説明

マイクロリレー

【課題】接点の片当たりが生じないように可動板を安定して支持することができるマイクロリレーを提供する。
【解決手段】可動板12と基板30との間には、基板30上に可動板12を支持する2つの支点部22が設けられている。支点部22を構成する第1の支点部221と第2の支点部222とは、可動板12の下面における横方向に沿った中心線上に並んで配置されており、可動板12がシーソー動作する際の支点となる。可動板12は、可動接点21を基板30上の固定接点31に接触させた状態で、2つの支点部22と可動接点21との3点で基板30上に支持される。可動接点21は、第1の支点部221までの距離と第2の支点部222までの距離とが互いに異なり、且つ、第1の支点部221までの距離が2つの支点部22間の距離よりも大きくなる位置に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動板のシーソー動作に伴って接点が開閉するマイクロリレーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種のマイクロリレーとして、アンカー構造体が固定された基板と、アンカー構造体に保持された両持ち梁状のねじれ弾性部によって弾性支持された可動構造部とを備えた静電リレーが提案されている(たとえば特許文献1参照)。この静電リレーは、ねじれ弾性部を支点として可動構造部をシーソー運動させることにより、可動構造部の両端部に一体に形成された可動接点支持部の基板に対向する面に配置されている可動接点を、基板上に配置された固定接点に接触させる。
【0003】
この構成では、可動構造体はねじれ弾性部を支点にシーソー運動するので、接点が閉じた(接触した)状態において可動構造体の位置が安定せず、2つのねじれ弾性部が並ぶ方向に可動構造体が傾いて、固定接点に対する可動接点の片当たりを生じる可能性がある。
【0004】
また、他の構造として、基板上に設けた2つの支持柱上に揺動板を載せ、揺動板を両持ち梁ではなく支持柱によって2箇所で軸支するように構成されたマイクロスイッチも提案されている(たとえば特許文献2参照)。このマイクロスイッチは、支持柱を支点として揺動板を傾けることにより、揺動板の下面に形成された接点電極を、基板上に設けられた信号線電極に接触させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−318783号公報
【特許文献2】特開平11−260233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載された構成では、接点が閉じた状態において、揺動板は2つの支持柱によって支持されるとともに、接点電極を基板上の信号線電極に接触させているものの、揺動板の位置が安定せず、揺動板が傾くことにより接点の片当たりを生じる可能性がある。すなわち、この構成では、接点電極は2つの支持柱から等距離にあるので、支持柱と接点電極との間隔を大きく確保しようとすると、2つの支持柱の並ぶ方向と直交する方向における揺動板の寸法が大きくなり、装置全体として大型化してしまう。そのため、限られた装置サイズの上では、支持柱と接点電極との間隔を十分に確保できず、揺動板を安定して支持することが難しい。また、接点電極が2つの支持柱から等距離にあるため、2つの支持柱の並ぶ方向において接点電極を支点に揺動板が傾く可能性もある。
【0007】
本発明は上記事由に鑑みて為されており、接点の片当たりが生じないように可動板を安定して支持することができるマイクロリレーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のマイクロリレーは、一表面に固定接点が設けられた基板と、前記基板の前記一表面に沿って配置され、前記固定接点と対向する位置に可動接点が設けられた板状の可動板と、前記基板と前記可動板との間に設けられ前記可動板を前記基板の前記一表面上に支持する2つの支点部と、前記可動接点が前記固定接点に対して接離するように、前記2つの前記支点部を結ぶ直線回りで前記支点部を支点として前記可動板を回転させる駆動装置とを備え、前記可動板は、前記可動接点を前記固定接点に接触させた状態で、第1の支点部および第2の支点部からなる前記2つの前記支点部と前記可動接点との3点で前記基板上に支持され、前記可動接点は、前記可動板における前記基板との対向面において、前記第1の支点部までの距離と前記第2の支点部までの距離とが互いに異なり、且つ、前記第1の支点部までの距離が前記2つの前記支点部間の距離よりも大きくなる位置に配置されていることを特徴とする。
【0009】
このマイクロリレーにおいて、前記可動接点は、前記第2の支点部までの距離が前記2つの前記支点部間の距離と同一になる位置に配置されていることが望ましい。
【0010】
このマイクロリレーにおいて、前記可動板は、前記一表面に沿う平面内で前記2つの支点部を結ぶ直線を対称軸とする線対称に形成されていることがより望ましい。
【0011】
このマイクロリレーにおいて、前記第1の支点部および前記第2の支点部間を結ぶ線分と、前記第2の支点部および前記可動接点間を結ぶ線分との間の角度が90度以上となる位置に、前記可動接点が配置されていることがより望ましい。
【0012】
このマイクロリレーにおいて、前記可動接点は、前記可動板における前記基板との対向面において、前記2つの前記支点部を結ぶ直線を挟んで反対側に位置する第1の可動接点および第2の可動接点からなり、前記固定接点は、前記基板の前記一表面において、前記第1の可動接点に対向する部位に位置する一対の第1の固定接点と、前記第2の可動接点に対向する部位に位置する一対の第2の固定接点とからなり、前記一対の前記第1の固定接点は、前記基板に設けられた共通端子と第1端子との間に接続され、前記第1の可動接点が接触した状態で前記共通端子と前記第1端子との間に導電経路を形成し、前記一対の前記第2の固定接点は、前記基板に設けられた前記共通端子と第2端子との間に接続され、前記第2の可動接点が接触した状態で前記共通端子と前記第2端子との間に導電経路を形成することがより望ましい。
【0013】
このマイクロリレーにおいて、前記可動接点は、前記可動板における前記基板との対向面において、前記2つの前記支点部を結ぶ直線を挟んで反対側に位置する第1の可動接点および第2の可動接点からなり、前記固定接点は、前記基板の前記一表面において、前記第1の可動接点に対向する部位に位置する一対の第1の固定接点と、前記第2の可動接点に対向する部位に位置する一対の第2の固定接点とからなり、前記一対の前記第1の固定接点は、前記基板に設けられた第1端子と第3端子との間に接続され、前記第1の可動接点が接触した状態で前記第1端子と前記第3端子との間に導電経路を形成し、前記一対の前記第2の固定接点は、前記基板に設けられた第2端子と第4端子との間に接続され、前記第2の可動接点が接触した状態で前記第2端子と前記第4端子との間に導電経路を形成することがより望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、接点の片当たりが生じないように可動板を安定して支持することができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態1に係るマイクロリレーを示し、(a)は平面図、(b)は(a)のY1−Y1切断面を表す切断部端面図、(c)は(a)のX1−X1切断面を表す切断部端面図である。
【図2】実施形態1に係るマイクロリレーを示し、図1(a)のY1−Y1切断面を表す切断部端面図である。
【図3】実施形態2に係るマイクロリレーを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態1)
本実施形態のマイクロリレー1は、図1に示すように、第1および第2の可動接点211,212(以下、各々を区別しないときには「可動接点21」という)が設けられた可動板12を有する可動板ブロック10を備えている。ここでは、可動板ブロック10は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて単結晶シリコンのシリコン基板からなる半導体基板を加工することによって形成されている。
【0017】
さらに、マイクロリレー1は、可動板12を移動させる駆動装置として電磁石装置(図示せず)と、可動接点21と共に接点装置を構成する第1および第2の固定接点311,312(以下、各々を区別しないときには「固定接点31」という)とを備えている。マイクロリレー1は、電磁石装置にて可動板12を移動させることによって可動接点21が固定接点31に対して接離する。以下では、図1(a)において、マイクロリレー1の長手方向となる左右方向を「横方向」、マイクロリレー1の短手方向となる上下方向を「縦方向」とし、図1(a)の左右を左右として説明するが、マイクロリレー1の使用時の向きを限定する趣旨ではない。
【0018】
可動板ブロック10は、外周形状が略同一である板状の基板30とカバー(図示せず)との間に挟み込まれることにより、基板30およびカバーと共に直方体状のケース(図示せず)を構成する。基板30およびカバーは耐熱ガラスのような絶縁材料を用いて形成されている。可動板ブロック10、基板30、カバーの外周形状は、いずれも横方向に長い長方形状である。基板30およびカバーの各々は、可動板ブロック10の一部を構成する後述のフレーム11に対して接合される。
【0019】
基板30は、後述するアマチュア14に対応する位置に、厚み方向に貫通する収納孔が形成され、収納孔の可動板ブロック10側の開口面がシリコン薄板またはガラス薄板からなる蓋板32にて塞がれている。収納孔の内周面と蓋板32とにより囲まれた空間は、電磁石装置が収納される収納室33を構成する。収納室33は、蓋板32から離れるほど断面積が徐々に広がるように内側面がテーパ状に形成されており、開口面から電磁石装置が収納され易い形状とされている。
【0020】
また、基板30は、厚み方向における可動板ブロック10側の一表面(以下、「上面」という)300に、導電性材料からなる導電パターン34が形成されている。基板30には、縦方向の中央部に共通端子350が形成され、縦方向の各端部に第1端子351、第2端子352が形成されている。共通端子350、第1端子351、第2端子352は、いずれも基板30を厚み方向に貫通し内周面に導電膜が形成されたスルーホールからなる。導電パターン34は、共通端子350、第1端子351、第2端子352と電気的に接続され、共通端子350−第1端子351間、および共通端子350−第2端子352間の各々に導電経路を形成するように基板30の上面300に引き回されている。
【0021】
ここで、共通端子350−第1端子351間の導電パターン34は、図2に示すように、一対の第1の固定接点311を含んでおり、第1の固定接点311間が非導通の状態では、この固定接点311にて共通端子350−第1端子351間の導電経路が分断される。一対の第1の固定接点311は、第1の可動接点211が接触した状態で、第1の可動接点211を介して電気的に接続されることとなり、共通端子350−第1端子351間を導通させる。同様に、共通端子350−第2端子352間の導電パターン34は、一対の第2の固定接点312を含んでおり、第2の固定接点312に第2の可動接点212が接触した状態で、共通端子350−第2端子352間を導通させる。したがって、共通端子350−第1端子351間は、固定接点311と可動接点211との開閉によって導通・非導通が切り替わり、共通端子350−第2端子352間は、固定接点312と可動接点212との開閉によって導通・非導通が切り替わる。
【0022】
さらに詳しく説明すると、本実施形態では、共通端子350が基板30の横方向の右端寄りの位置に配置され、第1端子351、第2端子352はいずれも基板30の横方向の略中央に配置されている。第1の固定接点311は、横方向において共通端子350と第1端子351との略中間に配置され、第2の固定接点312は、横方向において共通端子350と第2端子352との略中間に配置されている。第1の固定接点311と第1端子351とは横方向に並ぶように縦方向の位置が揃えられており、第2の固定接点312と第2端子352とは横方向に並ぶように縦方向の位置が揃えられている。導体パターン34は、共通端子350を通る基板3の横方向に沿った中心線を対称軸とする線対称に形成されている。
【0023】
可動板ブロック10は、図1に示すように、矩形枠状のフレーム11と、フレーム11の内側に配置された板状の可動板12とを有している。フレーム11は、厚み方向の一面に基板30が接合され、他面にカバーが接合されることにより、基板30およびカバーと共にケースを構成する。
【0024】
可動板12は、後述する支持ばね131,132,133,134(以下、各々を区別しないときには「支持ばね13」という)を介してフレーム11に連結されることにより、フレーム11に支持されている。可動板12は、板面が略正三角形状に形成された主板部120と、主板部120の各頂点に対応する位置に主板部120と連続一体に形成された板面円形状の3つの円形部121,122,123とを有している。この可動板12は、第1の円形部121が横方向に沿った中心線上に位置し、且つこの中心線を対称軸として線対称となるようにフレーム11に支持されている。
【0025】
ここで、第2の円形部122は基板30の第1の固定接点311に対応する位置に配置され、第3の円形部123は基板30の第2の固定接点312に対応する位置に配置されている。第2の円形部122には基板30に向けて突出する接点台124が一体に形成され、接点台124の先端面に導電性材料からなる第1の可動接点211が設けられている。第3の円形部123には基板30に向けて突出する接点台125が一体に形成され、接点台125の先端面に導電性材料からなる第2の可動接点212が設けられている。
【0026】
第1の支持ばね131および第2の支持ばね132は、可動板12の横方向に沿った中心線上で、可動板12の横方向の各端部をフレーム11に対して連結する。ここでは、第1の支持ばね131は、可動板12の左端部となる第1の円形部121とフレーム11とを連結し、第2の支持ばね132は、主板部120の右端部とフレーム11とを連結する。各支持ばね131,132のうち可動板12およびフレーム11につながる部位は、いずれも可動板12の横方向に沿った中心線上に位置する。各支持ばね131,132は、可動板12とフレーム11との間において、基板30に沿う面内で縦方向に往復するように蛇行した形に形成されている。
【0027】
さらに、第3の支持ばね133は、主板部120の頂点のうち第2の円形部122に対応する頂点とその対辺とを結ぶ直線上で、可動板12とフレーム11とを連結する。第4の支持ばね134は、主板部120の頂点のうち第3の円形部123に対応する頂点とその対辺とを結ぶ直線上で、可動板12とフレーム11とを連結する。第3の支持ばね133および第4の支持ばね134は、第1の支持ばね131および第2の支持ばね132と同様に、可動板12とフレーム11との間において基板30に沿う面内で蛇行した形に形成されている。
【0028】
本実施形態では、主板部120とフレーム11とのうち第3の支持ばね133で連結された面同士が互いに平行し、且つ主板部120とフレーム11とのうち第4の支持ばね134で連結された面同士が互いに平行するように、フレーム11が構成されている。つまり、フレーム11は、第3の支持ばね133および第4の支持ばね134と連結される各面が、開口部の寸法を左方ほど狭めるように傾斜した傾斜面113,114にて構成されている。
【0029】
この構成により、可動板12は、横方向に沿った中心線を中心に回転することにより、第1の可動接点211を第1の固定接点311に接触させる第1の位置と、第2の可動接点212を第2の固定接点312に接触させる第2の位置との間でシーソー動作する。可動板12がシーソー動作して基板30に平行な平衡位置から傾くと、各支持ばね13は変形することにより平衡位置に復帰する復帰力を可動板12に作用させる。また、各支持ばね13は蛇行した形に形成されることにより十分な長さを確保しているから、可動板12がシーソー動作する際に各支持ばね13に生じる応力を分散させることができ、支持ばね13の破損を防止することができる。
【0030】
可動板12の動作の詳細については後述するが、このような可動板12のシーソー動作によって、固定接点31と可動接点21とからなる接点装置が開閉する。このとき、一対の第1の固定接点311に第1の可動接点211が接触した状態で、共通端子350−第1端子351間が導通し、一対の第2の固定接点312に第2の可動接点212が接触した状態で、共通端子350−第2端子352間が導通する。つまり、本実施形態のマイクロリレー1は、共通端子350を第1端子351と第2端子352とのいずれかに接続する1入力2出力の所謂c接点のリレーである。なお、接点台124,125は、可動板12が平衡位置にある状態で両固定接点31と両可動接点21との間に所定のギャップが確保されるように、円形部122,123からの高さ寸法が設定される。
【0031】
また、可動板12の厚み方向における基板30と対向する面(以下、「下面」という)には、磁性体材料からなる板状のアマチュア14が取り付けられている。アマチュア14は、たとえば軟鉄、電磁ステンレス、パーマロイ、42アロイ、パーメンジュールなどからなり、電磁石装置で発生する磁束を通す磁路を形成し、電磁石装置と共に可動板12をシーソー動作させる駆動装置を構成する。
【0032】
具体的には、アマチュア14は、板面が縦方向に長い長方形状に形成され、主板部120のうち第2の円形部122と第3の円形部123とを結ぶ直線上となる位置に配置されている。アマチュア14は、縦方向に沿った中心線が、第2の円形部122の中心および第3の円形部123の中心を通り、且つ横方向に沿った中心線が、第1の円形部121の中心を通るように位置決めされる。なお、主板部120は、アマチュア14がはみ出さないように、第2の円形部122と第3の円形部123とを結ぶ一辺から右方に拡幅された形に形成されている。
【0033】
可動板12には厚み方向に貫通する結合孔(図示せず)が形成されており、可動板12の厚み方向におけるカバー側の面(以下、「上面」という)には、結合孔を通してアマチュア14と接合される接合部材15が設けられる。アマチュア14は接合部材15との間に可動板12の一部を挟み込むことにより、可動板12に対して固定される。
【0034】
なお、可動板12のシーソー動作が妨げられないように、可動板12は、フレーム11よりも薄く、且つアマチュア14と基板(蓋板32)30との間に十分なギャップを確保できる厚み寸法に設定されている。また、カバーは、可動板12との対向面に可動板12との干渉を回避するための逃し凹所(図示せず)が形成されている。
【0035】
電磁石装置は、コイルが巻回される中央片と、中央片の長手方向の各端部から同じ向きに突出する一対の脚片とからなるコ字状のヨーク(図示せず)を有し、各脚片の先端を蓋板32側に向けて収納室33に収納される。さらに、本実施形態では、電磁石装置は、中央片の長手方向の中央部の脚片と同じ側に配置された永久磁石(図示せず)を有している。この電磁石装置は、一方の脚片がアマチュア14の縦方向の一端部に蓋板32を挟んで対向し、他方の脚片がアマチュア14の縦方向の他端部に蓋板32を挟んで対向するように位置決めされている。
【0036】
これにより、電磁石装置は、コイルの通電方向に応じていずれかの脚片にアマチュア14を吸引し、可動板12を傾ける。このとき、可動板12は横方向に沿った中心線回りで回転し、第1の位置あるいは第2の位置に移動する。なお、本実施形態では電磁石装置が永久磁石を有しているので、コイルへの通電が停止しても、永久磁石とアマチュア14とヨークとからなる閉磁路を通る磁束により、可動板12の姿勢は維持される。つまり、本実施形態のマイクロリレー1は、共通端子350−第1端子351間と、共通端子350−第2端子352間とを交互に開閉させるラッチング型のリレーを構成する。ただし、マイクロリレー1は、ラッチング型のリレーに限らず、永久磁石は省略されていてもよい。
【0037】
ところで、本実施形態のマイクロリレー1においては、可動板12と基板30との間に、基板30の上面300上に可動板12を支持する2つの支点部221,222(以下、各々を区別しないときには「支点部22」という)が設けられている。
【0038】
支点部22は、基板30の上面300に沿う断面が円形となる円柱状に形成されており、図1(c)に示すように基板30の上面300に固定されている。ここで、第1の支点部221と第2の支点部222とは、可動板12の下面における横方向に沿った中心線上に並んで配置されており、可動板12が回転(シーソー動作)する際の支点となる。
【0039】
これら第1の支点部221および第2の支点部222は、可動板12の下面に設けられている第1の可動接点211、第2の可動接点212とは、基板30の上面300に沿う平面内で次のような位置関係にある。まず、第1の支点部221−第1の可動接点211間の距離L11と、第2の支点部222−第1の可動接点211間の距離L21とは互いに異なる(L11≠L21)。さらに、第1の支点部221−第1の可動接点211間の距離L11は、両支点部221,222間の距離L0より大きい(L11>L0)。また、第2の可動接点212についても同様に、第1の支点部221−第2の可動接点212間の距離L12と、第2の支点部222−第2の可動接点212間の距離L22とは互いに異なる(L12≠L22)。さらに、第1の支点部221−第2の可動接点212間の距離L12は、両支点部221,222間の距離L0より大きい(L12>L0)。
【0040】
具体的に説明すると、第1の支点部221は第1の円形部121の下面に固定されており、第2の支点部222は主板部120の下面のうち第1〜第3の円形部121〜123を通る仮想円の中心となる位置に固定されている。つまり、第2の支点部222は、略正三角形状の主板部120の重心近傍に配置されている。したがって、第2の支点部222は、第1の円形部121に設けられた第1の支点部221と、第2の円形部122に設けられた第1の可動接点211と、第3の円形部123に設けられた第2の可動接点212とから略等距離に位置することになる。
【0041】
言い換えれば、2つの支点部22と第1の可動接点211とは、第2の支点部222を頂角とする二等辺三角形の各頂点に位置しており、第2の支点部222から等距離の位置に、第1の支点部221および第1の可動接点211が位置する(L0=L21)。同様に、2つの支点部22と第2の可動接点212とは、第2の支点部222を頂角とする二等辺三角形の各頂点に位置しており、第2の支点部222から等距離の位置に、第1の支点部221および第2の可動接点212が位置する(L0=L22)。
【0042】
ここで、両支点部22および第1の可動接点211を頂点とする二等辺三角形の頂角の角度、つまり第1の支点部221−第2の支点部222間を結ぶ線分と、第2の支点部222−第1の可動接点211間を結ぶ線分との間の角度は90度以上の鈍角である。また、両支点部22および第2の可動接点212を頂点とする二等辺三角形の頂角の角度、つまり第1の支点部221−第2の支点部222間を結ぶ線分と、第2の支点部222−第2の可動接点212間を結ぶ線分との間の角度も90度以上の鈍角である。本実施形態では、これらの二等辺三角形の頂角の角度は120度である。
【0043】
さらに、支点部22は、高さ寸法が基板30の上面300と主板部120の下面との間の間隔と同一であり、基板30側の端面を基板30の上面300に当接させ、可動板12側の端面を可動板12の下面に当接させる。支点部22は、可動板12と基板30との少なくとも一方に結合されていればよく、可動板12と基板30との両方に対して結合されていてもよい。なお、支点部22は可動板12あるいは基板30と連続一体であってもよい。
【0044】
このような位置に支点部22が設けられたことにより、可動板12は、第1および第2の両支点部221,222を支点として、横方向に沿った中心線回りでシーソー動作する。厳密には、可動板12は、下面が支点部22によって支持されているので、下面における横方向に沿った中心線回りでシーソー動作する。つまり、支点部22は、可動板12が平衡位置と第1の位置と第2の位置とのいずれの位置にある状態でも可動板12を基板30上に支持し、可動板12のシーソー動作の支点として機能する。
【0045】
次に、本実施形態のマイクロリレー1の可動板12の詳細な動作について説明する。
【0046】
可動板12は、駆動装置によって駆動され、横方向に沿った中心線を中心に回転することにより、第1の位置と第2の位置との間でシーソー動作する。可動板12は、このシーソー動作により、下面に設けられている可動接点21を基板30に設けられている固定接点31に接離させる。そのため、可動板12が第1の位置と第2の位置との中間である平衡位置にある状態では、第1の可動接点211と第2の可動接点212とはいずれも固定接点31から離れており、可動板12は2つの支点部22のみによって基板30上に支持される。
【0047】
一方、可動板12が第1の位置にあるときには、第1の可動接点211が第1の固定接点311に接触するので、可動板12は2つの支点部22と第1の可動接点211との3点で基板30上に支持される。このように可動板12が2つの支点部22と第1の可動接点211との3点で基板30上に支持された状態では、基板30に対する可動板12の傾きはこれら3点で定められる。ここで、第1の支点部221と第2の支点部222と第1の可動接点211との位置関係は、上述したように「L11≠L21」且つ「L11>L0」となる位置関係にあるので、可動板12は安定して支持される。
【0048】
すなわち、2つの支点部22と第1の可動接点211とは、第1の支点部221−第1の可動接点211間の距離L11が最長で、且つ第1の可動接点211から各支点部221,222までの距離L11,L21が互いに異なる三角形の頂点に位置している。可動板12を支持する3点がこのように配置されることにより、第1の支点部221−第1の可動接点211間の間隔を大きく確保して可動板12を安定して支持可能としながらも、縦方向の可動板12の寸法を小さく抑えることができる。しかも、第1の可動接点211は一方の支点部(第2の支点部222)寄りに位置するので、第1の可動接点211を支点に可動板12が横方向(支点部22が並ぶ方向)に傾くことも抑制できる。
【0049】
特に、本実施形態では、第2の支点部222から等距離の位置に、第1の支点部221および第1の可動接点211が位置するので、第2の支点部222を中心に2つの支点部22と第1の可動接点211とで可動板12をバランスよく支持できる利点がある。
【0050】
また、可動板12を支持する3点を頂点とした二等辺三角形の頂角の角度、つまり第2の支点部222に対応する頂角の角度は90度以上、ここでは120度の鈍角である。そのため、第1の可動接点211は、横方向においては第1の支点部221、第2の支点部222との間の領域の外(第2の支点部222よりも右側)に位置することとなり、2つの支点部22と共に可動板12を特に横方向において安定して支持できる。
【0051】
また、可動板12が第2の位置にあるときには、第2の可動接点212が第2の固定接点312に接触するので、可動板12は2つの支点部22と第2の可動接点212との3点で基板上に支持される。このように可動板12が2つの支点部22と第2の可動接点212との3点で基板30上に支持された状態では、基板30に対する可動板12の傾きはこれら3点で定められる。ここで、第1の支点部221と第2の支点部222と第2の可動接点212との位置関係は、上述したように「L12≠L22」且つ「L12>L0」となる位置関係にあるので、第2の位置においても第1の位置と同様に可動板12は安定して支持される。
【0052】
なお、平衡位置と第1の位置と第2の位置とのいずれの状態でも、可動板12は支持ばね13によってフレーム11に支持されているが、支持ばね13は可撓性を有するので、支持ばね13のみでは可動板12の位置は定まらない。つまり、可動板12が支点部22や可動接点21によって基板30上に支持されて始めて可動板12の位置は定まることになる。
【0053】
以上説明した本実施形態のマイクロリレー1によれば、可動板12は2つの支点部22を支点にシーソー動作し、可動接点21を固定接点31に接触させる位置においては、2つの支点部22と可動接点21との3点で基板30上に安定して支持される。したがって、可動板12は、可動接点21を固定接点31に接触させる位置において、シーソー動作の軸とは異なる軸回りで傾くことが抑制され、固定接点31に対する可動接点21の片当たりの発生を抑制できる。結果的に、可動接点21は固定接点31に対して安定して同じ面で接触することができ、接点の接触信頼性が向上するという利点がある。
【0054】
なお、本実施形態のマイクロリレーは、駆動装置として電磁石装置を用いた電磁駆動型のリレーであるが、この構成に限らず、たとえば対向する電極間に駆動電圧を印加したときに生じる静電引力により可動板12を駆動する静電駆動型のリレーであってもよい。
【0055】
(実施形態2)
本実施形態のマイクロリレー1は、図3に示すように、基板30に形成されている第1端子351と第3端子353との間、第2端子352と第4端子354との間を交互に導通させるように構成されている点が実施形態1のマイクロリレー1と相違する。以下、実施形態1と同様の構成については同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0056】
本実施形態では、実施形態1のマイクロリレー1の共通端子350に代えて、基板30を厚み方向に貫通し内周面に導電膜が形成されたスルーホールからなる第3端子353および第4端子354が基板30に形成されている。第3端子353と第4端子354とは、基板30の横方向の右端寄りの位置に配置され、縦方向に並ぶように横方向の位置が揃えられている。さらに、第1端子351と第3端子353とは横方向に並ぶように縦方向の位置が揃えられており、第2端子352と第4端子354とは横方向に並ぶように縦方向の位置が揃えられている。
【0057】
導体パターン34は、第1端子351−第3端子353間、および第2端子352−第4端子354間の各々に独立した導電経路を形成するように基板30の上面300に引き回されている。第1端子351−第3端子353間の導電パターン34は、一対の第1の固定接点311を含んでおり、第1の固定接点311間が非導通の状態では、第1端子351−第3端子353間の導電経路が分断される。また、第2端子352−第4端子354間の導体パターン34は、一対の第2の固定接点312を含んでおり、第2の固定接点312間が非導通の状態では、第2端子352−第4端子354間の導電経路が分断される。
【0058】
以上説明した本実施形態のマイクロリレー1によれば、一対の第1の固定接点311に第1の可動接点211が接触した状態で、第1端子351−第3端子353間が導通し、一対の第2の固定接点312に第2の可動接点212が接触した状態で、第2端子352−第4端子354間が導通する。つまり、本実施形態のマイクロリレー1は、可動板12のシーソー動作に伴い、互いに独立した第1端子351−第3端子353間と、第2端子352−第4端子354間とを交互に切り替えて接続する2入力2出力のリレーを構成する。
【符号の説明】
【0059】
1 マイクロリレー
12 可動板
21,211,212 可動接点
22 支点部
30 基板
31,311,312 固定接点
221 第1の支点部
222 第2の支点部
300 上面(一表面)
350 共通端子
351 第1端子
352 第2端子
353 第3端子
354 第4端子
L0,L11,L12,L21,L22 距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一表面に固定接点が設けられた基板と、前記基板の前記一表面に沿って配置され、前記固定接点と対向する位置に可動接点が設けられた板状の可動板と、前記基板と前記可動板との間に設けられ前記可動板を前記基板の前記一表面上に支持する2つの支点部と、前記可動接点が前記固定接点に対して接離するように、前記2つの前記支点部を結ぶ直線回りで前記支点部を支点として前記可動板を回転させる駆動装置とを備え、
前記可動板は、前記可動接点を前記固定接点に接触させた状態で、第1の支点部および第2の支点部からなる前記2つの前記支点部と前記可動接点との3点で前記基板上に支持され、
前記可動接点は、前記可動板における前記基板との対向面において、前記第1の支点部までの距離と前記第2の支点部までの距離とが互いに異なり、且つ、前記第1の支点部までの距離が前記2つの前記支点部間の距離よりも大きくなる位置に配置されていることを特徴とするマイクロリレー。
【請求項2】
前記可動接点は、前記第2の支点部までの距離が前記2つの前記支点部間の距離と同一になる位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のマイクロリレー。
【請求項3】
前記可動板は、前記一表面に沿う平面内で前記2つの支点部を結ぶ直線を対称軸とする線対称に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のマイクロリレー。
【請求項4】
前記第1の支点部および前記第2の支点部間を結ぶ線分と、前記第2の支点部および前記可動接点間を結ぶ線分との間の角度が90度以上となる位置に、前記可動接点が配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のマイクロリレー。
【請求項5】
前記可動接点は、前記可動板における前記基板との対向面において、前記2つの前記支点部を結ぶ直線を挟んで反対側に位置する第1の可動接点および第2の可動接点からなり、前記固定接点は、前記基板の前記一表面において、前記第1の可動接点に対向する部位に位置する一対の第1の固定接点と、前記第2の可動接点に対向する部位に位置する一対の第2の固定接点とからなり、
前記一対の前記第1の固定接点は、前記基板に設けられた共通端子と第1端子との間に接続され、前記第1の可動接点が接触した状態で前記共通端子と前記第1端子との間に導電経路を形成し、
前記一対の前記第2の固定接点は、前記基板に設けられた前記共通端子と第2端子との間に接続され、前記第2の可動接点が接触した状態で前記共通端子と前記第2端子との間に導電経路を形成することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のマイクロリレー。
【請求項6】
前記可動接点は、前記可動板における前記基板との対向面において、前記2つの前記支点部を結ぶ直線を挟んで反対側に位置する第1の可動接点および第2の可動接点からなり、前記固定接点は、前記基板の前記一表面において、前記第1の可動接点に対向する部位に位置する一対の第1の固定接点と、前記第2の可動接点に対向する部位に位置する一対の第2の固定接点とからなり、
前記一対の前記第1の固定接点は、前記基板に設けられた第1端子と第3端子との間に接続され、前記第1の可動接点が接触した状態で前記第1端子と前記第3端子との間に導電経路を形成し、
前記一対の前記第2の固定接点は、前記基板に設けられた第2端子と第4端子との間に接続され、前記第2の可動接点が接触した状態で前記第2端子と前記第4端子との間に導電経路を形成することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のマイクロリレー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−216298(P2012−216298A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−79030(P2011−79030)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)