径が50ミクロン以下であって、糸に付着することによって機能性を糸に付与できる芯物質を内包するものであれば、特に制限されることなく使用できる。芯物質の例としては、有機フォトクロミック物質、可逆熱変色性物質、ハーブエキス、香料、温度調節機能を有する相転移物質等を挙げることができる。
【0020】
本発明で用いるバインダーとしては、顔料や微粒子等を繊維に固着させるために使用されるもので、適当な硬さと柔軟性、接着力、各種耐久力や安定性があるものであれば、特に制限されることなく使用できる。バインダーの量は、バインダー固形分において糸に対して、一般的には0.1〜10重量%程度であり、好ましくは0.3〜5重量%である。バインダーの具体的な組成は一概にはいえないが、アクリル酸樹脂、メタクリル酸樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレンブタジエンラテックス、ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。本発明においては、分散液の糸内部への浸透性を高くするために、低粘度のアクリル酸樹脂からなる顔料捺染用ベースレジンを架橋剤と組み合わせて用いるのが特に好ましい。また、分散液の糸内部への浸透性を高めるためには、分散液に非イオン系界面活性剤などの浸透剤を添加することも可能である。
【0021】
撚り合わせ糸にマイクロカプセルを付着させるための装置としては、ローラを通過させてマイクロカプセルとバインダーを含有する分散液を塗布する工程、過飽和な分散液を絞り取る工程、乾燥工程および巻き取り工程からなる一連の工程を行うことができるものであれば、特に制限なく利用することができる。糸をローラに通して巻き取る速度は遅い方がマイクロカプセル分散液の糸内部への浸透には有利であるが、遅すぎると生産能率が下がるため、50〜150メートル/分程度であることが好ましい。過飽和な分散液を絞り取る工程は、上下に配置された2本のローラ間を通過させる際に、適度な加重を加えることによって行うことができる。適度な絞り効果を得るためには、上側ローラ表面を樹脂層で被覆することができる。被覆樹脂層の材質は一般にゴムが好ましく用いられるが、低粘度の分散液を十分に塗布したい場合には、スポンジ状樹脂層で被覆された上側ローラを用いて塗布量を増加させることもできる。絞り圧は、大き過ぎると撚り合わせで作られた空隙を潰し、マイクロカプセルを糸の外に絞り出してしまう。装置の種類によって適当な圧力の範囲は異なるため、一概には言えないが、絞り率で50〜120%程度となるように絞り圧を調整するのが好ましい。乾燥温度は一般的には70℃程度で行われるが、バインダーの熱処理を兼ねて130〜140℃程度で行うこともできる。
【実施例1】
【0022】
以下に、発明の実施の形態を実施例に基づき、図面を参照して説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0023】
マイクロカプセルを付着させる糸として、75デニールのレーヨンのフィラメント糸に830回/メートルのS撚りをかけて、伸張時の太さを約120ミクロンとし、この糸2本を750回/メートルのZ撚りで撚り合わせた糸を準備した。この撚り合わせ糸の側面図を図1に示す。この撚り合わせ糸に、図2に示す構成からなる(有)桐生ジャカード製の装置を用いて、ローラを通過させてマイクロカプセルとバインダーを含有する分散液を塗布する工程、過飽和な分散液を絞り取る工程、乾燥工程および巻き取り工程からなる一連の工程によって、芯物質として有機フォトクロミック物質を内包するマイクロカプセルの付着処理を行った。分散液の組成は、粒子径約10ミクロンの有機フォトクロミック物質内包マイクロカプセル(松井色素化学(株)製:フォトピアAQインク・ブルー)5重量部、アクリル酸樹脂バインダー(松井色素化学(株)製:マツミンゾールMR35)5重量部、架橋剤(松井色素化学(株)製:フィクサーF)1重量部、水89重量部とした。糸をローラに通して巻き取る速度は、90メートル/分で行った。絞り率は70%とし、乾燥は約70℃で行った。
【0024】
このような条件で、有機フォトクロミック物質内包マイクロカプセルをバインダー、架橋剤とともに塗布・乾燥させたレーヨンの撚り合わせ糸では、経時的にバインダーの架橋反応が進行し、マイクロカプセルを繊維上に付着させることができた。マイクロカプセルが付着している様子を側面から示した図を図3に示す。この図のように、マイクロカプセルの付着は糸の表面全体に認められたが、撚り合わせによって作られた螺旋状の空隙部分では特に高濃度で付着していた。この処理糸は、日光の下では紫外線の作用によってほぼ均一に青色に変色した。また、JIS L 0844に規定される「洗濯に対する染色堅ろう度試験方法」に準拠して、洗濯後の光可逆変色性を評価した結果では、処理糸の変退色は4−5級という良好な洗濯耐久性を有していた。
【実施例2】
【0025】
120デニールのポリエステルのフィラメント糸に600回/メートルのS撚りをかけて、伸張時の太さを約180ミクロンとし、この糸2本を700回/メートルのZ撚りで撚り合わせた。そして、この撚り合わせ糸2本を用いてさらに600回/メートルのS撚りをかけ、マイクロカプセルを付着させるための撚り合わせ糸として準備した。このマイクロカプセル付着処理用の撚り合わせ糸の断面図を図4に示す。このように2段階以上に撚り合わされた糸は、表面に螺旋状の空隙を有するとともに、内部にはより大きな空間を保持できる。
【0026】
この撚り合わせ糸に、図2に示す構成からなる(有)桐生ジャカード製の装置を用いて、芯物質として温度調節機能を有する相転移物質を内包するマイクロカプセルの付着処理を行った。分散液の組成は、粒子径25ミクロンの相転移物質内包マイクロカプセル(三木理研工業(株)製:リケンレヂンPMCD−25NF)10重量部、アクリル酸樹脂バインダー(松井色素化学(株)製:マツミンゾールMR35)5重量部、架橋剤(松井色素化学(株)製:フィクサーF)1重量部、水84重量部とした。糸をローラに通して巻き取る速度は、90メートル/分で行った。絞り率は85%とし、乾燥は約70℃で行った。
【0027】
このような条件で、相転移物質内包マイクロカプセルをバインダー、架橋剤とともに塗布・乾燥させたポリエステルの撚り合わせ糸では、経時的にバインダーの架橋反応が進行し、マイクロカプセルを繊維上に付着させることができた。マイクロカプセルが付着している様子を断面で示した図を図5に示す。相転移物質内包マイクロカプセルは粒子径が25ミクロンと比較的大きいため、糸表面の螺旋状の空隙では付着されにくく、図のように2段階目の撚り合わせで作られる糸内部の、比較的大きい空間で選択的に保持されていた。この処理糸を示差走査熱量測定したところ、相転移の生じる25℃付近で、相転移物質内包マイクロカプセルの付着に起因する吸発熱挙動が確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明では、繊維表面にマイクロカプセルが付着した様々な素材の糸を、糸同士の結着を発生させることなく、低コストで効率的に連続生産する製造方法を提供できる。よって本発明は、機能性物質を内包するマイクロカプセルの付着によって、様々な機能性を有する糸を製造するために広く応用できる。例えば、光によって変色する糸、熱によって変色する糸、香りを発する糸、吸熱や発熱の機能を有する糸などの製造方法として利用できる。そして、本発明の製造方法によって得られる機能性素材は、刺繍糸、カーテンなどのインテリア製品、衣料品などに広く利用される可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】 S撚りをかけたレーヨンのフィラメント糸2本をZ撚りで撚り合わせた糸の側面図である。
【図2】 ローラを通過させてマイクロカプセルとバインダーを含有する分散液を塗布する工程、過飽和な分散液を絞り取る工程、乾燥工程および巻き取り工程からなる一連の工程によって、撚り合わせ糸にマイクロカプセルを付着させる装置の構成図である。
【図3】 S撚りをかけたレーヨンのフィラメント糸2本をZ撚りで撚り合わせた糸に、有機フォトクロミック物質内包マイクロカプセルが付着している様子を側面から示した図である。
【図4】 S撚りをかけたポリエステルのフィラメント糸2本をZ撚りで撚り合わせ、この撚り合わせ糸2本をさらにS撚りをかけて撚り合わせた糸の断面図である。
【図5】 S撚りをかけたポリエステルのフィラメント糸2本をZ撚りで撚り合わせ、この撚り合わせ糸2本をさらにS撚りをかけて撚り合わせた糸に、相転移物質内包マイクロカプセルがバインダーを介して付着している様子を断面で示した図である。
【符号の説明】
【0030】
1 S撚りをかけたレーヨンのフィラメント糸
2 S撚りをかけたレーヨンのフィラメント糸2本をZ撚りで撚り合わせた糸
3 処理液漕
4 マイクロカプセルとバインダーを含有する分散液
5 下側ローラ
6 上側ローラ
7 被覆樹脂層
8 乾燥部
9 巻き取りローラ
10 有機フォトクロミック物質内包マイクロカプセル
11 ポリエステル繊維の断面
12 相転移物質内包マイクロカプセル
13 バインダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1メートル当たりの撚り回数が300以上1300以下で、伸張状態での太さが60ミクロン以上のマルチフィラメント糸又は紡績糸を2本以上用いて、1メートル当たり200以上1200以下の撚り回数で撚り合わせた構造の糸1本に、ローラを通過させて粒子径50ミクロン以下のマイクロカプセルとバインダーを含有する分散液を塗布する工程と、過飽和な分散液を絞り取る工程と、乾燥させる工程と、巻き取る工程とを有してなる一連の処理によって、マイクロカプセルを付着させることを特徴とするマイクロカプセル付着糸の製造方法。
【請求項2】
1メートル当たりの撚り回数が300以上1300以下で、伸張状態での太さが60ミクロン以上のマルチフィラメント糸又は紡績糸を2本以上用いて、1メートル当たり200以上1200以下の撚り回数で撚り合わせた糸を、2本以上用いてさらに2段階に撚り合わせた糸、又は2段階の撚り合わせ糸を用いてさらに多段階に撚り合わせた構造の糸1本に、ローラを通過させて粒子径50ミクロン以下のマイクロカプセルとバインダーを含有する分散液を塗布する工程と、過飽和な分散液を絞り取る工程と、乾燥させる工程と、巻き取る工程とを有してなる一連の処理によって、マイクロカプセルを付着させることを特徴とするマイクロカプセル付着糸の製造方法。
【請求項3】
マイクロカプセルが、特に芯物質として有機フォトクロミック物質を含有するマイクロカプセルであることを特徴とする、請求項1又は2記載のマイクロカプセル付着糸の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−327164(P2007−327164A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−184905(P2006−184905)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(506230264)ハイテックス協同組合 (1)
【出願人】(506230275)有限会社星野サイジング (1)
【出願人】(591032703)群馬県 (144)
【Fターム(参考)】