説明

マイクロストリップ方向性結合器のオーバレイ(毛髪様)の湿分を測定する装置

マイクロストリップラインと、ほぼ平行な一組の第1(3)及び第2(4)ストリップを有する方向性結合器であって、前記一組の第1及び第2ストリップは互いの間に結合ギャップを画定する、方向性結合器と、前記第1ストリップ(3)に電気的に結合された高周波信号発生器であって、前記高周波信号発生器は、前記結合ギャップを横切ってオーバレイとして配置された試料によって、電力を前記第2ストリップ(4)に結合するように動作可能であり、これによって基質の湿分含量に関連する振幅を有する結合電力信号を前記第2ストリップで発生する、高周波信号発生器と、を備える、毛髪のような試料の湿分含量を測定するセンサ。ストリップ(4)からの結合電力信号はマイクロストリップにより移相(13)され、ミキサー(12)の1つのポートに結合される。ストリップ(3)からの順電力信号は、ミキサー(12)の他の部分に結合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に測定センサに関し、特に、毛髪などの生物系の内部及び外部の湿分含量などの、基質の特性を測定するためのセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの基質は吸湿性及び透過性であり、これはこれらが環境から水を吸収することを意味する。例えば、正常な状態では、水分が、毛髪の組成の約12%〜約15%を占める。正常な毛髪は、水中においてそれ自体の重量の30%超を吸収することができる。毛髪が損傷している場合、毛髪に健康な外観を与える水分を毛髪の繊維内に保持する能力は低減される。したがって、毛髪の湿分を正確に測定して、毛髪の全体的な健康又は最高のスタイリングコンディションを提供する毛髪内の湿分の程度を測定することが重要である。
【0003】
湿分感知器が、基質中の湿分レベルを決定するために過去に開発されており、望ましい目安を得るために抵抗及び静電容量測定を含む様々な技法に頼ってきた。しかしながら、これらの方法は、計測される基質の既知の断面的な量及び密度に対してのみ効果がある。基質の密度又は緻密度は変化するので、これらの測定技法はうまくいかない。更に、これらの技法は、測定のために主として基質繊維の外側の湿分含量に依存しており、基質繊維内の湿分含量をも同様に正確に測定する能力を持たない。
【0004】
先行の装置の他の欠点は、センサ及び回路構成要素が同一平面上にないことである。先行の装置は、同軸ケーブルを取り込み、センサ及び回路構成要素を相互接続した。これは特に、システムを手持ち式筐体に包装するのに困難を生じる。同様に、包装費用の増加と感度の低下ももたらす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、毛髪などの基質の湿分含量を、毛髪繊維の内側及び外側の湿分を含め、正確に且つ信頼性高く決定できる、高められた感度を有する一体型感知装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、これまでに既知の湿分センサ及び湿分含量決定方法の、上述並びに他の短所及び欠点を克服する。本発明は、特定の実施形態に関連して説明されるが、これらの実施形態に限定されるものではないことが理解される。逆に、本発明は、本発明の意図及び範囲内に含まれ得る、全ての代替実施形態、修正実施形態、及び等価実施形態を含む。
【0007】
1つの実施形態は、
コプレーナ導波路と、
ほぼ平行な一組の第1及び第2ストリップを有する方向性結合器であって、前記一組の第1及び第2ストリップは互いの間に結合ギャップを画定する、方向性結合器と、
前記第1ストリップに電気的に結合された高周波信号発生器であって、前記高周波信号発生器は、前記結合ギャップを横切って配置された基質によって、電力を前記第2ストリップに結合するように動作可能であり、これによって基質の湿分含量に関連する振幅を有する結合電力信号を第2ストリップで発生する、高周波信号発生器と、を備える、基質の湿分含量を測定するセンサを備える。
【0008】
本発明の別の実施形態は、
ほぼ平行な一組の第1及び第2ストリップを有する方向性結合器であって、前記一組の第1及び第2ストリップは互いの間に結合ギャップを画定する、方向性結合器と、
前記第1ストリップに電気的に結合された高周波信号発生器であって、前記高周波信号発生器は、前記結合ギャップを横切って配置された毛髪によって、電力を前記第2ストリップに結合するように動作可能であり、これによって毛髪の健康に関連する振幅を有する結合電力信号を前記第2ストリップで発生し、前記第2ストリップは基質の湿分含量に関連する値を有する出力電圧信号を発生するように動作可能であるAC/DC検出器を含む、高周波信号発生器と、を備える、基質の湿分含量を測定するセンサを備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本明細書は、本発明を特に指摘し、明確に請求する特許請求の範囲でまとめられるが、本発明は以下の説明から理解が深まると考えられる。
【0010】
基質中、及び基質上の湿分を測定する本システムは、コプレーナ導波路によって回路に接続される湿分を測定するためのセンサを備える。これらそれぞれの必須の構成要素、並びに好ましい、又は任意の構成要素は、以下で詳細に説明される。
【0011】
ここで図面、特に図1、図2A〜図2F、及び図3Aを参照すると、本発明の原理に従った方向性結合器センサ1が示される。簡潔にするため、センサ1は、本明細書において毛髪の湿分含量の測定に関連して説明される。しかしながら、本発明は種々様々な用途に使用され、したがって、毛髪の分析又は基質中の湿分含量の測定に限定されないことが、当業者に認識されるであろう。むしろ、本発明のセンサ1は、当業者が容易に認識するように、種々様々な基質の分析、及びそれら基質の湿分に関連する異なる特性の測定に容易に適用可能である。本発明のセンサでの使用のための好適な基質の非限定的な例としては、毛髪、皮膚、木、合成及び非合成繊維、混合繊維、ポリマー表面、並びに同様の材料が挙げられる。
【0012】
例えば、基質の湿分含量の測定において、基質の湿分含量が増加すると有効相対信号結合も増加するという原理によって、センサ1は動作する。以下により詳細に説明されるように、センサ1は基質によって生じる相対信号結合を測定するように設計され、この結合信号の測定値から、基質の湿分含量が判断され得る。湿分含量値は、表示装置上に提示、ユーザーが知覚可能な可聴音で表示、及び/又は装置の機能を制御する制御信号として使用することができる。より好ましくは、表示器は、1つ以上のLEDライトである。
【0013】
図1、図2A〜2F及び図3Aに示されるように、センサ1は、結合ギャップ5を間に画定するほぼ平行な一組のストリップ3及び4を有する高周波方向性結合器2を組み込んでいる。用語「結合」とは、本明細書において使用するとき、2つの電気回路構成要素を、一方から他方への電磁エネルギーの交換を可能にするのに十分なほど近くに配置することを意味する。1つの実施形態では、平行なストリップ3、4は、基板18の下面に形成される接地面19を有するFR4プリント回路基板(PCB)18(図2D〜3B)によって支持される。1つの実施形態では、PCBの高さ「h」は、1.6mm(0.062インチ)であり、各ストリップ3、4は4.3mm(0.017インチ)の幅「w」及び8.9mm(0.350インチ)の長さ「l」を有し、結合ギャップ5は、0.5mm(0.020インチ)のギャップ距離「s」を有する。言うまでもなく、以下で詳細に説明されるように、特定の用途に応じて、PCB18、ストリップ3、4、及びギャップ5の他の寸法も、同様に可能であることが当業者には認識されるであろう。また、接地面19は、常にPCBの底部にある必要があるが、図2Eに示されるように、真ん中にあってもよい。
【0014】
高周波信号発生器7は、ストリップ3に電気的に結合され、結合ギャップ5を横切って電磁界を発生するように動作可能であり、結合ギャップ5は、以下で詳細に説明されるように、詰め込まれた状態で結合ギャップ5を横切って、即ち結合ギャップ5の長手方向軸線にほぼ垂直に配置された基質によって、ストリップ4に電力を結合する。ストリップ4はまた、基質の湿分含量と関連する値を有する出力電圧信号を発生するように動作可能なAC/DC検出器(不図示)を含むこともできる。AC/DC検出器が存在すると、ミキサー12構成要素の必要性はなくなる。信号発生器7は、結合ギャップ5を横切って配置される基質の湿分含量に関連する振幅を有する結合ストリップ3で、結合電力信号を発生する。信号発生器7は、位相ロックされて、周波数並びに測定の正確性、安定性、及び再現性を維持し、調節可能な電力源を有する。信号発生器7は、超短波から極超短波の周波数範囲、即ち約30MHz〜約3GHzの間で信号を発生するように動作可能であるのが好ましいが、他の周波数範囲も同様に可能である。基質の水分含有量はGHz範囲近くで測定されるインピーダンスにより、最も正確に決定できると考えられているので、信号発生器7は、1つの実施形態によれば、約915MHzでなど約1GHzで動作することができる。
【0015】
1つの実施形態によれば、センサ1は、高周波方向性結合器2(図2B)の逆電力結合変化を利用して、結合ギャップ5を横切って配置された物質のインピーダンスの変化を測定する。基質が結合ギャップ5を横切って詰め込まれるときに方向性結合器2が不整合になり、物質の湿分含量増加の結果として、ギャップ5を横切るインピーダンスが増加するにつれて、この不整合が、方向性結合器2の逆電力結合の単調増加を引き起す。ストリップ4からの逆電力分枝6(図1及び図2B)の逆電力の振幅は、一般に、インピーダンスの、したがって結合ギャップ5を横切って配置された基質の湿分含量の直接の目安である。以下で詳細に説明するように、基質の湿分含量、即ちその水分重量含有量は、試料で測定されたインピーダンスから決定することができる。
【0016】
図1及び図2A〜図2Fを更に参照すると、ストリップ3からの順電力信号は、順電力分枝10(図1及び図2B)及び任意に減衰器11を介して、ミキサー12(この例は、図2Aに示されるMBA−10VL−1であることができる)の1つのポートに電気的に結合される。例えば、順電力信号は任意に、減衰器11によって約−10dBmに減衰されてもよい。しかしながら、コプレーナ導波路(以下に記載する)が優れたDCオフセットの制御を提供し、したがってダイナミックレンジを増加させるため、減衰器11は必須ではない。ストリップ4からの結合電力信号は、移相器13により移相され、逆電力分枝6を介して、ミキサー12の別のポートに電気的に結合される。移相はコプレーナ導波路により可能になる。本明細書において使用するとき、「コプレーナ」とは、導波路が装置のメインPCB18に組み込まれ、同軸ケーブル接続を使用しないことを意味する(即ち、図2D〜2F)。ミキサー12は、順電力信号と同位相の結合信号に対して最も応答性があるという点で、干渉性受信器として作用することができる。移相器13は、ミキサー12の順電力信号に対する逆電力信号の適切な位相干渉を確実にして、最大の認識可能なミキサー出力を生成する。調整可能な電力源8によってミキサーの順電力が適切なレベルに設定されると、ミキサー12の出力は、基質の湿分含量の増加により生じる逆結合電力の増加と共に単調に増加する。ミキサー12は、方向性結合器2を通して結合電力の値をDCベースバンドに復調又は低下させる。ミキサー12のDC出力は、増幅器16により濾波及び増幅されて、ギャップ5を横切って配置された基質の湿分含量17に関連する測定可能な出力電圧を生成する。増幅器16は、調整可能なゲイン14と、調整可能なDCオフセット15とを含む。
【0017】
1つの実施形態では、センサ回路相互接続は、50オームコプレーナ導波路によって形成される。導波路トレース29が図2Dに表される。コプレーナ設計は、最小限のセンサの信号損失で、理想的な位相補正制御を提供する。システムは通常、定格3.3Vの電力供給によって動力を供給される。電圧調節器9は、集積回路の電力を調節する。図1及び2Aは、PCB設計の一実施形態のブロック図及び回路図をそれぞれ示している。RF信号発生器7は、位相同期ループ(PLL)回路を使用して、信号をセンサに伝播する。PLLブロックは、これに電気的に結合される、外部電圧制御発振器(VCO)と共に機能する。このような信号発生器は、当業者に周知である。PLLは、デジタル処理でプログラムすることができる。したがって、その周波数及び電力レベルはプログラムによって調節することができる。チップの最大電力出力は不十分であるため、1つのトランジスタ振幅器16が信号を更に増幅するために使用される。しかしながら、PLLはI2Cプロトコルを介して通信される。したがって、1つの実施形態では、PLLと通信するために、12Cロジックを使用したマイクロコントローラが使用される。システムの全機能を書くために高度なC言語が使用される。機械コードをマイクロコントローラへとダウンロードするために、Cプログラムは次に、HT−PICコンパイラ及びMPLABツールを使用してマイクロコントローラの機械コードへと変換される。使用されるPLL回路は、図2Aに見ることができる。VCOから発生するRF信号の電力は、約−4dBmである。したがって、信号は、0dBmの信号強度をセンサに給送するために増幅される。信号を0dBmに増幅するために、単一のトランジスタRF増幅器16が使用される。試験される対象物内に存在する湿分を検出するためのセンサに、結合されたマイクロストリップ3、4が使用される。結合信号はミキサーRF入力に給送され、基準信号はミキサー回路12(MBA−10VL)のLOポートに給送される。スーパーヘテロダイン原理が、システムのノイズ耐性を高めるために用いられ、スーパーヘテロダイン原理を規定する原理式は、以下の(1)〜(3)の方程式によって説明される。
【0018】
【数1】

ローパスフィルターを通過した後、最終出力電圧は、
【0019】
【数2】

となる。
【0020】
ローカル発振器(LO)及び高周波(RF)ポートでの入力信号周波数が同じであるなら、方程式(3)は有効である。
【0021】
ミキサー12は、負極性検出器である(即ち、入力間の位相差がゼロの場合、出力電圧は負である)。ゼロ位相差の入力は、ミキサー12の最大出力を得るために使用される。ミキサー12の高周波構成要素は濾波され、dc出力は使用可能な増幅器16に基づく増幅回路に給送される。回路の振幅は、200程度のゲインに維持される。ミキサー12出力のいかなる可能なオフセットをも排除するために、正のオフセットヌル回路が使用される。
【0022】
PCBレイアウト設計
PCBの上部層(図2D)は、構成要素の設置に使用される。上部及び下部層は、信号経路指示に使用される。中間層(図2E)は、特に接地接続に使用され、上部層の5mm下に設置される。この間隔は、コプレーナ導波路寸法の50オーム整合にとって非常に重要である。
【0023】
センサ及び導波路設計
センサ及び導波路設計は、この設計がシステム全体の性能を決定するため、とても重要である。より良好なセンサ設計及び位相整合はより良好な感度を提供し、同時に50オーム整合の導波路設計は、信号の損失が最も少ない。
【0024】
図2D、図2F及び図3は、センサ及び導波路設計の実施形態を示している。ストリップ3、4間の間隔を増すことによってセンサの感度は増加するが、これによって結合信号レベルは−50dBmをかなり下回る。このような低レベル信号においては、信号対ノイズ比は大幅に低減する。したがって、ある実施形態では、センサの間隔は良好な信号対ノイズ比(SNR)を有する0.5mm(.020インチ)に固定される。感度もまた、基板材料の誘電率を低下させることによって増大する。典型的には、ロジャース(Rogers)基板は、FR4型基板よりも感度が高い。FR4及びロジャース基板のいずれも、ロジャース社(Rogers Corporation)から容易に入手可能である。
【0025】
FR4 PCB材料における導波路設計に関し(上部から中間層の間隔が5mmである3層基板)、w/d比は1.8に相当する。
【0026】
「w」はトレースの幅であり、「d」はトレースと接地面との間の距離である。好ましい実施形態では、トレース29の幅及び長さは、ミキサーの50Ω入力インピーダンスに整合するように設計される。この50Ω整合は、無損失信号伝送にとって非常に重要である。マイクロストリップラインの幅及び長さを決定するための計算は、以下に記載の一般化方程式(5)〜(8)を使用して行われる。
【0027】
w/d≦2の場合:
【0028】
【数3】

ここで、
「w」はマイクロストリップの幅であり、「d」はマイクロストリップと接地面との間の距離である。
【0029】
【数4】

ここで、Z0は、整合されるべきインピーダンスであり(この場合は50オーム)、εrは材料の比誘電率(FR4では4.7)である。
【0030】
w/d>2の場合:
【0031】
【数5】

ここで、因数Bは
【0032】
【数6】

ここで、Zfは、自由空間における電波インピーダンスである(即ち、376.8Ω)。
【0033】
FR4基板材料に設計される好ましいシステムのために、利用可能な仕様は、
誘電率εr=4.7
基板厚さ(上部から下部層)=1.6mm(0.062インチ)
基板厚さ(上部から接地層)=0.498mm(0.0196インチ)
特性インピーダンスZ0=50Ω
上記のパラメータを全て方程式(5)に挿入すると、w/d=1.8が得られ、したがって高さ0.498mm(.0196インチ)に対し、wは、0.89mm(0.0350インチ)にほぼ等しい。
【0034】
90°移相の計算
必要なΦ=90°
Φ=βl
ここで、βは伝播定数であり、lは90°移相に必要な長さである。
【0035】
【数7】

ここで、
【0036】
【数8】

であり、
【0037】
【数9】

であり、εrは、相対誘電率(FR4基板の場合、4.7)である。
【0038】
ここで、fは動作周波数であり、cは自由空間における光速度である。
【0039】
【数10】

【0040】
したがって、上記の計算に基づき、ミキサー12インプットにおける位相整合を達成するために、導波路トレース29の長さは46mm(1.810インチ)である。
【0041】
図4A、図4B及び図4Cを参照して、毛髪の湿分含量を決定するセンサ1の使用を、毛髪湿分センサシステム20に関連してここで説明する。毛髪湿分センサシステム20は、例えば専門サロンで使用され、顧客の毛髪の湿分含量が約30重量%〜40重量%の範囲になって、その結果最適スタイリング結果が達成可能となったときを、速やかに、正確に、及び信頼性高く、スタイリストに表示するために使用されることができる。毛髪締め具21は、装置接続手段17を介してコンピュータ27に接続されてもよく、湿分/毛髪の健康状態の結果がコンピュータスクリーン28に表示されてもよい。図4B及び図4Cに示されるように、毛髪締め具21は枢着された噛み合い部22a及び24aを有して設けられており、前記噛み合い部はそれぞれがハンドル22及び24において終端し、毛髪締め具はこれらの間の距離23に基づいて開又は閉に画定され得る。噛み合い部22a及び24aは、図4Bに示されるように開放位置に偏らせることができ、その結果、毛髪の束25は、噛み合い部22a、24aの間に容易に受入れられて、毛髪繊維25が噛み合い部24により支えられる方向性結合器2の結合ギャップ5(図3A)を横切って、即ちその長手方向軸線に概ね垂直に延びるように向けられる。装置はまた、基質充填手段26を組み込んでもよく、これは、ギャップ、歯群、歯、又は方向性結合器2と充填手段26との間の空間に毛髪を充填することができる別の構造を含んでもよい。ギャップを含む充填手段26は、根元から先端のプロファイル測定を助けるのが好ましい。
【0042】
1つの用途では、センサ1は、消費者の毛髪の全体的健康を消費者が定期的に測定できる、消費者が手軽に使える自己評価ツールを提供する。これらの測定に基づいて、消費者は、必要に応じて、消費者の毛髪の健康を改善する方向の修正処置を実施することができる。これらの処置には、ヘアケア製品の変更、ヘアスタイリング技法の変更、又はその両方を含むことができ、その結果、消費者の毛髪の全体的健康は、常に監視及び改善が可能である。センサ1はまた、ヘアスタイリスト及びヘア技能者にも同様に有用な監視ツールを提供する。
【0043】
図示されてはいないが、本発明のセンサ1は、手入れの間にユーザーの毛髪と好ましくは係合する、くし、ブラシ、カールごて、又は類似のヘアケア製品など、他のヘアケア製品に同様に組み込んで、毛髪の湿分含量、健康、又は毛髪への器具作用に基づく他の状態の測定値を提供し得ることが認識される。一般に、毛髪の健康は、滑らかさ、輝き、脆弱性のないこと、裂け目のないこと、及び表皮破壊のないことなどの要因により特徴付けられる。これらの要因のそれぞれは、毛髪の湿分含量に直接的又は間接的に関係するので、本発明のセンサ1は、測定された生体内或いは生体外の毛髪の健康の正確で信頼できる表示の提供が可能である。
【0044】
ストリップ3及び4の表面に、約2.5mm(0.1インチ)など、ごく近接したインピーダンスにおける変化への感度を有するので、方向性結合器センサ1は、毛髪の湿分含量、健康、又は他の状態を測定するのに適している。ストリップ3及び4の表面からのこの有効な測定プローブ深さの高さは、ストリップ3及び4を結合する電磁界の関数である。測定プローブ深さの高さは、PCB18の高さ、PCB18の誘電率、ストリップ3及び4の寸法、結合ギャップ距離「s」、及び/又は信号発生器7により供給される電力を変えて、特定の用途に対して変化させることができる。これらのパラメータのいずれか又は全てを変化させることにより、結合電磁界の高さを変更して、これにより有効な測定プローブ深さを変化させることができる。
【0045】
センサ1は、複数の基質のそれぞれの湿分含量を上記で詳述した原理に従って測定するために、少なくとも1つの信号発生器7に電気的に結合された複数の方向性結合器2を含んでもよいことが考えられている。更に、複数の方向性結合器2の少なくとも2つは、上記で詳述したパラメータの1つ以上を変化させることにより、異なる有効な測定プローブ深さを有してもよいことも考えられている。
【0046】
本明細書に開示されている寸法及び値は、列挙した正確な数値に厳しく制限されるものとして理解すべきではない。それよりむしろ、特に規定がない限り、こうした各寸法は、列挙された値とその値周辺の機能的に同等の範囲との両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」として開示される寸法は、「約40mm」を意味するものとする。
【0047】
「発明を実施するための最良の形態」で引用した全ての文献は、関連部分において本明細書に参照により組み込まれるが、いずれの文献の引用も、それが本発明に対する先行技術であることを容認するものと解釈されるべきではない。
【0048】
本発明の特定の諸実施形態を図示し、記載したが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を実施できることが当業者には自明である。したがって、本発明の範囲内にあるそのような全ての変更及び修正を添付の特許請求の範囲で扱うものとする。
【0049】
本明細書に取り入れられてその一部を構成する添付図面は、本発明の実施形態を示し、上記に記載した一般説明及び記載する詳細説明と共に、本発明を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の原理に従う方向性結合器センサの機能的なブロック図。
【図2A】図2A−1、2A−2、及び2A−3を含み、本発明の原理による方向性結合器センサの回路表示。
【図2A−1】本発明の原理による方向性結合器センサの回路表示。
【図2A−2】本発明の原理による方向性結合器センサの回路表示。
【図2A−3】本発明の原理による方向性結合器センサの回路表示。
【図2B】本発明の一実施形態による図1のセンサで使用する方向性結合器の回路表示。
【図2C】図2C−1及び2C−2を含み、本発明の一実施形態による図1のセンサで使用する湿分含量検出器の回路表示。
【図2C−1】本発明の一実施形態による図1のセンサで使用する湿分含量検出器の回路表示。
【図2C−2】本発明の一実施形態による図1のセンサで使用する湿分含量検出器の回路表示。
【図2D】PCBレイアウトの上部層の回路表示。
【図2E】PCBレイアウトの中間層(接地面)の回路表示。
【図2F】PCBレイアウトの下部層の回路表示。
【図2G】方向性結合器センサ構成のブロック表示。
【図3A】プリント基板に組み込まれているのを示す、図1のセンサの平面図。
【図3B】図3Aの断面図。
【図4A】本発明の一実施形態による方向性結合器センサシステムの斜視図。
【図4B】装置内に毛髪を受入れるために開放位置にある締め具を例示する、図4Aのセンサ装置で使用する毛髪締め具の拡大正面図。
【図4C】装置内に毛髪を固定するために閉鎖位置にある締め具を示す、図4Bと同様の図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コプレーナ導波路と、
ほぼ平行な一組の第1及び第2ストリップを有する方向性結合器であって、前記一組の第1及び第2ストリップは互いの間に結合ギャップを画定する、方向性結合器と、
前記第1ストリップに電気的に結合された高周波信号発生器であって、前記高周波信号発生器は、前記結合ギャップを横切って配置された基質によって電力を前記第2ストリップに結合するように動作可能であり、これによって基質の湿分含量に関連する振幅を有する結合電力信号を前記第2ストリップで発生する、高周波信号発生器と、
を備える、基質の湿分含量を測定するセンサ。
【請求項2】
前記高周波信号発生器が、前記第1ストリップ内で電力信号を発生させるよう動作可能であり、前記高周波信号発生器は前記第2ストリップ内で電力信号を受ける、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記第1及び第2ストリップに電気的に結合されたミキサー回路を更に備え、
前記ミキサー回路は、前記第1ストリップから前記電力信号を受け、前記第2ストリップから前記電力信号を受け、これによって前記基質の湿分含量に関連する値を有する出力電圧信号を発生するように動作可能である、
請求項1又は2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記高周波発生器が、約30MHzから約3GHzの範囲内で動作する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項5】
前記高周波発生器が、前記方向性結合器の前記第1及び第2ストリップを結合する電磁界を発生するように動作可能であり、前記高周波発生器は、前記第1及び第2ストリップに関連する有効な測定プローブ深さを画定する、
請求項1〜4のいずれか1項に記載のセンサ。
【請求項6】
前記有効な測定プローブ深さが可変である、請求項5に記載のセンサ。
【請求項7】
ほぼ平行な一組の第1及び第2ストラップをそれぞれが有する、複数の方向性結合器であって、前記一組の第1及び第2ストリップは互いの間に結合ギャップを画定する、複数の方向性結合器と、
各前記方向性結合器の前記第1ストリップに電気的に結合された高周波発生器であって、前記高周波発生器は、各前記方向性結合器の前記結合ギャップを横切って配置された基質によって電力を各前記方向性結合器の前記第2ストリップに結合するように動作可能であり、これによってそれぞれの各基質の湿分含量に関連する振幅を有する結合電力信号をそれぞれの各第2ストリップで発生する、高周波発生器と、
を更に備える、請求項5又は6に記載のセンサ。
【請求項8】
前記複数の方向性結合器の少なくとも2つが、異なる有効な測定プローブ深さを有する、請求項7に記載のセンサ。
【請求項9】
コプレーナ導波路と、
ほぼ平行な一組の第1及び第2ストリップを有する、方向性結合器であって、前記一組の第1及び第2ストリップは互いの間に結合ギャップを画定する、方向性結合器と、
前記第1ストリップに電気的に結合された高周波信号発生器であって、
前記高周波信号発生器は、前記結合ギャップを横切って配置された基質によって電力を前記第2ストリップに結合するように動作可能であり、これによって前記毛髪の健康に関連する振幅を有する結合電力信号を前記第2ストリップで発生し、
好ましくは、前記結合電力信号の前記振幅が、前記毛髪の湿分含量、毛髪の平滑度、毛髪の光沢、毛髪の脆弱性、毛髪の裂け目のないこと、及び表皮破壊のないこと、から選択される属性に関連する、
高周波信号発生器と、
を備える、毛髪の健康度を測定するセンサ。
【請求項10】
前記方向性結合器を支持する毛髪締め具を更に含み、
好ましくは、前記高周波信号発生器は、前記毛髪締め具によって支持される基質充填手段を含み、
好ましくは、前記毛髪締め具は一対の枢着された噛み合い部を含み、前記噛み合い部はそれぞれがハンドルにおいてその遠隔端部で終端し、
前記方向性結合器は前記噛み合い部の一方によって支持され、
前記基質充填手段は前記方向性結合具と並列して前記噛み合い部の他方によって支持される、請求項9に記載のセンサ。

【図1】
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【図2A】
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【図2A−1】
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【図2A−2】
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【図2A−3】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2C−1】
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【図2C−2】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【公表番号】特表2009−540337(P2009−540337A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515540(P2009−515540)
【出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/015157
【国際公開番号】WO2008/005346
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】