説明

マイクロバブル水処理装置を利用した消臭装置及び方法

【課題】オゾン微細気泡を用いて、被処理水を浄化するとともに、排気される低濃度のオゾンを利用し、目的の部屋を脱臭させるマイクロバブル水処理装置を利用した消臭装置を提供する。
【解決手段】オゾン発生装置3により発生したオゾンガスを、高圧ポンプ5の吸込み側に注入し、微細な孔径をもつノズル微細気泡生成装置6を流すことで、ノズル下流側にオゾン微細気泡を発生させ、水処理槽1内部にて被処理水を浄化させ、水処理槽1の上部に生じた低濃度の未反応オゾンと、外部に設置したファン8により吸込んだ外気とを混合し、配管7を通して悪臭を除去したい部屋10に吹き込み、排オゾンガス放出部11を通して室内臭気を脱臭する。このとき、オゾン濃度計12a,12bからの信号を元に、ファンの風量を調節し、部屋に吹き込むオゾンガス濃度を調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理場,高速道路のサービスエリア,し尿処理場などで下水を処理する場合に発生する臭気を、マイクロバブル水処理装置から発生する低濃度の排オゾンガスによって除去するマイクロバブル水処理装置を利用した消臭装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾンを用いた液体処理方法は、〔特許文献1〕に記載のように、被処理水中に散気管を用いてオゾンを注入して、被処理水が含む還元性物質により消費するものがある。この従来の技術では、オゾン反応設備で注入されたオゾンのうち、被処理水中に溶解することなく水面に達した気泡中のオゾンは気中に飛散するため、排オゾン処理装置を設けて分解している。
【0003】
又、〔非特許文献1〕には、オゾンによる脱臭原理として、臭気物質を構成する硫化物や有機物などを分解すると記載されている。オゾンによる脱臭方法は、臭気ガスを脱臭装置内部に取り込んでオゾンガスと反応させ、余剰オゾンを分解して酸素として装置外に出す吸入タイプと、臭いのある室内にオゾンを放出して、空気中に存在する臭気物質や床,壁,天井などに付着している臭いを脱臭する燻蒸タイプがある。
【0004】
又、〔非特許文献2〕には、マイクロバブルと呼ばれる直径が50マイクロメータ以下の微細気泡を用いており、一般にこのサイズの気泡は、周囲流体への気泡内気体の溶け込みにより、液中で縮小していき、約2分で完全溶解すること、微細気泡は、周囲液体への溶け込みにしたがって直径が減少するため、表面張力の効果により内部が高温,高圧になること、気泡は微細になるほど体積に対する表面積比が大きくなるため溶解効率が高くなるが、気体の圧力に比例して溶解度が増加するヘンリーの法則によって溶解が更に促進されること、微細気泡は消滅時に殺菌力を有するラジカルを発生し、このラジカルによって、細菌,有機物を分解できるため、浄化,殺菌,消毒効果が得られるとされることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−122105号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「オゾンハンドブック」、日本オゾン協会、2004年
【非特許文献2】「水の特性と新しい利用技術」、株式会社エヌ・ティー・エス、2004年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
〔特許文献1〕に記載の方法では、オゾンの注入に散気管を用いているため、気泡径がミリ径以上となり溶解効率が低く、そのため比較的高濃度のオゾンガスが排気されていた。
【0008】
このオゾンガスは、人体に有毒であるため、未反応のオゾンガスを大気中に放出するためには、活性炭によりオゾンを吸着及び分解させる必要があり、定期的な活性炭吸着塔のメンテナンスを要していた。
【0009】
〔非特許文献1〕には、注入されたオゾンには、必ず未反応のオゾンが排出されるので、排オゾン処理装置で分解して大気に放出する必要があることが記載されており、排オゾン処理装置が必要であった。
【0010】
〔非特許文献2〕には、マイクロバブルのことが記載されているが、排オゾンについては配慮されているものではなく、必ずしも、人が入出する部屋に散布できるものではなかった。
【0011】
本発明の目的は、排オゾン処理装置を不要とでき、マイクロバブルを用いることで生じる低濃度の未利用オゾン(排オゾン)を利用して部屋の消臭を行えるマイクロバブル水処理装置を利用した消臭装置及び方法を提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、マイクロバブルを用いることで生じる低濃度の未利用オゾン(排オゾン)を部屋に散布できる濃度に調整できるマイクロバブル水処理装置を利用した消臭装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、オゾン発生装置により発生したオゾンガスを、高圧ポンプの吸込み側に注入し、微細な孔径をもつノズル微細気泡生成装置を流して、ノズル下流側にマイクロバブルを発生させ、マイクロバブルを水処理槽内部に流して被処理水を浄化させ、水処理槽の上部に生じた低濃度の未反応オゾンと、外部に設置したファンにより吸込んだ外気とを混合し、配管及びオゾンガス放出部を通して悪臭を除去したい部屋に吹き込み、配管に設置されたオゾン濃度計と、部屋に設置されたオゾン濃度計からの信号を元に、ファンの風量を調節し、部屋に吹き込むオゾンガス濃度を調整して室内臭気を脱臭するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、排オゾン処理装置を不要とでき、ファンにインバータを付け、排オゾンをモニタしているので、制御盤を介してファンの回転数を変化させ、部屋に吹き込むオゾンガス濃度を調節することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】オゾン微細気泡からの排オゾンを消臭に利用するための設備の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施例を図1により説明する。図1に示すように、下水処理設備の水処理槽1内は、複数の仕切板2によって複数の槽に分割され、仕切板2は、上部に固定された仕切板2a,2cと下部が固定された仕切板2bが交互に設けられ、下水処理設備から注入された下水処理水(被処理水ともいう)が流入するようになっている。
【0017】
水処理槽1から被処理水の一部が、配管によりオゾンガス注入装置4に循環するように接続され、水処理槽1内の被処理水は、水槽下部から一部抽水されオゾンガス注入装置4に流入する。オゾン発生装置3で発生したオゾンガスは、オゾンガス注入装置4で被処理水と混合し、気液二相流になる。オゾンガス注入装置4には、エゼクタ形式,散気管方式,直接混合などの気液混合方式のものが適用される。オゾンガス注入装置4の後流側には高圧ポンプ5が接続され、高圧ポンプ5は微細気泡生成装置6を介して水処理槽1に接続されている。
【0018】
気液二相流は、高圧ポンプ5に吸い込まれ、昇圧された後、微細気泡生成装置6に流入する。ここで、高圧ポンプ5は、渦流ポンプが二相流吐き出し性能に優れるが、一般のポンプも使用可能である。
【0019】
微細気泡生成装置6での微細気泡の生成過程について説明する。高圧ポンプ5から吐き出されたオゾンガスが混入した気液二相流は、高圧ポンプ5によって昇圧された圧力によって一部が液中に溶解しながら微細気泡生成装置6に達する。
【0020】
微細気泡生成装置6の内部には、微小な穴が複数設けられた多孔板が設置され、上流側から流入した高圧の被処理水は、多孔板の孔部を通過する時に圧力損失が生じるとともに流速が増加し、ベルヌーイの定理で表されるように圧力が低下して減圧される。このため、加圧溶解していた気泡がマイクロバルブの微細気泡となる。又、下流側では流路面積が増加するため、圧力回復が図られるが、急激な流路面積の変化によって圧力が不安定になり、気泡はさらに崩壊する。この減圧と圧力不安定によって、マイクロバルブである微細気泡が生成される。
【0021】
下水処理設備から注入された被処理水が仕切板2aの下部の空間から下流側の次の槽に流れ、下部が固定された仕切板2bを乗り越えて下流側の次の槽に流れる動作を繰り返して、処理された水が再生水として排出されるようになっている。
【0022】
仕切板2bの上部には、被処理水と反応しなかったオゾンを排気するための配管7aが設けられている。
【0023】
配管7aは配管7bと合流しており、配管7bには、外気を吸引するためのファン8が設置され、ファン8はインバータ9と接続されている。配管7bには、オゾン濃度計12a(排オゾンモニタ12aともいう)が設置され、悪臭を除去したい部屋10内には、配管7bに接続された複数の排オゾンガス放出部11が設置されている。部屋10内にはオゾン濃度計12b(排オゾンモニタ12bともいう)が設置され、オゾン濃度計12a,オゾン濃度計12b,インバータ9は信号線を介して制御盤13と接続されている。
【0024】
水処理槽1内の仕切板2bの上部には、低濃度の未反応オゾンが生じるが、この未反応オゾンを配管7aにより回収し、ファン8により吸引した外気と混合して希薄した未反応オゾンを排オゾンガス放出部11から部屋10に吹き込み、悪臭を取り除く。
【0025】
オゾン濃度計12aからの信号により、大気と混合された排オゾンの濃度を知ることができるので、設定されたオゾン濃度となるように、制御盤13は、インバータ9によりファン8の回転速度を制御する。又、オゾン濃度計12bからの信号により、悪臭を除去したい部屋10のオゾン濃度を知ることができるので、制御盤13は、部屋10のオゾン濃度が規制値を下回るように、インバータ9によりファン8の回転速度を制御する。ここで、ファン8の回転速度の制御は、部屋10のオゾン濃度が規制値を下回るように制御する方を優先する。
【0026】
このように、ファンを用いて、大気を吸入し排オゾンと混合することで、オゾン濃度を希釈することができる。オゾン濃度を監視する排オゾンをモニタするオゾン濃度計12bを設置しているので、目的の部屋に万が一、高濃度のオゾンが発生した場合でもオゾン濃度を希釈することができる。
【0027】
このように、本実施例によれば、排オゾン処理装置を不要とでき、ファンにインバータを付け、排オゾンをモニタしているので、制御盤を介してファンの回転数を変化させ、部屋に吹き込むオゾンガス濃度を調節することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 水処理槽
2 仕切板
3 オゾン発生装置
4 オゾンガス注入装置
5 高圧ポンプ
6 微細気泡生成装置
7 配管
8 ファン
9 インバータ
10 部屋
11 排オゾンガス放出部
12 オゾン濃度計
13 制御盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オゾンガスを発生するオゾン発生装置と、該オゾン発生装置で発生したオゾンガスを被処理水と混合するオゾンガス注入装置と、該オゾンガス注入装置で生成された二相流からマイクロバルブを生成する高圧ポンプ及び微細な孔径をもつノズル微細気泡生成装置と、該高圧ポンプ及びノズル微細気泡生成装置で生成されたマイクロバブルを流して被処理水を浄化する水処理槽と、該水処理槽の上部に溜まる低濃度の未反応オゾンをファンにより取り込まれた外気と混合して流す配管と、該配管とオゾンガス放出部を介して接続された悪臭を除去したい部屋と、前記配管及び前記部屋に設置されたオゾン濃度計からの信号を元に、前記ファンの風量を調節し、前記部屋に吹き込むオゾンガス濃度を調整する制御盤を備えたマイクロバブル水処理装置を利用した消臭装置。
【請求項2】
オゾン発生装置により発生したオゾンガスを、高圧ポンプの吸込み側に注入し、微細な孔径をもつノズル微細気泡生成装置を流して、ノズル下流側にマイクロバブルを発生させ、該マイクロバブルを水処理槽内部に流して被処理水を浄化させ、水処理槽の上部に生じた低濃度の未反応オゾンと、外部に設置したファンにより吸込んだ外気とを混合し、配管及びオゾンガス放出部を通して悪臭を除去したい部屋に吹き込むものであって、前記配管に設置されたオゾン濃度計と、前記部屋に設置されたオゾン濃度計からの信号を元に、ファンの風量を調節し、部屋に吹き込むオゾンガス濃度を調整して室内臭気を脱臭するマイクロバブル水処理装置を利用した消臭方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−19652(P2011−19652A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166264(P2009−166264)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】