マイクロニードルアレイとマイクロニードルアレイ製造方法
【課題】 アスペクト比が高い形状、かえしを備えたような形状、弁等の機構を備えた複雑な形状を容易に製造することを可能にするマイクロニードルアレイとマイクロニードルアレイ製造方法を提供すること。
【課題手段】 流路及び薬液流出孔を備えたニードルを半割り状で備えている半割り状の一対のマイクロニードルアレイ要素を張り合わせてなるマイクロニードルアレイ。
又、流路及び薬液流出孔を備えたニードルを半割り状に備えている半割り状の一対のマイクロニードルアレイ要素を用意し、上記一対のマイクロニードルアレイ要素を貼り合わせることによりマイクロニードルアレイを得るようにしたマイクロニードルアレイ製造方法。
【課題手段】 流路及び薬液流出孔を備えたニードルを半割り状で備えている半割り状の一対のマイクロニードルアレイ要素を張り合わせてなるマイクロニードルアレイ。
又、流路及び薬液流出孔を備えたニードルを半割り状に備えている半割り状の一対のマイクロニードルアレイ要素を用意し、上記一対のマイクロニードルアレイ要素を貼り合わせることによりマイクロニードルアレイを得るようにしたマイクロニードルアレイ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、医療や生物現象、創薬等の分野で使用されるマイクロニードルアレイと、そのようなマイクロニードルアレイを製造するマイクロニードルアレイ製造方法に係り、特に、半割り形状のマイクロニードルアレイ要素を貼り合わせた構造とすることにより、マイクロニードルアレイの製造を容易なものとし、例えば、アスペクト比が高い形状のマイクロニードルを備えたもの、横孔やかえしや弁等の機構を有するマイクロニードルを備えたもの、等を容易に製造することができるように工夫したものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のマイクロニードルアレイは、例えば、射出成形法や熱インプリント法等による樹脂成形法によって作成されていた。そのような樹脂成形法を開示するものとして、例えば、特許文献1がある。
【0003】
しかしながら、これらの樹脂成形法によりマイクロニードルアレイを製造する場合には、金型が抜け易い構成でなければならず、その為、殆どのマイクロニードルアレイは、その形状が単純でアスペクト比が小さい円錐や四角錐のような形状をしており、結局、マイクロニードルアレイとしての形状自由度が低くなってしまうという問題があった。
【0004】
この点に関して詳しく説明すると、皮膚に刺さり易くするためにはアスペクト比が高いマイクロニードル(より鋭利な形状をなすマイクロニードル)が必要になる。ところが、そのようなアスペクト比が高い形状のマイクロニードルや微細針穴(薬液流出孔)を持つマイクロニードルの成形は極めて困難であった。
又、それ以外にも、皮膚に刺さったマイクロニードルが皮膚から不用意に抜けないように、マイクロニードルに「かえし」のような突起を設けることが考えられる。ところが、そのようなかえしを設けようとすると、金型の抜けが不可能になってしまう。
同様の理由により弁等の機構を設けることも極めて困難であった。
【0005】
そこで、そのような問題を解決するものとして、例えば、特許文献2に開示されているような製法が提案されている。これは、マイクロニードルアレイの長さ方向を平面上に展開して作成することにより、形状の自由度を高めようとするものである。すなわち、生体適合性材料を型にキャスティングする等して、蚊の針のような「ギザギザ」状態の複雑なニードルを作成し、その後作成したニードルを再加熱しながら、90°折り曲げ、基材に垂直な方向に指向したマイクロニードルアレイとしたものである。
【0006】
ところが、この場合においても、平面上で作成したものを折り曲げているため、薬剤注入のための穴を形成することは困難であり、且つ、複数の針を均等に安定的に折り曲げることは極めて困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−029559号公報
【特許文献2】特開2009−208171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来構成によると次のような問題があった。
まず、従来の何れの製法の場合にも、結局、アスペクト比が高い形状、横孔やかえしや弁等の機構を有するマイクロニードルを備えたマイクロニードルアレイを容易に成形することはできず、その改善が要求されていた。
【0009】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、アスペクト比が高い形状、横孔やかえしや弁等の機構を有するマイクロニードルを備えたマイクロニードルアレイと容易に製造することを可能にするマイクロニードルアレイ製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するべく請求項1に記載された発明によるマイクロニードルアレイは、半割り形状の要素基材及び半割り形状のマイクロニードル要素を備えた半割り形状の一対のマイクロニードルアレイ要素を貼り合わせてなることを特徴とするものである。
又、請求項2によるマイクロニードルアレイは、請求項1記載のマイクロニードルアレイにおいて、上記一対のマイクロニードル要素の先端部は非接着状態となっていることを特徴とするものである。
又、請求項3によるマイクロニードルアレイは、請求項2記載のマイクロニードルアレイにおいて、上記マイクロニードル要素の先端部には対向するマイクロニードル要素側に突出したオフセット部が設けられていることを特徴とするものである。
又、請求項4によるマイクロニードルアレイは、請求項1〜請求項3の何れかに記載のマイクロニードルアレイにおいて、上記マイクロニードル要素にはかえし用凸部が設けられていることを特徴とするものである。
又、請求項5によるマイクロニードルアレイは、請求項1〜請求項4の何れかに記載のマイクロニードルアレイにおいて、上記要素基材には縦流路用凹部及び又は横流路用凹部が形成されていることを特徴とするものである。
又、請求項6によるマイクロニードルアレイは、半割り形状の要素基材及び半割り形状のマイクロニードル要素を備えた半割り形状の一対のマイクロニードルアレイ要素を用意し、上記一対のマイクロニードルアレイ要素を貼り合わせることによりマイクロニードルアレイを得るようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項7によるマイクロニードルアレイは、請求項5記載のマイクロニードルアレイ製造方法において、上記一対のマイクロニードルアレイ要素を貼り合わせる際、夫々の半割り形状のマイクロニードル要素の先端部を非接着状態とするようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項8によるマイクロニードルアレイ製造方法は、請求項6又は請求項7記載のマイクロニードルアレイ製造方法において、上記半割り形状のマイクロニードルアレイ要素は、上型及び下型を使用した射出成型法により成形され、その際、上記マイクロニードルアレイ要素の軸方向が上記上型及び下型の抜き方向に対して直交する方向に指向していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
以上述べたように請求項1記載の発明によるマイクロニードルアレイによると、半割り形状の要素基材及び半割り形状のマイクロニードル要素を備えた半割り形状の一対のマイクロニードルアレイ要素を貼り合わせた構成をなしているので、複雑な形状であってもこれを容易に製造することができ、すなわち、金型の抜けを考慮する必要がないので、例えば、アスペクト比が高い形状のマイクロニードルを備えたもの、横孔やかえしや弁等の機構を有するマイクロニードルを備えたもの、等を容易に製造することができる。
又、請求項2によるマイクロニードルアレイは、請求項1記載のマイクロニードルアレイにおいて、上記一対のマイクロニードル要素の先端部は非接着状態となっているので、その部分を弁として機能させることができる。
又、請求項3によるマイクロニードルアレイは、請求項2記載のマイクロニードルアレイにおいて、上記マイクロニードル要素の先端部には対向するマイクロニードル要素側に突出したオフセット部が設けられている構成になっているので、請求項2で説明した弁としての機能をより確実なものとすることができる。
又、請求項4によるマイクロニードルアレイは、請求項1〜請求項3の何れかに記載のマイクロニードルアレイにおいて、上記マイクロニードル要素にはかえし用凸部が設けられている構成になっているので、既に述べたように、かえしを有するマイクロニードルを備えたマイクロニードルアレイを容易に製造することができる。
又、請求項5によるマイクロニードルアレイは、請求項1〜請求項4の何れかに記載のマイクロニードルアレイにおいて、上記要素基材には縦流路用凹部及び又は横流路用凹部が形成されている構成になっているので、縦流路及び又は横流路を備えたマイクロニードルアレイを容易に製造することができる。
又、請求項6によるマイクロニードルアレイは、半割り形状の要素基材及び半割り形状のマイクロニードル要素を備えた半割り形状の一対のマイクロニードルアレイ要素を用意し、上記一対のマイクロニードルアレイ要素を貼り合わせることによりマイクロニードルアレイを得るようにした構成になっているので、金型の抜けを考慮することなく、例えば、アスペクト比が高い形状のマイクロニードルを備えたもの、横孔やかえしや弁等の機構を有するマイクロニードルを備えたもの、等を容易に製造することができる。
又、請求項7によるマイクロニードルアレイは、請求項5記載のマイクロニードルアレイ製造方法において、上記一対のマイクロニードルアレイ要素を貼り合わせる際、夫々の半割り形状のマイクロニードル要素の先端部を非接着状態とするように構成されているので、弁としての機能を備えたマイクロニードルアレイを容易に製造することができる。
又、請求項8によるマイクロニードルアレイ製造方法によると、請求項6又は請求項7記載のマイクロニードルアレイ製造方法において、上記半割り形状のマイクロニードルアレイ要素は、上型及び下型を使用した射出成型法により成形され、その際、上記マイクロニードルアレイ要素の軸方向が上記上型及び下型の抜き方向に対して直交する方向に指向しているので、既に説明した効果を確実なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本願発明の第1の実施の形態を示す図で、図1(a)はマイクロニードルアレイの全体の構成を示す斜視図、図1(b)はマイクロニードルアレイの底面の構成を示す一部斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示す図で、図2(a)は半割り形状のマイクロニードルアレイ要素の一部平面図、図2(b)は半割り形状のマイクロニードルアレイ要素の一部正面図、図2(c)は半割り形状のマイクロニードルアレイ要素の側面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態を示す図で 半割り形状のマイクロニードルアレイ要素を射出成型法により成形する様子を示す断面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態を示す図で、図4(a)は一対の半割り形状のマイクロニードルアレイ要素を貼り合わせる場合の「オフセット」を説明するための側面図、図4(b)は一対の半割り形状のマイクロニードルアレイ要素を貼り合わせる場合の「非接着領域」を説明するための半割り形状のマイクロニードルアレイ要素の正面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態を示す図で、図5(a)は一対の半割り形状のマイクロニードルアレイ要素を貼り合わせた場合の非接着部の作用を説明するための側面図、図5(b)は一対の半割り形状のマイクロニードルアレイ要素を貼り合わせた場合の非接着部の作用を説明するための側面図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態を示す図で、図6(a)は半割り形状のマイクロニードルアレイ要素の一部平面図、図6(b)は半割り形状のマイクロニードルアレイ要素の一部正面図、図6(c)は半割り形状のマイクロニードルアレイ要素の側面図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態を示す図で、図7(a)はマイクロニードルアレイの一部斜視図、図7(b)はマイクロニードルアレイの底部の構成を示す一部斜視図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態を示す図で、図8(a)はニードル部の横孔を示すマイクロニードルアレイ要素の正面図、図8(b)は一対の半割り形状のマイクロニードルアレイ要素を貼り合わせた状態を示す側面図である。
【図9】本発明の第5の実施の形態を示す図で、図9(a)はニードル部のかえしを示すマイクロニードルアレイ要素の正面図、図9(b)は一対の半割り形状のマイクロニードルアレイ要素を貼り合わせた状態を示す側面図である。
【図10】本発明の第6の実施の形態を示す図で、マイクロニードルアレイの構成を示す斜視図である。
【図11】本発明の第6の実施の形態を示す図で、図11(a)はマイクロニードルアレイの一部の構成を示す斜視図、図11(b)はマイクロニードルアレイの一部の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1乃至図3を参照して本発明の第1の実施の形態を説明する。図1に示すように、本実施の形態によるマイクロニードルアレイ1は、一対のマイクロニードルアレイ要素3、3を貼り合わせた構成になっている。上記マイクロニードルアレイ要素3は、図2にも示すように、半割り形状となっている。
【0014】
上記マイクロニードルアレイ要素3は、半割り形状の要素基材5と、この要素基材5の適所に突出・形成された半割り形状のマイクロニードル要素7とから構成されている。上記マイクロニードル要素7は、図2(b)に示すように、土台部7aと、この土台部7a上に設けられた鋭利な形状のニードル部7bとから構成されている。上記土台部7aは、その横断面形状が半円形状をなしており、又、上記ニードル部7bはその横断面形状が二等辺三角形をなしている。
【0015】
又、上記要素基材5の上記マイクロニードル要素7に対応した位置には、その横断面形状が半円形をなす縦流路用凹部9が形成されている。又、上記縦流路用凹部9に連通するように、上記マイクロニードル要素7側にも、その横断面形状が半円形をなす流出流路用凹部11が形成されている。
但し、上記流出流路用凹部11はマイクロニードル要素7のニードル部7bの先端方向に向かって先細りの状態で設けられていて、且つ、ニードル部7bの先端までには至っていないものである。
【0016】
又、上記要素基材5には位置決め用孔13が形成されている。これは、図1に示すように、一対のマイクロニードルアレイ要素3、3を貼り合わせる場合に、一対のマイクロニードルアレイ要素3、3の位置を正しい位置に規制するためのものである。
【0017】
次に、上記構成をなすマイクロニードルアレイ1の製造方法について説明する。まず、一対の半割り形状のマイクロニードルアレイ要素3、3を製造する。このマイクロニードアレイ要素3は、例えば、図3に示すように、射出成型法により成形される。すなわち、上型4と下型6が対向・配置されている。上型4側には、マイクロニードル要素7を成形するための凹部8、10等が形成されている。一方、下型6側には、縦流路用凹部9や流出流路用凹部11を成形する為の凸部12等が形成成形されている。このような構成の上型4と下型6を対向した状態で密着させ、その間に樹脂を流し込むことにより、所望の形状の上記マイクロニードルアレイ要素3を得ることができる。
【0018】
又、上記射出成型法の実施に際しては、マイクロニードルアレイ要素3の軸方向(図1中縦方向)が図3中紙面に直交する方向に指向しているので、マイクロニードルアレイ要素3の形状、特に、マイクロニードル部7の形状が、例えば、アスペクト比が高い形状(より鋭利な形状)であっても、横孔やかえしや弁等の機構を有する複雑な形状であっても、上型4、下型6の抜けが問題になるようなことはなく、形状の自由度が大幅に向上しているものである。
【0019】
次に、上記一対のマイクロニードルアレイ要素3、3を貼り合わせて、図1に示すような状態のマイクロニードルアレイ1を構成する。その際、上記一対のマイクロニードルアレイ要素3、3の位置決め用孔13に図示しないガイドピンを差し込むことにより、一対のマイクロニードルアレイ要素3、3の位置を正しい位置に規制し、その状態で上記一対のマイクロニードルアレイ要素3、3を貼り合わせるものである。
尚、上記一対のマイクロニードルアレイ要素3、3のニードル部7b、7bの先端部については非接着の状態とする。
【0020】
その結果、図1に示すようなマイクロニードルアレイ1を得ることができる。そして、一対のマイクロニードルアレイ要素3、3の夫々の要素基材5、5によって基材15が構成されると共に、一対のマイクロニードル要素7、7によって複数のマイクロニードル17が構成されることになる。又、一対の縦流路用凹部9、9によって縦流路19が構成され、流出流路11、11によって流出流路21が構成されることになる。又、上記縦流路19内には図示しない薬液が充填されることになる。
【0021】
又、前述したように、一対のマイクロニードルアレイ要素3、3のニードル部7b、7bの先端部については非接着の状態となっている。
そして、例えば、上記マイクロニードル17を図示しない皮膚に差し込んだ状態で充填されている薬液に圧力が作用していない場合には、上記非接着状態のニードル部7b、7bの先端部が開放されることはなく閉じたままである。
これに対して、充填されている薬液に圧力が作用した場合には、上記非接着状態のニードル部7b、7bの先端部が相互に離間する方向に拡開せられて開放されることになり、それによって、内部に充填されている薬液が皮下に流出することになる。
【0022】
以上本実施の形態によると次のような効果を奏することができる。
まず、マイクロニードルアレイ1は、半割り形状のマイクロニードルアレイ要素3、3を貼り付けた構成になっているので、複雑な形状であってもこれを容易に製造することができる。すなわち、半割り形状のマイクロニードルアレイ要素3を、図3に示すような射出成型法により成形するので、その際、マイクロニードルアレイ要素3の形状が、例えば、アスペクト比が高い形状のマイクロニードル17を備えたもの、横孔やかえしや弁等の機構を有するマイクロニードルを備えたもの、等であっても、上型4、下型6の抜けが問題になるようなことはなく、よって、どのような複雑な形状のマイクロニードルアレイ要素3であってもこれを容易に成形することができ、結局、それを貼り合わせたマイクロニードルアレイ1についても、どのような複雑な形状であっても、これを容易に成形することができるものである。
尚、横孔、かえしを有するマイクロニードルを備えたものについては、追って、別の実施の形態として説明する。
又、本実施の形態の場合には、ニードル部15の部分において、一対のマイクロニードルアレイ要素3、3のニードル部7b、7bの先端部については非接着の状態とし、使用時において圧力が作用した場合のみ解放されて薬液が流出する構成になっているので、特に、細かな針穴を成形することなく所望の弁機能を提供することができる。
又、位置決め用孔13内に図示しない位置決め用ピンを差し込むことにより、一対のマイクロニードルアレイ要素3、3を位置決めするようにしているので、
一対のマイクロニードルアレイ要素3、3を正しい位置に位置決めして貼り付けることができる。
【0023】
次に、図3及び図4を参照して本発明の第2の実施の形態を説明する。この実施の形態の場合には、一対のマイクロニードルアレイ要素3、3のニードル部7b、7bの先端部にオフセット部7cを設けているものである。すなわち、一方のニードル部7bのオフセット部7cは、対向する他方のニードル部7b側に所定量突出された状態となっており、同様に、他方のニードル部7bのオフセット部7cは、対向する一方のニードル部7b側に所定量突出された状態となっている。それによって、非接着部におけるバルブ機能をさらに高めようとするものである。つまり、圧力が作用していない状態では、一対のオフセット部7c、7cが相互に弾接された状態にあり、確実に閉じた状態を提供しているものである。又、圧力が作用した場合には、一対のオフセット部7c、7cが相互に離間する方向に移動し開放状態とするものである。
尚、その他の構成は前記第1の実施の形態の場合と同様であり、よって、同一部分には同一符号を付して示しその説明は省略する。
【0024】
上記構成によると、図4(a)に示すように、マイクロニードル17を皮膚21に差し込んだ状態では、一対のニードル部7b、7bのオフセット部7c、7cが弾性力によって強固に閉じた状態にあるので、先端部が不用意に開放されることはなく、充填されている薬液23が流出してしまうようなこともない。
これに対して、例えば、充填されている薬液に圧力を作用させると、一対のニードル部7b、7bのオフセット部7c、7cが弾性力に抗して相互に離間する方向に変形せられ、その結果、開放されて薬液23が流出することになる。
【0025】
このように、前記第1の実施の形態の場合においても、必要なバルブ機能を得ることはできるが、上記オフセット部7c、7cを設けることにより、そのバルブ機能をより確かなものとすることができる。
よって、前記第1の実施の形態の場合と同様の効果を奏することができると共に、より信頼性の高いバルブ機能を提供することができる。
【0026】
次に、図5及び図6を参照して、本発明の第3の実施の形態を説明する。この第3の実施の形態の場合には、マイクロニードルアレイ要素3の要素基材5に横流路用凹部31、33を形成したものである。そして、上記一対のマイクロニードルアレイ要素3、3を貼り合わせる。それによって、図6に示すように、横流路35、37が構成されることになる。
尚、その他の構成は前記第1の実施の形態の場合と同様であり、よって、同一部分には同一符号を付して示しその説明は省略する。
【0027】
よって、前記第1の実施の形態の場合と同様の効果を奏することができることはもとより、横流路用凹部31、33を設けることにより、最終的に得られるマイクロニードルアレイ1において横流路35、37を提供することができるので、それによって、マイクロニードルアレイ1の用途が拡大されるものである。
【0028】
次に、図7を参照して本発明の第4の実施の形態を説明する。この場合には、マイクロニードルアレイ要素3のニードル部7bの先端に横孔用凹部41を形成したものである。そして、そのような構成のマイクロニードルアレイ要素3を貼り合わせることにより、図7(b)に示すように、横孔43が構成されることになり、この横孔43を介して内部に充填されている薬液を皮下に注入するものである。
尚、この場合には、ニードル部7b、7bは全面的に接着されることになる。
【0029】
よって、前記第1の実施の形態の場合と同様の効果を奏することができると共に、従来の製法であれば、型の引抜きの関係で成形できなかったような横孔43についても、これを容易に成形することかできるものである。
【0030】
次に、図8を参照して本発明の第5の実施の形態を説明する。この場合には、マイクロニードルアレイ要素3のニードル部7bにかえし用凸部51を成形したものである。そして、そのような構成のマイクロニードルアレイ要素3、3を貼り合わせることにより、図8(b)に示すように、かえし53が構成されることになり、このかえし53によって、皮膚から不用意に抜けないマイクロニードル15を備えたマイクロニードルアレイ1を得ることができるものである。
【0031】
よって、前記第1の実施の形態の場合と同様の効果を奏することができると共に、従来の製法であれば、型の引抜きの関係で成形できなかったようなかえし53についても、これを容易に成形することかできるものである。
【0032】
次に、図9及び図10を参照して本発明の第6の実施の形態を説明する。この実施の形態の場合には、前記第1の実施の形態で説明したマイクロニードルアレイ1を連結した構成を示すものである。その際、マイクロニードルアレイ1を連結するために、図10(b)に示すように、連結用ピン61、連結用孔63を設ける必要がある。
尚、その他の構成は前記第1の実施の形態の場合と同様であり、よって、同一部分には同一符号を付して示しその説明は省略する。
【0033】
よって、前記第1の実施の形態の場合と同様の効果を奏することができると共に、多数のマイクロニードル15を格子状に備えたマイクロニードルアレイ1を得ることができる。
【0034】
尚、本発明は前記第1〜第6の実施の形態に限定されるものではない。
例えば、図示したマイクロニードルアレイにおけるマイクロニードルの個数、位置、等については、これを特に限定するものではない。
又、前記第1〜第6の実施の形態の場合には、マイクロニードルの形状について四角錐を例に挙げて説明したが、それに限定されるものではなく、例えば、円錐、四角錐以外の多角錐であってもよい。その他様々な形状が想定される。
又、マイクロニードルアレイ要素の成形法についても、射出成形法に限定されるものではなく、他の成形法によって成形するようにしても良い。
又、前記第1〜第6の実施の形態の場合には、マイクニードル部の針穴を先端まで貫通させない状態で形成するようにしたが、貫通させるような場合も想定される。その場合には、対向するニードル部同士を全面接着させることになる。
又、対向するニードル部同士の長さを変えることにより、先端部をより鋭利な状態とすることも考えられる。
又、対向するニードル部同士の材質をそれぞれ異ならせる(例えば、一方のニードル部の材質をより硬い材質とする。)ことにより、より刺さり易い状態とすることも考えられる。
又、前記第1〜第6の実施の形態の場合には、マイクロニードルアレイ要素を射出成型法により成形する場合を例に挙げて説明したが、それ以外の製法でもよい。
その他、図示した形状等に限定されるものではなく、様々な変形が考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、例えば、医療や生物現象、創薬等の分野で使用されるマイクロニードルアレイと、そのようなマイクロニードルアレイを製造するマイクロニードルアレイ製造方法に係り、特に、半割り状のマイクロニードルアレイ要素を貼り合わせた構造とすることにより、マイクロニードルアレイの製造を容易なものとし、例えば、アスペクト比が高い形状のマイクロニードルを備えたもの、横孔やかえしや弁等の機構を有するマイクロニードルを備えたもの、等を容易に製造することができるように工夫したものに関し、例えば、医療用の注射に代わるものとして使用されるマイクロニードルアレイに好適である。
【符号の説明】
【0036】
1 マイクロニードルアレイ
3 マイクロニードルアレイ要素
5 要素基材
7 マイクロニードル要素
7a 台座部
7b ニードル部
7c オフセット部
9 縦流路用凹部
11 流出流路用凹部
13 位置決め用孔
15 基材
17 マイクロニードル
19 縦流路
21 流出流路
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、医療や生物現象、創薬等の分野で使用されるマイクロニードルアレイと、そのようなマイクロニードルアレイを製造するマイクロニードルアレイ製造方法に係り、特に、半割り形状のマイクロニードルアレイ要素を貼り合わせた構造とすることにより、マイクロニードルアレイの製造を容易なものとし、例えば、アスペクト比が高い形状のマイクロニードルを備えたもの、横孔やかえしや弁等の機構を有するマイクロニードルを備えたもの、等を容易に製造することができるように工夫したものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のマイクロニードルアレイは、例えば、射出成形法や熱インプリント法等による樹脂成形法によって作成されていた。そのような樹脂成形法を開示するものとして、例えば、特許文献1がある。
【0003】
しかしながら、これらの樹脂成形法によりマイクロニードルアレイを製造する場合には、金型が抜け易い構成でなければならず、その為、殆どのマイクロニードルアレイは、その形状が単純でアスペクト比が小さい円錐や四角錐のような形状をしており、結局、マイクロニードルアレイとしての形状自由度が低くなってしまうという問題があった。
【0004】
この点に関して詳しく説明すると、皮膚に刺さり易くするためにはアスペクト比が高いマイクロニードル(より鋭利な形状をなすマイクロニードル)が必要になる。ところが、そのようなアスペクト比が高い形状のマイクロニードルや微細針穴(薬液流出孔)を持つマイクロニードルの成形は極めて困難であった。
又、それ以外にも、皮膚に刺さったマイクロニードルが皮膚から不用意に抜けないように、マイクロニードルに「かえし」のような突起を設けることが考えられる。ところが、そのようなかえしを設けようとすると、金型の抜けが不可能になってしまう。
同様の理由により弁等の機構を設けることも極めて困難であった。
【0005】
そこで、そのような問題を解決するものとして、例えば、特許文献2に開示されているような製法が提案されている。これは、マイクロニードルアレイの長さ方向を平面上に展開して作成することにより、形状の自由度を高めようとするものである。すなわち、生体適合性材料を型にキャスティングする等して、蚊の針のような「ギザギザ」状態の複雑なニードルを作成し、その後作成したニードルを再加熱しながら、90°折り曲げ、基材に垂直な方向に指向したマイクロニードルアレイとしたものである。
【0006】
ところが、この場合においても、平面上で作成したものを折り曲げているため、薬剤注入のための穴を形成することは困難であり、且つ、複数の針を均等に安定的に折り曲げることは極めて困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−029559号公報
【特許文献2】特開2009−208171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記従来構成によると次のような問題があった。
まず、従来の何れの製法の場合にも、結局、アスペクト比が高い形状、横孔やかえしや弁等の機構を有するマイクロニードルを備えたマイクロニードルアレイを容易に成形することはできず、その改善が要求されていた。
【0009】
本発明はこのような点に基づいてなされたものでその目的とするところは、アスペクト比が高い形状、横孔やかえしや弁等の機構を有するマイクロニードルを備えたマイクロニードルアレイと容易に製造することを可能にするマイクロニードルアレイ製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するべく請求項1に記載された発明によるマイクロニードルアレイは、半割り形状の要素基材及び半割り形状のマイクロニードル要素を備えた半割り形状の一対のマイクロニードルアレイ要素を貼り合わせてなることを特徴とするものである。
又、請求項2によるマイクロニードルアレイは、請求項1記載のマイクロニードルアレイにおいて、上記一対のマイクロニードル要素の先端部は非接着状態となっていることを特徴とするものである。
又、請求項3によるマイクロニードルアレイは、請求項2記載のマイクロニードルアレイにおいて、上記マイクロニードル要素の先端部には対向するマイクロニードル要素側に突出したオフセット部が設けられていることを特徴とするものである。
又、請求項4によるマイクロニードルアレイは、請求項1〜請求項3の何れかに記載のマイクロニードルアレイにおいて、上記マイクロニードル要素にはかえし用凸部が設けられていることを特徴とするものである。
又、請求項5によるマイクロニードルアレイは、請求項1〜請求項4の何れかに記載のマイクロニードルアレイにおいて、上記要素基材には縦流路用凹部及び又は横流路用凹部が形成されていることを特徴とするものである。
又、請求項6によるマイクロニードルアレイは、半割り形状の要素基材及び半割り形状のマイクロニードル要素を備えた半割り形状の一対のマイクロニードルアレイ要素を用意し、上記一対のマイクロニードルアレイ要素を貼り合わせることによりマイクロニードルアレイを得るようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項7によるマイクロニードルアレイは、請求項5記載のマイクロニードルアレイ製造方法において、上記一対のマイクロニードルアレイ要素を貼り合わせる際、夫々の半割り形状のマイクロニードル要素の先端部を非接着状態とするようにしたことを特徴とするものである。
又、請求項8によるマイクロニードルアレイ製造方法は、請求項6又は請求項7記載のマイクロニードルアレイ製造方法において、上記半割り形状のマイクロニードルアレイ要素は、上型及び下型を使用した射出成型法により成形され、その際、上記マイクロニードルアレイ要素の軸方向が上記上型及び下型の抜き方向に対して直交する方向に指向していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
以上述べたように請求項1記載の発明によるマイクロニードルアレイによると、半割り形状の要素基材及び半割り形状のマイクロニードル要素を備えた半割り形状の一対のマイクロニードルアレイ要素を貼り合わせた構成をなしているので、複雑な形状であってもこれを容易に製造することができ、すなわち、金型の抜けを考慮する必要がないので、例えば、アスペクト比が高い形状のマイクロニードルを備えたもの、横孔やかえしや弁等の機構を有するマイクロニードルを備えたもの、等を容易に製造することができる。
又、請求項2によるマイクロニードルアレイは、請求項1記載のマイクロニードルアレイにおいて、上記一対のマイクロニードル要素の先端部は非接着状態となっているので、その部分を弁として機能させることができる。
又、請求項3によるマイクロニードルアレイは、請求項2記載のマイクロニードルアレイにおいて、上記マイクロニードル要素の先端部には対向するマイクロニードル要素側に突出したオフセット部が設けられている構成になっているので、請求項2で説明した弁としての機能をより確実なものとすることができる。
又、請求項4によるマイクロニードルアレイは、請求項1〜請求項3の何れかに記載のマイクロニードルアレイにおいて、上記マイクロニードル要素にはかえし用凸部が設けられている構成になっているので、既に述べたように、かえしを有するマイクロニードルを備えたマイクロニードルアレイを容易に製造することができる。
又、請求項5によるマイクロニードルアレイは、請求項1〜請求項4の何れかに記載のマイクロニードルアレイにおいて、上記要素基材には縦流路用凹部及び又は横流路用凹部が形成されている構成になっているので、縦流路及び又は横流路を備えたマイクロニードルアレイを容易に製造することができる。
又、請求項6によるマイクロニードルアレイは、半割り形状の要素基材及び半割り形状のマイクロニードル要素を備えた半割り形状の一対のマイクロニードルアレイ要素を用意し、上記一対のマイクロニードルアレイ要素を貼り合わせることによりマイクロニードルアレイを得るようにした構成になっているので、金型の抜けを考慮することなく、例えば、アスペクト比が高い形状のマイクロニードルを備えたもの、横孔やかえしや弁等の機構を有するマイクロニードルを備えたもの、等を容易に製造することができる。
又、請求項7によるマイクロニードルアレイは、請求項5記載のマイクロニードルアレイ製造方法において、上記一対のマイクロニードルアレイ要素を貼り合わせる際、夫々の半割り形状のマイクロニードル要素の先端部を非接着状態とするように構成されているので、弁としての機能を備えたマイクロニードルアレイを容易に製造することができる。
又、請求項8によるマイクロニードルアレイ製造方法によると、請求項6又は請求項7記載のマイクロニードルアレイ製造方法において、上記半割り形状のマイクロニードルアレイ要素は、上型及び下型を使用した射出成型法により成形され、その際、上記マイクロニードルアレイ要素の軸方向が上記上型及び下型の抜き方向に対して直交する方向に指向しているので、既に説明した効果を確実なものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本願発明の第1の実施の形態を示す図で、図1(a)はマイクロニードルアレイの全体の構成を示す斜視図、図1(b)はマイクロニードルアレイの底面の構成を示す一部斜視図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態を示す図で、図2(a)は半割り形状のマイクロニードルアレイ要素の一部平面図、図2(b)は半割り形状のマイクロニードルアレイ要素の一部正面図、図2(c)は半割り形状のマイクロニードルアレイ要素の側面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態を示す図で 半割り形状のマイクロニードルアレイ要素を射出成型法により成形する様子を示す断面図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態を示す図で、図4(a)は一対の半割り形状のマイクロニードルアレイ要素を貼り合わせる場合の「オフセット」を説明するための側面図、図4(b)は一対の半割り形状のマイクロニードルアレイ要素を貼り合わせる場合の「非接着領域」を説明するための半割り形状のマイクロニードルアレイ要素の正面図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態を示す図で、図5(a)は一対の半割り形状のマイクロニードルアレイ要素を貼り合わせた場合の非接着部の作用を説明するための側面図、図5(b)は一対の半割り形状のマイクロニードルアレイ要素を貼り合わせた場合の非接着部の作用を説明するための側面図である。
【図6】本発明の第3の実施の形態を示す図で、図6(a)は半割り形状のマイクロニードルアレイ要素の一部平面図、図6(b)は半割り形状のマイクロニードルアレイ要素の一部正面図、図6(c)は半割り形状のマイクロニードルアレイ要素の側面図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態を示す図で、図7(a)はマイクロニードルアレイの一部斜視図、図7(b)はマイクロニードルアレイの底部の構成を示す一部斜視図である。
【図8】本発明の第4の実施の形態を示す図で、図8(a)はニードル部の横孔を示すマイクロニードルアレイ要素の正面図、図8(b)は一対の半割り形状のマイクロニードルアレイ要素を貼り合わせた状態を示す側面図である。
【図9】本発明の第5の実施の形態を示す図で、図9(a)はニードル部のかえしを示すマイクロニードルアレイ要素の正面図、図9(b)は一対の半割り形状のマイクロニードルアレイ要素を貼り合わせた状態を示す側面図である。
【図10】本発明の第6の実施の形態を示す図で、マイクロニードルアレイの構成を示す斜視図である。
【図11】本発明の第6の実施の形態を示す図で、図11(a)はマイクロニードルアレイの一部の構成を示す斜視図、図11(b)はマイクロニードルアレイの一部の構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図1乃至図3を参照して本発明の第1の実施の形態を説明する。図1に示すように、本実施の形態によるマイクロニードルアレイ1は、一対のマイクロニードルアレイ要素3、3を貼り合わせた構成になっている。上記マイクロニードルアレイ要素3は、図2にも示すように、半割り形状となっている。
【0014】
上記マイクロニードルアレイ要素3は、半割り形状の要素基材5と、この要素基材5の適所に突出・形成された半割り形状のマイクロニードル要素7とから構成されている。上記マイクロニードル要素7は、図2(b)に示すように、土台部7aと、この土台部7a上に設けられた鋭利な形状のニードル部7bとから構成されている。上記土台部7aは、その横断面形状が半円形状をなしており、又、上記ニードル部7bはその横断面形状が二等辺三角形をなしている。
【0015】
又、上記要素基材5の上記マイクロニードル要素7に対応した位置には、その横断面形状が半円形をなす縦流路用凹部9が形成されている。又、上記縦流路用凹部9に連通するように、上記マイクロニードル要素7側にも、その横断面形状が半円形をなす流出流路用凹部11が形成されている。
但し、上記流出流路用凹部11はマイクロニードル要素7のニードル部7bの先端方向に向かって先細りの状態で設けられていて、且つ、ニードル部7bの先端までには至っていないものである。
【0016】
又、上記要素基材5には位置決め用孔13が形成されている。これは、図1に示すように、一対のマイクロニードルアレイ要素3、3を貼り合わせる場合に、一対のマイクロニードルアレイ要素3、3の位置を正しい位置に規制するためのものである。
【0017】
次に、上記構成をなすマイクロニードルアレイ1の製造方法について説明する。まず、一対の半割り形状のマイクロニードルアレイ要素3、3を製造する。このマイクロニードアレイ要素3は、例えば、図3に示すように、射出成型法により成形される。すなわち、上型4と下型6が対向・配置されている。上型4側には、マイクロニードル要素7を成形するための凹部8、10等が形成されている。一方、下型6側には、縦流路用凹部9や流出流路用凹部11を成形する為の凸部12等が形成成形されている。このような構成の上型4と下型6を対向した状態で密着させ、その間に樹脂を流し込むことにより、所望の形状の上記マイクロニードルアレイ要素3を得ることができる。
【0018】
又、上記射出成型法の実施に際しては、マイクロニードルアレイ要素3の軸方向(図1中縦方向)が図3中紙面に直交する方向に指向しているので、マイクロニードルアレイ要素3の形状、特に、マイクロニードル部7の形状が、例えば、アスペクト比が高い形状(より鋭利な形状)であっても、横孔やかえしや弁等の機構を有する複雑な形状であっても、上型4、下型6の抜けが問題になるようなことはなく、形状の自由度が大幅に向上しているものである。
【0019】
次に、上記一対のマイクロニードルアレイ要素3、3を貼り合わせて、図1に示すような状態のマイクロニードルアレイ1を構成する。その際、上記一対のマイクロニードルアレイ要素3、3の位置決め用孔13に図示しないガイドピンを差し込むことにより、一対のマイクロニードルアレイ要素3、3の位置を正しい位置に規制し、その状態で上記一対のマイクロニードルアレイ要素3、3を貼り合わせるものである。
尚、上記一対のマイクロニードルアレイ要素3、3のニードル部7b、7bの先端部については非接着の状態とする。
【0020】
その結果、図1に示すようなマイクロニードルアレイ1を得ることができる。そして、一対のマイクロニードルアレイ要素3、3の夫々の要素基材5、5によって基材15が構成されると共に、一対のマイクロニードル要素7、7によって複数のマイクロニードル17が構成されることになる。又、一対の縦流路用凹部9、9によって縦流路19が構成され、流出流路11、11によって流出流路21が構成されることになる。又、上記縦流路19内には図示しない薬液が充填されることになる。
【0021】
又、前述したように、一対のマイクロニードルアレイ要素3、3のニードル部7b、7bの先端部については非接着の状態となっている。
そして、例えば、上記マイクロニードル17を図示しない皮膚に差し込んだ状態で充填されている薬液に圧力が作用していない場合には、上記非接着状態のニードル部7b、7bの先端部が開放されることはなく閉じたままである。
これに対して、充填されている薬液に圧力が作用した場合には、上記非接着状態のニードル部7b、7bの先端部が相互に離間する方向に拡開せられて開放されることになり、それによって、内部に充填されている薬液が皮下に流出することになる。
【0022】
以上本実施の形態によると次のような効果を奏することができる。
まず、マイクロニードルアレイ1は、半割り形状のマイクロニードルアレイ要素3、3を貼り付けた構成になっているので、複雑な形状であってもこれを容易に製造することができる。すなわち、半割り形状のマイクロニードルアレイ要素3を、図3に示すような射出成型法により成形するので、その際、マイクロニードルアレイ要素3の形状が、例えば、アスペクト比が高い形状のマイクロニードル17を備えたもの、横孔やかえしや弁等の機構を有するマイクロニードルを備えたもの、等であっても、上型4、下型6の抜けが問題になるようなことはなく、よって、どのような複雑な形状のマイクロニードルアレイ要素3であってもこれを容易に成形することができ、結局、それを貼り合わせたマイクロニードルアレイ1についても、どのような複雑な形状であっても、これを容易に成形することができるものである。
尚、横孔、かえしを有するマイクロニードルを備えたものについては、追って、別の実施の形態として説明する。
又、本実施の形態の場合には、ニードル部15の部分において、一対のマイクロニードルアレイ要素3、3のニードル部7b、7bの先端部については非接着の状態とし、使用時において圧力が作用した場合のみ解放されて薬液が流出する構成になっているので、特に、細かな針穴を成形することなく所望の弁機能を提供することができる。
又、位置決め用孔13内に図示しない位置決め用ピンを差し込むことにより、一対のマイクロニードルアレイ要素3、3を位置決めするようにしているので、
一対のマイクロニードルアレイ要素3、3を正しい位置に位置決めして貼り付けることができる。
【0023】
次に、図3及び図4を参照して本発明の第2の実施の形態を説明する。この実施の形態の場合には、一対のマイクロニードルアレイ要素3、3のニードル部7b、7bの先端部にオフセット部7cを設けているものである。すなわち、一方のニードル部7bのオフセット部7cは、対向する他方のニードル部7b側に所定量突出された状態となっており、同様に、他方のニードル部7bのオフセット部7cは、対向する一方のニードル部7b側に所定量突出された状態となっている。それによって、非接着部におけるバルブ機能をさらに高めようとするものである。つまり、圧力が作用していない状態では、一対のオフセット部7c、7cが相互に弾接された状態にあり、確実に閉じた状態を提供しているものである。又、圧力が作用した場合には、一対のオフセット部7c、7cが相互に離間する方向に移動し開放状態とするものである。
尚、その他の構成は前記第1の実施の形態の場合と同様であり、よって、同一部分には同一符号を付して示しその説明は省略する。
【0024】
上記構成によると、図4(a)に示すように、マイクロニードル17を皮膚21に差し込んだ状態では、一対のニードル部7b、7bのオフセット部7c、7cが弾性力によって強固に閉じた状態にあるので、先端部が不用意に開放されることはなく、充填されている薬液23が流出してしまうようなこともない。
これに対して、例えば、充填されている薬液に圧力を作用させると、一対のニードル部7b、7bのオフセット部7c、7cが弾性力に抗して相互に離間する方向に変形せられ、その結果、開放されて薬液23が流出することになる。
【0025】
このように、前記第1の実施の形態の場合においても、必要なバルブ機能を得ることはできるが、上記オフセット部7c、7cを設けることにより、そのバルブ機能をより確かなものとすることができる。
よって、前記第1の実施の形態の場合と同様の効果を奏することができると共に、より信頼性の高いバルブ機能を提供することができる。
【0026】
次に、図5及び図6を参照して、本発明の第3の実施の形態を説明する。この第3の実施の形態の場合には、マイクロニードルアレイ要素3の要素基材5に横流路用凹部31、33を形成したものである。そして、上記一対のマイクロニードルアレイ要素3、3を貼り合わせる。それによって、図6に示すように、横流路35、37が構成されることになる。
尚、その他の構成は前記第1の実施の形態の場合と同様であり、よって、同一部分には同一符号を付して示しその説明は省略する。
【0027】
よって、前記第1の実施の形態の場合と同様の効果を奏することができることはもとより、横流路用凹部31、33を設けることにより、最終的に得られるマイクロニードルアレイ1において横流路35、37を提供することができるので、それによって、マイクロニードルアレイ1の用途が拡大されるものである。
【0028】
次に、図7を参照して本発明の第4の実施の形態を説明する。この場合には、マイクロニードルアレイ要素3のニードル部7bの先端に横孔用凹部41を形成したものである。そして、そのような構成のマイクロニードルアレイ要素3を貼り合わせることにより、図7(b)に示すように、横孔43が構成されることになり、この横孔43を介して内部に充填されている薬液を皮下に注入するものである。
尚、この場合には、ニードル部7b、7bは全面的に接着されることになる。
【0029】
よって、前記第1の実施の形態の場合と同様の効果を奏することができると共に、従来の製法であれば、型の引抜きの関係で成形できなかったような横孔43についても、これを容易に成形することかできるものである。
【0030】
次に、図8を参照して本発明の第5の実施の形態を説明する。この場合には、マイクロニードルアレイ要素3のニードル部7bにかえし用凸部51を成形したものである。そして、そのような構成のマイクロニードルアレイ要素3、3を貼り合わせることにより、図8(b)に示すように、かえし53が構成されることになり、このかえし53によって、皮膚から不用意に抜けないマイクロニードル15を備えたマイクロニードルアレイ1を得ることができるものである。
【0031】
よって、前記第1の実施の形態の場合と同様の効果を奏することができると共に、従来の製法であれば、型の引抜きの関係で成形できなかったようなかえし53についても、これを容易に成形することかできるものである。
【0032】
次に、図9及び図10を参照して本発明の第6の実施の形態を説明する。この実施の形態の場合には、前記第1の実施の形態で説明したマイクロニードルアレイ1を連結した構成を示すものである。その際、マイクロニードルアレイ1を連結するために、図10(b)に示すように、連結用ピン61、連結用孔63を設ける必要がある。
尚、その他の構成は前記第1の実施の形態の場合と同様であり、よって、同一部分には同一符号を付して示しその説明は省略する。
【0033】
よって、前記第1の実施の形態の場合と同様の効果を奏することができると共に、多数のマイクロニードル15を格子状に備えたマイクロニードルアレイ1を得ることができる。
【0034】
尚、本発明は前記第1〜第6の実施の形態に限定されるものではない。
例えば、図示したマイクロニードルアレイにおけるマイクロニードルの個数、位置、等については、これを特に限定するものではない。
又、前記第1〜第6の実施の形態の場合には、マイクロニードルの形状について四角錐を例に挙げて説明したが、それに限定されるものではなく、例えば、円錐、四角錐以外の多角錐であってもよい。その他様々な形状が想定される。
又、マイクロニードルアレイ要素の成形法についても、射出成形法に限定されるものではなく、他の成形法によって成形するようにしても良い。
又、前記第1〜第6の実施の形態の場合には、マイクニードル部の針穴を先端まで貫通させない状態で形成するようにしたが、貫通させるような場合も想定される。その場合には、対向するニードル部同士を全面接着させることになる。
又、対向するニードル部同士の長さを変えることにより、先端部をより鋭利な状態とすることも考えられる。
又、対向するニードル部同士の材質をそれぞれ異ならせる(例えば、一方のニードル部の材質をより硬い材質とする。)ことにより、より刺さり易い状態とすることも考えられる。
又、前記第1〜第6の実施の形態の場合には、マイクロニードルアレイ要素を射出成型法により成形する場合を例に挙げて説明したが、それ以外の製法でもよい。
その他、図示した形状等に限定されるものではなく、様々な変形が考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、例えば、医療や生物現象、創薬等の分野で使用されるマイクロニードルアレイと、そのようなマイクロニードルアレイを製造するマイクロニードルアレイ製造方法に係り、特に、半割り状のマイクロニードルアレイ要素を貼り合わせた構造とすることにより、マイクロニードルアレイの製造を容易なものとし、例えば、アスペクト比が高い形状のマイクロニードルを備えたもの、横孔やかえしや弁等の機構を有するマイクロニードルを備えたもの、等を容易に製造することができるように工夫したものに関し、例えば、医療用の注射に代わるものとして使用されるマイクロニードルアレイに好適である。
【符号の説明】
【0036】
1 マイクロニードルアレイ
3 マイクロニードルアレイ要素
5 要素基材
7 マイクロニードル要素
7a 台座部
7b ニードル部
7c オフセット部
9 縦流路用凹部
11 流出流路用凹部
13 位置決め用孔
15 基材
17 マイクロニードル
19 縦流路
21 流出流路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半割り形状の要素基材及び半割り形状のマイクロニードル要素を備えた半割り形状の一対のマイクロニードルアレイ要素を貼り合わせてなることを特徴とするマイクロニードルアレイ。
【請求項2】
請求項1記載のマイクロニードルアレイにおいて、
上記一対のマイクロニードル要素の先端部は非接着状態となっていることを特徴とするマイクロニードルアレイ。
【請求項3】
請求項2記載のマイクロニードルアレイにおいて、
上記マイクロニードル要素の先端部には対向するマイクロニードル要素側に突出したオフセット部が設けられていることを特徴とするマイクロニードルアレイ。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れかに記載のマイクロニードルアレイにおいて、
上記マイクロニードル要素にはかえし用凸部が設けられていることを特徴とするマイクロニードルアレイ。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れかに記載のマイクロニードルアレイにおいて、
上記要素基材には縦流路用凹部及び又は横流路用凹部が形成されていることを特徴とするマイクロニードルアレイ。
【請求項6】
半割り形状の要素基材及び半割り形状のマイクロニードル要素を備えた半割り形状の一対のマイクロニードルアレイ要素を用意し、
上記一対のマイクロニードルアレイ要素を貼り合わせることによりマイクロニードルアレイを得るようにしたことを特徴とするマイクロニードルアレイ製造方法。
【請求項7】
請求項5記載のマイクロニードルアレイ製造方法において、
上記一対のマイクロニードルアレイ要素を貼り合わせる際、夫々の半割り形状のマイクロニードル要素の先端部を非接着状態とするようにしたことを特徴とするマイクロニードルアレイ製造方法。
【請求項8】
請求項6又は請求項7記載のマイクロニードルアレイ製造方法において、
上記半割り形状のマイクロニードルアレイ要素は、上型及び下型を使用した射出成型法により成形され、その際、上記マイクロニードルアレイ要素の軸方向が上記上型及び下型の抜き方向に対して直交する方向に指向さていることを特徴とするマイクロニードルアレイ製造方法。
【請求項1】
半割り形状の要素基材及び半割り形状のマイクロニードル要素を備えた半割り形状の一対のマイクロニードルアレイ要素を貼り合わせてなることを特徴とするマイクロニードルアレイ。
【請求項2】
請求項1記載のマイクロニードルアレイにおいて、
上記一対のマイクロニードル要素の先端部は非接着状態となっていることを特徴とするマイクロニードルアレイ。
【請求項3】
請求項2記載のマイクロニードルアレイにおいて、
上記マイクロニードル要素の先端部には対向するマイクロニードル要素側に突出したオフセット部が設けられていることを特徴とするマイクロニードルアレイ。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れかに記載のマイクロニードルアレイにおいて、
上記マイクロニードル要素にはかえし用凸部が設けられていることを特徴とするマイクロニードルアレイ。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れかに記載のマイクロニードルアレイにおいて、
上記要素基材には縦流路用凹部及び又は横流路用凹部が形成されていることを特徴とするマイクロニードルアレイ。
【請求項6】
半割り形状の要素基材及び半割り形状のマイクロニードル要素を備えた半割り形状の一対のマイクロニードルアレイ要素を用意し、
上記一対のマイクロニードルアレイ要素を貼り合わせることによりマイクロニードルアレイを得るようにしたことを特徴とするマイクロニードルアレイ製造方法。
【請求項7】
請求項5記載のマイクロニードルアレイ製造方法において、
上記一対のマイクロニードルアレイ要素を貼り合わせる際、夫々の半割り形状のマイクロニードル要素の先端部を非接着状態とするようにしたことを特徴とするマイクロニードルアレイ製造方法。
【請求項8】
請求項6又は請求項7記載のマイクロニードルアレイ製造方法において、
上記半割り形状のマイクロニードルアレイ要素は、上型及び下型を使用した射出成型法により成形され、その際、上記マイクロニードルアレイ要素の軸方向が上記上型及び下型の抜き方向に対して直交する方向に指向さていることを特徴とするマイクロニードルアレイ製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−10735(P2012−10735A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−147305(P2010−147305)
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(391008537)ASTI株式会社 (73)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月29日(2010.6.29)
【出願人】(391008537)ASTI株式会社 (73)
【Fターム(参考)】
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