説明

マイクロホン装置

【課題】話者(マイクロホンの使用者)が発声していないときには、それを自動的に検出して音声出力をオフとし、周囲雑音による音声信号が出力されないようにする。
【解決手段】人体の頭部もしくは首部に接触し声帯の振動音を電気信号に変換する振動ピックアップ40と、振動ピックアップ40の検出出力に応じてマイクロホンユニット30の音声出力を制御する音声出力制御回路50とを備え、音声出力制御回路50により、振動ピックアップ40の検出出力が所定の閾値を超えている場合には、話者が発声しているとして、マイクロホンユニット30の音声出力をオンとし、所定の閾値以下の場合には、話者が発声していないとして、マイクロホンユニット30の音声出力をオフとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はマイクロホン装置に関し、さらに詳しく言えば、話者の無発声時において無用な周囲の雑音を拾わない音声出力制御系を備えた、特にヘッドセット型マイクロホンに好適なマイクロホン装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヘッドバンドにヘッドホンユニットとマイクロホンユニットとを支持させたヘッドセット型マイクロホンは、両手が自由に使えることと、外観が余り目立たないことから、スポーツキャスターや舞台俳優、それに語学学習の場などに幅広く用いられている。
【0003】
マイクロホンユニットは支持ブームを介してヘッドバンドに支持され、ヘッドバンドを頭部に装着すると、ヘッドホンユニットは両耳に当接し、マイクロホンユニットは接話マイクロホンとして話者の口元近くに配置される。通常、マイクロホンユニットには小型で軽量なコンデンサマイクロホンユニットが用いられる。
【0004】
ところで、ヘッドセット型マイクロホンを例えば周囲雑音の大きな環境下で使用する場合、話者が音声を発していないときにも周囲の雑音がマイクロホンユニットにて拾われるため、聞き手側にとっては、その雑音が耳障りとなる。
【0005】
この不具合を解消するため、双指向性マイクロホンを使用して近接音源の収音性を向上させたり、例えば特許文献1に記載されているような咽喉マイクロホンを用いて耐騒音性を確保することが行われているが、いずれも音声品質の犠牲が伴うので好ましい騒音対策とは言えない。
【0006】
別の方法として、ボリュームと呼ばれる手動の音量調整手段を付属させ、話者が発声していないときには、マイクロホンユニットからの音声出力のボリュームを絞り込むことが考えられるが、その操作を話者に行わせることは実際問題として難しい。
【0007】
【特許文献1】特開2005−184194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、本発明の課題は、話者(マイクロホンの使用者)が発声していないときには、それを自動的に検出して音声出力をオフとする音声出力制御系を備えたマイクロホン装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、音響電気変換器を有するマイクロホンユニットを含むマイクロホン装置において、人体の頭部もしくは首部に接触し声帯の振動音を電気信号に変換する振動ピックアップと、上記振動ピックアップの検出出力に応じて上記マイクロホンユニットの音声出力を制御する音声出力制御回路とを備え、上記音声出力制御回路は、上記振動ピックアップの検出出力が所定の閾値を超えている場合には上記マイクロホンユニットの音声出力をオンとし、所定の閾値以下の場合には上記マイクロホンユニットの音声出力をオフとすることを特徴としている。
【0010】
本発明において、上記音声出力制御回路にはVOX回路が好ましく用いられる。
【0011】
また、上記振動ピックアップに、人体の頭部に装着され発声により生ずる骨導音を電気信号に変換する骨伝導マイクロホンを用いることができる。
【0012】
また、上記振動ピックアップに、人体の首部に装着され発声により生ずる皮膚表面の振動を電気信号に変換する咽喉マイクロホンが用いられてもよい。
【0013】
本発明のマイクロホン装置は、人体の頭部に装着されるヘッドバンドと、上記ヘッドバンドの少なくとも一端側に支持されたヘッドホンユニットとを含み、上記マイクロホンユニットが接話マイクロホンとして支持ブームを介して上記ヘッドバンドに支持されるヘッドセット型に好ましく適用され、この場合、上記振動ピックアップは所定の支持手段を介して上記ヘッドバンドに支持される。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、人体の頭部もしくは首部に接触し声帯の振動音を電気信号に変換する振動ピックアップと、振動ピックアップの検出出力に応じてマイクロホンユニットの音声出力を制御する音声出力制御回路とを備え、音声出力制御回路により、振動ピックアップの検出出力が所定の閾値を超えている場合には、話者が発声しているとして、マイクロホンユニットの音声出力がオンとされ、所定の閾値以下の場合には、話者が発声していないとして、マイクロホンユニットの音声出力がオフとされるため、特に周囲雑音の大きな環境下での使用時に、話者が発声していないときにおける聞き手側での周囲雑音による耳障りの不具合を解消することができる。また、マイクロホンユニットに通常のユニットを用いることができるため、良好な音声品質が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、図1および図2により、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されるものでない。図1は本発明をヘッドセット型マイクロホンに適用した実施形態を示す正面図、図2はその音声出力制御系を示すブロック図である。
【0016】
図1に示すように、この実施形態に係るマイクロホン装置はヘッドセット型マイクロホンであることから、人体の頭部に装着されるほぼU字状(もしくはC字状)に形成された弾性変形可能なヘッドバンド10を備える。
【0017】
ヘッドバンド10の両端には、ハンガー部材11,11を介して左チャンネル用、右チャンネル用のヘッドホンユニット20,20が支持される。なお、モノラル等の場合には、ヘッドホンユニット20が片側だけに設けられる場合もある。
【0018】
ヘッドバンド10の一端側には、音響電気変換器を有するマイクロホンユニット(接話マイクロホン)30が支持ブーム31を介して支持される。マイクロホンユニット30には、小型で軽量なコンデンサマイクロホンユニットが好ましく用いられる。
【0019】
支持ブーム31は、ヘッドバンド10を頭部に装着した際、マイクロホンユニット30が話者の口元近くに配置される長さを有し、口元に対する位置調整ができるように可撓性を有している場合もある。支持ブーム31には合成樹脂もしくは金属製のパイプ材が用いられ、その内部にはマイクロホンユニット30のマイクコード31が挿通される。
【0020】
マイクロホンユニット30は、マイクコード31を介して図2に示す音声出力回路33に接続されるが、この実施形態においては、マイクロホンユニット30と音声出力回路33との間に、後述する音声出力制御回路50にてオンオフ制御されるスイッチSWが介装されている。
【0021】
本発明は、話者が有発声状態(発声している状態)か、無発声状態(発声していない状態)かを判断するために、人体の頭部もしくは首部に接触し声帯の振動音を電気信号に変換する振動ピックアップ40を備える。
【0022】
この実施形態では、振動ピックアップ40に、人体の頭部に装着され発声により生ずる骨導音を圧電素子にて電気信号に変換する骨伝導マイクロホン41が用いられている。骨伝導マイクロホン41は、人体の側頭部にあてがわれるようにハンガー部材11に例えば球軸受け(図示省略)を介して支持されることが好ましい。
【0023】
図2に示すように、振動ピックアップ40の検出出力が音声出力制御回路50に与えられる。音声出力制御回路50は、振動ピックアップ40の検出出力が所定の閾値を超えている場合には、有発声状態であるとしてスイッチSWをオンとする。これに対して、振動ピックアップ40の検出出力が所定の閾値以下の場合には、無発声状態であるとしてスイッチSWをオフとする。
【0024】
音声出力制御回路50には、VOX回路(Voice OperatingX)が好ましく採用される。VOX回路には、アタックタイムとリカバリータイムとが設定されているため、音声を途切れさせることなくスイッチSWを切り替えることができる。VOX回路には、例えば新日本無線社製の音声レベル検出用IC;NJM2072(品番)がある。
【0025】
本発明によれば、話者が発声している有発声状態時にはスイッチSWがオンとされるため、マイクロホンユニット30の音声信号が音声出力回路33を介して図示しない受信装置に出力される。マイクロホンユニット30には、通常のマイクロホンユニットを使用することができるため、良好な音声品質で通話することができる。
【0026】
これに対して、話者が発声していない無発声状態時にはスイッチSWがオフとされるため、マイクロホンユニット30にて周囲雑音が拾われても、その周囲雑音による音声信号が音声出力回路33に入力されず、受信側での周囲雑音による不快感を軽減することができる。
【0027】
上記実施形態では、振動ピックアップ40に骨伝導マイクロホン41が用いられているが、人体の首部に装着され、発声により生ずる皮膚表面の振動を電気信号に変換する咽喉マイクロホンが用いられてもよい。この場合、咽喉マイクロホンは、ヘッドバンド10を人体の頭部に装着した際、人体の首部にあてがわれるように、所定の支持部材を介してヘッドバンド10に支持されるとよい。
【0028】
また、上記実施形態では、マイクロホンユニット30と音声出力回路33との間にスイッチSWを接続するようにしているが、スイッチSWを音声出力回路33の出力段に設けてもよい。
【0029】
また、本発明は、ヘッドセット型マイクロホン以外の例えば会議施設等に用いられるグースネック型マイクロホンや人体の胸元等にクリップを介して装着されるいわゆるタイピン型マイクロホンなどにも適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明をヘッドセット型マイクロホンに適用した実施形態を示す正面図。
【図2】上記実施形態の音声出力制御系を示すブロック図。
【符号の説明】
【0031】
10 ヘッドバンド
11 ハンガー部材
20 ヘッドホンユニット
30 マイクロホンユニット
31 支持ブーム
32 マイクコード
33 音声出力回路
40 振動ピックアップ
41 骨伝導マイクロホン
50 音声出力制御回路
SW スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響電気変換器を有するマイクロホンユニットを含むマイクロホン装置において、
人体の頭部もしくは首部に接触し声帯の振動音を電気信号に変換する振動ピックアップと、上記振動ピックアップの検出出力に応じて上記マイクロホンユニットの音声出力を制御する音声出力制御回路とを備え、上記音声出力制御回路は、上記振動ピックアップの検出出力が所定の閾値を超えている場合には上記マイクロホンユニットの音声出力をオンとし、所定の閾値以下の場合には上記マイクロホンユニットの音声出力をオフとすることを特徴とするマイクロホン装置。
【請求項2】
上記音声出力制御回路に、VOX回路が用いられることを特徴とする請求項1に記載のマイクロホン装置。
【請求項3】
上記振動ピックアップに、人体の頭部に装着され発声により生ずる骨導音を電気信号に変換する骨伝導マイクロホンが用いられることを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロホン装置。
【請求項4】
上記振動ピックアップに、人体の首部に装着され発声により生ずる皮膚表面の振動を電気信号に変換する咽喉マイクロホンが用いられることを特徴とする請求項1または2に記載のマイクロホン装置。
【請求項5】
人体の頭部に装着されるヘッドバンドと、上記ヘッドバンドの少なくとも一端側に支持されたヘッドホンユニットとを含み、上記マイクロホンユニットが接話マイクロホンとして支持ブームを介して上記ヘッドバンドに支持されるヘッドセット型であり、上記振動ピックアップが所定の支持手段を介して上記ヘッドバンドに支持されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のマイクロホン装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−10869(P2010−10869A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165421(P2008−165421)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000128566)株式会社オーディオテクニカ (787)
【Fターム(参考)】