説明

マイクロチップリザーバデバイスを密閉シーリングするための方法

【課題】マイクロチップデバイスのリザーバを密閉シーリングするため、および密閉したパッケージング構造における基板アセンブリを密閉シーリングするための方法を提供すること。
【解決手段】方法は、(1)前面および背面を有する一次基板12を設けるステップであって、基板は、前面と背面との間に位置付けられる複数のリザーバを含み、各リザーバは、制御された解放および露出のために分子または二次デバイスを用いてロードされ、リザーバは、シーリングを要する少なくとも1つの開口部を有し、一次基板は、1つ以上の密閉したシーリング材料を有する、ステップと、(2)1つ以上の密閉したシーリング材料から構成される表面を有する密閉したシーリング基板18を設けるステップとを包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は概して、分子またはより小さいデバイスの制御された送達または露出を提供する埋め込み可能な小型化されたデバイスの分野にあり、より詳細には、本発明は、埋め込み可能なマイクロチップデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
Santiniらによる米国特許第5,797,898号は、薬剤等の分子の送達(すなわち放出)のための能動または受動マイクロチップを開示する。これらのマイクロチップデバイスは、放出されるべき分子で満たされたリザーバを含む。いくつかの実施形態では、任意のリザーバからまたはそこからの漏れを避けるために、その分子が満たされた後、リザーバ開口部がシールされなければならない。
【0003】
小さいリザーバをシーリングするための1つのアプローチは、防水エポキシまたはデバイス周辺の任意の液体に対して不浸透性の他の材料を使用することである。しかし、リザーバ内容物(特に薬剤分子)と化学接着剤との接触を避けるために一般的に重要である。化学接着剤と各薬剤との間の任意の相互作用、あるいはリザーバに含まれかつそこから放出される他の化学物質(chemical)の存在および性質を決定するために、化学接着剤シーラントの使用はさらなるテストを必要とし得る。化学接着剤の使用もまた、長時間、高温、完全に硬化させるための紫外光への露光、および/またはリザーバ内の敏感な薬剤または化学分子を低減し得るプロセスを必要とし得る。
【0004】
このような接着剤およびポリマーは、一般的に長期間にわたって真の密閉シールとして機能できないことが公知である。しかし、密閉は、リザーバが作動する(すなわち開く)まで、マイクロチップリザーバが制御された環境を提供することに対して非常に有利である。実際には、密閉は、このようなマイクロチップデバイスの最も長期間のインビボ用途に対して重要である可能性がある。従って、デバイスと共にパッケージングされた任意の制御電子機器および電源を含むマイクロチップデバイスを密閉シーリングするための方法を提供する。
【0005】
密閉シーリング技術は、ペースメーカおよび移植蝸牛刺激装置等の埋め込み可能なデバイスにおいて一般的に見られるが、新しいまたは改良された密閉シーリング方法は、マイクロチップリザーバデバイスを外部エンクロージャ/パッケージング構造に密閉接続させ、内部デバイスコンポーネントを保護するために機能させつつ、マイクロチップリザーバデバイスの部分もまた環境と接触/適合させることを可能にする。
【0006】
インビボ用途に対してマイクロチップデバイス内部に組み込まれたシールが、リザーバ間またはマイクロチップデバイスの他の部分に薬剤、体液、または他の物質の伝達を妨げることが望ましい。さらに望ましくは、シールは、経時的な機械的力および化学攻撃に耐え、開口部リザーバキャップのプロセスおよび放出プロセスの他の局面を妨害してはならない。シールを形成する材料は、生体適合性があり、生体安定性があり、水蒸気または他の材料に対して非常に小さいかまたは不浸透性を有し、そして薬剤または他のリザーバ内容物と反応してはならない。さらに、シーリングのプロセスは、リザーバ内容物を劣化してはならない(例えば、高温、過剰振動力、不適合な化学物質または材料に対する露出に起因する)。従って、これらのいくつかのシーリングパラメータを満足する薬剤または他の分子の制御された放出のためのマイクロチップデバイスのリザーバをシーリングするためのデバイスおよび方法を提供するには有利である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0007】
マイクロチップデバイスのリザーバを密閉シーリングするためおよび密閉パッケージング構造における基板アセンブリを密閉シーリングするための方法が提供される。一実施形態では、方法は、(1)前面および背面を有する一次基板を提供するステップであって、基板は、前面と背面との間に配置された複数のリザーバを含み、各リザーバは、制御された放出または露出に対して分子または二次デバイスを装填し、リザーバは、シーリングを必要とする少なくとも1つの開口部を有し、一次構造は、1つ以上の密閉シーリング材料を含む、ステップと、(2)1つ以上の密閉シーリング材料から構成された表面を有する密閉シーリング基板を提供するステップと、(3)リザーバ開口部にわたって密閉シーリング基板を位置付けるステップ、および一次基板の密閉シーリング材料と密閉シーリング基板の密閉シーリング材料とを接触させるステップと、(4)エネルギーまたは機械的力を接触されたシーリング材料に印加して、リザーバ開口部を密閉してシールするために、密閉シーリング基板と一次基板との間に密閉シールを形成するステップとを含む。
【0008】
一実施形態では、エネルギーは、超音波ウェルディングまたはレーザウェルディング等の1つ等のウェルディングプロセスを介して印加され得る。別の実施形態では、エネルギーは、一次基板の密閉シーリング材料と密閉シーリング基板の密閉シーリング財ロウとの間の反応を引き起こす加熱によって印加され得る。好ましくは、反応は、金/シリコン、金/ゲルマニウム、金/錫、金/インジウム、鉛/錫、鉛/インジウム、および白金/シリコンから選択された共融組成を含む。加熱は、例えば、パターニングされた抵抗器を用いて局在化された抵抗性加熱(resistive heating)を含み得る。
【0009】
さらに他の実施形態では、密閉シーリング基板の密閉シーリング材料は、金属ガスケットを含み得、圧縮力が各リザーバ開口部周辺の金属ガスケットを変形させるのに有効な量だけ印加され得る。一次基板表面から延びるテーパ状の構造は、リザーバ開口部周辺の領域において圧縮力を集中させるために使用され得る。
【0010】
好適には、密閉シーリング基板は、金属フィルムまたは金属ホイルを含むかまたはこれらからなる。他の実施形態では、一次基板の密閉シーリング材料、シーリング基板の密閉シーリング材料、またはその両方は、例えば、ケイ酸塩ガラス、ならびに/あるいは、金、白金、チタン、パラジウム、タンタル、アルミニウム、およびステンレス鋼から選択された金属を含み得る。好適には、一次基板は、セラミックス、金属、シリコン、またはガラスからなる群から選択された密閉金属を含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、密閉シーリング基板は、分子または二次デバイスを放出または露出するために選択的に分解され得るリザーバキャップである。好適な実施形態では、分子は、薬剤分子である。リザーバキャップを形成するための1つの方法では、基板の前面は、金属トレースを含み、密閉シーリング基板は、金属トレース上にウェルディングされる。シーリング方法の一実施形態では、シーリングを必要とする開口部のリザーバ遠位端は、リザーバキャップを含む。
【0012】
一実施形態では、本方法は、リザーバが密閉シールされる前後に、一次基板の密閉シーリング材料に接触する表面の遠位の表面上に、ポリマー等の保護コーティング材料を密閉シーリング材料上部に付与する選択的なステップを含む。
【0013】
別の実施形態では、密閉シーリング基板は、一次基板にアノード結合されるガラス層を含む多層構造であり、ガラス層は、リザーバに伝達している開口を有する。多層構造は、一次基板遠位上のガラス層にアノードまたは共融結合されたパターニングされた金属層をさらに含み得、パターニングされた金属層は、リザーバおよびガラス層の開口に伝達している開口を有する。多層構造は、リザーバおよび開口によって規定された隙間を密閉シールするために、ガラス層の遠位にある面上のパターニングされた金属層にレーザウェルディングされる金属層をさらに含み得る。
【0014】
一局面では、能動放出マイクロチップデバイスをパッケージングするための方法が提供される。この方法は、(1)基板を有するマイクロチップデバイスを提供するステップであって、複数のリザーバは、放出または露出のための内容物およびリザーバ内容物上方のリザーバキャップを含む、ステップと、(2)密閉パッケージング構造を提供するステップと、(3)マイクロチップデバイスを入れるが、リザーバキャップが露出されかつ動作可能のままであるのに有効な、マイクロチップデバイスの基板とパッケージング構造の1つ以上の表面との間に密閉シールを形成するステップとを含む。例えば、形成するステップは、レーザウェルディング、超音波ウェルディング、またはその両方を含み得る。あるいは、形成するステップは、基板の表面とパッケージング構造の表面との間の界面にわたって電気メッキするステップを含み得る。別の実施形態では、密閉シールは、共融結合を含み得る。リザーバキャップの分解に電力を与えるために、リザーバキャップの分解のための始動時間を制御するために、またはその両方のために、パッケージング構造は、電源、制御電子機器、またはそれらの組み合わせをさらに含み得る。
【0015】
一実施形態では、パッケージング構造は、2つの部品の部分間の基板を入れた後、互いにレーザウェルディングされる2つの金属部品を含む。別の実施形態では、パッケージング構造は、単一部品である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(発明の詳細な説明)
密閉シールマイクロチップリザーバデバイスに対する改良された方法およびデバイスが開発されてきた。本明細書中で使用する場合、用語「密閉」は、水、空気、および二酸化炭素等を含む化学物質および生体流体に実質的に不浸透性であるセラミックス、ガラス、および金属から構成されるシールを用いて、デバイスの有用な寿命にわたってデバイス(特にデバイスリザーバ)の1つ以上の区画からの望ましくない流入またはそこへの流出を妨げることを指す。このシールは、緊密な接触で対向するシーリング材料の表面を位置付け、熱的、機械的、および/または化学エネルギーを印加し、密閉シールを生成することによって、シーリングインターフェースを介して化学物質の浸透を抑制するために形成される。
【0017】
1つ以上のこれらの密閉シールを組み込むマイクロチップデバイスは、リザーバコンテンツを含む複数のリザーバを有する基板を含む。リザーバは、個々に満たされかつ送られ、制御される複数の内容物の放出または露出の時間および速度を有効にする。リザーバは、リザーバキャップによって基板の第1の表面において閉じられる。リザーバ内容物の制御された放出または露出は、この第1の表面を貫通して、リザーバキャップに向けるリザーバ開口部によってなされる。リザーバがまず基板を貫通して全ての経路に延びるこれらの実施形態に対して、リザーバはまた、第1の基板の遠位にある基板の第2の表面において閉じている。いずれかの実施形態では、リザーバは、リザーバ内容物でリザーバを満たした後にシールされることにより、リザーバコンテンツは、環境に対する露出が望ましくなるまで、環境から保護される。マイクロチップデバイスは、環境からデバイスの電子システム(放出メカニズムを制御する)を保護するために(特に、インビボ用途における使用のための移植に対して)、デバイス基板の表面に密閉して結合されたパッケージング構造をさらに含み得る。本明細書中で使用される場合、「環境」は、以下に限定されないが、移植部位の生体流体および組織、空気、流体、ならびに蓄積またはマイクロチップデバイスのインビトロ使用の間に存在する粒子を含むリザーバ外部の環境を指す。
【0018】
(デバイスコンポーネント)
密閉シールされたマイクロチップデバイスは、リザーバキャップによってコーティングされ、リザーバ内容物(例えば薬剤、センサ)を含むリザーバを有する基板と、リザーバ内容物を放出または露出するためにリザーバキャップを選択的に開けるための手段とを含む。基板、リザーバ、リザーバキャップ、リザーバ内容物、ならびにキャップ開口部をアクティブに制御するための制御回路および電源は、以下および米国特許第5,797,898号および第6,123,861号、ならびにPCT WO 02/30401、WO
02/30264、WO 01/91902、WO 01/64344、WO 01/41736、WO 01/35928、およびWO 01/12157に説明される。マイクロチップデバイスは、リザーバ、デバイス電子機器、またはその両方を密閉的にシールする1つ以上の密閉シーリングエレメントをさらに含む。
【0019】
(基板)
基板(「一次基板」とも呼ばれる)は、リザーバを含み、マイクロチップに対するサポートとして機能する。サポートとして機能し得、エッチングまたは機械加工に適しあるいは鋳造または成型され得、ならびに、リザーバの内容物および周囲の環境に不浸透性である(マイクロチップの使用の時間スケールの間に)任意の材料が基板として使用され得る。適切な材料は、金属、半導体、およびセラミック材料を含む。適切な半導体材料の例は、シリコンを含む。セラミック材料の代表的な例は、アルミナ(酸化アルミニウム)、窒化アルミニウム、二酸化シリコン、窒化シリコン、および他の種々の窒化物および酸化物を含む。基板は、1つのみの材料から形成されてもよいし、複合材料または多積層材料から形成されてもよい。
【0020】
インビボ用途に対して、基板は一般的に生体材料で形成またはコーティングされる。非生体材料は、使用前に、パリレン、ポリ(エチレングリコール)、ポリテトラフルオロエチレン状材料、またはチタン等の生体材料にカプセル封入または含まれ得る。医療診断等のインビトロ用途に対して、基板は、生体材料または非生体材料から構成され得る。
【0021】
(分子および二次デバイス(リザーバコンテンツ))
リザーバは、放出または露出が望まれる、周囲環境コンポーネントから保護される必要のある分子、二次デバイス、またはそれらの組み合わせを含む。触媒またはセンサ等の所定のリザーバコンテンツの適切な機能は、一般的には、リザーバからのそれらの放出を必要とせず、むしろ、それらの意図された機能(例えば触媒またはセンシング)は、リザーバキャップの開放の後、リザーバ外部の環境に対してリザーバコンテンツの露出を生じる。従って、触媒分子またはセンシングコンポーネントが放出されてもよいし、開いているリザーバ内部に固定されたままであってもよい。
【0022】
(分子)
リザーバ内容物は、実質的に、放出(すなわち送達)、または保持および露出のための、任意の天然または合成、有機または無機の分子、あるいはそれらの混合物を含み得る。分子(すなわち化学物質)は、純粋な固体、液体、またはゲル形態であってもよいし、放出速度および/または時間に影響を与える他の材料と混合されてもよい。化学物質は、以下に限定されないが、アモルファスおよび結晶質混合粉、モノリシック固定混合物、乾燥粉、および固体浸透網(solid interpenetrating network)を含む固体混合物の形態と、以下に限定されないが、溶液、乳濁液、コロイド懸濁液、およびスラリーを含む液体混合物の形態と、以下に限定されないが、ヒドロゲルを含むゲル混合物の形態とであり得る。
【0023】
インビボ用途に対して、化学物質は、好適には、治療剤、予防剤、または診断剤である。一実施形態では、マイクロチップデバイスは、それらの必要性に応じて患者に系統的に薬剤を送達するために使用される。別の実施形態では、患者におけるマイクロチップの構成および配置は、効率的な投与量の体系的な送達に対して強すぎであり得る薬剤の局材的または局所的放出を可能にする。本明細書で使用される場合、「薬剤」は、生理活性を有する有機または無機分子、タンパク質、核酸、多糖類、および合成有機分子、任意の治療剤、予防剤、または診断剤を含み得る。代表的な例は、鎮痛薬、ステロイド、サイトカイン、向精神剤、化学療法剤、ホルモン、麻酔薬、ワクチン、代謝物、糖、免疫調整薬、抗酸化薬、イオンチャンネルレギュレータ(ion channnel regulator)、抗生菌を含む。診断剤の例は、造影剤等の画像化剤である。この薬剤は、単一の薬剤または薬剤混合物の形態であり得、薬理学的に受容可能なキャリアを含み得る。
【0024】
インビトロ用途に対して、分子は、制御された少量の(ミリグラム〜ナノグラム)1つ以上の分子の放出が必要とされる(例えば、分析化学または医療診断の分野)。分子は、pH緩衝剤、診断試薬、ポリメラーゼ鎖反応または他の核酸増幅処理等として有効であり得る。他の実施形態では、放出される分子は、芳香、香料、色素、着色剤、甘味料、または種々の他の化合物であり、これらは、例えば、温度変化の関数として放出するために有用であり得る。さらに他の実施形態では、リザーバは、固定された分子を含み得る。例は、以下に限定されないが、試薬と、酵素、金属、およびゼオライトを含む触媒と、タンパク質と、核酸と、多糖類と、ポリマーと、細胞と、診断剤を含む有機分子または無機分子とを含む、反応に含まれ得る任意の化学種を含み得る。
【0025】
分子は、放出システムの一部として提供され得る。本明細書中で使用される場合、「放出システム」は、分子が、固体または液体のいずれかのような純粋な形態、あるいは生分解性材料またはマトリクスの拡散または分解によって組み込まれた分子を放出するマトリクスから形成されたマトリクスで存在する条件を含む。放出システムの分解、溶解、または拡散性質は、分子の放出速度を制御するための方法を提供し得る。分子は、拡散システム内部に均一または不均一に分散され得る。放出システムの選択は、分子の所望の放出速度に依存する。
【0026】
非分解および分解放出システムの両方は、分子の送達のために使用され得る。適切な放出システムは、ポリマー、ポリマーマトリクス、非ポリマーマトリクス、ならびに無機および有機賦形剤および賦形薬を含む。このような賦形剤および賦形薬の例は、炭酸カルシウムおよび糖を含む。放出システムは、天然または合成であり得るが、合成放出システムは、放出プロファイルのより良好な特性により好適になる。放出システムは、放出が所望される期間(一般的に、インビボ用途に対して少なくとも1ヶ月〜12ヶ月の範囲)に基づいて選択される。対照的には、数秒と同じくらい短い放出時間が、いくつかのインビトロ用途に対して望ましくあり得る。いくつかの場合では、リザーバからの連続的な(一定の)放出が最も有用であり得る。他の場合では、リザーバからのパルス(可変)放出は、より有効である結果を提供し得る。
【0027】
拍動性放出は、個々のリザーバ、複数のリザーバ、またはそれらの組み合わせから達成され得る。例えば、各リザーバが単一のパルスのみを提供する場合、複数のパルス(すなわち拍動性放出)は、いくつかのリザーバの各々からの単一のパルス放出を一時的に交互させることによって達成される。あるいは、複数のパルスは、放出システムのいくつかの層および他の材料を単一のリザーバに組み込むことによって単一のリザーバから達成され得る。
【0028】
連続的放出は、長期間にわたってそのシステムを介して分子の拡散を低下させ、無効にし、または可能にする放出システムを組み込むことによって達成され得る。さらに、連続放出は、急速な遷移で分子のいくつかのパルスを放出する(デジタル記録媒体および音楽の再生に類似する「デジタル」放出)ことによって近似され得る。能動および受動放出システムが組み合わせられ得る。例えば、能動的に除去される金属フィルムまたは膜リザーバキャップは、金属フィルムが能動的に除去された後、その受動放出を開始するだけである受動放出システムを被覆し得る。あるいは、所与の基板は、受動および能動リザーバの両方を含み得る。
【0029】
放出システム材料が選択されることにより、種々の分子量の分子が、拡散によってあるいは材料または材料の分解を介してリザーバから放出される。生分解性ポリマー、生体腐食(bioerodible)ヒドロゲル、およびタンパク質送達システムは、拡散、分解、溶解によって分子の放出のために好適である。概して、これらの材料は、インビボまたはインビトロで水に対する酵素加水分解または露出のいずれかによって、あるいは表面またはバルク腐食によって分解または溶解される。代表的な合成生分解性ポリマーは、ポリ(アミノ酸)およびポリペプチド等のポリアミドと、ポリ(乳酸)、ポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸−co−グリコール酸)、およびポリカプロラクトン等のポリエステルと、酸無水物と、ポリオルトエステルと、ポリカーボネートと、それらの化学誘導体(置換、例えばアルキル、アルケン、ヒドロキシル化、酸化、および当業者に通常なされている他の改変等の化学官能基の付加)、コポリマーと、それらの混合物等を含む。代表的な合成非分解性ポリマーは、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレングリコール)、およびポリ(テトラメチレンオキシド)等のポリエステルと、メチル、エチル、他のアルキル、ヒドロキシメチルメタクリレート、アクリルおよびメタクリル酸、ならびに他のもの(ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリジン)、およびポリ(ビニルアセテート))等のビニルポリマー−ポリアクリレートおよびポリメタクリレートと、ポリウレタンと、セルロースおよびアルキル、ヒドロアルキル、エーテル、エステル、ニトロセルロース、および種々の酢酸セルロース等のその誘導体と、ポリシロキサンと、それらの任意の化学誘導体(置換、例えばアルキル、アルキン、ヒドロキシル化、酸化、および当業者によって通常行われている他の改変等の化学官能基の付加)と、コポリマーおよびその混合物等を含む。
【0030】
放出システムは、薬理学的賦形剤を含み得る。適切な薬理学的に受容可能な賦形剤は、水、生理食塩水、Ringer’s溶液、Hanks’s溶液、ならびグルコース、ラクトース、ブドウ糖、エタノール、グリセロール、アルブミン等の溶液を含む非経口投与に対して認可されたほとんどのキャリアを含む。随意に、放出システムは、安定剤、抗酸化剤、抗菌剤、保存剤、緩衝剤、界面活性剤、およびインビボでリザーバから分子を蓄積および放出するために有用な他の添加物を含む。
【0031】
(二次デバイス)
本明細書で使用する場合、別途明示的な指示がない場合に限り、用語、「二次デバイス」は、以下に限定されないが、マイクロチップデバイス中の1つ以上のリザーバと動作可能に伝達するように配置されるかまたは設計され得るそれらの任意のデバイスおよびコンポーネントを含む。好適な実施形態では、二次デバイスは、センサまたはセンシングコンポーネントである。本明細書中で使用する場合、「センシングコンポーネント」は、以下に限定されないが、化学物質またはイオン種、エネルギー、あるいはその部位における1つ以上の物理的性質(例えば、pH、圧力)の存在、欠如、もしくは変化を計測または分析する際に利用されたコンポーネントを含む。センサのタイプは、バイオセンサ、化学センサ、物理センサ、または光学センサを含む。二次デバイスは、PCT WO01/64344にさらに説明される。
【0032】
センシングコンポーネントの例は、化学物質またはイオン種、エネルギー(または光)、あるいはその部位における1つ以上の物理的性質(例えば、pH、圧力)の存在、欠如、もしくは変化を計測または分析する際に利用されたコンポーネントを含む。好適な実施形態では、マイクロチップデバイスは、患者(例えば人間または他の哺乳動物)に移植可能であり、血液及ぶ他の体液におけるグルコースまたは尿素のレベルをモニタリングするためのセンサを含む。
【0033】
マイクロチップデバイス内部に配置されたデバイスと共に取得されたデータを受け取りかつ解析するためのいくつかの異なるオプションが存在する。典型的には、マイクロチップシステムの動作は、オンボード(すなわちパッケージ内部)マイクロプロセッサによって制御される。必要な場合、適切な回路によって調整した後、デバイスからの出力信号がマイクロプロセッサによって獲得される。解析および処理の後、出力信号は、書き込み可能なコンピュータメモリチップに格納され得る、および/またはマイクロチップから離れたリモート位置に送信され得る(例えば無線で)。電力は、マイクロバッテリによってローカルに、または無線伝送によってリモートにマイクロチップシステムに供給され得る。
【0034】
一実施形態では、マイクロチップデバイスは、薬剤ならびにセンサまたはセンサコンポーネントの両方を含む。例えば、センサまたはセンシングコンポーネントは、リザーバに配置されてもよいし、デバイス基板に取り付けられてもよい。センサは、例えばマイクロプロセッサを介してデバイスと動作可能に通信し、投薬量および頻度、放出時間、放出の有効速度、薬剤または薬剤の組み合わせの選択等を含む薬剤放出変数を制御または修正し得る。「センシングコンポーネント」は、以下に限定されないが、化学物質またはイオン種、エネルギー、あるいはその部位における1つ以上の物理的性質(例えば、pH、圧力)の存在、欠如、もしくは変化を計測または分析する際に利用されたコンポーネントを含む。センサのタイプは、バイオセンサ、化学センサ、物理センサ、または光学センサを含む。このようなセンサおよびセンサコンポーネントは、PCT WO 01/64344におけるようにさらに説明される。センサまたはセンシングコンポーネントは、インビボ移植(例えば体液または組織)の部位における種または性質を検出(または検出しない)し、以下に詳細に説明されるように、マイクロチップデバイスからの放出を制御するために使用されたマイクロプロセッサへの信号をさらに遅らせ得る。このような信号は、パラチロイドホルモンの放出のフィードバックを供給する、および/または精密にこれを制御する。マイクロチップデバイスにおいて配置されたデバイスと共に取得されたデータを受け取りかつ解析するためのいくつかの異なる選択肢が存在する。能動マイクロチップデバイスは、ローカルマイクロプロセッサまたはリモート制御によって制御され得る。バイオセンサ情報は、自動的に、人間の介入によって、またはそれらの組み合わせによって起動時間およびタイプを決定するために、コントローラへの入力を供給し得る。
【0035】
一実施形態では、マイクロチップデバイスは、患者の体内部の信号を検出および計測を可能にする1つ以上のバイオセンサ(使用のために必要とされるまでリザーバ内でシールされ得る)を含む。本明細書中で使用される場合、用語「バイオセンサ」は、以下に限定されないが、関心のある分析物の化学ポテンシャルを電気信号に変換するセンシングデバイスと、直接または間接的に電気信号を計測する(例えば、機械的または熱的エネルギーを電気信号に変換することによって)電極を含む。例えば、バイオセンサは、インビボ位置の種々の位置における組織構造上の内部電気信号(EKG、EEG、または他の中間信号(neutral signal))、圧力、温度、pH、または負荷を計測し得る。次いで、バイオセンサからの電気信号が、例えば、マイクロプロセッサ/コントローラによって計測され得、次いで、その信号は情報をリモーロコントローラ、別のローカルコントローラ、またはその両方に伝達され得る。例えば、システムは、患者の生命徴候または薬剤濃度等の移植環境に関する情報を遅延または記録するために使用され得る。
【0036】
(リザーバキャップ)
本明細書中で使用される場合、用語「リザーバキャップ」は、リザーバ外部の環境からリザーバの内容物を分離するために適切な膜または他の構造を含む。一般的に、リザーバ開口部にわたって自己支持が存在するが、支持は、キャップネイに構築され得る。次いで、選択にリザーバキャップを取り除くか、またはリザーバキャップを浸透可能にすることは、リザーバ周辺の環境(または選択されたリザーバの内容物)に対してリザーバのコンテンツを露出する。好適な実施形態では、バリア層は、例えば要求に応じて選択的に分解され得る。本明細書で使用される場合、リザーバキャップに関する用語「分解する」、「分解」、および「分解している」は、構造的な完全性の任意の機構の損失(それにより、リザーバ外部の環境に対する障害物の損失)を含む。その損失は、特に示さない限り、以下に限定されないが、酸化、機械的破壊、劣化または溶解を含む。「機械的破壊」は、典型的には、外部からのリザーバキャップを針等を用いて穿孔することを含まない。一実施形態では、リザーバキャップは、銅、金、および銀等から構成され、Santiniの米国特許第5,797,898号に示されたように、電圧の印加によって電気化学的な融解によって分解される。
【0037】
能動デバイスでは、リザーバキャップは、印加された刺激(例えば、電場または電流、磁場、pH変化、あるいは、熱化学、電気化学、または機械的手段によって)に応答して分解または浸透され得る任意の材料を含む。一実施形態では、リザーバキャップは、薄い金属膜であり、周囲の環境に対して不浸透性である(例えば、体液または別の塩化物を含有する溶液)。金属および周囲の環境のタイプに基づいて、特定の電圧は、金属リザーバキャップに印加され、次いで、電気化学反応によって酸化かつ分解され、リザーバの内容物を周囲の環境に露出させる。適切なリザーバキャップ材料の例は、金、銀、銅、および亜鉛を含む。受動または能動バリア層の任意の組み合わせは、単一のマイクロチップデバイス内に存在し得る。
【0038】
(放出または露出を制御するための手段)
典型的には、マイクロチップシステムの動作は、オンボード(すなわち、パッケージ内部)マイクロプロセッサによって制御される。必要とされる場合、適切な回路を調整した後で、デバイスからの出力信号は、マイクロプロセッサによって獲得される。分析および処理の後、出力信号は、書き込み可能なコンピュータメモリチップに格納され得、および/または、マイクロチップから離れたリモート位置に送信され得る。電力が、マイクロバッテリによってローカルに、または無線伝送によってリモートにマイクロチップシステムに供給され得る。
【0039】
能動デバイスからの分子の制御可能に放出するための手段は、典型的にはマイクロプロセッサの制御下で行われる起動を必要とする。例えば、一実施形態では、マイクロチップデバイスは、そこに配置されたリザーバの2次元アレイを有する基板と、リザーバ内に含まれた薬剤分子を含む放出システムと、リザーバの各々を被覆するリザーバキャップと、アノード付近の基板上に配置されたカソードと、リザーバキャップの分解を能動的に制御するための手段とを含む。好適には、このような手段は、入力源と、マイクロプロセッサと、タイマーと、デマルチプレクサと、電源とを含む。電源は、選択されたアノードとカソードとの間の反応を駆動するためのエネルギーを供給する。電極間の小さい電位の印加の間に、アノード材料を酸化させ、かつ周囲の流体への溶解を引き起こす外部回路を介して、電子がアノードからカソードに通過し、それにより周囲の流体(例えばインビボ)への送達のために分子を含有する放出システムを露出する。マイクロプロセッサは、例えば、PROM、リモートコントロール、またはバイオセンサによって向けられたようにデマルチプレクサを介して電力を特定の電極対に向ける。
【0040】
マイクロプロセッサは、予め選択された時間、あるいは別のデバイスからの信号の受信(例えば、リモートコントロールまたは無線方法)またはバイオセンサ等のセンサを使用する特定の条件の検出を含む1つ以上の信号または測定されたパラメータに応答してリザーバキャップの分解または浸透を開始するようにプログラムされる。
【0041】
典型的には、制御回路は、マイクロプロセッサ、タイマー、デマルチプレクサ、入力源(例えば、メモリソース、信号レシーバ、またはバイオセンサ)、および電源を含む。タイマーおよびデマルチプレクサ回路は、電極製造の間にマイクロチップの表面上に直接設計かつ組み込まれ得る。マイクロプロセッサの選択のための基準は、小さい大きさで、低電力要求、ならびにメモリソース、信号レシーバ、またはバイオセンサからの出力を、出マルチプレクサを通ってマイクロチップデバイス(例えば、Ji,et al.,IEEE J.Solid−state Circuits 27:433−43(1992))上の特定のリザーバに向ける電力の方向に対するアドレスに変換する能力である。マイクロプロセッサへの入力源(メモリソース、信号レシーバ、またはバイオセンサ)の選択は、マイクロチップデバイスの特定の用途に依存し、デバイス動作が予めプログラムされるか、リモート手段によって制御されるか、またはその環境からのフィードバックによって制御されるどうかに依存する。
【0042】
電源の選択のための基準は、小さいサイズであり、十分な容量であり、制御回路によって集積される能力、再充電される能力、および再充電が必要となる前までの時間の長さである。バッテリは、別個に製造されてもよいし(すなわち、既製品)、マイクロチップ自体に集積されてもよい。いくつかのリチウム系の再充電可能なマイクロバッテリは、JonesおよびAkridgeによる「Development and performance of a rechargeable thin−film solid−state microbattery」、J.Power Sources,「54」:63〜67(1995)およびBatesらによる「New amorphous thin−film lithium electrolyte and rechargeable microbattery」、IEEE 35th International Power Sources Symposium、337−39(1992)に開示される。これらのバッテリは、典型的には、10ミクロンの厚さであり、1cmの面積を占める。これらのバッテリの内の1つ以上は、マイクロチップデバイス上に直接的に組み込まれ得る。Binyaminらによる、「J.Electrochem.Soc.,「147」:2780〜83(2000)は、バイオ燃料電池の開発に向けられた作業を説明し、これが開発された場合、本発明のマイクロチップデバイスおよび他のマイクロ電子デバイスをインビボで動作させるために適する低電力電源を提供し得る。
【0043】
マイクロプロセッサは、プログラム可能なリードオンリーメモリ(PROM)、タイマー、デマルチプレクサ、ならびにマイクロバッテリまたはバイオ燃料電池等の電源等のメモリ源と共に使用される。プログラムされたイベントのシーケンスは、リザーバが開けられる時間、ならびにリザーバの位置または時間がユーザによってPROMに格納される一を含む。露出または放出される時間がタイマーによって示された場合に達した場合、マイクロプロセッサは、特定のリザーバのアドレスに対応する(位置)に対応する信号を出マルチプレクサに送信する。デマルチプレクサは、電圧または電流入力等の入力をマイクロプロセッサによってアドレスされたリザーバにルーティングする。
【0044】
電源、PROM、タイマー、デマルチプレクサ、および他のコンポーネントの製造、サイズ、および位置は、特定の用途の要求に依存する。一実施形態では、メモリ、タイマー、マイクロプロセッサ、およびデマルチプレクサ回路は、マイクロチップの表面上に直接的に集積される。マイクロバッテリは、マイクロチップの他の面に取り付けられ、バイアスまたは薄いワイヤによってデバイス回路に接続される。しかし、いくつかの場合では、メモリ、タイミング、処理、およびデマルチプレキシングのための別個の予め製造されたコンポーネントチップを使用することが可能である。一実施形態では、これらのコンポーネントは、バッテリと共にマイクロチップデバイスの背面に取り付けられる。別の実施形態では、コンポーネントチップおよびバッテリは、例えば、それがマルチチップモジュール(MCM)およびハイブリッド回路パッケージにおいてなされる方法と同様のマイクロチップデバイスの前面または隣接して配置される。使用された予め製造されたチップのサイズおよびタイプは、マイクロチップデバイスの全体の寸法およびリザーバの数、ならびに要に対して必要とされた制御の複雑さに依存する。
【0045】
(材料ウェルディングおよびシーリング)
金属、ガラス、セラミック、およびそれらの組み合わせといった多様な材料は、密閉したシールを形成するために使用され得る。シーリング材料は、デバイスまたは代替物の1つ以上の表面にウェルドされるか、または化学的に結合される薄いホイルの形態で提供され、シーリング材料は、別の材料または構造上に析出したフィルムの形態で提供され得る。例えば、一方の基板のうち1つの表面が他方の基板のシーリング材料を提供すると共に、2つの基板が結合され得る。いずれにしても、効果的な結合が、シーリング材料および基板の接合面における表面化学に依存する。シーリング材料は、リザーバ間の基板の背面上のシーリング表面に沿って基板に結合される。
【0046】
好適な実施形態において、特に超音波のウェルディングのため、シーリング材料は、金属ホイルであり、好ましくは、約1〜50μmの薄さを有する。欠陥のない金箔が好ましいが、他の生体適合性のウェルド可能な材料が適している。他の適切な材料の例は、プラチナおよびチタニウム、ならびに、ステンレススチールおよび低融点合金といった多様な合金を含む。
【0047】
金属に関連して本明細書中に用いられる用語「層」は、概して、例えば、電子ビームまたはスパッタリングといった析出技術によって作製された薄い金属構造について言及する。本明細書中に用いられる用語「ホイル」は、概して、圧延または成形溶解材料によって作製されたより厚い金属構造について言及する。しかし、用語「層」は、別な方法で示されない場合、ホイルを含み得る。
【0048】
別の類似の実施形態において、シーリング材料は、リザーバキャップ材料であり、これは、リザーバ開口部上の基板の前面にウェルドされる。本実施形態において、リザーバキャップは、好適には、金属ホイルである。リザーバキャップは、ウェルド可能になるために十分な厚さであるが、分解可能になるために十分な薄さである必要がある。
【0049】
このシーリング材料はまた、シリコンまたはガラスであってもよいし、シリコンまたはガラスを含んでもよい。ガラスは、金属と同様に、密閉シールを提供し得る。1つの実施形態において、密閉シールは、レーザエネルギーが加えられると、基板の1つ以上の表面、例えば、リザーバの間の基板の外面(すなわち、リザーバ「ストリート」)と反応する、すなわち、共融混合物を形成する金属表面を有するガラス基板を用いて形成される。共融組成物の例には、Au/Si、Au/Ge、Au/Sn、Pb/Sn、Pb/In、Pt/Si、Ag/In、Al/Cuが含まれるが、これらに限定されない。(鉛および銀を含む組成物は、典型的に、インビトロの適用例のみに用いられ得る。)
シーリングはまた、レーザウェルド技術を直接用いて、2つのガラス表面を直接融解し、結合させることによって形成され得る。当業者は、これらのガラス材料がシール界面において、溶解し、混合する結果となる適切なガラスの化学的性質および光の波長を選択し得る。他のレーザウェルドの例は、純粋な金属種ならびに様々な合金を用いて形成され得る金属結合の形成に依存する。レーザウェルド可能な金属の代表的な例は、チタニウム、ステンレススチール、プラチナ、パラジウム、および金を含む。
【0050】
ウェルドに適し得る他の材料は、チタニウム、アルミニウム、金/シリコンおよびニッケル・チタニウム合金(例えば、超弾性および形状記憶効果を示すNinitol)を含む。
【0051】
シーリング材料は、必要に応じて、ウェルドの後に、オーバーコート層とともに提供される。オーバーコート層は、シールの機械的強度を高めるか、デバイスの生体適合性を向上させるか、二次的(バックアップ)シーリングメカニズムの役割を果たすか、または、これらの機能を組み合わせて提供する。1つの実施形態において、オーバーコート層は、生体適合性があるポリマー材料、例えば、ポリ(ヒドロキシ酸)またはポリ(乳酸)、エポキシ、ポリウレタン、ラテックス、シリコーン、あるいはパリレンのコーティングである。
【0052】
必要に応じて、薬剤または他のリザーバ内容物をシーリングエネルギーから孤立させるかまたは遮断するため、バリア材料の層、例えば、ワックスまたはポリ(エチレンオキシド)が、シーリング材料の設置および結合の前にリザーバに含まれ得る。
【0053】
(マイクロチップデバイスの作成およびシール方法)
基本的なマイクロチップデバイス(すなわち、基板、リザーバ、リザーバキャップ、放出システム、および制御手段)は、当該技術分野において公知のミクロ製造方法を用いて作成され得る。これらの方法は、特に、米国特許第5,797,898号、第6,123,861号、PCT WO01/41736号、WO01/91902号に記載されている。これらの特許は、その全文を通じて、本明細書中、参考として援用される。これらの基本的な構造は、その後、本明細書中に記載されているように、密閉シールされる。
【0054】
密閉シールを形成するために利用可能なアプローチはいくつかある。1つのシーリング技術は、レーザウェルドである。レーザウェルドにおいて、ウェルド材料は、同じであってもよいし、異なっていてもよく、例えば、チタニウム(Ti)、タンタル(Ta)、パラジウム(Pd)、プラチナ(Pt)、ステンレススチール、またはケイ酸塩ガラスなどである。第2の実施形態は、超音波エネルギーを用い、シーリング材料は、好適には、薄い延性のある金属ホイル、例えば、金である。第3の実施形態は、抵抗性加熱を用いて、2つの合接する表面の間の反応を開始する。具体的な例として、シリコン(Si)または金(Au)トレースのいずれかの抵抗性加熱がある。シリコン(Si)または金(Au)トレースは、その対照物と直接接触しており、共融Au/Si反応を生み出す。共融反応は、成分シール材料のいずれの溶融温度よりも低い温度で起こるので、有用である。
【0055】
図1に示されるように、一般的に、マイクロチップリザーバデバイス内に組み込まれた、2つの密閉シール位置がある。マイクロチップデバイス10はリザーバ14を有する基板12を含み、リザーバ14はその右および中心にリザーバ内容物16を含む。リザーバ14は、基板12の前面11において、リザーバキャップ18によって閉められている(しかし、左のリザーバキャップにはアパーチャが示されており、このアパーチャを介してそのリザーバのリザーバ内容物が放出される)。2つの一般的なシール位置は、背面側リザーバシール20と前面側シール22である。背面側リザーバシール20は、環境的要素(例えば、空気、水)の進入を防ぎ、リザーバ内容物(例えば、薬剤分子)が出て行くことを防ぐことによって、個々のリザーバをお互いから、かつ、周りの環境から化学的に孤立させる密閉シールを表す。前面側シール22は、パッケージング構造(図示されないが、バッテリー、マルチプレクサなどのアクティブ制御デバイスを含む)の内容物を、周りの環境から密閉的に保護するデバイスエンクロージャ24との結合を表す。
【0056】
(リザーバの密閉シール)
概して、背面側シール方法は、(i)前面および背面を有するマイクロチップデバイス基板を提供するステップであって、背面はシールの必要に応じて複数のリザーバ開口部を有する、ステップと、(ii)1つ以上のシール材料から構成される背面側基板表面を提供するステップと、(iii)1つ以上のシール材料から構成される少なくとも1つの表面を有する薄い基板を提供するステップと、(iv)薄い基板をリザーバ開口部上に配置するステップと、(v)シール表面を互いに接触させて、リザーバ開口部をシールするステップであって、接触させることが、密閉シールを形成するために有効である、ステップとを包含する。この接触させるステップは、化学的相互作用または反応(例えば、ウェルドまたは結合)が必要であってもよいし、必要でなくてもよい。
【0057】
背面側の密閉シールの形成において、マイクロチップ基板のリザーバは、熱、機械的、および/または化学的結合技術を用いて、シールされ得る。様々な実施形態において、シール材料は、シール表面(すなわち、リザーバの間の基板の背面)に沿って基板にウェルドされて、各リザーバを孤立させる。以下に説明される図2、3および4は、これらの実施形態のうちのいくつかを示す。
【0058】
図2は、マイクロチップデバイスのリザーバをシールするために用いられる超音波ウェルドプロセスを示す。デバイス基板12は、リザーバ14を有し、リザーバ14にはリザーバ内容物16が装填されている。リザーバ14は、基板12の前面11において、リザーバキャップ18によって閉められている。基板12の背面側表面は、少なくともストリートおよびエッジに沿って、薄い金属層32でコーティングされている。金属ホイル30は、開かれたリザーバの上、基板12の背面側の上に位置する。その後、超音波ウェルドが用いられて、金属ホイル30が、金属層32とともに、基板ストリートおよびエッジにウェルドされて、各リザーバをシールする。ウェルドで組み合わせられた金属は、30/32で示される。1つの実施形態において、薄い金属層32および金属層30は、両方とも金である。
【0059】
任意の実施形態において、ポリマーコーティング(図示せず)が、ウェルドプロセスの後に、金属ホイルの外側表面に付与され得る。このようなコーティングは、さらなるリザーバシールおよび/またはデバイスの改善された生体適合性を提供し得る。
【0060】
図3A〜Cは、バッキング(backing)を有するリザーバ基板を密閉シールするために用いられる結合およびレーザウェルドプロセスを示す。図3Aにおいて、シリコン基板52は、前面51においてリザーバキャップ54によって閉められている。まず、ガラス層62は、ガラス層62のアパーチャ64がリザーバ54の開口部と一列に並ぶように、基板52の背面にアノード結合される。次に、パターニングされた金属層66は、ガラス層62にアノード結合される。パターニングされた(かつエッチングされた)金属層66はまた、アパーチャ64およびリザーバ54の開口部と一列に並べられたアパーチャ67を含む。最終的に、薄い金属シート68が、パターニングされた金属層66にウェルドされ、リザーバ54、アパーチャ64およびアパーチャ67によって規定された空間をシールする。1つの実施形態において、ガラス層62は、7740ガラス(ホウ珪酸塩)であり、パターニングされた金属層66および薄い金属シート68はチタニウムである。図3Bは、図3Aに示すデバイスと同様に作成されたデバイスを示すが、このデバイスは、パターニングされた金属層66が、ガラス層62にアノード結合されるシリコンの薄い(例えば、2ミクロンの)層69をさらに含む点において異なる。図3Cは、図3Bに示すデバイスと同様に作成されたデバイスを示すが、このデバイスは、パターニングされた金属層66をガラス層62に付着させるために共融結合が用いられる点において異なる。このことを容易にするため、ガラス基板62には、500オングストロームのチタニウムの層70、1000オングストロームのプラチナの層72、および5ミクロンの金の層74が設けられる。当業者は、共融結合を形成するために、他の共融材料および厚さ、ならびに共融結合技術を選択し得る(Chengらによる「Localized Silicon Fusion and Eutectic Bonding for MEMS Fabrication and Packaging」J.MEMS vol.9、no.1(2000年3月)およびYaoらによる「Low Temperature Eutectic Bonding For In−Plane Type MicroThermoelectric Cooler」(Proc.2001 ASME Int’l Mech.Eng.Congress and Exposition、2001年11月11〜16日)を参照のこと)。図3A〜Cに記載のマルチレイヤーシール構造の中間層は、有用なことに、外側金属ホイルのおよびレーザウェルドにおいて生成される熱から遮断する機能を果たす。これは、リザーバ内容物が熱の影響を受けやすい分子またはデバイスを含む場合に特に有用である。
【0061】
他の実施形態において、リザーバの密閉シールは、金属ガスケットを用いることによって達成される。金属ガスケットは、好適には、薄い、延性がある金属のシート、例えば金である。1つの例が図4に示されている。図4は、金の金属ガスケット86によってシールされているリザーバ84を有する基盤82を有するデバイス80を含む。本実施形態において、金属ガスケットは、50ミクロンの金のシートである。シールは、リザーバエッジおよびストリートの周りの金属を局所的に変形させる、均一な圧縮力を付与することによって作られる。プラスチック変形は、個々のリザーバの間で起き、密閉界面が得られる。この変形は、基板に、テーパ状構造88によって示されるように、隣接するリザーバ間の小さい領域に圧縮力を集中させる構造的形状を設けることによって強調され得る。図示されないが、金属ガスケットは、一般に、堅いプレートと基板との間に押さえられるように、堅い(すなわち強固)プレートの背面と基板の背面との間にパッケージされる。ガスケットは、機械的なファスナまたは従来のウェルディング技術を用いて圧縮状態で配置され得る。
【0062】
好適な実施形態において、ウェルディングは、音響エネルギー、より好ましくは超音波エネルギーを用いてなされる。超音波ウェルディングは、フラックスまたはシールディングガスを必要としないという利点があり、比較的少ない熱を生成する。過剰な熱が、リザーバにおいて熱的に不安定な化学または薬剤を分解し得る。超音波ウェルディング方法の例は、Oginoらによって米国特許第5,651,494号(異なる金属をウェルディング)、およびSuzukiらによる米国特許第5,785,786号(金属シートをウェルディング)に記載される。適切であり得る他のウェルディング技術は、従来技術において公知であるウェルディング、電子ビームウェルディング、およびRFウェルディングを含む。レーザウェルディングおよび電子ビームウェルディング方法の例は、McKleroyによる米国特許第5,574,313号およびLindstromらによる米国特許第4,093,843号に記載される。
【0063】
超音波ウェルディングの場合、リザーバの全ては、マイクロチップ基板と同サイズに平面ウェルディングチップによって同時にシールされ得るか、あるいは、リザーバは、定常かまたは移動性のどちらかで適切に成形超音波ホーンによって一度に1つのリザーバまたは一行をシールされ得る。典型的なプロセスにおいて、ウェルディングホーンは、金属ホイルまたはシールディング金属の他のシートに加えられ、基板表面にそれを結合して、それにより、リザーバをシールディングし、かつ、基板の反対側が音響ウェルディングマシンのアンビル(anvil)と接触状態になる。
【0064】
レーザウェルディングおよび電子ビームウェルディングの場合、フォトンまたは電子の一方の集中したエネルギービームとシールインタフェースを衝突することによってウェルドスポットが形成され、局在した加熱が2つの隣接した表面をともに溶かす。ウェルド「スポット」は、典型的に、約10〜300μmの直径を有する。エネルギービームは、シールのインタフェースに沿って導かれ得、ウェルドは重なり合って、密閉性の結合を最終的に形成する。
【0065】
別の実施形態において、シーリングのステップおよびリザーバ開口部上のリザーバキャップの形成のステップが組合され得る。このことは、リザーバが、例えば、基板の全体の厚さを通過することなく基板に形成される場合の実施形態において、リザーバが同じサイズでファイルされ、かつ放出される場合のデバイスに特に役立つ。このようなプロセスの1つの例が図5に示され、金属ホイル90は、基板92のリザーバのリザーバ成分上に位置され、音響エネルギーがホイルをウェルドするように加えられ、リザーバをシールディングし、かつ、金属リザーバキャップ90を形成する。ウェルディングは、好適には、超音波エネルギーを用いてなされる。リザーバキャップは、好ましくは、例えば、金箔のように薄い金属ホイルである。
【0066】
従って、一実施形態において、マイクロチップデバイス製造プロセスは、(i)前面および背面を有する基板を設けるステップであって、前面が複数のリザーバを含む、ステップと、(ii)放出または露出のためのリザーバ成分でリザーバを満たすステップと、(iii)リザーバ成分を放出または露出するために選択的に崩壊させ得るキャップ材料を用いてリザーバ開口部をキャッピングするステップであって、キャッピングするステップが基板の前面にキャップ材料をウェルディングするステップを含む、ステップとを含む。キャッピングするステップは、好適には、リザーバ開口部上に金属フォイル(キャップ材料)を位置付けるステップと、リザーバ開口部周囲の基板の前面に堆積される金属トレース上に金属材料を超音波的にウェルディングするステップとを含む。この実施形態において、リザーバは、好ましくは、基板に作られ、アパーチャが形成されない。というよりも、リザーバは、充填および放出がともに生じる単一の開口部を有する。
(基板アセンブリのパッケージング)
上記の密閉シール方法は、マイクロチップデバイスの製造および組み立ての他の局面において用いられ得る。特に、アクティブ放出マイクロチップデバイスは、パッケージング構造の1つ以上の表面にウェルドされ得る。用語「パッケージング構造」は、基板またはリザーバキャップの前面のみが露出されるように、マクロチップデバイス、制御電子部品、および電力素子(例えば、電力の無線送信を受信するマイクロバッテリーまたはデバイス)を入れるエンクロージャ、ケーシング、または他の収納デバイスを意味する。用語「マイクロチップデバイス」は、いずれであるかがはっきり言及されない限り、パッケージングされたデバイス、またはパッケージングされていないデバイスのいずれかを意味する。
【0067】
1つの実施形態において、超音波ウェルディング技術は、デバイス基板をマイクロチップデバイス用のパッケージング構造に密閉的に固定するために用いられる。このような「パッケージング」タイプのシール方法のステップには、基板の金属表面をパッケージング基板の金属表面に接触させ、その後、金属界面において変形が起きて、密閉結合が生成されるように、超音波エネルギーを付与するステップが含まれる。このアプローチの2つの変形例が、図6および7に示される。図6において、基板12の前面11は、2ピースの金属ケーシングの第1のピース100に超音波ウェルドされ、その後、第1のピース100が2ピースの金属ケーシングの第2のピース102にレーザウェルドされる。密閉結合103は、2つの金の層(その外側の層)が接触し、超音波ウェルドされるところで形成され、密閉結合104は、ケーシングの2つのピースが接触し、レーザウェルドされるところで形成される。参照符号101は、同様に、金属ケーシング100/102に入れられる一般的なマイクロチップデバイス電子部品を表す。図7においては、単一ピースケーシング106、基板12の前面11と単一ピースケーシング106の表面とを架橋する金のホイル108が用いられる。その後、ホイル108は、ポイント109において超音波ウェルドされて、密閉結合を形成する。いずれの実施形態においても、パッケージング構造は、好適には、生体適合性金属、例えば、チタニウム、ステンレススチール、またはこれらの合金から構成される。
【0068】
マイクロチップとパッケージとの前面側の密閉シールの形成の好適な実施形態において、方法は、(i)前面および背面を有するマイクロチップデバイス基板を提供するステップであって、前面が少なくとも1つのシール材料から構成される表面を有する、ステップと、(ii)第2の少なくとも1つのシール材料から構成されるパッケージ構造表面を提供するステップと、(iii)シール表面が接合する基板の前面とパッケージ構造表面とを一列に並べるステップと、(iv)デバイスの動作を妨害することなく、マイクロチップの前面とパッケージ構造との間の密閉シールを形成するために有効な第1および第2のシール材料を直截接触させるステップとを含む。
【0069】
別のアプローチにおいて、電気メッキがマイクロチップリザーバデバイスとパッケージング構造との間の密閉結合を形成するために用いられる。ガラスと金属との密閉的シールの電子形成の例は、Rothenbergに付与された米国特許第3,932,227号に記載されている。前面側に電子形成される密閉シールの1つの実施形態において、製造方法は、(i)2つの接合する表面、すなわちマイクロチップの前面およびパッケージの表面を金属化し、電気接触させるステップと、(ii)この導電性背面の電気メッキ溶液に浸漬させるステップと、(iii)金属層が電子堆積され、密閉「ブリッジ」を形成するように界面に電位を印加するステップとを含む。金が、生体適合性表面を提供するので、好適なメッキ材料である。このような技術は、リザーバを充填するステップの前に、または、リザーバを充填しシールするステップの後に行われ得る。代表的な例は、図8に示される。この例示的な実施形態において、金の金属化リング120が、マイクロチップデバイスの前面側にあるリザーバキャップ18全体の周り(すなわち、基板の外側のエッジの周り)に堆積される。チタニウムパッケージング構造124の接合表面122は、薄い金の層126を堆積することによって金属化される。次に、これらの2つの表面(126および120)は互いに固定され、導電性エポキシ128を介して電気接触し、層126、エポキシ128、および金のリング120からなるシール界面が形成される。このシール界面は、その後、電気メッキ溶液にサブマージされ、電気メッキ電位が、シール界面にわたって密閉ブリッジ130を形成するように、印加される。
【0070】
前面シール技術の他の例は、共融結合に基づく。1つの実施形態において、密閉共融シールは、(i)材料の薄膜を、共融比率で、結合される表面に堆積するステップと、(ii)これらの2つの接合表面、例えば、マクロチップの表面およびエンクロージャの表面をともに接触させるステップと、(iii)2つの表面が特定の共融反応を起こす温度まで界面を加熱するステップとによって形成される。特定の表面コンフィギュレーションは、典型的には、363℃の局所化された温度で、Au/Si共融組成物を形成することができる、表面化学性質である。密閉シールを形成する共融結合の様々な適用例が、Brownに付与された米国特許第6,148,673号(圧力センサ適用例)およびKramerに付与された米国特許第5,568,585号(光ファイバ適用例)に記載されている。代表的な例が図9に示されている。この例示的な実施形態において、金の金属化リング120は、マイクロチップデバイスの前面にあるリザーバキャップ18全体の周りに堆積される。チタニウムパッケージング構造124の接合表面122は、薄い金属層126を堆積することによって、金属化される。次に、金/シリコン共融組成物140が、これらの2つの表面(126および120)の界面において形成され、シールを形成する。
【0071】
(表面調製)
シール表面は、有効なシールを促進するように調製され得る。このような表面は、マイクロチップ基板の前面および背面、ならびに、基板に面するシール材料の面を含む。例えば、基板のシール表面のシリコンには、付着された(接合)材料、すなわち、シール材料が結合される材料(単数または複数)の層が設けられる。例えば、金属ホイルのウェルドは、金属、好適には、金属ホイルと同じ組成物を基板上に堆積することによって、向上し得る。堆積された接合材料は、さらなる結合部位を提供することによって、結合の質を改善することが意図される。接合材料は、様々な技術によって、基板に付着され得る。例えば、当該技術分野において公知のMEMS技術、例えば、金属堆積およびフォトリソグラフィステップを用いることによって付与され得る。材料は、例えば、電子ビーム蒸着、スパッタリング、またはメッキによって堆積され得る。
【0072】
さらに、一方または両方の表面(すなわち、シール材料および基板)が粗くされるか、あるいは、接着形状は、基板の表面にマイクロマシン加工され、結合性を向上させ得る。
【0073】
リザーバがシールを形成する以前に満たされる場合の実施形態について、絶縁材料(例えば、ボロシリケート)は、外側の大部分のシーリング表面とシーリング材料との間のマイクロチップリザーバ基板の表面上に任意にパターニングされる(図3A〜C参照)。このような絶縁材料は、電気的なクロストーク(例えば、シール内の金属化層とデバイス上の他の電極との間の電気的なショート)を最小化または削減するため、かつ、最終的な結合性プロセスステップ間のシーリングエネルギーにリザーバ内容物の露出を限定するために用いられ得る。
【0074】
充填とシーリングとが終わるまで除去されない、基板の前面上に保護的なポリマーコーティング(例えば、フォトレジスト)を付与することが望まれ得る。この保護的なコーティングは、リザーバキャップをサポートし、例えば、超音波ウェルディングによって充填するプロセスとシーリングするプロセスとの間に導入され得る付加的な機械的な力に抵抗する。
【0075】
(ポスト−シーリングプロセス)
シールされたマイクロチップ基板は、頑丈性と整合性とを改良するようにさらに処置され得る。デバイスは、リザーバが完全にシールされたかどうかを判定するために技術によって検査され得る。オーバーコート層は、例えば、電子デバイス上のパリレンコーティングに加えられるために用いられるような蒸着技術を用いてシールされた基板上に加えられ得る。シーリングは、例えば、ガスケット材料とシーリングフレームとの間にシールされた基板を位置付けし、かつ、圧縮することによって、機械的なシーリング技術を用いてさらに向上され得る。
【0076】
シーリングプロセスの完了の後、任意の保護的なポリマーコーティングが、公知の技術として、溶媒および/または酸素プラズマクリーニングステップを用いて除去され得る。
【0077】
(マイクロチップデバイスを用いるステップ)
本明細書中に記載される密閉してシールされるマイクロチップデバイスは、広く様々な用途において用いられ得る。好適なアプリケーションは、薬剤、バイオセンシング、またはそれらの組み合わせの制御された送達を含む。例えば、密閉してシールされたマイクロチップデバイスは、局在的に、局部的に、または全身的に、制御された薬剤の送達のため、患者(例えば、人間または脊椎動物)に移植することに適する。マイクロチップデバイスは、標準的な外科的または最小−浸潤性移植技術(例えば、カテーテルを介して)を用いてインビボに移植され得る。マイクロチップデバイスは、薬剤の送達の正確な量、レート、および/または時間を非常に正確に制御することを要する場合の薬剤療法に特に役立つ。好適な薬剤の送達のアプリケーションは、大小両方の分子を含む効力のある成分(例えば、ホルモン、ステロイド、化学療法処方、ワクチン、遺伝子送達ベクター、およびいくつかの強力な鎮痛薬)の送達を含む。
【0078】
受動的または能動的デバイスは、多くのインビトロ、インビボ、および市販の診断用途を有する。マイクロチップは、正確に測定された量の分子を送達することが出来、したがって、インビトロ用途、例えば、分析化学および医学診断、ならびに、細胞培養物への要素の送達などの生物学的用途において有用である。他の用途において、デバイスは、香料、染料または他の有用な化学物質の放出を制御するように用いられる。薬剤および他の分子の制御された放出、ならびに分子または二次デバイスの制御された露出および放出のための他の方法は、米国特許第5,707,898号、第6,123,861号、PCT WO02/30401号、WO02/30264号、WO01/91902号、WO01/64344号、WO01/41736号、WO01/35928号、およびWO01/12157号に記載されている。
【0079】
本明細書に記載の方法およびデバイスの改善例および変形例は、上記の詳細な説明から当業者にとって明らかである。このような改善例および変形例は、添付の特許請求の範囲の範囲内であることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】図1は、マイクロチップリザーバデバイス内部に組み込まれる密閉シール場所の位置実施形態の断面かつ概略図である。
【図2】図2は、デバイスの開いたリザーバが超音波ウェルディングプロセスを用いてシールされる前後のマイクロチップデバイスの一実施形態の断面図を示す。
【図3A】図3Aは、Tiレーザウエルディングプロセスを用いてシールされたマイクロチップデバイスの種々の実施形態の断面図である。
【図3B】図3Bは、Tiレーザウエルディングプロセスを用いてシールされたマイクロチップデバイスの種々の実施形態の断面図である。
【図3C】図3Cは、Tiレーザウエルディングプロセスを用いてシールされたマイクロチップデバイスの種々の実施形態の断面図である。
【図4】図4は、金属ガスケットシールを用いてシールされたマイクロチップデバイスの一実施形態の断面図である。
【図5】図5は、マイクロチップデバイスのリザーバ上方にリザーバキャップを接続するために超音波ウェルディングプロセスを受けるマイクロチップデバイスの一実施形態の断面図である。
【図6】図6は、マイクロチップデバイスのためのパッケージング構造に超音波ウェルディングされたマイクロチップ基板の一実施形態の断面図である。
【図7】図7は、マイクロチップデバイスのためのパッケージング構造に超音波ウェルディングされたマイクロチップ基板の別の実施形態の断面図である。
【図8】図8は、金フィルムを電気めっきすることによってパッケージング構造に密閉結合されたマイクロチップ基板の一実施形態の断面図である。
【図9】図9は、マイクロチップデバイス電子機器のためにパッケージング構造に共融結合されたマイクロチップ基板の一実施形態の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載のマイクロチップデバイスのリザーバを密閉シーリングする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−284379(P2008−284379A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−157288(P2008−157288)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【分割の表示】特願2003−535761(P2003−535761)の分割
【原出願日】平成14年6月28日(2002.6.28)
【出願人】(501228004)マイクロチップス・インコーポレーテッド (12)
【Fターム(参考)】