マイクロチップ及びマイクロチップの製造方法
【課題】 光検出の検出精度が良好なマイクロチップ及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】 複数の基板から構成され、反応の反応場となる反応領域と、該反応領域の外周部分に内部を大気圧に対して負圧とされた外周路を設け、該外周路を貼り合わせる基板表面の少なくとも片側に配設するマイクロチップ;反応場となる反応領域の外周部分に外周路が基板表面に形成された基板層を、大気圧に対して負圧下で貼り合わせ、前記外周路を気密に封止すること、を含むマイクロチップの製造方法。
【解決手段】 複数の基板から構成され、反応の反応場となる反応領域と、該反応領域の外周部分に内部を大気圧に対して負圧とされた外周路を設け、該外周路を貼り合わせる基板表面の少なくとも片側に配設するマイクロチップ;反応場となる反応領域の外周部分に外周路が基板表面に形成された基板層を、大気圧に対して負圧下で貼り合わせ、前記外周路を気密に封止すること、を含むマイクロチップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マイクロチップ及びマイクロチップの製造方法に関する。より詳しくは、基板に配設された反応場である反応領域の化学的及び生物学的分析等を行うためのマイクロチップ等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体産業における微細加工技術を応用し、シリコンやガラス製の基板上に化学的及び生物学的分析を行うためのウェルや流路を設けたマイクロチップが開発されている。
このようなマイクロチップを用いた分析システムは、μ−TAS(Micro-Total-Analysis-System)やラボ・オン・チップ、バイオチップ等と称され、化学的及び生物学的分析の高速化や高効率化、集積化又は分析装置の小型化を可能にする技術として注目されている。
【0003】
μ−TASは、少量の試料で分析可能なことや、マイクロチップのディスポーザブルユーズ(使い捨て)が可能なことから、特に貴重な微量試料や多数の検体を扱う生物学的分析への応用が期待されている。
【0004】
μ−TASの応用例として、マイクロチップ上に配設された複数の領域内に物質を導入し、該物質を光学的に検出する光学検出装置がある。このような光学検出装置としては、マイクロチップ上の流路内で複数の物質を電気泳動により分離し、分離された核物質を光学的に検出する電気泳動装置や、マイクロチップ上のウェル内で複数の物質間の反応を進行させ、生成する物質を光学的に検出する反応装置(例えば、リアルタイムPCR装置)等がある。
【0005】
例えば、特許文献1には、検出時のノイズとなる乱反射を抑え、精度の良い分析を行うことができる生体サンプル測定用プレートが開示されている。具体的には、生体サンプル判別用プレートには、流路、液だめ、基板を貫通した空孔が形成されている。カバーは励起光を透過させる材料でできており、空孔以外の部分を覆うように貼り付けられて、生体サンプル判別用プレートとカバーとの間に流路と液だめが形成されている。励起光は流路を照射し、充填された液体試料に含まれる蛍光標識が蛍光を発生させる。ここで、基板を貫通した空孔によって、生体サンプル判別用プレート内に迷光が発生せず、隣接する液だめから蛍光は発生しないという作用が得られている。
【0006】
また、特許文献2には、少なくとも、ポリジメチルシロキサン(PDMS)基板と、該PDMS基板と貼り合わせされる対面基板とからなるマイクロチップの製造方法が提案されている。このマイクロチップの製造方法は、以下の第1〜第3ステップで構成されている。第1ステップで、PDMS基板の貼り合わせ両側の外周縁寄り部分に負圧用管路が連続した環状に形成する。第2ステップで、PDMS基板の負圧用管路内の空気を排気吸引することによりPDMS基板を対面基板に密着させる。第3ステップで、PDMS基板の負圧用管路内の空気を排気吸引することによりPDMS基板を対面基板に真空接着させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−292408号公報
【特許文献2】特開2005−249540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、光検出の検出精度が良好なマイクロチップ及びその製造方法が種々望まれている。
そこで、本開示は、光検出の検出精度が良好なマイクロチップ及びその製造方法を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題解決のため、本開示は、複数の基板から構成され、反応の反応場となる反応領域と、該反応領域の外周部分に内部を大気圧に対して負圧とされた外周路を設け、該外周路を貼り合わせる基板表面の少なくとも片側に配設するマイクロチップを提供する。
従来のマイクロチップでは、前記反応領域に入射する光が散乱し、アドレスしていない隣接の反応領域に漏れ込む光や散乱光等により光検出の検出精度を低下させる不要な光が生じる。しかし、本開示のように前記外周路を配設することにより、光検出の検出精度を低下させる光検出に不要な光を所望の方向に導くこと(例えば、屈折や反射させること)が可能となる。これにより、光検出に不要な光が光検出系に侵入しないように遮蔽することが可能となるので、光検出の精度を良好にすることができる。
【0010】
また、前記外周路の断面形状が、光検出に不要な光を遮蔽する曲面をもつ形状であるのが好適である。曲面を持つことにより、光検出に不要な光を屈折や反射させることが容易となり、所望の方向に光を導くことが容易となる。そして、光検出に不要な光が、ウェルや光検出系に侵入するのを防ぐことが可能となる。
また、前記外周路が断熱性を有するのが好適である。これにより、各反応領域の側壁の外周部分を囲うため、各反応領域からの熱の放出や各反応領域への熱の侵入を防ぐことが可能となる。よって、それぞれの反応領域内の反応温度の温度制御が容易となる。
また、前記外周路のそれぞれを連通流路にて接続し、該連通流路から各外周路に流体(液体、気体)を流入させるのが好適である。流入させる流体を適宜選択することにより、光遮蔽性や断熱性等を向上させることが可能となる。
【0011】
また、前記外周路が、反応領域が形成されている基板の両表面に設けられているのが好適である。両表面に外周路が存在することにより、より光検出に不要な光を遮蔽することが可能となる。また、前記外周路の内部を大気圧に対して負圧とすることで、反応領域を有する基板をそれぞれの対面基板に、より強く吸着させることが可能となる。また、外周路内部を負圧とすると恒久接着等を使用しなくともよいため、マイクロチップの使用後の基板同士の剥離も容易である。
また、前記外周路は、切欠部を有するのが好適である。前記切欠部を設けることで、前記外周路の内部分に配設されている各反応領域に繋がる流路を形成し易くなる。この流路を利用して、反応試薬やサンプル液を各反応領域に短時間で容易に導入させることが可能となる。
【0012】
反応場となる反応領域の外周部分に外周路が基板表面に形成された基板層を、大気圧に対して負圧下で貼り合わせ、前記外周路を気密に封止すること、を含むマイクロチップの製造方法。
前記外周路を設けることにより、基板の貼り合わせが容易に行える。また、マイクロチップ使用後の分別処理や再使用も可能となる。
前記外周路の断面形状を、光検出に不要な光を遮蔽する曲面に形成すること、を含むのが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本開示は、光検出の検出精度が良好なマイクロチップ及びその製造方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本開示に係わるマイクロチップAの平面模式図である。
【図2】(a)貼り合わせる基板a1表面の片側に外周路2を設けた本開示に係わるマイクロチップAの断面模式図(図1:P1−P2断面)である。(b)貼り合わせる基板a1表面の両側に外周路2を設けた本開示に係わるマイクロチップAの断面模式図(図1:P1−P2断面)である。なお、励起光は何れの面からでも入射させることは可能である。
【図3】本開示の(a)第一実施形態、(b)第二実施形態、(c)第三実施形態に係わるマイクロチップAの入射光Lの不要な光を遮断することを説明するための概略図である。なお、反応領域を有する基板a1に対面する基板a2,a3は省略している。また、光をウェル1の下方から入射させているもので便宜上説明するが、ウェル1の上方から入射させることも可能である。(a)入射光方向に第1外周路2aを設けた場合。(b)出射方向に第2外周路2bを設けた場合。(c)入射方向及び出射方向の両方に第1外周路2a,第2外周路2bを設けた場合。
【図4】本開示に係わる外周路2の例示の平面模式図である。
【図5】本開示に係わるマイクロチップA2の平面模式図である。
【図6】本開示に係わるマイクロチップA3の平面模式図である。
【図7】本開示に係わるマイクロチップA及び従来のマイクロチップを光学検出装置に使用した場合の計算モデルに使用する光学検出装置の構成図である。
【図8】本開示に係わるマイクロチップA及び従来のマイクロチップを光学検出装置に使用した場合の計算モデルに使用する光学検出装置及びマイクロチップの構成図である。
【図9】計算モデルにおける光線100本、1000本、10000本の光の流れを示す図である。
【図10】計算モデルにおいて、光源からチップ底面までの距離を0〜20mmに調整した場合、本技術のマイクロチップ及び従来のマイクロチップでの光の流れを示す図である。
【図11】計算モデルにおける漏れ光の周囲の3PD合計到達量(光源出射光量を100%とした場合)の結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。なお、説明は以下の順序により行う。
1.マイクロチップ
(1)反応領域
(2)外周路
(3)基板
(4)マイクロチップの他の実施形態
2.マイクロチップの製造方法
3.マイクロチップを使用した光検出方法
【0016】
<1.マイクロチップ>
本開示に係わるマイクロチップAの平面模式図を図1に示し、断面模式図を図2及び図3に示す。図2及び3は、図1中P1−P2断面に対応するものであり、マイクロチップAの断面模式の例示の図である。
また、図3(a)〜(c)は、本開示に係わるマイクロチップAの入射光Lの不要な光を遮断することを説明するための概略図である。
なお、本開示にて説明する図面では、説明の便宜上、構成等を簡略化して示していることもある。
【0017】
図1及び2に示すように、本開示のマイクロチップAは、少なくとも2又は3以上の複数の基板から構成されている。
前記マイクロチップAは反応の反応場となる反応領域1(以下、「ウェル1」ともいう)及び該反応領域1ごとの外周部分に外周路2を有する基板a1と、これに貼り合わせる少なくとも1以上の対面基板から構成されている。
また、前記外周部2の内部を大気圧に対して負圧とするのが好適である。また、前記対面基板は、基板a2,基板a3のように2枚でもよいし、1枚でもよい。
本開示のマイクロチップAを用いれば、後述のように、反応領域の化学的及び生物学的分析における光検出の検出精度を向上させることが可能である。
【0018】
(1)反応領域(ウェル)
図1及び2に示すように、ウェル1は、各種反応の反応場となるエリアであり、前記基板a1には、単数又は複数配置されているもの(領域)である。
前記ウェル1の形状は、特に限定されず、例えば、楕円柱状、円柱状、円錐台形状、角柱形状、多面体形状等が挙げられる。また、この内部にテーパが付いていてもよい。また、検出のための光が入出する面は平面とするのが望ましい。
なお、前記ウェル1では、化学的及び生物学的分析を行うための反応が行われる。このため、目的の分析に対応して検出目的物質及びこの検出反応に必要なものを適宜配設してもよい。これらとしては、例えば、生体由来の検出対象物、合成オリゴ(オリゴヌクレオチド、核酸様合成物質等)、蛍光色素等を修飾した合成オリゴ、酵素、緩衝溶液、塩類、ワックス等の固形化剤、抗体、光源、水等の溶媒等が挙げられる。また、PCR法や等温増幅法(LAMP法等)で使用されるdNTP類、色素や他の物質等も適宜配設してもよい。
【0019】
(2)外周路
前記ウェル1ごとの外周部分に内部を大気圧に対して負圧とされた外周路2を、対面基板に貼り合わせる基板a1の表面の少なくとも片側に配設するのが好適である。外周路2内部の負圧により、該基板a1は、対面基板である基板a2及び/又は基板a3と貼り合わさっている状態とすることが可能となる。
本開示の外周路2をウェル1ごとの外周部分に設けることで、光検出に不要な光(漏れ光、散乱光等)を遮蔽することが可能となる。これにより、光検出に不必要な光を、S/N比的に影響しない程度まで減少させることが可能となる。
よって、本開示のマイクロチップを使用すれば、光検出の検出精度が良好となる。また、光学検出装置等の測定装置自体やそれの測定調整ではなく、マイクロチップのような簡便なものにて光検出の検出精度が向上することは、コストや作業効率の点でも有利である。
【0020】
上述の如く、本開示の外周路2は、内部を大気圧に対して負圧としているのが望ましい。外周路2の内部が負圧であるため、光の屈折率が高くなっているので、不必要な光はウェルの外側を通過することになる。外周路2の内部が大気圧であっても負圧であってもPDMS樹脂の屈折率と外周路2内部の屈折率差によってできた界面で光が反射させられる。反応領域となるウェルの直径をはみ出した放射状光束において外周部の不必要な光がチップを透過、もしくはチップ内部を導波して近隣の反応領域(ウェル)、光検出部に漏れこまないように外周路界面で不必要な光を散乱させてウェルに入り込まないようにする。そして、反応領域や光検出系への不要な光の侵入を低減することが可能となる。
また、前記外周路2の内部が負圧とすることにより、ウェル1の外周部分の基板面a1と、その面に接触している対面基板a2及び/又はa3の基板面とを、しっかり減圧吸着させることが可能となっている。このため、各ウェル1を対面基板a2,a3にて密閉させることが可能となっている。各ウェル1の内部を減圧状態とし、このウェル内部にこの減圧を利用してサンプル液を注入しても、前記外周路2の内部の負圧にて基板同士の貼り合わせ状態を維持することが可能である。
【0021】
また、前記外周路2内部を負圧の状態にする際には、この外周路2を有する基板a1と対面基板a2及び/又はa3とを減圧状態での貼り合わせを行うことで可能である。このような基板の貼り合わせを行うことで、前記外周路2内の流体(気体、流体)を同時に排気吸引されているマイクロチップを得ることが可能である。このときのマイクロチップAは貼り合わせ後の大気中では基板a1と対面基板a2,a3とが真空吸着されている構造となっている。
このことにより、使用する基板の種類に拘らず、ポリジメチルシロキサン(PDMS)等の基板を、恒久的接着に依らなくとも、負圧による自己吸着だけでより強い貼り合わせ強度を十分に維持することができる。
また、ウェル1内で加熱反応が進行した際にウェル内部の溶液が加熱されることで、ウェル1内部の内圧が上昇する場合がある。このような際に、前記外周路2内部が負圧であることにて、本開示のマイクロチップAの基板同士の貼り合わせが強く密閉性が高いため、ウェル1からの反応液の液漏れ等が生じにくい。
【0022】
また、本開示の外周路2は、マイクロチップAの各ウェル1の温度(加熱・冷却)制御に関与させることができ、特に断熱性を有する。
前記外周路2内部を負圧状態にすることで、マイクロチップAの加熱や冷却時に、各ウェル1周囲(外周部分)の水平方向(垂直方向)を断熱させやすいので、前記外周路2の内部を負圧にすることは好適である。これにより、ウェル1の内部からの放熱を低減でき、また各ウェル1の周辺からの熱の侵入を低減することとなる。
よって、光学的検出装置の加熱制御部(図示せず)にて反応領域1の反応温度を調整する際でも、反応領域1内の反応温度の温度制御が行い易くなる。これにより、ウェル1ごとの反応温度制御の精度が高くなり、ウェル1ごとの反応条件のバラツキも少なくなる。斯様なことから、本開示のマイクロチップを使用すると、各ウェル1において精度の高い反応を進行させることが可能となるので、光検出の検出精度を高くすることが可能である。
【0023】
前記外周路2は、図2に示すように、基板a1を入射出射方向に貫通するような空孔でなく、未貫通のものである。未貫通とすることで、図2(a)(b)に示すように、前記外周路2の内面に、光を反射や屈折させるための湾曲を設けることも可能となる。また、未貫通とすることで、光遮蔽性に加えて、ウェル1内の断熱性や対面基板a2,a3への吸着性等の良好な効果も得ることが可能となる。
【0024】
図3(a)〜(c)は、本開示に係わるマイクロチップAの入射光Lの光検出に不要な光を遮断することを説明するための概略図である。
なお、図3(a)は、入射光方向に第1外周路2aを設けた場合の本開示の第一実施形態に係わるマイクロチップAである。
また、図3(b)は、出射方向に第2外周路2bを設けた場合の本開示の第二実施形態に係わるマイクロチップAである。
また、図3(c)は、入射方向及び出射方向の両方に第1外周路2a及び第2外周路2bを設けた場合の本開示の第三実施形態に係わるマイクロチップAである。
ここで、基板a1を基準としたときに、光が入射する方向を「入射方向」といい、光が出射する方向を「出射方向」という(図3参照)。この入射方向及び出射方向を、「入射出射方向」といい(例えば、図1のP1−P2の断面の図2参照)、この入射出射方向に対する垂直方向を、「垂直方向」という。
また、入射方向に配設する外周路2を「第1外周路2a」ともいい、出射方向に配設する外周路2を「第2外周路2b」ともいう。
なお、反応領域を有する基板a1に対面する基板a2,a3は省略している。また、光をウェル1の下方から入射させている図3で便宜上説明するが、前記外周路2はウェル1の上方から入射させても同様の効果を得ることが可能である。
【0025】
本開示のマイクロチップAの基板a1に設けられる外周路2は、図2(a)及び図3(a)(b)に示すように、基板a1の少なくとも片側の表面に配設する。このうち、入射光Lの不要な光を効率良く排除できる点で、第1外周路2aとするのが好適である。
【0026】
前記外周路2の入射出射方向での断面形状(例えば、図1のP1−P2の断面)は、内面が湾曲しているものが好適である。内面を湾曲させることで、光検出に不要な光をより多く反射させたり、屈折させることができる(例えば図3参照)。これにより、光検出系にてコンタミネーションしないように、光検出に不要な光(例えば、漏れ光や散乱光等のL2,L3)を遮蔽することが可能となる。
この外周路2の断面形状は、光学検出に不要な光を遮蔽するような曲面をもつ形状が好適である。このような断面形状として、二次曲線的な曲面をもつ形状、さらに放物曲線的な曲面をもつ形状が、好ましい。
そして、外周路2の断面形状を曲面とすることで、上述の如く光遮蔽性がより効率良く行うことが可能である。これにより、隣接するウェルからの不要な光が各光検出系に侵入するのを防ぎ、コンタミネーションが低減できるので、各ウェルの光検出の精度が向上する。
【0027】
前記外周路2の内面には、前記基板a1を対面基板a2及び/又は対面基板a3に吸着させて、これらを貼り合わせるための開口部20が設けられている。この開口部20は入射光方向又は出射方向に向いているのが好ましい。開口部20の面と対面基板の面とが密接するように開口部20が基板に形成されているのが好適である。
【0028】
前記外周路2の高さ(深さ)は、該外周路2が未貫通であるため、ウェル1基板の厚み(入射出射方向)を1としたときに、1未満であればよい。光遮蔽性等の作用効果の点から、好ましくは0.5〜0.1、より好ましくは0.4〜0.2程度である(例えば図3(a)参照)。また、前記外周路2の高さ(深さ:H)を1としたときの開口部20の幅(最大長径:W)は、0.3〜0.7とするのが好ましく、より0.4〜0.6とするのが好ましい。なお、「高さ(深さ)」は、外周路2の「開口部20」から「頂(底)」までである。
また、前記外周路2とウェル1外壁との間隔(垂直方向)は、特に限定されないが、近接するのが望ましい。近接することで、光検出系への不要な光の侵入を低減しやすく、また断熱性や吸着性等の効果も有利に働きやすい。
【0029】
前記外周路2の路は、対面基板と接する基板a1の少なくとも何れか1方の表面に形成される。
前記基板a1に形成される外周路2の路の形状は、ウェル1の外周部分に、略楕円形の環状(好適には略円形環状);3〜20角等の多角形の環状(好適には正多角形環状)等が挙げられる。
前記外周路2の入射出射方向での断面形状を、ウェル1(好適には底面)の中心を回転軸として回転することで形成される路(立体形状)とすることが好適である。
また、前記外周路2の環状の一部に、単数又は複数の切欠部29を配設してもよい。これにより、例えば図5及び6に示すように、切欠部29を通過し、ウェル1に接続する分岐流路6を設けることが可能となる。この分岐流路6にて主流路5からのサンプル液等をウェル1内部に流入させることが可能となる。
【0030】
そして、図3(a)及び(b)に示すように、本開示のマイクロチップAの基板a1の表面に、少なくとも前記第1外周路2a又は第2外周路2bをウェル1の外周部分に配設する。
さらに、図3(c)に示すように、前記第1外周路2a及び第2外周路2bは、組み合わせてウェル1の外周部分に配設することが可能である。前記外周路2が、ウェル1が形成されている基板a1の両表面に設けられているのが、好適である。第1外周路2a及び第2外周路2bを配設することにより、ウェル1の側壁部分を外周路にて囲うことが容易となる。
基板a1の両表面に外周路2が存在することにより、より光検出に不要な光を遮蔽することが可能となる。また、前記外周路2の内部を大気圧に対して負圧とすることで、ウェル1を有する基板a1をそれぞれの対面基板a2,a3に、より強く吸着させることが可能となる。また、外周路2内部を負圧とすると恒久接着等を使用しなくともよいため、マイクロチップの使用後の基板同士の剥離も容易である。また、ウェル1の側壁部分を外周路2によって囲うことが可能となるため、ウェル1内からの熱の放出やウェル1内への周辺ウェルからの熱の侵入を抑制することが可能となる。よって、光遮蔽性、断熱性等の作用効果が発揮し易くなる。
また、垂直方向における第1外周路2a及び第2外周路2bの両者の位置関係は、目的とする光遮蔽性、断熱性等の作用効果に合わせて適宜調整することが可能である。このうち、第1外周路2a及び第2外周路2bを入射出射方向に並列配置するのが好適である(例えば、図2(b)及び図3(c)参照)。
【0031】
以下に、より詳細に本開示の(a)第一実施形態、(b)第二実施形態、(c)第三実施形態に係わるマイクロチップAの入射光Lの不要な光を遮断することを説明する。
図3(a)に示すように、入射光方向に第1外周路2aが配設されている場合、入射光Lの漏れ光や散乱光等のL2は、第1外周路2aの曲面部分にて入射光方向に反射する。また、隣接するウェル(図示せず)からの拡散光Lは、ウェル1の外周路2の曲面部分にて入射光方向に反射する。これにより、光検出に不必要な光とウェル1からの検出光L1との、コンタミネーションが低減する。よって、光検出に不必要な光が、光学検出系に到達するのを防ぎ、第1外周路2aにて遮蔽することが可能である。なお、該光学検出系は、ウェル1からの検出光L1を検出するためのものである。
また、図3(b)に示すように、出射光方向に第2外周路2bが配設されている場合、入射光Lの散乱光やウェル1から漏れ光、隣接するウェル(図示せず)からの拡散光等の光検出に不要な光L2,L3が、ウェル1の外側方向に屈折する。これにより、光検出に不必要な光とウェル1からの検出光L1との、コンタミネーションが低減する。よって、光検出に不必要な光が、光学検出系に到達するのを防ぎ、第2外周路2bにて遮蔽することが可能である。なお、該光学検出系は、ウェル1からの検出光L1を検出するためのものである。
【0032】
また、図3(c)に示すように、入射方向及び出射方向の両方に外周路2a,2bを設けるのが好適である。上述のように光検出に不要な光の反射や屈折等にて、漏れ光や拡散光等の光検出に不必要な光とウェル1からの検出光L1との、コンタミネーションがより低減する。よって、第1外周路2a及び第2外周路2bの両方にて、光検出に不必要な光が、ウェル1からの検出光L1を検出するための光学検出系に到達するのを防ぐことが可能となる。この構成を採用することで、より効率的に遮蔽することが可能である。
【0033】
なお、第1外周路2a及び第2外周路2bの何れか一方の内部を大気圧に対して負圧とすることで、より光遮蔽性が高まるので、好適である。さらに、両方の内部を大気圧に対して負圧とすることで、さらに光遮蔽性が高まるので、より好適である。
また、外周路2内部を負圧とすることで、ウェル1を有する基板a1の2枚の対面基板a2,a3を強く張り合わせることが可能となる。これにより、接着剤や恒久的接着等による基板の接着を行わなくともよく、マイクロチップ使用後分別し、基板洗浄して再使用することも可能である。また、これにより、接着剤等の使用が不可能か困難な対面基板であっても、貼り合わせることが可能となる。
【0034】
また、本開示の外周路2に、光遮断性の材料を含ませてもよい。これにより、光遮断性をより高めることが可能となるので、より検出精度が向上する。なお、該材料の状態は、固体(膜状等)、液体、気体等の何れでもよい。
光遮断性の材料としては、例えば、光を屈折率させるための材料や光を反射させるための材料等が挙げられる。
【0035】
前記光反射材料は、光の反射率が高い材料であればよい。この材料としては、例えば、銀、金、アルミニウム及びロジウム等から選ばれる1種又は2種以上の金属膜材料が挙げられ、このうち銀や銀を主成分とするものが好適である。そして、この材料を用いたイオンスパッタリング法により、外周路2内面に反射膜を形成することができる。前記金属膜の厚さは、特に制限はないが、30〜200nm程度であればよく、金属膜1層当たり30〜70nm程度であればよい。
【0036】
前記光屈折材料としては、特に限定されず、純水の屈折率と同等かそれ以上(より好適には屈折率nD(20℃)1.5〜1.8)の高屈折率液体を使用するのが望ましい。前記光屈折液体としては、例えば、シリコーンオイル、光学オイル(イマージョンオイル)、イオン液体、フォトリソグラフ用高屈折率液体等が挙げられる。これらを1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0037】
前記シリコーンオイルとして、市販品を使用すればよく、屈折率が1.3〜1.6程度の範囲で選択すればよい。例えば、ジメチルシリコーンオイル(屈折率:1.3〜1.4)、メチルフェニルシリコーンオイル(屈折率:1.4〜1.5)、メチルハイドロジェンシリコーンオイル(屈折率:1.3〜1.4)等が挙げられる。
また、ジメチルシリコーンオイルの市販品としてKF96(信越化学工業)、メチルフェニルシリコーンオイルの市販品としてKF50、KF54(信越化学工業)、メチルハイドロジェンシリコーンオイルの市販品としてKF99(信越化学工業)等が挙げられる。
これらを1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0038】
前記イマージョンオイルとして、市販品を使用すればよく、屈折率が1.5〜1.8程度のものが好適である。イマージョンオイルの市販品としては、TypeA、TypeB、TypeNVH、TypeOVH、Type37、Type300、TypeDF、TypeFF(カーギル標準屈折液:モリテックス)等が挙げられる。
ここで、TypeAのオイルはテルフェニルや水素化テルフェニル、ポリブタン、炭化水素などを混合した短焦点観察用の低粘度合成オイルであり、TypeBのオイルは医療機器レンズ用の中粘度合成オイルであり、TypeNVHやTypeOVHは長距離観察用の高粘度合成オイルである。
これらを1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0039】
前記イオン液体としては、特に限定されず、例えば、ジカチオン性イオン液体及びジアニオン性イオン液体が挙げられる。このうちジカチオン性液体が好ましい。
前記ジカチオン性液体としては、脂肪族アンモニウムジカチオン性液体及び芳香族アンモニウムジカチオン性液体等が挙げられる。前記アニオンとしては、例えば、カルボキシラート、スルホナート及びスルファートアニオンが挙げられる。ジカルボン酸ジアニオンの例としては、コハク酸、ノナン二酸及びドデカン二酸が挙げられるが、それらに限定されない。ジイオン種(一般的な架橋基を含むジアニオン及びジカチオン)の他の非限定的な例としては以下のもの(化学式1〜5)が挙げられる。プロトン化3級アミン系(化学式1)、テトラヒドロチオフェニウム系(化学式2)、イミダゾリウム系(化学式3)、ピロリジニウム系(化学式4)、ホスホニウム系(化学式5)。これらのアルキル基部分の単数又は複数の水素原子を、直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜5アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)及びベンゼン環を有するアルキル基(例えばベンジル基等)で置換してもよい。また、n=1〜5が好ましい。
【0040】
【化1】
【0041】
さらに、イミダゾリウム系ジカチオンイオン液体及びピロリジニウム系ジカチオン液体が好適である。さらに、以下の化学式6〜11が好適である。Aは塩を示し、Aとしては、例えば、Br−、Cl−、I−、NTf2−、BF4−、PF6−等が挙げられる。
【0042】
【化2】
【0043】
これらを1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0044】
前記フォトリソグラフ用高屈折率液体としては、水中に分散させたときに、屈折率が1.5以上となるように、体積平均粒径が100nm以下である無機微粒子(A)を1種又は2種以上組み合わせて調整したフォトリソグラフ用高屈折率液体無機粒子が挙げられる。このフォトリソグラフ用高屈折率液体について、例えば特開2007−234682号公報を参照することが可能である。無機粒子の重量%及び体積平均粒径は、JIS R1629−1997ファインセラミックス原料のレーザ回折・散乱法による粒子径分布測定方法に準拠して測定すればよい。
前記フォトリソグラフ用高屈折率液体無機粒子は、粒径100nm以下の範囲に存在する粒子が全体の90重量%以上であるのが好ましい。さらに、前記無機粒子(A)としては、例えば、金属酸化物微粒子、無機酸金属塩微粒子(硫酸塩・炭酸塩・リン酸塩等)、金属ハロゲン化物微粒子、金属窒化物微粒子、金属炭化物微粒子、金属ホウ化物微粒子、金属微粒子及びセラミック微粒子等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
具体的には、金属酸化物としては、アルミナ、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、三酸化二鉄、酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化クロム、および酸化ケイ素等が挙げられる。無機酸金属塩としては、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、および塩化カリウム等が挙げられる。金属窒化物としては、窒化チタン、窒化アルミニウム、窒化ジルコニウム、窒化クロム、窒化タングステン、および窒化ケイ素等が挙げられる。金属炭化物としては、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化タングステン、炭化クロム、炭化ニオブ、および炭化ケイ素等が挙げられる。金属ホウ化物としては、ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウム、ホウ化タングステン、ホウ化クロム、およびホウ化モリブデン等が挙げられる。金属としては、銀、および銅等が挙げられる。これらの2種以上を併用しても差し支えない。
また、状況に応じ表面処理等の加工が実施されたものでもよい。これらの中で屈折率として2〜3を有するアルミナ、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、三酸化二鉄、酸化アンチモンが好ましい。さらに屈折率と粒径の観点から、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウムが特に好ましい。高屈折率1.5以上であるためには固形分は5重量%以上が好ましい。
これらを1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0045】
前記外周部2に光遮断性の材料を使用する際の一例を以下に挙げるがこれに限定されるものではない。例えば、本開示の外周路2の面(好適には内面)に、光反射材料を付着させること;本開示の外周路2の内部に光屈折材料を注入すること等が挙げられる。
【0046】
また、本開示の外周路2に、断熱性の材料を含ませてもよい。
これにより、断熱性をより高めることが可能となるので、各ウェル1の温度制御の精度が高くなり、より検出精度が向上する。なお、該材料の状態は、固体(膜状等)、液体、気体等の何れでもよい。
前記断熱性材料としては、特に限定されず、ヒートカット塗料に使用されるセラミックビーズ分散液等が挙げられる。このとき、上述の光遮蔽性を低下させないものが望ましい。
【0047】
また、本開示の外周路2には、他の外周路2と連通するための連通流路8を設けてもよい。連通流路8を設けることで、この流路8を経て前記外周路2内部に、光遮断性、断熱性や密着性等の機能を向上させる流体(液体、気体)を流入させることが可能となる。
また、外周路2のさらに外周部分に補助路3を一重に又は多重に設けてもよい。補助路3を用いることにより、対面基板の密着性の向上、内周のウェル1の断熱性の向上等が挙げられる。
【0048】
本開示の外周路2には、切欠部29を設けてもよい。前記切欠部29を設けることで、前記外周路2の内部分に配設されている各ウェル1に繋がる流路(主流路5,分岐流路6等)を形成し易くなることで、好ましい。この流路を利用して、反応試薬やサンプル液を各ウェル1に短時間で容易に導入させることが可能となる。
【0049】
図4は、マイクロチップAに形成される外周路2の例示の平面図である。また、図4は、ウェル1と外周路2との位置関係を示す平面図である。
図4(a)は、外周路21がウェル1の外周部分に略円形状の環状として形成されている場合を示す図である。図4(b)は、外周路22がウェル1の外周部分に四角形状の環状として形成されている場合を示す図である。図4(c)は、外周路23がウェル1の外周部分に多角形状(六角形状)の環状として形成されている場合を示す図である。このうち、略円形状の環状が、光遮断性や断熱性等が良好であるので、好適である。
なお、ウェル1には分岐流路6を連通させてもよく、このとき外周路2に切欠部29を設けてもよい。また、外周路2には連通流路8を、連通させてもよい。
【0050】
図4(d)は、外周路24がウェル1の外周部分に環状として形成され、該外周路24に流体を流入させる連通流路8を設けた場合を示す図である。さらに、その外周路24の外周部分に切欠部29を有するC型の補助路3を設け、該切欠部29は前記連通流路8が通過できるように形成されてる場合も示す図である。そして、連通流路8にて遮光性、断熱性等を有する流体を流すことが可能である。また、補助路3の負圧にて対面基板a2,a3を強く貼り合わせることが可能である。
また、切欠部29及び連通流路8を設けず、補助路3の両端が連通していてもよい。
また、外周路24に、分岐流路6とウェル1とを連通させるために、切欠部29を設けてもよい。
【0051】
図4(e)は、複数の切欠部29を有する外周路25がウェル1の外周部分に形成されている場合を示す図である。図4(f)は、単数の切欠部29を有する外周路26がウェル1の外周部分にC型形状として形成されている場合を示す図である。切欠部29を設けることで、ウェル1にサンプル液等を流入させるための流路を設けることが可能となる。また、切欠部29に加熱制御部のような配線等を通すことも可能である。
【0052】
(3)基板
前記マイクロチップの基板(基板層a1,a2,a3)は、ガラスや各種プラスチック(PP、PC、COP、PMDS等)により形成できる。マイクロチップの材質は、光学検出部から照射される測定光に対して透過性を有し、自家蛍光が少なく、波長分散が小さいため光学誤差が少ない材質とすることが望ましい。
マイクロチップの基板a1へのウェル1、外周路2、各流路の成形は、ガラス製基板のウェットエッチングやドライエッチングによって、またプラスチック製基板のナノインプリントや射出成形、機械加工によって行うことが可能である。
マイクロチップは、ウェル1、外周路2、各流路等を形成した基板a1を、同じ材質又は異なる材質の基板a2,a3で封止することで形成することが可能である。ここで、各流路は、特に限定されず、上述の主流路5、分岐流路6、導入口4、排出口7、連通流路8、入出口80等を含む。
【0053】
(4)本開示のマイクロチップの他の実施形態
以下に、本開示のマイクロチップの他の実施形態を説明する。
図5は、本開示に係わるマイクロチップA2の平面模式図である。
各ウェル11,12,13は、それぞれの分岐流路6を介して1つの主流路5に接続されている。分岐流路6を有するウェル11,12,13ごとの外周部分に、切欠部29を有するC型形状の外周管路261,262,263が配設されている。前記分岐流路6は前記切欠部29を通過するように形成されている。各ウェル11,12,13には、反応試薬が収容されている。
本開示のマイクロチップA2の導入口4にサンプル液を注入することで、各ウェル11,12,13にサンプル液が流入し、反応試薬と混合する。温度制御等を行い、反応を終了させた後又は反応中に、各ウェル内で発生する光成分(例えば蛍光)について、光検出を行う。
このとき、本開示の外周路261,262,263にて、光検出に不要な光を遮蔽することが可能である。また、断熱性が良好である。また、本開示の外周路261,262,263に、切欠部29を設けることで、流路にてサンプル等をウェル内に移送できるので、作業効率性もよい。
なお、反応試薬は、各ウェル11,12,13に収容されていなくともよい。
よって、本開示のマイクロチップA2を用いれば、反応領域の化学的及び生物学的分析における光検出の検出精度を向上させることが可能である。
【0054】
図6には、本開示に係わるマイクロチップA3の平面模式図である。
各ウェル11,12,13は、分岐流路6を介して1つの主流路に接続されている。各分岐流路6を有するウェル11,12,13の外周部分に切欠部29を有するC型形状の外周管路261,262,263が配設されている。前記分岐流路6は前記切欠部29を通過するように形成されている。各外周管路群261,262,263は、それぞれ連通流路81,82,83にて連通し、各外周管路群261,262,263の端部には流体を流入させる入出口80が配設されている。
本開示のマイクロチップA3の導入口4にサンプル液を注入することで、各ウェル11,12,13にサンプル液が流入し、反応試薬と混合する。温度制御等を行い、反応を終了させた後又は反応中に、各ウェル内で発生する光成分(例えば蛍光)について、光検出を行う。
このとき、本開示の外周路261,262,263にて、光検出に不要な光を遮蔽することが可能である。
【0055】
さらに、マイクロチップA3における連通流路81,82,83及びその端部の入出口80を使用することが可能である。光遮断性材料、断熱性材料等を含む流体を入出口80から注入することで、連通流路81,82,83を経てそれぞれの外周路261,262,263に前記流体が流入する。これにより、さらに光遮蔽性及び断熱性等を向上させることが可能となる。
また、本開示の外周路261,262,263に、切欠部29を設けることで、流路にてサンプル等をウェル内に移送できるので、作業効率性もよい。
また、連通流路81,82,83が各群として独立することで、ウェル11,12,13の各ウェル群に応じて、光遮断性、断熱性等を高めることが可能である。また、連通流路81,82,83それぞれをつなぐ連通流路を設けることで、流体を1回のインジェクションにて、外周路261,262,263の各外周路に流入させることが可能となるので作業効率性が向上する。
なお、反応試薬は、各ウェル11,12,13に収容されていなくともよい。
よって、本開示のマイクロチップA3を用いれば、反応領域の化学的及び生物学的分析における光検出の検出精度をより向上させることが可能である。
【0056】
<2.マイクロチップの製造方法>
本開示のマイクロチップの製造方法は、反応場となる反応領域1の外周部分に外周路2が基板a1表面に形成された基板層を、大気圧に対して負圧下で貼り合わせ、前記外周路を気密に封止すること、を含むものである。
反応領域1と外周路2は、何れを先に基板a1表面に形成してもよく、同時に形成してもよい。また、外周路2は、少なくとも何れか1方の基板a1表面に形成すればよい。
このとき、前記外周路の断面形状を、光検出に不要な光を遮蔽する曲面に形成すること、を含むものである。この断面形状として、好適には2次曲線的な曲面、より好適には放物線的な曲面である。また、形成する外周路の(入射出射方向に対する)垂直方向の(断面又は平面)形状は、上述のとおりであるが、例えば図4の例示図が挙げられる。また、このとき各外周路を連通し、流体を移送するための連通流路や入出口を形成してもよい。また、この基板に反応領域に連通する主流路及び分岐流路を形成してもよい。
なお、上述の如くして得られた反応領域及び外周路を有する基板に対面する基板の形成は、上述の如く、エッチングや射出成形等で行うことが可能である。
【0057】
前記反応領域1に反応試薬を入れ、真空乾燥や凍結乾燥等の乾燥にて、反応試薬を固着化した反応領域1を形成してもよい。このとき反応領域1の表面はDPアッシング等にて親水化するのが好適である。また、外周路2、連通流路8、主流路5、分岐路6等の流体が流入や移送可能な箇所は親水化しておくのが好適である。
【0058】
さらに、上述で形成した基板を貼り合わせる際には、大気圧に対して負圧下(例えば、1/30気圧以下)で行ってもよい。これにより、ウェル1、外周路2、各流路等の内部が大気圧に対して負圧となるよう機密に封止される。さらに、基板層同士の貼り合わせは真空下(例えば、1/100気圧以下)で行うのが、強固に貼り合わせるために、好適である。これにより、外周路2内が負圧になっているため、上述の如く、光検出に不要な光を遮蔽しやすくなる。
このとき、外周路2が基板a1表面の1方にのみ形成されている基板a1を使用する場合には、外周路2が基板表面に形成されていない側の基板a1の表面を接着剤等にて、基板a2又は基板a3を貼り合わせればよい。これにより、マイクロチップを形成する。
また、外周路2が基板a1の表面の両方に形成されている場合には、大気圧に対して負圧下にて、基板a2及び基板a3を別々に又は同時に貼り合わせてもよい。また、反応試薬をウェル1に固着化する場合には、固着化前にウェル1と非接触の基板a3を貼り合わせるのが望ましい。このとき、固着化した後にウェル1を密封するため、基板a2を張り合わせてマイクロチップを形成する。
なお、上述で形成した基板の貼り合わせは、公知の接着方法(恒久接着等)にて行ってもよいが、マイクロチップの再使用等の点からは、上述の外周路内の負圧を利用した貼り合わせが好適である。
【0059】
ところで、従来のマイクロチップでは、ウェルの配置やチャネル構造が微細化する傾向にある。そして、従来のマイクロチップでは、ウェル内の反応を光検出するために、透過光学系で光を外部からウェル内に照射すると、光検出の精度が低下することがある。これは、微細化するにつれて、ウェル内をプローブするための透過光、反射光をアドレスしたウェルに照射すると、マイクロチップ内部、周辺環境で複雑に光が散乱する。例えば、ウェルに入射する光が拡散し、アドレスしていない隣接のウェルに漏れ込む光が発生することとなる。この漏れ光が隣接のウェルに流れ込むこととなるので、評価したいウェルの光成分(情報)以外の光(情報)を検出してしまう。このようにして得た光成分の強度が情報として出力されるため、シグナルのコンタミネーションが起きることとなる。このコンタミネーションをゼロにするのは比較的困難であるので、光学検出装置等の調整等にて、そのS/N比を上げることが重要とされていたという問題があった。
【0060】
これに対し、本開示のマイクロチップAは、上述の如く本開示の外周路2をマイクロチップAの外周部分に設けることで、この漏れ光等の光検出に不要な光を遮蔽することが可能となる。これにより、上記の問題を解決することが可能となる。
【0061】
また、従来のマイクロチップは、合成樹脂等の材料からなる基板にチャネルが形成されており、このチャネルの一端には入出力ポートとなるべきウェルが形成されて基板の下面側に不透明又は透明な素材からなる対面基板が接着されている。ここで素材には、例えばガラスや合成樹脂フィルム等が挙げられる。この対面基板の存在により、ウェル及びチャネルの底部が封止される。
ここで、エラストマータイプのシリコン樹脂であるPDMS基板と対面基板とを貼り合わせるマイクロチップ製造方法として、例えば、特許文献2が挙げられる。このPDMSはチャネル等の微細構造を有するマスター(鋳型)に対する良好なモールド転写性、透明性、対薬品性、生体適合性等を有し、マイクロチップの構成素材としては特に優れた特徴を有している。
さらに、PDMS製マイクロチップの製造上の更なる利点は、PDMS基板と対面基板との貼り合わせに、いわゆる恒久接着(パーマネント・ボンディング)が利用できることである。恒久接着とは、ある種の表面改質を行うだけで、接着剤無しでPDMS基板と対面基板とを相互に接着することができる性質のことである。これにより、管路、容器及び/又はポート等の微細構造の良好な封止性を発揮させることができる。PDMS基板の恒久接着では、貼り合わせ面を適宜表面改質した後、両方の基板の貼り合わせ面を密着して重ね合わせ、一定時間放置することで、容易に接着が行えるものである。
【0062】
しかし、実際には、以下のような場合には、必ずしも恒久接着が好ましくないことがあり、また、恒久接着でなくPDMSの有する自己吸着性を利用して対面基板を張り合わせただけで使用することの方が好ましいこともある。
PDMSの有する自己吸着性を利用して対面基板を貼り合わせただけの従来のマイクロチップでは、用途によっては、貼り合わせ強度が不足して注入した液体試薬や検体が微細流路から漏洩するという問題があった。
また、従来のマイクロチップにおいて、減圧吸着を強くするために、マイクロチップの外周付近に環状管路を形成することも考えられるが、チップが大型化してしまうという問題があった。
【0063】
これに対し、本開示のマイクロチップAは、各ウェルの外周部分に負圧の外周路2を設けることにより、貼り合わせ強度を強くすることが可能となる。このため、流体の漏洩がほとんどなく、またチップを大型化する必要もない。さらに、前記外周路2は、第1外周路2a及び第2外周路2bのように、ウェル1が形成されている基板a1の両表面に設けることが可能であるので、対面基板a2,a3を強く貼り合わせることが可能となる。また、前記外周路2の外周にさらに1層又は多層の補助路3を設けることが可能であるので、より強い貼り合わせ強度を得ることが可能である。
【0064】
また、マイクロチップの試薬反応には、反応制御を行うため、おおよそ加熱機構が必要とされ、さらに、マイクロチップの加熱及び冷却機構も必要とされる場合もある。この際のウェルへの熱伝導性は、マイクロチップの均一熱制御が非常に重要である。なぜならば、チップ周囲から放熱していくためチップ中心部とチップ外周部の温度差が顕著化するためであり、斯様な問題があった。チップの直近に加熱部を配置する場合、光学系がおおよそ離れた位置より照射されることがあるが、この際は、上記の漏れ光が増大し、S/N比は悪化するという問題があった。
【0065】
これに対し、本開示のマイクロチップAは、各ウェルの外周部分に負圧の外周路2を設けることにより、ウェル1からの熱の放出や隣接するウェルからの熱の侵入を低減することが可能となる。さらに、前記外周路2は、第1外周路2a及び第2外周路2bのように、ウェル1が形成されている基板a1の両表面に設けることが可能である。この断熱性を有する外周路2a,2bにより、ウェル1の側面部分を出射方向及び入射方向から囲うことが可能となる。これにより、チップ周囲からの放熱するのを防ぐことが可能となる。しかも、前記外周路2の外周にさらに1層又は多層の補助路3を設けることが可能であるので、より断熱効果を高めることが可能である。
本開示のマイクロチップAは、このように簡便に断熱効果を得ることができるので、チップ直近に加熱部を配置する必要がなく、この配置によって生じる光検出の精度の低下を防止することが可能となる。
【0066】
また、従来のマイクロチップは、恒久接着するには、前処理としてPDMS基板に対して適切な表面改質処理を必ず施さなければならない。表面改質処理は、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)装置による酸素プラズマ処理を行うことからなる。従って、このような処理を行うことによりマイクロチップの製造コストが増大する。
これに対して、本開示のマイクロチップAは、この処理(製造工程)を省略することが可能となるので、製造コストを大幅に軽減することが可能である。
【0067】
また、従来のマイクロチップでは、恒久接着等の接着が不可能か又は非常に困難な対面基板を使用する場合がある。
例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)は透明性の高い普及品の樹脂であり、ポリカーボネイト(PPC)は耐熱性に優れ、DNA増幅方法の一つであるPCR等で化学反応に高い温度が必要な場合に有利である。また、シクロオレフィンポリマー(COP)は、各種の試薬に対し高い耐薬品性を有する。
しかしながら、これら樹脂製対面基板とPDMS基板とは、恒久接着を行うことができないという問題がある。
【0068】
また、ポリエチレン(PE)やポリスチレン(PS)は恒久接着が可能であるが、その接着方法は、以下の理由から非常に困難であるとう問題がある。
例えば、これら合成樹脂製の対面基板はガラス等に比べると、一般的に恒久接着のための表面改質処理に対する耐性が低い。しかも、恒久接着が良好に行われる処理強度が小さい上に、許容範囲が極めて狭い。例えば、反応性イオンエッチング(RIE)装置による酸素プラズマ処理を用いた場合、ガラスに対しては処理強度としてRF出力150W、照射時間15秒を超えると、恒久接着が行われ難くなる。一方、ポリエチレン樹脂に対しては僅かに25W、10秒を超えると恒久接着が困難になる。
また、微弱なRF出力で、極短時間のプラズマを安定的に発生させることは難しく、処理強度のバラツキが起こり易いため、合成樹脂製基板とPDMS基板とが安定的に接着させることが難しい。このため処理強度のバラツキが起こりやすいために、合成樹脂製基板とPDMS基板とが再現性良く恒久接着し難い一因であるとも考えられる。
【0069】
これに対し、本開示のマイクロチップは、前記外周路2の負圧により基板同士を強く貼り合わせることが可能となる。よって、PDMS基板と、PMMA、PPC、PE、PSから選ばれる1種又は2種以上の基板とを使用しても、良好に貼り合わせることが可能となる。
【0070】
また、恒久接着している従来のマイクロチップを使用した後に、プラスチックのPDMS基板と無機物であるシリコン基板やガラス基板とを分別して、廃棄処分する場合、手間暇がかかるという問題がある。
【0071】
これに対し、本開示のマイクロチップは、前記外周路2の負圧を利用して基板同士を貼り合わせているので、恒久接着の場合と比較して、剥離させることがはるかに容易であるので、作業効率がよい。
【0072】
恒久接着している従来のマイクロチップでは、基板同士を剥離し難く、剥離しても基板に損傷が生じる可能性が高いので、マイクロチップ使用後に基板を洗浄して再使用することは困難であり、コスト低減が行いにくいという問題がある。
【0073】
これに対し、本開示のマイクロチップは、前記外周路2の負圧を利用して基板同士を貼り合わせているので、恒久接着の場合と比較して、剥離させることがはるかに容易である。しかも、剥離の際に基板を損傷させることもないので、作業効率がよく、コスト低減が行い易い。
剥離することにより、基板内の微細構造部分の洗浄が行い易くなるばかりか、十分な洗浄効果が得られる。洗浄後の基板は、他の基板と貼り合わせて再使用することも可能である。
【0074】
また、従来のマイクロチップにおいて、例えば、ガラス基板に電極や電熱ヒーター、温度センサ等の配線パターンを形成したり、シリコン基板にMESM技術によりマイクロバルブやマイクロポンプ等を形成する場合がある。この制作には、非常なコストがかかるため、1回限りの使用で廃棄することは極めて不経済的である。
【0075】
これに対し、本開示のマイクロチップでは、対面基板ではなく、ウェルを有する基板に前記外周路2を形成している。このため、対面基板に複雑な加工を施したガラス基板やシリコン基板を前記外周路2の負圧にて貼り合わせているので、対面基板を損傷させることなく、剥離することが可能である。剥離後、複雑な加工を施した対面基板等を洗浄して再使用することも可能である。高価な基板を洗浄して再使用することにより、コスト低減を図ることが可能となる。よって、コスト低減を図ることが可能である。
【0076】
本開示のマイクロチップは、後記実施例(図7〜10参照)に示す通り、通常の光学検出装置において、従来のマイクロチップと比較して、非常に良好な結果が得られている。
すなわち、本発明者らは、全く意外にも、光検出の精度の非常に良好という、際立って顕著な効果を有する本開示のマイクロチップを完成させることができ、これを確認できた。このときの光源と本開示のマイクロチップの入射方向の面との距離は、好ましくは0〜20mm、より好ましくは0〜15mmである。なお、この距離は、通常の光学検出装置で設定されている数値である。
よって、本開示のマイクロチップ(好適には、図2(b)参照)を光学検出装置に搭載した際に、光学検出装置の光検出の調整を特に行わなくとも、光検出に不要な光(漏れ光等)をより良好に遮蔽することが可能となる。
【0077】
<光学検出装置>
本開示のマイクロチップは、光学検出装置に搭載して使用することが可能である。この光学検出装置(図示せず)は、各種反応(例えば、核酸増幅反応)を行うことが可能なものが望ましい。例えば、導光板、反射板、照射系(部)、励起フィルタ、蛍光フィルタ及び光検出系(部)を備えるのが望ましい。光の流れを調整する導光部材や反応温度を制御する加熱制御部を配設してもよい。また、光量や光成分等を調整するためや各系(部)を支持するため、ピンホール、各種フィルタ、集光レンズ、支持台を適宜配設してもよい。
また、これら各種動作(例えば、光制御、温度制御、核酸増幅反応、検出制御、検出光量算出やモニタリング等)を制御する制御部(CPU等)が備えられているのが好適である。
【0078】
前記光源系としては、例えば、レーザー光源、白色又は単色の発光ダイオード(LED)、水銀灯、タングステンランプ等が挙げられる。
なお、前記レーザー光源としては、アルゴンイオン(Ar)レーザー、ヘリウム−ネオン(He-Ne)レーザー、ダイ(dye)レーザー、クリプトン(Kr)レーザー等を出射する光源であればよい。該レーザー光源は、1種又は2種以上、自由に組み合わせて用いることができる。
【0079】
前記検出系は、反応領域2の他端(具体的には底面)から出射する光の光量を検出することが可能な機構であればよい。当該検出系には、光学検出器が少なくとも備えられている。
前記光学検出器としては、特に限定されず、例えば、フォトダイオード(PD)アレイ、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等のエリア撮像素子、小型光センサ、ラインセンサースキャン、PMT(光電子倍増管)等が挙げられ、これらを適宜組み合わせてもよい。
なお、励起フィルタ及び検出フィルタは、各種反応に対応したものを使用すればよい。市販品を使用すればよい。
【0080】
<核酸増幅反応>
本開示のマイクロチップは、光学的検出を目的とする各種化学反応に使用することが可能であり、例えば、核酸増幅反応用、還元性糖(例えば麦芽糖、果糖、ブドウ糖等)検出用(例えば、ベネジクト試薬等による反応等)に使用することが可能である。
【0081】
本開示において「核酸増幅反応」として、PCR(Polymerase Chain Reaction)法や「等温増幅反応」が挙げられる。この「反応試薬」には、核酸増幅反応において、増幅核酸鎖を得るために反応に必要な物質が含まれている。この「反応に必要な物質」には、核酸増幅反応において増幅核酸鎖を得るために必要な物質である。具体的には、標的核酸鎖に相補的な塩基配列とされたオリゴヌクレオチドプライマー、核酸モノマー(dNTP)、酵素、反応緩衝液(バッファー)溶質などが含まれる。
【0082】
PCR法は、(1)熱変性、(2)アニーリング、(3)伸長反応の3つのステップからなる温度サイクルを繰り返すことによって、鋳型となる核酸鎖の増幅を行うものである。このとき、この反応は前記反応領域1のそれぞれにおいて行われる。
ステップ(1)の熱変性は、鋳型核酸鎖を二本鎖から一本鎖に解離させるためのステップである。熱変性時の反応温度は通常94℃前後とされる。ステップ(2)のアニーリングは、一本鎖に解離した鋳型核酸鎖にオリゴヌクレオチドプライマーを結合させるためのステップである。アニーリング時の反応温度は、通常50〜60℃程度とされる。ステップ(3)の伸長反応は、DNAポリメラーゼによって、オリゴヌクレオチドプライマーが結合した部分を起点として一本鎖部分と相補的なDNAを合成するステップである。伸長反応時の反応温度は、通常72℃前後とされる。
DNA複製反応の際に生成されたds(double-standed)−DNAには、例えばSYBR(登録商標) Green I等の蛍光色素がインターカレートする。インターカレートしたds−DNAに励起光が照射されることで励起して蛍光を発する(例えば、励起光497nm:発光波長520nm)。蛍光フィルタで所望の蛍光成分にし、この蛍光の発光量を前記温度サイクルごとに蛍光検出系で測定し、定量化する。そして、温度サイクル数とこれに対応する蛍光量との相関関係に基づいて遺伝子発現量として初期のcDNA量を求めることもできる。
なお、PCR法については、濁度物質を用いても核酸を定量することが可能である。
【0083】
また、本開示において「核酸等温増幅反応」には、温度サイクルを伴わない各種増幅反応が含まれる。等温増幅反応としては、例えば、LAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)法やSMAP(SMartAmplification Process)法、NASBA(Nucleic Acid Sequence-Based Amplification)法、ICAN(Isothermal and Chimeric primer-initiated Amplification of Nucleic acids)法(登録商標)、TRC(transcription-reverse transcription concerted)法、SDA(strand displacement amplification)法、TMA(transcription-mediated amplification)法、RCA(rolling circle amplification)法等が挙げられる。この他、「核酸増幅反応」には、核酸の増幅を目的とする等温による核酸増幅反応が広く包含されるものとする。また、これらの核酸増幅反応には、リアルタイム(RT)−LAMP法などの核酸鎖の増幅とともに増幅された核酸鎖の定量を伴う反応も包含される。
【0084】
核酸増幅反応の一例として、LAMP法を挙げ、このLAMP法における濁度物質にて核酸を定量する場合について、以下に説明する。このとき、この反応は前記反応領域1のそれぞれにおいて行われる。
一定温度(60〜65℃)になるように設定することで、核酸が増幅されてゆく。尚、このLAMP法では、二本鎖から一本鎖への熱変性が必要なく、この等温条件下、プライマーのアニーリングと核酸伸長とが繰り返り行われる。
この核酸増幅反応の結果、ピロリン酸が生成され、このピロリン酸に金属イオンが結合して不溶性又は難溶性の塩が形成され、この塩が濁度物質となる(測定波長300〜800nm)。この濁度物質に入射光が照射されることで、散乱光となる。蛍光フィルタを透過して、この散乱光の散乱光量をリアルタイムに蛍光検出系で測定し、定量化する。また、透過光量からも定量化することは可能である。
なお、LAMP法については、蛍光物質を用いても核酸を定量することが可能である。
【実施例】
【0085】
以下に、具体的な実施例等を説明するが、本技術はこれに限定されるものではない。
【0086】
<実施例1>
実験材料
・PDMS製の表裏に放物曲線的な曲面を有するリング溝形成し、9ウェルを形成した基板a1を使用した。
・LAMP反応溶液を使用した。
・蛍光色素としてSYBR Green I(SG:Molecular Probes Inc.)を使用した。
【0087】
本開示のマイクロチップA2の製造方法及びこれを使用した試験方法
PDMS樹脂を型に入れて成形した流路5,6付のマイクロウェル1を備えた透明チップa1を作製した。
さらに、流路5,6と試薬を固相化させるウェル1周囲の各々に放物曲線的な曲面を有する形状のC形管路26の溝を基板a1表面に作製し、その裏面にもウェル1周囲に同様に放物曲線的な曲面を有する形状のC形管路26の溝を作製した。
これを以下に使用するPMDS基板a1とした。
【0088】
PMDS基板a1の底部の貼り合わせについて以下に説明する。
PDMS基板a1をO2:10cc 100W 30secでDPアッシングして表面を親水化させ真空中でカバーガラスa3と貼り合せた。ガラスa3側を下にして試薬固相化用のウェル1がある面を表側にひっくり返した。
【0089】
標的(鋳型)核酸のLAMP用プライマーを含むLAMP反応溶液を調整した。
予めマイクロチップウェル1にLAMP反応を起こすためにBST酵素とプライマー溶液0.1μLをウェル1毎に分注し、真空乾燥にて固着させた。BST酵素:原液、LAMP用プライマー:6液混合(FIP、BIP、F3、B3、LF、LB)。微量分注機にてプライマーをウェル1底辺に固着し、凍結乾燥させた。
【0090】
PMDS基板a1の上部の貼り合わせについて以下に説明する。流路5,6側を、上述と同様にO2:10cc 100W 30secでDPアッシングして表面を親水化させ減圧中(1/100気圧以下)でカバーガラスa2と貼り合せた。
これにより、本開示のマイクロチップA2の変形例を得た。
【0091】
なお、以下に本開示のマイクロチップA2の変形例を使用する手順を説明する。光学検出装置は、特に限定されず、光検出が下に配置されているものである。
注入:インターカレーター蛍光体を混ぜた検体前処理溶液を無痛針によってPDMSを貫通させチップ内の試薬配置側流路5,6に導入する。流路5,6内は減圧しているため大気圧で押された液が針を伝って流路内に短時間で充填される。
【0092】
増幅反応モニター:水を注入した後は素早く蛍光検出部を備えている加熱蛍光検出装置にチップをセットし核酸増幅反応をモニターする。この装置はマイクロチップの加熱と同時にLEDからなる励起光をマイクロチップ基板の各々ウェル1上方から照射して、反応領域1を透過した蛍光を検出する構成となっている。励起光は反応領域内の反応液中のプローブの蛍光物質等に照射され蛍光を発する。この蛍光は励起光源の光軸上に配置されたマイクロチップ基板の反応領域1の下方に設けられた蛍光検出フォトディテクターで検出・測定される。
なお、本開示のマイクロチップは、マイクロチップの底部から励起光を入射し、ウェル1によって発生した蛍光を上部の蛍光検出器にて検出する装置でも、上述の装置と同様に検出・測定することが可能である。
【0093】
<実施例2>
図7及び8は、本開示に係わるマイクロチップAを光学検出装置に使用した場合の計算モデルに使用する光学検出装置の構成図である。このときのマイクロチップのウェルは、直径2.0mmφ、深さ0.6mm、3mmピッチである。そして、本開示のマイクロチップには、ウェル1の外周部分に、第1外周路2a及び第2外周路2bを設けた。従来のマイクロチップには、外周路(トーラスリング)を設けなかった。
図9に、計算モデルにおける光線100本、1000本、10000本の光の流れを示す図である。
図10に、計算モデルにおいて、光源からチップ底面までの距離を0〜20mmに調整した場合、本技術のマイクロチップ及び従来のマイクロチップでの光の流れを示す図である。
図11に、計算モデルにおける漏れ光の周囲の3PD合計到達量(光源出射光量を100%とした場合)の結果を示したグラフである。
図7〜11に示す通り、本開示のマイクロチップは、通常の光学検出装置において、従来のマイクロチップと比較して、非常に良好な結果が得られている。
すなわち、本発明者らは、全く意外にも、光検出の精度の非常に良好という、際立って顕著な効果を有する本開示のマイクロチップを完成させることができ、これを確認できた。このときの光源と本開示のマイクロチップの入射方向の面との距離は、好ましくは0〜20mm、より好ましくは0〜15mmである。なお、この距離は、通常の光学検出装置で設定されている数値である。
よって、本開示のマイクロチップA(好適には、図2(b)参照)を光学検出装置に搭載した際に、光学検出装置の光検出の調整を特に行わなくとも、光検出に不要な光(漏れ光等)をより良好に遮蔽することが可能となる。
【0094】
なお、本技術は、以下のような構成も取ることができる。
〔1〕複数の基板から構成され、反応の反応場となる反応領域と、該反応領域の外周部分に内部を大気圧に対して負圧とされた外周路を設け、該外周路を貼り合わせる基板表面の少なくとも片側に配設するマイクロチップ。或いは、複数の基板から構成され、反応の反応場となる反応領域の外周部分に、内部を大気圧に対して負圧とされた外周路を、貼り合わせる基板表面の少なくとも片側に配設するマイクロチップ。
〔2〕前記外周路が、反応領域が形成されている基板の両表面に設けられている前記〔1〕記載のマイクロチップ。
〔3〕前記外周路の断面形状が、光検出に不要な光を遮蔽する曲面をもつ形状である前記〔1〕又は〔2〕記載のマイクロチップ。
〔4〕前記外周路が断熱性を有する前記〔1〕〜〔3〕のいずれか記載のマイクロチップ。
〔5〕前記外周路は、切欠部を有する前記〔1〕〜〔4〕のいずれか記載のマイクロチップ。
〔6〕前記外周路のそれぞれを連通流路にて接続し、該連通流路から各外周路に流体を流入させる前記〔1〕〜〔5〕のいずれか記載のマイクロチップ。
〔7〕 核酸増幅反応である前記〔1〕〜〔6〕のいずれか記載のマイクロチップ。
【0095】
〔8〕反応場となる反応領域の外周部分に外周路が基板表面に形成された基板層を、大気圧に対して負圧下で貼り合わせ、前記外周路を気密に封止すること、を含むマイクロチップの製造方法。
〔9〕前記外周路の断面形状を、光検出に不要な光を遮蔽する曲面に形成すること、を含む前記〔8〕記載のマイクロチップの製造方法。
〔10〕前記〔1〕〜〔7〕のいずれか記載のマイクロチップの製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本技術のマイクロチップは、反応場である反応領域の化学的及び生物学的分析等に使用することが可能である。また、光検出装置の光検出の精度を向上させるための調整を行わなくとも、光検出の検出精度が良好である。
【符号の説明】
【0097】
A,A1,A2 マイクロチップ;1 ウェル;2 外周路;2a 第1外周路;2b 第2外周路;20 開口部;29 切欠部;連通流路 8;入出口 80
【技術分野】
【0001】
本開示は、マイクロチップ及びマイクロチップの製造方法に関する。より詳しくは、基板に配設された反応場である反応領域の化学的及び生物学的分析等を行うためのマイクロチップ等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体産業における微細加工技術を応用し、シリコンやガラス製の基板上に化学的及び生物学的分析を行うためのウェルや流路を設けたマイクロチップが開発されている。
このようなマイクロチップを用いた分析システムは、μ−TAS(Micro-Total-Analysis-System)やラボ・オン・チップ、バイオチップ等と称され、化学的及び生物学的分析の高速化や高効率化、集積化又は分析装置の小型化を可能にする技術として注目されている。
【0003】
μ−TASは、少量の試料で分析可能なことや、マイクロチップのディスポーザブルユーズ(使い捨て)が可能なことから、特に貴重な微量試料や多数の検体を扱う生物学的分析への応用が期待されている。
【0004】
μ−TASの応用例として、マイクロチップ上に配設された複数の領域内に物質を導入し、該物質を光学的に検出する光学検出装置がある。このような光学検出装置としては、マイクロチップ上の流路内で複数の物質を電気泳動により分離し、分離された核物質を光学的に検出する電気泳動装置や、マイクロチップ上のウェル内で複数の物質間の反応を進行させ、生成する物質を光学的に検出する反応装置(例えば、リアルタイムPCR装置)等がある。
【0005】
例えば、特許文献1には、検出時のノイズとなる乱反射を抑え、精度の良い分析を行うことができる生体サンプル測定用プレートが開示されている。具体的には、生体サンプル判別用プレートには、流路、液だめ、基板を貫通した空孔が形成されている。カバーは励起光を透過させる材料でできており、空孔以外の部分を覆うように貼り付けられて、生体サンプル判別用プレートとカバーとの間に流路と液だめが形成されている。励起光は流路を照射し、充填された液体試料に含まれる蛍光標識が蛍光を発生させる。ここで、基板を貫通した空孔によって、生体サンプル判別用プレート内に迷光が発生せず、隣接する液だめから蛍光は発生しないという作用が得られている。
【0006】
また、特許文献2には、少なくとも、ポリジメチルシロキサン(PDMS)基板と、該PDMS基板と貼り合わせされる対面基板とからなるマイクロチップの製造方法が提案されている。このマイクロチップの製造方法は、以下の第1〜第3ステップで構成されている。第1ステップで、PDMS基板の貼り合わせ両側の外周縁寄り部分に負圧用管路が連続した環状に形成する。第2ステップで、PDMS基板の負圧用管路内の空気を排気吸引することによりPDMS基板を対面基板に密着させる。第3ステップで、PDMS基板の負圧用管路内の空気を排気吸引することによりPDMS基板を対面基板に真空接着させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−292408号公報
【特許文献2】特開2005−249540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、光検出の検出精度が良好なマイクロチップ及びその製造方法が種々望まれている。
そこで、本開示は、光検出の検出精度が良好なマイクロチップ及びその製造方法を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題解決のため、本開示は、複数の基板から構成され、反応の反応場となる反応領域と、該反応領域の外周部分に内部を大気圧に対して負圧とされた外周路を設け、該外周路を貼り合わせる基板表面の少なくとも片側に配設するマイクロチップを提供する。
従来のマイクロチップでは、前記反応領域に入射する光が散乱し、アドレスしていない隣接の反応領域に漏れ込む光や散乱光等により光検出の検出精度を低下させる不要な光が生じる。しかし、本開示のように前記外周路を配設することにより、光検出の検出精度を低下させる光検出に不要な光を所望の方向に導くこと(例えば、屈折や反射させること)が可能となる。これにより、光検出に不要な光が光検出系に侵入しないように遮蔽することが可能となるので、光検出の精度を良好にすることができる。
【0010】
また、前記外周路の断面形状が、光検出に不要な光を遮蔽する曲面をもつ形状であるのが好適である。曲面を持つことにより、光検出に不要な光を屈折や反射させることが容易となり、所望の方向に光を導くことが容易となる。そして、光検出に不要な光が、ウェルや光検出系に侵入するのを防ぐことが可能となる。
また、前記外周路が断熱性を有するのが好適である。これにより、各反応領域の側壁の外周部分を囲うため、各反応領域からの熱の放出や各反応領域への熱の侵入を防ぐことが可能となる。よって、それぞれの反応領域内の反応温度の温度制御が容易となる。
また、前記外周路のそれぞれを連通流路にて接続し、該連通流路から各外周路に流体(液体、気体)を流入させるのが好適である。流入させる流体を適宜選択することにより、光遮蔽性や断熱性等を向上させることが可能となる。
【0011】
また、前記外周路が、反応領域が形成されている基板の両表面に設けられているのが好適である。両表面に外周路が存在することにより、より光検出に不要な光を遮蔽することが可能となる。また、前記外周路の内部を大気圧に対して負圧とすることで、反応領域を有する基板をそれぞれの対面基板に、より強く吸着させることが可能となる。また、外周路内部を負圧とすると恒久接着等を使用しなくともよいため、マイクロチップの使用後の基板同士の剥離も容易である。
また、前記外周路は、切欠部を有するのが好適である。前記切欠部を設けることで、前記外周路の内部分に配設されている各反応領域に繋がる流路を形成し易くなる。この流路を利用して、反応試薬やサンプル液を各反応領域に短時間で容易に導入させることが可能となる。
【0012】
反応場となる反応領域の外周部分に外周路が基板表面に形成された基板層を、大気圧に対して負圧下で貼り合わせ、前記外周路を気密に封止すること、を含むマイクロチップの製造方法。
前記外周路を設けることにより、基板の貼り合わせが容易に行える。また、マイクロチップ使用後の分別処理や再使用も可能となる。
前記外周路の断面形状を、光検出に不要な光を遮蔽する曲面に形成すること、を含むのが好適である。
【発明の効果】
【0013】
本開示は、光検出の検出精度が良好なマイクロチップ及びその製造方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本開示に係わるマイクロチップAの平面模式図である。
【図2】(a)貼り合わせる基板a1表面の片側に外周路2を設けた本開示に係わるマイクロチップAの断面模式図(図1:P1−P2断面)である。(b)貼り合わせる基板a1表面の両側に外周路2を設けた本開示に係わるマイクロチップAの断面模式図(図1:P1−P2断面)である。なお、励起光は何れの面からでも入射させることは可能である。
【図3】本開示の(a)第一実施形態、(b)第二実施形態、(c)第三実施形態に係わるマイクロチップAの入射光Lの不要な光を遮断することを説明するための概略図である。なお、反応領域を有する基板a1に対面する基板a2,a3は省略している。また、光をウェル1の下方から入射させているもので便宜上説明するが、ウェル1の上方から入射させることも可能である。(a)入射光方向に第1外周路2aを設けた場合。(b)出射方向に第2外周路2bを設けた場合。(c)入射方向及び出射方向の両方に第1外周路2a,第2外周路2bを設けた場合。
【図4】本開示に係わる外周路2の例示の平面模式図である。
【図5】本開示に係わるマイクロチップA2の平面模式図である。
【図6】本開示に係わるマイクロチップA3の平面模式図である。
【図7】本開示に係わるマイクロチップA及び従来のマイクロチップを光学検出装置に使用した場合の計算モデルに使用する光学検出装置の構成図である。
【図8】本開示に係わるマイクロチップA及び従来のマイクロチップを光学検出装置に使用した場合の計算モデルに使用する光学検出装置及びマイクロチップの構成図である。
【図9】計算モデルにおける光線100本、1000本、10000本の光の流れを示す図である。
【図10】計算モデルにおいて、光源からチップ底面までの距離を0〜20mmに調整した場合、本技術のマイクロチップ及び従来のマイクロチップでの光の流れを示す図である。
【図11】計算モデルにおける漏れ光の周囲の3PD合計到達量(光源出射光量を100%とした場合)の結果を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。なお、説明は以下の順序により行う。
1.マイクロチップ
(1)反応領域
(2)外周路
(3)基板
(4)マイクロチップの他の実施形態
2.マイクロチップの製造方法
3.マイクロチップを使用した光検出方法
【0016】
<1.マイクロチップ>
本開示に係わるマイクロチップAの平面模式図を図1に示し、断面模式図を図2及び図3に示す。図2及び3は、図1中P1−P2断面に対応するものであり、マイクロチップAの断面模式の例示の図である。
また、図3(a)〜(c)は、本開示に係わるマイクロチップAの入射光Lの不要な光を遮断することを説明するための概略図である。
なお、本開示にて説明する図面では、説明の便宜上、構成等を簡略化して示していることもある。
【0017】
図1及び2に示すように、本開示のマイクロチップAは、少なくとも2又は3以上の複数の基板から構成されている。
前記マイクロチップAは反応の反応場となる反応領域1(以下、「ウェル1」ともいう)及び該反応領域1ごとの外周部分に外周路2を有する基板a1と、これに貼り合わせる少なくとも1以上の対面基板から構成されている。
また、前記外周部2の内部を大気圧に対して負圧とするのが好適である。また、前記対面基板は、基板a2,基板a3のように2枚でもよいし、1枚でもよい。
本開示のマイクロチップAを用いれば、後述のように、反応領域の化学的及び生物学的分析における光検出の検出精度を向上させることが可能である。
【0018】
(1)反応領域(ウェル)
図1及び2に示すように、ウェル1は、各種反応の反応場となるエリアであり、前記基板a1には、単数又は複数配置されているもの(領域)である。
前記ウェル1の形状は、特に限定されず、例えば、楕円柱状、円柱状、円錐台形状、角柱形状、多面体形状等が挙げられる。また、この内部にテーパが付いていてもよい。また、検出のための光が入出する面は平面とするのが望ましい。
なお、前記ウェル1では、化学的及び生物学的分析を行うための反応が行われる。このため、目的の分析に対応して検出目的物質及びこの検出反応に必要なものを適宜配設してもよい。これらとしては、例えば、生体由来の検出対象物、合成オリゴ(オリゴヌクレオチド、核酸様合成物質等)、蛍光色素等を修飾した合成オリゴ、酵素、緩衝溶液、塩類、ワックス等の固形化剤、抗体、光源、水等の溶媒等が挙げられる。また、PCR法や等温増幅法(LAMP法等)で使用されるdNTP類、色素や他の物質等も適宜配設してもよい。
【0019】
(2)外周路
前記ウェル1ごとの外周部分に内部を大気圧に対して負圧とされた外周路2を、対面基板に貼り合わせる基板a1の表面の少なくとも片側に配設するのが好適である。外周路2内部の負圧により、該基板a1は、対面基板である基板a2及び/又は基板a3と貼り合わさっている状態とすることが可能となる。
本開示の外周路2をウェル1ごとの外周部分に設けることで、光検出に不要な光(漏れ光、散乱光等)を遮蔽することが可能となる。これにより、光検出に不必要な光を、S/N比的に影響しない程度まで減少させることが可能となる。
よって、本開示のマイクロチップを使用すれば、光検出の検出精度が良好となる。また、光学検出装置等の測定装置自体やそれの測定調整ではなく、マイクロチップのような簡便なものにて光検出の検出精度が向上することは、コストや作業効率の点でも有利である。
【0020】
上述の如く、本開示の外周路2は、内部を大気圧に対して負圧としているのが望ましい。外周路2の内部が負圧であるため、光の屈折率が高くなっているので、不必要な光はウェルの外側を通過することになる。外周路2の内部が大気圧であっても負圧であってもPDMS樹脂の屈折率と外周路2内部の屈折率差によってできた界面で光が反射させられる。反応領域となるウェルの直径をはみ出した放射状光束において外周部の不必要な光がチップを透過、もしくはチップ内部を導波して近隣の反応領域(ウェル)、光検出部に漏れこまないように外周路界面で不必要な光を散乱させてウェルに入り込まないようにする。そして、反応領域や光検出系への不要な光の侵入を低減することが可能となる。
また、前記外周路2の内部が負圧とすることにより、ウェル1の外周部分の基板面a1と、その面に接触している対面基板a2及び/又はa3の基板面とを、しっかり減圧吸着させることが可能となっている。このため、各ウェル1を対面基板a2,a3にて密閉させることが可能となっている。各ウェル1の内部を減圧状態とし、このウェル内部にこの減圧を利用してサンプル液を注入しても、前記外周路2の内部の負圧にて基板同士の貼り合わせ状態を維持することが可能である。
【0021】
また、前記外周路2内部を負圧の状態にする際には、この外周路2を有する基板a1と対面基板a2及び/又はa3とを減圧状態での貼り合わせを行うことで可能である。このような基板の貼り合わせを行うことで、前記外周路2内の流体(気体、流体)を同時に排気吸引されているマイクロチップを得ることが可能である。このときのマイクロチップAは貼り合わせ後の大気中では基板a1と対面基板a2,a3とが真空吸着されている構造となっている。
このことにより、使用する基板の種類に拘らず、ポリジメチルシロキサン(PDMS)等の基板を、恒久的接着に依らなくとも、負圧による自己吸着だけでより強い貼り合わせ強度を十分に維持することができる。
また、ウェル1内で加熱反応が進行した際にウェル内部の溶液が加熱されることで、ウェル1内部の内圧が上昇する場合がある。このような際に、前記外周路2内部が負圧であることにて、本開示のマイクロチップAの基板同士の貼り合わせが強く密閉性が高いため、ウェル1からの反応液の液漏れ等が生じにくい。
【0022】
また、本開示の外周路2は、マイクロチップAの各ウェル1の温度(加熱・冷却)制御に関与させることができ、特に断熱性を有する。
前記外周路2内部を負圧状態にすることで、マイクロチップAの加熱や冷却時に、各ウェル1周囲(外周部分)の水平方向(垂直方向)を断熱させやすいので、前記外周路2の内部を負圧にすることは好適である。これにより、ウェル1の内部からの放熱を低減でき、また各ウェル1の周辺からの熱の侵入を低減することとなる。
よって、光学的検出装置の加熱制御部(図示せず)にて反応領域1の反応温度を調整する際でも、反応領域1内の反応温度の温度制御が行い易くなる。これにより、ウェル1ごとの反応温度制御の精度が高くなり、ウェル1ごとの反応条件のバラツキも少なくなる。斯様なことから、本開示のマイクロチップを使用すると、各ウェル1において精度の高い反応を進行させることが可能となるので、光検出の検出精度を高くすることが可能である。
【0023】
前記外周路2は、図2に示すように、基板a1を入射出射方向に貫通するような空孔でなく、未貫通のものである。未貫通とすることで、図2(a)(b)に示すように、前記外周路2の内面に、光を反射や屈折させるための湾曲を設けることも可能となる。また、未貫通とすることで、光遮蔽性に加えて、ウェル1内の断熱性や対面基板a2,a3への吸着性等の良好な効果も得ることが可能となる。
【0024】
図3(a)〜(c)は、本開示に係わるマイクロチップAの入射光Lの光検出に不要な光を遮断することを説明するための概略図である。
なお、図3(a)は、入射光方向に第1外周路2aを設けた場合の本開示の第一実施形態に係わるマイクロチップAである。
また、図3(b)は、出射方向に第2外周路2bを設けた場合の本開示の第二実施形態に係わるマイクロチップAである。
また、図3(c)は、入射方向及び出射方向の両方に第1外周路2a及び第2外周路2bを設けた場合の本開示の第三実施形態に係わるマイクロチップAである。
ここで、基板a1を基準としたときに、光が入射する方向を「入射方向」といい、光が出射する方向を「出射方向」という(図3参照)。この入射方向及び出射方向を、「入射出射方向」といい(例えば、図1のP1−P2の断面の図2参照)、この入射出射方向に対する垂直方向を、「垂直方向」という。
また、入射方向に配設する外周路2を「第1外周路2a」ともいい、出射方向に配設する外周路2を「第2外周路2b」ともいう。
なお、反応領域を有する基板a1に対面する基板a2,a3は省略している。また、光をウェル1の下方から入射させている図3で便宜上説明するが、前記外周路2はウェル1の上方から入射させても同様の効果を得ることが可能である。
【0025】
本開示のマイクロチップAの基板a1に設けられる外周路2は、図2(a)及び図3(a)(b)に示すように、基板a1の少なくとも片側の表面に配設する。このうち、入射光Lの不要な光を効率良く排除できる点で、第1外周路2aとするのが好適である。
【0026】
前記外周路2の入射出射方向での断面形状(例えば、図1のP1−P2の断面)は、内面が湾曲しているものが好適である。内面を湾曲させることで、光検出に不要な光をより多く反射させたり、屈折させることができる(例えば図3参照)。これにより、光検出系にてコンタミネーションしないように、光検出に不要な光(例えば、漏れ光や散乱光等のL2,L3)を遮蔽することが可能となる。
この外周路2の断面形状は、光学検出に不要な光を遮蔽するような曲面をもつ形状が好適である。このような断面形状として、二次曲線的な曲面をもつ形状、さらに放物曲線的な曲面をもつ形状が、好ましい。
そして、外周路2の断面形状を曲面とすることで、上述の如く光遮蔽性がより効率良く行うことが可能である。これにより、隣接するウェルからの不要な光が各光検出系に侵入するのを防ぎ、コンタミネーションが低減できるので、各ウェルの光検出の精度が向上する。
【0027】
前記外周路2の内面には、前記基板a1を対面基板a2及び/又は対面基板a3に吸着させて、これらを貼り合わせるための開口部20が設けられている。この開口部20は入射光方向又は出射方向に向いているのが好ましい。開口部20の面と対面基板の面とが密接するように開口部20が基板に形成されているのが好適である。
【0028】
前記外周路2の高さ(深さ)は、該外周路2が未貫通であるため、ウェル1基板の厚み(入射出射方向)を1としたときに、1未満であればよい。光遮蔽性等の作用効果の点から、好ましくは0.5〜0.1、より好ましくは0.4〜0.2程度である(例えば図3(a)参照)。また、前記外周路2の高さ(深さ:H)を1としたときの開口部20の幅(最大長径:W)は、0.3〜0.7とするのが好ましく、より0.4〜0.6とするのが好ましい。なお、「高さ(深さ)」は、外周路2の「開口部20」から「頂(底)」までである。
また、前記外周路2とウェル1外壁との間隔(垂直方向)は、特に限定されないが、近接するのが望ましい。近接することで、光検出系への不要な光の侵入を低減しやすく、また断熱性や吸着性等の効果も有利に働きやすい。
【0029】
前記外周路2の路は、対面基板と接する基板a1の少なくとも何れか1方の表面に形成される。
前記基板a1に形成される外周路2の路の形状は、ウェル1の外周部分に、略楕円形の環状(好適には略円形環状);3〜20角等の多角形の環状(好適には正多角形環状)等が挙げられる。
前記外周路2の入射出射方向での断面形状を、ウェル1(好適には底面)の中心を回転軸として回転することで形成される路(立体形状)とすることが好適である。
また、前記外周路2の環状の一部に、単数又は複数の切欠部29を配設してもよい。これにより、例えば図5及び6に示すように、切欠部29を通過し、ウェル1に接続する分岐流路6を設けることが可能となる。この分岐流路6にて主流路5からのサンプル液等をウェル1内部に流入させることが可能となる。
【0030】
そして、図3(a)及び(b)に示すように、本開示のマイクロチップAの基板a1の表面に、少なくとも前記第1外周路2a又は第2外周路2bをウェル1の外周部分に配設する。
さらに、図3(c)に示すように、前記第1外周路2a及び第2外周路2bは、組み合わせてウェル1の外周部分に配設することが可能である。前記外周路2が、ウェル1が形成されている基板a1の両表面に設けられているのが、好適である。第1外周路2a及び第2外周路2bを配設することにより、ウェル1の側壁部分を外周路にて囲うことが容易となる。
基板a1の両表面に外周路2が存在することにより、より光検出に不要な光を遮蔽することが可能となる。また、前記外周路2の内部を大気圧に対して負圧とすることで、ウェル1を有する基板a1をそれぞれの対面基板a2,a3に、より強く吸着させることが可能となる。また、外周路2内部を負圧とすると恒久接着等を使用しなくともよいため、マイクロチップの使用後の基板同士の剥離も容易である。また、ウェル1の側壁部分を外周路2によって囲うことが可能となるため、ウェル1内からの熱の放出やウェル1内への周辺ウェルからの熱の侵入を抑制することが可能となる。よって、光遮蔽性、断熱性等の作用効果が発揮し易くなる。
また、垂直方向における第1外周路2a及び第2外周路2bの両者の位置関係は、目的とする光遮蔽性、断熱性等の作用効果に合わせて適宜調整することが可能である。このうち、第1外周路2a及び第2外周路2bを入射出射方向に並列配置するのが好適である(例えば、図2(b)及び図3(c)参照)。
【0031】
以下に、より詳細に本開示の(a)第一実施形態、(b)第二実施形態、(c)第三実施形態に係わるマイクロチップAの入射光Lの不要な光を遮断することを説明する。
図3(a)に示すように、入射光方向に第1外周路2aが配設されている場合、入射光Lの漏れ光や散乱光等のL2は、第1外周路2aの曲面部分にて入射光方向に反射する。また、隣接するウェル(図示せず)からの拡散光Lは、ウェル1の外周路2の曲面部分にて入射光方向に反射する。これにより、光検出に不必要な光とウェル1からの検出光L1との、コンタミネーションが低減する。よって、光検出に不必要な光が、光学検出系に到達するのを防ぎ、第1外周路2aにて遮蔽することが可能である。なお、該光学検出系は、ウェル1からの検出光L1を検出するためのものである。
また、図3(b)に示すように、出射光方向に第2外周路2bが配設されている場合、入射光Lの散乱光やウェル1から漏れ光、隣接するウェル(図示せず)からの拡散光等の光検出に不要な光L2,L3が、ウェル1の外側方向に屈折する。これにより、光検出に不必要な光とウェル1からの検出光L1との、コンタミネーションが低減する。よって、光検出に不必要な光が、光学検出系に到達するのを防ぎ、第2外周路2bにて遮蔽することが可能である。なお、該光学検出系は、ウェル1からの検出光L1を検出するためのものである。
【0032】
また、図3(c)に示すように、入射方向及び出射方向の両方に外周路2a,2bを設けるのが好適である。上述のように光検出に不要な光の反射や屈折等にて、漏れ光や拡散光等の光検出に不必要な光とウェル1からの検出光L1との、コンタミネーションがより低減する。よって、第1外周路2a及び第2外周路2bの両方にて、光検出に不必要な光が、ウェル1からの検出光L1を検出するための光学検出系に到達するのを防ぐことが可能となる。この構成を採用することで、より効率的に遮蔽することが可能である。
【0033】
なお、第1外周路2a及び第2外周路2bの何れか一方の内部を大気圧に対して負圧とすることで、より光遮蔽性が高まるので、好適である。さらに、両方の内部を大気圧に対して負圧とすることで、さらに光遮蔽性が高まるので、より好適である。
また、外周路2内部を負圧とすることで、ウェル1を有する基板a1の2枚の対面基板a2,a3を強く張り合わせることが可能となる。これにより、接着剤や恒久的接着等による基板の接着を行わなくともよく、マイクロチップ使用後分別し、基板洗浄して再使用することも可能である。また、これにより、接着剤等の使用が不可能か困難な対面基板であっても、貼り合わせることが可能となる。
【0034】
また、本開示の外周路2に、光遮断性の材料を含ませてもよい。これにより、光遮断性をより高めることが可能となるので、より検出精度が向上する。なお、該材料の状態は、固体(膜状等)、液体、気体等の何れでもよい。
光遮断性の材料としては、例えば、光を屈折率させるための材料や光を反射させるための材料等が挙げられる。
【0035】
前記光反射材料は、光の反射率が高い材料であればよい。この材料としては、例えば、銀、金、アルミニウム及びロジウム等から選ばれる1種又は2種以上の金属膜材料が挙げられ、このうち銀や銀を主成分とするものが好適である。そして、この材料を用いたイオンスパッタリング法により、外周路2内面に反射膜を形成することができる。前記金属膜の厚さは、特に制限はないが、30〜200nm程度であればよく、金属膜1層当たり30〜70nm程度であればよい。
【0036】
前記光屈折材料としては、特に限定されず、純水の屈折率と同等かそれ以上(より好適には屈折率nD(20℃)1.5〜1.8)の高屈折率液体を使用するのが望ましい。前記光屈折液体としては、例えば、シリコーンオイル、光学オイル(イマージョンオイル)、イオン液体、フォトリソグラフ用高屈折率液体等が挙げられる。これらを1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0037】
前記シリコーンオイルとして、市販品を使用すればよく、屈折率が1.3〜1.6程度の範囲で選択すればよい。例えば、ジメチルシリコーンオイル(屈折率:1.3〜1.4)、メチルフェニルシリコーンオイル(屈折率:1.4〜1.5)、メチルハイドロジェンシリコーンオイル(屈折率:1.3〜1.4)等が挙げられる。
また、ジメチルシリコーンオイルの市販品としてKF96(信越化学工業)、メチルフェニルシリコーンオイルの市販品としてKF50、KF54(信越化学工業)、メチルハイドロジェンシリコーンオイルの市販品としてKF99(信越化学工業)等が挙げられる。
これらを1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0038】
前記イマージョンオイルとして、市販品を使用すればよく、屈折率が1.5〜1.8程度のものが好適である。イマージョンオイルの市販品としては、TypeA、TypeB、TypeNVH、TypeOVH、Type37、Type300、TypeDF、TypeFF(カーギル標準屈折液:モリテックス)等が挙げられる。
ここで、TypeAのオイルはテルフェニルや水素化テルフェニル、ポリブタン、炭化水素などを混合した短焦点観察用の低粘度合成オイルであり、TypeBのオイルは医療機器レンズ用の中粘度合成オイルであり、TypeNVHやTypeOVHは長距離観察用の高粘度合成オイルである。
これらを1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0039】
前記イオン液体としては、特に限定されず、例えば、ジカチオン性イオン液体及びジアニオン性イオン液体が挙げられる。このうちジカチオン性液体が好ましい。
前記ジカチオン性液体としては、脂肪族アンモニウムジカチオン性液体及び芳香族アンモニウムジカチオン性液体等が挙げられる。前記アニオンとしては、例えば、カルボキシラート、スルホナート及びスルファートアニオンが挙げられる。ジカルボン酸ジアニオンの例としては、コハク酸、ノナン二酸及びドデカン二酸が挙げられるが、それらに限定されない。ジイオン種(一般的な架橋基を含むジアニオン及びジカチオン)の他の非限定的な例としては以下のもの(化学式1〜5)が挙げられる。プロトン化3級アミン系(化学式1)、テトラヒドロチオフェニウム系(化学式2)、イミダゾリウム系(化学式3)、ピロリジニウム系(化学式4)、ホスホニウム系(化学式5)。これらのアルキル基部分の単数又は複数の水素原子を、直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜5アルキル基(メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)及びベンゼン環を有するアルキル基(例えばベンジル基等)で置換してもよい。また、n=1〜5が好ましい。
【0040】
【化1】
【0041】
さらに、イミダゾリウム系ジカチオンイオン液体及びピロリジニウム系ジカチオン液体が好適である。さらに、以下の化学式6〜11が好適である。Aは塩を示し、Aとしては、例えば、Br−、Cl−、I−、NTf2−、BF4−、PF6−等が挙げられる。
【0042】
【化2】
【0043】
これらを1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0044】
前記フォトリソグラフ用高屈折率液体としては、水中に分散させたときに、屈折率が1.5以上となるように、体積平均粒径が100nm以下である無機微粒子(A)を1種又は2種以上組み合わせて調整したフォトリソグラフ用高屈折率液体無機粒子が挙げられる。このフォトリソグラフ用高屈折率液体について、例えば特開2007−234682号公報を参照することが可能である。無機粒子の重量%及び体積平均粒径は、JIS R1629−1997ファインセラミックス原料のレーザ回折・散乱法による粒子径分布測定方法に準拠して測定すればよい。
前記フォトリソグラフ用高屈折率液体無機粒子は、粒径100nm以下の範囲に存在する粒子が全体の90重量%以上であるのが好ましい。さらに、前記無機粒子(A)としては、例えば、金属酸化物微粒子、無機酸金属塩微粒子(硫酸塩・炭酸塩・リン酸塩等)、金属ハロゲン化物微粒子、金属窒化物微粒子、金属炭化物微粒子、金属ホウ化物微粒子、金属微粒子及びセラミック微粒子等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。
具体的には、金属酸化物としては、アルミナ、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、三酸化二鉄、酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化クロム、および酸化ケイ素等が挙げられる。無機酸金属塩としては、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、および塩化カリウム等が挙げられる。金属窒化物としては、窒化チタン、窒化アルミニウム、窒化ジルコニウム、窒化クロム、窒化タングステン、および窒化ケイ素等が挙げられる。金属炭化物としては、炭化チタン、炭化ジルコニウム、炭化タングステン、炭化クロム、炭化ニオブ、および炭化ケイ素等が挙げられる。金属ホウ化物としては、ホウ化チタン、ホウ化ジルコニウム、ホウ化タングステン、ホウ化クロム、およびホウ化モリブデン等が挙げられる。金属としては、銀、および銅等が挙げられる。これらの2種以上を併用しても差し支えない。
また、状況に応じ表面処理等の加工が実施されたものでもよい。これらの中で屈折率として2〜3を有するアルミナ、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、三酸化二鉄、酸化アンチモンが好ましい。さらに屈折率と粒径の観点から、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化セリウムが特に好ましい。高屈折率1.5以上であるためには固形分は5重量%以上が好ましい。
これらを1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0045】
前記外周部2に光遮断性の材料を使用する際の一例を以下に挙げるがこれに限定されるものではない。例えば、本開示の外周路2の面(好適には内面)に、光反射材料を付着させること;本開示の外周路2の内部に光屈折材料を注入すること等が挙げられる。
【0046】
また、本開示の外周路2に、断熱性の材料を含ませてもよい。
これにより、断熱性をより高めることが可能となるので、各ウェル1の温度制御の精度が高くなり、より検出精度が向上する。なお、該材料の状態は、固体(膜状等)、液体、気体等の何れでもよい。
前記断熱性材料としては、特に限定されず、ヒートカット塗料に使用されるセラミックビーズ分散液等が挙げられる。このとき、上述の光遮蔽性を低下させないものが望ましい。
【0047】
また、本開示の外周路2には、他の外周路2と連通するための連通流路8を設けてもよい。連通流路8を設けることで、この流路8を経て前記外周路2内部に、光遮断性、断熱性や密着性等の機能を向上させる流体(液体、気体)を流入させることが可能となる。
また、外周路2のさらに外周部分に補助路3を一重に又は多重に設けてもよい。補助路3を用いることにより、対面基板の密着性の向上、内周のウェル1の断熱性の向上等が挙げられる。
【0048】
本開示の外周路2には、切欠部29を設けてもよい。前記切欠部29を設けることで、前記外周路2の内部分に配設されている各ウェル1に繋がる流路(主流路5,分岐流路6等)を形成し易くなることで、好ましい。この流路を利用して、反応試薬やサンプル液を各ウェル1に短時間で容易に導入させることが可能となる。
【0049】
図4は、マイクロチップAに形成される外周路2の例示の平面図である。また、図4は、ウェル1と外周路2との位置関係を示す平面図である。
図4(a)は、外周路21がウェル1の外周部分に略円形状の環状として形成されている場合を示す図である。図4(b)は、外周路22がウェル1の外周部分に四角形状の環状として形成されている場合を示す図である。図4(c)は、外周路23がウェル1の外周部分に多角形状(六角形状)の環状として形成されている場合を示す図である。このうち、略円形状の環状が、光遮断性や断熱性等が良好であるので、好適である。
なお、ウェル1には分岐流路6を連通させてもよく、このとき外周路2に切欠部29を設けてもよい。また、外周路2には連通流路8を、連通させてもよい。
【0050】
図4(d)は、外周路24がウェル1の外周部分に環状として形成され、該外周路24に流体を流入させる連通流路8を設けた場合を示す図である。さらに、その外周路24の外周部分に切欠部29を有するC型の補助路3を設け、該切欠部29は前記連通流路8が通過できるように形成されてる場合も示す図である。そして、連通流路8にて遮光性、断熱性等を有する流体を流すことが可能である。また、補助路3の負圧にて対面基板a2,a3を強く貼り合わせることが可能である。
また、切欠部29及び連通流路8を設けず、補助路3の両端が連通していてもよい。
また、外周路24に、分岐流路6とウェル1とを連通させるために、切欠部29を設けてもよい。
【0051】
図4(e)は、複数の切欠部29を有する外周路25がウェル1の外周部分に形成されている場合を示す図である。図4(f)は、単数の切欠部29を有する外周路26がウェル1の外周部分にC型形状として形成されている場合を示す図である。切欠部29を設けることで、ウェル1にサンプル液等を流入させるための流路を設けることが可能となる。また、切欠部29に加熱制御部のような配線等を通すことも可能である。
【0052】
(3)基板
前記マイクロチップの基板(基板層a1,a2,a3)は、ガラスや各種プラスチック(PP、PC、COP、PMDS等)により形成できる。マイクロチップの材質は、光学検出部から照射される測定光に対して透過性を有し、自家蛍光が少なく、波長分散が小さいため光学誤差が少ない材質とすることが望ましい。
マイクロチップの基板a1へのウェル1、外周路2、各流路の成形は、ガラス製基板のウェットエッチングやドライエッチングによって、またプラスチック製基板のナノインプリントや射出成形、機械加工によって行うことが可能である。
マイクロチップは、ウェル1、外周路2、各流路等を形成した基板a1を、同じ材質又は異なる材質の基板a2,a3で封止することで形成することが可能である。ここで、各流路は、特に限定されず、上述の主流路5、分岐流路6、導入口4、排出口7、連通流路8、入出口80等を含む。
【0053】
(4)本開示のマイクロチップの他の実施形態
以下に、本開示のマイクロチップの他の実施形態を説明する。
図5は、本開示に係わるマイクロチップA2の平面模式図である。
各ウェル11,12,13は、それぞれの分岐流路6を介して1つの主流路5に接続されている。分岐流路6を有するウェル11,12,13ごとの外周部分に、切欠部29を有するC型形状の外周管路261,262,263が配設されている。前記分岐流路6は前記切欠部29を通過するように形成されている。各ウェル11,12,13には、反応試薬が収容されている。
本開示のマイクロチップA2の導入口4にサンプル液を注入することで、各ウェル11,12,13にサンプル液が流入し、反応試薬と混合する。温度制御等を行い、反応を終了させた後又は反応中に、各ウェル内で発生する光成分(例えば蛍光)について、光検出を行う。
このとき、本開示の外周路261,262,263にて、光検出に不要な光を遮蔽することが可能である。また、断熱性が良好である。また、本開示の外周路261,262,263に、切欠部29を設けることで、流路にてサンプル等をウェル内に移送できるので、作業効率性もよい。
なお、反応試薬は、各ウェル11,12,13に収容されていなくともよい。
よって、本開示のマイクロチップA2を用いれば、反応領域の化学的及び生物学的分析における光検出の検出精度を向上させることが可能である。
【0054】
図6には、本開示に係わるマイクロチップA3の平面模式図である。
各ウェル11,12,13は、分岐流路6を介して1つの主流路に接続されている。各分岐流路6を有するウェル11,12,13の外周部分に切欠部29を有するC型形状の外周管路261,262,263が配設されている。前記分岐流路6は前記切欠部29を通過するように形成されている。各外周管路群261,262,263は、それぞれ連通流路81,82,83にて連通し、各外周管路群261,262,263の端部には流体を流入させる入出口80が配設されている。
本開示のマイクロチップA3の導入口4にサンプル液を注入することで、各ウェル11,12,13にサンプル液が流入し、反応試薬と混合する。温度制御等を行い、反応を終了させた後又は反応中に、各ウェル内で発生する光成分(例えば蛍光)について、光検出を行う。
このとき、本開示の外周路261,262,263にて、光検出に不要な光を遮蔽することが可能である。
【0055】
さらに、マイクロチップA3における連通流路81,82,83及びその端部の入出口80を使用することが可能である。光遮断性材料、断熱性材料等を含む流体を入出口80から注入することで、連通流路81,82,83を経てそれぞれの外周路261,262,263に前記流体が流入する。これにより、さらに光遮蔽性及び断熱性等を向上させることが可能となる。
また、本開示の外周路261,262,263に、切欠部29を設けることで、流路にてサンプル等をウェル内に移送できるので、作業効率性もよい。
また、連通流路81,82,83が各群として独立することで、ウェル11,12,13の各ウェル群に応じて、光遮断性、断熱性等を高めることが可能である。また、連通流路81,82,83それぞれをつなぐ連通流路を設けることで、流体を1回のインジェクションにて、外周路261,262,263の各外周路に流入させることが可能となるので作業効率性が向上する。
なお、反応試薬は、各ウェル11,12,13に収容されていなくともよい。
よって、本開示のマイクロチップA3を用いれば、反応領域の化学的及び生物学的分析における光検出の検出精度をより向上させることが可能である。
【0056】
<2.マイクロチップの製造方法>
本開示のマイクロチップの製造方法は、反応場となる反応領域1の外周部分に外周路2が基板a1表面に形成された基板層を、大気圧に対して負圧下で貼り合わせ、前記外周路を気密に封止すること、を含むものである。
反応領域1と外周路2は、何れを先に基板a1表面に形成してもよく、同時に形成してもよい。また、外周路2は、少なくとも何れか1方の基板a1表面に形成すればよい。
このとき、前記外周路の断面形状を、光検出に不要な光を遮蔽する曲面に形成すること、を含むものである。この断面形状として、好適には2次曲線的な曲面、より好適には放物線的な曲面である。また、形成する外周路の(入射出射方向に対する)垂直方向の(断面又は平面)形状は、上述のとおりであるが、例えば図4の例示図が挙げられる。また、このとき各外周路を連通し、流体を移送するための連通流路や入出口を形成してもよい。また、この基板に反応領域に連通する主流路及び分岐流路を形成してもよい。
なお、上述の如くして得られた反応領域及び外周路を有する基板に対面する基板の形成は、上述の如く、エッチングや射出成形等で行うことが可能である。
【0057】
前記反応領域1に反応試薬を入れ、真空乾燥や凍結乾燥等の乾燥にて、反応試薬を固着化した反応領域1を形成してもよい。このとき反応領域1の表面はDPアッシング等にて親水化するのが好適である。また、外周路2、連通流路8、主流路5、分岐路6等の流体が流入や移送可能な箇所は親水化しておくのが好適である。
【0058】
さらに、上述で形成した基板を貼り合わせる際には、大気圧に対して負圧下(例えば、1/30気圧以下)で行ってもよい。これにより、ウェル1、外周路2、各流路等の内部が大気圧に対して負圧となるよう機密に封止される。さらに、基板層同士の貼り合わせは真空下(例えば、1/100気圧以下)で行うのが、強固に貼り合わせるために、好適である。これにより、外周路2内が負圧になっているため、上述の如く、光検出に不要な光を遮蔽しやすくなる。
このとき、外周路2が基板a1表面の1方にのみ形成されている基板a1を使用する場合には、外周路2が基板表面に形成されていない側の基板a1の表面を接着剤等にて、基板a2又は基板a3を貼り合わせればよい。これにより、マイクロチップを形成する。
また、外周路2が基板a1の表面の両方に形成されている場合には、大気圧に対して負圧下にて、基板a2及び基板a3を別々に又は同時に貼り合わせてもよい。また、反応試薬をウェル1に固着化する場合には、固着化前にウェル1と非接触の基板a3を貼り合わせるのが望ましい。このとき、固着化した後にウェル1を密封するため、基板a2を張り合わせてマイクロチップを形成する。
なお、上述で形成した基板の貼り合わせは、公知の接着方法(恒久接着等)にて行ってもよいが、マイクロチップの再使用等の点からは、上述の外周路内の負圧を利用した貼り合わせが好適である。
【0059】
ところで、従来のマイクロチップでは、ウェルの配置やチャネル構造が微細化する傾向にある。そして、従来のマイクロチップでは、ウェル内の反応を光検出するために、透過光学系で光を外部からウェル内に照射すると、光検出の精度が低下することがある。これは、微細化するにつれて、ウェル内をプローブするための透過光、反射光をアドレスしたウェルに照射すると、マイクロチップ内部、周辺環境で複雑に光が散乱する。例えば、ウェルに入射する光が拡散し、アドレスしていない隣接のウェルに漏れ込む光が発生することとなる。この漏れ光が隣接のウェルに流れ込むこととなるので、評価したいウェルの光成分(情報)以外の光(情報)を検出してしまう。このようにして得た光成分の強度が情報として出力されるため、シグナルのコンタミネーションが起きることとなる。このコンタミネーションをゼロにするのは比較的困難であるので、光学検出装置等の調整等にて、そのS/N比を上げることが重要とされていたという問題があった。
【0060】
これに対し、本開示のマイクロチップAは、上述の如く本開示の外周路2をマイクロチップAの外周部分に設けることで、この漏れ光等の光検出に不要な光を遮蔽することが可能となる。これにより、上記の問題を解決することが可能となる。
【0061】
また、従来のマイクロチップは、合成樹脂等の材料からなる基板にチャネルが形成されており、このチャネルの一端には入出力ポートとなるべきウェルが形成されて基板の下面側に不透明又は透明な素材からなる対面基板が接着されている。ここで素材には、例えばガラスや合成樹脂フィルム等が挙げられる。この対面基板の存在により、ウェル及びチャネルの底部が封止される。
ここで、エラストマータイプのシリコン樹脂であるPDMS基板と対面基板とを貼り合わせるマイクロチップ製造方法として、例えば、特許文献2が挙げられる。このPDMSはチャネル等の微細構造を有するマスター(鋳型)に対する良好なモールド転写性、透明性、対薬品性、生体適合性等を有し、マイクロチップの構成素材としては特に優れた特徴を有している。
さらに、PDMS製マイクロチップの製造上の更なる利点は、PDMS基板と対面基板との貼り合わせに、いわゆる恒久接着(パーマネント・ボンディング)が利用できることである。恒久接着とは、ある種の表面改質を行うだけで、接着剤無しでPDMS基板と対面基板とを相互に接着することができる性質のことである。これにより、管路、容器及び/又はポート等の微細構造の良好な封止性を発揮させることができる。PDMS基板の恒久接着では、貼り合わせ面を適宜表面改質した後、両方の基板の貼り合わせ面を密着して重ね合わせ、一定時間放置することで、容易に接着が行えるものである。
【0062】
しかし、実際には、以下のような場合には、必ずしも恒久接着が好ましくないことがあり、また、恒久接着でなくPDMSの有する自己吸着性を利用して対面基板を張り合わせただけで使用することの方が好ましいこともある。
PDMSの有する自己吸着性を利用して対面基板を貼り合わせただけの従来のマイクロチップでは、用途によっては、貼り合わせ強度が不足して注入した液体試薬や検体が微細流路から漏洩するという問題があった。
また、従来のマイクロチップにおいて、減圧吸着を強くするために、マイクロチップの外周付近に環状管路を形成することも考えられるが、チップが大型化してしまうという問題があった。
【0063】
これに対し、本開示のマイクロチップAは、各ウェルの外周部分に負圧の外周路2を設けることにより、貼り合わせ強度を強くすることが可能となる。このため、流体の漏洩がほとんどなく、またチップを大型化する必要もない。さらに、前記外周路2は、第1外周路2a及び第2外周路2bのように、ウェル1が形成されている基板a1の両表面に設けることが可能であるので、対面基板a2,a3を強く貼り合わせることが可能となる。また、前記外周路2の外周にさらに1層又は多層の補助路3を設けることが可能であるので、より強い貼り合わせ強度を得ることが可能である。
【0064】
また、マイクロチップの試薬反応には、反応制御を行うため、おおよそ加熱機構が必要とされ、さらに、マイクロチップの加熱及び冷却機構も必要とされる場合もある。この際のウェルへの熱伝導性は、マイクロチップの均一熱制御が非常に重要である。なぜならば、チップ周囲から放熱していくためチップ中心部とチップ外周部の温度差が顕著化するためであり、斯様な問題があった。チップの直近に加熱部を配置する場合、光学系がおおよそ離れた位置より照射されることがあるが、この際は、上記の漏れ光が増大し、S/N比は悪化するという問題があった。
【0065】
これに対し、本開示のマイクロチップAは、各ウェルの外周部分に負圧の外周路2を設けることにより、ウェル1からの熱の放出や隣接するウェルからの熱の侵入を低減することが可能となる。さらに、前記外周路2は、第1外周路2a及び第2外周路2bのように、ウェル1が形成されている基板a1の両表面に設けることが可能である。この断熱性を有する外周路2a,2bにより、ウェル1の側面部分を出射方向及び入射方向から囲うことが可能となる。これにより、チップ周囲からの放熱するのを防ぐことが可能となる。しかも、前記外周路2の外周にさらに1層又は多層の補助路3を設けることが可能であるので、より断熱効果を高めることが可能である。
本開示のマイクロチップAは、このように簡便に断熱効果を得ることができるので、チップ直近に加熱部を配置する必要がなく、この配置によって生じる光検出の精度の低下を防止することが可能となる。
【0066】
また、従来のマイクロチップは、恒久接着するには、前処理としてPDMS基板に対して適切な表面改質処理を必ず施さなければならない。表面改質処理は、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)装置による酸素プラズマ処理を行うことからなる。従って、このような処理を行うことによりマイクロチップの製造コストが増大する。
これに対して、本開示のマイクロチップAは、この処理(製造工程)を省略することが可能となるので、製造コストを大幅に軽減することが可能である。
【0067】
また、従来のマイクロチップでは、恒久接着等の接着が不可能か又は非常に困難な対面基板を使用する場合がある。
例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)は透明性の高い普及品の樹脂であり、ポリカーボネイト(PPC)は耐熱性に優れ、DNA増幅方法の一つであるPCR等で化学反応に高い温度が必要な場合に有利である。また、シクロオレフィンポリマー(COP)は、各種の試薬に対し高い耐薬品性を有する。
しかしながら、これら樹脂製対面基板とPDMS基板とは、恒久接着を行うことができないという問題がある。
【0068】
また、ポリエチレン(PE)やポリスチレン(PS)は恒久接着が可能であるが、その接着方法は、以下の理由から非常に困難であるとう問題がある。
例えば、これら合成樹脂製の対面基板はガラス等に比べると、一般的に恒久接着のための表面改質処理に対する耐性が低い。しかも、恒久接着が良好に行われる処理強度が小さい上に、許容範囲が極めて狭い。例えば、反応性イオンエッチング(RIE)装置による酸素プラズマ処理を用いた場合、ガラスに対しては処理強度としてRF出力150W、照射時間15秒を超えると、恒久接着が行われ難くなる。一方、ポリエチレン樹脂に対しては僅かに25W、10秒を超えると恒久接着が困難になる。
また、微弱なRF出力で、極短時間のプラズマを安定的に発生させることは難しく、処理強度のバラツキが起こり易いため、合成樹脂製基板とPDMS基板とが安定的に接着させることが難しい。このため処理強度のバラツキが起こりやすいために、合成樹脂製基板とPDMS基板とが再現性良く恒久接着し難い一因であるとも考えられる。
【0069】
これに対し、本開示のマイクロチップは、前記外周路2の負圧により基板同士を強く貼り合わせることが可能となる。よって、PDMS基板と、PMMA、PPC、PE、PSから選ばれる1種又は2種以上の基板とを使用しても、良好に貼り合わせることが可能となる。
【0070】
また、恒久接着している従来のマイクロチップを使用した後に、プラスチックのPDMS基板と無機物であるシリコン基板やガラス基板とを分別して、廃棄処分する場合、手間暇がかかるという問題がある。
【0071】
これに対し、本開示のマイクロチップは、前記外周路2の負圧を利用して基板同士を貼り合わせているので、恒久接着の場合と比較して、剥離させることがはるかに容易であるので、作業効率がよい。
【0072】
恒久接着している従来のマイクロチップでは、基板同士を剥離し難く、剥離しても基板に損傷が生じる可能性が高いので、マイクロチップ使用後に基板を洗浄して再使用することは困難であり、コスト低減が行いにくいという問題がある。
【0073】
これに対し、本開示のマイクロチップは、前記外周路2の負圧を利用して基板同士を貼り合わせているので、恒久接着の場合と比較して、剥離させることがはるかに容易である。しかも、剥離の際に基板を損傷させることもないので、作業効率がよく、コスト低減が行い易い。
剥離することにより、基板内の微細構造部分の洗浄が行い易くなるばかりか、十分な洗浄効果が得られる。洗浄後の基板は、他の基板と貼り合わせて再使用することも可能である。
【0074】
また、従来のマイクロチップにおいて、例えば、ガラス基板に電極や電熱ヒーター、温度センサ等の配線パターンを形成したり、シリコン基板にMESM技術によりマイクロバルブやマイクロポンプ等を形成する場合がある。この制作には、非常なコストがかかるため、1回限りの使用で廃棄することは極めて不経済的である。
【0075】
これに対し、本開示のマイクロチップでは、対面基板ではなく、ウェルを有する基板に前記外周路2を形成している。このため、対面基板に複雑な加工を施したガラス基板やシリコン基板を前記外周路2の負圧にて貼り合わせているので、対面基板を損傷させることなく、剥離することが可能である。剥離後、複雑な加工を施した対面基板等を洗浄して再使用することも可能である。高価な基板を洗浄して再使用することにより、コスト低減を図ることが可能となる。よって、コスト低減を図ることが可能である。
【0076】
本開示のマイクロチップは、後記実施例(図7〜10参照)に示す通り、通常の光学検出装置において、従来のマイクロチップと比較して、非常に良好な結果が得られている。
すなわち、本発明者らは、全く意外にも、光検出の精度の非常に良好という、際立って顕著な効果を有する本開示のマイクロチップを完成させることができ、これを確認できた。このときの光源と本開示のマイクロチップの入射方向の面との距離は、好ましくは0〜20mm、より好ましくは0〜15mmである。なお、この距離は、通常の光学検出装置で設定されている数値である。
よって、本開示のマイクロチップ(好適には、図2(b)参照)を光学検出装置に搭載した際に、光学検出装置の光検出の調整を特に行わなくとも、光検出に不要な光(漏れ光等)をより良好に遮蔽することが可能となる。
【0077】
<光学検出装置>
本開示のマイクロチップは、光学検出装置に搭載して使用することが可能である。この光学検出装置(図示せず)は、各種反応(例えば、核酸増幅反応)を行うことが可能なものが望ましい。例えば、導光板、反射板、照射系(部)、励起フィルタ、蛍光フィルタ及び光検出系(部)を備えるのが望ましい。光の流れを調整する導光部材や反応温度を制御する加熱制御部を配設してもよい。また、光量や光成分等を調整するためや各系(部)を支持するため、ピンホール、各種フィルタ、集光レンズ、支持台を適宜配設してもよい。
また、これら各種動作(例えば、光制御、温度制御、核酸増幅反応、検出制御、検出光量算出やモニタリング等)を制御する制御部(CPU等)が備えられているのが好適である。
【0078】
前記光源系としては、例えば、レーザー光源、白色又は単色の発光ダイオード(LED)、水銀灯、タングステンランプ等が挙げられる。
なお、前記レーザー光源としては、アルゴンイオン(Ar)レーザー、ヘリウム−ネオン(He-Ne)レーザー、ダイ(dye)レーザー、クリプトン(Kr)レーザー等を出射する光源であればよい。該レーザー光源は、1種又は2種以上、自由に組み合わせて用いることができる。
【0079】
前記検出系は、反応領域2の他端(具体的には底面)から出射する光の光量を検出することが可能な機構であればよい。当該検出系には、光学検出器が少なくとも備えられている。
前記光学検出器としては、特に限定されず、例えば、フォトダイオード(PD)アレイ、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサ等のエリア撮像素子、小型光センサ、ラインセンサースキャン、PMT(光電子倍増管)等が挙げられ、これらを適宜組み合わせてもよい。
なお、励起フィルタ及び検出フィルタは、各種反応に対応したものを使用すればよい。市販品を使用すればよい。
【0080】
<核酸増幅反応>
本開示のマイクロチップは、光学的検出を目的とする各種化学反応に使用することが可能であり、例えば、核酸増幅反応用、還元性糖(例えば麦芽糖、果糖、ブドウ糖等)検出用(例えば、ベネジクト試薬等による反応等)に使用することが可能である。
【0081】
本開示において「核酸増幅反応」として、PCR(Polymerase Chain Reaction)法や「等温増幅反応」が挙げられる。この「反応試薬」には、核酸増幅反応において、増幅核酸鎖を得るために反応に必要な物質が含まれている。この「反応に必要な物質」には、核酸増幅反応において増幅核酸鎖を得るために必要な物質である。具体的には、標的核酸鎖に相補的な塩基配列とされたオリゴヌクレオチドプライマー、核酸モノマー(dNTP)、酵素、反応緩衝液(バッファー)溶質などが含まれる。
【0082】
PCR法は、(1)熱変性、(2)アニーリング、(3)伸長反応の3つのステップからなる温度サイクルを繰り返すことによって、鋳型となる核酸鎖の増幅を行うものである。このとき、この反応は前記反応領域1のそれぞれにおいて行われる。
ステップ(1)の熱変性は、鋳型核酸鎖を二本鎖から一本鎖に解離させるためのステップである。熱変性時の反応温度は通常94℃前後とされる。ステップ(2)のアニーリングは、一本鎖に解離した鋳型核酸鎖にオリゴヌクレオチドプライマーを結合させるためのステップである。アニーリング時の反応温度は、通常50〜60℃程度とされる。ステップ(3)の伸長反応は、DNAポリメラーゼによって、オリゴヌクレオチドプライマーが結合した部分を起点として一本鎖部分と相補的なDNAを合成するステップである。伸長反応時の反応温度は、通常72℃前後とされる。
DNA複製反応の際に生成されたds(double-standed)−DNAには、例えばSYBR(登録商標) Green I等の蛍光色素がインターカレートする。インターカレートしたds−DNAに励起光が照射されることで励起して蛍光を発する(例えば、励起光497nm:発光波長520nm)。蛍光フィルタで所望の蛍光成分にし、この蛍光の発光量を前記温度サイクルごとに蛍光検出系で測定し、定量化する。そして、温度サイクル数とこれに対応する蛍光量との相関関係に基づいて遺伝子発現量として初期のcDNA量を求めることもできる。
なお、PCR法については、濁度物質を用いても核酸を定量することが可能である。
【0083】
また、本開示において「核酸等温増幅反応」には、温度サイクルを伴わない各種増幅反応が含まれる。等温増幅反応としては、例えば、LAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)法やSMAP(SMartAmplification Process)法、NASBA(Nucleic Acid Sequence-Based Amplification)法、ICAN(Isothermal and Chimeric primer-initiated Amplification of Nucleic acids)法(登録商標)、TRC(transcription-reverse transcription concerted)法、SDA(strand displacement amplification)法、TMA(transcription-mediated amplification)法、RCA(rolling circle amplification)法等が挙げられる。この他、「核酸増幅反応」には、核酸の増幅を目的とする等温による核酸増幅反応が広く包含されるものとする。また、これらの核酸増幅反応には、リアルタイム(RT)−LAMP法などの核酸鎖の増幅とともに増幅された核酸鎖の定量を伴う反応も包含される。
【0084】
核酸増幅反応の一例として、LAMP法を挙げ、このLAMP法における濁度物質にて核酸を定量する場合について、以下に説明する。このとき、この反応は前記反応領域1のそれぞれにおいて行われる。
一定温度(60〜65℃)になるように設定することで、核酸が増幅されてゆく。尚、このLAMP法では、二本鎖から一本鎖への熱変性が必要なく、この等温条件下、プライマーのアニーリングと核酸伸長とが繰り返り行われる。
この核酸増幅反応の結果、ピロリン酸が生成され、このピロリン酸に金属イオンが結合して不溶性又は難溶性の塩が形成され、この塩が濁度物質となる(測定波長300〜800nm)。この濁度物質に入射光が照射されることで、散乱光となる。蛍光フィルタを透過して、この散乱光の散乱光量をリアルタイムに蛍光検出系で測定し、定量化する。また、透過光量からも定量化することは可能である。
なお、LAMP法については、蛍光物質を用いても核酸を定量することが可能である。
【実施例】
【0085】
以下に、具体的な実施例等を説明するが、本技術はこれに限定されるものではない。
【0086】
<実施例1>
実験材料
・PDMS製の表裏に放物曲線的な曲面を有するリング溝形成し、9ウェルを形成した基板a1を使用した。
・LAMP反応溶液を使用した。
・蛍光色素としてSYBR Green I(SG:Molecular Probes Inc.)を使用した。
【0087】
本開示のマイクロチップA2の製造方法及びこれを使用した試験方法
PDMS樹脂を型に入れて成形した流路5,6付のマイクロウェル1を備えた透明チップa1を作製した。
さらに、流路5,6と試薬を固相化させるウェル1周囲の各々に放物曲線的な曲面を有する形状のC形管路26の溝を基板a1表面に作製し、その裏面にもウェル1周囲に同様に放物曲線的な曲面を有する形状のC形管路26の溝を作製した。
これを以下に使用するPMDS基板a1とした。
【0088】
PMDS基板a1の底部の貼り合わせについて以下に説明する。
PDMS基板a1をO2:10cc 100W 30secでDPアッシングして表面を親水化させ真空中でカバーガラスa3と貼り合せた。ガラスa3側を下にして試薬固相化用のウェル1がある面を表側にひっくり返した。
【0089】
標的(鋳型)核酸のLAMP用プライマーを含むLAMP反応溶液を調整した。
予めマイクロチップウェル1にLAMP反応を起こすためにBST酵素とプライマー溶液0.1μLをウェル1毎に分注し、真空乾燥にて固着させた。BST酵素:原液、LAMP用プライマー:6液混合(FIP、BIP、F3、B3、LF、LB)。微量分注機にてプライマーをウェル1底辺に固着し、凍結乾燥させた。
【0090】
PMDS基板a1の上部の貼り合わせについて以下に説明する。流路5,6側を、上述と同様にO2:10cc 100W 30secでDPアッシングして表面を親水化させ減圧中(1/100気圧以下)でカバーガラスa2と貼り合せた。
これにより、本開示のマイクロチップA2の変形例を得た。
【0091】
なお、以下に本開示のマイクロチップA2の変形例を使用する手順を説明する。光学検出装置は、特に限定されず、光検出が下に配置されているものである。
注入:インターカレーター蛍光体を混ぜた検体前処理溶液を無痛針によってPDMSを貫通させチップ内の試薬配置側流路5,6に導入する。流路5,6内は減圧しているため大気圧で押された液が針を伝って流路内に短時間で充填される。
【0092】
増幅反応モニター:水を注入した後は素早く蛍光検出部を備えている加熱蛍光検出装置にチップをセットし核酸増幅反応をモニターする。この装置はマイクロチップの加熱と同時にLEDからなる励起光をマイクロチップ基板の各々ウェル1上方から照射して、反応領域1を透過した蛍光を検出する構成となっている。励起光は反応領域内の反応液中のプローブの蛍光物質等に照射され蛍光を発する。この蛍光は励起光源の光軸上に配置されたマイクロチップ基板の反応領域1の下方に設けられた蛍光検出フォトディテクターで検出・測定される。
なお、本開示のマイクロチップは、マイクロチップの底部から励起光を入射し、ウェル1によって発生した蛍光を上部の蛍光検出器にて検出する装置でも、上述の装置と同様に検出・測定することが可能である。
【0093】
<実施例2>
図7及び8は、本開示に係わるマイクロチップAを光学検出装置に使用した場合の計算モデルに使用する光学検出装置の構成図である。このときのマイクロチップのウェルは、直径2.0mmφ、深さ0.6mm、3mmピッチである。そして、本開示のマイクロチップには、ウェル1の外周部分に、第1外周路2a及び第2外周路2bを設けた。従来のマイクロチップには、外周路(トーラスリング)を設けなかった。
図9に、計算モデルにおける光線100本、1000本、10000本の光の流れを示す図である。
図10に、計算モデルにおいて、光源からチップ底面までの距離を0〜20mmに調整した場合、本技術のマイクロチップ及び従来のマイクロチップでの光の流れを示す図である。
図11に、計算モデルにおける漏れ光の周囲の3PD合計到達量(光源出射光量を100%とした場合)の結果を示したグラフである。
図7〜11に示す通り、本開示のマイクロチップは、通常の光学検出装置において、従来のマイクロチップと比較して、非常に良好な結果が得られている。
すなわち、本発明者らは、全く意外にも、光検出の精度の非常に良好という、際立って顕著な効果を有する本開示のマイクロチップを完成させることができ、これを確認できた。このときの光源と本開示のマイクロチップの入射方向の面との距離は、好ましくは0〜20mm、より好ましくは0〜15mmである。なお、この距離は、通常の光学検出装置で設定されている数値である。
よって、本開示のマイクロチップA(好適には、図2(b)参照)を光学検出装置に搭載した際に、光学検出装置の光検出の調整を特に行わなくとも、光検出に不要な光(漏れ光等)をより良好に遮蔽することが可能となる。
【0094】
なお、本技術は、以下のような構成も取ることができる。
〔1〕複数の基板から構成され、反応の反応場となる反応領域と、該反応領域の外周部分に内部を大気圧に対して負圧とされた外周路を設け、該外周路を貼り合わせる基板表面の少なくとも片側に配設するマイクロチップ。或いは、複数の基板から構成され、反応の反応場となる反応領域の外周部分に、内部を大気圧に対して負圧とされた外周路を、貼り合わせる基板表面の少なくとも片側に配設するマイクロチップ。
〔2〕前記外周路が、反応領域が形成されている基板の両表面に設けられている前記〔1〕記載のマイクロチップ。
〔3〕前記外周路の断面形状が、光検出に不要な光を遮蔽する曲面をもつ形状である前記〔1〕又は〔2〕記載のマイクロチップ。
〔4〕前記外周路が断熱性を有する前記〔1〕〜〔3〕のいずれか記載のマイクロチップ。
〔5〕前記外周路は、切欠部を有する前記〔1〕〜〔4〕のいずれか記載のマイクロチップ。
〔6〕前記外周路のそれぞれを連通流路にて接続し、該連通流路から各外周路に流体を流入させる前記〔1〕〜〔5〕のいずれか記載のマイクロチップ。
〔7〕 核酸増幅反応である前記〔1〕〜〔6〕のいずれか記載のマイクロチップ。
【0095】
〔8〕反応場となる反応領域の外周部分に外周路が基板表面に形成された基板層を、大気圧に対して負圧下で貼り合わせ、前記外周路を気密に封止すること、を含むマイクロチップの製造方法。
〔9〕前記外周路の断面形状を、光検出に不要な光を遮蔽する曲面に形成すること、を含む前記〔8〕記載のマイクロチップの製造方法。
〔10〕前記〔1〕〜〔7〕のいずれか記載のマイクロチップの製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本技術のマイクロチップは、反応場である反応領域の化学的及び生物学的分析等に使用することが可能である。また、光検出装置の光検出の精度を向上させるための調整を行わなくとも、光検出の検出精度が良好である。
【符号の説明】
【0097】
A,A1,A2 マイクロチップ;1 ウェル;2 外周路;2a 第1外周路;2b 第2外周路;20 開口部;29 切欠部;連通流路 8;入出口 80
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板から構成され、
反応の反応場となる反応領域と、該反応領域の外周部分に内部を大気圧に対して負圧とされた外周路を設け、
該外周路を貼り合わせる基板表面の少なくとも片側に配設するマイクロチップ。
【請求項2】
前記外周路の断面形状が、光検出に不要な光を遮蔽する曲面をもつ形状である請求項1記載のマイクロチップ。
【請求項3】
前記外周路が、反応領域が形成されている基板の両表面に設けられている請求項2記載のマイクロチップ。
【請求項4】
前記外周路が断熱性を有する請求項3記載のマイクロチップ。
【請求項5】
前記外周路は、切欠部を有する請求項3記載のマイクロチップ。
【請求項6】
前記外周路のそれぞれを連通流路にて接続し、該連通流路から各外周路に流体を流入させる請求項3記載のマイクロチップ。
【請求項7】
核酸増幅反応である請求項3記載のマイクロチップ。
【請求項8】
反応場となる反応領域の外周部分に外周路が基板表面に形成された基板層を、大気圧に対して負圧下で貼り合わせ、前記外周路を気密に封止すること、を含むマイクロチップの製造方法。
【請求項9】
前記外周路の断面形状を、光検出に不要な光を遮蔽する曲面に形成すること、を含む請求項8記載のマイクロチップの製造方法。
【請求項1】
複数の基板から構成され、
反応の反応場となる反応領域と、該反応領域の外周部分に内部を大気圧に対して負圧とされた外周路を設け、
該外周路を貼り合わせる基板表面の少なくとも片側に配設するマイクロチップ。
【請求項2】
前記外周路の断面形状が、光検出に不要な光を遮蔽する曲面をもつ形状である請求項1記載のマイクロチップ。
【請求項3】
前記外周路が、反応領域が形成されている基板の両表面に設けられている請求項2記載のマイクロチップ。
【請求項4】
前記外周路が断熱性を有する請求項3記載のマイクロチップ。
【請求項5】
前記外周路は、切欠部を有する請求項3記載のマイクロチップ。
【請求項6】
前記外周路のそれぞれを連通流路にて接続し、該連通流路から各外周路に流体を流入させる請求項3記載のマイクロチップ。
【請求項7】
核酸増幅反応である請求項3記載のマイクロチップ。
【請求項8】
反応場となる反応領域の外周部分に外周路が基板表面に形成された基板層を、大気圧に対して負圧下で貼り合わせ、前記外周路を気密に封止すること、を含むマイクロチップの製造方法。
【請求項9】
前記外周路の断面形状を、光検出に不要な光を遮蔽する曲面に形成すること、を含む請求項8記載のマイクロチップの製造方法。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図1】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図1】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−113679(P2013−113679A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259324(P2011−259324)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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