説明

マイクロスケール装置の集積

一つもしくはそれ以上の微小流体装置の集積であって、それらはそのそれぞれがその中に固定化アフィニティーリガンドLを持つ固相がある、微小反応空間(104a〜h)を備える複数のマイクロチャネル構造を一緒に保持して、i)複数のマイクロチャネル構造がマイクロチャネル構造のセットに分割され、そしてii)アフィニティーリガンドLがセットから独立して同一の相手(結合剤、B)に向けられていて、そしてiii)セットは、a)微小反応空間当りの能力および/もしくは結合剤Bのための微小反応空間の中の固相の能力/単位容積、ならびに/またはb)セットの間で固相物質のベースマトリックスにおいて異なるがそれぞれのセット内では等しいことを特徴とする、集積。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、それらのそれぞれが、その中に固定化アフィニティーリガンドを持つ固相を含有する微小反応空間(reaction microcavity)がある、一つもしくはそれ以上のマイクロチャネル構造を保持する、一つもしくはそれ以上の微小流体装置(microfluidic device)の集積(collection)に関する。
【0002】
それぞれのマイクロチャネル構造は、その中で溶質Sおよびそのアフィニティー相手(counterpart)ACの間のアフィニティー複合体AC−−Sが形成されるかもしくは解離されるアフィニティー反応を利用するアフィニティープロトコルを実施することを主に意図している。アフィニティー相手ACは、固相に典型的に固定化されるかもしくは固定化可能である。アフィニティー複合体は、SおよびACに加えて他のアフィニティー反応物を含み得る。
【0003】
アフィニティープロトコルは、その中で非特性化アナライトもしくは或る他の反応変数が特性化されるべきである、酵素アッセイ、免疫アッセイ、細胞ベースのアッセイ、ハイブリダイゼーションアッセイおよび他のアフィニティーアッセイのようなアフィニティーアッセイであり得る。アフィニティー反応は、それについて主要目的が分離、精製および/もしくは富化であるプロトコルの部分であり得る。
【0004】
用語“溶質”には、真の溶質、ウイルスのような微生物、懸濁細胞、懸濁細胞部分および溶解されているかもしくはコロイド形にあって、床を通して液流により輸送されるのに十分小さい種々の他の反応物が含まれる。溶質Sは、元の試料のアナライトもしくは溶質Sおよびそのアフィニティー相手ACの間のアフィニティー反応の前に形成されるアナライト由来の要素であり得る。
用語“微小流体装置”とは、装置のマイクロチャネル構造の中でいろいろな種類の反応物、試料、緩衝液等を輸送するために液流が使用されることを意味する。
【0005】
“マイクロチャネル構造”の中の用語“マイクロ”とは、≦10μm、好ましくは、≦10μmのような、≦5×10μmである少なくとも一つの断面積寸法を有する、一つもしくはそれ以上のキャビティおよび/もしくは導管を構造が含むことを意図する。同様に、“マイクロ導管”、“マイクロ容積”、マイクロキャビティ等に当てはまる。マイクロチャネル構造内で加工されるべき液体アリコートの容積は、ナノリットル(nl)の範囲(ピコリットル(pl)の範囲を含む)に典型的にある。nlの範囲は5,000nlの上端を有するが、大抵の場合には≦500nlもしくは≦100nlのように、≦1,000nlの容積に関する。
本明細書中で引用される特許出版物は、全体的な出典明示により本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0006】
背景出版物
WO 02075312(Gyros AB)は、相手をアフィニティー反応物に露出する固相にアフィニティー反応物を結合することによるかもしくはアフィニティー反応物およびそのアフィニティー相手の間に固定化アフィニティー複合体を含む、固相からアフィニティー反応物を放出することによる反応変数の特性化のためのアフィニティーアッセイに焦点を当てている。種々の固定化技法、例えば、共有結合、物理的吸着、ストレプトアビジン−ビオチンを含むバイオアフィニティー結合、等が提案されている。
【0007】
US 5,726,026(Univ. Pennsylvania)およびUS 5,928,880(Univ. Pennsylvania)は、それにストレプトアビジンが予め結合された粒子の形で固相を含み得る、微小流体装置を記載している。粒子はビオチン化抗体で感作され得る。
【0008】
背景問題
もし同一のまたは同様の標準手順が、種々のアッセイ範囲および/もしくは分離プロトコル、数多くの濃度範囲、種々のアナライト範囲等を意図する微小流体装置の製造のために使用できるとすれば、大きい経済的利益を持つであろう。これは、少容積試料の中で低いならびに高い活性および/もしくは濃度、例えば、μl−試料中のナノモル範囲の濃度、のアナライトの測定を可能にする微小流体装置を提供することが重要であることを含む。この文脈において、ナノモル範囲は≦1,000×10−9Mを包含して、≦1,000×10−12Mのピコモル範囲を含む。μl−試料は≦1,000μlを包含して、≦5,000nlのnl−試料を含む。
【0009】
診断上のおよび医学上のニーズにより要求される十分に高い分析感度ならびに特異性、診断感度ならびに特異性等を与えるであろう品質を持つ、抗体のような、アフィニティー試薬/反応物を見出すことはしばしば困難でありかつ重大である。一つの反応物のアフィニティーおよび特異性は、例えば、事前設定された規格に適合するためにプロトコルの他の反応物とマッチするには困難であり得る。かくして、感度のような特徴を生来増加させて、それによりさらに多くのアフィニティー試薬を初期に決められた規格を損なうこと無しに利用可能にするアッセイシステムおよび方法論を提供することは有益であろう。
【発明の開示】
【0010】
発明の目的
第一の主要目的は、上で議論した問題を解決する、改良された微小流体装置を提供することである。これは、装置の製造および使用のための方法を提供することを含む。
【0011】
第二の主要目的は、異なるアッセイプロトコルの範囲により同一のもしくは異なる濃度間隔で存在し得る、アナライトのような、異なるアフィニティー反応物の範囲のアフィニティー反応を実施することを意図する、製品オファーを提供することである。このオファーは、それぞれのセットがアナライトの特定の組合せ、および/または同一のもしくは異なるアナライトの特定の範囲の濃度、ならびに/または異なるアフィニティープロトコルの特定の組合せに専用である、セットの中に分配される数多くのマイクロチャネル構造として想定され得る。
【0012】
第三の主要目的は、アフィニティーアッセイの分析上のおよび診断上の感度ならびに特異性上の性能要求を満たすであろうアフィニティー反応物/試薬の範囲を拡張するであろう、アフィニティーアッセイのためのシステムを提供することである。
【0013】
この文脈において、用語“異なるアフィニティープロトコル”とは、それらのそれぞれが、(a)使用される反応物、(b)工程の順序、および(c)インキュベーション時間、例えば固相との接触時間、の中で選択される少なくとも一つのメンバーに関して、一つもしくはそれ以上の他のプロトコルと異なる、数多くのアフィニティープロトコルを指す。
【0014】
図面
図1は、実験の部で利用される微小流体装置のマイクロチャネル構造のサブグループを示す。
【0015】
図2は、粒子形で異なる種類の固相物質についての動的能力を示す:Superose[登録商標]の水性イソプロパノール(IPA)での20mg/ml洗浄(グラフ1)、Superose[登録商標]での2mg/ml洗浄(グラフ2)、Superdex[登録商標]PのIPAでの洗浄(グラフ3)、ポリスチレン−PheDex(グラフ4)、Sepharose[登録商標]HPのIPAでの洗浄(グラフ5)。蛍光強度は、典型的には出入り口における溶質に相当するピークでもって床(床の長さ)を通して半径方向に示されている。流動方向は右から左へである。アフィニティーリガンドLは、固相物質をアッセイ成分(この場合には抗−ミオグロビン抗体)で感作するのに使用されるストレプトアビジンである。効果は、500nMのミオグロビンの濃度で下に示される蛍光ミオグロビン免疫アッセイで測定される。
【0016】
図3は、異なる結合能力を有する固相物質での結果を示す:ストレプトアビジン5.5mg/mlの多孔性床(グラフ1)、ストレプトアビジン0.58mg/mlの多孔性床(グラフ2)、およびストレプトアビジン0.08mg/mlの多孔性床(グラフ3)。図2についての測定。グラフ3についての後流れのピークは、固相への望まれない結合標識抗体により引き起こされるものである。
【0017】
本発明
我々は、アフィニティー捕獲溶質は、もし捕獲反応物ACが共有結合的に固定化されるに比してアフィニティーで固定化されるならば、固相の中でさらに高濃度のバンドとして現れ得ることを発見してきている。これは、もしも捕獲がアフィニティーアッセイの部分であるならば、さらに高能率的な捕獲および増加した分析感度を示唆する。
アフィニティー固定化についての増加した分析感度の兆候は用量反応グラフからまた演繹されてきている。
【0018】
我々は、もし本発明の第二の主要目的について規定されたような製品オファーを提供したいのであれば、我々の発見が固定化技法の選択に影響を与え得ることを認識してきている。
【0019】
我々の発見に基づいて、我々は、高いならびに低い濃度のアナライトをアッセイすることは:
a)捕獲工程の間、即ち固定化複合体AC−−Sの形成の間、の流動条件
b)固相および/または一つもしくはそれ以上の異なる結合体(conjugate)のB−ACS1、B−ACS2等[ここで、Bは共通のリガンドLの方に向けられた共通の結合剤(固定化結合剤B、例えばビオチン)であって、B−ACS1、B−ACS2等は異なる溶質(S1、S2等)の方に向けられたアフィニティー相手である]に固定化される共通のアフィニティーリガンド(L、例えばストレプトアビジン)に基づく一般的な固定化結合原理
c)結合体に対する(もしくは非結合形において固定化結合剤に対する)固相の結合能力の選択および特定の溶質を捕獲する能力がある結合体での固相の飽和
d)固相物質のマトリックスの選択
e)固相上で溶質の最適な富化のための非拡散制限条件を達成するためにアフィニティー対(ACおよびS)に関して流動条件(流速および/もしくは滞留時間)を均衡させること
の適切な組合せを用いることにより、高度の正確さで達成され得ることを認識した。
【0020】
結合体(例えばビオチン結合体)を結合するための微小反応空間の中で微小反応空間当りの能力および/もしくは固相の容積単位当りの能力は、特定の固相/マイクロチャネル構造について最適な
a)溶質(複数を含む)およびアナライト(複数を含む)の種類(複数を含む)
b)溶質/アナライトの濃度範囲、ならびに/もしくは
c)アッセイプロトコル等
を決定するであろう。
【0021】
第一の態様:微小流体装置の集積
本発明の主要な態様は、そのそれぞれがその中で固定化アフィニティーリガンドLを持つ固相がある、微小反応空間(104a〜h)を備える複数のマイクロチャネル構造(101a〜h)を一緒に保持する、一つもしくはそれ以上の微小流体装置の集積である。セットの特色的な特徴は、
i)複数のマイクロチャネル構造は二つもしくはそれ以上の異なるセットのマイクロチャネル構造を備えて、そして
ii)アフィニティーリガンドLはセットから独立して同一の相手(結合剤、B)に向けられていて、そして
iii)セットは、
a)結合剤Bのための微小反応空間(104a〜h)の中で微小反応空間当りの能力および/もしくは固相の単位容積当りの能力、ならびに/または
b)固相物質のベースマトリックス
がセットの間で異なるがそれぞれのセット内では等しい
ことにおいてお互いに異なる、
ことである。
【0022】
セットのそれぞれは、異なるセットについて異っていても異なっていなくてもよい特定のアフィニティープロトコル/複数の特定のアフィニティープロトコルを意図している。これらのプロトコルは、関与する反応物および/もしくは反応物の添加順ならびに/または反応物が使用される濃度範囲に関して異なり得る。異なるプロトコルのそれぞれは、
a)溶質S、および
b)(i)結合剤B、および(ii)溶質Sに対するアフィニティー相手ACを含む、結合体(結合体=B−AC)
の間のアフィニティー反応を利用する。
溶質Sおよびかくしてまたアフィニティー相手ACはプロトコルの間で異なり得る。
【0023】
微小流体装置の集積対マイクロチャネル構造のセット
革新的な集積の微小流体装置は、
a)少なくとも二つの異なるセットのマイクロチャネル構造、および/もしくは
b)唯一つのセットのマイクロチャネル構造
を備える。
選択肢の(b)は、集積の中に二つもしくはそれ以上の微小流体装置がありそしてこれらの二つの装置が上で規定されるような異なるセットを備えるときにのみ当てはまる。
単一の微小流体装置上のセットを表すマイクロチャネル構造の数は典型的には二つ、三つもしくはそれ以上である。
【0024】
集積は、多数体、即ち、同一の組合せのセットを有するが他の観点、例えば、(1)マイクロチャネル構造の全数、ならびに/または(2)特定のセットのマイクロチャネル構造の数、(3)装置の上のグループ/マイクロチャネル構造のグループ分けおよび/もしくは位置付け(下を参照)、(4)機能性単位の組合せ、(5)アフィニティーリガンドLを有しないマイクロチャネル構造の数、(6)等、において異なる数個の装置である、微小流体装置を含有し得る。
【0025】
数個のセットのマイクロチャネル構造を備える微小流体装置の上では、同一のセットのそれらは、一つもしくはそれ以上のグループの中に、それぞれのグループが装置の特定の区域/小区域に位置して、好ましく置かれる。同一のグループおよび/もしくはセット内のマイクロチャネル構造は、好ましくは流体的に同等である。遠心的にベースとする微小流体装置の上では、例えば、セットもしくはグループのマイクロチャネル構造は、規定されたセクターまたは同一の環状帯に位置し得る。次いで、グループのマイクロチャネル構造の相当する部分は、好ましくは装置の回転軸から同一のラジアル距離である。
【0026】
用語“流体的に同等なマイクロチャネル構造”とは、構造が同一の組合せの流体機能を有しそして/もしくはそれらを通して液流を動かすために共通に負荷される力により並行して加工され得ることを意味する。
【0027】
好ましい変形体において、アフィニティーリガンドLを持つ固相を含有する微小反応空間(複数を含む)(104a〜h)のそれぞれは、上流方向で容積計量ユニット(106a〜h、108a〜h)と通信する。それぞれの容積計量ユニットは、典型的には入り口装置(102、103a〜h)の部分であって、装置に分配される液体および/もしくは粒子を受け取るための入口(105a〜b、107a〜h)を備える。同一の装置上の同一のセットおよび/もしくは同一のグループの二つもしくはそれ以上のマイクロチャネル構造(101a〜h)用の容積計量ユニット(106a〜h、108a〜h)は、これらのマイクロチャネル構造(サブセット/サブグループ)に共通である分布マニホールドを規定し得る。この種の分布マニホールドは、共通の入り口装置および/もしくは分布マニホールドと同一のマイクロチャネル構造(101a〜h)に典型的に共通である一つまたはそれ以上の入口(105a〜b)を持つ、共通の入り口装置(102)の部分であってもなくてもよい。容積計量ユニット/入り口装置(108a〜h/103a〜h)は、これに変えて、単に一つのマイクロチャネル構造/微小反応空間(101a〜h/104a〜h)に連結され得る。かくして、革新的な集積の中のマイクロチャネル構造(101a〜h)は、上述の型の入り口装置(102/103a〜h)の一つもしくは両方のいずれかを有し得る。共通の入り口装置および/もしくは分布マニホールド(102a〜b/103a〜h)により規定されるマイクロチャネル構造(101a〜h)のそれぞれのグループは、装置の特定の小区域に好ましく位置される。
【0028】
それぞれの容積計量ユニット(106a〜h、108a〜h)は典型的に、その出口末端(109a〜h、110a〜h)においてバルブを有する。このバルブは、例えば、親水性のおよび疎水性の表面の間の境界(疎水性表面切れ目)のような、出口末端における表面特色の変化を利用して、典型的には受動的である。図1および実験の部を参照されたい。容積計量ユニット、分布マニホールド、入口およびバルブを持つ有用な入り口装置は、WO 02074438(Gyros AB)、WO 02075312(Gyros AB)、WO 02075775(Gyros AB)およびWO 02075776(Gyros AB)に提示されている。
【0029】
装置のマイクロチャネル構造(101a〜h)のグループの中への位置付けは、セットおよび/もしくは共通の入り口機能以外の基準にまたしたがい得る。グループ分けは、共通の廃液機能、共通の通気機能、攪拌機能の型、加熱機能の型等のような、他の共通の機能に例えばしたがい得る。下を参照されたい。
革新的な集積のマイクロチャネル構造のセットの数は、典型的には2、3、4、5、6、7......10もしくはそれ以上である。
【0030】
結合能力および/もしくはベースマトリックスの相違に加えて、セットは、例えば、他の機能的ユニットおよび如何にそれらが接続されるかに関して、他の相違をまた有し得る。
【0031】
固定化アフィニティー対(LおよびB)
アフィニティーリガンドLおよびその相手(=結合剤B)は固定化アフィニティー対と呼ばれる。典型的には、固定化結合対は、望ましいアフィニティーの相互結合を除いて、それらが、使用される条件の間、例えば他の反応物に向かって、他の結合能力を本質的に欠如すべきであるように選択されるべきである。
【0032】
好ましい固定化アフィニティー対(LおよびB)は典型的に、ストレプトアビジンおよびビオチンに対する相当するアフィニティー定数より≦10倍もしくは≦10倍もしくは≦10倍大きい、アフィニティー定数(KL−−B=[L][B]/[L−−B])を有する。これは典型的に、ほぼ、それぞれ、≦10−13mole/l、≦10−12mole/l、≦10−11mole/lおよび≦10−10mole/lであるアフィニティー定数を意味するであろう。
【0033】
固定化リガンドLは固定化結合剤Bに対して二つもしくはそれ以上の結合部位を有し、そして/または固定化結合剤BはリガンドLに対して一つ、二つもしくはそれ以上の結合部位を有する(または逆もまた同様)ことは有利であることが信じられている。
【0034】
固定化アフィニティー対の特定の例は、a)ストレプトアビジン/アビジン/ニュートラビジンおよびビオチン化反応物(もしくは逆もまた同様)、b)抗体およびハプテン化反応物(もしくは逆もまた同様)、c)IMACグループならびに反応物に連結されるヒスチジルの配列および/またはヒスチジル残基(即ちIMACモチーフ)、を含むオリゴペプチド、等である。
【0035】
好ましくは、ビオチン結合化合物およびストレプトアビジン結合化合物の中で、それぞれ、もしくは逆もまた同様に、LおよびBを選択すること、である。ストレプトアビジンおよびニュートラビジンは、固定化アフィニティーリガンドLとして最も良く働くと信じられている。
【0036】
アフィニティーリガンドLは、結合剤BがアフィニティーリガンドLにアフィニティー結合されるよりさらに堅固に固相に取り付けられるべきである。これは、固定化結合対を介して、即ち結合体B−ACを介して、固相への溶質Sの結合の間に適用される条件に有効である。静電気引力、ファンデルワールス結合等を伴う吸着結合がまた使用され得るけれども、これは典型的に、アフィニティーリガンドLの共有結合性固定化を意味する。アフィニティーリガンドおよび固相の表面上でカウンター構造と相互作用する能力がある複数のグループの両方を保持する高分子担体を利用することは、例えば、吸着力を介するアフィニティーリガンドLの強力な取り付けを達成し得る。
【0037】
結合剤Bに対する固相の結合能力は、固定化により引き起こされる結合部位の閉塞および破壊を無視して、単位容積あたりモルでのアフィニティーリガンドLの量として測定され得る。この測定でもって、適当な結合能力は、液体で飽和された床型の中の固相nl当り、0.01〜300pmoleのような、0.001〜3000pmoleの間隔内で典型的に見出されるであろう。例えば、もしnl当り0.1pmoleのストレプトアビジンが固定化されたならば、これは0.4pmole/nlのビオチン結合部位に相当する。この変換因子の四は、ストレプトアビジンがストレプトアビジン分子当りビオチンに対して四つの結合部位を有するからである。
【0038】
結合能力は、結合剤Bに対する実際の結合能力、即ち、液体で飽和された床型の中の固定化アフィニティーリガンドを含有する固相の単位容積当りのモル活性結合部位、としてまた測定され得る。この種の結合能力は、固定化技法、固相の孔径、固定化されるべき要素のサイズ、固相の材料およびデザイン等に依存するであろう。理想的には、結合部位の総量(上で規定されるような)に対するのと同一の範囲が実際の結合能力に対して当てはまる。
【0039】
実際の結合能力の測定を、この分野で周知の原理にしたがって行うことができる。これは典型的に、固相のアフィニティーリガンドが過剰の結合剤分子で飽和されて、それ以後に結合量が、例えば、固相上でもしくは溶出後に直接に、測定されることを意味する。測定を容易にするために、結合剤の標識形を、例えば、標識のおよび非標識の結合剤の混合物の使用により、使用し得る。
【0040】
実際の結合能力とは主として、例えば、非結合のおよび/もしくは非誘導体化の、その基本形における、結合剤Bの結合/捕獲を指す。
固相が微小反応空間の内壁である場合には、固相の容積は微小反応空間の容積として取られる。
【0041】
特定の種類の実験についての結合能力(Bに対する)の最適な範囲は、数多くの因子、例えば、溶質および/もしくは元のアナライトの種類、ならびに/または溶質/アナライトが測定される濃度範囲、固定化アフィニティー対、固相の種類、例えば多孔率およびその基材、結合体(B−AC)のサイズ、Lに対する結合構造の数およびS(結合体の)に対する結合構造の数の間の比、等、に依存する。試行錯誤による試験は、今のところ、特定の実験もしくはプロトコルに関して結合能力を最適化する最も安全なやり方である。
【0042】
結合能力(Bに対する)を微小反応空間当りでまた測定することができる。その内でこの種の適当な結合能力が見出され得る間隔は、下に示す床容積についての間隔と組み合わされて上に示した能力範囲から演繹され得る。
【0043】
セットの間で容積単位当りの結合能力(Bに対する)の相違は、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10等のセットについて、例えば、最低の結合能力を有するセットに対する容積単位当りの結合能力に比較して、集積のセットの、≧10%もしくは≧25%もしくは≧40%もしくは≧55%もしくは≧70%もしくは≧85%および/または≦85%もしくは≦70%もしくは≦55%もしくは≦40%もしくは≦25%もしくは≦19%のような、5〜95%について、典型的には≧1.2の因子である。因子は、因子が≧1.2であるときと同一の数のおよび百分率のセットについて≧10もしくは≧50もしくは≧90もしくは≧500のように、≧2または≧4でまたあり得る。下のセットについてのおよび上のセットについての百分率の合計において、因子が常に合計して100%になるように適切な数を取るべきである。
種々の因子および百分率について同一の間隔は、微小反応空間/床当りの結合能力についてまた当てはまる。
【0044】
アフィニティー相手ACおよび溶質S
アフィニティー相手ACはアフィニティーにより溶質Sに結合する能力がある。この種の結合は、(a)静電気的相互作用、(b)疎水性相互作用、(c)電子−供与体受容体相互作用、および/もしくは(d)バイオアフィニティー結合:の少なくとも一つに典型的に基づいている。
バイオアフィニティー結合は、相互作用の組合せを典型的に含むアフィニティー結合のサブグループである。
【0045】
かくして、アフィニティー相手ACは:
(a)電気的に荷電されるかまたは荷電可能である、即ち、正に荷電した窒素(例えば、第一級の、第二級の、第三級のもしくは第四級のアンモニウム基、およびアミジニウム基)ならびに/または負に荷電した基(例えば、カルボン酸塩の基、リン酸塩の基、ホスホン酸塩の基、硫酸塩の基およびスルホン酸塩の基)を含む;ならびに/または
(b)一つもしくはそれ以上のヒドロカルビル基および他の疎水性基を含む;ならびに/または
(c)多分水素ならびに/またはsp−、sp−および/もしくはsp−混成炭素に連結する、一つもしくはそれ以上のヘテロ原子(O、S、N)を含む;ならびに/または
(d)特性(a)〜(c)の組合せを含む、
ことがあり得る。
【0046】
アフィニティー相手ACは、バイオアフィニティー対のメンバーである反応物の中で選択され得る。典型的なバイオアフィニティー対は、a)抗原/ハプテンおよび抗体、b)相補的な核酸、c)免疫グロブリン結合タンパク質ならびに免疫グロブリン(例えば、IgGまたはそのFc−部分およびタンパク質AもしくはG)、d)レクチンおよび相当する炭水化物、e)ビオチンおよび(ストレプト)アビジン、e)酵素システム(酵素の基質、酵素の補因子、酵素の阻害剤等)のメンバー、f)ヒスチジル、システイニル、リン酸化アミノアシル等の残基の配列およびIMAC基(固定化金属キレート)、等である。抗体には、抗原結合フラグメントならびに抗体のミメティックおよびそれらのフラグメントならびに組換え構成体が含まれる。用語“バイオアフィニティー対”は、その中で一つもしくは両方のメンバーが合成である、例えば、天然のバイオアフィニティー対の一つもしくは両方を模倣する、アフィニティー対をまた含む。
【0047】
用語“アフィニティー反応物”は、例えばジスルフィドの形成により、その相手との可逆的共有結合性結合が可能である反応物を含む。この種の反応物は典型的に、HS−または−S−SO−基(n=0、1もしくは2、自由原子価は炭素に結合する)を示す。US 5,887,997(Batista)、US 4,175,073(Axen et al)、および4,563,304(Axen et al)を参照されたい。
【0048】
アフィニティー相手ACは、触媒システムまたは、触媒、共触媒、補因子、基質もしくは補基質、阻害剤、促進剤等のような、触媒システムのメンバーでまたあり得る。酵素システムについては、相当するメンバーは、酵素、共触媒、補因子、補酵素、基質、補基質等である。用語“触媒システム”は、連鎖触媒システム、例えば、その中で最初のシステムの生成物が第二触媒システム等の基質および生物細胞の全体もしくはそのような細胞の一部である一連のシステム、をまた含む。
【0049】
アフィニティー相手ACは、意図する応用に関して溶質を固相物質に結合するために適切な選択性および特異性を有するように選択されるべきである。アフィニティー反応物および反応条件の適切な選択についての一般方法ならびに基準は当分野で周知である。
【0050】
アフィニティー相手ACおよび溶質Sを含む複合体の形成に対するアフィニティー定数(KS−−AC=[S][AC]/[S−−AC])は、応用を最適化するための重要な基準である。このアフィニティー定数への要求は応用に依存して変わる。アフィニティーアッセイについては、アフィニティー定数は、典型的には≦10−8mole/lもしくは≦10−9mole/lである。この種のアッセイは典型的に、溶質は固定化ACと流動条件下に反応させられそして動物のもしくは生物の試料(動物のもしくは生物の試料は、ヒトおよび他の動物の患者のような、哺乳動物からの、ならびに実験動物からの試料を含む)の中のアナライトの量に関連することを含む。これは、さらに弱いアフィニティーを有するアフィニティー相手がこの種の試料、他の試料およびアフィニティーアッセイ、ならびに他の応用のために使用され得ることを除外しない。かくして、応用に依存して、アフィニティー定数は、10−3mole/lまでもしくは10−4mole/lまでもしくは10−5mole/lまでもしくは10−7mole/lまでのように、比較的大きくあり得る。
【0051】
L/BのおよびAC/Sの対に対するアフィニティー定数とは、Biacore (Uppsala, Sweden)からのバイオセンサー(表面プラスモン共鳴)により、即ち、デキストランで被膜した金の表面に固定化されたアフィニティー反応物(ACおよびL)で、得られる値を指す。
【0052】
アフィニティー対、特にバイオアフィニティー対、のメンバーの少なくとも一つは、a)ポリおよびオリゴペプチド構造のようなペプチド構造を含むアミノ酸構造、b)炭水化物構造、c)核酸構造を含むヌクレオチド構造、d)ステロイド構造、トリグリセリド構造等のような脂質構造:の中で選択される構造を典型的に示す。この種の構造はL、B、ACおよびSの中にならびに使用される他のアフィニティー反応物の中に存在し得る。
【0053】
結合体(B−AC)
用語“結合体”とは主として、化学結合体および組換え的に製造される結合体のような共有結合性結合体(そこでは両方の部分およびまた可能なリンカーはペプチド構造を有する)を指す。この用語はまた、所謂天然の結合体、即ち、お互いに離れて間隔を空けて、アフィニティーを二つの異なる分子要素のほうに向けた二つの結合部位を示すアフィニティー反応物、例えば、分子の一つの側(=部分)上に種およびクラス−特異的決定因子ならびにもう一つの側(=部分)上に抗原/ハプテンの結合部位を含む天然の抗体を、含む。
【0054】
結合体は、装置のマイクロチャネル構造に(即ち装置の内部に)予め分配されるか、もしくは装置の外で集積の別個の要素として保存されるかのいずれかで集積の中に存在し得る。もし予め分配されると、結合体は、微小反応空間中に存在し得てそしてアフィニティーは固定化アフィニティーリガンドLを介して、もしくはマイクロチャネル構造/装置内の或る他の位置の中で固相に結合され得る。もし装置の外で存在すると、結合体は、溶液としてまたは、例えば、大気圧もしくは減圧において凍結乾燥されるかまたは乾燥される、乾燥形で別個の包装の中に典型的にある。
【0055】
これに代わる実施態様では、非結合形の結合剤Bは集積の部分である。次いで、結合剤Bは、典型的には、使用時に装置内で結合体を調製するためにそれをマイクロチャネル構造に(即ち装置の内部に)充填済みであることを想定できるけれども、装置から分離されている包装の中で配達される。結合体を調製するために必要であるさらに別の試薬、例えば活性化試薬、は、集積の中の装置から典型的にはまた分離している。
さらにもう一つの選択肢において、結合体は、他の供給源から、例えば、顧客により合成されて、提供される。
【0056】
結合剤Bについて“非結合形”の用語とは、興味のある溶質に対して如何なる結合部位も示さない形を意味する。この用語は、ACとの結合のために必要な試薬と一緒に結合剤Bをまた含みそしてBはACとの結合に適する形にあることをまた含む。これは典型的に、本発明の文脈において非結合形のBが求電子性もしくは求核性でありそしてACのようなアフィニティー反応物の官能基と共有結合性の結合を形成する能力がある官能基を示すことを意味する。求電子性の、求核性のおよび官能性の基は、アミノ基ならびに置換のもしくは未置換の−NH、カルボキシ基(−COOH/−COO)、ヒドロキシ基、チオール基、ケト基、等を含む他の基の中で、例えば選択され得る。アフィニティー反応物の中に潜在的に存在するために上で議論された構造は、もしBおよびACの一つもしくは両方のいずれかに存在しているならば、結合のためにまた利用され得る。
【0057】
微小反応空間(104a〜h)および固相
微小反応空間(104a〜h)は、その中に固相が存在するマイクロチャネル構造(101a〜h)の部分として規定される。これは、多孔性床の形の固相について、床の容積および微小反応空間(104a〜h)が合致するであろうしそして同一の容積を有することを意味する。もしも固相がマイクロ導管の内壁であるならば、微小反応空間(104a〜h)は、固相の最上流のおよび最下流の末端の間の容積として規定される。
【0058】
微小反応空間(104a〜h)は、≦500μmもしくは≦200μmのような≦1,000μmである、少なくとも一つの断面寸法(深さおよび/もしくは広さ)を有する。最小の断面寸法は、典型的には≧25μmもしくは≧50μmのような≧5μmである。微小反応空間の容積は、1,000nlもしくは≦500nlもしくは≦100nlもしくは≦50nlもしくは≦25nlのような、≦5,000nlのように、典型的にnlの範囲にある。
アフィニティーリガンドLを持つ固相を含有する微小反応空間の幾何学的な形は、セット内では典型的に本質的に同一であるが、セットの間では異なっていても異なっていなくてもよい。
【0059】
固相は、セット内で理想的には同一であるがセットの間では変わり得る。特定の選択された溶質(例えばアナライト)、濃度範囲、試料、プロトコル等について実験を行うためには、最適条件は、他の溶質、他の濃度範囲、試料、プロトコル等に適合しない、選択された固相を必要とするであろうことが想定され得る。固相の間の相違は、多孔度および/もしくはKav−値のような、ベースマトリックス、固相の組成、反応物の対流的なおよび/もしくは拡散的な質量輸送を許容する細孔の存在または不存在、等に関し得る。相違は固定化技法等にまた関し得る。
【0060】
微小反応空間の中の固相は、多孔性床であるかまたは微小反応空間の一つもしくはそれ以上の内壁であり得る。多孔性床の例は、a)床に詰められる多孔性のもしくは非多孔性の粒子の集団、またはb)多孔性モノリス、である。
用語“多孔性粒子”は、WO 02075312(Gyros AB)におけると同一の意味を有する。
【0061】
適当な粒子は球状でもしくは回転楕円形(ビーズ状)でまたは非球状であり得る。固相として使用される粒子について適当な平均直径は、典型的に1〜100μmの間隔で見出され、好ましくは≧10μmもしくは≧15μmのような≧5μmであるかおよび/または≦50μmである平均直径である。また、例えば0.1μm単位までの平均直径を持つ、さらに小さい粒子を使用することができる。微小反応空間(104a〜h)の出口末端(111a〜h)および粒子の設計は、粒子が微小反応空間(104a〜h)の中に保持され得るようにお互いにマッチすべきである。例えば、WO 02075312(Gyros AB)を参照されたい。特定の種類の粒子、特にコロイド寸法の粒子、は塊状になり得る。これらの場合には、塊のサイズは、たとえ塊状になる粒子がそれ自体では以下であっても、与えられた間隔の中にあるべきである。直径とは“流体力学的”直径を指す。
【0062】
使用される粒子は、WO 02075312(Gyros AB)にあるのと同一の意味で単分散で(モノサイズで)もしくは多分散で(ポリサイズで)あり得る。
固相物質は透明であってもなくてもよい。
【0063】
固相の基材は無機のおよび/もしくは有機の材料から作成され得る。典型的な無機材料はガラスを含み、そして典型的な有機材料は有機ポリマーを含む。ポリマー材料は、ガラスおよびシリコンゴムのような、無機ポリマー、ならびに合成もしくは生物由来(バイオポリマー)であり得る有機ポリマーを含む。用語のバイオポリマーは、その中に天然のバイオポリマーから誘導されるポリマーバックボーンがある半合成ポリマーを含む。典型的な合成の有機ポリマーは架橋されていて、重合可能な炭素−炭素二重結合を含むモノマーの重合によりしばしば得られる。適当なモノマーの例は、アクリル酸ヒドロキシアルキルおよび相当するメタクリル酸エステル、アクリルアミドおよびメタクリルアミド、ビニルおよびスチリルエーテル、アルケン置換のポリヒドロキシポリマー、スチレン等である。典型的なバイオポリマーは架橋していてもしていなくてもよい。大抵の場合には、それらは炭水化物構造、例えばアガロース、デキストラン、でん粉等を示す。
【0064】
多孔性床についての用語“親水性の”とは、過剰の水と接触するときに、水が床の全部に渡って毛管現象により広げられるのに十分な程の、細孔の表面の湿潤性(吸着)を意味する。もし固相が微小反応空間の内壁であるならば、“親水性の”とは、水の接触角が本明細書の他の所で親水性(湿潤性)について規定される限度以内にあることを主として意味する。これに代えて、一旦水が微小反応空間の最上流端に到達したならば、親水性は、毛管現象により微小反応空間(104a〜h)を水で満たすのに十分である。水性の液体と接触すべき表面は、それぞれが例えば酸素および窒素の中で選択されるヘテロ原子を有する複数の極性官能基をまた露出するものとする。適切な官能基を、ヒドロキシ基、エチレンオキシド基(−X−[CHCHO−]、式中、nは>1の整数であって、Xは窒素もしくは酸素である)、アミノ基、アミド基、エステル基、カルボキシ基、スルホン基等の中で選択することができ、好ましくは、pHに無関係に、例えば2〜12の範囲内で、本質的に荷電されないような基である。
【0065】
もしも固相物質の基材が疎水性であるかもしくは十分に親水性で無い、例えば、スチレン(コ)ポリマーに基づくならば、水性の液体と接触するべき表面は親水性化され得る。典型的なプロトコルは、上で議論したのと同一な型の極性官能基を示す化合物もしくは化合物の混合物で被膜すること、酸素プラズマによる処理等を含む。
【0066】
微小流体装置の一般的特徴
同一の微小流体装置の上でアフィニティーリガンドLを持つ固相を含有するマイクロチャネル構造の数は、典型的には≧10、例えば≧25もしくは≧90もしくは≧180もしくは≧270もしくは≧360である。上で議論したように、装置のマイクロチャネル構造はグループに分割され得る。それぞれのグループの中のマイクロチャネル構造の数は、装置のマイクロチャネル構造の全数の5〜50%もしくは5〜25%もしくは10〜50%のように、1〜99%の間隔に典型的にある。これは、典型的に、それぞれのグループが3〜15もしくは3〜25もしくは3〜50個のマイクロチャネル構造を備えることを意味する。
【0067】
微小流体装置のマイクロチャネル構造(101a〜h)は、実験の全部のプロトコルを構造内で実施することを許容する機能性部分を備える。かくして、マイクロチャネル構造(101a〜h)は、a)例えば、多分容積計量ユニット(106a〜h、108a〜h)と一緒に、入口/入口孔(105a〜b、107a〜h)を備える入り口装置(102、103a〜h)、b)液体輸送のためのマイクロ導管、c)微小反応空間(104a〜h);d)微小混合空間;e)液体から粒子状物質を分離するためのユニット(入り口装置の中に存在し得る);f)例えば、キャピラリー電気泳動、クロマトグラフィー等により、試料の中でお互いから溶解されたかもしくは懸濁された成分を分離するためのユニット;g)微小検出空間、h)廃液の導管/マイクロキャビティ(112、115a〜h)、i)バルブ(109a〜h、110a〜h)、j)環境雰囲気への通気口(116a〜i)、等の中で選択される一つ、二つ、三つもしくはそれ以上の機能性部分を備え得る。機能性部分は、機能性以上を有し得る、例えば、微小反応空間(104a〜h)および微小検出空間が合致し得る。微小流体装置の中のいろいろな種類の機能性ユニットは、Gyros AB/Amersham Pharmacia Biotech AB:WO 99055827、WO 99058245、WO 02074438、WO 02075312、WO 03018198(US 20030044322)、WO 03034598、SE 03026507(SE 04000717、US SN 60/508,508)、SE 03015393(US SN 60/472,924)によりおよびTecan/Gamera Biosciences:WO 01087487、WO 01087486、WO 00079285、WO 00078455、WO 00069560、WO 98007019、WO 98053311により記載されている。
【0068】
共通の入り口装置について既に議論したように、革新的な微小流体装置は、二つもしくはそれ以上のマイクロチャネル構造を接続する他の共通のマイクロチャネル/マイクロ導管/微小流体機能をまた含み得る。入口、出口、通気口、等のようなそれらの種々の部分を備える共通のチャネルは、それらが通信しているそれぞれのマイクロチャネル構造の部分と考えられている。共通の入り口装置についてと同様に、これらの他の共通の機能は、装置のマイクロチャネル構造をグループに分割するおよび/もしくは装置のマイクロチャネル構造の異なるグループを微小流体装置の異なる小区域に指定するための基礎であり得る。これらの種のグループもしくは小区域は、共通の入り口装置により規定されるグループおよび小区域と合致する必要は無い。
【0069】
共通のマイクロチャネルは、その中でマイクロチャネル構造がネットワークを形成する微小流体装置と解釈することを可能にする。例えば、US 6,479,299(Caliper)を参照されたい。
それぞれのマイクロチャネル構造は、液体用の少なくとも一つの入口孔および過剰の空気用(通気口)のおよび多分また液体用の少なくとも一つの出口孔を有する。
【0070】
画期的な集積の微小流体装置は、本発明にしたがって固相物質を保持するための微小反応空間を有しないマイクロチャネル構造をまた含み得る。
【0071】
異なる原理が、上述の機能性部分の二つもしくはそれ以上の間で微小流体装置/マイクロチャネル構造内で液体を輸送するために利用され得る。慣性力を、例えば、次の段落で議論されるようにディスクを回転させることにより、使用し得る。他の有用な力は、毛管力、導電力、毛管力、静水圧のような非導電力等である。
【0072】
微小流体装置は典型的にはディスクの形である。好ましい形式は、ディスク平面に直角であるかもしくはそれと合致する対称軸(C)[そこでは、nは≧2、3、4もしくは5の整数、好ましくは∞(C)である]を有する。換言すれば、ディスクは、正方形のような方形、および他の多角形の形であり得るが、好ましくは円形である。適切なディスク形式が選択されれば、液流を駆動させるために遠心力を使用し得る。典型的にはディスク平面に直角であるかもしくは平行である、回転軸の周りに装置を回転することは、必要な遠心力を創造し得る。優先日での大抵の明白な変形体において、回転軸は上述の対称軸と合致する。ディスク平面に対して非−直角である回転軸を持つ潜在的に重要な装置が記載されてきている(PCT/SE2003/001850(Gyros AB))。
【0073】
好ましい遠心力ベースの変形体については、それぞれのマイクロチャネル構造は、下流セクション(回転軸から)よりさらに短いラジアル距離にある一つの上流セクションを含む。アフィニティーリガンドLを含有する微小反応空間は、これらの二種類のセクションに中間のラジアル位置にあって、流れの方向を回転軸から放射状に外側に合わせて典型的に配置される。
【0074】
好ましい装置は、従来のCD−形式と同様なサイズおよび/もしくは形、例えば、従来のCD−半径(12cm)を持つ円形ディスクの10%から300%までの間隔にあるサイズ、をもって典型的にディスク形である。ディスクの上方のおよび/もしくは下方の側は、平面であってもなくてもよい。
【0075】
微小流体装置のマイクロチャネル/マイクロキャビティは、次の工程でもう一つの本質的に平面な基質(蓋)により覆われる蓋のない形のチャネル/キャビティを示す、本質的に平面な基質表面から製造され得る。WO 91016966(Pharmacia Biotech AB)およびWO 01054810(Gyros AB)を参照されたい。両方の基質は、プラスティック材料、例えばプラスティックポリマー材料、から好ましくは製造される。
内部表面の付着活性および親水性は、応用に関して均衡させるべきである。例えば、WO 01047637(Gyros AB)を参照されたい。
【0076】
用語“湿潤性の(親水性の)”および“非−湿潤性の(疎水性の)”とは、表面が、それぞれ、≦90°もしくは≧90°の水接触角を有することを意図する。異なる機能性部分の間で液体の効率的な輸送を容易にするためには、個別の部分の内部表面は、好ましくは≦50°もしくは≦40°もしくは≦30°もしくは≦20°のような≦60°の接触角をもって、本来湿潤性であるべきである。これらの湿潤性値はマイクロ導管の少なくとも一つ、二つ、三つもしくは四つの内壁に当てはまる。一つもしくはそれ以上の内壁がさらに高い接触角を有する場合には、これは、残りの内壁(複数を含む)に対するさらに低い水接触角により補償され得る。特に入り口装置の中の、湿潤性は、一旦液体がキャビティに入り始めてきていると、水性の液体が毛管現象(自己吸引)により意図するマイクロキャビティを満たすことが可能であろうように、適応されるべきである。マイクロチャネル構造の中の親水性の内部表面は、例えば、受動性バルブ、抗−吸上げ手段、環境雰囲気等への通気口として単に機能する通気口(図1の長方形)を導入するために、親水性の内壁の中で一つもしくはそれ以上の局部的な疎水性表面切れ目を含み得る。例えば、WO 99058245(Gyros AB)およびWO 02074438(Gyros AB)を参照されたい。
接触角とは、使用温度、典型的には+25℃、での値を指して、静的でありそしてWO 00056808(Gyros AB)およびWO 01047637(Gyros AB)に示される方法により測定される。
【0077】
集積の種々の成分の包装
微小流体装置は異なる微小反応空間へ充填済みの固相と共に顧客に典型的に配達される。それぞれの微小反応空間の中の固相物質は、湿った状熊であってもよいが、好ましくは顧客による将来の再構成のための乾燥状熊(脱水状態をまた含む)である。乾燥状熊の固相物質は、可能な凍結乾燥、乾燥、保管および再構成の間の損傷から固相物質をそれ自体で安定化させるならびに/もしくはアフィニティーリガンドLを安定化させる、一つまたはそれ以上の薬剤(冷凍安定化剤、溶解安定化剤、安定化剤等を含む床の保存剤)を典型的に含む。SE 03008232、US SN 60/466376および本出願と平行して出願された相当する国際特許出願(“充填済みのマイクロスケール装置”)(Gyros AB)ならびにArakawa et al (Advanced Drug Delivery Reviews 46 (2001) 307-326)を参照されたい。床の保存剤の重要な変形体は、マイクロキャビティの密着剤である。この種の薬剤は、物質およびマイクロキャビティの内部表面の間のおよび/もしくは、もし物質が粒子形にあるならば、粒子の間の密着を増加させることにより固相物質をマイクロキャビティの中に保留することを促進する化合物または化合物の混合物を含む。マイクロキャビティの密着剤は典型的には炭水化物のもしくはポリマーの構造を含む。
【0078】
この集積の他の試薬成分はまた、溶液で提供されても先行の段落で議論されたのと同一の種類の乾燥状熊で提供されてもよい。これは、例えば結合体、非結合形の結合剤B、他のアフィニティー反応物(もしあれば)等に当てはまり、それらは本発明の個別のマイクロチャネル構造に充填済みであるときには、乾燥状態であっても湿った状熊であってもよい。これらの成分は、画期的な集積の微小流体装置の部分として別個の包装で配達されるかまたは本明細書中の他の所で議論されるように顧客もしくは或る他の供給者により提供され得る。
【0079】
画期的な集積の種々のセットに関する情報ならびに/またはそれらのためのマニュアルは、販売資料および顧客に渡される資料、即ち、一つ、二つもしくはそれ以上のセットの機能および/または使用を提示する資料の中に典型的に含まれる。この種の資料はまた画期的な集積の部分である。
【0080】
第二の態様:集積の使用
この態様は、特に特定の溶質Sおよびそのアフィニティー相手ACとの間の反応と共に平行して、特定のプロトコルの複数の作業を行うための方法を含む。この方法の工程は:
(i)画期的な集積の中で適切なセットを選択すること、および
(ii)選択されたセットのマイクロチャネル構造を備える微小流体装置を選択すること、
(iii)結合体B−ACおよび溶質Sを含有する液体を提供すること、
(iv)選択された微小流体装置上のセットのマイクロチャネル構造の少なくとも一つのグループの微小反応空間の中で固相を工程(iii)で提供される結合体で感作すること、
(v)溶質Sとの間のアフィニティー反応を、サブグループのマイクロキャビティを通して液体のアリコートを輸送することにより、好ましくはプロトコルの他の工程をまた含むこと、即ち、完全なプロトコルを実施すること、により、実施すること、
である。
【0081】
本発明の第一の態様の文脈で議論された種々の実施態様は、第二の態様にまた適用可能である。ACおよびSは、本明細書中の他の所でこれらの要素について概説されてきているものにしたがって選択されている。
【0082】
使用の間に多孔性床の中での静的対流動の条件
固定化アフィニティー相手ACおよび溶質Sとの間の相互作用は、静的なもしくは流動の条件下に、即ち、微小反応空間を通って通過する液流による溶質の輸送の有無で、起こり得る。我々は、静的な条件下より流動の条件下で、さらに多くの情報が獲得され得ることを以前に見出した(WO 02075312(Gyros AB))。流速および/もしくは滞留時間は、固相に結合される溶質の量が、拡散による最少の摂動(非拡散制限条件)をもって、固定化アフィニティー反応物および溶質の間の実際の反応速度もしくはアフィニティーを反映するであろうように、例えば調整され得る。これはまた本発明に当てはまるが、主な興味が結合される/捕獲される溶質の全量である、応用については、拡散制限のもしくは非拡散制限の条件のいずれかを利用する流動条件または静的な条件の下で捕獲することが使用され得ることを除外しない。多孔性床を通る適切な流速は、多数の因子、例えば、固定化反応物および溶質ならびにそれらのサイズ、微小反応空間の容積、固相物質を含む多孔性床等、に依存する。典型的には、流速は、典型的に1時間以下のような2時間以下である上限をもって、≧0.050秒もしくは≧0.1秒のような≧0.010秒の滞留時間を与えるべきである。例示的な流速は、0.01〜100nl/秒およびさらに典型的には0.1〜10nl/秒のような、0.01〜1000nl/秒以内にある。これらの流速の間隔は、1〜50nlもしくは1〜25nlのような、1〜200nlの範囲の床容積に有用であり得る。滞留時間とは、液体アリコートが微小反応空間の中で固相と接触するためにそれが取る時間を指す。
【0083】
アフィニティー反応
溶質Sおよびそのアフィニティー相手ACとの間のアフィニティー反応は、序言の部で特定された種類のアッセイプロトコルもしくは分離プロトコルの一部であり得る。最も典型的な場合では、アフィニティー反応は、一つもしくはそれ以上の反応変数の特性化のためのアッセイの一部である。
【0084】
アフィニティー反応の使用により特性化されるべき反応変数は、1)アフィニティー反応物に関連する変数、2)反応条件の二種類を主としている。最初の範疇は、a)存在および/もしくは不存在を含む量、濃度、相対的な量、結合活性および酵素活性のような活性、等、ならびにb)例えばアフィニティー定数、特異性等のようなアフィニティーを含むアフィニティー反応物の性質の二つの主要なサブグループを有している。それについて1型の反応変数が特性化される分子要素はアナライトと呼ばれる。WO 02075312(Gyros AB)を参照されたい。反応変数の第二の範疇には、研究されるアフィニティー反応についてpH、温度、イオン強度、水素結合を切断する薬剤の存在、洗剤、液流、固定化技法、固相等が含まれる。WO 02075312(Gyros AB)を参照されたい。
【0085】
本発明の文脈における用語“アナライト”とは、液体試料に存在して、量におよび/または化学的なもしくは生化学的な性質に関して特性化されるべきである非特性化分子要素を指す。この用語は、微小流体装置の中で使用される試料に加工されてきている、元の試料の中の元のアナライトから生じるアナライト由来の要素を含む。この予加工は、微小流体装置の外でおよび/もしくは微小流体装置内の別個の小構造の中で起こり得る。予加工は、元のアナライトがアフィニティー反応、酵素的なおよび/もしくは化学的な変換等に関与することを含み得る。アナライト由来の要素は、元のアナライトと異なる化学組成を有し得て、元のアナライト等と異なるアフィニティー複合体もしくは非複合体のアフィニティー反応物であり得る。アナライト由来の要素の存在および量は、元の試料の中の元のアナライトの存在に常に関連する。溶質Sは、アナライト由来の要素もしくは元の試料の元のアナライトであり得る。
【0086】
研究されるアッセイ反応は、アフィニティー複合体の形成もしくは解離に関係する。特性化は典型的に:a)試料中のアナライトの非特性化量の測定、b)潜在的な結合剤候補のライブラリーから結合剤(アナライト)の選択、c)与えられたアフィニティー対に最適である固定化技法および/もしくは固相の決定、D)その中で反応が行われる液体に関連する適当な反応条件の決定、e)それらのアフィニティー複合体の解離のためのそれらの適切性に関するリガンドおよび/もしくは結合剤の決定、ならびにf)複合体形成の定性的側面の決定、等、を伴う。さらなる詳細については、WO 02075312(Gyros AB)を参照されたい。
【0087】
主要なアッセイプロトコル
典型的なプロトコルにおいて、試料のアナライトの非特性化量は、少なくともアナライトおよびアナライトに対するアフィニティー相手(抗−アナライト)を含むアフィニティー複合体を形成することを可能にする。使用されるプロトコルに依存して、さらに別のアフィニティー反応物を使用し得て、多分複合体の中にまた組み込み得る。反応物の量および型は、関与するアフィニティー反応が、試料中のアナライトの真の結合能力および/もしくは量を反映するであろうアフィニティー複合体の量をもたらすであろうように、選択される。例えば、WO 02075312(Gyros AB)を参照されたい。
【0088】
これらのアッセイプロトコルは典型的に、分析的に検出可能な反応物および/または固定化されるかもしくは固定化可能な反応物を利用する。これらの反応物のいずれか一つもしくは両方は、アナライトを含む複合体の中に完全にまたは部分的に組み込まれる。固定化を使用して、複合体に組み込まれていない反応物からアナライトを含む複合体を分離する、例えば、同一の反応物の非複合体形から分析的に検出可能な反応物を含む複合体を分離する。
微小流体装置の画期的な集積に応用され得る二種類のアッセイプロトコルが主にある。
【0089】
競争的/阻害プロトコル
これらのプロトコルにおいて、アナライトおよびアナライト類似体は、限定量の抗−アナライトに結合するためにお互いに競合しつつある。抗−アナライトは、
(a)もしアナライト類似体が可溶性でありかつ分析的に検出可能であるならば、固定化されるかまたは固定化可能で、そして
(b)もしアナライト類似体が固定化されるかもしくは固定化可能であるならば、分析的に検出可能で、
あり得る。
【0090】
変形体(a)についておよび使用される正確なプロトコルに依存して、固定化されるかもしくは固定化可能である抗−アナライトは、溶質Sに対するアフィニティー相手ACならびにアナライトおよび/もしくはアナライト類似体に相当し得る。変形体(b)については、固定化されるかもしくは固定化可能であるアナライト類似体は、溶質Sに対するアフィニティー相手ACおよび分析的に検出可能な抗−アナライト類似体に相当し得る。
【0091】
競争的変形体の中で、選択肢(b)は、初期の開発相の間から今まで本発明にとって非常に興味のあるものであった。この変形体は、アナライトおよび抗−アナライトが微小反応空間(104a〜h)へ到達する前に、例えば、微小流体装置の外でもしくは微小反応空間の上流の別個の微小混合空間の中でプレインキュベートされることを含む。混合液は、遊離の(非複合体化の)抗−アナライトが固定化アナライト類似体とアフィニティー複合体を形成する、微小反応空間(104a〜h)を通って輸送される。この複合体は引き続き測定される。非複合体化抗−アナライトは溶質Sとして考えられ得て、次いで、固定化アナライト類似体はアフィニティー相手ACに相当する。
【0092】
競争的変形体は、その中でアナライト類似体および抗−アナライトを含む固定化されるかもしくは固定化可能であるアフィニティー複合体がアナライト(=溶質)と共にインキュベートされる置換アッセイを含む。
【0093】
非競争的プロトコル
これらのプロトコルは典型的に、アナライトに対する一つもしくはそれ以上のアフィニティー相手の非限定量を利用する。
【0094】
最も重要な非競争的プロトコルは、サンドイッチ型を持っていて、その中でアナライトが二つの抗−アナライト(お互いに同等であるかもしくは類似している)の間で挟まれている、固定化されるかもしくは固定化可能である複合体の形成を含む。抗−アナライトの一つは分析的に検出可能であって、他のものは固定化されるかもしくは固定化可能であって、多分また分析的に検出可能である。使用される正確なプロトコルに依存して、固定化されるかもしくは固定化可能である抗−アナライトは、アフィニティー相手ACに相当し得る。次いで、アナライト、もしくはアナライトおよび他の抗−アナライトの間の複合体、または他の抗−アナライトの非複合体形は、溶質Sに相当し得る。
【0095】
もう一つの非競争的な変形体は、固定化されるかもしくは固定化可能である形にある、唯一つの抗−アナライトを利用する。この場合には、複合体形成は、固定化複合体、もしくは引き続き固定化される可溶性複合体に至る。次いで、固定化複合体はそれ自体で測定される。典型的な変形体において、抗−アナライトは、溶質Sに対するアフィニティー相手ACおよびアナライトに相当する。
【0096】
分析的に検出可能な反応物
用語“分析的に検出可能な”により、測定されるべき複合体の形成に関与する他のアフィニティー反応物から分析的に区別され得るアフィニティー反応物が意図される。検出性は、反応物の生来の性質、例えば、酵素の酵素活性もしくは種々のIg−クラスおよびサブクラスのFc−受容体結合活性のような生来の生物学的機能、または別に導入される官能性、例えば、ビオチン(=アフィニティー標識)、酵素、色素原、蛍光原、蛍光体、化学発光基、放射性基等のような、分析的に検出可能なタグもしくは標識での標識化、から誘導され得る。
形成された複合体はそれ自体で、例えば、溶液の、表面の等の光学的性質を変化することにより、検出可能でまたあり得る。
【0097】
検出可能な標識は、複合体が形成されるかもしくは解離されるときに、標識が一緒に適切なシグナルを与えるように選択される第二の標識と結合され得る。この変形体は、所謂シンチレーション近接アッセイ(SPA)でおよび相互作用する蛍光体(FRET)の対を使用することにより例示され得る。
【実施例】
【0098】
実験の部
実験に使用される微小流体装置は円形であって、従来のCD(コンパクトディスク)と同一の寸法を持っていた。この微小流体装置はさらに続けてCDと呼ばれるであろう。CDは、周辺部の近くにそれぞれのグループ(100)について共通の廃液チャネル(112)を持つディスクの中心(回転軸)の周りの環状ゾーンに配置される8個のマイクロチャネル構造(101a〜h)の14個のグループ(100)を含有した。8個のマイクロチャネル構造のグループは図1に示されていて、そして(WO 02075312、Gyros AB)の図1〜2ならびにWO 03024548(US 20030054563)(Gyros AB)およびWO 03024598(US 20030053934)(Gyros AB)の相当する図に図示されているサブグループに似ていて、それと同一な様式で機能する。寸法は、これらの初期の特許出願にあるのと同一のサイズを本質的に持つ。
【0099】
それぞれのサブセット(100)は、マイクロチャネル構造当り一つの共通の入り口装置(102)、一つの別個の入り口装置(103a〜h)およびマイクロチャネル構造当り一つの微小反応空間(104a〜h)を持つ八つのマイクロチャネル構造(101a〜h)を備える。共通の入り口装置は、それぞれのマイクロチャネル構造(101a〜h)についてa)過剰の液体の出口としてまた機能するであろう二つの共通の入口(105a〜b)、およびb)一つの容積計量ユニット(106a〜h)を備える。容積計量ユニット(106a〜h)は、マイクロチャネル構造の下流部分のための分布マニホールドとして機能するであろう。別個の入り口装置(103a〜h)のそれぞれは、唯一つのマイクロチャネル構造の部分であって、入口(107a〜h)および容積計量ユニット(108a〜h)を備える。それぞれの容積計量ユニット(106a〜h、108a〜h)およびそれらの下流部分の間には、それぞれ、好ましくは受動的な、バルブ機能(109a〜h、110a〜h)がある。マイクロチャネル構造(101a〜h)の微小反応空間(104a〜h)は、マイクロチャネル構造(101a〜h)の共通の入り口装置(102)および別個の入り口装置(103a〜h)の両方の下流に位置する。それぞれの微小反応空間の出口末端(111a〜h)においては、深度は二つの工程で100μmから10μmに下げられて、粒子が微小反応空間から漏れることを防止する。それぞれの微小反応空間(104a〜h)は、図1で外側の曲がりとして図示される、出口マイクロ導管(113a〜h)に接続される下流方向にあり、そして廃液機能(115a〜h)に接続される出口末端(114a〜h)を有する。周辺において、共通の廃液チャネル(112)がある。バルブ(109a〜h、疎水性切れ目)と一緒に通気口(116a〜i、疎水性切れ目)は、それぞれの容積計量ユニット(106a〜h)から下流に分布されるべき液体のアリコートの容積を規定する。
【0100】
適切な量の水性液体を入り口装置の入口孔に入れることにより、毛管現象が入口に接続される容積計量ユニット(複数を含む)を液体で満たすであろう。ディスクをその中心の周りに回転することにより、液体を容積計量ユニットおよび下流部分の間のバルブ(109a〜h、110a〜h)に強制的に通過させることができる。
【0101】
実験
計器装備
免疫アッセイは自動化システムの中で実施される。システム(レーザー誘起蛍光(LIF)モジュールを備えるGyrolabワークステーション2型試作機器、Gyros AB, Uppsala, Sweden)を、CD−スピナー、微量定量プレート(MTP)用の保持器および5個のシリンジポンプ、2および2、に接続される10個の毛管用の保持器を持つロボットのアームで装備した。毛管の二つは、全ての試薬および緩衝液をMTPからCDの中の二つの共通の入口(105a〜b)のいずれかへ移送した。他の八つの毛管は、個別の試料をMTPからCDの中の別個の個別の入口(107a〜h)へ移送した。
【0102】
Gyrolabワークステーションは、応用特異的ソフトウエアにより制御される完全に自動化されたロボットシステムである。ソフトウエア内の応用特異的方法は、CDの回転を正確に制御された速度で制御して、それによりマイクロ構造を通る液体の移動を、応用が進行するにつれて、制御する。特別なソフトウエアがバックグラウンドノイズを減少するために含まれた。
【0103】
WO 02075312(Gyros AB)、WO 03025548およびUS 20030054563(Gyros AB)、WO 03025585およびUS 200030055576(Gyros)、WO 03056517およびUS 200301156763(Gyros AB)ならびにまたwww.gyros.com.をまた参照されたい。
【0104】
多孔性床の作成
例えば、固体のポリスチレン(PS)粒子(15μm、Dynal Biotech, Oslo, Norway)を固相のために選択した。ビーズをフェニルデキストラン(PheDex)の受動的吸着により修飾して、親水性表面を創製し、そしてストレプトアビジン(免疫純度のストレプトアビジン、Pierce, Perbio Science UK Limited, Cheshire, United Kingdom)とCDAP化学(Kohn & Wilchek, Biochem. Biophys. Res. Commun. 107 (1982), 878-884)を用いて引き続き共有結合的に結合した。多孔性粒子(ビーズ)の形の固相物質は、Superose[登録商標]、Superdex[登録商標]ペプチド(Superdex[登録商標]P)およびSepharose[登録商標]HP(Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)であって、そしてそれらはストレプトアビジンとCDAP化学(フェニルデキストラン被膜無しで)を用いてまた共有結合的に結合させた。ポリスチレン粒子は固体であって非膨潤可能であり、そしてSuperose[登録商標]、Superdex[登録商標]ペプチドおよびSepharose[登録商標]HPは多くのアフィニティー反応物に対して多孔性であって、使用される液体の中で膨潤可能である。
【0105】
ストレプトアビジンとのカップリングの後で、リン酸カリウム緩衝液(10mM)中の粒子の懸濁液を、入口(105a〜b)を介して共通の分布チャネル(102)の中に分布して、遠心力により構造を通して移動した。通気口(109a〜h、113a〜i)と組合せた遠心力は、懸濁液を共通の入り口装置(102)の中に同じ分量で分割して、それらのそれぞれは二相の深度(111a〜h)に対してそれぞれの微小反応空間(104a〜h)の中に充填された粒子の床(カラム)を形成する。カラムのおおよその容積は15nlであった。
【0106】
免疫アッセイ
我々のミオグロビンアッセイの捕獲抗体、モノクローナル抗−ミオグロビン8E11.1(LabAS, Tartu, Estonia)をSulfo−NHS−LC−ビオチン(Pierce, prod # 21335, Perbio Science UK Limited, Cheshire, United Kingdom)を用いてビオチン化した。モノクローナル抗ミオグロビン8E11.1のタンパク質濃度は1〜10mg/mlであった。抗−ミオグロビン8E11.1を0.15M NaClを添加した15mMのPBS中でビオチン化試薬の3倍モル過剰と室温で1時間インキュベートした後、反応混合液をNAP−5カラム(Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)もしくはタンパク質脱塩スピンカラム(Protein Desalting Spin Column)(Pierce, # 89849-P, Perbio Science UK Limited, Cheshire, United Kingdom)のいずれかを通してゲルろ過した。ビオチン化抗体を持ってストレプトアビジンで固定化した粒子を装填するために、抗体の0.2〜2mg/mlの濃度(どれだけのストレプトアビジンが充填されたカラムにあるかに依存して)での溶液を、入口(105a〜b)を介して共通の分布チャネルの中に分布して、遠心力により構造を通して移動した。カラムを通る流速を回転速度により制御した(回転流動1)。捕獲抗体をカラムに取り付けた後に、それらを、共通の分布チャネル(入口105aもしくはb)へのPBS(0.01%のTween[登録商標]20を添加した)の添加により一回洗浄して、引き続いて回転工程を行った。
【0107】
それぞれ500nMのミオグロビンの試料(1%BSA添加のPBS中に希釈した)を個別の入口(107a〜h)に分布した。試料容積の200nlを、回転流動方法の最初の二工程の間、容積計量ユニット(108a〜h)の中に規定した。捕獲工程(ミオグロビンを8E11.1に結合する)下で好適な速度論的条件に到達するために、試料の流速は1nl/秒を超えるべきでない。試料の流速を回転流動2により制御した。試料の捕獲後に、カラムを、共通の分布チャネル(入口105aもしくはb)へのPBS(0.01%のTween20を添加した)の添加により二回洗浄して、引き続いて回転工程を行った。過剰の検出抗体(モノクローナル抗ミオグロビン2F9.1(LabAs, Tartu, Estonia))を共通の分布チャネル(入口105aもしくはb)を介して次に加えて、同様の遅い流速(回転流動3)を用いた。検出抗体を蛍光体Alexa 633 (Molecular Probes, Eugene, USA)で標識した。過剰の標識抗体を、共通の分布チャネル(入口105aもしくはb)へのPBS(0.01%のTween20を添加した)の4回の添加により洗い流した。それぞれの添加を回転工程に引き続けた。水性イソプロパノール(IPA)での洗浄は非特異的吸着を顕著に減少した。
【0108】
完全なアッセイをレーザー誘起蛍光(LIF)検出モジュールの中で分析した。WO 02075312(Gyros AB)、WO 03025548およびUS 20030054563(Gyros AB)、WO 03025585およびUS 200030055576(Gyros AB)、ならびにWO 03056517およびUS 200301156763(Gyros AB)をさらに参照されたい。
【0109】
システムの中で実施される運転方法の概観は表1に提示されている。
結果
図2bは、異なるベースマトリックスを含む固相を使用することができたことを図示する。使用される濃度について逸脱する唯一のベースマトリックスはPS−PheDexである。
図3は、同一のベースマトリックスであるが異なる濃度の固定化アフィニティーリガンドL(この場合にはストレプトアビジン)と共に含む固相物質を使用することができたことを図示する。さらに大きい結合能力を含む固相を、さらに低い濃度のアナライトが測定されるべきときに一時的に使用する(さらに高い感度)。(グラフ3)について主要ピークの下流に現れる不要に結合した物質を、もし水性イソプロパノール(IPA)での洗浄がプロトコルに含まれていたならば、除去することができた。
【0110】
【表1】

【0111】
乾燥および再構成
本発明の特定の革新的な態様は、付属の請求項にさらに詳細に規定されている。本発明およびその有利性は詳細に記述されてきているけれども、種々の変化、置換および変更が
付属の請求項に規定されているような本発明の精神および範囲から逸脱すること無しに本明細書中でなされ得ることを理解するべきである。さらに、本出願の範囲は、本明細書中で記載されている加工法、機械、製造、物質の成分、手段、方法および工程の特定の実施態様に限定されることを意図していない。当業者は本発明の開示から容易に認識するであろうので、本明細書中で記載されている相当する実施態様と実質的に同一の機能を実施するかもしくは実質的に同一の結果を達成する、現存するかまたは後で開発されるべき、加工法、機械、製造、物質の成分、手段、方法もしくは工程は、本発明にしたがって利用され得る。したがって、付属の請求項は、そのような加工法、機械、製造、物質の成分、手段、方法もしくは工程をそれらの範囲内に含むことを意図する。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】図1は、実験の部で利用される微小流体装置のマイクロチャネル構造のサブグループを示す。
【図2】図2は、粒子形で異なる種類の固相物質についての動的能力を示す。
【図3】図3は、異なる結合能力を有する固相物質での結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つもしくはそれ以上の微小流体装置の集積であって、それらはそのそれぞれがその中に固定化アフィニティーリガンドLを持つ固相がある、微小反応空間(104a〜h)を備える複数のマイクロチャネル構造(101a〜h)を一緒に保持して、
(i)複数のマイクロチャネル構造が二つもしくはそれ以上の異なるセットのマイクロチャネル構造を備えて、そして
(ii)アフィニティーリガンドLがセットから独立して同一の相手(結合剤、B)に向けられていて、そして
(iii)セットが、
a)微小反応空間当りの結合剤Bに対する能力および/もしくは微小反応空間の中の固相の単位容積当りの能力、ならびに/または
b)固相のベースマトリックス
に関してセットの間で異なるがそれぞれのセット内では等しい
ことを特徴とする、集積。
【請求項2】
相違が最低の結合能力を有するセットに対する結合能力に比較して集積の少なくとも一つのセットに対して≧1.2の因子を持つことを特徴とする、請求項1に記載の集積。
【請求項3】
請求項1〜2のいずれか1項に記載の集積であって、少なくとも一つの当該装置が
a)少なくとも二つの当該セットのマイクロチャネル構造、および/もしくは
b)集積がそれらを保持するセットの種類に関して異なる二つもしくはそれ以上の装置を備えるという条件で、唯一つのセットのマイクロチャネル構造
を備えることを特徴とする、集積。
【請求項4】
関与する反応物および/もしくは反応物の添加順ならびに/またはその中で反応物が使用される濃度範囲に関して異なる、一つもしくはそれ以上のアフィニティープロトコルを別個に実施することを意図している請求項1〜3のいずれか1項に記載の集積であって、当該異なるプロトコルのそれぞれが
(i)溶質S、および
(ii)
(a)結合剤B、および
(b)溶質Sに対するアフィニティー相手AC
を含む結合体
の間のアフィニティー反応を利用して、
アフィニティーリガンドLおよび結合剤Bの間の複合体L−−Bの形成に対するアフィニティー定数KL−−B,即ちKL−−B=[L][B]/[L−−B]、がストレプトアビジンおよびビオチンに対する相当するアフィニティー定数の、せいぜい10倍のように、せいぜい10倍であることを特徴とする、集積。
【請求項5】
Lがビオチン結合化合物およびストレプトアビジン結合化合物の中で、それぞれ、または逆もまた同様に、選択されることを特徴とする、請求項4に記載の集積。
【請求項6】
Lが二つもしくはそれ以上のBに対する結合部位を有することを特徴とする、請求項4〜5のいずれか1項に記載の集積。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の集積であって、
(a)装置上のそれぞれのセットが流体的に同等なマイクロチャネル構造の一つもしくはそれ以上のグループの中にグループ分けされること、および
(b)それぞれのグループが装置の特定の小区域に位置していること
を特徴とする、集積。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の集積であって、上流方向の少なくとも一つ、好ましくは全部の、当該マイクロチャネル構造(101a〜h)の中の当該微小反応空間(104a〜h)が容積計量ユニット(106a〜h、108a〜h)に接続されていることを特徴とする、集積。
【請求項9】
当該容積計量ユニット(106a〜h、108a〜h)が液体用の入り口装置(102、103a〜h)の部分であることを特徴とする、請求項7に記載の集積。
【請求項10】
請求項6〜8のそれぞれ1項に記載の集積であって、少なくとも一つの当該グループ(複数を含む)(100)内の当該容積計量ユニット(106a〜h、108a〜h)が、当該少なくとも一つのグループ(100)のそれぞれは二つもしくはそれ以上のマイクロチャネル構造(101a〜h)を備えるという条件で、グループの微小反応空間(104a〜h)に液体を分布するための分布マニホールドの部分であることを特徴とする、集積。
【請求項11】
請求項7〜10のそれぞれ1項に記載の集積であって、それぞれの当該容積計量ユニット(106a〜h、108a〜h)の内壁が一旦水性の液体がユニット、およびb)その出口末端におけるバルブ(109a〜h、110a〜h)、例えば受動性バルブ、に入ってきていると毛管現象により満たされるのに十分な当該ユニットに対する親水性を有することを特徴とする、集積。
【請求項12】
請求項4〜11のいずれか1項に記載の集積であって、少なくとも一つの溶質Sおよびそのアフィニティー相手ACならびに/もしくは少なくとも一つの結合剤BおよびリガンドLがポリ/オリゴペプチド構造およびタンパク質構造を含むペプチド構造、炭水化物構造、ステロイド構造を含む脂質構造、核酸構造を含むヌクレオチド構造、ならびにポリマー構造の中で選択される構造を含むことを特徴とする、集積。
【請求項13】
当該固相が、好ましくは固相に加えて一つもしくはそれ以上の床の保存剤を含む、乾燥状熊にあることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の集積。
【請求項14】
当該一つもしくはそれ以上の床の保存剤の少なくとも一つがマイクロキャビティの密着剤であることを特徴とする、請求項13に記載の集積。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2006−524816(P2006−524816A)
【公表日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507979(P2006−507979)
【出願日】平成16年3月23日(2004.3.23)
【国際出願番号】PCT/SE2004/000441
【国際公開番号】WO2004/083109
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(505358004)ユィロス・パテント・アクチボラグ (22)
【氏名又は名称原語表記】Gyros Patent AB
【Fターム(参考)】