説明

マイクロコンピュータおよびマイクロコンピュータ識別方法

【課題】マイクロコンピュータにおいて、セルフプログラミング動作が可能か否かを効率的かつ確実に識別可能にする。
【解決手段】セルフプログラミング動作が可能なマイクロコンピュータ1において、内蔵するROM4の所定の領域に、セルフプログラミング動作が可能であることを示す情報4aを予め記録することで、該情報4aを読み出せば短時間で容易かつ確実にセルフプログラミング動作が可能なマイクロコンピュータであることが識別できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不揮発性メモリ上の所定の領域に格納されているプログラムを読み出してCPUで実行することにより不揮発性メモリ上の所定の領域とは異なる書き換え領域を書き換えるセルフプログラミング動作を行うマイクロコンピュータおよびマイクロコンピュータ識別方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロコンピュータは、様々な機器に搭載されており、マイクロコンピュータが実行する各種プログラムを格納する不揮発性メモリとしてフラッシュメモリが用いられることが多くなっている。
【0003】
近年、機器の小型化や高集積化に合わせてマイクロコンピュータにフラッシュメモリを内蔵したものが提案されており、その中には内蔵したフラッシュメモリに格納されているプログラムを、該マイクロコンピュータ自身の動作によって書き換えるセルフプログラミング動作が可能なマイクロコンピュータが提案されている(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−14870号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、特許文献1に記載されたようなセルフプログラミング動作が可能なマイクロコンピュータと、セルフプログラミング動作が可能でないマイクロコンピュータとの識別は、該マイクロコンピュータのパッケージ表面に記載されている品番によるか、実際にセルフプログラミング動作を行うことにより識別をしていた。
【0005】
しかしながら、品番による識別方法では、セルフプログラミング動作が可能なマイクロコンピュータと、セルフプログラミング動作が可能でないマイクロコンピュータとの識別が、人手による作業であるためにその後の該マイクロコンピュータを備えた機器の生産時に両者が混在する可能性があり、また、実際にセルフプログラミング動作を行うことは、検査に時間がかかるために生産効率が悪くなるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、例えばマイクロコンピュータにおいて、セルフプログラミング動作が可能か否かを効率的かつ確実に識別可能なマイクロコンピュータおよびマイクロコンピュータの識別方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、書き換え可能な不揮発性メモリとCPUとを備え、前記不揮発性メモリ上の所定の領域に格納されているプログラムを前記CPUで実行することにより前記不揮発性メモリを書き換えるセルフプログラミング動作を行うマイクロコンピュータにおいて、前記セルフプログラミング動作が可能であることを示す識別手段を備えたことを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態にかかるマイクロコンピュータを説明する。本発明の一実施形態にかかるマイクロコンピュータは、セルフプログラミング動作が可能なマイクロコンピュータにセルフプログラミング動作が可能であることを示す識別手段を備えている。このようにすることによって、識別手段を参照することによりセルフプログラミング動作が可能か否かを短時間で効率的かつ確実に識別可能になる。
【0009】
また、読み出し専用メモリを備え、識別手段が、読み出し専用メモリに予め記録されている所定の情報でもよい。このようにすることによって、読み出し専用メモリに予め記録されている所定の情報を読み出すことによってセルフプログラミング動作が可能であることが識別でき、したがって短時間で効率的かつ確実に識別可能になる。
【0010】
また、識別手段が、不揮発性メモリに記録されている所定の情報でもよい。このようにすることによって、不揮発性メモリに記録されている所定の情報を読み出すことによってセルフプログラミング動作が可能であることが識別でき、したがって短時間で効率的かつ確実に識別可能になる。
【0011】
また、識別手段が、所定の出力端子に所定の電圧を出力するものでもよい。このようにすることによって、所定の出力端子の電圧を検出することでセルフプログラミング動作が可能か否かを短時間で効率的かつ確実に識別可能になる。
【0012】
また、識別手段が、所定の出力端子に所定の振幅かつ所定の周波数で変動する電圧を出力するものでもよい。このようにすることによって、所定の出力端子の振幅や周波数を検出することでセルフプログラミング動作が可能か否かを短時間で効率的かつ確実に識別可能になる。
【0013】
また、請求項1乃至5に記載のマイクロコンピュータを識別する方法は、識別手段を参照する第1の工程と、参照した識別手段に基づいてセルフプログラミングが可能か否かを判定する第2の工程と、第2の工程で判定した判定結果を表示する第3の工程と、を備えている。このようにすることによって、セルフプログラミング動作が可能か否かを短時間で効率的かつ確実に識別可能になる。
【実施例1】
【0014】
本発明の第1の実施例にかかるマイクロコンピュータ1を図1を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施例にかかるマイクロコンピュータ1のブロック図である。マイクロコンピュータ1は、CPU2と、フラッシュメモリ3と、ROM4と、RAM5と、を備えている。
【0015】
CPU2は、中央処理装置であり、マイクロコンピュータ1の全体制御やフラッシュメモリ3の読み出しや書き込みおよびROM4の読み出しや読み出されたプログラムの実行やデータ処理などを行う。
【0016】
フラッシュメモリ3は、マイクロコンピュータ1が実行するプログラムやデータが格納されている不揮発性の書き換え可能なメモリであり、所定の領域にセルフプログラミング動作用のプログラムが格納されており、セルフプログラミング動作時には、該セルフプログラミング動作用のプログラムによって全体が書き換え可能となっている。なお、セルフプログラミング動作用のプログラムが格納されている所定の領域とは異なる領域のみを書き換え可能としてもよい。
【0017】
ROM4は、マイクロコンピュータ1が実行するプログラムやデータ等が格納されている読み出し専用のメモリであり、ROM4の所定の領域には識別手段としてのマイクロコンピュータ1がセルフプログラミング動作が可能であることを示す情報4aが予め記録されている。
【0018】
RAM5は、マイクロコンピュータ1が動作する際に一時記憶領域として使用されるメモリであり、揮発性のメモリである。
【0019】
次に、図1に示されたマイクロコンピュータ1を識別する方法を図2を参照して説明する。図2は、セルフプログラミング動作が可能なマイクロコンピュータを識別する識別装置100である。
【0020】
識別装置100は、検査用マイクロコンピュータ101と表示装置102とを備えている。
【0021】
検査用マイクロコンピュータ101は、被検査用マイクロコンピュータ103が、セルフプログラミング動作が可能か否かを判定する判定プログラムが実行されている。
【0022】
表示装置102は、検査用マイクロコンピュータ101の判断結果を表示する装置である。
【0023】
次に、本実施例における検査用マイクロコンピュータ101で実行する判定プログラムの動作について図3のフローチャートを参照して説明する。
【0024】
まず、ステップS1において、被検査用マイクロコンピュータ103に対してセルフプログラミング動作が可能である情報を要求してステップS2に進む。被検査用マイクロコンピュータ103が、図1に示したマイクロコンピュータ1であれば、ROM4に記録された所定の情報としてのセルフプログラミング動作が可能であることを示す情報4aをCPU2が読み出して検査用マイクロコンピュータ101に出力する。セルフプログラミング動作が可能であることを示す情報4aは、例えば予め定めた1以上のビットからなる所定のコードなどである。
【0025】
次に、ステップS2において、被検査用マイクロコンピュータ103から読み出された情報がセルフプログラミング動作が可能であることを示す情報4aである場合は、被検査用マイクロコンピュータ103はセルフプログラミング動作が可能であると判定し、被検査用マイクロコンピュータ103から読み出された情報がセルフプログラミング動作が可能であることを示す情報4aでない場合は、被検査用マイクロコンピュータ103はセルフプログラミング動作が可能でないと判定してステップS3に進む。
【0026】
次に、ステップS3において、表示装置102にステップS3の判定結果を出力する。出力された判定結果は表示装置102に表示される。
【0027】
本実施例によれば、セルフプログラミング動作が可能なマイクロコンピュータ1において、内蔵するROM4の所定の領域に、セルフプログラミング動作が可能であることを示す情報4aを予め記録することで、該情報4aを読み出せば短時間で容易かつ確実にセルフプログラミング動作が可能なマイクロコンピュータであることが識別できる。
【実施例2】
【0028】
次に、第2の実施例にかかるマイクロコンピュータ1を図4を参照して説明する。なお、前述した第1の実施例と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0029】
本実施例では、図4に示したように識別手段としてのマイクロコンピュータ1がセルフプログラミング動作が可能であることを示す所定の情報3aが、フラッシュメモリ3に記録されている。
【0030】
本実施例のマイクロコンピュータ1を識別する方法は、図2および図3に示した識別装置100およびフローチャートと同じである。ただし、検査用マイクロコンピュータ101が被検査用マイクロコンピュータ103に対してセルフプログラミング動作が可能な情報を要求した際には、ROM4ではなくフラッシュメモリ3に記録されているセルフプログラミング動作が可能であることを示す所定の情報3aを読み出して出力する。
【0031】
本実施例によれば、セルフプログラミング動作が可能なマイクロコンピュータ1において、内蔵するフラッシュメモリ3のフラッシュメモリ3に、セルフプログラミング動作が可能であることを示す情報3aを記録することで、該情報3aを読み出せば短時間で容易かつ確実にセルフプログラミング動作が可能なマイクロコンピュータであることが識別できる。
【0032】
なお、実施例2では、フラッシュメモリ3にセルフプログラミング動作が可能であることを示す情報3aを記録しているために、識別工程が終了した後には、セルフプログラミング動作が可能であることを示す情報3aは、他のデータやプログラムなどで上書きされるなどにより消去されてもよい。
【実施例3】
【0033】
次に、第3の実施例にかかるマイクロコンピュータ1´を図5および図7を参照して説明する。なお、前述した第1、第2の実施例と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0034】
本実施例では、図5に示したように、端子出力回路5と識別用出力端子6とを備えた点が第1、第2の実施例と異なる。端子出力回路5は、マイクロコンピュータ1´に対して電源電圧が印加されているときは識別用出力端子6に対して、予め定めた所定の電圧を出力する回路である。所定の電圧とはセルフプログラミング動作が可能でないマイクロコンピュータの同じ端子の電圧とは異なる電圧である。識別手段としての識別用出力端子6は、セルフプログラミング動作が可能なマイクロコンピュータにおける空き端子などマイクロコンピュータ1´が機器などに組み込まれて動作する際には使われない端子に割り振られ端子出力回路5が出力した電圧が印加される。
【0035】
本実施例のマイクロコンピュータ1´を識別する方法を図6および図7を参照して説明する。図6は、本実施例が適用されたセルフプログラミング動作が可能なマイクロコンピュータを識別する識別装置100´である。
【0036】
本実施例の識別装置100´と図2に示した識別装置100との違いは検査用マイクロコンピュータ101に電圧検出回路101aが内蔵されている点である。すなわち、検圧検出回路101aで識別用出力端子6の電圧を検出してセルフプログラミング動作が可能か否かを判定する。検査用マイクロコンピュータ101の詳細な動作について図7のフローチャートを参照して説明する。
【0037】
まず、ステップS10において、被検査用マイクロコンピュータ103の識別用出力端子6の電圧を検出してステップS3´に進む。
【0038】
次に、ステップS3´において、被検査用マイクロコンピュータ103の識別用出力端子6の電圧を参照して予め定めた所定の電圧であった場合は被検査用マイクロコンピュータ103はセルフプログラミング動作が可能であると判定し、被検査用マイクロコンピュータ103の識別用出力端子6の電圧が予め定めた所定の電圧でない場合は、被検査用マイクロコンピュータ103はセルフプログラミング動作が可能でないと判定してステップS4に進む。
【0039】
次に、ステップS4において、表示装置102にステップS3の判定結果を出力する。出力された判定結果は表示装置102に表示される。
【0040】
本実施例によれば、セルフプログラミング動作が可能なマイクロコンピュータ1´において、端子出力回路5と識別用出力端子6とを備え、端子出力回路5が識別用出力端子6に予め定めた所定の電圧を出力することで、端子出力回路5の電圧を検出することで容易かつ確実にセルフプログラミング動作が可能なマイクロコンピュータであることが識別できる。また、電圧を検出するだけなので第1、第2の実施例よりも迅速に識別することができる。
【0041】
なお、第3の実施例において、識別用出力端子6は1本でなく複数あってもよい。その際には複数の識別用出力端子6は、全て同じ電圧として少なくともいずれか1本の電圧を検出して所定の電圧か否かを判定してもよいし、全て検出して全て所定の電圧か否かを判定してもよい。また夫々別の電圧としてその各電圧が検出されたことで判定してもよい。
【0042】
また、第3の実施例では、端子出力回路5の電圧が予め定めた所定の電圧か否かを判断することによってセルフプログラミング動作が可能なマイクロコンピュータか否かを識別しているが、これに代えて、端子出力回路5の電圧が予め定められた所定の振幅と所定の周波数によって出力するか否かを判断してもよい。この場合、セルフプログラミング動作が不可能なマイクロコンピュータは、所定の周波数とは異なる周波数、あるいは所定の振幅とは異なる振幅で出力したり、電圧が変動せずに一定のまま出力したりするので、セルフプログラミング動作が可能なマイクロコンピュータかの識別を行うことができる。
【0043】
また、第1〜第3の実施例において、フラッシュメモリ3は、セルフプログラミング動作用のプログラムが格納されている所定の領域とは異なる領域のみを書き換え可能としてもよい。
【0044】
前述した実施例によれば、以下のマイクロコンピュータ1が得られる。
【0045】
(付記1)フラッシュメモリ3とCPU2とを備え、
フラッシュメモリ3上のセルフプログラミング動作用のプログラム格納領域に格納されているプログラムをCPU2で実行することによりフラッシュメモリを書き換えるセルフプログラミング動作を行うマイクロコンピュータ1において、
セルフプログラミング動作が可能であることを示す情報4aを備えたことを特徴とするマイクロコンピュータ1。
【0046】
このマイクロコンピュータ1によれば、セルフプログラミング動作が可能であることを示す情報4aを参照することによりセルフプログラミング動作が可能か否かを短時間で効率的かつ確実に識別可能になる。
【0047】
なお、前述した実施例は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施例に限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1の実施例にかかるマイクロコンピュータのブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施例にかかるマイクロコンピュータ識別装置のブロック図である。
【図3】図2に示されたマイクロコンピュータ識別装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第2の実施例にかかるマイクロコンピュータのブロック図である。
【図5】本発明の第3の実施例にかかるマイクロコンピュータのブロック図である。
【図6】本発明の第3の実施例にかかるマイクロコンピュータ識別装置のブロック図である。
【図7】図6に示されたマイクロコンピュータ識別装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0049】
1 マイクロコンピュータ
1´ マイクロコンピュータ
2 CPU
3 フラッシュメモリ(不揮発性メモリ)
3a セルフプログラミング動作が可能であることを示す情報(識別手段)
4 ROM
4a セルフプログラミング動作が可能であることを示す情報(識別手段)
6 識別用出力端子(識別手段)
100 識別装置
100´ 識別装置
S1 セルフプログラミング可能情報要求(第1の工程)
S3 判定(第2の工程)
S4 判定結果を表示装置へ出力(第3の工程)
S10 電圧検出(第1の工程)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
書き換え可能な不揮発性メモリとCPUとを備え、
前記不揮発性メモリ上の所定の領域に格納されているプログラムを前記CPUで実行することにより前記不揮発性メモリを書き換えるセルフプログラミング動作を行うマイクロコンピュータにおいて、
前記セルフプログラミング動作が可能であることを示す識別手段を備えたことを特徴とするマイクロコンピュータ。
【請求項2】
読み出し専用メモリを備え、前記識別手段が、前記読み出し専用メモリに予め記録されている所定の情報であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロコンピュータ。
【請求項3】
前記識別手段が、前記不揮発性メモリに記録されている所定の情報であることを特徴とする請求項1に記載のマイクロコンピュータ。
【請求項4】
前記識別手段が、所定の出力端子に所定の電圧を出力するものであることを特徴とする請求項1に記載のマイクロコンピュータ。
【請求項5】
前記識別手段が、所定の出力端子に所定の振幅かつ所定の周波数で変動する電圧を出力するものであることを特徴とする請求項1に記載のマイクロコンピュータ。
【請求項6】
請求項1乃至5に記載のマイクロコンピュータを識別する方法であって、
前記識別手段を参照する第1の工程と、
参照した前記識別手段に基づいて前記セルフプログラミングが可能か否かを判定する第2の工程と、
前記第2の工程で判定した判定結果を表示する第3の工程と、
を備えたことを特徴とするマイクロコンピュータ識別方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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